(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】駐車場カメラシステム、情報端末およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/14 20060101AFI20240718BHJP
E04H 6/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G08G1/14
E04H6/00 C
(21)【出願番号】P 2020070706
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591069086
【氏名又は名称】パーク二四株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【氏名又は名称】岩田 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【氏名又は名称】的場 成夫
(72)【発明者】
【氏名】上沢 和成
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕貴
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-057493(JP,A)
【文献】特開2020-009050(JP,A)
【文献】特開2011-013924(JP,A)
【文献】特開平11-031296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/14
E04H 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックのそれぞれに対して複数の車両が駐車可能な大規模な駐車場を俯瞰した撮影データの取得が可能な駐車場カメラ
、および前記の駐車場における各ブロックへ配置されて前記の駐車場カメラから送信されるデータを受信して出力する情報端末 を備えた駐車場カメラシステムであって、
前記の駐車場カメラは、
前記の撮影データに基づいて各ブロックの満空を判断するための教師データ、満空の判断アルゴリズムおよび前記の駐車場内の地図データを予め格納している記憶手段と、
前記の駐車場を俯瞰する撮影データを取得する撮像手段と、
前記の記憶手段に格納されている教師データ、判断アルゴリズムおよび地図データを用いて前記の
撮像手段が取得した撮影データの各ブロックに対する満空を判断する満空判断手段と、
その満空判断手段によって満空を判断された各ブロックに対する判断結果を、前記の駐車場における各ブロックへ配置された情報端末へ指示データとして送信する送信手段と、
を備えることとし
、
前記の情報端末は、
前記の駐車場における各ブロックの位置情報との関連付けをするための設置位置手段と、
前記の駐車場における各ブロックの満空に基づく指示データを前記の駐車場カメラから受信する指示データ受信手段と、
前記の設置位置手段が関連づけた位置情報および前記の指示データ受信手段が受信した指示データに基づいて出力用データを出力する表示手段と、
を備えることとした駐車場カメラ
システム。
【請求項2】
前記の撮像手段が取得した撮影データは、画像処理を学習する外部サーバへ送信することとした
請求項1に記載の駐車場カメラ
システム。
【請求項3】
前記の記憶手段は、前記の外部サーバが画像処理を実行することで新たに学習した新教師データを受信して蓄積することとした
請求項2に記載の駐車場カメラ
システム。
【請求項4】
前記の駐車場における車室には特色部を備えており、
前記の満空判断手段は、前記の撮影データ内に特色部が認められた車室は空室である旨を判断することとした
請求項1から請求項3のいずれかに記載の駐車場カメラ
システム。
【請求項5】
前記の設置位置手段は、前記の駐車場における各ブロックに設置された近距離無線通信手段との双方向通信をすることによって位置情報を取得することとした
請求項1に記載の駐車場カメラシステム。
【請求項6】
前記の
情報端末における表示手段は、設置されるブロックにおける地上面からの高さを調整可能とした
請求項1に記載の
駐車場カメラシステム。
【請求項7】
前記の指示データ受信手段は、駐車場を俯瞰した撮影データを取得して画像処理をすることで各ブロックにおける満空を判断した画像処理サーバから指示データを受信することとした
請求項1に記載の
駐車場カメラシステム。
【請求項8】
前記の教師データを改訂する画像処理サーバを備え、
前記の画像処理サーバは、前記の駐車場カメラが取得した撮影データを受信する撮影データ受信手段と、
前記の教師データを予め格納している記憶手段と、
前記の撮影データ受信手段が受信した撮影データおよび前記の記憶手段に格納されている教師データを用いて新たな教師データである新教師データを作成する画像学習手段と、
前記の画像学習手段が作成した新教師データを前記の駐車場カメラへ送信する送信手段と、を備えた
請求項1に記載の駐車場カメラシステム。
【請求項9】
複数のブロックのそれぞれに対して複数の車両が駐車可能な大規模な駐車場を俯瞰した撮影データの取得が可能な駐車場カメラ
、および前記の駐車場における各ブロックへ配置されて前記の駐車場カメラから送信されるデータを受信して出力する情報端末を備えた駐車場カメラシステムを制御するコンピュータプログラムであって、
前記の撮影データに基づいて各ブロックの満空を判断するための教師データ、満空の判断アルゴリズムおよび前記の駐車場内の地図データを予め記憶手段へ格納する記憶手順と、
前記の駐車場を俯瞰する撮影データを取得する撮像手順と、
前記の記憶手段に格納されている教師データ、判断アルゴリズムおよび地図データを用いて前記の
撮像手順にて取得した撮影データの各ブロックに対する満空を判断する満空判断手順と、
その満空判断手順によって満空を判断された各ブロックに対する判断結果を、前記の駐車場における各ブロックへ配置された情報端末へ指示データとして送信する送信手順と、
を前記の駐車場カメラに
実行させるとともに、
前記の駐車場における各ブロックの位置情報との関連付けをするための設置位置手順と、
前記の駐車場における各ブロックの満空に基づく指示データを前記の駐車場カメラから受信する指示データ受信手順と、
前記の設置位置手順にて関連づけた位置情報および前記の指示データ受信手順にて受信した指示データに基づいて出力用データを出力する表示手順と、
を前記の情報端末に実行させることとした
コンピュータプログラム。
【請求項10】
前記の設置位置手順においては、前記の駐車場における各ブロックに設置された近距離無線通信手段との双方向通信をすることによって位置情報を取得することとした
請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記の指示データ受信手順においては、駐車場を俯瞰した撮影データを取得して画像処理をすることで各ブロックにおける満空を判断した画像処理サーバから指示データを受信することとした
請求項9または
請求項10のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
複数のブロックのそれぞれに対して複数の車両が駐車可能な大規模な駐車場を俯瞰した撮影データの取得が可能な駐車場カメラ
、および前記の駐車場における各ブロックの車両入口付近に配置されて前記の駐車場カメラから送信されるデータを受信して出力する情報端末を備えた駐車場カメラシステムにおける前記の情報端末であって、
前記の駐車場カメラは、
前記の撮影データに基づいて各ブロックの満空を判断するための教師データ、満空の判断アルゴリズムおよび前記の駐車場内の地図データを予め格納している記憶手段と、
前記の駐車場を俯瞰する撮影データを取得する撮像手段と、
前記の記憶手段に格納されている教師データ、判断アルゴリズムおよび地図データを用いて前記の撮像手段が取得した撮影データの各ブロックに対する満空を判断する満空判断手段と、
前記の満空判断手段によって満空を判断された各ブロックに対する判断結果を、前記の駐車場における各ブロックへ配置される情報端末へ指示データとして送信する送信手段と、を備えており、
前記の情報端末は、
前記の駐車場における各ブロックの位置情報との関連付けをするための設置位置手段と、
前記の駐車場における各ブロックの満空に
基づいて前記の駐車場カメラが判断した各ブロックに対する判断結果としての指示データを
前記の駐車場カメラから受信する指示データ受信手段と、
前記の設置位置手段が関連づけた位置情報および前記の指示データ受信手段が受信した指示データに基づいて出力用データを出力する表示手段と、
を備えた情報端末。
【請求項13】
前記の設置位置手段は、前記の駐車場における各ブロックに設置された近距離無線通信手段との双方向通信をすることによって位置情報を取得することとした
請求項12に記載の情報端末。
【請求項14】
前記の表示手段は、設置されるブロックにおける地上面からの高さを調整可能とした
請求項12に記載の情報端末。
【請求項15】
前記の指示データ受信手段は、駐車場を俯瞰した撮影データを取得して画像処理をすることで各ブロックにおける満空を判断した画像処理サーバから指示データを受信することとした
請求項12または請求項13のいずれかに記載の情報端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模な駐車場へ入場した直後の車両がどこへ駐車するかを迷うことを原因とする駐車場内の渋滞を解消するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駐車場所を探すため必要以上に速度を落とし、後続車が渋滞する等の混乱を解消するための技術が開示されている。すなわち、空いている駐車場所を入場車の運転者に示し、場内カメラで監視・誘導し、スムーズに駐車させる技術である。
【0003】
特許文献2には、時間貸し駐車場等での入場/ 出場がスムーズにでき、個々の車両に対してその車両に適した駐車スペースの指定やその駐車スペースまでの場内誘導等ができ、駐車前後において種々のサービス情報を個々の車両に対して提供でき、料金割引サービス等もスムーズに行うための技術が開示されている。
【0004】
前述したように、開示されている技術はあるものの、大規模な駐車場は、その駐車場へ入場しようとする車両が、周辺道路の渋滞を引き起こしている例が未だに多い。
以下、その理由を考察してみる。
【0005】
たとえば、ショッピングモールなどの大型商業施設の駐車場の場合、入庫しようという車両のみならず、出庫しようという車両もある。また、出庫しようとする車両と入庫しようとする車両とが事故にならないようにするため、警備員が目視しながら、出庫しようとする車両(の運転者)および入庫しようとする車両(の運転者)へ指示を出している。
換言すれば、出入りが頻度高く発生する現場で、事故が発生しないような細かい指示を出せるような自動化(機械化)は、技術的または経済的な理由から困難である(先行技術文献で開示された技術が実現しない理由)と予想される。
【0006】
図1、
図2を参照させながら、警備員の指示およびその指示に従って動く車両の関係を、より具体的に説明する。両図で示す大規模駐車場は、複数のブロック(A,B,C,・・・)のそれぞれに複数の車両を駐車可能としている。そして、Aブロックは満車、Bブロックは満車、Cブロックに空室有り、という状態であるとする。
【0007】
Aブロック前に配置された警備員は、Aブロックに近づいてくる車両へ指示を出すために、担当領域であるAブロックに空室があるのか満車なのかを目視で確認する。そして、そのAブロックへ入庫しようとする車両(4)へ、満車であれば通過すべき旨の指示、空室があれば入庫すべき旨の指示を出すこととなる。
図1に示す状態では満車なので、Aブロックに近づいてくる車両(4)には通過するように指示することとなる。
【0008】
指示を聞いた車両(4)の運転者は、次の警備員(Bブロック担当)の動きやその警備員の近くにいる車両(2)を見ながら駐車場内を運転するため、徐行運転することとなる。これが駐車場内の渋滞の一因となっている。
このような徐行運転が駐車場内の入口に近い場所で発生してしまうと、入口にいる車両へ伝染し、一般道から駐車場へ入ろうとする車両(5,6)の動きが遅くなる。その結果、この駐車場の入口を起点とした一般道での渋滞も発生してしまう。
【0009】
Bブロック前に配置された警備員も、担当領域であるBブロックに空室があるのか満車なのかを目視で確認する。Bブロックも満車なので、Bブロックに近づいてくる車両(2)には通過し、次のブロックへ向かう(Cブロックへ向かわせるために右折する)ように指示することとなる。
Cブロック前に配置された警備員は、空室のあることを確認しており、Cブロックに近づいてくる車両(1)を駐車させるような指示を出す。
【0010】
さて、Bブロック前を通過するように指示された車両(2)の運転者は、Bブロック前の警備員の指示の後、前方の車両(1)の動きを見ながら運転する。この車両(1)は、空室のあるCブロックへ入ろうとする(
図2へ続く)。
しかし、車両(1)に続いて車両(2)もCブロックへ入庫できるのか、車両(1)の入庫によってCブロックが満車となってしまうのか、は、判断しがたいことが多い。判断に迷うことで、車両(2)も徐行運転となってしまう。車両(2)の徐行運転は、車両(3)、車両(4)、と後続車両へ伝染してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平09-91591号公報
【文献】特許458750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、駐車場の警備員は自分の担当ブロックの満空を確認しつつ、入庫しようとする車両(の運転者)へ指示を出すのが精一杯であることが普通である。一方、駐車場内を運転する車両の運転者は、どこまで行けば駐車できるのかが分からないまま、次の警備員の指示を仰ぐために徐行してしまう。
【0013】
熟練の警備員であれば、自分の担当ブロックの満空を確認によって、あと何台くらいを入庫させられるかを頭に入れながら、目の前の車両に対する指示に加えて、後続の車両への指示をも出すことができる。
図1であれば、車両(1)への入庫指示を出しつつ、車両(2)に対して入庫できるか否かを合図するのである(
図1で図示したのとは異なり、自分の姿が車両(2)からも目視できる位置にいなければならない)。
【0014】
そうした熟練の警備員が指示を出す姿が見えれば、あるブロックを通過する車両の運転者としては、その通過の時点で、次のブロックも通過すべきなのか、入庫できそうなのかを認知できる。それができれば徐行せず、速度をやや高めにして運転することもできる。それによって、駐車場内の渋滞を緩和することに繋がり、一般道への渋滞連鎖も緩和することに寄与する。
【0015】
しかし、熟練の警備員を短期間で育成することは困難である。加えて、警備員には人件費が掛かるので、駐車場の運営コスト上昇に繋がってしまう。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、大規模駐車場における警備員(の数そのものや熟練することに対する負担)を減らすことに寄与し、大規模駐車場の内部で発生しがちな場内渋滞を緩和することに寄与する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した課題を解決するため、大規模駐車場の全体を撮影して分析する駐車場カメラに係る第一の発明、その第一の発明に係る駐車場カメラを制御するコンピュータプログラムに係る第二の発明、第一の発明に係る駐車場カメラからの出力を受けて駐車場内を走行する車両への指示を出力する情報端末に係る第三の発明、および第三の発明に係る情報端末を制御する第四の発明を提供する。
【0018】
(第一の発明)
第一の発明は、複数のブロックのそれぞれに対して複数の車両が駐車可能な大規模な駐車場を俯瞰した撮影データの取得が可能な駐車場カメラに係る。
その駐車場カメラは、前記の撮影データに基づいて各ブロックの満空を判断するための教師データ、満空の判断アルゴリズム、および前記の駐車場内の地図データを予め格納している記憶手段と、
前記の駐車場を俯瞰する撮影データを取得する撮像手段と、
前記の記憶手段に格納されている教師データ、判断アルゴリズムおよび地図データを用いて前記の
撮像手段が取得した撮影データの各ブロックに対する満空を判断する満空判断手段と、
その満空判断手段によって満空を判断された各ブロックに対する判断結果を、前記の駐車場における各ブロックへ配置された情報端末へ指示データとして送信する送信手段と、
を備える(
図3、
図4参照)。
【0019】
(用語説明)
「大規模な駐車場」は、複数のブロックからなり、各ブロックには車両が駐車するための車室を複数(たとえば、
図3では2x5=10個)備えている。各ブロックの位置関係は、「駐車場内の地図データ」に格納されている。
【0020】
「撮像手段」は、当該駐車場を俯瞰して撮影可能である。したがって、駐車場の地上面よりも高い場所に位置させている。たとえば、駐車場カメラ(のレンズ等の撮像手段)を駐車場の地上面よりも高い場所に位置させるための「俯瞰用柱」を用いる場合(
図3参照)、複数階のビル型駐車場においてビルの屋上階を除く各階の天井(を構成するビル駈体)となる場合(
図13参照)などがある。一枚の画像データにて駐車場の全体を取得できる場合と、ビル型駐車場のように複数枚の画像データにて駐車場の全体を取得する場合とがある。
【0021】
「撮影データ」は、撮像手段が取得する当該駐車場を撮影したデジタル画像データである。駐車場の全ブロックを一枚の画像データとして取得する場合(
図3参照)の他、複数の画像データを組み合わせて駐車場の全ブロックの画像データを取得する場合(
図13参照)も含む。
【0022】
「満空判断手段」が判断する「満空」については、所定のブロックにおいて空いている車室が無い状態を「満」とする場合のみではなく、たとえば、空いている車室が1,2室である場合にも「満」と判断する場合がある。空いている車室の有無を正確に判断するよりも、駐車場内の緩和を目的としているからである。
なお、「満空」の判断に対しては、予め撮影した多数の撮影データを、ディープラーニングによって画像処理をしておき、その画像処理で得られた教師データや判断アルゴリズムに基づいて判断する。
【0023】
「情報端末」とは、各ブロック前に設置される電子看板(
図4参照)の場合の他、各ブロックを担当する警備員が携帯可能な情報端末(
図5,
図8参照)も含む。
【0024】
(作用)
記憶手段は、過去に撮影した撮影データに基づいて各ブロックの満空を判断するための教師データを作成し、その教師データや満空の判断アルゴリズムを、予め格納しておく。
撮像手段は、前記の駐車場を俯瞰した撮影データを取得する。その撮影データにおける各ブロックに対し、記憶手段に格納されている教師データおよび判断アルゴリズムを用いて、満空判断手段が満空を判断する。
各ブロックに対する判断結果は、各ブロックへ配置された情報端末へ指示データとして送信手段が送信する。
【0025】
各ブロックへ配置された情報端末に送信された判断結果を出力させることによって、その情報端末を見ることができる車両の運転者(または各ブロックの警備員)は、そのブロックの満空を知ることができ、どのような指示を車両にすればよいかを素早く判断できる。結果として、駐車場内での運転を円滑にし、駐車場内の渋滞緩和(ひいては駐車場周辺の一般道路の渋滞緩和)に寄与する。
情報端末を手にした警備員は、的確な指示を素早く出せる警備員となることが期待でき、駐車場内の円滑化にも寄与することが期待できる。警備員は、情報端末を頼りにすることで、熟練していなくても熟練者に匹敵するようなスキルを発揮することも期待できる。
【0026】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、 前記の撮像手段が取得した撮影データを、画像処理を学習する外部サーバ(たとえば、駐車場管理サーバ)へ送信することとしてもよい(
図5,
図14参照)。
換言すれば、第一の発明に係る駐車場カメラ内に、撮影データに関する画像処理を機械学習するAI機能を搭載可能であるならば搭載してもよい(図示は省略)。
【0027】
(用語説明)
「外部サーバ」とは、駐車場の管理用データを収集および蓄積して管理する駐車場管理サーバ(
図14、
図15参照)のほか、画像処理を専用で実行する専用サーバでもよい。
「画像処理を学習する」とは、満空の判断精度を向上させるための機械学習をするということである。「機械学習」には、ディープラーニングを含む。
【0028】
(第一の発明のバリエーション2)
前述した第一の発明のバリエーション1について、記憶手段は、前記の外部サーバが画像処理を実行することで新たに学習した新教師データを受信して蓄積することとすることが望ましい。
新教師データに基づいて、満空の判断精度を向上させられるからである。
【0029】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のようにすると、より好ましい。
すなわち、前記の駐車場における車室には特色部(たとえば特色板)を備えており、
前記の満空判断手段は、前記の撮影データ内に特色部が認められた車室は空室である旨を判断することとするのである(
図12参照)。
【0030】
(用語説明)
「特色部」とは、撮像手段が取得する撮影データにおいて空室であることが判断しやすい色や光を発する部位を含んだもの、より具体的には、車両には使われることの少ない色、車両とは明らかに異なる形状などである。車室にフラップを備えている場合には、そのフラップが特色部の役割を果たす場合もある。
全ての車室に特色部を備えてもよいが、全てに備える必要もない。撮影データにおいて「満空」の判断を誤りやすい部位にのみ特色部を備えることすれば、合理的である。
【0031】
(第二の発明)
第二の発明は、第一の発明に係る駐車場カメラを制御するコンピュータプログラムに係る。
すなわち、前記の撮影データに基づいて各ブロックの満空を判断するための教師データ、満空の判断アルゴリズムおよび前記の駐車場内の地図データを予め記憶手段へ格納する記憶手順と、
前記の駐車場を俯瞰する撮影データを取得する撮像手順と、
前記の記憶手段に格納されている教師データ、判断アルゴリズムおよび地図データを用いて前記の撮像手順にて取得した撮影データの各ブロックに対する満空を判断する満空判断手順と、
その満空判断手順によって満空を判断された各ブロックに対する判断結果を、前記の駐車場における各ブロックへ配置された情報端末へ指示データとして送信する送信手順と、
を前記の駐車場カメラに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0032】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明については、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の撮像手順にて取得した撮影データを、画像処理を学習する外部サーバへ送信する外部サーバ送信手順をも前記の駐車場カメラに実行させることとするのである。
【0033】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明については、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の駐車場における車室には特色部を備えている場合において、
前記の満空判断手順においては、前記の撮影データ内に特色部が認められた車室は空室である旨を判断することとしてもよい。
【0034】
(第三の発明)
第三の発明は、複数のブロックのそれぞれに対して複数の車両が駐車可能な大規模な駐車場において、前記の各ブロックの車両入口付近に設置される情報端末(
図3,4等に示す電子看板、および
図8,7に示す警備員用端末)に係る。
すなわち、前記の駐車場における各ブロックの位置情報との関連付けをするための設置位置手段と、
前記の駐車場における各ブロックの満空に基づく指示データを受信する指示データ受信手段と、
前記の設置位置手段が関連づけた位置情報および前記の指示データ受信手段が受信した指示データに基づいて出力用データを出力する表示手段と、
を備えた情報端末である(
図4参照)。
【0035】
(用語説明)
「設置位置手段」としては、後述する近距離無線通信を用いる機器とする場合の他、いわゆるGPS機能である。
【0036】
(作用)
設置位置手段が本願に係る情報端末と駐車場における各ブロックの位置情報と関連付けをする。駐車場における各ブロックの満空に基づく指示データを指示データ受信手段が受信する。
設置位置手段が関連づけた位置情報および前記の指示データ受信手段が受信した指示データに基づいて、出力用データを表示手段が出力する。
【0037】
情報端末が電子看板である場合には、駐車場内を走行する車両の運転手は出力用データが出力された表示手段を目視することで、駐車場内の円滑に走行することに寄与する。
情報端末が警備員用端末である場合には、警備員は、出力用データが出力された表示手段を目視することで(自らが駐車場における担当ブロックの満空状況を目視する必要なしに)、駐車場内を走行する車両の運転手に対して、(熟練していなくても)的確な指示を素早く出すことに寄与する。
電子看板と警備員との組み合わせとすることで、全てを警備員とする場合に比べて、警備員の数そのものを減らすことができ、人件費の抑制に寄与する。
【0038】
(第三の発明のバリエーション1)
第三の発明における設置位置手段は、前記の駐車場における各ブロックに設置された近距離無線通信手段との双方向通信をすることによって位置情報(各ブロックの位置情報)を取得することとしてもよい。
【0039】
「近距離無線通信手段」とは、概ね10~20メートルに近づいたら双方向で無線通信を開始するデバイスであり、無線PAN(Personal Area Network)と呼ばれる。代表的なデバイスとしては、たとえば、Bluetooth(The Bluetooth SIG Inc.の登録商標)である。
【0040】
(作用)
駐車場における各ブロックに設置された近距離無線通信手段との双方向通信をすることによって位置情報(各ブロックの位置情報)を取得するので、情報端末が複数用意する場合において、位置情報に関連づけられた専用端末とする必要がない。
【0041】
(第三の発明のバリエーション2)
第三の発明における表示手段は、設置されるブロックにおける地上面からの高さを調整可能に形成すると、より好ましい(
図11参照)。
【0042】
(作用)
表示手段の高さを高めに調整すれば、その情報端末が設置された場所からより離れた位置にいる車両の運転者から(高めに調整していなかった場合に比べて)視認しやすくなる。
離れた場所からの視認が可能となると、車両の運転者は、次なる運転をどのようにすべきかの判断材料、選択肢が増えるので、運転の円滑化に繋がる。その結果、駐車場内の渋滞抑制に寄与する可能性がある。
【0043】
(第三の発明のバリエーション3)
第三の発明における指示データ受信手段は、駐車場を俯瞰した撮影データを取得して画像処理をすることで各ブロックにおける満空を判断した画像処理サーバから指示データを受信するように形成すると、より好ましい(
図4、
図9、
図16参照)。
【0044】
個々の車室について満空を把握できる駐車場であれば、その駐車場における個々の車室について満空を把握している管理サーバから指示データを受信すればよい。
ここでは、個々の車室について満空を把握できない駐車場において、駐車場を俯瞰した撮影データを取得することで代用する。そのため、個々の車室について満空を把握するための設備が不要となる。
【0045】
(第四の発明)
第四の発明は、第三の発明に係る情報端末を制御するコンピュータプログラムに係る。
すなわち、前記の駐車場における各ブロックの位置情報との関連付けをするための設置位置手順と、
前記の駐車場における各ブロックの満空に基づく指示データを受信する指示データ受信手順と、
前記の設置位置手順にて関連づけた位置情報および前記の指示データ受信手順にて受信した指示データに基づいて出力用データを出力する表示手順と、
を前記の情報端末に実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0046】
(第四の発明のバリエーション1)
第四の発明における設置位置手順においては、前記の駐車場における各ブロックに設置された近距離無線通信手段との双方向通信をすることによって位置情報を取得することとしてもよい。
【0047】
(第四の発明のバリエーション2)
第四の発明における指示データ受信手順においては、駐車場を俯瞰した撮影データを取得して画像処理をすることで各ブロックにおける満空を判断した画像処理サーバから指示データを受信することとしてもよい。
【0048】
第二および第四の発明に係るコンピュータプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他の端末手段へ伝送することも可能である。
また、第二および第四の発明に係るコンピュータプログラムを記録媒体へ記憶させて提供することもできる。 ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、ハードディスク、CD-R、DVD-R、フラッシュメモリなどである。
【発明の効果】
【0049】
第一の発明によれば、大規模駐車場の内部で発生しがちな場内渋滞を緩和することに寄与する駐車場カメラを提供することができた。
第二の発明によれば、大規模駐車場の内部で発生しがちな場内渋滞を緩和することに寄与する駐車場カメラの制御プログラムを提供することができた。
第三の発明の発明によれば、大規模駐車場の内部で発生しがちな場内渋滞を緩和することに寄与する情報端末を提供することができた。
第四の発明の発明によれば、大規模駐車場の内部で発生しがちな場内渋滞を緩和することに寄与する情報端末の制御プログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】従来の大規模駐車場における問題点を説明するための概念図である。
【
図2】従来の大規模駐車場における問題点を説明するための概念図である。
【
図4】本発明の実施形態を、駐車場カメラおよび電子看板を中心として示すブロック図である。
【
図5】満空を判断するための教師データをつくり出す画像処理AIを示すための概念図である。
【
図6】満空を区別するための教師データを作成するためのフローチャートである。
【
図7】駐車場の撮影から指示データの作成および送信の手順を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態において、電子看板と警備員用端末とを併用する場合を示す斜視図である。
【
図9】警備員用端末を中心としたブロック図である。
【
図11】電子看板における他の実施形態を示す斜視図である。
【
図12】駐車場の各車室へ特色板を備えることとして示した斜視図である。
【
図13】大規模駐車場が3階建ての駐車ビルである場合を示した側面図である。
【
図14】駐車場カメラ内での情報処理において、指示データが各端末で共通とする場合を示すブロック図である。
【
図15】駐車場カメラ内での情報処理において、指示データを各端末に対して専用とする場合を示すブロック図である。
【
図16】電子看板への指示データを駐車場管理サーバから送信することとした実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を図面および実施形態に基づいて、説明する。ここで使用する図面は、
図3から
図16である。
【0052】
(
図3)
図3に示すのは、ひとつのブロックに複数の車室を備え、そうしたブロックを複数備えた大規模な駐車場(の一部)と、その駐車場に車両が入ることのできる一般道との関係を示す斜視図である。
データの送受信などの機能を備えたデジタルカメラである駐車場カメラを、広大な敷地内の多数のブロックからなる大規模な駐車場の全ブロックを一枚の画像として撮影可能であるように、俯瞰用柱に固定し、撮影場所としての高さを稼いでいる。
【0053】
前記の大規模な駐車場は、大型の商業施設、娯楽施設などを訪れる人が乗車してくる車両を駐車するためのものである。
駐車場カメラは、前記の商業施設等が営業している時間帯において、一分ごとに撮影して画像データを取り込んでいる。
なお、駐車場カメラが夜間も撮影する場合には、明るいレンズや高感度の光学素子を採用したり、駐車場内の照明設備を充実させたりする必要がある。
【0054】
図3では、大規模な駐車場の一部として、Aブロック、Bブロック、Cブロックを図示している。そして、各ブロックの入口付近には、電子看板を設置している。電子看板には、
図4で詳細に説明するが、その電子看板を配置したブロックが満車であるか、駐車可能であるか否かを表示するとともに、満車である場合には電子看板を通過した上でどちらの方向へ移動すれば駐車可能であるかの方向(通過指示表示)を示すものである。
なお、
図3に示したサンプル車両については、
図4の説明後に説明する。
【0055】
(
図4)
図4では、
図3にて示した駐車場カメラおよび電子看板における詳細な構成、および駐車場の一部(BブロックやBブロックを他の部位から区切るための区切りペイント)を示している。また、以下の図では、無線通信を二点破線の矢印、有線通信を実線の矢印で示す。
【0056】
駐車場カメラは、駐車場全体の撮影を(営業時間帯において1分ごとに)する撮像手段と、その撮影データに対して各ブロックが満車であるか空室があるかを判断する満空判断手段と、その満空判断手段が判断した結果としての指示データを電子看板へ送信する送信手段と、を備えている。また、満空判断手段が判断するための判断アルゴリズム、教師データ、満空についてブロックごとに判断するための駐車場内の地図データを予め記憶している記憶手段を備えている。
【0057】
駐車場カメラの送信手段から送信された指示データは、電子看板における受信手段が受信する。
電子看板には、近距離無線通信チップが内蔵されており、ブロックの路面に埋設するなどして固定された近距離無線通信チップとの双方向通信をすることでブロックデータ(B)を受け取り、その電子看板がどこに設置されたのかを把握している。
【0058】
受信手段が受信した指示データは、ブロックごとの指示内容が含まれている。その指示データの中から、ブロックデータ(B)の指示内容を制御手段が抽出し、出力用データとして表示手段へ送信する。
【0059】
表示手段とは、満車を示す「満」の文字ランプ、空室がある旨を示す「空」の文字ランプ、および当該ブロックを通過するとともに通過して向かうべき方向を示す通過指示表示(矢印ランプ)である。「満」の文字ランプまたは「空」の文字ランプは、選択的に点灯する。また、通過指示表示は、「満」の文字ランプが点灯する場合に、ともに点灯する。この図では、通過指示表示および「満」の文字ランプが点灯している旨を図示している。
【0060】
撮影データは定期的(設定にて変更できるが、本実施形態では1分ごと)に新たなデータとなるので、それに伴って送信される指示データも満空判断手段によって随時判断され、1分ごとに送信される。したがって、電子看板に出力される出力用データも1分ごとに改訂されることとなる。なお、撮影データの撮影間隔を1分(60秒)未満とすることもできるし、撮影データを動画とすることもできる。
【0061】
図4に示す電子看板における満空表示および通過指示表示は、看板の裏表の両面で表示可能であることを前提として説明するが、ブロック側に面する面の表示(点灯)を省略する場合もある。
図10で示すように、この電子看板はバッテリにて表示を実行するため、節電のためである。
なお、ブロック側に面する面の表示はあまり重要ではない(ブロック内から電子看板を見る必要性が小さい)ため、ブロック側に面する表示装置そのものを配備しない電子看板を提供することとしてもよい。
【0062】
図4に示すような機能を備えた電子看板および駐車場カメラが、一般道から本実施形態に係る大規模な駐車場へ入ってきたサンプル車両に対してどのような作用を奏するか、
図3にて説明する。
【0063】
(サンプル車両)
図3に示したAブロックを通過したサンプル車両の運転者からは、Bブロック前に設置された電子看板が見える。その電子看板には、通過指示表示および「満」の文字ランプが点灯している。そのため、Bブロック前に設置された電子看板が見えた瞬間に、Bブロックも通過しようという判断をすることができる。サンプル車両の後続車両(この図では省略しているが)の運転者からすると、サンプル車両がBブロックも通過しようとしているという様子が伺える上に、Bブロック前に設置された電子看板が見えれば、自らもBブロックを通過すべきであろうという判断が行える。
【0064】
なお、駐車場カメラの撮像手段が撮影した撮影データは、指示データを作成するためだけに用いられるのではなく、満空判断手段の判断精度を高めるため、画像処理AIサーバへ送信される。送信された撮影データは、受信手段が受信し、画像学習を経て送信手段から駐車場カメラへ送信される。そして、記憶手段における新教師データとして記憶される。
【0065】
(
図5)
図5では、
図4に示した画像処理AIサーバの詳細を概念的に示している。
画像処理AIサーバにおいては、既に撮影された撮影データについて、空室有りの画像ファイルと満車の画像ファイルとに分類されて、記憶手段に記憶されている。図示の都合で、3ブロックの画像データについて空室有りの画像ファイルおよび満車の画像ファイルを示しているが、実際には、駐車場全体を撮影した一枚の画像データを各ブロックに分割して各ブロック写真データに加工する(この加工プロセスは、比較的容易に自動化できる)。そして、その各ブロック写真データを、分類担当者が空室有りの画像または満車の画像に分類している(いわゆる「アノテーション」)。
【0066】
各ブロック写真データについて空室有りの画像または満車の画像に分類した結果に基づいて、分類前の各ブロック写真データが、空室有りなのか満車なのかを区別するための教師データを別途作成する。作成された教師データ、および判断アルゴリズムも、記憶手段に記憶されている。
【0067】
受信手段が受信した撮影データは、記憶手段の判断アルゴリズムや教師データを用いて演算し、新たな教師データ(「新教師データ」と図示)を作成する。そして、その新たな教師データを記憶手段へ格納するとともに、送信手段を介して駐車場カメラへも送信する。その後、駐車場カメラにおいては、教師データを新教師データへ差し替える。
【0068】
画像処理AIは、
図14では駐車場管理サーバ内に設けることとして説明しているが、画像処理の専用サーバとしてもよい。
画像処理AIは、実施形態のように駐車場カメラに内蔵することができる。
図4に示したように内蔵する場合には、
図14中の受信手段および送信手段は不要となる。
【0069】
(
図6)
図6では、満空を区別するための教師データを作成するためのフローチャートを示す。満車か空車有りか、に区別するステップ、および教師データの作成というステップを含んでおり、完全に自動化された手順を示すフローチャートではない。
【0070】
まず、駐車場カメラの撮像手段が駐車場の全体を一枚に収められる広角撮影にて俯瞰撮影し、写真データを取得する(S1)。取得した写真データを、各ブロックに切り分け、各ブロック写真データとする(S2)。そして、各ブロック写真データについて、満車か空車有りか、に区別して蓄積する(S3)。
【0071】
満空を区別できる教師データを、各ブロックにおいて作成する(S4)。
教師データをどのように作成するか、については説明を省略するが、ブロックごとに教師データを作成することとしたのは、写真データについて、季節毎の太陽の位置、時間帯、駐車する車両の色など多くのパラメータが異なり、そうした多くのパラメータが及ぼす影響が各ブロックで異なる可能性があるためである。
【0072】
(
図7)
図7では、
図6で示した教師データの作成後に、駐車場を撮影した写真データに対し、教師データを使って指示データを作成して送信する手順を示すフローチャートを示す。撮影、画像処理と、指示データ作成といった全てのステップが自動化できる。
【0073】
駐車場カメラの撮像手段が駐車場の全体を一枚に収められる広角撮影にて俯瞰撮影し、写真データを取得する(S11)。取得した写真データを、各ブロックに切り分け、各ブロック写真データとする(S12)。
続いて、既に作成してある教師データや判断アルゴリズムを使って、各ブロック写真データについて満空を判断する(S13)。そして、その満空の判断結果に基づいて、各ブロックへの指示データを作成し、その指示データを送信する(S14)。
【0074】
写真データの取得(S11)から1分を経過したら(S15の「Yes」)、駐車場の営業終了時刻になったか否かを判断し(S16)、営業時間内であれば、再び駐車場の俯瞰撮影を実行して写真データを取得する(S11)。
【0075】
本発明の趣旨は、大規模駐車場における駐車場内の車両移動を円滑とすることである。したがって、S16においては、「駐車場の営業終了時刻になったか否かを判断」するとして説明したが、「営業終了時刻」ではなく、「駐車場内の混雑が発生しなくなる時刻」としてもよい。
また、駐車場の俯瞰撮影によって、駐車場内の混雑具合を判断するような別のアルゴリズムにて混雑していない、と判断した時点で「エンド」としてもよい。
【0076】
S13にて満空の判断をした結果について、その適否を判定し、教師データを改訂(新教師データの作成)することとしてもよい(S17)。
なお、
図4および
図5では、新教師データを作成するステップを含むこととして説明している。
【0077】
(
図8)
図8は、Bブロック前には電子看板ではなく、警備員が立ち、その警備員は電子看板と同様の機能を備えた警備員用端末を手にしている旨を示している。その警備員用端末については、
図9に示す。
【0078】
(
図9)
図9は、
図8において示した電子看板が警備員用端末になっただけで、警備員用端末の機能は電子看板と変わらない。図示の都合で警備員に比して大きめに図示しているが、実際には警備員の手の平に載るほどのサイズである。
【0079】
図9に示した警備員用端末は、近距離無線通信チップを内蔵したスマートフォンへ所定のアプリケーションをインストールすることでも実現可能である。
内蔵された近距離無線通信チップが、ブロックの近距離無線通信チップとの双方向通信をすることで、受信した指示データから出力用データを抽出し、表示手段へ出力する。
【0080】
(
図10)
図10は、電子看板の外観を詳細に示している。
この電子看板は、幅600ミリメートル、奥行き300ミリメートルの車輪付き台座を備え、高さ1200ミリメートルとなる。直径400ミリメートルの満空表示および通過指示表示は、上の方に(地上面からの高さが800ミリメートル)位置させ、離れた位置からの運転者や警備員からも、できるだけ見やすくしている。なお、電子看板の各寸法は、この実施形態の数値に限られるものではない。
【0081】
満空表示および通過指示表示は、内蔵しているLEDを点灯させることによって点灯や消灯を制御する。この図では、通過指示表示および「満」の表示を消灯させ、「空」の表示を点灯させている状態を図示している。点灯のための電気エネルギは、内蔵されたバッテリから供給される。
【0082】
この電子看板は、台座に備えられた車輪によって移動させることができる。また、所定のブロック前にて場所を決めたら車輪をロックすることができる。近距離無線通信チップを内蔵しているので、各ブロックの所定の場所へ埋設等された近距離無線通信チップと双方向通信し、どの場所にあるのかを自らが把握できる。
【0083】
(
図11)
図11は、電子看板のバリエーションを示している。ここで示す電子看板は、台座を二重構造とし、二つの台座の間にXリンクを介在させた構造を備える。Xリンクを調整することによって電子看板における満空表示および通過指示表示の高さを調整できるようにしている。
【0084】
満空表示および通過指示表示の高さを高くすることで、離れた場所、特に電子看板よりも駐車場入口に近い場所を走行中の車両の運転者からの見やすさを向上させる。そのことで、当該運転者が自らの行動を決断する情報を早い段階で得ることとなり、駐車場内での運転スピードを向上させることに寄与する。そのため、駐車場内での渋滞緩和に寄与する。
【0085】
(
図12)
図12では、各車室の路面に「特色板」を固定した実施形態を示している。この特色板とは、駐車場カメラが撮影した撮影データにおける車室が空室である場合に判別しやすい色や形状をなしている。撮影データにおける満空の判断精度を向上させることに寄与する。
車室に車両が駐車している場合には、駐車場カメラが撮影しても、その車室の特色板は撮影データには写らないように配置される。
【0086】
車室にフラップを備えている場合には、そのフラップが特色部の役割を果たすが、この大規模駐車場では、車室にフラップを備えていない。駐車料金の精算が簡単または不要なためである。
【0087】
(
図13)
図13では、大規模な駐車場が駐車場ビルの場合に、駐車場カメラがどのようになるのかを示している。
この図では、駐車場ビルが屋上付き2階建てである。1Fには天井に駐車場カメラ(1)を設置し、2Fにも天井に駐車場カメラ(2)を設置し、屋上(RF)では俯瞰用柱を立設させて、その俯瞰用柱へ駐車場カメラ(3)を設置している。
【0088】
複数台のカメラを用いて各ブロックの撮影データを得る場合、撮影データによって得られる教師データは、カメラ毎とするのが合理的である。ブロックごとに特徴があり、満空の判断もその特徴に左右されるからである。
【0089】
(
図14)
図14では、駐車場カメラとは物理的に別の場所に駐車場管理サーバが備えられており、その駐車場管理サーバには画像処理AIを含んでいることとして、ブロック図を示している。
駐車場カメラからは、指示データが各情報端末へ送信される。その情報端末は、電子看板(A)、警備員用端末(B)、電子看板(C)であるとする(情報端末の数は、ブロックの数に対応する)。
【0090】
駐車場カメラから各情報端末へ送信される指示データは、全ての端末において共通の指示データである。各情報端末は、近距離無線通信チップにて得た自らのブロックの位置に対応する指示データのみを端末内で抽出し、出力用データとするのである。
【0091】
(
図15)
図15もまた、駐車場カメラとは物理的に別の場所に駐車場管理サーバが備えられており、その駐車場管理サーバには画像処理AIを含んでいる。
図14との相違点は、駐車場カメラにおける満空判断手段が作成する指示データが情報端末毎に作成される点である。
【0092】
図15に示す駐車場カメラにおける満空判断手段の場合、情報端末において指示データを切り分ける必要がない。そのため、情報端末および各ブロックに備えるとして説明した近距離無線通信チップを省略することができる、というメリットがある。
【0093】
ただし、情報端末を予め個体識別し、各ブロックへの対応設定をして運用しなければならない。すなわち、各情報端末には、ブロックの名称が名付けられ、名付けられたブロック以外のブロックで使用することができなくなる。
【0094】
(
図16)
図16には、これまで説明してきた駐車場カメラにおけるインテリジェント機能を駐車場管理サーバへ移した実施形態を示している。
【0095】
図16に示した「駐車場撮影カメラ」は、
図3で示した俯瞰用柱へ設置するなどして、大規模な駐車場全体を一枚の画像で撮影する点は、駐車場カメラと同じである。
駐車場カメラがその内部で処理および判断していた機能は、駐車場管理サーバが担う。すなわち、駐車場撮影カメラが撮影した撮影データを受信する受信手段、教師データ、判断アルゴリズム、駐車場内地図データなどを予め記憶している記憶手段、撮影データおよび教師データ、判断アルゴリズム、駐車場内地図データを用いて駐車場の各ブロックの満空を判断する満空判断手段、および満空判断手段が判断した指示データを情報端末へ送信する送信手段を、駐車場管理サーバが備えることとするのである。
【0096】
前述してきた実施形態によれば、大規模駐車場の内部で発生しがちな場内渋滞を緩和することに寄与する。
また、
図8、
図9にて示した警備員用端末を電子看板と組み合わせて用いれば、警備員の不足に対応できる。
【0097】
電子看板を用いずに警備員用端末のみを用いるとしても、警備員の経験が豊富でなくても、駐車しようとする車両に対して適切な指示を出せる可能性を高めることができる。
【0098】
前述してきた実施形態に係る電子看板を用いた駐車場であれば、駐車しようとする車両に対する指示を早く的確に出すことができる。そのため、駐車場内の渋滞発生を抑制し、駐車場に繋がる一般道における駐車場を原因とした渋滞発生を抑制することに寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、駐車場の運営管理業、駐車場カメラや情報端末の製造業、駐車場カメラや情報端末に関わるデータを扱うデータサービス業、駐車場カメラが撮影した撮影データの画像処理サービス業などにおいて、利用可能性を有する。