(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240718BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F9/20 N
(21)【出願番号】P 2020096717
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭二
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-041428(JP,A)
【文献】特開平08-013546(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071314(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0139664(KR,A)
【文献】実開平06-001805(JP,U)
【文献】特開2019-007173(JP,A)
【文献】特開2007-186942(JP,A)
【文献】特開2016-205496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるブーム、前記ブームの先端に取り付けられるアーム、及び前記アームの先端に取り付けられるバケットを含むアタッチメントと、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、
前記ブームの操作状態に応じて、前記ブームシリンダに作動油を供給する制御弁と、を備え、
前記アタッチメントが前記バケットの収容物を外部に排出するための排出動作を行う場合、前記ブームの操作状態に関わらず、前記制御弁を用いて、前記ブームシリンダ
のボトム側油室及びロッド側油室のうちのボトム側油室のみに作動油を供給する、
ショベル。
【請求項2】
前記アタッチメントが前記排出動作を行う場合、前記アタッチメントの前記排出動作により前記ブームシリンダに作用する伸び方向の力に起因する前記ブームシリンダの縮み方向への揺り戻し動作を抑制するように、前記制御弁を用いて、前記ブームシリンダに作動油を供給する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記アタッチメントが前記排出動作を行う場合、前記制御弁を用いて、前記ブームシリンダのボトム側油室に作動油を供給すると共に、前記ブームシリンダのロッド側油室から作動油を排出させ、前記ブームを上げ方向に動かす、
請求項
1又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記ブームの操作が行われていない状態で、前記アタッチメントが前記排出動作を行っている場合、前記制御弁を用いて、前記ブームシリンダに作動油を供給する、
請求項1乃至
3の何れか一項に記載のショベル。
【請求項5】
ショベルの動的な安定性が低下する可能性が相対的に高い状態で、前記アタッチメントが前記排出動作を行っている場合、前記制御弁を用いて、前記ブームシリンダに作動油を供給する、
請求項1乃至
4の何れか一項に記載のショベル。
【請求項6】
ショベルの動的な安定性が低下する可能性が相対的に高い状態には、前記バケットに所定基準を超える収容物が収容されている状態が含まれる、
請求項
5に記載のショベル。
【請求項7】
ショベルの動的な安定性が低下する可能性が相対的に高い状態には、前記アーム及び前記バケットの少なくとも一方の速度又は加速度が相対的に大きい状態が含まれる、
請求項
5又は
6に記載のショベル。
【請求項8】
前記アタッチメントが前記排出動作を行う場合、前記制御弁を用いて、前記ブームの加速度、前記アタッチメントの加速度、及び前記バケットの収容物による前記アタッチメントの負荷状態に応じた流量の作動油を前記ブームシリンダに供給する、
請求項1乃至
7の何れか一項に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、バケットに収容される土砂等の収容物を外部に排出するアタッチメントの動作(以下、「排出動作」)の際に、ブームシリンダのボトム側油室の作動油をリリーフする技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる技術によれば、アタッチメントの排出動作の際に、ブームシリンダに作用する伸び方向の力の揺り戻しの縮み方向の力により上昇するブームシリンダのボトム側油室の圧力を逃がし、機体に作用する転倒モーメントを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術では、機体に作用する動的に発生する転倒モーメントを抑制することができるが、ブームが下げ方向に移動するため、アタッチメントの全体の重心は、機体から離れる方向に移動し、静的な安定性が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、アタッチメントの排出動作の際に、ショベルの安定性をより向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるブーム、前記ブームの先端に取り付けられるアーム、及び前記アームの先端に取り付けられるバケットを含むアタッチメントと、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、
前記ブームの操作状態に応じて、前記ブームシリンダに作動油を供給する制御弁と、を備え、
前記アタッチメントが前記バケットの収容物を外部に排出するための排出動作を行う場合、前記ブームの操作状態に関わらず、前記制御弁を用いて、前記ブームシリンダのボトム側油室及びロッド側油室のうちのボトム側油室のみに作動油を供給する、
ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、アタッチメントの排出動作の際に、ショベルの安定性をより向上させることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ショベル管理システムの一例を示す概略図である。
【
図2】ショベル管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】ショベル管理システムの構成の他の例を示す図である。
【
図4】ショベル(アタッチメント)の排出動作時のショベルの挙動変化を表す図である。
【
図5】ショベル(アタッチメント)の排出動作時にブームシリンダ及び機体のそれぞれに作用する力及びモーメントを表す図である。
【
図6】ショベル(アタッチメント)の排出動作時にブームシリンダ及び機体のそれぞれに作用する力及びモーメントを表す図である。
【
図7】ショベルの排出動作時の挙動安定化に関する構成の第1例を示す図である。
【
図8】ショベルの排出動作時の挙動安定化に関する構成の第2例を示す図である。
【
図9】ショベルの排出動作時の挙動安定化に関する制御処理の第1例を概略的に示すフローチャートである。
【
図10】ショベルの排出動作時の挙動安定化に関する制御処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。
【
図11】ショベルの排出動作時の挙動安定化に関する制御処理の第3例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
[ショベル管理システムの概要]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るショベル管理システムSYSの概要について説明をする。
【0012】
図1は、本実施形態に係るショベル管理システムSYSの一例を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、ショベル管理システムSYSは、ショベル100と、管理装置200とを含む。
【0014】
ショベル管理システムSYSに含まれるショベル100は、一台であってもよいし、複数台であってもよい。同様に、ショベル管理システムSYSに含まれる管理装置200は、複数であってもよい。即ち、複数の管理装置200は、ショベル管理システムSYSに関する処理を分散して実施してよい。例えば、複数の管理装置200は、それぞれ、複数のショベル100のうちの担当する一部のショベル100との間で相互に通信を行い、その一部のショベル100を対象とする処理を実行してよい。
【0015】
ショベル管理システムSYSは、例えば、管理装置200において、ショベル100から情報を収集し、ショベル100の各種状態(例えば、ショベル100に搭載される各種機器の異常の有無等)を監視する。
【0016】
また、ショベル管理システムSYSは、例えば、管理装置200において、ショベル100の遠隔操作を支援してよい。
【0017】
<ショベルの概要>
図1に示すように、本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、ブーム4、アーム5、及びバケット6を含むアタッチメントと、オペレータが搭乗するキャビン10とを備える。以下、ショベル100の前方は、ショベル100を上部旋回体3の旋回軸に沿って真上から平面視(以下、単に「平面視」と称する)で見たときに、上部旋回体3に対するアタッチメントが延び出す方向に対応する。また、ショベル100の左方及び右方は、それぞれ、キャビン10内のオペレータから見た左方及び右方に対応する。
【0018】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラを含む。下部走行体1は、それぞれのクローラが左側の走行油圧モータ1ML及び右側の走行油圧モータ1MR(
図2参照)で油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
【0019】
上部旋回体3は、旋回機構2が旋回油圧モータ2Aで油圧駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0020】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に取り付けられ、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に取り付けられる。
【0021】
バケット6は、エンドアタッチメントの一例である。バケット6は、例えば、掘削作業等に用いられる。また、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメントが取り付けられてもよい。他のエンドアタッチメントは、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット等の他の種類のバケットであってよい。また、他のエンドアタッチメントは、攪拌機、ブレーカ等のバケット以外の種類のエンドアタッチメントであってもよい。
【0022】
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0023】
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0024】
ショベル100は、通信装置60を搭載し、所定の通信回線NW(Network)を通じて、管理装置200と相互に通信を行うことができる。これにより、ショベル100は、各種情報を管理装置200に送信(アップロード)したり、管理装置200から各種の信号(例えば、情報信号や制御信号)等を受信したりすることができる。通信回線NWには、例えば、広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)が含まれる。広域ネットワークには、例えば、基地局を末端とする移動体通信網が含まれてよい。また、広域ネットワークには、例えば、ショベル100の上空の通信衛星を利用する衛星通信網が含まれてもよい。また、広域ネットワークには、例えば、インターネット網が含まれてもよい。また、通信回線NWには、例えば、管理装置200が設置される施設のローカルネットワーク(LAN:Local Area Network)が含まれてもよい。ローカルネットワークは、無線回線であってもよいし、有線回線であってもよいし、その両方を含む回線であってよい。また、通信回線NWには、例えば、WiFiやブルートゥース(登録商標)等の所定の無線通信方式に基づく近距離通信回線が含まれてもよい。
【0025】
ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、アクチュエータ(例えば、油圧アクチュエータ)を動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素(以下、「被駆動要素」)を駆動する。
【0026】
また、ショベル100は、キャビン10のオペレータにより操作可能に構成されるのに代えて、或いは、加えて、ショベル100の外部から遠隔操作(リモート操作)が可能に構成されてもよい。ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。以下、オペレータの操作には、キャビン10のオペレータによる操作装置26に対する操作、及び外部のオペレータによる遠隔操作の少なくとも一方が含まれる前提で説明を進める。
【0027】
遠隔操作には、例えば、所定の外部装置(例えば、管理装置200)で行われるショベル100のアクチュエータに関するユーザ(オペレータ)からの入力によって、ショベル100が操作される態様が含まれる。この場合、ショベル100は、例えば、後述の撮像装置S6の出力に基づくショベル100の周囲の画像情報(以下、「周囲画像」)を外部装置に送信し、画像情報は、外部装置に設けられる表示装置(以下、「遠隔操作用表示装置」)に表示されてよい。また、ショベル100のキャビン10内の出力装置50に表示される各種の情報画像(情報画面)は、同様に、外部装置の遠隔操作用表示装置にも表示されてよい。これにより、外部装置のオペレータは、例えば、遠隔操作用表示装置に表示されるショベル100の周囲の様子を表す周囲画像や各種の情報画像等の表示内容を確認しながら、ショベル100を遠隔操作することができる。また、そして、ショベル100は、外部装置から受信される、遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を駆動してよい。
【0028】
また、遠隔操作には、例えば、ショベル100の周囲の人(例えば、作業者)のショベル100に対する外部からの音声入力やジェスチャ入力等によって、ショベル100が操作される態様が含まれてよい。具体的には、ショベル100は、ショベル100(自機)に搭載される撮像装置や音声入力装置(例えば、マイクロフォン)等を通じて、周囲の作業者等により発話される音声や作業者等により行われるジェスチャ等を認識する。そして、ショベル100は、認識した音声やジェスチャ等の内容に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を駆動してよい。
【0029】
また、ショベル100は、オペレータの操作の内容に依らず、自動でアクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「自動運転機能」或いは「マシンコントロール機能」)を実現する。
【0030】
自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、操作対象の被駆動要素(アクチュエータ)以外の被駆動要素(アクチュエータ)を自動で動作させる機能(いわゆる「半自動運機能」或いは「操作支援型のマシンコントロール機能」)が含まれてよい。また、自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作がない前提で、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「完全自動運転機能」或いは「全自動型のマシンコントロール機能」)が含まれてもよい。ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、自動運転の対象の被駆動要素(アクチュエータ)の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
【0031】
<管理装置の概要>
管理装置200は、例えば、ショベル100の状態やショベル100の作業等、ショベル100に関する管理を行う。
【0032】
管理装置200は、例えば、ショベル100が作業を行う作業現場の外部の管理センタ等に設置されるクラウドサーバであってよい。また、管理装置200は、例えば、ショベル100が作業行う作業現場内、或いは、作業現場から相対的に近い場所(例えば、通信事業者の局舎や基地局等)に配置されるエッジサーバであってもよい。また、管理装置200は、ショベル100の作業現場内の管理事務所等に配置される定置型の端末装置或いは携帯型の端末装置(携帯端末)であってもよい。定置型の端末装置には、例えば、デスクトップ型のコンピュータ端末が含まれてよい。また、携帯型の端末装置には、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のコンピュータ端末等が含まれてよい。
【0033】
管理装置200は、例えば、通信装置220(
図2、
図3参照)を有し、上述の如く、通信回線NWを通じて、ショベル100と相互に通信を行う。これにより、管理装置200は、ショベル100からアップロードされる各種情報を受信したり、各種信号をショベル100に送信したりすることができる。そのため、管理装置200のユーザは、出力装置240(
図2、
図3参照)を通じて、ショベル100に関する各種情報を確認することができる。また、管理装置200は、例えば、ショベル100に情報信号を送信し、作業に必要な情報を提供したり、制御信号を送信し、ショベル100を制御したりすることができる。管理装置200のユーザには、例えば、ショベル100のオーナ、ショベル100の管理者、ショベル100のメーカの技術者、ショベル100のオペレータ、ショベル100の作業現場の管理者、監督者、作業者等が含まれてよい。
【0034】
また、管理装置200は、ショベル100の遠隔操作を支援可能に構成されてもよい。例えば、管理装置200は、オペレータが遠隔操作を行うための入力装置(以下、便宜的に「遠隔操作装置」)、及びショベル100の周囲の画像情報(周囲画像)等を表示する遠隔操作用表示装置を有してよい。遠隔操作装置から入力される信号は、遠隔操作信号として、ショベル100に送信される。これにより、管理装置200のユーザ(オペレータ)は、遠隔操作用表示装置でショベル100の周囲の様子を確認しながら、遠隔操作装置を用いて、ショベル100の遠隔操作を行うことができる。
【0035】
[ショベル管理システムの構成]
次に、
図1に加えて、
図2、
図3を参照して、ショベル管理システムSYSの具体的な構成について説明する。
【0036】
図2、
図3は、本実施形態に係るショベル管理システムSYSの構成の一例及び他の例を示すブロック図である。
図2、
図3では、機械的動力が伝達される経路は二重線、油圧アクチュエータを駆動する高圧の作動油が流れる経路は実線、パイロット圧が伝達される経路は破線、電気信号が伝達される経路は点線でそれぞれ示される。
図2、
図3は、互いに、ショベル100及び管理装置200のうちのショベル100の構成のみが異なる。
【0037】
<ショベルの構成>
ショベル100は、被駆動要素の油圧駆動に関する油圧駆動系、被駆動要素の操作に関する操作系、ユーザとの情報のやり取りに関するユーザインタフェース系、外部との通信に関する通信系、及び各種制御に関する制御系等のそれぞれの構成要素を含む。
【0038】
<<油圧駆動系>>
図2、
図3に示すように、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1(左右のクローラ)、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素のそれぞれを油圧駆動する油圧アクチュエータを含む。油圧アクチュエータには、走行油圧モータ1ML,1MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等が含まれる。また、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17とを含む。
【0039】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源である。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。エンジン11は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。エンジン11は、後述するコントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。
【0040】
レギュレータ13は、コントローラ30の制御下で、メインポンプ14の吐出量を制御(調節)する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(以下、「傾転角」)を調節する。
【0041】
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載される。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、上述の如く、コントローラ30の制御下で、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることによりピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御される。
【0042】
コントロールバルブ17は、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作の内容、或いは、コントローラ30から出力される自動運転機能に関する操作指令に応じて、油圧アクチュエータの制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載される。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26の操作状態、或いは、コントローラ30から出力される操作指令に応じて、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1ML,1MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等)に選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の制御弁(「方向切換弁」とも称する)17A~17Fを含む。以下、制御弁17A~17Fを包括的に或いは制御弁17A~17Fのうちの任意の一つを個別に「制御弁17X」と称する場合がある。
【0043】
制御弁17Aは、走行油圧モータ1MLに作動油を供給し、且つ、走行油圧モータから作動油を排出させ、タンクに戻すことが可能に構成される。これにより、制御弁17Bは、走行油圧モータ1MRの操作(即ち、左側のクローラの操作)に対応する油圧制御弁31から供給されるパイロット圧に応じて、走行油圧モータ1MLを駆動することができる。
【0044】
制御弁17Bは、走行油圧モータ1MRに作動油を供給し、且つ、走行油圧モータから作動油を排出させ、タンクに戻すことが可能に構成される。これにより、制御弁17Bは、走行油圧モータ1MRの操作(即ち、右側のクローラの操作)に対応する油圧制御弁31から供給されるパイロット圧に応じて、走行油圧モータ1MRを駆動することができる。
【0045】
制御弁17Cは、旋回油圧モータ2Aに作動油を供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aから作動油を排出させ、タンクに戻すことが可能に構成される。これにより、制御弁17Cは、旋回油圧モータ2Aの操作(即ち、上部旋回体3の操作)に対応する油圧制御弁31から供給されるパイロット圧に応じて、旋回油圧モータ2Aを駆動することができる。
【0046】
制御弁17Dは、ブームシリンダ7に作動油を供給し、且つ、ブームシリンダ7から作動油を排出させ、タンクに戻すことが可能に構成される。これにより、制御弁17Dは、ブームシリンダ7の操作(即ち、ブーム4の操作)に対応する油圧制御弁31から供給されるパイロット圧に応じて、ブームシリンダ7を駆動することができる。
【0047】
制御弁17Eは、アームシリンダ8に作動油を供給し、且つ、アームシリンダ8から作動油を排出させ、タンクに戻すことが可能に構成される。これにより、制御弁17Eは、アームシリンダ8の操作(即ち、アーム5の操作)に対応する油圧制御弁31から供給されるパイロット圧に応じて、アームシリンダ8を駆動することができる。
【0048】
制御弁17Fは、バケットシリンダ9に作動油を供給し、且つ、バケットシリンダ9から作動油を排出させ、タンクに戻すことが可能に構成される。これにより、制御弁17Fは、バケットシリンダ9の操作(即ち、バケット6の操作)に対応する油圧制御弁31から供給されるパイロット圧に応じて、バケットシリンダ9を駆動することができる。
【0049】
制御弁17Xは、例えば、パイロット圧が供給される2つのポートP1,P2を有するスプール弁である(例えば、
図7、
図8の制御弁17D参照)。制御弁17Xには、軸方向に移動可能なスプールが内蔵され、スプールは、その両端部にも設けられるバネ部材から所定の中立位置で釣り合うように反対側の端部に向けて付勢されている。
【0050】
制御弁17XのポートP1に作動油が供給されると、その圧力(パイロット圧)がスプールの軸方向の一端に作用し、スプールが中立位置を基準として軸方向で他端側に移動する。これにより、制御弁17Xは、スプールの移動に伴い、油圧アクチュエータの2つの作動油の給排ポートのうちの一方に作動油を供給し他方から作動油を排出させる経路を連通させ、油圧アクチュエータを一の方向に駆動することができる。
【0051】
一方、制御弁17XのポートP2に作動油が供給されると、その圧力(パイロット圧)がスプールの軸方向の他端に作用し、スプールが中立位置を基準として軸方向で一端側に移動する。これにより、制御弁17Xは、スプールの移動に伴い、油圧アクチュエータの2つの作動油の給排ポートのうちの他方に作動油を供給し一方から作動油を排出させる経路を連通させ、油圧アクチュエータを他の方向に駆動することができる。
【0052】
<<操作系>>
図2、
図3に示すように、本実施形態に係るショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、ゲートロック弁25Vと、操作装置26と、油圧制御弁31とを含む。また、
図2に示すように、本実施形態に係るショベル100の操作系は、操作装置26が油圧パイロット式である場合、シャトル弁32と、油圧制御弁33とを含む。
【0053】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して各種油圧機器にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載される。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
【0054】
ゲートロック弁25Vは、パイロットライン25において、パイロットポンプ15からの作動油の供給を受ける全ての各種油圧機器よりも上流に設けられる。ゲートロック弁25Vは、キャビン10の内部のゲートロックレバーの操作と連動するリミットスイッチのON/OFFによって、パイロットライン25の連通及び遮断(非連通)を切り替える。具体的には、ゲートロックレバーが起こされている、つまり、操縦席が開放されている場合、リミットスイッチがOFFされ、ゲートロック弁25Vのソレノイドには、電源(例えば、バッテリ)からの電圧が印加されず、ゲートロック弁25Vは非連通状態となる。そのため、パイロットライン25が遮断され、油圧制御弁31を含む各種油圧機器に作動油が供給されない。一方、ゲートロックレバーが下ろされた状態、つまり、操縦席が閉じられた状態では、リミットスイッチがONされ、ゲートロック弁25Vのソレノイドには、電源から電圧が印加され、ゲートロック弁25Vは連通状態になる。そのため、パイロットライン25が連通し、油圧制御弁31を含む各種油圧機器に作動油が供給される。
【0055】
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各種被駆動要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うために用いられる。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの被駆動要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ1ML,1MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等)の操作を行うために用いられる。操作装置26は、例えば、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、バケット6(バケットシリンダ9)、及び上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)のそれぞれを操作するレバー装置を含む。また、操作装置26は、例えば、下部走行体1の左右のクローラ(走行油圧モータ1ML,1MR)のそれぞれを操作するペダル装置或いはレバー装置を含む。
【0056】
例えば、
図2に示すように、操作装置26は、油圧パイロット式である。具体的には、操作装置26は、パイロットライン25及びそこから分岐されるパイロットライン25Aを通じてパイロットポンプ15から供給される作動油を利用して、操作内容に応じたパイロット圧を二次側のパイロットライン27Aに出力する。パイロットライン27Aは、シャトル弁32の一方の入口ポートに接続され、シャトル弁32の出口ポートに接続されるパイロットライン27を介して、コントロールバルブ17に接続される。これにより、コントロールバルブ17には、シャトル弁32を介して、操作装置26における各種被駆動要素(油圧アクチュエータ)に関する操作内容に応じたパイロット圧が入力されうる。そのため、コントロールバルブ17は、オペレータ等の操作装置26に対する操作内容に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動することができる。
【0057】
また、例えば、
図3に示すように、操作装置26は、電気式である。具体的には、操作装置26は、操作内容に応じた電気信号(以下、「操作信号」)を出力し、操作信号は、コントローラ30に取り込まれる。そして、コントローラ30は、操作信号の内容に応じた制御指令、つまり、操作装置26に対する操作内容に応じた制御信号を油圧制御弁31に出力する。これにより、油圧制御弁31からコントロールバルブ17に操作装置26の操作内容に応じたパイロット圧が入力され、コントロールバルブ17は、操作装置26の操作内容に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動することができる。
【0058】
また、コントロールバルブ17に内蔵される、それぞれの油圧アクチュエータを駆動する制御弁17X(方向切換弁)は、電磁ソレノイド式であってもよい。この場合、操作装置26から出力される操作信号がコントロールバルブ17に、即ち、電磁ソレノイド式の制御弁17Xに直接入力されてもよい。
【0059】
油圧制御弁31は、操作装置26の操作対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)ごとに設けられる。即ち、油圧制御弁31は、例えば、左側のクローラ(走行油圧モータ1ML)、右側のクローラ(走行油圧モータ1MR)、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、及びバケット6(バケットシリンダ9)ごとに設けられる。油圧制御弁31は、例えば、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17との間のパイロットライン25Bに設けられ、その流路面積(即ち、作動油が通流可能な断面積)を変更可能に構成されてよい。これにより、油圧制御弁31は、パイロットライン25Bを通じて供給されるパイロットポンプ15の作動油を利用して、所定のパイロット圧を二次側のパイロットライン27Bに出力することができる。そのため、
図2に示すように、油圧制御弁31は、パイロットライン27Bとパイロットライン27の間のシャトル弁32を通じて、間接的に、コントローラ30からの制御信号に応じた所定のパイロット圧をコントロールバルブ17に作用させることができる。また、
図3に示すように、油圧制御弁31は、パイロットライン27B及びパイロットライン27を通じて、直接的に、コントローラ30からの制御信号に応じた所定のパイロット圧をコントロールバルブ17に作用させることができる。そのため、コントローラ30は、油圧制御弁31から電気式の操作装置26の操作内容に応じたパイロット圧をコントロールバルブ17に供給させ、オペレータの操作に基づくショベル100の動作を実現することができる。
【0060】
また、コントローラ30は、例えば、油圧制御弁31を制御し、自動運転機能を実現してもよい。具体的には、コントローラ30は、操作装置26の操作の有無に依らず、自動運転機能に関する操作指令に対応する制御信号を油圧制御弁31に出力する。これにより、コントローラ30は、油圧制御弁31から自動運転機能に関する操作指令に対応するパイロット圧をコントロールバルブ17に供給させ、自動運転機能に基づくショベル100の動作を実現することができる。
【0061】
また、コントローラ30は、例えば、油圧制御弁31を制御し、ショベル100の遠隔操作を実現してもよい。具体的には、コントローラ30は、後述の通信装置60によって、管理装置200から受信される遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容に対応する制御信号を油圧制御弁31に出力する。これにより、コントローラ30は、油圧制御弁31から遠隔操作の内容に対応するパイロット圧をコントロールバルブ17に供給させ、オペレータの遠隔操作に基づくショベル100の動作を実現することができる。
【0062】
図2に示すように、シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有し、2つの入口ポートに入力されたパイロット圧のうちの高い方のパイロット圧を有する作動油を出口ポートに出力させる。シャトル弁32は、操作装置26の操作対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)ごとに設けられる。即ち、シャトル弁32は、例えば、左側のクローラ(走行油圧モータ1ML)、右側のクローラ(走行油圧モータ1MR)、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、及びバケット6(バケットシリンダ9)ごとに設けられる。シャトル弁32の2つの入口ポートのうちの一方が操作装置26(具体的には、操作装置26に含まれる上述のレバー装置或いはペダル装置)の二次側のパイロットライン27Aに接続され、他方が油圧制御弁31の二次側のパイロットライン27Bに接続される。シャトル弁32の出口ポートは、パイロットライン27を通じて、コントロールバルブ17の対応する制御弁のパイロットポートに接続される。対応する制御弁とは、シャトル弁32の一方の入口ポートに接続される上述のレバー装置或いはペダル装置の操作対象である油圧アクチュエータを駆動する制御弁である。そのため、これらのシャトル弁32は、それぞれ、操作装置26の二次側のパイロットライン27Aのパイロット圧と油圧制御弁31の二次側のパイロットライン27Bのパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。つまり、コントローラ30は、操作装置26の二次側のパイロット圧よりも高いパイロット圧を油圧制御弁31から出力させることで、オペレータの操作装置26に対する操作に依らず、対応する制御弁を制御することができる。よって、コントローラ30は、オペレータの操作装置26に対する操作状態に依らず、被駆動要素(下部走行体1、上部旋回体3、アタッチメント)の動作を制御し、自動運転機能を実現することができる。
【0063】
図2に示すように、油圧制御弁33は、操作装置26とシャトル弁32とを接続するパイロットライン27Aに設けられる。油圧制御弁33は、例えば、その流路面積を変更できるように構成される。油圧制御弁33は、コントローラ30から入力される制御信号に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26が操作されている場合に、操作装置26から出力されるパイロット圧を強制的に減圧させることができる。そのため、コントローラ30は、操作装置26が操作されている場合であっても、操作装置26の操作に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、コントローラ30は、例えば、操作装置26が操作されている場合であっても、操作装置26から出力されるパイロット圧を減圧させ、油圧制御弁31から出力されるパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、油圧制御弁31及び油圧制御弁33を制御することで、例えば、操作装置26の操作内容とは無関係に、所望のパイロット圧をコントロールバルブ17内の制御弁のパイロットポートに確実に作用させることができる。よって、コントローラ30は、例えば、油圧制御弁31に加えて、油圧制御弁33を制御することで、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能をより適切に実現することができる。
【0064】
<<ユーザインタフェース系>>
図2、
図3に示すように、本実施形態に係るショベル100のユーザインタフェース系は、操作装置26と、出力装置50と、入力装置52とを含む。
【0065】
出力装置50は、キャビン10の内部のショベル100のユーザ(オペレータ)に向けて各種情報を出力する。
【0066】
例えば、出力装置50は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、視覚的な方法で各種情報を出力する室内の照明機器や表示装置等を含む。照明機器は、例えば、警告灯等である。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。
【0067】
また、例えば、出力装置50は、聴覚的な方法で各種情報を出力する音出力装置を含む。音出力装置には、例えば、ブザーやスピーカ等が含まれる。
【0068】
入力装置52は、キャビン10内の着座したオペレータに近接する範囲に設けられ、オペレータによる各種入力を受け付け、受け付けられる入力に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0069】
例えば、入力装置52は、操作入力を受け付ける操作入力装置である。操作入力装置には、表示装置に実装されるタッチパネル、表示装置の周囲に設置されるタッチパッド、ボタンスイッチ、レバー、トグル、操作装置26(レバー装置)に設けられるノブスイッチ等が含まれる。
【0070】
また、例えば、入力装置52は、オペレータの音声入力を受け付ける音声入力装置であってもよい。音声入力装置には、例えば、マイクロフォンが含まれる。
【0071】
また、例えば、入力装置52は、オペレータのジェスチャ入力を受け付けるジェスチャ入力装置であってもよい。ジェスチャ入力装置には、例えば、キャビン10内に設置される撮像装置(室内カメラ)が含まれる。
【0072】
<<通信系>>
図2、
図3に示すように、本実施形態に係るショベル100の通信系は、通信装置60を含む。
【0073】
通信装置60は、通信回線NWに接続し、ショベル100と別に設けられる装置(例えば、管理装置200)と通信を行う。ショベル100と別に設けられる装置には、ショベル100の外部にある装置の他、ショベル100のユーザによりキャビン10に持ち込まれる携帯型の端末装置が含まれてよい。通信装置60は、例えば、4G(4th Generation)や5G(5th Generation)等の規格に準拠する移動体通信モジュールを含んでよい。また、通信装置60は、例えば、衛星通信モジュールを含んでもよい。また、通信装置60は、例えば、WiFi通信モジュールやブルートゥース通信モジュール等を含んでもよい。
【0074】
<<制御系>>
図2、
図3に示すように、本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30を含む。また、本実施形態に係るショベル100の制御系は、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、旋回状態センサS5と、撮像装置S6と、ブームシリンダ圧センサS7と、アームシリンダ圧センサS8と、バケットシリンダ圧センサS9とを含む。また、
図2に示すように、本実施形態に係るショベル100の制御系は、操作装置26が油圧パイロット式である場合、操作圧センサ29を含む。
【0075】
コントローラ30は、ショベル100に関する各種制御を行う。コントローラ30の機能は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、各種入出力用のインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0076】
コントローラ30は、例えば、油圧制御弁31を制御対象として、ショベル100の油圧アクチュエータ(被駆動要素)の操作に関する制御を行う。
【0077】
具体的には、コントローラ30は、油圧制御弁31を制御対象として、操作装置26の操作に基づくショベル100の油圧アクチュエータ(被駆動要素)の操作に関する制御を行ってよい。
【0078】
また、コントローラ30は、油圧制御弁31を制御対象として、ショベル100の油圧アクチュエータ(被駆動要素)の遠隔操作に関する制御を行ってよい。即ち、ショベル100の油圧アクチュエータ(被駆動要素)の操作には、ショベル100の外部からの油圧アクチュエータの遠隔操作が含まれてよい。
【0079】
また、コントローラ30は、油圧制御弁31を制御対象として、ショベル100の自動運転機能に関する制御を行ってよい。即ち、ショベル100の油圧アクチュエータの操作には、自動運転機能に基づき出力される、ショベル100の油圧アクチュエータの操作指令が含まれてよい。
【0080】
また、コントローラ30は、例えば、ショベル100の挙動の安定化(以下、「挙動安定化」)に関する制御を行う。コントローラ30は、ショベル100の挙動安定化に関する機能部として、判定部301と、安定化制御部302とを含む。
【0081】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散して実現される態様であってもよい。
【0082】
図2に示すように、操作圧センサ29は、油圧パイロット式の操作装置26の二次側(パイロットライン27A)のパイロット圧、即ち、操作装置26におけるそれぞれの被駆動要素(油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。操作圧センサ29による操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等に関する操作状態に対応するパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0083】
ブーム角度センサS1は、所定基準(例えば、水平面やブーム4の可動角度範囲の両端の何れかの状態等)に対するブーム4の姿勢角度(以下、「ブーム角度」)に関する検出情報を取得する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、角速度センサ、六軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit)等を含んでよい。また、ブーム角度センサS1は、ブームシリンダ7の伸縮位置を検出可能なシリンダセンサを含んでもよい。
【0084】
アーム角度センサS2は、所定基準(例えば、ブーム4の両端の連結点間を結ぶ直線やアーム5の可動角度範囲の両端の何れかの状態等)に対するアーム5の姿勢角度(以下、「アーム角度」)に関する検出情報を取得する。アーム角度センサS2は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、角速度センサ、六軸センサ、IMU等を含んでよい。また、アーム角度センサS2は、アームシリンダ8の伸縮位置を検出可能なシリンダセンサを含んでもよい。
【0085】
バケット角度センサS3は、所定基準(例えば、アーム5の両端の連結点間を結ぶ直線やバケット6の可動角度範囲の両端の何れかの状態等)に対するバケット6の姿勢角度(以下、「バケット角度」)に関する検出情報を取得する。バケット角度センサS3は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、角速度センサ、六軸センサ、IMU等を含んでよい。また、バケット角度センサS3は、バケットシリンダ9の伸縮位置を検出可能なシリンダセンサを含んでもよい。
【0086】
機体傾斜センサS4は、下部走行体1及び上部旋回体3を含む機体の傾斜状態に関する検出情報を取得する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に搭載され、上部旋回体3の前後方向及び左右方向の傾斜角度(以下、「前後傾斜角度」及び「左右傾斜角度」)に関する検出情報を取得する。機体傾斜センサS4は、例えば、加速度センサ(傾斜センサ)、角速度センサ、六軸センサ、IMU等を含んでよい。
【0087】
旋回状態センサS5は、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を取得する。旋回状態センサS5は、例えば、所定基準(例えば、下部走行体1の前進方向と上部旋回体3の前方とが一致する状態)に対する上部旋回体3の旋回角度に関する検出情報を取得する。旋回状態センサS5は、例えば、ポテンショメータ、ロータリエンコーダ、レゾルバ等を含む。
【0088】
また、機体傾斜センサS4の構成要素(例えば、六軸センサやIMU等)によって、上部旋回体3の傾斜角度だけでなく、旋回角度も含む上部旋回体3の姿勢状態に関する検出情報を取得可能な場合、旋回状態センサS5は、省略されてもよい。
【0089】
また、例えば、ショベル100には、更に、自機の絶対位置を測位可能な測位装置が搭載されていてもよい。測位装置は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサである。これにより、ショベル100の姿勢状態の推定精度を向上させることができる。
【0090】
また、センサS1~S5は、省略されてもよい。例えば、撮像装置S6や後述の距離センサ等により取得されるショベル100の周囲の情報には、機体(上部旋回体3)から見た周囲の物体やアタッチメントの位置や形状等に関する情報が含まれる場合がある。この場合、例えば、コントローラ30は、要求される精度によっては、その情報からショベル100の姿勢状態を推定することも可能だからである。
【0091】
撮像装置S6は、ショベル100の周囲の撮像し撮像画像を出力する。撮像装置S6から出力される撮像画像は、コントローラ30に取り込まれる。
【0092】
撮像装置S6は、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、デプスカメラ等を含む。撮像装置は、また、撮像装置S6は、撮像画像に基づき、所定の撮像範囲(画角)内におけるショベル100の周囲の物体の位置及び外形を表す三次元データ(例えば、点群データやサーフェスデータ)を取得してもよい。
【0093】
撮像装置S6に代えて、或いは、加えて、例えば、LIDAR(Light Detecting and Ranging)、ミリ波レーダ、超音波センサ、赤外線センサ、距離画像センサ等の距離センサがショベル100に搭載されてもよい。距離センサは、所定の検知範囲内におけるショベル100の周囲の物体の位置及び形状を表す三次元データを取得してよい。
【0094】
図1に示すように、撮像装置S6は、例えば、キャビン10の上面前端に取り付けられ、エンドアタッチメント(バケット6)の作業範囲を含む上部旋回体3の前方の撮像画像を取得する。これにより、コントローラ30は、撮像装置S6の出力に基づき、ショベル100の前方の状況を認識することができる。また、コントローラ30は、撮像装置S6の出力(撮像画像)から認識されるショベル100の周囲の物体の位置や見え方の変化等に基づき、ショベル100の位置や上部旋回体3の旋回状態等を認識することができる。また、撮像装置S6の撮像範囲には、ブーム4、アーム5、及びエンドアタッチメント(バケット6)、即ち、アタッチメントが含まれる。これにより、コントローラ30は、撮像装置S6の出力に基づき、アタッチメントの姿勢状態(例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6の少なくとも一つの姿勢角)を認識することができる。そのため、ショベル100が遠隔操作される場合、コントローラ30は、撮像装置S6に基づく周囲画像や認識結果に関する情報を管理装置200等に送信し、外部のオペレータにショベル100(自機)やその周囲の状況に関する情報提供を行うことができる。また、ショベル100が完全自動運転機能で動作する場合に、完全自動運転機能に関する制御装置(例えば、コントローラ30)は、ショベル100の周囲の状況や自機の姿勢状態等を把握しながら、油圧アクチュエータに関する操作指令を出力することができる。また、ショベル100が完全自動運転機能で動作する場合に、コントローラ30は、撮像装置S6に基づく周囲画像や認識結果に関する情報を管理装置200等に送信し、作業を外部で監視するユーザ(監視者)にショベル100(自機)やその周囲の状況に関する情報提供を行うことができる。
【0095】
また、撮像装置S6は、更に、上部旋回体3の左方、右方、及び後方のうちの少なくとも一つに関する撮像画像を取得可能に構成されてもよい。これにより、コントローラ30は、ショベル100の前方だけでなく、ショベル100の左方、右方、及び後方の状況を認識することができる。
【0096】
ブームシリンダ圧センサS7は、ブームシリンダ7の油圧(シリンダ圧)を検出する。ブームシリンダ圧センサS7は、例えば、ブームシリンダ7のボトム側油室及びロッド側油室のそれぞれの圧力を検出する圧力センサを含む。ブームシリンダ圧センサS7の出力(検出信号)は、コントローラ30に取り込まれる。
【0097】
アームシリンダ圧センサS8は、アームシリンダ8の油圧(シリンダ圧)を検出する。アームシリンダ圧センサS8は、例えば、アームシリンダ8のボトム側油室及びロッド側油室のそれぞれの圧力を検出する圧力センサを含む。アームシリンダ圧センサS8の出力(検出信号)は、コントローラ30に取り込まれる。
【0098】
バケットシリンダ圧センサS9は、バケットシリンダ9の油圧(シリンダ圧)を検出する。バケットシリンダ圧センサS9は、例えば、バケットシリンダ9のボトム側油室及びロッド側油室のそれぞれの圧力を検出する圧力センサを含む。バケットシリンダ圧センサS9の出力(検出信号)は、コントローラ30に取り込まれる。
【0099】
判定部301は、アタッチメントの排出動作時のショベル100の挙動安定化に関する制御を行うための条件(以下、「制御実行条件」)の成否を判定する。
【0100】
制御実行条件には、必須条件(以下、「制御実行必須条件」)としての"アタッチメントが排出動作を行っていること"が含まれる。つまり、判定部301は、アタッチメントが排出動作を行っているか否かを判定する。アタッチメントの排出動作には、少なくともバケット6が略全閉されている状態から開く動作が含まれる。また、アタッチメントの排出動作には、バケット6の開き動作と共に行われる、アーム5の開き動作が含まれてもよい。
【0101】
判定部301は、例えば、アタッチメント(ブーム4、アーム5、及びバケット6)の操作の内容に基づき、アタッチメントが排出動作を行っているか否かを判定してよい。アタッチメントの操作には、上述の如く、操作装置26の操作、遠隔操作、自動運転機能に基づく操作指令等が含まれてよい。
【0102】
具体的には、判定部301は、操作圧センサ29の出力、或いは、操作信号に基づき、操作装置26の操作の内容を把握してよい。また、判定部301は、通信装置60を通じて管理装置200から受信される遠隔操作信号に基づき、遠隔操作の内容を把握してよい。また、判定部301は、自動運転機能に関する制御装置(例えば、コントローラ30)により生成される操作指令を取得し、操作指令の内容を把握してよい。
【0103】
また、判定部301は、パイロットライン27の実際のパイロット圧に基づき、アタッチメントの操作の内容を把握してもよい。パイロットライン27の実際のパイロット圧は、パイロットライン27に設置される圧力センサにより検出され、その検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0104】
また、判定部301は、例えば、アタッチメントの姿勢状態の変化に基づき、アタッチメントが排出動作を行っているか否かを判定してもよい。
【0105】
具体的には、判定部301は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3の出力に基づき、アタッチメントの姿勢状態及びその変化を把握してよい。
【0106】
また、判定部301は、例えば、静的なブーム4の上げ方向の推力(以下、「静的ブーム推力」)と、動的なブーム4の上げ方向の推力(以下、「動的ブーム推力」)との偏差に基づき、アタッチメントが排出動作を行っているか否かを判定してもよい。静的ブーム推力は、アタッチメントの姿勢状態、アタッチメントの重心及び自重、並びにアタッチメントに作用する外力から導出される、アタッチメントの力のつり合い式に基づくブーム4の上げ方向の推力である。動的ブーム推力は、ブームシリンダ7のシリンダ圧の実際値(ブームシリンダ圧センサS7の検出値)に基づくブーム4の上げ方向の推力である。
【0107】
具体的には、判定部301は、静的なブーム推力に対して、動的なブーム推力が大きく低下した場合に、アタッチメントが排出動作を行っていると判定することができる。アタッチメントが排出動作を開始すると、後述の如く、バケット6やアーム5の開き動作によって、ブームシリンダ7に伸び方向の力が作用し、その結果、ブームシリンダ7のボトム側油室の圧力が相対的に大きく低下するからである(
図4、
図5参照)。
【0108】
また、判定部301は、例えば、撮像装置S6の撮像画像に基づき、アタッチメントの動作状態を把握することにより、アタッチメントが排出動作を行っているか否かを判定してもよい。
【0109】
また、制御実行条件には、アタッチメントの排出動作時にショベル100の挙動安定化に関する制御が実行される場面を更に限定するための条件(以下、「制御実行限定条件」)が含まれてもよい。制御実行限定条件の詳細については、後述する。
【0110】
安定化制御部302は、判定部301により全ての制御実行条件が成立していると判定される場合、ショベル100の挙動安定化に関する制御を行う。ショベル100の挙動安定化に関する制御の詳細は、後述する。
【0111】
<管理装置の構成>
図2に示すように、管理装置200は、制御装置210と、通信装置220と、入力装置230と、出力装置240とを含む。
【0112】
制御装置210は、管理装置200に関する各種制御を行う。制御装置210の機能は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。制御装置210は、例えば、CPU、RAM等のメモリ装置、ROM等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種入出力用のインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。制御装置210は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0113】
例えば、制御装置210は、通信装置220によりショベル100から受信される情報を取得し、データベースを構築したり、所定の加工を施して加工情報を生成したりする処理を行ってよい。
【0114】
また、例えば、制御装置210は、ショベル100の遠隔操作に関する制御を行う。制御装置210は、遠隔操作装置で受け付けられるショベル100の遠隔操作に関する入力の信号を取り込み、通信装置220を用いて、操作入力の内容、即ち、ショベル100の遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号をショベル100に送信してよい。
【0115】
通信装置220は、通信回線NWに接続し、管理装置200の外部(例えば、ショベル100)と通信を行う。
【0116】
入力装置230は、管理装置200の管理者や作業者等からの入力を受け付け、入力(例えば、操作入力、音声入力、ジェスチャ入力等)の内容を表す信号を出力する。入力の内容を表す信号は、制御装置210に取り込まれる。
【0117】
入力装置230には、例えば、遠隔操作装置が含まれてよい。これにより、管理装置200の作業者(オペレータ)は、遠隔操作装置を用いて、ショベル100の遠隔操作を行うことができる。
【0118】
出力装置240は、管理装置200のユーザに向けて各種情報を出力する。
【0119】
出力装置240は、例えば、視覚的な方法で管理装置200のユーザに各種情報を出力する照明装置や表示装置を含む。照明装置は、例えば、警告ランプ等を含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を含む。また、出力装置240は、聴覚的な方法で管理装置200のユーザに各種情報を出力する音出力装置を含む。音出力装置は、例えば、ブザーやスピーカ等を含む。
【0120】
表示装置は、管理装置200に関する各種情報画像を表示する。表示装置は、例えば、遠隔操作用表示装置を含んでよく、遠隔操作用表示装置には、制御装置210の制御下で、ショベル100からアップロードされるショベル100の周囲の画像情報(周囲画像)等が表示されてよい。これにより、管理装置200のユーザ(オペレータ)は、遠隔操作用表示装置に表示されるショベル100の周囲の画像情報を確認しながら、ショベル100の遠隔操作を行うことができる。
【0121】
[アタッチメントの排出動作時のショベルの挙動]
次に、
図4~
図6を参照して、アタッチメントの排出動作時のショベル100の挙動について説明する。
【0122】
図4は、ショベル100の排出動作時の挙動を表す図である。具体的には、
図4は、ショベル100の排出動作時のブームシリンダ7のボトム側油室のシリンダ圧及び機体(上部旋回体3)のピッチング角(上部旋回体3の左右方向の軸回りの回転角)の時間変化を表すグラフ410,420を含む。
図5、
図6は、ショベル100の土砂DTをバケット6から外部に排出する排出動作時にブームシリンダ7及び機体のそれぞれに作用する力及びモーメントを表す図である。具体的には、
図5は、ショベル100の排出動作の開始時(
図4の時刻t1のとき)にブームシリンダ7及び機体のそれぞれに作用する力及びモーメントを表す図であり、
図6は、ショベル100の排出動作の開始後(
図4の時刻t2のとき)にブームシリンダ7及び機体のそれぞれに作用する力及びモーメントを表す図である。
【0123】
図5に示すように、アタッチメントの排出動作が開始されると、少なくともバケット6が開き方向に動作する。そのため、その反力がブーム4の上げ方向に作用し、ブームシリンダ7のロッドには、伸び方向の力F1が作用する。その結果、
図4(グラフ410)に示すように、アタッチメントの排出動作が開始される時刻t1からブームシリンダ7のボトム側油室のシリンダ圧が減少し、ブーム4の推力(動的ブーム推力)が低下する。また、ショベル100の機体(上部旋回体3)には、ブームシリンダ7に作用する伸び方向の力F1によって、後傾させる方向の力のモーメントM1が作用する。
【0124】
アタッチメントの排出動作の開始後、開始時にブームシリンダ7に作用する伸び方向の力F1によるロッドの変位に対して、ブームシリンダ7の内部の作動油がバネ要素として機能する。そのため、
図6に示すように、アタッチメントの排出動作の開始後、開始時に伸び方向に作用する力F1の揺り戻しで、縮み方向に力F2が作用する。その結果、
図4(グラフ410)に示すように、ブームシリンダ7のボトム側油室のシリンダ圧は、アタッチメントの排出動作の開始後、時刻t1と時刻t2との間で極小値に到達した後に上昇に転ずる。その後、ブームシリンダ7のボトム側油室のシリンダ圧は、時刻t2にて、アタッチメントの排出動作の開始前よりもある程度高い極大値に到達し、ブーム4の推力(動的ブーム推力)が排出動作の開始前より上昇する。また、ショベル100の機体(上部旋回体3)には、ブームシリンダ7に作用する縮み方向の力F2によって、前傾させる方向の力のモーメントM2が作用する。その結果、
図4(グラフ420)に示すように、ショベル100の機体のピッチング角度が前傾方向(後部を浮き上がらせる方向)に変化する。
【0125】
このように、アタッチメントの排出動作が行われると、バケット6等の動作の反力による力F1と力F1に対する揺り戻しの力F2とがブームシリンダ7に作用する。そのため、伸び方向の力F1及び反対の縮み方向の力F2により振動が励起され、ショベル100(機体)に振動が発生する可能性がある。また、揺り戻しの力F2が過大になったり、振動の振幅が増幅され、揺り戻しの力F2と同じ縮み方向の力(ブームシリンダ7のボトム側油室のシリンダ圧)が過大になったりし、ショベル100が前方に転倒してしまう可能性もある。よって、本実施形態では、コントローラ30は、アタッチメントの排出動作時にショベル100の挙動安定化に関する制御、具体的には、ショベル100の振動や転倒等の動的な安定性の低下を抑制する制御を行う。
【0126】
[ショベルの挙動安定化の方法]
次に、
図7、
図8を参照して、ショベル100のアタッチメントによる排出動作時の挙動安定化の方法の具体例について説明する。
【0127】
<ショベルの挙動安定化の方法の第1例>
図7は、ショベル100の排出動作時の挙動安定化に関する構成の第1例を示す図である。
【0128】
図7に示すように、制御弁17Dは、パイロットライン27を通じて供給される作動油のパイロット圧によって、所定の中立位置を基準として、軸方向で両端部に向けて移動することが可能なスプール弁である。
【0129】
制御弁17Dは、パイロットポートP1,P2を含む。
【0130】
制御弁17Dは、パイロットポートP1,P2の何れにも作動油(パイロット圧)が供給されない状態で、軸方向の所定の中立位置で釣り合うように、軸方向の両端部から弾性体(例えば、バネ)により付勢されている。制御弁17Dは、スプールが中立位置にある場合、メインポンプ14とタンクとの間で作動油を循環させるセンタバイパス油路を連通させ、メインポンプ14とブームシリンダ7との間の油路及びブームシリンダ7とタンクとの間の油路を遮断する。
【0131】
パイロットポートP1は、制御弁17Dの軸方向の一端(図中の左端)に設けられ、ブームシリンダ7の伸び方向(ブーム4の上げ方向)の操作に対応するパイロットライン27に接続される。これにより、パイロットポートP1に供給される作動油によって、制御弁17Dは、中立位置を基準としてスプールを他端側に移動させ、ブーム4(ブームシリンダ7)の操作状態に合わせて、ブームシリンダ7のボトム側油室に作動油を供給し且つロッド側油室の作動油をタンクに排出させることができる。
【0132】
パイロットポートP2は、制御弁17Dの軸方向の他端(図中の右端)に設けられ、ブームシリンダ7の縮み方向(ブーム4の下げ方向)の操作に対応するパイロットライン27に接続される。これにより、パイロットポートP2に供給される作動油によって、制御弁17Dは、中立位置を基準としてスプールを一端側に移動させ、ブーム4(ブームシリンダ7)の操作状態に合わせて、ブームシリンダ7のロッド側油室に作動油を供給し且つボトム側油室から作動油をタンクに排出させることができる。
【0133】
また、
図7に示すように、本例では、ショベル100の油圧制御系は、制御弁70を含む。
【0134】
制御弁70は、メインポンプ14から吐出される作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に供給したり、ロッド側油室の作動油をタンクに排出したりすることができる。
【0135】
制御弁70は、二つの電磁ソレノイドS1,S2を含む。
【0136】
制御弁70は、電磁ソレノイドS1,S2の何れにも制御電流が印加されない状態で、軸方向の所定の中立位置で釣り合うように、軸方向の両端部から弾性体(例えば、バネ)により付勢されている。制御弁70は、スプールが中立位置にある場合、メインポンプ14とブームシリンダ7との間の作動油の経路を遮断し、且つ、ブームシリンダ7のロッド側油室とタンクとの間の作動油の経路も遮断する。
【0137】
電磁ソレノイドS1は、軸方向の一端(図中の左端)に設けられ、コントローラ30から印加される制御電流に応じて伸長し、中立位置を基準として、スプールを軸方向で一端から他端(図中の右側)に向けて移動させることが可能に構成される。
【0138】
制御弁70は、電磁ソレノイドS1に印加される制御電流によって、中立位置を基準として、スプールが一端から他端に向けて移動すると、メインポンプ14とブームシリンダ7との間の経路を連通させる。そして、制御弁70は、その開度に応じた流量の作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に供給する。
【0139】
電磁ソレノイドS2は、軸方向の他端に設けられ、コントローラ30から印加される制御電流に応じて伸長し、中立位置を基準として、スプールを軸方向で他端から一端に向けて移動させることが可能に構成される。
【0140】
制御弁70は、電磁ソレノイドS2に印加される制御電流によって、中立位置を基準として、スプールが他端から一端に向けて移動すると、ブームシリンダ7のロッド側油室とタンクとの間の経路を連通させる。そして、制御弁70は、その開度に応じた流量の作動油をブームシリンダ7のロッド側油室からタンクに排出させる。
【0141】
尚、制御弁70は、制御弁17Dの場合と同様に、軸方向の両端部のパイロットポートに供給される作動油でスプールが移動する形態であってもよい。この場合、制御弁70の2つのパイロットポートは、それぞれ、パイロットポンプ15から供給される作動油を用いて、コントローラ30からの制御電流に応じたパイロット圧の作動油を出力する2つの油圧制御弁(例えば、比例弁)に接続されてよい。
【0142】
安定化制御部302は、制御実行条件が成立すると、電磁ソレノイドS1に制御指令(制御電流)を出力する。これにより、コントローラ30は、制御弁70を用いて、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を保持した状態で、ブームシリンダ7のロッド側油室に作動油を供給することができる。そのため、ブームシリンダ7には、アタッチメントの排出動作の開始に伴ってロッドに作用する伸び方向のF1と、抗する方向の力DGが作用し、ブームシリンダ7のピストンロッド(ブーム4)の移動を抑制することができる。よって、コントローラ30は、力F1の揺り戻しの力F2の発生を抑制し、ショベル100の動的な安定性の低下、即ち、ショベル100の振動や前方への転倒等を抑制することができる。
【0143】
制御弁70からブームシリンダ7のロッド側油室に供給される作動油の流量は、例えば、ブームシリンダ7の負荷状態、即ち、排出動作の開始時にバケット6に収容されている収容物の重量を考慮して制御されてよい。バケット6の収容物の重量が大きくなる程、アタッチメントの排出動作の開始時のバケット6等の開き動作によってブーム4に作用する反力が大きくなるからである。即ち、安定化制御部302は、排出動作の開始時にバケット6に収容されている収容物の重量を考慮して制御指令値(制御電流値)を決定してよい。この場合、安定化制御部302は、例えば、アタッチメントの排出動作の開始直前のブームシリンダ7のボトム側油室の圧力に基づき、バケット6に収容されている収容物の重量を測定(推定)してよい。また、安定化制御部302は、撮像装置S6の撮像画像に基づき、バケット6の収容物を認識し、その重量を推定してもよい。
【0144】
制御弁70からブームシリンダ7のロッド側油室に供給される作動油の流量は、例えば、バケット6やアーム5の開き動作の速度や加速度を考慮して制御されてよい。バケット6やアーム5の速度や加速度が大きくなる程、アタッチメントの排出動作の開始時のバケット6等の開き動作によってブーム4に作用する反力が大きくなるからである。即ち、安定化制御部302は、バケット6やアーム5の開き動作の速度や加速度を考慮して、制御弁70の電磁ソレノイドS1に供給する制御指令値(制御電流値)を決定してよい。この場合、安定化制御部302は、例えば、アーム角度センサS2やバケット角度センサS3の出力に基づき、アーム5、バケット6の速度や加速度を取得してよい。また、安定化制御部302は、アーム5やバケット6の操作の内容(操作量)に基づき、アーム角度センサS2やバケット角度センサS3の出力に基づき、アーム5、バケット6の速度や加速度を推定してもよい。
【0145】
<ショベルの挙動安定化の方法の第2例>
図8は、ショベル100の排出動作時の挙動安定化に関する構成の第2例を示す図である。
【0146】
図8に示すように、本例では、安定化制御部302は、制御実行条件が成立すると、ブームシリンダ7の伸び方向の操作に対応する油圧制御弁31に制御指令(制御電流)を出力し、制御弁17DのパイロットポートP1に作動油を供給させる。これにより、コントローラ30は、アタッチメントの排出動作時に、制御弁17Dを用いて、ブームシリンダ7のボトム側油室に作動油を供給し、且つ、ロッド側油室の作動油をタンクに排出させることができる。そのため、コントローラ30は、アタッチメントの排出動作の開始に伴ってロッドに作用する伸び方向のF1と同じ方向にブームシリンダ7を積極的に移動させ、揺り戻しの力F2の発生を抑制することができる。よって、コントローラ30は、ショベル100の動的な安定性の低下、即ち、ショベル100の振動や前方への転倒等を抑制することができる。
【0147】
制御弁17Dからブームシリンダ7のボトム側油室に供給される作動油の流量は、例えば、上述の第1例の場合と同様、ブームシリンダ7の負荷状態、即ち、排出動作の開始時にバケット6に収容されている収容物の重量を考慮して制御されてよい。即ち、安定化制御部302は、排出動作の開始時にバケット6に収容されている収容物の重量を考慮して油圧制御弁31への制御指令値(制御電流値)を決定してよい。
【0148】
また、制御弁17Dからブームシリンダ7のボトム側油室に供給される作動油の流量は、例えば、上述の第1例の場合と同様、バケット6やアーム5の開き動作の速度や加速度を考慮して制御されてよい。即ち、安定化制御部302は、バケット6やアーム5の開き動作の速度や加速度を考慮して、油圧制御弁31に供給する制御指令値(制御電流値)を決定してよい。
【0149】
[ショベルの挙動安定化に関する制御方法]
次に、
図9~
図11を参照して、ショベル100の排出動作時の挙動安定化に関する制御処理の具体例について説明する。
【0150】
<制御方法の第1例>
図9は、ショベル100の排出動作時の挙動安定化に関する制御処理の第1例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、ショベル100の運転中、即ち、ショベル100の起動(例えば、キースイッチON)から停止(例えば、キースイッチOFF)までの間で、所定の制御周期ごとに繰り返し実行される。以下、
図10、
図11のフローチャートの処理についても同様であってよい。
【0151】
図9に示すように、ステップS102にて、判定部301は、アタッチメントが排出動作を行っているか否かを判定する。即ち、判定部301は、制御実行必須条件の成否を判定する。判定部301は、アタッチメントが排出動作を開始している場合、ステップS104に進み、それ以外の場合、今回のフローチャートを終了する。
【0152】
ステップS104にて、安定化制御部302は、挙動安定化のための制御指令値を演算する。安定化制御部302は、上述の
図7(第1例)の場合、制御弁70(電磁ソレノイドS1)への制御指令値(制御電流値)を演算し、上述の
図8(第2例)の場合、制御弁17DのパイロットポートP1に対応する油圧制御弁31への制御指令値(制御電流値)を演算する。
【0153】
コントローラ30は、ステップS104の処理が完了すると、ステップS106に進む。
【0154】
ステップS106にて、安定化制御部302は、ステップS104の演算結果に基づき、制御指令を制御弁70或いは制御弁17DのパイロットポートP1に対応する制御弁70に出力する。これにより、コントローラ30は、制御弁70或いは制御弁17Dを通じて、揺り戻しの力F2を抑制するように作動油をブームシリンダ7に供給することができる。
【0155】
コントローラ30は、ステップS106の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0156】
このように、本例では、コントローラ30は、アタッチメントの排出動作が行われる場合に、ブーム4の操作状態に関係なく、ブームシリンダ7に作動油を供給し、ショベル100の動的な安定性の低下(例えば、振動や前方への転倒)を抑制することができる。
【0157】
<制御方法の第2例>
図10は、ショベル100の排出動作時の挙動安定化に関する制御処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。
【0158】
図10に示すように、ステップS202は、
図9のステップS102の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0159】
コントローラ30は、ステップS202の処理が完了すると、ステップS204に進む。
【0160】
ステップS204にて,判定部301は、ブーム4の操作が行われているか否かを判定する。即ち、判定部301は、制御実行限定条件としての"ブーム4の操作が行われていないこと"が成立しているか否かを判定する。判定部301は、ブーム4の操作が行われていない場合、ステップS206に進み、ブーム4の操作が行われている場合、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0161】
ステップS206,S208の処理は、
図9のステップS104,S106と同じであるため、説明を省略する。
【0162】
コントローラ30は、ステップS208の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0163】
このように、本例では、コントローラ30は、アタッチメントの排出動作が行われている場合、ブーム4(ブームシリンダ7)の操作が行われていないときに限定して、ブームシリンダ7に作動油を供給することができる。これにより、例えば、オペレータがブーム4の操作を行っている状態で、ブーム4がその操作と異なる動作を行い、オペレータに違和感を与えるような事態を抑制することができる。そのため、本例では、オペレータの違和感を抑制しつつ、ショベル100の排出動作時における動的な安定性の低下を抑制することができる。
【0164】
<制御方法の第3例>
図11は、ショベル100の排出動作時の挙動安定化に関する制御処理の第3例を概略的に示すフローチャートである。
【0165】
図11に示すように、ステップS302は、
図9のステップS102の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0166】
コントローラ30は、ステップS302の処理が完了すると、ステップS304に進む。
【0167】
ステップS304にて、判定部301は、ショベル100(機体)に振動や転倒が発生する可能性が高いか否かを判定する。即ち、判定部301は、制御実行限定条件として、"ショベル100(機体)の動的な安定性の低下する可能性が高い状態であること"の成否を判定する。
【0168】
ショベル100(機体)の動的な安定性の低下する可能性が高い状態には、例えば、バケット6に所定基準を超える収容物が収容されている状態、換言すれば、アタッチメントに対する負荷が所定基準を超える状態が含まれる。バケット6に収容されている土砂等の収容物の重量が大きくなるほど、アタッチメントの排出動作(バケット6等の開き動作)によりブーム4に作用する反力が大きくなるからである。所定基準は、例えば、ゼロより大きくてもよいし、ゼロであってよい。後者の場合、判定部301は、バケット6に少しでも収容物が収容されていれば、制御実行限定条件が成立していると判定する。
【0169】
また、ショベル100(機体)の動的な安定性の低下する可能性が高い状態には、例えば、バケット6やアーム5の速度や加速度が相対的に大きい(具体的には、所定基準より大きい)状態が含まれる。上述の如く、バケット6やアーム5の開き動作の速度や加速度が大きくなるほど、アタッチメントの排出動作(バケット6等の開き動作)によりブーム4に作用する反力が大きくなるからである。
【0170】
判定部301は、ショベル100(機体)に振動や転倒が発生する可能性が高い状態、即ち、動的な安定性が相対的に低下する可能性が高い状態である場合、ステップS306に進み、それ以外の場合、ステップS308に進む。
【0171】
ステップS306,S308は、
図9のステップS104,S106の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0172】
コントローラ30は、ステップS308の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0173】
このように、本例では、コントローラ30は、アタッチメントの排出動作が行われている場合、ショベル100(機体)の動的な安定性が相対的に低下する可能性が高いときに限定して、ブームシリンダ7に作動油を供給することができる。これにより、例えば、バケット6に何も収容物がなく、ショベル100(機体)に振動や転倒が発生する可能性が低い状況で、ブーム4が操作に依らず動作し、オペレータに違和感を与えるような事態を抑制することができる。そのため、本例では、オペレータの違和感を抑制しつつ、ショベル100の排出動作時における動的な安定性の低下を抑制することができる。
【0174】
<制御方法のその他の例>
上述の第2例及び第3例は、組み合わせられてもよい。
【0175】
具体的には、安定化制御部302は、
図10のステップS204及び
図11のステップS304に相当する制御実行限定条件の双方が成立する場合に、ステップS206,S208(ステップS306,S308)に相当する処理を行う形態であってもよい。この場合、ステップS202とステップS204との間、或いは、ステップS204とステップS206との間に、ステップS304と同様の判定処理が挿入されてよい。
【0176】
これにより、本例では、ショベル100は、上述の第2例及び第3例の双方の作用・効果を奏する。
【0177】
[作用]
次に、本実施形態に係るショベル100の作用について説明する。
【0178】
本実施形態では、ショベル100は、下部走行体1と下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるブーム4、ブーム4の先端に取り付けられるアーム5、及びアーム5の先端に取り付けられるバケットを含むアタッチメントと、ブーム4を駆動するブームシリンダ7と、を備える。そして、ショベル100は、アタッチメントがバケット6の収容物を外部に排出するための排出動作を行う場合、ブーム4の操作状態に関わらず、ブームシリンダ7に作動油を供給する。
【0179】
例えば、アタッチメントが排出動作を行う場合、アーム5やバケット6の開き動作の反力で、ブームシリンダ7に伸び方向の力が作用しその負荷が減少する一方、その後、その揺り戻しでブームシリンダ7に縮み方向の力が作用しその負荷が増加する。その結果、ブームシリンダの負荷(圧力)の増減によって、ブームシリンダ7の内部の作動油がバネ要素として作用し、アタッチメント全体が振動し、機体が振動したり、機体が転倒したりする可能性がある。
【0180】
これに対して、本実施形態では、ショベル100は、アタッチメントが排出動作を行う場合、ブーム4の操作状態に関わらず、ブームシリンダ7に作動油を供給することができる。そのため、ショベル100は、ブームシリンダ7に供給される作動油によって、ブームシリンダ7の負荷(圧力)の増減を抑制し、ショベル100の振動や転倒を抑制することができる。よって、ショベル100の動的な安定性を向上させることができる。
【0181】
また、本実施形態では、ショベル100は、動的な安定性の向上のために、ブームシリンダ7に作動油を供給する。そのため、ショベル100は、例えば、ブームシリンダ7の作動油を外部に排出し、バネ要素としての作動油の機能を抑制する方法のように、ブーム4の自重での下げ方向への動きを抑制することができる。よって、ショベル100の静的な安定性やショベル100の安全性をより向上させることができる。
【0182】
また、本実施形態では、ショベル100は、アタッチメントが排出動作を行う場合、アタッチメントの排出動作によりブームシリンダ7に作用する伸び方向の力に起因するブームシリンダ7の縮み方向への揺り戻し動作を抑制するように、ブームシリンダ7に作動油を供給してよい。
【0183】
これにより、ショベル100は、ブームシリンダ7の縮み方向への揺り戻し動作を抑制することで、ショベル100の動的な安定性の低下(例えば、振動や転倒の発生)の要因となるブームシリンダ7の負荷の増減を抑制することができる。
【0184】
また、本実施形態では、ショベル100は、アタッチメントが排出動作を行う場合、ブームシリンダ7のボトム側油室に作動油を供給すると共に、ブームシリンダ7のロッド側油室から作動油を排出させ、ブーム4を上げ方向に動かしてよい。
【0185】
これにより、ショベル100は、排出動作時のアーム5やバケット6の動作の反力としてブームシリンダ7に作用する伸び方向の力と同期するように、ブームシリンダ7の作動油を給排させ、ブーム4を上げ方向に動かすことができる。そのため、ショベル100は、ブームシリンダ7の縮み方向への揺り戻しの動作を抑制し、ショベル100の動的な安定性の低下の要因となるブームシリンダ7の負荷(圧力)の変動を抑制することができる。
【0186】
また、本実施形態では、ショベル100は、アタッチメントが排出動作を行う場合、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を保持した状態で、ロッド側油室に作動油を供給し、伸び方向の力に伴うブーム4の上げ方向への動きを抑制してよい。
【0187】
これにより、ショベル100は、ブームシリンダ7のロッド側油室だけに作動油を供給し、排出動作時のアーム5やバケット6の動作の反力としてブームシリンダ7に作用する伸び方向の力に対抗する抗力をブームシリンダ7に作用させることができる。そのため、ショベル100は、アタッチメントの排出動作の開始時のブームシリンダ7の動きを抑制し、結果として、ブームシリンダ7の縮み方向への揺り戻しの動作を抑制することができる。よって、ショベル100は、自機(ショベル100)の動的な安定性の低下の要因となるブームシリンダ7の負荷(圧力)の変動を抑制することができる。
【0188】
また、本実施形態では、ショベル100は、ブーム4の操作が行われていない状態で、アタッチメントが排出動作を行っている場合、ブームシリンダ7に作動油を供給してよい。
【0189】
これにより、ショベル100は、ブーム4の操作が行われていない状態に限定して、アタッチメントの排出動作に伴うブームシリンダ7への作動油の供給を行うことができる。そのため、ショベル100は、ショベル100の動的な安定性の低下を抑制しつつ、ブーム4の操作が行われている場合には、ブーム4の操作を優先し、操作に合わせたブーム4の動作を実現することができる。
【0190】
また、本実施形態では、ショベル100は、自機(ショベル100)の動的な安定性が低下する可能性が相対的に高い状態で、アタッチメントが排出動作を行っている場合、ブームシリンダ7に作動油を供給してよい。
【0191】
これにより、ショベル100は、実際にショベル100の振動や転倒等が発生する可能性が高い状態に限定して、アタッチメントの排出動作に伴うブームシリンダ7への作動油の供給を行うことができる。そのため、ショベル100は、アタッチメントの排出動作に伴う自機(ショベル100)の動的な安定性の低下を抑制しつつ、操作と関係なくブームシリンダ7に作動油が供給されることによるオペレータの違和感を抑制することができる。
【0192】
また、本実施形態では、ショベル100の動的な安定性が低下する可能性が相対的に高い状態には、バケット6に所定基準を超える収容物が収容されている状態が含まれてよい。
【0193】
これにより、ショベル100は、バケット6に多量の土砂等の収容物が収容され、アタッチメントの排出動作に伴うアーム5やバケット6の動作の反力が相対的に大きくなる傾向にある状況で、ブームシリンダ7に作動油を供給することができる。そのため、ショベル100は、具体的な状況に合わせて、動的な安定性の低下(例えば、機体の振動や転倒等)を抑制することができる。
【0194】
また、本実施形態では、ショベル100の動的な安定性が低下する可能性が相対的に高い状態には、アーム5及びバケット6の少なくとも一方の速度又は加速度が相対的に大きい状態が含まれてよい。
【0195】
これにより、ショベル100は、アタッチメントの排出動作時のアーム5やバケット6の速度や加速度が相対的に高く、アーム5やバケット6の動作の反力が相対的に大きくなる傾向にある状況で、ブームシリンダ7に作動油を供給することができる。そのため、ショベル100は、具体的な状況に合わせて、動的な安定性の低下を抑制することができる。
【0196】
また、本実施形態では、ショベル100は、アタッチメントが排出動作を行う場合、ブーム4の加速度、アーム5の加速度、及びバケット6の収容物によるアタッチメントの負荷状態に応じた流量の作動油をブームシリンダ7に供給してよい。
【0197】
これにより、ショベル100は、アタッチメントの排出動作時のアーム5及びバケット6の加速度やバケット6の収容物によるアタッチメントの負荷状態に合わせて、ブームシリンダ7の負荷(圧力)の変動を抑制するために適切な流量な作動油を供給できる。
【0198】
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0199】
例えば、上述した実施形態では、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を全て油圧駆動する構成であったが、その一部又は全部が電動アクチュエータにより電気駆動される構成であってもよい。つまり、上述した実施形態で開示される構成等は、ハイブリッドショベルや電動ショベル等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0200】
1 下部走行体
1ML,1MR 走行油圧モータ
2A 旋回油圧モータ
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
13 レギュレータ
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
17 コントロールバルブ
17A~17F 制御弁
25,25A,25B,27,27A,27B パイロットライン
25V ゲートロック弁
30 コントローラ
31 油圧制御弁
33 油圧制御弁
50 出力装置
52 入力装置
60 通信装置
70 制御弁
100 ショベル
200 管理装置
301 判定部
302 安定化制御部
S1 ブーム角度センサ
S2 アーム角度センサ
S3 バケット角度センサ
S4 機体傾斜センサ
S5 旋回状態センサ
S6 撮像装置
S7 ブームシリンダ圧センサ
S8 アームシリンダ圧センサ
S9 バケットシリンダ圧センサ