(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】太陽電池デバイスの製造方法および太陽電池デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0747 20120101AFI20240718BHJP
【FI】
H01L31/06 455
(21)【出願番号】P 2020109326
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】淺谷 剛
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0162724(US,A1)
【文献】特表2017-509140(JP,A)
【文献】特開昭54-008992(JP,A)
【文献】特開2012-060018(JP,A)
【文献】国際公開第2010/064549(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/084159(WO,A1)
【文献】特開2008-235668(JP,A)
【文献】特開2019-121627(JP,A)
【文献】特開昭61-260681(JP,A)
【文献】特開2006-073815(JP,A)
【文献】特開2016-063159(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0021772(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大判半導体基板から、
裏面電極型の複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池デバイスを製造する方法であって、
前記大判半導体基板における前記太陽電池デバイスの形成領域における前記複数の太陽電池セルの形成領域の各々において、前記大判半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部に第1導電型半導体層を形成し、前記大判半導体基板の前記他方主面側の他の一部に第2導電型半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記複数の太陽電池セルの形成領域の間を分離する第1ダイシング工程と、
前記複数の太陽電池セルの形成領域の各々において、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の上に下地電極層を形成することによって、前記複数の太陽電池セルを得る下地電極層形成工程と、
前記複数の太陽電池セルのうちの隣り合う太陽電池セルにおいて、前記下地電極層の上に、前記第1ダイシング工程において形成された分離溝を跨いでめっき電極を形成することによって、前記複数の太陽電池セルを直列接続するめっき電極形成工程と、
前記太陽電池デバイスの形成領域を前記大判半導体基板から分離することによって、直列接続された前記複数の太陽電池セルを備える前記太陽電池デバイスを得る第2ダイシング工程と、
を備
え、
前記第1ダイシング工程の後であって前記下地電極層形成工程の前に、前記複数の太陽電池セルの形成領域の間の前記分離溝に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を更に備える、
太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層形成工程では、前記分離溝に絶縁材料を充填することによって、前記絶縁層を形成する、請求項
1に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層形成工程では、前記分離溝における前記大判半導体基板の側面、前記第1導電型半導体層の側面および前記第2導電型半導体層の側面を酸化させることによって、前記絶縁層を形成する、請求項
1に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層形成工程では、オゾン、過酸化水素、無機過酸化物、および有機過酸化物のうち少なくとも1つを含む酸化剤を用いる、請求項
3に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、添加剤として界面活性剤を含む、請求項
4に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第1ダイシング工程では、前記大判半導体基板の前記一方主面側からレーザを照射する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記大判半導体基板は、結晶シリコン材料を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記下地電極層は、Au、Ag、Cu、およびAlのうち少なくとも1つの金属材料を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記めっき電極は、Au、Ag、Cu、およびAlのうちいずれか1つの金属材料を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項10】
直列接続された
裏面電極型の複数の太陽電池セルを備える太陽電池デバイスであって、
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部に形成された第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の各々の上に形成された下地電極層とを各々備える前記複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルのうちの隣り合う太陽電池セルにおいて、前記下地電極層の上に、前記複数の太陽電池セルの間の分離溝を跨いで形成されており、前記複数の太陽電池セルを直列接続しためっき電極と、
前記複数の太陽電池セルの間の前記分離溝に形成された絶縁層と、
を備え、
前記絶縁層は、前記分離溝における前記半導体基板の側面、前記第1導電型半導体層の側面および前記第2導電型半導体層の側面を酸化させることによって形成されており、
前記隣り合う太陽電池セルにおける前記絶縁層は、離間して対向している、
太陽電池デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池デバイスの製造方法および太陽電池デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池デバイスを、ウェアラブル機器または腕時計等の小型の電子機器に搭載することが考案されている。このような太陽電池デバイスは、小型であるため、規定サイズ(例えば、6インチのセミスクエア形状)の大判半導体基板(Wafer)をダイシングして得られる。また、このような太陽電池デバイスでは、所定の電圧(例えば、リチウムイオン電池に対応する4V程度)まで昇圧するため、更に小型な複数の太陽電池セルに分割(ダイシング)した後、複数の太陽電池セルを直列接続する。特許文献1には、このような太陽電池デバイスの製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1には、太陽電池の製造方法であって、
・半導体基板の第1の表面上に金属配線構造体を形成する段階と、
・半導体基板を、半導体基板の反対側の第2の表面から、レーザを用いてスクライビングする段階と、
を備え、
・スクライビングは、金属配線構造体の複数の部分で停止され、複数の部分を第2の表面から露出させ、
・スクライビングする段階が、複数のサブセルを形成する段階を含み、複数のサブセルの各々は、半導体基板の個片化され、物理的に分離された部分を含み、部分は、個片化され、物理的に分離された半導体基板部分の隣接する部分同士の間に溝を有し、金属配線構造体は複数のサブセルのサブセル同士を結合する、
ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、特許文献1に記載の太陽電池デバイスの製造方法によれば、例えば裏面電極型(裏面接合型、バックコンタクト型ともいう。)の複数の太陽電池セルを備える太陽電池デバイスの裏面側に、太陽電池セルを跨いでインターコネクト(すなわち、接続部材。本発明のめっき金属に相当)を形成した後、レーザを用いて受光面側から太陽電池セルの間をダイシングする。これにより、太陽電池デバイスの製造方法の簡易化が可能であると考えられる。しかし、レーザダイシングの際に、インターコネクトにダメージが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、簡易化が可能であり、かつ、インターコネクト(めっき電極)のダメージを防止可能な太陽電池デバイスの製造方法および太陽電池デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池デバイスの製造方法は、大判半導体基板から、複数の裏面電極型の太陽電池セルが直列接続された太陽電池デバイスを製造する方法であって、前記大判半導体基板における前記太陽電池デバイスの形成領域における前記複数の太陽電池セルの形成領域の各々において、前記大判半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部に第1導電型半導体層を形成し、前記大判半導体基板の前記他方主面側の他の一部に第2導電型半導体層を形成する半導体層形成工程と、前記複数の太陽電池セルの形成領域の間を分離する第1ダイシング工程と、前記複数の太陽電池セルの形成領域の各々において、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の上に下地電極層を形成することによって、前記複数の太陽電池セルを得る下地電極層形成工程と、前記複数の太陽電池セルのうちの隣り合う太陽電池セルにおいて、前記下地電極層の上に、前記第1ダイシング工程において形成された分離溝を跨いでめっき電極を形成することによって、前記複数の太陽電池セルを直列接続するめっき電極形成工程と、前記太陽電池デバイスの形成領域を前記大判半導体基板から分離することによって、直列接続された前記複数の太陽電池セルを備える前記太陽電池デバイスを得る第2ダイシング工程と、を備える。
【0008】
本発明に係る太陽電池デバイスは、直列接続された複数の裏面電極型の太陽電池セルを備える太陽電池デバイスであって、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部に形成された第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の各々の上に形成された下地電極層とを各々備える前記複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルのうちの隣り合う太陽電池セルにおいて、前記下地電極層の上に、前記複数の太陽電池セルの間の分離溝を跨いで形成されており、前記複数の太陽電池セルを直列接続しためっき電極と、前記複数の太陽電池セルの間の前記分離溝に形成された絶縁層と、を備える。前記絶縁層は、前記分離溝における前記半導体基板の側面、前記第1導電型半導体層の側面および前記第2導電型半導体層の側面を酸化させることによって形成されており、前記隣り合う太陽電池セルにおける前記絶縁層は、離間して対向している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽電池デバイスの製造の簡易化が可能であり、かつ、インターコネクト(めっき電極)のダメージを防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る太陽電池デバイスを裏面側から示す図である。
【
図2】
図1に示す太陽電池デバイスにおけるめっき電極(インターコネクト)および電極層を省略して半導体層を示す図である。
【
図3】
図1および
図2に示す太陽電池デバイスにおけるIII-III線断面図である。
【
図4】
図1および
図2に示す太陽電池デバイスにおけるIV-IV線断面図である。
【
図5A】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における半導体層形成工程および透明電極層形成工程を示す図であって、大判半導体基板の裏面側を示す図である。
【
図5B】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における半導体層形成工程および透明電極層形成工程を示す図であって、
図5Aに示す大判半導体基板におけるデバイス形成領域を示す図である。
【
図5C】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における半導体層形成工程および透明電極層形成工程を示す図であって、
図5Bに示すデバイス形成領域のVC-VC線断面図である。
【
図5D】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における半導体層形成工程および透明電極層形成工程を示す図であって、
図5Bに示すデバイス形成領域のVD-VD線断面図である。
【
図6A】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における第1ダイシング工程を示す図であって、
図5Aに示す大判半導体基板におけるデバイス形成領域を示す図である。
【
図6B】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における第1ダイシング工程を示す図であって、
図6Aに示すデバイス形成領域のVIB-VIB線断面図である。
【
図7】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における絶縁層形成工程を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における下地電極層形成工程を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法におけるめっき電極形成工程を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における第2ダイシング工程を示す図である。
【
図11A】本実施形態の変形例1に係る太陽電池デバイスの断面図であって、
図1および
図2に示すIII-III線相当の断面図である。
【
図11B】本実施形態の変形例1に係る太陽電池デバイスの製造方法における絶縁層形成工程を示す図である。
【
図12】本実施形態の変形例2に係る太陽電池デバイスを裏面側から示す図である。
【
図13】
図1に示す太陽電池デバイスにおけるめっき電極(インターコネクト)および電極層を省略して半導体層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0012】
(太陽電池デバイス)
図1は、本実施形態に係る太陽電池デバイスを裏面側から示す図であり、
図2は、
図1に示す太陽電池デバイスにおけるめっき電極(インターコネクト)および電極層を省略して半導体層を示す図である。また、
図3は、
図1および
図2に示す太陽電池デバイスにおけるIII-III線断面図であり、
図4は、
図1および
図2に示す太陽電池デバイスにおけるIV-IV線断面図である。
図1~
図4、および後述する図面には、XY直交座標系が示されている。
【0013】
図1~
図4に示す太陽電池デバイス1は、ウェアラブル機器または腕時計等の小型の電子機器に搭載される。太陽電池デバイス1の形状としては、電子機器に要求される様々な形状が挙げられるが、以下では円形状の例について説明する。太陽電池デバイス1は、複数の太陽電池セル2と、複数のめっき電極(インターコネクト)3と、複数の絶縁層4とを備える。
【0014】
図2に示すように、太陽電池セル2は、円形状の基板(ウェハ)をX方向に分割した形状であって、Y方向に延びる帯状をなす。太陽電池セル2は、裏面電極型(裏面接合型、バックコンタクト型ともいう。)であってヘテロ接合型の太陽電池である。太陽電池セル2には、Y方向に交互に形成された第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とを備える。太陽電池セル2の詳細は後述する。
【0015】
めっき電極3は、めっき法を用いて形成されたインターコネクト(すなわち、接続部材)である。めっき電極3は、複数の太陽電池セル2を直列に接続する。具体的には、
図1および
図2に示すように、めっき電極3は、隣り合う太陽電池セル2,2において、一方の太陽電池セル2の第1導電型半導体層25と、他方の太陽電池セル2の第2導電型半導体層35とを接続する。
【0016】
絶縁層4は、隣り合う太陽電池セル2の間に配置されている。以下では、太陽電池セル2について説明する。
【0017】
(太陽電池セル)
図1~
図4に示すように、太陽電池セル2は、2つの主面を備える半導体基板11を備える。以下では、半導体基板11の主面のうちの受光する側の主面を受光面(一方主面)とし、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の主面(他方主面)を裏面とする。
【0018】
太陽電池セル2は、半導体基板11の受光面側に順に積層されたパッシベーション層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池セル2は、半導体基板11の裏面側の一部に順に積層されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池セル2は、半導体基板11の裏面側の他の一部に順に積層されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0019】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。なお、半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板であってもよい。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0020】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0021】
パッシベーション層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。パッシベーション層23は、半導体基板11の裏面側の一部に形成されている。パッシベーション層33は、半導体基板11の裏面側の他の一部に形成されている。パッシベーション層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料を主成分とする材料で形成される。パッシベーション層13,23,33は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0022】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側およびパッシベーション層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0023】
第1導電型半導体層25は、半導体基板11の裏面側のパッシベーション層23上に形成されている。一方、第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側のパッシベーション層33上に形成されている。第2導電型半導体層35の一部は、隣接する第1導電型半導体層25の一部の上にパッシベーション層33を介して重なっていてもよい(図示省略)。
【0024】
第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型の半導体層である。
【0025】
第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型の半導体層である。なお、第1導電型半導体層25がn型の半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型の半導体層であってもよい。
【0026】
第1導電型半導体層25の面積と第2導電型半導体層35の面積とは同等であると好ましい。これにより、電流容量を揃えることができる。
【0027】
第1電極層27は、半導体基板11の裏面側の第1導電型半導体層25上に形成されている。一方、第2電極層37は、半導体基板11の裏面側の第2導電型半導体層35上に形成されている。
【0028】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に積層された透明電極層28および下地電極層29を有する。一方、第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層38および下地電極層39を有する。
【0029】
透明電極層28,38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、IWO(Indium Tungsten Oxide: 酸化インジウムおよび酸化タングステンの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0030】
下地電極層29,39は、金属材料で形成される。下地電極層29,39は、上述しためっき電極3の下地電極(シード電極)として機能する。
【0031】
(太陽電池デバイスの製造方法)
以下では、
図5A~
図5D,
図6Aおよび
図6B、および
図7~
図10を参照して、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法について説明する。
図5A~
図5Dは、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における半導体層形成工程および透明電極層形成工程を示す図であり、
図5Aは、大判半導体基板の裏面側を示す図であり、
図5Bは、
図5Aに示す大判半導体基板におけるデバイス形成領域を示す図であり、
図5Cは、
図5Bに示すデバイス形成領域のVC-VC線断面図であり、
図5Dは、
図5Bに示すデバイス形成領域のVD-VD線断面図である。また、
図6Aおよび
図6Bは、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における第1ダイシング工程を示す図であり、
図6Aは、
図5Aに示す大判半導体基板におけるデバイス形成領域を示す図であり、
図6Bは、
図6Aに示すデバイス形成領域のVIB-VIB線断面図である。また、
図7は、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における絶縁層形成工程を示す図であり、
図8は、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における下地電極層形成工程を示す図である。また、
図9は、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法におけるめっき電極形成工程を示す図であり、
図10は、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における第2ダイシング工程を示す図である。
【0032】
まず、
図5Aに示すように、規定サイズ(例えば6インチのセミスクエア形状)の大判半導体基板11における太陽電池デバイス1の形成領域(以下、デバイス形成領域ともいう。)R1に、半導体層を形成する。具体的には、
図5Bに示すように、デバイス形成領域R1における太陽電池セル2の形成領域(以下、セル形成領域ともいう。)R2に、半導体層を形成する。より具体的には、
図5Cおよび
図5Dに示すように、セル形成領域R2において、大判半導体基板11の裏面側の一部にパッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成し、大判半導体基板11の裏面側の他の一部にパッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。
【0033】
例えば、CVD法またはPVD法を用いて、大判半導体基板11の裏面側にパッシベーション層材料膜および第1導電型半導体層材料膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術または印刷技術を用いて生成するレジスト、またはメタルマスク、を利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25をパターニングしてもよい。
【0034】
同様に、例えば、CVD法またはPVD法を用いて、大判半導体基板11の裏面側にパッシベーション層材料膜および第2導電型半導体層材料膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術または印刷技術を用いて生成するレジスト、またはメタルマスク、を利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35をパターニングしてもよい。
【0035】
p型半導体層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えばオゾンを含有するフッ酸、または硝酸とフッ酸の混合液のような酸性溶液が挙げられ、n型半導体層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ性溶液が挙げられる。
【0036】
または、CVD法またはPVD法を用いて、大判半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第1導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0037】
同様に、CVD法またはPVD法を用いて、大判半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第2導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0038】
なお、この半導体層形成工程において、大判半導体基板11の受光面側に、パッシベーション層13および光学調整層15を形成してもよい。
【0039】
次に、第1導電型半導体層25上に透明電極層28を形成し、第2導電型半導体層35上に透明電極層38を形成する(透明電極層形成工程)。例えば、上述同様に、CVD法またはPVD法を用いて、大判半導体基板11の裏面側に透明電極材料膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術または印刷技術を用いて生成するレジスト、またはメタルマスク、を利用したエッチング法を用いて、透明電極層28,38をパターニングしてもよい。
【0040】
なお、透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸や硫酸、硝酸のような酸性溶液が挙げられる。
【0041】
または、CVD法またはPVD法を用いて、大判半導体基板11の裏面側に透明電極層28,38を積層する際に、マスクを用いて、透明電極層28,38の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0042】
次に、
図6Aおよび
図6Bに示すように、例えばレーザを用いて、セル形成領域R2の間におけるダイシングラインL1に沿ってダイシングを行うことにより、セル形成領域R2の間を分離する(第1ダイシング工程)。このとき、デバイス形成領域R1の外周はまだダイシングを行わない。これにより、セル形成領域R2は大判半導体基板11から分離されない。
【0043】
このとき、
図6Bの矢印L1に示すように、大判半導体基板11の受光面側からレーザを照射(入射)する。これにより、大判半導体基板11の裏面側に形成した半導体層、特にパッシベーション層23,33へのダメージを抑制することができ、太陽電池セル2の性能低下を抑制することができる。
【0044】
次に、
図7に示すように、セル形成領域R2の間の分離溝に絶縁層4を形成する(絶縁層形成工程)。例えば、セル形成領域R2の間の分離溝に絶縁材料を充填することによって、絶縁層4を形成する。絶縁材料としては、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、酸窒化珪素(SiON)、またはそれらの複合物等である無機材料や、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等の有機樹脂材料が挙げられる。
【0045】
これにより、太陽電池セル2間の絶縁を確保することができ、太陽電池セル2間のリーク電流を防止することができる。また、充填された絶縁層4が太陽電池セル2の支持体として機能し、例えば製造プロセス中における機械的なダメージが太陽電池セル2に作用することを軽減することができる。また、後のめっき電極形成工程におけるめっき液が太陽電池セル2間に浸透することを防止することができる。また、受光面からみたときに、めっき電極のぎらつきが防止され、意匠性が向上する。
【0046】
次に、
図8に示すように、透明電極層28上に下地電極層(金属電極層)29を形成し、透明電極層38上に下地電極層(金属電極層)39を形成する。(下地電極層形成工程:金属電極層形成工程)。これにより、第1電極層27、第2電極層37が形成され、セル形成領域R2に太陽電池セル2が形成される。
【0047】
下地電極層29,39は、Au、Ag、Cu、Alのうち少なくとも1つの金属材料を含む。これにより、下地電極層29,39は、酸に耐性を有し、かつ、導電性に優れた特性を有する。下地電極層29,39の形成方法としては、例えばスパッタリング等のPVD法が用いられる。
【0048】
次に、
図9に示すように、めっき法を用いて下地電極層29,39上にめっき電極3を形成する。具体的には、隣り合う太陽電池セル2,2において、第1ダイシング工程において形成された分離溝を跨いで、めっき電極(接続部材)3を形成する(めっき電極形成工程:接続部材形成工程:)。これにより、太陽電池セル2が直列接続される。
【0049】
めっき電極3は、Au、Ag、Cu、Alのうちいずれか1つの金属材料を含む。これにより、めっき電極3は、汎用性が高く、かつ、導電率が高い。また、めっき電極3は、柔軟性が高い。
【0050】
次に、
図10に示すように、例えばレーザを用いて、デバイス形成領域R1の外周におけるダイシングラインL2に沿ってダイシングを行うことにより、デバイス形成領域R1を大判半導体基板11から分離する(第2ダイシング工程)。これにより、直列接続された複数の太陽電池セル2を備える太陽電池デバイス1が形成される。
以上の工程により、
図1~
図4に示す本実施形態の太陽電池デバイス1が得られる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池デバイスの製造方法によれば、複数の太陽電池セル2をめっき電極(インターコネクト)3によって直列接続するめっき電極形成工程の後に、太陽電池デバイス1を大判半導体基板11から分離する第2ダイシング工程を行う。これにより、特許文献1と同様に、太陽電池デバイスの製造方法の簡易化が可能である。
【0052】
しかし、特許文献1のように、めっき電極形成工程の後のダイシング工程において、太陽電池セル2の分離も行うと、例えばレーザダイシングの際に、めっき電極(インターコネクト)にダメージが生じる可能性がある。例えば、めっき電極(インターコネクタ)が溶解したり、変質したりする可能性がある。その結果、リーク電流が増加する可能性がある。
【0053】
ウェアラブル機器または腕時計等の小型の電子機器に搭載される太陽電池デバイスでは、屋外の高照度環境(AM1.5 1Sun相当)のみならず、屋内等の低照度環境(AM1.5 0.001Sun相当)下でも発電が要求される。このような低照度環境下では、リーク電流の増加は大きな問題となる。
【0054】
この点に関し、本実施形態の太陽電池デバイスの製造方法によれば、めっき電極形成工程の前に、複数の太陽電池セル2の間を分離する第1ダイシング工程を行う。これにより、これにより、太陽電池デバイスの製造方法の簡易化を可能としつつ、めっき電極(インターコネクト)のダメージを防止することができる。
【0055】
ところで、ウェアラブル機器または腕時計等の小型の電子機器に搭載される太陽電池デバイスでは、電子機器に搭載されたリチウムイオン電池を充電するため、4V以上と比較的に高い電圧が要求される。そのため、このような太陽電池デバイスとしては、効率は低いが容易に製造可能な薄膜シリコン系の太陽電池セルが用いられることが多かった。本願発明者(ら)は、このような太陽電池デバイスとして、効率は高いが電圧が低い結晶シリコン系の太陽電池セルを用いることを考案している。結晶シリコン系の太陽電池セルでも、インターコネクトで複数の太陽電池セルを直列接続することにより、所定の電圧(例えば、リチウムイオン電池に対応する4V程度)まで昇圧することが可能である。本実施形態の太陽電池デバイスの製造方法は、結晶シリコン系の太陽電池セルを備える太陽電池デバイスの製造に好適である。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【0057】
(変形例1)
図11Aは、本実施形態の変形例1に係る太陽電池デバイスの断面図であって、
図1および
図2に示すIII-III線相当の断面図である。
図11Aに示す変形例1の太陽電池デバイス1は、
図3に示す太陽電池デバイス1において、絶縁層4の構成が異なる。
【0058】
図11Bは、本実施形態の変形例1に係る太陽電池デバイスの製造方法における絶縁層形成工程を示す図である。変形例1の太陽電池デバイスの製造方法は、上述した太陽電池デバイスの製造方法において、
図7に示す絶縁層形成工程に代えて、
図11Bに示す絶縁層形成工程を備える。
【0059】
図11Bに示すように、絶縁層形成工程では、セル形成領域R2の間の分離溝における大判半導体基板11の側面、パッシベーション層13,23,33の側面、第1導電型半導体層25の側面、第2導電型半導体層35の側面、透明電極層28,38の側面、および光学調整層15の側面を酸化させることによって、絶縁層4を形成してもよい。これにより、分離溝では、隣り合うセル形成領域R2、すなわち隣り合う太陽電池セルの絶縁層4は離間して対向し、空間が形成されることとなる。
【0060】
これにより、セル形成領域R2の間の分離溝における側面に、酸化珪素(SiO)からなる絶縁層4が形成される。これにより、太陽電池セル2間の絶縁を確保することができ、太陽電池セル2間のリーク電流を防止することができる。また、後のめっき電極形成工程におけるめっき液に対して、太陽電池セル2の間の分離溝における側面のバリア性を高めることができる。また、別途、絶縁材料を準備する必要がない。
【0061】
例えば、毛細管現象を利用して、セル形成領域R2の間の分離溝に、酸化剤を注入する。酸化剤としては、オゾン、過酸化水素、無機過酸化物、および有機過酸化物のうち少なくとも1つを含む酸化剤が挙げられる。これらの酸化剤によれば、比較的に安全である。
【0062】
酸化剤は、添加剤として界面活性剤を含んでもいてもよい。これによれば、酸化剤の表面張力を調整することができ、セル形成領域R2の間の分離溝に酸化剤を浸透させやすくすることができる。
【0063】
(変形例2)
図12は、本実施形態の変形例2に係る太陽電池デバイスを裏面側から示す図であり、
図13は、
図12に示す太陽電池デバイスにおけるめっき電極(インターコネクト)および電極層を省略して半導体層を示す図である。
図12および
図13に示す変形例2の太陽電池デバイス1は、
図1および
図2に示す太陽電池デバイス1において、主に太陽電池セル2の構成が異なる。
【0064】
図13に示すように、太陽電池セル2は、円形状の基板(ウェハ)を放射状に分割した形状であって、扇形状をなしてもよい。太陽電池セル2には、中心から外周に向かう方向に交互に形成された第1導電型半導体層25(および、パッシベーション層23、第1電極層27)と、第2導電型半導体層35(および、パッシベーション層33、第2電極層37)とを備える。なお、第1導電型半導体層25の面積と第2導電型半導体層35の面積とは同等であると好ましい。これにより、電流容量を揃えることができる。また、太陽電池セル2が放射状に分割すると、例えば時計といった電子機器に太陽電池デバイス1が搭載される場合、時計の針による影の影響を抑えることができる。
【0065】
図12および
図13に示すように、めっき電極3は、隣り合う太陽電池セル2,2において、一方の太陽電池セル2の第1導電型半導体層25と、他方の太陽電池セル2の第2導電型半導体層35とを接続することによって、複数の太陽電池セル2を直列に接続する。絶縁層4は、隣り合う太陽電池セル2の間に配置されている。
【0066】
上述した実施形態の太陽電池の製造方法は、このような変形例2の太陽電池デバイス1の製造方法にも適用可能である。
【0067】
(その他の変形例)
また、上述した実施形態および変形例では、大判半導体基板11から複数の太陽電池デバイス1を切り出す製造方法の例を示したが、本発明はこれに限定されず、大判半導体基板11から、1つ以上の太陽電池デバイス1を切り出す製造方法に適用可能である。
【0068】
また、上述した実施形態および変形例では、複数の太陽電池セル2が直接接続された太陽電池デバイス1の製造方法を例示したが、本発明はこれに限定されず、2つ以上の太陽電池セル2が直接接続された太陽電池デバイス1の製造方法に適用可能である。
【0069】
また、上述した実施形態および変形例では、結晶シリコン材料を用いた太陽電池セル2を備える太陽電池デバイス1の製造方法を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、種々の材料を用いた太陽電池セルを備える太陽電池デバイスの製造方法に適用可能である。
【0070】
また、上述した実施形態および変形例では、ヘテロ接合型の太陽電池セル2を備える太陽電池デバイス1の製造方法を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、ホモ接合型等の種々の太陽電池セルを備える太陽電池デバイスの製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 太陽電池デバイス
2 太陽電池セル
3 めっき電極(インターコネクト)
4 絶縁層
11 大判半導体基板(半導体基板)
13,23,33 パッシベーション層
15 光学調整層
25 第1導電型半導体層
27 第1電極層
28,38 透明電極層
29,39 下地電極層(金属電極層)
35 第2導電型半導体層
37 第2電極層
L1 第1ダイシングライン
L2 第2ダイシングライン
R1 デバイス形成領域
R2 セル形成領域