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特許7522597患者に電気外科的処置を実施するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】患者に電気外科的処置を実施するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020118393
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2021016784
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】19187086
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ビーバー
(72)【発明者】
【氏名】オヴィディウ・ジュルジュト
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/068105(WO,A1)
【文献】特開昭57-185848(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第03238123(DE,A1)
【文献】特表2019-514448(JP,A)
【文献】米国特許第04231372(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科的処置を患者に施すための外科の装置であって、
処置電圧を生成するジェネレータ(20)と、前記ジェネレータ(20)を制御する制御装置(23)とを備える機構(15)と、
少なくとも1つの電極(18)を備え、前記ジェネレータ(20)と接続されている器具(14)と、
患者(11)に装着され、前記患者(11)の動きを検知するセンサ(27)であって、前記制御装置(23)に接続されているセンサ(27)と、
前記センサ(27)によって提供される信号に基づいて、前記ジェネレータ(20)を制御する信号評価装置(26)と、を備え、
前記センサ(27)は、変位センサまたは加速度センサであり、
前記信号評価装置(26)は、前記センサ(27)から供給される信号(S)が第1の閾値(sw)を超過した場合に警告信号を生成し、前記信号(S)が第2の閾値(sa)を超過した場合に前記ジェネレータの電源を切るためのスイッチオフ信号を生成するために、少なくとも2つの閾値(sa、sw)に関する前記信号(S)をモニターするように構成され、
前記警告信号が生成されることで、聴覚的な信号、光信号、または触覚信号が出力される、
装置。
【請求項2】
前記信号評価装置(26)は、前記センサ(27)によって提供される信号に基づいて、前記ジェネレータのスイッチをオフすることで、前記ジェネレータの電源を切ることを特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記センサ(27)は、前記患者(11)の末端に装着されるアタッチメント装置(32)を備え、
前記末端は、前記患者(11)の足または脚であり、
前記アタッチメント装置(32)は、前記患者(11)の皮膚に付着するために接着剤でコーティングされた粘着領域または前記患者(11)の末端を取り巻く付着帯である、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記信号評価装置(26)は、定義された持続時間の間、スイッチオフ信号を生成することで、定義された持続時間の間、前記ジェネレータの電源を切るように構成されることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ジェネレータ(20)は、前記器具(14)が備える中性極(19)に接続され、
前記中性極(19)は、前記電極(18)から前記患者(11)に流れる電流を受け取り前記ジェネレータ(20)に当該電流を流す、
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に泌尿器学において、患者に電気外科的処置を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外科的処置、特に電気外科的処置において、高周波電流が用いられているにも関わらず、神経筋の刺激が生じる。これは、高周波電流の周波数が、臨界極限である100kHzという限度を超えた場合にも生じる。特に、それは、泌尿器学における、前立腺の経尿道的な電気切除および同様に膀胱の経尿道的な電気切除と、婦人科学における子宮鏡検査的で経頸管的な切除とに関連している。この分野での神経筋の刺激は、閉鎖筋の神経の刺激と、それと共に、激しい、脚の閉殻筋収縮とをもたらす。これらの収縮は、患者に制御不能な動きをもたらす。例えば、膀胱壁穿孔の危険を伴う、彼または彼女の膀胱に導入される器具である。この問題に関する豊富な文献が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】オッツァー・K、ホルサナリ・MO、ゴルゲル・SN他、「膀胱癌のモノポーラの経尿道的な摘出よりも血漿キニンの経尿道的な摘出に閉鎖筋反射のための続発性の膀胱損傷がより多くみられる」中央ヨーロッパ泌尿器学ジャーナル、2015年、第68号、pp.284-288
【文献】フェレイ・J、オーティエ・P、ボニオール・M他、「2006年のヨーロッパにおける癌発生率および死亡率の推定」腫瘍学紀要、2007年、第18号、pp.581-592
【文献】コーシュ・I、ドーン・C、ヨチャム・D、「近年の検出と非筋侵襲性膀胱癌の治療の改善」抗癌療法専門家報告、2006年、第6号、pp.1301-1311
【文献】デサンティス・CE、リン・CC、マリオット・AB他、「2014年の癌治療および生存率の統計」、2014年、臨床医のための癌ジャーナル、第64号、pp.252-271
【文献】アース-エン・MK、ランゲブレケ・A、フ-デリスト・G、「子宮検査鏡手術の合併症は、防ぐことが可能か?」、スカンジナビア産婦人科会報、2017年、第96号、pp.1399-1403
【文献】シュルマン・MS、ベラヤパン・U、モナハン・TG他、「前立腺の経尿道的な電気蒸発の間に同時に起こる両側性の神経刺激」、臨床麻酔ジャーナル、1998年、第10号、pp.518-521
【文献】マゴラ・F、ロジン・R、ベンメナハン・Y他、「両側性の神経ブロック:技術評価」英国麻酔ジャーナル、1969年、第41号、pp.695-698
【文献】アタナソフ・PG、ワイス・BM、ブリル・SJ他、「1つのブロックに3分割する両側性の神経ブロック電気筋運動記録の比較」、麻酔鎮痛、1995年、第81号、pp.529―533
【文献】アタナソフ・PG、ワイス・BM、ブリル・SJ他「エチドカインまたはブピバカインの両側性の神経ブロックのモータブロックの特異な兆候の識別の記録可能性のある複合モータの作動」、麻酔鎮痛、1996年、第82号、pp.317-320
【文献】ボラット・D、アイドグドゥ・O、テクグル・ZT他、「短期間の成果における両側性の神経ブロックにガイドされた神経刺激機のインパクト、および、膀胱腫瘍の経尿道的な切除合併症:前向きランダム化比較研究」、カナダ泌尿器協会ジャーナル、2015年、第9号、E780-4
【文献】ホラミ・M、ハディ・M、ジェイビッド・A他、「失明と経尿道的な膀胱がんの切除における両側性の神経ブロックによってガイドされた神経刺激との比較」、内視鏡泌尿器科学ジャーナル、2012年、第26号、pp,1319-1322
【文献】ブルガー・M、ヴィーランド・W-F著、ホフマン・R編「膀胱の経尿道的切除(原題:Transurethrale Resektion der Blase)」、内視鏡泌尿器科学(原題:Endoskopische Urologie)、ベルリン、ハイデルベルグ、スプリンガー・ベルリン・ハイデルベルグ、2009年、pp.151-163
【文献】グプタ・NP、サイニ・AK、ドグラ・PN他、「低出力設定での膀胱腫瘍の経尿道的な切除のための二極エネルギー:初体験」、国際英国泌尿器科学ジャーナル、2011年、第108号、pp.553-556
【文献】ビゼルト・J、ブルネトー・JM、リゴット・JM他、「アルゴンレーザーによる膀胱の表在性腫瘍の治療(原題:Traitement des tumeurs superficielles de vessie par laser Argon)」、ベルギカ泌尿器学会報、1989年、第57号、pp.697-701
【文献】アルスキバハ・M、メイ・F、トレイバー・U他、「前立腺の経尿道的高周波数電気外科の近年の改善」、国際英国泌尿器科学ジャーナル、2006年、第97号、pp.243-246
【文献】シオザワ・H、アイザワ・T、イトウ・T他、「新しい経尿道的な切除システム:生理的食塩水の環境下での手術が両側性の神経反射を排除する」、日本泌尿器科学、2002年、第168号、pp.2665-2667
【文献】ウェントノルダール・G、ハッカー・A、ライヒ・O他、「予想システム:内視鏡泌尿器科学的手法のための新しいバイポーラ切除装置:従来の切除鏡を用いた比較」、欧州泌尿器学、2004年、第46号、pp.586-590
【文献】ザオ・C、タン・K、ヤン・H他、「膀胱腫瘍の経尿道的切除におけるバイポーラ対モノポーラ:メタ分析」、内視鏡泌尿器学、2016年、第30号、pp.5-12
【文献】ベンカトラマニ・V、パンダ・A、マノジクマー・R他、「膀胱腫瘍の経尿道的切除におけるバイポーラ対モノポーラ:単一施設、パラレルアーム、ランダム化、比較対象試験」、泌尿器学ジャーナル、2014、第191号、pp.1703-1707
【文献】スギハラ・T、ヤスナガ・H、ホリグチ・H他「重篤な膀胱損傷を含む周術期における、モノポーラおよびバイポーラの膀胱腫瘍の経尿道的切除の成果比較:比較に基づくある母集団」、日本泌尿器科学、2014年、第192号、pp.1355-1359
【文献】マシュニ・J、ゴドイ・G、ハーラー・C他、「膀胱癌のプラズマ運動性バイポーラ切除前向き評価:モノポーラ切除および病理学知見の比較」、国際泌尿器科学および腎臓学、2014年、第46号、pp.1699-1705
【文献】バジュク・M、ボーレ・M他、「膀胱非筋肉侵襲性尿路上皮性癌腫の欧州泌尿器学協会ガイドライン、2016年更新」、欧州泌尿器学会、2017年、第71号、pp.447-461
【文献】ニューヨーク局所麻酔学校編、「閉塞筋神経ブロック」、2018年、インターネット(URL:https://www.nysora.com/obturator-nerve-block)
【文献】アタナソフ・PG、ワイス・BM、ブリル・SJ、「両側性の神経ブロックの2つの技術に追随するリドカインプラズマレベル」、臨床麻酔ジャーナル、1996年、第8号、pp.535―539
【文献】カキノハナ・M、タイラ・Y、サイトウ・T他、「膀胱腫瘍の経尿道的切除における両側性神経ブロック内転筋間アプローチ」、ベルギカ泌尿器科学会報、1995年、第63号、pp.51-54
【文献】デリベリオティス・C、アレクソプロウ・K、ピクラメノス・D他、「膀胱腫瘍の経尿道的切除における両側性神経ブロックの寄与」、ベルギカ泌尿器科学会報、1995年、第63号、pp.51-54
【文献】シュウィリック・R、ワインガルトナー・K、キスラー・GV他、「希釈エチドカイン溶液に対する特異な適応症としての両側性の反射神経の非活性化、1つのブロックを3分割する技術における反射神経の除去のための局所麻酔の適合性の考察(原題 : Die Ausschaltung des Obturatorius-Reflexes als spezifische Indikation fur verdunnte Etidocain-Losungen. Eine Untersuchung zur Eignung des Lokatanaesthetikums fur die Reflex-Elimination in der Technik des “3- in-1 blocks”」、局所麻酔、1990年、第13号、pp.6-10
【文献】ガスパリッヒ・JP、メイソン・JT、ベルガー・RE、「経尿道的切除の前の単純で明瞭な両側性神経ブロックのための神経刺激機の使用」泌尿器科学ジャーナル、1984年、第132号、pp.291-293
【文献】クイ・Y、チェン・H、リュウ・L他、「非筋肉侵襲的膀胱腫瘍のバイポーラおよびモノポーラの経尿道的切除の効果および安全性の比較:システマティックレビューおよびメタアナリシス」、腹壁内視鏡および先進外科技術ジャーナル、2016年、第26号、pp.196-202
【文献】アームストロング・IT、ジャドソン・M、ムニョス・DP他、「手を待つ:視覚運動の逆転に至るときの手の反応時間の割合における断続的な反応時間の増大」、人間神経科学のフロンティア、2013年、第7号、p.319
【文献】ドンダー・FC、「心理的プロセスのスピードについて」、心理学会報、1969年、第30号、pp.412-431
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、外科的リスクが低減された、患者への電気外科的処置を実行可能な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る装置は、電気外科的処置を患者に施すための外科の装置であって、処置電圧を生成するジェネレータと、前記ジェネレータを制御する制御装置とを備える機構と、少なくとも1つの電極を備え、前記ジェネレータと接続されている器具と、患者に装着されるため、および、前記患者の動きを検知するために構成され、前記制御装置に接続されているセンサと、を備える。
【0006】
本発明の外科の装置は、特に、患者への電気外科的処置に適する。例えば、経尿道的な膀胱の電気的切除、経尿道的な前立腺の電気的切除、または、大腿骨頸部の切除(TURB(Transurethral Resection Of The Bladder)、TURP(Transurethral Resection Of The Prostate)、または、TCR(Transservical Resection))を実行することである。器具が発する処置電圧を生成するためのジェネレータを持つ機構は、本発明の装置の一部を構成する。加えて、ジェネレータを制御するための制御装置は、器具が発する処置電圧を生成するためのジェネレータを持つ機構の一部を構成する。加えて、ジェネレータの制御は、少なくとも、ジェネレータ(例えばジェネレータが有するスイッチ)のオンまたはオフのスイッチングから成る。また、加えて、ジェネレータの制御は、切開、切除、または、凝固等のような外科モードの設定からも成る。異なる外科モードは、ジェネレータの異なる電圧を調整すること、および/または、ジェネレータにおける異なる電圧の変調によって達成される。例えば、電圧の変調は、パルス幅変調、周波数変調等である。
【0007】
患者に装着されるように設計され、患者の動きを検出するように設計されたセンサもまた、本装置の一部である。そして、センサは制御装置と接続されている。この際に、神経筋刺激によって引き起こされた筋収縮は、素早く認識され得、制御信号の生成に使用される。例えば、その際に、もし、患者の望ましくない動作が決定された場合、ジェネレータをスイッチオフすることができ、そうしない場合には、ジェネレータの動作に影響が出る。例えば、患者の望ましくない動きが決定された場合、制御装置は、ジェネレータの力を減少させるように構成され得、および/または、無線周波数電圧の調整を変更し、および/または、少なくとも一定の期間、または、持続的に、ジェネレータの電源を切る。
【0008】
患者の望ましくない動きが決定された場合に、ジェネレータのスイッチが素早く切られる場合、神経筋の刺激は素早く除去され得、また、筋収縮は、不安視されない程度に、特に危険でない量に、制限されうる。筋収縮が原因である膀胱壁穿孔、または、他の外科的合併症は、このように回避される。
【0009】
好ましくは、センサは、位置センサ、変位センサまたは加速度センサである。位置センサとして構成されたセンサによる信号出力は、突然の動きを示す信号を生成するために、適時に1回または複数回微分(時間微分)される。この際に、外科的結果に対して無害である、患者の緩慢なまたはわずかな動作のための望ましくないスイッチオフは、回避される。しかしながら、突然の単収縮または激しい動作は、初期に既に検知されている。センサは、信号評価装置によって評価され、ジェネレータのスイッチオフのために考慮されたそれぞれの信号を生成する。
【0010】
有利には、センサは、患者の末端、特に足または脚、例えば、彼の/彼女のふくらはぎに装着されうるアタッチメント装置からなる。適切な位置で患者の末端を取り巻く帯(付着帯)、または、アタッチメント装置として付着的に患者の肌に付属し得るセンサが提供する粘着領域は、アタッチメント装置に適する。
【0011】
有利には、制御装置は、センサによって提供される信号、または、そこから微分された信号を閾値で比較し、かつ、閾値を超過する場合、スイッチオフの信号を生成するように構成される信号評価装置からなる。
【0012】
信号評価装置は、信号処理装置を介してセンサからの信号が供給されてもよい。信号処理装置は、1つまたは複数のフィルタ(ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、または、バンドパスフィルタ)、線形、または、非線形のアンプ等を含みうる。
【0013】
信号評価装置は、閾値である超過量の検知に加えて、この閾値に到達する前に、警告信号を出力するように構成されうる。例えば、安全スイッチオフ等のスイッチオフに至らしめる第2の閾値が、例えば、11m/sという加速度でありうるのに対して、第1の閾値は、3m/sという加速度に設定されうる。
【0014】
制御装置は、スイッチオフ信号の生成の後に、ジェネレータを閉鎖するように、そして、手動でのリリースを要求するように、構成されうる。あるいは、制御装置は、定義された持続時間の間、例えば、3秒の間、スイッチオフ信号を生成するように構成することができる。この持続時間の間、オペレータは、彼/彼女が処理を進める方法を決定することができる。
【0015】
さらに、スイッチオフのための持続時間を調整できる調整装置を伴う制御装置を供給することが可能である。さらに、制御装置は、第1のおよび/または第2の閾値の調整のための入力装置を備えうる。加えて、制御装置は、センサから送信される信号を監視する制御装置の一部の停止のための調整装置を有する。
【0016】
好ましくは、スイッチオフ信号の出力は、遅れなしに、好ましくは、センサによって検知できる末端の筋肉運動の活動の開始の後の30ミリ秒未満、好ましくは20ミリ秒以内に行われる。困難な外科手術の場合でも、この短い持続時間に、筋収縮により初期化される末端の動きは、さらに外科医の手技が実質的に妨害されないくらい非常に小さい。
【0017】
本発明の装置は、カウンターまたは患者に装着された中性極を自身に有しないモノポーラ器具と同様に、患者のふくらはぎに配置された2つの電極棒を備えるバイポーラ器具でありうる。
【0018】
動きの検知、特に、患者の末端の加速度の検知または患者の例えばふくらはぎに配置された中性極における加速度の検知のためのセンサが取り付けられてもよい。
【0019】
本発明は、センサからの信号を評価するように構成されていない内部制御装置である機構と同じような機構として実現される。そのような機構において、制御装置の一部を構成する部分は、機構の外部に配置され得る。例えば、そのようなセンサと接続された部分は、起動スイッチ、一例としては足踏みスイッチ、または、器具に由来する起動コンダクタと機構の起動入力部とが接続された分割された筐体でありうる。
【0020】
発明の有利な実施例のさらなる詳細は、図面およびそれぞれに関する記載と同様に請求項に従う。図面は以下のことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態における、患者に対する装置の図である。
図2図2は、実施の形態における患者に対する器具の部分投影図である。
図3図3は、供給器具のための機構のブロック図である。
図4図4は、図3における機構の信号評価装置のブロック図である。
図5図5は、信号処理装置の概要を示す図である。
図6図6は、図1における患者の治療用に改良された器具を示す図である。
図7図7は、図1における患者に付属するセンサの側面図である。
図8図8は、センサの中性極の概要を示す平面図である。
図9図9は、信号評価装置の機能を示す図である。
図10図10は、本発明の装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、患者の体腔13において、例えば、泌尿生殖器系において実施される外科的処置の実施のために、患者11がテーブル12に支持される外科手術の状況を示す。このために、器具14は、供給機構15と接続された患者11に挿入される。例えば、器具14は、図2に示すように、その終端で剛性軸または可撓軸である軸17、および電極18を有するプローブ16である。それは、図示されるようなモノポーラ器具でありうる。この場合、電流を迂回させることができる、例えば、伝導性の絆創膏のように形成された中性極19が、患者11に接触している。中性極19は、器具14に備えられてもよい。
【0023】
機構15は、外科的処置を行なうことにふさわしい無線周波数電圧の出力に適しているジェネレータ20からなる。それは、好ましくは、特に100kHz以上の周波数で200V以上、典型的には100V以上の範囲である。無線周波数電圧は、非変調または変調、例えばパルス幅変調でありうる。図1に説明されるように、器具14の電極18は、導電体Lを介してジェネレータ20の出力と接続されている。中性極19は、コンダクタNを介して、ジェネレータ15の別の出力と接続されている。
【0024】
図3に説明されるように、ジェネレータ20は、無線周波数電力発振器であり、器具14のための供給電圧が変化可能にまたは他の態様で連結されている発振回路22を活性化するスイッチング要素21から成りうる。例えば、発振回路22を恒常的にあるいはパルス状に励振させるために、スイッチング要素21に対して作動する制御装置23は、ジェネレータ20を制御するために役立つ。電源、または制御装置23およびジェネレータ20に供給するそのほかの電源Pは、機構15の一部である。
【0025】
制御装置23は、少なくともジェネレータ20を起動または停止するように構成される。スイッチング要素21は、起動フェーズに連続的に開閉するのに対して、停止フェーズでは開放(非伝導性で)されたままである。
【0026】
制御装置23は、起動スイッチ25と接続された起動入力Iを有する起動ブロック24からなる。この起動スイッチ25は、望ましくは、手動で作動させられ得、例えば、足踏みスイッチまたは器具14におけるスイッチとして構成されうる。起動ブロック24は、停止ブロック26と接続された、禁止の入力0をさらに含む。停止ブロック26は、センサ27が接続される入力Eからなる。
【0027】
センサ27は位置センサ、または、好ましくは、特に加速度センサとして構成されうる。センサ27は、動きの電気的信号への転換に適する。特に、センサ27は、動きの速度または加速度に対応する信号の出力に適する。
【0028】
停止ブロック26は、図4でそれぞれ説明される。停止ブロック26は、信号評価装置の一例である。停止ブロック26は、例えば、センサ27から送信される信号を、例えば閾値供給器29によって提供されうる閾値saと比較するコンパレータ28を含みうる。コンパレータ28の出力で提供される信号は、センサ27からの信号の出力が閾値saより大きい場合を特徴づける。コンパレータ28の出力信号は、さらなる処理のために、例えば、ブロック30に供給されうる。このブロック30は、望まれるような追加の機能を満たし得る。そのような機能は次のとおりでありうる。それは、既定または調整可能な時間持続のための禁止信号の生成、リセット等までの間のスイッチオフ信号の永続的な生成である。例えば、リセット信号は、起動スイッチ25または個々のリセットスイッチによって提供されうる。
【0029】
オプションとして、図5に示す信号処理装置は、例えば、デジタル信号プロセッサDSPの形式で、センサ27と停止ブロックの入力Eとの間に配置されうる。それは、センサ27からの信号出力をフィルタリング、または他の処理を行うようにプログラムされうる。そのような信号処理はフィルタ・ブロック、アンプ・ブロック、パターン認識ブロックなどを含みうる。フィルタ・ブロックはローパスフィルタ、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタでありうる。アンプ・ブロックは、線形または非線形のアンプ・ブロックでありうる。
【0030】
ここまで記述された装置は以下のように動作する。
【0031】
図1に図示されていない外科医が、器具14を患者11の中に図示されるように挿入し、起動スイッチ25によって器具14を起動する。第1には、制御装置23がジェネレータ20の動作を許可するように、停止ブロック26は停止している。ジェネレータ20は、特に患者11の組織が作用を受ける電極18において、器具14に無線周波数電圧を出力する。中性極19は、患者に流れる電流を受け取り、ジェネレータ20にそれを流す。
【0032】
電極18から生じる電流が、患者11の著しい動きを引き起こしうる神経経路に入る場合、特に、閉鎖神経の近傍で、突然の脚体内転筋収縮が生じうる。直ちに、そのような動きの初期において、センサ27は動き、特に速度、または、動きの加速度を検知する。センサ27からの信号の出力が、閾値供給器29によって定義された閾値saを超過する場合、スイッチオフ信号が生成される。
【0033】
例えば、処理ブロック30が、モノ・フロップとして構成される場合、処理ブロック30は固定された持続時間または予め定義可能な持続時間のスイッチオフ信号を生成できる。持続時間は調整可能であってもよい。例えば、3秒間の間、その信号は、起動ブロック24の入力0に供給される。起動ブロック24は、それに従って、ジェネレータ20のスイッチを切る。ジェネレータ20のスイッチは切られ、ジェネレータ20は、処理ブロック30により定義された禁止期間に電圧をこれ以上出力しない。その際に、神経へのさらなる刺激、および、それによるより強い脚の動きは、効率的に禁じられる。確かに、治療過程は、この時点で少なくとも短期間中断される。しかし、患者11の突然の脚の動きによる損傷の実質的なリスクが回避される。その際に、さらに、短期間中断しない場合に生じうる術後合併症は有効に回避される。
【0034】
ここまで記述された発明の多数の変形例がありうる。上述および後述の実施例のすべてにおいて可能な最初の補足は、患者の末端の異なる位置または異なる四肢、特に患者11の両方の脚へ付けることができる、多数のセンサ27の使用である。この場合、2つ以上のセンサ27の信号は加算され、コンパレータ28の入力Eに供給される。さらに、個々の入力を備えた個々のコンパレータが、各センサ27に対応して設けられ、少なくとも1つのコンパレータがスイッチオフ信号(または接続信号)を供給する場合、スイッチオフが生じるように、これらのコンパレータの出力信号が論理上組み合わされうる。
【0035】
さらに、図10に示すように、機構15の外部に停止ブロック26が配置されうる。この場合、機構15の外部の停止ブロック26は、機構15の制御装置の一部33とみなされる。例えば、停止ブロック26は、起動スイッチ25の中に配置されてもよい。停止ブロック26は、上述された実施例のうちのいずれによっても構成され、1つ以上のセンサ27のモニタリングのために構成されうる。停止の場合には、例えば、起動ブロック24によって制御装置23の入力Iに供給される割込み信号または短絡信号でありうる。
【0036】
特に起動スイッチ25が器具14において配置される場合、停止ブロック26も器具14に配置されうる。その際に、センサ27が無線接続を介して停止ブロック26と接続されている場合、それは有利である。
【0037】
さらに別の変形例では、例えば、停止動作の場合に、ジェネレータ20に供給される短絡電圧のために、停止ブロック26は、ジェネレータ20のジェネレータ出力に接続されうる。あるいは、停止ブロック26は、器具14に統合されうる。
【0038】
センサ27は、個別に、図7に概略的に説明される。それは、無線センサとして構成され、自身が生成した信号を送信しうる。例えば、それは、移動速度または加速度を特徴づける信号であり、停止ブロック26へ無線によって送信される。あるいは、センサ27は、粘着領域であるアタッチメント装置32と、停止ブロック26の接続Eで接続されるケーブル31を備えうる。
【0039】
センサ27は、患者の皮膚に付着するために接着剤でコーティングされた粘着領域を備える。あるいは、付属の革ひもは、患者に結び付けられるセンサ27に付けられうる。
【0040】
さらに、例えば正しく患者に装着されていない、または患者から外れてしまったセンサ27を適時に識別してセンサ27の有効性を高めるために、センサ27によって供給される信号を時々または連続的にモニターすることが可能である。このために、上述の実施例のそれぞれは、センサ27からの信号出力と接続されたモニタリング・ブロックで補われうる。モニタリング・ブロックは、センサ27によって供給される信号がセンサ27のバックグラウンドノイズを超過し、患者11の遍在するミクロの動作を示す場合にのみ、センサ27によって供給される信号を有効な信号として分類するように構成されうる。そのような信号が、もはや受信されない場合、停止ブロック26はセンサ信号の無効を信号化してもよい。モニタリング・ブロックがそのような場合においてジェネレータ20を止める(禁じる)ことが規定されうる。
【0041】
図8に概略的に説明されるように、さらに、中性極19においてセンサ27を備えることが可能である。そのような解決法は、図2におけるモノポーラ器具に特に適している。
【0042】
しかしながら、さらに、図6に概略的に説明されるように、バイポーラ器具14′の使用は可能である。電極18、さらに、中性極19′は、この器具14′に装着されている。この場合、コンダクタLおよびNの両方は、器具14′からジェネレータ20まで導く。それとは別に、図8の中性極19について特に言及しないすべての実施例に従って、上記の記述内容が適用される。
【0043】
本発明のさらに別の変形例は、センサ信号の改良されたモニタリングである。例えば、センサ信号は、神経筋反応の存在に関して外科医に警告するために、停止のための閾値saだけでなく、さらにより低い閾値swと比較される。このために、図9はそれぞれの停止ブロック26の機能を説明する。それは、最初に信号Sをスイッチオフ用の閾値saと比較するように構成され、また、信号Sが到達すると、スイッチオフ信号が出力される。しかしながら、閾値saに達していない場合、信号Sはより低い閾値swと比較される。信号Sが閾値swに達していない場合、動作は行われない。しかしながら、信号Sが閾値swを超過しかつ閾値saを超過しない場合、警告信号が出力される。そのような信号は、聴覚的な信号、光信号、または、例えばハンドルの振動のような触覚信号であってもよい。ここに記述された少なくとも2つの閾値のモニタリングは、上述の本発明の装置の実施例のすべての中で採用されうる。
【0044】
上述の実施例のすべてにおいて、ジェネレータ20のスイッチオフ(例えばジェネレータ20の電源オフ)の代わりに、ジェネレータ20の電力削減、または、調整タイプの修正だけを実行することがさらに可能である。しかしながら、発明のすべての実施例に共通するのは、それが患者、好ましくはその末端の運動刺激を検知するように、また、検知された動きに基づくジェネレータ20の動作に従って、器具14の電極18の電圧は影響を受けるように、少なくとも1つのセンサ27が規定されるということである。そのように影響を及ぼすことは、特に、患者の動きの根拠である神経筋刺激を緩和する目的または除去する目的がある。
【0045】
本発明の外科の装置は、ジェネレータ20によって電力が供給される器具14およびジェネレータ20を備えた機構15からなる。さらに、センサ27は、患者および特に患者の末端の動きを検知するために手術中に患者および特にその末端に装着される装置の一部である。センサ27は、ジェネレータ20の動作を修正し、特に、閾値saを超過する患者11の動きを検知した場合、ジェネレータ20のスイッチを切る制御装置23と接続される。
【0046】
外科プロセスの間に不随意の単収縮によって生じうる患者11の損傷は、このように回避される。
【符号の説明】
【0047】
11 患者
12 テーブル
13 中空器官
14、14′ 器具
15 機構
16 プローブ
17 軸
18 電極
19、19′ 中性極
20 ジェネレータ
L、N コンダクタ
21 スイッチング素子
22 発振回路
23 制御装置
24 起動ブロック
I 起動入力
25 起動スイッチ
0 禁止入力
26 停止ブロック/信号評価装置
E 入力部
S センサ信号
27 センサ
28 コンパレータ
sa 第1の閾値(スイッチオフのための)
sw 第2の閾値(警告出力のための)
29 閾値供給器
30 処理ブロック
31 ケーブル
32 アタッチメント装置(粘着領域)
33 制御装置の一部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10