(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】温度推定装置、空気調和機、及び温度算出方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/64 20180101AFI20240718BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240718BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240718BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/63
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2020129410
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2021-06-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】繪本 詩織
(72)【発明者】
【氏名】西野 淳
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】鈴木 充
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174075(JP,A)
【文献】特開平8-189685(JP,A)
【文献】再公表特許第2008/087959(JP,A1)
【文献】特開2014-55742(JP,A)
【文献】特開2009-133499(JP,A)
【文献】特開2010-266090(JP,A)
【文献】特開2014-194290(JP,A)
【文献】特開2013-124809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F11/63-11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の対象者の環境情報を取得する取得部(11A)と、
前記取得部(11A)により取得された前記環境情報に基づいて、前記対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出する制御部(13)と
を備え、
前記環境情報は、前記対象者が過去に置かれた環境の気温である体験温度を含み、
前記取得部(11A)は、前記対象者について取得時間が異なる複数の前記体験温度を取得し、
前記制御部(13)は、取得時間が1時間以上異なる前記複数の体験温度に基づいて前記推定快適温度を算出することを特徴とする温度推定装置。
【請求項2】
請求項
1において、
前記制御部(13)は、取得時間が1日以上異なる前記複数の体験温度に基づいて前記推定快適温度を算出することを特徴とする温度推定装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2において、
前記環境情報と前記推定快適温度との相関を示す相関情報(12A)を記憶する記憶部(12)をさらに備え、
前記制御部(13)は、前記相関情報(12A)にさらに基づいて、前記推定快適温度を算出することを特徴とする温度推定装置。
【請求項4】
請求項
3において、
前記制御部(13)は、前記取得部(11A)により取得された前記対象者の複数の体験温度に基づいて代入値を算出し、前記代入値にさらに基づいて前記推定快適温度を算出することを特徴とする温度推定装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記推定快適温度は、前記代入値と正の相関を有することを特徴とする温度推定装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の温度推定装置(10)を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
特定の対象者の環境情報を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記環境情報に基づいて、前記対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出する算出工程と
を含み、
前記環境情報は、前記対象者が過去に置かれた環境の気温である体験温度を含み、
前記取得工程では、前記対象者について取得時間が異なる複数の前記体験温度が取得され、
前記算出工程では、取得時間が1時間以上異なる前記複数の体験温度に基づいて前記推定快適温度が算出されることを特徴とする温度算出方法。
【請求項8】
請求項
7において、
前記取得工程では、前記対象者に携帯された温度センサ(21)により気温を計測することで前記体験温度が取得されることを特徴とする温度算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度推定装置、空気調和機、及び温度算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の空気調和機は、制御装置と、暦記憶手段と、設定温度変更手段とを備える。制御装置は、外気温と室温と設定温度との関係に応じて、暖房、除湿及び冷房の運転モードを切り換える。設定温度変更手段は、暦記憶手段の暦に応じて設定温度を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、気温に対する感覚については個人差がある。例えば、冷房が効いた室内において、ある人物が最適な温度であると感じても、他の人物が温度が高すぎる又は低すぎると感じることがある。
【0005】
特許文献1に記載の空気調和機のように、暦に応じて設定温度が変更された場合、気温に対する感覚の個人差が考慮されないため、ユーザー(対象者)にとっては快適と感じる温度が設定温度とならない可能性があった。
【0006】
本開示の目的は、対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、温度推定装置(10)を対象とする。温度推定装置(10)は、対象者が過去に置かれた環境を表す値である環境情報を取得する取得部(11A)と、前記環境情報に基づいて、前記対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出する制御部(13)とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1の態様では、対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出することができる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記環境情報は、前記対象者が過去に置かれた環境の気温である体験温度を含むことを特徴とする。
【0010】
第2の態様では、推定快適温度を対象者の体験温度から算出することができる。
【0011】
本開示の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、前記環境情報と前記推定快適温度との相関を示す相関情報(12A)を記憶する記憶部(12)をさらに備え、前記制御部(13)は、前記相関情報(12A)にさらに基づいて、前記推定快適温度を算出することを特徴とする。
【0012】
第3の態様では、相関情報(12A)と対象者の体験温度とを用いて、対象者の推定快適温度を算出できる。
【0013】
本開示の第4の態様は、空気調和機(30)を対象とする。空気調和機(30)は、上記温度推定装置(10)を備えることを特徴とする。
【0014】
第4の態様では、空気調和機(30)が推定快適温度に基づいた処理を行うことができる。
【0015】
本開示の第5の態様は、温度算出方法を対象とする。温度算出方法は、対象者が過去に置かれた環境を表す値である環境情報を取得する取得工程と、前記環境情報に基づいて、前記対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出する工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
第5の態様では、対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出することができる。
【0017】
本開示の第6の態様は、第5の態様において、前記環境情報は、前記対象者が過去に置かれた環境の気温である体験温度を含み、前記取得工程では、前記対象者に携帯された温度センサ(21)により気温を計測することで前記体験温度が取得されることを特徴とする。
【0018】
第6の態様では、対象者が温度センサ(21)を持ち歩くことで、体験温度を取得できる。
【0019】
本開示の第7の態様は、第5の態様において、前記環境情報は、前記対象者が過去に置かれた環境の気温である体験温度を含み、前記取得工程は、前記対象者の位置を示す位置情報を取得する工程と、複数の計測地点のうち前記位置情報が示す位置に最も近い計測地点で計測された気温を、前記体験温度として取得する工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
第7の態様では、対象者が温度センサ(21)を持ち歩かなくても、体験温度を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る温度推定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、温度推定システムの動作を示す模式図である。
【
図3】
図3は、出力装置の第1例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、出力装置の第2変形例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、推定快適温度と時間との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、推定快適温度の移動平均を示すグラフである。
【
図10】
図10は、温度推定システムの変形例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明及びそれに付随する効果等の説明は繰り返さない。
【0023】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る温度推定システム(1)について説明する。
図1は、温度推定システム(1)の構成を示すブロック図である。
図2は温度推定システム(1)の動作を示す模式図である。
【0024】
―全体構成―
図1及び
図2に示すように、温度推定システム(1)は、温度推定装置(10)と、出力装置(20)とを備える。
【0025】
出力装置(20)は、環境情報を出力する。環境情報は、対象者が過去に置かれた環境を表す値である。環境情報において、環境を表す値は、例えば、温度、PMV(Predicted Mean Vote)、SET*(Standard New Effective Temperature)、及び/又は、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)を含む。環境情報において、環境を表す値は、温度のような一種類の物理量に基づく値のみならず、PMV、SET*、及びWBGTのような、温度、湿度等の複数種類の物理量に基づく値でもよい。本実施形態では、環境情報として、対象者が過去に置かれた環境の気温を示す体験温度が用いられる。出力装置(20)は、気温を計測する温度センサ(21)を含む。
【0026】
温度推定装置(10)は、対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出するための装置である。本実施形態では、温度推定装置(10)は、スマートフォン、及び、PC(Personal Computer)のような端末である。本実施形態では、温度推定装置(10)は、推定快適温度を算出する算出処理を行うためのアプリケ-ションプログラムをインストールされ、当該アプリケ-ションプログラムを実行することによって当該算出処理を行う。
【0027】
図1及び
図2に示すように、温度推定装置(10)は、通信部(11)と、記憶部(12)と、制御部(13)とを備える。
【0028】
通信部(11)は、出力装置(20)のような外部装置と通信を行うためのデバイスである。通信部(11)は、出力装置(20)と有線又は無線により通信可能に接続される。通信部(11)は、例えば、無線通信を行うためのデバイス(無線LANモジュール等)と、有線通信を行うためのデバイス(通信ケーブルが接続される通信ポート等)とのうちの少なくとも一方を含む。通信部(11)は、情報を取得する取得部(11A)と、情報を出力する出力部(11B)とを含む。取得部(11A)は、出力装置(20)から出力される環境情報(体験温度)を取得する。
【0029】
記憶部(12)は、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(例えば、半導体メモリ)を含み、補助記憶装置(例えば、ハ-ドディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、SD(Secure Digital)メモリカード、又は、USB(Universal Seral Bus)フラッシメモリ)をさらに含んでもよい。記憶部(12)は、制御部(13)によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。
【0030】
記憶部(12)は、相関情報(12A)を記憶する。相関情報(12A)は、環境情報(体験温度)と、推定快適温度との相関を示す情報(計算式、テーブル、グラフ、図、マップ等)である。相関情報(12A)の説明は後述する。
【0031】
制御部(13)は、CPU及びMPUのようなプロセッサーを含む。制御部(13)は、記憶部(12)に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、温度推定装置(10)の各要素を制御する。
【0032】
―温度推定システム(1)の動作の概要―
図1及び
図2を参照して、温度推定システム(1)の動作の概要について説明する。
【0033】
図1及び
図2に示すように、出力装置(20)の温度センサ(21)は、対象者によって携帯され、対象者が置かれている環境の気温(対象者の周囲の気温)を計測する。出力装置(20)は、温度センサ(21)の計測結果を示す情報を、対象者の体験温度として温度推定装置(10)に出力する。温度推定装置(10)は、出力装置(20)から取得した体験温度に基づいて、対象者の推定快適温度を算出する。
【0034】
―出力装置(20)の第1変形例―
図3を参照して、出力装置(20)の第1変形例について説明する。
図3は、出力装置(20)の第1例を示すブロック図である。本実施形態では出力装置(20)が温度センサ(21)で構成されるのに対し(
図1参照)、第1変形例では出力装置(20)が温度センサ(21)と通信端末(22)とで構成される点が本実施形態と異なる。
【0035】
出力装置(20)の第1変形例の全体構成について説明する。
【0036】
図3に示すように、出力装置(20)は、温度センサ(21)と、通信端末(22)とを含む。通信端末(22)は、例えば、スマートフォン、及び、PCのような通信機能を有する端末である。通信端末(22)は、通信部(221)と、記憶部(222)と、制御部(223)とを含む。通信部(221)は、例えば、無線LANモジュール、及び/又は、通信ポートを含む。通信部(221)は、温度センサ(21)と有線又は無線で接続され、温度センサ(21)の計測結果を示す情報(体験温度)を取得する。記憶部(222)は、フラッシュメモリ、ROM、及びRAMのような主記憶装置を含み、補助記憶装置をさらに含んでもよい。記憶部(222)は、制御部(223)によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。制御部(13)は、CPU及びMPUのようなプロセッサーを含む。制御部(223)は、記憶部(222)に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、通信端末(22)の各要素を制御する。
【0037】
温度推定システム(1)は、管理サーバ(40)をさらに備える。管理サーバ(40)は、出力装置(20)から出力される環境情報(体験温度)を管理するためのサーバである。管理サーバ(40)は、出力装置(20)及び温度推定装置(10)の各々と通信可能に接続される。
【0038】
出力装置(20)の第1変形例の活用例について説明する。
【0039】
対象者は、出力装置(20)(温度センサ(21)及び通信端末(22))を携帯して、所定期間(例えば、1週間)生活する。出力装置(20)は、通信端末(22)の通信機能を用いて、所定時間間隔で(例えば1時間毎に)、温度センサ(21)によって計測された対象者の体験温度を管理サーバ(40)へ出力する。管理サーバ(40)には、通信端末(22)から出力された対象者の体験温度の履歴が蓄積されていく。温度推定装置(10)は、管理サーバ(40)から対象者の体験温度の履歴を取得して、取得した体験温度の履歴に基づいて対象者の推定快適温度を算出する。
【0040】
―出力装置(20)の第2変形例―
図4を参照して、出力装置(20)の第2変形例について説明する。
図4は、出力装置(20)の第2変形例を示すブロック図である。本実施形態では出力装置(20)が温度センサ(21)で構成されるのに対し(
図1参照)、第2変形例では出力装置(20)が通信端末(22)で構成される点が本実施形態と異なる。
【0041】
出力装置(20)の第2変形例の全体構成について説明する。
【0042】
図4に示すように、出力装置(20)は、通信端末(22)を含む。通信端末(22)は、通信部(221)と、記憶部(222)と、制御部(223)と、位置情報取得部(224)とを含む。通信部(221)は、気象サーバ(S)と通信可能に接続される。気象サーバ(S)は、複数の計測地点の各々で計測された気温を示す情報を収集するサーバである。位置情報取得部(224)は、通信端末(22)の位置情報を取得する。通信端末(22)の位置情報は、言い換えれば、通信端末(22)を携帯する対象者の位置情報を示す。以下では、通信端末(22)の位置情報のことを、対象者の位置情報と記載することがある。位置情報取得部(224)は、GPSモジュールを含み、GPSモジュールを用いて対象者の位置情報を取得する。GPSモジュールは、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信し、受信した電波から対象者の位置情報(緯度及び経度を示す情報)を算出する。
【0043】
出力装置(20)の第2変形例の活用例について説明する。
【0044】
図4に示すように、対象者は、出力装置(20)(通信端末(22))を携帯して、所定期間(例えば、1週間)生活する。通信端末(22)は、位置情報取得部(224)により対象者の位置情報を取得する。通信端末(22)は、対象者の位置情報を取得すると、通信部(221)により気象サーバ(S)と通信する。そして、通信端末(22)は、気象サーバ(S)が収集した複数の計測地点の気温のうち、対象者の位置情報が示す位置と最も近い計測地点の気温を、対象者の体験温度として、気象サーバ(S)から取得する。通信端末(22)は、取得した対象者の体験温度を管理サーバ(40)へ出力する。
【0045】
通信端末(22)は、上記した気象サーバ(S)から対象者の体験温度を取得する処理を、例えば、所定時間間隔で(例えば1時間毎に)行う。
【0046】
なお、出力装置(20)の第1変形例(
図3参照)、及び、出力装置(20)の第2変形例(
図4参照)の各々において、温度推定装置(10)が管理サーバ(40)の機能を有しており、温度推定装置(10)の記憶部(12)に対象者の体験温度の履歴が記憶されてもよい。
【0047】
―推定快適温度を算出する手順―
次に、
図1及び
図5~
図9を参照して、温度推定装置(10)の制御部(13)が推定快適温度を算出する手順について説明する。
【0048】
温度推定装置(10)の制御部(13)は、相関情報(12A)(
図1参照)を用いて推定快適温度を算出する。
【0049】
相関情報(12A)は、下記の数式1で表される。
[数式1]
CT=0.31*T+17.8
「CT」は、推定快適温度を示す。「T」は、代入値を示す。代入値Tは、体験温度に基づいた値である。数式1の係数は、あらかじめ推定快適温度CTと代入値Tとの相関関係から統計的に算出しておく。
【0050】
温度推定装置(10)の制御部(13)は、取得部(11A)により取得された体験温度に基づいて、推定快適温度CTを算出する。詳細には、制御部(13)は、取得部(11A)により取得された体験温度に基づいて代入値Tを算出し、代入値Tと相関情報(12A)とに基づいて推定快適温度CTを算出する。本実施形態では、制御部(13)は、相関情報(12A)を表す数式1に、代入値Tを代入することによって、推定快適温度CTを算出する。
【0051】
以下では、代入値Tの第1例~第6例について説明する。
【0052】
-代入値Tの第1例-
第1例においては、代入値Tは、N日間の体験温度の平均値で表される。具体的には、第1例においては、代入値Tは、下記の数式2で表される。
[数式2]
T=(ΣTi)/N
「N」は自然数である。「i」は、1以上、N以下の整数である(1≦i≦N)。「Ti」は、1日~N日のうちのi日目の体験温度を示す。「ΣTi」は、N日間の体験温度(体験温度T1~体験温度TN)の総和を示す。
【0053】
上記のように体験温度Tiは、i日目の体験温度を示す。しかし、i日目において体験温度が複数回計測される(例えば、i日目において4時間毎に体験温度が計測される)ことで、i日目の体験温度が複数存在する場合は、例えば、i日目の複数の体験温度の平均値又は中央値が、i日目の体験温度Tiに設定される。
【0054】
-代入値Tの第2例-
第2例においては、代入値Tは、N日間の体験温度の中央値で表される。
【0055】
-代入値Tの第3例-
第3例においては、数式3に示すように、代入値Tは、N日間の体験温度の加重平均で表される。具体的には、第3例においては、代入値Tは、下記の数式3で表される。
[数式3]
T=Σ(ai*Ti)
数式3において、「ai」は、a1~aNの総和が1となるような実数である(Σai=1)。数式3において、Σ(ai*Ti)は、(a1*T1)~(aN*TN)の総和である。
【0056】
なお、本実施形態では、体験温度T1~体験温度TNのうち最新の体験温度になる程、代入値Tに与える影響が大きくなるように、a1~aNが設定される。具体的には、a1~aNは、a1~aNの順番に大きくなるように設定される(a1<a2<・・・・<a(N-1)<aN)。
【0057】
-代入値Tの第4例-
図5及び
図6を参照して、代入値Tの第4例について説明する。
図5は、第1リスト(L1)を示す図である。
図6は、推定快適温度CTと時間との関係を示すグラフである。
【0058】
図5に示すように、第1リスト(L1)は、出力装置(20)から出力された複数の体験温度に基づいて作成される。第1リスト(L1)は、例えば、温度推定装置(10)の記憶部(12)、又は、管理サーバ(40)(
図3及び
図4参照)に記憶される。
【0059】
第1リスト(L1)は、複数の体験温度が時系列に並んでいる構成を有する。第1リスト(L1)は、複数の体験温度の各々について、体験温度と体験温度の計測時刻とを対応付けた構成を有する。
【0060】
体験温度の計測時刻は、例えば、体験温度と共に出力装置(20)から出力される。詳細には、出力装置(20)は、体験温度を出力する際、体験温度と体験温度の計測時刻とを対応付けた対応情報を作成し、当該対応情報を出力する。その結果、体験温度と体験温度の計測時刻とを対応付けた第1リスト(L1)が作成される。
【0061】
第4例において、代入値Tは、第1リスト(L1)に含まれる複数の体験温度の各々である。制御部(13)は、第1リスト(L1)に含まれる複数の体験温度の各々を上記数式1の代入値Tに代入して、第1リスト(L1)に含まれる計測時刻毎に、それぞれ対応する推定快適温度CTを算出する(
図5参照)。これにより、制御部(13)は、時系列に沿った複数の推定快適温度CTを算出することができる。その結果、ユーザーは、時系列に沿った複数の推定快適温度CTの変化(例えば、推定快適温度CTの時間単位の変化、推定快適温度CTの月単位の変化、推定快適温度CTの季節単位の変化等)を確認することができる(
図6参照)。なお、
図6のグラフは、推定快適温度CTの時間単位の変化を示している。
【0062】
なお、第1リスト(L1)における計測時刻について、本実施形態では時間単位となっている(
図5参照)。しかし、本発明は、これに限定されない。第1リスト(L1)における計測時刻は、例えば、日にち単位でもよく、又は、月単位でもよい。
【0063】
-代入値Tの第5例-
図7及び
図8を参照して、代入値Tの第5例について説明する。
図7は、第2リスト(L2)を示す図である。
図8は、推定快適温度CTの移動平均を示すグラフである。
【0064】
図7に示すように、第2リスト(L2)は、出力装置(20)から出力された複数の体験温度に基づいて作成される。第2リスト(L2)は、例えば、温度推定装置(10)の記憶部(12)、又は、管理サーバ(40)(
図3及び
図4参照)に記憶される。第2リスト(L2)は、複数の体験温度の平均値で構成される。複数の体験温度の平均値は、n日目~(N+n-1)日目の平均値で構成される(n=1、2、3・・・・)。すなわち、複数の体験温度の平均値は、1日目~N日目の平均値と、2日目~(N+1)日目の平均値と、3日目~(N+2)日目の平均値と、・・・・で構成される。
【0065】
第5例において、代入値Tは、第2リスト(L2)に含まれる複数の平均値の各々である。制御部(13)は、第2リスト(L2)に含まれる複数の平均値の各々を上記数式1の代入値Tに代入して、第2リスト(L2)に含まれる計測時間毎に、それぞれ対応する推定快適温度CTを算出する。これにより、制御部(13)は、推定快適温度CTの移動平均を算出することができる(
図8参照)。
【0066】
なお、第2リスト(L2)における計測時間について、本実施形態では日にち単位となっている(
図7参照)。しかし、本発明は、これに限定されない。第2リスト(L2)における計測時間は、例えば、時間単位でもよく、又は、月単位でもよい。
【0067】
また、第5例において、複数の体験温度の平均値に代えて、複数の体験温度の中央値(例えば、n日目~(N+n-1)日目の中央値(n=1、2、3・・・・))が用いられてもよく、又は、複数の体験温度の加重平均値(例えば、n日目~(N+n-1)日目の加重平均値(n=1、2、3・・・・))が用いられてもよい。
【0068】
-代入値Tの第6例-
図9は、第3リスト(L3)を示す図である。第3リスト(L3)は、出力装置(20)から出力された複数の体験温度に基づいて作成される。第3リスト(L3)は、例えば、温度推定装置(10)の記憶部(12)、又は、管理サーバ(40)(
図3及び
図4参照)に記憶される。
【0069】
図9に示すように、第3リスト(L3)は、複数の体験温度(z1℃、z2℃・・・・)と、複数の体験温度の各々の計測日時(日付及び時刻)との対応関係を行列の表で示した構成を有する。第3リスト(L3)において、各体験温度は、対応する計測日時に計測される。例えば、第3リスト(L3)において、体験温度z1℃は、2020年6月1日の0時0分に計測される。なお、第3リスト(L3)において、各体験温度は、対応する計測日時を含む所定の幅を有する時間内に計測された複数の体験温度の平均値、又は中央値でもよい。例えば、第3リスト(L3)において、体験温度z1は、2020年6月1日の0時0分から1時0分の間に計測された複数の体験温度の平均値、又は中央値でもよい。
【0070】
第6例において、代入値Tは、第3リスト(L3)に含まれる複数の体験温度(z1℃、z2℃、・・・・)の各々である。制御部(13)は、第3リスト(L3)に含まれる複数の体験温度の各々を上記数式1の代入値Tに代入して、第3リスト(L3)に含まれる計測日時毎に、それぞれ対応する推定快適温度CTを算出する。
【0071】
―本実施形態の効果―
以上、
図1~
図9を参照して説明したように、制御部(13)は、対象者の体験温度に基づいて、対象者にとって快適な温度と推定される推定快適温度を算出する。これにより、推定快適温度の算出には、対象者が過去に体験した温度が用いられる。従って、推定快適温度として、気温に対する感覚の個人差を考慮した温度を算出できる。
【0072】
《その他の実施形態》
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう(例えば、(1)~(2))。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0073】
(1)相関情報(12A)は、上記数式1(CT=0.31*T+17.8)に限定されない。例えば、外気の温度に対して、平均的な人が快適と感じる温度(平均快適温度)を出力するための温度出力情報(計算式、テーブル、グラフ、図、マップ等)が存在する場合、前記温度出力情報を相関情報(12A)として転用することができる。前記温度出力情報は、外気の温度と、平均快適温度との相関を表す。前記温度出力情報は、外気の温度が決まると、平均快適温度が導き出される構成を有する。例えば、前記温度出力情報は、外気の温度が低くなる程、平均快適温度を低く設定する。前記温度出力情報を相関情報(12A)に転用した場合、前記温度出力情報において、外気の温度の代わりに、上記第1例~第6例に示す代入値Tのいずれかを用いると、平均快適温度に代えて、対象者の推定快適温度が導き出される。
【0074】
(2)
図10に示すように、温度推定システム(1)は、空気調和機(30)をさらに備え、空気調和機(30)には温度推定装置(10)が含まれるように構成してもよい。この場合、快適性判定装置(10)は、例えば、空気調和機(30)の筐体内に設けられる電子部品で構成される。なお、判定システム(1)において、快適性判定装置(10)が空気調和機(30)とは別体の外部装置として構成され、快適性判定装置(10)と空気調和機(30)とが有線又は無線で通信可能に接続されてもよい。空気調和機(30)は、室内空間の気温が設定温度となるように、室内空気を冷却し又は加熱する。
【0075】
空気調和機(30)は、対象者の体験温度を管理する管理サーバ(40)、又は、出力装置(20)(
図1参照)と通信可能に接続される。
図10においては、空気調和機(30)が管理サーバ(40)と通信可能に接続される構成を示している。空気調和機(30)は、管理サーバ(40)又は、出力装置(20)から対象者の体験温度を取得すると、対象者の推定快適温度を温度推定装置(10)に算出させる。空気調和機(30)は、温度推定装置(10)により算出された対象者の推定快適温度に基づいて適宜の処理を行う。適宜の処理は、例えば、空気調和機(30)の設定温度を対象者の推定快適温度に設定する処理である。
【0076】
空気調和機(30)において、温度推定装置(10)の制御部(13)が対象者の推定快適温度を算出する。これにより、複数の対象者が存在する場合、温度推定装置(10)の制御部(13)は、対象者毎に推定快適温度をそれぞれ算出することができる。その結果、複数の対象者のうちのいずれかが空気調和機(30)の使用者となる場合、空気調和機(30)は、温度推定装置(10)により空気調和機(30)の使用者の推定快適温度を算出し、当該推定快適温度を設定温度とすることで、空気調和機(30)の使用者の気温に対する感覚に合わせた温度制御を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本開示は、温度推定装置、空気調和機、及び温度算出方法について有用である。
【符号の説明】
【0078】
10 温度推定装置
11A 取得部
12 記憶部
12A 相関情報
13 制御部
21 温度センサ
30 空気調和機