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  • 特許-電動式ガス流量調節弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】電動式ガス流量調節弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240718BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20240718BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20240718BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20240718BHJP
   F16K 31/528 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F23K5/00 301D
F23N1/00 102Z
F16K31/44 A
F16K31/528
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020133501
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029903
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 廣太郎
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-056477(JP,A)
【文献】特開平09-060752(JP,A)
【文献】特開2015-042851(JP,A)
【文献】特開2020-118201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F23K 5/00
F23N 1/00
F16K 31/44
F16K 31/528
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブケーシング内の弁座に向けて軸方向に接近、離間するニードル弁体と、電動モータと、電動モータの回転でニードル弁体を軸方向に移動させる運動変換機構とを備える電動式ガス流量調節弁であって、
運動変換機構は、ニードル弁体に固定のカムピンと、カムピンが摺動自在に係合する、軸方向にのびる長孔が形成されたガイド筒と、カムピンが長孔を通して係合する螺旋状のカム部を有する筒状のカム体とを備え、ガイド筒を電動モータの回転で回転させ、カム体をバルブケーシングに対し回り止めするようにし、軸方向のうちニードル弁体が弁座に接近する方向を往動方向、弁座から離隔する方向を復動方向、ニードル弁体を往動方向に移動させる電動モータの回転方向を正転方向、ニードル弁体を復動方向に移動させる電動モータの回転方向を逆転方向として、電動モータの正転方向と逆転方向の回転により、カム体に対するカムピンの相対回転でカム部とカムピンとを介してニードル弁体を往動方向と復動方向とに移動させるように構成されるものにおいて、
カム部は、カムピンが復動方向又は往動方向から当接可能な螺旋状傾斜辺で構成され、
ガイド筒に第1バネ受け部が設けられ、この第1バネ受け部とニードル弁体に設けられた第2バネ受け部との間に、カムピンを螺旋状傾斜辺に向けて往動方向又は復動方向に付勢するバネ部材が介設されることを特徴とする電動式ガス流量調節弁。
【請求項2】
前記螺旋状傾斜辺に復動方向から前記カムピンが当接するようにし、前記ガイド筒の復動方向側の端部に前記第1バネ受け部が設けられることを特徴とする請求項記載の電動式ガス流量調節弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブケーシング内の弁座に向けて軸方向に接近、離間するニードル弁体と、電動モータと、電動モータの回転でニードル弁体を軸方向に移動させる運動変換機構とを備える電動式ガス流量調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式ガス流量調節弁として、運動変換機構を、ニードル弁体に固定のカムピンと、カムピンが摺動自在に係合する、軸方向にのびる長孔が形成されたガイド筒と、カムピンが長孔を通して係合するカム部たる螺旋状溝を有する筒状のカム体とを備えるものとし、カム体を電動モータの回転で回転させ、ガイド筒をバルブケーシングに対し回り止めするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、軸方向のうちニードル弁体が弁座に接近する方向を往動方向、弁座から離隔する方向を復動方向、ニードル弁体を往動方向に移動させる電動モータの回転方向を正転方向、ニードル弁体を復動方向に移動させる電動モータの回転方向を逆転方向として、電動モータの正転方向の回転に伴うカム体の正転方向の回転により、螺旋状溝の復動方向側側縁をカムピンに当接させ、この当接力の往動方向成分でニードル弁体を往動方向に移動させ、電動モータの逆転方向の回転に伴うカム体の逆転方向の回転により、螺旋状溝の往動方向側側縁をカムピンに当接させ、この当接力の復動方向成分でニードル弁体を復動方向に移動させる。
【0003】
尚、上記第1の従来例では、カム体を電動モータの回転で回転させ、ガイド筒をバルブケーシングに対し回り止めしているが、ガイド筒を電動モータの回転で回転させ、カム体をバルブケーシングに対し回り止めしてもよい。この第2の従来例では、電動モータの正転方向と逆転方向の回転でガイド筒とカムピンとを介してニードル弁体を正転方向と逆転方向に回転させると共に、ニードル弁体の正転方向の回転による螺旋状溝の復動方向側側縁に対するカムピンの当接反力の往動方向成分でニードル弁体を往動方向に移動させ、ニードル弁体の逆転方向の回転による螺旋状溝の往動方向側側縁に対するカムピンの当接反力の復動方向成分でニードル弁体を復動方向に移動させる。
【0004】
ところで、上記第1と第2の何れの従来例でも、カムピンを螺旋状溝にスムーズに挿入でき、且つ、螺旋状溝に対するカムピンのこじりを生じないように、螺旋状溝の往動方向側側縁と復動方向側側縁との間の間隔をカムピンの直径より若干大きくすることが要求される。そのため、電動モータの正転方向の回転で螺旋状溝の復動方向側側縁とカムピンとを当接させて、ニードル弁体を往動方向に移動させるときと、電動モータの逆転方向の回転で螺旋状溝の往動方向側側縁とカムピンとを当接させて、ニードル弁体を復動方向に移動させるときとで、電動モータの回転位相が同じでもガス流量に差を生ずる現象、即ち、ヒステリシスが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-13274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、ヒステリシスの発生を抑制できるようにした電動式ガス流量調節弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バルブケーシング内の弁座に向けて軸方向に接近、離間するニードル弁体と、電動モータと、電動モータの回転でニードル弁体を軸方向に移動させる運動変換機構とを備える電動式ガス流量調節弁であって、運動変換機構は、ニードル弁体に固定のカムピンと、カムピンが摺動自在に係合する、軸方向にのびる長孔が形成されたガイド筒と、カムピンが長孔を通して係合する螺旋状のカム部を有する筒状のカム体とを備え、ガイド筒を電動モータの回転で回転させ、カム体をバルブケーシングに対し回り止めするようにし、軸方向のうちニードル弁体が弁座に接近する方向を往動方向、弁座から離隔する方向を復動方向、ニードル弁体を往動方向に移動させる電動モータの回転方向を正転方向、ニードル弁体を復動方向に移動させる電動モータの回転方向を逆転方向として、電動モータの正転方向と逆転方向の回転により、カム体に対するカムピンの相対回転でカム部とカムピンとを介してニードル弁体を往動方向と復動方向とに移動させるように構成されるものにおいて、カム部は、カムピンが復動方向又は往動方向から当接可能な螺旋状傾斜辺で構成され、ガイド筒に第1バネ受け部が設けられ、この第1バネ受け部とニードル弁体に設けられた第2バネ受け部との間に、カムピンを螺旋状傾斜辺に向けて往動方向又は復動方向に付勢するバネ部材が介設されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、電動モータを正転方向と逆転方向との一方に回転させるときに、カムピンは、螺旋状傾斜辺に押圧案内されて、バネ部材の付勢力に抗して往動方向と復動方向との一方に押し動かされ、電動モータを正転方向と逆転方向との他方に回転させるときに、カムピンは、バネ部材の付勢力で螺旋状傾斜辺に接触案内されて、往動方向と復動方向との他方に動く。そのため、電動モータの正転方向回転でニードル弁体を往動方向に移動させるときと、電動モータの逆転方向回転でニードル弁体を復動方向に移動させるときとの何れにおいても、カムピンは同じ螺旋状傾斜辺に案内されることになる。その結果、電動モータの回転位相が同じであれば、ニードル弁体の軸方向位置は同じになり、ヒステリシスの発生を抑制できる。
【0009】
また、本発明においては、上記の如くガイド筒を電動モータの回転で回転させるようにし、ガイド筒に第1バネ受け部を設け、この第1バネ受け部とニードル弁体に設けられた第2バネ受け部との間にバネ部材を介設するため、第1と第2の両バネ受け部が共に回転することになり、第1バネ受け部と第2バネ受け部との一方のみが回転する場合と異なり、バネ部材のよじれを生ずることを防止できる。更に、後述する如く、バネ部材の配置部にガスが流れず、バネ部材による圧力損失の増加を防止できる。
【0010】
また、ガイド筒を電動モータの回転で回転させるようにし、ガイド筒に第1バネ受け部を設ける場合、螺旋状傾斜辺に復動方向からカムピンが当接するようにし、ガイド筒の復動方向側の端部に第1バネ受け部を設けることが望ましい。これによれば、組立時、ガイド筒に往動方向側の端部からバネ部材とニードル弁体のカムピン及び第2バネ受け部を設けた部分とを順に挿入するだけで、第1バネ受け部と第2バネ受け部との間にバネ部材を介設でき、組立性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の電動式ガス流量調節弁の切断側面図。
図2図1のII-IIで切断した電動式ガス流量調節弁の断面図。
図3】実施形態の電動式ガス流量調節弁に設けられる運動変換機構の分解状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2を参照して、本発明の実施形態の電動式ガス流量調節弁は、バルブケーシング1内の弁座11に向けて軸方向に接近、離間する截頭円錐状のニードル弁体2と、電動モータ3と、電動モータ3の回転でニードル弁体2を軸方向に移動させる運動変換機構とを備えている。バルブケーシング1内には、ガス流入口12aに連通する一次側ガス室12と、ガス流出口13aに連通する二次側ガス室13とが設けられている。そして、二次側ガス室13に、一次側ガス室12と二次側ガス室13とを仕切る弁座11が形成された部材4を装着している。
【0013】
以下、軸方向のうちニードル弁体2が弁座11に接近する方向を往動方向、弁座11から離隔する方向を復動方向、ニードル弁体2を往動方向に移動させる電動モータ3の回転方向を正転方向、ニードル弁体2を復動方向に移動させる電動モータ3の回転方向を逆転方向として説明する。
【0014】
図3も参照して、運動変換機構は、ニードル弁体2に固定のカムピン21と、カムピン21が摺動自在に係合する、軸方向にのびる長孔51が形成されたガイド筒5と、カムピン21が長孔51を通して係合する螺旋状のカム部を有する筒状のカム体6とを備えている。電動モータ3は、バルブケーシング1の復動方向側の端部外面に配置されている。そして、電動モータ3の回転でガイド筒5を回転させるようにしている。具体的には、ガイド筒5の復動方向側の端部に突設したボス部52に断面非円形の連結孔52aを形成すると共に、電動モータ3の出力軸31に連結される連結子32の断面非円形の軸部32aを連結孔52aに嵌合させている。これにより、電動モータ3の出力軸31に連結子32を介してガイド筒5が連結され、電動モータ3の回転でガイド筒5が回転する。
【0015】
ニードル弁体2は、復動方向にのびてガイド筒5内に挿入される筒部22を有している。そして、この筒部22の復動方向側端部に、径方向外方に突出するようにカムピン21が突設されている。また、カムピン21の基部には大径部21aが形成されており、この大径部21aをガイド筒5に形成した長孔51に摺動自在に係合させている。そのため、ニードル弁体2は、ガイド筒5に対し軸方向に移動自在で、且つ、一緒に回転するように連結される。
【0016】
カム体6は、バルブケーシング1に対し回り止めされている。具体的には、カム体6の外周面に突設したリブ62をバルブケーシング1の内周面に形成した溝14に係合することで、カム体6をバルブケーシング1に対し回り止めしている。また、部品点数を削減するため、カム体6は、弁座11を形成した部材4に一体に形成されている。
【0017】
カム体6に設けられるカム部は、カムピン21が復動方向から当接可能であって、正転方向に向けて往動方向に傾斜した螺旋状傾斜辺61で構成されている。また、カムピン21を螺旋状傾斜辺61に向けて往動方向に付勢するバネ部材7を設けている。より具体的に説明すれば、ガイド筒5の復動方向側の端部に第1バネ受け部71を設けると共に、ニードル弁体2の筒部22の基端部内面に、復動方向を向く段差面からなる第2バネ受け部72を設け、第1バネ受け部71と第2バネ受け部72との間にコイルバネから成るバネ部材7を介設している。
【0018】
以上の構成によれば、電動モータ3を逆転方向に回転させるときに、カムピン21は、螺旋状傾斜辺61に押圧案内されて、バネ部材7の付勢力に抗して復動方向に押し動かされ、電動モータ3を正転方向に回転させるときに、カムピン21は、バネ部材7の付勢力で螺旋状傾斜辺61に接触案内されて、往動方向に動く。そのため、電動モータ3の正転方向回転でニードル弁体2を往動方向に移動させるときと、電動モータ3の逆転方向回転でニードル弁体2を復動方向に移動させるときとの何れにおいても、カムピン21は同じ螺旋状傾斜辺61に案内されることになる。その結果、電動モータ3の回転位相が同じであれば、ニードル弁体2の軸方向位置は同じになり、ヒステリシスの発生を抑制できる。
【0019】
尚、第1バネ受け部71をバルブケーシング1に設け、この第1バネ受け部71とニードル弁体2に設けられた第2バネ受け部72との間にバネ部材7を介設することも可能である。然し、これでは、電動モータ3の回転で第2バネ受け部72のみが回転することになり、バネ部材7のよじれを生ずる。これに対し、本実施形態の如く、ガイド筒5に第1バネ受け部71を設ければ、電動モータ3の回転で第2バネ受け部72と第1バネ受け部71とが共に回転することになり、バネ部材7のよじれを生ずることはない。
【0020】
また、カム体6をバルブケーシング1内の復動方向寄りの部分に配置して、このカム体6に、カムピン21が往動方向から当接可能な螺旋状傾斜辺61を設けることも可能である。この場合は、ガイド筒5の往動方向側の端部に第1バネ受け部71を設けると共に、ニードル弁体2に第1バネ受け部71よりも復動方向側に位置させて第2バネ受け部72を設け、第1バネ受け部71と第2バネ受け部72との間に介設するバネ部材7でカムピン21を螺旋状傾斜辺61に向けて復動方向に付勢することが考えられる。然し、これでは、第1バネ受け部71をガイド筒5と別体として、組立時、カムピン21及び第2バネ受け部72が設けられたニードル弁体2の部分とバネ部材7とをガイド筒5にその往動方向側の端部から挿入した後に、ガイド筒5の往動方向側端部に第1バネ受け部71を取付けることが必要になり、組立が面倒になる。
【0021】
そのため、組立性を向上させるには、本実施形態の如く、螺旋状傾斜辺61に復動方向からカムピン21が当接するようにし、ガイド筒5の復動方向側の端部に第1バネ受け部71を設けることが望ましい。これによれば、組立時、ガイド筒5に往動方向側の端部からバネ部材7とニードル弁体2のカムピン21及び第2バネ受け部72を設けた部分、即ち、筒部22とを順に挿入するだけで、第1バネ受け部71と第2バネ受け部72との間にバネ部材7を介設でき、組立が容易になる。
【0022】
ところで、上記実施形態では、ガイド筒5を電動モータ3の回転で回転させ、カム体6をバルブケーシング1に対し回り止めしているが、カム体6を電動モータ3に近いバルブケーシング1内の復動方向寄りの部分に配置して、電動モータ3の回転でカム体6を回転させ、ガイド筒5をバルブケーシング1に対し回り止めすることも可能である。この場合、カム体6に、カムピン21が往動方向から当接可能な螺旋状傾斜辺61を設け、弁座11を第1バネ受け部として、弁座11とニードル弁体2に設けた第2バネ受け部との間に介設したバネ部材7によりカムピン21を螺旋状傾斜辺61に向けて復動方向に付勢することが考えられる。然し、これでは、バネ部材7の配置部にガスが流れることになり、バネ部材7によって圧力損失が増加してしまう。これに対し、本実施形態の如くガイド筒5を電動モータ3の回転で回転させるようにし、ガイド筒5に第1バネ受け部71を設ければ、バネ部材7の配置部にガスは流れず、バネ部材7による圧力損失の増加を防止でき、有利である
【符号の説明】
【0023】
1…バルブケーシング、11…弁座、2…ニードル弁体、21…カムピン、3…電動モータ、5…ガイド筒、51…長孔、6…カム体、61…螺旋状傾斜辺、7…バネ部材、71…第1バネ受け部、72…第2バネ受け部。
図1
図2
図3