(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】軒樋支持システム、樋構造、樋構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
E04D13/072 501K
(21)【出願番号】P 2020158226
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸二
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-047025(JP,U)
【文献】特開平10-102701(JP,A)
【文献】特開平10-183905(JP,A)
【文献】特開2018-184794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00 - 3/40
E04D 13/00 - 15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒樋支持具を支持するレールと、
前記レールによって支持される軒樋支持具と、を備える軒樋支持システムであって、
前記レールは、
鼻隠し板に固定される固定部と、
前記固定部から上方に延び、前記鼻隠し板に隙間をあけて対向する押さえ部と、を備え、
前記固定部は、
上下方向に延びる第1板と、
前記第1板の上端から前方に突出する第2板と、を備え、
前記軒樋支持具が、前記隙間に差し込まれており、
前記軒樋支持具と前記鼻隠し板が前記隙間の上方で固定されている、
軒樋支持システム。
【請求項2】
前記レールは、前記固定部の下端から前方に延びる目隠し部を更に備えている、請求項
1に記載の軒樋支持システム。
【請求項3】
前記軒樋支持具は、前記軒樋支持具と前記鼻隠し板との間に固定板を備えている、請求項1
または2に記載の軒樋支持システム。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の軒樋支持システムと、
前記軒樋支持具によって支持される軒樋と、を備えている、樋構造。
【請求項5】
請求項
4に記載の樋構造の施工方法であって、
前記レールを前記鼻隠し板に取付ける工程と、
前記軒樋支持具を前記隙間に進入させ、前記鼻隠し板に固定する工程と、
前記軒樋支持具によって前記軒樋を支持する工程と、を備えている、
樋構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール、軒樋支持システムおよび樋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軒樋支持具を鼻隠し板に取り付けるための取り付け装置として、下記特許文献1に記載の構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の取り付け装置では、施工性に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、軒樋支持具の施工性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の一態様に係るレールは、軒樋支持具を支持するレールであって、鼻隠し板に固定される固定部と、前記固定部から上方に延び、前記鼻隠し板に隙間をあけて対向する押さえ部と、を備えている。
【0007】
作業員がレールに軒樋支持具を支持させるときには、例えば、まず作業員が、レールの固定部を鼻隠し板に固定する。その後、作業員が鼻隠し板と押さえ部との隙間に軒樋支持具を差し込む。すると、軒樋支持具がレールによって下方から支持される。
このように、作業員が軒樋支持具を隙間に差し込むという簡便な作業によって、軒樋支持具がレールによって支持される。よって、軒樋支持具の施工性を高めることができる。なお、1つのレールが複数の軒樋支持具を支持する場合には、複数の軒樋支持具をレールによって同じ高さに調整することが可能になり、軒樋支持具の施工性を顕著に高めることができる。
【0008】
<2>上記<1>に係るレールでは、前記固定部は、上下方向に延びる第1板と、前記第1板の上端から前方に突出する第2板と、を備えている、構成を採用してもよい。
【0009】
第1板が上下方向に延びる。よって、第1板を鼻隠し板に面接触させた状態で、固定部を鼻隠し板に固定させることができる。そのため、固定部と鼻隠し板との接触面積を高め、固定部を鼻隠し板に強固に固定することができる。
第2板が第1板の上端から前方に突出する。よって、第1板からの第2板の突出量を適宜調整することにより、鼻隠し板と押さえ部との間の隙間の大きさを適切に調整することができる。
【0010】
<3>上記<1>または<2>に係るレールでは、前記固定部の下端から前方に延びる目隠し部を更に備えている、構成を採用してもよい。
【0011】
例えば、軒樋支持具によって支持される軒樋と、固定部と、の間には隙間があく。この隙間が下方から視認されると、軒樋の外観性の低下につながるおそれがある。
ここでこのレールでは、目隠し部が、固定部の下端から前方に突出している。よって、前述の隙間を目隠し部によって覆うことができる。これにより、軒樋の外観性を確保し易くすることができる。
【0012】
<4>本発明の一態様に係る軒樋支持システムは、上記<1>から<3>のいずれか1項に係るレールと、前記レールによって支持される軒樋支持具と、を備えている。
【0013】
<5>本発明の一態様に係る樋構造は、上記<4>に係る軒樋支持システムと、前記軒樋支持具によって支持される軒樋と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軒樋支持具の施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樋構造を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す樋構造を構成する軒樋支持システムを示す側面図である。
【
図3】
図2に示す軒樋支持システムを構成するレールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1から
図3を参照し、本発明の一実施形態に係る樋構造1を説明する。
図1および
図2に示すように、樋構造1は、軒樋支持システム2と、軒樋30と、を備えている。
【0017】
軒樋支持システム2は、建築物3の軒先で軒樋30を支持する。軒樋支持システム2は、軒樋支持具10と、レール20と、を備えている。
【0018】
軒樋支持具10は、建築物3の軒先の鼻隠し板4に固定されている。軒樋支持具10は、鼻隠し板4に固定される固定板11と、固定板11における前面から前方に延び、軒樋30を支持する支持部12と、を備えている。
【0019】
なお以下では、支持部12が延びる方向を前後方向Xという。固定板11に対して支持部12が位置する側(屋外側)を前側という。固定板11に対して鼻隠し板4が位置する側(屋内側)を後側という。前後方向Xおよび上下方向Zの両方向に直交する方向を左右方向Yという。左右方向Yは、軒樋30が延びる方向となる。軒樋支持具10は、左右方向Yに間隔をあけて複数設けられている。複数の軒樋支持具10によって、軒樋30は支持されている。
【0020】
固定板11の後面は、鼻隠し板4の前面に接触する。固定板11の前面は、前側を向いている。
支持部12は、固定板11と一体成形されている。支持部12は、固定板11の前面11aと切れ目なく連続して形成されている。支持部12は、固定板11から前方に突出している。
【0021】
支持部12は、前後方向Xに長い。支持部12の後端には、上方に向けて窪む凹部13が設けられている。支持部12には、第1爪部12aおよび第2爪部12bが設けられている。第1爪部12aは、支持部12の前端に設けられている。第1爪部12aは、支持部12から前方に突出している。第2爪部12bは、支持部12の後端において、凹部13の下方に位置する部分設けられている。第2爪部12bは、支持部12から後方に突出している。
【0022】
軒樋支持具10は、第1ビス14によって鼻隠し板4に固定されている。第1ビス14は、固定板11を前後方向Xに貫通している。第1ビス14は、鼻隠し板4にねじ込まれている。第1ビス14の頭部は、鼻隠し板4との間に固定板11を挟み込んでいる。第1ビス14は、例えば、1つの軒樋支持具10に対して、2つ設けられている。2つの第1ビス14は、支持部12を左右方向Yに挟む位置に配置されている。
【0023】
レール20は、軒樋支持具10を支持する。レール20は、軒樋支持具10よりも左右方向Yに大きい。レール20の左右方向Yの長さは、例えば、1mや3尺、6尺などとすることができる。1つのレール20は、複数の軒樋支持具10を支持する。レール20には、(1)硬質な板材(例えば、硬質樹脂板や金属板)をインサート品として形成された発泡材や、(2)金属板などを用いることができる。レール20は、硬質材(例えば、(1)硬質樹脂、(2)金属、(3)金属と樹脂の複合材など)により形成されるとも言える。レール20は、風の吹き上げに対して破損しない程度の強度を具備していることが好ましい。
【0024】
図1から
図3に示すように、レール20は、固定部21と、押さえ部22と、目隠し部23と、を備えている。これらの固定部21、押さえ部22、目隠し部23は、いずれも左右方向Yに長い板状である。
固定部21は、鼻隠し板4に固定される。固定部21は、第1板24と、第2板25と、を備えている。
【0025】
第1板24は、上下方向Zに延びる。第1板24は、鼻隠し板4と平行である。第1板24の後面は、鼻隠し板4の前面に面接触する。第1板24は、第2ビス26によって鼻隠し板4に固定されている。第2ビス26は、第1板24を前後方向Xに貫通している。第2ビス26は、鼻隠し板4にねじ込まれている。第2ビス26の頭部は、鼻隠し板4との間に第1板24を挟み込んでいる。第2ビス26は、左右方向Yに間隔をあけて複数配置されている。施工性の観点から、第2ビス26は、第1ビス14と同種のビスであることが好ましい。
【0026】
第2板25は、第1板24の上端から前方に突出する。第2板25は、前方斜め上方に延びている。第1板24に対する第2板25の突出量(すなわち、レール20を左右方向Yから見た側面視における第2板25の長さ)は、第1板24の上下方向Zの大きさ(すなわち、前記側面視における第1板24の長さ)よりも小さい。第2板25は、軒樋支持具10の固定板11の下端を下方から支持している。
【0027】
押さえ部22は、固定部21から上方に延びている。押さえ部22は、第2板25の前端から上方に延びている。押さえ部22は、鼻隠し板4と平行に延びている。押さえ部22の上下方向Zの大きさ(すなわち、前記側面視における押さえ部22の長さ)は、第2板25の前記突出量よりも大きく、かつ、第1板24の上下方向Zの大きさよりも小さい。
【0028】
押さえ部22は、鼻隠し板4に隙間27をあけて対向する。隙間27には、固定板11の下端が配置されている。押さえ部22は、固定板11の下端を前方から押さえている。押さえ部22は、鼻隠し板4との間に固定板11を挟み込む。
【0029】
目隠し部23は、固定部21の下端から前方に延びる。目隠し部23は、第1板24の下端から前方に延びる。第1板24に対する目隠し部23の突出量(すなわち、前記側面視における目隠し部23の長さ)は、第2板25の前記突出量よりも大きく、かつ、第1板24の上下方向Zの大きさよりも小さい。目隠し部23の前端は、第2板25の前端や、押さえ部22よりも前方に位置している。前記側面視において、目隠し部23は、第1板24に対して実質的に垂直である。
【0030】
図1に示すように、軒樋30は、例えば合成樹脂製である。軒樋30は、上方が開放されたU字状を呈している。軒樋30は、底面壁31と、前壁32と、後壁33と、を備えている。
前壁32は、底面壁31の前端側(図示の例では左側)から上方に突出する。前壁32の上端には、前耳部34が設けられている。前耳部34は、前壁32から後方に突出している。前耳部34は、第1爪部12aに引っ掛かる。
後壁33は、底面壁の後端側(図示の例では右側)から上方に突出する。後壁33の上端には、後耳部35が設けられている。後耳部35は、後壁33から前方に突出している。後耳部35は、凹部13内に配置され、かつ、第2爪部12bに引っ掛かる。
【0031】
前耳部34および後耳部35は、軒樋支持具10の支持部12によって支持される。これにより、軒樋30全体が、軒樋支持具10によって支持される。なおこのとき、軒樋30の底面壁31がほぼ水平状態になるように、軒樋30が保持される。ただし一般的には、底面壁31は、前後方向Xには水平であるものの、左右方向Yについて排水勾配が設けられている。すなわち、底面壁31は、左右方向Yの一方から他方に向けて、排水を促進するための勾配が設けられている。
【0032】
なお、底面壁31は、レール20の目隠し部23とほぼ平行である。底面壁31の排水勾配にあわせて、レール20の目隠し部23にも若干の勾配が設けられている。底面壁31の高さ位置は、目隠し部23の高さ位置と同等である。底面壁31の後端は、目隠し部23の前端と前後方向Xに隙間28(以下、第1隙間28という)をあけて対向している。第1隙間28の前後方向Xの大きさは、目隠し部23の前後方向Xの大きさよりも小さい。底面壁31は、目隠し部23よりも前後方向Xに大きい。
【0033】
次に、上記樋構造1の施工方法について説明する。
まず、レール20を鼻隠し板4に対して第2ビス26によって取り付ける。このとき、排水勾配を考慮してレール20に勾配をつけることが好ましい。レール20を左右方向Yに複数設ける場合、レール20の左右方向Yの端面同士を突き合わせてもよく、前記端面同士を離してもよい。
なお
図3に示すように、工業出荷時のレール20には、第2ビス26が差し込まれる穴が形成されていなくてもよい。この場合、施工現場でレール20に穿孔する必要があるものの、穿孔のピッチを現場ごとに自在に調整することができる。
【0034】
その後、軒樋支持具10を鼻隠し板4に取り付ける。このときまず、軒樋支持具10の固定板11の下端を隙間27に進入させる。固定板11の下端は、レール20の第2板25によって下方から支持される。そして、第1ビス14によって固定板11を鼻隠し板4に固定する。これらの作業を、複数の軒樋支持具10分、繰り返す。なお、複数の軒樋支持具10を取り付けるに際して、まず、全てまたは2以上の軒樋支持具10の固定板11をまとめてレール20に差し込んだ後、レール20に差し込まれた各軒樋支持具10の固定板11に対してまとめて第1ビス14を打ち込むなどしてもよい。
【0035】
最後に、軒樋支持具10によって軒樋30を支持する。これにより、樋構造1が完成する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るレール20、軒樋支持システム2、樋構造1によれば、作業員がレール20に軒樋支持具10を支持させるときには、例えば、まず作業員が、レール20の固定部21を鼻隠し板4に固定する。その後、作業員が鼻隠し板4と押さえ部22との隙間27に軒樋支持具10を差し込む。すると、軒樋支持具10がレール20によって下方から支持される。
このように、作業員が軒樋支持具10を隙間27に差し込むという簡便な作業によって、軒樋支持具10がレール20によって支持される。よって、軒樋支持具10の施工性を高めることができる。なお本実施形態のように、1つのレール20が複数の軒樋支持具10を支持する場合には、複数の軒樋支持具10をレール20によって同じ高さに調整することが可能になり、軒樋支持具10の施工性を顕著に高めることができる。
【0037】
第1板24が上下方向Zに延びる。よって、第1板24を鼻隠し板4に面接触させた状態で、固定部21を鼻隠し板4に固定させることができる。そのため、固定部21と鼻隠し板4との接触面積を高め、固定部21を鼻隠し板4に強固に固定することができる。
第2板25が第1板24の上端から前方に突出する。よって、第1板24からの第2板25の突出量を適宜調整することにより、鼻隠し板4と押さえ部22との間の隙間27の大きさを適切に調整することができる。
【0038】
例えば、軒樋支持具10によって支持される軒樋30と、固定部21と、の間には隙間29(以下、第2隙間29という)があく。この第2隙間29が下方から視認されると、軒樋30の外観性の低下につながるおそれがある。
ここでこのレール20では、目隠し部23が、固定部21の下端から前方に突出している。よって、前述の第2隙間29を目隠し部23によって覆うことができる。これにより、軒樋30の外観性を確保し易くすることができる。なお第1隙間28は、第2隙間29よりも前後方向に小さい。
【0039】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0040】
目隠し部23がなくてもよい。
建築物3の屋根は、薄物瓦であっても、厚物瓦であってもよい。
【0041】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 樋構造
2 軒樋支持システム
4 鼻隠し板
10 軒樋支持具
20 レール
21 固定部
22 押さえ部
23 目隠し部
24 第1板
25 第2板
27 隙間
30 軒樋
Z 上下方向