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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
B60R22/46 142
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020161485
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054341
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内堀 隼人
(72)【発明者】
【氏名】坂口 善輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優太
(72)【発明者】
【氏名】横井 友哉
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100683(JP,A)
【文献】独国実用新案第202006014487(DE,U1)
【文献】国際公開第2019/026463(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016118461(DE,A1)
【文献】特表2020-510578(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107685709(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、
一側への回転によって前記スプールが巻取方向へ回転される回転部材と、
軸方向先端側が開口されると共に軸方向基端部に曲部が設定され、更に、前記曲部よりも軸方向基端側にストレート部が設定された筒状のシリンダと、
前記シリンダの軸方向基端側に設けられ、車両緊急時に前記シリンダの内側に流体を供給する流体供給手段と、
前記シリンダの内側に設けられ、前記流体の圧力によって前記シリンダの軸方向先端側へ移動され、前記回転部材の歯部が係合した状態で移動されることで前記回転部材を一側へ回転させると共に、前記シリンダの軸方向基端側の部分が前記シリンダの前記ストレート部に入った移動部材と、
前記シリンダの内側であって、前記移動部材と前記流体供給手段との間の前記ストレート部に設けられたシール部材と、
を備え
前記シール部材は、前記ストレート部において、前記ストレート部の径方向から見て、前記移動部材と重なるように配置されている
ウェビング巻取装置。
【請求項2】
巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、
一側への回転によって前記スプールが巻取方向へ回転される回転部材と、
軸方向先端側が開口されると共に軸方向基端部に曲部が設定され、更に、前記曲部よりも軸方向基端側にストレート部が設定された筒状のシリンダと、
前記シリンダの軸方向基端側に設けられ、車両緊急時に前記シリンダの内側に流体を供給する流体供給手段と、
前記シリンダの内側に設けられ、前記流体の圧力によって前記シリンダの軸方向先端側へ移動され、前記回転部材の歯部が係合した状態で移動されることで前記回転部材を一側へ回転させると共に、前記シリンダの軸方向基端側の部分が前記シリンダの前記ストレート部に入った移動部材と、を備え、
前記移動部材の前記軸方向基端側の部分、又は、前記シリンダの内側の前記ストレート部に設けられたシール部材と、前記流体供給手段と、の間には、隙間が形成されている
ウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記移動部材における前記シリンダの軸方向基端部に軸方向先端部よりも軸直交方向の径寸法が大径とされた部分を有する請求項1又は請求項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項4】
前記シリンダの軸方向に沿って複数の前記曲部が前記シリンダに設定された請求項1から請求項の何れか1項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項5】
前記シリンダの軸方向に沿って3以上の前記曲部が設定されると共に、少なくとも1の前記曲部の曲げの軸方向が他の少なくとも1つの曲部の曲げの軸方向に対して交差している請求項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項6】
前記シリンダの軸方向基端部では、前記シリンダの軸方向が車幅方向内側を向く請求項1から請求項の何れか1項に記載のウェビング巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材が回転されることによってスプールが巻取方向へ回転されるウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に開示されているウェビング巻取装置は、フレームに沿って適宜に曲がったチューブを備えている。チューブの軸方向基端部にはドライブユニットが設けられており、チューブの内側には可撓性を有する棒状の力伝達部材が配置されている。ドライブユニットが作動すると、チューブの内部にガスが供給される。このガスの圧力によって力伝達部材がチューブの軸方向先端側へ移動される。チューブの軸方向先端部の外側にはピニオンが配置されている。ピニオンは、スプールへ連結されており、ガスの圧力によってチューブの軸方向先端側へ移動された力伝達部材がチューブの外側へ出ると、力伝達部材がピニオンへ係合されてピニオンを回転させる。このように、ピニオンが回転されると、スプールが巻取方向へ回転され、ウェビングが巻き取られる。
【0003】
ところで、このようなチューブの内側に配置された力伝達部材は、温度や湿度の変化に伴い伸縮する。力伝達部材の軸方向基端側がチューブの曲部に配置されていると、軸方向基端側の端部がチューブの曲部に干渉して力伝達部材は軸方向先端側へ伸び出すことになり、伸縮を繰り返すことで力伝達部材の軸方向先端側がピニオン側に移動する。このため、力伝達部材の軸方向先端がピニオンに対して接触することの無いよう余裕をもって配置する必要があり、チューブの全長を長くするか力伝達部材を短くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/143090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、移動部材の軸方向先端側での延出を抑制できるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のウェビング巻取装置は、巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、一側への回転によって前記スプールが巻取方向へ回転される回転部材と、軸方向先端側が開口されると共に軸方向基端部に曲部が設定され、更に、前記曲部よりも軸方向基端側にストレート部が設定された筒状のシリンダと、前記シリンダの軸方向基端側に設けられ、車両緊急時に前記シリンダの内側に流体を供給する流体供給手段と、前記シリンダの内側に設けられ、前記流体の圧力によって前記シリンダの軸方向先端側へ移動され、前記回転部材の歯部が係合した状態で移動されることで前記回転部材を一側へ回転させると共に、前記シリンダの軸方向基端側の部分が前記シリンダの前記ストレート部に入った移動部材と、を備えている。
【0007】
本発明の第1の態様のウェビング巻取装置では、流体供給手段がシリンダの軸方向基端側に設けられ、車両緊急時に流体供給手段が作動されると、流体がシリンダの内側に供給される。これによってシリンダの内圧が上昇されると、シリンダの内側に設けられた移動部材がシリンダの軸方向先端側へ移動される。移動部材がシリンダの軸方向先端側へ移動されて、シリンダの軸方向先端側の開口から移動部材が抜出ると、移動部材が回転部材の歯部へ係合する。これによって、回転部材が一側へ回転される。回転部材が一側へ回転されると、スプールが巻取方向へ回転され、これによってシートベルト装置のウェビングがスプールに巻取られる。
【0008】
また、シリンダの軸方向基端部には、曲部が設定され、更に、この曲部よりも軸方向基端側にストレート部が設定される。移動部材のシリンダの軸方向基端側の部分は、シリンダのストレート部に入っている。このため、移動部材のシリンダの軸方向基端側の部分は、シリンダのストレート部に倣ってストレート状とされ、温度や湿度の変化によって移動部材の軸方向基端側へ伸び縮みする。これにより、移動部材の軸方向先端側の延出を抑制できる。
【0009】
本発明の第2の態様のウェビング巻取装置は、前記第1の態様のウェビング巻取装置において、前記移動部材における前記シリンダの軸方向基端部に軸方向先端部よりも軸直交方向の径寸法が大径とされた部分を有する。
【0010】
本発明の第2の態様のウェビング巻取装置では、移動部材におけるシリンダの軸方向基端部は、移動部材におけるシリンダの軸方向先端部よりも軸直交方向の径寸法が大径とされている。このため、移動部材のシリンダの軸方向基端部が温度や湿度の変化によって傾き難い。これにより、移動部材のシリンダの軸方向基端部が温度や湿度の変化によって移動部材の軸方向基端側へ伸び縮みする。これにより、移動部材の軸方向先端側の延出を抑制できる。
【0011】
本発明の第3の態様のウェビング巻取装置は、前記第2の態様のウェビング巻取装置において、前記移動部材の外周部における軸方向及び周方向の少なくとも一方に断続的に前記移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分を設けている。
【0012】
本発明の第3の態様のウェビング巻取装置では、移動部材の外周部における軸方向及び周方向の少なくとも一方に断続的に前記移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分を設けている。このため、移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分以外の部分は、移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分よりも小径とされる。このため、シリンダ内を移動するに際して移動部材の軸直交方向の径寸法が小径とされた部分は、シリンダから抵抗を受け難い。
【0013】
本発明の第4の態様のウェビング巻取装置は、前記第2又は前記第3の態様のウェビング巻取装置において、前記移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分よりも前記移動部材の軸方向先端側に前記移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分よりも軸直交方向の径寸法が小さい部分を有する。
【0014】
本発明の第4の態様のウェビング巻取装置では、移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分よりも移動部材の軸方向先端側に移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分よりも軸直交方向の径寸法が小さい部分を有する。移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分よりも軸直交方向の径寸法が小さい部分では、応力が集中し、曲がりやすい。このため、この移動部材の軸直交方向の径寸法が小さい部分で曲げが生じることで、移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分では、曲げが生じ難い。
【0015】
本発明の第5の態様のウェビング巻取装置は、前記第1から前記第4の何れか1つの態様のウェビング巻取装置において、前記シリンダの軸方向に沿って複数の曲部が前記シリンダに設定されている。
【0016】
本発明の第5の態様のウェビング巻取装置では、シリンダの軸方向に沿って複数の曲部がシリンダに設定されている。このため、シリンダは、平面的又は立体的になり、シリンダの全長を大きくできる。
【0017】
本発明の第6の態様のウェビング巻取装置は、前記第5の態様のウェビング巻取装置において、前記シリンダの軸方向に沿って3以上の前記曲部が設定されると共に、少なくとも1の前記曲部の曲げの軸方向が他の少なくとも1つの前記曲部の曲げの軸方向に対して交差している。
【0018】
本発明の第6の態様のウェビング巻取装置では、シリンダの軸方向に沿って3以上の曲部が設定される。また、本ウェビング巻取装置では、少なくとも1の曲部の曲げの軸方向が他の少なくとも1つの曲部の曲げの軸方向に対して交差している。このため、シリンダは、立体的になり、シリンダの全長を大きくできる。
【0019】
本発明の第7の態様のウェビング巻取装置は、前記第1から前記第6の何れか1つの態様のウェビング巻取装置において、前記シリンダの軸方向基端部では、前記シリンダの軸方向が車幅方向内側を向く。
【0020】
本発明の第7の態様のウェビング巻取装置では、シリンダの軸方向基端部では、シリンダの軸方向が車幅方向内側を向く。ところで、センターピラー内は、車幅方向内側へ向けて開口する。このため、ウェビング巻取装置がセンターピラーに設けられる場合には、シリンダの軸方向基端部が車幅方向内側を向くことで、シリンダの軸方向基端部がセンターピラーの開口側を向くことになる。このため、ウェビング巻取装置のセンターピラーへの組付後に流体供給手段をシリンダの軸方向基端部へ取り付けることができる。
【0021】
本発明の第8の態様のウェビング巻取装置は、前記第1から前記第7の何れか1つの態様のウェビング巻取装置において、前記移動部材の軸方向基端部に設けられ、前記シリンダの軸周り方向に環状とされ、前記シリンダと前記移動部材との間の隙間をシールするシール部材を備えている。
【0022】
本発明の第8の態様のウェビング巻取装置では、シール部材が移動部材に設けられる。シール部材は、シリンダの軸周り方向に環状とされ、シリンダと移動部材との間の隙間をシールする。ここで、シール部材は、移動部材の軸方向基端部に設けられる。このため、移動部材の軸方向基端を流体供給手段に近づけることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上、説明したように、本発明に係るウェビング巻取装置では、移動部材の軸方向先端側での延出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施の形態に係るウェビング巻取装置の分解斜視図である。
図2】車両前後方向に対して直交する方向に切った断面図である。
図3】移動部材がストッパへ当接した状態を示す車両前側からカバープレートの内側を見た側面図である。
図4】シリンダの装着部、第1ストレート部、第1曲部を示す断面図である。
図5】第2の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図6】第3の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図7】第4の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図8】第5の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図9】第6の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図10】第7の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図11】第8の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図12】第9の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図13】第10の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
図14】第11の実施の形態を示す図4に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図1から図14の各図に基づいて本発明の各実施の形態について説明する。なお、各図において矢印FRは、本ウェビング巻取装置10が適用された車両の前側を示し、矢印OUTは、車幅方向外側を示し、矢印UPは、車両上側を示す。また、各図において矢印Aは、スプール18がウェビング20を巻取る際のスプール18の回転方向である巻取方向を示し、矢印Bは、巻取方向とは反対の引出方向を示す。
【0026】
<第1の実施の形態の構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、車両の車体としてのセンターピラー(図示省略)の車両下側部分に固定されている。
【0027】
また、フレーム12にはスプール18が設けられている。スプール18は、略円筒形状に形成されており、中心軸線周り(図1の矢印A方向及び矢印B方向)に回転可能とされている。スプール18には、長尺帯状のウェビング20の長手方向基端部が係止されており、スプール18が巻取方向(図1の矢印A方向)へ回転されると、ウェビング20は、長手方向基端側からスプール18に巻取られる。また、ウェビング20の長手方向先端側は、スプール18から車両上側へ延び、フレーム12の車両上側でセンターピラーに支持されたスルーアンカ(図示省略)に形成されたスリット孔を通って車両下側へ折返されている。
【0028】
さらに、ウェビング20の長手方向先端部は、アンカプレート(図示省略)に係止されている。アンカプレートは、鉄等の金属板材によって形成されており、車両の床部(図示省略)又は本ウェビング巻取装置10に対応するシート(図示省略)の骨格部材等に固定されている。
【0029】
また、本ウェビング巻取装置10が適用された車両用のシートベルト装置は、バックル装置(図示省略)を備えている。バックル装置は、本ウェビング巻取装置10が適用されるシート(図示省略)の車幅方向内側に設けられている。シートに着座した乗員の身体にウェビング20が掛回された状態で、ウェビング20に設けられたタング(図示省略)がバックル装置に係合されることによって、ウェビング20が乗員の身体に装着される。
【0030】
また、図1に示されるように、フレーム12の車両後側には、スプリングハウジング22が設けられている。スプリングハウジング22の内側には、ぜんまいばね等のスプール付勢手段(図示省略)が設けられている。スプール付勢手段は、スプール18に直接又は間接的に係合され、スプール18は、スプール付勢手段の付勢力によって巻取方向(図1の矢印A方向)へ付勢されている。
【0031】
さらに、本ウェビング巻取装置10は、フォースリミッタ機構を構成するトーションバー24を備えている。トーションバー24の車両後側部分は、スプール18の内側に配置され、スプール18に対する相対回転が制限された状態でスプール18に繋がっている。これに対して、トーションバー24の車両前側部分は、フレーム12に形成された孔を通ってフレーム12の外側(車両前側)へ延びている。
【0032】
フレーム12の車両前側には、プリテンショナ26の回転部材28が設けられている。回転部材28は、スプール18に対する同軸上に配置されている。回転部材28には、トーションバー24の車両前側部分が連結されており、回転部材28は、トーションバー24の車両前側部分に対する相対回転が制限されている。また、回転部材28は、車両前後方向に互いに対向する一対のフランジ部30を備えている。図2に示されるように、一対のフランジ部30の間には、複数の歯32がトーションバー24の軸周り方向に所定の角度をおいて形成されている。
【0033】
また、一対のフランジ部30のうち、車両前側のフランジ部30は、ロック機構42のロックベース44とされている。ロックベース44は、ロックパウル48を備えている。ロックパウル48は、ロックベース44に形成されたボス46によって支持されており、ボス46を中心に回動可能とされている。
【0034】
一方、フレーム12の車両前側の脚板12Aには、ロック機構42及びプリテンショナ26の双方を構成するカバープレート50が固定されている。カバープレート50は、車両後側へ開口されており、カバープレート50の底板52は、フレーム12から車両前側へ離れた状態でフレーム12に対向されている。底板52には、ラチェット孔54が形成されている。ラチェット孔54の内周部には、ラチェット歯が形成されており、ロックベース44のロックパウル48がボス46周りの一方へ回動されると、ロックパウル48の先端部がラチェット孔54のラチェット歯に噛合う。これによって、ロックベース44の引出方向(図1の矢印B方向)への回転が制限され、スプール18の引出方向への回転が間接的に制限される。
【0035】
また、カバープレート50の車両前側には、ロック機構42のセンサホルダ56が設けられている。センサホルダ56は、車両後側へ開口されており、直接又はカバープレート50を介して間接的にフレーム12に固定されている。センサホルダ56の内側には、車両の緊急状態を検出するセンサ機構を構成する各部品が収容されている。車両緊急時にセンサホルダ56内のセンサ機構が作動されると、ロック機構42のロックベース44の引出方向へ回転に連動してロックベース44のロックパウル48がボス46周りの一方へ回動される。
【0036】
一方、ウェビング巻取装置10は、プリテンショナ26を構成する筒状部材としてのシリンダ58を備えている。シリンダ58は、円筒形状に形成されており、軸方向中間部で適宜に曲げられている。詳細には、フレーム12の車両上側における車両後側には、シリンダ58の装着部58Aが設けられている。装着部58Aの軸方向は、概ね、車幅方向に沿って直線状とされ、車幅方向内側へ向けて開口している。装着部58Aの車幅方向内側の開口端からは、流体供給手段としてのマイクロガスジェネレータ60(以下、マイクロガスジェネレータ60を「MGG60」と称する)が挿入されている。
【0037】
装着部58Aの車幅方向外側には、ストレート部としての第1ストレート部58Bが形成されている。第1ストレート部58Bの軸方向は、概ね、車幅方向に沿って直線状とされており、第1ストレート部58Bの軸方向基端(車幅方向内側端)は、装着部58Aの軸方向先端(車幅方向外側端)に繋がっている。第1ストレート部58Bの軸方向先端(車幅方向外側端)は、曲部としての第1曲部58Cの軸方向基端に繋がっている。第1曲部58Cの軸方向中間部は、概ね、車両上下方向を軸方向とする軸周り方向に曲がっており、第1曲部58Cの軸方向先端は、車両前側へ向いている。この第1曲部58Cの軸方向先端には、第2ストレート部58Dの軸方向基端(車両後側端)が繋がっている。
【0038】
第2ストレート部58Dの軸方向は、概ね、フレーム12の車幅方向外側端に沿って車両前後方向とされている。第2ストレート部58Dの軸方向先端(車両前側端)には、曲部としての第2曲部58Eの軸方向基端が繋がっている。第2曲部58Eの軸方向中間部は、概ね、車両上下方向を軸方向とする軸周り方向に曲がっており、第2曲部58Eの軸方向先端は、車幅方向内側へ向いている。この第2曲部58Eの軸方向先端には、第3ストレート部58Fの軸方向基端(車幅方向外側端)が繋がっている。
【0039】
第3ストレート部58Fの軸方向は、概ね、フレーム12の脚板12Aの車両上側端に沿って車幅方向とされている。第3ストレート部58Fの軸方向先端(車幅方向内側端)には、曲部としての第3曲部58Gの軸方向基端が繋がっている。第3曲部58Gの軸方向中間部は、概ね、車両前後方向を軸方向とする軸周り方向に曲がっており、第2曲部58Eの軸方向先端は、車両下側へ向いている。この第3曲部58Gの軸方向先端には、第4ストレート部58Hの軸方向基端(車幅方向外側端)が繋がっている。第4ストレート部58Hの軸方向は、概ね、フレーム12の脚板12Aの車幅方向内側端に沿って車両上下方向とされており、第4ストレート部58Hの軸方向先端(車両下側端)は、開口されている。
【0040】
このシリンダ58の装着部58Aに挿入されたMGG60は、制御手段としてのECUを介して車両に設けられた衝突検知センサ(何れも図示省略)に電気的に接続されており、車両衝突時の衝撃が衝突検知センサによって検知されると、MGG60がECUによって作動され、MGG60において発生された流体の一態様であるガスが、シリンダ58の内側へ供給される。
【0041】
プリテンショナ26のシリンダ58の第1ストレート部58Bの内側には、ピストンとしてのシールボール62が配置されている。シールボール62は、合成樹脂材によって形成されており、シールボール62に荷重が付与されていない状態でのシールボール62の形状は、略球形状とされている。シリンダ58の内部空間は、シールボール62によってシールボール62よりも軸方向基端側とシールボール62よりも軸方向先端側とに仕切られている。MGG60が作動されると、MGG60で発生されたガスがシリンダ58におけるMGG60とシールボール62との間に供給される。これによって、シリンダ58におけるMGG60とシールボール62との間で内圧が上昇されると、シールボール62は、シリンダ58の軸方向先端側へ移動されると共にシリンダ58の軸方向に圧縮されて変形される。
【0042】
また、プリテンショナ26のシリンダ58の内側には、移動部材64が配置されており、移動部材64の長手方向基端部は、シリンダ58の第1ストレート部58Bの内側に配置されている。移動部材64は、合成樹脂材によって形成されており、外力を受けることによって変形可能とされている。移動部材64は、シールボール62よりもシリンダ58の軸方向先端側に配置されており、シールボール62がシリンダ58の軸方向先端側へ移動されると、移動部材64は、シールボール62に押圧されてシリンダ58の軸方向先端側へ移動される。
【0043】
移動部材64がシリンダ58の第4ストレート部58Hの軸方向先端に到達した状態で移動部材64がシールボール62によって更に押圧されて移動されると、移動部材64は、シリンダ58の軸方向先端から車両下側へ出て、カバープレート50の内側に入る。この状態で移動部材64が更に車両下側へ移動されると、図3に示されるように、移動部材64の長手方向先端部は、回転部材28の歯32に当接される。この状態で、歯32が移動部材64によって車両下側へ押圧されることによって、回転部材28は、移動部材64からの巻取方向(図3の矢印A方向)への回転力が付与される。これによって、回転部材28は、巻取方向(図3の矢印A方向)へ回転され、移動部材64は、シールボール62からの圧力によって更に車両下側へ移動される。
【0044】
このように、移動部材64が車両下側へ移動され、回転部材28が巻取方向へ回転されることによって、回転部材28の歯32は、移動部材64に突刺さる。この状態で、移動部材64が更に車両下側へ移動されることにより、回転部材28には、更に巻取方向への回転力が付与され、回転部材28は、更に巻取方向へ回転される。
【0045】
一方、図1及び図2に示されるように、カバープレート50は、底板52を備えている。底板52は、板状とされ、底板52の厚さ方向は、概ね、車両前後方向(図1及び図2の矢印FR方向及びその反対方向)側とされている。また、カバープレート50は、側壁72を備えている。側壁72は、カバープレート50の底板52の外周部に沿って設けられており、図2及び図3に示されるように、回転部材28は、側壁72の内側に配置される。また、図3に示されるように、カバープレート50の内側には、ガイド部材82が設けられている。回転部材28よりも車両下側へ下がった移動部材64は、カバープレート50の側壁72とガイド部材82とに案内されて回転部材28よりも車幅方向外側を上昇する。
【0046】
回転部材28の車両上側には、ストッパ92が配置されている。回転部材28よりも車幅方向外側を上昇した移動部材64は、ストッパ92よりも車両上側で且つ車幅方向外側からストッパ92を押圧する。移動部材64に押圧されたストッパ92は、車両下側で且つ車幅方向内側へ移動され、移動部材64の長手方向基端側へ係合する。これによって移動部材64の進行が停止する。
【0047】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
本ウェビング巻取装置10では、車両緊急時の一態様である車両衝突時に、ECUによってプリテンショナ26のMGG60が作動されると、MGG60からシリンダ58の内側へ高圧のガスが瞬時に供給される。このガスの圧力によってシールボール62がシリンダ58の軸方向先端側へ移動されると、移動部材64がシールボール62に押圧されて移動部材64がシリンダ58の軸方向先端側へ移動される。
【0049】
移動部材64が軸方向先端側へ移動されることによって、移動部材64がシリンダ58の軸方向先端から車両下側へ出て、回転部材28の歯32が移動部材64へ当接される(図3参照)。これによって、回転部材28の歯32が移動部材64によって車両下側へ押圧されることによって、回転部材28は、移動部材64からの巻取方向(図3等の矢印A方向)への回転力が付与される。これによって、回転部材28が巻取方向(図4等の矢印A方向)へ回転される。
【0050】
さらに、回転部材28の複数の歯32のうち、移動部材64に押圧された歯32よりも引出方向側の歯32は、回転部材28の巻取方向への回転によって移動部材64の外周面から移動部材64の径方向中央側へ食込み又は突刺さる。
【0051】
このように、歯32が食込み又は突刺さった移動部材64が車両下側へ移動されることによって、回転部材28には、更に巻取方向への回転力が付与され、回転部材28は、回転部材28が更に巻取方向へ回転される。回転部材28の巻取方向への回転は、トーションバー24を介してスプール18に伝わり、スプール18が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング20がスプール18に巻取られて、ウェビング20による乗員の拘束力が増加される。
【0052】
一方、移動部材64がシールボール62に押圧されることによって、移動部材64が回転部材28よりも車両下側へ移動されると、移動部材64は、カバープレート50の側壁72、ガイド部材82に案内されて車両上側へ移動される。この状態で、移動部材64がシールボール62によって更に押圧されると、移動部材64の軸方向先端がストッパ92の車両上側で且つ車幅方向外側に位置する。この状態から移動部材64がシールボール62によって更に押圧されると、移動部材64は、ストッパ92の車両上側で且つ車幅方向外側からストッパ92を押圧する。これによって、ストッパ92が車両下側で且つ車幅方向内側へ移動され、移動部材64の回転部材28との係合部分よりも軸方向基端側へ係合される。これによって、移動部材64がシリンダ58から全て抜け出ることを防止できる。
【0053】
ところで、本実施の形態では、シリンダ58は、第1ストレート部58Bを備えており、移動部材64の軸方向基端側部分がシリンダ58の第1ストレート部58Bに入っている。移動部材64において第1ストレート部58Bに入った部分は、シリンダ58の第1ストレート部58Bの温度や湿度の上昇、下降等による引っ掛かりが少ない。このため、移動部材64において第1ストレート部58Bに入った部分は、移動部材64の軸方向に伸び縮みできる。これによって、移動部材64の軸方向先端部の移動部材64の軸方向への延出を抑制できる。
【0054】
移動部材64の軸方向先端部の移動部材64の軸方向先端側への延出を抑制できるため、移動部材64の軸方向先端を回転部材28の歯32へ近づけて配置でき、移動部材64の全長を大きくできる。
【0055】
また、移動部材64の軸方向先端を回転部材28の歯32へ近づけて配置できるため、MGG60が作動してから回転部材28が回転を開始するまでのタイムラグを小さくできる。
【0056】
さらに、移動部材64の全長を長くできるため、移動部材64が移動された際にシールボール62がシリンダ58の軸方向先端部から抜け出ることを防止できる。
【0057】
また、移動部材64の軸方向先端部の移動部材64の軸方向先端側への延出を抑制できるため、シリンダ58内への移動部材64の組付工程でのシリンダ58に対する移動部材64の位置の管理幅を大きくできる。
【0058】
さらに、本実施の形態では、シリンダ58は、第1曲部58C、第2曲部58E、第3曲部58Gを備えている。第1曲部58C及び第2曲部58Eでは、車両上下方向を軸方向とする軸周り方向にシリンダ58が曲がっており、第3曲部58Gでは、車両前後方向を軸方向とする軸周り方向にシリンダ58が曲がっている。このように、シリンダ58は、立体的(三次元的)に曲がっているため、シリンダ58を充分に長くでき、しかも、ウェビング巻取装置10を三次元的にコンパクトにできる。
【0059】
また、本実施の形態では、シリンダ58の軸方向基端部では、シリンダ58の軸方向が車幅方向内側を向く。ところで、センターピラーの車両下側部分は、車幅方向内側へ向けて開口している。このため、ウェビング巻取装置10がセンターピラーに設けられる場合には、シリンダ58の軸方向基端部が車幅方向内側を向くことで、シリンダ58の軸方向基端部がセンターピラーの開口側を向くことになる。このため、ウェビング巻取装置10のセンターピラーへの組付後にMGG60をシリンダ58の軸方向基端部へ取り付けることができる。
【0060】
<第2の実施の形態>
図5に示されるように、本実施の形態では、移動部材64の軸方向基端部に凹部100が形成されている、凹部100は、移動部材64の中心軸線に沿って移動部材64の軸方向基端側を曲率中心として凹形状に湾曲されている。凹部100の曲率半径は、シールボール62の半径寸法以上とされており、シリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向に沿ったシールボール62の一部は、凹部100の内側に入っている。
【0061】
以上の構成の本実施の形態では、シリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向に沿ってシールボール62と、移動部材64とがラップしている。このため、シリンダ58の第1ストレート部58Bの長さを短くできる。
【0062】
また、移動部材64の軸方向基端部に凹部100を形成した点以外、本実施の形態の構成は、基本的に前記第1の実施の形態の構成と同じである。したがって、本実施の形態は、基本的に前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
<第3の実施の形態>
図6に示されるように、本実施の形態では、シールボール62に代わり、シール部材102が設けられている。シール部材102は、シリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向先端側へ向けて張り出した略半球形状とされている。シール部材102においてシリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向先端側へ向けて張り出した部分は、凹部100の内側に収容されている。
【0064】
以上の構成の本実施の形態では、シール部材102においてシリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向先端側へ向けて張り出した部分が凹部100の内側に収容されている。このため、シリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向に沿ってシール部材102と、移動部材64とがラップしている。このため、シリンダ58の第1ストレート部58Bの長さを更に短くできる。
【0065】
また、移動部材64の軸方向基端部に凹部100を形成した点以外、本実施の形態の構成は、基本的に前記第1の実施の形態の構成と同じである。したがって、本実施の形態は、基本的に前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
<第4の実施の形態>
図7に示されるように、本実施の形態のシール部材102は、円錐台部104を備えている。円錐台部104は、シリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向先端側へ向けて第1ストレート部58Bの軸方向に対して直交する径寸法が短くなる略円錐台形状とされている。この円錐台部104に対応して移動部材64の凹部100内は、シリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向基端側へ向けて径寸法が大きくなる略円錐台形状とされている。さらに、移動部材64の凹部100におけるシリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向基端側の端部では、外径寸法が拡大されており、凹部100における第1ストレート部58Bの軸方向基端側端では、移動部材64の外径寸法が、シリンダ58の第1ストレート部58Bの内径寸法に等しい。
【0067】
この構成の本実施の形態では、MGG60が作動されて、シール部材102がシリンダ58の軸方向先端側へ移動されると、移動部材64の凹部100は、シリンダ58の内周部とシール部材102の外周部との隙間に入る。これによっても、シール部材102がシリンダ58の軸方向先端から抜け難くなる。
【0068】
また、本実施の形態の構成は、基本的に前記第2の実施の形態の構成と同じである。したがって、本実施の形態は、基本的に前記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、前記第3の実施の形態では、シール部材102は、シリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向先端側へ向けて張り出した略半球形状とされていた。また、前記第4の実施の形態では、シール部材102は、シリンダ58の第1ストレート部58Bの軸方向先端側へ向けて第1ストレート部58Bの軸方向に対して直交する径寸法が短くなる略円錐台形状とされていた。しかしながら、シール部材102及び凹部100の形状は、略半球形状や略円錐台形状以外の形状であってもよい。
【0070】
<第5の実施の形態及び第6の実施の形態>
図8に示されるように、第5の実施の形態では、移動部材64の軸方向基端部における外周部に2本の溝106が形成されている。溝106は、移動部材64の軸方向基端部における中心軸線を中心とする環状で、移動部材64の軸方向に対して直交する方向へ向けて移動部材64の外周部で開口されている。これらの溝106の内側には、シール部材102が配置されている。シール部材102は、環状とされており、溝106の内側及びシリンダ58の内周部へ圧接されている。
【0071】
一方、図9に示されるように、第6の実施の形態では、移動部材64の軸方向基端には取付部108が形成されている。取付部108は、移動部材64の他の部分よりも径方向(シリンダ58の軸方向に対して直交する方向)の寸法が短く、移動部材64の他の部分に対する同軸上に形成されている。この移動部材64の取付部108には、シール部材102が配置されている。シール部材102は、環状とされており、溝106の内側及びシリンダ58の内周部へ圧接されている。
【0072】
以上の構成の第5の実施の形態及び第6の実施の形態では、移動部材64の軸方向基端部にシール部材102が設けられる構成である。このため、移動部材64の軸方向基端とMGG60との間にシールボール62等の他の部材が介在しない。これにより、移動部材64の軸方向基端とMGG60との間の隙間を短くでき、シリンダ58の第1ストレート部58Bの長さを短くできる。
【0073】
また、第5の実施の形態及び第6の実施の形態は、シールボール62を環状のシール部材102に代えた構成である。したがって、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
なお、第5の実施の形態では、シール部材102は、2本であり、第6の実施の形態では、シール部材102は、1本であった。しかしながら、シール部材102は、3本以上であってもよい。
【0075】
<第7の実施の形態>
図10に示されるように、第7の実施の形態では、移動部材64に大径部110が形成されている。大径部110は、取付部108に対して移動部材64の軸方向先端側で隣接しており、径方向(移動部材64におけるシリンダ58の軸方向に対して直交する方向)の寸法が、移動部材64の他の部分よりも大きくされている。
【0076】
このため、シリンダ58の軸方向に対する移動部材64の大径部110の軸方向の傾きを抑制でき、これによって、環状のシール部材102の軸方向がシリンダ58の軸方向に対して傾くことを抑制できる。これによって、シール部材102がシリンダ58の第1曲部58Cで強い干渉を受けることを抑制でき、シール部材102が切れたりすることを抑制できる。
【0077】
また、大径部110を形成している他は、前記第6の実施の形態と基本的に同一の構成である。このため、前記第6の実施の形態と基本的に同一の効果を得ることができる。
【0078】
<第8の実施の形態から第10の実施の形態>
図11に示されるように、第8の実施の形態では、3つの大径部110が移動部材64の軸方向基端部における軸方向に所定の間隔をおいて形成されている。
【0079】
一方、図12に示されるように、第9の実施の形態では、大経部としての複数本のリブ112が移動部材64の軸方向基端部における移動部材64の外周部に形成されている。各リブ112の長手方向は、移動部材64の軸方向とされており、各リブ112は、移動部材64の周方向に所定の間隔をおいて設けられている。移動部材64においてリブ112が形成されている部分では、移動部材64の他の部位よりも径方向(移動部材64におけるシリンダ58の軸方向に対して直交する方向)の寸法が大きい。
【0080】
また、図13に示されるように、第10の実施の形態では、大経部としての複数のドット114が形成されている。ドット114は、移動部材64の軸方向に対して直交する方向へ向けて張り出した略半球形状とされている。移動部材64においてドット114が形成されている部分では、移動部材64の他の部位よりも径方向(移動部材64におけるシリンダ58の軸方向に対して直交する方向)の寸法が大きい。
【0081】
このような第8の実施の形態、第9の実施の形態、第10の実施の形態でも、前記第7の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
<第11の実施の形態>
図14に示されるように、第11の実施の形態では、移動部材64には縮径部116が形成されている。縮径部116は、移動部材64の大径部110に対して移動部材64の軸方向先端側で移動部材64の大径部110に隣接して設けられている。縮径部116における移動部材64の軸方向基端の外径寸法は、移動部材64の大径部110の外径寸法に等しく、縮径部116における移動部材64の軸方向基端から軸方向先端側へ向けて外径寸法が短くなっている。
【0083】
また、移動部材64には括れ部118が形成されている。括れ部118は、移動部材64の縮径部116に対して移動部材64の軸方向先端側で移動部材64の縮径部116に隣接して設けられている。括れ部118は、移動部材64における括れ部118以外の部分よりも外径寸法が短い。移動部材64の初期状態(MGG60が作動する前の状態)では、括れ部118は、シリンダ58の第1曲部58Cの内側に配置されている。
【0084】
このような構成の本実施の形態では、移動部材64を曲げようとすると、括れ部118に曲げ応力が集中して、移動部材64において括れ部118以外の部位に比べて括れ部118で曲げが誘発され、括れ部118では、移動部材64において括れ部118以外の部位に比べて大きく曲がる。これによって、移動部材64の大径部110での曲げを抑制できる。
【0085】
また、本実施の形態は、括れ部118を形成している以外は前記第7の実施の形態と同じ構成である。このため、前記第7の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
なお、本第11の実施の形態では、移動部材64に縮径部116が形成された構成であった。しかしながら、移動部材64に縮径部116を形成しない構成であってもよい。
【0087】
また、第7の実施の形態から第11の実施の形態では、シリンダ58は、第1ストレート部58Bを有しており、大径部110、リブ112、ドット114の少なくとも一部が第1ストレート部58B内に配置されていた。しかしながら、シリンダ58は、第1ストレート部58Bを備えず、装着部58Aに隣接して第1曲部58Cが形成される構成であってもよい。
【0088】
さらに、上記の各実施の形態では、シリンダ58は、第1曲部58C、第2曲部58E、第3曲部58Gの3つの曲部を有していた。しかしながら、曲部は、1つでもよいし、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
10・・・ウェビング巻取装置、18・・・スプール、20・・・ウェビング、28・・・回転部材、58・・・シリンダ、58B・・・第1ストレート部(ストレート部)、58C・・・第1曲部(曲部)、58E・・・第2曲部(曲部)、58G・・・第3曲部(曲部)、60・・・マイクロガスジェネレータ(流体供給手段)、64・・・移動部材、102・・・シール部材、110・・・大径部(移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分)、112・・・リブ(移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分)、112・・・各リブ、114・・・ドット(移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分)、118・・・括れ部(移動部材の軸直交方向の径寸法が大径とされた部分よりも軸直交方向の径寸法が小さい部分)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14