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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】半田付け装置、および半田付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/00 20060101AFI20240718BHJP
   B23K 3/06 20060101ALI20240718BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240718BHJP
   B23K 1/00 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
B23K3/00 310B
B23K3/06 G
H05K3/34 505A
B23K1/00 330E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020197507
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085700
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】397065767
【氏名又は名称】株式会社パラット
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(72)【発明者】
【氏名】中 眞一郎
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-167246(JP,A)
【文献】特開2019-179785(JP,A)
【文献】特開2017-28290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0093340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00 - 3/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体と第2導体とを溶融半田によって半田付けする半田付け装置であって、
半田片を通過させる半田片供給通路を有する複数のノズルと、
複数の前記ノズルの内から実行用のノズルを選択するノズル選択手段と、
前記ノズル選択手段によって選択された前記実行用のノズルを半田付けを実行する実行位置に移動させるノズル移動手段と、
前記第1導体と当該ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させて前記第1導体と当該ノズルとを近接または当接させる相対距離変化手段と、
前記半田片を前記実行用のノズルの前記半田片供給通路に供給する半田片供給手段と、
前記実行用のノズルの前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させる加熱手段と、
前記半田付けに使用した前記実行用のノズルと、次に使用する前記ノズルとを入れ替えるノズル入れ替え機構とを備え、
前記半田片供給通路は、
通路幅方向の平面上で複数、かつ複数の前記ノズル毎にそれぞれ異なる位置パターンで形成される
半田付け装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、
前記実行用のノズルに対して、前記半田片供給通路の前記通路幅方向から挟み込むように備えられた
請求項1記載の半田付け装置。
【請求項3】
複数の前記ノズルの内、使用していない選択用ノズルについて予熱を行う予熱手段を備える
請求項1または2記載の半田付け装置。
【請求項4】
前記第1導体および前記第2導体を複数有する基板について、複数の前記第1導体の位置情報を取得する半田付け位置取得手段を備え、
前記ノズル選択手段は、前記半田付け位置取得手段で取得した前記位置情報に基づいて、複数の前記ノズルの中から使用する前記ノズルを選択する構成である
請求項1、2、または3記載の半田付け装置。
【請求項5】
前記位置情報に基づいて、複数の前記第1導体を含む領域を複数の個別領域に分割する領域分割手段を備え、
前記ノズル選択手段は、前記個別領域毎に前記実行用のノズルを選択する
請求項4記載の半田付け装置。
【請求項6】
前記半田片供給手段は、
前記位置情報に基づいて、必要な位置の前記半田片供給通路にのみ前記半田片を供給する
請求項4記載の半田付け装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の半田付け装置を用い、
前記相対距離変化手段により前記第1導体と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させて前記第1導体と前記ノズルを近接または当接させ、
前記半田片供給手段により複数の前記半田片を前記ノズルの複数の前記半田片供給通路に一斉に供給し、
前記加熱手段により前記ノズルの前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させ、
前記第1導体と前記第2導体を前記半田片が溶融した溶融半田により半田付けする
半田付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、プリント基板やモータ等の適宜の製品における第1導体(端子、ランド、リード線等)と第2導体(端子、ランド、リード線等)を半田付けする半田付け装置、および半田付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板に電子部品を機械的に半田付けする半田付け装置が提供されている。この半田付け装置には、半田の液面にプリント基板を接触させて半田付けするフロー半田付け法や、予めパターンに合わせてクリーム半田を基板に印刷しておきクリーム半田に熱を加えて溶かすことで半田付けするリフロー半田付け法等、様々な方式が提案されている。
【0003】
ここで、出願人は、半田ごてとして円筒形のノズルを用い、このノズル内にプリント基板のスルーホールに挿通された電子部品のピンを挿入し、内部で半田を溶かして半田付けする方式の半田付け装置を開発し、提供している(特許文献1参照)。
【0004】
そして、ノズルの温度、ノズルの位置、ノズルの荷重および半田の供給量について、装置の起動時や運用中など所定のタイミングで確認することにより、半田付けの信頼性や確実性の更なる向上を図っている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、近年では、様々な形状を有する半田付け対象を連続して半田付けするために、様々な半田付け対象に対応できる半田付け装置の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-120869号公報
【文献】特開2015-115427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑みて、様々な半田付け対象に対応できる半田付け装置と半田付け方法を提供し、利用者の満足度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、第1導体と第2導体とを溶融半田によって半田付けする半田付け装置であって、半田片を通過させる半田片供給通路を有する複数のノズルと、複数の前記ノズルの内から使用する前記ノズルを選択するノズル選択手段と、前記ノズル選択手段によって選択された前記ノズルを、使用する前記ノズルとして前記半田付けを実行する位置に移動させ、前記第1導体と当該ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させて前記第1導体と当該ノズルとを近接または当接させるノズル移動手段と、前記半田片を使用する前記ノズルの前記半田片供給通路に供給する半田片供給手段と、使用する前記ノズルの前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させる加熱手段と、前記半田付けに使用した前記ノズルと、次に使用する前記ノズルとを入れ替えるノズル入れ替え機構とを備え、前記半田片供給通路は、通路幅方向の平面上で複数、かつ複数の前記ノズル毎にそれぞれ異なる位置パターンで形成される半田付け装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、様々な半田付け対象に対応できる半田付け装置と半田付け方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半田付け装置の右側面図。
図2】半田付け装置の正面図。
図3】半田付け装置の駆動系および制御系の構成を示すブロック図。
図4A】糸半田切断機構部の構成を説明する斜視図。
図4B】糸半田切断機構部の構成を説明する縦断面図。
図5A】半田片収容前の糸半田切断機構部の縦断面図。
図5B】半田片収容途中の糸半田切断機構部の縦断面図。
図5C】半田片収容完了時の糸半田切断機構部の縦断面図。
図5D】半田片供給時の糸半田切断機構部の縦断面図。
図6A】ノズルとヒータの構成を示す分解斜視図。
図6B】ノズルの縦断面図。
図7】ノズル及び糸半田切断機構部を模式的に示した説明図。
図8】異なる大きさおよび位置パターンの半田片供給通路を有する複数のノズルの説明図。
図9】半田付け工程のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
【0012】
図1および図2は、半田付け装置1の外観構成の説明図であり、図1は右側面図、図2は正面図である。
【0013】
図1に示すように、半田付け装置1は、半田付け対象であるプリント基板Pのスルーホールに半田付けを行うノズル61(半田ごて)を有するヘッド部3と、ヘッド部3およびノズル61をフローティング状態にするエアーサスペンションユニット5と、エアーサスペンションユニット5およびノズル61を半田付け対象に近接/離間させる方向(図1の上下方向)に移動させる近接離間方向移動ユニット6(相対距離変化手段)と、近接離間方向移動ユニット6およびノズル61をプリント基板Pが搬送される搬送方向(図1の奥行方向,図2の左右方向)に移動させる搬送方向移動ユニット7と、搬送方向移動ユニット7およびノズル61を搬送方向移動ユニット7の搬送幅方向(図1の左右方向,図2の前後方向)に移動させる搬送幅方向移動ユニット8と、プリント基板Pを搬送する搬送路9と、切断機構部(後述の糸半田切断機構部40)を収納(収容)する切断機構収納部10と、未使用のノズル61を収納する選択用ノズル収納部11と、使用済みのノズル61を収納する使用済みノズル収納部12と、を有している。
【0014】
エアーサスペンションユニット5の上部には、リールに巻かれた糸半田2aが設けられている。この糸半田2aは、φ0.3~φ2.0mmを用いることができ、φ0.6~φ1.6mmのものを用いることが好ましい。
【0015】
ヘッド部3の下部には、ノズルユニット60が設けられ、ノズルユニット60にはヒータ51(加熱手段)が接続されている。
搬送幅方向移動ユニット8の上面は、プリント基板Pを搬送する搬送路9の上面とほぼ同じ高さに構成されている。
【0016】
ヘッド部3の可動範囲は、搬送幅方向移動ユニット8の上方に位置する待機位置(図1に示すP1の位置)と、プリント基板Pに対して半田付けを行う半田付け領域E1,E2(図1のE1と図2のE2で囲まれるまたは区画される領域)とになる。ヘッド部3は、これらの待機位置、及び半田付け領域のどの位置であっても近接離間方向移動ユニット6によって移動される。
【0017】
この構成により、半田付け装置1は、待機時にはノズルユニット60を待機ポジションP1の高さおよび位置に待機しておき、半田付け工程を実行するときは半田付け領域E1,E2内で待機ポジションP1よりも低い(半田付け対象に近い)半田付けポジションP2の高さにて半田付けを行う。ノズル61の交換時は、領域E1,E2の外で半田付けポジションP2よりさらに低い交換ポジションP3で交換を実行する。
【0018】
選択用ノズル収納部11は、複数(この実施例では4つ)のスロット(図示省略)を有しており、各スロットに選択用ノズル61b、61c、61dを格納している。選択用ノズル収納部11には、各選択用ノズルを固定する台として、あらかじめ各選択用ノズル61b、61c、61dを加熱(予熱)するプリヒータ110を内蔵する。
【0019】
また、選択用ノズル収納部11は、選択用ノズル移動部11aと、選択用ノズル繰り出し収納機構部11bを有している。
選択用ノズル移動部11aは、選択用ノズル収納部11に一列に整列して配置されている複数の選択用ノズル61b~61d(図示省略する選択用ノズル61aを含む)を整列方向の一方向へ進退移動させる。これにより、選択用ノズル繰り出し収納機構部11bにて繰り出す選択用ノズル61~61dを切り替えるとともに、空きスロットに使用したノズル61を収納できる位置に切り替える。
【0020】
選択用ノズル繰り出し収納機構部11bは、適宜のモータとローラで構成され、選択用ノズル移動部11aによって移動されてきた選択用ノズル61b,61c,61dの1つを上方へ繰り出し(上方へ移動させ)、繰り出した選択用ノズル61b,61c,61dを後述するノズル保持部材66により保持できるようにする。また、選択用ノズル繰り出し収納機構部11bは、後述するノズル保持部材66がノズル61を空きスロットにノズル61に向けて解放した際に、落下するノズル61を選択用ノズル61a(図示省略)として下方へ収納し、選択用ノズル61aをプリヒータ110に当接させて加熱可能な状態にする。
このように、使用していたノズル61(実行用ノズル)を空きスロットに収納し、選択用ノズル61b,61c,61dを後述するノズル保持部材66により保持することで、ノズル61の交換を可能にしている。
【0021】
切断機構収納部10は、糸半田切断機構部40を上下方向(近接離間方向)に整列させて複数収納する上下方向に長い切断機構収納体10bと、切断機構収納体10bを上下方向(近接離間方向)へ移動させる切断機構収納体移動機構部10aと、切断機構収納体10bに収納されている1つの糸半田切断機構部40をヘッド部3へ送り出し/収容する送り出し収容機構部10cを有している。
【0022】
切断機構収納体移動機構部10aは、切断機構収納体10bを上下方向に移動させる。この上下方向の移動の際、切断機構収納体10bに収納されている糸半田切断機構部40も一緒に上下方向に移動する。
【0023】
切断機構収納体10bは、上下方向にスロット(図示省略)が複数配置されており、各スロットに、外形サイズと外形形状が同じで半田片収納部45(後述)の配置が異なる複数種類の糸半田切断機構部40を、ヘッド部3へ向かって水平に移動可能に収納している。
【0024】
送り出し収容機構部10cは、位置が固定されており、切断機構収納体移動機構部10aによって送り出し収容機構部10cの位置にセットされた糸半田切断機構部40(40a~40dのいずれか1つ)を水平移動させてヘッド部3に送り出す。また、送り出し収容機構部10cは、切断機構収納体10bの空きスロットが送り出し収容機構部10cの位置にセットされている状態で、ヘッド部3から水平移動されてきた糸半田切断機構部40を水平移動させて空きスロットに収納する。
【0025】
図3は、半田付け装置1の駆動系および制御系の構成を示すブロック図である。半田付け装置1は、搬送幅方向移動ユニット8(図1参照)に固定されて搬送路9(図1参照)へ向かって真っすぐ伸びるY方向(搬送幅方向,図2の奥行方向)の搬送ガイド7fと、サーボモータ等の駆動機構部7eによりY方向の搬送ガイド7fに沿って移動するX方向(搬送方向,図2の左右方向)の搬送ガイド7cが設けられている。この駆動機構部7eおよびY方向の搬送ガイド7fは、搬送幅方向移動ユニット8(図1参照)内に収納されている。X方向の搬送ガイド7cは、搬送路9の搬送方向(X方向)へ向かって真っすぐ伸びている。
【0026】
X方向の搬送ガイド7cの上部には、X方向の搬送ガイド7cに沿ってX方向に移動する移動体7aと、この移動体7aをX方向の搬送ガイド7cに沿ってX方向へ移動させるサーボモータ等で構成された駆動機構部7bが設けられている。この移動体7a、駆動機構部7b、およびX方向の搬送ガイド7cは、搬送方向移動ユニット7(図1参照)内に収納されている。この移動体7a、駆動機構部7b、X方向の搬送ガイド7c、駆動機構部7e、およびY方向の搬送ガイド7fは、作業させたい任意の位置へノズルユニット60を移動させるノズル位置移動手段として機能する。
【0027】
移動体7aには、ノズルユニット60がスルーホールに近接/離間する方向に伸びるZ方向(高さ方向)の搬送ガイド5cが設けられている。この搬送ガイド5cには、Z方向に移動するヘッド固定部5a、およびサーボモータ等で構成される駆動機構部5bが設けられている。ヘッド固定部5a、駆動機構部5b、および搬送ガイド5cは、ノズルユニット60を半田付け対象に近接/離間させる方向へ移動させる近接離間方向移動手段として機能し、近接離間方向移動ユニット6(図1参照)内に収納されている。
【0028】
このように構成されたY方向の搬送ガイド7fとX方向の搬送ガイド7c、および駆動機構部7b,7eがノズル位置移動手段として機能することにより、ノズルユニット60の位置を半田付けする任意の位置へ移動させることができる。また、Z方向の搬送ガイド5cおよび駆動機構部5bが近接離間方向移動手段として機能することにより、移動させた位置でノズルユニット60を近接方向へ移動させてノズルユニット60の孔(後述の半田片供給通路63)内に半田付けするピンを挿通しノズルユニット60の先端をスルーホールに当接させる等の半田付け位置にて半田付け対象に当接または近接させ、半田付け後に離間させることができる。また、Z方向の搬送ガイド5cおよび駆動機構部5bにより、ノズルステーション(図示省略)で交換用のノズルユニット60またはヒータ51に近接する方向へ移動させ、ノズルユニット60またはヒータ51を交換した後に離間させることができる。
【0029】
ヘッド固定部5aには、フローティングユニット15が設けられている。このフローティングユニット15は、エアーサスペンションユニット5(図1)内に設けられ、供給されたエアによってノズルユニット60を持ち上げ、プリント基板Pに対するフローティングユニット15(ノズルユニット60が含まれる)の相対的な重みを軽くするものである。例えば、通常の加重を100とするとフローティングユニット15の加重が10%となるようにするなど、適宜の構成とすることができる。
【0030】
ヘッド部3は、フローティングユニット15に固定され、糸半田2a(図1参照)を挿通すると、糸半田供給ガイド16内の糸半田をローラで挟み込んで送り出す糸半田送り出し機構部17が設けられ、ヘッド部3の底部の所定位置(第1位置)に位置する糸半田切断機構部40を備えている。この糸半田切断機構部40は、平面視直交する複数方向、換言すればいわゆるXY方向に駆動可能な2つのサーボモータ等により構成される平面移動機構部19(半田片収納体移動手段)により移動可能に構成されており、糸半田供給ガイド16に供給されてきた糸半田2a(図1参照)を平面移動機構部19の制御に従って切断する。ここで、本実施形態では上にも示した通り、この平面移動機構部19が、本発明に係る半田片収納体移動手段に相当する。
【0031】
また、ヘッド部3の内部空間と切断機構収納部10の内部空間とは連通しており、糸半田切断機構部40は、平面移動機構部19によってヘッド部3の内部空間と切断機構収納部10の内部空間との間を相互に移動可能である。平面移動機構部19は、糸半田切断機構部40を第1位置から移動させて切断機構収納部10に収納し、切断機構収納部10に収納された別の糸半田切断機構部40を第1位置に移動させる(糸半田切断機構部40を交換する)動作を行う。
【0032】
これらの構成要素を駆動するべく、各要素は制御部21によって制御される。制御部21には、駆動機構部5b、駆動機構部7b、駆動機構部7e、フローティングユニット15、糸半田送り出し機構部17、平面移動機構部19、ヒータユニット密着確認センサ22、温度センサ23、着脱用エアシリンダ24、カメラ25、及び記憶部26が接続されている。
【0033】
カメラ25は、半田付け対象となるプリント基板のスルーホールおよびピンの位置等(位置情報)を確認して位置決めする際、半田付け対象となるプリント基板のスルーホールおよびピンの位置等から使用するノズル61を選択する際、および、半田付アカメが発生した場合等の半田付け異常を検出する際等に用いられる。
【0034】
記憶部26は、プリント基板等の半田付け対象ワークの画像と、この半田付け対象ワークに使用するツール(ノズルユニット60、若しくはヒータ51)を関連づけた半田付け対象ワーク別ツールデータ、現在装着しているツールの種類、現在装着しているツールの使用回数および使用時間等のデータを記憶している。
【0035】
また、記憶部26は、切断機構収納体10bの各スロットに収納されている半田片切断機構部40a~40dの種類と、選択用ノズル収納部11の各スロットに収納されている選択用ノズル61a~61dと、各半田片切断機構部40(40a~40d)およびノズル61(61a~61d)の配置と、プリント基板Pなどのはんだ付け対象における各領域のどこにどの選択用ノズル61a~61dと半田片切断機構部40a~40dが対応するかを記憶している。
【0036】
したがって、制御部21は、記憶部26に記憶されているこれらの情報をもとに、1つのプリント基板Pなどのはんだ付け対象製品の複数の領域に対して、領域毎に選択用ノズル61a~61dと半田片切断機構部40a~40dを交換しながら全領域のはんだ付けを実行し、次の同じはんだ付け対象製品に対して再度同じように領域毎にはんだ付けを実行することができる。各領域については、複数の糸半田2aを一斉にはんだ付けすることができる。
【0037】
図4は、糸半田切断機構部40の構成を説明する説明図であり、図4Aは糸半田切断機構部40の分解斜視図、図4Bは糸半田切断機構部40の縦断面図を示す。
【0038】
糸半田切断機構部40は、下方へ繰り出されてきた糸半田2aを通過させる通路を有する糸半田供給ガイド16と、切断した半田片2bを複数収納する半田片収納体44と、半田片収納体44を移動させる平面移動機構部19(図3参照)により構成されている。また、半田片収納体44には、収納された半田片2bの貯留/放出を制御するシャッタ36と、シャッタ36を付勢する付勢体35(付勢手段)とが設けられている。また、半田片収納体44とは分離して、シャッタ36を解放操作するシャッタ操作部49(シャッタ移動規制体)が設けられている。なお、半田片収納体44と、平面移動機構部19と、シャッタ36と、シャッタ操作部49は、半田片2bをノズル61の孔(後述の半田片供給通路63)に供給する半田片供給手段として機能する。このように、この平面移動機構部19は、半田片収納体44を半田片収納部45に半田片2bを収容する方向と直交する平面上の二方向(XY方向)へ移動させるXY移動ステージである。
【0039】
糸半田供給ガイド16は、金属部材によって円筒形に形成されており、内側の孔(通路)に糸半田2aを長手方向へ通過させる。また、糸半田供給ガイド16は、糸半田2aの通過方向と直角の方向(糸半田2aの半径方向)へは移動しないように固定されている。
【0040】
付勢体35は、適宜のバネで構成することができ、この実施例では金属製の鶴巻ばねにて構成されている。
【0041】
シャッタ36は、L字型に屈曲させた金属板により構成されており、L字の底面部が水平状態(近接離間方向に垂直な状態)の貯留/放出制御板部38であり、L字の鉛直面部が付勢体35に押圧される押圧操作部37である。貯留/放出制御板部38は、複数の解放孔38a(貫通孔または貫通溝)が設けられている。この実施例では解放孔38aは都合8つ設けられている。この解放孔38aの隣接部分(解放孔38aと解放孔38aの間部分を含む)は、半田片2bの落下を防止する閉鎖部として機能する。なお、シャッタ36に複数の解放孔38aを設けているが、これに限らず、複数の解放溝を設けて、シャッタ36の貯留/放出制御板部38が平面視櫛状に見える構成としてもよい。この場合も同じ機能を確保できる。すなわち本実施形態では、半田片収納部45に収容された半田片2bを収容している収容状態と半田片2bをノズル61の半田片供給通路63へ供給する解放状態に切り替える、本発明に係る貯留/放出制御板部38を有している。
【0042】
半田片収納体44は、横長の立方体形状のブロック部43の下面に当該ブロック部43の短手方向の幅よりも幅広で長手方向に同じ長さのガイド部48が一体形成されている。ガイド部48には、長手方向に貫通するシャッタ挿入孔47が設けられている。このシャッタ挿入孔47は、高さと幅がシャッタ36の貯留/放出制御板部38の高さと幅よりわずかに大きく形成され、シャッタ36がブレなくスムーズに長手方向へスライド移動できるように構成されている。ブロック部43とガイド部48には、上下方向(近接離間方向)に貫通する半田片収納部45が複数設けられている。この実施形態では上述の通り都合8つ設けられており、シャッタ36の解放孔38aと同じ大きさで同じ間隔で設けられている。
換言すれば、本実施形態に係る半田片収納体44の半田片収納部45は、本実施形態では、少なくともノズルユニット60の半田片供給通路63と同じ位置で同じ数が設けられている。これらの複数の半田片収納部45は、すべて同じ太さで同じ長さの一直線状の孔であり、互いに平行に形成されている。
【0043】
なお、シャッタ36の解放孔38aは、半田片収納部45よりも大きく形成されてもよい。これにより、確実に開放状態のときに半田片2bを落下させることができる。また、半田片収納部45は、孔によって形成されているが、これに限らず、複数部材で周囲を囲まれて半田片2bを囲み内に収容できる囲み形状とするなど、半田片2bを落下可能に収納する適宜の形状とすることができる。
【0044】
半田片収納体44の長手方向の一端上部には、半田片収納体44の長手方向に長いガイド板42の一端が連結されている。ガイド板42の他端には、ネジ止め用の孔41が設けられ、係止板32がネジ31によって孔41にネジ止めされている。
【0045】
係止板32は、上部にネジ41を挿通するネジ孔33が設けられている。係止板32のネジ孔33より下方部分には、シャッタ36の押圧操作部37に対向する押圧対抗面34が設けられている。この押圧対抗面34に付勢体35の一端が当接し、シャッタ36の押圧操作部37に付勢体35の他端が当接することで、押圧対抗面34から押圧操作部37までの距離よりも長く伸びた状態が通常状態である付勢体35は、押圧対抗面34と押圧操作部37が離れる方向へ付勢する。これによって、シャッタ36は、押圧操作部37が半田片収納体44の一端面に当接した状態に維持される。このとき、図4Bに示すように、半田片収納体44の半田片収納部45とシャッタ36の解放孔38aは位置がずれており、半田片収納体44の半田片収納部45がシャッタ36の貯留/放出制御板部38で閉じられた状態となっている。従って、半田片収納部45に存在する半田片2bは、シャッタ36の貯留/放出制御板部38によって下方へ落下しないように貯留されている。すなわち本実施形態に係る貯留/放出制御板部38は、半田片収納部45に収容された半田片2bを収容している収容状態と半田片2bをノズルユニット60の半田片供給通路63へ供給する解放状態に切り替える本発明に係る収容/解放切替部に相当する。
【0046】
半田片収納体44のガイド板42と反対側には、半田片収納体44から離間した位置に半田片収納体44とは独立してシャッタ操作部49が設けられている。このシャッタ操作部49は、シャッタ36の貯留/放出制御板部38の押圧操作部37とは逆側の端面に対向して配置されている。従って、平面移動機構部19(図3参照)の駆動によって半田片収納体44がシャッタ36と共にシャッタ操作部49側へ移動されていくと、シャッタ36の端面がシャッタ操作部49に当接する。そして、平面移動機構部19(図3参照)の駆動によって半田片収納体44がさらに移動されると、シャッタ操作部49によってシャッタ36がそれ以上移動しないために半田片収納体44とシャッタ36の相対位置が変化していき、半田片収納体44の半田片収納部45とシャッタ36の解放孔38aの位置が同じ位置になって解放状態となり、半田片2bが下方へ落下する。
【0047】
半田片収納体44と糸半田供給ガイド16は、互いの対向面が当接して配置され、供給される糸半田2aの半径方向すなわちXY方向の何れの方向へも相対的に移動できるように構成されている。この実施では、糸半田供給ガイド16が固定され、半田片収納体44が糸半田2aの半径方向すなわちXY方向のうち任意の方向へスライド移動できる。従って、糸半田供給ガイド16から繰り出された糸半田2aの一部が半田片収納体44の半田片収納部45に供給されている状態で、半田片収納体44を糸半田2aの半径方向すなわちXY方向のうち任意の方向に移動させると、糸半田2aは、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の相対移動によって半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の互いの当接面で切断される。従って、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16が半田片2bを切断する半田片切断手段となる。切断された半田片2bは、半田片収納体44の半田片収納部45に収納される。
【0048】
また、半田片収納体44の上面と糸半田供給ガイド16の下面、シャッタ36の貯留/放出制御板部38は、全て半田片収納体44の移動方向と平行(特にこの実施例では水平方向)に構成されている。また、半田片収納部45の長手方向(半田片通過方向)とノズルユニット60の半田片供給通路63(半田片供給通路,図5D参照)の長手方向(半田片通過方向)は、全て半田片収納体44の移動方向と垂直(特にこの実施例では鉛直方向)に構成されている。
【0049】
図5は、半田片収納体44によって糸半田2aを切断して半田片2bを複数貯留し、その後にシャッタ36を開状態にして複数の半田片2bを落下させる動作を断面図により説明する説明図である。この動作は、制御部21(図3参照)が糸半田送り出し機構部17および平面移動機構部19の駆動を制御して実行される。
【0050】
図5Aの断面図に示すように、平面移動機構部19(図3参照)の駆動によって、半田片収納体44は、シャッタ操作部49に最も近い半田片収納部45が糸半田供給ガイド16の下方位置で一直線に連通する状態で停止する。この状態で、巻かれていた糸半田2a(図1参照)の先端側から引き出されて棒状となっている糸半田2aが糸半田送り出し機構部17(図3参照)によって送り出され、図5Bに示すように糸半田2aの先端が半田片収納部45内に収納される。そして、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の対向面部(接触面部)から糸半田2aの先端までの長さが必要な半田片2bの長さとなる状態まで糸半田2aを繰り出すと、糸半田送り出し機構部17(図3参照)は糸半田2aの供給(繰り出し)を停止する。
【0051】
この状態で平面移動機構部19(図3参照)の駆動によって、半田片収納体44をスライド移動させると、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の対向面部(接触面部)によって糸半田2aが切断されて半田片2bとなり、図5Cに示すように半田片2bが半田片収納部45に収納(貯留)される。図5Cは、この切断を半田片収納部45の数だけ(必要な数だけ)繰り返して切断完了した状態を示している。このときの半田片収納体44をスライド移動させる距離は、隣接する半田片収納部45の互いの中心間の距離と同一である。したがって、糸半田供給ガイド16の直下には、その前に対応していた半田片収納部45の隣の半田片収納部45が位置することとなる。
【0052】
平面移動機構部19(図3参照)の駆動によって半田片収納体44をスライド移動させると、図5Dに示すようにシャッタ36の先端がシャッタ操作部49に当接して押圧され、付勢体35が縮み、半田片収納体44の半田片収納部45とシャッタ36の解放孔38aが全て連通して複数の半田片2bが一斉に落下して下方へ供給される。すなわち平面移動機構部19は、半田片収納体44を半田片収納部45に半田片2bを収容する方向と直交する平面上の二方向へ移動させる半田片収納体移動手段に相当する。なお、半田片2bを落下させる際に、図示省略する押し込みロッドを全ての半田片収納部45に上方から下方へ挿入し、半田片2bを下方へ押し出して、強制的に半田片2bを下方のノズルユニット60(図3参照)に供給する構成としてもよい。
【0053】
図6は、ノズルユニット60とヒータ51の構成を説明する説明図であり、図6Aは分解斜視図、図6Bは縦断面図を示す。図7は、ノズルユニット60、半田片収納体44及び糸半田供給ガイド16の相対的な配置を模式的に示した平面図である。
ノズルユニット60は、ノズル61、ノズル固定部材65、およびノズル保持部材66を有している。ノズル61、ノズル固定部材65、およびノズル保持部材66のそれぞれは、セラミックにより形成されており、一部材として一体形成された長方体ないし直方体をなす。また、ノズルユニット60は、ノズル61とノズル固定部材65とノズル保持部材66とを重ね合わせて(当接させて)形成されている。本実施形態では、ノズル61の水平方向の一方面にノズル固定部材65が当接し、ノズル61の水平方向の他方面(ノズル固定部材65との当接面の反対面)にノズル保持部材66が当接する。すなわち、ノズル固定部材65およびノズル保持部材66は、ノズル61の半田片供給通路63の加熱手段として機能し、ノズル61を挟み込むように配置されている。
また、本実施形態に係るノズル61の内部には、図6及び図7に示すように、複数の半田片供給通路63が、通路幅方向の平面上で複数方向に形成される。これらの複数の半田片供給通路63は、ノズル61を上下に貫通し、すべて同じ太さで同じ長さの一直線状の孔であり、互いに平行に形成されている。
【0054】
ノズル61の一方面には、ノズル固定部材65と当接する平面の両端に円筒状の空洞である固定凹部62bが設けられ、ノズル61の側面(一方面および他方面に水平方向に隣接する面)における、他方面側(ノズル保持部材66側)端部には、長辺に沿って延びるノズル保持凹部69bが設けられている。このノズル保持凹部69bは、両側面に設けられている。
【0055】
ノズル固定部材65は、固定凹部62bに挿入される(嵌合する)固定凸部62aを有する。すなわち、ノズル固定部材65とノズル61は、固定凹部62bと固定凸部62aとが嵌合することによって、互いに当接平面に平行な方向へ移動しないように固定されている。
【0056】
ノズル固定部材65は、ノズル61との対向面に近い位置で、複数の半田片誘導路63aが並べられた並び方向にヒータ用挿入孔67が設けられている。このヒータ用挿入孔67には、ヒータ51の加熱部52が挿入される。図示の例では、ヒータ用挿入孔67の開口からのヒータ51の加熱部52が挿入されている。
【0057】
ノズル保持部材66は、ノズル固定部材65と略同じ大きさを有する。ノズル保持部材66は、ノズル保持凹部69bに挿入される(嵌合する)ノズル保持凸部69aを有する。ノズル保持凸部69aはノズル保持部材66の側面(ノズル61との対向面に水平方向に隣接する面)における、ノズル61との対向面側に設けられ、ノズル保持部材66の側面に直交する方向に移動可能に設けられる。
【0058】
また、ノズル保持部材66は、ノズル61との対向面と反対側の面の中央に孔68が設けられ、この孔68に熱電対57が挿入されている。熱電対57は、温度センサ23(図3参照)として機能し、ノズルユニット60の温度を測定するために設けられる。
【0059】
さらに、ノズル保持部材66は、ノズル61との対向面と反対側の面の水平方向の両端に、円筒状の貫通する空洞である誘導棒挿通孔72を有する。誘導棒挿通孔72は、円筒形状の誘導棒70が挿通される。
【0060】
誘導棒70は、両端部の内一方の端部から誘導挿通孔72に挿通され、他方の端部にはノズル保持部材66と対向する面を有する誘導基準板71が設けられている(図1参照)。誘導基準板71は、少なくとも当接する誘導棒70の面より大きく形成され、誘導棒70と互いに固定されている。
【0061】
すなわち、ノズル保持部材66は、制御部21によって制御され、ノズル保持部材66およびノズル保持凸部69aを可動させる。ノズル保持凸部69aとノズル保持凹部69bとが嵌合する(ノズル保持凸部69aでノズル61を挟み込む)ことで、ノズル保持部材66とノズル61とが一体化され、ノズル保持部材66の移動に伴ってノズル61が移動される。このとき、ノズル保持部材66の移動方向は、誘導棒70の長手方向に制限される。すなわち、ノズル保持部材66の移動は、誘導基準板71に接近するか離間するかに制限される。また、ノズル保持凸部69aがノズル保持凸部69aが設けられている側面に対して離間するように移動されると、ノズル保持部材66とノズル61とが分離される。
【0062】
また、ノズル保持部材66は、ノズル61との対向面に近い位置で、複数の半田片供給通路63が並べられた並び方向にヒータ用挿入孔(図示せず)が設けられ、ノズル固定部材65と同様に、ヒータ51の加熱部52が挿入されている。なお、ノズル保持部材66のヒータ用挿入孔は、ノズル固定部材65のヒータ用挿入孔67が設けられた面と対向する面に設けられている。
【0063】
これらがすべて組み合わせされると、ノズル61、ノズル固定部材65、およびノズル保持部材66の対向面同士が隙間なく当接され、ヒータ51によって加熱部52が加熱されると、ノズル固定部材65およびノズル保持部材66が加熱され、各部材に当接するノズル61も同様に加熱される。
【0064】
複数の半田片供給通路63は、鉛直方向(近接離間方向)に一直線で、かつ、通路幅方向の平面上で複数方向にそれぞれ配置され、半田片収納体44(図5参照)の半田片収納部45と同じ大きさで同じ間隔に形成されている。
【0065】
従って、図5Dに示したように一斉に(ほぼ同時に)落下する半田片2bは、その下方位置にて半田片収納部45と半田片供給通路63が連通するように配置されたノズルユニット60の半田片供給通路63に、図6Bに示すように一斉に(ほぼ同時に)供給される。
【0066】
半田付けをするとき、ノズルユニット60は、下端がプリント基板PのランドRに接触する位置まで下げられており、この位置にて上述した半田片2bの供給を受ける。このとき、半田片2bは、プリント基板Pの電子部品Cの端子Tの先端(若しくは半田片供給通路63の半田片誘導方向(図6Bの下方)に対して最も凸となる端部(図6Bの上端))に接触して停止する。図示の例では端子Tの上に半田片2bが乗った状態で停止する。
【0067】
そして、ノズルユニット60の半田片供給通路63に供給された半田片2bは、ヒータ51の加熱部52からの熱をうけて溶融する。このとき、加熱部52の熱が半田片2bから端子Tに伝達され、この伝達熱によって端子Tも徐々に加熱されていく。また、ランドRについては、ノズルユニット60から直接熱を受け、端子Tよりも先に加熱されている。
【0068】
そうして、半田片2bが溶融温度に達すると、半田片2bが溶融するが、まだ端子Tの上に略球状となって載った状態となる。この間も端子Tを伝達熱で加熱する。そして、さらに端子Tの加熱が進むと、半田片2bが溶融した複数(4つ)の溶融半田が端子Tに沿って流れ出し、複数の端子T(第2導体)とランドR(第1導体)を一斉に(同時に)半田付けして電気的に接続する。その後、ノズルユニット60を上方へ移動させて離間させ、溶融半田が冷えて固化することで、複数箇所の半田付けが一斉に(同時に)完了する。
この半田付けの動作について、以下に詳細に説明する。
【0069】
図8は、異なる大きさおよび位置パターンの半田片供給通路63を有する複数のノズルの一例を示す。この例では、半田片供給通路63が2列で計7つのノズル61a、半田片供給通路63が3列で計5つのノズル61b、半田片供給通路63がばらけて4つのノズル61c、半田片供給通路63が一列に5つのノズル61dが設けられている。図9は、制御部21によって実行される半田付け工程のフロー図である。
【0070】
<半田付けの動作>
図6Bの断面図に示すように、半田付けの母材として、ランドRが形成されたプリント基板Pに、当該プリント基板Pのスルーホールにプリント基板Pの表面側から裏面側(図6Bでは下面側から上面側)に向けて電子部品Cの端子Tが挿入されたものが準備されている。
【0071】
<ノズル選択>
制御部21は、カメラ25で撮影された撮影画像か、あらかじめ登録された基板パターンから、プリント基板Pにおける半田付け対象となる複数のランドRの位置を読み取る(ステップS1)。このとき、プリント基板Pが比較的大型であって、ランドRの数が1つのノズル61で半田付けしきれない場合は、プリント基板Pの全体の領域を複数の個別領域に分割し、各個別領域に含まれる複数のランドR毎にグループ設定し、グループ毎(個別領域毎)に複数回に分けて半田付けを行う。この領域を個別領域に分割する制御部21は、領域分割手段として機能する。ただし、上記グループ設定は、グループに含まれるランドRの位置パターンが、使用可能な複数のノズル(61a、61b、61c、61d)が有する半田片供給通路63の位置パターンのいずれかに対応するように設定される。
【0072】
さらに、読み取った複数のランドRの位置(位置情報)に基づいて、対応する大きさおよび位置パターンの半田片供給通路63を有するノズル61を選択する(ステップS2)。すなわち、制御部21は、図8に示すような、複数のノズル(61a、61b、61c、61d)から1つを選択し、ノズル保持部材66およびノズル保持凸部69aを可動させて、選択用ノズル収納部11に収納されたノズル61を移動させ、ノズル固定部材65に固定する。このとき、ノズル固定部材65に固定されたノズル61は、プリヒータ110によってあらかじめ加熱されている。なお、ノズル61がノズル固定部材65に固定される(当接される)位置のことを実行位置という。
【0073】
各ノズル61a~61dのそれぞれは、少なくともノズル固定部材65およびノズル保持部材66と当接した際に、ノズル固定部材65とノズル保持部材66との距離がいずれのノズル61であっても同じ距離になるように形成される。
【0074】
制御部21は、平面移動機構部19を可動させ、選択した(ノズル固定部材65に固定された)ノズル61に対応した糸半田切断機構部40を切断機構収納部10から第1位置に移動する(ステップS3)。すなわち、半田片供給通路63の大きさおよび位置パターン(複数のランドRの位置)に対応した半田片収納部45を有する糸半田切断機構部40を第1位置に配置する。
【0075】
<位置合わせ工程>
制御部21は、Y方向の搬送ガイド7fとX方向の搬送ガイド7c、および駆動機構部7b,7eにより、ノズルユニット60の複数の半田片供給通路63の位置をXY平面上で移動させて半田付けする複数のランドRに対向させる。このときの位置は、プリント基板Pの裏面側のランドRの中心と半田片供給通路63の中心がほぼ一致する位置とする、または、端子Tの先端中心と半田片供給通路63の中心がほぼ一致する位置とする。
【0076】
<半田片切断収納工程>
制御部21は、糸半田送り出し機構部17によって半田片収納体44内の1つの半田片収納部45に糸半田2aを必要長さまで供給し、平面移動機構部19を駆動させて半田片収納体44を移動させ、糸半田切断機構部40(糸半田切断手段)により糸半田2aを切断して半田片2bを得て半田片収納部45に収納する。このとき、シャッタ36は閉鎖状態となっているため、半田片収納部45から半田片2bが落下することは無い。この動作を繰り返すことで、全ての半田片収納部45に1つずつ必要長さの半田片2bを収納する。なお、この半田片切断収納工程は、前記ノズル近接工程よりも前に実行する、あるいは、ノズル近接工程と並行して実行するなど、適宜のタイミングとすることができる。
当該半田片切断工程では、平面移動機構部19をXY方向に適宜移動させることにより、複数の半田片収納部45に対し一つの糸半田2aから効率よく半田片2bを供給し得るようにしている。平面移動機構部19による当該糸半田切断部40の具体的な動作については、後に詳述する。
【0077】
<ノズル近接工程>
制御部21は、駆動機構部5bにより搬送ガイド5cに沿ってフローティング状態のヘッド部3をランドRとの近接方向へ移動させて、ノズルユニット60の先端面(図示下端面)をプリント基板Pの裏面側のランドRの表面に当接させる。これにより、ノズルユニット60の半田片供給通路63の内側に端子Tの先端が挿入された状態となる。
【0078】
このとき、端子Tはノズルユニット60の半田片供給通路63の内壁から等距離だけ離れており、端子Tとノズルユニット60が非接触で離間した状態が保たれている。これにより、ノズルユニット60から端子Tに直接熱が伝達されることを防止しており、端子Tは、輻射熱伝達および対流熱伝達により徐々に加熱される。一方で、プリント基板PのランドRは、接触するノズルユニット60からの直接の熱伝導と、対流熱伝達による伝熱で急速に加熱される。
【0079】
<半田片供給工程>
制御部21は、平面移動機構部19を駆動させて半田片収納体44をさらに移動させ、シャッタ36がシャッタ操作部49に当接して押圧されるまで移動させる(ステップS4)。これにより、シャッタ36の複数の解放孔38aが複数の半田片収納部45とそれぞれ連通し、複数の半田片2bが一斉に落下し、ノズルユニット60の複数の半田片供給通路63に1つずつ供給される。上方から落下するように供給された半田片2bは、半田片供給通路63を通過中に予熱され、端部が端子Tに当接して当接位置で停止し、位置および落下が規制される。このとき、半田片供給通路63の内壁は、半田片2bが端子Tの先端の上で垂直または斜めに立っている状態から落下しないように規制する落下規制部として機能する。
【0080】
<溶融工程>
当接位置に案内された溶融前の半田片2bは、その位置から落下することなく、端子Tと反対側の端部などの少なくとも一部が、ヒータ51の加熱部52の近くに位置して半田片供給通路63の内壁に当接する。このため、当接位置にある溶融前の複数の半田片2bは、半田片供給通路63の内壁に当接した半田片2bの一端部、両端部、又は側部を介した熱伝導により一斉に溶融される(ステップS5)。なお、この半田片2bの溶融のとき、ノズルユニット60と接触しての直接熱伝導に加えて、ノズルユニット60からの輻射熱伝達、および、ノズルユニット60内を対流する熱風による対流熱伝達などの間接熱伝導も行われる。
【0081】
複数の半田片2bは、溶融すると表面張力によりそれぞれ丸まって略球状になろうとするが、ノズル61の半田片供給通路63の内壁と端子Tの先端に規制されるため真球になれず、端子Tの先端に接触している状態(端子Tの上に載っている状態)で太く短い形状に変形する。この形状は、短い円柱の両端が球面になった形状となっている。
【0082】
こうして溶融すると、ノズルユニット60から複数の半田片2bに熱が伝わり、さらに、複数の半田片2bから複数の端子Tにそれぞれ熱が伝わることで、複数の端子Tは以前にも増して急速に加熱される。この加熱中、溶融した半田片2bは端子Tに接触した状態、すなわち端子Tの上に載った状態で半田片供給方向(下方向)へ移動せずに停止している。尚、半田片2bが溶融するのは、217℃以上である。
【0083】
溶融した半田片2bを介して適正温度にまで端子Tが加熱されると、溶融した複数の半田片2bは、ぬれ始め、端子Tの先端から端子Tの側面を伝って一斉に流れ出す。ここで、溶融しはじめてから流れ出す前の半田片2bは、位置が停止したままで熱の影響等によって形状が変化し続けていても良い。そして、端子Tの側面を伝って流れ出した溶融した半田片2bは、裏面側のランドRに広がり、さらに、毛細管現象により、端子Tの側面とスルーホールに面するランドRとの隙間にも流入する。そして、表面側のランドRにも広がっていく。
【0084】
<ノズル離間工程>
その後、制御部21は、駆動機構部5bにより搬送ガイド5cに沿ってフローティング状態のヘッド部3をランドRとの離間する方向へ移動させ、ノズルユニット60の先端面をプリント基板Pの裏面側のランドRの表面から離隔する。これにより、ランドR、端子T、及び溶融した半田片2bは急速に冷却され、溶融した半田片2bが固化する(ステップS6)。
【0085】
<ノズル交換工程>
このとき、すべての半田付け対象であるランドRが半田付けされていれば、半田付け動作は終了する。1ヶ所でも半田付けが未完了である半田付け対象がある場合は、使用したノズル61を選択用ノズルに交換する工程を行い、引き続き半田付けを行う(ステップS7)。
【0086】
ノズル交換を行う場合、制御部21は、ノズルユニット60を交換ポジションP3に移動させ、選択用ノズル移動部11aを現在のノズル61が収納されるべき空きスロットが収納位置となるよう移動させる。さらに、ノズル保持部材66およびノズル保持凸部69aを可動(解放動作)させて、ノズル61をノズル固定部材65から取り外して選択用ノズル繰り出し収納機構部11bにより空きスロットに収納する。そして、制御部21は、選択用ノズル移動部11aを次のノズル61として使用する選択用ノズル61b~61dを繰り出し位置にセットして選択用ノズル繰り出し収納機構部11bにより上方へ繰り出し、ノズル保持凸部69aを可動(保持動作)させて繰り出された選択用ノズル61b~61dを保持してノズル61とする(ステップS8)。その後、次の半田付け対象における複数のランドRの位置に基づいて、上述した手順でノズル選択工程からノズル離間工程までを行う。ノズル交換工程後のノズル選択工程で選択されるノズル61は、前回使用したノズル61と異なる大きさおよび位置パターンの半田片供給通路63を有しており、1つの基板の異なる領域に対して異なるノズル61を切り替えつつはんだ付けすることができる。なお、前回使用したノズル61と同じ大きさおよび位置パターンのノズル61に交換して、ノズル61の交換時期が過ぎても自動的にノズル61を交換して連続運転することもできる。
【0087】
以上の構成及び動作により、様々な半田付け対象に対応できる。たとえば、半田付け箇所が1つのノズルではカバーできないほど大量に、かつ平面上の広い面積にはんだ付け箇所のあるプリント基板Pに対しても、領域毎にノズル61および糸半田切断機構部40を交換して、各領域には一斉に複数はんだ付けをし、少ない回数のはんだ付け動作により短時間で大量の半田付けを行うことが可能になる。
【0088】
制御部21は、異なる大きさおよび位置パターンの半田片供給通路63を有する複数のノズル61を選択し、ノズル保持部材66およびノズル保持凸部69aを可動させて交換する構成である。この構成により、半田付け箇所が1つのノズルではカバーできないほど大量に、かつ平面上の広い面積にはんだ付け箇所のあるプリント基板Pに対しても、その半田付け位置のパターンに対応するノズル61を適宜選択し、交換することですべての箇所を半田付けすることができる。
【0089】
ノズル61は、ヒータ51によって加熱されるノズル固定部材65およびノズル保持部材66によって挟み込まれるように配置される。この構成により、ノズル61を取り外し可能にしながら、内部の半田片供給通路63を均一に加熱することができる。
【0090】
また、複数のノズル61は、少なくともノズル固定部材65およびノズル保持部材66と当接した際に、ノズル固定部材65とノズル保持部材66との距離がすべてのノズル61で同じになるよう形成される。この構成により、ノズル61毎の半田片供給通路63の加熱に違いが発生せず、比較的大きな基板に半田付けを行う場合であっても使用するノズルの違いによる品質ムラを防止することができる。
【0091】
また、制御部21は、基板P上の複数の半田付け位置を読み取ることで、対応する半田片供給通路63の位置パターンを有するノズル61を選択する構成である。この構成により、半田付けの位置パターンが異なる複数の基板Pについても、用意したノズル61の半田片供給通路63位置パターンが基板Pの半田付け位置のパターンを内包していれば半田付けを行うことができる。
【0092】
また、選択用ノズル収納部11は、選択用ノズル61a~61dを事前に加熱するヒータを内蔵する。この構成により、ノズル61交換後の加熱時間(使用するノズル61のヒータ51による加熱時間)が短縮され、より短時間で半田付けを行うことができる。
【0093】
上述した実施形態において、本発明におけるノズル選択手段は、本実施例におけるステップS2を実行する制御部21に対応し、
以下同様に、
ノズル移動手段は、ノズル保持部材66、誘導棒70に対応し、
相対距離変化手段は、近接離間方向移動ユニット6に対応し、
半田片供給手段は、糸半田供給ガイド16、糸半田送り出し機構部17、および糸半田切断機構部40に対応し、
ノズル入れ替え機構は、ノズル保持部材66、およびノズル保持部材66を制御する制御部21に対応し、
加熱手段は、ヒータ51、加熱部52、および加熱部52によって加熱されたノズル固定部材65およびノズル保持部材66に対応し、
予熱手段は、プリヒータ110に対応し、
半田付け位置取得手段は、カメラ25、およびステップS1を実行する制御部21に対応する。
【0094】
なお、この発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、様々な実施形態とすることができる。例えば、本実施例では切断機構収納部10に複数の糸半田切断機構部40をストックし、選択したノズル61に対応した糸半田切断機構部40をセットする構成としたが、1つの糸半田切断機構部40に、複数の半田片収納体44を1つのグループとして、複数のグループを設ける構成としてもよい。この場合、平面移動機構部19は、選択したノズル61に対応した半田片収納体44の位置パターンを有するグループ(領域)に、半田片2bが収納されるよう糸半田機構部40を水平方向へ移動させる。また、シャッタ36は、1つですべての半田片収納体44をカバーする大きさとし、シャッタ36を閉鎖状態から解放状態にすると、全ての半田片収納体44が解放される構成とする。
【0095】
この構成により、糸半田切断機構部40の交換工程が省略され、より短時間で半田付けを行うことができる。また、セットされているノズル61の半田片供給通路63に対応する領域の半田片収納体44のみに半田片2bを供給し、シャッタ36を解放する動作で、セットされているノズル61の全ての半田片供給通路63に半田片2bを一斉に供給でき、かつ、ノズル61の存在しない位置へ誤って半田片2bを落下させることを防止できる。
【0096】
また、本実施例では、図6Bに示すようにすべての半田片供給通路63に半田片2bを供給したが、読み取った半田付けの位置パターンに応じて、必要な半田片供給通路63だけに半田片2bを供給する構成としてもよい。すなわち、制御部21は、読み取った基板Pの半田付け位置について、少なくともすべての位置を内包する半田片供給通路63の位置パターンを有するノズル61を選択し、半田付け位置に対応した位置の半田片供給通路63にのみ半田片2bを供給する。
【0097】
例えば、糸半田2a(図1,2参照)と糸半田供給ガイド16は、2つ以上の複数備えてもよい。この場合、糸半田2aは、太さまたは/および材質の異なる複数種類のものを使用し、それぞれの糸半田供給ガイド16の内径も挿通する糸半田2aの外形に合わせたサイズにするとよい。
【0098】
また、平面移動機構部19(半田片収納体移動手段)は、半田片切断機構部40を動作する際に、必要な太さまたは/および材質の糸半田2aを半田片収納部45に挿入する構成とするとよい。
【0099】
この場合、記憶部26は、セットされている糸半田2aの太さまたは/および材質と、切断機構収納体10bの各スロットに収納されている半田片切断機構部40a~40dの種類と、選択用ノズル収納部11の各スロットに収納されている選択用ノズル61a~61dと、各半田片切断機構部40(40a~40d)およびノズル61(61a~61d)の配置および供給する半田片2bの太さまたは/および材質と、プリント基板Pなどのはんだ付け対象における各領域のどこにどの選択用ノズル61a~61dと半田片切断機構部40a~40dが対応するかを記憶している。
【0100】
またこの場合、制御部21は、記憶部26に記憶されているこれらの情報をもとに、1つのプリント基板Pなどのはんだ付け対象製品の複数の領域に対して、領域毎に選択用ノズル61a~61dと半田片切断機構部40a~40dを交換しながら全領域のはんだ付けを実行し、次の同じはんだ付け対象製品に対して再度同じように領域毎にはんだ付けを実行する。
【0101】
これにより、1つのプリント基板Pに太さや材質の異なる糸半田2aを複数一斉にはんだ付けすることができる。また、制御によっては、1つの半田片切断機構部40の各半田片収納部45に太さの異なる糸半田2aを収納して一斉にはんだ付けすることもできるが、1つの半田片切断機構部40の各半田片収納部45には同じ太さで同じ材質の糸半田2aを収納することが好ましい。同じ太さ同じ材質とすることで、各糸半田2aの溶融タイミングをそろえて良好なはんだ付けを確実に実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
この発明は、生産設備で半田付けを実行するような産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1…半田付け装置
2b…半田片
6…近接離間方向移動ユニット
7…搬送方向移動ユニット
8…搬送幅方向移動ユニット
16…糸半田供給ガイド
17…糸半田送り出し機構部
21…制御部
25…カメラ
40…半田片切断機構部
44…半田片収納体
45…半田片収納部
51…ヒータ
52…加熱部
61…ノズル
63…半田片供給通路
65…ノズル固定部材
66…ノズル保持部材
110…プリヒータ
R…ランド
T…端子
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8
図9