(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
F16F9/34
(21)【出願番号】P 2020199430
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-123132(JP,U)
【文献】実開平03-123130(JP,U)
【文献】実開平03-022148(JP,U)
【文献】実開昭63-198843(JP,U)
【文献】実開昭58-182029(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に設けられた二つの作動室と、
前記ロッドの外周に設けられるとともに、環状弁座と、前記環状弁座の内周に開口して前記二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、
環状であって前記ポートに通じる連通孔を有する第1リーフバルブと、環状であって前記第1リーフバルブの前記バルブディスク側に重ねられており前記連通孔を開閉する内開きの第2リーフバルブとを具備するとともに、前記環状弁座に離着座して前記ポートを開閉する弁体と、
環状であって前記第1リーフバルブの反バルブディスク側に配置され、外径が前記第1リーフバルブの内径よりも大きく、かつ、前記第2リーフバルブの内径よりも小さな間座と、
環状であって前記第1リーフバルブのバルブディスク側に配置され、外径が前記第1リーフバルブの内径よりも大きく、かつ、前記第2リーフバルブの内径よりも小さな支持座をと備え、
前記間座と前記支持座との間に前記第1リーフバルブの内周が挿入されている
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に設けられた二つの作動室と、
前記ロッドの外周に設けられるとともに、環状弁座と、前記環状弁座の内周に開口して前記二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、
環状であって前記ポートに通じる連通孔を有する第1リーフバルブと、環状であって前記第1リーフバルブの前記バルブディスク側に重ねられており前記連通孔を開閉する内開きの第2リーフバルブとを具備するとともに、前記環状弁座に離着座して前記ポートを開閉する弁体と、
環状であって前記第1リーフバルブの反バルブディスク側に配置され、外径が前記第1リーフバルブの内径よりも大きく、かつ、前記第2リーフバルブの内径よりも小さな間座と、
前記第1リーフバルブの内側に嵌合する環状のシムとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に設けられた二つの作動室と、
前記ロッドの外周に設けられるとともに、環状弁座と、前記環状弁座の内周に開口して前記二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、
環状であって前記ポートに通じる連通孔を有する第1リーフバルブと、環状であって前記第1リーフバルブの前記バルブディスク側に重ねられており前記連通孔を開閉する内開きの第2リーフバルブとを具備するとともに、前記環状弁座に離着座して前記ポートを開閉する弁体と、
前記ロッドの外周に固定されるとともに前記二つの作動室を連通するメインポートを有して前記シリンダの内周に摺接するピストンと、
前記ロッドの外周に装着されて前記メインポートを開閉するメインリーフバルブとを備え、
前記バルブディスクにおける前記ポートは前記メインポートを介して前記二つの作動室を連通する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
環状であって前記第1リーフバルブの反バルブディスク側に配置され、外径が前記第1リーフバルブの内径よりも大きく、かつ、前記第2リーフバルブの内径よりも小さな間座を備えた
ことを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項5】
環状であって前記第1リーフバルブのバルブディスク側に配置され、外径が前記第1リーフバルブの内径よりも大きく、かつ、前記第2リーフバルブの内径よりも小さな支持座を備え、
前記間座と前記支持座との間に前記第1リーフバルブの内周が挿入されている
ことを特徴とする請求項
4に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記第1リーフバルブの内側に嵌合する環状のシムを備えた
ことを特徴とする請求項
1、4または5に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記第2リーフバルブの外周が前記第1リーフバルブに溶接によって接合されている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、車両の車体と車輪との間に介装されて減衰力を発揮して、車体と車輪の振動を抑制する。緩衝器が発揮する減衰力は、減衰バルブによって発揮され、車両における乗り心地を左右する。
【0003】
このような緩衝器に搭載される減衰バルブは、たとえば、緩衝器内に伸側室と圧側室とを区画するとともに伸側室と圧側室とを連通するポートを備えたバルブディスクと、バルブディスクの前記ポートの外周側に設けられた環状の外周弁座と、前記外周弁座に離着座する環状のリーフバルブと、リーフバルブの反バルブディスク側面の内周を支持する環状の内周弁座とを備えたものがある。
【0004】
このように構成された減衰バルブでは、伸側室から圧側室へ向かう作動油の流れに対し、内周弁座によって内周が支持されたリーフバルブが外周側を撓ませて外周弁座から離座して作動油の流れを許容し、圧側室から伸側室へ向かう作動油の流れに対し、外周弁座によって外周が支持されたリーフバルブが内周側を撓ませて内周弁座から離座して作動油の流れを許容する。
【0005】
つまり、この緩衝器は、リーフバルブが内外両開きに設定されており、一つのリーフバルブで伸側と圧側の減衰力を発揮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の緩衝器では、一つのリーフバルブで伸側と圧側の減衰力を発揮できるが、ポートを通過する流量が多くなる緩衝器の高速伸縮時における減衰力を低く設定したい場合、内周弁座と外周弁座との間の径方向距離を長くしてリーフバルブの撓み剛性を低くすることが考えられる。ところが、このようにリーフバルブの撓み剛性を低くすると、作動油がリーフバルブの外周を通過する場合の減衰力を低減できるものの、リーフバルブの内周径が小径化されるため内周側が撓んでポートを開放する際の流路面積が小さくなり、作動油がリーフバルブの内周を通過する際の減衰力が大きくなってしまう。
【0008】
よって、従来の減衰バルブでは、作動油がポートを一方から他方へ流れる際の減衰力と、作動油がポートを他方から一方へ流れる際の減衰力の両方を低くしたくともできないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、高速伸縮時における伸圧両側の減衰力の低減を可能とする緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に設けられた二つの作動室と、ロッドの外周に設けられるとともに環状弁座と環状弁座の内周に開口して二つの作動室とを連通するポートとを有するバルブディスクと、環状であって環状弁座に離着座してポートを開閉する弁体とを備え、弁体が環状であってポートに対向して二つの作動室を連通する連通孔を有する第1リーフバルブと、環状であって第1リーフバルブのバルブディスク側に重ねられており連通孔を開閉する内開きの第2リーフバルブとを備えている。このように構成された緩衝器によれば、第1リーフバルブでポートを開放して弁体の外周を液体が通過する際の減衰力を低減することによって、第2リーフバルブを開いて液体が通過する際の減衰力が大きくなるようなことはなく、個別に設定できるので、伸圧両側の減衰力の低減が可能となる。
【0011】
また、緩衝器は、環状であって第1リーフバルブの反バルブディスク側に配置され、外径が第1リーフバルブの内径よりも大きく、かつ、第2リーフバルブの内径よりも小さな間座を備えていてもよい。このように構成された緩衝器によれば、弁体がポート側から圧力を受ける際に第1リーフバルブのみを撓ませて、第2リーフバルブを撓ませずに済むので、緩衝器の高速で伸長する際或いは高速で収縮する際の減衰力をより一層低減できる。
【0012】
さらに、緩衝器は、環状であって第1リーフバルブのバルブディスク側に配置され、外径が第1リーフバルブの内径よりも大きく、かつ、第2リーフバルブの内径よりも小さな支持座を備え、間座と支持座との間に第1リーフバルブの内周が挿入される構造を採用してもよい。このように構成された緩衝器によれば、弁体の反バルブディスク側からポートへ向かう液体の流れに対して第2リーフバルブのみが抵抗を与えることになり、液体が弁体の反バルブディスク側からポートへ向かう際の減衰力の設定が容易となるとともに狙い通りの減衰力を発揮できる。
【0013】
また、緩衝器は、第1リーフバルブの内側に嵌合する環状のシムを備えていてもよく、このようにシムを備えた緩衝器によれば、液体が弁体と環状弁座との間を通過する際に発生する減衰力を容易に調整できる。
【0014】
さらに、緩衝器は、第2リーフバルブの外周が第1リーフバルブに溶接によって接合されていてもよく、このように構成された緩衝器によれば、第2リーフバルブを第1リーフバルブに一体化して内開きのリーフバルブに設定でき、弁体のロッドへの組付性も向上する。
【0015】
さらに、緩衝器は、ロッドの外周に固定されるとともに二つの作動室を連通するメインポートを有してシリンダの内周に摺接するピストンと、ロッドの外周に装着されてメインポートを開閉するメインリーフバルブを備え、バルブディスクがシリンダの内周に摺接するとともにバルブディスクにおけるポートがメインポートを介して二つの作動室を連通してもよい。このように構成された緩衝器によれば、高速で伸縮する際に弁体の液体の流れに与える抵抗を低減できるので、高速伸縮時に発生する減衰力に対して弁体が与える影響を少なくでき、メインリーフバルブにより設定された減衰力を発揮できる。したがって、高速伸縮時の減衰力の特性が弁体の特性に引きずられることがなくなって、緩衝器の高速伸縮時の減衰力と低速側の減衰力の設定が容易となる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明の緩衝器によれば、高速伸縮時における伸圧両側の減衰力の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
【
図2】一実施の形態における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
【
図3】一実施の形態の第一変形例における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
【
図4】一実施の形態の第二変形例における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に設けられた二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2と、ロッド2の外周に設けられるとともに環状弁座3cと環状弁座3cの内周に開口して伸側室R1と圧側室R2とを連通するポート3eとを有するバルブディスク3と、環状であって環状弁座3cに離着座してポート3eを開閉する弁体4とを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0019】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1に示すように、シリンダ1の上端には、環状のロッドガイド20が装着されており、シリンダ1の下端はキャップ21で閉塞されている。そして、シリンダ1内には、先端にピストン5とバルブディスク3とが装着されたロッド2が移動自在に挿入されている。
【0020】
ロッド2は、ロッドガイド20内に摺動自在に挿通されてシリンダ1内に挿入されており、ロッドガイド20によって軸方向への移動が案内される。また、シリンダ1内は、ピストン5およびバルブディスク3とによって、作動油等の液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。なお、液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体の使用もできる。
【0021】
なお、シリンダ1内であって圧側室R2よりも下方には、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるフリーピストン6によって気室Gが区画されている。そして、気室Gは、シリンダ1に対してロッド2が軸方向に変位すると、シリンダ1内のロッド2の体積変化に応じてフリーピストン6がシリンダ1に対して軸方向へ変位して拡縮され、この気室Gの容積変化によりシリンダ1内に出入りするロッド2の体積補償がなされる。このように緩衝器Dは、所謂単筒型の緩衝器とされているが、シリンダ1外にリザーバを備える復筒型の緩衝器として構成されてもよい。
【0022】
戻って、ロッド2は、その
図1中下端となる先端に設けた小径部2aと、小径部2aの先端の外周に設けた螺子部2bと、小径部2aを設けたことにより形成される段部2cとを備えており、小径部2aの外周に環状のピストン5とバルブディスク3とが装着されている。
【0023】
ピストン5は、環状であって、小径部2aの外周に固定されており、外周がシリンダ1の内周に摺接している。また、ピストン5は、メインポートとしての圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bを備えている。バルブディスク3は、外周がシリンダ1の内周に摺接しており、ポート3eを備えている。そして、ピストン5とバルブディスク3は、協同してシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画しており、ピストン5とバルブディスク3との間には中間室R3が形成されている、この中間室R3は、ピストン5に設けられた圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bによって圧側室R2に連通され、バルブディスク3に設けられたポート3eによって伸側室R1に連通される。よって、圧側メインポート5a、伸側メインポート5b、中間室R3およびポート3eは、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路を形成している。
【0024】
そして、ロッド2における小径部2aの外周には、
図1および
図2に示すように、バルブストッパ7、間座8、シム9、シム9の外周に嵌合する弁体4、支持座10、バルブディスク3、スペーサ11、メインリーフバルブとしての圧側メインリーフバルブ12、ピストン5、メインリーフバルブとしての伸側メインリーフバルブ13およびバルブストッパ14が順に嵌合される。そして、これらバルブストッパ7、間座8、シム9、シム9の外周に配置される環状の弁体4、支持座10、バルブディスク3、スペーサ11、メインリーフバルブとしての圧側メインリーフバルブ12、ピストン5、メインリーフバルブとしての伸側メインリーフバルブ13およびバルブストッパ14は、ロッド2の段部2cと螺子部2bに螺着されるナット15とによって挟持されて固定される。
【0025】
バルブディスク3は、本実施の形態では、環状の本体部3aと、本体部3aの外周に設けられてシリンダ1の内周に摺接する摺接筒3bと、本体部3aの
図2中上端となる伸側室R1側端に設けられた環状弁座3cと、本体部3aの伸側室R1側端の環状弁座3cの内周側に設けられた環状窓3dと、本体部3aの同一円周上に設けられて本体部3aを軸方向に貫いて環状窓3dに連通する複数のポート3eとを備えている。ポート3eは、伸側室R1と中間室R3に臨んでおり、圧側室R2と中間室R3とを連通するピストン5に設けられた圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bを介して伸側室R1と圧側室R2とを連通している。
【0026】
バルブディスク3の本体部3aの伸側室R1側端の環状窓3dの内周
側には、環状の支持座10が積層され、支持座10の
図2中上方には、シム9および間座8が順に積層されている。間座8、シム9および支持座10は、ともに内径が同一の円環状とされている。また、シム9の外径は、間座8および支持座10の外形よりも小径とされており、シム9の外周であって間座8と支持座10との間に弁体4の内周が挿入される空隙が形成されている。
【0027】
弁体4は、環状であってポート3eに通じる連通孔41aを有する第1リーフバルブ41と、環状であって第1リーフバルブ41のバルブディスク3側に重ねられており連通孔41aを開閉する第2リーフバルブ42とを備えている。より詳しくは、第1リーフバルブ41は、円環状であって内周径が間座8および支持座10の外径よりも小径とされてシム9の外周に嵌合されており、外径が間座8、支持座10および環状弁座3cの外径よりも大径とされている。また、第1リーフバルブ41の軸方向長さである厚みは、シム9の軸方向長さである厚み以下となっている。第1リーフバルブ41は、環状窓3dに対向してポート3eに通じる複数の連通孔41aを備えている。なお、連通孔41aは、本実施の形態では、第1リーフバルブ41の同一円周上に設けられた複数の丸孔で形成されているが、1つまたは複数の円弧状孔で形成されてもよい。また、第1リーフバルブ41はポート3eを開閉できればよいので、第1リーフバルブ41の外径は、間座8および支持座10の外径より大きく、かつ、環状弁座3cの内径よりも大径であればよい。
【0028】
第2リーフバルブ42は、円環状であって、間座8および支持座10の外径よりも大径な内径を持つとともに、第1リーフバルブ41の外径と同一径の外径を持つ。そして、第2リーフバルブ42は、第1リーフバルブ41の
図2中バルブディスク3側となる下端に重ねられると、連通孔41aに対向して連通孔41aを閉塞する。第2リーフバルブ42は、外周が第1リーフバルブ41の連通孔41aよりも外周に対して溶接によって第1リーフバルブ41に接合されており、内周側の撓みが許容される内開きのリーフバルブとされている。
【0029】
なお、バルブディスク3の本体部3aに環状窓3dが設けられており、第2リーフバルブ42が撓んだ際に第2リーフバルブ42の内周が本体部3aに干渉しないよう配慮されている。よって、環状窓3dの深さや幅は、第2リーフバルブ42の外周が環状弁座3cに当接した状態で第2リーフバルブ42の内周が最大限撓んだ場合に第2リーフバルブ42内周とバルブディスク3とが干渉しないように設定されればよい。なお、逆に第2リーフバルブ42の最大撓み量を所定量に規制したい場合には、第2リーフバルブ42が所定量撓んだ際にバルブディスク3によって支承されるよう、環状窓3dの深さや形状を設定すればよい。
【0030】
また、第2リーフバルブ42の外周が第1リーフバルブ41に溶接されるので、第2リーフバルブ42を第1リーフバルブ41に一体化して内開きのリーフバルブに設定でき、弁体4をロッド2への組付が簡単となるので組付性も向上する。
【0031】
弁体4は、前述したように構成され、第1リーフバルブ41がシム9の外周に嵌合しつつ、第1リーフバルブ41の内周側が間座8および支持座10に対向した状態で、ロッド2およびバルブディスク3に組み付けられる。そして、弁体4に何ら圧力が作用しない状態では、第2リーフバルブ42が環状弁座3cに着座するとともに連通孔41aを閉塞するので、ポート3eと伸側室R1との連通が断たれる。間座8のバルブディスク3側端となる
図2中下端と環状弁座3cの
図2中上端との軸方向距離は、第1リーフバルブ41と第2リーフバルブ42のトータルの軸方向長さよりも短く設定されている。そのため、弁体4は、第1リーフバルブ41が撓んだ状態で、
図2中上端の内周が間座8によって支持されるとともに弁体4の
図2中下端の外周が環状弁座3cによって支持される。したがって、弁体4における第1リーフバルブ41には、初期撓みが与えられている。シム9の軸方向長さの設定によって間座8の下端の位置を調整できるので、シム9の軸方向長さの設定によって第1リーフバルブ41に与える初期撓み量を調整できる。つまり、シム9の軸方向長さの設定によって弁体4の開弁圧を大小調整可能である。
【0032】
伸側室R1の圧力が中間室R3の圧力よりも高くなると、第1リーフバルブ41の内周が支持座10に向けて押圧されて支持座10に密着するとともに、第2リーフバルブの外周が環状弁座3cに向けて押圧されて環状弁座3cに密着する。また、連通孔41aを介して伸側室R1の圧力が第2リーフバルブ42の連通孔41aに対向する面に作用するため、伸側室R1の圧力が中間室R3の圧力より高くなって両者の圧力差が第2リーフバルブ42の開弁圧に達すると、第2リーフバルブ42は、撓んで連通孔41aを開放してポート3eと伸側室R1とを連通させる。よって、弁体4は、伸側室R1の圧力と中間室R3の圧力の差圧が第2リーフバルブ42の開弁圧に達すると、連通孔41aを開放して伸側室R1から中間室R3へ向かう液体の流れを許容しつつ当該液体の流れに抵抗を与える。なお、連通孔41aの全部の流路面積は、撓んだ第2リーフバルブ42と第1リーフバルブ41との間の環状隙間でなる流路面積より十分に大きく、液体が第2リーフバルブ42を通過する際の減衰力に連通孔41aが影響を与えないよう配慮されている。
【0033】
反対に、中間室R3の圧力が伸側室R1内の圧力よりも高い場合、第2リーフバルブ42は第1リーフバルブ41のバルブディスク3側面に密着して連通孔41aとポート3eの連通を断つ。そして、中間室R3の圧力と伸側室R1の圧力の差圧が弁体4の開弁圧に達すると、第1リーフバルブ41は、撓んで第2リーフバルブ42を環状弁座3cから離間させてポート3eを開放し、中間室R3と伸側室R1とを連通させる。よって、弁体4は、中間室R3の圧力と伸側室R1の圧力の差圧が弁体4の開弁圧に達すると、環状弁座3cから離座してポート3eを開放して中間室R3から伸側室R1へ向かう液体の流れを許容しつつ当該液体の流れに抵抗を与える。
【0034】
つづいて、圧側メインリーフバルブ12は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、ピストン5の
図2中上端に重ねられて圧側メインポート5aの出口端を開閉する。圧側メインリーフバルブ12のピストン5に対面する環状板の外周には切欠で形成されるオリフィス12aが設けられている。そして、圧側メインリーフバルブ12は、内外周ともにピストン5に当接した状態では、圧側室R2と中間室R3とをオリフィス12aのみで連通させる一方、圧側メインポート5aを通じて受ける圧側室R2の圧力が中間室R3の圧力よりも高くなり、両者の差圧が開弁圧に達すると外周側を撓ませて圧側メインポート5aを開放する。
【0035】
伸側メインリーフバルブ13は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、ピストン5の
図2中下端に重ねられて伸側メインポート5bの出口端を開閉する。伸側メインリーフバルブ13のピストン5に対面する環状板の外周には切欠で形成されるオリフィス13aが設けられている。そして、伸側メインリーフバルブ13は、内外周ともにピストン5に当接した状態では、中間室R3と圧側室R2をオリフィス13aのみで連通させる一方、伸側メインポート5bを通じて中間室R3の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、両者の差圧が開弁圧に達すると撓んで伸側メインポート5bを開放する。
【0036】
緩衝器Dは、以上のように構成され、以下に、緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ1に対してロッド2が
図1中上方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合の作動について説明する。緩衝器Dが伸長作動すると、ピストン5およびバルブディスク3がシリンダ1に対して
図1中上方へ移動するので、伸側室R1が圧縮され圧側室R2が拡大される。
【0037】
すると、伸側室R1内の液体は、圧側室R2へ移動する。緩衝器Dの伸長速度が微低速であって、伸側メインリーフバルブ13が開弁しない状態では、第1リーフバルブ41が伸側室R1の圧力を受けて支持座10と環状弁座3cに密着するが、第2リーフバルブ42に連通孔41aを介して伸側室R1の圧力が作用して、第2リーフバルブ42の内周が撓んで第1リーフバルブ41から離間し連通孔41aを開放する。
【0038】
よって、伸側室R1の液体は、連通孔41aおよびポート3eを通過し中間室R3を経て、圧側および伸側のメインポート5a,5bおよびオリフィス12a,13aを通過して圧側室R2へ移動する。このように、伸長作動時であって緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合、オリフィス12a,13aを通過する流量がごく少量であるので、液体がオリフィス12a,13aを通過する際に生じる圧力損失よりも第2リーフバルブ42を通過する際に生じる圧力損失の方が大きい。よって、緩衝器Dは、微低速域で伸長する場合、主として第2リーフバルブ42によって減衰力を発揮する。
【0039】
また、緩衝器Dの伸長速度が低速域になると、伸側メインリーフバルブ13は開弁しないが、オリフィス12a,13aにおける圧力損失が大きくなるので、緩衝器Dは、第2リーフバルブ42およびオリフィス12a,13aによって減衰力を発揮する。
【0040】
さらに、この伸長作動時において緩衝器Dの伸長速度が高速になると、伸側メインリーフバルブ13が撓んで開弁して伸側メインポート5bが大きく開放され、緩衝器Dは、主として第2リーフバルブ42および伸側メインリーフバルブ13によって減衰力を発揮する。
【0041】
つづいて、シリンダ1に対してロッド2が
図1中下方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合の作動について説明する。緩衝器Dが収縮作動すると、ピストン5およびバルブディスク3がシリンダ1に対して
図1中下方へ移動するので、圧側室R2が圧縮され伸側室R1が拡大される。
【0042】
すると、圧側室R2内の液体は、伸側室R1へ移動する。緩衝器Dの収縮速度が微低速であって、圧側メインリーフバルブ12が開弁しない状態では、第1リーフバルブ41が圧側室R2の圧力を受けて撓んで第2リーフバルブ42が環状弁座3cから離座して、弁体4と環状弁座3cとの間に環状隙間が形成されてポート3eが開放される。
【0043】
よって、圧側室R2の液体は、圧側および伸側のメインポート5a,5b、オリフィス12a,13aおよび中間室R3を経て、第1リーフバルブ41の外周を撓ませてポート3eを通過して伸側室R1へ移動する。このように、収縮作動時であって緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合、オリフィス12a,13aを通過する流量がごく少量であるので、液体がオリフィス12a,13aを通過する際に生じる圧力損失よりも弁体4を通過する際に生じる圧力損失の方が大きい。この場合、弁体4の外周と環状弁座3cとの間の環状隙間の大きさで液体が弁体4を通過する際の圧力損失が決まるが、環状隙間の大きさは第1リーフバルブ41の撓み剛性と初期撓み量によって決まる。よって、緩衝器Dは、微低速域で収縮する場合、主として第1リーフバルブ41の撓み剛性と初期撓み量に依存した減衰力を発揮する。
【0044】
また、緩衝器Dの収縮速度が低速域になると、圧側メインリーフバルブ12は開弁しないが、オリフィス12a,13aにおける圧力損失が大きくなるので、緩衝器Dは、弁体4およびオリフィス12a,13aによって減衰力を発揮する。
【0045】
さらに、この収縮作動時において緩衝器Dの収縮速度が高速になると、圧側メインリーフバルブ12が撓んで開弁して圧側メインポート5aが大きく開放され、緩衝器Dは、主として弁体4および圧側メインリーフバルブ12によって減衰力を発揮する。
【0046】
なお、このように本実施の形態の緩衝器Dでは、主として弁体4で減衰力を発生する速度域を微低速とし、主としてオリフィス12a,13aで減衰力を発生する速度域を低速とし、主として圧側メインリーフバルブ12或いは伸側メインリーフバルブ13で減衰力を発生する速度域を高速としている。なお、微低速、低速および高速の区分する速度については設計者が任意に設定できる。また、オリフィス12a,13aのいずれか一方は省略でき、さらに、オリフィス12a,13aは、伸側メインリーフバルブ13および圧側メインリーフバルブ12にではなく、ピストン5に設けられてもよい。
【0047】
前述したように、本実施の形態の緩衝器Dでは、液体が伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合、第2リーフバルブ42が連通孔41aを開放し、液体が圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合、第1リーフバルブ41が撓んでポート3eを開放する。ここで、第1リーフバルブ41でポート3eを開放して弁体4の外周を液体が通過する際の減衰力を低減したい場合、第1リーフバルブ41の撓みの支点となる間座8の外径を可能な限り小径化し、環状弁座3cの内径を可能な限り大径化して第1リーフバルブの撓み量に対する環状弁座3cと第2リーフバルブ42との間の環状隙間の大きさを大きくすればよい。環状隙間の大きさは、環状隙間の直径が大きくなるほど、また、第1リーフバルブ41の撓み剛性が低くなるほど、大きくなる。よって、第1リーフバルブ41の撓みの支点となる間座8の外径を可能な限り小径化し、環状弁座3cの内径を可能な限り大径化すると、緩衝器Dが高速で収縮して第1リーフバルブ41が撓んだ際に弁体4と環状弁座3cとの間に形成される環状隙間が大きくなるため、弁体4が液体の流れに与える抵抗を圧側メインリーフバルブ12に比較して極小さくすることができる。
【0048】
そして、本実施の形態の緩衝器Dでは、液体が反対側に流れて第2リーフバルブ42を撓ませて連通孔41aを通過する際の減衰力の大きさは、第1リーフバルブ41の撓み剛性には関係せず、第2リーフバルブ42の内周が撓んだ際の第2リーフバルブ42の内周と第1リーフバルブ41との間の環状隙間の大きさに依存する。第2リーフバルブ42の内周径と撓み剛性は、第1リーフバルブ41に対して独立に設定できるので、第2リーフバルブ42を撓ませて連通孔41aを通過する際の減衰力は、第1リーフバルブ41の設定に関係なく別個に設定できる。そして、第2リーフバルブ42の内周と第1リーフバルブ41との間の環状隙間の大きさは、この環状隙間の直径が大きくなるほど、また、第2リーフバルブ42の撓み剛性が低くなるほど、大きくなる。よって、第2リーフバルブ42の内周径を大きくして、第2リーフバルブ42の撓み剛性を小さくすると、緩衝器Dが高速で収縮して第2リーフバルブ42が撓んだ際に第2リーフバルブ42の内周と第1リーフバルブ41との間に形成される環状隙間が大きくなるため、弁体4が液体の流れに与える抵抗を伸側メインリーフバルブ13に比較して極小さくすることができる。
【0049】
このように、第1リーフバルブ41でポート3eを開放して弁体4の外周を液体が通過する際の減衰力を低減したことによって、第2リーフバルブ42を開いて液体が通過する際の減衰力が大きくなるようなことはなく、連通孔41aの位置や第1リーフバルブ41の外径により多少制限はあるものの第2リーフバルブ42で発生する減衰力を従来のバルブに比べると自由に設定できる。
【0050】
このように本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に設けられた二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2と、ロッド2の外周に設けられるとともに環状弁座3cと環状弁座3cの内周に開口して伸側室R1と圧側室R2とを連通するポート3eとを有するバルブディスク3と、環状であって環状弁座3cに離着座してポート3eを開閉する弁体4とを備え、弁体4が環状であってポート3eに対向して伸側室R1と圧側室R2を連通する連通孔41aを有する第1リーフバルブ41と、環状であって第1リーフバルブ41のバルブディスク3側に重ねられており連通孔41aを開閉する内開きの第2リーフバルブ42とを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、第1リーフバルブ41でポート3eを開放して弁体4の外周を液体が通過する際の減衰力を低減したことによって、第2リーフバルブ42を開いて液体が通過する際の減衰力が大きくなるようなことはなく、自由に設定できるので、伸圧両側の減衰力の低減が可能となる。以上より、本実施の形態の緩衝器Dによれば、弁体4が影響する高速伸縮時における伸圧両側の減衰力を低減できる。
【0051】
また、このように構成された緩衝器Dによれば、ポート3eを開放して弁体4の外周を液体が通過する際の減衰力は、第1リーフバルブ41の撓み剛性と間座8の外径と環状弁座3cの外径の設定で調整でき、第2リーフバルブ42が開いて液体が通過する際の減衰力については第2リーフバルブ42の内外径差と内径の設定で調整でき、両者は独立して調整できるから伸側の減衰力と圧側の減衰力を独立して設定できる。なお、間座8の外径が第2リーフバルブ42の内径よりも大径である場合、中間室R3側の圧力で弁体4が開弁する場合、第1リーフバルブ41と第2リーフバルブ42との内周が間座8によって支持されて両者が撓むようになる構造となる。この場合でも、ポート3eを開放して弁体4の外周を液体が通過する際の減衰力は、第1リーフバルブ41および第2リーフバルブ42の撓み剛性と間座8の外径と環状弁座3cの外径の設定で調整でき、第2リーフバルブ42が開いて液体が通過する際の減衰力については第2リーフバルブ42の内外径差と内径の設定で調整できるから、伸側の減衰力と圧側の減衰力を個別に設定できる。
【0052】
また、第1リーフバルブ41と第2リーフバルブ42は、ともに単一の環状板で構成されているが、ともに積層される複数枚の環状板で構成されてもよい。第2リーフバルブ42を複数枚の環状板で構成する場合、これら環状板の外周を溶接して第1リーフバルブ41に一体化すればよい。
【0053】
なお、前述した弁体4では、第1リーフバルブ41と第2リーフバルブ42の外径が同一であるが、第2リーフバルブ42の外径を環状弁座3cの内径よりも小径に設定して第1リーフバルブ41に一体に取付けて、第1リーフバルブ41が環状弁座3cに離着座するようにしてもよい。ただし、第1リーフバルブ41と第2リーフバルブ42の外径を同一にする方が、第2リーフバルブ42の内外径差を大きくでき撓み剛性の低減に有利となって減衰力をより低減できる。
【0054】
また、
図3に示した一実施の形態の第1変形例の緩衝器D1のように、第1リーフバルブ41の内周側のシム9と支持座10を廃止して、第1リーフバルブ41の内周をバルブディスク3と間座8とで挟持して第1リーフバルブ41の外周側の撓みを許容する構成されてもよい。このように構成されても、第1リーフバルブ41および第2リーフバルブ42は前述と同様に作動して緩衝器D1の高速伸縮時における減衰力を低減できるとともに、伸側の減衰力と圧側の減衰力を別個独立に設定できる。
【0055】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、環状であって第1リーフバルブ41の反バルブディスク側に配置され、外径が第1リーフバルブ41の内径よりも大きく、かつ、第2リーフバルブ42の内径よりも小さな間座8を備えている。このように構成された緩衝器Dでは、間座8の外径が第1リーフバルブ41の内径よりも大きく、かつ、第2リーフバルブ42の内径よりも小さいので、弁体4がポート3e側から圧力を受ける際に、間座8が第1リーフバルブ41のみの内周を支持して第1リーフバルブ41のみを撓ませ、第2リーフバルブ42を撓ませずに済む。間座8の外径が第2リーフバルブ42の内径よりも大径であると、弁体4と環状弁座3cとの間を液体が通過する際に、第1リーフバルブ41のみならず第2リーフバルブ42も撓むために弁体4の全体の撓み剛性が大きくなるが、前述のように構成された本実施の形態の緩衝器Dにおける弁体4は、環状弁座3cから離間する際に第1リーフバルブ41のみを撓ませて開弁できるので、緩衝器Dの高速収縮時の減衰力をより一層低減できる。
図2の配置からバルブディスク3と弁体4を天地逆にして取付ければ、緩衝器Dの高速伸長時の減衰力をより一層低減できる。なお、第2リーフバルブ42の内径よりも間座8の外径を大きくする場合、弁体4が環状弁座3cから離間する際に第1リーフバルブ41と第2リーフバルブ42との双方を撓ませることができ、この場合、弁体4の撓み剛性を第1リーフバルブ41と第2リーフバルブ42との撓み剛性で設定することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、環状であって第1リーフバルブ41のバルブディスク側に配置され、外径が第1リーフバルブ41の内径よりも大きく、かつ、第2リーフバルブ42の内径よりも小さな支持座10を備え、間座8と支持座10との間に第1リーフバルブ41の内周が挿入されている。このように構成された緩衝器Dでは、第1リーフバルブ41が反バルブディスク側となる伸側室R1側から圧力を受けた際に、支持座10で内周側の撓みが阻止されるので、第1リーフバルブ41の内周が撓んで第1リーフバルブ41の内周を液体が通過してポート3eへ流れるのを阻止できる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、弁体4の反バルブディスク側からポート3eへ向かう液体の流れに対して第2リーフバルブ42のみが抵抗を与えることになり、液体が弁体4の反バルブディスク側からポート3eへ向かう際の減衰力の設定が容易となるとともに狙い通りの減衰力を発揮できる。
【0057】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、第1リーフバルブ41の内側に嵌合する環状のシム9を備えている。このようにシム9を備えた緩衝器Dでは、シム9の厚みの変更で、間座8の位置を調整できるので、第1リーフバルブ41の初期撓み量を調整でき、弁体4がバルブディスク3側から圧力を受けて液体が弁体4と環状弁座3cとの間を通過する際に発生する減衰力を容易に調整できる。なお、シム9は、図示したところでは、1枚の環状板であるが、複数枚の環状板を積層して構成されてもよく、その場合、環状板の積層枚数の変更で前記減衰力の調整が可能となる。
【0058】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、第2リーフバルブ42の外周が第1リーフバルブ41に溶接によって接合されている。このように構成された緩衝器Dでは、第2リーフバルブ42の外周が第1リーフバルブ41に溶接されるので、第2リーフバルブ42を第1リーフバルブ41に一体化して内開きのリーフバルブに設定できる。また、第1リーフバルブ41に第2リーフバルブ42を一体化できるので、弁体4のロッド2への組付性も向上する。
【0059】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロッド2の外周に固定されるとともに伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを連通するメインポートとしての圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bを有してシリンダ1の内周に摺接するピストン5と、ロッド2の外周に装着されて圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bを開閉するメインリーフバルブとしての圧側メインリーフバルブ12および伸側メインリーフバルブ13を備え、バルブディスク3がシリンダ1の内周に摺接するとともにバルブディスク3におけるポート3eはメインポート5a,5bを介して伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを連通している。このように構成された緩衝器Dによれば、高速で伸縮する際に弁体4の液体の流れに与える抵抗を低減できるので、高速伸縮時に発生する減衰力に対して弁体4が与える影響を少なくでき、圧側メインリーフバルブ12および伸側メインリーフバルブ13により設定された減衰力を発揮できる。したがって、このように構成された緩衝器Dによれば、高速伸縮時の減衰力の特性が弁体4の特性に引きずられることがなくなるため、高速伸縮時の減衰力と低速側の減衰力の設定が容易となる。
【0060】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、弁体4は、第1リーフバルブ41と、第2リーフバルブ42とで構成されており、単一の弁体4で伸縮両側の減衰力を発揮でき、ピストン部の全長を短くでき、その分、緩衝器Dのストローク長も確保しやすくなる。
【0061】
なお、弁体4は、本実施の形態では、バルブディスク3の
図2中上方の伸側室R1側に配置されているが、バルブディスク3の
図2中下方の中間室R3側に配置されてもよい。この場合、バルブディスク3を
図2に示したところとは天地逆向きに配置すればよい。
【0062】
また、
図4に示した一実施の第2変形例の緩衝器D2のように、バルブディスク3のみをピストンとして利用した構成も採用可能である。この例の緩衝器D2では、緩衝器Dのピストン5、伸側メインリーフバルブ13および圧側メインリーフバルブ12を省略した構成となっている。この場合、バルブディスク3は、本体部3aの
図4中下端であってポート3eよりも外周側から開口して環状弁座3cより外周側の摺接筒3bの肩に通じるオリフィス通路3fを備えている。よって、オリフィス通路3fは、ポート3eに並列して伸側室R1と中間室R3とを連通しており、圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bを介して伸側室R1と圧側室R2とを連通している。
【0063】
このように構成された緩衝器D2が伸長作動すると、バルブディスク3がシリンダ1に対して
図4中上方へ移動するので、伸側室R1が圧縮され圧側室R2が拡大される。
【0064】
すると、伸側室R1内の液体は、圧側室R2へ移動する。緩衝器D2の伸長速度が低速である場合、第1リーフバルブ41が伸側室R1の圧力を受けて支持座10と環状弁座3cに密着するが、第2リーフバルブ42に連通孔41aを介して伸側室R1の圧力が作用して、第2リーフバルブ42の内周が撓んで第1リーフバルブ41から離間し連通孔41aを開放する。
【0065】
よって、伸側室R1の液体は、連通孔41aおよびポート3eを通過し圧側室R2へ移動するとともにポート3eに並列されるオリフィス通路3fを通過して圧側室R2へ移動する。このように、伸長作動時であって緩衝器D2の伸長速度が低速域にある場合、緩衝器D2は、第2リーフバルブ42およびオリフィス通路3fによって減衰力を発揮する。
【0066】
さらに、この伸長作動時において緩衝器Dの伸長速度が高速になると、オリフィス通路3fが通過液体の流れに与える抵抗が非常に大きくなって液体がオリフィス通路3fを流れにくくなるため、第2リーフバルブ42によって減衰力を発揮する。
【0067】
つづいて、シリンダ1に対してロッド2が
図4中下方へ移動して緩衝器D2が収縮作動する場合の作動について説明する。緩衝器D2が収縮作動すると、バルブディスク3がシリンダ1に対して
図4中下方へ移動するので、圧側室R2が圧縮され伸側室R1が拡大される。
【0068】
すると、圧側室R2内の液体は、伸側室R1へ移動する。緩衝器D2の収縮速度が低速である場合、第1リーフバルブ41が圧側室R2の圧力を受けて撓んで第2リーフバルブ42が環状弁座3cから離座して、弁体4と環状弁座3cとの間に環状隙間が形成されてポート3eが開放される。
【0069】
よって、圧側室R2の液体は、第1リーフバルブ41の外周を撓ませてポート3eを通過して伸側室R1へ移動するとともにポート3eに並列されるオリフィス通路3fを通過して伸側室R1へ移動する。このように、収縮作動時であって緩衝器D2の収縮速度が低速域にある場合、緩衝器D2は、弁体4およびオリフィス通路3fによって減衰力を発揮する。
【0070】
さらに、この伸長作動時において緩衝器D2の伸長速度が高速になると、オリフィス通路3fが通過液体の流れに与える抵抗が非常に大きくなって液体がオリフィス通路3fを流れにくくなるため、弁体4によって減衰力を発揮する。
【0071】
なお、このように本実施の形態の緩衝器D2では、主としてオリフィス通路3fと弁体4とで減衰力を発生する速度域を低速とし、主として弁体4のみで減衰力を発生する速度域を高速としている。なお、低速および高速の区分する速度については設計者が任意に設定できる。また、オリフィス通路3fは省略でき、低速域で緩衝器D2が伸縮する際にも弁体4で減衰力を発生してもよい。
【0072】
このように構成された緩衝器D2もシリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に設けられた二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2と、ロッド2の外周に設けられるとともに環状弁座3cと環状弁座3cの内周に開口して伸側室R1と圧側室R2とを連通するポート3eとを有するバルブディスク3と、環状であって環状弁座3cに離着座してポート3eを開閉する弁体4とを備え、弁体4が環状であってポート3eに対向して伸側室R1と圧側室R2を連通する連通孔41aを有する第1リーフバルブ41と、環状であって第1リーフバルブ41のバルブディスク3側に重ねられており連通孔41aを開閉する内開きの第2リーフバルブ42とを備えている。よって、緩衝器D2によれば、緩衝器Dと同様に、第1リーフバルブ41でポート3eを開放して弁体4の外周を液体が通過する際の減衰力を低減したことによって、第2リーフバルブ42を開いて液体が通過する際の減衰力が大きくなるようなことはなく、自由に設定できるので、伸圧両側の減衰力の低減が可能となる。以上より、本実施の形態の緩衝器D2によれば、弁体4が影響する高速伸縮時における伸圧両側の減衰力を低減できる。
【0073】
なお、緩衝器D,D2がシリンダ1の外方にロッド2がシリンダ1に出入りする体積を補償するためにリザーバを備えており、圧側室R2とリザーバとを仕切るバルブケースとベースバルブを備えている場合、前記したバルブディスク3をバルブケースとして利用し、前記弁体4をベースバルブとして利用する形態も採り得る。このように緩衝器を構成しても本願発明の効果は失われない。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1・・・シリンダ、2・・・ロッドと、3・・・バルブディスク、3c・・・環状弁座、3e・・・ポート、4・・・弁体、5・・・ピストン、5a・・・圧側メインポート(メインポート)、5b・・・伸側メインポート(メインポート)、8・・・間座、9・・・シム、10・・・・支持座、12・・・伸側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)、13・・・圧側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)、41・・・第1リーフバルブ、41a・・・連通孔、42・・・第2リーフバルブ、D,D1,D2・・・緩衝器、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)