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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】誘電性無機組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/495 20060101AFI20240718BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20240718BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C04B35/495
H01B3/12 313
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020517227
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012652
(87)【国際公開番号】W WO2020209039
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019073336
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】傅 杰
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092637(WO,A1)
【文献】特開2013-028478(JP,A)
【文献】特表2007-531685(JP,A)
【文献】特開2019-073398(JP,A)
【文献】Patoux S et al.,A Reversible Lithium Intercalation Process in an ReO3-Type Structure PNb9O5,Journal of the Electrochemical Society,フランス,2002年,Vol.149 No.4,A391-A400,abstract
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
H01B 3/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PNb925、GeNb925、及びこれらの固溶体のうちの一種または二種以上の結晶により構成され、25℃での1kHz~100kHzの周波数における誘電率が900以上5000以下のセラミック誘電体であることを特徴とする無機組成物。
【請求項2】
-50℃~350℃の範囲での100kHzの周波数における誘電率の温度変化率が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無機組成物を含む誘電体。
【請求項4】
請求項3に記載の誘電体を含むコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体として使用しうる性質を有する無機組成物に係り、さらに詳しくは、誘電率が高く、しかも-50℃~350℃の領域において誘電率の変化率が小さい無機組成物、及び当該組成物を使用する誘電体に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットなどの電子機器の普及に伴い、これらに使用される電子部品の小型高性能化が求められており、積層コンデンサとして使用される積層セラミックコンデンサ(MLCC、Multi Layer Ceramic Capacitor)も当然のように、小型大容量化が求められている。
【0003】
近年、電気自動車の普及に伴い、モーターの性能向上やコンパクト化を目的として、高温となるモーター周辺部に電装基板を直接実装することが求められているが、車載電装部品の使用環境の高温化に伴い、MLCCについても、より高温下(200℃~350℃)でも、静電容量が高く、容量温度特性が良好であることが要求される。即ち、コンデンサを構成する誘電体に対して200℃を超える高温領域でも誘電率が高く、かつ温度に対する誘電率の変動の少ないことが求められる。
【0004】
また、半導体加工や視力矯正手術で利用されるエキシマレーザー、医療用X線、蓄電装置、送電設備などに使われる高エネルギー貯蔵密度を有するコンデンサへの需要が近年に高まっている。このようなコンデンサに使われる誘電体に対して高いエネルギー貯蔵密度を得るために高い誘電率と高い絶縁破壊強度を併せ持つことが求められると同時に高温下においても容量の温度変化の少ないことも求められる。
【0005】
しかしながら、誘電体として多く用いられているBaTiOは、キュリー温度が130℃付近にあるため、150℃以上の温度領域では誘電率が大きく低下してしまい、上記の要求を満足させることができないという問題があった。
【0006】
文献1には、BaTiOの複合化物においてキュリー温度を高くすることができ、200℃まで容量の良好な温度特性が得られることが記載されているが、この材料では誘電率が500以下で、大きな容量が得られないという欠点がある。
【0007】
また、良好な容量温度特性を有する誘電体材料としてKNbO、K0.5Na0.5NbO等が研究されている。しかしながら、これらの誘電体材料は、焼成過程において、カリウム(K)が飛散(昇華)してしまい、得られる誘電体材料において格子欠陥が生じ、これにより絶縁性が低下するという問題がある。ここで、絶縁性が低いと、半導体化が進行して絶縁破壊が起こりやすくなるため、上記誘電体材料をコンデンサ等のセラミック電子部品に適用した場合、当該セラミック電子部品の信頼性が低下してしまうという問題がある。加えて、カリウム(K)の飛散は、生産工程の管理を困難にし、生産性が低下するという不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-119607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は誘電率が高く、しかも高温領域まで安定な温度依存性を有する誘電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、AとMとを含む酸化物結晶(AはP、Ge及びVの一種または二種以上、MはNbとTaの一種または二種以上)においてAとMの比を0.01~1.00の範囲にすることにより、誘電率が500以上であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下の(1)~(6)である。
(1)AとMとを含む酸化物結晶(AはP、Ge及びVの一種または二種以上、MはNbとTaの一種または二種以上)を含有し、前記AとMの比が0.01~1.00の範囲であり、誘電率が500以上であることを特徴とする無機物質。
(2)-50℃~350℃の範囲における誘電率の温度変化率は30%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の無機物質。
(3)前記酸化物結晶はPNb925、P2.5Nb1850及びGeNb925、GeNb1847、GeNb19.14450、VNb925、VNb24.9、PTa925、GeTa925、VTa925及びこれらの固溶体のうちの一種または二種以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の無機物質。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の無機物質を含む誘電体。
(5)強誘電体であることを特徴とする(4)の誘電体。
(6)上記の(4)または(5)に記載の誘電体を含むコンデンサ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誘電率が高く、しかも-50~350℃の温度範囲においてその温度特性が良好である誘電体及びその誘電体を含むセラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1と2のXRDパターンを示す図である。
図2】実施例1と2の誘電率と周波数との関係を示す図である。
図3】実施例4の誘電率と温度との関係を示す図である。
図4】実施例4のヒステリシス曲線を示す図である。
図5】実施例5の誘電率と周波数との関係を示す図である。
図6】実施例5の誘電率と温度の関係を示す図である。
図7】実施例6の誘電率と周波数との関係を示す図である。
図8】実施例6の誘電率と温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の誘電体>
本発明の無機組成物について説明する。
本発明の無機組成物は、誘電体として有用であり、AとMとを含む酸化物結晶(AはP、Ge及びVの一種または二種以上、MはNbとTaの一種または二種以上)を含むセラミックスである。AとMとの比を調整することにより、誘電率が500以上で、しかも-50~350℃の広い温度範囲にわたり誘電率の変化が少ない特性を実現できる。優れる誘電特性を得るには、AとMとの比が0.01~1.00の範囲であることは好ましく、0.03~0.50の範囲であることがより好ましく、0.04~0.20の範囲であることは最も好ましい。前記AとMとを含む酸化物結晶の中で特にPNb925、P2.5Nb1850及びGeNb925、GeNb1847、GeNb19.14450、VNb925、VNb24.9、PTa925、GeTa925、VTa925及びこれらの固溶体はより優れる特性を有するので、含ませるのが好ましい。
【0014】
本発明の無機組成物に上述以外の成分として、例えばSiO、GeO、B、Al、ZnO、Bi3、TiO、ZrO、V、Ta、WO、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物、遷移金属酸化物などを含んでもよい。これらの成分は焼結助剤としての役割を果たし、単独で存在してもよいし、上述の結晶に固溶していてもよいし、上述の結晶を構成する元素と新たな結晶を形成してもよい。これらの焼結助剤を導入することにより、焼成温度が下がったり、固溶体が形成したりすることにより誘電特性が向上することができる。
【0015】
本発明の無機組成物にガラスが添加されてもよい。ガラスは焼結助剤の役割を果たし、焼成温度を下げる効果がある。
【0016】
本発明の無機組成物は他の誘電体結晶、例えばタングステンブロンズ型結晶、ペロブスカイト型結晶、CaZrO結晶、SrZrO結晶、BaTi結晶、CaTi結晶等との複合化が可能である。これらの誘電体との複合化により、設計した通りの誘電特性に近づくことが可能である。なお、上述のタングステンブロンズ型結晶としてはMNb(M:Ca、Sr、Ba)、MRNb15(M:Ca、Sr、Ba;R:Na、K)、KLnNb15(Ln:Y、Ce、Sm、Eu、La、Gd、Tb、Dy、Ho、Bi)結晶及びこれらの固溶体からなる群から選ばれる一種または二種以上を含むことが特に好ましい。上述のペロブスカイト型結晶としてはRNbO、RTaO、(Bi0.5、R0.5)TiO(R:Na、K)、MTiO(M:Ca、Sr、Ba)結晶及びこれらの固溶体からなる群から選ばれる一種または二種以上を含むことが特に好ましい。
【0017】
本発明の無機組成物は、1kHz~100kHzの周波数における誘電率が500以上であることが好ましく、650以上であることがより好ましく、800以上であることがさらに好ましく、900以上であることが最も好ましい。
【0018】
本発明の無機組成物は1kHzまたは/及び100kHzにおける誘電率の温度変化率が-50℃~350℃の温度範囲で30%以下であることが好ましく、-50℃~350℃の温度範囲で20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下が最も好ましい。
なお、本発明では、LRCメーター(キーサイト・テクノロジー、4274Aまたはインピーダンスアナライザー(例えばソーラトロン社製 SI1260)を用いて100Hzから1MHzまでの周波数にわたって誘電率及び誘電損失を測定し、1kHzまたは100kHzにおける値を本発明の誘電率及び誘電損失とした。
【0019】
本発明の無機組成物が誘電体セラミックスである場合は、高い比誘電率を有し、-50℃~350℃の広い温度範囲で誘電率の温度特性が良好である。したがって、高温対応コンデンサとして好適に用いることができる。具体的には、高温環境下で使用される電子部品である車載向けデバイスとして期待されるSiCやGaNをベースにしたパワーデバイスの作動、あるいは自動車のエンジンルーム内のノイズ除去などに用いられる電子部品が挙げられる。
【0020】
また、本発明の無機組成物を使用した誘電体は、強誘電体であり、良好な圧電特性(たとえば、圧電定数:d、電気機械結合係数:k)も期待されるため、圧電体素子にも好適に使用できる。
【0021】
<製造方法>
本発明の無機組成物の製造方法について説明する。
【0022】
まず、本発明の無機組成物を構成する各成分の原料を準備する。各成分の原料としては、特に限定されず、上記した各成分の酸化物や複合酸化物、または焼成によりこれら酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、フッ化物、有機金属化合物などから適宜選択して用いることができる。
【0023】
次に、準備した原料を、所定の組成比となるように秤量して混合し、原料混合物を得る。混合する方法としては、例えば、ボールミルを用いて行う湿式混合や、乾式ミキサーを用いて行う乾式混合が挙げられる。
【0024】
得られた原料混合物は、バインダ樹脂を添加し造粒して、造粒物としてもよいし、バインダ樹脂や溶剤とともにペースト化して、スラリーとしてもよい。また、造粒物やスラリーとする前に、原料混合物を仮焼してもよい。
【0025】
造粒物やスラリーを成形する方法としては特に制限されず、シート法、印刷法、乾式成形、湿式成形、押出成形などが挙げられる。例えば乾式成形を採用した場合、造粒物を金型に充填して圧縮加圧(プレス)することにより成形する。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよい。
【0026】
得られた成形体について必要に応じて、常圧焼結やホットプレス焼結や熱間静水圧加圧焼結や放電プラズマ焼結やマイクロ波焼結などのいずれかの方法で焼成することにより、セラミック誘電体を得ることができる。焼成条件は、焼成方法及び組成等に応じて適宜決定すればよいが、焼成温度は、好ましくは800℃~1400℃、保持時間は、好ましくは数分から24時間である。
【0027】
焼成後のセラミック誘電体について、必要に応じて大気中、酸素または還元雰囲気で熱処理を行う場合がある。このような熱処理により、欠陥が低減し、誘電体の誘電特性が改善される。熱処理温度は700℃~1200℃の範囲で、処理時間は1~24時間の範囲であることが好ましい。
【0028】
このようにして製造された本発明の無機組成物からなるセラミック誘電体は、コンデンサなどの電子部品に好適に使用される。
【0029】
上記では、円盤状の本発明の無機組成物からなるセラミック誘電体の作製方法を示したが、グリーンシート法などにより、積層型の電子部品の誘電体層を構成するセラミックコンデンサも作製できる。すなわち、本発明の誘電体粉末をペースト状にし、キャリアフィルム上にドクターブレード法などにより誘電体グリーンシート層を形成し、この上に内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷した後、これらを1層ずつ剥離、積層してから圧力を加えて一体成形し、約800℃~1200℃の温度で焼き上げることにより、セラミックコンデンサが作製できる。
【0030】
また、本発明の無機組成物は、通常の薄膜形成法を用いることにより、薄膜誘電体に作製することが可能である。例えば、真空蒸着法、高周波スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD)、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MOD(Metal Organic Decomposition)法、ゾルゲル法、水熱法などを用いて薄膜誘電体に形成することができる。
【0031】
したがって、本発明の無機組成物は、単板型のコンデンサ等の電子部品に用いてもよいし、積層型のコンデンサ等の電子部品に用いてもよい、薄膜状の電子部品に用いてもよい。あるいは、圧電体素子に用いてもよい。
【実施例
【0032】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0033】
<実施例1-4の作製>
PとNbとを含む酸化物結晶を含む無機組成物は下記の手順で放電プラズマ焼結により作製した。まず、原料としてNHPOとNbの粉末を所定の比率(P/Nb=0.11)で調合し、直径2mmのジルコニアボールとエタノールと共にポリポットに充填し、24時間混合した後、24時間乾燥させた。乾燥した混合末を1000℃で2時間仮焼した。得られた仮焼物を上述と同様な条件で混合、粉砕、乾燥を行い、無機組成物からなる誘電体粉末を得た。この誘電体粉末から4gを取り、内径20mmのグラファイトダイに充填し、放電プラズマ焼結装置(住友石炭鉱業(株) SPS625)により真空雰囲気中で上下方向に35MPaの圧力をかけながら1050℃~1200℃で5~12分間保温することで円板状の誘電体を得た。得られた円板状の誘電体について両面を研磨してから、1L/分で酸素を流しながら1000℃で4時間熱処理を行ってから物性評価用サンプルとした。表1に実施例の作製条件及び諸物性を示す。
【0034】
図1に実施例1と2のXRDパターンを示す。すべての回折ピークはPNb25に帰属できるので、本セラミック誘電体はPNb25結晶より構成されることが明らかになった。なお、XRDパターンはX線回折装置(フィリップス社製、商品名:X’Pert-MPD)を用いて測定した。
【0035】
図2に実施例1と2の誘電率の周波数依存性を示す。なお、誘電率及び誘電損失の測定はサンプルの両面に金電極を蒸着してからインピーダンスアナライザー(ソーラトロン社製 SI1260)を用い、室温(25℃)にて行った。本図より、測定した周波数範囲(100Hz~10Hz)において誘電率は900以上で、しかも周波数により大きく変化しないことが分かる。また、誘電損失を確認したところ、上記の周波数範囲で5%以下と小さい誘電損失を有することが判明した。
【0036】
誘電特性の温度依存性はLCRメーターを用いて100Hzから100kHzまでの周波数にわたって-30℃~350℃までの温度範囲で測定した。図3に代表例として実施例4についての測定結果を示す。それは100kHzの周波数における誘電率を温度に対してプロットしたものである。この図より、本発明の誘電体の誘電率は高い値を示しながら、-30℃~350℃の温度範囲で大きく変化しないことが分かる。
【0037】
温度に対する誘電率の変化率(ε)は、25℃における誘電率を基準としたとき、各温度における誘電率がどれだけ変化するかを求め、下記の式で算出した。
ε(%)=[(目的の温度における誘電率-25℃における誘電率)/25℃における誘電率]×100%
【0038】
上記の式より求めた実施例4の誘電率の変化率(ε)を図3に示す。これにより、誘電率の変化率は-30℃~350℃の温度範囲で25%以下であり、-30℃~250℃の温度範囲で10%以下であったことが分かる。
【0039】
【表1】
【0040】
図4に実施例4の電場―分極曲線を示す。この図より、本誘電体は強誘電体であることが明らかになった。
【0041】
<実施例5の作製>
GeとNbを含む酸化物結晶を含む無機組成物は下記の手順で放電プラズマ焼結法により作製した。まず、原料としてGeOとNbの粉末を所定の比率(Ge/Nb=0.11で調合し、直径2mmのジルコニアボールとエタノールと共にポリポットに充填し、24時間混合した後、24時間乾燥させた。乾燥した混合末を950℃で2時間仮焼した。得られた仮焼物を上述と同様な条件で混合、粉砕、乾燥を行い、無機組成物からなる誘電体粉末を得た。この誘電体粉末から2.5gを取り、内径15mmのグラファイトダイに充填し、放電プラズマ焼結装置により真空雰囲気中で上下方向に50MPaの圧力をかけながら900℃で5分間保温することで円板状の誘電体を得た。得られた円板状の誘電体について両面を研磨してから、2L/分で酸素を流しながら850℃で4時間熱処理を行ってから物性評価用サンプルとした。
【0042】
XRDパターンの解析によりGeNb19.14450結晶相またはGeNb25結晶相が生成していることが推定される。GeNb19.14450とGeNb25の回折ピークがオーバーラップするため、二つの結晶が同時に共存している可能性もある。
図5に実施例5の誘電率の周波数依存性を示す。測定した周波数範囲において4000~5000と高い誘電率を有することが分かる。図6の誘電特性と温度特性との関係から、250℃以上の高温にわたり、誘電率の変化が少なく、その変化率が15%以下であることが確認できる。
【0043】
<実施例6の作製>
GeとNbとを含む酸化物結晶を含む無機組成物は下記の手順で通常の焼結法により作製した。まず、原料としてGeOとNbの粉末を所定の比率(Ge/Nb=0.11で調合し、直径2mmのジルコニアボールとエタノールと共にポリポットに充填し、24時間混合した後、24時間乾燥させた。乾燥した混合末を950℃で2時間仮焼した。得られた仮焼物を上述と同様な条件で混合、粉砕、乾燥を行い、無機組成物からなる誘電体粉末を得た。この誘電体粉末から2.0gを取り、内径20mmの金型に充填し、二軸プレスによりペレット状に成型してから、電気炉で大気中で1170℃で4時間焼結した。得られた円板状の誘電体についてXRDを測定してから誘電率の測定を行った。
XRDパターンは実施例5と同じであることから、同様な結晶相を有することが判明した。
【0044】
図7に実施例6の誘電率の周波数依存性を示す。誘電率は測定した周波数範囲において700前後とほぼ一定であることが分かる。図8の誘電特性と温度特性との関係から、200℃以上の高温にわたり、誘電率の変化率が15%以下と低く、誘電損失が0.5以下であることが確認できた。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8