(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】デラマニド含有組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20240718BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240718BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240718BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240718BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240718BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61K31/454
A61P31/04
A61P31/06
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
(21)【出願番号】P 2020525571
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2019023006
(87)【国際公開番号】W WO2019240104
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2018111464
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 浩之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真裕
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 直興
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-197312(JP,A)
【文献】国際公開第2007/052738(WO,A1)
【文献】特表2004-513886(JP,A)
【文献】特表2009-502736(JP,A)
【文献】国際公開第2007/126063(WO,A1)
【文献】特開2015-027964(JP,A)
【文献】特開2001-163769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-31/80
A61K33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)デラマニド粒子、及び
(B)表面安定化剤
を含む、組成物であって、
(B)表面安定化剤が
(B-1)ポリマー、及び
(B-2)界面活性剤
を含み、
(B-1)ポリマーとして、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフト重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含み、
(B-2)界面活性剤として、ノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤を含
み、
(A)成分100質量部に対して、
(B-1)成分を2~20質量部、
(B-2)成分を2~55質量部
含む、組成物。
【請求項2】
(B-1)ポリマーとして、少なくともヒドロキシプロピルセルロースを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)デラマニド粒子、(B-1)ヒドロキシプロピルセルロース、並びに(B-2)ショ糖脂肪酸エステル及び/又は、アルキルアルコールとスルホコハク酸とのジエステル若しくはその塩を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(A)成分100質量部に対して、
ショ糖脂肪酸エステルを2~15質量部、
ジオクチルソジウムスルホサクシネートを2~40質量部、
含む、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに糖及び/又は糖アルコールを含む、請求項1~
4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
(A)成分100質量部に対し
て、糖及び/又は糖アルコールを30~200質量
部含む、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
(A)成分100質量部に対して、
ショ糖脂肪酸エステルを2~15質量部、
ジオクチルソジウムスルホサクシネートを2~40質量部、
マンニトールを30~200質量部、
含む、請求項
5又は
6に記載の組成物。
【請求項8】
粒状組成物である、請求項1~
7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
(A)デラマニド粒子の平均粒子径が350nm以下である、請求項1~
8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
請求項
8又は
9に記載の粒状組成物を含む医薬経口固形製剤。
【請求項11】
錠剤又はカプセル剤である、請求項
10に記載の医薬経口固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デラマニドを含有する組成物、及び当該組成物の製造方法等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
デラマニドは、結核菌、多剤耐性結核菌、及び非定型抗酸菌に対して優れた殺菌作用を有していることが知られている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-149527号公報
【文献】国際公開第2005/042542号
【文献】国際公開第2007/013477号
【文献】国際公開第2007/052738号
【文献】特開平4-295420号公報
【文献】国際公開第2002/024163号
【文献】国際公開第2004/041250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在市販されているデラマニド製剤は、デラマニドを高分子とともに有機溶媒に溶解させた後、噴霧乾燥することにより、デラマニドの溶解性を改善し、薬物吸収を向上させている。しかし、当該方法では有機溶媒の処理に大きなコストがかかる上、溶媒回収が必要なため、環境負荷などの問題をかかえている。
【0005】
本発明者らは、出来るだけ安価であり、且つ環境負荷の小さい方法によりデラマニドを微粒子化する方法を検討した。まず、デラマニドを水中で微粒子(サブミクロン粒子)となるまで粉砕して比表面積を増加させることを試みた。しかし、サブミクロン粒子は粉砕後にはたらく凝集力(例えば分子間力、毛管力、静電気力等)により容易に凝集し、二次粒子を生成してしまうため、デラマニドを効率よく粉砕し、且つ粉砕後の凝集を防ぐことは容易ではなかった。また、デラマニドは極めて疎水性が高いため、水中での粉砕は困難があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、デラマニドと特定の表面安定化剤を混合して湿式粉砕することにより、効率よくサブミクロン粒子まで粉砕することができ、且つ二次粒子生成をも抑制できることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)デラマニド粒子、及び
(B)表面安定化剤
を含む、組成物。
項2.
(A)デラマニド粒子、
(B-1)ポリマー、及び
(B-2)界面活性剤
を含む、組成物。
項3.
(B-1)ポリマーとして、少なくともヒドロキシプロピルセルロースを含む、項2に記載の組成物。
項4.
(B-2)界面活性剤として、少なくともノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤を含む、項2又は3に記載の組成物。
項5.
(A)デラマニド粒子、(B-1)ヒドロキシプロピルセルロース、並びに(B-2)ショ糖脂肪酸エステル(好ましくは、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、及びショ糖エルカ酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、ショ糖ステアリン酸エステル及びショ糖オレイン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種)及び/又は、アルキルアルコールとスルホコハク酸とのジエステル若しくはその塩(好ましくは、直鎖又は分岐鎖状の炭素数8~18のアルキルアルコールとスルホコハク酸とのジエステル若しくはその塩である。ここで、2つのアルキルアルコールは同一でも異なっていてもよく、同一であることがより好ましい。当該ジエステル若しくはその塩としては、ジオクチルソジウムスルホサクシネートが特に好ましい。)を含む、項2~4のいずれかに記載の組成物。
項6.
(A)成分100質量部に対して、
(B-1)成分を2~20質量部、
(B-2)成分を2~55質量部、
含む、項2~5のいずれかに記載の組成物。
項7.
(A)成分100質量部に対して、
ショ糖脂肪酸エステルを2~15質量部、
ジオクチルソジウムスルホサクシネートを2~40質量部、
含む、項6に記載の組成物。
項8.
さらに糖及び/又は糖アルコール(好ましくはマンニトール)を(好ましくは(A)成分100質量部に対して30~200質量部)含む、項2~7のいずれかに記載の組成物。
項9.
(A)成分100質量部に対して、
(B-1)成分を2~20質量部、
(B-2)成分を2~55質量部、
糖及び/又は糖アルコールを30~200質量部、
含む、項8に記載の組成物。
項10.
(A)成分100質量部に対して、
ショ糖脂肪酸エステルを2~15質量部、
ジオクチルソジウムスルホサクシネートを2~40質量部、
マンニトールを30~200質量部、
含む、項8又は9に記載の組成物。
項11.
粒状組成物である、項1~10のいずれかに記載の組成物。
項12.
(A)デラマニド粒子の平均粒子径が350nm以下である、項1~11のいずれかに記載の組成物。
項13.
項11又は12に記載の粒状組成物から得られる医薬経口固形製剤。
項14.
錠剤又はカプセル剤である、項13に記載の医薬経口固形製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明に包含されるデラマニド粒子を含む組成物は、特定の表面安定化剤を含むことにより、投与時におけるデラマニド粒子の二次粒子生成が抑制され(特に溶媒への分散性に優れており)、溶解速度が改善されている。また、本発明に包含されるデラマニド粒子を含む組成物の製造方法によれば、効率よくデラマニドを粉砕することができ、得られたデラマニドの二次粒子生成も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】デラマニド粒子、ポリマー、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)、及びショ糖脂肪酸エステルを含む組成物(懸濁液)を、湿式粉砕により調製する際に、デラマニド粒子の平均粒子径推移を粉砕開始から3分ごとに測定した結果を示す。
【
図1b】
図1aに示された、湿式粉砕により調製されたデラマニド粒子含有懸濁液を、数日間保管してデラマニド粒子の平均粒子径推移を測定した結果を示す。
【
図2】デラマニド粒子、ヒドロキシプロピルセルロース、及びジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)を含む組成物(懸濁液)を、湿式粉砕により調製する際に、デラマニド粒子の平均粒子径推移を粉砕開始から5分ごとに測定した結果を示す。
【
図3a】デラマニド粒子、ヒドロキシプロピルセルロース、及び各種界面活性剤を含む組成物(懸濁液)を、湿式粉砕により調製する際に、デラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を測定した結果を示す。
【
図3b】デラマニド粒子、ヒドロキシプロピルセルロース、及びショ糖脂肪酸エステルを含み、さらにジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)又はドデシル硫酸ナトリウム(SLS)を含む組成物(懸濁液)を、湿式粉砕により調製する際に、デラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を測定した結果を示す。
【
図4】デラマニド粒子、ヒドロキシプロピルセルロース、及びジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)を含み、さらにショ糖脂肪酸エステルを含む又は含まない組成物(懸濁液)を、湿式粉砕により調製する際に、デラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を測定した結果を示す。
【
図5】デラマニド粒子を含むサブミクロン粉末をイヌに投与したときの、血清中濃度推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明に包含される、デラマニド粒子を含む組成物は、(A)デラマニド粒子、及び(B)表面安定化剤を含む(以下、当該組成物を本発明の組成物と呼ぶことがある)。以下、デラマニド粒子を(A)成分、表面安定化剤を(B)成分と呼ぶことがある。
【0012】
デラマニドは、下記式:
【0013】
【0014】
で表される化合物である。上記の通り、デラマニドは、結核菌、多剤耐性結核菌、及び非定型抗酸菌に対して優れた殺菌作用を有していることが知られている。また、その製造も、公知の方法又は公知の方法から容易に想到できる方法により行うことができる。
【0015】
表面安定化剤としては、例えば、既知の有機および無機医薬賦形剤が挙げられる。そのような賦形剤には、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然物、及び界面活性剤が含まれる。界面活性剤には、非イオン(ノニオン)及びイオン性の界面活性剤が含まれ、イオン性の界面活性剤には、両性、アニオン性、及びカチオン性の界面活性剤が含まれる。表面安定化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
より具体的には、表面安定化剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ハイプロメロースとも呼ばれる)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(ジオクチルソジウムスルホサクシナート:DOSS)、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフト重合体(例えばSolplus(登録商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばセトマクロゴール1000)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばTween 20(登録商標)やTween 80(登録商標)など(ICI Speciality Chemicals)市販のTween(登録商標)類);ポリエチレングリコール(例えばCarbowaxs 3550(登録商標)や934(登録商標)(Union Carbide))、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、リン酸エステル、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ハイプロメロースフタレート、非結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとの4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン、およびトリトンとも呼ばれる)、ポロキサマー(例えばPluronics F68(登録商標)およびF108(登録商標)であり、これらはエチレンオキシドとプロプレンオキシドのブロックコポリマーである);ポロキサミン(例えばTetronic 908(登録商標)であり、Poloxamine 908(登録商標)としても知られる。これはエチレンジアミンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを順次付加することによって得られた4官能性ブロックコポリマーである(BASF Wyandotte Corporation、Parsippany、N.J.));Tetronic 1508(登録商標)(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、アルキルアリールポリエステルスルホネートであるTritons X-200(登録商標)(Rhom and Haas);ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースの混合物であるCrodestas F-110(登録商標)(Croda Inc.);p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)であってOlin-lOG(登録商標)またはSurfactant 10-G(登録商標)としても知られる(Olin Chemicals、Stamford、CT);Crodestas SL-40(登録商標)(Croda,Inc.);およびC18H37CH2(CON(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、リゾチーム、ビニルピロリドンと酢酸ビニルのランダムコポリマー等が挙げられる。
【0017】
有用なカチオン性表面安定化剤の例としては、カチオン性ポリマー、カチオン性バイオポリマー、カチオン性多糖、カチオン性セルロース系物質、アルギネート、リン脂質、およびカチオン性非ポリマー化合物、例えば双性イオン安定剤、ポリ-n-メチルピリジニウム、アントリウルピリジニウムクロリド、カチオン性リン脂質、キトサン、ポリリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミドブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、およびポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルスルフェートが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
その他の有用なカチオン性表面安定化剤には、カチオン性脂質、スルホニウム、ホスホニウム、および第4級アンモニウム化合物、例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウム、ココナツトリメチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、C12~15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリドまたはブロミド、N-アルキル(C12~18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C14~18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロリド、N-テトラデシリドメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N-アルキルおよび(C12~14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハロゲン化物、アルキル-トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩および/またはエトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化物一水和物、N-アルキル(C12~14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリドおよびドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12,C15,C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウムアンモニウムクロリド、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリエチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(ALIQUAT 336(商標))、POLYQUAT 10(商標)、臭化テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル(脂肪酸のコリンエステルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物(塩化ステアリルトリモニウムや塩化ジステアリルジモニウムなど)、臭化または塩化セチルピリジニウム、4級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、MIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)(Alkaril Chemical Company)、アルキルピリジニウム塩;アミン、例えばアルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、ポリエチレンポリアミン、N,N-ジアルキルアミノアルキルアクリレート、およびビニルピリジンなど、アミン塩、例えばラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、アルキルピリジニウム塩、およびアルキルイミダゾリウム塩など、およびアミン酸化物;イミドアゾリニウム塩;プロトン化第4級アクリルアミド;メチル化第4級ポリマー、例えばポリ[ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド]およびポリ-[N-メチルビニルピリジニウムクロリド]など;およびカチオン性グアーが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
このような例示的なカチオン性表面安定化剤およびその他の有用なカチオン性表面安定化剤は、J.CrossおよびE.Singer、Cationic Surfactants:Analytical and Biological Evaluation(カチオン性界面活性剤:分析的および生物学的評価)(Marcel Dekker、1994);P.およびD.Rubingh(編)、Cationic Surfactants:Physical Chemistry(カチオン性界面活性剤:物理化学)(Marcel Dekker、1991);およびJ.Richmond、Cationic Surfactants:Organic Chemistry(カチオン性界面活性剤:有機化学)(Marcel Dekker、1990)に記載されている。
【0020】
非ポリマー表面安定化剤は、例えば塩化ベンザルコニウム、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物、カチオン性有機金属化合物、第4級リン化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシアンモニウム化合物、第1級アンモニウム化合物、第2級アンモニウム化合物、第3級アンモニウム化合物、および式NR1R2R3R4
(+)の第4級アンモニウム化合物などの任意の非ポリマー化合物である。式NR1R2R3R4
(+)の化合物は、
(i)R1~R4のいずれもCH3ではない、
(ii)R1~R4のうち1個がCH3であり、
(iii)R1~R4のうち3個がCH3であり、
(iv)R1~R4の全てがCH3であり、
(v)R1~R4のうち2個がCH3であり、R1~R4のうち1個がC6H5CH2であり、R1~R4のうち1個が、炭素原子7個以下のアルキル鎖であり、
(vi)R1~R4のうち2個がCH3であり、R1~R4のうち1個がC6H5CH2であり、R1~R4のうち1個が、炭素原子19個以上のアルキル鎖であり、
(vii)R1~R4のうち2個がCH3であり、R1~R4のうち1個が基C6H5(CH2)nであり、ただしn>1であり、
(viii)R1~R4のうち2個がCH3であり、R1~R4のうち1個がC6H5CH2であり、R1~R4のうち1個が少なくとも1つのヘテロ原子を含み、
(ix)R1~R4のうち2個がCH3であり、R1~R4のうち1個がC6H5CH2であり、R1~R4のうち1個が少なくとも1つのハロゲンを含み、
(x)R1~R4のうち2個がCH3であり、R1~R4のうち1個がC6H5CH2であり、R1~R4のうち1個が少なくとも1つの環状断片を含み、
(xi)R1~R4のうち2個がCH3であり、R1~R4のうち1個がフェニル環であり、あるいは、
(xii)R1~R4のうち2個がCH3であり、R1~R4のうち2個が純粋に脂肪族断片であり得る。
【0021】
そのような化合物には、塩化ベヘンアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベヘントリモニウム、塩化ラウラルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化セトリモニウム、セチルアミンヒドロフルオリド、塩化クロラリルメテナミン(Quaternium-15)、塩化ジステアリルジモニウム(Quaternium-5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド(Quaternium-14)、Quaternium-22、Quaternium-26、Quaternium-18ヘクトライト、塩酸ジメチルアミノエチルクロリド、塩酸システイン、ジエタノールアミンPOE(10)オレイルエーテルホスフェート、ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルエーテルホスフェート、塩化獣脂アルコニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、塩化ステアラルコニウム、臭化ドミフェン、安息香酸デナトニウム、塩化ミリスタルコニウム、塩化ラウルトリモニウム、エチレンジアミン二塩酸塩、塩酸グアニジン、ピリドキシンHCl、塩酸イオフェタミン、塩酸メグルミン、塩化メチルベンゼトニウム、臭化ミルトリモニウム、塩化オレイルトリモニウム、ポリクォータニウム-1、プロカイン塩酸塩、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトナイト、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオリド、塩化獣脂トリモニウム、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0022】
本発明の組成物においては、表面安定化剤として、少なくとも1種のポリマーと、少なくとも1種の界面活性剤とを含むことが好ましい。ポリマーとしては、特に分散性の観点から、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことが中でも好ましい。また、界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステルが中でも好ましい。また、アニオン界面活性剤としてはアルキルアルコールとスルホコハク酸とのジエステル若しくはその塩が中でも好ましい。ポリマーは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、また界面活性剤も1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下ポリマーを(B-1)成分と、界面活性剤を(B-2)成分と、それぞれ呼ぶことがある。(A)成分100質量部に対して、(B-1)成分は例えば2~25質量部程度含まれることが好ましい。また、(A)成分100質量部に対して、(B-2)成分は例えば2~55質量部程度含まれることが好ましい。
【0023】
ヒドロキシプロピルセルロースとしては、分子量が20000~200000程度のものが好ましく、25000~175000程度のものがより好ましく、30000~150000程度のものがさらに好ましく、40000~140000程度のものがよりさらに好ましい。また、当該分子量の上限は、130000、120000、110000、100000、90000、80000、70000、60000、又は50000程度であってもよい。なお、当該分子量はGPC法で求めた値である。
【0024】
また、ヒドロキシプロピルセルロースとしては、20℃/2%水溶液の粘度(mPa・s)が、2~10程度であるものが好ましい。例えば、当該粘度が、6~10程度、3~5.9程度、又は2~2.9程度のものを、好ましく用いることができる。
【0025】
ショ糖脂肪酸エステルはショ糖と脂肪酸とのエステルであり、当該脂肪酸としては、より具体的には、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、及びエルカ酸等が挙げられる。特にショ糖ステアリン酸エステル及びショ糖オレイン酸エステルが好ましい。
【0026】
なお、用いるショ糖脂肪酸エステルの約30%以上は、ショ糖脂肪酸モノエステルであることが好ましく、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、又は約75%以上であることがより好ましい。また、ショ糖脂肪酸モノエステルのモノエステル結合は、下に示すショ糖の構造式において下線を付したOH基と、脂肪酸のCOOH基とにより形成されていることが好ましい。
【0027】
【0028】
アルキルアルコールとスルホコハク酸とのジエステルを構成するアルキルアルコールとしては、直鎖又は分岐鎖状の炭素数8~18(8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18)のアルキルアルコールが好ましい。アルキルアルコールは、アルキルモノアルコールが好ましく、n-アルキルモノアルコールが好ましい。また、当該ジエステルを構成する2つのアルキルアルコールは、同一でも異なっていてもよく、同一であることがより好ましい。
【0029】
アルキルアルコールとスルホコハク酸とのジエステルの塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などがあげられるが、特に限定されない。
【0030】
当該ジエステル若しくはその塩の特に好ましい一例として、ジオクチルソジウムスルホサクシネートが挙げられる。
【0031】
なお、本発明の組成物に当該ジエステルの塩が含まれる場合、組成物の形態によっては(例えば懸濁液の場合)、電離している場合もあり得るが、本明細書においては、そのような場合も当該ジエステルの塩が本願発明の組成物に含まれる一形態である。
【0032】
ヒドロキシプロピルセルロースは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、またショ糖脂肪酸エステルも1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明の組成物が、(A)成分、(B-1)成分、及び(B-2)成分を含有する場合、好ましい一実施形態においては、(A)成分を100質量部としたとき、(B-1)成分を2~20質量部、(B-2)成分を2~55質量部含む。ここで、(B-1)成分の当該範囲の下限は例えば2.5、3、3.5、又は4質量部であってもよい。また、(B-1)成分の当該範囲の上限は例えば19.5、19、18.5、18、17.5、17、16.5、16、15.5、15、14.5、14、13.5、13、12.5、12、11.5、11、10.5、10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、又は6質量部であってもよい。また、(B-2)成分の当該範囲の下限は例えば2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7質量部であってもよいし、あるいはまた、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、又は8質量部であってもよい。また、(B-2)成分の当該範囲の上限は例えば54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、又は8質量部であってもよい。
【0034】
なお、(A)成分を100質量部としたとき、(B-1)成分を2~20質量部、(B-2)成分を2~55質量部含む、本発明の組成物を、特に組成物αと呼ぶことがある。組成物αの特に好ましい一例として、(A)成分を100質量部としたとき、ショ糖脂肪酸エステルを2~20質量部又は2~15質量部含み、ジオクチルソジウムスルホサクシネートを2~40質量部、2~35質量部、2~25質量部、2~20質量部、又は2~15質量部含む組成物が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物は、さらに糖及び/又は糖アルコールを含んでいてもよい。糖及び糖アルコールとしては、例えばマンニトール、トレハロース、キシリトール、エリスリトール、乳糖ショ糖、及びデキストリン等が挙げられ、中でもマンニトール(特にD-マンニトール)が好ましい。糖及び糖アルコールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明の組成物が糖及び/又は糖アルコールを含む場合、(A)成分100質量部に対して30~200質量部含まれることが好ましく、30~150質量部又は30~100質量部含まれることがより好ましく、35~90質量部含まれることがさらに好ましく、40~80質量部含まれることがよりさらに好ましく、45~75質量%含まれることが特に好ましい。
【0037】
本発明の組成物が、(A)成分、(B-1)成分、(B-2)成分、並びに糖及び/又は糖アルコールを含有する場合、好ましい一実施形態においては、(A)成分を100質量部としたとき、(B-1)成分を2~20質量部、(B-2)成分を2~55質量部、糖及び/又は糖アルコールを30~200質量部含む。ここで、(B-1)成分の当該範囲の下限は例えば2.5、3、3.5、又は4質量部であってもよい。また、(B-1)成分の当該範囲の上限は例えば19.5、19、18.5、18、17.5、17、16.5、16、15.5、15、14.5、14、13.5、13、12.5、12、11.5、11、10.5、10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、又は6質量部であってもよい。また、(B-2)成分の当該範囲の下限は例えば2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7質量部であってもよい。また、(B-2)成分の当該範囲については、例えば2~20質量部程度であってもよいし、20質量部より大きく55質量部以下であってもよい。(B-2)成分の当該範囲が2~20質量部程度である場合、下限は例えば2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7質量部であってもよい。また、上限は例えば19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、又は8質量部であってもよい。(B-2)成分の当該範囲が20質量部より大きく55質量部以下である場合、例えば20.5~55質量部であってよく、この範囲において下限は例えば21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、又は29質量部であってもよい。またこの範囲において上限は例えば52.5、50、47.5、45、42.5、40、39.5、39、38.5、38、37.5、37、36.5、36、35.5又は35質量部であってもよい。また、糖及び/又は糖アルコールの当該範囲は、30~150質量部又は30~100質量部含まれることがより好ましく、35~90質量部含まれることがさらに好ましく、40~80質量部含まれることがよりさらに好ましく、45~75質量%含まれることが特に好ましい。特に、45~75質量%含まれる場合において、下限は例えば46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、又は59質量部であってもよい。また、上限は例えば74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、又は61質量部であってもよい。
【0038】
なお、(A)成分を100質量部としたとき、(B-1)成分を2~20質量部、(B-2)成分を2~20質量部、並びに糖及び/又は糖アルコールを30~200質量部含む、本発明の組成物を、特に組成物βと呼ぶことがある。また、(A)成分を100質量部としたとき、(B-1)成分を2~20質量部、(B-2)成分を20質量部より大きく55質量部以下、並びに糖及び/又は糖アルコールを30~200質量部含む、本発明の組成物を、特に組成物γと呼ぶことがある。組成物β及びγは、特定の組成物αであって、(A)成分100質量部に対して糖及び/又は糖アルコールを30~200質量部さらに含む組成物であるということができる。組成物βの特に好ましい一例として、(A)成分を100質量部としたとき、ショ糖脂肪酸エステルを2~15質量部、ジオクチルソジウムスルホサクシネートを2~15質量部、及びマンニトールを30~200質量部含む組成物が挙げられる。また、組成物γの特に好ましい一例として、(A)成分を100質量部としたとき、ショ糖脂肪酸エステルを2~15質量部、ジオクチルソジウムスルホサクシネートを15より大きく40以下質量部、及びマンニトールを30~200質量部含む組成物が挙げられる。
【0039】
なお、組成物α、β、及びγの説明は、好適な例を説明しただけであり、本発明の組成物は特にこれらに限定されない。
【0040】
本発明の組成物の形態は、特に制限されない。例えば、粒状(特に粉末状)、懸濁液、固形状(特に錠剤)等の形態として好ましく用いることができる。また、公知の方法又は公知の方法から容易に想到する方法により、各形態として調製することができる。
【0041】
例えば、原料(好ましくは、少なくともデラマニド、(B-1)成分、及び(B-2)成分を含む)を水とともに湿式粉砕に供し、デラマニドを粉砕することにより、懸濁液形態の本発明の組成物を調製することができる。また例えば、当該懸濁液を粉末化することにより、粉末形態の本発明の組成物を調製することができる。粉末化する方法としては、例えば、噴霧乾燥法、湿式造粒法(特に流動層造粒法)等が挙げられる。また例えば、得られた粉末に圧をかけて固める(例えば打錠する)等することにより、固形状形態の本発明の組成物を調製することができる。
【0042】
また例えば、粒状組成物をそのままカプセルに充填してカプセル剤として用いることができる。また例えば、粒状組成物を集めて打錠し、錠剤を調製することができる。また例えば、粒状組成物を水に分散させることでも懸濁液を調製することができる。これらは医薬経口製剤(固形又は液体)として好ましく用いることができる。
【0043】
また、懸濁液を懸濁剤、注射剤、点滴剤等として用いることができる。その他、例えば顆粒剤、丸剤、液剤、散剤、酒精剤、シロップ剤、トローチ剤等、種々の剤形として用いることができる。
【0044】
組み合わせてもよいその他成分として、例えば、賦形剤、結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤及び発泡剤等が挙げられる。このようなその他成分は当技術分野で既知である。
【0045】
いくつかのその他成分について具体的な例を挙げると、賦形剤しては、例えば、乳糖、無水乳糖、精製白糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、デキストリン、結晶セルロース、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、無水リン酸水素カルシウム等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルファー化デンプン、シロップ、水あめ等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプン等が挙げられる。流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルク等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリソルベート、マクロゴール、タルク等が挙げられる。甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、水アメ、果糖等が挙げられる。香味剤としては、例えば、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、チェリー、ストロベリー、アップル、パイナップル、ピーチ、ヨーグルト、チョコレート、マッチャ等が挙げられる。
【0046】
また例えば、カプセル剤は、粒状組成物を例えば硬質カプセルまたは軟質カプセルに充填して調製することができ、より具体的には、例えばゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等からなる硬質カプセル又はゼラチンをベースとした軟質カプセル等に充填して調製することができる。またあるいは、粒状組成物を、公知の方法に従い、上記例示した各種の担体と混合、場合によってはさらに造粒、打錠して、前述のカプセルに充填することにより調製することもできる。
【0047】
また例えば、デラマニド及び(B)成分(好ましくは(B-1)成分及び(B-2)成分)を適量の媒体(好ましくは水)と混合して、湿式粉砕することにより、懸濁液形態の本発明の組成物の一例を調製することができる。なお、デラマニド又は公知の化合物であり、公知の方法(例えば上記特許文献1、2、又は3に記載の方法)により調製することができる。また、(B)成分(好ましくは(B-1)成分及び(B-2)成分)も公知物質であり、公知の方法により調製することができる。また、市販品を購入して用いることもできる。
【0048】
媒体(例えば水又は公知の緩衝液など)の量は、湿式粉砕を行うことができれば特に制限はされないが、例えば(A)成分100質量部に対して、350~2000質量部程度の媒体を用いることが好ましい。
【0049】
より詳細には、例えば、デラマニド(予めハンマーミルなどでプレ粉砕しておくことが好ましい)と、(B)成分とを適量の水に分散させ、ジルコニア製ビーズとともに湿式粉砕用機器(例えばDYNO-MILL(Multi-Lab、シンマルエンタープライゼス(株))にて湿式粉砕することにより、懸濁液を得ることができる。粉砕時間は適宜設定することができるが、例えばデラマニド粒子の平均粒子径が粉砕処理してもほとんど変化しなくなるまで、あるいは所望の平均粒子径が得られるまで粉砕を行うことができ、例えば5~90分程度が例示できる。また、湿式粉砕後の破砕懸濁液に、必要に応じて更に(B-1)成分及び/又は(B-2)成分を添加することもできる。また、その他の成分も必要に応じて添加してもよい。このようにして得られた後添加懸濁液も、本発明の組成物に包含される。また、懸濁液(前記粉砕懸濁液及び後添加懸濁液を包含する)を用いて常法により組成物の形態を変更することもできる。懸濁液をそのまま本発明の組成物として用いることもできるし、懸濁液を粉体(粒状組成物)とすることもできる。このような粉体も本発明の組成物に包含される。懸濁液を粉体とするための方法としては、噴霧乾燥(スプレードライ)、凍結乾燥、造粒(撹拌造粒、流動層造粒等)、噴霧コーティング、及び押し出し造粒等の既知の方法を用いることができる。なお、造粒にあたり、核となる物質の周りに懸濁液を付着させる手法(例えば流動層造粒、噴霧コーティングなど)を採用する場合には、当該核となる物質としては、特に制限はされないが、例えばヒドロキシプロピルセルロース(好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、ケイ酸カルシウム、マンニトール、デンプン等が挙げられる。
【0050】
例えば懸濁液をスプレードライして得られる粒状組成物は、(A)デラマニド粒子の表面に(B)表面安定化剤が付着した構成を好ましく有し得る。(A)成分(粒子)の表面に(B)成分が付着した構成を有することにより、例えば湿式粉砕中又は溶液中に分散若しくは溶解した場合に、効率的に粒子同士の凝集が抑制され得る。例えば、限定的な解釈を望むものではないが、(B-1)ポリマーが(A)成分表面に付着することにより、当該ポリマーは粒子同士が凝集することを抑止する立体障害として働き得ると考えられる。また例えば、(B-2)界面活性剤が(A)成分表面に付着することにより、溶液中で電荷による反発及び/又は立体障害として働くことによって、効率的に粒子同士の凝集が抑制され得ると考えられる。
【0051】
また、本発明の組成物に含まれる(A)成分(すなわち、デラマニド粒子)の平均粒子径は、サブミクロン(例えば1000nmより小さいことをいい、好ましくは900nm以下であり、より好ましくは800、700、600、500、又は400nm以下)であることが好ましく、特に350nm以下であることが好ましく、340、330、320、310、又は300nm以下であることがより好ましい。また、下限値は特に制限はされないが、例えば50nm以上であることが好ましく、60、70、80、90、又は100nm以上であることがより好ましい。当該平均粒子径は、動的光散乱法により測定した平均粒子径(Z-average)である。例えば、本発明の組成物の形態が粉体である場合には、分散媒に当該粉体を分散又は溶解させて測定することができる。また例えば、本発明の組成物の形態が分散液である場合には、そのまま測定に供することができる。なお、動的光散乱法により平均粒子径を測定するにあたり、分散媒(例えば水又は緩衝液)が、(A)成分以外の成分(例えば(B)成分)を溶解する場合には、得られる平均粒子径は実質的に(A)成分(粒子)の平均粒子径であるということができる。よって、本発明の粒状組成物において用いられる(B)成分が水に溶解する成分である場合であって、(A)成分及び(B)成分以外含まれていない場合、若しくは(A)成分及び(B)成分以外の成分も水に溶解する場合には、本発明の粒状組成物の平均粒子径は実質的に(A)成分の平均粒子径となる。
【0052】
(A)成分、(B-1)成分、及び(B-2)成分を含有する組成物を湿式粉砕により調製するにあたり、湿式粉砕に供するデラマニド、(B-1)成分、及び(B-2)成分の質量部比を、組成物に含まれる好ましい各成分質量部比とすることにより、容易に上記の好ましい各成分質量部比の範囲を満たす本発明の組成物を得ることができる。ただ、(B-2)界面活性剤を湿式粉砕時に比較的多量に用いた場合、多くの泡が発生し、粉砕が困難になる場合がある。また、比較的少量しか用いない場合には、湿式粉砕時に凝集抑制効果が得られない場合がある。一方で、本発明の粒状組成物において(B-2)界面活性剤が比較的多く含まれる方が、凝集抑制効果が高く、特に再分散(再懸濁)させた際の凝集抑制効果が高い。つまり、界面活性剤量が比較的多い又は非常に少量であると湿式粉砕が困難である一方で、界面活性剤が無い又は非常に少ないと凝集抑制効果(特に再分散時の凝集抑制効果)が得られ難い。より具体的には、例えば組成物α又は組成物βの各成分質量部比程度であれば、全ての成分を湿式粉砕に供しても粉砕が困難にはならないが、組成物γの各成分質量部比では(B-2)界面活性剤の質量部比が比較的高いために、全ての成分を湿式粉砕に供した場合、泡が発生して粉砕し難くなり粉砕効率が下がるおそれがある。また、泡が発生しないように水を大量に用いた場合粉砕が非効率的になり粒子凝集抑制効果も小さくなるおそれがある。そこで、このような場合には、比較的少量の(B-2)界面活性剤を用いて湿式粉砕を行い、粉砕後得られた粉砕懸濁液にさらに多くの(B-2)界面活性剤を添加する(すなわち後添加する)ことで、優れた凝集抑制効果を有し且つサブミクロン単位に細かく粉砕された粒状組成物を調製することができる。
【0053】
例えば、組成物γを湿式粉砕により調製する場合には、湿式粉砕時には(A)成分100質量部に対して(B-2)界面活性剤2~20質量部程度を加えて粉砕を行い、粉砕後に、組成物において(A)成分100質量部に対して(B-2)界面活性剤の合計量が20より大きく55以下質量部となるように(B-2)界面活性剤を粉砕懸濁液に後添加することが好ましい。また、組成物α及びβについても、このような後添加工程を含む方法により調製することができる。
【0054】
また、湿式粉砕時の粉砕液中の(B-2)界面活性剤含有量は、例えば0.5~4%(w/w)程度が好ましく、0.8~3%(w/w)程度であることがより好ましい。
【0055】
上述のように、本発明の組成物には、さらに糖及び/又は糖アルコールが含まれていてもよい。この糖及び/又は糖アルコールは、湿式粉砕時に加えられてもよいが、湿式粉砕後に後添加されることが好ましい。例えば、糖及び/又は糖アルコールを含む本発明の組成物を湿式粉砕により調製する場合には、湿式粉砕時には糖及び/又は糖アルコールは加えず、粉砕後に得られた粉砕懸濁液へ糖及び/又は糖アルコールを後添加することが好ましい。後添加量を調整することにより、容易に上記好ましい質量部比範囲の糖及び/又は糖アルコールを含む本発明の組成物を調製することができる。
【0056】
このようにして得られる粉砕懸濁液(後添加工程を含む方法で調製されたものの場合は、後添加前後のいずれのものであってもよい)は、サブミクロン単位に細かく粉砕された粉体(粒状組成物)が媒体(例えば水)に分散した分散組成物(懸濁液組成物)ということもできる。当該分散組成物が(B-2)界面活性剤を含む場合、(B-2)界面活性剤の含有割合が、0.5~8%(w/w)であることが好ましく、1~7%(w/w)であることがより好ましい。(B-2)界面活性剤の含有割合が当該範囲にあることによって、当該粉砕分散液におけるデラマニド粒子凝集抑制効果がより一層好ましく発揮される。例えば、(B-2)界面活性剤の含有割合が当該範囲にあることによって、数日(例えば1、2、又は3日)静置したとしても、粒子の凝集抑制効果が一層好ましく奏される。なお、上述したように、当該分散組成物を乾燥させる又は造粒する等して粒状組成物を調製し、これを再度媒体(例えば水又は緩衝液)に再懸濁させた(再分散)際の粒子凝集抑制効果を増強するためには、より多くの(B-2)界面活性剤が組成物に含まれることが好ましい。
【0057】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本発明は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0058】
また、上述した本発明の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本発明に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本発明には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例】
【0059】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0060】
湿式粉砕法によるサブミクロン粒子の調製1
デラマニド、ポリマー、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)、及びショ糖脂肪酸エステルを含む組成物(懸濁液)を、以下の実施例1~3に記載のようにして調製した。なお、実施例1~3では、用いるポリマーの種類を変更し(実施例1:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、実施例2:PVP、実施例3:ヒドロキシプロピルセルロース)、それ以外の条件は同じとした。
【0061】
実施例1:湿式粉砕懸濁液(ポリマー:TC-5E、界面活性剤:DOSS及びショ糖ステアリン酸エステル)
デラマニド(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株)) 2.0 g及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:TC-5E、信越化学(株)) 0.1 g、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(商品名:Docusate 100、Cytec solvay Group) 0.15 g、ショ糖脂肪酸エステル(商品名:ショ糖脂肪酸エステル S-1670,三菱ケミカルフーズ(株)) 0.1 gを水7.65 gに分散,溶解し(デラマニドは分散し、その他の成分は溶解する。以下も同様である。)、直径0.1 mmジルコニア製ビーズ8 gと共に容器に入れ、自転公転方式 冷却ナノ粉砕機(NP-100,(株)シンキー)にて温度設定-20℃、回転速度1700rpmで粉砕し、粉砕懸濁液を得た。
【0062】
実施例2:湿式粉砕懸濁液(ポリマー:PVP、界面活性剤:DOSS及びショ糖ステアリン酸エステル)
デラマニド(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株)) 2.0 g及びポリビニルピロリドン(商品名:PVP、BASFジャパン(株)) 0.1 g、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(商品名:Docusate 100、Cytec solvay Group) 0.15 g、ショ糖脂肪酸エステル(商品名:ショ糖脂肪酸エステル S-1670、三菱ケミカルフーズ(株))0.1 gを水7.65gに分散、溶解し、直径0.1 mmジルコニア製ビーズ8 gと共に容器に入れ、自転公転方式 冷却ナノ粉砕機(NP-100、(株)シンキー)にて温度設定-20℃、回転速度1700rpmで粉砕し、粉砕懸濁液を得た。
【0063】
実施例3:湿式粉砕懸濁液(ポリマー:ヒドロキシプロピルセルロース、界面活性剤:DOSS及びショ糖ステアリン酸エステル)
デラマニド(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株)) 2.0 g及びヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-SSL、日本曹達(株)) 0.1 g、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(商品名:Docusate 100、Cytec solvay Group) 0.15 g、ショ糖脂肪酸エステル(商品名:ショ糖脂肪酸エステル S-1670、三菱ケミカルフーズ(株)) 0.1 gを水7.65 gに分散、溶解し、直径0.1 mmジルコニア製ビーズ8 gと共に容器に入れ、自転公転方式 冷却ナノ粉砕機(NP-100,(株)シンキー)にて温度設定-20℃、回転速度1700rpmで粉砕し、粉砕懸濁液を得た。
【0064】
実施例1~3において、デラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を粉砕開始から3分ごとに測定した。具体的には、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(ゼータサイザーナノZS、マルバーン事業部スペクトリス株式会社)を用いて測定した。なお、以下、デラマニド平均粒子径(推移)の測定は同様に行った。結果を
図1aに示す。また、得られた粉砕懸濁液からビーズを除去し、攪拌子を入れたビーカーに移して、攪拌速度500rpmで数日間室温で保管し、同様にデラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を測定した。結果を
図1bに示す。なお、
図1a及び
図1bには、ポリマーを添加せず、その質量分だけさらに水を加えた以外は、同様に湿式粉砕を行った際のデラマニド粒子(比較例1)の平均粒子径(Z-average)推移もあわせて示す。
【0065】
デラマニド粒子の平均粒子径を比較的小さくすることができる観点から、ポリマーを用いることが好ましく、中でもヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが特に好ましいことがわかった。
【0066】
湿式粉砕法によるサブミクロン粒子の調製2
デラマニド粒子、ヒドロキシプロピルセルロース、及びジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)を含む組成物(懸濁液)を、以下の実施例4~6に記載のようにして調製した。なお、実施例4~6では、用いるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の種類を変更し(実施例4:HPC-L、実施例5:HPC-SL、実施例6:HPC-SSL)、それ以外の条件は同じとした。用いた各HPCの特徴は次の通りである。
【0067】
HPC-L:20℃/2%水溶液の粘度(mPa・s)が6~10程度であり、GPC法により測定した分子量が140000程度である。
HPC-SL:20℃/2%水溶液の粘度(mPa・s)が3~5.9程度であり、GPC法により測定した分子量が100000程度である。
HPC-SSL:20℃/2%水溶液の粘度(mPa・s)が2~2.9程度であり、GPC法により測定した分子量が40000程度である。
【0068】
なお、上記のいずれのHPCも、プロピル基への置換度は70~75%である。
【0069】
実施例4:湿式粉砕懸濁液(HPC-L、DOSS)
デラマニド(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株)) 100 g及びヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達(株)) 12 g、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(商品名:Docusate 100、Cytec solvay Group) 5 gを水883 gに分散、溶解し、直径0.3 mmジルコニア製ビーズ1700 gとともに0.6 Lの容量をもつDYNO-MILL(Multi-Lab、シンマルエンタープライゼス(株))にてアジテータディスク回転速度10 m/secで粉砕し、粉砕懸濁液を得た。
【0070】
実施例5:湿式粉砕懸濁液(HPC-SL、DOSS)
デラマニド(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株)) 100 g及びヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-SL、日本曹達(株)) 12 g、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(商品名:Docusate 100、Cytec solvay Group) 5 gを水883 gに分散、溶解し、直径0.3 mmジルコニア製ビーズ1700 gとともに0.6 Lの容量をもつDYNO-MILL(Multi-Lab、シンマルエンタープライゼス(株))にてアジテータディスク回転速度10 m/secで粉砕し、粉砕懸濁液を得た。
【0071】
実施例6:湿式粉砕懸濁液(HPC-SSL、DOSS)
デラマニド(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株)) 100 g及びヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-SSL、日本曹達(株)) 12 g、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(商品名:Docusate 100、Cytec solvay Group) 5 gを水883 gに分散、溶解し,直径0.3 mmジルコニア製ビーズ1700 gとともに0.6 Lの容量をもつDYNO-MILL(Multi-Lab、シンマルエンタープライゼス(株))にてアジテータディスク回転速度10 m/secで粉砕し、粉砕懸濁液を得た。
【0072】
実施例4~6において、デラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を上記と同様にして粉砕開始から5分ごとに測定した。結果を
図2に示す。
【0073】
デラマニド粒子の平均粒子径を比較的小さくすることができる観点から、ヒドロキシプロピルセルロースの中でもHPC-SL又はHPC-SSLを用いることが特に好ましいことがわかった。
【0074】
湿式粉砕法によるサブミクロン粒子の調製(実施例7~24の調製)
上記実施例4~6と同様にして、下表1に記載の組成に従い、デラマニド、各種ポリマー、各種界面活性剤、及び水を、直径0.3 mmジルコニア製ビーズ1700 gとともに0.6 Lの容量をもつDYNO-MILL(Multi-Lab、シンマルエンタープライゼス(株))にてアジテータディスク回転速度10 m/secで粉砕し、粉砕懸濁液を調製した。下表1には、実施例4~6の組成についてもあわせて示す。また表1の各成分の組成の単位はグラム(g)である。
【0075】
また、表1に記載の成分のうち、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Solplus)はBASFジャパンから購入した。また、用いた各種ショ糖脂肪酸エステルは三菱ケミカルフーズから購入して用いた。各種ショ糖脂肪酸エステルの特徴は次の通りである。
・ショ糖脂肪酸エステルS-1670:ショ糖ステアリン酸エステルであり、HLBが約16、モノエステル含量約75%、ジ・トリ・ポリエステル含量約25%
・ショ糖脂肪酸エステルS-1170:ショ糖ステアリン酸エステルであり、HLBが約11、モノエステル含量約55%、ジ・トリ・ポリエステル含量約45%
・ショ糖脂肪酸エステルS-570:ショ糖ステアリン酸エステルであり、HLBが約5、モノエステル含量約30%、ジ・トリ・ポリエステル含量約70%
・ショ糖脂肪酸エステルO-1570:ショ糖オレイン酸エステルであり、HLBが約15、モノエステル含量約70%、ジ・トリ・ポリエステル含量約30%
【0076】
なお、ポリソルベート80及びショ糖脂肪酸エステル(図表では「SE」と表すことがある)はノニオン界面活性剤であり、DOSS及びSLSはアニオン界面活性剤である。
【0077】
表1には、粉砕後のデラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)もあわせて示す。また、表1において「2L scale」と標記される例は、表1に表示された各成分量の2倍の量を用いてデラマニドの粉砕を行い、粉砕懸濁液を調製したことを示す。
【0078】
なお、各組成物とも、デラマニド粒子の平均粒子径が粉砕処理してもほとんど変化しなくなるまで粉砕を行った。
【0079】
【0080】
実施例4、13、14、15及び16における、デラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を上記と同様にして測定した。結果を
図3aに示す。なお、
図3aでは、実施例16は「DOSS+SE」と、実施例4は「DOSS」と、実施例15は「SE」と、実施例13は「SLS」と、実施例14は「ポリソルベート80」と、それぞれ示す。デラマニド粒子の平均粒子径を比較的小さくすることができる観点から、実施例16、4、及び13が好ましく、実施例16及び4がより好ましく、実施例16が特に好ましい。よって、界面活性剤としては、アニオン及びノニオンのいずれの界面活性剤も用いることができること、中でもDOSSを用いるのが好ましく、DOSSとショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル)を組み合わせて用いることが特に好ましいことがわかった。
【0081】
また、実施例18(DOSS+SE)および実施例20(SLS+SE)におけるデラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を上記と同様に測定した。結果を
図3bに示す。
図3bから、DOSSとショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル)を組み合わせて用いることが、SLSとショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル)を組み合わせて用いるよりも好ましいことがわかった。
【0082】
また、実施例21及び実施例22におけるデラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)推移を上記と同様に測定した。結果を
図4に示す。
図4から、DOSSとショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル)を組み合わせて用いる(実施例22)ことが、DOSSのみ用いる(実施例21)よりもさらに好ましいことがわかった。
【0083】
湿式粉砕後のサブミクロン粒子の乾燥1
上記実施例4~6にて得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの30質量%、50質量%、又は100質量%の量を添加して溶解させた。あるいは、実施例4にて得られた粉砕懸濁液にマンニトールを加えずそのまま用いた。得られた懸濁液をスプレードライヤー(GB-22、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、サブミクロン粉末を得た。噴霧条件は入口温度140℃、スプレー速度10 g/分、風量0.4~0.5 m3/分で行った。得られた粉末試料は残留水分を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で60℃/24時間、乾燥した。(実施例4、5、6の粉砕懸濁液にマンニトールを添加して噴霧乾燥し得られた各サブミクロン粉末を、それぞれ実施例I-1、I-2、I-3とする。また、実施例4の粉砕懸濁液をそのまま噴霧乾燥し得られたサブミクロン粉末を実施例I-iとする。)
【0084】
得られた各サブミクロン粉末について、水への再分散性を評価した。具体的には、各サブミクロン粉末2 mgを水10 mLへ加え、ボルテックスミキサー(SI-0286、サイエンティフィックインダストリーズ)により攪拌して分散液を調製し、当該分散液中の粒子の平均粒子径(Z-average)を測定した。測定は動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(ゼータサイザーナノZS、マルバーン事業部スペクトリス株式会社)を用いて行った。
【0085】
平均粒子径(Z-average)測定結果を下記表2に示す。
【0086】
【0087】
マンニトールを添加した例の方が、水への再分散性に、より優れることが分かった。
【0088】
湿式粉砕後のサブミクロン粒子の乾燥2
実施例II
上記実施例8にて得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの60質量%の量、並びに、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)を、粉砕懸濁液中のデラマニドの22.5質量%の量を添加して溶解させた。得られた懸濁液をスプレードライヤー(GB-22、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、サブミクロン粉末を得た。噴霧条件は入口温度140℃、スプレー速度10 g/分、風量0.4~0.5 m3/分で行った。得られた粉末試料は残留水分を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で60℃/24時間、乾燥した。得られた粉末を実施例IIとした。
【0089】
実施例III
上記実施例13にて得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの100質量%の量を添加して溶解させた。得られた懸濁液をスプレードライヤー(GB-22、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、サブミクロン粉末を得た。噴霧条件は入口温度140℃、スプレー速度10 g/分、風量0.4~0.5 m3/分で行った。得られた粉末試料は残留水分を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で60℃/24時間、乾燥した。得られた粉末を実施例IIIとした。
【0090】
実施例IV
上記実施例7にて得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの200質量%の量を添加して溶解させた。得られた懸濁液をスプレードライヤー(ODT-8型、大川原化工機(株))を用いて噴霧乾燥をし、サブミクロン粉末を得た。噴霧条件は入口温度90℃、スプレー速度80 g/分、アトマイザー回転数約13000rpmで行った。得られた粉末試料は残留水分を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で60℃/24時間、乾燥した。得られた粉末を実施例IVとした。
【0091】
実施例V
上記実施例9にて得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの100質量%の量を添加して溶解させた。得られた懸濁液をスプレードライヤー(ODT-8型、大川原化工機(株))を用いて噴霧乾燥をし、サブミクロン粉末を得た。噴霧条件は入口温度90℃、スプレー速度80 g/分、アトマイザー回転数約13000rpmで行った。得られた粉末試料は残留水分を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で60℃/24時間、乾燥した。得られた粉末を実施例Vとした。
【0092】
実施例VI、VII、及びVIII
上記実施例17、18、又は19にて得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの100質量%の量を添加して溶解させた。得られた各懸濁液をスプレードライヤー(ODT-8型、大川原化工機(株))を用いて噴霧乾燥をし、サブミクロン粉末を得た。噴霧条件は入口温度90℃、スプレー速度80 g/分、アトマイザー回転数約13000rpmで行った。得られた粉末試料は残留水分を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で60℃/24時間、乾燥した。
【0093】
実施例17、18、及び19の粉砕懸濁液から得られたサブミクロン粒子を、それぞれ、実施例VI、VII、及びVIIIとした。
【0094】
実施例IX、X、及びXI
上記実施例18と同様にして調製した粉砕懸濁液(つまり実施例18のロット違い)、又は実施例20にて得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの100質量%の量を添加して溶解させた。また、上記実施例22にて得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの90質量%の量、並びに、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)を、粉砕懸濁液中のデラマニドの10質量%の量、添加して溶解させた。
【0095】
得られた各懸濁液をスプレードライヤー(ODT-8型、大川原化工機(株))を用いて噴霧乾燥をし、サブミクロン粉末を得た。噴霧条件は入口温度100℃、スプレー速度80 g/分、アトマイザー回転数約13000rpmで行った。得られた粉末試料は残留水分を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で60℃/24時間、乾燥した。
【0096】
実施例18のロット違い、20、及び22の粉砕懸濁液から上記のようにして得られたサブミクロン粒子を、それぞれ、実施例XI、IX、及びXとした。
【0097】
実施例II及びIIIのサブミクロン粉末について、水への再分散性を評価した。また、実施例IV~XIのサブミクロン粉末について、水又はpH5.0のマッキルベイン緩衝液(McIlvaine buffer)への再分散性を評価した。具体的には、各サブミクロン粉末2 mgを水又は10 mLへ加え、ボルテックスミキサー(SI-0286、サイエンティフィックインダストリーズ)により攪拌して分散液を調製し、当該分散液中の粒子の平均粒子径(Z-average)を測定した。測定は動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(ゼータサイザーナノZS、マルバーン事業部スペクトリス株式会社)を用いて行った。結果を表3に示す。
【0098】
【0099】
湿式粉砕後のサブミクロン粒子の乾燥3
実施例XII
実施例8と同様(ジルコニア製ビーズとして直径0.2mmのものを使用、4L scale)にして得られた粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの60質量%の量を添加して溶解させた。さらに、ジオクチルソジウムスルホサクシネートをデラマニドの22.5質量%の量を添加して溶解させた。デラマニドの150質量%の量の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:LH‐B1、信越化学(株))を核粒子として、マルチプレックス(MP-01、(株)パウレック)を用いて、当該核粒子に、得られた懸濁液を被覆乾燥させ、サブミクロン粉末を得た(流動層造粒)。被覆温度は入口温度60~80℃、スプレー速度3~15 g/分、風量0.3~0.5 m3/時で行った。得られた粉末は同マルチプレックスを用いて、80℃/30分、乾燥した。得られた粉末を実施例XIIとした。
【0100】
実施例XIIのサブミクロン粉末について、水への再分散性を上記と同様にして評価した。すなわち、各サブミクロン粉末2 mgを水10 mLへ加え、ボルテックスミキサー(SI-0286、サイエンティフィックインダストリーズ)により攪拌して分散液を調製し、当該分散液中の粒子の平均粒子径(Z-average)を測定した。測定は動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(ゼータサイザーナノZS、マルバーン事業部スペクトリス株式会社)を用いて行った。平均粒子径測定結果は224nmであった。
【0101】
実施例XIII
実施例23の粉砕懸濁液に対して、デキストリンを、粉砕懸濁液中のデラマニドの37.5質量%の量を添加して溶解させた。さらに、ショ糖をデラマニドの37.5質量%の量を添加して溶解させた(この段階でのデラマニド粒子の平均粒子径は208nmであった)。デラマニドの100質量%の量のケイ酸カルシウム(商品名:Florite R、富田製薬(株))を核粒子として、撹拌混合造粒装置バーチカルグラニュレーター (VG-5、(株)パウレック)に投入し、384rpmで撹拌した。撹拌中の粉体に対して、得られた懸濁液を投入し、撹拌練合を行った。得られた造粒末を取り出し、真空乾燥機で60℃で一晩乾燥させた。得られた粉末を実施例XIIIとした。
【0102】
実施例XIV
実施例23の粉砕懸濁液に対して、デキストリンを、粉砕懸濁液中のデラマニドの37.5質量%の量を添加して溶解させた(この段階でのデラマニド粒子の平均粒子径は215nmであった)。さらに、ショ糖をデラマニドの37.5質量%の量、並びに、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DOSS)をデラマニドの7質量%の量、添加して溶解させた。デラマニドの100質量%の量のケイ酸カルシウム(商品名:Florite R、富田製薬(株))を核粒子として、撹拌混合造粒装置バーチカルグラニュレーター (VG-5、(株)パウレック)に投入し、384rpmで撹拌した。撹拌中の粉体に対して、得られた懸濁液を投入し、撹拌練合を行った。得られた造粒末を取り出し、真空乾燥機で60℃で一晩乾燥させた。得られた粉末を実施例XIVとした。
【0103】
実施例XV
実施例24の粉砕懸濁液に対して、マンニトールを、粉砕懸濁液中のデラマニドの75質量%の量を添加して溶解させた。さらに、ジオクチルソジウムスルホサクシネートをデラマニドの7.5質量%の量を添加して溶解させた(この段階でのデラマニド粒子の平均粒子径は243nmであった)。デラマニドの100質量%の量の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:LH‐B1、信越化学(株))を核粒子として、マルチプレックス(MP-01、(株)パウレック)を用いて、当該核粒子に、得られた懸濁液を被覆乾燥させ、サブミクロン粉末を得た(流動層造粒)。被覆温度は入口温度60~80℃、風量0.3~0.5 m3/時、スプレー速度3~15 g/分で行った。得られた粉末は同マルチプレックスを用いて、80℃/30分、乾燥した。得られた粉末を実施例XVとした。
【0104】
実施例XIII~実施例XVのサブミクロン粉末について、水又はpH5.0のマッキルベイン緩衝液(McIlvaine buffer)への再分散性を上記と同様にして評価した。すなわち、各サブミクロン粉末2 mgを水10 mL又はpH5.0のマッキルベイン緩衝液へ加え、ボルテックスミキサー(SI-0286、サイエンティフィックインダストリーズ)により攪拌して分散液を調製し、当該分散液中の粒子の平均粒子径(Z-average)を測定した。測定は動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(ゼータサイザーナノZS、マルバーン事業部スペクトリス株式会社)を用いて行った。
【0105】
平均粒子径測定結果は次の通りであった。実施例XIIIのサブミクロン粉末を水へ分散させた場合は300nmであり、pH5.0のマッキルベイン緩衝液へ分散させた場合は475nmであった。実施例XIVのサブミクロン粉末を水へ分散させた場合は256nmであり、pH5.0のマッキルベイン緩衝液へ分散させた場合は341nmであった。実施例XVのサブミクロン粉末を水へ分散させた場合は240nmであり、pH5.0のマッキルベイン緩衝液へ分散させた場合は244nmであった。
【0106】
湿式粉砕後のサブミクロン粒子の乾燥4
実施例VI、VII、及びVIIIで得られたサブミクロン粉末を、それぞれプラスチックシャーレに敷き詰め、60℃密閉条件下若しくは40℃75%RH(相対湿度)開放条件下で2週間保存した。2週間後に水又はpH5.0のマッキルベイン緩衝液(McIlvaine buffer)への再分散性を上記と同様にして評価した。すなわち、サブミクロン粉末2 mgを水10 mL又はpH5.0のマッキルベイン緩衝液へ加え、ボルテックスミキサー(SI-0286、サイエンティフィックインダストリーズ)により攪拌して分散液を調製し、当該分散液中の粒子の平均粒子径(Z-average)を測定した。測定は動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(ゼータサイザーナノZS、マルバーン事業部スペクトリス株式会社)を用いて行った。
【0107】
結果を下記表4に示す。なお、各サブミクロン粉末調製時に行った再分散性検討結果をあわせて示す。
【0108】
【0109】
サブミクロン粒子の効果の検討
実施例18と、ジルコニア製ビーズとして直径0.2mmのものを用いた以外は同様にして、粉砕懸濁液を得た。得られた粉砕懸濁液を用いて、実施例VIIと同様にマンニトールを、懸濁液中のデラマニドの100質量%の量を添加、噴霧乾燥してサブミクロン粉末を得た(実施例T-I)。また、実施例18及び実施例VIIと同様にしてサブミクロン粉末を得た(実施例T-II)。
【0110】
実施例T-Iの粉末を水又はpH5.0のマッキルベイン緩衝液(McIlvaine buffer)へ再分散させて測定したデラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)は、それぞれ、216nm、222nmであり、実施例T-IIの粉末を水又はpH5.0のマッキルベイン緩衝液(McIlvaine buffer)へ再分散させて測定したデラマニド粒子の平均粒子径(Z-average)は、それぞれ、302nm、315nmであった。
【0111】
雄性ビーグル犬 (約30月齢、体重8-12kg、ノーサンビーグル、(株)ナルク)に、サブミクロン粉末(実施例T-I又は実施例T-II)をデラマニドとして50mgとなるように充填したゼラチンカプセルを強制経口投与した直後に、水40mLを強制投与した。投与30分前に飼料CD-5(日本クレア(株))を約50g給餌し、最後の採血まで絶食とした。また、デラマニドを50mg含む市販錠剤(デルディバ(登録商標)錠50mg)をゼラチンカプセルに入れたものを用いて、同様の検討を行った。さらに、対照として、デラマニドをジェットミルで粉砕した粉末(D50:約2μm)を1.0%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:TC-5E、信越化学(株))溶液40mLに50mg懸濁させて経口投与した。
【0112】
採血時点は、投与前、投与後1、2、4、6、8、10、12及び24時間とし、採血量は約1mLとした(n=6)。得られた血液を10分間3000rpmで遠心分離し、血清を得た。この血清中のデラマニド濃度をLC-MSにより測定した。結果を
図5に示す。
【0113】
また、得られた血清中濃度推移から最大血清中濃度(Cmax)及び血清中濃度曲線下面積(AUC)、最高血漿中濃度到達時間(Tmax)、平均滞留時間(MRTlast)を算出した。結果を下記表5に示す。
【0114】
【0115】
製剤例1~15
表6に示す各成分のうち、ステアリン酸マグネシウムあるいはフマル酸ステアリルナトリウム以外の成分をポリエチレン袋で混合後、ステアリン酸マグネシウムあるいはフマル酸ステアリルナトリウムを添加してさらに混合して、混合粉末を得た。なお、表6に示す各成分の使用量の単位は質量部である。
【0116】
製剤例1~2では、混合粉末を、直径11mmスミ角Rの臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス、(株)菊水製作所)を用いて、7kN(製造例1)又は8kN(製造例2)の打錠圧で打錠し、1錠あたり100mgのデラマニドを含有するカプレット錠を調製した。製剤例3~12では、混合粉末を、カプレット(16.0×9.6mm)の臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス、(株)菊水製作所)を用いて、打錠圧12kNで打錠し、1錠あたり100mgのデラマニドを含有するカプレット錠を調製した。製剤例13~15では、混合粉末を、カプレット(13.6×6.8mm)の臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス、(株)菊水製作所)を用いて、打錠圧8kNで打錠し、1錠あたり50mgのデラマニドを含有するカプレット錠を調製した。
【0117】
【0118】
製造例16~19
製剤例16
デラマニド(大塚製薬(株)製) 25mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート
(HP-50、信越化学工業(株)製) 75mg
乳糖水和物(ダイラクトーズS、フロイント産業(株)製) 360mg
クロスポビドン(コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製) 25mg
軽質無水ケイ酸(アドソリダー101、フロイント産業(株)製) 5mg
ステアリン酸カルシウム(太平化学産業(株)製) 7.5mg
【0119】
上記各成分が1錠中に含まれるように、錠剤を製造した。具体的には、デラマニド1g及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート3gを塩化メチレン-エタノール混合溶媒(塩化メチレン:エタノール=8:2重量比)100mlに溶解し、次いで混合物をスプレードライヤー(GS-310、ヤマト サイエンティフィック社製(Yamato Scientific Co., Ltd.))を用いて噴霧乾燥して得られた噴霧乾燥物を、更に真空乾燥機(LCV-323、タバイエスペック社製(Tabai Espec Corp.))を用い60℃で12時間以上乾燥し、粉剤形態の組成物を製造し、本組成物に他の成分を混合及び打錠して、錠剤を製造した。当該錠剤には、必要に応じて甘味剤、香味剤等も含有できる。
【0120】
製剤例17
デラマニド(大塚製薬(株)製) 25mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート
(HP-50、信越化学工業(株)製) 75mg
マンニトール(グラニュトールS、フロイント産業(株)製) 360mg
クロスポビドン(コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製) 25mg
軽質無水ケイ酸(アドソリダー101、フロイント産業(株)製) 5mg
ステアリン酸カルシウム(太平化学産業(株)製) 7.5mg
【0121】
上記各成分が1錠中に含まれるように、錠剤を製造した。具体的には、デラマニド1g及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート3gを塩化メチレン-エタノール混合溶媒(塩化メチレン:エタノール=8:2重量比)100mlに溶解し、次いで混合物をスプレードライヤー(GS-310、ヤマト サイエンティフィック社製(Yamato Scientific Co., Ltd.))を用いて噴霧乾燥して得られた噴霧乾燥物を、更に真空乾燥機(LCV-323、タバイエスペック社製(Tabai Espec Corp.))を用い60℃で12時間以上乾燥し、粉剤形態の組成物を製造し、本組成物に他の成分を混合及び打錠して、錠剤を製造した。当該錠剤には、必要に応じて甘味剤、香味剤等も含有できる。
【0122】
製剤例18
マンニトール(グラニュトールS、フロイント産業(株)製)の代わりにマンニトール(PatreckDeltaM、メルク(株)製)を用いる以外は製剤例17と同様にして、錠剤を製造した。
【0123】
製剤例19
粉剤形態の組成物を製造する際に、デラマニド及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートに加えて、dl-α-トコフェロール(和光純薬工業(株)製)0.08gを塩化メチレン-エタノール混合溶媒に溶解させる以外は製剤例17と同様にして、錠剤を製造した。