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特許7522656常染色体優性網膜色素変性の処置のための材料および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】常染色体優性網膜色素変性の処置のための材料および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240718BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240718BHJP
   C12N 1/13 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20240718BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALI20240718BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 27/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240718BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240718BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20240718BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20240718BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20240718BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/12 ZNA
C12N15/55
C12N15/864 100Z
C12N15/113 140Z
C12N1/13
C12N9/22
C12N5/079
C12N5/0797
A61K48/00
A61P27/00
A61K38/46
A61K31/7105
A61K35/76
A61K9/14
A61K47/44
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020545012
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 IB2018059190
(87)【国際公開番号】W WO2019102381
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】62/589,111
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/649,133
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/693,080
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/724,319
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516145518
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カンタードジエバ, アルベナ
(72)【発明者】
【氏名】ノマ, アキコ
(72)【発明者】
【氏名】スカリア, アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】タケウチ, リョウ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/136335(WO,A1)
【文献】特表2017-501699(JP,A)
【文献】国際公開第2016/176690(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/089462(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/044649(WO,A1)
【文献】Molecular Therapy,2017年09月,Vol.25,p.1999-2013
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 15/12
C12N 15/55
C12N 15/864
C12N 15/113
C12N 1/13
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 9/22
C12N 9/16
C12N 5/079
C12N 5/0797
A61K 48/00
A61P 27/00
A61K 38/46
A61K 31/7105
A61K 35/76
A61K 9/14
A61K 47/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己不活性化CRISPR-Cas系を含む組成物であって、前記自己不活性化CRISPR-Cas系は、
(a)Cas9をコードするヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;
(b)ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む第2のセグメントであって、前記gRNAまたはsgRNAが、配列番号5287~5291、5319~5322、及び5358の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、第2のセグメント;および、
(c)自己不活性化(SIN)部位を含む1つまたは複数の第3のセグメント
を含み、
前記SIN部位は、
(i)5’SIN部位が、前記Cas9オープンリーディングフレーム(ORF)の上流およびSV40核局在化シグナル(NLS)の下流に位置し、または、
(ii)5’SIN部位が、前記Cas9のオープンリーディングフレーム(ORF)の上流および5’非翻訳領域(UTR)内のSV40核局在化シグナル(NLS)の上流に位置し、かつ、
(iii)3’SIN部位が、前記Cas9の前記ORF内に位置する天然に存在するイントロンもしくはキメラ挿入イントロン内に位置する、組成物。
【請求項2】
前記Cas9が、Staphylococcus aureus Cas9(SaCas9)またはその任意のバリアントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記5’SIN部位が、前記Cas9のオープンリーディングフレーム(ORF)の上流およびSV40核局在化シグナル(NLS)の下流に位置する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記5’SIN部位が、前記Cas9のオープンリーディングフレーム(ORF)の上流および5’非翻訳領域(UTR)内のSV40核局在化シグナル(NLS)の上流に位置する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記Cas9のORF内に位置する天然に存在するイントロンもしくはキメラ挿入イントロン内に位置する3’SIN部位をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記SIN部位が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記PAMが、NNGRRTである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ゲノム標的配列が、ロドプシン(RHO)遺伝子におけるP23H変異である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1のセグメントが、開始コドン、終止コドン、及びポリ(A)終結部位をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1のセグメントおよび前記第3のセグメントが、第1のベクターにおいて共に提供され、前記第2のセグメントが、第2のベクターにおいて提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1のセグメント、第2のセグメント、および第3のセグメントが、一つのベクターにおいて共に提供されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1のベクターが配列番号5341を含み、前記第2のベクターが配列番号5339を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のベクターが配列番号5341を含み、前記第2のベクターが配列番号5340を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1のベクターが配列番号5342を含み、前記第2のベクターが配列番号5339を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1のベクターが配列番号5342を含み、前記第2のベクターが配列番号5340を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記第3のセグメントが、100ヌクレオチド未満の長さである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記第3のセグメントが、50ヌクレオチド未満の長さである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記gRNAまたはsgRNAが、少なくとも1つの位置を除き、前記SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記gRNAまたはsgRNAが、少なくとも2つの位置を除き、前記SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
プロモーターをコードする核酸配列が、前記第1のセグメントに作動可能に連結されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記プロモーターが、空間制限プロモーター、gRNAもしくはsgRNAを1つの方向に駆動させ、Cas9を反対の方向に駆動させる二方向性プロモーター、または誘導性プロモーターである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記空間制限プロモーターが、任意の組織または細胞型特異的プロモーター、肝細胞特異的プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、骨格筋特異的プロモーター、肺前駆細胞特異的プロモーター、光受容器特異的プロモーター、および網膜色素上皮(RPE)選択的プロモーターからなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記第1のベクターおよび第2のベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項15に記載の組成物。
【請求項24】
前記AAVベクターが、AAV5血清型キャプシドベクターである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
自己不活性化CRISPR-Cas系を含む組成物であって、
(a)Cas9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと、
(b)ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントであって、前記gRNAまたはsgRNAが、配列番号5290および配列番号5291を含む、第2のセグメントと、
(c)自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントと
を含み、
前記SIN部位は、
(i)5’SIN部位が、前記SaCas9オープンリーディングフレーム(ORF)の上流およびSV40核局在化シグナル(NLS)の下流に位置し、または、
(ii)5’SIN部位が、前記SaCas9のオープンリーディングフレーム(ORF)の上流および5’非翻訳領域(UTR)内のSV40核局在化シグナル(NLS)の上流に位置し、かつ、
(iii)3’SIN部位が、SaCas9のORF内に位置する天然に存在するイントロンもしくはキメラ挿入イントロン内に位置し、
前記gRNAまたはsgRNAが、前記SIN部位に相補的であり、
前記gRNAまたはsgRNAが、ゲノム標的配列に相補的である、組成物。
【請求項26】
前記5’SIN部位が、配列番号5300、5280、5301、または5281を含む、請求項25に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系を含む組成物。
【請求項27】
ヒト細胞におけるロドプシン(RHO)遺伝子を編集するための組成物であって、前記組成物が前記ヒト細胞に導入される、請求項1~15、25、および26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記ヒト細胞が、光受容細胞または網膜前駆細胞である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
常染色体優性網膜色素変性を処置するための医薬の調製における、請求項1~15、25および26のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本出願は、ex vivoおよびin vivoの両方において、常染色体優性網膜色素変性(RP)を有する患者を処置するための材料および方法を提供する。
【0002】
関連出願
本出願は、2017年11月21日に出願された米国仮出願第62/589,111号、2018年3月28日に出願された米国仮出願第62/649,133号、2018年7月2日に出願された米国仮出願第62/693,080号、および2018年8月29日に出願された米国仮出願第62/724,319号の利益を主張し、これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
参照による配列表の組込み
本出願は、コンピュータ可読形式の配列表を含み(ファイル名:170621PCT Sequence Listing、10,127,343バイトのASCIIテキストファイル、2018年11月15日に作成)、これは、参照によりその全体が組み込まれ、本開示の一部をなす。
【背景技術】
【0004】
網膜色素変性(RP)は、眼の後方に並ぶ光感受性組織である網膜の細胞の破壊および喪失を伴う、珍しい遺伝子障害である。一般的な症状としては、夜間の見えにくさおよび周辺視野の喪失が挙げられる。
【0005】
RPと関連する視力喪失を有する人が日常活動を行い、自立を維持するためのいくつかのサービスおよびデバイスが利用可能である。しかしながら、これらのサービスおよびデバイスを用いても、RPを有する個体にとって生活は困難であり得る。
【0006】
RPに対処しようと試みている世界中の研究者および医療従事者による努力にもかかわらず、RPの安全かつ有効な処置を開発する極めて重要な必要性が依然として残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、常染色体優性RPを改善する新規なアプローチを提示する。この新規なアプローチは、RHO遺伝子における変異、例えば、P23H変異を標的とし、またこの新規なアプローチは、1回程度の少ない処置により、タンパク質レベルでP23H変異体対立遺伝子の発現を低減または排除することができる。結果として得られる治療法により、常染色体優性RPの作用を改善することができるか、またはそれを完全に排除することができる。
【0008】
ヒト細胞においてRHO遺伝子を編集するための方法が、本明細書に提示される。本方法は、ヒト細胞へと、1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、RHO遺伝子またはRHO遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍に、1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をもたらし、それによって、編集されたヒト細胞を作り出すステップであって、SSBまたはDSBは、RHO遺伝子内もしくはその近傍に、またはその発現もしくは機能に影響を及ぼす、1つまたは複数の変異の恒久的な欠失、挿入、修正、またはその発現もしくは機能のモジュレーションをもたらす、ステップを含む。
【0009】
ヒト細胞においてRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための方法もまた、本明細書に提示される。本方法は、ヒト細胞へと、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼを導入して、RHO遺伝子におけるP23H変異内またはその近傍に、P23H変異の恒久的な欠失、挿入、修正、またはその発現もしくは機能のモジュレーションをもたらす1つまたは複数のSSBまたはDSBをもたらし、それによって、編集されたヒト細胞を作り出すステップを含む。
【0010】
常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法もまた、本明細書に提示される。本方法は、患者の細胞においてRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するステップを含む。
【0011】
常染色体優性RPを有する患者に由来する細胞において、RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つまたは複数のガイドリボ核酸(gRNA)もまた、本明細書に提示される。1つまたは複数のgRNAは、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322、および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む。
【0012】
常染色体優性網膜色素変性を有する患者を処置するための治療であって、RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための少なくとも1つまたは複数のgRNAを含む、治療もまた、本明細書に提示される。1つまたは複数のgRNAは、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322、および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む。
【0013】
1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼを導入するステップと、RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAを導入するステップと、必要に応じて、1つまたは複数のドナー鋳型を導入するステップとを含む方法によって形成される、常染色体優性RPを有する患者を処置するための治療もまた、本明細書に提示される。1つまたは複数のgRNAまたはsgRNAは、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322、および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む。
【0014】
in vivoで常染色体優性RPを有する患者を処置するためのキットもまた、本明細書に提示される。キットは、RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つまたは複数のgRNAまたはsgRNA、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼ、および必要に応じて1つまたは複数のドナー鋳型を含む。1つまたは複数のgRNAまたはsgRNAは、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322、および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む。
【0015】
配列番号5287の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0016】
配列番号5288の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0017】
配列番号5289の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0018】
配列番号5290の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0019】
配列番号5291の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0020】
配列番号5319の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0021】
配列番号5320の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0022】
配列番号5321の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0023】
配列番号5322の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0024】
配列番号5358の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0025】
配列番号5290、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0026】
配列番号5291、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0027】
配列番号5319、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0028】
配列番号5320、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0029】
配列番号5321、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0030】
配列番号5322、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0031】
配列番号5358、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)もまた、本明細書に提示される。
【0032】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5287を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0033】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5288を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0034】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5289を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0035】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5290を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0036】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5291を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0037】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5319を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0038】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5320を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0039】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5321を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0040】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5322を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0041】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5358を含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0042】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5290、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0043】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5291、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0044】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5319、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0045】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5320、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0046】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5321、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0047】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5322、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0048】
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5358、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、gRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0049】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5287を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0050】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5288を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0051】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5289を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0052】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5290を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0053】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5291を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0054】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5319を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0055】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5320を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0056】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5321を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0057】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5322を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0058】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5358を含むgRNAまたはsgRNAを、患者へと投与するステップを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0059】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが、配列番号5290、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0060】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが、配列番号5291、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0061】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが、配列番号5319、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0062】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが、配列番号5320、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0063】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが、配列番号5321、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0064】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが、配列番号5322、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0065】
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが、配列番号5358、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法もまた、本明細書に提示される。
【0066】
自己不活性化CRISPR-Cas系もまた、本明細書に提示される。自己不活性化CRISPR-Cas系は、第1のセグメント、第2のセグメント、および1つまたは複数の第3のセグメントを含む。第1のセグメントは、部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。第2のセグメントは、ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、gRNAまたはsgRNAは、配列番号5290を含む。1つまたは複数の第3のセグメントは、自己不活性化(SIN)部位を含む。gRNAまたはsgRNAは、SIN部位に実質的に相補的である。gRNAまたはsgRNAは、ゲノム標的配列に実質的に相補的である。
【0067】
自己不活性化CRISPR-Cas系もまた、本明細書に提示される。自己不活性化CRISPR-Cas系は、第1のセグメント、第2のセグメント、および1つまたは複数の第3のセグメントを含む。第1のセグメントは、部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。第2のセグメントは、ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、gRNAまたはsgRNAは、配列番号5291を含む。1つまたは複数の第3のセグメントは、自己不活性化(SIN)部位を含む。gRNAまたはsgRNAは、SIN部位に実質的に相補的である。gRNAまたはsgRNAは、ゲノム標的配列に実質的に相補的である。
【0068】
自己不活性化CRISPR-Cas系もまた、本明細書に提示される。自己不活性化CRISPR-Cas系は、第1のセグメント、第2のセグメント、および1つまたは複数の第3のセグメントを含む。第1のセグメントは、SaCas9またはその任意のバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む。第2のセグメントは、gRNAまたはsgRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。1つまたは複数の第3のセグメントは、自己不活性化(SIN)部位を含む。gRNAまたはsgRNAは、SIN部位に実質的に相補的である。gRNAまたはsgRNAは、ゲノム標的配列に実質的に相補的である。SIN部位は、配列番号5313~5314からなる群から選択される配列を含む。
【0069】
本明細書に記載される本発明は、この発明の概要に要約される例に限定されないことを理解されたい。様々な他の態様が、本明細書に記載され、例証される。
【0070】
本明細書において開示し、説明するRPの処置のための材料および方法の様々な態様は、付属の図を参照して、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1A図1A~Bは、II型CRISPR/Cas系を図示する。図1Aは、gRNAを含むII型CRISPR/Cas系を図示する。
【0072】
図1B図1Bは、sgRNAを含むII型CRISPR/Cas系を図示する。
【0073】
図2A図2A~Cは、10個のsgRNA配列のそれぞれについての標的DNA配列、単一ガイドRNA(sgRNA)配列、およびsgRNAが結合する標的DNA配列の逆鎖(reverse strand)を示す。図2Aは、10個のsgRNA配列のそれぞれについての標的DNA配列を示す。
【0074】
図2B図2Bは、10個のsgRNA配列のそれぞれについての単一ガイドRNA(sgRNA)配列を示す。
【0075】
図2C図2Cは、10個のsgRNA配列のそれぞれについてのsgRNAが結合する標的DNA配列の逆鎖を示す。
【0076】
図2D図2D~Fは、4個のsgRNA配列のそれぞれについての、標的DNA配列、単一ガイドRNA(sgRNA)配列およびsgRNAが結合する標的DNA配列の逆鎖を示す。図2Dは、4個のsgRNA配列のそれぞれについての標的DNA配列を示す。
【0077】
図2E図2Eは、4個のsgRNA配列のそれぞれについての単一ガイドRNA(sgRNA)配列を示す。
【0078】
図2F図2Fは、4個のsgRNA配列のそれぞれについての、sgRNAが結合する標的DNA配列の逆鎖を示す。
【0079】
図2G図2G~Iは、1個のsgRNA配列についての、標的DNA配列、単一ガイドRNA(sgRNA)配列およびsgRNAが結合する標的DNA配列の逆鎖を示す。図2Gは、1個のsgRNA配列についての標的DNA配列を示す。
【0080】
図2H図2Hは、1個のsgRNA配列についての単一ガイドRNA(sgRNA)配列を示す。
【0081】
図2I図2Iは、1個のsgRNA配列についての、sgRNAが結合する標的DNA配列の逆鎖を示す。
【0082】
図3図3は、野生型ロドプシン遺伝子をターゲティングするgRNAのオンターゲット編集効率および変異体P23Hロドプシン遺伝子をターゲティングするsgRNAのオフターゲット編集効率を示す。
【0083】
図4図4は、変異体P23Hロドプシン遺伝子をターゲティングするsgRNAのオンターゲット編集効率およびオフターゲット編集効率を示す。
【0084】
図5A図5A~Dは、SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1αプロモーター)、SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1αプロモーター)、非-SIN-AAV SaCas9(sEF1αプロモーター)ならびにpSIA010およびpSIA011のAAV配列の構造的配置を示す。図5Aは、SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1αプロモーター)の構造的配置を示す。
【0085】
図5B図5Bは、SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1αプロモーター)の構造的配置を示す。
【0086】
図5C図5Cは、非-SIN-AAV SaCas9(sEF1αプロモーター)の構造的配置を示す。
【0087】
図5D図5Dは、pSIA010およびpSIA011のAAV配列の構造的配置を示す。pSIA010は、配列番号5290を含むsgRNAをコードするAAV配列を含むプラスミドである。pSIA011は、配列番号5291を含むsgRNAをコードするAAV配列を含むプラスミドである。
【0088】
図6A-D】図6A~Nは、P23H 20マー(mer)sgRNA(配列番号5290を含むsgRNA)をコードするAAV配列を含むプラスミドである、pSIA010、またはP23H 19マーsgRNA(配列番号5291を含むsgRNA)をコードするAAV配列を含むプラスミドである、pSIA011、および(1)SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1αプロモーター)、(2)SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1αプロモーター)または(3)非-SIN-AAV SaCas9(sEF1αプロモーター)、のいずれかで共トランスフェクトされている2つの異なるHEK293FTレポーター細胞株についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Aは、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、(1)pSIA010および(2)SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Bは、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、(1)pSIA011および(2)SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Cは、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、(1)pSIA010および(2)SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Dは、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、(1)pSIA011および(2)SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。
【0089】
図6E-H】図6Eは、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、(1)pSIA010および(2)SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Fは、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、(1)pSIA011および(2)SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Gは、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、(1)pSIA010および(2)SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Hは、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、(1)pSIA011および(2)SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。
【0090】
図6I-N】図6Iは、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、(1)pSIA010および(2)非-SIN-AAV SaCas9(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Jは、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、(1)pSIA011および(2)非-SIN-AAV SaCas9(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Kは、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、いかなるDNAでもトランスフェクトされないHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Lは、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、(1)pSIA010および(2)非-SIN-AAV SaCas9(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Mは、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、(1)pSIA011および(2)非-SIN-AAV SaCas9(sEF1α)で共トランスフェクトされているHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。図6Nは、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、いかなるDNAでもトランスフェクトされないHEK293FTレポーター細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す。
【0091】
図7A図7A~Bは、P23H 20マーsgRNA(配列番号5290を含むsgRNA)をコードするAAV配列を含むプラスミドである、pSIA010、またはP23H 19マーsgRNA(配列番号5291を含むsgRNA)をコードするAAV配列を含むプラスミドである、pSIA011、および(1)SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1αプロモーター)、(2)SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1αプロモーター)または(3)非-SIN-AAV SaCas9(sEF1αプロモーター)、のいずれかで共トランスフェクトされている2つの異なるHEK293FTレポーター細胞株についてのウエスタンブロットデータを示す。図7Aは、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有するHEK293FTレポーター細胞におけるSaCas9、アクチンおよびGFP発現を示すウエスタンブロットである。これらのHEK293FTレポーター細胞は、pSIA010またはpSIA011のいずれかでトランスフェクトされている。HEK293FTレポーター細胞はまた、(1)SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1αプロモーター)、(2)SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1αプロモーター)、または(3)非-SIN-AAV SaCas9(sEF1αプロモーター)のいずれかでトランスフェクトされている。
【0092】
図7B図7Bは、Cas9標的部位としてP23H変異を有するHEK293FTレポーター細胞におけるSaCas9、アクチンおよびGFP発現を示すウエスタンブロットである。これらのHEK293FTレポーター細胞は、pSIA010またはpSIA011のいずれかでトランスフェクトされている。HEK293FTレポーター細胞はまた、(1)SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1αプロモーター)、(2)SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1αプロモーター)、または(3)非-SIN-AAV SaCas9(sEF1αプロモーター)のいずれかでトランスフェクトされている。
【0093】
図8図8は、青色蛍光タンパク質へと融合されたCas9標的部位(P23H変異を含む野生型RHO遺伝子またはRHO遺伝子のいずれか)を含むドナープラスミドを示す。
【0094】
図9A図9A~Bは、相同組換え修復(HDR)を介してゲノムDNAへと導入されたP23H変異およびヒトロドプシン遺伝子のコドン23の一塩基変異(single nucleotide mutation)を示す。図9AはHDRを介してゲノムDNAへと導入されたP23H変異を示す。
【0095】
図9B図9Bは、ヒトロドプシン遺伝子のコドン23での一塩基変異を示す。
【0096】
図10図10は、野生型ロドプシン遺伝子をターゲティングする合成sgRNAのオンターゲット/オフターゲット編集効率およびP23H変異体ロドプシン遺伝子をターゲティングする合成sgRNAのオンターゲット/オフターゲット編集効率を記載する。
【0097】
図11図11は、P23H変異体ロドプシン遺伝子をターゲティングするsgRNAをコードするプラスミドのオンターゲット/オフターゲット編集効率を記載する。
【0098】
図12図12は、P23H変異体ロドプシン遺伝子をターゲティングするsgRNAをコードするプラスミドのオンターゲット/オフターゲット編集効率を記載する。
【0099】
図13図13は、非-SIN AAV-SaCas9およびpSIA010が網膜下注射を介してP23H-hRHO-RFPマウスおよび対照hRHO-GFPマウスへと送達されたin vivo実験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
配列表の簡単な説明
配列番号1~612は、Casエンドヌクレアーゼオルソログ配列である。
【0101】
配列番号613~4696は、マイクロRNA配列である。
【0102】
配列番号4697~5265は、AAV血清型配列である。
【0103】
配列番号5266は、RHOヌクレオチド配列である。
【0104】
配列番号5267~5269は、SpCas9が複合体化される、sgRNA骨格配列の例を示す。
【0105】
配列番号5270は、Streptococcus pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼのガイドRNA(gRNA)の例である。
【0106】
配列番号5271は、その構造で分類される、公知のホーミングエンドヌクレアーゼファミリーを示す。
【0107】
配列番号5272~5281は、10個のsgRNA配列のそれぞれについて、標的DNA配列を表す配列である。
【0108】
配列番号5282~5284は、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子またはRHO遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍をターゲティングするための18~20bpのスペーサー配列である。
【0109】
配列番号5285~5286は、Staphylococcus aureus Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子またはRHO遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍をターゲティングするための19~20bpのスペーサー配列である。
【0110】
配列番号5287~5289は、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子におけるP23H変異内またはその近傍をターゲティングするための18~20bpのスペーサー配列である。
【0111】
配列番号5290~5291は、S.aureus Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子におけるP23H変異内またはその近傍をターゲティングするための19~20bpのスペーサー配列である。
【0112】
配列番号5292~5301は、10個のsgRNA配列のそれぞれについて、sgRNAが結合する、標的DNA配列の逆鎖を表す配列である。
【0113】
配列番号5302は、配列番号5287および5267を含む、全長sgRNAである。
【0114】
配列番号5303は、配列番号5288および5267を含む、全長sgRNAである。
【0115】
配列番号5304は、配列番号5289および5267を含む、全長sgRNAである。
【0116】
配列番号5305~5307は、配列を含まない。
【0117】
配列番号5308は、配列番号5290および5327を含むsgRNAをコードする、AAV配列を含むプラスミド配列である、pSIA010である。
【0118】
配列番号5309は、配列番号5291および5327を含むsgRNAをコードする、AAV配列を含むプラスミド配列である、pSIA011である。
【0119】
配列番号5310は、図5Aに示される、SIN-AAV SaCas9バージョン1(sEF1αプロモーター)を含むプラスミド配列である。
【0120】
配列番号5311は、図5Bに示される、SIN-AAV SaCas9バージョン2(sEF1αプロモーター)を含むプラスミド配列である。
【0121】
配列番号5312は、図5Cに示される、非SIN-AAV SaCas9(sEF1αプロモーター)を含むプラスミド配列である。
【0122】
配列番号5313は、図5Aに示されるSIN-AAV SaCas9バージョン1においてSaCas9 ORFの上流に位置し、図5Bに示されるSIN-AAV SaCas9バージョン2においてSaCas9 ORFの上流に位置する、可能なSIN部位(P23H標的部位とも称される)である。
【0123】
配列番号5314は、図5Aに示されるSIN-AAV SaCas9バージョン1または図5Bに示されるSIN-AAV SaCas9バージョン2において、SaCas9 ORF内に位置する、天然に存在するイントロンまたはキメラ挿入(chimeric inserted)イントロン内に位置する、可能なSIN部位(P23H標的部位とも称される)である。
【0124】
配列番号5315~5318は、4つのsgRNA配列のそれぞれについて、標的DNA配列を表す配列である。
【0125】
配列番号5319~5322は、S.aureus Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子におけるP23H変異にわたるゲノム配列をターゲティングするための21~24bpのプロトスペーサー配列である。
【0126】
配列番号5323~5326は、4つのsgRNA配列のそれぞれについて、sgRNAが結合する、標的DNA配列の逆鎖を表す配列である。
【0127】
配列番号5327~5338は、SaCas9が複合体化される、sgRNA骨格配列の例を示す。
【0128】
配列番号5339は、pSIA010におけるAAV配列である。
【0129】
配列番号5340は、pSIA011におけるAAV配列である。
【0130】
配列番号5341は、SIN-AAV-SaCas9バージョン1(GRK1)におけるAAV配列である。
【0131】
配列番号5342は、SIN-AAV-SaCas9バージョン2(GRK1)におけるAAV配列である。
【0132】
配列番号5343は、P23H変異体RHO細胞株を生成するために、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子内またはその近傍をターゲティングするためのRNAプロトスペーサー配列である。
【0133】
配列番号5344は、RHO遺伝子内またはその近傍に位置する標的DNA配列であり、これを標的として、P23H変異体RHO細胞株を生成した。
【0134】
配列番号5345は、sgRNAが結合する、RHO遺伝子内またはその近傍に位置する標的DNA配列の逆鎖である。
【0135】
配列番号5346は、相同組換え修復の鋳型として使用される、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドである。一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを使用して、P23H変異体RHO細胞株を生成する。
【0136】
配列番号5347が、RHO遺伝子のコドン23の周囲を増幅させるために使用されるフォワードプライマーである。
【0137】
配列番号5348は、RHO遺伝子のコドン23の周囲を増幅させるために使用されるリバースプライマーである。
【0138】
配列番号5349は、配列番号5285および5332を含む、全長sgRNAである。
【0139】
配列番号5350は、配列番号5286および5332を含む、全長sgRNAである。
【0140】
配列番号5351は、配列番号5290および5332を含む、全長sgRNAである。
【0141】
配列番号5352は、配列番号5291および5332を含む、全長sgRNAである。
【0142】
配列番号5353は、配列番号5319および5332を含む、全長sgRNAである。
【0143】
配列番号5354は、配列番号5320および5332を含む、全長sgRNAである。
【0144】
配列番号5355は、配列番号5321および5332を含む、全長sgRNAである。
【0145】
配列番号5356は、配列番号5322および5332を含む、全長sgRNAである。
【0146】
配列番号5357は、1つのsgRNA配列の標的DNA配列を表す配列である。
【0147】
配列番号5358は、S.aureus Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子におけるP23H変異を含むゲノム配列をターゲティングするための18bpのRNAプロトスペーサー配列である。
【0148】
配列番号5359は、1つのsgRNA配列について、sgRNAが結合する標的DNA配列の逆鎖を表す配列である。
【0149】
配列番号5360は、配列番号5358および5332を含む、全長sgRNAである。
【0150】
配列番号5361は、配列番号5358を含むsgRNAをコードするプラスミド配列である。
【0151】
配列番号5362は、配列番号5291を含むsgRNAをコードするプラスミド配列である。
【0152】
配列番号5363は、配列番号5290を含むsgRNAをコードするプラスミド配列である。
【0153】
配列番号5364は、配列番号5322を含むsgRNAをコードするプラスミド配列である。
【0154】
配列番号5365は、配列番号5321を含むsgRNAをコードするプラスミド配列である。
【0155】
配列番号5366は、配列番号5320を含むsgRNAをコードするプラスミド配列である。
【0156】
配列番号5367は、配列番号5319を含むsgRNAをコードするプラスミド配列である。
【0157】
詳細な説明
治療アプローチ
【0158】
本明細書に提示される方法は、細胞の、ex vivo方法か、in vivo方法かに関係なく、以下のうちの1つまたは組合せを含み得る:1)非相同末端結合(NHEJ)に起因して生じる挿入もしくは欠失により、RHO遺伝子におけるP23H変異体対立遺伝子にフレームシフト変異を導入することによって、タンパク質レベルで、P23H変異体対立遺伝子の発現を低減もしくは排除すること、2)HDRによってRHO遺伝子におけるP23H変異を修正すること、または3)RHO遺伝子のローカスもしくはセーフハーバーローカスにRHO cDNAをノックインすること。
【0159】
NHEJフレームシフト戦略は、1つもしくは複数のCRISPRエンドヌクレアーゼおよび1つのgRNA(例えば、crRNA+tracrRNAもしくはsgRNA)により、RHO遺伝子におけるP23H変異内もしくはその近傍に1つの一本鎖切断もしくは二本鎖切断を誘導すること、または2つもしくはそれよりも多いCRISPRエンドヌクレアーゼおよび2つもしくはそれよりも多いsgRNAにより、RHO遺伝子におけるP23H変異内もしくはその近傍に2つもしくはそれよりも多い一本鎖切断もしくは二本鎖切断を誘導することを含み得る。このアプローチは、P23H変異体対立遺伝子にフレームシフトを引き起こすことによって、P23H変異体対立遺伝子の転写/合成を防止することができる。この方法は、RHO遺伝子におけるP23H変異に特異的なgRNAまたはsgRNAを用いる。
【0160】
HDR修正戦略は、相同組換え修復に対する細胞内DSB応答を導くために外部から導入したドナーDNA鋳型の存在下において、1つもしくは複数のCRISPRエンドヌクレアーゼおよび1つのgRNA(例えば、crRNA+tracrRNAもしくはsgRNA)により、RHO遺伝子におけるP23H変異内もしくはその近傍に1つの一本鎖切断もしくは二本鎖切断を誘導すること、または1つもしくは複数のCRISPRエンドヌクレアーゼ(Cas9、Cpf1など)および2つもしくはそれよりも多いgRNAにより、RHO遺伝子におけるP23H変異内もしくはその近傍に2つもしくはそれよりも多い一本鎖切断もしくは二本鎖切断を誘導することを含み得る。ドナーDNA鋳型は、短い一本鎖オリゴヌクレオチドであってもよく、短い二本鎖オリゴヌクレオチドであってもよく、長い一本鎖または二本鎖DNA分子であってもよい。本方法は、遺伝子を2回切断することによって欠失を作製するgRNAの対を提供し得、これは、一方のgRNAがP23H変異の5’末端で切断し、他方のgRNAが、P23H変異の3’末端で切断し、それによって、RHO遺伝子におけるP23H変異を置き換えるポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新しい配列の挿入が促進される。切断は、それぞれがDSBを作製する1対のDNAエンドヌクレアーゼ(P23H変異のそれぞれの末端に1つのDSB)、または一緒になってDSBを作製する複数のニッカーゼ(P23H変異のそれぞれの末端に1つのDSB)によって、達成することができる。この方法は、RHO遺伝子におけるP23H変異に特異的なgRNAまたはsgRNA、およびドナーDNA分子を用いる。
【0161】
ノックイン戦略は、RHO遺伝子の第1のもしくは他のエクソンおよび/もしくはイントロンの上流もしくはそこをターゲティングする1つのgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、もしくはsgRNA)または1対のgRNAを使用して、RHO遺伝子のローカス、またはセーフハーバー部位(例えば、AAVS1)に、RHO cDNAをノックインすることを含む。ドナーDNAは、一本鎖または二本鎖DNAであり得る。
【0162】
上記の戦略(フレームシフト、修正、およびノックイン戦略)の利点は、原則、短期的および長期的の両方の有益な臨床効果および実験室効果を含め、類似である。ノックインアプローチは、フレームシフトおよび修正のアプローチを上回る少なくとも1つの利点、すなわち、一部の患者のみを処置するのに対して、全ての患者を処置する能力を提供する。
【0163】
そのような方法は、RHO遺伝子のゲノムローカス内のP23H変異を安定に修正するために、エンドヌクレアーゼ、例えば、CRISPR関連(Cas9、Cpf1など)ヌクレアーゼを使用する。任意のCRISPRエンドヌクレアーゼを、本開示の方法において使用することができ、それぞれのCRISPRエンドヌクレアーゼは、疾患特異的な場合もあり、疾患特異的でない場合もある、それ自体と関連するPAMを有する。例えば、S.pyogenesに由来するCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子におけるP23H変異を標的とするためのgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号5287~5289に特定されている。S.aureusに由来するCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼにより、RHO遺伝子におけるP23H変異を標的とするためのgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号5290~5291に特定されている。
【0164】
本開示に記載される例は、RHO遺伝子におけるP23H変異内またはその近傍に、一本鎖切断または二本鎖切断を誘導して、わずか単回の処置で(潜在的治療法を患者の生涯にわたり送達するのではなく)、RHO遺伝子内のP23H変異にフレームシフトを導入するかまたはそれを修正することができる。
【0165】
網膜色素変性(RP)
【0166】
網膜色素変性(RP)は、網膜変性を引き起こす遺伝疾患の群を指す。RPと関連している60個を上回る遺伝子が同定されており、それらは、常染色体劣性(50~60%)、常染色体優性(30~40%)、またはX連鎖型(5~15%)である。いくつかの場合には、RPは、RHO遺伝子における変異によって引き起こされる。RHOにおけるP23H変異は、米国ではおよそ2500人の患者に相当する、全ての進行性網膜色素変性のうちの10%を占め、1年につきおよそ30人の新しい患者がいる。この変異は、光受容器の変性と関連するフォールディングされていない変異したロドプシンの蓄積をもたらす。この障害は、光受容器(桿体および錐体)または網膜の網膜色素上皮の異常、ならびに進行的な視力喪失をもたらす周辺部網膜における色素沈着を特徴とする。典型的なRPは、主として桿体、続いて錐体の変性を伴う、桿体-錐体ジストロフィーである。この疾患の発生率は、1:3000~1:7000の個体、または100,000人につき14~33人である。米国および欧州における発生率は、約1:3500~1:4000であり、発症年齢は、通常、10~30歳である。RPは、いずれの民族特異性も示さないが、所与の遺伝子内の病原性バリアントの範囲は、集団間で異なり得る。
【0167】
RPは、数十年にわたって進展する長期持続性の疾患である。この疾患に罹患した個体は、まず、夜盲を経験し、続いて、日中における周辺部視野の進行的な喪失を経験し、最終的に、失明する。臨床発現としては、夜盲、視力、眼底の外観、後嚢下白内障、硝子体における塵様粒子(dust-like particle)、網膜深部の白色斑点、視神経乳頭のヒアリン体、滲出性血管症、および区画性RP(sector RP)が挙げられる。「区画性RP」という用語は、それぞれの眼底の4分の1または2分の1における変化を記載するために使用されている。最も一般的には、下側および鼻側の4分の1区分が、対称に関与する。そのような区画性変化(sectoral change)は、常染色体優性RPにおいて、例えば、RHOにおける一般的なP23H病原性バリアントを有する人々、およびX連鎖型RPについてはヘテロ接合性の女性において、観察されている。網膜は、検眼鏡検査、網膜電図検査、光干渉断層撮影、フルオレセイン血管造影によって評価され、視覚の機能的評価は、視力、視野、および色覚によって行われる。
【0168】
RHO遺伝子におけるP23H変異によって引き起こされるRPは、常染色体優性遺伝を有する単一遺伝子障害である。患者が、1つのP23H変異体対立遺伝子しか有さない場合、フレームシフトを、細胞ごとに1つのP23H変異体対立遺伝子へと導入して、1つのP23H変異体対立遺伝子の転写/合成を防止することができる。フレームシフトを、細胞ごとに1つのP23H変異体対立遺伝子へと導入して、1つのP23H変異体対立遺伝子の転写/合成を防止することによる、常染色体優性RPの作用を改善するための新規なアプローチが開発されている。
【0169】
また、患者が、1つのP23H変異体対立遺伝子しか有さない場合、その1つのP23H変異体対立遺伝子を修正して、RHO機能を回復させることができる。患者が、2つのP23H変異体対立遺伝子を有する場合、両方のP23H変異体対立遺伝子をHDRにより修正して、RHO機能を回復させることができる。
【0170】
遺伝子編集を使用して、フレームシフトをP23H変異体対立遺伝子に導入することまたはP23H変異体対立遺伝子を修正することは、その精度および低い有害作用のため、レンチウイルス送達および組込みを通じたRHO発現カセットの導入などの既存または潜在的な治療を上回る重要な改善を提供する。
【0171】
ロドプシン(RHO)遺伝子
【0172】
RHOは、ロドプシン2;オプシン-2;OPN2;常染色体優性網膜色素変性4;オプシン2、桿体色素;桿体色素;オプシン2;CSNBAD1;またはRP4とも称され得る。
【0173】
RHOは、細胞遺伝学的位置3q22.1を有し、Ensemblデータベースで見られるゲノム座標は、フォワード鎖の第3染色体の129,528,640位~129,535,169位にある。RHOのヌクレオチド配列は、配列番号5266として示される。RHOは、826個のSNP、4個のイントロン、および5個のエクソンを有する。Ensemblからのエクソンの識別子、ならびにイントロンおよびエクソンの開始/終止部位を、表1に示す。
【表1】
【0174】
RHOは、826個のSNPを有し、RHO遺伝子のSNPのNCBI rs番号および/またはUniProt VAR番号は、VAR_004765、VAR_004766、VAR_004767、VAR_004768、VAR_004769、VAR_004770、VAR_004771、VAR_004772、rs104893770、VAR_004774、rs149079952、VAR_004776、VAR_004777、rs28933395、rs28933394、VAR_004781、VAR_004782、VAR_004783、VAR_004784、rs144317206、VAR_004786、VAR_004787、VAR_004788、VAR_004789、VAR_004790、VAR_004791、VAR_004792、VAR_004793、VAR_004794、VAR_004795、VAR_004796、VAR_004797、VAR_004798、VAR_004799、VAR_004800、VAR_004801、VAR_004802、VAR_004803、VAR_004804、VAR_004805、VAR_004806、VAR_004807、VAR_004808、VAR_004809、VAR_004810、VAR_004811、VAR_004812、VAR_004813、VAR_004814、VAR_004815、VAR_004816、rs567288669、rs28933993、VAR_004819、VAR_004820、VAR_004821、VAR_004822、VAR_004825、VAR_004826、VAR_004827、rs29001653、VAR_004829、VAR_004830、VAR_004831、VAR_004832、VAR_004833、VAR_004834、VAR_004835、rs29001566、rs29001637、VAR_068359、VAR_068360、rs2410、rs7984、rs2071092、rs2071093、rs2269736、rs2625953、rs2625955、rs2855557、rs2855558、rs3755837、rs6803484、rs11359208、rs55915536、rs55941599、rs35005824、rs35649104、rs34204582、rs60744548、rs58508862、rs35822883、rs61170455、rs72987932、rs62267563、rs74435833、rs75456752、rs73863103、rs74578881、rs73204245、rs73204247、rs77154523、rs77530178、rs78163008、rs75783569、rs76288565、rs113310993、rs113312341、rs111823780、rs139028150、rs115345357、rs142285818、rs142322202、rs113751838、rs139374423、rs113964897、rs140851495、rs117803086、rs144222821、rs144270441、rs104893768、rs104893769、rs104893771、rs104893772、rs104893774、rs104893775、rs104893776、rs104893777、rs104893778、rs104893779、rs104893780、rs104893782、rs104893783、rs104893786、rs104893787、rs104893788、rs104893793、rs104893794、rs104893796、rs104893797、rs139502149、rs145921862、rs118173887、rs144339478、rs121918590、rs104893795、rs104893792、rs104893791、rs104893790、rs142771862、rs139731264、rs141185480、rs104893789、rs104893781、rs104893773、rs143003934、rs146311684、rs112963101、rs146327704、rs144211117、rs139435571、rs112445170、rs144852771、rs80263713、rs113823926、rs145004306、rs116351742、rs112302797、rs111871140、rs149084537、rs138831590、rs145248729、rs141844397、rs78872255、rs79311890、rs76257822、rs141951118、rs143735182、rs141956356、rs79765751、rs181914973、rs147005807、rs60645924、rs56340615、rs145549270、rs143977825、rs149615742、rs60120581、rs187430296、rs56120415、rs190889142、rs55851525、rs34476780、rs12633814、rs6803468、rs2855556、rs2855553、rs2855552、rs3733149、rs181047668、rs3733148、rs148627764、rs2625969、rs2625964、rs2625954、rs188128858、rs139566602、rs148748781、rs181387582、rs199553540、rs199573532、rs137883686、rs112640710、rs142769113、rs185011073、rs183230830、rs112855188、rs138115019、rs138142023、rs369408405、rs371461422、rs369445725、rs146389280、rs375593312、rs200054443、rs146391463、rs141468335、rs200165530、rs200207070、rs367631575、rs367633279、rs143193489、rs144939863、rs145024369、rs189018030、rs192412661、rs143559914、rs145310205、rs200946638、rs200947122、rs367909246、rs376057120、rs373949248、rs369851208、rs147640435、rs146936681、rs376111618、rs369893168、rs146987110、rs147761866、rs151063543、rs184124255、rs532137084、rs368157839、rs528482125、rs372128112、rs376271158、rs386665775、rs192604199、rs374334512、rs186091794、rs148110888、rs370271660、rs149722668、rs148165044、rs192710452、rs201411679、rs191009602、rs368522974、rs148222991、rs376626260、rs370441842、rs374550929、rs372570611、rs182735834、rs376727697、rs376776890、rs150129519、rs187923166、rs376802160、rs398122525、rs150250946、rs188052820、rs527236102、rs527236103、rs374788784、rs368819173、rs531014611、rs370746434、rs372812523、rs376995477、rs374902462、rs368910470、rs189786911、rs186719544、rs368995053、rs184850373、rs184966973、rs529295739、rs377157554、rs531210663、rs369102407、rs199583468、rs148801522、rs529338772、rs199701338、rs373118114、rs369198420、rs369233304、rs529422419、rs529438885、rs191819667、rs531346738、rs183318466、rs375306799、rs371264378、rs531409081、rs202215179、rs375391319、rs537581749、rs373369517、rs527538362、rs373450899、rs529674071、rs541163949、rs200076128、rs541204702、rs544766619、rs200095648、rs533358632、rs200248198、rs200826498、rs367797677、rs548932276、rs534588062、rs200894277、rs371853220、rs192461600、rs201008735、rs373974298、rs553108022、rs541825239、rs368037594、rs372010849、rs556769049、rs534810430、rs377687329、rs376184299、rs528605519、rs368352202、rs561052129、rs528662813、rs553392884、rs372349714、rs538581410、rs201340914、rs549470128、rs565201858、rs538744995、rs549590160、rs370370574、rs538820015、rs535230697、rs370401948、rs545950016、rs557301477、rs368534414、rs376708009、rs569450099、rs374685958、rs542367012、rs565597965、rs370601606、rs546127355、rs527236100、rs527236101、rs554039303、rs535635302、rs531077633、rs539249995、rs529156413、rs377120794、rs375044079、rs371192803、rs569952875、rs371288618、rs554315811、rs566173741、rs552362456、rs532949412、rs532967085、
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794、rs751475771、rs747620121、rs777637179、rs755540170、rs764277444、rs773077062、rs755674549、rs777849735、rs777851867、rs7645905



15、rs768787274、rs778356027、rs778533886、rs778536018、rs778587340、rs778804021、rs769236224およびrs778794165である。
【0175】
RHO遺伝子は、ロドプシンと称されるタンパク質を作製するための指示を提供する。このタンパク質は、正常な視覚に必要であり、特に、弱光条件下において必要である。ロドプシンは、桿体と称される特化した光受容細胞に見出される。眼の後方における光感受性組織(網膜)の一部として、桿体は、弱光下での視覚を提供する。網膜における他の光受容細胞は、錐体と称され、明るい光下における視覚を担う。ロドプシンタンパク質は、ビタミンAの一形態である、11-シスレチナールと称される分子に結合する。この分子が光に曝露されると、ロドプシンを活性化し、電気シグナルを作り出す一連の化学反応を開始する。これらのシグナルが脳に伝達され、そこで、視覚として解釈される。
【0176】
挿入、欠失、ミスセンス、ナンセンス、フレームシフト、および他の変異であり得る、網膜色素変性(RP)と関連する様々な変異が存在し、RHO遺伝子を不活性化する共通の作用を有する。変異のうちのいずれか1つまたは複数を修復して、RHOタンパク質活性を回復させることができる。例えば、病理学的バリアントであるP23Hは、回復または修正することができる(表2を参照されたい)。
【表2】
【0177】
エクソン欠失
【0178】
別のゲノム操作戦略は、エクソン欠失を伴う。特定のエクソンの標的化欠失は、単一の治療カクテルで大きな患者サブセットを処置するための有望な戦略であり得る。欠失は、単一エクソンの欠失または複数エクソンの欠失のいずれであってもよい。複数エクソンの欠失は、より多くの患者に届き得るが、欠失が大きくなると、欠失の効率は、サイズの増加とともに大幅に減少する。したがって、欠失範囲は、40~10,000塩基対(bp)のサイズであり得る。例えば、欠失は、40~100、100~300、300~500、500~1,000、1,000~2,000、2,000~3,000、3,000~5,000、または5,000~10,000塩基対のサイズの範囲に及び得る。
【0179】
前述のように、RHO遺伝子は、5つのエクソンを含む。5つのエクソンのうちのいずれか1つまたは複数は、変異を含み得る。5つの変異したエクソンのうちのいずれか1つもしくは複数、または異常なイントロンスプライスアクセプターもしくはドナー部位を欠失させて、RHO機能を回復させるかまたは部分的に回復させることができる。一部の実施形態では、本方法は、変異したエクソン1、2、3、4、5のうちのいずれか1つもしくは複数、またはこれらの任意の組合せを欠失させるために使用することができる、gRNA対を提供する。
【0180】
pre-mRNAが、欠失の後に適正にプロセシングされるのを確実にするために、周囲のスプライシングシグナルを、欠失させてもよい。スプライシングドナーおよびアクセプターは、一般に、隣接するイントロンの100塩基対以内にある。したがって、一部の例では、本方法は、目的とされるそれぞれのエクソン/イントロン接合部に関して、およそ±100~3100bpで切断する全てのgRNAを提供し得る。
【0181】
ゲノム編集戦略のいずれについても、遺伝子編集は、配列決定またはPCR分析によって確認することができる。
【0182】
in vivoベースの療法
【0183】
常染色体優性RPを有する患者を処置するための方法が、本明細書に提示される。一部の態様では、本方法は、in vivoにおける細胞ベースの療法である。本明細書に記載される材料および方法を使用して、RP患者における細胞の染色体DNAを編集することができる。例えば、in vivo方法は、光受容細胞または網膜前駆細胞などの患者の細胞において、RHO遺伝子におけるP23H変異を編集することを含み得る。
【0184】
ある特定の細胞は、ex vivoにおける処置および療法のための有望な標的を提示するが、送達の有効性を増加させることにより、そのような細胞へのin vivoでの直接送達が可能となり得る。ターゲティングおよび編集は、関連細胞を対象とすることが理想的であろう。他の細胞における切断はまた、ある特定の細胞およびまたは成長段階においてのみ活性であるプロモーターの使用によって、防止することができる。追加のプロモーターは、誘導性であり、したがって、ヌクレアーゼがプラスミドとして送達される場合には、一時的に制御され得る。送達されたRNAおよびタンパク質が、細胞内に留まる時間の量もまた、半減期を変化させるために付加される処置またはドメインを使用して、調整することができる。in vivoでの処置により、いくつかの処置ステップが排除されるが、送達率が低いため、より高い編集率が必要となり得る。in vivoでの処置は、ex vivoでの処置および生着による問題および損失を排除することができる。
【0185】
in vivoにおける遺伝子治療の利点は、治療的生産および投与の容易さであり得る。同じ治療アプローチおよび治療は、1人を上回る患者、例えば、同じかまたは類似の遺伝子型または対立遺伝子を共有する何人かの患者を処置するために使用される潜在性を有する。対照的に、ex vivoにおける細胞療法は、典型的に、患者自身の細胞を使用する必要があり、この細胞は、同じ患者から単離、操作され、その患者に戻される。
【0186】
ex vivoベースの療法
【0187】
常染色体優性RPを有する患者を処置するための方法が、本明細書に提示される。そのような方法の態様は、ex vivoにおける細胞ベースの療法である。例えば、患者特異的な人工多能性幹細胞(iPSC)を、作り出すことができる。次いで、本明細書に記載される材料および方法を使用して、これらのiPSC細胞の染色体DNAを、編集することができる。例えば、本方法は、iPSCのRHO遺伝子におけるP23H変異内またはその近傍で編集するステップを含み得る。次いで、ゲノム編集したiPSCを、他の細胞、例えば、光受容細胞または網膜前駆細胞へと分化させることができる。最後に、分化した細胞、例えば、光受容細胞または網膜前駆細胞を、患者へと埋め込むことができる。
【0188】
そのような方法の別の態様は、ex vivoにおける細胞ベースの療法である。例えば、光受容細胞または網膜前駆細胞は、患者から単離することができる。次いで、本明細書に記載される材料および方法を使用して、これらの光受容細胞または網膜前駆細胞の染色体DNAを、編集することができる。例えば、本方法は、光受容細胞または網膜前駆細胞のRHO遺伝子におけるP23H変異内またはその近傍で編集するステップを含み得る。最後に、ゲノム編集した光受容細胞または網膜前駆細胞を、患者へと埋め込むことができる。
【0189】
そのような方法の別の態様は、ex vivoにおける細胞ベースの療法である。例えば、間葉幹細胞を、患者から単離してもよく、これは、患者の骨髄または末梢血から単離することができる。次いで、本明細書に記載される材料および方法を使用して、これらの間葉幹細胞の染色体DNAを、編集することができる。例えば、本方法は、間葉幹細胞のRHO遺伝子におけるP23H変異内またはその近傍で編集するステップを含み得る。次いで、ゲノム編集した間葉幹細胞を、任意の種類の細胞、例えば、光受容細胞または網膜前駆細胞へと分化させることができる。最後に、分化した細胞、例えば、光受容細胞または網膜前駆細胞を、患者へと埋め込むことができる。
【0190】
ex vivoにおける細胞療法アプローチの1つの利点は、投与の前に、治療法(the therapeutic)についての包括的な解析を行う能力である。ヌクレアーゼベースの治療法は、あるレベルのオフターゲット作用を有し得る。遺伝子修正をex vivoにおいて実施することにより、埋め込み(implantation)の前に、修正した細胞集団を特徴付けることが可能である。本開示は、修正した細胞の全ゲノムを配列決定して、オフターゲット作用が存在する場合に、それが、確実に、患者に対する最小限の危険性と関連するゲノム位置に存在し得るようにすることを含む。さらに、クローン集団を含め、特定の細胞集団を、埋め込みの前に単離することができる。
【0191】
ex vivoにおける細胞療法の別の利点は、他の初代細胞供給源と比較した、iPSC内の遺伝子修正に関する。iPSCは、多産であり、細胞ベースの療法に要求される多数の細胞を得ることを容易とする。さらに、iPSCは、クローン単離を実施するために理想的な細胞型である。これにより、生存率を低下させる危険を冒さずに、正確なゲノム修正のためのスクリーニングが可能である。これに対し、他の初代細胞、例えば、光受容細胞または網膜前駆細胞は、数回の継代にわたってのみ生存可能であり、クローン的に拡大することは困難である。このため、常染色体優性RPの処置のためのiPSCの操作は、はるかに容易であり得、所望される遺伝子修正を行うのに必要とされる時間の量を短縮することができる。
【0192】
ゲノム編集
【0193】
ゲノム編集とは、ゲノムのヌクレオチド配列を、例えば、精密なまたは所定の方式で、修飾するプロセスを指す。本明細書に記載されるゲノム編集法の例は、部位特異的ヌクレアーゼを使用して、DNAを、ゲノム内の正確な標的位置で切断し、それによって、一本鎖または二本鎖DNA切断を、ゲノム内の特定の位置において作り出す方法を含む。そのような切断は、HDRおよびNHEJなど、天然の内因性細胞プロセスにより修復することが可能であり、通常、そのように修復される。これらの2つの主要なDNA修復プロセスは、代替的な経路のファミリーからなる。NHEJは、二本鎖切断から生じるDNA末端を直接接合させるが、場合によって、ヌクレオチド配列の喪失または付加であって、遺伝子発現を破壊する場合もあり、増強する場合もある、喪失または付加を伴う。HDRは、相同配列またはドナー配列を、規定されたDNA配列を切断点に挿入するための鋳型として利用する。相同配列は、姉妹染色分体など、内因性ゲノム内に存在し得る。代替的に、ドナーは、ヌクレアーゼにより切断されるローカスとの相同性が大きな領域を有するが、切断された標的ローカスへと組み込まれ得る欠失を含むさらなる配列または配列変化も含み得る、プラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルスなどの外因性核酸であり得る。第3の修復機構は、「代替的NHEJ(ANHEJ)」とも称される、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)であって、切断部位において、小規模の欠失および挿入が生じ得るという点で、遺伝的結果がNHEJと同様である、MMEJであり得る。MMEJは、DNA切断部位を挟む少数の塩基対の相同配列を利用して、より好ましいDNA末端結合による修復結果を駆動することができ、近年の報告により、このプロセスの分子機構がさらに解明されている。一部の事例では、DNA切断部位における潜在的なマイクロホモロジーについての解析に基づき、可能性がある修復結果を予測することが可能であり得る。
【0194】
これらのゲノム編集機構の各々を使用して、所望のゲノムの変更を創出することができる。ゲノム編集工程内のステップは、意図される突然変異部位の近傍にまで近接した、標的ローカス内で、1つのDNA切断、または2つのDNA切断であって、二本鎖切断または2つの一本鎖切断としての2つのDNA切断を創出することでありうる。これは、本明細書で記載および例示される通り、部位特異的ポリペプチドの使用を介して達成することができる。
【0195】
部位特異的ポリペプチド、例えば、DNAエンドヌクレアーゼにより、二本鎖切断または一本鎖切断を、核酸内、例えば、ゲノムDNAに導入することができる。二本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路[例えば、相同性依存的修復(HDR)または非相同末端結合(NHEJ)もしくは(ANHEJ)もしくは(MMEJ)]を刺激し得る。NHEJは、相同な鋳型を必要とせずに、切断された標的核酸を修復し得る。これは、場合によって、標的核酸内の切断部位において、小規模の欠失または挿入(インデル)をもたらし得、遺伝子発現の破壊または変更をもたらし得る。欠失範囲は、40~10,000塩基対(bp)のサイズであり得る。例えば、欠失は、40~100、100~300、300~500、500~1,000、1,000~2,000、2,000~3,000、3,000~5,000、または5,000~10,000塩基対のサイズの範囲に及び得る。HDRは、相同な修復鋳型またはドナーが利用可能である場合に生じ得る。相同なドナー鋳型は、野生型RHO遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分を含み得る。野生型RHO遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、その断片もしくは組合せ、またはRHO遺伝子もしくはcDNA全体であり得る。ドナー鋳型は、一本鎖または二本鎖のいずれかのポリヌクレオチドであり得る。ドナー鋳型は、最大5KBであり得る。ドナー鋳型は、最大4KBであり得る。ドナー鋳型は、最大3KBであり得る。ドナー鋳型は、最大2KBであり得る。ドナー鋳型は、最大1KBであり得る。ドナー鋳型は、AAVによって送達され得る。相同なドナー鋳型は、標的核酸切断部位を挟む配列に相同的であり得る配列を含み得る。例えば、ドナー鋳型は、3q22.1領域に対する相同性アームを有し得る。ドナー鋳型また、病理学的バリアントP23Hに対する相同性アームを有し得る。姉妹染色分体は、細胞により、修復鋳型として使用され得る。しかしながら、ゲノム編集の目的では、修復鋳型は、プラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルス核酸などの外因性核酸として供給することができる。さらなるまたは変更された核酸配列もまた、標的ローカスへと組み込まれるように、外因性ドナー鋳型とともに、さらなる核酸配列(導入遺伝子など)または修飾(単一もしくは複数の塩基変化もしくは欠失など)を、相同性のフランキング領域の間に導入することができる。MMEJは、切断部位において、小規模の欠失および挿入が生じ得るという点で、NHEJと同様な遺伝的結果をもたらし得る。MMEJは、切断部位を挟む少数の塩基対の相同配列を利用して、好ましい末端結合によるDNA修復結果を駆動することができる。一部の事例では、ヌクレアーゼ標的領域における潜在的なマイクロホモロジーについての解析に基づき、可能性がある修復結果を予測することが可能であり得る。
【0196】
したがって、一部の場合には、相同組換えを使用して、外因性ポリヌクレオチド配列を、標的核酸切断部位へと挿入することができる。本明細書では、外因性ポリヌクレオチド配列を、ドナーポリヌクレオチド(またはドナーもしくはドナー配列もしくはポリヌクレオチドドナー鋳型)と称する。ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部分、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部を、標的核酸切断部位へと挿入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位において、天然には存在しない配列であり得る。
【0197】
NHEJおよび/またはHDRによる標的DNAの修飾は、例えば、変異、欠失、変更、組込み、遺伝子の修正、遺伝子の置き換え、遺伝子のタグ付け、導入遺伝子の挿入、ヌクレオチドの欠失、遺伝子の破壊、転座、および/または遺伝子の変異をもたらし得る。ゲノムDNAを欠失させ、非天然核酸を、ゲノムDNAへと組み込むプロセスは、ゲノム編集の例である。
【0198】
CRISPRエンドヌクレアーゼ系
【0199】
CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)ゲノムローカスは、多くの原核生物(例えば、細菌および古細菌)のゲノム内で見出すことができる。原核生物では、CRISPRローカスは、原核生物を、ウイルスおよびファージなど、外来の侵入者に対して防御する一助となる、ある種の免疫系として機能する産物をコードする。CRISPRローカスの機能の3つの段階:新たな配列の、CRISPRローカスへの組込み、CRISPR RNA(crRNA)の発現、および外来の侵入者核酸のサイレンシングが存在する。5種類のCRISPR系(例えば、I型、II型、III型、U型、およびV型)が同定されている。
【0200】
CRISPRローカスは、「リピート」と称する、いくつかの短い反復配列を含む。発現すると、リピートは、二次構造(例えば、ヘアピン)を形成する場合もあり、かつ/または非構造化一本鎖配列を構成する場合もある。リピートは通例、クラスターで生じ、種間で顕著に異なることが多い。リピートは、「スペーサー」と称する固有の介在配列で規則的に隔てられる結果として、リピート-スペーサー-リピートローカスアーキテクチャーをもたらす。スペーサーは、既知の外来インベーダー配列と同一であるか、またはこれと高度な相同性を有する。スペーサー-リピート単位は、スペーサー-リピート単位の成熟形態へとプロセシングされる、crisprRNA(crRNA)をコードする。crRNAは、標的核酸のターゲティングに関与する、「シード」またはスペーサー配列(原核生物における天然に存在する形態では、スペーサー配列は、外来のインベーダー核酸をターゲティングする)を含む。スペーサー配列は、crRNAの5’または3’末端に位置する。
【0201】
CRISPRローカスはまた、CRISPR関連(Cas)遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列も含む。Cas遺伝子は、原核生物におけるcrRNA機能の生合成および干渉段階に関与するエンドヌクレアーゼをコードする。一部のCas遺伝子は、相同な二次および/または三次構造を含む。
【0202】
II型CRISPR系
【0203】
天然のII型CRISPR系におけるcrRNAの生合成は、tracrRNA(trans-activating CRISPR RNA)を必要とする。tracrRNAは、内因性RNアーゼIIIにより修飾され、次いで、pre-crRNAアレイ内のcrRNAリピートとハイブリダイズすることができる。内因性RNアーゼIIIを動員して、pre-crRNAを切断することができる。切断されたcrRNAを、エクソリボヌクレアーゼによるトリミング(例えば、5’トリミング)にかけて、成熟crRNA形態をもたらすことができる。tracrRNAを、さらに、crRNAとハイブリダイズさせたままにすることができ、tracrRNAおよびcrRNAは、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)と会合する。crRNA-tracrRNA-Cas9複合体のcrRNAは、複合体を、crRNAがハイブリダイズしうる標的核酸へとガイドしうる。crRNAの、標的核酸とのハイブリダイゼーションは、Cas9を、ターゲティングされた核酸切断のために活性化させうる。II型CRISPR系内の標的核酸を、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称する。天然では、PAMは、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)の、標的核酸への結合を容易とするのに不可欠である。II型系(また、NmeniまたはCASS4とも称する)は、II-A型(CASS4)およびII-B(CASS4a)へとさらに細分することができる。Jinekら、Science、337巻(6096号):816~821頁(2012年)は、CRISPR/Cas9系が、RNAによりプログラム可能なゲノム編集に有用であることを示し、国際特許出願公開第WO2013/176772号は、部位特異的遺伝子編集のための、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ系の多数の例および適用を提示する。
【0204】
V型CRISPR系
【0205】
V型CRISPR系は、II型系との、いくつかの重要な差違を有する。例えば、Cpf1は、II型系とは対照的に、tracrRNAを欠く、単一のRNAによりガイドされるエンドヌクレアーゼである。実際、Cpf1関連CRISPRアレイは、tracrRNAをさらにトランス活性化させる要件なしに、成熟crRNAへとプロセシングされうる。V型CRISPRアレイは、各成熟crRNAが、19ヌクレオチドのダイレクトリピートで始まり、23~25ヌクレオチドのスペーサー配列を後続させる、42~44ヌクレオチドの長さの短い成熟crRNAへとプロセシングされうる。これに対し、II型系における成熟crRNAは、20~24ヌクレオチドのスペーサー配列で始まり、約22ヌクレオチドのダイレクトリピートを後続させうる。また、Cpf1は、Cpf1-crRNA複合体が、短いTリッチPAMを先行させる標的DNAを効率的に切断するように、Tリッチプロトスペーサー隣接モチーフを利用するが、これは、II型系についての標的DNAが、GリッチPAMを後続させるのと対照的である。したがって、V型系が、PAMから遠い点で切断するのに対し、II型系は、PAMと隣接する点で切断する。加えて、II型系とは対照的に、Cpf1は、4または5ヌクレオチドの5’突出を伴う、ずれた位置でのDNAの二本鎖切断を介してDNAを切断する。II型系は、平滑末端型二本鎖切断を介して切断する。II型系と同様に、Cpf1は、予測されるRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有するが、第2のHNHエンドヌクレアーゼドメインを欠き、これは、II型系と対照的である。
【0206】
Cas遺伝子/ポリペプチドおよびプロトスペーサー隣接モチーフ
【0207】
例示的なCRISPR/Casポリペプチドとしては、Fonfara et al., Nucleic Acids Research, 42: 2577-2590 (2014)の図1におけるCas9ポリペプチドが挙げられる。CRISPR/Cas遺伝子命名システムは、Cas遺伝子が発見されて以来、広範にわたり書き直されている。Fonfara(上記)の図5は、様々な種に由来するCas9ポリペプチドのPAM配列を提示している。
【0208】
部位特異的ポリペプチド
【0209】
部位特異的ポリペプチドは、DNAを切断するため、および/または部位特異的変異誘発を誘導するために、ゲノム編集において使用されるヌクレアーゼである。部位特異的ヌクレアーゼは、細胞または患者へと、1つもしくは複数のポリペプチドとして、またはポリペプチドをコードする1つもしくは複数のmRNAとしてのいずれかで、投与され得る。配列番号1~612に列挙されているかまたは本明細書に開示されている酵素またはオルソログのうちのいずれかを、本明細書の方法において利用することができる。
【0210】
CRISPR/Cas系またはCRISPR/Cpf1系の文脈では、部位特異的ポリペプチドは、ガイドRNAに結合することが可能であり、ガイドRNAは、そのポリペプチドが対象とする標的DNA内の部位を指定する。本明細書に開示されるCRISPR/Cas系またはCRISPR/Cpf1系では、部位特異的ポリペプチドは、DNAエンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼであり得る。
【0211】
部位特異的ポリペプチドは、複数の核酸切断(すなわち、ヌクレアーゼ)ドメインを含みうる。2つまたはこれを超える核酸切断ドメインは、リンカーを介して、併せて連結することができる。例えば、リンカーは、可撓性リンカーを含みうる。リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、またはこれを超えるアミノ酸の長さを含みうる。
【0212】
天然に存在する野生型のCas9酵素は、HNHヌクレアーゼドメインおよびRuvCドメインという2つのヌクレアーゼドメインを含む。本明細書において、「Cas9」とは、天然に存在するCas9および組換えCas9の両方を指す。本明細書で想定されるCas9酵素は、HNHもしくはHNH様ヌクレアーゼドメイン、および/またはRuvCもしくはRuvC様ヌクレアーゼドメインを含み得る。
【0213】
HNHまたはHNH様ドメインは、McrA様フォールドを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、2つのアンチパラレルのβ鎖およびα螺旋を含む。HNHまたはHNH様ドメインは、金属結合性部位(例えば、二価カチオン結合性部位)を含む。HNHまたはHNH様ドメインは、標的核酸(例えば、crRNAによりターゲティングされる鎖の相補鎖)の1つの鎖を切断しうる。
【0214】
RuvCまたはRuvC様ドメインは、RNアーゼHまたはRNアーゼH様フォールドを含む。RuvC/RNアーゼHドメインは、RNAおよびDNAの両方に対する作用を含む核酸ベースの機能の多様なセットに関与する。RNアーゼHドメインは、複数のα螺旋により取り囲まれた、5つのβ鎖を含む。RuvC/RNアーゼHまたはRuvC/RNアーゼH様ドメインは、金属結合性部位(例えば、二価カチオン結合性部位)を含む。RuvC/RNアーゼHまたはRuvC/RNアーゼH様ドメインは、標的核酸(例えば、二本鎖標的DNAの非相補鎖)の1つの鎖を切断しうる。
【0215】
部位特異的ポリペプチドにより、二本鎖切断または一本鎖切断を、核酸内、例えば、ゲノムDNA内に導入することができる。二本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路[例えば、HDRまたはNHEJもしくはANHEJもしくはMMEJ]を刺激し得る。NHEJは、相同な鋳型を必要とせずに、切断された標的核酸を修復し得る。これは、場合によって、標的核酸内の切断部位において、小規模の欠失または挿入(インデル)をし得、遺伝子発現の破壊または変更をもたらし得る。HDRは、相同な修復鋳型またはドナーが利用可能である場合に生じ得る。相同なドナー鋳型は、標的核酸切断部位を挟む配列と相同である配列を含み得る。姉妹染色分体は、細胞により、修復鋳型として使用され得る。しかしながら、ゲノム編集の目的では、修復鋳型は、プラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルス核酸などの外因性核酸として供給することができる。さらなるまたは変更された核酸配列もまた、標的ローカスへと組み込まれるように、外因性ドナー鋳型とともに、さらなる核酸配列(導入遺伝子など)または修飾(単一もしくは複数の塩基変化もしくは欠失など)を、相同性のフランキング領域の間に導入することができる。MMEJは、切断部位において、小規模の欠失および挿入が生じ得るという点で、NHEJと同様な遺伝的結果をもたらし得る。MMEJは、切断部位を挟む少数の塩基対の相同配列を利用して、好ましい末端結合によるDNA修復結果を駆動することができる。一部の事例では、ヌクレアーゼ標的領域における潜在的なマイクロホモロジーについての解析に基づき、可能性がある修復結果を予測することが可能であり得る。
【0216】
したがって、場合によって、相同組換えを使用して、外因性ポリヌクレオチド配列を、標的核酸切断部位へと挿入することができる。本明細書では、外因性ポリヌクレオチド配列を、「ドナーポリヌクレオチド」(またはドナーもしくはドナー配列)と称する。ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部分、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部を、標的核酸切断部位へと挿入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位において、天然には存在しない配列でありうる。
【0217】
部位特異的ポリペプチドは、例示的な、野生型の部位特異的ポリペプチド[例えば、S.pyogenesに由来するCas9;US2014/0068797における配列番号8;またはSapranauskasら、Nucleic Acids Res、39巻(21号):9275~9282頁(2011年)]、および多様な他の部位特異的ポリペプチドに対する、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含みうる。部位特異的ポリペプチドは、10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含みうる。部位特異的ポリペプチドは、10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、多くて70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、多くて70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10連続アミノ酸にわたり、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)に対する、多くて70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。
【0218】
部位特異的ポリペプチドは、例示的な野生型の部位特異的ポリペプチドの修飾形態を含みうる。例示的な野生型の部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、部位特異的ポリペプチドの核酸切断活性を低減する突然変異を含みうる。例示的な野生型の部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、例示的な野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)の核酸切断活性のうちの、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満を有しうる。部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、実質的な核酸切断活性を有さない場合がある。部位特異的ポリペプチドが、実質的な核酸切断活性を有さない修飾形態である場合、本明細書では、「酵素的に不活性」と称する。
【0219】
部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、それが、標的核酸上のSSBを誘導し得る(例えば、二本鎖標的核酸の糖-リン酸骨格のうちの1つだけを切断することにより)ような、変異を含み得る。変異は、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9、前出)の複数の核酸切断ドメインのうちの1つまたは複数における核酸切断活性のうちの、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満をもたらし得る。変異は、標的核酸の相補鎖を切断する能力は保持するが、標的核酸の非相補鎖を切断するその能力は低減する、複数の核酸切断ドメインのうちの1つまたは複数をもたらし得る。変異は、標的核酸の非相補鎖を切断する能力は保持するが、標的核酸の相補鎖を切断するその能力は低減する、複数の核酸切断ドメインのうちの1つまたは複数をもたらし得る。例えば、例示的な野生型S.pyogenes Cas9ポリペプチド内の残基、例えば、Asp10、His840、Asn854、およびAsn856を変異させて、複数の核酸切断ドメイン(例えば、ヌクレアーゼドメイン)のうちの1つまたは複数を不活化する。変異させるべき残基は、例示的な野生型S.pyogenes Cas9ポリペプチド内の残基Asp10、His840、Asn854、およびAsn856(例えば、配列および/または構造アライメントにより決定される)に対応し得る。変異の非限定的な例としては、D10A、H840A、N854A、またはN856Aが挙げられる。アラニン置換以外の変異が、好適であり得る。
【0220】
D10A突然変異を、H840A、N854A、またはN856A突然変異のうちの1または複数と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを作製することができる。H840A突然変異を、D10A、N854A、またはN856A突然変異のうちの1または複数と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを作製することができる。N854A突然変異を、H840A、D10A、またはN856A突然変異のうちの1または複数と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを作製することができる。N856A突然変異を、H840A、N854A、またはD10A突然変異のうちの1または複数と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを作製することができる。1つの実質的に不活性なヌクレアーゼドメインを含む部位特異的ポリペプチドを、「ニッカーゼ」と称する。
【0221】
RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9のニッカーゼ変異体を使用して、CRISPRにより媒介されるゲノム編集の特異性を増大させることができる。野生型のCas9は、標的配列(内因性のゲノムローカスなど)内の、指定された約20ヌクレオチドの配列とハイブリダイズするようにデザインされた、単一のガイドRNAによりガイドされることが典型的である。しかし、ガイドRNAと標的ローカスとのいくつかのミスマッチが許容される可能性があり、標的部位内で要求される相同性の長さを、例えば、たった13ntの相同性まで効果的に低減し、これにより、標的ゲノム内の他の場所で、CRISPR/Cas9複合体による、結合および二本鎖核酸切断(オフ標的切断としてもまた公知である)の潜在的可能性の上昇をもたらす。Cas9のニッカーゼ変異体は各々、1つの鎖だけを切断するため、二本鎖切断を創出するためには、1対のニッカーゼが、近接して、かつ、標的核酸の逆鎖上で結合し、これにより、二本鎖切断の同等物である、1対のニックを創出することが必要である。これは、2つの別個のガイドRNA(各ニッカーゼにつき1つずつ)が、近接して、かつ、標的核酸の逆鎖上で結合しなければならないことを要求する。この要件は本質的に、二本鎖切断が生じるために必要とされる、最小の相同性の長さを二倍にし、これにより、2つのガイドRNA部位(存在する場合)が、二本鎖切断の形成を可能とするのに十分な程度に、互いと近接する可能性が低い場合に、二本鎖切断イベントが、ゲノム内の別の場所で生じる可能性を低減する。当技術分野で記載される通り、ニッカーゼはまた、HDRを、NHEJと対比して促進するのにも使用することができる。HDRを使用して、所望の変化を効果的に媒介する特異的ドナー配列の使用を介して、選択された変化を、ゲノム内の標的部位へと導入することができる。
【0222】
想定される突然変異は、置換、付加、および欠失、またはこれらの任意の組合せを含みうる。突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、アラニンへと転換する。突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、別のアミノ酸(例えば、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、またはアルギニン)へと転換する。突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、非天然アミノ酸(例えば、セレノメチオニン)へと転換する。突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、アミノ酸模倣体(例えば、リン酸化模倣体)へと転換する。突然変異は、保存的突然変異でありうる。例えば、突然変異は、突然変異させるアミノ酸を、サイズ、形状、電荷、極性、コンフォメーションが相似するアミノ酸、および/または突然変異させるアミノ酸のロタマー(例えば、システイン/セリン突然変異、リシン/アスパラギン突然変異、ヒスチジン/フェニルアラニン突然変異)へと転換する。突然変異は、リーディングフレームのシフトおよび/または早期終止コドンの創出を引き起こしうる。突然変異は、遺伝子の調節的領域、または1もしくは複数の遺伝子の発現に影響を及ぼすローカスへの変化を引き起こしうる。
【0223】
部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異させた、酵素的に不活性の、および/または条件的に酵素的に不活性の部位特異的ポリペプチド)は、核酸をターゲティングしうる。部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異させた、酵素的に不活性の、および/または条件的に酵素的に不活性のエンドリボヌクレアーゼ)は、DNAをターゲティングしうる。部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異させた、酵素的に不活性の、および/または条件的に酵素的に不活性のエンドリボヌクレアーゼ)は、RNAをターゲティングしうる。
【0224】
部位特異的ポリペプチドは、1または複数の非天然配列(例えば、部位特異的ポリペプチドは、融合タンパク質である)を含みうる。
【0225】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、核酸結合性ドメイン、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)に対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含みうる。
【0226】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)に対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含みうる。
【0227】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、および2つの核酸切断ドメインに対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含むことが可能であり、この場合、核酸切断ドメインの一方または両方は、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9に由来するヌクレアーゼドメインに対する、少なくとも50%のアミノ酸同一性を含む。
【0228】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)、および部位特異的ポリペプチドを、非天然配列へと連結する、非天然配列(例えば、核局在化シグナル)またはリンカーに対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含みうる。
【0229】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)に対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含むことが可能であり、この場合、部位特異的ポリペプチドは、核酸切断ドメインの一方または両方における突然変異であって、ヌクレアーゼドメインの切断活性を、少なくとも50%低減する突然変異を含む。
【0230】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)に由来するCas9、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)に対して、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列を含むことが可能であり、この場合、ヌクレアーゼドメインのうちの1つは、アスパラギン酸10の突然変異を含み、かつ/またはヌクレアーゼドメインのうちの1つは、ヒスチジン840の突然変異を含むことが可能であり、突然変異は、ヌクレアーゼドメインの切断活性を、少なくとも50%低減する。
【0231】
1または複数の部位特異的ポリペプチド、例えば、DNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム内の特異的ローカスにおいて、1つの二本鎖切断を併せて生じさせる2つのニッカーゼ、またはゲノム内の特異的ローカスにおいて、2つの二本鎖切断を併せて生じさせるかまたは引き起こす4つのニッカーゼを含みうる。代替的に、1つの部位特異的ポリペプチド、例えば、DNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム内の特異的ローカスにおいて、1つの二本鎖切断を生じさせうるかまたは引き起こしうる。
【0232】
他の細菌株に由来するCas9オルソログの非限定的な例としては、Acaryochloris marina MBIC11017;Acetohalobium arabaticum DSM 5501;Acidithiobacillus caldus;Acidithiobacillus ferrooxidans ATCC 23270;Alicyclobacillus acidocaldarius LAA1;Alicyclobacillus acidocaldarius subsp.acidocaldarius DSM 446;Allochromatium vinosum DSM 180;Ammonifex degensii KC4;Anabaena variabilis ATCC 29413;Arthrospira maxima CS-328;Arthrospira platensis str.Paraca;Arthrospira sp.PCC 8005;Bacillus pseudomycoides DSM 12442;Bacillus selenitireducens MLS10;Burkholderiales bacterium 1_1_47;Caldicelulosiruptor becscii DSM 6725;Candidatus Desulforudis audaxviator MP104C;Caldicellulosiruptor hydrothermalis_108;Clostridium phage c-st;Clostridium botulinum A3 str.Loch Maree;Clostridium botulinum Ba4 str.657;Clostridium difficile QCD-63q42;Crocosphaera watsonii WH 8501;Cyanothece sp.ATCC 51142;Cyanothece sp.CCY0110;Cyanothece sp.PCC 7424;Cyanothece sp.PCC 7822;Exiguobacterium sibiricum 255-15;Finegoldia magna ATCC 29328;Ktedonobacter racemifer DSM 44963;Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus PB2003/044-T3-4;Lactobacillus salivarius ATCC 11741;Listeria innocua;Lyngbya sp.PCC 8106;Marinobacter sp.ELB17;Methanohalobium evestigatum Z-7303;Microcystis phage Ma-LMM01;Microcystis aeruginosa NIES-843;Microscilla marina ATCC 23134;Microcoleus chthonoplastes PCC 7420;Neisseria meningitidis;Nitrosococcus halophilus Nc4;Nocardiopsis dassonvillei subsp.dassonvillei DSM 43111;Nodularia spumigena CCY9414;Nostoc sp.PCC 7120;Oscillatoria sp.PCC 6506;Pelotomaculum_thermopropionicum_SI;Petrotoga mobilis SJ95;Polaromonas naphthalenivorans CJ2;Polaromonas sp.JS666;Pseudoalteromonas haloplanktis TAC125;Streptomyces pristinaespiralis ATCC 25486;Streptomyces pristinaespiralis ATCC 25486;Streptococcus thermophilus;Streptomyces viridochromogenes DSM 40736;Streptosporangium roseum DSM 43021;Synechococcus sp.PCC 7335;およびThermosipho africanus TCF52Bにおいて同定されるCasタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない(Chylinskiら、RNA Biol.、2013年、10巻(5号):726~737頁)。
【0233】
Cas9オルソログに加えて、他のCas9バリアント、例えば、不活性dCas9および異なる機能を有するエフェクタードメインの融合タンパク質は、遺伝子モジュレーションのプラットフォームとしての機能を果たし得る。前述の酵素のうちのいずれも、本開示において有用であり得る。
【0234】
本開示において利用され得るエンドヌクレアーゼのさらなる例を、配列番号1~612に提示する。これらのタンパク質は、使用前に修飾されてもよく、または核酸配列、例えば、DNA、RNA、もしくはmRNAにおいて、またはベクター構築物、例えば、本明細書において教示されるプラスミドもしくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター内にコードされてもよい。さらに、これらは、コドン最適化されていてもよい。
【0235】
ゲノムターゲティング核酸
【0236】
本開示は、会合したポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の活性を、標的核酸内の特異的標的配列へと誘導できるゲノムターゲティング核酸を提示する。ゲノムターゲティング核酸は、RNAであり得る。本明細書では、ゲノムターゲティングRNAを、「ガイドRNA」または「gRNA」と称する。ガイドRNAは、少なくとも目的の標的核酸配列とハイブリダイズするスペーサー配列と、CRISPRリピート配列とを含み得る。II型系では、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAも含む。II型gRNAでは、CRISPRリピート配列と、tracrRNA配列とは、互いとハイブリダイズして、二重鎖を形成する。V型gRNAでは、crRNAが二重鎖を形成する。いずれの系でも、ガイドRNAと、部位特異的ポリペプチドとが、複合体を形成するように、二重鎖は、部位特異的ポリペプチドに結合し得る。ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドとのその会合により、複合体に、標的特異性をもたらし得る。したがって、ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を誘導できる。
【0237】
例示的なガイドRNAは、配列表の配列番号5282~5291におけるスペーサー配列を含み、これらは、それらの標的配列のゲノム位置(図2Aにおける配列番号5272~5281を参照されたい)および関連するCas9切断部位とともに示されており、ここで、ゲノム位置は、GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリに基づく。
【0238】
それぞれのガイドRNAは、そのゲノムの標的配列と相補的なスペーサー配列を含むようにデザインすることができる。例えば、配列表の配列番号5282~5291におけるスペーサー配列のそれぞれは、単一のRNAキメラまたはcrRNA(対応するtracrRNAとともに)へ入れることができる。Jinek et al., Science, 337, 816-821 (2012)およびDeltcheva et al., Nature, 471, 602-607 (2011)を参照されたい。
【0239】
ゲノムターゲティング核酸は、二重分子ガイドRNAであり得る。ゲノムターゲティング核酸は、単一分子ガイドRNAであり得る。二重分子ガイドRNAまたは単一分子ガイドRNAは、修飾されていてもよい。
【0240】
二重分子ガイドRNAは、RNAの2つの鎖を含みうる。第1の鎖は、5’~3’方向に、任意選択のスペーサー伸長配列、スペーサー配列、および最小CRISPRリピート配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPRリピート配列と相補的)、3’tracrRNA配列、および任意選択のtracrRNA伸長配列を含みうる。
【0241】
II型系内の単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’~3’方向に、任意選択のスペーサー伸長配列、スペーサー配列、最小CRISPRリピート配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列、および任意選択のtracrRNA伸長配列を含みうる。任意選択のtracrRNA伸長は、ガイドRNAの、さらなる機能性(例えば、安定性)に寄与するエレメントを含みうる。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPRリピートと、最小tracrRNA配列とを連結して、ヘアピン構造を形成しうる。任意選択のtracrRNA伸長は、1または複数のヘアピンを含みうる。
【0242】
sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、17~30ヌクレオチドで長さが可変のスペーサー配列を含み得る(表3)。他の例では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、17~24ヌクレオチドで長さが可変のスペーサー配列を含み得る。
【0243】
sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、20ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、20ヌクレオチド未満のスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、19ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、18ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、17ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、20ヌクレオチドを上回るスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、21ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、22ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、23ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、24ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、25ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、26ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、27ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、28ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、29ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、30ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。
【0244】
sgRNAは、表3の配列番号5268、5328、5331、5334、または5337など、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含まなくてもよい。sgRNAは、表3の配列番号5267、5269、5327、5329、5330、5332、5333、5335、5336、または5338など、sgRNA配列の3’末端に、1つまたは複数のウラシルを含んでもよい。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に、1つのウラシル(U)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に、2つのウラシル(UU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に、3つのウラシル(UUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に、4つのウラシル(UUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に、5つのウラシル(UUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に、6つのウラシル(UUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に、7つのウラシル(UUUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に、8つのウラシル(UUUUUUUU)を含み得る。
【0245】
sgRNAは、修飾されていなくてもよく、または修飾されていてもよい。例えば、修飾sgRNAは、1つまたは複数の2’-O-メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。
【表3-1】
【表3-2】
【0246】
V型系内の単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’~3’方向に、最小CRISPRリピート配列およびスペーサー配列を含みうる。
【0247】
例示を目的として述べると、CRISPR/Cas/Cpf1系において使用されるガイドRNA、または他のより低分子のRNAは、下記で例示され、当技術分野で記載される通り、化学的手段によりたやすく合成することができる。化学合成手順が、持続的に拡大しつつある一方で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;PAGEなど、ゲルの使用を回避する)などの手順による、このようなRNAの精製は、ポリヌクレオチド長が、100ほどのヌクレオチドを優に超えて増大するにつれて、難しくなる傾向がある。より長いRNAを作出するために使用される1つの手法は、併せてライゲーションされる、2つまたはこれを超える分子を作製することである。Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするRNAなど、はるかに長いRNAは、酵素により、よりたやすく作出される。多様な種類のRNA修飾、例えば、当技術分野で記載される、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性もしくは程度を低減し、かつ/または他の属性を増強する修飾は、RNAの化学合成および/または酵素による作出中に導入することもでき、これらの後で導入することもできる。
【0248】
スペーサー伸長配列
【0249】
ゲノムターゲティング核酸についての一部の例では、スペーサー伸長配列は、活性を修飾することも可能であり、安定性をもたらすことも可能であり、かつ/またはゲノムターゲティング核酸を修飾するための位置をもたらすこともできる。スペーサー伸長配列は、オンまたはオフ標的活性または特異性を修飾しうる。一部の例では、スペーサー伸長配列を提供することができる。スペーサー伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、もしくは7000、またはこれを超えるヌクレオチドを超える長さを有しうる。スペーサー伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、またはこれを超えるヌクレオチド未満の長さを有しうる。スペーサー伸長配列は、10ヌクレオチド未満の長さでありうる。スペーサー伸長配列は、10~30ヌクレオチドの間の長さでありうる。スペーサー伸長配列は、30~70ヌクレオチドの間の長さでありうる。
【0250】
スペーサー伸長配列は、別の部分(例えば、安定性制御配列、エンドリボヌクレアーゼ結合配列、リボザイム)を含みうる。この部分は、核酸ターゲティング核酸の安定性を低下させる場合もあり、増大させる場合もある。この部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)でありうる。この部分は、真核細胞内で機能しうる。この部分は、原核細胞内で機能しうる。この部分は、真核細胞内および原核細胞内の両方で機能しうる。適切な部分の非限定的な例は、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G))、リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節ならびに/またはタンパク質およびタンパク質複合体のアクセシビリティの調節を可能とする)、dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを、細胞内の場所(例えば、核、ミトコンドリア、クロロプラストなど)へとターゲティングする配列、トラッキングをもたらす修飾もしくは配列(例えば、蛍光分子への直接のコンジュゲーション、蛍光の検出を容易とする部分へのコンジュゲーション、蛍光の検出を可能とする配列など)、および/またはタンパク質の結合部位をもたらす修飾もしくは配列(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに対して作用するタンパク質)を含む。
【0251】
スペーサー配列
【0252】
スペーサー配列は、目的の標的核酸内の配列とハイブリダイズする。ゲノムターゲティング核酸のスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して、配列特異的に、標的核酸と相互作用しうる。スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の配列に応じて変動しうる。
【0253】
本明細書のCRISPR/Cas系では、スペーサー配列は、系内で使用されるCas9酵素のPAMの5’側に位置する標的核酸とハイブリダイズするようにデザインすることができる。スペーサーは、標的配列に完全にマッチする場合もあり、ミスマッチを有する場合もある。各Cas9酵素は、それが標的DNA内で認識する、特定のPAM配列を有する。例えば、S.pyogenesは、標的核酸内で、配列5’-NRG-3’[配列中、Rは、AまたはGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列により標的とされる標的核酸配列のすぐ3’側にある]を含むPAMを認識する。
【0254】
標的核酸配列は、20ヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、20未満のヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、20を上回るヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、またはこれを上回るヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、多くとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、またはこれを上回るヌクレオチドを含み得る。標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドのすぐ5’側の20塩基を含み得る。例えば、5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNRG-3’(配列番号5270)を含む配列では、標的核酸は、複数のNに対応する配列(配列中、Nは、任意のヌクレオチドであり、下線を付したNRG配列は、S.pyogenesのPAMである)を含み得る。
【0255】
標的核酸とハイブリダイズするスペーサー配列は、少なくとも約6ヌクレオチド(nt)の長さを有しうる。スペーサー配列は、少なくとも約6nt、少なくとも約10nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt、または少なくとも約40nt、約6nt~約80nt、約6nt~約50nt、約6nt~約45nt、約6nt~約40nt、約6nt~約35nt、約6nt~約30nt、約6nt~約25nt、約6nt~約20nt、約6nt~約19nt、約10nt~約50nt、約10nt~約45nt、約10nt~約40nt、約10nt~約35nt、約10nt~約30nt、約10nt~約25nt、約10nt~約20nt、約10nt~約19nt、約19nt~約25nt、約19nt~約30nt、約19nt~約35nt、約19nt~約40nt、約19nt~約45nt、約19nt~約50nt、約19nt~約60nt、約20nt~約25nt、約20nt~約30nt、約20nt~約35nt、約20nt~約40nt、約20nt~約45nt、約20nt~約50nt、または約20nt~約60ntでありうる。一部の例では、スペーサー配列は、20ヌクレオチドを含みうる。一部の例では、スペーサーは、19ヌクレオチドを含み得る。一部の例では、スペーサーは、18ヌクレオチドを含み得る。一部の例では、スペーサーは、22ヌクレオチドを含み得る。
【0256】
一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との相補性パーセントは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%である。一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との相補性パーセントは、多くて約30%、多くて約40%、多くて約50%、多くて約60%、多くて約65%、多くて約70%、多くて約75%、多くて約80%、多くて約85%、多くて約90%、多くて約95%、多くて約97%、多くて約98%、多くて約99%、または100%である。一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、標的核酸の相補鎖の標的配列のうちの、最も5’側の6つの連続ヌクレオチドにわたり、100%である。スペーサー配列と標的核酸との相補性パーセントは、約20連続ヌクレオチドにわたり、少なくとも60%であり得る。スペーサー配列および標的核酸の長さは、1~6ヌクレオチド異なる場合があるが、これは、1つまたは複数のバルジと考えることができる。
【0257】
スペーサー配列は、コンピュータプログラムを使用して、デザインすることもでき、選び出すこともできる。コンピュータプログラムは、予測溶融温度、二次構造形成、予測アニーリング温度、配列同一性、ゲノムコンテキスト、クロマチンアクセシビリティ、%GC、ゲノム発生頻度(例えば、同一であるかまたは類似するが、ミスマッチ、挿入、または欠失の結果として、1または複数のスポットで変動する配列)、メチル化状態、SNPの存在などの変数を使用しうる。
【0258】
最小CRISPRリピート配列
【0259】
最小CRISPRリピート配列は、基準CRISPRリピート配列(例えば、S.pyogenesに由来するcrRNA)に対する、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を伴う配列であり得る。
【0260】
最小CRISPRリピート配列は、細胞内の最小tracrRNA配列とハイブリダイズすることができるヌクレオチドを含み得る。最小CRISPRリピート配列と最小tracrRNA配列とは、二重鎖、すなわち、塩基対合した二本鎖構造を形成し得る。一体となって、最小CRISPRリピート配列および最小tracrRNA配列は、部位特異的ポリペプチドに結合し得る。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列とハイブリダイズし得る。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列に対する、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の相補性を含み得る。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列に対する、多くて約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の相補性を含み得る。
【0261】
最小CRISPRリピート配列は、約7ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、最小CRISPRリピート配列の長さは、約7ヌクレオチド(nt)~約50nt、約7nt~約40nt、約7nt~約30nt、約7nt~約25nt、約7nt~約20nt、約7nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntである。一部の例では、最小CRISPRリピート配列は、およそ9ヌクレオチドの長さであり得る。最小CRISPRリピート配列は、およそ12ヌクレオチドの長さであり得る。
【0262】
最小CRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準最小CRISPRリピート配列(例えば、S.pyogenesに由来する野生型crRNA)に対して、少なくとも約60%同一でありうる。例えば、最小CRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準最小CRISPRリピート配列に対して、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、または100%同一でありうる。
【0263】
最小tracrRNA配列
【0264】
最小tracrRNA配列は、基準tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesに由来する野生型tracrRNA)に対する、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を伴う配列でありうる。
【0265】
最小tracrRNA配列は、細胞内の最小CRISPRリピート配列とハイブリダイズするヌクレオチドを含みうる。最小tracrRNA配列と最小CRISPRリピート配列とは、二重鎖、すなわち、塩基対合した二本鎖構造を形成する。一体となって、最小tracrRNA配列および最小CRISPRリピートは、部位特異的ポリペプチドに結合する。最小tracrRNA配列の少なくとも一部は、最小CRISPRリピート配列とハイブリダイズしうる。最小tracrRNA配列は、最小CRISPRリピート配列と、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補的でありうる。
【0266】
最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有しうる。例えば、最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド(nt)~約50nt、約7nt~約40nt、約7nt~約30nt、約7nt~約25nt、約7nt~約20nt、約7nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25nt長でありうる。最小tracrRNA配列は、約9ヌクレオチドの長さでありうる。最小tracrRNA配列は、約12ヌクレオチドでありうる。最小tracrRNAは、Jinekら、前出において記載されている、tracrRNAのnt23~48からなりうる。
【0267】
最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準最小tracrRNA(例えば、S.pyogenesに由来する野生型、tracrRNA)配列に対して、少なくとも約60%同一でありうる。例えば、最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準最小tracrRNA配列に対して、少なくとも約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一でありうる。
【0268】
最小CRISPR RNAと、最小tracrRNAとの二重鎖は、二重螺旋を含みうる。最小CRISPR RNAと、最小tracrRNAとの二重鎖は、少なくとも約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。最小CRISPR RNAと、最小tracrRNAとの二重鎖は、最大で約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。
【0269】
二重鎖は、ミスマッチを含みうる(すなわち、二重鎖の2つの鎖は、100%相補的ではない)。二重鎖は、少なくとも約1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはこれを超えるミスマッチを含みうる。二重鎖は、最大で約1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはこれを超えるミスマッチを含みうる。二重鎖は、2つ以下のミスマッチを含みうる。
【0270】
バルジ(bulge)
【0271】
一部の場合には、最小CRISPR RNAと、最小tracrRNAとの二重鎖内には、「バルジ」が存在し得る。バルジとは、二重鎖内のヌクレオチドの非対合領域である。バルジは、二重鎖の、部位特異的ポリペプチドへの結合に寄与し得る。バルジは、二重鎖の一方の側に、非対合の5’-XXXY-3’[配列中、Xは、任意のプリンであり、Yは、反対鎖上のヌクレオチドと、揺らぎ対を形成し得るヌクレオチドを含む]を含むことが可能であり、二重鎖の他の側に、非対合ヌクレオチド領域を含み得る。二重鎖の2つの側における非対合ヌクレオチドの数は、異なり得る。
【0272】
一例では、バルジは、バルジの最小CRISPRリピート鎖上に、非対合プリン(例えば、アデニン)を含みうる。一部の例では、バルジは、バルジの最小tracrRNA配列鎖の非対合5’-AAGY-3’[配列中、Yは、最小CRISPRリピート鎖上のヌクレオチドと、揺らぎ対合を形成しうる、ヌクレオチドを含む]を含みうる。
【0273】
二重鎖の、最小CRISPRリピート側のバルジは、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはこれを超える非対合ヌクレオチドを含みうる。二重鎖の、最小CRISPRリピート側のバルジは、最大で1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはこれを超える非対合ヌクレオチドを含みうる。二重鎖の、最小CRISPRリピート側のバルジは、1つの非対合ヌクレオチドを含みうる。
【0274】
二重鎖の、最小tracrRNA配列側のバルジは、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超える非対合ヌクレオチドを含みうる。二重鎖の、最小tracrRNA配列側のバルジは、最大で1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超える非対合ヌクレオチドを含みうる。二重鎖の、第2の側のバルジ(例えば、二重鎖の、最小tracrRNA配列側)は、4つの非対合ヌクレオチドを含みうる。
【0275】
バルジは、少なくとも1つの揺らぎ対合を含みうる。一部の例では、バルジは、最大で1つの揺らぎ対合を含みうる。バルジは、少なくとも1つのプリンヌクレオチドを含みうる。バルジは、少なくとも3つのプリンヌクレオチドを含みうる。バルジ配列は、少なくとも5つのプリンヌクレオチドを含みうる。バルジ配列は、少なくとも1つのグアニンヌクレオチドを含みうる。一部の例では、バルジ配列は、少なくとも1つのアデニンヌクレオチドを含みうる。
【0276】
ヘアピン
【0277】
多様な例では、1または複数のヘアピンは、3’tracrRNA配列内の最小tracrRNAに対して3’側に位置しうる。
【0278】
ヘアピンは、最小CRISPRリピートと最小tracrRNA配列との二重鎖内の、最後の対合ヌクレオチドの3’側の、少なくとも約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、もしくは20、またはこれを超えるヌクレオチドから始まりうる。ヘアピンは、最小CRISPRリピートと最小tracrRNA配列との二重鎖内の、最後の対合ヌクレオチドの3’側の、最大で約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超えるヌクレオチドから始まりうる。
【0279】
ヘアピンは、少なくとも約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、もしくは20、またはこれを超える連続ヌクレオチドを含みうる。ヘアピンは、最大で約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、またはこれを超える連続ヌクレオチドを含みうる。
【0280】
ヘアピンは、CCジヌクレオチド(すなわち、2つの連続シトシンヌクレオチド)を含みうる。
【0281】
ヘアピンは、二重鎖ヌクレオチド(例えば、ヘアピン内で一体にハイブリダイズしたヌクレオチド)を含みうる。例えば、ヘアピンは、3’tracrRNA配列のヘアピン二重鎖内の、GGジヌクレオチドへとハイブリダイズしたCCジヌクレオチドを含みうる。
【0282】
ヘアピンのうちの1または複数は、部位特異的ポリペプチドの、ガイドRNAと相互作用する領域と相互作用しうる。
【0283】
ある例では、2つまたはこれを超えるヘアピンが存在し、他の例では、3つまたはこれを超えるヘアピンが存在する。
【0284】
3’tracrRNA配列
【0285】
3’tracrRNA配列は、基準tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesに由来するtracrRNA)に対する、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を伴う配列を含みうる。
【0286】
3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有しうる。例えば、3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド(nt)~約50nt、約6nt~約40nt、約6nt~約30nt、約6nt~約25nt、約6nt~約20nt、約6nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntの長さを有しうる。3’tracrRNA配列は、約14ヌクレオチドの長さを有しうる。
【0287】
3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なり(stretch)にわたり、基準3’tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesに由来する野生型3’tracrRNA配列)に対して、少なくとも約60%同一でありうる。例えば、3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドの連なりにわたり、基準3’tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesに由来する野生型3’tracrRNA配列)に対して、少なくとも約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一でありうる。
【0288】
3’tracrRNA配列は、1つを超える二重鎖領域(例えば、ヘアピン領域、ハイブリダイズ領域)を含みうる。3’tracrRNA配列は、2つの二重鎖領域を含みうる。
【0289】
3’tracrRNA配列は、ステムループ構造を含みうる。3’tracrRNA内のステムループ構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。3’tracrRNA内のステムループ構造は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、またはこれを超えるヌクレオチドを含みうる。ステムループ構造は、機能的部分を含みうる。例えば、ステムループ構造は、アプタマー、リボザイム、タンパク質と相互作用するヘアピン、CRISPRアレイ、イントロン、またはエクソンを含みうる。ステムループ構造は、少なくとも約1、2、3、4、もしくは5、またはこれを超える機能的部分を含みうる。ステムループ構造は、最大で約1、2、3、4、もしくは5、またはこれを超える機能的部分を含みうる。
【0290】
3’tracrRNA配列内のヘアピンは、Pドメインを含みうる。一部の例では、Pドメインは、ヘアピン内の二本鎖領域を含みうる。
【0291】
tracrRNA伸長配列
【0292】
tracrRNAが、単一分子ガイドの文脈にある場合であれ、二重分子ガイドの文脈にある場合であれ、tracrRNA伸長配列をもたらすことができる。tracrRNA伸長配列は、約1ヌクレオチド~約400ヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、または400ヌクレオチドを超える長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、約20~約5000またはこれを超えるヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、1000ヌクレオチドを超える長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、またはこれを超えるヌクレオチド未満の長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、1000ヌクレオチド未満の長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、10ヌクレオチド未満の長さを含み得る。tracrRNA伸長配列は、10~30ヌクレオチドの長さであり得る。tracrRNA伸長配列は、30~70ヌクレオチドの長さであり得る。
【0293】
tracrRNA伸長配列は、機能的部分(例えば、安定性制御配列、リボザイム、エンドリボヌクレアーゼ結合配列)を含みうる。機能的部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)を含みうる。機能的部分は、約10ヌクレオチド(nt)~約100ヌクレオチド、約10nt~約20nt、約20nt~約30nt、約30nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt、または約90nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntの全長を有しうる。機能的部分は、真核細胞内で機能しうる。機能的部分は、原核細胞内で機能しうる。機能的部分は、真核細胞内および原核細胞内の両方で機能しうる。
【0294】
適切なtracrRNA伸長の機能的部分の非限定的な例は、3’ポリアデニル化テール、リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節ならびに/またはタンパク質およびタンパク質複合体によるアクセシビリティの調節を可能とする)、dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内の場所(例えば、核、ミトコンドリア、クロロプラストなど)へとターゲティングする配列、トラッキングをもたらす修飾もしくは配列(例えば、蛍光分子への直接のコンジュゲーション、蛍光の検出を容易とする部分へのコンジュゲーション、蛍光の検出を可能とする配列など)、および/またはタンパク質の結合性部位をもたらす修飾もしくは配列(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに対して作用するタンパク質)を含む。tracrRNA伸長配列は、プライマー結合性部位または分子インデックス(例えば、バーコード配列)を含みうる。tracrRNA伸長配列は、1または複数のアフィニティータグを含みうる。
【0295】
単一分子ガイドリンカー配列
【0296】
単一分子ガイド核酸のリンカー配列は、約3ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有しうる。Jinekら、前出では、例えば、単純な4ヌクレオチドの「テトラループ」(-GAAA-)が使用された(Science、337巻(6096号):816~821頁(2012年))。例示的なリンカーは、約3ヌクレオチド(nt)~約90nt、約3nt~約80nt、約3nt~約70nt、約3nt~約60nt、約3nt~約50nt、約3nt~約40nt、約3nt~約30nt、約3nt~約20nt、約3nt~約10ntの長さを有する。例えば、リンカーは、約3nt~約5nt、約5nt~約10nt、約10nt~約15nt、約15nt~約20nt、約20nt~約25nt、約25nt~約30nt、約30nt~約35nt、約35nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt、または約90nt~約100ntの長さを有しうる。単一分子ガイド核酸のリンカーは、4~40ヌクレオチドの間でありうる。リンカーは、少なくとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、もしくは7000、またはこれを超えるヌクレオチドでありうる。リンカーは、最大で約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、もしくは7000、またはこれを超えるヌクレオチドでありうる。
【0297】
リンカーは、様々な配列のうちのいずれも含みうるが、一部の例では、リンカーは、ガイドRNAの他の部分と相同的である広範な領域であって、ガイドの他の機能的な領域に干渉する可能性のある分子内結合を引き起こしうる領域を有する配列を含まない。Jinekら、前出では、単純な4ヌクレオチドの配列である、-GAAA-が使用された(Science、337巻(6096号):816~821頁(2012年))が、より長い配列を含む、多数の他の配列も同様に、使用することができる。
【0298】
リンカー配列は、機能的部分を含みうる。例えば、リンカー配列は、アプタマー、リボザイム、タンパク質と相互作用するヘアピン、タンパク質結合性部位、CRISPRアレイ、イントロン、またはエクソンを含む、1または複数の特色を含みうる。リンカー配列は、少なくとも約1、2、3、4、もしくは5、またはこれを超える機能的部分を含みうる。一部の例では、リンカー配列は、最大で約1、2、3、4、もしくは5、またはこれを超える機能的部分を含みうる。
【0299】
ゲノムターゲティング核酸と部位特異的ポリペプチドとの複合体
【0300】
ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9など、核酸にガイドされるヌクレアーゼ)と相互作用し、これにより、複合体を形成する。ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドを、標的核酸へと導く。
【0301】
リボヌクレオタンパク質複合体(RNP)
【0302】
部位特異的ポリペプチドおよびゲノムターゲティング核酸は、それぞれ、細胞または患者へと、別個に投与することができる。他方、部位特異的ポリペプチドは、1つもしくは複数のガイドRNA、またはtracrRNAと併せた1つもしくは複数のcrRNAと、あらかじめ複合体化させることができる。部位特異的ポリペプチドは、1つまたは複数のsgRNAとあらかじめ複合体化させることができる。次いで、あらかじめ複合体化させた材料を、細胞または患者へと投与することができる。このようなあらかじめ複合体化させた材料は、リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)として公知である。RNPにおける部位特異的ポリペプチドは、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはCpf1エンドヌクレアーゼであり得る。部位特異的ポリペプチドは、N末端、C末端、またはN末端およびC末端の両方において、1つまたは複数の核局在化シグナル(NLS)が隣接し得る。例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、N末端に位置する1つのNLSおよびC末端に位置する第2のNLSの2つのNLSが、隣接し得る。NLSは、当技術分野において公知の任意のNLS、例えば、SV40 NLSであり得る。RNPにおける、ゲノムターゲティング核酸の部位特異的ポリペプチドに対する重量比は、1:1であり得る。例えば、RNPにおける、sgRNAのCas9エンドヌクレアーゼに対する重量比は、1:1であり得る。
【0303】
標的配列の選択
【0304】
5’境界部および/または3’境界部の位置の、特定の基準ローカスと比べたシフトを使用して、本明細書にさらに記載および例示される、編集のために選択されるエンドヌクレアーゼ系に部分的に依存する、遺伝子編集の特定の適用を容易とするかまたは増強することができる。
【0305】
このような標的配列選択の第1の非限定的な例では、多くのエンドヌクレアーゼ系は、切断のための潜在的な標的部位の初期の選択を導き得る規則または基準、例えば、II型またはV型のCRISPRエンドヌクレアーゼの場合のDNA切断部位に隣接する特定の位置におけるPAM配列モチーフの要件を有する。
【0306】
標的配列の選択または最適化についての別の非限定的な例では、標的配列と遺伝子編集エンドヌクレアーゼとの特定の組合せについてのオフターゲット活性の頻度(すなわち、選択された標的配列以外の部位で、DSBが生じる頻度)を、オンターゲット活性の頻度と比べて評価することができる。一部の場合には、所望されるローカスにおいて適正に編集されている細胞は、他の細胞と比べて、選択的利点を有し得る。選択的利点についての、例示的であるが非限定的な例としては、複製速度の増強、存続性、ある特定の条件に対する耐性、患者への導入後のin vivoにおける、生着成功率または存続率の増強などの属性、およびこのような細胞の維持または数もしくは生存率の増加と関連する他の属性の獲得が挙げられる。他の場合には、所望されるローカスにおいて適正に編集されている細胞を、適正に編集されている細胞を同定するか、分取するか、または他の形で選択するのに使用される、1つまたは複数のスクリーニング法によって、正に選択することができる。選択的利点および指向選択法(directed selection method)のいずれも、修正と関連する表現型を利用し得る。一部の場合には、意図された細胞集団を選択または精製するのに使用される新たな表現型を作り出す第2の修飾を作り出すために、細胞を、2回またはこれを超える回数にわたり編集することができる。このような第2の修飾は、選択可能またはスクリーニング可能マーカーのための第2のgRNAを付加することによって、作り出す可能性がある。一部の場合には、cDNAを含有し、また、選択可能マーカーも含有するDNA断片を使用して、細胞を、所望されるローカスにおいて適正に編集することができる。
【0307】
特定の場合に、いずれかの選択的利点が適用可能であるか、またはいずれかの指向選択を適用するかにかかわらず、適用の有効性を増強し、かつ/または所望される標的以外の部位における、所望されない変更の潜在性を低減するために、標的配列の選択はまた、オフターゲット頻度の考慮によっても導くことができる。本明細書および当技術分野で、さらに記載および例示される通り、オフターゲット活性の発生は、標的部位と多様なオフターゲット部位との間の類似性および相違性、ならびに使用される特定のエンドヌクレアーゼを含む、いくつかの因子の影響を受け得る。オフターゲット活性の予測の一助となる、バイオインフォマティクスツールが利用可能であり、多くの場合、このようなツールはまた、オフターゲット活性の可能性が最も高い部位を同定し、次いで、これを、実験状況下で評価して、オフターゲットの、オンターゲット活性に対する相対頻度について査定することができ、これにより、より高度な相対オンターゲット活性を有する配列の選択を可能とするのにも使用することができる。本明細書では、このような技法の実例を提示するが、当技術分野では、他の例が公知である。
【0308】
標的配列選択の別の態様は、相同組換えイベントに関する。相同性領域を共有する配列は、介在配列の欠失をもたらす、相同組換えイベントのための焦点として機能し得る。このような組換えイベントは、染色体および他のDNA配列の、通常の複製過程中に生じ、また、通常の細胞複製サイクル中に定期的に生じるが、多様なイベント(UV光およびDNA切断の他の誘導因子など)の発生により増強される場合もあり、ある特定の作用物質(agent)(多様な化学的誘導因子など)の存在により増強される場合もある、二本鎖切断(DSB)の修復の場合など、DNA配列が合成される他の時点においても生じる。多くのこのような誘導因子は、DSBを、ゲノム内で、無差別的に生じさせ、DSBは、通常の細胞内で、定期的に誘導および修復され得る。修復中に、元の配列は、完全な忠実度で再構築され得るが、しかしながら、一部の場合には、小規模の挿入または欠失(「インデル」と称する)が、DSB部位に導入される。
【0309】
DSBはまた、本明細書に記載されるエンドヌクレアーゼ系の場合のように、特定の位置において、特異的に誘導することもでき、これを使用して、選択された染色体位置において、指向されたまたは優先的な遺伝子修飾イベントを引き起こすことができる。相同な配列が、DNA修復(ならびに複製)の状況で組換えに供される傾向を、いくつかの状況において利用することができ、これは、相同組換え修復を使用して、「ドナー」ポリヌクレオチドの使用を介して供給される目的の配列を所望される染色体位置へと挿入する、CRISPRなどの遺伝子編集系の1つの適用のための基礎である。
【0310】
10塩基対またはそれ未満という少数の塩基対を含み得る、「マイクロホモロジー」の小領域であり得る、特定の配列の間の相同性の領域もまた、所望の欠失をもたらすのに使用することができる。例えば、単一のDSBを、近傍の配列とのマイクロホモロジーを呈する部位に導入することができる。このようなDSBの修復の通常の過程中、高頻度で生じる結果は、DSBおよび相伴う細胞の修復プロセスにより組換えが容易となる結果としての介在配列の欠失である。
【0311】
しかしながら、一部の状況では、相同性の領域内で、標的配列を選択することはまた、遺伝子融合(欠失が、コーディング領域内にある場合)を含む、はるかに大きい欠失ももたらし得、これは、特定の状況を考慮すると、所望される場合もあり、所望されない場合もある。
【0312】
本明細書に提示される例は、RHOタンパク質活性の回復をもたらす置き換えを誘導するようにデザインされたDSBを作り出すための、多様な標的領域の選択、ならびにオンターゲットイベントと比べてオフターゲットイベントを最小化するようにデザインされたそのような領域内の特異的標的配列の選択をさらに例示する。
【0313】
相同組換え修復(HDR)/ドナーヌクレオチド
【0314】
相同組換え修復とは、二本鎖切断(DSB)を修復するための細胞機構である。最も一般的な形態は、相同組換えである。HDRには、一本鎖アニーリングおよび代替的HDRを含む、さらなる経路が存在する。ゲノム操作ツールは、研究者が、ゲノムに対して、部位特異的修飾を作り出すように、細胞の相同組換え経路を操作することを可能とする。細胞は、トランスに提供される合成のドナー分子を使用して、二本鎖切断を修復し得ることが見出されている。したがって、特異的変異の近傍に二本鎖切断を導入し、好適なドナーを提供することにより、標的とされる変化が、ゲノムにおいて作製され得る。特異的切断により、HDR率は、相同なドナー単独を受ける細胞10個中における1の率よりも1,000倍を超えて増加する。特定のヌクレオチドにおける相同組換え修復(HDR)率は、切断部位までの距離の関数であるので、重複するかまたは最近傍の標的部位を選び出すことが重要である。in situで修正することにより、ゲノムの残りは乱れないままとなるため、遺伝子編集は、遺伝子付加を上回る利点を提供する。
【0315】
HDRによる編集のために供給されるドナーは、顕著に変動するが、小さいまたは大きいフランキング相同性アームを伴う配列であって、ゲノムDNAとのアニーリングを可能とする意図される配列を含有し得る。導入される遺伝子変化を挟む相同性領域は、30bpまたはこれより小さい場合もあり、マルチキロベースという大きなカセットの場合もあり、これらは、プロモーター、cDNAなどを含有し得る。一本鎖オリゴヌクレオチドドナーおよび二本鎖オリゴヌクレオチドドナーのいずれも使用されている。これらのオリゴヌクレオチドは、100nt未満から多くのkbを超える(over many kb)サイズの範囲であるが、より長いssDNAもまた、生成および使用し得る。PCR単位複製配列、プラスミド、およびミニサークルを含む、二本鎖ドナーを使用することができる。一般に、AAVベクターは、ドナー鋳型の送達の極めて有効な手段であり得ることが見出されているが、個々のドナーに対するパッケージング限界が<5kbである。ドナーの能動的転写が、HDRを3倍に増加させたことから、プロモーターを含むことが、転換を増加させ得ることが指し示される。逆に、ドナーのCpGのメチル化は、遺伝子発現およびHDRを減少させた。
【0316】
変異を修正するためのドナーヌクレオチドは、多くの場合、小さい(300bp未満)。HDR効率は、ドナー分子のサイズに対して逆に関連性し得るため、これは、有利である。また、ドナー鋳型が、サイズが制限されるAAV分子に適合し得ることも予測され、これは、ドナー鋳型送達の効果的な手段であることが示されている。
【0317】
Cas9などの野生型エンドヌクレアーゼに加えて、一方のヌクレアーゼドメインまたは他方のヌクレアーゼドメインを不活化させる結果として、1つのDNA鎖だけの切断をもたらす、ニッカーゼバリアントが存在する。HDRは、個々のCasニッカーゼから誘導することができ、または標的領域を挟むニッカーゼ対を使用して誘導することもできる。ドナーは、一本鎖の場合もあり、ニック処理されている場合もあり、dsDNAの場合もある。
【0318】
ドナーDNAは、ヌクレアーゼとともに供給することもでき、または様々な異なる方法、例えば、トランスフェクション、ナノ粒子、マイクロインジェクション、もしくはウイルスを介する形質導入により、独立して供給することもできる。HDRのためのドナーのアベイラビリティーを増加させる、一連のテザリングの選択肢が提起されている。例としては、ドナーの、ヌクレアーゼへの結合、近傍に結合するDNA結合性タンパク質への結合、またはDNA末端における結合もしくは修復に関与するタンパク質への結合が挙げられる。
【0319】
修復経路の選択は、細胞周期に影響を及ぼす培養条件など、いくつかの培養条件により導くこともでき、DNA修復および関連タンパク質のターゲティングにより導くこともできる。例えば、HDRを増加させるために、KU70、KU80、またはDNAリガーゼIVなど、鍵となるNHEJ分子を抑制することができる。
【0320】
ドナーが存在しない場合、接合部において塩基対合をほとんどまたは全く伴わずにDNA末端を接合させる、いくつかの非相同性修復経路を使用して、DNA切断に由来する末端または異なる切断に由来する末端を接合させることができる。カノニカルのNHEJに加えて、ANHEJなど、同様の修復機構が存在する。2つの切断が存在する場合、介在するセグメントを、欠失させることもでき、反転させることもできる。NHEJ修復経路は、接合部において、挿入、欠失、または変異をもたらし得る。NHEJは、ヌクレアーゼによる切断の後において、15kbの誘導的遺伝子発現カセットを、ヒト細胞株内の規定されたローカスへと挿入するのに使用された。大きい誘導的遺伝子発現カセットの挿入の方法が、説明されている[Maresca, M., Lin, V.G., Guo, N. & Yang, Y., Genome Res 23, 539-546 (2013)、Suzuki et al. Nature, 540, 144-149 (2016)]。
【0321】
NHEJまたはHDRによるゲノム編集に加えて、NHEJ経路およびHDRの両方を使用する、部位特異的遺伝子挿入が、実施されている。組合せアプローチは、恐らくイントロン/エクソン境界部を含む、ある特定の状況において、適用可能であり得る。NHEJは、イントロンにおけるライゲーションに有効であることを実証し得るが、エラーのないHDRが、コーディング領域においてはより適している可能性がある。
【0322】
RHO遺伝子内の例示的な改変としては、上記に参照された変異内またはその近傍(近位)、例えば、特異的変異から3kb未満、2kb未満、1kb未満、0.5kb未満上流または下流の領域内における置き換えが挙げられる。RHO遺伝子における変異の比較的広範な変化を考慮すると、上記の置き換えの多数の変化形(限定することなく、より大きい並びにより小さい欠失)が、RHOタンパク質活性の回復をもたらすと予測されるであろうことが理解される。
【0323】
そのようなバリアントは、問題の特異的変異よりも5’および/もしくは3’の方向に大きいか、またはいずれかの方向に小さい、置き換えを含み得る。したがって、特異的置き換えに関連する「近傍」または「近位」であるとは、所望される置き換え境界部(本明細書においてエンドポイントとも称される)と関連するSSBまたはDSBローカスが、基準ローカス、例えば、変異部位から約3kb未満である領域内にあり得ることを意図する。SSBまたはDSBローカスは、より近位であってもよく、2kb以内、1kb以内、0.5kb以内、または0.1kb以内であってもよい。小さい置き換えの事例では、所望されるエンドポイントは、基準ローカスにあってもよく、またはそれに「隣接して」いてもよく、これは、エンドポイントが、基準ローカスから100bp以内、50bp以内、25bp以内、または約10bp未満~5bpであり得ることを意図する。
【0324】
大きい置き換えも小さい置き換えも、RHOタンパク質活性が回復される限り、同じ利点を提供し得る。したがって、本明細書に記載され、例示される置き換えの様々な変化形が、網膜色素変性(RP)を改善するのに有効であり得ることが予測される。
【0325】
SSBまたはDSBに関連する「近傍」または「近位」という用語は、SSBまたはDSBが、P23H変異から2kb以内、1kb以内、0.5kb以内、0.25kb以内、0.2kb以内、または0.1kb以内であることを指す。
【0326】
核酸の修飾(化学的および構造的修飾)
【0327】
一部の場合には、細胞へと導入されたポリヌクレオチドは、例えば、活性、安定性、もしくは特異性を増強するか、送達を変更するか、宿主細胞内の自然免疫応答を低減するか、または本明細書でさらに記載され、当技術分野でも公知の他の増強のために、個別に、または組合せで使用され得る、1つまたは複数の修飾を含み得る。
【0328】
ある特定の例では、修飾ポリヌクレオチドを、CRISPR/Cas9/Cpf1系で使用することができるが、この場合、ガイドRNA(単一分子ガイドもしくは二重分子ガイド)、および/または細胞へと導入されるCasもしくはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするDNAもしくはRNAは、以下に記載および例示されるように、修飾することができる。このような修飾ポリヌクレオチドを、CRISPR/Cas9/Cpf1系で使用して、任意の1つまたは複数のゲノムローカスを編集することができる。
【0329】
CRISPR/Cas9/Cpf1系を、このような使用の非限定的例示を目的として使用して、単一分子ガイドの場合もあり、二重分子ガイドの場合もある、ガイドRNAと、CasまたはCpf1エンドヌクレアーゼとを含む、CRISPR/Cas9/Cpf1ゲノム編集複合体の形成または安定性を増強するために、ガイドRNAの修飾を使用することができる。ガイドRNAの修飾はまた、または代替的に、ゲノム編集複合体と、ゲノム内の標的配列との相互作用の開始、安定性、または反応速度を増強するのに使用することができ、例えば、オンターゲット活性を増強するのに使用することができる。ガイドRNAの修飾はまた、または代替的に、特異性、例えば、オンターゲット部位におけるゲノム編集の、他の(オフターゲット)部位における効果と比較した相対速度を増強するのに使用することができる。
【0330】
修飾はまた、または代替的に、例えば、細胞内に存在するリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)による分解に対するその耐性を増加させ、これにより、細胞内でのその半減期の延長をもたらすことによって、ガイドRNAの安定性を増加させるために使用することができる。ガイドRNAの半減期を延長する修飾は、エンドヌクレアーゼを生成するために翻訳される必要があるRNAを介して編集される細胞へと、CasまたはCpf1エンドヌクレアーゼを導入する態様において、特に有用であり得るが、これは、エンドヌクレアーゼをコードするRNAと同時に導入される、ガイドRNA半減期の延長が、ガイドRNAと、コードされるCasまたはCpf1エンドヌクレアーゼとが細胞内に共存する時間を延長するのに使用することができるためである。
【0331】
修飾はまた、または代替的に、細胞へと導入されたRNAが、自然免疫応答を誘発する可能性または程度を減少させるのに使用することができる。低分子干渉RNA(siRNA)を含むRNA干渉(RNAi)の文脈では、十分に特徴付けられており、下記および当技術分野で記載されるこのような応答は、RNAの半減期の短縮および/またはサイトカインもしくは免疫応答と関連する他の因子の誘発と関連する傾向がある。
【0332】
限定なしに述べると、RNAの安定性を増強する(細胞内に存在するRNアーゼによる分解に対するその耐性を増大させることなどにより)修飾、結果として得られる産物(すなわち、エンドヌクレアーゼ)の翻訳を増強する修飾、および/または細胞へと導入されたRNAが、自然免疫応答を誘発する可能性もしくは程度を減少させる修飾を含む、1種または複数種の修飾もまた、細胞へと導入されるエンドヌクレアーゼをコードするRNAへと施すことができる。
【0333】
前出および他のものなどの修飾の組合せも同様に、使用することができる。CRISPR/Cas9/Cpf1の場合、例えば、1種または複数種の修飾を、ガイドRNA(上記で例示したガイドRNAを含む)へと施すこともでき、かつ/または1種または複数種の修飾を、CasエンドヌクレアーゼをコードするRNA(上記で例示したCasエンドヌクレアーゼをコードするRNAを含む)へと施すこともできる。
【0334】
例示を目的として述べると、CRISPR/Cas9/Cpf1系で使用されるガイドRNA、または他の低分子RNAは、化学的手段によりたやすく合成することができ、下記で例示され、当技術分野で記載される通り、いくつかの修飾をたやすく組み込むことを可能とする。化学合成手順が、断続的に拡大しつつある一方で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;PAGEなど、ゲルの使用を回避する)などの手順による、このようなRNAの精製は、ポリヌクレオチド長が、100ほどのヌクレオチドを優に超えて増加するにつれて、難しくなる傾向がある。より長い化学修飾RNAを生成するために使用され得る1つの手法は、一緒にライゲーションされる、2つまたはこれを上回る分子を作製することである。Cas9エンドヌクレアーゼをコードするRNAなど、はるかに長いRNAは、酵素により、よりたやすく生成される。酵素により産生されたRNAにおける使用のために利用可能な修飾の種類は少ないが、下記および当技術分野でさらに記載されるように、例えば、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性もしくは程度を低減し、かつ/または他の属性を増強するのに使用され得る修飾がまだ存在し、通例、新たな種類の修飾が開発されている。
【0335】
多様な種類の修飾、とりわけ、化学合成される低分子RNAとともに頻繁に使用される修飾についての例示を目的として述べると、修飾は、糖の2’位において修飾された、1つまたは複数のヌクレオチド、一部の態様では、2’-O-アルキル、2’-O-アルキル-O-アルキル、または2’-フルオロで修飾されたヌクレオチドを含み得る。一部の例では、RNA修飾は、ピリミジンのリボース、無塩基残基、またはRNAの3’末端における逆向き塩基における、2’-フルオロ、2’-アミノ、または2’-O-メチル修飾を含み得る。このような修飾は、規定の方式で、オリゴヌクレオチドへと組み込むことができ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対する2’-デオキシオリゴヌクレオチドよりTmが大きい(すなわち、標的への結合アフィニティーが大きい)ことが示されている。
【0336】
いくつかのヌクレオチドおよびヌクレオシド修飾は、それらが組み込まれるオリゴヌクレオチドを、ヌクレアーゼ消化に対して、天然のオリゴヌクレオチドより耐性とすることが示されており、これらの修飾オリゴは、非修飾オリゴヌクレオチドより長時間にわたりインタクトのまま存続する。修飾オリゴヌクレオチドの具体例は、修飾骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルによる糖間連結、または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環による糖間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを含む。一部のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を伴うオリゴヌクレオチド、およびヘテロ原子骨格、特に、CH-NH-O-CH、CH、~N(CH)~O~CH(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として公知である)、CH-O-N(CH)-CH骨格、CH-N(CH)-N(CH)-CH、およびO-N(CH)-CH-CH骨格[式中、天然のホスホジエステル骨格を、O-P-O-CHとして表す];アミド骨格[De Mesmaekerら、Ace. Chem. Res.、28巻:366~374頁(1995年)を参照されたい];モルホリノ骨格構造(SummertonおよびWeller、米国特許第5,034,506号を参照されたい);ペプチド核酸(PNA)骨格(オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格を、ポリアミド骨格で置きかえ、ヌクレオチドを、ポリアミド骨格のアザ窒素原子へと、直接的または間接的に結合させる;Nielsenら、Science、1991年、254巻、1497頁を参照されたい)を伴うオリゴヌクレオチドである。リン含有連結は、ホスホロチオエート、キラルのホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’アルキレンホスホネートおよびキラルのホスホネートを含む、メチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびボラノホスフェートであって、通常の3’-5’連結を有するこれら、2’-5’連結されたこれらの類似体、およびヌクレオシド単位の隣接する対が、5’-3’に対する3’-5’、または5’-2’に対する2’-5’で連結される逆極性を有するリン含有連結を含むがこれらに限定されない(米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;および同第5,625,050号を参照されたい)。
【0337】
モルホリノベースのオリゴマー性化合物については、BraaschおよびDavid Corey、Biochemistry、41巻(14号):4503~4510頁(2002年);Genesis、30巻、3号(2001年);Heasman、Dev. Biol.、243巻:209~214頁(2002年);Naseviciusら、Nat. Genet.、26巻:216~220頁(2000年);Lacerraら、Proc. Natl. Acad. Sci.、97巻:9591~9596頁(2000年);および1991年7月23日に公布された、米国特許第5,034,506号において記載されている。
【0338】
シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチド模倣体については、Wangら、J. Am. Chem. Soc.、122巻:8595~8602頁(2000年)において記載されている。
【0339】
その中にリン原子を含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルによるヌクレオシド間連結、ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルとの混合によるヌクレオシド間連結、または1もしくは複数の短鎖のヘテロ原子もしくは複素環によるヌクレオシド間連結により形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ連結を有する骨格(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、S、およびCH2の構成要素部分の混合を有する他の骨格(米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;および同第5,677,439号を参照されたい)を含む。
【0340】
1つまたは複数の置換糖部分、例えば、2’位における以下:OH、SH、SCH、F、OCN、OCH OCH、OCH O(CH)n CH、O(CH)n NH、またはO(CH)n CH(式中、nは、1~約10である);C1~C10の低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリール、またはアラルキル;Cl;Br;CN;CF;OCF;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;SOCH;SO CH;ONO;NO;N;NH;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;挿入剤;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基、ならびに同様の特性を有する他の置換基のうちの1つも含まれ得る。一部の態様では、修飾は、2’-メトキシエトキシ(2’-O-(2-メトキシエチル)としてもまた公知の、2’-O-CHCHOCH)を含む(Martin et al, HeIv. Chim. Acta, 1995, 78, 486)。他の修飾は、2’-メトキシ(2’-O-CH)、2’-プロポキシ(2’-OCHCHCH)、および2’-フルオロ(2’-F)を含む。同様の修飾を、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位においても施すことができる。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル基の代わりに、シクロブチルなどの糖模倣体も有し得る。
【0341】
一部の例では、糖およびヌクレオシド間連結の両方、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格を、新規の基で置きかえることができる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持することができる。1つのこのようなオリゴマー性化合物であるオリゴヌクレオチド模倣体であって、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣体を、ペプチド核酸(PNA)と称する。PNA化合物中では、オリゴヌクレオチドの糖骨格を、アミド含有骨格、例えば、アミノエチルグリシン骨格で置きかえることができる。ヌクレオ塩基は保持し、骨格のアミド部分のアザ窒素原子へと、直接的または間接的に結合させることができる。PNA化合物の調製について教示する、代表的な米国特許は、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号を含むがこれらに限定されない。PNA化合物についてのさらなる教示は、Nielsenら、Science、254巻:1497~1500頁(1991年)において見出すことができる。
【0342】
ガイドRNAはまた、加えてまたは代替的に、ヌクレオ塩基(当技術分野では単に「塩基」と称することが多い)の修飾または置換も含みうる。本明細書で使用される場合、「非修飾」または「天然」ヌクレオ塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。修飾ヌクレオ塩基は、天然の核酸内で、低頻度で、または一過性に見出されるに過ぎないヌクレオ塩基、例えば、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-Meピリミジン、特に、5-メチルシトシン(また、5-メチル-2’デオキシシトシンとも称され、当技術分野では、5-Me-Cと称されることが多い)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC、およびゲントビオシルHMC、ならびに合成のヌクレオ塩基、例えば、2-アミノアデニン、2-(メチルアミノ)アデニン、2-(イミダゾイルアルキル)アデニン、2-(アミノアルキルアミノ)アデニン(2-(aminoalklyamino)adenine)または他のヘテロ置換アルキルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニン、および2,6-ジアミノプリンを含む(Kornberg, A.、DNA Replication、W. H. Freeman & Co.、San Francisco、75~77頁(1980年);Gebeyehuら、Nucl. Acids Res.、15巻:4513頁(1997年))。当技術分野で公知の「ユニバーサル」塩基、例えば、イノシンもまた、組み入れることができる。5-Me-C置換は、核酸二重鎖の安定性を、0.6~1.2℃だけ上昇させることが示されており(Sanghvi, Y. S.、Crooke, S. T.およびLebleu, B.編、Antisense Research and Applications、CRC Press、Boca Raton、1993年、276~278頁)、塩基置換の態様である。
【0343】
修飾ヌクレオ塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、および2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、および6-アゾチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルアデニンおよび8-ヒドロキシルグアニンならびに他の8-置換アデニンおよび8-置換グアニン、5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン、特に、5-ブロモウラシルおよび5-ブロモシトシン、5-トリフルオロメチルウラシルおよび5-トリフルオロメチルシトシン、ならびに他の5-置換ウラシルおよび5-置換シトシン、7-メチルグアニン(quanine)および7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなど、他の合成および天然ヌクレオ塩基を含みうる。
【0344】
さらに、ヌクレオ塩基は、;米国特許第3,687,808号において開示されているヌクレオ塩基;「The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering」、858~859頁、Kroschwitz, J.I.編、John Wiley & Sons、1990年において開示されているヌクレオ塩基;Englischら、「Angewandle Chemie, International Edition」、1991年、30巻、613頁により開示されているヌクレオ塩基;およびSanghvi, Y. S.、15章、「Antisense Research and Applications」、289~302頁、Crooke, S.T.およびLebleu, B.編著、CRC Press、1993年により開示されているヌクレオ塩基を含みうる。これらのヌクレオ塩基のうちのいくつかは、本発明のオリゴマー性化合物の結合アフィニティーを増大させるために、特に有用である。これらは、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびに2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む、N-2、N-6、および0-6置換プリンを含む。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を、0.6~1.2℃だけ上昇させることが示されており(Sanghvi, Y. S.、Crooke, S. T.およびLebleu, B.編、「Antisense Research and Applications」、CRC Press、Boca Raton、1993年、276~278頁)、なおより特に、2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合、塩基置換の態様である。修飾ヌクレオ塩基については、米国特許第3,687,808号のほか、同第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,596,091号;同第5,614,617号;同第5,681,941号;同第5,750,692号;同第5,763,588号;同第5,830,653号;同第6,005,096号;および米国特許出願公開第2003/0158403号において記載されている。
【0345】
したがって、「修飾された」という用語は、ガイドRNA、エンドヌクレアーゼ、またはガイドRNAおよびエンドヌクレアーゼの両方へと組み込まれた、非天然の糖、リン酸、または塩基を指す。所与のオリゴヌクレオチド内の全ての位置が、一様に修飾される必要はなく、実際、前述の修飾のうちの1つを超える修飾は、単一のオリゴヌクレオチドに組み込むこともでき、オリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドに組み込むこともできる。
【0346】
ガイドRNAおよび/またはエンドヌクレアーゼをコードするmRNA(またはDNA)は、活性、細胞の分布、またはオリゴヌクレオチドの細胞による取込みを増強する、1または複数の部分またはコンジュゲートへと化学的に連結することができる。このような部分は、コレステロール部分などの脂質部分[Letsingerら、Proc. Natl. Acad.、Sci. USA、86巻:6553~6556頁(1989年)];コール酸[Manoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let.、4巻:1053~1060頁(1994年)];チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール[Manoharanら、Ann. N. Y. Acad. Sci.、660巻:306~309頁(1992年);およびManoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let.、3巻:2765~2770頁(1993年)];チオコレステロール[Oberhauserら、Nucl. Acids Res.、20巻:533~538頁(1992年)];脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基[Kabanovら、FEBS Lett.、259巻:327~330頁(1990年);およびSvinarchukら、Biochimie、75巻:49~54頁(1993年)];リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート[Manoharanら、Tetrahedron Lett.、36巻:3651~3654頁(1995年);およびSheaら、Nucl. Acids Res.、18巻:3777~3783頁(1990年)];ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖[Mancharanら、Nucleosides & Nucleotides、14巻:969~973頁(1995年)];アダマンタン酢酸[Manoharanら、Tetrahedron Lett.、36巻:3651~3654頁(1995年)];パルミチル部分[(Mishraら、Biochim. Biophys. Acta、1264巻:229~237頁(1995年)];またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-tオキシコレステロール(hexylamino-carbonyl-t oxycholesterol)部分[Crookeら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、277巻:923~937頁(1996年)]を含むがこれらに限定されない。また、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号;同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号;同第5,391,723号;同第5,416,203号;同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号;および同第5,688,941号も参照されたい。
【0347】
糖および他の部分を使用して、タンパク質と、カチオン性のポリソームおよびリポソームなど、ヌクレオチドを含む複合体とを、特定の部位へとターゲティングすることができる。例えば、肝細胞指向移入は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を媒介しうる(例えば、Huら、Protein Pept Lett.、21巻(10号):1025~30頁(2014年)を参照されたい)。当技術分野で公知であり、定期的に開発されている他の系は、本場合において使用される生体分子および/またはその複合体を、目的の、特定の標的細胞へとターゲティングするのに使用することができる。
【0348】
これらのターゲティング部分またはコンジュゲートは、一級または二級ヒドロキシル基などの官能基へと共有結合的に結合させたコンジュゲート基を含み得る。本開示のコンジュゲート基は、挿入剤、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学特性を増強する基、およびオリゴマーの薬物動態特性を増強する基を含む。典型的なコンジュゲート基は、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素を含む。本開示の文脈における、薬力学特性を増強する基は、取込みを改善する基、分解に対する耐性を増強する基、および/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基を含む。本開示の文脈における、薬物動態特性を増強する基は、本開示の化合物の、取込み、分布、代謝、または排出を改善する基を含む。代表的なコンジュゲート基は、1992年10月23日に出願された、国際特許出願第PCT/US92/09196号(WO1993007883として公開)、および米国特許第6,287,860号において開示されている。コンジュゲート部分は、コレステロール部分などの脂質部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-5-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分を含むがこれらに限定されない。例えば、米国特許第4,828,979号、同第4,948,882号、同第5,218,105号、同第5,525,465号、同第5,541,313号、同第5,545,730号、同第5,552,538号、同第5,578,717号、同第5,580,731号、同第5,580,731号、同第5,591,584号、同第5,109,124号、同第5,118,802号、同第5,138,045号、同第5,414,077号、同第5,486,603号、同第5,512,439号、同第5,578,718号、同第5,608,046号、同第4,587,044号、同第4,605,735号、同第4,667,025号、同第4,762,779号、同第4,789,737号、同第4,824,941号、同第4,835,263号、同第4,876,335号、同第4,904,582号、同第4,958,013号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,245,022号、同第5,254,469号、同第5,258,506号、同第5,262,536号、同第5,272,250号、同第5,292,873号、同第5,317,098号、同第5,371,241号、同第5,391,723号、同第5,416,203号、同第5,451,463号、同第5,510,475号、同第5,512,667号、同第5,514,785号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,595,726号、同第5,597,696号、同第5,599,923号、同第5,599,928号、および同第5,688,941号を参照されたい。
【0349】
化学合成にあまり適さず、酵素的合成により作製することが典型的な、長型のポリヌクレオチドもまた、多様な手段により修飾することができる。このような修飾は、例えば、ある特定のヌクレオチド類似体の導入、特定の配列または他の部分の、分子の5’または3’末端における組込み、および他の修飾を含みうる。例示を目的として述べると、Cas9をコードするmRNAは、約4kbの長さであり、in vitroにおける転写により合成することができる。mRNAへの修飾は、例えば、その翻訳または安定性を増大させる(細胞による分解に対するその耐性を増大させることなどによる)ように適用することもでき、RNAの、自然免疫応答を誘発する傾向であって、外因性RNA、特に、Cas9をコードするRNAなど、長いRNAの導入後において、細胞内で観察されることが多い傾向を低減するように適用することもできる。
【0350】
当技術分野では、ポリAテール、5’キャップ類似体(例えば、ARCA(Anti-Reverse Cap Analog)またはm7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))、修飾5’または3’非翻訳領域(UTR)、修飾塩基(シュードUTP、2-チオ-UTP、5-メチルシチジン-5’-三リン酸(5-メチル-CTP)またはN6-メチル-ATPなど)の使用、または5’末端リン酸を除去する、ホスファターゼによる処理など、多数のこのような修飾について記載されている。当技術分野では、これらの修飾および他の修飾が公知であり、RNAの新たな修飾が、定期的に開発されている。
【0351】
例えば、TriLink Biotech、AxoLabs、Bio-Synthesis Inc.、Dharmacon、および多くの他の供給元を含む、修飾RNAの多数の市販品の供給元が存在する。TriLinkにより記載されている通り、例えば、5-メチル-CTPを使用して、ヌクレアーゼの安定性の増大、翻訳の増大、または生得的免疫受容体の、in vitroにおいて転写されたRNAとの相互作用の低減など、望ましい特徴を付与することができる。下記で言及される、KormannらおよびWarrenらによる刊行物において例示されている通り、5-メチルシチジン-5’-三リン酸(5-メチル-CTP)、N6-メチル-ATP、ならびにシュードUTPおよび2-チオ-UTPはまた、培養物中およびin vivoにおける生得的免疫刺激を低減する一方で、翻訳を増強することも示されている。
【0352】
in vivoにおいて送達される化学修飾mRNAを使用して、治療効果の改善を達成しうることが示されている(例えば、Kormannら、Nature Biotechnology、29巻、154~157頁(2011年)を参照されたい)。このような修飾を使用して、例えば、RNA分子の安定性を増大させ、かつ/またはその免疫原性を低減することができる。シュードU、N6-メチル-A、2-チオ-U、および5-メチル-Cなどの化学修飾を使用して、ウリジンおよびシチジン残基のうちの4分の1だけを、それぞれ、2-チオ-Uおよび5-メチル-Cで置換する結果として、マウスにおける、toll様受容体(TLR)により媒介されるmRNAの認識の顕著な低下がもたらされることが見出された。生得的免疫系の活性化を低減することにより、これらの修飾を使用して、in vivoにおけるmRNAの安定性および寿命を効果的に増大させることができる(例えば、Kormannら、前出を参照されたい)。
【0353】
また、生得的抗ウイルス応答を迂回するようにデザインされた修飾を組み込む、合成のメッセンジャーRNAの反復投与は、分化ヒト細胞を、多能性へと再プログラム化できることも示されている。例えば、Warrenら、Cell Stem Cell、7巻(5号):618~30頁(2010年)を参照されたい。一次再プログラム化タンパク質として作用する、このような修飾mRNAは、複数のヒト細胞型を再プログラム化する、効率的な手段でありうる。このような細胞を、誘導多能性幹細胞(iPSC)と称し、5-メチル-CTP、シュードUTP、およびARCA(Anti-Reverse Cap Analog)を組み込む、酵素的に合成されたRNAであれば、細胞の抗ウイルス応答を効果的に逃避するのに使用されうることが見出された(例えば、Warrenら、前出を参照されたい)。
【0354】
当技術分野で記載されるポリヌクレオチドの他の修飾は、例えば、ポリAテールの使用、5’キャップ類似体(m7G(5’)ppp(5’)G(mCAP)など)の付加、5’もしくは3’非翻訳領域UTRの修飾、または5’末端リン酸を除去する、ホスファターゼによる処理(そして、新たな手法が定期的に開発されている)を含む。
【0355】
本明細書における使用のための修飾RNAを生成するのに適用可能な、いくつかの組成物および技法が、低分子干渉RNA(siRNA)を含む、RNA干渉(RNAi)の修飾との関連で開発されている。siRNAは、mRNA干渉を介する、遺伝子サイレンシングに対するそれらの効果が、一般に、一過性であり、これは、反復投与を要求し得るため、in vivoでは、特定の課題を提示する。加えて、siRNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であり、哺乳動物細胞は、ウイルス感染の副産物であることが多い、dsRNAを検出および中和するように進化した免疫応答を有する。したがって、dsRNAに対する細胞応答を媒介し得る、PKR(dsRNA応答性キナーゼ)など、哺乳動物の酵素、および潜在的にレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)、ならびにこのような分子に応答してサイトカインの誘導を惹起し得るToll様受容体(TLR3、TLR7、およびTLR8など)が存在する(例えば、Angart et al., Pharmaceuticals (Basel) 6(4): 440-468 (2013)、Kanasty et al., Molecular Therapy 20(3): 513-524 (2012)、Burnett et al., Biotechnol J. 6(9):1130-46 (2011)、Judge and MacLachlan, Hum Gene Ther 19(2):111-24 (2008)による総説を参照されたい)。
【0356】
RNAの安定性を増強し、自然免疫応答を低減し、かつ/またはポリヌクレオチドの、ヒト細胞への導入であって、本明細書で記載される導入との関連で有用でありうる他の利益を達成するように、多種多様な修飾が、開発および適用されている(例えば、Whitehead KAら、Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering、2巻:77~96頁(2011年);GaglioneおよびMessere、Mini Rev Med Chem、10巻(7号):578~95頁(2010年);Chernolovskayaら、Curr Opin Mol Ther.、12巻(2号):158~67頁(2010年);Deleaveyら、Curr Protoc Nucleic Acid Chem、16章:16.3部(2009年);Behlke、Oligonucleotides、18巻(4号):305~19頁(2008年);Fuciniら、Nucleic Acid Ther、22巻(3号):205~210頁(2012年);Bremsenら、Front Genet、3巻:154頁(2012年)による総説を参照されたい)。
【0357】
上記で言及した通り、それらの多くが、siRNAの有効性を改善するようにデザインされた修飾に特化した、修飾RNAのいくつかの市販品の供給元が存在する。文献で報告されている多様な知見に基づき、様々な手法が提供されている。例えば、Dharmaconは、Kole、Nature Reviews Drug Discovery、11巻:125~140頁(2012年)により報告されている通り、非架橋酸素の、硫黄(ホスホロチオエート、PS)による置きかえが、siRNAのヌクレアーゼ耐性を改善するのに使用されていることについて言及している。リボースの2’位の修飾は、ヌクレオチド間のリン酸結合のヌクレアーゼ耐性を改善する一方で、二重鎖の安定性(Tm)を増大させ、これはまた、免疫活性化からの保護をもたらすことも示されていることが報告されている。Soutschekら、Nature、432巻:173~178頁(2004年)により報告されている通り、中程度のPS骨格の修飾の、小型の、十分に忍容される2’-置換(2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-ヒドロ)との組合せは、in vivoにおける適用のための、高度に安定的なsiRNAと関連しており、Volkov、Oligonucleotides、19巻:191~202頁(2009年)により報告されている通り、2’-O-メチル修飾は、安定性の改善において有効であることが報告されている。自然免疫応答の誘導を減少させることとの関連で、特異的配列を、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-ヒドロで修飾することは、TLR7/TLR8の相互作用を低減する一方で、一般に、サイレンシング活性を保存することが報告されている(例えば、Judgeら、Mol. Ther.、13巻:494~505頁(2006年);およびCekaiteら、J. Mol. Biol.、365巻:90~108頁(2007年)を参照されたい)。2-チオウラシル、シュードウラシル、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル、およびN6-メチルアデノシンなどのさらなる修飾もまた、TLR3、TLR7、およびTLR8により媒介される免疫作用を最小化することが示されている(例えば、Kariko, K.ら、Immunity、23巻:165~175頁(2005年)を参照されたい)。
【0358】
また、当技術分野で公知であり、市販されている、いくつかのコンジュゲートであって、例えば、コレステロール、トコフェロール、および葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカー、およびアプタマーを含み、それらの送達および/または細胞による取込みを増強し得るコンジュゲートを、本明細書における使用のために、RNAなどのポリヌクレオチドへと適用することができる(例えば、Winkler, Ther. Deliv. 4:791-809 (2013)による総説を参照されたい)。
【0359】
コドンの最適化
【0360】
部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当技術分野で標準的な方法に従い、目的の標的DNAを含有する細胞内の発現のために、コドンを最適化することができる。例えば、意図された標的核酸が、ヒト細胞内にある場合、Cas9をコードする、コドンを最適化したヒトポリヌクレオチドを、Cas9ポリペプチドを産生するための使用に想定する。
【0361】
系の構成要素をコードする核酸
【0362】
本開示は、本開示のゲノムターゲティング核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、および/または本開示の方法の態様を実行するのに必要な、任意の核酸もしくはタンパク質性分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提示する。
【0363】
本開示のゲノムターゲティング核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、および/または本開示の方法の態様を実行するのに必要な、任意の核酸もしくはタンパク質性分子をコードする核酸は、ベクター(例えば、組換え発現ベクター)を含みうる。
【0364】
「ベクター」という用語は、それを連結した別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は、さらなる核酸セグメントをライゲーションしうる、環状の二本鎖DNAループを指す、「プラスミド」である。ベクターの別の種類は、さらなる核酸セグメントを、ウイルスゲノムへとライゲーションしうる、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内の自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、および哺乳動物のエピソームベクター)。他のベクター(例えば、哺乳動物の非エピソームベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムへと組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製される。
【0365】
一部の例では、ベクターは、それらが作動的に連結された核酸の発現を導くことが可能でありうる。本明細書では、このようなベクターを、「組換え発現ベクター」、またはより簡単に、「発現ベクター」と称するが、これらは、同等の機能を果たす。
【0366】
「作動可能に連結された」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能とする形で、調節配列へと連結されていることを意味する。「調節配列」という用語は、例えば、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。当技術分野では、このような調節配列が周知であり、例えば、Goeddel、Gene Expression Technology、Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、San Diego、CA(1990年)において記載されている。調節配列は、多くの種類の宿主細胞内のヌクレオチド配列の構成的発現を導く調節配列と、ある特定の宿主細胞内だけのヌクレオチド配列の発現を導く調節配列(例えば、組織特異的調節配列)とを含む。当業者は、発現ベクターのデザインが、標的細胞の選び出し、所望の発現レベルなどの因子に依存しうることを察知するであろう。
【0367】
想定される発現ベクターとしては、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳腺腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)に基づくウイルスベクター、ならびに他の組換えベクターが挙げられるが、これらに限定されない。真核標的細胞のために想定される他のベクターとしては、pXT1ベクター、pSG5ベクター、pSVK3ベクター、pBPVベクター、pMSGベクター、およびベクターpSVLSV40(Pharmacia)が挙げられるが、これらに限定されない。真核標的細胞のために想定される追加のベクターとしては、pCTx-1ベクター、pCTx-2ベクター、およびpCTx-3ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞と適合性である限りにおいて、他のベクターを使用することができる。
【0368】
一部の例では、ベクターは、1または複数の転写および/または翻訳制御エレメントを含みうる。利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導的プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、いくつかの適切な転写および翻訳制御エレメントのいずれかを、発現ベクター内で使用することができる。ベクターは、ウイルス配列またはCRISPR機構もしくは他のエレメントの構成要素を不活化させる、自己不活化ベクターでありうる。
【0369】
適切な真核プロモーター(すなわち、真核細胞内で機能的なプロモーター)の非限定的な例は、サイトメガロウイルス(CMV)即初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルスに由来するLTR(long terminal repeat)、ヒト伸長因子1プロモーター(EF1)、ニワトリベータ-アクチンプロモーター(CAG)へと融合させたサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含むハイブリッド構築物、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1ローカスプロモーター(PGK)、およびマウスメタロチオネインIに由来するプロモーターを含む。
【0370】
Casエンドヌクレアーゼとの関連で使用されるガイドRNAを含む低分子RNAを発現するためには、例えば、U6およびH1を含む、RNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの多様なプロモーターが有利でありうる。当技術分野では、このようなプロモーターの使用を増強することについての記載、およびこのためのパラメータが公知であり、さらなる情報および手法が、定期的に記載されている(例えば、Ma, H.ら、Molecular Therapy - Nucleic Acids、3巻、e161頁(2014年)、doi:10.1038/mtna.2014.12を参照されたい)。
【0371】
発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合性部位および転写ターミネーターも含有しうる。発現ベクターはまた、発現を増幅するのに適切な配列も含みうる。発現ベクターはまた、非天然タグ(例えば、ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質など)をコードするヌクレオチド配列であって、部位特異的ポリペプチドへと融合させ、したがって、融合タンパク質をもたらすヌクレオチド配列も含みうる。
【0372】
プロモーターは、誘導的プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節型プロモーター、ステロイド調節型プロモーター、金属調節型プロモーター、エストロゲン受容体調節型プロモーターなど)でありうる。プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター)でありうる。場合によって、プロモーターは、空間限定型および/または時間限定型プロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)でありうる。
【0373】
本開示のゲノムターゲティング核酸および/または部位特異的ポリペプチドをコードする核酸は、細胞への送達のための送達媒体内またはその表面上にパッケージングすることができる。想定される送達媒体は、ナノスフェア、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、ポリエチレングリコール粒子、ハイドロゲル、およびミセルを含むがこれらに限定されない。当該分野において記載されている通り、様々なターゲティング部分を使用して、このような媒体の、所望される細胞型または場所との優先的な相互作用を増強することができる。
【0374】
本開示の複合体、ポリペプチド、および核酸の、細胞への導入は、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介型トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、リポソーム媒介型トランスフェクション、遺伝子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介型核酸送達などにより行うことができる。
【0375】
マイクロRNA(miRNA)
【0376】
遺伝子調節的領域の別のクラスは、マイクロRNA(miRNA)結合部位である。miRNAは、転写後遺伝子調節において鍵となる役割を果たすノンコーディングRNAである。miRNAは、全ての哺乳動物タンパク質コード遺伝子のうちの30%の発現を調節し得る。さらなる低分子ノンコーディングRNAを加えた、二本鎖RNAによる、特異的かつ強力な遺伝子サイレンシング(RNAi)が発見された(Canver, M.C. et al., Nature (2015))。遺伝子サイレンシングに重要なノンコーディングRNAの最大のクラスは、miRNAである。哺乳動物では、miRNAはまず、個別の転写単位、タンパク質イントロンの一部、または他の転写物であり得る、長いRNA転写物として転写される。長い転写物は、一次miRNA(pri-miRNA)と呼ばれ、塩基対合の不完全なヘアピン構造を含む。これらのpri-miRNAは、Droshaを伴う、核内のタンパク質複合体である、Microprocessorにより、1つまたは複数の短い前駆体miRNA(pre-miRNA)へと切断され得る。
【0377】
pre-miRNAは、2ヌクレオチドの3’突出を有する約70ヌクレオチドの長さの短いステムループであり、エクスポートされて19~25ヌクレオチドの成熟miRNA:miRNA二重鎖になる。塩基対合安定性の低い方のmiRNA鎖(ガイド鎖)が、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)へとロードされ得る。パッセンジャーガイド鎖(でマークされる)は、機能的であり得るが、通常、分解される。成熟miRNAは、RISCを、標的mRNA内の部分的に相補的な配列モチーフであって、3’非翻訳領域(UTR)内に主に見出される相補的な配列モチーフへ係留し、転写後遺伝子サイレンシングを誘導する(Bartel, D.P. Cell 136, 215-233 (2009)、Saj, A. & Lai, E.C. Curr Opin Genet Dev 21, 504-510 (2011))。
【0378】
miRNAは、発生、分化、細胞周期、および増殖の制御、ならびに哺乳動物および他の多細胞の生物の事実上全ての生物学的経路において重要でありうる。miRNAはまた、細胞周期の制御、アポトーシス、および幹細胞分化、造血、低酸素状態、筋発生、神経発生、インスリン分泌、コレステロール代謝、老化、ウイルスの複製、および免疫応答にも関与しうる。
【0379】
単一のmiRNAが、数百の異なるmRNA転写物を標的とし得る一方で、個々の転写物は、多くの異なるmiRNAにより標的とされ得る。最新版のmiRBase(v.21)では、28645を超えるmiRNAが、注釈されている。一部のmiRNAは、複数のローカスによりコードされる場合があり、それらの一部は、タンデムに共転写されたクラスターから発現され得る。この特色は、複数の経路およびフィードバック制御を伴う、複雑な調節ネットワークを可能とする。miRNAは、これらのフィードバックおよび調節回路の不可欠な部分である可能性があり、タンパク質の産生を制限内に保つことにより、遺伝子発現を調節する一助となり得る(Herranz, H. & Cohen, S.M. Genes Dev 24, 1339-1344 (2010); Posadas, D.M. & Carthew, R.W. Curr Opin Genet Dev 27, 1-6 (2014))。
【0380】
miRNAはまた、異常なmiRNA発現と関連する多数のヒト疾患においても重要であり得る。この関連は、miRNA調節経路の重要性を強調する。最近のmiRNA欠失研究では、miRNAを、免疫応答の調節と関連付けている(Stern-Ginossar, N. et al., Science 317, 376-381 (2007))。
【0381】
miRNAはまた、がんとも強力な関連を有し、異なる種類のがんにおいて役割を果たし得る。miRNAは、いくつかの腫瘍において、下方調節されることが見出されている。miRNAは、細胞周期の制御およびDNAの損傷への応答など、鍵となるがん関連経路の調節において重要な場合があり、したがって、診断において使用することができ、臨床において標的とすることができる。miRNAは、全てのmiRNAを枯渇させる実験が、腫瘍血管新生を抑制するように、血管新生の平衡を精密に調節し得る(Chen, S. et al., Genes Dev 28, 1054-1067 (2014))。
【0382】
タンパク質コーディング遺伝子について示されている通り、miRNA遺伝子はまた、がんと共に生じる後成的(epigenetic)変化下にも置かれうる。多くのmiRNAローカスは、DNAのメチル化によるそれらの調節の機会を増大させるCpGアイランドと関連しうる(Weber, B.、Stresemann, C.、Brueckner, B.、およびLyko, F.、Cell Cycle、6巻、1001~1005頁(2007年))。研究の大半は、クロマチンリモデリング薬による処理を使用して、miRNAの後成的サイレンシングを明らかにしている。
【0383】
RNAサイレンシングにおけるそれらの役割に加えて、miRNAはまた、翻訳も活性化させ得る(Posadas, D.M. & Carthew, R.W. Curr Opin Genet Dev 27, 1-6 (2014))。これらの部位のノックアウトが、標的とした遺伝子の発現の低下をもたらし得るのに対し、これらの部位の導入は、発現を増加させ得る。
【0384】
個々のmiRNAは、結合特異性に重要であり得る、シード配列(2~8塩基のmiRNA)を変異させることにより、最も効果的にノックアウトすることができる。この領域内の切断、続いてNHEJによる誤修復は、標的部位への結合を遮断することにより、miRNAの機能を効果的に消失させ得る。miRNAはまた、回文配列に隣接する特殊なループ領域の特異的ターゲティングによっても阻害することができる。触媒的に不活性なCas9もまた、shRNAの発現を阻害するために使用することができる(Zhao, Y. et al., Sci Rep 4, 3943 (2014))。miRNAのターゲティングに加えて、結合部位もまた、miRNAによるサイレンシングを防止するために標的とし、変異させることができる。
【0385】
本開示によると、miRNAまたはそれらの結合部位のうちのいずれかを、本発明の組成物に組み込んでもよい。
【0386】
組成物は、配列番号613~4696に列挙されるmiRNAのうちのいずれかの配列、配列番号613~4696に列挙されるmiRNAの逆相補体、または配列番号613~4696に列挙されるmiRNAのうちのいずれかのmiRNAアンチシード領域を含む領域などであるがこれらに限定されない領域を有し得る。
【0387】
本発明の組成物は、1つまたは複数のmiRNA標的配列、miRNA配列、またはmiRNAシードを含み得る。そのような配列は、米国公開第2005/0261218号および米国公開第2005/0059005号に教示されるものなど、任意の公知のmiRNAに対応し得る。非限定的な例として、公知のmiRNA、それらの配列、およびヒトゲノムにおけるそれらの結合部位の配列は、配列番号613~4696に列挙されている。
【0388】
miRNA配列は、「シード」領域、すなわち、成熟miRNAの2位~8位の領域にある配列を含み、この配列は、miRNA標的配列に対して完璧なワトソン・クリック相補性を有する。miRNAシードは、成熟miRNAの2~8または2~7位を含み得る。一部の例では、miRNAシードは、7ヌクレオチド(例えば、成熟miRNAのヌクレオチド2~8)を含み得、ここで、対応するmiRNA標的におけるシード相補的部位は、miRNA 1位に対向するアデニン(A)が隣接している。一部の例では、miRNAシードは、6ヌクレオチド(例えば、成熟miRNAのヌクレオチド2~7)を含み得、ここで、対応するmiRNA標的におけるシード相補的部位は、miRNA 1位に対向するアデニン(A)が隣接している。例えば、Grimson A, Farh KK, Johnston WK, Garrett-Engele P, Lim LP, Bartel DP; Mol Cell. 2007 Jul 6;27(1):91-105を参照されたい。miRNAシードの塩基は、標的配列との完全な相補性を有する。
【0389】
miRNAの同定、miRNA標的領域、ならびにそれらの発現パターンおよび生物学における役割が、報告されている(Bonauer et al., Curr Drug Targets 2010 11:943-949、Anand and Cheresh Curr Opin Hematol 2011 18:171-176; Contreras and Rao Leukemia 2012 26:404-413 (2011 Dec 20. doi: 10.1038/leu.2011.356); Bartel Cell 2009 136:215-233; Landgraf et al, Cell, 2007 129:1401-1414; Gentner and Naldini, Tissue Antigens. 2012 80:393-403。
【0390】
例えば、組成物が、肝臓へと送達されるのを意図したものではないにもかかわらず、送達されてしまった場合、肝臓において豊富なmiRNAであるmiR-122は、miR-122の1つまたは複数の標的部位が、その標的配列をコードするポリヌクレオチド内に操作されていれば、送達された配列の発現を阻害することができる。異なるmiRNAの1つまたは複数の結合部位の導入は、生存性、安定性、およびタンパク質翻訳をさらに減少させるように操作することができ、したがって、さらに妥当性(tenability)を重ねることができる。
【0391】
本明細書において使用されるとき、「miRNA部位」という用語は、miRNA標的部位もしくはmiRNA認識部位、またはmiRNAが結合もしくは会合する任意のヌクレオチド配列を指す。「結合」は、従来的なワトソン・クリックハイブリダイゼーション則に従い得るか、またはmiRNAと、miRNA部位もしくはそれに隣接する標的配列との任意の安定な会合を反映し得ることを理解されたい。
【0392】
対照的に、本開示の組成物の目的で、miRNA結合部位は、特異的組織におけるタンパク質発現を増加させるために、それらが天然に存在する配列の外部で(すなわち、そこから取り出して)操作されてもよい。例えば、miR-122結合部位は、肝臓におけるタンパク質発現を改善するために、取り出され得る。
【0393】
具体的には、miRNAは、免疫細胞(造血細胞とも称される)、例えば、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞およびマクロファージ)、マクロファージ、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、顆粒球、ナチュラルキラー細胞などにおいて、差次的に発現されることが知られている。免疫細胞に特異的なmiRNAは、免疫原性、自己免疫性、感染に対する免疫応答、炎症、ならびに遺伝子治療および組織/器官移植後の望ましくない免疫応答に関与する。免疫細胞に特異的なmiRNAはまた、造血細胞(免疫細胞)の発達、増殖、分化、およびアポトーシスの多数の側面を調節する。例えば、miR-142およびmiR-146は、免疫細胞において排他的に発現され、特に、骨髄樹状細胞において豊富である。miR-142結合部位を、本開示のポリペプチドの3’-UTRへと導入することによって、miR-142により媒介されるmRNAの分解を通じて抗原提示細胞における遺伝子発現を選択的に抑制し、プロフェッショナルAPC(例えば、樹状細胞)における抗原提示を制限し、それによって、遺伝子送達後の抗原により媒介される免疫応答を予防することができる(例えば、Annoni A et al., blood, 2009, 114, 5152-5161を参照されたい)。
【0394】
1つの例は、免疫細胞、特に、抗原提示細胞において発現されることが知られているmiRNA結合部位を、ポリヌクレオチド内に操作して、miRNAにより媒介されるRNAの分解を通じてAPCにおけるポリヌクレオチドの発現を抑制し、抗原に媒介される免疫応答を緩和することができ、同時に、ポリヌクレオチドの発現は、免疫細胞に特異的なmiRNAが発現されない非免疫細胞においては維持される。
【0395】
様々ながん細胞/組織および他の疾患におけるmiRNAの差次的発現をプロファイリングするために、多くのmiRNA発現に関する研究が行われており、当技術分野において説明されている。一部のmiRNAは、ある特定のがん細胞において異常に過剰発現され、その他のものは、過少発現される。例えば、miRNAは、がん細胞(WO2008/154098、US2013/0059015、US2013/0042333、WO2011/157294)、がん幹細胞(US2012/0053224)、膵臓がんおよび疾患(US2009/0131348、US2011/0171646、US2010/0286232、US8389210)、喘息および炎症(US8415096)、前立腺がん(US2013/0053264)、肝細胞癌(WO2012/151212、US2012/0329672、WO2008/054828、US8252538)、肺がん細胞(WO2011/076143、WO2013/033640、WO2009/070653、US2010/0323357)、皮膚T細胞性リンパ腫(WO2013/011378)、結腸直腸がん細胞(WO2011/0281756、WO2011/076142)、がん陽性リンパ節(WO2009/100430、US2009/0263803)、上咽頭癌(EP2112235)、慢性閉塞性肺疾患(US2012/0264626、US2013/0053263)、甲状腺がん(WO2013/066678)、卵巣がん細胞(US2012/0309645、WO2011/095623)、乳がん細胞(WO2008/154098、WO2007/081740、US2012/0214699)、白血病およびリンパ腫(WO2008/073915、US2009/0092974、US2012/0316081、US2012/0283310、WO2010/018563)において、差次的に発現される。
【0396】
ヒト細胞
【0397】
本明細書に記載および例示されるように、網膜色素変性(RP)またはRHOと関連する任意の障害の改善に関して、遺伝子編集の主要な標的は、ヒト細胞である。例えば、ex vivo方法では、ヒト細胞は、体細胞であり得、体細胞は、記載される技法を使用して修飾された後に、分化した細胞、例えば、光受容細胞または網膜前駆細胞を生じ得る。例えば、in vivo方法では、ヒト細胞は、光受容細胞または網膜前駆細胞であり得る。
【0398】
自家細胞において遺伝子編集を実施することを必要とする患者に由来し、したがって、既に患者と完全にマッチしている自家細胞において遺伝子編集を実施することにより、患者へと安全に再導入することが可能であり、患者の疾患と関連する1つまたは複数の臨床状態の改善において有効であり得る細胞集団を効果的にもたらす細胞を生成することが可能である。
【0399】
前駆細胞(本明細書において幹細胞とも称される)は、増殖およびより多くの前駆細胞をもたらすことのいずれもが可能であり、分化細胞または分化可能な娘細胞をもたらし得る、多数の母細胞を発生させる能力を有する。娘細胞自体が、増殖し、その後、1つまたは複数の成熟細胞型へと分化する一方で、また、親の発生的潜在能を伴う1つまたは複数の細胞も保持する後代をもたらすように、誘導することができる。次いで、「幹細胞」という用語は、特定の状況下では、より特化したまたは分化した表現型へと分化する能力または潜在能を有し、ある特定の状況下では、実質的に分化せずに、増殖する能力を保持する、細胞を指す。一態様では、前駆細胞または幹細胞という用語は、それらの子孫細胞(後代)が、分化により、例えば、胚細胞および組織の、進行する多様化においてそうであるように、完全に個別の性格を獲得することにより、しばしば、異なる方向に特化する汎用母細胞を指す。細胞の分化とは、典型的に、多くの細胞分裂を介して生じる、複雑なプロセスである。分化細胞は、複能性細胞に由来することが可能であり、複能性細胞はそれ自体、複能性細胞に由来するなどである。これらの複能性細胞の各々は、幹細胞であると考えられるが、各々がもたらし得る細胞型の範囲は、かなり変動し得る。一部の分化細胞はまた、発生的潜在能が大きな細胞をもたらす能力も有する。このような能力は、天然の場合もあり、多様な因子による処理の際に、人工的に誘導される場合もある。多くの生物学的事例では、幹細胞はまた、1つを超える別個の細胞型の後代をもたらし得るため、「複能性」でもあり得るが、これは、「幹細胞性」であるために必要ではない。
【0400】
自己再生は、幹細胞の別の重要な側面でありうる。理論的に、自己再生は、2つの主要な機構のうちのいずれかにより生じうる。幹細胞は、一方の娘細胞が、幹細胞状態を保持し、他方の娘細胞が、何らかの別個の他の特異的機能および表現型を発現して、非対称的に分裂する場合がある。代替的に、集団内の幹細胞の一部が、2つの幹細胞へと、対称的に分裂することが可能であり、これにより、全体としての集団内に一部の幹細胞を維持するのに対し、集団内の他の細胞は、分化した後代だけをもたらす。一般に、「始原細胞」は、より始原性である(すなわち、発生経路または進行に沿って、完全な分化細胞より早期の段階にある)、細胞の表現型を有する。始原細胞はまた、顕著な、または極めて高度な、増殖潜在能も有する。始原細胞は、細胞が発生および分化する、発生の経路および環境に応じて、複数の別個の分化細胞型をもたらす場合もあり、単一の分化細胞型をもたらす場合もある。
【0401】
細胞の個体発生の文脈では、「分化した」または「~を分化させること」という形容詞は、相対的な用語である。「分化細胞」とは、比較する細胞より、発生経路をさらに下に進んだ細胞である。したがって、幹細胞は、系統制限前駆体細胞(lineage-restricted precursor cell)(筋細胞の前駆細胞など)へと分化することが可能であり、これは、経路をさらに下った、他の種類の前駆体細胞(筋細胞の前駆体細胞など)へと分化することが可能であり、次いで、筋細胞など、最終段階の分化細胞へと分化し、ある特定の組織型において、特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持する場合もあり、保持しない場合もある。
【0402】
誘導多能性幹細胞
【0403】
本明細書で記載される、遺伝子操作されたヒト細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)でありうる。iPSCを使用する利点は、細胞を、始原細胞が投与される同じ対象から導出しうることである。すなわち、体細胞は、対象から得、誘導多能性幹細胞へと再プログラム化し、次いで、対象へと投与するように、始原細胞へと再分化させることができる(例えば、自家細胞)。始原細胞は、自家供給源から本質的に導出されるため、別の対象または対象群に由来する細胞の使用と比較して、生着拒絶またはアレルギー応答の危険性を低減することができる。加えて、iPSCの使用は、胚供給源から得られた細胞に対する必要も無化する。したがって、一態様では、開示される方法で使用される幹細胞は、胚性幹細胞ではない。
【0404】
分化は、生理学的文脈では、一般に、不可逆的であるが、体細胞を、iPSCへと再プログラム化するためのいくつかの方法が最近開発されている。当業者には、例示的な方法が公知であり、本明細書の下記で略述する。
【0405】
「~を再プログラム化すること」という用語は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態を変更するまたは逆行させ工程を指す。言い換えると、再プログラム化することとは、細胞の分化を、より未分化なまたはより始原的な細胞型へと戻すように駆動する工程を指す。多くの初代細胞を培養することは、完全な分化特徴の、何らかの喪失をもたらしうることに留意されたい。したがって、分化細胞という用語に含まれるこのような細胞を単に培養するだけで、これらの細胞が、非分化細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞となるわけではない。分化細胞から多能性への移行は、培養物中で分化的性格の部分的な喪失をもたらす刺激を越えた、再プログラム化刺激を要求する。再プログラム化細胞はまた、培養物中では一般に、回数の限定された分裂能だけを有する初代親細胞と比べて、増殖可能性の喪失を伴わない、拡大継代能の特徴も有する。
【0406】
再プログラム化されるべき細胞は、再プログラム化する前に、部分分化している場合もあり、最終分化している場合もある。再プログラム化は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の、多能性状態または複能性状態への完全な逆行を包含しうる。再プログラム化は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の、未分化細胞(例えば、胚様細胞)への完全なまたは部分的な逆行を包含しうる。再プログラム化は、細胞による特定の遺伝子であって、その発現が、再プログラム化にさらに寄与する遺伝子の発現をもたらしうる。本明細書で記載されるある特定の例では、分化細胞(例えば、体細胞)の再プログラム化は、分化細胞に、未分化状態を取らせうる(例えば、分化細胞を、未分化細胞としうる)。結果として得られる細胞を、「再プログラム化細胞」または「誘導多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)」と称する。
【0407】
再プログラム化は、細胞の分化の間に生じる遺伝パターンであって、核酸修飾(例えば、メチル化)、クロマチン凝縮、後成的変化、ゲノムインプリンティングなどの遺伝性パターンの少なくとも一部の変更、例えば、逆行を伴いうる。再プログラム化は、既に多能性である細胞の、既存の未分化状態を単に維持すること、または既に複能性細胞(例えば、筋原性幹細胞)である細胞の、既存の完全未満の分化状態を維持することとは別個である。再プログラム化はまた、既に多能性または複能性である細胞の自己再生または増殖の促進とも別個であるが、一部の例では、本明細書で記載される組成物および方法はまた、このような目的でも有用でありうる。
【0408】
当技術分野では、体細胞から多能性幹細胞を作出するのに使用しうる多くの方法が公知である。体細胞を、多能性表現型へと再プログラム化する、任意のこのような方法が、本明細書で記載される方法における使用に適切であろう。
【0409】
転写因子の規定された組合せを使用して、多能性細胞を作出するための再プログラム化法については記載されている。Oct4、Sox2、Klf4、およびc-Mycの直接的な形質導入により、マウス体細胞を、発生の潜在能を拡大した、ES細胞様細胞へと転換することができる(例えば、TakahashiおよびYamanaka、Cell、126巻(4号):663~76頁(2006年)を参照されたい)。iPSCは、多能性関連の転写回路およびエピジェネティックランドスケープの大半を修復するので、ES細胞に似ている。加えて、マウスiPSCは、多能性についての全ての標準的アッセイ:具体的には、in vitroにおける、三胚葉の細胞型への分化、奇形腫の形成、キメラへの寄与、生殖細胞系列伝達[例えば、MaheraliおよびHochedlinger、Cell Stem Cell、3巻(6号):595~605頁(2008年)を参照されたい]、および四倍体補完法を満たす。
【0410】
ヒトiPSCは、同様の形質導入方法を使用して得ることができ、転写因子のトリオである、OCT4、SOX2、およびNANOGが、多能性を支配する転写因子のコアセットとして確立されている。例えば、Budniatzky and Gepstein, Stem Cells Transl Med. 3(4):448-57 (2014)、Barrett et al., Stem Cells Trans Med 3:1-6 sctm.2014-0121 (2014)、Focosi et al., Blood Cancer Journal 4: e211 (2014)を参照されたい。iPSCの作製は、従来通りにウイルスベクターを使用して、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸配列を、成体の体細胞へと導入することにより達成することができる。
【0411】
iPSCは、最終分化した体細胞から生成または得ることができるほか、成体幹細胞または体細胞性幹細胞から生成または得ることもできる。すなわち、非多能性前駆細胞を、再プログラム化することにより、多能性または複能性とすることができる。このような事例では、最終分化細胞を再プログラム化するのに要求されるほど多くの再プログラム化因子を含むことが必要ではない場合がある。さらに、再プログラム化は、再プログラム化因子の非ウイルス的導入により誘導することができ、例えば、タンパク質自体を導入することにより、または再プログラム化因子をコードする核酸を導入することにより、または翻訳の際に再プログラム化因子をもたらすメッセンジャーRNAを導入することにより誘導することができる(例えば、Warren et al., Cell Stem Cell, 7(5):618-30 (2010)を参照されたい。再プログラム化は、例えば、Oct-4(Oct-3/4またはPouf51としてもまた公知)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox18、NANOG、Klfl、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c-Myc、1-Myc、n-Myc、Rem2、Tert、およびLIN28を含む幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組合せを導入することにより達成することができる。本明細書に記載される方法および組成物を使用する再プログラム化は、Oct-3/4、Soxファミリーのメンバー、Klfファミリーのメンバー、およびMycファミリーのメンバーのうちの1つまたは複数を、体細胞へと導入することをさらに含み得る。本明細書に記載される方法および組成物は、Oct-4、Sox2、Nanog、c-MYC、およびKlf4のそれぞれのうちの1つまたは複数を、再プログラム化のために導入することをさらに含み得る。上記で言及した通り、再プログラム化のために使用される正確な方法は、本明細書に記載される方法および組成物にとって、必ずしも不可欠なわけではない。しかしながら、再プログラム化細胞から分化させた細胞を、例えば、ヒト治療において使用しようとする場合、一態様では、再プログラム化は、ゲノムを変更する方法によりなされるわけではない。したがって、このような例では、再プログラム化は、例えば、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターを使用せずに達成することができる。
【0412】
出発細胞集団から導出される再プログラム化の効率(すなわち、再プログラム化細胞の数)は、Shiら、Cell-Stem Cell、2巻:525~528頁(2008年);Huangfuら、Nature Biotechnology、26巻(7号):795~797頁(2008年);およびMarsonら、Cell-Stem Cell、3巻:132~135頁(2008年)により示される通り、多様な薬剤、例えば、低分子の添加により増強することができる。したがって、誘導多能性幹細胞作製の効率または速度を増強する薬剤または薬剤の組合せを、患者特異的または疾患特異的iPSCの作製において使用することができる。再プログラム化効率を増強する薬剤の一部の非限定的な例は、とりわけ、可溶性Wnt、Wnt馴化培地、BIX-01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害剤)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、バルプロ酸、5’-アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、およびトリコスタチン(TSA)を含む。
【0413】
再プログラム化増強剤の他の非限定的な例は、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えば、MK0683、ボリノスタット)および他のヒドロキサム酸)、BML-210、Depudecin(例えば、(-)-Depudecin)、HCトキシン、Nullscript(4-(1,3-ジオキソ-1H,3H-ベンゾ[デ]イソキノリン-2-イル)-N-ヒドロキシブタンアミド)、フェニルブチレート(例えば、フェニル酪酸ナトリウムおよびバルプロ酸(VPA)および他の短鎖脂肪酸)、Scriptaid、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHA化合物8、Apicidin、酪酸ナトリウム、酪酸ピバロイルオキシメチル(Pivanex、AN-9)、Trapoxin B、クラミドシン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としてもまた公知である)、ベンズアミド(例えば、CI-994(例えば、N-アセチルジナリン)およびMS-27-275)、MGCD0103、NVP-LAQ-824、CBHA(m-カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、Tubacin、A-161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3-Cl-UCHA(例えば、6-(3-クロロフェニルウレイド)カプロンヒドロキサム酸)、AOE(2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシデカン酸)、CHAP31、およびCHAP50を含む。他の再プログラム化増強剤は、例えば、HDACのドミナントネガティブ形態(例えば、触媒不活性形態)、siRNAによるHDAC阻害剤、およびHDACに特異的に結合する抗体を含む。このような阻害剤は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa、Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Titan Pharmaceuticals、MethylGene、およびSigma Aldrichから入手可能である。
【0414】
本明細書に記載される方法による使用のための多能性幹細胞の誘導を確認するために、単離されたクローンを、幹細胞マーカーの発現について調べることができる。体細胞に由来する細胞内のこのような発現により、細胞を、人工多能性幹細胞として同定する。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbxl5、Ecatl、Esgl、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Daxl、Zpf296、Slc2a3、Rexl、Utfl、およびNatlを含む非限定的な群から選択することができる。1つの場合には、例えば、Oct4またはNanogを発現する細胞は、多能性であると同定される。このようなマーカーの発現を検出するための方法は、例えば、RT-PCR、およびウエスタンブロットまたはフローサイトメトリー解析など、コードされたポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法を含み得る。検出は、RT-PCRを含み得るだけでなく、タンパク質マーカーの検出も含み得る。細胞内マーカーは、RT-PCR、または免疫細胞化学などのタンパク質検出法を介して、最も良好に同定され得、一方で細胞表面マーカーは、例えば、免疫細胞化学によって容易に同定される。
【0415】
単離された細胞の多能性幹細胞性は、iPSCが、三胚葉の各々の細胞へと分化する能力について査定する試験により確認することができる。一例として述べると、ヌードマウスにおける奇形腫形成を使用して、単離されたクローンの多能性について査定することができる。細胞を、ヌードマウスへと導入し、細胞から生じる腫瘍に対して、組織学および/または免疫組織化学を実施することができる。三胚葉全てに由来する細胞を含む腫瘍の増殖は、例えば、細胞が多能性幹細胞であることをさらに指し示す。
【0416】
網膜前駆細胞および光受容細胞
【0417】
一部の例では、本明細書に記載される遺伝子操作されたヒト細胞は、光受容細胞または網膜前駆細胞(RPC)である。RPCは、網膜の6つ全てのニューロンならびにミューラーグリアをもたらし得る、複能性前駆細胞である。ミューラーグリアは、網膜膠細胞の一種であり、網膜の主要な膠細胞構成要素である。それらの機能は、網膜のニューロンを補助すること、ならびに網膜の恒常性および完全性を維持することである。成体ヒト網膜から単離されたミューラーグリアは、桿体光受容器に分化することが示されている。パッチクランプ記録によるそのようなミューラーグリアに由来する光受容器の機能的特徴付けにより、それらの電気的特性が、成体桿体に匹敵することが明らかとなった(Giannelli et al., 2011, Stem Cells, (2):344-56)。RPCは、網膜形成の間に、徐々に、系統制限前駆体細胞へと特化し、その後、最終分化したニューロンまたはミューラーグリア(Mueuller glia)へと成熟する。胎児由来のヒト網膜前駆細胞(hRPC)は、最大で6回目の継代まで、網膜前駆細胞状態の指標である分子特徴を呈する。それらは、継代1回目から6回目まで、KI67、SOX2、およびビメンチン陽性細胞の割合の漸減を示し、一方で、ネスチンおよびPAX6の発現の持続は、継代6回目まで見られる。継代1回目のhRPCのマイクロアレイ分析は、初期網膜発生遺伝子:VIM(ビメンチン)、KI67、NES(ネスチン)、PAX6、SOX2、HES5、GNL3、OTX2、DACH1、SIX6、およびCHX10(VSX2)の発現を示す。hRPCは、本質的に機能性であり、興奮性神経伝達物質に応答する(Schmitt et al., 2009, Investigative Ophthalmology and Visual Sciences. 2009;50(12):5901-8)。網膜の最も外側の領域は、補助的な網膜色素上皮(RPE)層を含み、これは、栄養を輸送し、脱落した光受容器部分を再利用することによって、光受容器の健康状態を維持する。RPEは、脈絡膜と網膜との間の界面にある細胞外マトリックス構造体であるブルッフ膜に結合している。眼の内部へ向かって内側に移動し、RPEの反対側には、ニューロンの3つの層がある:光を感知する桿体および錐体光受容器、ニューロンをつなぐ中間層(アマクリン、双極細胞および水平細胞)、ならびに最も内側の神経節細胞の層、これは、光受容器層を起源とするシグナルを、視神経を通じて脳へと伝達する。一部の態様では、本明細書に記載される遺伝子操作されたヒト細胞は、光受容細胞であり、これは、網膜において見られる特化した種類のニューロンである。光受容器は、光を、生物学的プロセスを刺激することができるシグナルに変換し、視覚を担う。桿体および錐体は、視覚系への情報に寄与する、2つの古典的な光受容細胞である。
【0418】
網膜前駆細胞および光受容細胞の単離
【0419】
前駆細胞を含め、網膜細胞は、当技術分野において公知の任意の方法に従って、単離することができる。例えば、ヒト網膜細胞は、新しい外科手術標本から単離される。網膜色素上皮(RPE)は、組織を、IV型コラゲナーゼで消化させることによって、脈絡膜から分離させ、網膜色素上皮パッチを、培養する。外植片から100~500個の細胞の増殖後に、初代培養物を、継代させ(Ishida M. et al., Current Eye Research 1998; 17(4):392-402)、RPEマーカーの発現について特徴付ける。桿体は、パパインを使用して、生検網膜の破壊によって単離される。激しい破壊を回避し、細胞収率を改善するために、予防措置を講じる。単離した細胞を選別して、純粋な桿体細胞の集団を得、免疫染色によって、さらに特徴付ける(Feodorova et al., MethodsX 2015; 2:39-46)。
【0420】
錐体を単離するために、神経網膜を同定し、切り出し、10%ゼラチン上に置く。内部網膜層を、レーザーを使用して単離する。単離した錐体単層を、18時間培養し、光学顕微鏡法および透過電子顕微鏡法によって、未処理の網膜と比較して、任意の構造的損傷を調べる。細胞を、錐体特異的マーカーの発現について特徴付ける(Salchow et al., Current Eye Research 2001;22)。
【0421】
網膜前駆細胞を単離するために、生検網膜を、二重メス(dual scalpel)で細かく刻み、インキュベーターにおいて37℃で酵素消化させる。消化した細胞の上清を、遠心分離し、細胞を、無細胞網膜前駆細胞条件培地に再懸濁する。細胞を、新しい培地を含有する、フィブロネクチンをコーティングした組織培養フラスコへと移し、培養する(Klassen et al., Jornal of Neuroscience Research 2004; 77:334-343)。
【0422】
患者特異的なiPSCの創出
【0423】
本開示のex vivo方法の1つのステップは、患者特異的な1つのiPS細胞、患者特異的な複数のiPS細胞、または患者特異的なiPS細胞株を創出することを含み得る。TakahashiおよびYamanaka、2006年;Takahashi、Tanabeら、2007年において記載されている通り、当技術分野では、患者特異的なiPS細胞を創出するための多くの方法が確立されている。例えば、創出するステップは、a)体細胞、例えば、皮膚細胞または線維芽細胞を、患者から単離すること、およびb)多能性幹細胞となるように細胞を誘導するために、多能性関連遺伝子のセットを、体細胞へと導入することを含み得る。多能性関連遺伝子のセットは、OCT4、SOX1、SOX2、SOX3、SOX15、SOX18、NANOG、KLF1、KLF2、KLF4、KLF5、c-MYC、n-MYC、REM2、TERT、およびLIN28からなる群から選択される遺伝子のうちの1つまたは複数であり得る。
【0424】
患者の骨髄の生検または吸引の実施
【0425】
生検または吸引物は、身体から採取される組織または体液の試料である。多数の異なる種類の生検または吸引物が存在する。それらのほぼ全てが、鋭利なツールを使用して、少量の組織を摘出することを含む。生検が、皮膚または他の感受性領域に行われる場合、麻痺させる薬を、最初に適用してもよい。生検または吸引は、当技術分野において公知の方法のうちのいずれかに従って実施され得る。例えば、骨髄吸引の場合、大きな針を使用して、骨盤の骨に進入させ、骨髄を採取する。
【0426】
間葉幹細胞の単離
【0427】
間葉幹細胞は、当技術分野において公知の任意の方法に従って、患者の骨髄または末梢血などから単離することができる。例えば、骨髄吸引物を、ヘパリンを有するシリンジに採取してもよい。細胞を、洗浄し、Percoll(商標)密度勾配において遠心分離してもよい。細胞、例えば、血液細胞、肝臓細胞、間質細胞、マクロファージ、マスト細胞、および胸腺細胞を、密度勾配遠心分離培地、Percoll(商標)を使用して、分離してもよい。細胞を、次いで、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(低グルコース)において培養してもよい(Pittinger MF, Mackay AM, Beck SC et al., Science 1999; 284:143-147)。
【0428】
ゲノム編集したiPSCの、他の細胞型への分化
【0429】
本開示のex vivo方法の別のステップは、ゲノム編集したiPSCを、光受容細胞または網膜前駆細胞へと分化させることを含み得る。分化させるステップは、当技術分野において公知の任意の方法に従って実施することができる。例えば、iPSCを使用して、当技術分野において説明されているように、網膜オルガノイド(retinal organioid)および光受容器を生成することができる(Phillips et al., Stem Cells, June 2014, 32(6): pgs. 1480-1492、Zhong et al. Nat. Commun., 2014, 5: pg 4047、Tucker et al., PLoS One, April 2011, 6(4): e18992)。例えば、hiPSCを、Wnt、Nodal、およびNotch経路阻害剤(Noggin、Dk1、LeftyA、およびDAPT)、ならびに他の成長因子を含む、様々な処理を使用して、網膜前駆細胞へと分化させる。網膜前駆細胞を、光受容細胞へとさらに分化させるが、処理には、共培養系、RX+もしくはMitf+においてナイーブ網膜細胞に曝露し、続いて、レチノイン酸およびタウリンで処理すること、またはNoggin、Dkk1、DAPT、およびインスリン様成長因子を含む、いくつかの外因性因子に曝露することが含まれる(Yang et al., Stem Cells International 2016)。
【0430】
ゲノム編集した間葉幹細胞の、光受容細胞または網膜前駆細胞への分化
【0431】
本開示のex vivo方法の別のステップは、ゲノム編集した間葉幹細胞を、光受容細胞または網膜前駆細胞へと分化させることを含み得る。分化させるステップは、当技術分野において公知の任意の方法に従って実施することができる。
【0432】
細胞の、患者への埋め込み
【0433】
本開示のex vivo方法の別のステップは、光受容細胞または網膜前駆細胞を、患者へと埋め込むことを含み得る。この埋め込むステップは、当技術分野で公知の任意の埋め込み方法を使用して、達成することができる。例えば、遺伝子改変細胞を、患者の血液に直接注射してもよく、またはそうでなければ、患者に投与してもよい。
【0434】
本発明のex vivo方法の別のステップは、光受容細胞または網膜前駆細胞を、患者へと埋め込むことを含む。この埋め込むステップは、当技術分野で公知の任意の埋め込み方法を使用して、達成することができる。例えば、遺伝子改変細胞を、患者の眼に直接注射してもよく、またはそうでなければ、患者に投与してもよい。
【0435】
遺伝子改変細胞
【0436】
「遺伝子改変細胞」という用語は、ゲノム編集によって(例えば、CRISPR/Cas9/Cpf1系を使用して)導入された少なくとも1つの遺伝子改変を含む細胞を指す。本明細書における一部のex vivoでの例では、遺伝子改変細胞は、遺伝子改変された前駆細胞であり得る。本明細書における一部のin vivoでの例では、遺伝子改変細胞は、遺伝子改変された光受容細胞または網膜前駆細胞であり得る。外因性ゲノムターゲティング核酸および/またはゲノムターゲティング核酸をコードする外因性核酸を含む遺伝子改変細胞が、本明細書において想定される。
【0437】
「対照で処置された集団」という用語は、ゲノム編集の構成要素の付加を除き、同一な培地、ウイルスによる誘導、核酸配列、温度、コンフルエンシー、フラスコサイズ、pHなどで処置された細胞の集団について記載する。当技術分野において公知の任意の方法、例えば、RHOタンパク質のウエスタンブロット分析、またはRHO mRNAを定量するためのリアルタイムPCRを使用して、RHO遺伝子の回復またはタンパク質の発現もしくは活性を測定することができる。
【0438】
「単離細胞」という用語は、それが元来見出される生物から取り出された細胞、またはこのような細胞の子孫を指す。任意選択で、細胞は、in vitroにおいて、例えば、規定された条件下、または他の細胞の存在下で培養することができる。任意選択で、細胞は、後に、第2の生物へと導入することもでき、それが単離された生物(またはそれを子孫とする細胞)へと再導入することもできる。
【0439】
細胞の単離集団に関する「単離集団」という用語は、混合細胞集団または異質細胞集団から、取り出され、分離された細胞集団を指す。場合によって、単離集団は、細胞がそこから単離されるかまたは濃縮された異質集団と比較して、実質的に純粋な細胞集団でありうる。場合によって、単離集団は、ヒト始原細胞の単離集団、例えば、ヒト始原細胞と、ヒト始原細胞がそこから導出された細胞とを含む異質細胞集団と比較して、実質的に純粋なヒト始原細胞の集団でありうる。
【0440】
特定の細胞集団に関する、「実質的に増強された」という用語は、特定の種類の細胞の発生が、例えば、網膜色素変性(RP)を改善するための、このような細胞の所望のレベルに応じて、既存のまたは基準レベルと比べて、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも400倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、少なくとも20000倍、少なくとも100000倍、またはこれを超える倍数だけ増加する細胞集団を指す。
【0441】
特定の細胞集団に関する「実質的に濃縮された」という用語は、全細胞集団を構成する細胞に照らして、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、またはこれを超える細胞集団を指す。
【0442】
特定の細胞集団に関する「実質的に純粋」という用語は、全細胞集団を構成する細胞に関して、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%純粋である細胞集団を指す。すなわち、前駆細胞集団に関して、「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、本明細書の用語により規定される前駆細胞ではない細胞を、約20%未満、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、または1%未満含有する細胞集団を指す。
【0443】
送達
【0444】
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)および/またはエンドヌクレアーゼポリヌクレオチド(複数可)(RNAまたはDNA)は、当技術分野で公知のウイルス性または非ウイルス性の送達媒体によって送達することができる。代替的に、エンドヌクレアーゼポリペプチドは、当技術分野で公知のウイルス性または非ウイルス性送達媒体によって、例えば、電気穿孔もしくは脂質ナノ粒子によって、送達することができる。さらに代替的な態様では、DNAエンドヌクレアーゼを、1つまたは複数のポリペプチドとして単独で送達するか、または1つもしくは複数のガイドRNA、もしくはtracrRNAと併せた1つもしくは複数のcrRNAとあらかじめ複合体化させた、1つまたは複数のポリペプチドとして送達することができる。
【0445】
ポリヌクレオチドは、ナノ粒子、リポソーム、リボヌクレオタンパク質、正に帯電させたペプチド、低分子RNAコンジュゲート、アプタマー-RNAキメラ、およびRNA-融合タンパク質複合体を含むがこれらに限定されない、非ウイルス性送達媒体により送達することができる。一部の例示的な非ウイルス性送達媒体については、Peer and Lieberman, Gene Therapy, 18: 1127-1133 (2011)(これは、他のポリヌクレオチドの送達にもまた有用な、siRNAのための非ウイルス性送達媒体に焦点を当てている)において記載されている。
【0446】
ガイドRNA、sgRNA、およびエンドヌクレアーゼをコードするmRNAなどのポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)により、細胞または患者へと送達することができる。
【0447】
LNPは、1000nm未満、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、または25nmの直径を有する任意の粒子を指す。代替的に、ナノ粒子は、1~1000nm、1~500nm、1~250nm、25~200nm、25~100nm、35~75nm、または25~60nmのサイズの範囲であり得る。
【0448】
LNPは、カチオン性脂質から作製することもでき、アニオン性脂質から作製することもでき、中性脂質から作製することもできる。融合性リン脂質であるDOPEまたは膜成分であるコレステロールなどの中性脂質を、トランスフェクション活性およびナノ粒子安定性を増強する「ヘルパー脂質」として、LNP中に組み入れることができる。カチオン性脂質の限界は、低い安定性および急速なクリアランスに起因する低い効能ならびに炎症性または抗炎症性応答の発生を含む。
【0449】
LNPはまた、疎水性脂質から構成される場合もあり、親水性脂質から構成される場合もあり、疎水性脂質および親水性脂質の両方から構成される場合もある。
【0450】
当技術分野で公知の、任意の脂質または脂質の組合せを使用して、LNPを作製することができる。LNPを作製するのに使用される脂質の例は、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、およびGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)である。カチオン性脂質の例は、98N12-5、C12-200、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、および7C1である。中性脂質の例は、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、およびSMである。PEGで修飾された脂質の例は、PEG-DMG、PEG-CerC14、およびPEG-CerC20である。
【0451】
脂質を、任意の数のモル比で組み合わせて、LNPを作製することができる。加えて、ポリヌクレオチド(複数可)を、脂質(複数可)と、広範にわたるモル比で組み合わせて、LNPを作製することができる。
【0452】
既に明示した通り、部位特異的ポリペプチドおよびゲノムターゲティング核酸は、それぞれ、細胞または患者へと、別個に投与することができる。他方、部位特異的ポリペプチドは、1つもしくは複数のガイドRNA、またはtracrRNAと併せた1つもしくは複数のcrRNAと、あらかじめ複合体化させることができる。次いで、あらかじめ複合体化させた材料を、細胞または患者へと投与することができる。このようなあらかじめ複合体化させた材料は、リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)として公知である。
【0453】
RNAは、RNAまたはDNAとの特異的相互作用を形成することが可能である。この特性は、多くの生物学的プロセスで利用されているが、核酸に富む細胞内環境における、無差別的な相互作用の危険性とも隣り合わせである。この問題に対する1つの解決法は、RNAを、エンドヌクレアーゼと、あらかじめ複合体化させる、リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)の形成である。RNPの別の利点は、RNAの、分解からの保護である。
【0454】
RNP内のエンドヌクレアーゼは、修飾することもでき、非修飾とすることもできる。同様に、gRNA、crRNA、tracrRNA、またはsgRNAは、修飾することもでき、非修飾とすることもできる。当技術分野では、多数の修飾が公知であり、使用することができる。
【0455】
エンドヌクレアーゼとsgRNAとは、一般に、1:1のモル比で組み合わせることができる。代替的に、エンドヌクレアーゼと、crRNAと、tracrRNAとは、一般に、1:1:1のモル比で組み合わせることができる。しかし、広範にわたるモル比を使用して、RNPを作製することができる。
【0456】
AAV(アデノ随伴ウイルス)
【0457】
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、送達のために使用することができる。当技術分野では、パッケージされるAAVゲノムであって、送達されるポリヌクレオチド、repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能を含むAAVゲノムを、細胞へともたらす、rAAV粒子を作製する技法が標準的である。rAAVの作製は典型的に、以下の構成要素:rAAVゲノム、rAAVゲノムとは別個の(すなわち、rAAVゲノム内には存在しない)AAV repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が、単一の細胞(本明細書では、パッケージング細胞として表す)内に存在することを要求する。AAV repおよびcap遺伝子は、組換えウイルスが由来し得る、任意のAAV血清型に由来し得、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型であって、本明細書中に記載されるAAV血清型を含むがこれらに限定されないAAV血清型に由来し得る。偽型rAAVの作製については、例えば、国際特許出願公開第WO 01/83692号に開示されている。
【0458】
本明細書に開示されるAAV配列は、RHO遺伝子内のP23H変異を標的とするsgRNAを含み得る。例えば、pSIA010は、RHO遺伝子内のP23H変異を標的とするsgRNAをコードするAAV配列(配列番号5339)を含む。sgRNAは、配列番号5290(sgRNAプロトスペーサー配列)および配列番号5327(sgRNA骨格配列)を含む。pSIA011は、RHO遺伝子内のP23H変異を標的とするsgRNAをコードするAAV配列(配列番号5340)を含む。sgRNAは、配列番号5291(sgRNAプロトスペーサー配列)および配列番号5327(sgRNA骨格配列)を含む。
【0459】
AAV血清型
【0460】
本開示の組成物をコードするポリヌクレオチド、例えば、本開示のエンドヌクレアーゼ、ドナー配列、またはRNAガイド分子をパッケージングするAAV粒子は、任意の天然または組換えAAV血清型を含み得るか、またはそれに由来し得る。本開示によると、AAV粒子は、以下のAAV1、AAV10、AAV106.1/hu.37、AAV11、AAV114.3/hu.40、AAV12、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.1/hu.43、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV16.12/hu.11、AAV16.3、AAV16.8/hu.10、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2、AAV2.5T、AAV2-15/rh.62、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV2-3/rh.61、AAV24.1、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV27.3、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV2G9、AAV-2-pre-miRNA-101、AAV3、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-11/rh.53、AAV3-3、AAV33.12/hu.17、AAV33.4/hu.15、AAV33.8/hu.16、AAV3-9/rh.52、AAV3a、AAV3b、AAV4、AAV4-19/rh.55、AAV42.12、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV4-4、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV4-8/r11.64、AAV4-8/rh.64、AAV4-9/rh.54、AAV5、AAV52.1/hu.20、AAV52/hu.19、AAV5-22/rh.58、AAV5-3/rh.57、AAV54.1/hu.21、AAV54.2/hu.22、AAV54.4R/hu.27、AAV54.5/hu.23、AAV54.7/hu.24、AAV58.2/hu.25、AAV6、AAV6.1、AAV6.1.2、AAV6.2、AAV7、AAV7.2、AAV7.3/hu.7、AAV8、AAV-8b、AAV-8h、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAVA3.3、AAVA3.4、AAVA3.5、AAVA3.7、AAV-b、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5R1、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAV-DJ、AAV-DJ8、AAVF3、AAVF5、AAV-h、AAVH-1/hu.1、AAVH2、AAVH-5/hu.3、AAVH6、AAVhE1.1、AAVhER1.14、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhER1.23、AAVhEr1.35、AAVhEr1.36、AAVhEr1.5、AAVhEr1.7、AAVhEr1.8、AAVhEr2.16、AAVhEr2.29、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhEr2.4、AAVhEr3.1、AAVhu.1、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.11、AAVhu.12、AAVhu.13、AAVhu.14/9、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.19、AAVhu.2、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.3、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.4、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.5、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.53、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.6、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.7、AAVhu.8、AAVhu.9、AAVhu.t 19、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVLG-9/hu.39、AAV-LK01、AAV-LK02、AAVLK03、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAVN721-8/rh.43、AAV-PAEC、AAV-PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAVpi.1、AAVpi.2、AAVpi.3、AAVrh.10、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.2、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.2R、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.43、AAVrh.44、AAVrh.45、AAVrh.46、AAVrh.47、AAVrh.48、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.50、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.55、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.59、AAVrh.60、AAVrh.61、AAVrh.62、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.65、AAVrh.67、AAVrh.68、AAVrh.69、AAVrh.70、AAVrh.72、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh8R、AAVrh8R A586R変異体、AAVrh8R R533A変異体、BAAV、BNP61 AAV、BNP62 AAV、BNP63 AAV、ウシAAV、ヤギAAV、日本AAV 10、真型AAV(ttAAV)、UPENN AAV 10、AAV-LK16、AAAV、AAVシャッフル100-1、AAVシャッフル100-2、AAVシャッフル100-3、AAVシャッフル100-7、AAVシャッフル10-2、AAVシャッフル10-6、AAVシャッフル10-8、AAV SM 100-10、AAV SM 100-3、AAV SM 10-1、AAV SM 10-2、および/またはAAV SM 10-8を含むがこれらに限定されない、血清型のうちのいずれかおよびそれらのバリアントから選択される血清型を利用し得るか、またはそれに基づき得る。
【0461】
一部の例では、AAV血清型は、N Pulicherla et al. (Molecular Therapy 19(6):1070-1078 (2011)によって説明されるように、AAV9配列における変異、例えば、限定されないが、AAV9.9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84であり得るか、またはそれを有し得る。
【0462】
一部の例では、AAV血清型は、米国特許第6156303号に記載される配列、例えば、限定されないが、AAV3B(US 6156303の配列番号1および10)、AAV6(US 6156303の配列番号2、7、および11)、AAV2(US 6156303の配列番号3および8)、AAV3A(US 6156303の配列番号4および9)、またはこれらの誘導体であり得るか、またはそれを有し得る。
【0463】
一部の例では、血清型は、Grimm et al. (Journal of Virology 82(12): 5887-5911 (2008))によって説明されるように、AAVDJまたはそのバリアント、例えば、AAVDJ8(またはAAV-DJ8)であり得る。AAVDJ8のアミノ酸配列は、ヘパリン結合ドメイン(HBD)を除去するために、2つまたはそれよりも多くの変異を含み得る。非限定的な例として、米国特許第7,588,772号において配列番号1として記載されるAAV-DJ配列は、2つの変異:(1)アミノ酸587におけるアルギニン(R、Arg)が、グルタミン(Q、Gln)へと変化する、R587Q、および(2)アミノ酸590におけるアルギニン(R、Arg)が、スレオニン(T、Thr)へと変化する、R590Tを含み得る。別の非限定的な例としては、3つの変異:(1)アミノ酸406におけるリシン(K、Lys)が、アルギニン(R、Arg)へと変化する、K406R、(2)アミノ酸587におけるアルギニン(R、Arg)が、グルタミン(Q、Gln)へと変化する、R587Q、および(3)アミノ酸590におけるアルギニン(R、Arg)が、スレオニン(T、Thr)へと変化する、R590Tを含み得る。
【0464】
一部の例では、AAV血清型は、国際公開第WO2015121501号に記載される配列、例えば、限定されないが、真型AAV(true type AAV)(ttAAV)(WO2015121501の配列番号2)、「UPenn AAV10」(WO2015121501の配列番号8)、「日本AAV10(Japanese AAV10)」(WO2015121501の配列番号9)、またはこれらのバリアントであり得るか、またはそれを有し得る。
【0465】
本開示によると、AAVキャプシド血清型選択または使用は、様々な種に由来し得る。1つの例では、AAVは、トリAAV(AAAV)であり得る。AAAV血清型は、米国特許第9238800号に記載される配列、例えば、限定されないが、AAAV(US 9,238,800の配列番号1、2、4、6、8、10、12、および14)、またはこれらのバリアントであり得るか、またはそれを有し得る。
【0466】
1つの例では、AAVは、ウシAAV(BAAV)であり得る。BAAV血清型は、米国特許第9,193,769号に記載される配列、例えば、限定されないが、BAAV(US 9193769の配列番号1および6)、またはこれらのバリアントであり得るか、またはそれを有し得る。BAAV血清型は、米国特許第US7427396号に記載される配列、例えば、限定されないが、BAAV(US7427396の配列番号5および6)、またはこれらのバリアントであり得るか、またはそれを有し得る。
【0467】
1つの例では、AAVは、ヤギAAVであり得る。ヤギAAV血清型は、米国特許第US7427396号に記載される配列、例えば、限定されないが、ヤギAAV(US7427396の配列番号3)、またはそのバリアントであり得るか、またはそれを有し得る。
【0468】
他の例では、AAVは、2つまたはそれよりも多くの親血清型に由来するハイブリッドAAVとして操作してもよい。1つの例では、AAVは、AAV2およびAAV9に由来する配列を含む、AAV2G9であってもよい。AAV2G9 AAV血清型は、米国特許公開第US20160017005号に記載される配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0469】
1つの例では、AAVは、Pulicherla et al. (Molecular Therapy 19(6):1070-1078 (2011)によって説明されるように、アミノ酸390~627(VP1番号付け)における変異を有する、AAV9キャプシドライブラリーによって生成された血清型であってもよい。血清型ならびに対応するヌクレオチドおよびアミノ酸の置換は、AAV9.1(G1594C;D532H)、AAV6.2(T1418AおよびT1436X;V473DおよびI479K)、AAV9.3(T1238A;F413Y)、AAV9.4(T1250CおよびA1617T;F417S)、AAV9.5(A1235G、A1314T、A1642G、C1760T;Q412R、T548A、A587V)、AAV9.6(T1231A;F411I)、AAV9.9(G1203A、G1785T;W595C)、AAV9.10(A1500G、T1676C;M559T)、AAV9.11(A1425T、A1702C、A1769T;T568P、Q590L)、AAV9.13(A1369C、A1720T;N457H、T574S)、AAV9.14(T1340A、T1362C、T1560C、G1713A;L447H)、AAV9.16(A1775T;Q592L)、AAV9.24(T1507C、T1521G;W503R)、AAV9.26(A1337G、A1769C;Y446C、Q590P)、AAV9.33(A1667C;D556A)、AAV9.34(A1534G、C1794T;N512D)、AAV9.35(A1289T、T1450A、C1494T、A1515T、C1794A、G1816A;Q430L、Y484N、N98K、V606I)、AAV9.40(A1694T、E565V)、AAV9.41(A1348T、T1362C;T450S)、AAV9.44(A1684C、A1701T、A1737G;N562H、K567N)、AAV9.45(A1492T、C1804T;N498Y、L602F)、AAV9.46(G1441C、T1525C、T1549G;G481R、W509R、L517V)、9.47(G1241A、G1358A、A1669G、C1745T;S414N、G453D、K557E、T582I)、AAV9.48(C1445T、A1736T;P482L、Q579L)、AAV9.50(A1638T、C1683T、T1805A;Q546H、L602H)、AAV9.53(G1301A、A1405C、C1664T、G1811T;R134Q、S469R、A555V、G604V)、AAV9.54(C1531A、T1609A;L511I、L537M)、AAV9.55(T1605A;F535L)、AAV9.58(C1475T、C1579A;T492I、H527N)、AAV.59(T1336C;Y446H)、AAV9.61(A1493T;N498I)、AAV9.64(C1531A、A1617T;L511I)、AAV9.65(C1335T、T1530C、C1568A;A523D)、AAV9.68(C1510A;P504T)、AAV9.80(G1441A,;G481R)、AAV9.83(C1402A、A1500T;P468T、E500D)、AAV9.87(T1464C、T1468C;S490P)、AAV9.90(A1196T;Y399F)、AAV9.91(T1316G、A1583T、C1782G、T1806C;L439R、K528I)、AAV9.93(A1273G、A1421G、A1638C、C1712T、G1732A、A1744T、A1832T;S425G、Q474R、Q546H、P571L、G578R、T582S、D611V)、AAV9.94(A1675T;M559L)およびAAV9.95(T1605A;F535L)であり得るが、これらに限定されない。
【0470】
1つの例では、AAVは、少なくとも1つのAAVキャプシドCD8+T細胞エピトープを含む、血清型であってもよい。非限定的な例として、血清型は、AAV1、AAV2、またはAAV8であり得る。
【0471】
1つの例では、AAVは、バリアント、例えば、Deverman. 2016. Nature Biotechnology. 34(2): 204-209に記載されるPHP.AまたはPHP.Bであってもよい。
【0472】
1つの例では、AAVは、配列番号4697~5265および表4に見出されるもののうちのいずれかから選択される血清型であってもよい。
【0473】
1つの例では、AAVは、配列番号4697~5265および表4に記載される配列、断片、またはバリアントによってコードされ得る。
【0474】
パッケージング細胞を作製する方法は、AAV粒子の作製に必要な構成要素の全てを安定に発現する細胞株を作り出すステップを含む。例えば、AAV repおよびcap遺伝子を欠くrAAVゲノム、rAAVゲノムとは別個のAAV repおよびcap遺伝子、ならびに選択可能なマーカー、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を含む、プラスミド(または複数のプラスミド)が、細胞のゲノムに組み込まれる。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al., 1982, Proc. Natl. Acad. S6. USA, 79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む合成リンカーの付加(Laughlin et al., 1983, Gene, 23:65-73)、または直接の平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter, 1984, J. Biol. Chem., 259:4661-4666)などの手技によって、細菌プラスミドに導入されている。次いで、パッケージング細胞株に、ヘルパーウイルス、例えば、アデノウイルスを感染させることができる。この方法の利点は、細胞が、選択可能であり、大規模なrAAVの作製に好適であることである。好適な方法の他の例は、プラスミドではなく、アデノウイルスまたはバキュロウイルスを利用して、rAAVゲノムならびに/またはrepおよびcap遺伝子を、パッケージング細胞に導入する。
【0475】
rAAV作製の一般原理については、例えば、Carter, 1992, Current Opinions in Biotechnology, 1533-539; and Muzyczka, 1992, Curr. Topics in Microbial. and Immunol., 158:97-129)において総説されている。様々なアプローチが、Ratschin et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072 (1984); Hermonat et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6466 (1984); Tratschin et al., Mo1. Cell. Biol. 5:3251 (1985); McLaughlin et al., J. Virol., 62:1963 (1988);およびLebkowski et al., 1988 Mol. Cell. Biol., 7:349 (1988)に記載されている。Samulski et al. (1989, J. Virol., 63:3822-3828)、米国特許第5,173,414号、WO 95/13365および対応する米国特許第5,658.776号、WO 95/13392、WO 96/17947、PCT/US98/18600、WO 97/09441(PCT/US96/14423)、WO 97/08298(PCT/US96/13872)、WO 97/21825(PCT/US96/20777)、WO 97/06243(PCT/FR96/01064)、WO 99/11764、Perrin et al. (1995) Vaccine 13:1244-1250; Paul et al. (1993) Human Gene Therapy 4:609-615、Clark et al. (1996) Gene Therapy 3:1124-1132、米国特許第5,786,211号、米国特許第5,871,982号、ならびに米国特許第6,258,595号。
【0476】
AAVベクターの血清型は、標的細胞型とマッチさせることができる。例えば、以下の例示的な細胞型には、とりわけ、表示のAAV血清型を形質導入することができる。
【表4】
【0477】
アデノ随伴ウイルスベクターに加えて、他のウイルスベクターを使用することができる。そのようなウイルスベクターとしては、レンチウイルス、アルファウイルス、エンテロウイルス、ペスチウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、パポーバウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、および単純ヘルペスウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0478】
一部の場合には、Cas9 mRNA、RHO遺伝子の1つまたは2つのローカスをターゲティングするsgRNA、およびドナーDNAは、それぞれ、別個に脂質ナノ粒子へと製剤化され得るか、または全てが1つの脂質ナノ粒子へと共製剤化される。
【0479】
一部の場合には、Cas9 mRNAは、脂質ナノ粒子中に製剤化され得るが、一方でsgRNAおよびドナーDNAは、AAVベクターで送達され得る。
【0480】
Cas9ヌクレアーゼは、DNAプラスミドとして、mRNAとして、またはタンパク質として送達する選択肢が、利用可能である。ガイドRNAは、同じDNAから発現されてもよく、またはRNAとして送達されてもよい。RNAは、その半減期を変更もしくは改善するか、または免疫応答の可能性もしくは程度を減少させるように、化学修飾されていてもよい。エンドヌクレアーゼタンパク質は、送達の前に、gRNAと複合体化させてもよい。ウイルスベクターは、効率的な送達を可能にし、Cas9の分割バージョンおよびCas9のより小さいオルソログは、HDRのドナーで可能なように、AAVにパッケージすることができる。これらの構成要素のそれぞれを送達することができる、一連の非ウイルス性送達方法もまた、存在し得るか、または非ウイルス性方法およびウイルス性方法を、タンデムで利用してもよい。例えば、ナノ粒子を使用して、タンパク質およびガイドRNAを送達してもよく、一方で、AAVを使用して、ドナーDNAを送達してもよい。
【0481】
自己不活性化(SIN)CRISPR-Cas系
【0482】
「自己不活性化」(SIN)CRISPR-Cas系が、本明細書に開示される。SIN CRISPR-Cas系は、1つまたは複数のセグメントを含み得る。SIN CRISPR-Cas系は、AAV系であり得る。SIN CRISPR-Cas系は、AAV5系であり得る。
【0483】
第1のセグメントは、部位特異的変異誘発を誘導する1つまたは複数のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る(例えば、Cas9またはCpf1)。第1のセグメントは、開始コドン、終止コドン、ポリ(A)終結部位、およびイントロンをさらに含み得る。そのようなポリペプチドは、Streptococcus pyogenes Cas9(SpCas9)、Staphylococcus aureus Cas9(SaCas9)、またはそれらの任意のバリアントであり得る。プロモーターとして機能するヌクレオチド配列が、第1のセグメントに作動可能に連結されていてもよい。プロモーターは、空間制限プロモーター(spatially-restricted promoter)、sgRNAを1つの方向に駆動し、Cas9を反対の方向(opposite orientation)に駆動する、二方向性プロモーター、または誘導性プロモーターであり得る。空間制限プロモーターは、任意のユビキタスプロモーター、任意の組織または細胞型特異的プロモーター、肝細胞特異的プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、骨格筋特異的プロモーター、肺前駆細胞特異的プロモーター、光受容器特異的プロモーター、および網膜色素上皮(RPE)選択的プロモーターからなる群から選択され得る。プロモーターは、sEF1αプロモーターであってもよく、GRK1プロモーターであってもよい。
【0484】
第2のセグメントは、sgRNAをコードするヌクレオチド配列を含み得る。sgRNAは、配列番号5287~5291(図2B)、5319~5322(図2E)、5358(図2H)、5302~5304、5351~5356、および5360のうちのいずれかを含み得る。sgRNAは、SIN部位およびゲノム標的配列に実質的に相補的であり得る。「ハイブリダイズ可能」または「相補的」または「実質的に相補的」とは、核酸(例えば、RNA)が、適切なin vitroおよび/またはin vivoの温度および溶液のイオン強度の条件下において、非共有結合して、例えば、ワトソン・クリック塩基対を形成するか、配列特異的な逆平行様式で別の核酸に「アニールする」または「ハイブリダイズ」する(すなわち、核酸が、相補的な核酸に特異的に結合する)ことを可能にする、ヌクレオチドの配列を含むことを意味する。当技術分野において公知のように、標準的なワトソン・クリック塩基対合は、アデニン(A)がチミジン(T)と対合すること、アデニン(A)がウラシル(U)と対合すること、およびグアニン(G)がシトシン(C)と対合すること[DNA、RNA]を含む。一部の例では、sgRNAは、少なくとも1つの位置を除き、SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的であり得る。一部の例では、sgRNAは、少なくとも2つの位置を除き、SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的であり得る。
【0485】
1つまたは複数の第3のセグメントは、第1のセグメントの5’末端(開始コドンの上流および/もしくは転写開始部位の下流)、第1のセグメントを分割するイントロン(天然もしくはキメラ)内、または第1のセグメントの3’末端(終止コドンとポリ(A)終結部位との間)に位置し得る。別の例では、1つまたは複数の第3のセグメントは、第1のセグメントの5’末端および第1のセグメントを分割するイントロン(天然もしくはキメラ)内に位置し得る。第3のセグメントは、100ヌクレオチド未満の長さであり得る。例えば、第3のセグメントは、20~99、30~99、40~99、50~99、60~99、70~99、80~99、および90~99ヌクレオチドの長さであり得る。第3のセグメントは、50ヌクレオチド未満の長さであり得る。例えば、第3のセグメントは、20~49、25~49、30~49、35~49、40~49、および45~49ヌクレオチドの長さであり得る。
【0486】
1つまたは複数の第3のセグメントは、自己不活性化(SIN)部位を含み得る。SIN部位またはP23H標的部位は、本明細書において使用される場合、P23H変異を含むRHO遺伝子の20~50ヌクレオチドの配列である(配列番号5313および5314)(表5)。SIN部位は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む。
【表5】
【0487】
gRNAまたはsgRNAのスペーサー配列は、SIN部位内に位置するプロトスペーサー配列に相補的な鎖とハイブリダイズし、これにより、gRNA-エンドヌクレアーゼ複合体またはsgRNA-エンドヌクレアーゼ複合体による編集が生じ、最終的に、エンドヌクレアーゼの不活性化がもたらされる(例えば、Cas9またはCpf1)。P23H変異を含むRHO遺伝子の20~50ヌクレオチドの配列を含むSIN部位は、sgRNAのうちの1つまたは複数が、少なくとも1~2つの位置において、SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的でない可能性があるとしても、配列番号5287~5291(図2B)、5319~5322(図2E)、および5358(図2H)を含むsgRNAのうちのいずれかにより標的とされ得る。
【0488】
他の例では、SIN部位は、表5に列挙される配列と比較して、長さが短くてもよい。例えば、SIN部位は、配列番号5277~5281(図2A)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5315~5318(図2D)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5357(図2G)およびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5297~5301(図2C)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5323~5326(図2F)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5359(図2I)およびPAMであり得る。
【0489】
他の例では、SIN部位は、sgRNAの対応するプロトスペーサー配列よりも短くてもよい。例えば、sgRNAのプロトスペーサー配列は、24ヌクレオチドの長さであり得、一方で、対応するSIN部位は、より短いプロトスペーサー(わずか23、22、21、20、19、18、または17ヌクレオチドの長さ)およびPAMを含んでもよい。この短縮されたSIN部位(依然としてsgRNAのプロトスペーサー配列に対応している)は、ゲノム標的配列が、短縮されたSIN部位よりも効率的に切断されるのを可能にする。この理由のため、配列番号5277~5281(図2A)、5315~5318(図2D)、および5357(図2G)、または配列番号5297~5301(図2C)、5323~5326(図2F)、および5359(図2I)における配列のうちのいずれか1つは、1、2、3、4、5、6、または7ヌクレオチド短縮されていてもよく、PAM配列とともにSIN部位として使用することができる。これらの例では、SIN部位は、20ヌクレオチドを上回る長さであってもよく、20ヌクレオチド未満の長さであってもよい。
【0490】
SIN-AAV系において、エンドヌクレアーゼは、1つまたは複数のsgRNAによって、1つまたは複数のガイド標的配列へとガイドされ得る。1つまたは複数のゲノム標的配列は、RHO遺伝子内のP23H変異であり得る。エンドヌクレアーゼは、さらに、エンドヌクレアーゼおよび系の構成要素を発現するSIN-AAV系へとガイドされてもよい。標的とされ得るSIN-AAV系の構成要素の例としては、SIN-AAV系のベクターの必須配列(例えば、ウイルス逆方向末端反復)、編集に重要な遺伝子の発現を駆動するプロモーター(例えば、sgRNAもしくはエンドヌクレアーゼ遺伝子)、Cas9もしくはCpf1のオープンリーディングフレーム(ORF)、コードされる遺伝子を分割するイントロン、またはCas9もしくはCpf1のORFの5’もしくは3’に位置するかまたはイントロンに位置するノンコーディング領域(SIN部位)が挙げられる。これにより、1つまたは複数の標的ゲノムローカスの編集をもたらし、その後、エンドヌクレアーゼおよび/または系の他の必須構成要素(例えば、sgRNA)の発現の低減または排除をもたらす、自己制限性編集活性が生じる。SIN-AAV系における遺伝子のこの自己制限型発現(self-limited expression)は、オフターゲット編集の低減、および編集が成功した細胞が患者の免疫系によって標的とされる危険性の低減をもたらすことができる。
【0491】
1つまたは複数のベクターは、本開示のSIN-AAV系をコードし得る。1つのみのベクターによりSIN-AAV系全体をコードする場合、この系は、「オールインワン(all-in-one)」SIN系と称される。例えば、第1のセグメント、第2のセグメント、および第3のセグメントが、「オールインワン」SIN AAV系に一緒に提供され得る。2つのベクターによりSIN-AAV系全体をコードする場合、その系は、「オールインツー(all-in-two)」SIN系と称される。例えば、第1のセグメントおよび第3のセグメントが、「オールインツー」SIN AAV系の第1のベクターにおいて提供され得、第2のセグメントが、第2のベクターにおいて提供され得る。
【0492】
オールインワンSIN-AAV系
【0493】
1つの例では、オールインワンSIN系は、エンドヌクレアーゼORFおよびsgRNA遺伝子を含むベクターを含み得る。ベクターは、エンドヌクレアーゼORFの5’および3’の位置、ならびにエンドヌクレアーゼORFを分割するイントロン内に、SIN部位をさらに含み得る。sgRNAは、SIN部位に実質的に相補的であり得る。sgRNAはまた、ゲノム標的配列に実質的に相補的であり得る。したがって、sgRNAの配列は、それが、ベクター上のSIN部位および1つまたは複数のゲノム標的配列の両方とハイブリダイズすることができるようなものである。1つもしくは複数のゲノム標的またはSIN部位とハイブリダイズする場合、sgRNAは、1つまたは複数のミスマッチ塩基を含み得る。系は、標的とされるゲノムローカスにおける自己制限編集、続いて、エンドヌクレアーゼ遺伝子の切除および/または不活性化をもたらし得る。
【0494】
別の例では、オールインワンSIN系は、エンドヌクレアーゼORF、第1のsgRNA遺伝子、および第2のsgRNA遺伝子を含むベクターを含み得る。ベクターは、以下の位置のうちの1つまたは複数に、SIN部位をさらに含み得る:エンドヌクレアーゼORFの5’、エンドヌクレアーゼORFの3’、またはエンドヌクレアーゼORFを分割するイントロン内。第1のsgRNAの配列は、1つまたは複数のゲノム標的配列とハイブリダイズすることができるようなものである。第2のsgRNAの配列は、ベクター上のSIN部位とハイブリダイズすることができるようなものである。1つもしくは複数のゲノム標的またはSIN部位とハイブリダイズする場合、sgRNAは、1つまたは複数のミスマッチ塩基を含み得る。追加のsgRNAが、追加のゲノムまたはSIN系標的の編集を可能にするために、系に組み込まれてもよい。系は、標的とされるゲノムローカスにおける自己制限編集(self-limited editing)、続いて、エンドヌクレアーゼ遺伝子の切除および/または不活性化をもたらし得る。
【0495】
別の例では、オールインワンSIN系は、エンドヌクレアーゼORF、第1のsgRNA遺伝子、および第2のsgRNA遺伝子を含むベクターを含み得る。第1のsgRNAの配列は、1つまたは複数のゲノム標的配列とハイブリダイズすることができるようなものである。第2のsgRNAの配列は、ベクター上のエンドヌクレアーゼORF(Cas9またはCpf1)内またはその近傍でハイブリダイズし、インデル生成を介してエンドヌクレアーゼ遺伝子の不活性化をもたらすことができるようなものである。追加のsgRNAが、追加のゲノムまたはSIN系標的の編集を可能にするために、系に組み込まれてもよい。1つもしくは複数のゲノム標的またはエンドヌクレアーゼORFとハイブリダイズする場合、2つまたはそれを上回るsgRNAは、1つまたは複数のミスマッチ塩基を含み得る。系は、標的とされるゲノムローカスにおける自己制限編集、続いて、エンドヌクレアーゼ遺伝子の不活性化をもたらし得る。
【0496】
上述のものなど、オールインワン系では、適切なウイルスベクターの作製は、所望されるよりも早期に起こるエンドヌクレアーゼ遺伝子の不活性化ならびに(例えば、選択した細胞株におけるウイルスベクターの作製およびパッケージングの間の)AAVキャプシドにパッケージされたDNAにおける変異誘発されたSIN部位の蓄積に起因して、困難な場合がある。この問題を解決するために、エンドヌクレアーゼ遺伝子ローカスにおける編集を指示する、エンドヌクレアーゼORFおよび/またはsgRNA遺伝子を、1つまたは複数の細胞/組織特異的プロモーターから発現させることができる。細胞/組織特異的プロモーターは、編集が所望される細胞において活性であり得、ベクターの作製およびパッケージングに使用される細胞において早期段階では不活性であり得る。加えて、1つまたは複数の誘導性プロモーター系、例えば、テトラサイクリンにより制御される転写活性化(すなわち、tet-ONまたはtet-OFF)を使用して、目的の遺伝子の発現を制御することができる。早すぎる不活性化の問題に対する他の解決策としては、miRNA、低分子干渉RNA、短いヘアピンRNA、もしくは他のアンチセンスオリゴヌクレオチドにより遺伝子の発現を調節すること、sgRNAの転写を遮断すること(例えば、tet-OFF系の使用)、またはCas9へのsgRNAローディングを阻害することが挙げられる。
【0497】
オールインツーSIN-AAV系
【0498】
1つの例では、オールインツーSIN系は、エンドヌクレアーゼをコードするORFを提供するため第1のベクターを含み得る(図5A~B)。SIN部位は、第1のベクターにおいて、エンドヌクレアーゼORFの5’およびエンドヌクレアーゼORFを分割するイントロン内に位置し得る(図5A~B)。SIN部位は、表5に示されるように、配列番号5313~5314のいずれか1つであり得る。SIN部位は、表5に列挙される配列と比較して、長さが短くてもよい。例えば、SIN部位は、配列番号5277~5281(図2A)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5315~5318(図2D)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5357(図2G)およびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5297~5301(図2C)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5323~5326(図2F)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5359(図2I)およびPAMであり得る。他の例では、SIN部位は、sgRNAの対応するプロトスペーサー配列よりも短くてもよい。例えば、sgRNAのプロトスペーサー配列は、24ヌクレオチドの長さであり得、一方で、対応するSIN部位は、より短いプロトスペーサー(わずか23、22、21、20、19、18、または17ヌクレオチドの長さ)およびPAMを含んでもよい。短縮された(またはトランケート型(truncated))SIN部位(依然としてsgRNAのプロトスペーサー配列に対応する)を使用することにより、RNP複合体が、短縮されたSIN部位自体と比較して、より効率的にゲノム標的配列を切断するのを可能にする。この理由のため、配列番号5277~5281(図2A)、5315~5318(図2D)、および5357(図2G)、または配列番号5297~5301(図2C)、5323~5326(図2F)、および5359(図2I)における配列のうちのいずれか1つは、1、2、3、4、5、6、または7ヌクレオチド短縮されていてもよく、PAM配列とともにSIN部位として使用することができる。第2のベクターでは、単一のsgRNAがコードされ得る(図5D)。sgRNAは、配列番号5287~5291(図2B)、5319~5322(図2E)、5358(図2H)、5302~5304、5351~5356、および5360のうちのいずれかを含み得る。sgRNAは、SIN部位に実質的に相補的であり得る。sgRNAはまた、ゲノム標的配列に実質的に相補的であり得る。したがって、sgRNAの配列は、それが、第1のベクター上のSIN部位および1つまたは複数のゲノム標的配列(例えば、RHO遺伝子内のP23H変異)の両方とハイブリダイズすることができるようなものであり得る。1つもしくは複数のゲノム標的またはSIN部位とハイブリダイズする場合、sgRNAは、1つまたは複数のミスマッチ塩基を含み得る。系は、標的とされるゲノムローカスにおける自己制限編集、続いて、エンドヌクレアーゼ遺伝子の切除および/または不活性化をもたらし得る。
【0499】
別の例では、オールインツーSIN系は、エンドヌクレアーゼをコードするORFを提供するため第1のベクターを含み得る。SIN部位は、第1のベクターにおいて、エンドヌクレアーゼORFの5’およびエンドヌクレアーゼORFを分割するイントロン内に位置し得る。SIN部位は、表5に示されるように、配列番号5313~5314のいずれか1つであり得る。SIN部位は、表5に列挙される配列と比較して、長さが短くてもよい。例えば、SIN部位は、配列番号5277~5281(図2A)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5315~5318(図2D)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5357(図2G)およびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5297~5301(図2C)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5323~5326(図2F)における配列のうちのいずれか1つおよびPAMであり得る。SIN部位は、配列番号5359(図2I)およびPAMであり得る。他の例では、SIN部位は、sgRNAの対応するプロトスペーサー配列よりも短くてもよい。例えば、sgRNAのプロトスペーサー配列は、24ヌクレオチドの長さであり得、一方で、対応するSIN部位は、より短いプロトスペーサー(わずか23、22、21、20、19、18、または17ヌクレオチドの長さ)およびPAMを含んでもよい。短縮された(またはトランケート型)SIN部位(依然としてsgRNAのプロトスペーサー配列に対応する)を使用することにより、RNP複合体が、短縮されたSIN部位自体と比較して、より効率的にゲノム標的配列を切断するのを可能にする。この理由のため、配列番号5277~5281(図2A)、5315~5318(図2D)、および5357(図2G)、または配列番号5297~5301(図2C)、5323~5326(図2F)、および5359(図2I)における配列のうちのいずれか1つは、1、2、3、4、5、6、または7ヌクレオチド短縮されていてもよく、PAM配列とともにSIN部位として使用することができる。オールインツー系は、2つのsgRNA遺伝子を含む、第2のベクターをさらに含み得る。第2のベクターから発現されると、第1のsgRNAは、エンドヌクレアーゼ分子に結合し、1つまたは複数のゲノム標的ローカス(例えば、RHO遺伝子内のP23H変異)における編集を指示することができる。第1のsgRNAは、配列番号5287~5291(図2B)、5319~5322(図2E)、5358(図2H)、5302~5304、5351~5356、および5360のうちのいずれかを含み得る。第2のベクターから発現されると、第2のsgRNAは、エンドヌクレアーゼ分子に結合し、SIN部位を直接編集することができる。追加のsgRNAが、追加のゲノムまたはSIN系標的の編集を可能にするために、系に組み込まれてもよい。1つもしくは複数のゲノム標的またはSIN部位とハイブリダイズする場合、2つまたはそれを上回るsgRNAは、1つまたは複数のミスマッチ塩基を含み得る。一部の例では、ゲノムローカスを標的とする1つまたは複数のsgRNAは、第1のベクターにコードされてもよく、または第1および第2のベクターの両方の組合せでコードされてもよい。系は、標的とされるゲノムローカスにおける自己制限編集、続いて、エンドヌクレアーゼ遺伝子の切除および/または不活性化をもたらし得る。
【0500】
別の例では、オールインツーSIN系は、エンドヌクレアーゼORFを含む第1のベクターおよび2つのsgRNA遺伝子を含む第2のベクターを含み得る。第2のベクターから発現されると、第1のsgRNAは、エンドヌクレアーゼ分子に結合し、1つまたは複数のゲノム標的ローカス(例えば、RHO遺伝子内のP23H変異)における編集を指示することができる。sgRNAは、配列番号5287~5291(図2B)、5319~5322(図2E)、5358(図2H)、5302~5304、5351~5356、および5360のうちのいずれかを含み得る。第2のベクターから発現されると、第2のsgRNAは、エンドヌクレアーゼ分子と結合し、第1のベクター上のエンドヌクレアーゼORF(Cas9またはCpf1)内またはその近傍で編集を指示し、インデル生成を介してエンドヌクレアーゼ遺伝子の不活性化をもたらすことができる。追加のsgRNAが、追加のゲノムまたはSIN系標的の編集を可能にするために、系に組み込まれてもよい。1つもしくは複数のゲノム標的またはエンドヌクレアーゼORF内もしくはその近傍にハイブリダイズする場合、2つまたはそれを上回るsgRNAは、1つまたは複数のミスマッチ塩基を含み得る。一部の例では、ゲノムローカスを標的とする1つまたは複数のsgRNAは、第1のベクターにコードされてもよく、または第1および第2のベクターの両方の組合せでコードされてもよい。系は、標的とされるゲノムローカスにおける自己制限編集、続いて、エンドヌクレアーゼ遺伝子の不活性化をもたらし得る。
【0501】
レンチウイルス
【0502】
一部の態様では、レンチウイルスベクターまたは粒子は、送達媒体として使用され得る。レンチウイルスは、ウイルスのRetroviridae familyのサブグループである。レンチウイルス粒子は、それらの遺伝子材料を標的/宿主細胞のゲノムへと組み込むことができる。レンチウイルスの例として、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1およびHIV-2、ジェンブラナ病ウイルス(JDV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、ビスナ・マエディおよびヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。LVは、標的細胞のインタクトな核膜を通過するそれらの固有の能力により、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染できる。Greenberg et al., University of Berkeley, California; 2006)。遺伝子送達媒体を形成するレンチウイルス粒子は、複製欠損であり、HIV病原性遺伝子を弱毒化することによって生成される。例えば、遺伝子Vpu、Vpr、Nef、EnvおよびTatは、切り取られて生物学的に安全なベクターが作製される。レンチウイルス媒体、例えばHIV-1/HIV-2由来のものは、非分裂細胞への導入遺伝子の効率的な送達、組込みおよび長期間の発現を媒介できる。本明細書において使用されるとき、「組換え」という用語は、レンチウイルス配列および非レンチウイルスレトロウイルス配列の両方を含有するベクターまたは他の核酸を指す。
【0503】
宿主細胞に感染することができるレンチウイルスを産生するために、3種類のベクターがウイルス産生細胞において共発現される必要がある:目的の導入遺伝子および自己不活性化3’-LTR領域を含有する骨格ベクター、ウイルス構造タンパク質を発現する1つの構築物ならびに封入のための水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSVG)をコードする1つのベクター(Naldini, L. et al., Science 1996; 272, 263-267)。他の構造遺伝子からのRev遺伝子の分離は、逆組換え(reverse recombination)の可能性を低減することによってバイオセイフティーをさらに増加させる。高力価レンチウイルス粒子を産生するために使用できる細胞株として、293T細胞、293FT細胞および293SF-3F6細胞が挙げられるが、これらに限定されない(Witting et al., Human Gene Therapy, 2012; 23: 243-249; Ansorge et al., Joural of Genetic Medicne, 2009; 11: 868-876)。
【0504】
組換えレンチウイルス粒子を生成するための方法は、当技術分野、例えば、WO2013076309(PCT/EP2012/073645);WO2009153563(PCT/GB2009/001527);米国特許第7,629,153号および同第6,808,905号において考察されている。
【0505】
光受容体、網膜色素上皮およびガングリオン細胞などの細胞型は、レンチウイルス(LV)ベクターで良好に標的とされる。光受容体およびガングリオン細胞への送達の効率は、LVベクターよりもAAVで顕著に高い。
【0506】
薬学的に許容される担体
【0507】
本明細書で想定される、始原細胞を対象へと投与するex vivo方法は、始原細胞を含む治療用組成物の使用を伴う。
【0508】
治療用組成物は、細胞組成物と併せた、生理学的に忍容可能な担体と、任意選択で、本明細書で記載される、少なくとも1つのさらなる生体活性薬剤であって、その中に、有効成分として溶解または分散させた生体活性薬剤とを含有しうる。場合によって、治療用組成物は、治療目的で、哺乳動物またはヒト患者へと投与される場合、そうであることが所望されない限りにおいて、実質的に免疫原性ではない。
【0509】
一般に、本明細書で記載される始原細胞は、薬学的に許容される担体を伴う懸濁液として投与することができる。当業者は、細胞組成物中で使用される、薬学的に許容される担体は、緩衝剤、化合物、低温保存剤、保存剤、または他の薬剤を、対象へと送達される細胞の生存率に実質的に干渉する量では含まないことを認識する。細胞を含む製剤は、例えば、細胞膜の完全性の維持を可能とする浸透圧緩衝剤と、任意選択で、細胞生存率を維持するか、または投与時における生着を増強する栄養物質とを含みうる。このような処方物および懸濁液は、当業者に公知であり、かつ/または規定の実験を使用して、本明細書で記載される始原細胞を伴う使用に適合させることができる。
【0510】
細胞組成物はまた、乳化手順が、細胞の生存率に有害な影響を及ぼさないことを条件として、乳化することもでき、リポソーム組成物として提示することもできる。細胞および任意の他の有効成分は、薬学的に許容され、有効成分に対して適合性であり、本明細書で記載される治療法における使用に適する量の賦形剤と混合することができる。
【0511】
細胞組成物中に含まれるさらなる薬剤は、その中の成分の薬学的に許容される塩を含みうる。薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸により形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基により形成される)を含む。遊離カルボキシル基により形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来しうる。
【0512】
当技術分野では、生理学的に忍容可能な担体が周知である。例示的な液体担体は、有効成分および水に加えて、材料を含有しないか、または、生理学的pH値のリン酸ナトリウム、生理学的生理食塩液、またはリン酸緩衝生理食塩液など、これらの両方などの緩衝剤を含有する滅菌水溶液である。なおさらに、水性担体は、1つを超える緩衝液塩のほか、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含有しうる。液体組成物はまた、水に加えた液相および水を除く液相も含有しうる。このようなさらなる液相の例は、グリセリン、綿実油などの植物油、および水-油エマルジョンである。特定の障害または状態の処置において有効な細胞組成物中で使用される活性化合物の量は、障害または状態の性格に依存する場合があり、標準的な臨床法により決定することができる。
【0513】
ガイドRNA製剤
【0514】
本開示のガイドRNAは、特定の投与方式および剤形に応じて、担体、溶媒、安定化剤、アジュバント、希釈剤など、薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化することができる。ガイドRNA組成物は、製剤および投与経路に応じて、生理学的に適合性のpHを達成し、約3のpH~約11のpH、pH約3~pH約7の範囲となるように製剤化することができる。場合によって、pHは、pH約5.0~pH約8の範囲に調整することができる。場合によって、組成物は、本明細書で記載される、治療有効量の少なくとも1つの化合物を、1または複数の薬学的に許容される賦形剤と併せて含みうる。任意選択で、組成物は、本明細書で記載される化合物の組合せを含む場合もあり、細菌の増殖の処理または防止において有用な、第2の有効成分(例えば、かつ、限定なしに述べると、抗菌剤または抗微生物剤)を含む場合もあり、本開示の試薬の組合せを含む場合もある。
【0515】
適切な賦形剤は、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子など、大型で、ゆっくりと代謝される高分子を含む担体分子を含む。他の例示的な賦形剤は、抗酸化剤(例えば、かつ、限定なしに述べると、アスコルビン酸)、キレート化剤(例えば、かつ、限定なしに述べると、EDTA)、炭水化物(例えば、かつ、限定なしに述べると、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(例えば、かつ、限定なしに述べると、油、水、生理食塩液、グリセロール、およびエタノール)、保湿剤または乳化剤、pH緩衝物質などを含みうる。
【0516】
投与および効能
【0517】
所望の効果(複数可)をもたらすような、損傷または修復部位など、所望の部位における、導入された細胞の、少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、細胞、例えば、前駆細胞の、対象への配置の文脈では、「~を投与すること」、「~を導入すること」、および「~を移植すること」という用語は、互換的に使用される。細胞、例えば、前駆細胞、またはそれらの分化した後代を、対象における所望の場所への送達をもたらす、任意の適切な経路により投与することができ、この場合、移植された細胞または細胞の構成要素のうちの少なくとも一部は、依然として生存可能なままである。対象への投与後における細胞生存期間は、数時間、例えば、24時間という短期から数日間、数年間もの長期、またはさらに患者の生涯、すなわち、長期にわたる生着でありうる。例えば、本明細書で記載される一部の態様では、有効量の光受容細胞または網膜前駆細胞を、腹腔内または静脈内経路などの全身投与経路を介して投与する。
【0518】
所望の効果(複数可)をもたらすような、損傷または修復部位など、所望の部位における、導入されたgRNA、sgRNAおよび/またはエンドヌクレアーゼの、少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、gRNA、sgRNAおよびエンドヌクレアーゼの少なくとも1つの、対象への配置の文脈では、「~を投与すること」、「~を導入すること」、および「~を移植すること」という用語は、互換的に使用される。gRNA、sgRNAおよび/またはエンドヌクレアーゼは、対象における所望の場所への送達をもたらす、任意の適切な経路により投与することができる。
【0519】
本明細書では、「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語が、互換的に使用され、診断、処置、または治療が所望される任意の対象を指す。一部の態様では、対象は、哺乳動物である。一部の態様では、対象は、ヒトである。
【0520】
予防的に提供される場合、本明細書に記載される前駆細胞は、常染色体優性RPの任意の症状に先立って、対象へと投与することができる。したがって、前駆細胞集団の予防的投与は、常染色体優性RPを防止する機能を果たす。
【0521】
本明細書に記載される方法に従って投与される前駆細胞集団は、1つまたは複数のドナーから得られた、同種異系前駆細胞を含み得る。そのような前駆細胞は、例えば、肝臓、筋肉、心臓など、任意の細胞または組織起源のものであり得る。「同種異系」とは、同じ種の1つまたは複数の異なるドナーから得られた前駆細胞、または前駆細胞を含む生物学的試料を指し、ここで、1つまたは複数のローカスにおける遺伝子は、同一ではない。例えば、対象へと投与される光受容体または網膜前駆細胞集団は、1つまたは複数の血縁のないドナー対象に由来する場合もあり、1つまたは複数の同一でない兄弟姉妹(sibling)に由来する場合もある。一部の事例では、遺伝子的に同一な動物または一卵性双生児から得られた集団など、同系前駆細胞集団を使用してもよい。前駆細胞は、自家細胞であってもよい、すなわち、前駆細胞を、対象から得るか、または単離し、同じ対象へと投与する、すなわち、ドナーとレシピエントとが同じである。
【0522】
「有効量」という用語は、常染色体優性RPの、少なくとも1つまたは複数の徴候または症状を防止または緩和するのに必要とされる、前駆細胞またはそれらの後代の集団の量を指し、所望の効果を生じる、例えば、常染色体優性RPを有する対象を処置するのに十分な、組成物の量に関する。したがって、「治療有効量」という用語は、典型的な対象、例えば、常染色体優性RPを有するかまたはその危険性がある対象へと投与されると、特定の効果を促進するのに十分な、前駆細胞または前駆細胞を含む組成物の量を指す。有効量はまた、疾患の症状の発生を防止もしくは遅延させるか、疾患の症状の経過を変更する(例えば、疾患の症状の進行を緩徐化させることであるが、これに限定されない)か、または疾患の症状を逆転させるのに十分な量も含むであろう。任意の所与の事例について、適切な「有効量」とは、日常の実験を使用して、当業者により決定され得ることが理解される。
【0523】
本明細書で記載される多様な態様における使用のために、有効量の始原細胞は、始原細胞少なくとも10個、始原細胞少なくとも5×10個、始原細胞少なくとも10個、始原細胞少なくとも5×10個、始原細胞少なくとも10個、始原細胞少なくとも5×10個、始原細胞少なくとも10個、始原細胞少なくとも2×10個、始原細胞少なくとも3×10個、始原細胞少なくとも4×10個、始原細胞少なくとも5×10個、始原細胞少なくとも6×10個、始原細胞少なくとも7×10個、始原細胞少なくとも8×10個、始原細胞少なくとも9×10個、始原細胞少なくとも1×10個、始原細胞少なくとも2×10個、始原細胞少なくとも3×10個、始原細胞少なくとも4×10個、始原細胞少なくとも5×10個、始原細胞少なくとも6×10個、始原細胞少なくとも7×10個、始原細胞少なくとも8×10個、始原細胞少なくとも9×10個、またはこれらの倍数個を含む。始原細胞は、1または複数のドナーから導出することもでき、自家供給源から得ることもできる。本明細書で記載される一部の例では、始原細胞は、それを必要とする対象への投与の前に、培養物中で拡大することができる。
【0524】
常染色体優性RPを有する患者の細胞において発現される機能性RHOタンパク質のレベルにおけるわずかな増加および漸増は、疾患の1つもしくは複数の症状を軽減するため、長期にわたる生存を増加させるため、および/または他の処置に付随する副作用を低減するために、有益であり得る。そのような細胞をヒト患者へと投与したときに、増加したレベルの機能性RHOタンパク質を生じる前駆細胞の存在が、有益である。一部の事例では、対象の有効な処置により、処置される対象における総RHOと比べて、少なくとも約3%、5%、または7%の機能性RHOタンパク質が生じる。一部の例では、機能性RHOは、総RHOの少なくとも約10%である。一部の例では、機能性RHOタンパク質は、総RHOタンパク質の少なくとも約20%~30%である。同様に、一部の状況では、正常化された細胞は、罹患した細胞と比べて、選択的利点を有するため、機能性RHOタンパク質のレベルが有意に上昇した細胞は、比較的限定的な亜集団の導入であっても、様々な患者において、有益であり得る。しかしながら、機能性RHOタンパク質のレベルが上昇した前駆細胞は、わずかなレベルであっても、患者における常染色体優性RPの1つまたは複数の側面を改善するのに有益であり得る。一部の例では、そのような細胞が投与された患者における光受容細胞または網膜前駆細胞のうちの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれよりも多くが、増加したレベルの機能性RHOタンパク質を産生している。
【0525】
「投与された」とは、所望の部位において、細胞組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、始原細胞組成物の、対象への送達を指す。細胞組成物は、対象において有効な処置をもたらす、任意の適切な経路により、すなわち、対象における所望の位置への送達をもたらす投与であって、送達される組成物のうちの少なくとも一部、すなわち、細胞少なくとも1×10個を、所望の部位へと、ある期間にわたり送達する投与により投与することができる。
【0526】
本方法の一態様では、医薬組成物は、腸内(腸に)、胃腸内、硬膜外(硬膜に)、経口(口を経由して)、経皮、硬膜上、脳内(大脳に)、脳室内(脳室に)、皮膚上(皮膚の上への適用)、皮内(皮膚そのものに)、皮下(皮膚の下に)、経鼻投与(鼻を通じて)、静脈内(静脈に)、静脈内ボーラス、静脈内滴注、動脈内(動脈に)、筋肉内(筋肉に)、心臓内(心臓に)、骨内注入(骨髄に)、髄腔内(脊柱管に)、腹腔内(腹膜への注入または注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼を通じて)、空洞内注射(病理学的腔に)、腔内(陰茎の基底部に)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身への分配のための無傷な皮膚を通じた拡散)、経粘膜(粘膜を通じた拡散)、経膣、吹送(吸飲)、舌下、口唇下、浣腸、点眼(結膜上)、点耳、耳介(耳にまたは耳を経由して)、頬側(頬に向けて)、結膜、皮膚、歯科的(単数または複数の歯に)、電気浸透、子宮頸管内、洞内、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質内、腹内、羊膜内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、軟骨内(軟骨内部)、仙骨内(馬尾内部)、脳槽内(小脳延髄大槽(cisterna magna cerebellomedularis)内部)、角膜内(角膜内部)、歯冠内(dental intracornal)、冠内(冠動脈内)、海綿体内(陰茎の海綿体(corporus cavernosa)の膨張性空隙内)、椎間板内(椎間板内部)、腺管内(腺の管内部)、十二指腸内(十二指腸内部)、硬膜内(硬膜内部またはその下に)、表皮内(表皮へ)、食道内(食道へ)、胃内(胃内部)、歯肉内(歯肉内部)、回腸内(小腸遠位部分内部)、病巣内(局在化した病変部の内部またはそこへの直接の導入)、管腔内(管腔内部)、リンパ管内(リンパ内部)、髄内(骨の骨髄腔内部)、髄膜内(髄膜内部)、心筋内(心筋内部)、眼内(眼内部)、卵巣内(卵巣内部)、心膜内(心膜内部)、胸膜内(胸膜内部)、前立腺内(前立腺内部)、肺内(肺またはその気管支内部)、洞内(intrasinal)(副鼻腔または眼窩周囲腔内部)、脊髄内(脊柱内部)、滑膜内(関節の滑膜腔内部)、腱内(腱内部)、精巣内(精巣内部)、髄腔内(脳脊髄軸の任意のレベルにおける脳脊髄液内部)、胸郭内(胸郭内部)、小管内(器官の細管内部)、腫瘍内(腫瘍内部)、鼓室内(中耳内部)、血管内(単数または複数の血管内部)、脳室内(脳室内部)、イオン導入(可溶性塩のイオンが身体の組織に移動する電流のよって)、灌注(irrigation)(開放創傷部または体腔を浸すかまたは洗い流すため)、喉頭(喉頭に直接)、経鼻胃(鼻を通じて胃内に)、閉塞包帯技法(後で領域を閉鎖する包帯剤によって被覆する局所経路の投与)、眼部(外眼部に)、口腔咽頭(口および咽頭に直接)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜周囲、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(局所的または全身的な効果のための経口または経鼻吸入により気道内部へ)、眼球後(橋(pons)背後または眼球背後)、心筋内(心筋に入る)、軟部組織、クモ膜下、結膜下、粘膜下、局所、経胎盤(胎盤を通じてまたはそれを越えて)、経気管(気管壁を通じて)、経鼓膜(鼓室を越えてまたはそれを通じて)、尿管(尿管へ)、尿道(尿道へ)、膣、仙骨ブロック、診断、神経ブロック、胆管灌流、心臓灌流、フォトフェレーシス、ならびに脊髄などであるがこれらに限定されない経路を介して、投与され得る。
【0527】
投与方式は、注射、注入、点滴、および/または内服を含む。「注射」は、限定せずに述べると、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、心室内、関節包内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内注、脳脊髄内、ならびに胸骨内(intrasternal)注射および注入を含む。一部の例では、経路は静脈内である。細胞を送達するためには、注射または注入による投与を行うことができる。
【0528】
細胞は、全身投与されうる。「全身投与」、「全身投与された」、「末梢投与」、および「末梢投与された」という語句は、始原細胞の集団の、標的部位、組織、または臓器への直接投与以外の投与であって、代わりに、それが、対象の循環系に入り、したがって、代謝および他の同様の過程下に置かれるような投与を指す。
【0529】
当業者は、常染色体優性RPを処置するための組成物を含む処置の効能を決定しうる。しかし、ごく一例として述べると、機能性常染色体優性RPのレベルの徴候または症状の任意の1つまたは全てが、有益な形で変更される(例えば、少なくとも10%増加する)か、または疾患の、他の臨床的に許容される症状もしくはマーカーが、改善されるかまたは軽快する場合に、処置は、「有効な処置」と考えられる。効能はまた、入院または医療的介入の必要により評価される、個体の非悪化(例えば、疾患の進行が止まるか、もしくは少なくとも緩徐化する)により測定することもできる。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、かつ/または本明細書で記載されている。処置は、個体または動物(一部の非限定的な例は、ヒトまたは哺乳動物を含む)における、疾患の任意の処置を含み、(1)疾患の阻害、例えば、症状の進行を止めるか、もしくは緩徐化させること;または(2)疾患を和らげること、例えば、症状の減退を引き起こすこと;および(3)症状の発症の可能性を防止または低減することを含む。
【0530】
本開示に従った処置により、個体における機能性RHOの量を増加、減少または変更することによって、常染色体優性RPと関連する1つまたは複数の症状を改善することができる。常染色体優性RPに関連する典型的な徴候として、例えば、夜盲、視力、眼底所見、後嚢下白内障、硝子体内の塵様粒子、網膜深部の白色斑点、視神経乳頭のヒアリン体、滲出性血管症および区画性常染色体優性RPが挙げられる。
【0531】
キット
【0532】
本開示は、本明細書で記載される方法を実行するためのキットを提示する。キットは、ゲノムターゲティング核酸、ゲノムターゲティング核酸をコードするポリヌクレオチド、部位特異的ポリペプチド、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または本明細書で記載される方法の態様を実行するのに必要な、任意の核酸もしくはタンパク質性分子のうちの1または複数、あるいはこれらの任意の組合せを含みうる。
【0533】
キットは、(1)ゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(2)部位特異的ポリペプチドまたは部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(3)ベクターおよびまたはポリペプチドを修復および/または希釈するための試薬とを含みうる。
【0534】
キットは、(1)(i)ゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列、および(ii)部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(2)ベクターを修復および/または希釈するための試薬とを含みうる。
【0535】
上記のキットのうちのいずれにおいても、キットは、単一分子ガイドゲノムターゲティング核酸を含みうる。上記のキットのうちのいずれにおいても、キットは、二重分子ゲノムターゲティング核酸を含みうる。上記のキットのうちのいずれにおいても、キットは、2つまたはこれを超える、二重分子ガイドまたは単一分子ガイドを含みうる。キットは、核酸ターゲティング核酸をコードするベクターを含みうる。
【0536】
上記のキットのうちのいずれにおいても、キットは、所望の遺伝子改変を生じさせるように挿入されるポリヌクレオチドをさらに含みうる。
【0537】
キットの構成要素は、別個の容器内の場合もあり、単一の容器内で組み合わせる場合もある。
【0538】
上記の任意のキットは、1または複数のさらなる試薬をさらに含む場合があるが、この場合、このようなさらなる試薬は、バッファ、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを細胞へと導入するためのバッファ、洗浄バッファ、対照試薬、対照ベクター、対照RNAポリヌクレオチド、DNAからのポリペプチドのin vitroにおける作製のための試薬、配列決定のためのアダプターなどから選択される。バッファは、安定化バッファ、修復バッファ、希釈バッファなどでありうる。キットはまた、オンターゲットへの結合もしくはエンドヌクレアーゼによるDNAの切断を容易とするかもしくは増強するか、またはターゲティングの特異性を改善するのに使用しうる、1または複数の構成要素も含みうる。
【0539】
上記で言及した構成要素に加えて、キットは、キットの構成要素を使用して、方法を実施するための指示をさらに含みうる。方法を実施するための指示は、適切な記録媒体上に記録することができる。例えば、指示は、紙またはプラスチックなどの基板上に印刷することができる。指示は、キット内に、添付文書として存在する場合もあり、キットまたはその構成要素の容器(すなわち、パッケージングまたは部分パッケージングと関連する)の表示中に存在する場合などもある。指示は、適切なコンピュータ読取り用保存媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する電子保存データファイルとして存在しうる。一部の場合には、実際の指示は、キット内に存在しないが、遠隔の供給源から、指示を得る(例えば、インターネットを介して)ための手段を提供することができる。この場合の例は、指示を閲覧することができ、かつ/または指示をダウンロードしうるウェブアドレスを含むキットである。指示と同様に、指示を得るためのこの手段は、適切な基板上に記録することができる。
【0540】
可能性がある他の治療アプローチ
【0541】
遺伝子編集は、特異的配列を標的とするように操作されたヌクレアーゼを使用して行うことができる。現在のところ、ヌクレアーゼの4つ主要な種類:メガヌクレアーゼおよびそれらの誘導体、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ならびにCRISPR-Cas9ヌクレアーゼ系が存在する。特に、ZFNおよびTALENの特異性が、タンパク質-DNA間相互作用を介するのに対し、RNA-DNA間相互作用は、主にCas9をガイドするので、ヌクレアーゼプラットフォームは、デザインの難易度、標的化の密度、および作用方式において様々である。Cas9切断は、異なるCRISPR系間で異なる隣接モチーフ、PAMも必要とする。Streptococcus pyogenes由来のCas9は、NGG PAMを使用して切断し、Neisseria meningitidis由来のCRISPRは、NNNNGATT、NNNNNGTTTおよびNNNNGCTTを含むPAMを含む部位で切断できる。多数の他のCas9オルソログは、代替PAMに隣接するプロトスペーサーを標的とする。
【0542】
本開示の方法では、Cas9などのCRISPRエンドヌクレアーゼを使用することができる。しかし、治療のための標的部位など、本明細書で記載される教示は、ZFN、TALEN、HE、またはMegaTALなど、エンドヌクレアーゼの他の形態へと適用することもでき、ヌクレアーゼの組合せの使用へと適用することもできる。しかし、本開示の教示を、このようなエンドヌクレアーゼへと適用するためには、とりわけ、特異的標的部位へと導かれるタンパク質を操作することが必要となろう。
【0543】
さらなる結合性ドメインをCas9タンパク質へと融合させて、特異性を増大させることができる。これらの構築物の標的部位は、同定されたgRNA指定部位へとマップされるが、亜鉛フィンガードメインなどのための、さらなる結合モチーフを要求するであろう。Mega-TALの場合は、メガヌクレアーゼを、TALE DNA結合性ドメインへと融合させることができる。メガヌクレアーゼドメインは、特異性を増大させ、切断をもたらしうる。同様に、不活化Cas9またはdead Cas9(dCas9)は、切断ドメインへと融合させることができ、これは、sgRNA/Cas9標的部位と、融合させたDNA結合性ドメインのための隣接結合性部位とを要求する。これは、さらなる結合性部位がなければ、結合を減少させるように、触媒性の不活化に加えて、dCas9の何らかのタンパク質操作を要求する可能性が高い。
【0544】
亜鉛フィンガーヌクレアーゼ
【0545】
亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)とは、II型エンドヌクレアーゼであるFokIの触媒性ドメインへと連結された、操作亜鉛フィンガーDNA結合性ドメインから構成されるモジュラータンパク質である。FokIは、二量体としてだけ機能するため、1対のZFNを、逆DNA鎖上にあり、それらの間に正確な間隔を伴う、コグネイトの標的「半部位」配列に結合するように操作して、触媒的に活性のFokI二量体の形成を可能としなければならない。それ自体では配列特異性を有さないFokIドメインが二量体化すると、ZFN半部位間で、ゲノム編集における開始ステップとして、DNA二本鎖切断が作出される。
【0546】
各ZFNのDNA結合性ドメインは、夥多なCys2-His2アーキテクチャーによる、3~6つの亜鉛フィンガーであって、各フィンガーが、標的DNA配列の1つの鎖のヌクレオチドのトリプレットを主に認識する亜鉛フィンガーから構成されることが典型的であるが、4番目のヌクレオチドとの交差相互作用もまた、重要でありうる。DNAとの鍵となる接触点を作る位置における、フィンガーのアミノ酸の変更は、所与のフィンガーの配列特異性を変更する。したがって、4フィンガーによる亜鉛フィンガータンパク質は、12bpの標的配列を選択的に認識するが、この場合、トリプレットの優先性は、可変的な程度で、隣接するフィンガーの影響を受けうるが、標的配列は、各フィンガーが寄与するトリプレット優先性の複合物である。ZFNの重要な側面は、個々のフィンガーを修飾するだけで、ほぼ任意のゲノムアドレスへと、たやすく再ターゲティングしうるが、これを十分に行うには、かなりの熟練が要求されることである。ZFNの大半の適用では、それぞれ、12~18bpずつを認識する、4~6フィンガーのタンパク質が使用される。よって、1対のZFNは、24~36bpの標的配列の組合せであって、半部位間の、典型的に5~7bpのスペーサーを含まない組合せを認識することが典型的であろう。結合性部位は、15~17bpを含む大型のスペーサーにより、さらに分離することができる。この長さの標的配列は、デザイン工程時に、リピートの配列または遺伝子の相同体を除外することを仮定すると、ヒトゲノム内で固有である可能性が高い。しかしながら、ZFNタンパク質-DNA間相互作用は、それらの特異性において絶対的ではないので、オフ標的結合および切断イベントが、2つのZFNの間のヘテロ二量体、またはZFNの一方もしくは他方によるホモ二量体として生じる。後者の可能性は、互いとだけ二量体化することが可能であり、それら自体では二量体化しえない、偏性ヘテロ二量体変異体としてもまた公知の、「プラス」および「マイナス」変異体を創出するように、FokIドメインの二量体化界面を操作することにより効果的に排されている。偏性ヘテロ二量体を強いることにより、ホモ二量体の形成が防止される。これは、ZFN、ならびにこれらのFokI変異体を採用する任意の他のヌクレアーゼの特異性を大いに増強している。
【0547】
当技術分野では、様々なZFNベースの系が記載されており、それらの改変は、定期的に報告され、多数の参考文献が、ZFNのデザインを導くのに使用される規則およびパラメータについて記載している(例えば、Segalら、Proc Natl Acad Sci USA、96巻(6号):2758~63頁(1999年);Dreier Bら、J Mol Biol.、303巻(4号):489~502頁(2000年);Liu Qら、J Biol Chem.、277巻(6号):3850~6頁(2002年);Dreierら、J Biol Chem、280巻(42号):35588~97頁(2005年);およびDreierら、J Biol Chem.、276巻(31号):29466~78頁(2001年)を参照されたい)。
【0548】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
【0549】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)とは、モジュラーヌクレアーゼの別のフォーマットであって、ZFNと同様に、操作されたDNA結合ドメインを、FokIヌクレアーゼドメインへと連結し、1対のTALENが、タンデムに働いて、標的化DNA切断を達成するフォーマットを表す。ZFNとの主要な差違は、DNA結合ドメインおよび関連する標的DNA配列認識特性の性格である。TALENのDNA結合ドメインは、元来、植物の細菌性病原体であるXanthomonas sp.において記載された、TALEタンパク質に由来する。TALEは、33~35アミノ酸のリピートによるタンデムアレイであって、典型的には、最大で20bpの長さの標的DNA配列であり、全標的配列の長さを最大で40bpとする、標的DNA配列内の単一の塩基対を、各リピートが認識するタンデムアレイから構成される。各リピートのヌクレオチド特異性は、12および13位における、2つのアミノ酸だけを含む、反復可変二残基(repeat variable diresidue)(RVD)により決定される。塩基である、グアニン、アデニン、シトシン、およびチミンは主に、4つのRVD:それぞれ、Asn-Asn、Asn-Ile、His-Asp、およびAsn-Glyにより認識される。これは、亜鉛フィンガーの場合より、はるかに単純な認識コードを構成し、したがって、ヌクレアーゼデザインのために、後者を上回る利点を表す。しかしながら、ZFNと同様に、TALENのタンパク質-DNA間相互作用は、それらの特異性において絶対的ではなく、TALENもまた、オフターゲット活性を低減するように、FokIドメインの偏性ヘテロ二量体バリアントの使用から利益を得ている。
【0550】
それらの触媒機能を失活させた、FokIドメインのさらなるバリアントも作り出されている。TALENまたはZFN対の片方が、不活性のFokIドメインを含有する場合は、標的部位において、DSBではなく、一本鎖DNA切断(ニッキング)だけが生じる。結果は、Cas9切断ドメインのうちの一方を失活させた、CRISPR/Cas9/Cpf1「ニッカーゼ」変異体の使用と同等である。DNAニックを使用して、HDRによるゲノム編集を駆動しうるが、効率は、DSBによる場合より低下する。主要な利益は、オフターゲットのニックは、NHEJにより媒介される誤修復を受けやすいDSBと異なり、迅速かつ正確に修復されることである。
【0551】
当技術分野では、様々なTALENベースの系が記載されており、それらの改変も、定期的に報告されている(例えば、Boch、Science、326巻(5959号):1509~12頁(2009年);Makら、Science、335巻(6069号):716~9頁(2012年);およびMoscouら、Science、326巻(5959号):1501頁(2009年)を参照されたい)。「Golden Gate」プラットフォームまたはクローニングスキームに基づくTALENの使用については、複数のグループにより記載されている(例えば、Cermakら、Nucleic Acids Res.、39巻(12号):e82頁(2011年);Liら、Nucleic Acids Res.、39巻(14号):6315~25頁(2011年);Weberら、PLoS One.、6巻(2号):e16765頁(2011年);Wangら、J Genet Genomics、41巻(6号):339~47頁、Epub、2014年5月17日(2014年);およびCermak Tら、Methods Mol Biol.、1239巻:133~59頁(2015年)を参照されたい)。
【0552】
ホーミングエンドヌクレアーゼ
【0553】
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)とは、長い認識配列(14~44塩基対)を有し、DNAを、高特異性で切断する(ゲノム内の固有の部位であることが多い)、配列特異的エンドヌクレアーゼである。HEの、少なくとも6つの公知のファミリーであって、真核生物、原生生物、細菌、古細菌、シアノバクテリア、およびファージを含む、広範囲にわたる宿主に由来する、LAGLIDADG(配列番号5271)、GIY-YIG、His-Cisボックス、H-N-H、PD-(D/E)xK、およびVsr様を含む、それらの構造により分類されるファミリーが存在する。ZFNおよびTALENと同様に、HEを使用して、ゲノム編集における最初のステップとして、標的ローカスにおけるDSBを作り出すことができる。加えて、一部の天然および操作HEは、DNAの単一の鎖だけを切断し、これにより、部位特異的ニッカーゼとして機能する。HEの大きい標的配列およびそれらがもたらす特異性のために、HEは、部位特異的DSBを作り出すのに魅力的な候補物質となっている。
【0554】
当技術分野では、様々なHEベースの系が記載されており、それらの改変は、定期的に報告されている;例えば、Steentoft et al., Glycobiology 24(8):663-80 (2014); Belfort and Bonocora, Methods Mol Biol. 1123:1-26 (2014); Hafez and Hausner, Genome 55(8):553-69 (2012)による総説を参照されたい。
【0555】
MegaTAL/Tev-mTALEN/MegaTev
【0556】
ハイブリッド体のヌクレアーゼのさらなる例として、MegaTALプラットフォームおよびTev-mTALENプラットフォームは、TALE DNA結合性ドメインと、触媒的に活性のHEとの融合体を使用し、微調整可能なDNA結合およびTALEの特異性の両方、ならびにHEの切断配列特異性を利用する(例えば、Boisselら、NAR、42巻:2591~2601頁(2014年);Kleinstiverら、G3、4巻:1155~65頁(2014年);ならびにBoisselおよびScharenberg、Methods Mol. Biol.、1239巻:171~96頁(2015年)を参照されたい)。
【0557】
さらなる変化形では、MegaTevアーキテクチャーは、メガヌクレアーゼ(Mega)の、GIY-YIGホーミングエンドヌクレアーゼに由来するヌクレアーゼドメインである、I-TevI(Tev)との融合体である。2つの活性部位は、DNA基質で、約30bp離れて位置し、非適合性の粘着末端を伴う2つのDSBを発生させる(例えば、Wolfsら、NAR、42巻、8816~29頁(2014年)を参照されたい)。既存のヌクレアーゼベースの手法の他の組合せが進化し、本明細書で記載される、ターゲティングされたゲノム修飾の達成において有用となることが予期される。
【0558】
dCas9-FokIまたはdCpf1-Fok1および他のヌクレアーゼ
【0559】
上記で記載したヌクレアーゼプラットフォームの構造的特性と機能的特性とを組み合わせることにより、ゲノム編集のためのさらなる手法であって、固有の欠点のうちの一部を潜在的に克服しうる手法を提供する。例として述べると、CRISPRによるゲノム編集系は、単一のCas9エンドヌクレアーゼを使用して、DSBを創出することが典型的である。ターゲティングの特異性は、標的DNA(S.pyogenesに由来するCas9の場合、隣接するNAGまたはNGGであるPAM配列内のさらなる2塩基を加えた)とのワトソン-クリック型塩基対合を経るガイドRNA内の、20または24ヌクレオチドの配列により駆動される。このような配列は、ヒトゲノム内では、固有となるのに十分に長いが、RNA/DNA間相互作用の特異性は絶対的ではなく、場合によって、顕著な無差別性が、特に、標的配列の5’側において許容され、特異性を駆動する塩基の数を有効に低減する。これに対する1つの解決法は、Cas9またはCpf1の触媒性機能を完全に失活させる(RNAにガイドされるDNA結合機能だけを保持しながら)代わりに、FokIドメインを、失活させたCas9へと融合させることであった(例えば、Tsaiら、Nature Biotech、32巻:569~76頁(2014年);およびGuilingerら、Nature Biotech.、32巻:577~82頁(2014年)を参照されたい)。FokIは、触媒的に活性となるには、二量体化しなければならないため、2つのガイドRNAは、2つのFokI融合体を、近接してテザリングして、二量体を形成し、DNAを切断することが要求される。これは本質的に、標的部位の組合せにおける塩基の数を二倍化し、これにより、CRISPRベースの系によるターゲティングの厳密性を増大させる。
【0560】
さらなる例として述べると、TALE DNA結合性ドメインの、I-TevIなど、触媒的に活性なHEへの融合は、オフ標的切断をさらに低減しうることを期待して、微調整可能なDNA結合およびTALEの特異性の両方のほか、I-TevIの切断配列特異性も利用する。
【0561】
本発明の方法および組成物
【0562】
このように、本開示は、特に、以下の非限定的な本発明に関する:
【0563】
第1の方法である、方法1では、本開示は、ヒト細胞においてRHO遺伝子を編集するための方法であって、ヒト細胞へと1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼを導入して、RHO遺伝子またはRHO遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内または近傍に、1つまたは複数のSSBまたはDSBをもたらし、それによって編集されたヒト細胞を作り出すステップを含み、SSBまたはDSBは、RHO遺伝子内もしくはその近傍に、またはその発現もしくは機能に影響を及ぼす、1つまたは複数の変異の恒久的な欠失、挿入、修正、またはその発現もしくは機能のモジュレーションをもたらす、方法を提示する。
【0564】
別の方法である、方法2では、本開示は、ヒト細胞においてRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための方法であって:ヒト細胞へと、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼを導入して、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍に、P23H変異の恒久的な欠失、挿入、修正またはその発現もしくは機能のモジュレーションをもたらす1つまたは複数のSSBまたはDSBをもたらし、それによって編集されたヒト細胞を作り出すステップを含む、方法を提示する。
【0565】
別の方法である、方法3では、本開示は、常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法であって、患者の細胞においてRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するステップを含む、方法を提示する。
【0566】
別の方法である、方法4では、本開示は、編集するステップが、細胞へと、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼを導入して、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍に、P23H変異の恒久的な欠失、挿入、修正またはその発現もしくは機能のモジュレーションをもたらし、RHOタンパク質活性の回復をもたらす、1つまたは複数のSSBまたはDSBをもたらすことを含む、方法3に記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0567】
別の方法である、方法5では、本開示は、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4またはCpf1エンドヌクレアーゼ;その相同体、その天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化形態、またはそれらの修飾バージョン、ならびにそれらの組合せである、方法1~2または4のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0568】
別の方法である、方法6では、本開示は、細胞へと、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを導入することを含む、方法5に記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0569】
別の方法である、方法7では、本開示は、細胞へと、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のRNAを導入することを含む、方法5に記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0570】
別の方法である、方法8では、本開示は、1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたは1つもしくは複数のRNAが、1つもしくは複数の修飾ポリヌクレオチドまたは1つもしくは複数の修飾RNAである、方法6または7のいずれかに記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0571】
別の方法である、方法9では、本開示は、DNAエンドヌクレアーゼが、1つまたは複数のタンパク質またはポリペプチドである、方法5に記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0572】
別の方法である、方法10では、本開示は、細胞へと、1つまたは複数のgRNAを導入することをさらに含む、方法1~9のいずれかに記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0573】
別の方法である、方法11では、本開示は、1つまたは複数のgRNAがsgRNAである、方法10に記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0574】
別の方法である、方法12では、本開示は、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが、1つもしくは複数の修飾gRNAまたは1つもしくは複数の修飾sgRNAである、方法10~11のいずれかに記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0575】
別の方法である、方法13では、本開示は、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAとあらかじめ複合体化されている、方法9~11のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0576】
別の方法である、方法14では、本開示は、細胞へと野生型RHO遺伝子またはcDNAの少なくとも一部を含む、ポリヌクレオチドドナー鋳型を導入することをさらに含む、方法1~13のいずれかに記載の常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0577】
別の方法である、方法15では、本開示は、野生型RHO遺伝子またはcDNAの少なくとも一部が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、それらの断片もしくは組合せ、またはRHO遺伝子もしくはcDNAの全体である、方法14に提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0578】
別の方法である、方法16では、本開示は、ドナー鋳型が、一本鎖ポリヌクレオチドまたは二本鎖ポリヌクレオチドのいずれかである、方法14~15のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0579】
別の方法である、方法17では、本開示は、ドナー鋳型が、3q22.1領域に対する相同性アームを有する、方法14~15のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0580】
別の方法である、方法18では、本開示は、以下:細胞へと1つのgRNA、および野生型RHO遺伝子の少なくとも一部を含むポリヌクレオチドドナー鋳型を導入することをさらに含み;1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍に位置するローカスに、SSBまたはDSBをもたらす、1つまたは複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり、SSBまたはDSBは、ローカスにおける染色体DNAへのポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新しい配列の挿入を容易にし、RHO遺伝子におけるP23H変異の恒久的な挿入、または修正をもたらし;gRNAが、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍に位置するローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含む、方法2または4のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0581】
別の方法である、方法19では、本開示は、以下:細胞へと、1つまたは複数のgRNAおよび、野生型RHO遺伝子の少なくとも一部を含むポリヌクレオチドドナー鋳型を導入することをさらに含み;1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍に、1対の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をもたらす、1つまたは複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり、1対のSSBまたはDSBは、第1のものが5’ローカスにあり、第2のものが3’ローカスにあり、5’ローカスと3’ローカスとの間における染色体DNAへのポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新しい配列の挿入を容易にし、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍の5’ローカスと3’ローカスとの間における染色体DNAの恒久的な挿入、または修正をもたらし;第1のガイドRNAが5’ローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含み、第2のガイドRNAが3’ローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含む、方法2または4のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0582】
別の方法である、方法20では、本開示は、1つまたは複数のgRNAが、1つまたは複数のsgRNAである、方法18~19のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0583】
別の方法である、方法21では、本開示は、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが、1つまたは複数の修飾gRNAまたは1つもしくは複数の修飾sgRNAである、方法18~20のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0584】
別の方法である、方法22では、本開示は、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAとあらかじめ複合体化されている、方法18~21のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0585】
別の方法である、方法23では、本開示は、野生型RHO遺伝子またはcDNAの少なくとも一部が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、それらの断片もしくは組合せ、またはRHO遺伝子もしくはcDNAの全体である、方法18~22のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0586】
別の方法である、方法24では、本開示は、ドナー鋳型が、一本鎖ポリヌクレオチドまたは二本鎖ポリヌクレオチドのいずれかである、方法18~23のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0587】
別の方法である、方法25では、本開示は、ドナー鋳型が、3q22.1領域に対する相同性アームを有する、方法18~24のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0588】
別の方法である、方法26では、本開示は、SSBまたはDSBが、RHO遺伝子の第1のエクソン、第2のエクソン、第3のエクソン、第4のエクソン、第5のエクソン、またはそれらの組合せにある、方法18~25のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0589】
別の方法である、方法27では、本開示は、gRNAまたはsgRNAが、病理学的バリアントP23Hを対象とする、方法10~13または20~22のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0590】
別の方法である、方法28では、本開示は、挿入または修正が、HDRによるものである、方法1~2または4~27のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0591】
別の方法である、方法29では、本開示は、ドナー鋳型が、病理学的バリアントP23Hに対する相同性アームを有する、方法18~19のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0592】
別の方法である、方法30では、本開示は、以下:細胞へと、2つのgRNAおよび野生型RHO遺伝子の少なくとも一部を含むポリヌクレオチドドナー鋳型を導入することをさらに含み;1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍に、1対のDSBをもたらす、1つまたは複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり、1対のDSBは、第1のものが5’DSBローカスにあり、第2のものが3’DSBローカスにあり、5’DSBローカスと3’DSBローカスとの間の染色体DNAの欠失を引き起こし、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍の5’DSBローカスと3’DSBローカスとの間における染色体DNAの恒久的な欠失をもたらし;第1のガイドRNAが、5’DSBローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含み、第2のガイドRNAが、3’DSBローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含む、方法2または4のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0593】
別の方法である、方法31では、本開示は、2つのgRNAが2つのsgRNAである、方法30に提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0594】
別の方法である、方法32では、本開示は、2つのgRNAまたは2つのsgRNAが、2つの修飾gRNAまたは2つの修飾sgRNAである、方法30~31のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0595】
別の方法である、方法33では、本開示は、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、2つのgRNAまたは2つのsgRNAとあらかじめ複合体化されている、方法30~32のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0596】
別の方法である、方法34では、本開示は、5’DSBおよび3’DSBの両方が、RHO遺伝子の第1のエクソン、第1のイントロン、第2のエクソン、第2のイントロン、第3のエクソン、第3のイントロン、第4のエクソン、第4のイントロン、第5のエクソン、第5のイントロンまたはこれらの組合せ内またはその近傍にある、方法30~33のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0597】
別の方法である、方法35では、本開示は、欠失が、1kbまたはそれを下回る欠失である、方法30~34のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0598】
別の方法である、方法36では、本開示は、Cas9またはCpf1 mRNA、gRNA、およびドナー鋳型が、それぞれ別個の脂質ナノ粒子中に製剤化されるか、またはすべてが1つの脂質ナノ粒子中に共製剤化されるかのいずれかである、方法18~19および30のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0599】
別の方法である、方法37では、本開示は、Cas9またはCpf1 mRNA、gRNAおよびドナー鋳型が、それぞれ、別個のAAVベクター中に製剤化されるか、またはすべてが1つのAAVベクター中に共製剤化されるかのいずれかである、方法18~19および30のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0600】
別の方法である、方法38では、本開示は、Cas9またはCpf1 mRNAが、脂質ナノ粒子に製剤化され、gRNAおよびドナー鋳型の両方が、AAVベクターによって細胞へと送達される、方法18~19および30のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0601】
別の方法である、方法39では、本開示は、Cas9またはCpf1 mRNAが脂質ナノ粒子に製剤化され、gRNAが、電気穿孔によって細胞へと送達され、ドナー鋳型が、AAVベクターによって細胞へと送達される、方法18~19および30のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0602】
別の方法である、方法40では、本開示は、AAVベクターが自己不活性化AAVベクターである、方法37~39のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0603】
別の方法である、方法41では、本開示は、RHO遺伝子が、染色体3:129,528,640~129,535,169(Genome Reference Consortium-GRCh38/hg38)に位置する、方法1~40のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0604】
別の方法である、方法42では、本開示は、RHOタンパク質活性の回復が、野生型または正常なRHOタンパク質活性と比較される、方法2または4~41のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0605】
別の方法である、方法43では、本開示は、ポリヌクレオチドドナー鋳型が、RHOのエクソン1を含み、最大5KBである、方法14に提示されたゲノム編集によってヒト細胞におけるRHO遺伝子を編集するための方法を提示する。
【0606】
別の方法である、方法44では、本開示は、ポリヌクレオチドドナー鋳型が、AAVによって送達される、方法43に提示されたゲノム編集によってヒト細胞におけるRHO遺伝子を編集するための方法を提示する。
【0607】
別の方法である、方法45では、本開示は、ヒト細胞が、光受容細胞、網膜前駆細胞または人工多能性幹細胞(iPSC)である、方法1~2のいずれかに提示されたゲノム編集によってヒト細胞におけるRHO遺伝子を編集するための方法を提示する。
【0608】
別の方法である、方法46では、本開示は、細胞が光受容細胞、網膜前駆細胞または人工多能性幹細胞(iPSC)である、方法3~42のいずれかに提示された常染色体優性RPを有する患者を処置するためのin vivo方法を提示する。
【0609】
別の方法である、方法47では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5290を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0610】
別の方法である、方法48では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5291を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0611】
別の方法である、方法49では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5319を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0612】
別の方法である、方法50では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5320を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0613】
別の方法である、方法51では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5321を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0614】
別の方法である、方法52では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5322を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0615】
別の方法である、方法53では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5358を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0616】
別の方法である、方法54では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5290および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0617】
別の方法である、方法55では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5291および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0618】
別の方法である、方法56では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5319および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0619】
別の方法である、方法57では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5320および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0620】
別の方法である、方法58では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5321および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0621】
別の方法である、方法59では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5322および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0622】
別の方法である、方法60では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5358および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0623】
別の方法である、方法61では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5290を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0624】
別の方法である、方法62では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5291を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0625】
別の方法である、方法63では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5319を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0626】
別の方法である、方法64では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5320を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0627】
別の方法である、方法65では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5321を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0628】
別の方法である、方法66では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5322を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0629】
別の方法である、方法67では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5358を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0630】
別の方法である、方法68では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが配列番号5290および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法を提示する。
【0631】
別の方法である、方法69では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを患者へと投与するステップを含み、gRNAまたはsgRNAが配列番号5291および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法を提示する。
【0632】
別の方法である、方法70では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを患者へと投与するステップを含み、gRNAまたはsgRNAが配列番号5319および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法を提示する。
【0633】
別の方法である、方法71では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、gRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含み、sgRNAが配列番号5320および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む方法を提示する。
【0634】
別の方法である、方法72では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを患者へと投与するステップを含み、gRNAまたはsgRNAが配列番号5321および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法を提示する。
【0635】
別の方法である、方法73では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを患者へと投与するステップを含み、gRNAまたはsgRNAが配列番号5322および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法を提示する。
【0636】
別の方法である、方法74では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを患者へと投与するステップを含み、gRNAまたはsgRNAが配列番号5358および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法を提示する。
【0637】
別の方法である、方法75では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5287を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0638】
別の方法である、方法76では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5288を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0639】
別の方法である、方法77では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5289を含むgRNAまたはsgRNAを投与するステップを含む、方法を提示する。
【0640】
別の方法である、方法78では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5287を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0641】
別の方法である、方法79では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5288を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0642】
別の方法である、方法80では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5289を含むgRNAまたはsgRNAを患者へと投与するステップを含む、方法を提示する。
【0643】
別の方法である、方法81では、本開示は、RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、自己不活性化CRISPR-Cas系1~36のいずれかの自己不活性化CRISPR-Cas系を投与するステップを含む、方法を提示する。
【0644】
別の方法である、方法82では、本開示は、RHO遺伝子内にP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、自己不活性化CRISPR-Cas系1~36のいずれかの自己不活性化CRISPR-Cas系を投与するステップを含む、方法を提示する。
【0645】
別の方法である、方法83では、本開示は、細胞におけるCas9発現を制御する方法であって、自己不活性化CRISPR-Cas系1~36のいずれかの自己不活性化CRISPR-Cas系を細胞と接触させるステップを含む、方法を提示する。
【0646】
別の方法である、方法84では、本開示は、ヒト細胞が、活性欠損を有し、編集されたヒト細胞が機能性RHOを発現する、方法1に提示されたヒト細胞におけるRHO遺伝子を編集するための方法を提示する。
【0647】
別の方法である、方法85では、本開示は、ヒト細胞が、活性欠損を有し、編集されたヒト細胞が機能性RHOを発現する、方法2に提示されたヒト細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための方法を提示する。
【0648】
第1の組成物である、組成物1では、本開示は、常染色体優性RPを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つまたは複数のgRNAであって、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つまたは複数のgRNAを提示する。
【0649】
別の組成物である、組成物2では、本開示は、1つまたは複数のgRNAが1つまたは複数のsgRNAである、組成物1の1つまたは複数のgRNAを提示する。
【0650】
別の組成物である、組成物3では、本開示は、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが1つもしくは複数の修飾gRNAまたは1つもしくは複数の修飾sgRNAである、組成物1~2のいずれかの1つまたは複数のgRNAを提示する。
【0651】
別の組成物である、組成物4では、本開示は、細胞が光受容細胞、網膜前駆細胞、または人工多能性幹細胞(iPSC)である、組成物1~3のいずれかの1つまたは複数のgRNAを提示する。
【0652】
別の組成物である、組成物5では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5290の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0653】
別の組成物である、組成物6では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5291の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0654】
別の組成物である、組成物7では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5319の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0655】
別の組成物である、組成物8では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5320の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0656】
別の組成物である、組成物9では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5321の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0657】
別の組成物である、組成物10では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5322の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0658】
別の組成物である、組成物11では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5358の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0659】
別の組成物である、組成物12では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5290および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0660】
別の組成物である、組成物13では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5291および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0661】
別の組成物である、組成物14では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5319および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0662】
別の組成物である、組成物15では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5320および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0663】
別の組成物である、組成物16では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5321および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0664】
別の組成物である、組成物17では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5322および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0665】
別の組成物である、組成物18では、本開示は、常染色体優性CORDを有する患者由来の細胞におけるRHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための単一分子ガイドRNA(sgRNA)であって、配列番号5358および、配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNAを提示する。
【0666】
別の組成物である、組成物19では、本開示は、RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つまたは複数のgRNAであって、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322および5358からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つまたは複数のgRNAを提示する。
【0667】
第1の治療である、治療1では、本開示は、常染色体優性網膜色素変性を有する患者を処置するための治療であって、RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための少なくとも1つまたは複数のgRNAを含み、1つまたは複数のgRNAが、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、治療を提示する。
【0668】
別の治療である、治療2では、本開示は、1つまたは複数のgRNAが1つまたは複数のsgRNAである、治療2の治療を提示する。
【0669】
別の治療である、治療3では、本開示は、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが1つもしくは複数の修飾gRNAまたは1つもしくは複数の修飾sgRNAである、治療1または2のいずれかの治療を提示する。
【0670】
別の治療である、治療4では、本開示は、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼを導入するステップ;RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAを導入するステップ;および、必要に応じて1つまたは複数のドナー鋳型を導入するステップを含む方法によって形成される、常染色体優性RPを有する患者を処置するための治療であって、1つまたは複数のgRNAまたはsgRNAが、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、治療を提示する。
【0671】
別の治療である、治療5では、本開示は、自己不活性化CRISPR-Cas系1~36のいずれかの自己不活性化CRISPR-Cas系を含む治療を提示する。
【0672】
別の治療である、治療6では、本開示は、無菌である、治療5の治療を提示する。
【0673】
第1のキットである、キット1では、本開示は、in vivoで常染色体優性RPを有する患者を処置するためのキットであって、RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つまたは複数のgRNAまたはsgRNAであって、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つまたは複数のgRNAまたはsgRNAと;1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼと;必要に応じて、1つまたは複数のドナー鋳型とを含む、キットを提示する。
【0674】
別のキットである、キット2では、本開示は、1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼがCas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4またはCpf1エンドヌクレアーゼ;その相同体、その天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化形態、またはそれらの修飾バージョン、ならびにそれらの組合せである、キット1のキットを提示する。
【0675】
別のキットである、キット3では、本開示は、1つまたは複数のドナー鋳型を含む、キット1または2のいずれかのキットを提示する。
【0676】
別のキットである、キット4では、本開示は、ドナー鋳型が3q22.1領域に対する相同性アームを有する、キット3のキットを提示する。
【0677】
別のキットである、キット5では、本開示は、ドナー鋳型が病理学的バリアントP23Hに対する相同性アームを有する、キット3のキットを提示する。
【0678】
別のキットである、キット6では、本開示は、in vivoで常染色体優性RPを有する患者を処置するためのキットであって、自己不活性化CRISPR-Cas系1~36のいずれか1つ;および必要に応じて1つまたは複数のドナー鋳型を含む、キットを提示する。
【0679】
別のキットである、キット7では、本開示は、1つまたは複数のドナー鋳型を含む、キット6のキットを提示する。
【0680】
別のキットである、キット8では、本開示は、ドナー鋳型が3q22.1領域に対する相同性アームを有する、キット7のキットを提示する。
【0681】
別のキットである、キット9では、本開示は、ドナー鋳型が病理学的バリアントP23Hに対する相同性アームを有する、キット7のキットを提示する。
【0682】
第1の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系1では、本開示は、部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと;ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントであって、gRNAまたはsgRNAが、配列番号5290を含む、第2のセグメントと;自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントとを含む自己不活性化CRISPR-Cas系であって、gRNAまたはsgRNAが、SIN部位に実質的に相補的であり、gRNAまたはsgRNAが、ゲノム標的配列に実質的に相補的である、自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0683】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系2では、本開示は、部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと;ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントであって、gRNAまたはsgRNAが、配列番号5291を含む、第2のセグメントと;自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントとを含む自己不活性化CRISPR-Cas系であって、gRNAまたはsgRNAが、SIN部位に実質的に相補的であり、gRNAまたはsgRNAが、ゲノム標的配列に実質的に相補的である、自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0684】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系3では、本開示は、部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドがStaphylococcus aureus Cas9(SaCas9)またはその任意のバリアントである、自己不活性化CRISPR-Cas系1または2の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0685】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系4では、本開示は、部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドがSaCas9またはその任意のバリアントであり;SIN部位が、SaCas9オープンリーディングフレーム(ORF)の5’に位置する5’SIN部位、またはSaCas9 ORF内に位置する天然に存在するイントロンもしくはキメラ挿入イントロン内に位置する3’SIN部位である、自己不活性化CRISPR-Cas系1~3の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0686】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系5では、本開示は、5’SIN部位が、配列番号5300を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系4の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0687】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系6では、本開示は、3’SIN部位が配列番号5280を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系4~5の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0688】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系7では、本開示は、5’SIN部位が、配列番号5301を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系4の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0689】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系8では、本開示は、3’SIN部位が配列番号5281を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系4および7の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0690】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系9では、本開示は、5’SIN部位がSaCas9オープンリーディングフレーム(ORF)の上流およびSV40核局在化シグナル(NLS)の下流に位置する、自己不活性化CRISPR-Cas系4~5および7の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0691】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系10では、本開示は、5’SIN部位がSaCas9オープンリーディングフレーム(ORF)の上流および5’非翻訳領域(UTR)内のSV40核局在化シグナル(NLS)の上流に位置する、自己不活性化CRISPR-Cas系4~5および7の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0692】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系11では、本開示は、3’SIN部位がSaCas9 ORF内に位置する天然に存在するイントロンもしくはキメラ挿入イントロン内に位置する、自己不活性化CRISPR-Cas系4、6および8の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0693】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系12では、本開示は、SIN部位がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系1~11の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0694】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系13では、本開示は、PAMがNNGRRTまたはその任意のバリアントである、自己不活性化CRISPR-Cas系12の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0695】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系14では、本開示は、ゲノム標的配列がロドプシン(RHO)遺伝子におけるP23H変異である、自己不活性化CRISPR-Cas系1~13の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0696】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系15では、本開示は、部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第1のセグメントが、開始コドン、終止コドンおよびポリ(A)終結部位をさらに含む、自己不活性化CRISPR-Cas系1~14の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0697】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系16では、本開示は、第1のセグメントおよび第3のセグメントが、第1のベクターにおいて一緒に提供され、第2のセグメントが、第2のベクターに提供される、自己不活性化CRISPR-Cas系1~15の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0698】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系17では、本開示は、第1のセグメント、第2のセグメントおよび第3のセグメントが1つのベクターにおいて一緒に提供される、自己不活性化CRISPR-Cas系1~15の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0699】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系18では、本開示は、第3のセグメントが第1のまたは第2のベクターにおいて、第1のセグメントの5’位置に存在する、自己不活性化CRISPR-Cas系16~17の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0700】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系19では、本開示は、第3のセグメントが第1のまたは第2のベクターにおいて、第1のセグメントの3’位置に存在する、自己不活性化CRISPR-Cas系16~17の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0701】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系20では、本開示は、1つまたは複数の第3のセグメントが第1のまたは第2のベクターにおいて、第1のセグメントの5’末端および3’末端に存在する、自己不活性化CRISPR-Cas系16~17の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0702】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系21では、本開示は、第1のベクターが配列番号5341を含み、第2のベクターが配列番号5339を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系16の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0703】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系22では、本開示は、第1のベクターが配列番号5341を含み、第2のベクターが配列番号5340を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系16の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0704】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系23では、本開示は、第1のベクターが配列番号5342を含み、第2のベクターが配列番号5339を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系16の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0705】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系24では、本開示は、第1のベクターが配列番号5342を含み、第2のベクターが配列番号5340を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系16の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0706】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系25では、本開示は、第3のセグメントが100ヌクレオチド未満の長さである、自己不活性化CRISPR-Cas系1~24の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0707】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系26では、本開示は、第3のセグメントが50ヌクレオチド未満の長さである、自己不活性化CRISPR-Cas系25の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0708】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系27では、本開示は、gRNAまたはsgRNAが、少なくとも1つの位置を除き、SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的である、自己不活性化CRISPR-Cas系1~26の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0709】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系28では、本開示は、gRNAまたはsgRNAが、少なくとも2つの位置を除き、SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的である、自己不活性化CRISPR-Cas系1~27の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0710】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系29では、本開示は、プロモーターをコードする核酸配列が、第1のセグメントに作動可能に連結されている、自己不活性化CRISPR-Cas系1~28の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0711】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系30では、本開示は、プロモーターが、空間制限プロモーター、gRNAもしくはsgRNAを1つの方向に駆動させ、SaCas9を反対の方向に駆動させる二方向性プロモーター、または誘導性プロモーターである、自己不活性化CRISPR-Cas系29の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0712】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系31では、本開示は、空間制限プロモーターが、以下:任意の組織または細胞型特異的プロモーター、肝細胞特異的プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、骨格筋特異的プロモーター、肺前駆細胞特異的プロモーター、光受容器特異的プロモーター、および網膜色素上皮(RPE)選択的プロモーターからなる群から選択される、自己不活性化CRISPR-Cas系30の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0713】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系32では、本開示は、ベクターが1つまたは複数のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、自己不活性化CRISPR-Cas系16~17の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0714】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系33では、本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターがAAV5血清型キャプシドベクターである、自己不活性化CRISPR-Cas系32の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0715】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系34では、本開示は、以下:SaCas9またはその任意のバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと;ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントと;自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントとを含む自己不活性化CRISPR-Cas系であって;gRNAまたはsgRNAが、SIN部位に実質的に相補的であり;gRNAまたはsgRNAがゲノム標的配列に実質的に相補的であり;SIN部位が、配列番号5313~5314からなる群から選択される配列を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0716】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系35では、本開示は、以下:SpCas9またはその任意のバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと;ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントと;自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントとを含む自己不活性化CRISPR-Cas系であって;gRNAまたはsgRNAが、SIN部位に実質的に相補的であり;gRNAまたはsgRNAがゲノム標的配列に実質的に相補的であり;SIN部位が、配列番号5277~5279または配列番号5297~5299からなる群から選択される配列を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0717】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系36では、本開示は、SIN部位が配列番号5277~5279または配列番号5297~5299からなる群から選択されるいずれか1つの配列より1、2、3、4、5、6または7ヌクレオチド短い配列を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系35の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0718】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系35では、本開示は、以下:SaCas9またはその任意のバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと;ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントと;自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントとを含む自己不活性化CRISPR-Cas系であって;gRNAまたはsgRNAが、SIN部位に実質的に相補的であり;gRNAまたはsgRNAがゲノム標的配列に実質的に相補的であり;SIN部位が、配列番号5280~5281、5315~5318および5357または配列番号5300~5301、5323~5326および5359からなる群から選択される配列を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0719】
別の自己不活性化CRISPR-Cas系である、自己不活性化CRISPR-Cas系36では、本開示は、SIN部位が配列番号5280~5281、5315~5318および5357または配列番号5300~5301、5323~5326および5359からなる群から選択されるいずれか1つの配列より1、2、3、4、5、6または7ヌクレオチド短い配列を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系35の自己不活性化CRISPR-Cas系を提示する。
【0720】
第1の遺伝子改変細胞である、遺伝子改変細胞1では、本開示は、自己不活性化CRISPR-Cas系1~36のいずれかの自己不活性化CRISPR-Cas系を含む遺伝子改変細胞を提示する。
【0721】
別の遺伝子改変細胞である、遺伝子改変細胞2では、本開示は、細胞が、以下:古細菌細胞、細菌細胞、真核生物細胞、真核生物単細胞生物、体細胞、胚細胞、幹細胞、植物細胞、藻類細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚細胞、カエル細胞、トリ細胞、哺乳動物細胞、ブタ細胞、ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞、げっ歯類細胞、ラット細胞、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞およびヒト細胞からなる群から選択される、遺伝子改変細胞1の遺伝子改変細胞を提示する。
【0722】
第1の核酸である、核酸1では、本開示は、配列番号5287~5291、5319~5322および5358からなる群から選択されるスペーサー配列を含むgRNAをコードする核酸を提示する。
【0723】
別の核酸である、核酸2では、本開示は、gRNAがsgRNAである、核酸1の核酸を提示する。
【0724】
第1のベクターである、ベクター1では、本開示は、配列番号5287~5291、5319~5322および5358からなる群から選択されるスペーサー配列を含むgRNAをコードするベクターを提示する。
【0725】
別のベクターである、ベクター2では、本開示は、gRNAがsgRNAである、ベクター1のベクターを提示する。
【0726】
別のベクターである、ベクター3では、本開示は、AAVである、ベクター1または2のいずれか1つのベクターを提示する。
【0727】
別のベクターである、ベクター4では、本開示は、AAV5血清型(sertoype)キャプシドベクターである、ベクター1~3のいずれか1つのベクターを提示する。
【0728】
定義
【0729】
本明細書に既に記載した定義に加えて、次の定義は本開示に関連する。
【0730】
「変更」または「遺伝子情報の変更」という用語は、細胞のゲノムにおける任意の変化を指す。遺伝的障害を処置する文脈で、変更には、挿入、欠失、および修正が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0731】
「挿入」という用語は、DNA配列における1つまたは複数のヌクレオチドの付加を指す。挿入は、数個のヌクレオチドの小さな挿入から、大きなセグメント、例えば、cDNAまたは遺伝子の挿入までの範囲に及び得る。
【0732】
「欠失」という用語は、DNA配列における1つもしくは複数のヌクレオチドの喪失もしくは除去、または遺伝子の機能の喪失もしくは除去を指す。一部の事例では、欠失は、例えば、数個のヌクレオチド、エクソン、イントロン、遺伝子セグメント、または遺伝子の配列全体の喪失を含み得る。一部の事例では、遺伝子の欠失は、遺伝子またはその遺伝子産物の機能または発現の排除または低減を指す。これは、遺伝子内またはその近傍の配列の欠失だけでなく、その遺伝子の発現を破壊する他の事象(例えば、挿入、ナンセンス変異)によっても生じ得る。
【0733】
「修正」という用語は、本明細書において使用されるとき、挿入によってか、欠失によってか、または置換によってかにかかわらず、細胞内のゲノムの1つまたは複数のヌクレオチドの変化を指す。そのような修正は、構造か機能かにかかわらず、修正されたゲノム部位に、より好ましい遺伝子型または表現型の結果をもたらし得る。「修正」の1つの非限定的な例としては、遺伝子またはその遺伝子産物(複数可)の構造または機能を回復させる、変異体または欠陥のある配列の野生型配列への修正が挙げられる。変異の性質に応じて、修正は、本明細書に開示される様々な戦略を介して達成することができる。1つの非限定的な例では、ミスセンス変異が、変異を含む領域を、その野生型対応物で置き換えることによって、修正され得る。別の例として、遺伝子における重複変異(例えば、反復増殖)を、余分な配列を除去することによって、修正することができる。
【0734】
「ノックイン」という用語は、ゲノムへのDNA配列またはその断片の付加を指す。ノックインしようとするそのようなDNA配列としては、単一のまたは複数の遺伝子全体を挙げることができ、遺伝子と関連する調節配列、または前述のものの任意の部分もしくは断片を挙げることができる。例えば、野生型タンパク質をコードするcDNAを、変異体遺伝子を有する細胞のゲノムに挿入することができる。ノックイン戦略は、欠陥のある遺伝子を、全体的または部分的に置き換えることを必要とするものではない。一部の事例では、ノックイン戦略は、既存の配列の提供される配列での置換、例えば、変異体対立遺伝子の野生型コピーでの置換をさらに含んでもよい。一方、「ノックアウト」という用語は、遺伝子または遺伝子の発現の排除を指す。例えば、遺伝子は、リーディングフレームの破壊を生じる、ヌクレオチド配列の欠失または付加のいずれかによって、ノックアウトすることができる。別の例として、遺伝子は、遺伝子の一部を無関係な配列で置き換えることによって、ノックアウトすることができる。最後に、「ノックダウン」という用語は、本明細書において使用されるとき、遺伝子またはその遺伝子産物(複数可)の発現の低減を指す。遺伝子ノックダウンの結果として、タンパク質の活性もしくは機能が減弱され得るか、またはタンパク質のレベルが、低減もしくは排除され得る。
【0735】
「~を含むこと」または「~を含む」という用語は、本開示に必須であるが、必須であってもそうでなくても、未指定の要素の包含に対しても開かれた、組成物、治療、キット、方法、およびこれらのそれぞれの構成要素(複数可)に言及して使用される。
【0736】
「~から本質的になる」という用語は、所与の態様に要求される要素を指す。用語は、本開示のその態様の、基本的かつ新規のまたは機能的な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない、さらなる要素の存在を許容する。
【0737】
「~からなる」という用語は、態様についてのその記載において列挙されない任意の要素を除外して、本明細書で記載される組成物、治療、キット、方法、およびこれらのそれぞれの構成要素を指す。
【0738】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈により、そうでないことが明確に指示されない限りにおいて、複数の指示対象を含む。
【0739】
本明細書で列挙される任意の数値範囲は、数値精度が同じである(すなわち、指定された桁数と同じ桁数を有する)全ての部分範囲であって、列挙された範囲内に包含される部分範囲について記載する。例えば、「1.0~10.0」という列挙範囲は、本明細書の本文中で、「2.4~7.6」という範囲が、明示的に列挙されていない場合であってもなお、例えば、「2.4~7.6」など、列挙された最小値である1.0と、列挙された最大値である10.0との間(およびこれらを含む)の、全ての部分範囲について記載する。したがって、本出願者は、本明細書で明示的に列挙される範囲内に包含される、同じ数値精度の、任意の部分範囲を、明示的に列挙するように、特許請求の範囲を含む本明細書を矯正する権利を留保する。任意のこのような部分範囲を明示的に列挙するように矯正することが、記載、記載の十分性、ならびに35 U.S.C.§112(a)およびEPC 123(2)条下の要件を含む、新規事項の要件に準拠するように、全てのこのような範囲は本明細書で固有に記載される。文脈により、明示的に指定またはそうでないことが要求されない限りにおいて、本明細書で記載される、全ての数値パラメータ(値、範囲、量、百分率などを表す数値パラメータ)はまた、「約」という語が、数の前に明示的に現れない場合であってもなお、「約」という語を前置しているかのように読むことができる。加えて、本明細書で記載される数値パラメータは、報告される有効桁数である、数値精度に照らして、通常の丸め法を適用することにより解釈されるものとする。また、本明細書で記載される数値パラメータは、必然的に、パラメータの数値を決定するのに使用される基礎的な測定法に特徴的な、固有のばらつきを有することも理解される。
【0740】
本明細書で特定される任意の特許、刊行物、または他の開示材料は、別に示されない限り、組み込まれる材料が本明細書で明白に示される既存の説明、定義、記述、または他の開示材料と矛盾しない範囲でのみ、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。そのため、および必要な範囲内でのみ、本明細書で示される明らかな開示は、参照により組み込まれる任意の矛盾する材料に優先する。本明細書に参照により組み込まれると述べられているが、本明細書で示される既存の定義、記述、または他の開示材料と矛盾する任意の材料またはその部分は、その組み込まれる材料と既存の開示材料との間で矛盾が生じない限りにおいてのみ組み込まれる。出願人らは、本明細書に参照により組み込まれる、任意の主題またはその部分を明白に列挙するために、本明細書を補正する権利を有する。
【0741】
本開示の1つまたは複数の態様の詳細が、以下に付随する実施例において記載されている。本明細書において記載されるものと類似または同等の任意の材料および方法を、本開示の実施または試験において使用することができるが、想定される材料および方法の具体的な例が、記載されている。本開示の他の特性、目的、および利点は、本説明から明らかである。本説明例において、単数形は、文脈により別途明確に示されない限り、複数形も含む。別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。矛盾が生じた場合には、本説明が、優先される。
【実施例
【0742】
本開示は、本発明の例示的で非限定的な態様を提供する以下の実施例を参照して、より完全に理解される。
【0743】
実施例では、変異体遺伝子のフレームシフトおよび発現のサイレンシングまたはゲノムローカスにおけるP23H変異の恒久的な修正、または異種ローカスでの発現をもたらし、RHOタンパク質活性を回復させる、本明細書において「ゲノム改変」と称されるRHO遺伝子におけるP23H変異内もしくは近傍に、定義された治療的ゲノム欠失、挿入、または置き換えを作り出すための例示的なゲノム編集技法としての、CRISPR系の使用について説明する。定義された治療改変の導入は、本明細書において説明され、例示されるように、網膜色素変性(RP)の潜在的な改善のための新規な治療戦略を代表する。
(実施例1)
RHO遺伝子におけるP23H変異のCRISPR/S.pyogenes(Sp)Cas9 PAM部位
【0744】
RHO遺伝子におけるP23H変異を、SpCas9プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。領域を配列NRGを有するPAMについてスキャンした。NRG PAMの上流に位置するgRNAスペーサー配列(17~24bp)を、次いで同定した。
(実施例2)
RHO遺伝子におけるP23H変異のCRISPR/S.aureus(Sa)Cas9 PAM部位
【0745】
RHO遺伝子におけるP23H変異を、SaCas9 PAMについてスキャンした。領域を配列NNGRRTを有するPAMについてスキャンした。NNGRRT PAMの上流に位置するgRNAスペーサー配列(17~24bp)を、次いで同定した。
(実施例3)
RHO遺伝子におけるP23H変異のCRISPR/S.thermophilus(St)Cas9 PAM部位
【0746】
RHO遺伝子におけるP23H変異を、StCas9 PAMについてスキャンした。領域を配列NNAGAAWを有するPAMについてスキャンした。NNAGAAW PAMの上流に位置するgRNAスペーサー配列(17~24bp)を、次いで同定した。
(実施例4)
RHO遺伝子におけるP23H変異のCRISPR/T.denticola(Td)Cas9 PAM部位
【0747】
RHO遺伝子におけるP23H変異を、TdCas9 PAMについてスキャンした。領域を配列NAAAACを有するPAMについてスキャンした。NAAAAC PAMの上流に位置するgRNAスペーサー配列(17~24bp)を、次いで同定した。
(実施例5)
RHO遺伝子におけるP23H変異のCRISPR/N.meningitides(Nm)Cas9 PAM部位
【0748】
RHO遺伝子におけるP23H変異を、NmCas9 PAMについてスキャンした。領域を配列NNNNGHTTを有するPAMについてスキャンした。NNNNGHTT PAMの上流に位置するgRNAスペーサー配列(17~24bp)を、次いで同定した。
(実施例6)
RHO遺伝子におけるP23H変異のCRISPR/Cpf1 PAM部位
【0749】
RHO遺伝子におけるP23H変異を、Cpf-1 PAMについてスキャンした。領域を配列YTNを有するPAMについてスキャンした。YTN PAMの上流に位置するgRNAスペーサー配列(17~24bp)を、次いで同定した。
(実施例7)
ガイド鎖のバイオインフォマティクス解析
【0750】
gRNAまたはsgRNAは、編集が望ましいゲノム配列などのオンターゲット部位、または編集が望ましくないゲノム配列などのオフターゲット部位にRNP複合体を向けさせることができる。どの候補gRNAまたはsgRNAがオンターゲットおよび/またはオフターゲット活性を有する可能性があるかをさらに習得するために、オンターゲット部位およびオフターゲット部位の両方において、理論的結合および実験的に査定した活性の両方を含む一段階プロセスまたは多段階プロセスで、候補ガイドをスクリーニングおよび選択した。これらのプロセスは、さらなる開発のための高特異性gRNAまたはsgRNAの選択を可能にする。
【0751】
例示として、意図される染色体位置以外の染色体位置での効果の可能性を査定するために、以下により詳細に説明および例示するように、オフターゲット結合を査定するために使用可能な様々なバイオインフォマティクスツールの1つまたは複数を使用して、隣接するPAMを有する、RHO遺伝子におけるP23H変異内または近傍の部位などの、特定のオンターゲット部位に適合する配列を有する候補ガイドを、同様の配列を有するオフターゲット部位で切断するそれらの潜在性について査定した。
【0752】
その後、オフターゲット活性について比較的低い潜在性を有することが予測される候補は、それらのオンターゲット活性、およびその後様々な部位でのオフターゲット活性を測定するために実験的に査定された。選択したローカスで所望の遺伝子編集レベルを達成するために十分に高いオンターゲット活性を有し、他の染色体ローカスでは改変の可能性を低減させるために比較的低いオフターゲット活性を有するガイドが好まれた。オンターゲット活性対オフターゲット活性の比は、ガイドの「特異性」と呼ばれる。
【0753】
予測されるオフターゲット活性の最初のスクリーニングのために、最も可能性があるオフターゲット部位を予測するために使用された、いくつかの公知かつ一般に利用可能なバイオインフォマティクスツールがあり、CRISPR/Cas9/Cpf1ヌクレアーゼ系における標的部位への結合は相補的配列間のワトソン・クリック塩基対形成により駆動されるので、相違の程度(およびそれゆえオフターゲット結合の潜在性の低減)は本質的に、標的部位に対する、潜在的オフターゲット部位における、一次配列の差、ミスマッチおよびバルジ、すなわち、非相補的塩基に変えられた塩基、ならびに塩基の挿入または欠失に関連する。COSMID(CRISPR Off-target Sites with Mismatches,Insertions and Deletions)(ウェブ上でcrispr.bme.gatech.eduにて使用可能)と呼ばれる例示的なバイオインフォマティクスツールは、かかる類似点をコンパイルする。他のバイオインフォマティクスツールとして、autoCOSMID、およびCCTopが挙げられるが、これらに限定されない。
【0754】
変異および染色体再編の有害作用を低減させるために、バイオインフォマティクスを使用して、オフターゲット切断を最小限にした。CRISPR/Cas9系についての研究は、特に、PAM領域から遠位位置での、塩基対ミスマッチおよび/またはバルジを有するDNA配列へのガイド鎖の非特異的ハイブリダイゼーションに起因するオフターゲット活性の可能性を示唆した。それゆえ、塩基対ミスマッチに加えて、RNAガイド鎖とゲノム配列との間の挿入および/または欠失を有する、潜在的オフターゲット部位を同定したバイオインフォマティクスツールを有することは、重要であった。オフターゲット予測アルゴリズムCCTopに基づくバイオインフォマティクスツールを使用して、潜在的CRISPRオフターゲット部位のゲノムを探索した(CCTopは、crispr.cos.uni-heidelberg.de/においてウェブ上で利用可能である)。出力は、ミスマッチの数および位置に基づいて潜在的オフターゲット部位のリストをランク付けし、より多くの情報に通じた標的部位の選択を可能にし、オフターゲット切断の可能性が高い部位の使用を回避する。
【0755】
ある領域におけるgRNA標的化部位の見積もられたオンターゲット活性および/またはオフターゲット活性を比較検討する(weigh)、追加のバイオインフォマティクスパイプラインを使用した。活性を予測するために使用した他の特徴として、問題の細胞種、DNAのアクセシビリティ、クロマチン状態、転写因子結合部位、転写因子結合データ、および他のCHIP-seqデータについての情報が挙げられる。gRNA対の相対的位置および方向、局所配列特徴、ならびにマイクロホモロジーなどの、編集効率を予測する追加の要素を比較検討した。
(実施例8)
オンターゲットおよびオフターゲット活性についての細胞におけるガイドの試験
【0756】
過去に調査されたガイドRNAの特異性をさらに評価するために、最も低いオフターゲット活性を有すると予測された選択ガイドRNAをTIDE分析を使用してインデル頻度を評価することによって、遺伝子操作されたK562細胞におけるオンターゲットおよびオフターゲット活性について試験した。得られたデータは、選択されたガイドRNAがオフターゲット活性を最小化する一方で変異体P23H RHO遺伝子を効率的に編集する証拠を提示する。
【0757】
K562細胞のゲノムは、ヒトロドプシン(RHO)遺伝子の2つの野生型対立遺伝子を含有し、細胞をStaphylococcus aureus Cas9エンドヌクレアーゼを安定に発現するように操作した。これらの細胞に野生型RHO遺伝子を標的とするgRNAまたは変異体P23H RHO遺伝子を標的とするgRNAのいずれかをトランスフェクトした。野生型RHO遺伝子を標的とするgRNAとして、ヒトロドプシンWT 20マー(配列番号5285)およびヒトロドプシンWT 19マー(配列番号5286)が挙げられる。変異体 P23H RHO遺伝子を標的とするgRNAとして、ヒトロドプシンP23H 20マー(配列番号5290)およびヒトロドプシンP23H 19マー(配列番号5291)が挙げられる(図2B)。トランスフェクトしたK562細胞を、S.aureus Cas9タンパク質を発現するK562細胞であるが、いかなるガイドRNAでもトランスフェクトされない対照細胞と比較した。
【0758】
ゲノムDNAをトランスフェクションの48~72時間後に細胞から回収し、RHO遺伝子のコドン23周辺をPCR増幅した。RHO遺伝子の第1のエクソンの非コード上流領域に位置するフォワードプライマーおよびコード領域に位置するリバースプライマーをゲノムDNAから野生型RHO遺伝子を増幅するために使用した。K562細胞のゲノムがRHO遺伝子の野生型バージョンだけを含有していることから、これらのK562細胞を野生型RHO遺伝子をターゲティングするgRNAについてのオンターゲット編集効率および変異体P23H RHO遺伝子をターゲティングするgRNAについてのオフターゲット編集効率を測定するために使用した。オンターゲットおよびオフターゲット活性を遊離DNA末端のNHEJ修復によって導入される挿入、欠失および変異の率によって測定した。配列分析は、野生型RHO遺伝子(配列番号5285~5286)をターゲティングするgRNAについて、80%を超えるローカスが成功裏に編集されたことを明らかにした(図3)。変異させたP23H RHO遺伝子(配列番号5290~5291)をターゲティングするgRNAについて、オフターゲット編集が低く、対照細胞におけるバックグラウンドレベルと同様であったことが見出された(図3)。
【0759】
変異体P23H RHO遺伝子(配列番号5290~5291)をターゲティングするgRNAのオンターゲット編集効率およびオフターゲット編集効率を試験するために、S.aureus Cas9タンパク質を発現するK562細胞に変異体P23H RHO遺伝子を標的とするgRNAをトランスフェクトし、P23H変異体RHO遺伝子または野生型RHO遺伝子のいずれかをコードするプラスミドをトランスフェクトした。遺伝子操作されたK562細胞がそれらのゲノム中にRHO遺伝子の野生型バージョンだけを有することから、プラスミドをRHO遺伝子(RHO遺伝子のP23H変異させたバージョンまたはRHO遺伝子の野生型バージョンのいずれか)の外因性コピーを導入するために使用した。これらのトランスフェクトしたK562細胞を対照細胞と比較した。対照細胞は、S.aureus Cas9タンパク質を発現し、プラスミドでトランスフェクトされているが、いかなるガイドRNAでもトランスフェクトされないK562細胞であった。トランスフェクトしたK562細胞から生じた配列を分析する場合、これらの細胞におけるプラスミドDNA(ゲノムDNAではなく)だけを変異体P23H RHO遺伝子(配列番号5290~5291)をターゲティングするgRNAについてのオンターゲット編集効率およびオフターゲット編集効率を確立するために使用した。例えば、変異体P23H RHO遺伝子を標的とするgRNAについてのオンターゲット活性を試験するために、K562細胞を、変異体P23H RHO遺伝子を標的とするgRNAでトランスフェクトし、RHO遺伝子のP23H変異させたバージョンをコードするプラスミドでトランスフェクトした。別個の実験では、変異体P23H RHO遺伝子を標的とするgRNAについてのオフターゲット活性を試験するために、K562細胞に変異体P23H RHO遺伝子を標的とするgRNAをトランスフェクトし、RHO遺伝子の野生型バージョンを含有するプラスミドをトランスフェクトした。プラスミドのプロモーター領域(天然RHOプロモーターではない)に位置するフォワードプライマーおよびRHO遺伝子におけるリバースプライマーをいずれかのRHOコードプラスミドからのDNA産物を増幅するために使用した。いずれのプラスミドもRHO遺伝子の上流の非コード領域を含有せず、それによりRHO遺伝子のコドン23周辺のゲノムDNAを増幅するために使用されるプライマーでPCR産物を産生できなかった。生じたプラスミド-特異的PCR産物またはゲノム-特異的PCR産物を、次いでそれぞれの増幅PCR産物の内部に位置するプライマーで配列決定し、TIDE分析に供し、ウェブツールをCRISPR-Cas9およびガイドRNA(gRNAまたはsgRNA)による標的ローカスのゲノム編集を迅速に査定するために使用した。2つの標準的キャピラリー配列決定反応からの定量的配列追跡データに基づいて、TIDEソフトウエアは、編集の有効性を定量し、標的化細胞プールのDNAにおける優勢なタイプの挿入および欠失(インデル)を識別する。詳細な説明および例についてBrinkman et al, Nucl. Acids Res. (2014)を参照されたい。本技術は、以前使用されたサンガー配列決定法よりもはるかに迅速かつ安価にDNAおよびRNAを配列決定できるようにし、それによりゲノミクスおよび分子生物学の研究を改革した。
【0760】
配列決定分析は、変異体P23H RHO遺伝子(配列番号5291)をターゲティングする19マーgRNAが対照細胞より約15倍多いオンターゲット編集を引き起こすことが見出され、変異体P23H RHO遺伝子(配列番号5290)をターゲティングする20マーgRNAが対照細胞より約34倍多いオンターゲット編集を引き起こすことが見出されたことを明らかにした(図4)。19マーgRNAは、対照細胞と同様のオフターゲット編集を示した一方で、20マーは対照細胞と比較してわずかに増加したオフターゲット編集を示した(図4)。これらのデータは、選択されたガイドRNA(配列番号5290~5291)が、オフターゲット活性を最小化する一方で変異体P23H RHO遺伝子を効率的に編集する証拠を提示する。
【0761】
有意な編集活性を有するgRNAは、RHO遺伝子におけるP23H変異のフレームシフトまたは修正を測定するために培養細胞中で追跡することができる。オフターゲット事象も追跡できる。様々な細胞をトランスフェクトでき、遺伝子修正のレベルおよび可能なオフターゲット事象を測定できる。これらの実験は、ヌクレアーゼおよびドナーの設計および送達の最適化を可能にする。
(実施例9)
オフターゲット活性の細胞におけるガイドの試験
【0762】
ゲノムレベルでのオフターゲット編集の程度を決定するために、次いで最良のオンターゲット活性を有するgRNA(またはsgRNA)をGUIDE-seq、Amplicon-seq、および/またはDigenome-seqを使用して標的化ゲノムワイドオフターゲット編集について試験する。オフターゲット効果は、ヒト細胞において試験する。
(実施例10)
HDR遺伝子編集についての異なるアプローチの試験
【0763】
オンターゲット活性およびオフターゲット活性の両方についてgRNAを試験した後、変異修正およびノックイン戦略をHDR遺伝子編集について試験する。これらの試験により、様々なHDR遺伝子編集戦略の最適化が可能となり、それらそれぞれの有効性に基づく比較がなされる。
【0764】
変異修正アプローチのために、ドナーDNA鋳型は、短い一本鎖オリゴヌクレオチド、短い二本鎖オリゴヌクレオチド(インタクトなPAM配列/変異させたPAM配列)、長い一本鎖DNA分子(インタクトなPAM配列/変異させたPAM配列)または長い二本鎖DNA分子(インタクトなPAM配列/変異させたPAM配列)として提供する。加えて、ドナーDNA鋳型は、AAVによって送達される。
【0765】
cDNAノックインアプローチのために、RHO染色体領域に対する相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、40ntよりも長いRHO遺伝子の第1のエクソン(第1のコーディングエクソン)、RHO遺伝子の完全なCDSおよびRHO遺伝子の3’UTRおよび続く少なくとも40ntのイントロンを含んでよい。RHO染色体領域に対する相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、80ntよりも長いRHO遺伝子の第1のエクソン、RHO遺伝子の完全なCDSおよびRHO遺伝子の3’UTRおよび続く少なくとも80ntのイントロンを含んでよい。RHO染色体領域に対する相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、100ntよりも長いRHO遺伝子の第1のエクソン、RHO遺伝子の完全なCDSおよびRHO遺伝子の3’UTRおよび続く少なくとも100ntのイントロンを含んでよい。RHO染色体領域に対する相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、150ntより長いRHO遺伝子の第1のエクソン、RHO遺伝子の完全なCDSおよびRHO遺伝子の3’UTRおよび続く少なくとも150ntのイントロンを含んでよい。RHO染色体領域に対する相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、300ntより長いRHO遺伝子の第1のエクソン、RHO遺伝子の完全なCDSおよびRHO遺伝子の3’UTRおよび続く少なくとも300ntのイントロンを含んでよい。RHO染色体領域に対する相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAは、400ntより長いRHO遺伝子の第1のエクソン、RHO遺伝子の完全なCDSおよびRHO遺伝子の3’UTRおよび続く少なくとも400ntのイントロンを含んでよい。
【0766】
代替的にDNA鋳型は、本明細書に示すとおり組換えAAV粒子によって送達される。
【0767】
RHO cDNAのノックインは、任意の選択された染色体位置へと、または「セーフハーバー」ローカス、すなわちアルブミン遺伝子、AAVS 1遺伝子、HRPT遺伝子、CCR5遺伝子、グロビン遺伝子、TTR遺伝子、TF遺伝子、F9遺伝子、Alb遺伝子、Gys2遺伝子およびPCSK9遺伝子の1つに実施され得る。第1のエクソンへのcDNAのHDR媒介ノックインの効率の評価は、次の領域、例えば:AAVS1 19q13.4-qter、HRPT 1q31.2、CCR5 3p21.31、グロビン11p15.4、TTR 18q12.1、TF 3q22.1、F9 Xq27.1、Alb 4q13.3、Gys2 12p12.1、PCSK9 1p32.3;RHOに対応する5’UTRまたは代替5’UTR、RHOの完全なCDSおよびRHOの3’UTRまたは修飾3’UTRおよび少なくとも80ntの第1のイントロンのうちの1つに対する相同性アームを有する一本鎖または二本鎖DNAなどの「セーフハーバー」部位へのcDNAノックインを利用でき、代替的に同じDNA鋳型配列はAAVによって送達される。
(実施例11)
リードCRISPR-Cas9/DNAドナー組合せの再評価
【0768】
遺伝子編集についての異なる戦略を試験した後、リードCRISPR-Cas9/DNAドナー組合せを欠失、組換えの効率、およびオフターゲット特異性について細胞において再評価する。Cas9 mRNAまたはRNPは、送達のために、脂質ナノ粒子へと製剤化し、sgRNAはナノ粒子へと製剤化するまたは組換えAAV粒子として送達され、ドナーDNAはナノ粒子へと製剤化するまたは組換えAAV粒子として送達される。
(実施例12)
自己不活性化(SIN)CRISPR/Cas系
【0769】
Cas9および/またはガイドRNAをコードする核酸をウイルスベクターを介して送達する場合、核酸の少なくとも1つを送達するためにSINベクターを使用することは有利であり得る。特異性を有する標的化核酸を編集する様々なSINベクターの能力をさらに調査するために実験を実施した。
【0770】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質(BFP)へと融合されたCas9標的部位を含有する2つのレポーター細胞株を生成した。第1のレポーター細胞株は、ベータ-チューブリン遺伝子ローカスでBFPへと融合された野生型RHO遺伝子(Cas9標的部位)を有する。第2のレポーター細胞株は、ベータ-チューブリン遺伝子ローカスでBFPへと融合されたP23H変異(Cas9標的部位)を含むRHO遺伝子を有する。それにより、レポーター細胞株によって構成されるCas9標的部位-BFP遺伝子融合物は、Cas9標的部位での編集活性についてレポートするために使用できる。編集活性は、フレームシフト変異を介したBFPシグナルの喪失を引き起こすことができる。Cas9ベクターと本開示に従ったガイドRNAとの様々な組合せが、RHO P23H変異体Cas9標的部位を標的化する編集において有効であったことが見出された。様々な組合せも特異的であり、野生型RHO Cas9標的部位の編集が最小であり、BFPシグナル喪失のバックグラウンドレベルと同様であった。
【0771】
これらの2つのレポーター細胞株を生成するために、pDL124およびドナープラスミドを使用した。pDL124は、SpCas9 ORFをCMVプロモーター下に、およびU6プロモーター駆動sgRNAを含有し、ギブソンアセンブリーによって構築した。U6プロモーター駆動sgRNAは、ベータ-チューブリンのC末端から3残基目に対応するコドンを切断できる。ドナープラスミド(図8)は、Cas9標的部位(野生型RHO遺伝子またはP23H変異を含むRHO遺伝子のいずれか)を含む。これら2つの各ドナープラスミドは、GeneArt service(ThermoFisher Scientific)を使用して合成した。
【0772】
HEK293FT細胞(細胞200,000個)をprogram DN-100の下でヌクレオフェクションによって0.5μgのpDL124および0.5μgのドナープラスミドでトランスフェクトした。pDL124を使用して、ドナープラスミド由来のCas9標的部位(すなわち、野生型RHO遺伝子またはP23H変異を含むRHO遺伝子)をHEK293FT細胞のベータ-チューブリン遺伝子ローカスに2つの相同性アーム(tubbエクソン4)の間で組み入れるために、HEK293FT細胞のベータ-チューブリン遺伝子ローカスでの二本鎖切断を生成した。相同組換えは、T2Aペプチドへと融合されたベータ-チューブリンの発現をもたらす。Cas9標的部位は、終止コドンを含まず、青色蛍光タンパク質(mTagBFP2)およびブラストサイジン選択マーカー(bsd)は、ベータ-チューブリンについてと同じリーディングフレーム内にコードされている。正確に組み入れられたCas9標的部位を有する細胞を2~5μg/mlブラストサイジンを補充した10%FBS/DMEM中で富化し、細胞分取によって単離した。トランスフェクション24時間前に、各レポーター細胞株を6ウエルプレートの1ウエルあたり細胞500,000個、2.5mlの10%FBS/DMEM中に播種した。
【0773】
図6Aは、ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合された野生型RHO遺伝子(Cas9標的部位)を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg SIN-AAV SaCas9 ver.1(図5A)および1.25μg pSIA010(図5D)でトランスフェクトした場合に得られた結果を示す。pSIA010は、P23H 20マーsgRNA(配列番号5290を含むsgRNA)をコードするAAV配列(配列番号5339)およびEGFPを含むプラスミドである。SIN-AAV SaCas9 ver.1は、SaCas9をコードし、SaCas9 ORF(配列番号5313)の5’に位置するSIN部位(P23H標的部位とも称される)およびSaCas9 ORF(配列番号5314)内に位置する天然に存在するイントロンまたはキメラ挿入イントロン内に位置する3’SIN部位を含む。SIN-AAV SaCas9 ver.1における5’SIN部位(配列番号5313)は、配列番号5290を含むsgRNAによって標的とされる配列番号5300を含む。SIN-AAV SaCas9 ver.1における3’SIN部位(配列番号5314)は、配列番号5290を含むsgRNAによっても標的とされる配列番号5280を含む(表6)。
【表6】
【0774】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合されたP23H変異(Cas9標的部位)を含むRHO遺伝子を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg SIN-AAV SaCas9 ver.1および1.25μg pSIA010でトランスフェクトした(図6C)。
【0775】
図6Bは、ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合された野生型RHO遺伝子(Cas9標的部位)を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg SIN-AAV SaCas9 ver.1(図5A)および1.25μg pSIA011(図5D)でトランスフェクトした場合に得られた結果を示す。pSIA011は、P23H 19マー sgRNA(配列番号5291を含むsgRNA)をコードするAAV配列(配列番号5340)およびEGFPを含むプラスミドである。SIN-AAV SaCas9 ver.1は、SaCas9をコードし、SaCas9 ORF(配列番号5313)の5’に位置するSIN 部位(P23H標的部位とも称される)およびSaCas9 ORF(配列番号5314)内に位置する天然に存在するイントロンまたはキメラ挿入イントロン内に位置する3’SIN部位を含む。SIN-AAV SaCas9 ver.1における5’SIN部位(配列番号5313)は配列番号5301を含み、配列番号5291を含むsgRNAによって標的とされる。SIN-AAV SaCas9 ver.1における3’SIN部位(配列番号5314)は配列番号5281を含み、配列番号5291を含むsgRNAによって標的とされる(表7)。
【表7】
【0776】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合されたP23H変異(Cas9標的部位)を含むRHO遺伝子を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg SIN-AAV SaCas9 ver.1および1.25μg pSIA011でトランスフェクトした(図6D)。
【0777】
図6Eは、ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合された野生型RHO遺伝子(Cas9標的部位)を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg SIN-AAV SaCas9 ver.2(図5B)および1.25μg pSIA010(図5D)でトランスフェクトした場合に得られた結果を示す。SIN-AAV SaCas9 ver.2はSaCas9をコードし、SaCas9 ORF(配列番号5313)の5’に位置するSIN部位(P23H標的部位とも称される)およびSaCas9 ORF(配列番号5314)内に位置する天然に存在するイントロンまたはキメラ挿入イントロン内に位置する3’SIN部位を含む。SIN-AAV SaCas9 ver.2における5’SIN部位(配列番号5313)は配列番号5300を含み、配列番号5290を含むsgRNAによって標的とされる。SIN-AAV SaCas9 ver.2における3’SIN部位(配列番号5314)は配列番号5280を含み、配列番号5290を含むsgRNAによっても標的とされる(表6)。
【0778】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合されたP23H変異(Cas9標的部位)を含むRHO遺伝子を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg SIN-AAV SaCas9 ver.2および1.25μg pSIA010でトランスフェクトした(図6G)。
【0779】
図6Fは、ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合された野生型RHO遺伝子(Cas9標的部位)を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg SIN-AAV SaCas9 ver.2(図5B)および1.25μg pSIA011でトランスフェクトした場合に得られた結果を示す(図5D)。SIN-AAV SaCas9 ver.2は、SaCas9をコードし、SaCas9 ORF(配列番号5313)の5’に位置するSIN部位(P23H標的部位とも称される)およびSaCas9 ORF(配列番号5314)内に位置する天然に存在するイントロンまたはキメラ挿入イントロン内に位置する3’SIN部位を含む。SIN-AAV SaCas9 ver.2における5’SIN部位(配列番号5313)は配列番号5301を含み、配列番号5291を含むsgRNAによって標的とされる。SIN-AAV SaCas9 ver.2における3’SIN部位(配列番号5314)は配列番号5281を含み、配列番号5291を含むsgRNAによって標的とされる(表7)。
【0780】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合されたP23H変異(Cas9標的部位)を含むRHO遺伝子を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine 3000を使用して1.25μg SIN-AAV SaCas9 ver.2および1.25μg pSIA011でトランスフェクトした(図6H)。
【0781】
図6Iは、ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合された野生型RHO遺伝子(Cas9標的部位)を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg 非-SIN-AAV SaCas9(図5C)および1.25μg pSIA010(図5D)でトランスフェクトした場合の結果を示す。非-SIN-AAV SaCas9はSaCas9をコードし、SIN部位(P23H標的部位とも称される)を含まない。
【0782】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合されたP23H変異(Cas9標的部位)を含むRHO遺伝子を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg 非-SIN-AAV SaCas9および1.25μg pSIA010でトランスフェクトした(図6L)。
【0783】
図6Jは、ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合された野生型RHO遺伝子(Cas9標的部位)を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg 非-SIN-AAV SaCas9(図5C)および1.25μg pSIA011(図5D)でトランスフェクトした場合に得られた結果を示す。
【0784】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合されたP23H変異(Cas9標的部位)を含むRHO遺伝子を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用して1.25μg 非-SIN-AAV SaCas9および1.25μg pSIA011でトランスフェクトした(図6M)。
【0785】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合された野生型RHO遺伝子(Cas9標的部位)を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用してトランスフェクション試薬だけ(DNA不含有)でトランスフェクトした(図6K)。
【0786】
ベータ-チューブリン遺伝子ローカスで青色蛍光タンパク質へと融合されたP23H変異(Cas9標的部位)を含むRHO遺伝子を有するレポーター細胞株を、Lipofectamine3000を使用してトランスフェクション試薬だけ(DNA不含有)でトランスフェクトした(図6N)。
【0787】
トランスフェクション後72時間で、レポーター細胞をトリプシン-EDTAとのインキュベーションによってプレートから解離させ、フローサイトメトリーによって青色蛍光(BFP)および緑色蛍光(GFP)について分析した。HEK293FT細胞のCas9標的部位(Cas9標的部位が野生型RHO遺伝子か、またはP23H変異を含むRHO遺伝子であるかに関わらず)でのゲノム編集によって誘導されたフレームシフトは、BFPの喪失をもたらす。EGFPおよびsgRNAは、同じベクター上にコードされ、EGFPはトランスフェクションマーカーとしての機能を果たす。したがって、pSIA010(P23H 20マーsgRNA-配列番号5290を含むsgRNAをコードするAAV配列を含む)またはpSIA011(P23H 19マーsgRNA-配列番号5291を含むsgRNAをコードするAAV配列を含む)でトランスフェクトしたHEK293FT細胞は、GFP陽性である。
【0788】
トランスフェクトした細胞における遺伝子編集をゲート内にプロットされた細胞集団において見積もった(図6A~6N)。図6A~6Nにおける太字の百分率は、ゲート内のBFP陰性およびGFP陽性細胞を示す。BFP陰性は、遺伝子編集がこれらのトランスフェクトしたHEK293FT細胞のCas9標的部位で生じたことを意味する。GFP陽性は、これらのトランスフェクトしたHEK293FT細胞がEGFPおよびsgRNAをコードするプラスミドを含有することを意味する。
【0789】
図6Aは、ゲートにおけるCas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞の遺伝子編集であって、SIN-AAV SaCas9 ver.1およびP23H 20マーsgRNA(配列番号5290を含むsgRNA)をコードするpSIA010でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の約0%が、編集された野生型RHO遺伝子を有したことを示す。
【0790】
図6Bは、ゲートにおけるCas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞の遺伝子編集であって、SIN-AAV SaCas9 ver.1およびP23H 19マーsgRNA(配列番号5291を含むsgRNA)をコードするpSIA011でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の約0%が、編集された野生型RHO遺伝子を有したことを示す。
【0791】
図6Cは、ゲートにおけるCas9標的部位としてP23H変異を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞の遺伝子編集であって、SIN-AAV SaCas9 ver.1およびpSIA010でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の42.41%が、編集されたP23H変異を有したことを示す。
【0792】
図6Dは、ゲートにおけるCas9標的部位としてP23H変異を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞の遺伝子編集であって、SIN-AAV SaCas9 ver.1およびpSIA011でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の19.42%が、編集されたP23H変異を有したことを示す。
【0793】
図6Eは、ゲートにおけるCas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞の遺伝子編集であって、SIN-AAV SaCas9 ver.2およびpSIA010でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の約0%が、編集された野生型RHO遺伝子を有したことを示す。
【0794】
図6Fは、ゲートにおけるCas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞の遺伝子編集であって、SIN-AAV SaCas9 ver.2およびpSIA011でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の約0%が、編集された野生型RHO遺伝子を有したことを示す。
【0795】
図6Gは、ゲートにおけるCas9標的部位としてP23H変異を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞の遺伝子編集であって、SIN-AAV SaCas9 ver.2およびpSIA010でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の46.23%が、編集されたP23H変異を有したことを示す。
【0796】
図6Hは、ゲートにおけるCas9標的部位としてP23H変異を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞の遺伝子編集であって、SIN-AAV SaCas9 ver.2およびpSIA011でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の18.58%が、編集されたP23H変異を有したことを示す。
【0797】
図6Iは、ゲートにおけるCas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞で、非-SIN-AAV SaCas9およびpSIA010でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の約0%が、編集された野生型RHO遺伝子を有したことを示す。
【0798】
図6Jは、ゲートにおけるCas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞で、非-SIN-AAV SaCas9およびpSIA011でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の約0%が、編集された野生型RHO遺伝子を有したことを示す。
【0799】
図6Kは、ゲートにおけるCas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞で、DNAが使用されなかったときにこれらの細胞の0%が、編集された野生型RHO遺伝子を有したことを示す。
【0800】
図6Lは、ゲートにおけるCas9標的部位としてP23H変異を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞で、非-SIN-AAV SaCas9およびpSIA010でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の49.97%が、編集されたP23H変異を有したことを示す。
【0801】
図6Mは、ゲートにおけるCas9標的部位としてP23H変異を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞で、非-SIN-AAV SaCas9およびpSIA011でトランスフェクトしたときにこれらの細胞の26.30%が、編集されたP23H変異を有したことを示す。
【0802】
図6Nは、ゲートにおけるCas9標的部位としてP23H変異を有するトランスフェクトしたHEK293FTレポーター細胞で、DNAが使用されなかったときにこれらの細胞の0%が、編集されたP23H変異を有したことを示す。
【0803】
ゲノム編集は、疑似トランスフェクトした細胞では誘導されなかったことから、疑似トランスフェクトした細胞の大部分は、BFP陽性である(図6Kおよび6N)。
【0804】
Cas9発現を制限するSINベクターの能力を決定するために、Cas9タンパク質の発現レベルを図6A~Nによって説明される実験において使用された細胞についてイムノブロット(図7A~B)によって測定した。SIN Cas9ベクターは、配列番号5290または5291を含むいずれかのガイドRNAによって標的とされたときに両方のレポーター細胞株においてCas9の発現の減少を示した。
【0805】
トランスフェクション後72時間で、レポーター細胞もPBS中に回収し、全タンパク質を0.1% Triton X-100/TBS(25mM Tris-HCl(pH7.5)および150mM NaCl)中に抽出した。5マイクログラムの全タンパク質をNUPAGE 4~12%ポリアクリルアミド/Tris-Bisゲルで分離し、ニトロセルロース膜上に移した。SaCas9、EGFP(トランスフェクション対照として)およびベータアクチン(内部対照として)をCas9モノクローナル抗体、GFP Tagポリクローナル抗体およびベータアクチンローディング対照モノクローナル抗体をそれぞれ使用して検出した。
【0806】
図7A(レーン1)は、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、SIN-AAV SaCas9 ver.1(図5A)および、P23H 20マーsgRNA(配列番号5290を含むsgRNA)をコードするpSIA010でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9不活性化を示す。
【0807】
図7A(レーン2)は、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、SIN-AAV SaCas9 ver.2(図5B)およびpSIA010でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9不活性化を示す。
【0808】
図7A(レーン3)は、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、非-SIN-AAV SaCas9(図5C)およびpSIA010でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9発現を示す。
【0809】
図7A(レーン4)は、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、いかなるDNAでもトランスフェクトされない、HEK293FTレポーター細胞においてCas9発現がないことを示す。
【0810】
図7A(レーン5)は、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、SIN-AAV SaCas9 ver.1(図5A)および、P23H 19マーsgRNA sgRNA(配列番号5291を含むsgRNA)をコードするpSIA011でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9不活性化を示す。
【0811】
図7A(レーン6)は、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、SIN-AAV SaCas9 ver.2(図5B)およびpSIA011でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9不活性化を示す。
【0812】
図7A(レーン7)は、Cas9標的部位として野生型RHO遺伝子を有し、非-SIN-AAV SaCas9(図5C)およびpSIA011でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9発現を示す。
【0813】
図7B(レーン1)は、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、SIN-AAV SaCas9 ver.1(図5A)および、P23H 20マーsgRNA sgRNA(配列番号5290を含むsgRNA)をコードするpSIA010でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9不活性化を示す。
【0814】
図7B(レーン2)は、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、SIN-AAV SaCas9 ver.2(図5B)およびpSIA010でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9不活性化を示す。
【0815】
図7B(レーン3)は、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、非-SIN-AAV SaCas9(図5C)およびpSIA010でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9発現を示す。
【0816】
図7B(レーン4)は、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、いかなるDNAでもトランスフェクトされない、HEK293FTレポーター細胞においてCas9発現がないことを示す。
【0817】
図7B(レーン5)は、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、SIN-AAV SaCas9 ver.1(図5A)および、P23H 19マーsgRNA sgRNA(配列番号5291を含むsgRNA)をコードするpSIA011でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9不活性化を示す。
【0818】
図7B(レーン6)は、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、SIN-AAV SaCas9 ver.2(図5B)およびpSIA011でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9不活性化を示す。
【0819】
図7B(レーン7)は、Cas9標的部位としてP23H変異を有し、非-SIN-AAV SaCas9(図5C)およびpSIA011でトランスフェクトした、HEK293FTレポーター細胞におけるCas9発現を示す。
【0820】
上で考察のとおり、トランスフェクション後にCas9のそれら自体の発現を制限する自己不活性化(SIN)AAVベクターの2つのバージョンを作出した。バージョン1ベクターの一例を図5Aに示す。バージョン2ベクターの一例を図5Bに示す。バージョン1およびバージョン2ベクターの両方は、Cas9-sgRNA RNPによる切断に脆弱性である2つのSIN部位(P23H標的部位とも称される)を含む。これらの部位の内の1つでのCas9媒介二本鎖切断は、Cas9遺伝子におけるプロモーターまたはポリアデニル化シグナルのいずれかの除去をもたらし得る。これらの部位の両方での同時に生じたCas9媒介二本鎖切断は、Cas9遺伝子の欠失をもたらし得る。両方の可能性がCas9発現を阻害する。
【0821】
バージョン1ベクターがバージョン2ベクターよりもさらに効率的な自己不活性化をもたらすことが観察された。バージョン1ベクターは、Cas9オープンリーディングフレーム(ORF)の上流およびSV40核局在化シグナル(NLS)の下流に位置する5’SIN部位(P23H標的部位)を含む。バージョン2ベクターは、Cas9オープンリーディングフレーム(ORF)の上流および5’非翻訳領域(UTR)内のSV40核局在化シグナル(NLS)の上流に位置する5’SIN部位(P23H標的部位)を含む。バージョン1ベクターでは、非相同末端結合から生じた変異は、フレームシフトを作出する場合があり、Cas9遺伝子ORFにおいて早期終止コドンの導入を生じさせる。バージョン2ベクターでは、SIN部位(P23H標的部位)が5’UTR中、ORFの外側にあることから、かかる変異は、Cas9 ORFにおけるそのような変化を作り出す見込みがない。これらの変異は、転写開始をまだ破壊できるが、Cas9発現へのそれらの全体的な効果は、バージョン1ベクターにおける変異より少ない可能性がある。さらに、いずれかのベクター中に変異が作り出されると、効率的な追加編集のために部位がもはや十分な相同性をsgRNAスペーサー配列と共有しないため2つ目は見込みがない。生じる編集が発現を阻害する可能性があることは重要である。少なくともこれらの理由のために、2つのベクターバージョン間に観察されたSIN効率に差異がある。
【0822】
導入されたSIN部位がCas9の転写および翻訳に影響しないことを確認するために、HEK293FT細胞を1.25μgのpDL107(GFPをコードするがsgRNAをコードしない)および(1)SIN-AAV SaCas9 ver.1、(2)SIN-AAV SaCas9 ver.2または(3)非-SIN-AAV SaCas9のいずれかでトランスフェクトした。トランスフェクション24時間前に、細胞を6ウエルプレートの1ウエルあたり細胞500,000個、2.5mlの10% FBS/DMEM中に播種した。トランスフェクション後72時間で、すべてのトランスフェクトした細胞のGFP発現をフローサイトメトリーによって分析し、全タンパク質を0.1% Triton X-100/TBS(25mM Tris-HCl(pH7.5)および150mM NaCl)中に抽出した。5マイクログラムの全タンパク質をNUPAGE 4~12%ポリアクリルアミド/Tris-Bisゲルで分離し、ニトロセルロース膜上に移した。SaCas9、EGFP(トランスフェクション対照として)およびベータアクチン(内部対照として)をCas9モノクローナル抗体、GFP Tagポリクローナル抗体およびベータアクチンローディング対照モノクローナル抗体をそれぞれ使用して検出した。結果は、(1)SIN-AAV SaCas9 ver.1、(2)SIN-AAV SaCas9 ver.2、および(3)非-SIN-AAV SaCas9でトランスフェクトしたHEK293FT細胞においてSaCas9発現が等しかったことを示した(データ未記載)。
(実施例13)
P23H変異体RHO細胞株の生成
【0823】
ゲノムDNAの文脈において(実施例8において使用したプラスミドDNAとは対照的に)P23H変異体RHO遺伝子配列を標的とするガイドRNAのオンターゲット試験を可能にするために、ホモ接合体g.129528801C>A変異を含むK562細胞株(P23H変異体RHO細胞株)を野生型K562細胞を使用して生成した。野生型K562細胞は、ヒトロドプシン遺伝子の2つの野生型対立遺伝子を含有する。P23H変異体RHO細胞株を生成するために使用した野生型K562細胞は、ドキシサイクリン誘導性(inducibile)プロモーター下でStaphylococcus aureus Cas9エンドヌクレアーゼを安定に発現するようにも予め操作した。
【0824】
Lonzaのnucleofector machineおよびK562細胞のために推奨されるプログラムを使用して、野生型K562細胞を、LonzaのNucleofector(商標)キット、リボ核タンパク質(RNP)および一本鎖DNAオリゴ(3~6μg)でトランスフェクトした。
【0825】
リボ核タンパク質(RNP)を2.5μg TrueCut(商標)Cas9 Protein v2(ThermoFisher Scientific)および1μg(約25pM)合成gRNA(ThermoFisher Scientific)を用いて作製した。合成gRNAは、次の未修飾プロトスペーサー領域:UAGUACUGUGGGUACUCGA(配列番号5343)およびThermoFisherの専有tracrRNA配列を含んだ。野生型K562ゲノム中に二重切断を導入するために使用する合成gRNAを、所望のP23H変異がゲノムに導入されると、RNPによって認識されるPAM配列がもはやPAM配列としての機能を果たさないように設計し、それにより成功裏にHDRを受けた細胞のゲノムのさらなる編集を妨げた(図9B)。
【0826】
HDRのための鋳型として使用した単一鎖DNAオリゴは、以下:
【化1】
であった。
【0827】
トランスフェクトした細胞をトランスフェクション後3~7日間培養物中で回復させた。単一細胞を96ウエルプレートに自動分取し、コロニーを単一細胞から生じさせた。ゲノムDNAを細胞の各コロニーから単離し、ヒトロドプシン遺伝子のコドン23における所望の一塩基変異の存在について配列決定した。両方の対立遺伝子へと導入されたP23H変異を有する数個のコロニーを単離した(図9A~B)。
(実施例14)
オンターゲット/オフターゲット活性についてのP23H変異体RHO細胞における合成ガイドRNAの試験
【0828】
実施例13において構築した細胞株(および既存の野生型RHO細胞株)をTIDE分析を使用してインデル頻度を評価することによって、オンターゲット/オフターゲット活性について選択ガイドRNAを試験するために使用した。これらの実験では、過去の実験においてのとおりウイルスベクターまたはプラスミドベクターから転写したガイドRNAよりむしろ、合成ガイドRNAをRHO内のP23H変異を標的とするために使用した。加えて、ゲノムDNAにコードされるRHO遺伝子DNA配列を標的とした。これらの条件下で、本開示のガイドRNAが変異体P23H RHOローカスの特異的な編集を示したことを見出した。
【0829】
野生型RHO細胞およびP23H変異体RHO細胞をSaCas9発現を誘導するためにトランスフェクションの48時間前にドキシサイクリンを用いて最初に処置した。
【0830】
48時間後、両方の細胞型(1ウエルあたり200,000個)を、野生型RHO遺伝子を標的とする合成sgRNA 1μgまたはP23H変異体RHO遺伝子を標的とする合成sgRNA 1μgのいずれかで別々にトランスフェクトした。野生型RHO細胞およびP23H変異体RHO細胞をLonzaのnucleofector machineおよびK562細胞のために推奨されるプログラムを使用してトランスフェクトした。P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAは、以下:ヒトロドプシンP23H 20マー(配列番号5290)およびヒトロドプシンP23H 19マー(配列番号5291)を含む(図2B)。野生型RHO遺伝子を標的とするsgRNAは、以下:ヒトロドプシンWT 20マー(配列番号5285)およびヒトロドプシンWT 19マー(配列番号5286)を含む(図2B)。トランスフェクトしたK562細胞(野生型RHO細胞またはP23H変異体RHO細胞)をS.aureus Cas9タンパク質を発現するが、いかなるガイドRNAでもトランスフェクトされないK562細胞である対照細胞と比較した。
【0831】
ゲノムDNAをトランスフェクション後48~72時間で細胞から回収し、RHO遺伝子のコドン23周辺をPCR増幅した。RHO遺伝子の第1のエクソンの非コード上流の領域に位置するフォワードプライマー(配列番号5347)およびコード領域に位置するリバースプライマー(配列番号5348)をPCR増幅のために使用した。
【0832】
野生型RHO細胞のゲノムがRHO遺伝子の野生型バージョンだけを含有し、P23H変異体対立遺伝子を含有しないことから、これらの野生型RHO細胞を使用して、野生型RHO遺伝子をターゲティングするgRNAのオンターゲット編集効率およびP23H変異体RHO遺伝子をターゲティングするgRNAのオフターゲット編集効率について測定した。P23H変異体RHO細胞のゲノムがRHO遺伝子のP23H変異体バージョンだけを含有し、野生型対立遺伝子を含有しないことから、これらのP23H変異体RHO細胞を使用して、P23H変異体RHO遺伝子をターゲティングするgRNAのオンターゲット編集効率および野生型RHO遺伝子をターゲティングするgRNAのオフターゲット編集効率について測定した。オンターゲットおよびオフターゲット活性をRNPがDSBを編集部位に作り出した場合に産生される遊離DNA末端のNHEJ修復によって導入された挿入、欠失および変異の率によって測定した。
【0833】
配列分析は、配列番号5290を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAについて、P23H変異体RHOローカスの89%が成功裏に編集され(図10、試料6)、オフターゲット編集が低く(図10、試料3)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図10、試料5)と同様であることを明らかにした。
【0834】
配列分析は、配列番号5291を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAについて、P23H変異体RHOローカスの10.6%が成功裏に編集され(図10、試料7)、オフターゲット編集が低く(図10、試料4)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図10、試料5)と同様であることを明らかにした。
【0835】
配列分析は、配列番号5285を含み、野生型RHO遺伝子を標的とするsgRNAについて、野生型RHOローカスの80.6%が成功裏に編集され(図10、試料1)、オフターゲット編集が15.5%(図10、試料8)であったことを明らかにした。
【0836】
配列分析は、配列番号5286を含み、野生型RHO遺伝子を標的とするsgRNAについて、野生型RHOローカスの84.2%が成功裏に編集され(図10、試料2)、オフターゲット編集が低く(図10、試料9)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図10、試料10)と同様であることを明らかにした。
(実施例15)
オンターゲット/オフターゲット活性についてのsgRNAをコードするプラスミドの試験
【0837】
トランスフェクトしたプラスミドによってコードされるsgRNAの、特異性を有して標的化ゲノムP23H変異体RHO遺伝子DNAを編集する能力も試験した。実施例14におけるのと同じ2つの細胞株を使用して、本開示のsgRNAが特異性を有して標的化P23H変異体DNAの編集を指示できることが見出された。
【0838】
P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドを18~24ヌクレオチドのDNA挿入物(表8)をU6プロモーター下でプラスミドへと、DNA挿入物がRNAポリメラーゼIIIによってsgRNAへと転写されるようにクローニングすることによって構築した。U6プロモーターに加えて、プラスミドは、CMVプロモーターによって駆動される緑色蛍光タンパク質も含む。
【0839】
各プラスミドからのsgRNA発現を駆動するために使用したU6プロモーター/RNAポリメラーゼIIIは、sgRNAの5’末端にグアニン(G)ヌクレオチドを付加した。例えば、19ヌクレオチド(19マー)の長さであるsgRNAをコードするクローニングされたDNA挿入物は、5’Gが付加された後に20ヌクレオチド(20マー)になる。P23H変異体RHO遺伝子を標的とする大部分のsgRNAについて、余分なGは、ロドプシン遺伝子の天然配列の一部であり(配列番号5315、5317、5281および5357)、一方P23H変異体RHO遺伝子を標的とする他のsgRNAについては、5’Gはミスマッチヌクレオチドである(すなわち、「ハンギング5’G」)(配列番号5316、5318および5280)(表8)。
【表8】
【0840】
野生型RHO細胞およびP23H変異体RHO細胞を、SaCas9発現を誘導するためにトランスフェクション48時間前に1~10μg/mLドキシサイクリンを用いて最初に処置した。
【0841】
48時間後、両方の細胞型(1ウエルあたり200,000個)を、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミド(表8:配列番号5361、5362、5363、5364、5365、5366または5367)1μgでトランスフェクトした。野生型RHO細胞およびP23H変異体RHO細胞を、Lonzaのnucleofector machineおよびK562細胞のために推奨されるプログラムを使用してトランスフェクトした。トランスフェクトしたK562細胞(野生型RHO細胞またはP23H変異体RHO細胞)を、S.aureus Cas9タンパク質を発現するが、いかなるガイドRNAでもトランスフェクトされないK562細胞である対照細胞と比較した。
【0842】
1~10μg/mLドキシサイクリンを用いた処置をトランスフェクション後48~72時間再開した。次いでゲノムDNAをトランスフェクション後48~72時間、細胞から回収し、RHO遺伝子のコドン23周辺をPCR増幅した。RHO遺伝子の第1のエクソンの非コード上流領域に位置するフォワードプライマー(配列番号5347)およびコード領域に位置するリバースプライマー(配列番号5348)をPCR増幅のために使用した。
【0843】
野生型RHO細胞のゲノムがRHO遺伝子の野生型バージョンだけを含有し、P23H変異体対立遺伝子を含有しないことから、野生型RHO細胞を使用して、P23H変異体RHO遺伝子をターゲティングするsgRNAについてのオフターゲット編集効率を測定した。P23H変異体RHO細胞のゲノムがRHO遺伝子のP23H変異体バージョンだけを含有し、野生型対立遺伝子を含有しないことから、これらのP23H変異体RHO細胞を使用して、P23H変異体RHO遺伝子をターゲティングするsgRNAについてのオンターゲット編集効率を測定した。
【0844】
配列分析は、配列番号5358を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの7.6%が成功裏に編集され(図11、試料1)、オフターゲット編集が低く(図11、試料2)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図11、試料16)と同様であることを明らかにした。
【0845】
配列分析は、配列番号5291を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの32.3%が成功裏に編集され(図11、試料3)、オフターゲット編集が低く(図11、試料4)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図11、試料16)と同様であることを明らかにした。
【0846】
配列分析は、配列番号5290を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの13.6%が成功裏に編集され(図11、試料5)、オフターゲット編集が低く(図11、試料6)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図11、試料16)と同様であることを明らかにした。
【0847】
配列分析は、配列番号5322を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの8.5%が成功裏に編集され(図11、試料7)、オフターゲット編集が低く(図11、試料8)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図11、試料16)と同様であることを明らかにした。
【0848】
配列分析は、配列番号5321を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの30.1%が成功裏に編集され(図11、試料9)、オフターゲット編集が低く(図11、試料10)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図11、試料16)と同様であることを明らかにした。
【0849】
配列分析は、配列番号5320を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの14.8%が成功裏に編集され(図11、試料11)、オフターゲット編集が低く(図11、試料12)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図11、試料16)と同様であることを明らかにした。
【0850】
配列分析は、配列番号5319を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの3.6%が成功裏に編集され(図11、試料13)、オフターゲット編集が低く(図11、試料14)対照細胞でのバックグラウンドレベル(図11、試料16)と同様であることを明らかにした。
【0851】
第2の実験からの配列分析は、配列番号5291を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの59.6%が成功裏に編集された(図12、試料1)ことを明らかにした。
【0852】
第2の実験からの配列分析は、配列番号5321を含み、P23H変異体RHO遺伝子を標的とするsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞について、P23H変異体RHOローカスの42.1%が成功裏に編集された(図12、試料2)ことを明らかにした。
(実施例16)
in vivo試験
【0853】
2種の異なるRHOノックインマウス系統を使用してヒトRHO遺伝子内のP23H変異体対立遺伝子を特異的に切断し、P23H変異体RHO対立遺伝子へとフレームシフト変異を導入し、かつin vivo系においてP23H変異体RHO対立遺伝子の発現を抑制する、Cas9-sgRNA系の性能をさらに実証した。
【0854】
hRHO-GFPマウスと称される、第1のRHOノックインマウス系統では、RHO遺伝子の両方のマウスコピーを野生型ヒトRHO遺伝子(すべてのイントロンおよびエクソンを含む)で置換し、緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合して、2つのhRHO-GFP対立遺伝子を含み、マウスRHO対立遺伝子が残っていないホモ接合体マウスを作り出した。
【0855】
P23H-hRHO-RFPマウスと称される、第2のRHOノックインマウス系統では、RHO遺伝子の1つのマウスコピーをP23H変異体ヒトRHO遺伝子(すべてのイントロンおよびエクソンを含む)で置換し、赤色蛍光タンパク質(RFP)に融合して、1つのP23H-hRHO-RFP変異体対立遺伝子および1つのマウスRHO対立遺伝子を含むヘテロ接合体マウスを作り出した。
【0856】
両方のRHOノックインマウス系統は、マウス系統をBaylor College of Medicine(Houston、Texas;United States)において作製したDr.Theodore Wenselの研究室から得た。
【0857】
これらのマウス系統におけるRHOタンパク質への蛍光タグ(例えば、GFPまたはRFP)の融合は、細胞内のタンパク質分布のモニタリング、およびRHOタンパク質発現のレベルのモニタリングを可能にする。異なる蛍光タンパク質を使用する2つのヒト対立遺伝子の蛍光タグ付けは、その天然配列が1アミノ酸で異なるだけであり、天然タンパク質を検出するための抗体を使用する場合は互いに識別できない野生型RHOタンパク質とP23H変異体RHOタンパク質との間の識別も可能にする。
【0858】
非-SIN AAV-SaCas9(図5C)およびpSIA010(図5D)含む二重ベクター系をin vivo実験のために使用した。使用した非-SIN AAV-SaCas9は、本ベクターが(sEF1αプロモーターの代わりに)SaCas9発現を駆動する光受容細胞特異的ヒトロドプシンキナーゼプロモーターを含むことを除いて図5Cに示す非-SIN AAV-SaCas9と同一である。pSIA010は、U6プロモーター(RNAポリメラーゼIIIプロモーター)によって駆動されるsgRNAをコードする。sgRNAは配列番号5290を含み、ヒトRHO遺伝子内のP23H変異を標的にする。使用したpSIA010は、本ベクターがサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される青色蛍光タンパク質(BFP)(CMVプロモーターによって駆動されるEGFPの代わりに)をコードすることを除いて図5Dに示すpSIA010と同一である。BFPは、形質導入されていない細胞とpSIA010によって形質導入された細胞との分離を可能にする蛍光標識を提供する。両方のAAVベクター(非-SIN AAV-SaCas9およびpSIA010)は、in vivoで光受容細胞を形質導入するために適切なAAV血清型である血清型AAV5であった。
【0859】
非-SIN AAV-SaCas9およびpSIA010をSaCas9コードベクター(非-SIN AAV-SaCas9)およびsgRNAコードベクター(pSIA010)を1:1の比で使用して網膜下注射によって生後14から29日目にP23H-hRHO-RFPマウス(図13、試料1)および対照hRHO-GFPマウス(図13、試料2)へと送達した。各ベクターは、ベクターゲノム粒子2.5×10または5×10個のいずれかの投与量を有した。形質導入の3または8週間後に、網膜を切開し、タンパク質分解酵素の混合物(プロナーゼ)で消化して単一細胞懸濁物を達成し、続いて、蛍光励起細胞分取(FACS)を行い、形質導入された細胞と形質導入されていない細胞とを分取した。
【0860】
ゲノムDNAを、次世代ディープシーケンシングを使用するSaCas9/sgRNA誘導編集のその後の定量分析のために形質導入細胞から単離した。配列決定のために、ヒトRHO配列だけを特異的に増幅するプライマーを使用した。プライマー特異性のための対照として、配列決定プライマーを使用するPCRは、ヒトRHO配列を含むゲノムDNA試料について200bpのバンドを生成した。200bpバンドは、マウスRHO配列を含むがヒトRHO配列を含まないゲノムDNA試料については生成されなかった。
【0861】
対立遺伝子特異的な、P23H変異体ヒトRHO対立遺伝子のオンターゲット編集が配列番号5290を含むsgRNAをコードするpSIA010 AAVベクターを使用した場合に観察された(図13、試料1;および表9、列1~10)。配列番号5290を含むsgRNAは、P23H変異体ヒトRHO対立遺伝子に完全な相補性および野生型ヒトRHO対立遺伝子に1個のミスマッチを有する。
【0862】
野生型RHO遺伝子の最小オフターゲット編集が、配列番号5290を含むsgRNAをコードする同じpSIA010 AAVベクターを使用した場合に観察された(図13、試料2;および表9、列11~16)。
【表9】
【0863】
例示的な例についての注釈
【0864】
本開示は、本開示の様々な例および/またはその潜在的適用を例示する目的のために様々な具体的な態様の説明を提供するが、変形および改変が当業者に想起されることが理解される。したがって、本明細書で説明する発明(単数または複数)は、少なくともそれらが請求されるのと同程度に広いものであり、本明細書で提供される特定の例示的な例により、より狭く定義されるものではないと理解されるべきである。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ヒト細胞においてロドプシン(RHO)遺伝子を編集するための方法であって、
前記ヒト細胞へと、1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、前記RHO遺伝子または前記RHO遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍に、1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をもたらし、それによって、編集されたヒト細胞を作り出すステップであって、前記SSBまたはDSBは、前記RHO遺伝子内もしくはその近傍に、またはその発現もしくは機能に影響を及ぼす、1つまたは複数の変異の恒久的な欠失、挿入、修正、またはその発現もしくは機能のモジュレーションをもたらす、ステップ
を含む、方法。
(項目2)
ヒト細胞においてロドプシン(RHO)遺伝子におけるP23H変異を編集するための方法であって、
前記ヒト細胞へと、1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、RHO遺伝子における前記P23H変異内またはその近傍に、前記P23H変異の恒久的な欠失、挿入、修正、またはその発現もしくは機能のモジュレーションをもたらす1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をもたらし、それによって、編集されたヒト細胞を作り出すステップ
を含む、方法。
(項目3)
網膜色素変性(RP)を有する患者を処置するためのin vivo方法であって、前記患者の細胞においてロドプシン(RHO)遺伝子におけるP23H変異を編集するステップを含む、方法。
(項目4)
前記編集するステップが、
前記細胞へと、1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、RHO遺伝子における前記P23H変異内またはその近傍に、前記P23H変異の恒久的な欠失、挿入、修正、またはその発現もしくは機能のモジュレーションをもたらし、RHOタンパク質活性の回復をもたらす、1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をもたらすこと
を含む、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られている)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、またはCpf1エンドヌクレアーゼ、その相同体、その天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化形態、またはそれらの修飾バージョン、ならびにそれらの組合せである、項目1~2、または4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記細胞へと、前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを導入するステップを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記細胞へと、前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のリボ核酸(RNA)を導入するステップを含む、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたは1つもしくは複数のRNAが、1つもしくは複数の修飾ポリヌクレオチドまたは1つもしくは複数の修飾RNAである、項目6または7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記DNAエンドヌクレアーゼが、1つまたは複数のタンパク質またはポリペプチドである、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記細胞へと、1つまたは複数のガイドリボ核酸(gRNA)を導入するステップをさらに含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記1つまたは複数のgRNAが、単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが、1つもしくは複数の修飾gRNAまたは1つもしくは複数の修飾sgRNAである、項目10~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAとあらかじめ複合体化されている、項目9~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記細胞へと、野生型RHO遺伝子またはcDNAの少なくとも一部分を含む、ポリヌクレオチドドナー鋳型を導入するステップをさらに含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記野生型RHO遺伝子またはcDNAの前記少なくとも一部分が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、その断片もしくは組合せ、または前記RHO遺伝子もしくはcDNAの全体である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記ドナー鋳型が、一本鎖ポリヌクレオチドまたは二本鎖ポリヌクレオチドのいずれかである、項目14~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記ドナー鋳型が、3q22.1領域に対する相同性アームを有する、項目14~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記細胞へと、1つのガイドリボ核酸(gRNA)、および前記野生型RHO遺伝子の少なくとも一部分を含むポリヌクレオチドドナー鋳型を導入するステップ
をさらに含み、
前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、RHO遺伝子における前記P23H変異内またはその近傍に位置するローカスに、1つの一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をもたらす、1つまたは複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり、前記SSBまたはDSBは、前記ローカスにおける染色体DNAへの前記ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新しい配列の挿入を促進し、RHO遺伝子における前記P23H変異の恒久的な挿入または修正をもたらし、
前記gRNAが、RHO遺伝子における前記P23H変異内またはその近傍に位置する前記ローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含む、項目2または4に記載の方法。
(項目19)
前記細胞へと、1つまたは複数のガイドリボ核酸(gRNA)、および前記野生型RHO遺伝子の少なくとも一部分を含むポリヌクレオチドドナー鋳型を導入するステップ
をさらに含み、
前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、RHO遺伝子における前記P23H変異内またはその近傍に、1対の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をもたらす、1つまたは複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり、1対のSSBまたはDSBは、第1のものが5’ローカスにあり、第2のものが3’ローカスにあり、前記5’ローカスと前記3’ローカスとの間における染色体DNAへの前記ポリヌクレオチドドナー鋳型に由来する新しい配列の挿入を促進し、RHO遺伝子における前記P23H変異内またはその近傍の前記5’ローカスと前記3’ローカスとの間における前記染色体DNAの恒久的な挿入または修正をもたらし、
第1のガイドRNAが、前記5’ローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含み、第2のガイドRNAが、前記3’ローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含む、項目2または4に記載の方法。
(項目20)
前記1つまたは複数のgRNAが、1つまたは複数の単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、項目18~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが、1つもしくは複数の修飾gRNAまたは1つもしくは複数の修飾sgRNAである、項目18~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAとあらかじめ複合体化されている、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記野生型RHO遺伝子またはcDNAの前記少なくとも一部分が、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、その断片もしくは組合せ、または前記RHO遺伝子もしくはcDNAの全体である、項目18~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記ドナー鋳型が、一本鎖ポリヌクレオチドまたは二本鎖ポリヌクレオチドのいずれかである、項目18~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記ドナー鋳型が、3q22.1領域に対する相同性アームを有する、項目18~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記SSBまたはDSBが、前記RHO遺伝子の第1のエクソン、第2のエクソン、第3のエクソン、第4のエクソン、第5のエクソン、またはそれらの組合せにある、項目18~25に記載の方法。
(項目27)
前記gRNAまたはsgRNAが、病理学的バリアントP23Hを対象とする、項目10~13または20~22に記載の方法。
(項目28)
前記挿入または修正が、相同組換え修復(HDR)によるものである、項目1~2または4~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記ドナー鋳型が、病理学的バリアントP23Hに対する相同性アームを有する、項目18~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記細胞へと、2つのガイドリボ核酸(gRNA)、および前記野生型RHO遺伝子の少なくとも一部分を含むポリヌクレオチドドナー鋳型を導入するステップ
をさらに含み、
前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、RHO遺伝子における前記P23H変異内またはその近傍に、1対の二本鎖切断(DSB)をもたらす、1つまたは複数のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり、前記1対のDSBは、第1のものが5’DSBローカスにあり、第2のものが3’DSBローカスにあり、前記5’DSBローカスと前記3’DSBローカスとの間の染色体DNAの欠失を引き起こし、RHO遺伝子における前記P23H変異内またはその近傍の前記5’DSBローカスと前記3’DSBローカスとの間における前記染色体DNAの恒久的な欠失をもたらし、
第1のガイドRNAが、前記5’DSBローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含み、第2のガイドRNAが、前記3’DSBローカスのセグメントに相補的であるスペーサー配列を含む、項目2または4に記載の方法。
(項目31)
前記2つのgRNAが、2つの単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記2つのgRNAまたは2つのsgRNAが、2つの修飾gRNAまたは2つの修飾sgRNAである、項目30~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、2つのgRNAまたは2つのsgRNAとあらかじめ複合体化されている、項目30~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記5’DSBおよび3’DSBの両方が、前記RHO遺伝子の第1のエクソン、第1のイントロン、第2のエクソン、第2のイントロン、第3のエクソン、第3のイントロン、第4のエクソン、第4のイントロン、第5のエクソン、第5のイントロンのいずれか、またはこれらの組合せ内またはその近傍にある、項目30~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記欠失が、1kbまたはそれを下回る欠失である、項目30~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記Cas9またはCpf1 mRNA、gRNA、およびドナー鋳型が、それぞれ、別個の脂質ナノ粒子中に製剤化されるか、またはすべてが1つの脂質ナノ粒子中に共製剤化されるかのいずれかである、項目18~19、および30のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記Cas9またはCpf1 mRNA、gRNA、およびドナー鋳型が、それぞれ、別個のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター中に製剤化されるか、またはすべてが1つのAAVベクター中に共製剤化されるかのいずれかである、項目18~19、および30のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記Cas9またはCpf1 mRNAが、脂質ナノ粒子中に製剤化され、前記gRNAおよびドナー鋳型の両方が、AAVベクターによって前記細胞へと送達される、項目18~19、および30のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記Cas9またはCpf1 mRNAが、脂質ナノ粒子中に製剤化され、前記gRNAが、電気穿孔によって前記細胞へと送達され、ドナー鋳型が、AAVベクターによって前記細胞へと送達される、項目18~19、および30のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記AAVベクターが、自己不活性化AAVベクターである、項目37~39に記載の方法。
(項目41)
前記RHO遺伝子が、第3染色体:129,528,640~129,535,169(Genome Reference Consortium-GRCh38/hg38)に位置する、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
RHOタンパク質活性の前記回復が、野生型または正常なRHOタンパク質活性と比較される、項目2、または4~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記ポリヌクレオチドドナー鋳型が、RHOのエクソン1を含み、最大5KBである、項目14に記載の方法。
(項目44)
前記ポリヌクレオチドドナー鋳型が、AAVによって送達される、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記ヒト細胞が、光受容細胞または網膜前駆細胞である、項目1~2に記載の方法。
(項目46)
前記細胞が、光受容細胞または網膜前駆細胞である、項目3~44に記載の方法。
(項目47)
網膜色素変性(RP)を有する患者に由来する細胞において、ロドプシン(RHO)遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つまたは複数のガイドリボ核酸(gRNA)であって、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322、および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つまたは複数のgRNA。
(項目48)
1つまたは複数の単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、項目47に記載の1つまたは複数のgRNA。
(項目49)
前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが、1つもしくは複数の修飾gRNAまたは1つもしくは複数の修飾sgRNAである、項目47または48に記載の1つまたは複数のgRNAまたはsgRNA。
(項目50)
前記細胞が、光受容細胞、網膜前駆細胞、または人工多能性幹細胞(iPSC)である、項目47~49に記載の1つまたは複数のgRNAまたはsgRNA。
(項目51)
RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための少なくとも1つまたは複数のgRNAを含む治療であって、前記1つまたは複数のgRNAが、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322、および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、治療。
(項目52)
前記1つまたは複数のgRNAが、1つまたは複数のsgRNAである、項目51に記載の治療。
(項目53)
前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが、1つもしくは複数の修飾gRNAまたは1つもしくは複数の修飾sgRNAである、項目51または52に記載の治療。
(項目54)
1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼを導入するステップ、
RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAを導入するステップ、
1つまたは複数のドナー鋳型を導入するステップ
を含む方法によって形成される、常染色体優性網膜色素変性(RP)を有する患者を処置するための治療であって、
前記1つまたは複数のgRNAまたはsgRNAが、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322、および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、治療。
(項目55)
in vivoで網膜色素変性(RP)を有する患者を処置するためのキットであって、
RHO遺伝子におけるP23H変異を編集するための1つまたは複数のgRNAまたはsgRNAであって、配列表の配列番号5287~5291、5319~5322、および5358における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つまたは複数のgRNAまたはsgRNAと、
1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼと、
必要に応じて、1つまたは複数のドナー鋳型と
を含む、キット。
(項目56)
前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼが、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られている)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、またはCpf1エンドヌクレアーゼ、その相同体、その天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化形態、またはそれらの修飾バージョン、ならびにそれらの組合せである、項目55に記載のキット。
(項目57)
1つまたは複数のドナー鋳型を含む、項目55~56のいずれかに記載のキット。
(項目58)
前記ドナー鋳型が、3q22.1領域に対する相同性アームを有する、項目57に記載のキット。
(項目59)
前記ドナー鋳型が、病理学的バリアントP23Hに対する相同性アームを有する、項目57に記載のキット。
(項目60)
配列番号5290の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目61)
配列番号5291の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目62)
配列番号5319の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目63)
配列番号5320の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目64)
配列番号5321の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目65)
配列番号5322の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目66)
配列番号5358の核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目67)
配列番号5290、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目68)
配列番号5291、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目69)
配列番号5319、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目70)
配列番号5320、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目71)
配列番号5321、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目72)
配列番号5322、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目73)
配列番号5358、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、単一分子ガイドRNA(sgRNA)。
(項目74)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5290を含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目75)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5291を含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目76)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5319を含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目77)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5320を含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目78)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5321を含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目79)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5322を含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目80)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5358を含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目81)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5290、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目82)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5291、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目83)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5319、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目84)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5320、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目85)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5321、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目86)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5322、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目87)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、配列番号5358、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含むsgRNAを投与するステップを含む、方法。
(項目88)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5290を含むsgRNAを、前記患者へと投与するステップを含む、方法。
(項目89)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5291を含むsgRNAを、前記患者へと投与するステップを含む、方法。
(項目90)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5319を含むsgRNAを、前記患者へと投与するステップを含む、方法。
(項目91)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5320を含むsgRNAを、前記患者へと投与するステップを含む、方法。
(項目92)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5321を含むsgRNAを、前記患者へと投与するステップを含む、方法。
(項目93)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5322を含むsgRNAを、前記患者へと投与するステップを含む、方法。
(項目94)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、配列番号5358を含むsgRNAを、前記患者へと投与するステップを含む、方法。
(項目95)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを前記患者へと投与するステップを含み、前記sgRNAが、配列番号5290、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法。
(項目96)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを前記患者へと投与するステップを含み、前記sgRNAが、配列番号5291、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法。
(項目97)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを前記患者へと投与するステップを含み、前記sgRNAが、配列番号5319、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法。
(項目98)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを前記患者へと投与するステップを含み、前記sgRNAが、配列番号5320、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法。
(項目99)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを前記患者へと投与するステップを含み、前記sgRNAが、配列番号5321、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法。
(項目100)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを前記患者へと投与するステップを含み、前記sgRNAが、配列番号5322、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法。
(項目101)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、sgRNAを前記患者へと投与するステップを含み、前記sgRNAが、配列番号5358、および配列番号5327~5338のうちのいずれか1つを含む、方法。
(項目102)
部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと、
ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントであって、前記gRNAまたはsgRNAが、配列番号5290を含む、第2のセグメントと、
自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントと
を含む自己不活性化CRISPR-Cas系であって、
前記gRNAまたはsgRNAが、前記SIN部位に実質的に相補的であり、
前記gRNAまたはsgRNAが、ゲノム標的配列に実質的に相補的である、自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目103)
部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと、
ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントであって、前記gRNAまたはsgRNAが、配列番号5291を含む、第2のセグメントと、
自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントと
を含む自己不活性化CRISPR-Cas系であって、
前記gRNAまたはsgRNAが、前記SIN部位に実質的に相補的であり、
前記gRNAまたはsgRNAが、ゲノム標的配列に実質的に相補的である、自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目104)
部位特異的変異誘発を誘導する前記ポリペプチドが、Staphylococcus aureus Cas9(SaCas9)またはその任意のバリアントである、項目102または103のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目105)
部位特異的変異誘発を誘導する前記ポリペプチドが、SaCas9またはその任意のバリアントであり、前記SIN部位が、SaCas9オープンリーディングフレーム(ORF)の5’に位置する5’SIN部位、または前記SaCas9 ORF内に位置する天然に存在するイントロンもしくはキメラ挿入イントロン内に位置する3’SIN部位である、項目102~104のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目106)
前記5’SIN部位が、配列番号5300を含む、項目105に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目107)
前記3’SIN部位が、配列番号5280を含む、項目105~106のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目108)
前記5’SIN部位が、配列番号5301を含む、項目105に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目109)
前記3’SIN部位が、配列番号5281を含む、項目105および108のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目110)
前記5’SIN部位が、前記SaCas9オープンリーディングフレーム(ORF)の上流およびSV40核局在化シグナル(NLS)の下流に位置する、項目105~106、および108のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目111)
前記5’SIN部位が、前記SaCas9オープンリーディングフレーム(ORF)の上流および5’非翻訳領域(UTR)内のSV40核局在化シグナル(NLS)の上流に位置する、項目105~106、および108のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目112)
前記3’SIN部位が、前記SaCas9 ORF内に位置する天然に存在するイントロンまたはキメラ挿入イントロン内に位置する、項目105、107、または109のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目113)
前記SIN部位が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む、項目102~112のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目114)
前記PAMが、NNGRRTまたはその任意のバリアントである、項目113に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目115)
前記ゲノム標的配列が、ロドプシン(RHO)遺伝子におけるP23H変異である、項目102~114のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目116)
部位特異的変異誘発を誘導するポリペプチド(polpeptide)をコードするヌクレオチド配列を含む前記第1のセグメントが、開始コドン、終止コドン、およびポリ(A)終結部位をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目117)
前記第1のセグメントおよび前記第3のセグメントが、第1のベクターにおいて一緒に提供され、前記第2のセグメントが、第2のベクターにおいて提供される、項目102~116のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目118)
前記第1のセグメント、第2のセグメント、および第3のセグメントが、1つのベクターにおいて一緒に提供される、項目102~116のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目119)
前記第3のセグメントが、前記第1または第2のベクターにおいて、前記第1のセグメントの5’の位置に存在する、項目117~118のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目120)
前記第3のセグメントが、前記第1または第2のベクターにおいて、前記第1のセグメントの3’の位置に存在する、項目117~118のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目121)
前記1つまたは複数の第3のセグメントが、前記第1および第2のベクターにおいて、前記第1のセグメントの5’末端および3’末端に存在する、項目117~118のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目122)
前記第1のベクターが、配列番号5341を含み、前記第2のベクターが、配列番号5339を含む、項目117に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目123)
前記第1のベクターが、配列番号5341を含み、前記第2のベクターが、配列番号5340を含む、項目117に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目124)
前記第1のベクターが、配列番号5342を含み、前記第2のベクターが、配列番号5339を含む、項目117に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目125)
前記第1のベクターが、配列番号5342を含み、前記第2のベクターが、配列番号5340を含む、項目117に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目126)
前記第3のセグメントが、100ヌクレオチド未満の長さである、先行する項目のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目127)
前記第3のセグメントが、50ヌクレオチド未満の長さである、項目126に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目128)
前記gRNAまたはsgRNAが、少なくとも1つの位置を除き、前記SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的である、先行する項目のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目129)
前記gRNAまたはsgRNAが、少なくとも2つの位置を除き、前記SIN部位のヌクレオチド配列に完全に相補的である、先行する項目のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目130)
プロモーターをコードする核酸配列が、前記第1のセグメントに作動可能に連結されている、先行する項目のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目131)
前記プロモーターが、空間制限プロモーター、gRNAもしくはsgRNAを1つの方向に駆動し、SaCas9を反対の方向に駆動する、二方向性プロモーター、または誘導性プロモーターである、項目130に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目132)
前記空間制限プロモーターが、任意の組織または細胞型特異的プロモーター、肝細胞特異的プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、骨格筋特異的プロモーター、肺前駆細胞特異的プロモーター、光受容器特異的プロモーター、および網膜色素上皮(RPE)選択的プロモーターからなる群から選択される、項目131に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目133)
前記第1のベクターおよび前記第2のベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、項目117~118のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目134)
前記アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが、AAV5血清型キャプシドベクターである、項目133に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目135)
SaCas9またはその任意のバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む、第1のセグメントと、
ガイドRNA(gRNA)または単一分子ガイドRNA(sgRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2のセグメントと、
自己不活性化(SIN)部位を含む、1つまたは複数の第3のセグメントと
を含む自己不活性化CRISPR-Cas系であって、
前記gRNAまたはsgRNAが、前記SIN部位に実質的に相補的であり、
前記gRNAまたはsgRNAが、ゲノム標的配列に実質的に相補的であり、
前記SIN部位が、配列番号5313~5314からなる群から選択される配列を含む、自己不活性化CRISPR-Cas系。
(項目136)
RHO遺伝子内のP23H変異を編集するための方法であって、項目102~135のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系を投与するステップを含む、方法。
(項目137)
RHO遺伝子内のP23H変異を有する患者を処置するための方法であって、項目102~135のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系を投与するステップを含む、方法。
(項目138)
項目102~135のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系を含む、遺伝子改変細胞。
(項目139)
古細菌細胞、細菌細胞、真核生物細胞、真核生物単細胞生物、体細胞、生殖細胞、幹細胞、植物細胞、藻類細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、カエル細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞、ブタ細胞、ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞、げっ歯動物細胞、ラット細胞、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞、およびヒト細胞からなる群から選択される、項目138に記載の遺伝子改変細胞。
(項目140)
細胞においてCas9発現を制御する方法であって、前記細胞を、項目102~135のいずれか一項に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系と接触させるステップを含む、方法。
(項目141)
常染色体優性網膜色素変性を有する患者を処置するための治療であって、項目102~135のいずれかに記載の自己不活性化CRISPR-Cas系を含む、治療。
(項目142)
in vivoで常染色体優性網膜色素変性を有する患者を処置するためのキットであって、
項目102~135に記載の自己不活性化CRISPR-Cas系と、
必要に応じて、1つまたは複数のドナー鋳型と
を含む、キット。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A-D】
図6E-H】
図6I-N】
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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