(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】石炭から炭素繊維、樹脂、グラフェン、およびその他の先進炭素材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D01F 9/15 20060101AFI20240718BHJP
C10C 3/04 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
D01F9/15
C10C3/04 Z
(21)【出願番号】P 2020554065
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 US2018067341
(87)【国際公開番号】W WO2019126782
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-21
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520226115
【氏名又は名称】カーボン ホールディングス インテレクチュアル プロパティズ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CARBON HOLDINGS INTELLECTUAL PROPERTIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】アトキンス, チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン, ギャレット
(72)【発明者】
【氏名】ターゲット, マシュー
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210925(JP,A)
【文献】特開昭59-033384(JP,A)
【文献】特開昭59-174511(JP,A)
【文献】特開昭61-074660(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103254921(CN,A)
【文献】特開平09-194849(JP,A)
【文献】特開平06-287568(JP,A)
【文献】特開昭58-185682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F、C10C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維の製造方法であって、
1つ以上の不純物を含む原炭を提供する工程と、
該原炭を、ハロゲンガスを含む雰囲気の中で加熱することにより選鉱し、該原炭中の該1つ以上の不純物のいくつかの少なくとも一部を選択的に除去して、選鉱された石炭を形成する工程と、
該選鉱された石炭を処理してピッチを生成する工程と、
該ピッチの少なくとも一部を変化させて炭素繊維を生成する工程と、
を有し、
該炭素繊維が、該1つ以上の不純物の、該原炭を選鉱する工程、該選鉱された石炭を処理する工程、及び該ピッチの少なくとも一部を変化させる工程において除去されず選択的に残された量を含む、炭素繊維の製造方法。
【請求項2】
該原炭を選鉱する工程は、水銀、ヒ素、カドミウム、水、または揮発性化合物の少なくとも1つの少なくとも75重量%を除去することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該選鉱された石炭を処理する工程は、該選鉱された石炭を熱分解する工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該選鉱された石炭を熱分解する工程は、該選鉱された石炭を大気圧で400℃と650℃の間に加熱することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該選鉱された石炭を処理する工程は、該選鉱された石炭を直接液化プロセスにかける工程、該選鉱された石炭を間接液化プロセスにかける工程、または膜を使用する工程のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該ピッチの少なくとも一部を変化させて炭素繊維を生成する工程が、該ピッチの一部を変化させて炭素繊維を生成し、残りのピッチを変化させて1つ以上の追加の先進炭素材料を形成する工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該ピッチの残りの部分を変化させて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、メタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、または多環式芳香族炭化水素の少なくとも1つを形成する工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月22日に提出された「石炭からの先進炭素材料の製造方法(Methods for Producing Advanced Carbon Materials from Coal)」というタイトルの米国仮特許出願第62/610,037号の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
石炭は非常に多様な不均質材料であり、主に数千年にわたって3つの目的のために採掘され、使用されてきた:1)焼却による熱と発電の生成、2)コーキング(coking)による鋼とその他の金属の生産、3)熱分解または液化による「石油化学製品」として現在広く知られているものの生産。石炭は何千年もの間広く使用されてきたという事実にもかかわらず、その99%以上が熱と電力を生産するために焼却されてきた。このプロセスは現在、多くの環境的および経済的悪影響をもたらすことが広く知られている。
【0003】
石炭のさらなる使用は、長年にわたって研究の主題であった。石炭の基礎化学は、少なくとも20世紀初頭にはよく理解されていた。石油に取って代わるために石炭から液体輸送燃料を導き出すことを目的として重要な研究が行われた。1つの注目すべき画期的な進歩は、1925年頃にドイツで、ガス化した石炭を液体炭化水素に変換するフィッシャートロプシュプロセスが開発されたことである。さらに、南アフリカの大手企業であるSasolは、接触分解による固体石炭の液体輸送燃料への変換に焦点を当てた。同様に、米国エネルギー省は、石油ベースの燃料の代替として、石炭ベースの輸送用燃料を開発しようとした。しかし、研究主導の石油技術と石油コストの低下により、石炭を使用して液体輸送燃料を大規模に生産することは、経済的に実現可能になることがなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
石炭の液化と他の製品を形成するための石炭の使用について1世紀以上にわたって重要な研究が行われてきたが、石炭から炭素繊維などの高価値で高性能の炭素ベースの製品を製造する能力は未解決の問題である。近年、炭素ベースのテクノロジーが最前線に立っており、炭素繊維、樹脂、グラフェン、カーボンナノチューブなどの先進炭素材料の商業化が急速に進んでいる。これらの先進材料は、大量の生産、大量の応用でますます使用されるようになり、それらを大量に製造業者に迅速かつ経済的に供給する必要がある。したがって、石炭からの燃料やその他の製品の導出の改善が模索されている一方で、石炭を将来の経済に役立つであろう先進炭素材料に変換するプロセスを開発する重要な作業が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
先進炭素材料を製造する方法は、石炭を処理施設に提供する工程と、該処理施設で石炭を選鉱してそこから不純物を除去する工程と、該処理施設で選鉱された石炭の少なくとも一部からピッチを生成する工程と、該処理施設で該ピッチの少なくとも一部を処理して、先進炭素材料を生成する工程とを含む。
【0006】
先進炭素材料を製造する方法は、炭鉱から石炭を採掘することによって処理施設に石炭を提供することを含み得る。
【0007】
先進炭素材料を製造する方法は、ハイウォールマイニングプロセスによって炭鉱から石炭を採掘することによって、処理施設に石炭を提供することを含むことができる。
【0008】
先進炭素材料を製造する方法は、炭鉱から採掘された石炭を処理施設に輸送することを含むことができる。
【0009】
先進炭素材料を製造する方法は、原材料として原炭を使用することを含むことができる。
【0010】
先進炭素材料を製造する方法は、第1の持続時間の間、石炭を第1の温度に加熱する工程と、および第2の持続時間の間、該石炭をより高い第2の温度に加熱する工程とを含み得る。
【0011】
先進炭素材料を製造する方法は、水銀などの不純物を石炭から除去する工程を含むことができる。石炭を選鉱することは、石炭から少なくとも85%の水銀を取り除くことができる。
【0012】
先進炭素材料を製造する方法は、石炭から水を除去する工程を含むことができる。
【0013】
先進炭素材料を製造する方法は、石炭を選鉱して約5重量%未満の水を含む選鉱された石炭を製造する工程を含むことができる
【0014】
先進炭素材料を製造する方法は、石炭から揮発性物質を除去することを含み得る。揮発性物質の少なくとも50%を石炭から除去することができる。
【0015】
先進炭素材料を製造する方法は、処理施設で選鉱された石炭を処理して、選鉱された石炭を熱分解プロセスにかけて、石炭の少なくとも一部からピッチを生成する工程を含むことができる。
【0016】
先進炭素材料を製造する方法は、処理施設で選鉱された石炭を処理して、選鉱された石炭を直接液化する工程を含み、石炭の少なくとも一部からピッチを生成することを含むことができる。
【0017】
先進炭素材料を製造する方法は、処理施設で選鉱された石炭を間接液化プロセスにかける工程を含む、処理施設で選鉱された石炭の処理を含むことができる。
【0018】
先進炭素材料を製造する方法は、固形チャーを生成することを含む、処理施設での選鉱された石炭の処理を含むことができる。
【0019】
先進炭素材料を製造する方法は、活性炭を生成するために固形チャーの少なくとも一部を処理する工程を含むことができる。
【0020】
先進炭素材料を製造する方法は、石炭液化抽出物を生成することを含む、処理施設で選鉱された石炭の処理を含むことができる。
【0021】
先進炭素材料を製造する方法は、石炭液化抽出物の少なくとも一部を処理してベンゼンを生成する工程を含むことができる。
【0022】
先進炭素材料を製造する方法は、石炭液化抽出物の少なくとも一部を処理してパラキシレンを生成する工程を含むことができる。
【0023】
先進炭素材料を製造する方法は、メソフェーズピッチ、等方性ピッチ、またはメソフェーズピッチのうちの1つを含むピッチを使用する工程を含み得る。
【0024】
先進炭素材料を製造する方法は、先進炭素材料を生成するためにピッチの少なくとも一部を紡糸(spining)する工程を含むことができる。
【0025】
先進炭素材料を製造する方法は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、グラファイトナノプレートレット、フラーレン、熱分解炭素、炭素発泡体、および樹脂のうちの1つまたは複数を含む先進炭素材料を形成することを含み得る。
【0026】
先進炭素材料を製造する方法は、第1の量のピッチを処理して第1の先進炭素材料を形成し、第2の量のピッチを処理して第2の先進炭素素材を形成する工程を含む、処理施設でのピッチの少なくとも一部を処理することを含み得る。
【0027】
先進炭素材料を製造する方法は、第1の先進炭素材料が炭素繊維を含み、第2の先進炭素材料がポリマーを含むようにすることができる。
【0028】
先進炭素材料を製造する方法は、炭素繊維とポリマーを組み合わせて炭素繊維強化ポリマーを形成することを含むことができる。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、処理施設で石炭から合成グラファイトを製造する方法は、石炭を処理施設に提供する工程と、石炭を選鉱してそこから所望の量の不純物を除去する工程と、選鉱された石炭を処理して合成グラファイトを生成する工程とを含むことができる。
【0030】
合成グラファイトは所望の量の不純物を含む。不純物は、カドミウム、セレン、または他の金属の1つまたは複数を含み得る。この方法はさらに、合成グラファイトを処理して合成グラフェンを生成することを含むことができる。合成グラフェンを生成するために合成グラファイトを処理することは剥離(exfoliation)を含み得る。合成グラフェンは、所望の量の不純物を含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態に従って、石炭に由来するピッチから形成された合成グラファイトが本明細書に記載されている。合成グラファイトはさらに、石炭中に見られる1つまたは複数の不純物の所望量を含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態に従って、石炭に由来するピッチから形成された合成グラフェンが本明細書に記載されている。合成グラフェンは、石炭中に見られる1つまたは複数の不純物の所望量をさらに含むことができる。
【0033】
一実施形態では、少なくとも1つ以上の樹脂を製造する方法が開示される。この方法は、ある量の原炭を提供する工程を含む。原炭は、その中に1つ以上の不純物を含む。この方法はまた、原炭を選鉱する工程と、原炭中の1つ以上の不純物のいくつかの少なくとも一部を選択的に除去して、選鉱された石炭を形成する工程とを含む。さらに、この方法は、選鉱された石炭を処理してピッチを生成する工程を含む。この方法は、このピッチの少なくとも一部を変化させて1つまたは複数の樹脂を生成する工程をさらに含む。1つまたは複数の樹脂は、原炭を選鉱し、選鉱された石炭を処理し、ピッチの少なくとも一部を変化させるプロセスの間に除去されなかった1つ以上の不純物の選択された量を含む。
【0034】
一実施形態では単一の処理施設で先進炭素材料を製造する方法が開示される。この方法は、原炭を単一の処理施設に提供する工程を含む。原炭は、その中に1つ以上の不純物を含む。この方法はまた、単一の処理施設で原炭を選鉱する工程と、原炭中の1つまたは複数の不純物のいくつかの少なくとも一部を選択的に除去して、選鉱された石炭を形成する工程も含む。この方法はさらに、選鉱された石炭を単一の処理施設で処理して、ピッチを生成する工程を含む。この方法は、単一の処理設備でピッチの少なくとも一部を変化させて、1つまたは複数の樹脂を生成する工程をさらに含む。1つまたは複数の樹脂は、原炭を選鉱し、選鉱された石炭を処理し、ピッチの少なくとも一部を変化させる間に除去されなかった1つまたは複数の不純物の選択された量を含む。
【0035】
一実施形態では、石炭から形成される1つまたは複数の樹脂が開示される。1つ以上の樹脂は複数のマーユニットを含む。複数のマーユニットのそれぞれは、炭素および水素を含む。1つまたは複数の樹脂はまた、原炭中に最初に存在した1つまたは複数の不純物の選択された量を含む。
【0036】
石炭からグラフェンを製造する方法は、少なくとも約149℃(約300°F)の温度で石炭を熱処理する工程と、石炭が熱処理から少なくとも部分的に冷却された後、石炭から還元酸化グラフェンを形成する工程とを含む。
【0037】
いくつかの場合において、石炭から還元酸化グラフェンを形成する工程は、石炭を酸化して石炭酸化物を形成する工程と、石炭酸化物を遠心分離する工程と、遠心分離後に石炭酸化物から沈殿物を収集する工程と、沈殿物が酸化グラフェンを含み、そしてその酸化グラフェンを還元して還元酸化グラフェンを形成する工程とを含み得る。石炭を酸化して石炭酸化物を形成する工程は、石炭を硫酸、硝酸、または過マンガン酸カリウム、過酸化水素の少なくとも1つと混合して石炭酸化物を形成する工程を含む。石炭を硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、または過酸化水素の少なくとも1つと混合して酸化石炭を形成する工程には、石炭を硫酸および硝酸の少なくとも1つと混合する工程と、硫酸と硝酸の少なくとも1つと混合した石炭を攪拌する工程と、硫酸と硝酸の少なくとも1つを混合した石炭に過マンガン酸カリウムを混合する工程と、過マンガン酸カリウムと硫酸および硝酸の少なくとも1つを混合した石炭を攪拌する工程と、過マンガン酸カリウムと硫酸および硝酸の少なくとも1つと混合した石炭を水で希釈して溶液を形成し、溶液を過酸化水素と混合する工程と、過酸化水素と混合した溶液を最初の遠心分離にかける工程と、最初の遠心分離のあと過酸化水素と混合された溶液の上澄みを、過酸化水素と混合された溶液の沈殿物から分離する工程とを含む。
【0038】
この方法は、石炭酸化物を遠心分離する前に、水で石炭酸化物を希釈する工程とをさらに含むことができる。場合によっては、酸化グラフェンを還元して還元酸化グラフェンを形成する工程とは、酸化グラフェンを超音波処理する工程、および酸化グラフェンを超音波処理した後に標準反応器(par reactor)で酸化グラフェンを水熱処理する工程を含む。場合によっては、水熱処理は少なくとも約149℃(約300゜F)の温度で行われるが、約177℃(350゜F)を超えないように石炭を第1の温度に加熱し、石炭を水銀除去反応器に移送し、水銀除去反応器内の石炭を少なくとも約260℃(500゜F)の第2の温度に加熱し、そして石炭を不活性ガスと接触させて、石炭中に存在する水銀の少なくとも一部を除去する。いくつかの場合において、石炭から還元酸化グラフェンを形成する工程は、石炭の約10重量パーセントから約20重量パーセントの還元酸化グラフェン収率で石炭から還元酸化グラフェンを形成する工程を含む。場合によっては、石炭から還元酸化グラフェンを形成する工程は、還元酸化グラフェン中の石炭に存在した所定量の1つまたは複数の不純物原子を保持する工程を含む。幾つかの場合においては、不純物原子は、ホウ素、窒素、およびケイ素の1つまたは複数を含む。
【0039】
合成グラフェンを製造する方法は、1つ以上の不純物原子を含む石炭を選鉱して、そこからその1つ以上の不純物原子の所定量を除去する工程と、その選鉱された石炭を処理してそこからある量のピッチを生成する工程と、そのピッチの少なくとも一部を処理して所望量の1つ以上の不純物原子を含む合成グラフェンを生成する工程とを含む。場合によっては、ピッチはメソフェーズピッチを含む。場合によっては、不純物原子は、シリコン、窒素、およびホウ素の1つまたは複数を含む。場合によっては、不純物原子により、合成グラフェンに所定量の点欠陥が生じる。
【0040】
合成グラフェンを製造する方法は、石炭を熱処理して、その中の不純物原子を所定量とし、その石炭の少なくともある量を酸化して、1つ以上の不純物原子を所定濃度で有する石炭酸化物とし、この石炭酸化物を処理して、所定濃度の1つ以上の不純物原子を含む還元酸化グラフェンを形成する。
【0041】
いくつかの場合において、1つ以上の不純物原子は、石炭に自然にあるものである。場合によっては、不純物原子には、カドミウム、セレン、ホウ素、窒素、およびシリコンの1つ以上が含まれる。場合によっては、還元酸化グラフェン中の不純物原子の所定の濃度は、約0.1原子%から約10原子%である。
【0042】
石炭から形成される合成グラフェンは、所定量のドーパント原子を含むことができ、ドーパント原子は石炭に由来する。場合によっては、ドーパント原子は、ホウ素、窒素、およびシリコンの1つまたは複数を含む。合成グラフェンは、1つまたは複数のドーパント原子に起因する所定量の点欠陥をさらに含むことがある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
添付の図面は、本装置の様々な実施形態を示しており、明細書の一部である。図示の実施形態は本装置の単なる例でありその範囲を限定するものではない。
【0044】
【
図1】
図1は一実施形態による炭素繊維を形成する例示的な方法100のフローチャートである。
【0045】
【
図2】
図2は、一実施形態による直接液化プロセスを使用して炭素繊維を形成する例示的な方法200のフローチャートである。
【0046】
【
図3】
図3は、一実施形態による間接液化プロセスを使用して炭素繊維を形成する例示的な方法300のフローチャートである。
【0047】
【
図4】
図4は、一実施形態による1つまたは複数の膜を使用して炭素繊維を形成する例示的な方法400のフローチャートである。
【0048】
【
図5】
図5は、一実施形態による1つまたは複数の樹脂を形成する例示的な方法500のフローチャートである。
【0049】
【
図6】
図6は、一実施形態による直接液化プロセスを使用して1つまたは複数の樹脂を形成する例示的な方法600のフローチャートである。
【0050】
【
図7】
図7は、一実施形態による、間接液化プロセスを使用して1つまたは複数の樹脂を形成する例示的な方法700のフローチャートである。
【0051】
【
図8】
図8は、一実施形態による1つ以上の膜を使用して1つ以上の樹脂を形成する例示的な方法800のフローチャートである。
【0052】
【
図9】
図9は、本開示による石炭から先進炭素材料を製造する方法の例のプロセスフロー図を示す。
【0053】
【
図10】図は、本開示による熱分解プロセスを含む、石炭から先進炭素材料を製造する方法の例のプロセスフロー図を示す。
【0054】
【
図11】
図11は、本開示による直接液化プロセスを含む、石炭から先進炭素材料を生成する方法の例のプロセスフロー図を示す。
【0055】
【
図12】
図12は、本開示による間接液化プロセスを含む、石炭から先進炭素材料を生成する方法の例のプロセスフロー図を示す。
【0056】
【
図13】
図13は、一実施形態による、本開示による、炭素繊維および、任意選択で、石炭から1つまたは複数の先進炭素材料を製造する方法1300の例の材料流れ図を示す。
【0057】
【
図14】
図14は、本開示による石炭からグラフェンを生成する方法の例のプロセスフロー図を示す。
【0058】
【
図15】
図15は、本開示による石炭から還元酸化グラフェンを生成する方法の例のプロセスフロー図を示す。
【0059】
【
図16A】
図16Aは、本開示によるモナークシーム石炭のサンプルのラマン分光グラフである。
【0060】
【
図16B】
図16Bは、本開示による熱処理されたモナーク炭のサンプルのラマン分光グラフである。
【0061】
【
図16C】
図16Cは、
図16Aのモナークシーム石炭のサンプルを本開示による
図16Bの熱処理されたモナークシーム石炭のサンプルと比較するラマン分光グラフである。
【0062】
【
図16D】
図16Dは、本開示による熱処理されたモナーク炭からのグラフェンのサンプルのラマン分光グラフである。
【0063】
【
図17】
図17は、本明細書に記載され、いくつかの実施形態による、1つまたは複数の先進炭素材料を生産するための処理施設におけるエネルギーおよび石炭の流れを示す図である。
【0064】
【
図18】
図18は、本明細書に記載の実施形態に従って処理されて、活性炭、グラフェン、電池で使用される材料、一実施形態による建築および建設材料などの様々な先進炭素材料を形成するときの、例えばハイウォールマイニングからの原炭のプロセスフローを示す図である。
【0065】
【
図19】
図19は、一実施形態による、原炭から本明細書に記載されているプロセスによる様々な先進炭素材料へのプロセスフローを示す図である。
【0066】
図面全体を通じて、同一の参照番号は、類似しているが必ずしも同一ではない要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下に記載するように、炭素繊維は原炭から製造することができる。一実施形態では、原炭を処理施設に輸送することができる。次に、所望量の不純物を除去するために石炭を選鉱することができる。石炭から除去される不純物(例えば、炭素または水素以外の任意の化合物または元素)は、水銀、ヒ素、カドミウム、他の重金属、水、または揮発性化合物の少なくとも1つを含むことができる。場合によっては、選鉱には石炭を加熱してこれらの不純物を除去することが含まれる。次に、選鉱された石炭を処理して、ピッチ、および必要に応じて1つ以上の追加の先進炭素材料(つまり、非炭素繊維先進炭素材料)を生成することができる。処理は、選鉱された石炭を液体抽出プロセス(例えば、熱分解プロセス、直接液化プロセス、間接液化プロセス、または1つ以上の膜を使用する処理)に供することを含み得る。場合によっては、本明細書に開示されているこれらのプロセスは、炭素繊維や追加の先進炭素材料などを作ることができるピッチに加えて、1つまたは複数の副産物(たとえば、ガス、固形チャー、または石炭液化抽出物)を生成することができる。例えば、固形チャーを処理して活性炭を形成することができ、抽出された石炭液化油を処理してベンゼンやパラキシレンなどの芳香族化合物を形成することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプロセスによって生成されるピッチは、等方性ピッチであり得、必要または所望に応じて処理することによってメソフェーズピッチに変換され得る。次に、ピッチを処理および/または変化させて、炭素繊維(たとえば、ピッチを回転(spin)させて炭素繊維を形成する)を作り、またオプションで、1つ以上の追加の先進炭素材料(たとえば、合成グラファイトなど)を作ることができる。この炭素繊維と、必要に応じての追加の先進炭素材料を、さらに処理するかまたは製造などで使用するために第三者に提供することができる。いくつかの場合において、炭素繊維は、樹脂またはポリマーなどの二次材料と組み合わされて炭素繊維強化複合材を形成することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスまたはプロセスステップの1つまたは複数は、1つまたは複数の触媒の存在下で利用または実行することができる。例えば、1つ以上のプロセスは水素化触媒を含み得る。いくつかの実施形態では、触媒は金属(例えば、白金)を含むことができる。場合によっては、触媒は、マルチパート触媒(例えば、2つ以上の金属を含む触媒)であり得る。場合によっては、触媒は、セラミックまたは鉱物材料(例えば、アルミノケイ酸塩材料などのケイ酸塩材料)を含むことができる。場合によっては、触媒は、現在知られている、または石炭の処理に使用するためにまだ発見されていない任意の触媒材料を含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される選鉱、処理(processing)、および処理(treatment)ステップのすべては、単一の処理施設、例えば、単一の処理プラントまたはコンパウンドで実行することができる。しかし、他の実施形態では、1つまたは複数のステップを個別の施設で実行することができ、各ステップの製品を保管して、各施設間で輸送することができる。本明細書で使用される場合、処理施設という用語は、ほぼ同じ地理的位置にある1つまたは複数の実験室、建物、プロセスフロー、または他の装置を指すことができる。例えば、処理施設は、本明細書に記載されるプロセスおよび方法を実行するためのそのような機器を含む単一の地理的位置にある単一の建物または工場複合体を含むことができる。
【0071】
一実施形態では、炭素繊維は、本明細書に開示されるプロセス中に生成される唯一の先進炭素材料である。一実施形態では、前述のように、本明細書に開示されるプロセスは、炭素繊維および1つまたは複数の追加の先進炭素材料を形成することができる。一例では、1つまたは複数の追加の先進炭素材料は、樹脂(たとえば、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、メタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、および他の適切な樹脂)、カーボンフォーム、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンメガチューブ、グラファイト、グラフェン、グラファイトナノプレートレット、ナノリボン、ナノバッド、フラーレン(バックミンスターフラーレン、マルチコアフラーレンなど)、量子ドット、活性炭、熱分解カーボンを含むことができるが、これらに限定されない。一例では、本明細書に記載されるプロセスによって生成される追加の先進炭素材料は、ポリマーを含むことができるがこれに限定されない。一例では、本明細書に記載されているプロセスによって生成される追加の先進炭素材料は、追加の先進炭素材料の形成における前駆体として使用できる1つまたは複数の材料も含むことができる。前駆体の例は、アルカン、アルケン、またはアルキンの少なくとも1つを含むことができる。一例では、追加の先進炭素材料は、生物学的に有用な材料または生体高分子(例えば、タンパク質、アミノ酸、核酸、コラーゲン、キトサン、または糖のうちの少なくとも1つ)を含むことができる。
【0072】
石炭からの、炭素繊維および任意選択で1つまたは複数の追加の先進炭素材料の製造は、炭素繊維および任意選択で他の炭素源(たとえば石油)からの1つまたは複数の追加の先進炭素材料の製造よりもいくつかの利点を有する。たとえば、石油の供給と価格は非常に変動しやすいため、製造業者が炭素繊維と追加の先進炭素材料を製造するための石油を入手するのに影響を与える可能性がある。これにより、炭素繊維と追加の先進炭素材料が不足する可能性があり、炭素繊維と追加の先進炭素材料を含むデバイス、部品などを製造するメーカーの妨げとなる可能性がある。さらに、石炭から樹脂を生成すると、低い水素対炭素比(たとえば、水素対炭素比が約0.5未満、約0.2未満、または約0.1未満)の樹脂、ピッチ、または1つ以上の副産物の少なくとも1つが生成される。水素対炭素比が低いと、石炭から形成される樹脂の収率を向上させ、外部水素源の必要性を排除し、またはここに開示するプロセス中に生成される二酸化炭素の量を減らすといったことを可能とする。さらに、石炭はその中に1つ以上の不純物を含み得る。1つまたは複数の不純物の存在は、炭素繊維および追加の先進炭素材料の特性に影響を与える可能性がある。例えば、少なくとも1つの不純物の少なくとも一部は、選鉱プロセス中または別のプロセス中に意図的かつ選択的に石炭から除去されない可能性がある。石炭から除去されない不純物は、炭素繊維および1つ以上の追加の炭素材料のドーパントとして機能する可能性があり、これは、炭素繊維および1つ以上の追加の炭素材料の特性に影響を与える可能性がある。このように、石炭に存在する不純物と、石炭から不純物を選択的に除去する機能により、炭素繊維の組成と特性、および石炭から製造される追加の先進炭素材料を高度に制御できる。さらに、石炭中の不純物の存在により、炭素繊維および追加の先進炭素材料を形成するために必要な処理が少なくなる。たとえば、石炭中の不純物を維持することにより、選鉱プロセスまたは他の精製プロセスの少なくとも1つを簡略化したり、1つ以上の他の非選鉱プロセスの操作を容易にしたり、石炭、炭素繊維、または追加の先進炭素材料に積極的にドーピングする必要性を排除したりできる。さらに、石炭から形成された炭素繊維は、石油から形成された炭素繊維よりも高いグラフェンレベルを示し、より弾性があり、より高い引張強度を示し得る。
原炭から炭素繊維およびその他の副産物を形成する方法
【0073】
図1は、一実施形態による、炭素繊維を形成する例示的な方法100のフローチャートである。方法100は、ブロック110で処理施設に原炭を提供し;ブロック120で、この処理施設で原炭を選鉱して、所望量の水、金属、および/または他の不純物を石炭から除去し;ブロック130で、この処理施設で選鉱された石炭の少なくとも一部を熱分解し;ブロック140でピッチを生成する工程の1つまたは複数を有する。炭素繊維は、方法100中に除去されなかった1つ以上の不純物の選択された量を含むことができる。方法100は、単なる例である。したがって、方法100の1つまたは複数のブロックは、省略、補足、結合、または分割することができる。さらに、方法100は、石炭から少なくとも1つの副産物(例えば、チャー、少なくとも1つのガス、または1つまたは複数の石炭液化抽出物)を生成する、またはピッチを処理して1つ以上の追加の先進炭素材料を生成するといった1つまたは複数の追加のステップを含むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、ブロック110において、現在知られているか将来開発される可能性のある任意の方法によって原炭を処理施設に提供することができる。たとえば、石炭は一般に、炭層または炭層として知られている天然の層または鉱脈から採掘される。石炭は、露天採掘、地下採掘、またはその他のさまざまな形態の採掘ができる。通常、採掘されたが他の方法で処理されていない石炭は、原炭と呼ばれる。場合によっては、原炭は、ハイウォールマイニングプロセス、ストリップマイニングプロセス、またはコントア(contour)マイニングプロセスなどの露天採掘プロセスによって採掘できる。場合によっては、原炭は、長壁採掘プロセス、連続採掘プロセス、爆風採掘プロセス、後退採掘プロセス、ルーム・ピラー採掘プロセスなどの地下採掘プロセスによって採掘することができる。
【0075】
原炭は、処理施設に比較的近い場所から採鉱または採掘することができる。例えば、処理施設は、石炭採掘エリアまたはその近くに配置することができる。しかし、他の場合には、石炭はどこからでも採掘されて処理施設に輸送される。場合によっては、必要に応じて原炭を処理施設に提供して、所望量の先進炭素材料を生産することができる。ただし、他のいくつかのケースでは、未処理の石炭は提供されて処理されるまで処理施設で保管される。
【0076】
ブロック110で提供される石炭は、その内容および特性に基づいてランク付けまたは等級付けすることができる。さまざまな石炭分類スキームが存在するが、ここでは、一般的な変成グレードを使用して原炭を一般的に説明する。これらの等級は、概ね本開示の理解を助けるために使用されるが、本明細書に記載の炭素繊維、および任意選択的な、1つまたは複数の追加の先進炭素材料を生成するために使用できる石炭のタイプに限定することを意図しない。石炭の特定の分類は、本明細書に記載されるプロセスでの使用に好ましい可能性があるが、そのようなプロセスは、議論された石炭の分類に、それがもしあったとしても、厳密に限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプロセスによって利用される石炭は褐炭とすることができ、約45重量%を超える揮発性含有物を有し得る。いくつかの実施形態では、石炭は、亜瀝青炭、歴青炭、および/または無煙炭とすることができる。いくつかの実施形態では、石炭は、ワイオミング州シェリダン近くのブルック鉱山から抽出された石炭とすることができる。ブルックマインから抽出された石炭の組成は、以下により詳細に説明するように、特定の機械的、化学的、および/または電気的特性を示す炭素繊維の形成を促進できる有益な濃度でいくつかの不純物を含むと現在発明者は考えている。場合によっては、本明細書に記載されているプロセスで使用するのに好ましい石炭は、当業者が選択することができる。例えば、好ましい石炭は、1つ以上の破壊的または非破壊的な化学分析技術(例えば、ラマン分光法、エネルギー分散型X線分光法など)または1つ以上の計算技術の少なくとも1つに基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、石炭は、0.7~約1.0、約0.7~約0.75、約0.725~約0.0775、約0.75~約0.8、約0.0775~約0.85、約0.8~約0.9、約0.85~約0.95、または約0.9~約1.0の範囲など、約0.7より大きい初期水素対炭素比を示すことができる。
【0077】
先に論じたように、原炭は方法100で使用するためにブロック110で処理設備に提供することができる。処理設備は、必要に応じて使用するために原炭を貯蔵する能力を有することができ、または所望量の炭素繊維を製造するため必要される量の原炭を受け取ることができる。当技術分野でよく知られているように、石炭は、トラック、列車、または任意の他の形態の輸送によって提供することができる。さらに、処理施設は、石炭採掘場に配置することができ、その場合、石炭採掘場は処理施設の一部と考えられる。
【0078】
前述のように、原炭は、その中に1つまたは複数の不純物を含むことができる。この1つ以上の不純物は、揮発性重金属(例えば、水銀、セレン、ヒ素、およびカドミウム)、アルカリ金属(例えば、ナトリウム金属、カリウム金属)、ヘテロ原子(例えば、硫黄、酸素、およびハロゲン)、シリコン、アルミニウム、チタン、カルシウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、硫黄、ストロンチウム、バリウム、マンガン、リン、アンチモン、ヒ素、バリウム、ベリリウム、ホウ素、臭素、カドミウム、塩素、クロム、コバルト、銅、フッ素、鉛、リチウム、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、セレン、銀、ストロンチウム、タリウム、スズ、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、またはそれらの酸化物を含み得る。例えば、不純物および原炭の供給源に応じて、本明細書に開示される不純物はいずれも、原炭の0重量パーセント(「wt重量%」)~約25重量%であり得るものであり、例えば約0重量%~約0.001重量%、約0.0005%重量~約0.002重量%、%、約0.001重量%~約0.003重量%、約0.002重量%~約0.004重量%、約0.003重量%~約0.005重量%、約0.004重量%~約0.006重量%、約0.005重量%~約0.008重量%、約0.007重量%~約0.01重量%、約0.009重量%~約0.02重量%、約0.01重量%~約0.03重量%、約0.02重量%~約0.04重量%、約0.03重量%~約0.05重量%、約0.04重量%~約0.06重量%、約0.05重量%~約0.08重量%、約0.07重量%~約0.1重量%、約0.09重量%~約0.2重量%、約0.1重量%~約0.3重量%、約0.2重量%~約0.4重量%、約0.3重量%~約0.5重量%、約0.4重量%~約0.6重量%、約0.5重量%~約0.8重量%、約0.7重量%~約1重量%、約0.9重量%~約2重量%、約1重量%~約4重量%、約3重量%~約6重量%、約5重量%~約8重量%、約7重量%~約10重量%、約9重量%~約15重量%、または約10重量%~約25重量%、となり得る。
【0079】
一実施形態によれば、ブロック120において、原炭は、原炭に存在する少なくとも1つの不純物の少なくとも一部を除去して、選鉱された石炭(別名、アップグレードされた石炭)を形成するために選鉱され得る。例えば、原炭を選鉱して、少なくとも1つの水、重金属、揮発性化合物、アルカリ金属、またはヘテロ原子を原炭から除去することにより、選鉱された石炭を生成することができる。一実施形態では、原炭を選鉱して、少なくとも1つの不純物のかなりの部分を除去することができる。
【0080】
選鉱プロセスは、原炭を1つ以上の所望の温度に加熱することを含み得る。1つまたは複数の所望の温度は、約100℃~約290℃、100℃~約150℃、約125℃~約200℃、約150℃~約290℃など、約100℃~約500℃であり得る。原炭が加熱される温度は、原炭中に存在する少なくとも1つの不純物の少なくとも一部を選択的に除去するように選択することができる。例えば、原炭を約100℃~約150℃の温度に加熱して、原炭から水分を除去し、約150℃~約290℃で、原炭から揮発性金属を除去することができる。場合によっては、選鉱プロセスは、原炭を第1の所望の温度に加熱することを含むことができる。原炭を第1の所望の温度に加熱すると、1つまたは複数の第1の不純物を除去することができる。いくつかの実施形態では、選鉱は、原炭を第2のより高い所望の温度に加熱することを含むことができる。原炭を第2の所望の温度に加熱すると、1つまたは複数の第2の不純物を除去することができる
【0081】
選鉱プロセスは、原炭を所望期間、所望温度に加熱することを含むことができる。所望の持続時間は、約1秒~約1分、約30秒~約30分、約1分~約1時間、約30分~約3時間、1時間~約5時間、約3時間~約10時間、約7時間~約18時間、約12時間~約1日、または約18時間~約3日など、約1秒~数日の範囲とすることができる。典型的には、原炭が所望温度に加熱される持続時間を増加させることは、原炭から除去される1つ以上の不純物の量を増加させる可能性がある。しかしながら、原炭は最大持続時間を示す可能性があり、最大持続時間よりも長い時間にわたって原炭を加熱しても、原炭から除去される1つ以上の不純物の量にほとんどまたは全く影響を与えない。場合によっては、選鉱プロセスは、原炭を第1の所望の温度に第1の期間加熱し、その後、原炭を第2の期間、第2のより高い所望の温度に加熱することを含むことができる。第1と第2の期間は同じとすることも異なるものとすることもできる。
【0082】
一実施形態では、選鉱プロセスは、原炭からの不純物の1つまたは複数の除去を容易にし、原炭の酸化または他の反応を防ぐことができるハロゲンガスを含む雰囲気で原炭を加熱することを含むことができる。いくつかの実施形態では、水素対炭素比を増加させることができる水素を含む雰囲気中で原炭を加熱することにより、石炭を選鉱することができる。そのような実施形態では、水素は外部水素源から、または方法100の別の段階で収集された水素から提供することができる。いくつかの実施形態では、実質的に水素がない雰囲気で原炭を加熱することにより石炭を選鉱することができる。そのような実施形態では、実質的に水素がない雰囲気が水素対炭素比を減少させることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、水素対炭素比を増加させることができる水素を含む雰囲気中で原炭を加熱することにより石炭を選鉱することができる。そのような実施形態では、水素は、外部水素源から、または方法100の別の段階で収集された水素から提供することができる。いくつかの実施形態では、実質的に水素がない雰囲気で原炭を加熱することにより、石炭を選鉱することができる。そのような実施形態では、実質的に水素を含まない雰囲気が、水素対炭素比を減少させることができる。
【0084】
いくつかの他の実施形態では、1つ以上の触媒化合物の存在下で石炭を所望の温度に加熱することにより石炭を選鉱することができる。いくつかの場合では、石炭を選鉱することは、例えば触媒の存在下で石炭を熱分解することを含み得る。いくつかの実施形態において、原炭は、大気圧または大気圧近く(例えば、0.8~約1.2気圧)で選鉱することができるが、原炭は、より高い圧力またはより低い圧力で選鉱することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、選鉱は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,181,509号に記載されているように、原炭をWRITECoal(登録商標)選鉱プロセスに供することを含むことができる。いくつかの他の実施形態では、1つまたは複数の触媒化合物の存在下で石炭を所望の温度に加熱することによって、石炭を選鉱することができる。いくつかの場合では、石炭を選鉱することは、例えば触媒の存在下で石炭を熱分解することを含み得る。場合によっては、エルピアミナ(LP Amina)によって開発およびライセンスされ、たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開番号2017/0198221に記載されているように、石炭はベネプラス(BenePlus)システムによって選鉱することができる。
【0086】
選鉱された石炭は、有意に減少した量(例えば、少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%)の水銀、カドミウム、他の重金属、水、本明細書に開示される他の不純物のいずれか、又は原炭中に存在し得る他の不純物の少なくとも1つを含む。選鉱された石炭に残る不純物の量は、原炭が加熱された温度、原炭が加熱された時間、原炭が選鉱プロセス中にさらされた雰囲気、触媒の存在などによる。例えば、石炭を選鉱することにより、石炭中の水銀の量を少なくとも約7重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、または92重量%以上削減することができる。場合によっては、石炭を選鉱することにより、石炭の水または水分含有量を約5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、または1.5重量%以下にすることができる。場合によっては、石炭を選鉱することにより、水素、硫黄、酸素、ヒ素、セレン、カドミウム、または揮発性物質の1つ以上を石炭から除去できる。石炭中のこれらの元素の1つ以上の量は、約25重量%~約90重量%だけ減少することが可能である。
【0087】
しかし、前述のように、選鉱プロセスに供された後、選鉱された石炭中に所望の量の1つまたは複数の不純物が残ることが望ましい場合がある。例えば、選鉱プロセスは、所定量の水銀、カドミウム、セレン、アルカリ金属、異種元素、および/または別の元素が処理後に選択的に残ることができるように、所望量の不純物の除去をすることができる。場合によっては、選鉱された石炭に残る可能性のある所望の量の不純物は、その後の炭素繊維、または任意選択による1つまたは複数の追加の先進炭素材料の形成に有用である可能性がある。場合によっては、選鉱された石炭中に残存する可能性のある所望量の不純物を、炭素繊維、および任意選択による1つまたは複数の先進炭素材料に組み込むことができる。例えば、先進炭素材料が合成グラフェンを含む場合、所望量のカドミウムが選鉱された石炭に残され、それによって合成グラフェンに組み込まれ、それによってその電気的、機械的、または化学的特性を改善することができる。
【0088】
一実施形態では、選鉱プロセスは、ブロック120で選鉱された(ただしブロック130の前の)石炭が、本明細書に開示される不純物の少なくともいくつかを本明細書に開示されるいずれかの濃度に維持するように構成することができる。
【0089】
一実施形態では、選鉱プロセスは、石炭の水素対炭素比を減少させるように構成することができる。例えば、選鉱プロセスの後、選鉱された石炭の水素対炭素比は約0.8未満、例えば約0.6~約0.7、約0.65~約0.75、または約0.7~約0.8の範囲であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、ブロック120で石炭を選鉱することにより1つまたは複数の副産物、例えば捕捉して後の処理ステップで使用することができる副産物、それ自体で価値がある副産物、または方法100において更なる処理又は使用に供することができる副産物、を生成することができる。例えば、石炭を選鉱することにより、原石炭からガスまたは石炭液化抽出物を生成または分離することができる。これらのガスおよび/または石炭液化抽出物は、処理中に捕捉または分離することがでる。例えば、ブロック120で石炭を選鉱することにより、H2、CO2、CO、CH4、C2H4、C3H6、または他の炭化水素ガスの少なくとも1つを生成でき、これらを捕捉して、その後ブロック130または他のプロセスステップで利用するようにすることができる。場合によっては、石炭を選鉱することにより、その後の使用または処理のために捕獲できる石炭液化抽出物(たとえば、トルエンまたはベンゼン)が得られる可能性がある。場合によっては、ブロック120での選鉱プロセスによって石炭から除去された不純物は、その後の使用のために捕捉することができる。例えば、選鉱プロセスによって石炭から除去された水は、収集されて後続のプロセスステップで利用され得る。いくつかの実施形態では、石炭を選鉱することにより、灰またはチャーとして知られる固体材料を生成することもできる。場合によっては、このチャーをさらに処理して活性炭を形成することができる。
【0091】
ブロック130において、選鉱された石炭は、処理施設によって処理され得る。いくつかの実施形態では、選鉱された石炭の処理は、選鉱された石炭を熱分解プロセス(例えば、高温熱分解プロセスまたは穏やかな温度の熱分解プロセス)などの液体抽出プロセスに供することを含み得る。熱分解プロセスの代わりに、または熱分解プロセスと組み合わせて、他の液化プロセス、例えば直接液化プロセス(
図2に関して詳細に説明)、間接液化プロセス(
図3に関して詳細に説明)、(例えば、
図4に関してより詳細に論じる)膜、電気アークプロセス、超臨界溶媒抽出プロセス、または電磁加熱プロセスなどの他の液化プロセスを使用することができる。液体抽出プロセスは、選鉱された石炭を少なくともピッチに、1つ以上のガスに、1つ以上の石炭液化抽出物に、またはチャーに変換できる。
【0092】
一実施形態では、ブロック130の液体抽出プロセスは、処理施設によって選鉱された石炭を熱分解することを含むことができる。選鉱された石炭を熱分解して炭素繊維を形成することは、選鉱された石炭に加えられる圧力を上げるかまたは上げずに、選鉱された石炭を所望期間、所望温度に加熱することを含むことができる。高温では、選鉱された石炭内の一部の有機構造が分解し始め、低分子量の熱分解フラグメントが形成される。低分子量の熱分解フラグメントの一部は、軽質ガス(水素、メタン、二酸化炭素など)として選鉱された石炭から離れることができる。これらの軽質ガスは、以下でより詳細に論じられるように、捕捉および/または再利用することができる。しかしながら、より低分子量の熱分解フラグメントのいくつかは、再結合または解重合して、小さな環の芳香族構造(例えば、単環の芳香族構造)を形成することがあり得る。小さな環の芳香族構造は、小さな芳香族環構造が一緒に結合してより大きな環の芳香族構造(例えば、多環芳香族炭化水素)を形成する縮合反応を受けることがあり得る。縮合反応の例には、環縮合、環融合、脱水素化、または小環芳香族構造を成長させる他の縮合反応の少なくとも1つが含まれる。より大きい環の芳香族構造は、等方性ピッチ、等方性樹脂、整列した多環芳香族層、液晶構造(例えば、異方性ピッチまたは異方性樹脂)、メソフェーズピッチ、またはメソフェーズ樹脂を含む他の製品を含み得る。
【0093】
一例では、選鉱された石炭を熱分解することは、選鉱された石炭を大気圧プロセスで約1000℃より高い温度に加熱することを含む高温熱分解プロセスを含むことができる。高温熱分解プロセスは、ベンゼン化合物、フェノール化合物、高価な油、または炭素繊維の形成に有用な他の化合物を形成する可能性がある。一例では、選鉱された石炭を熱分解することは、選鉱された石炭を大気圧で約400℃~約650℃の温度に加熱することを含む穏やかな温度の熱分解プロセスを含むことができる。穏やかな温度の熱分解プロセスは、本明細書に開示される樹脂の形成を促進することができる高温の熱分解プロセスよりもコークスを形成する可能性が高い。いくつかの場合において、石炭は、高圧(例えば、約1気圧を超える圧力)および溶媒の存在下で加熱することができる。例えば、選鉱された石炭は、超臨界状態に保つことができるCO2溶媒の存在下で熱分解することができる。場合によっては、選鉱された石炭を水素(たとえば、外部の水素源から提供された水素または方法100の間に収集された水素)雰囲気で熱分解して、選鉱された石炭の水素対炭素比を増やすか、水素を含まない雰囲気で熱分解して選鉱された石炭の水素対炭素比を減少させることができる。一実施形態では、選鉱された石炭は、水素(例えば、外部水素源から提供される水素または方法100の別の停止部から収集される水素)雰囲気で熱分解して石炭の水素対炭素比を増加させるか、水素を含まない雰囲気で熱分化して選鉱された石炭の水素対炭素比を減少させることができる。いくつかの場合において、選鉱された石炭は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,144,874号に記載されているテラパワー(TerraPower)によって開発されたMuSCLシステムによって熱分解することができる。選鉱された石炭の処理に使用できる熱分解プロセスの追加の例は、米国特許出願公開番号2017/0198221、米国特許出願公開番号2018/0311657、およびENCOALマイルドガス化プロジェクト、DOE評価、DOE/NETL-2002/1171(2002)があり、それぞれの開示はこの参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、熱分解プロセスは、選鉱された石炭を、所望強度および所望持続時間で電磁放射線に曝露することを含むことができる。例えば、ブロック130は、熱分解プロセスの一部として、選鉱された石炭をマイクロ波および/または高周波(RF)放射線に所望の時間曝すことを含むことができる。場合によっては、この熱分解プロセスにより、選鉱された石炭の大部分が熱分解温度未満に留まる可能性があるが、石炭の個々の粒子は、約649℃(約1200°F)を超える温度に曝される可能性がある。場合によっては、この熱分解プロセスは、選鉱された石炭を構成する炭素の少なくとも一部のメタン活性化および/またはメチル化も含むことができる。いくつかの実施形態では、選鉱された石炭は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2017/0080399号に記載されている、エイチ クエスト ヴァンガード社(H Quest Vanguard、Inc.)によって開発された波液化プロセス(Wave Liquefaction process)によって熱分解することができる。選鉱された石炭を電磁放射線に曝露することによって石炭を処理するプロセスの追加の例は、米国特許第6,512,216号および米国特許出願公開第2017/0101584号に開示されており、それらのそれぞれの開示は参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。選鉱された石炭を電磁放射線に曝露することによって石炭を処理するプロセスのさらなる例は、本明細書に既に開示が組み込まれている米国特許出願公開第2018/0311657号に開示されている。
【0095】
ブロック130は、熱分解された石炭中の選択された量の1つまたは複数の不純物を選択的に維持するように構成することができる。例えば、ブロック130の後、ピッチは、本明細書に開示される濃度のいずれかで本明細書に開示される不純物のいずれかを含み得る。
【0096】
一実施形態では、ブロック130の後に、熱分解された水素対炭素比は約0.8未満、例えば、約0.1未満、約0.2未満、約0.1~約0.2、約0.15~約0.1~約0.25、約0.2~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.6、または約0.5~約0.7であり得る。
【0097】
ブロック140では、ピッチ、および任意選択で1つまたは複数の副産物(たとえば、1つまたは複数のガス、少なくとも1つの石炭液化抽出物、またはチャーの少なくとも1つ)が処理施設で処理(たとえば、熱分解石炭に抽出)される。一実施形態では、ブロック140は、別個のアクションまたはプロセスステップではなく、ブロック120またはブロック130の少なくとも1つの結果を表す。一実施形態では、ブロック140は、ブロック120またはブロック130の少なくとも1つと実質的に同時に実行することができる。一実施形態では、ブロック140は、ブロック120またはブロック130の少なくとも1つの後に実行することができる。
【0098】
一実施形態では、ブロック140は、選鉱された石炭に1つまたは複数の添加剤を加えることを含むことができる。例えば、ブロック140の間に1つ以上の他のガスまたは液体を使用して1つ以上の添加剤を選鉱された石炭に加えることができる。ブロック104で使用できるガスまたは液体の例には、水素含有ガス、天然ガス、CO2、石油製品、ブロック120またはブロック130の少なくとも1つで生成される1つ以上の材料または化合物、あるいは先に行われた方法100の反復によって生成または捕捉され得る化合物1つ以上の材料が含まれる。
【0099】
前述のように、原炭はその中に1つまたは複数の不純物を含むことがあり、ブロック120および130は、選鉱または熱分解された石炭が少なくともいくつかの不純物を含むように、少なくともいくつかの不純物を除去しないように構成することができる。選鉱または熱分解石炭に1つまたは複数の不純物が存在すると、選鉱または熱分解石炭に1つまたは複数の添加剤を加える必要を無くすことが可能となり、または選鉱または熱分解石炭に加える添加剤の量を減らすことが可能となる。したがって、選鉱または熱分解された石炭に1つ以上の不純物が存在すると、選鉱または熱分解された石炭に添加される添加剤の量が非石炭源よりも少なくなるため、方法100は非石炭源から炭素繊維を形成する方法よりも効率的になる。
【0100】
いくつかの実施形態では、ブロック140で処理設備においてピッチを生成することができる。本明細書で使用する場合、コールピッチ、コールタール、またはコールタールピッチともとして知られるピッチは、当業者にはよく理解されているように、1つまたは複数の典型的な粘弾性ポリマーの混合物を指すことができる。いくつかの実施形態では、ブロック140で生成されるピッチは、ステップ130で選鉱された石炭を処理した直接の結果であり得る。ブロック140で生成されるピッチは、1つ以上の高分子量ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ピッチは、約343℃(約650°F)を超える融点を有することができる。いくつかの実施形態では、ピッチは、ピッチの一部(例えば、炭素繊維を形成するために使用されないピッチの部分)が可塑剤を必要とせずに炭素繊維紡糸プロセスで使用できるのに十分高い融点を有することができる。
【0101】
一実施形態では、ピッチは、芳香族炭化水素、例えば多環式芳香族炭化水素を含むことができる。場合によっては、ピッチは少なくとも約50重量%の多環式芳香族炭化水素、少なくとも約60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、または99重量%以上の多環式芳香族炭化水素を含むことができる。一実施形態では、ピッチは、約0.1重量%の灰または他の固形物質、約0.05重量%未満の灰または固体材料、または約0.01重量%未満の灰または固形物を含むことができる。場合によっては、ピッチは約110℃(約230°F)を超える、約121℃(約250°F)を超える、約149℃(約300°F)を超える、または約110℃~約121℃(約230°F~約250°F)、約116℃~約135℃(約240°F~約275°F)、約121℃~約149℃(約250°F~約300°F)、約135℃~約177℃(約275°F~約350°F)、または約149℃~約204℃(約300°F~約400°F)の引火点を有することがある。場合によっては、ピッチは、約4未満、約3未満、または約2未満、または約1.5未満のAPI重力を持つことがある。いくつかの実施形態では、方法100によって生成されるピッチは、コークスピッチではない。すなわち、場合によっては、ブロック140で生成されるピッチは、コークスまたはコークスベースの材料~生成されない。いくつかの実施形態では、方法100中のどの時点でもコークスは生成されない。
【0102】
いくつかの実施形態では、ピッチは、本明細書に開示されている濃度のいずれかで、本明細書に開示されている不純物のいずれかを含むことができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、ピッチは約0.8未満の水素対炭素比、例えば約0.1未満、約0.2未満、約0.1~約0.2、約0.15~約0.25、約0.2~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.6、または約0.5~約0.7の水素対炭素比を有することができる。
【0104】
一実施形態では、ピッチは水、硫黄や窒素を含む非炭素原子、または石炭灰やチャーなどの物質、1つ以上の非炭素原子(例:1つ以上の水銀、セレン、カドミウム、ヒ素、アルカリ金属、酸素、ハロゲン、硫黄または窒素)、または石炭灰またはチャーなどの、複数の選択された不純物の1つ以上を比較的含まないことができる。例えば、ピッチは、約0.2重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%、または約0.01重量%未満の水を含むことがあり得る。一実施形態では、ピッチは、上に開示された濃度で1つまたは複数の選択された不純物を含み得る。
【0105】
一実施形態において、方法100はまた、ブロック140において1つ以上の副産物を生成することを含み得る。ブロック140において生成され得る副産物の例は、[前述の他の関連出願に]それぞれの開示に開示されており、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、ブロック140において生成される副産物は、1つ以上のガス、1つ以上の石炭液化抽出物、またはチャーのうちの少なくとも1つを含み得る。ブロック140の代わりに、またはブロック140に加えて、ブロック120またはブロック130の少なくとも1つにおいて1つまたは複数の副産物を生成することも可能である。
【0106】
石炭液化抽出物は、常温およびまたはその近く(約20℃(約68°F)および1気圧の圧力)で液体である、原炭または選鉱石炭から抽出または生成される任意の材料を指すことができる。1つまたは複数の石炭液化抽出物は、1つまたは複数の液体炭化水素を含むことができる。例えば、石炭液化抽出物は、ベンゼン、トルエン、アルカンまたはパラフィン、アルケン、C2化合物、C3化合物、C4化合物、T化合物、ハロゲン化合物、フェノール、または他の飽和または不飽和炭化水素の1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、石炭液化抽出物は、本明細書に開示される濃度のいずれかで、本明細書に開示される不純物のいずれかを含み得る。
【0107】
灰としても知られるチャーは、ガス、石炭抽出液、および/またはピッチが原炭から除去された後に残る任意の固体物質を指すことができる。チャーは、ブロック120、ブロック130、またはブロック140の少なくとも1つにおいて生成することができる。一例では、チャーは、固体の高表面積炭素質材料を含むことができる。一例では、チャーは、ブロック140で生成されたピッチの水素対炭素比よりも低い水素対炭素比など、比較的低い水素対炭素比を有することができる。場合によっては、チャーは、約0.05~約0.65の水素対炭素を有することができる。一例では、チャーは、本明細書において固有バインダー含浸と呼ぶことができる少なくともいくつかのピッチ材料をさらに含み得る。場合によっては、チャーのその後の処理の前に、残留ピッチまたは他の気体または液体の材料をチャーから除去することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、チャーは、本明細書に開示される濃度のいずれかで、本明細書に開示される不純物のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、チャーは約0.7未満の水素対炭素比、例えば約0.1未満、約0.2未満、約0.1~約0.2、約0.15~約0.25、約0.2~0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.6、または約0.5~約0.7約などの水素対炭素比を有することができる。
【0109】
ガスは水素および/または炭素を含むことができる。例えば、ガスはH2、CO2、CO、CH4、C2H4、C3H6、および/または他の炭化水素ガスを含むことができる。ガスには硫黄も含まれ得る。場合によっては、これらのガスは、本明細書に記載されているプロセス中に捕捉されるか、そうでなければ含まれるか、または使用されることのうちの少なくとも1つであり得る。いくつかの実施形態では、方法100の任意のガス状または揮発性副産物の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、95%、または99%を捕捉することができる。特定のプロセスステップ中に捕捉されたガスは、本明細書に記載されているように、後続のプロセスステップで使用することができる。場合によっては、本明細書に記載のプロセスによって生成され、その一部として捕捉されたガスを、これらの同じまたは後続のプロセスで利用して、前記プロセスの効率および/または費用効果を高めることができる。場合によっては、副産物の捕捉および再利用は、方法100の効率を改善し、および/またはコストを下げることができる。
【0110】
一実施形態において、方法100は、捕捉された水素ガス(H2)を捕捉された二酸化炭素(CO2)(すなわち、合成ガス)と反応させてメタンまたは別の適切なガスまたは液体を形成し、それにより方法100のカーボンフットプリントを低減することができる。捕捉された水素および二酸化炭素ガスは、化学的に(例えば、触媒的に)処理されて、高分子化合物(例えば、エチレンおよび/またはプロピレンなどのオレフィン)を形成し、その後、重合して高分子量樹脂化合物になる。一例では、水素を二酸化炭素と反応させることにより、方法100によって生成される二酸化炭素の量を、約1%~約99%減少、例えば約1%~約25%、約20%~約40%、または約25%~約50%減少させることができる。
【0111】
一実施形態では、ピッチおよび副産物はすべてブロック140で生成される。一実施形態では、ピッチの少なくとも1つおよび副産物の少なくとも1つは、別々の時間または互いに別々の処理ステップで生成することができる。一実施形態では、ピッチおよび少なくとも1つの副産物は、プロセス100によって、特にブロック140において一緒に生成される。そのような実施形態では、方法100は、個々の各生成物の行われることがあるさらなる処理の前にこれらの生成物を分離することを含むことができる。たとえば、ピッチと石炭の液体抽出物は、ブロック130の結果として同時に生成され、ピッチまたは石炭液化抽出物のいずれかのさらなる処理の前に、現在知られている、または将来開発される可能性のあるプロセスによって、互いに分離することが必要とされ得る。
【0112】
一実施形態では、ブロック140において生成されたピッチは、ブロック150の前において、さらなる処理または改良にかけられない。別の一実施形態では、ブロック140の間に生成されたピッチは、ブロック150の前において、ピッチの化学組成を変えるための1つ以上の処理を受けることができる。一例では、ブロック150の前にピッチに残っている望ましくない不純物は、ブロック150の前にそこから除去することができる。そのような例では、望ましくない不純物は、ブロック120およびブロック130中に除去できなかった不純物、または炭素繊維中に存在するように選択される少なくとも1つの過剰分を含み得る。一例では、ピッチは、ピッチの水素対炭素比を増加または減少させるために1つ以上のプロセスに供され得る。一例では、ピッチを1つまたは複数のプロセスにかけて、メソフェーズピッチを生成するか、さもなければピッチの組成または特性を変えることができる。一実施形態では、1つまたは複数の副産物を使用して、ブロック150において炭素繊維を形成することもできる。そのような実施形態では、1つまたは複数の副産物は、本明細書に開示されるプロセスまたは他の任意の適切なプロセスのいずれかを使用して、ブロック150の前にその化学組成を変えるためのさらなる処理または精製に供してもしなくてもよい。
【0113】
ブロック150では、少なくともブロック140で生成されたピッチを処理施設において処理して、本明細書で開示される炭素繊維の少なくとも1つを生成することができる。一実施形態では、ピッチを処理して、ピッチを紡糸して炭素繊維を形成することにより、本明細書に開示される少なくとも1つの炭素繊維を生成することができる。場合によっては、ピッチを紡糸して炭素繊維を形成することは、ピッチを炭素繊維または炭素フィラメントに変換するために、当技術分野で既知の、または将来開発される任意のプロセスにより行うことができる。場合によっては、ピッチは、スピニングプロセス中に約343℃(約650°F)などの所望の温度に加熱することができる。場合によっては、炭素繊維を形成することは、ピッチを延伸、紡糸、および加熱して炭素繊維を生成することを含むことができる。場合によっては、炭素繊維を形成することは、ピッチのフィラメントを紡ぐこと、ピッチを空気中で第1の温度に加熱し、次いで不活性雰囲気中で紡糸ピッチを第2のより高い温度に加熱して炭素フィラメントを形成することを含み得る。場合によっては、ピッチを紡糸するのを助けるために可塑剤をピッチに添加することができるが、他のいくつかの実施形態では、ピッチを紡糸する前に可塑剤を添加しないようにすることができる。いくつかの実施形態では、炭素繊維を形成することは、ピッチを処理して、本明細書に記載される任意の先進炭素材料の1つまたは複数を生成することを含むことができる。
【0114】
一実施形態では、ブロック150は、ピッチがすでに処理されて炭素繊維を形成している場合、ピッチまたは炭素繊維に1つまたは複数の添加剤を加えることを含むことができる。
【0115】
ブロック150において形成される炭素繊維は、その中に1つ以上の不純物を含み得る。炭素繊維の特性は、少なくとも部分的には、炭素繊維中に存在する1つ以上の不純物に依存する可能性がある。言い換えれば、炭素繊維の特性は、石炭からの不純物の添加、制御、または除去のうちの少なくとも1つによって調整可能であり得る。例えば、1つ以上の不純物の存在に依存し得る炭素繊維の特性は、弾性(ヤング率)、引張強度、破壊メカニズムなどのうちの少なくとも1つを含み得る。一実施形態では、1つまたは複数の不純物は、原炭に最初に存在していた少なくとも1つの不純物を含むことができ、それにより、少なくとも1つの不純物を原炭、選鉱石炭、ピッチ、または副産物のうちの少なくとも1つに加える必要がなくなる。一実施形態では、1つまたは複数の不純物は、原炭、選鉱された石炭、ピッチ、または副産物のうちの少なくとも1つに添加された少なくとも1つの不純物を含むことができる。
【0116】
追加の先進炭素材料が炭素繊維を含むことができるいくつかの実施形態では、炭素繊維は、従来のプロセスによって形成される炭素繊維(例えば、ポリアクリロニトリル(「PAN」)を紡糸することによって生成される炭素繊維)と比較して、異なるまたは改善された物理的特性を有することができる。異なるまたは改善された物理的特性は、原炭に存在し、炭素繊維に残っている不純物によって引き起こされる可能性がある。幾つかの場合においては、本明細書に記載されているプロセスによって製造された炭素繊維は、PANから製造された炭素繊維よりも繊維軸に沿って高度の分子配向を有することができる。幾つかの場合においては、本明細書に記載されているプロセスによって製造された炭素繊維は、PANから製造された炭素繊維よりも高い弾性率を有することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載されるプロセスによって生成される炭素繊維は、PANから生成される炭素繊維よりも高い熱および電気伝導率を有することができる。しかし、いくつかの実施形態では、追加の先進炭素材料はPANを含むことができ、したがって、炭素繊維は、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から形成されるPANから生成することができる。
【0117】
一実施形態では、炭素繊維は、本明細書に開示されている濃度のいずれかで、本明細書に開示されている不純物のいずれかを含むことができる。
【0118】
一実施形態において、樹脂の水素対炭素比は、約0.7~約1.0の範囲、例えば、約0.7~約0.75、約0.725~約0.0775、約0.75~約0.8、約0.0775~約0.085、約0.8~約0.9、約0.85~約0.95、または約0.9~約1.0であり得る。
【0119】
一実施形態では、方法100は、所望の水素対炭素比よりも大きい、例えば約0.2より大きい、約0.3より大きい、約0.4より大きい、約0.5より大きい、約0.6より大きい、または約0.7より大きい、水素対炭素比を示す炭素材料(例えば、樹脂、ピッチなど)をリサイクルすることを含むことができる。たとえば、水素と炭素の比率が高い炭素材料のリサイクルには、原炭、選鉱された石炭、熱分解石炭、ピッチが処理される前のピッチなどに炭素材料を追加することが含まれる。炭素材料をリサイクルすると、方法100において生成される樹脂または他の先進炭素材料の量を増やすことができる。
【0120】
前述のように、選鉱された石炭は、熱分解プロセス以外の直接液化プロセスを使用して処理することができる。直接液化プロセスには、ナフサを製造するための水素化条件下で石炭から樹脂を製造することが含まれ、これは、さらに「スチームクラッキング」(例えば、いわゆる「ナフサクラッカー」に変換)されて、軽質オレフィン生成物(例えば、エチレンおよび/または)プロピレンを生成することができる。直接液化プロセスの1つの例には、キャットレッツバーグ製油所および中国のシェンファ(Shenhua)によって開発され、液体輸送燃料、化学中間体、およびナフサを製造するエッチ-コール(H-Coal)プロセスが含まれる。
【0121】
図2は、一実施形態による、直接液化プロセスを使用して炭素繊維を形成する例示的な方法200のフローチャートである。本明細書で他に開示される場合を除いて、方法200は、方法100と同じまたは実質的に同様である。方法200は、ブロック210で処理設備に石炭を供給することを含むことができる。方法200は、ブロック220で処理設備によって石炭から所望量の水、金属、および/または他の不純物を除去する選鉱することも含むことができる。方法200はさらに、ブロック230で、選鉱された石炭の少なくとも一部を処理施設で直接液化プロセスに供することを含むことができる。さらに、方法200は、ブロック240でピッチを生成することを含むことができる。また、方法200は、ブロック250でピッチを変化させて炭素繊維をつくることを含むことができる。方法200は一例にすぎない。したがって、方法200の1つまたは複数のブロックは、省略、補足、結合、または分割することができる。さらに、方法200は、1つまたは複数の追加のプロセスを含むことができる。
【0122】
ブロック230は、直接液化プロセスを使用して選鉱された石炭を処理することを含む。直接液化プロセスは、選鉱された石炭を所望の温度(例えば、約400℃~約500℃)以上に持続時間加熱し、それによって選鉱された石炭を液体に変換することを含むことができる。場合によっては、選鉱された石炭は、1つまたは複数の触媒の存在下および/または高圧で加熱することができる。場合によっては、選鉱された石炭は、H2を含む雰囲気で加熱することができる。場合によっては、直接液化プロセスは水素化または水素化分解プロセスであり得る。そのような場合、直接液化プロセスは、水素雰囲気で実行することができる。場合によっては、直接液化プロセス中に溶媒を選鉱された石炭に加えることができる。場合によっては、選鉱された石炭は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2017/0313886号に記載されている、アクセンス社(Axens)によって開発された直接液化プロセスに供することができる。
【0123】
前述のように、選鉱された石炭は、熱分解プロセス以外の間接液化プロセスを使用して処理することができる。間接液化プロセスは、いわゆる合成ガス(例えば、水素ガスと一酸化炭素または二酸化炭素の少なくとも1つの混合物)を形成する高温ガス化プロセスで原炭から樹脂を生成することを含む。合成ガスは化学的に処理してモノマー化合物を形成し、その後、重合して高分子量の樹脂化合物にすることができる。例えば、合成ガスは、触媒的に軽質オレフィン(例えば、エチレンおよび/またはプロピレン)に変換することができるメタノールに変換することができる。エチレンおよび/またはプロピレンは炭素繊維に変換することができる。本明細書に開示される間接液化プロセスおよび/または他のプロセスにおいて形成される軽質オレフィンは、他のポリマー化合物の前駆体にもなり得る。例えば、プロピレンのアンモ酸化は、アクリロニトリルモノマーの形成をもたらし、アクリロニトリルモノマーはその後、ポリアクリロニトリルに変換することができる。
【0124】
図3は、一実施形態による、間接液化プロセスを使用して炭素繊維を形成する例示的な方法300のフローチャートである。本明細書で他に開示される場合を除いて、方法300は、方法100および/または方法200と同じまたは実質的に同様である。方法300は、ブロック310で処理設備に石炭を提供することを含むことができる。方法300は、ブロック320において処理施設で石炭から所望量の水、金属、および/または他の不純物を除去するための石炭の選鉱も含むことができる。方法300はさらに、ブロック330において、選鉱された石炭の少なくとも一部を処理施設で間接液化プロセスに供することを含むことができる。さらに、方法300は、合成ガスまたは別のコア由来要素(例えば、チャー、ピッチなど)を生成することを含むことができる。また、方法300は、ブロック350でピッチを変化させて炭素繊維を生成することを含むことができる。方法300は、単なる例である。したがって、方法300の1つまたは複数のブロックは、省略、補足、結合、または分割することができる。さらに、方法300は、1つまたは複数の追加の処理を含むことができる。
【0125】
ブロック330は、間接液化プロセスを使用して選鉱された石炭を処理することを含む。間接液化プロセスは、選鉱された石炭を1つまたは複数のガスに変換し、次に1つまたは複数のガスを1つまたは複数の液体に変換することを含むことができる。1つまたは複数のガスは、合成ガス(例えば、H2ガスとCOガスの混合物)を含むことができるが、これらに限定されない。一例では、間接液化プロセスは、選鉱された石炭を、所望の圧力(例えば、約40バール~約60バール)で所望の持続時間にわたって所望温度(例えば、約1400℃~約1600℃)に加熱することを含み得る。一例では、間接液化プロセス中に形成されたガスは、液体またはアンモニアやメタノールなどの他の材料に変換することができる。間接液化プロセス中に形成されたガスは、所望温度(例えば、約200℃~約350℃)および所望圧力(例えば、約10バール~約40バール)で液体または他の物質に変換することができる。次に、この液体または他の材料をさらに処理して、炭素繊維に形成できる炭化水素、炭素繊維に形成できるポリマー、炭素繊維の他の前駆体、または炭素繊維自体を生成することができる。炭化水素は、オレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレン)、芳香族炭化水素、トルエン、ベンゼン、パラキシレン、または他の炭化水素を含むことができる。特定の例では、ガスは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015/0141726号に記載されているハネウエルUPO(Honeywell UOP)によって開発されたプロセスによってオレフィンに変換することができる。場合によっては、選鉱された石炭は間接液化プロセスにかけられることがある。
【0126】
前述のように、選鉱された石炭は、熱分解プロセスの代わりに膜を使用して処理することができる。膜を使用して石炭を処理する例には、膜を使用してガス化リアクターで石炭から水素を分離することが含まれる。膜は、1つまたは複数の先進炭素系材料(例えば、1つまたは複数のグラフェン系材料)などの特殊セラミック材料を含むことができる。膜は、比較的低温での石炭からの水素の分離および/またはスラリーベースの石炭の処理を容易にすることができ、どちらもコストを削減し、1つまたは複数の樹脂を形成するプロセスの効率を改善することができる。選鉱された石炭を処理するために膜を使用する例は、V.キリアコウ他(V.Kyriakou etal.)の、「石炭蒸気ガス化から水素を生成するためのプロトン性セラミック膜反応器(protonic ceramic membrane reactor for the production of hydrogen from coal steam gasification)」、553 J. Membrane Sci163(2018)、およびフランシス C.アリラガ他(Francis C. Arrillaga、et al)の、「石炭から水素へ(Coal to Hydrogen):直接抽出のための新規な膜反応器(A Novel Membrane Reactor for Direct Extraction)」、GCEPエネルギーワークショップ(GCEP Energy Workshops(2004)に開示されており、それぞれの開示は、この参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0127】
図4は、一実施形態による、1つまたは複数の膜を使用して炭素繊維を形成する例示的な方法400のフローチャートである。本明細書で他に開示される場合を除いて、方法400は、方法100、方法200、および/または方法300と同じまたは実質的に同様である。方法400は、ブロック410において処理設備に石炭を供給することを含むことができる。ブロック420で、処理施設によって石炭を選鉱することも含み、所望量の水、金属、および/または他の不純物を石炭から除去する。方法400はさらに、ブロック430で処理施設において、選鉱された石炭の少なくとも一部を1つ以上の膜で処理することを含み得る。さらに、方法400は、ブロック440においてピッチを生成することを含み得る。また、方法400は、ブロック450で炭素繊維を生成するためにピッチを変化させることを含むことができる。方法400は、単なる例である。したがって、方法400の1つまたは複数のブロックは、省略、補足、結合、または分割することができる。さらに、方法400は、1つまたは複数の追加の処理を含むことができる。
【0128】
ブロック430は、1つ以上の膜の存在下で選鉱された石炭を処理することを含む。場合によっては、これらの膜は、選鉱された石炭から生成物を生じるために、先行された石炭を物理的に分離し、化学的に分離し、または分解する作用の少なくとも1つの役割を果たすことができる。膜の例には、先進炭素ベースの材料が含まれる。一実施形態では、これらの製品は、本明細書に開示される他の液化プロセスによって生成される製品と実質的に同様であり得るが、他の液化プロセスが必要とする可能性がある量の熱または圧力を使用しない場合がある。したがって、選鉱された石炭を1つまたは複数の膜で処理すると、液化プロセスと実質的に同様の生成物を生成することができるが、そうするために必要とするエネルギーは実質的に少なくてよい。一実施形態では、1つまたは複数の膜は、所望の化合物を単離し、かつ/または選鉱された石炭から所望の化合物を生成するために、様々な細孔サイズ、化学特性、物理特性、または電気特性を有することができる。
【0129】
選鉱された石炭は、本明細書に開示される熱分解プロセス、本明細書に開示される直接液化プロセス、本明細書に開示される間接液化プロセス、または膜を使用する本明細書に開示されるプロセス以外の他のプロセスを使用して処理することができる。一例では、選鉱された石炭は、電気アークプロセスを使用して処理することができる。一例において、選鉱石炭は、超臨界溶媒抽出プロセスを使用して処理することができる。選鉱炭を処理するために使用できる超臨界溶媒抽出プロセスの例は、ジョナサンj.コラック(Jonathan J. Kolak)の「石炭サンプルの超臨界流体抽出手順、その後の抽出炭化水素の分析、USGS(2006)」およびイェスン他(Ye Sun et al)の「超臨界二酸化炭素/1-メチル-2-ピロリドン混合溶媒による石炭抽出の評価(Evaluation of Coal Extraction with Supercritical Carbon Dioxide/1-Methyl-2-pyrrolidone Mixed Solvent)に開示されている。
原炭から樹脂およびその他の副産物を形成する方法
【0130】
図5は、一実施形態による、1つまたは複数の樹脂を形成する例示的な方法500のフローチャートである。方法500は、ブロック510で原炭を処理施設に提供し;ブロック520で、処理施設によって原炭を選鉱して、所望量の水、金属、および/または他の不純物を石炭から除去し;ブロック530で、処理施設によって、選鉱された石炭の少なくとも一部を熱分解し;ブロック540でピッチを生成し;ブロック550でピッチの少なくとも一部を変化させて1つまたは複数の樹脂を生成することの1つまたは複数を含むことができる。この1つまたは複数の樹脂は、方法500中に除去されなかった1つ以上の不純物の選択された量を含むことができる。方法500は単なる例である。したがって、方法500の1つまたは複数のブロックは、省略、補足、結合、または分割することができる。さらに、方法500は、例えば石炭から少なくとも1つの副産物(例えば、チャー、1つ以上のガス、または1つ以上の石炭液化抽出物)を生成し、またはピッチを処理して1つ以上の追加の先進炭素材料を生成する、1つ以上の追加の処理を含むことができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、ブロック510で、現在知られているか、将来開発される可能性のある任意の方法によって、原炭を処理施設に提供することができる。たとえば、石炭は一般に、炭層または炭層として知られている天然の層または鉱脈から採掘される。石炭は、露天採掘、地下採掘、またはその他のさまざまな形態で採掘できる。通常、採掘されて他の方法で処理されていない石炭は原炭と呼ばれる。場合によっては、原炭は、ハイウォールマイニングプロセス、ストリップ採掘プロセス、または輪郭採掘プロセスなどの露天採掘プロセスによって採掘できる。場合によっては、原炭は、長壁採掘プロセス、連続採掘プロセス、爆風採掘プロセス、後退採掘プロセス、部屋・柱(room and pillar)の採掘プロセスなどの地下採掘プロセスによって採掘できる。
【0132】
原炭は、処理施設に比較的近い場所から採鉱または抽出することができる。例えば、処理施設は、石炭抽出エリアまたはその近くに配置することができる。しかし、他の場合には、石炭はどこからでも採掘されて処理施設に輸送される。場合によっては、必要に応じて原炭を処理施設に提供して、所望量の先進炭素材料を生産することができる。ただし、他のいくつかのケースでは、未処理の石炭は提供されて処理されるまで処理施設で保管される。
【0133】
ブロック510で提供される石炭は、その内容および特性に基づいてランク付けまたは等級付けすることができる。さまざまな石炭分類スキームが存在するが、ここでは、一般的な変成グレードを使用して、原炭を一般的に説明する。これらの等級は、一般に、本開示の理解を助けるために使用され、樹脂の生成や、本明細書に記載の任意選択的に生成される1つまたは複数の追加の先進炭素材料の生成のために使用できる石炭のタイプに限定することを意図しない。石炭の特定の分類は、本明細書に記載されるプロセスでの使用に好ましい可能性があるが、そのようなプロセスは、ここで述べられた石炭の分類に厳密に限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプロセスによって利用される石炭は、褐炭であり得、約45重量%を超える揮発性含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、石炭は、亜瀝青炭、歴青炭、および/または無煙炭であり得る。いくつかの実施形態では、石炭は、ワイオミング州シェリダン近くのブルック鉱山から抽出された石炭とすることができる。本願発明者は、以下でより詳細に論じるように、ブルック鉱山から抽出された石炭の組成は、特定の機械的、化学的、および/または電気的特性を示す樹脂の形成を促進できる有益な濃度でいくつかの不純物を含むと考えている。場合によっては、本明細書に記載されているプロセスで使用するのに好ましい石炭は、当業者が選択することができる。例えば、好ましい石炭は、1つ以上の破壊的または非破壊的な化学分析技術(例えば、ラマン分光法、エネルギー分散型X線分光法など)または1つ以上の計算技術の少なくとも1つに基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、石炭は約0.7より大きい初期水素対炭素比、例えば0.7~約5.0、約0.7~約0.75、約0.725~約0.0775、約0.75~約0.8、約0.0775~約0.85、約0.8~約0.9、約0.85~約0.95、または約0.9~約1.0の初期水素対炭素比を有し得る。
【0134】
前述のように、原炭は、方法500で使用するためにブロック510で処理施設に提供することができる。処理施設は、必要に応じて使用するために原炭を貯蔵する能力を有することができ、または所望量の樹脂を製造するために必要に応じた原炭を受け取ることができる。当技術分野でよく知られているように、石炭は、トラック、列車、または任意の他の形態の輸送によって提供することができる。さらに、処理施設は石炭採掘サイトに配置することができ、その場合、石炭採掘サイトは処理施設の一部とみることができる。
【0135】
前述のように、原炭はその中に1つ以上の不純物を含み得る。この1つ以上の不純物は、揮発性重金属(例えば、水銀、セレン、ヒ素、およびカドミウム)、アルカリ金属(例えば、ナトリウム金属、カリウム金属)、ヘテロ原子(例えば、硫黄、酸素、およびハロゲン)、シリコン、アルミニウム、チタン、カルシウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、硫黄、ストロンチウム、バリウム、マンガン、リン、アンチモン、ヒ素、バリウム、ベリリウム、ホウ素、臭素、カドミウム、塩素、クロム、コバルト、銅、フッ素、鉛、リチウム、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、セレン、銀、ストロンチウム、タリウム、スズ、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、またはそれらの酸化物を含むことができる。例えば、不純物および原炭の供給源に応じて、本明細書に開示される不純物はいずれも、原炭の0重量%(「wt%」)~約25重量%となり得るものであり、例えば、原炭の約0重量%~約0.001重量%、約0.0005重量%~約0.002重量%、約0.001重量%~約0.003重量%、約0.002重量%~約0.004重量%、約0.003重量%~約0.005重量%、約0.004重量%~約0.006重量%、約0.005重量%~約0.008重量%、約0.007重量%~約0.01重量%、約0.009重量%~約0.02重量%、約0.01重量%~約0.03重量%、約0.02重量%~約0.04重量%、約0.03重量%~約0.05重量%、約0.04重量%~約0.06重量%、約0.05重量%~約0.08重量%、約0.07重量%~約0.1重量%、約0.09重量%~約0.2重量%、約0.1重量%~約0.3重量%、約0.2重量%~約0.4重量%、約0.3重量%~約0.5重量%、約0.4重量%~約0.6重量%、約0.5重量%~約0.8重量%、約0.7重量%~約1重量%、約0.9重量%~約2重量%、約1重量%~約4重量%、約3重量%~約6重量%、約5重量%~約8重量%、約7重量%~約10重量%、約9重量%~約15重量%、または約10重量%~約25重量%となる。
【0136】
実施形態によれば、ブロック520において、原炭は選鉱され、原炭中に存在する少なくとも1つの不純物の少なくとも一部を除去した選鉱された石炭(別名、アップグレードされた石炭)とされる。例えば、原炭を選鉱して、少なくとも1つの水、重金属、揮発性化合物、アルカリ金属、またはヘテロ原子を原炭から除去することにより、選鉱された石炭を生成することができる。一実施形態では、原炭を選鉱して少なくとも1つの不純物のかなりの部分を除去することができる。
【0137】
選鉱プロセスは、原炭を1つ以上の所望の温度に加熱することを含み得る。1つ以上の所望の温度は、約100℃~約500℃の間の範囲とすることができ、例えば、約100℃~約290℃、100℃~約150℃、約125℃~約200℃、または約150℃~約290℃とすることができる。原炭を加熱する温度は、原炭中に存在する少なくとも1つの不純物の少なくとも一部を選択的に除去するように選択することができる。例えば、約100℃~約150℃に加熱して原炭から水分を除去し、約150℃~約290℃に加熱して揮発性金属を除去することができる。いくつかの実施形態では、選鉱プロセスは、原炭を第1の所望の温度に加熱することを含むことができる。原炭を第1の所望の温度に加熱すると、1つまたは複数の第1の不純物を除去することができる。いくつかの実施形態では、次に、選鉱は、原炭を第2のより高い所望の温度に加熱することを含むことができる。原炭を第2の所望の温度に加熱すると、1つまたは複数の第2の不純物を除去することができる。
【0138】
選鉱プロセスは、原炭を所望の期間、所望の温度に加熱することを含むことができる。所望の持続時間は、約1秒~約1分、約30秒~約30分、約1分~約1時間、約30分~約3時間、1時間~約5時間、約3時間~約10時間、約7時間~約18時間、約12時間~約1日、または約18時間~約3日など約1秒~数日の範囲とすることができる。典型的には、原炭が所望の温度に加熱される持続時間を増加させることは、原炭から除去される1つ以上の不純物の量を増加させる可能性がある。しかしながら、原炭は最大持続時間を示す可能性があり、最大持続時間よりも長い時間にわたって原炭を加熱しても、原炭から除去される1つ以上の不純物の量にほとんどまたは全く影響を与えない。場合によっては、選鉱プロセスは、原炭を第1の持続時間の間第1の所望の温度に加熱し、その後、原炭を第2の持続時間の間第2のより高い所望の温度に加熱することを含むことができる。最初と2番目の期間は同じでも異なっていてもよい。
【0139】
一実施形態では、選鉱プロセスは、原炭からの不純物の1つまたは複数の除去を促進し、原炭との酸化または他の反応を防ぐことができるハロゲンガスを含む雰囲気で原炭を加熱するようにすることができる。いくつかの実施形態では、水素対炭素比を増加させることができる水素を含む雰囲気中で原炭を加熱することにより、石炭を選鉱することができる。そのような実施形態では、水素は、外部水素源から、または方法500の別の段階で収集された水素から提供することができる。いくつかの実施形態では実質的に水素がない雰囲気で原炭を加熱して選鉱することができる。そのような実質的に水素を含まない雰囲気は、水素対炭素比を減少させることができる。
【0140】
いくつかの他の実施形態では、石炭は、1つ以上の触媒化合物の存在下で石炭を所望の温度に加熱することにより先行することができる。いくつかの場合では、例えば触媒の存在下で石炭を熱分解して選鉱することができる。いくつかの実施形態において、大気圧または大気圧近く(例えば、0.8~約1.2気圧)で選鉱することができるが、より高い圧力またはより低い圧力で選鉱することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、選鉱は、原炭をライトコール(WRITECoal)選鉱プロセスに供するようにすることができる。ライトコール選鉱プロセスについては、米国特許第4,536,480号に記載されている。米国特許第9,181,509号の開示は、その全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。場合によっては、エルピアミナ(LP Amina)によって開発およびライセンス供与され、たとえば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2017/0198221号に記載されているように、石炭はベネプラス(BenePlus)システムによって選鉱することができる。
【0142】
選鉱された石炭は、水銀、カドミウム、他の重金属、水、本明細書に開示された他の不純物のいずれか、または原炭中に存在する可能性のある他の不純物の少なくとも1つの著しく減少した量((例えば、少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%)を含むことができる。選鉱された石炭に残る不純物の量は、原炭が加熱された温度、原炭が加熱された時間、原炭が選鉱プロセス中にさらされた雰囲気、触媒の存在などによる。例えば、石炭を選鉱することにより、石炭中の水銀の量を少なくとも約70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、または92重量%以上削減することができる。場合によっては、石炭を選鉱することにより、石炭の水または水分含有量を約5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、または1.5重量%以下まで減少することができる。場合によっては、石炭を選鉱することにより、水素、硫黄、酸素、ヒ素、セレン、カドミウム、または揮発性物質の1つ以上を石炭から除去できる。石炭中のこれらの元素の1つ以上の量を約25重量%~約90重量%だけ減少することができる。
【0143】
しかしながら、前述のように、選鉱プロセスに供された後、選鉱された石炭中に所望量の1つ以上の不純物が残ることが望ましい場合がある。例えば、選鉱プロセスは、所定量の水銀、カドミウム、セレン、アルカリ金属、異種元素、および/または別の元素が処理後に選鉱された石炭に選択的に残ることができるように、所望量の不純物を除去できる。場合によっては、選鉱された石炭に残存する可能性のある所望の量の不純物は、その後の樹脂、または任意選択で1つまたは複数の追加の先進炭素材料の形成に役立つ可能性がある。場合によっては、選鉱された石炭に残ることができる不純物の所望量を、樹脂、および任意選択で1つまたは複数の先進炭素材料に組み込むことができる。例えば、先進炭素材料が合成グラフェンを含む場合、望ましい量のカドミウムが選鉱された石炭に残り、それによって合成グラフェンに組み込まれ、それによってその電気的、機械的、または化学的特性を改善するようにすることができる。
【0144】
一実施形態において、選鉱プロセスは、ブロック520の後(ただしブロック530の前)の選鉱された石炭が、本明細書に開示される不純物の少なくともいくつかを、本明細書に開示される任意の濃度で保持するようにすることができる。
【0145】
一実施形態では、選鉱プロセスは、石炭の水素対炭素比を減少させるように構成することができる。例えば、選鉱プロセスの後、選鉱された石炭の水素対炭素比が約0.8未満、例えば約0.6~約0.7、約0.65~約0.75、または約0.7~約0.8の範囲となるようにすることができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、ブロック520での石炭の選鉱は、後の処理ステップで捕捉および使用することができる1つまたは複数の副産物を生成することができ、この副産物は方法500でさらに処理または使用するようにすることができる。例えば、選鉱では、原炭からガスまたは石炭液化抽出物を生成または分離することができる。これらのガスおよび/または石炭液化抽出物は、処理中に捕捉または分離することができる。例えば、ブロック520で石炭を選鉱することは、H2、CO2、CO、CH4、C2H4、C3H6または他の炭化水素ガスの少なくとも1つを生成でき、これらは捕捉され、その後ブロック530または他のプロセスステップで利用できる。場合によっては、石炭を選鉱することにより、その後の使用または処理のために捕獲できる石炭液化抽出物(たとえば、トルエンまたはベンゼン)が得られる可能性がある。場合によっては、ブロック520での選鉱プロセスによって石炭から除去された不純物は、その後の使用のために捕捉することができる。例えば、選鉱プロセスによって石炭から除去された水は収集され、後続のプロセスステップで利用するようにすることができる。いくつかの実施形態では、石炭を選鉱することにより、灰またはチャーとして知られる固体材料を生成することもできる。場合によっては、このチャーをさらに処理して活性炭を形成することができる。
【0147】
選鉱された石炭は、ブロック530で処理施設によって処理することができる。いくつかの実施形態では、選鉱された石炭の処理は、選鉱された石炭を熱分解プロセス(例えば、高温熱分解プロセスまたは穏やかな温度の熱分解プロセス)などの液体抽出プロセスに供するができる。(
図2に関してより詳細に述べられた)直接液化プロセス、(
図3に関してより詳細に述べられた)間接液化プロセス、(例えば、
図4に関してより詳細に述べられた)膜の使用、電気アークプロセス、超臨界溶媒抽出プロセス、または電磁加熱プロセスなどの熱分解プロセスの代わりに、またはそれと組み合わせて、他の液化プロセスを使用できることに留意されたい。液体抽出プロセスは、選鉱された石炭をピッチ、1つ以上のガス、1つ以上の石炭液化抽出物、またはチャーの少なくとも1つに変換できる。
【0148】
一実施形態では、ブロック530の液体抽出プロセスは、処理施設による選鉱された石炭を熱分解することを含むことができる。選鉱された石炭を熱分解して1つまたは複数の樹脂を形成することは、選鉱された石炭に加えられる圧力を上げるかまたは上げずに、選鉱された石炭を所望時間にわたって所望温度に加熱することを含み得る。高温では、選鉱された石炭内の一部の有機構造が分解し始め、低分子量の熱分解フラグメントが形成される。低分子量の熱分解フラグメントの一部は、軽質ガス(水素、メタン、二酸化炭素など)として選鉱された石炭から逃れることができる。これらの軽質ガスは、以下でより詳細に論じられるように、捕捉および/または再利用することができる。しかしながら、より低分子量の熱分解フラグメントのいくつかは、再結合または解重合して、小さな環の芳香族構造(例えば、単環の芳香族構造)を形成するようになり得る。小さな環の芳香族構造は、小さな芳香族環構造が一緒に結合してより大きな環の芳香族構造(例えば、多環芳香族炭化水素)を形成する縮合反応を受けるようになり得る。縮合反応の例には、環縮合、環融合、脱水素化、または小環芳香族構造を成長させる他の縮合反応の少なくとも1つが含まれる。より大きい環の芳香族構造は、等方性ピッチ、等方性樹脂、整列した多環芳香族層を含む生成物、液晶構造(例えば、異方性ピッチまたは異方性樹脂)、メソフェーズピッチ、またはメソフェーズ樹脂を含むことができる。
【0149】
一例では、選鉱された石炭を熱分解することは、選鉱された石炭を大気圧プロセスで約1000℃より高い温度に加熱することを含む高温熱分解プロセスを含むことができる。高温熱分解プロセスは、ベンゼン化合物、フェノール化合物、高価な油、または樹脂の形成に有用な他の化合物を形成する可能性がある。一例では、選鉱された石炭を熱分解することは、選鉱された石炭を大気圧で約400℃~約650℃の温度に加熱することを含む穏やかな温度の熱分解プロセスを含むことができる。穏やかな温度の熱分解プロセスは、本明細書に開示される樹脂の形成を促進することができる高温の熱分解プロセスよりも、コークスを形成する可能性が高い。いくつかの場合において、石炭は、高圧(例えば、約1気圧を超える圧力)および/または溶媒の存在下で加熱することができる。例えば、選鉱された石炭は、超臨界状態に保つことができるCO2溶媒の存在下で熱分解することができる。いくつかの例では、選鉱された石炭を(たとえば、外部の水素源から提供された水素または方法500中に収集された水素の)水素雰囲気で熱分解して、選鉱された石炭の水素対炭素比を増やすか、水素を含まない雰囲気で熱分解して選鉱された石炭の水素対炭素比を減少させる。一実施形態では、選鉱された石炭は、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,144,874号に記載されているように、テラパワー(TerraPower)によって開発されたMuSCLシステムによって熱分解することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、熱分解プロセスは、選鉱された石炭を所望の強度で所望時間だけ電磁放射線に曝露することを含むことができる。例えば、ブロック530は、熱分解プロセスの一部として、選鉱された石炭をマイクロ波および/または高周波(RF)放射線に所望時間曝すことを含むことができる。場合によっては、この熱分解プロセスでは、選鉱された石炭の大部分が熱分解温度未満に留まる可能性があるが、石炭の個々の粒子は、約649℃(約1200°F)を超える温度に曝される可能性がある。場合によっては、この熱分解プロセスは、選鉱された石炭を構成する炭素の少なくとも一部のメタン活性化および/またはメチル化も含み得る。いくつかの実施形態では、選鉱された石炭は、Hクエストヴァンガード社によって開発された波液化プロセス(Wave Liquefaction process)によって熱分解することができる。選鉱された石炭を電磁放射線に曝露することによって石炭を処理するプロセスの追加の例は、米国特許第6,512,216号および米国特許出願公開第2017/0080399号に開示されている。そのそれぞれの開示はこの参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0151】
ブロック530は、熱分解された石炭中の1つまたは複数の不純物の選択された量を選択的に維持またはそれを阻止するようにすることができる。例えば、ブロック530の後、ピッチは、本明細書に開示される濃度のいずれかで、本明細書に開示される不純物のいずれかを含み得る。
【0152】
一実施形態では、ブロック530の後、熱分解された水素対炭素比は、約0.1未満、約0.2未満、約0.1~約0.2、約0.15~約0.25、約0.2~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.6、または約0.5~約0.7範囲など、約0.8未満を示す。
【0153】
ブロック540において、ピッチおよび任意選択で1つまたは複数の副産物(例えば、1つまたは複数のガス、少なくとも1つの石炭液化抽出物、またはチャーの少なくとも1つ)は、処理施設によって処理(例えば、熱分解石炭から抽出)される。一実施形態では、ブロック540は、別個のアクションまたはプロセスステップではなく、ブロック520またはブロック530の少なくとも1つの結果を表すものであり得る。一実施形態では、ブロック540は、ブロック520またはブロック530の少なくとも1つと実質的に同時に実行することができる。一実施形態では、ブロック540は、ブロック520またはブロック530の少なくとも1つの後に実行することができる。
【0154】
一実施形態では、ブロック540は、選鉱された石炭に1つまたは複数の添加剤を加えることを含むことができる。例えば、1つ以上の他のガスまたは液体をブロック540中に使用して、1つ以上の添加剤を選鉱された石炭に加えることができる。ブロック540の間に使用できるガスまたは液体の例には、水素含有ガス、天然ガス、CO2、石油生成物、ブロック520またはブロック530の少なくとも1つで生成される1つ以上の材料または化合物、あるいは1つ以上の材料が含まれる。または、先に反復された方法500で生成されるか、または捕捉され得る生成物などがある。
【0155】
前述のように、原炭はその中に1つまたは複数の不純物を含み得るものであり、ブロック520および530は、選鉱または熱分解石炭が少なくともいくつかの不純物を含むように、少なくともいくつかの不純物を除去しないようにすることができる。選鉱または熱分解石炭に1つまたは複数の不純物が存在すると、選鉱または熱分解石炭に1つまたは複数の添加剤を加える必要がなくなり、または選鉱または熱分解石炭に加える添加剤の量を減らすことができる。したがって、選鉱または熱分解された石炭に1つ以上の不純物が存在すると、選鉱または熱分解された石炭に添加される添加剤が非石炭源より少ないので、方法500は、非石炭源から樹脂を形成する方法よりも効率的になる。
【0156】
いくつかの実施形態では、ピッチは、ブロック540で処理設備によって生成することができる。本明細書で使用されるように、ピッチは、コールピッチ、コールタール、またはコールタールピッチとしても知られ、1つまたは複数の当業者によく理解されている典型的な粘弾性のポリマーを指すことができる。いくつかの実施形態では、ブロック540で生成されたピッチは、ステップ530で選鉱された石炭を処理した直接の結果であり得る。ブロック540で生成されたピッチは、1つ以上の高分子量ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ピッチは、約343℃(約650°F)を超える融点を有することができる。一部の実施形態では、ピッチは、一部のピッチ(例えば、樹脂を形成するために使用されないピッチの部分)が可塑剤を必要とせずに炭素繊維紡糸プロセスで使用できるほど十分に高い融点を有し得る。
【0157】
一実施形態では、ピッチは、芳香族炭化水素、例えば多環式芳香族炭化水素を含むことができる。いくつかの例では、ピッチは少なくとも約50重量%の多環式芳香族炭化水素、少なくとも約60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、または99重量%以上の多環式芳香族炭化水素を有するものであり得る。一実施形態では、ピッチは、約0.1重量%未満の灰または他の固体材料、約0.05重量%未満の灰または固体材料、または約0.01重量%未満の灰または固体材料を含むことができる。場合によっては、ピッチは約110℃(約230°F)を超える、約121℃(約250°F)を超える、約149℃(約300°F)を超える、または約110℃~約121℃(約230°F~約250°F)、約116℃~約135℃(約240°F~約275°F)、約121℃~約149℃(約250°F~約300°F)、約135℃~約177℃(約275°F~約350°F)、または約149℃~約204℃(約300°F~約400°F)の引火点を有し得る。場合によっては、ピッチは、約4未満、約3未満、または約2未満、または約1.5未満のAPI重力を持ち得る。いくつかの実施形態では、方法500によって生成されるピッチは、コークスピッチではない。すなわち、いくつかのケースでは、ブロック540で生成されるピッチは、コークスまたはコークスベースの材料から生成されない。いくつかの実施形態では、コークスは方法500中のいかなる時点でも生成されない。
【0158】
いくつかの実施形態では、ピッチは、本明細書に開示されている濃度のいずれかで、本明細書に開示されている不純物のいずれかを含むことができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、ピッチは約0.8未満の水素対炭素比、例えば約0.1未満、約0.2未満、約0.1~約0.2、約0.15~約0.25、約0.2~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.6、または約0.5~約0.7の水素対炭素比を有し得る。
【0160】
一実施形態では、ピッチは、水、1つ以上の非炭素原子(例えば、水銀、セレン、カドミウム、ヒ素、アルカリ金属、酸素、ハロゲン、硫黄または窒素)または石炭灰やチャーなどの物質などの1つ以上の選択された不純物を比較的含まないことがあり得る。例えば、ピッチは、約0.2重量%未満の水、約0.1重量%未満、約0.05重量%、または約0.01重量%未満の水を含み得る。一実施形態では、ピッチは前述した濃度での1つまたは複数の選択された不純物を含むことができる。
【0161】
一実施形態では、方法500は、ブロック540中に1つまたは複数の副産物を生成することも含むことができる。ブロック540において形成できる副産物の例は、本明細書において参照により、その全体が本明細書に組み込まれる他の関連出願に開示されている。例えば、ブロック540中に生成される副産物は、1つ以上のガス、1つ以上の石炭液化抽出物、またはチャーのうちの少なくとも1つを含み得る。ブロック540の代わりに、またはブロック540に加えて、ブロック520またはブロック530の少なくとも1つにおいて1つまたは複数の副産物を生成することもできることに留意されたい。
【0162】
石炭液化抽出物は、常温および常圧またはその付近(約20℃(約68°F)および1気圧)で液体である原炭または選鉱石炭から抽出または生成される任意の材料を指すことができる。1つまたは複数の石炭液化抽出物は、1つまたは複数の液体炭化水素を含むことができる。例えば、石炭液化抽出物は、ベンゼン、トルエン、アルカンまたはパラフィン、アルケン、C2化合物、C3化合物、C4化合物、T化合物、ハロゲン化合物、フェノール、または他の飽和または不飽和炭化水素の1つ以上を含むことができる
【0163】
いくつかの実施形態では、石炭液化抽出物は、本明細書に開示されている濃度のいずれかで、本明細書に開示されている不純物のいずれかを含むことがあり得る。
【0164】
灰としても知られるチャーは、ガス、石炭抽出液、および/またはピッチが原炭から除去された後に残る任意の固体物質を指すことができる。チャーは、ブロック520、ブロック530、またはブロック540の少なくとも1つにおいて生成することができる。一例では、チャーは、固体の高表面積炭素質材料を含むことができる。一例では、チャーは、ブロック540で生成されたピッチの水素対炭素比よりも低い水素対炭素比など、比較的低い水素対炭素比を有することができる。いくつかの場合では、チャーは、約0.05~約0.65の比率水素対炭素を有することができる。一例では、チャーは、本明細書では固有バインダー含浸と呼ぶことができる少なくともいくつかのピッチ材料をさらに含むことができる。場合によっては、チャーのその後の処理の前に、残留ピッチまたは他の気体または液体の材料をチャーから除去することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、チャーは、本明細書に開示されている濃度のいずれかで、本明細書に開示されている不純物のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、チャーは、約0.1未満、約0.2未満、約0.1~約0.2、約0.15~約0.25、約0.2~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.6、または約0.5~約0.7などの範囲など、約0.7未満の水素対炭素比を有し得る。
【0166】
ガスは、水素および/または炭素を含むことができる。例えば、ガスは、H2、CO2、CO、CH4、C2H4、C3H6、および/または他の炭化水素ガスを含み得る。ガスには硫黄も含み得る。場合によっては、これらのガスは、本明細書に記載されているプロセス中に捕捉されるか、そうでなければ含まれるか、または使用されることのうちの少なくとも1つであり得る。いくつかの実施形態では、方法500の任意のガス状または揮発性副産物の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、95%、または99%を捕捉することができる。特定のプロセスステップ中に捕捉されたガスは、本明細書に記載されている後続のプロセスステップで使用することができる。場合によっては、本明細書に記載のプロセスによって生成され、その一部として捕捉されたガスを、これらの同じまたは後続のプロセスで利用して、前記プロセスの効率および/または費用効果を高めることができる。場合によっては、副産物の捕捉および再利用により、方法500の効率を改善し、および/またはコストを下げることができる。
【0167】
一実施形態において、方法500は、捕捉された水素ガス(H2)を捕捉された二酸化炭素(CO2)(すなわち、合成ガス)と反応させてメタンまたは別の適切なガスまたは液体を形成し、それにより方法500のカーボンフットプリントを低減するようにすることができる。捕捉された水素および二酸化炭素ガスは、化学的に(例えば、触媒的に)処理されてモノマー化合物(例えば、エチレンおよび/またはプロピレンなどのオレフィン)を形成し、その後、重合して高分子量樹脂化合物になる。一例では、水素を二酸化炭素と反応させることにより、方法500によって生成される二酸化炭素の量を約1%~約99%、例えば約1%~約25%、約20%~約40%、または約25%~約50%低減することができる。
【0168】
一実施形態では、ピッチおよび副産物はすべてブロック540で生成される。一実施形態では、ピッチの少なくとも1つおよび副産物の少なくとも1つは、別々の時間または互いに別々の処理ステップで生成することができる。一実施形態では、ピッチおよび副産物の少なくとも1つは、プロセス500によって、特にブロック540中に一緒に生成される。そのような実施形態では、方法500は、各個々の生成物の行われ得るさらなる処理の前にこれらの生成物を分離することを含むことができる。例えば、ピッチと石炭液化抽出物は、ブロック530の結果として同時に生成することがあり、ピッチまたは石炭液化抽出物のいずれかのさらなる処理の前に、現在知られているまたは将来開発される可能性のある任意のプロセスによって、互いに分離する必要があり得る。
【0169】
一実施形態では、ブロック540において生成されたピッチは、ブロック550の前においてピッチの化学組成を変えるためのさらなる処理または改良にかけられない。一実施形態では、ブロック540において生成されたピッチは、ブロック550の前にその化学組成を変えることができる1つまたは複数の処理を受けることができる。一例では、ブロック540の後にピッチに残っている望ましくない不純物は、ブロック550の前にそこから除去することができる。そのような例では、望ましくない不純物には、ブロック520およびブロック530の間に除去されるか、または樹脂中に存在するように選択された少なくとも1つの不純物の過剰量が含まれる。一例では、ピッチは、ピッチの水素対炭素比を増加または減少させるために1つ以上のプロセスに供され得る。一例では、ピッチを1つまたは複数のプロセスにかけてメソフェーズピッチを生成するか、さもなければピッチの組成または特性を変えることができる。一実施形態では、1つまたは複数の副生成物を使用して、ブロック550において樹脂を形成することもできる。そのような実施形態では、1つ以上の副産物は、本明細書に開示されるプロセスまたは他の任意の適切なプロセスのいずれかを使用して、ブロック550の前にその化学組成を変えるためにさらなる処理または精製に供されてもされなくてもよい。
【0170】
ブロック550では、少なくともブロック540で生成されたピッチは、処理施設によって処理されて、本明細書で開示される樹脂の少なくとも1つを生成することができる。一実施形態では、ピッチが樹脂を形成するように既に処理されている場合、ブロック550は、ピッチまたは樹脂に1つまたは複数の添加剤を加えることを含むことができる。一実施形態では、ピッチまたは樹脂に添加される添加剤は、1つまたは複数の紫外線活性剤などの1つまたは複数の光活性剤を含むことができる。一実施形態では、ピッチまたは樹脂に添加される添加剤は、1つまたは複数の熱活性剤を含むことができる。一実施形態では、添加剤は、任意の適切な触媒を含むことができる。
【0171】
一実施形態において、ブロック550は、処理施設によって石炭液化抽出物を処理して、本明細書に開示される樹脂の少なくとも1つを形成することを含み得る。
【0172】
ブロック550において形成される樹脂は、ポリウレタン樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、メタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル(例えば、ソヒオアクリロニトリルプロセスによって形成される)、または他の任意の適切な樹脂を含み得る。
【0173】
ブロック550中に形成される樹脂は、その中に1つ以上の不純物を含み得る。樹脂中に存在する不純物は、本明細書に開示されている濃度のいずれかで本明細書に開示されている不純物のいずれかを含み得る。例えば、樹脂中に存在する1つ以上の不純物の濃度は、原炭に存在していた1つ以上の不純物の濃度と実質的に同じ(例えば、±10重量%)か、それより低いか、または高い(例えば、添加物は不純物を含む)むように選択することができる。樹脂の特性は、少なくとも部分的に、樹脂中に存在する1つ以上の不純物に依存し得る。たとえば、1つ以上の樹脂に存在する不純物は、樹脂の弾性(ヤング率)、引張強度、または破壊メカニズムの少なくとも1つに影響を与える可能性がある。一実施形態では、この1つまたは複数の不純物は、原炭中に最初に存在していた少なくとも1つの不純物を含むことができ、それにより、この少なくとも1つの不純物を、原炭、選鉱された石炭、ピッチ、または副産物の少なくとも1つに加える必要性をなくす。一実施形態では、この1つまたは複数の不純物は、原炭、選鉱された石炭、ピッチ、または副産物のうちの少なくとも1つに添加された少なくとも1つの不純物を含むことができる。
【0174】
一実施形態において、樹脂の水素対炭素比は約0.7~約1.0、例えば約0.7~約0.75、約0.725~約0.0775、約0.75~約0.8、約0.0775~0.85、約0.8~約0.9、約0.85~約0.95、または約0.9~約1.0であり得る。
【0175】
一実施形態では、方法500は、約0.2より大きい、約0.3より大きい、約0.4より大きい、約0.5より大きい、約0.6より大きい、または約0.7より大きい所望の水素対炭素比よりも大きい水素対炭素比を示す炭素材料(例えば、樹脂、ピッチなど)をリサイクルすることを含むことができる。たとえば、水素と炭素の比率が高い炭素材料のリサイクルには、原炭、選鉱された石炭、熱分解石炭、ピッチが処理される前のピッチなどにこの炭素材料を追加することを含み得る。炭素材料をリサイクルすると、方法500の間に生成される樹脂または他の先進炭素材料の量を増やすことができる。
【0176】
前述のように、選鉱された石炭は、熱分解プロセス以外の直接液化プロセスを使用して処理することができる。直接液化プロセスは、ナフサを製造するための水素化条件下で石炭から樹脂を製造して、これをさらに「スチームクラッキング」(たとえば、いわゆる「ナフサクラッカー」に変換する)して、軽質オレフィン製品(例えば、エチレン)および/またはプロピレンを製造する。直接液化プロセスの1つの例には、キャットレッツバーグ製油所および中国のシェンファ(Shenhua)によって開発され、液体輸送燃料、化学中間体、およびナフサを製造するエッチ-コール(H-Coal)プロセスが含まれる。
【0177】
図6は、一実施形態による、直接液化プロセスを使用して1つまたは複数の樹脂を形成する例示的な方法600のフローチャートである。ここで別段の開示がある場合を除いて、方法600は、方法500と同じまたは実質的に同じである。方法600は、ブロック610で処理設備に石炭を提供することを含むことができる。方法600は、ブロック620で処理設備によって石炭を選鉱し所望量の水、金属、および/またはその他の不純物を除去することも含むことができる。方法600は、ブロック630において、選鉱された石炭の少なくとも一部を処理施設で直接液化プロセスに供することをさらに含み得る。さらに、方法600はブロック640においてピッチを生成することを含み得る。また、方法600は、ブロック650で1つまたは複数の樹脂を生成するようにピッチを変化させることを含むことができる。方法600は単なる例である。したがって、方法600の1つまたは複数のブロックは、省略、補足、結合、または分割することができる。さらに、方法600は、1つまたは複数の追加のプロセスを含むことができる。
【0178】
ブロック630は、直接液化プロセスを使用して選鉱された石炭を処理することを含む。直接液化プロセスは、選鉱された石炭をある時間にわたって所望温度以上に加熱し、それによって選鉱された石炭を液体に変換することを含むことができる。例えば、所望温度は、約400℃~約500℃であり得る。場合によっては、選鉱された石炭は、1つまたは複数の触媒の存在下および/または高圧(例えば、約10バール~約1000バール)で加熱することができる。場合によっては、選鉱された石炭は、H2を含む雰囲気で加熱することができる。場合によっては、直接液化プロセスは水素化または水素化分解プロセスとすることができる。そのような場合では、直接液化プロセスは水素雰囲気で実行することができる。場合によっては、直接液化プロセス中に溶媒を選鉱された石炭に加えることができる。場合によっては、選鉱された石炭は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2017/0313886号に記載されているように、アクセンス社(Axens)によって開発された直接液化プロセスに供することができる。
【0179】
前述のように、選鉱された石炭は、熱分解プロセス以外の間接液化プロセスを使用して処理することができる。間接液化プロセスは、高温ガス化プロセスで原炭から樹脂を生成して、いわゆる合成ガス(例えば、水素ガスと一酸化炭素または二酸化炭素の少なくとも1つの混合物)を形成することを含む。合成ガスは化学的に処理してモノマー化合物を形成し、その後、重合して高分子量の樹脂化合物にすることができる。例えば、合成ガスは、触媒的に軽質オレフィン(例えば、エチレンおよび/またはプロピレン)に変換することができるメタノールに変換することができる。エチレンおよび/またはプロピレンをさらに重合させて、それぞれポリエチレンおよびポリプロピレン樹脂にすることができる。本明細書に開示される間接液化プロセスおよび/または他のプロセス中に形成される軽質オレフィンは、他のポリマー化合物の前駆体にもなり得る。例えば、プロピレンのアンモ酸化は、アクリロニトリルモノマーの形成をもたらし、その後、ポリアクリロニトリルに変換することができる。
【0180】
図7は、一実施形態による、間接液化プロセスを使用して1つまたは複数の樹脂を形成する例示的な方法700のフローチャートである。本明細書で別の説明がある場合を除き、方法700は、方法500および/または方法600と同じまたは実質的に同様である。方法700は、ブロック710で処理設備に石炭を提供することを含み得る。方法700は、ブロック720で処理施設によって石炭から所望量の水、金属、および/または他の不純物を除去する石炭の選鉱プロセスを含み得る。方法700はさらに、ブロック730で、選鉱された石炭の少なくとも一部を処理施設で間接液化プロセスに供することを含むことができる。さらに、方法700は、ブロック740において、合成ガスまたは別の石炭由来の生成物(例えば、チャー、ピッチなど)を生成することを含み得る。また、方法700は、ブロック750で1つまたは複数の樹脂を生成するためにピッチを変化させることを含むことができる。方法700は単なる例である。したがって、方法700の1つまたは複数のブロックは、省略、補足、結合、または分割することができる。さらに、方法700は、1つまたは複数の追加のプロセスを含むことができる。
【0181】
ブロック730は、間接液化プロセスを使用して選鉱された石炭を処理することを含む。間接液化プロセスは、選鉱された石炭を1つまたは複数のガスに変換し、次にこの1つまたは複数のガスを1つまたは複数の液体に変換することを含むことができる。この1つまたは複数のガスは、合成ガス(例えば、H2ガスとCOガスの混合物)を含むことができるが、これらに限定されない。一例では、間接液化プロセスは、選鉱された石炭を、所望圧力(例えば、約40バール~約60バール)で所望の持続時間にわたって所望温度(例えば、1400℃~約1600℃)に加熱することを含み得る。一例として、間接液化プロセス中に形成されたガスは、アンモニアまたはメタノールなどの液体または他の材料に変換することができる。間接液化プロセス中に形成されたガスは、所望温度(例えば、約200℃~約350℃)と所望圧力(たとえば、約10バール~約40バール)で、液体または他の材料に変換することができる。この液体または他の材料はさらに処理して、樹脂、樹種に形成できるポリマー、樹脂の他の前駆体、または樹脂自体にすることができる炭化水素を生成できる。炭化水素には、オレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレン)、芳香族炭化水素、トルエン、ベンゼン、パラキシレン、または他の炭化水素を含むことができる。特定の例では、ガスは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015/0141726号に記載されているハネウエルUPO(Honeywell UOP)によって開発されたプロセスによってオレフィンに変換することができる。
【0182】
前述のように、選鉱された石炭は、熱分解プロセスの代わりに膜を使用して処理することができる。膜を使用して石炭を処理する例には、膜を使用してガス化リアクターで石炭から水素を分離することが含まれる。膜は、1つまたは複数の先進炭素系材料(例えば、1つまたは複数のグラフェン系材料)などの特殊セラミック材料を含むことができる。膜は、比較的低温での石炭からの水素の分離および/またはスラリーベースの石炭の処理を促進することができ、どちらもコストを削減し、1つまたは複数の樹脂を形成するプロセスの効率を改善することができる。選鉱された石炭を処理するために膜を使用する例は、V.キリアコウ他(V.Kyriakou etal.)の、「石炭蒸気ガス化から水素を生成するためのプロトン性セラミック膜反応器(protonic ceramic membrane reactor for the production of hydrogen from coal steam gasification)」、553 J. Membrane Sci163(2018)、およびフランシス C.アリラガ他(Francis C. Arrillaga、et al)の、「石炭から水素へ(Coal to Hydrogen):直接抽出のための新規な膜反応器(A Novel Membrane Reactor for Direct Extraction)」、GCEPエネルギーワークショップ(GCEP Energy Workshops(2004)に開示されており、それぞれの開示は、この参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0183】
図8は、一実施形態による、1つ以上の膜を使用して1つ以上の樹脂を形成する例示的な方法800のフローチャートである。本明細書に別に述べられている場合を除き、方法800は、方法500、方法600、および/または方法700と同じまたは実質的に同様である。方法800は、ブロック810で処理設備に石炭を提供することを含むことができる。ブロック820で、処理施設によって石炭を選鉱することも含み、所望量の水、金属、および/または他の不純物を石炭から除去する。方法800はさらに、ブロック830の処理施設において、選鉱された石炭の少なくとも一部を1つまたは複数の膜で処理することを含むことができる。さらに、方法800は、ブロック840においてピッチを生成することを含むことができる。また、方法800は、ブロック850で1つまたは複数の樹脂を生成するために方法800において形成された他の炭素系材料を変化させることを含むことができる。方法800は単なる例である。したがって、方法800の1つまたは複数のブロックは、省略、補足、結合、または分割することができる。さらに、方法800は、1つまたは複数の追加のプロセスを含むことができる。
【0184】
ブロック830は、1つ以上の膜の存在下で選鉱された石炭を処理することを含む。いくつかの例では、これらの膜は、選鉱された石炭を物理的に分離するか、化学的に分離するか、または分解してそこから生成物を生成する少なくとも1つの役割を果たすことができる。膜の例には、先進炭素ベースの材料が含まれる。一実施形態では、これらの生成物は、本明細書に開示される他の液化プロセスによって生成される生成物と実質的に同様であり得るが、他の液化プロセスが必要とする可能性がある量の熱または圧力を使用しない場合がある。したがって、選鉱された石炭を1つまたは複数の膜で処理すると、液化プロセスと実質的に同様の生成物を生成することができるが、そうするために必要とするエネルギーは実質的に少なくてよい。一実施形態では、1つまたは複数の膜は、所望の化合物を単離し、かつ/または選鉱された石炭から所望の化合物を生成するために、様々な細孔サイズ、化学特性、物理特性、または電気特性を含むことができる。
【0185】
選鉱された石炭は、本明細書に開示される熱分解プロセス、本明細書に開示される直接液化プロセス、本明細書に開示される間接液化プロセス、または膜を使用する本明細書に開示されるプロセス以外の他のプロセスを使用して処理することができる。一例では、選鉱された石炭は、電気アークプロセスを使用して処理することができる。一例において、選鉱石炭は、超臨界溶媒抽出プロセスを使用して処理することができる。選鉱炭を処理するために使用できる超臨界溶媒抽出プロセスの例は、ジョナサンj.コラック(Jonathan J. Kolak)の「石炭サンプルの超臨界流体抽出手順、その後の抽出炭化水素の分析、USGS(2006)」およびイェスン他(Ye Sun et al)の「超臨界二酸化炭素/1-メチル-2-ピロリドン混合溶媒による石炭抽出の評価(Evaluation of Coal Extraction with Supercritical Carbon Dioxide/1-Methyl-2-pyrrolidone Mixed Solvent)に開示されている。
【0186】
石炭は、その内容および特性に基づいてランク付けまたは等級付けすることができる。さまざまな石炭分類スキームが存在するが、ここでは、一般的な変成グレードを使用して原炭を一般的に説明する。これらの等級は、概ね本開示の理解を助けるために使用されるが、本明細書に記載の炭素繊維、および任意選択的な、1つまたは複数の追加の先進炭素材料を生成するために使用できる石炭のタイプに限定することを意図しない。石炭の特定の分類は、本明細書に記載されるプロセスでの使用に好ましい可能性があるが、そのようなプロセスは、議論された石炭の分類に、それがもしあったとしても、厳密に限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプロセスによって利用される石炭は褐炭とすることができ、約45重量%を超える揮発性含有物を有し得る。いくつかの実施形態では、石炭は、亜瀝青炭、歴青炭、および/または無煙炭とすることができる。いくつかの実施形態では、石炭は、ワイオミング州シェリダン近くのブルック鉱山から抽出された石炭とすることができる。場合によっては、本明細書に記載されているプロセスで使用するのに好ましい石炭は、当業者が選択することができる。いくつかの実施形態によれば、
図9に示されるように、グラフェンまたは別の先進炭素材料は、以下を含む方法またはプロセス900によって石炭から生成され得る。
【0187】
ブロック910において処理施設に石炭を提供する。
【0188】
ブロック920で、処理施設によって石炭を選鉱して所望量の水、金属、および/または他の不純物を石炭から除去する。
【0189】
ブロック930で、処理施設によって選鉱された石炭の少なくとも一部を処理する。
【0190】
ブロック940でピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成する。そして
【0191】
ブロック950で、処理設備によってピッチを処理してグラフェンまたは他の先進炭素材料を生成する。
【0192】
方法900は、処理施設によって単一タイプの先進炭素材料を生成するためのプロセスフローを説明しているが、方法900は、処理施設によって複数のタイプの先進炭素材料を生成するために使用できる。例えば、方法900は、ある量の第1の先進炭素材料を生成するために利用でき、その後、ある量の第2の異なる先進炭素材料を生成するために使用できる。ただし、場合によっては、処理施設は、方法900を利用した並行処理によって、2つ以上の異なるタイプの先進炭素材料を生成できる場合がある。さらに、ピッチ、チャー、および/または石炭液化抽出物を生成することは、別個のブロック940として説明されるが、チャーおよび/または石炭液化抽出物は、ブロック920および/または930の結果として生成され得、それ自体では別個のプロセスステップではないものとすることができる。
【0193】
本明細書で説明するように、原炭は、方法900で使用するためにブロック910で処理設備に提供することができる。処理設備は、必要に応じて使用するための原炭を貯蔵する能力を有するか、または所望量の先進炭素材料を生成するために必要に応じて原炭を受け取ることができる。当技術分野でよく知られているように、石炭は、トラック、列車、または任意の他の形態の輸送によって提供することができる。さらに、処理施設は、石炭採掘サイトに配置することができ、石炭採掘サイトは処理施設の一部と考えることができる。
【0194】
ブロック920において、水、重金属、および/または揮発性化合物などの汚染物質または不純物を原炭から除去するために選鉱され、それによって選鉱またはアップグレードされた石炭を生成することができる。場合によっては、選鉱プロセスは、原炭を第1の持続時間の間所望の温度に加熱することを含むことができる。いくつかの実施形態では、選鉱は、原炭を第2の持続時間の第2のより高い所望の温度に加熱することも含み得る。いくつかの実施形態では、石炭は、ハロゲンガスを含む雰囲気中で加熱することができる。一部の実施形態では、選鉱は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,181,509号に記載されているように、原炭をライトコール(WRITECoal)選鉱プロセスに供することを含むことができる。いくつかの他の実施形態では、1つまたは複数の触媒化合物の存在下で石炭を所望温度に加熱することによって、石炭を選鉱することができる。いくつかの場合では、石炭を選鉱することは、例えば触媒の存在下で石炭を熱分解することを含み得る。場合によっては、エルピアミナ(LP Amina)によって開発およびライセンスされ、たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開番号2017/0198221に記載されているように、石炭はベネプラス(BenePlus)システムによって選鉱することができる。
【0195】
選鉱された石炭は、著しく減少した量の水銀、カドミウム、他の重金属、水、および/または他の不純物を含むことができる。本明細書で使用する場合、不純物は、炭素または水素以外の任意の元素または化合物と考えることができる。例えば、石炭を選鉱することにより、石炭中の水銀の量を少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、または92%以上削減することができる。場合によっては、石炭を選鉱することにより、石炭の水または水分含有量を約5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、または1.5重量%以下に減少することができる。場合によっては、石炭を選鉱することにより、水素、硫黄、酸素、ヒ素、セレン、カドミウム、または揮発性物質の1つ以上を石炭から除去できる。石炭中のこれらの要素の1つ以上の量は、約25%~約90%まで低減することができる。
【0196】
しかしながら、場合によっては、選鉱プロセスに供された後、選鉱された石炭中に所望の量の1つ以上の不純物が残ることが望ましい場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、選鉱プロセスは、所定量のカドミウム、セレン、または別の元素が処理後の選鉱された石炭中に残ることができるように、所望の量の不純物を除去することができる。場合によっては、選鉱後の石炭中に残存する可能性のある所望の量の不純物は、その後の先進炭素材料の形成に有用であり得、および/または先進炭素材料に組み込まれ得る。例えば、先進炭素材料が合成グラフェンを含むいくつかの実施形態では、所望の量のカドミウムが選鉱された石炭に残り、合成グラフェンに組み込まれ、それによってその電気的、機械的、または化学的特性を改善することができる。
【0197】
いくつかの実施形態では、石炭を選鉱することにより、後の処理ステップで捕捉および使用でき、それ自体で価値があるか、またはさらなる処理または方法900での使用に供することができる様々な他の生成物を生成することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、石炭を選鉱することにより、原炭からガスまたは液体を生成または分離することができる。これらのガスおよび/または液体は、処理中に捕捉または分離することができる。例えば、ブロック920で石炭を選鉱することは、H2、CO2、CO、CH4、C2H4、C3H6、および/または他の炭化水素ガスを生成し得、これらはブロック930または他のプロセスステップで捕捉され、その後利用され得る。場合によっては、石炭を選鉱すると、トルエンやベンゼンなどの液体が発生し、その後の使用や処理のために回収できる。場合によっては、ブロック920での選鉱プロセスによって石炭から除去された不純物は、その後の使用のために捕捉することができる。例えば、選鉱プロセスによって石炭から除去された水は捕獲され、後続のプロセスステップで利用され得る。いくつかの実施形態では、石炭を選鉱することにより、灰またはチャーとして知られる固体材料を生成することもできる。場合によっては、このチャーをさらに処理して活性化された活性炭を形成することができる。
【0198】
ブロック930で選鉱された石炭はアップグレードされた石炭とも呼ばれ、処理施設によって処理することができる。いくつかの実施形態では、選鉱された石炭を処理することは、アップグレードされた石炭を熱分解プロセス、直接液化プロセス、間接液化プロセス、または1つ以上の膜を含むプロセスなどの液体抽出プロセスに供することを含み得る。
【0199】
いくつかの実施形態では、ブロック930は、処理施設によって選鉱された石炭を熱分解することを含むことができる。いくつかの実施形態では、選鉱された石炭を熱分解することは、持続時間の間、石炭を所望温度以上で加熱することを含むことができる。場合によっては、石炭は高圧下で溶媒の存在下で加熱できる。例えば、アップグレードされた石炭は、超臨界状態に保持できるCO2溶媒の存在下で熱分解できる。場合によっては、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,144,874号に記載されているテラパワー(TerraPower)によって開発されたMuSCLシステムによって熱分解することができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、熱分解プロセスは、アップグレードされた石炭を所望強度および所望持続時間で電磁放射線に曝露することを含むことができる。たとえば、ブロック930は、熱分解プロセスの一部として、アップグレードされた石炭をマイクロ波および/または高周波(RF)放射線に所望の期間曝すことを含むことができる。場合によっては、この熱分解プロセスにより、アップグレードされた石炭の大部分が熱分解温度未満に留まる可能性があるが、石炭の個々の粒子は約649℃(約1200°F)以上の温度に曝される可能性がある。場合によっては、この熱分解プロセスは、高品質石炭を構成する炭素の少なくとも一部のメタン活性化および/またはメチル化を含むこともでる。一部の実施形態では、アップグレードされた石炭は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2017/0080399号に記載されている、エイチ クエスト ヴァンガード社(H Quest Vanguard、Inc.)によって開発された波液化プロセスによって熱分解することができる。
【0201】
いくつかの実施形態では、ブロック930は、ブロック920のアップグレードされた石炭を液化プロセスに供することを含むことができる。いくつかの実施形態では、液化プロセスは、直接液化プロセスであり得る。いくつかの他の実施形態では、液化プロセスは、間接液化プロセスであり得る。
【0202】
ブロック930が直接液化プロセスを含むいくつかの場合において、アップグレードされた石炭は、持続時間の間、所望温度を超えて加熱することができる。場合によっては、アップグレードされた石炭は、1つまたは複数の触媒の存在下および/または高圧で加熱することができる。場合によっては、高品質の石炭はH2を含む雰囲気で加熱できる。場合によっては、直接液化プロセスは水素化または水素化分解プロセスとすることができる。場合によっては、アップグレードされた石炭は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2017/0313886号に記載されているアクセンス社(Axens)によって開発された直接液化プロセスに供することができる。
【0203】
いくつかの実施形態では、ブロック930は間接液化プロセスを含むことができ、そこではアップグレードされた石炭は、1つまたは複数の液体に変換することができる1つまたは複数のガスに変換することができる。例えば、間接液化プロセスは、アップグレードされた石炭を高圧などの所望圧力で、所望持続時間、所望温度まで加熱することを含むことができる。場合によっては、これにより、アップグレードされた石炭の少なくとも一部が、合成ガス、H2ガスとCOガスの混合物などのガスに変換される。いくつかの例では、合成ガスなどのこれらのガスは、液体または他の材料に変換される。例えば、合成ガスは、アンモニアまたはメタノールに変換することができ、これらは炭化水素を生成するためにさらに処理することができる。場合によっては、ガスを処理して、最終的にエチレンやプロピレンなどのオレフィンを生成できる。場合によっては、ガスを処理して、芳香族炭化水素などの炭化水素を生成することができる。場合によっては、ガスを処理して、トルエン、ベンゼン、パラキシレンなどの炭化水素や、ポリマーや樹脂などのその他の炭化水素を生成できる。場合によっては、ガスは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015/0141726号に記載されているハネウエルUOP(Honeywell UOP)によって開発されたプロセスによってオレフィンに変換することができる。場合によっては、アップグレードされた石炭は間接液化プロセスにかけられることがある。
【0204】
いくつかの実施形態では、ブロック930は、1つまたは複数の膜の存在下で選鉱された石炭を処理することを含むことができる。場合によっては、これらの膜は、選鉱された石炭を物理的および/または化学的に分離および/または分解して、そこから生成物を生成する役割を果たすことができる。場合によっては、これらの製品は、液化プロセスによって作られる生成物と実質的に同じである可能性があるが、液化プロセスが必要とする可能性のある熱または圧力の量を使用しないようにすることができる。したがって、場合によっては、選鉱された石炭を1つ以上の膜で処理すると、液化プロセスと実質的に同様の生成物を作るのに必要なエネルギーを大幅に少なくすることが可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の膜は、望ましい化合物を単離し、かつ/または選鉱された石炭から望ましい化合物を生成するための様々な細孔サイズ、化学特性、物理特性、または電気特性を含むことができる。
【0205】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の添加剤をブロック940で選鉱石炭に加えることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の他のガスまたは液体をブロック940のプロセス中に使用することができる。例えば、水素含有ガスは、石炭液化プロセスに添加または使用することができる。場合によっては、天然ガス、CO2、または石油生成物をブロック930において添加剤として使用できる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の添加剤は、ブロック920および/または930中に生成されるか、またはプロセス900の以前の反復中に生成されるかまたは捕捉されることができる材料または化合物を含むことができる。
【0206】
ブロック940において、ピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化油が、処理施設によって生成される。当業者は、ブロック940が、別個のアクションまたはプロセスステップではなく、ブロック920および940の結果を表すことができることを理解するであろう。ブロック910-950が一緒になって方法900を規定するが、この方法は、本明細書で説明される追加のステップを含むことができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、ピッチは、ブロック940で処理設備によって生成され得る。本明細書で使用する場合、ピッチは、コールピッチ、コールタール、またはコールタールピッチとしても知られ、当業者にはよく理解されているように、1つまたは複数の典型的な粘弾性ポリマーの混合物を指すことができる。いくつかの実施形態では、ブロック940で生成されたピッチは、ステップ930での選鉱された石炭の処理の直接的な結果であり得る。ブロック940で生成されたピッチは、1つまたは複数の高分子量ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ピッチは、約343℃(約650°F)を超える融点を有することができる。いくつかの実施形態では、ピッチは、例えば本明細書に記載されているように、可塑剤を必要とせずにピッチを炭素繊維紡糸プロセスで使用できるのに十分に高い融点を有することができる。
【0208】
いくつかの実施形態では、ピッチは、芳香族炭化水素、例えば多環式芳香族炭化水素を含むことができる。場合によっては、ピッチは少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、または99重量%以上の多環式芳香族炭化水素を含み得る。いくつかの実施形態では、ピッチは、水、硫黄または窒素を含む非炭素原子、または石炭灰またはチャーなどの材料などの不純物を比較的含まない可能性がある。場合によっては、ピッチは、約0.2重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、約0.01重量%の水またはより低い量の水を含む。場合によっては、ピッチは約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、約0.01重量%未満の灰または他の固形物質を含む。場合によっては、ピッチの引火点が約110℃(約230°F)以上、約121℃(約250°F)以上、または約149℃(約300°F)以上であり得る。場合によっては、ピッチは約4未満、約3未満、または約2未満、またはそれ以下のAPI重力を持つことができる。一部の実施形態では、ピッチは、約1:1の水素対炭素(H:C)比を有することができる。いくつかの実施形態では、ピッチは等方性ピッチであり得る。いくつかの実施形態では、方法900によって生成されるピッチはコークスピッチではない。すなわち、場合によっては、ブロック940で生成されたピッチは、コークスまたはコークスベースの材料から生成されない。いくつかの実施形態では、方法900中のどの時点でもコークスは生成されない。
【0209】
いくつかの実施形態では、チャーは、ブロック940で処理施設によって生成され得る。
本明細書で使用されるように、灰としても知られるチャーは、ガス、液体、および/またはピッチが原炭から除去された後に残る任意の固体材料を指すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ブロック920での原炭の選鉱中にチャーを生成することができる。いくつかの実施形態では、チャーは、ブロック930の処理によって生成され得る。一部の実施形態では、ブロック920および930の結果としてチャーを生成することができる。
【0210】
いくつかの実施形態では、チャーは、固体の高表面積炭素質材料を含むことができる。場合によっては、チャーは比較的低いH:C比、例えば、ブロック940で生成されたピッチのH:C比よりも低い可能性がある。場合によっては、チャーは約0.05~約0.65のH:C比となり得る。場合によっては、チャーは、本明細書では固有バインダー含浸と呼ぶことができる少なくともいくつかのピッチ材料をさらに含むことができる。場合によっては、チャーのその後の処理の前に、残留ピッチまたは他の気体または液体の材料をチャーから除去することができる
【0211】
いくつかの実施形態では、ブロック940で生成された任意のチャーは、例えば、活性炭などの先進炭素材料を生成するために、さらなる処理を受けることができる。場合によっては、チャーはこのさらなる処理の一部として、たとえばロータリーキルンで炭化または加熱することができる。場合によっては、例えば、物理的活性化プロセスまたは化学的活性化プロセスによってチャーを活性化することができる。場合によっては、物理的活性化は、チャーをアルゴンおよび/または窒素を含む雰囲気中で加熱すること、またはチャーを酸化雰囲気中で加熱することを含むことができる。場合によっては、化学的活性化は、酸、塩基、または塩などの1つまたは複数の化学物質をチャーに含浸させることを含むことができる。場合によっては、化学的活性化は、含浸チャーを炭化または加熱して活性化することをさらに含むことができる。場合によっては、化学的活性化は物理的活性化よりも低い温度と少ないエネルギーで行うことが可能である。さらに、場合によっては、方法900によって生成された化学副産物は、化学的活性化プロセス中に利用することができる。
【0212】
いくつかの実施形態では、ブロック940で処理設備によって1つまたは複数の液体を生成することができる。これらの液体は、本明細書ではまとめて石炭液化抽出物と呼ばれ、原炭から抽出または生成され、常温または常圧またはその付近(約20℃(約68°F)および1気圧)で液体である任意の材料を指す。例えば、いくつかの実施形態では、ブロック920での原炭の選鉱中に石炭液化抽出物を生成することができる。いくつかの実施形態では、石炭液化抽出物は、ブロック930の処理によって生成することができる。いくつかの実施形態では、石炭液化抽出物は、ブロック920および930の結果として生成され得る。
【0213】
いくつかの実施形態では、ブロック940で、処理設備によって1つまたは複数のガスを生成することができ、後で使用または再利用するために捕捉することができる。いくつかの実施形態では、これらのガスはブロック920での原炭の選鉱中に生成され得る。いくつかの実施形態では、ガスはブロック930の処理によって生成され得る。一部の実施形態では、ブロック920および930の結果としてガスが生成され得る。いくつかの実施形態では、捕捉されたガスは、水素および/または炭素を含むことができる。場合によっては、捕捉されたガスは硫黄を含むことがある。そのようなガスは、例えば、H2、CO2、CO、CH4、C2H4、C3H6、および/または他の炭化水素ガスを含むことができる。本明細書で説明するように、場合によっては、方法900によって生成された捕捉ガス自体を前駆体として使用して、先進炭素材料を形成することができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、石炭液化抽出物は1つまたは複数の液体炭化水素を含むことができる。例えば、石炭液化抽出物は、ベンゼン、トルエン、アルカンまたはパラフィン、アルケン、または他の飽和または不飽和炭化水素の1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、ブロック940で生成された石炭液化抽出物は、例えば特定の液体を精製または単離するため、または他の液体化合物に変換するために、さらなる処理にかけることができる。例えば、1つ以上の石炭液化抽出物をベンゼンおよび/またはパラキシレンに変換するプロセスにかけることができる。いくつかの例では、石炭液化抽出物を処理して、樹脂やポリマーなどの先進炭素材料を生成することができる。場合によっては、石炭液化抽出物を処理して、ポリウレタン樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、メタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂などを形成できる。
【0215】
ピッチ、チャー、ガス、および石炭液化抽出物はすべてブロック940で生成されるものとして説明されているが、いくつかの実施形態では、これらの生成物の1つまたは複数は別の時間または別の処理ステップで他の生成物から生成されるようにすることができる。
いくつかの実施形態では、ピッチ、チャー、および石炭の液体抽出物の1つまたは複数は、1つのプロセスステップによって一緒に生成されることがあり、各個々の生成物のさらなる処理を行う前に分離する必要がある場合がある。例えば、ピッチおよび石炭の石炭液化抽出物は、ブロック930の結果として同時に生成することができ、ピッチまたは石炭液化抽出物のいずれかのさらなる処理の前に、現在知られている、または将来開発される可能性がある任意のプロセスによって、互いに分離する必要があり得る。したがって、方法900は、ブロック950の前に、ピッチ、チャー、および石炭液化抽出物の1つまたは複数を互いに分離するさらなるステップを含むことができる。
【0216】
ブロック950では、ブロック940で生成されたピッチを処理施設によって処理して、本明細書で説明される1つまたは複数の先進炭素材料を生成することができる。いくつかの実施形態では、ブロック940のピッチは、先進炭素材料を形成するために処理される前に、ピッチの化学組成を変えるためのさらなる処理または改良に供されない。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、ピッチは、ブロック950の前にピッチの化学組成を変えることができる1つまたは複数のプロセスにかけることができる。例えば、不純物をブロック950の前にピッチから除去することができる。場合によっては、ピッチを1つまたは複数のプロセスに供して、メソフェーズピッチを生成するか、さもなければピッチの組成または特性を変えることができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、ブロック950は、ピッチを処理して合成グラファイトを形成することを含むことができる。いくつかの場合では、合成グラファイトをさらに処理して合成グラフェンを形成する。例えば、いくつかの実施形態において、ブロック950は、例えば、熱、高圧、および/または1つ以上の触媒への曝露によってピッチを処理して、合成グラファイトを形成することを含み得る。本明細書で使用する場合、合成グラファイトという用語は、前駆体材料から生成された任意のグラファイト材料、例えば、地球で自然に発生しない任意のグラファイト材料を指すために使用される。いくつかの実施形態では、ブロック950は、合成グラファイトを形成するために合成グラフェンを処理または処理することをさらに含むことができる。本明細書で使用される場合、合成グラフェンは、合成グラファイトから生成または誘導されたグラフェン材料を指す。例えば、ブロック950は、合成グラファイトを機械的剥離に供して合成グラフェンを生成することを含み得る。
【0218】
いくつかの実施形態では、方法900は、ブロック910-950を含む方法900の結果として生成され得るガス、液体、または他の揮発性化合物の少なくともいくつかを捕捉することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、方法900の任意のガス状または揮発性副産物の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、95%、または99%を捕捉することができる。場合によっては、これらの捕捉または残留するガス状または揮発性副産物の一部またはすべてを方法900のステップで使用できる。たとえば、CO2ガスは、方法900の1つ以上のステップで生成され、捕捉され、その後、方法900のいずれかのステップで使用される。いくつかの場合では、副産物の捕捉および再利用は、方法900の効率を改善し、および/またはコストを下げることができる。
【0219】
いくつかの実施形態によれば、先進炭素材料は、以下を含む方法またはプロセスによって石炭から生成することができる。
【0220】
石炭を処理施設に提供し;
【0221】
この処理施設によって石炭を選鉱して、所望量の水、金属、揮発性化合物、および他の不純物を石炭から除去し;
【0222】
同処理施設によって、選鉱された石炭の少なくとも一部を処理し;
【0223】
ピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成し;そして
【0224】
ピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物の1つまたは複数を、同処理設備によって処理して1つまたは複数の先進炭素材料を生成する。
【0225】
いくつかの実施形態によれば、
図10に示されるように、先進炭素材料は、以下を含む方法またはプロセス1000によって石炭から生成され得る。
【0226】
ブロック1010において、処理施設に石炭を提供し;
【0227】
ブロック1020で、同処理施設によって石炭を選鉱して所望量の水、金属、および他の不純物を石炭から除去し;
【0228】
ブロック1030で、同処理施設によって、選鉱された石炭の少なくとも一部を熱分解し;
【0229】
ブロック1040でピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成し;そして
【0230】
ブロック1050で、同処理施設によってピッチ、チャー、ガス、および石炭液化抽出物の少なくとも1つを処理して先進炭素材料を生成する。方法1000は、処理施設によって単一のタイプの先進炭素材料を生成するためのプロセスフローを説明しているが、方法1000は、同処理施設によって複数のタイプの先進炭素材料を生成するために使用できる。例えば、方法1000は、ある量の第1の先進炭素材料を生成するために利用でき、その後、ある量の第2の異なる先進炭素材料を生成するために使用できる。しかしながら、場合によっては、この処理施設は、方法1000を利用する並行処理によって2つ以上の異なるタイプの先進炭素材料を生成するようにすることができる。さらに、ピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成することは、独立したブロック1040として説明されるが、ブロック1020および/または1030の結果として生成され得るものであり、それ自体が独立したプロセスステップではない場合がある。
【0231】
いくつかの実施形態によれば、
図11に示されるように、先進炭素材料は、以下を含む方法またはプロセス1100によって石炭から製造することができる。
【0232】
ブロック1110で、処理施設に石炭を提供し;
【0233】
ブロック1120で、同処理施設によって石炭を選鉱して、所望量の水、金属、および他の不純物を石炭から除去し;
【0234】
ブロック1130で、同処理施設によって、選鉱された石炭の少なくとも一部を直接液化プロセスにかけ;
【0235】
ブロック1140でピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成し;そして
【0236】
ブロック1150で、同処理施設によってピッチ、チャー、ガス、および石炭液化抽出物の少なくとも1つを処理して、先進炭素材料を生成する。
【0237】
方法1100は、処理施設によって単一のタイプの先進炭素材料を生成するためのプロセスフローを示しているが、この処理施設によって複数のタイプの先進炭素材料を生成するために使用できる。例えば、方法1100は、ある量の第1の先進炭素材料を生成するために利用でき、その後、ある量の第2の異なる先進炭素材料を生成するために使用できる。しかしながら、いくつかの場合は、この処理施設は、方法1100を利用する並行処理によって2つ以上の異なるタイプの先進炭素材料を生成することができるにすることができる。さらに、ピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成することは、独立のブロック1140として説明されるが、ピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物は、ブロック1120および/または1130の結果として生成されるようにすることができ、それ自体が独立したプロセスステップではない場合がある。いくつかの実施形態によれば、
図3に示されるように。
図12に示されるように、先進炭素材料は、以下を含む方法またはプロセス1200によって石炭から製造することができる。
【0238】
ブロック1210において、処理施設に石炭を提供し;
【0239】
ブロック1220で、同処理施設によって石炭を選鉱して、所望量の水、金属、および他の不純物を石炭から除去し;
【0240】
ブロック1230で、同処理施設によって選鉱された石炭の少なくとも一部を間接液化プロセスにかけ;
【0241】
ブロック1240でピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成し;そして
【0242】
ブロック1250において、同処理施設によってピッチ、チャー、ガス、および石炭液化抽出物の少なくとも1つを処理して、先進炭素材料を生成する。
【0243】
方法1200は、処理施設によって単一タイプの先進炭素材料を生成するためのプロセスフローを説明しているが、この処理施設によって複数のタイプの高度炭素材料を生成することができる。例えば、方法1200は、ある量の第1の先進炭素材料を生成するために利用でき、その後、ある量の第2の異なる先進炭素材料を生成するために使用できる。しかしながら、場合によっては、この処理施設は、方法1200を利用する並行処理によって2つ以上の異なるタイプの先進炭素材料を生成することができるようにすることができる。さらに、ピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成することは、独立のブロック1240として説明されるが、ピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物は、ブロック1220および/または1230の結果として生成され得るものであり、それ自体が独立したプロセスステップではない場合がある。
【0244】
図13は、一実施形態による、石炭から炭素繊維を、および任意選択で1つまたは複数の先進炭素材料を製造する方法1300の例の材料流れ図を示す。本明細書で他に開示されている場合を除いて、方法1300は、
図1~
図12の方法100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、または1200のいずれかと同じまたは実質的に同じである。例えば、方法1300は、
図1~
図12の方法100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、または1200のうちの2つ以上の組み合わせであり得る。ブロック1310では、例えば、ハイウォールマイニングなどの採掘プロセスによって、原炭が処理施設に提供される。原炭は、本明細書に開示されている原炭のいずれかを含むことができる。次に、原炭を選鉱プロセスにかけて、本明細書でブロック1320において所望量の水、金属、揮発性物質、および本明細書で説明した他の不純物を除去する。この選鉱プロセスは、本明細書に開示されている選鉱プロセスのいずれかを含むことができる。場合によっては、選鉱プロセスでは、選鉱された石炭のほかに、チャー(ブロック1342)やガスや石炭液化抽出物(1346)などの副産物が生成されることがある。選鉱された石炭は、ブロック1330において、液体抽出プロセス(例えば、熱分解、直接液化、または間接液化プロセス)に供されて、本明細書に記載されるように、ピッチを生成することができる(ブロック1340)。この場合も、いくつかの場合において、ブロック1340の熱分解または液化プロセスは、チャー(ブロック1342)および石炭液化抽出物およびガス(ブロック1346)などの副産物を生成する可能性がある。いくつかの場合において、チャー1342は、ブロック1360で処理または処理されて、本明細書に記載されるように、追加の先進炭素材料、例えば、活性炭(ブロック1344)を生成することができる。場合によっては、石炭液化抽出物1346をブロック1370で処理して、本明細書で説明するように、炭化水素(例えば、ベンゼンおよびパラキシレン)、炭素繊維、または他の追加の先進炭素材料(ブロック1348)の少なくとも1つを生成することができる。本明細書で説明するように、ブロック1350で、ピッチを処理して炭素繊維を生成することができる(ブロック1380)。一実施形態では、ブロック1380はまた、ピッチを処理して、本明細書で説明するように、炭素繊維に加えて1つまたは複数の追加の先進炭素材料を生成することを含むことができる。
【0245】
いくつかの実施形態では、方法1300は、単一の処理施設で完全に実行することができる。しかしながら、他のいくつかのケースでは、1つ以上のブロックは、異なる処理施設および/または異なる場所で実行され得る。例えば、チャー1342または石炭液化抽出物1346は、ブロック1360および1370を実行することができる第2の場所に輸送することができる。
【0246】
本明細書に記載されているプロセスは、石炭からの炭素ベースの炭素繊維および追加の先進炭素材料の製造に関するが、いくつかの実施形態では、これらのプロセスを利用して、シリコーン炭素繊維などのシリコン製品を製造することができる。例えば、いくつかの実施形態では、シリコンを含む砂または他の原材料を本明細書に記載のプロセスおよび方法で使用して、1つまたは複数のシリコーン炭素繊維を生成することができる。
【0247】
本明細書に記載されているプロセスは、石炭からの炭素ベースの炭素繊維および追加の先進炭素材料の製造に関するが、いくつかの実施形態では、これらのプロセスを利用して、シリコーン炭素繊維などのシリコン製品を製造することができる。例えば、いくつかの実施形態では、砂を含む砂または他の原材料を本明細書に記載のプロセスおよび方法で使用して、1つまたは複数のシリコーン樹脂を生成することができる。
【0248】
いくつかの実施形態によれば、
図14に示されるように、合成グラフェンが、以下を含む方法またはプロセス1400によって石炭から生成され得る:
【0249】
ブロック1410で、処理施設に石炭を提供し;
【0250】
ブロック1420で、同処理施設によって石炭を選鉱して、所望量の水、水銀、カドミウム、セレン、他の重金属、および/または他の不純物を石炭から除去し;
【0251】
ブロック1430で、同処理施設によって選鉱された石炭の少なくとも一部を処理し;
【0252】
ブロック1440でピッチ、チャー、ガス、および/または石炭液化抽出物を生成し;そして
【0253】
ブロック1450で、同処理施設によってピッチ、チャー、ガス、および石炭液化抽出物の少なくとも1つを処理して合成グラファイトを生成し;
【0254】
ブロック1460で、同処理設備によって合成グラファイトを処理して合成グラフェンを生成する。
【0255】
本明細書に記載されるように、所望量の1つ以上の不純物は、ブロック1420で選鉱された石炭中に残り、ブロック1460で生成された合成グラフェンに組み込まれて合成グラフェンの化学的、電気的および/または物理的を調整するようにすることができる。
【0256】
いくつかの実施形態によれば、
図15に示されるように、グラフェンまたは別の先進炭素材料は、ブロック1510で石炭を熱処理すること、および石炭が熱処理から少なくとも部分的に冷却された後に石炭から還元酸化グラフェンを形成することを含む方法またはプロセス1500によって石炭から製造できる。石炭から還元酸化グラフェンを形成するには、ブロック1520で石炭を酸化して石炭酸化物を形成し;ブロック1530で石炭酸化物を遠心分離し;遠心分離した後、ブロック1540で酸化グラフェンを含む石炭酸化物から沈殿物を収集し;ブロック1550で酸化グラフェンを還元して、還元酸化グラフェンを生成する。他の実施形態では、化学蒸着またはカーボンドットの形成など、他の活動を使用して、熱処理された石炭からグラフェンを形成することができる。
【0257】
方法1500は、グラフェンを生成するためのプロセスフローを示しているが、方法1500を使用して2つ以上のタイプの先進炭素材料を生成することができる。例えば、方法1500は、ある量の第1の先進炭素材料を生成するために利用でき、その後、ある量の第2の異なる先進炭素材料を生成するために使用できる。しかしながら、場合によっては、方法1500を利用する並行処理によって2つ以上の異なるタイプの先進炭素材料を生成することができる。さらに、方法1500の様々なステップは、それぞれ複数のステップを含むことができ、方法1500の様々なステップは、それ自体で個別のプロセスステップでなくてもよい。
【0258】
ブロック1510で熱的に処理される石炭は、上述したような原炭、または少なくとも部分的に処理される石炭を含むことができる。生または少なくとも部分的に処理された石炭は、適切なまたは所定のサイズに粉砕された石炭を含むことができる。石炭を熱処理することは、より詳細に上述したように、汚染物質または不純物を除去するために石炭を選鉱することを含むことができる。この開示に従って石炭を熱処理することはまた、その開示は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,403,365号に記載されているいずれの処理をも含むことができる。
【0259】
多くの実施形態では、石炭を熱処理することは、少なくとも約149℃(約300°F)の温度で石炭を熱処理することを含むことができる。より具体的には、いくつかの実施形態では、石炭の熱処理は、石炭を約177℃(約350゜F)を超えない第1の温度に加熱すること、石炭を水銀除去反応器に移送すること、水銀除去反応器内の石炭を少なくとも260℃(500゜F)の第2の温度に加熱すること、石炭を不活性ガスと接触させて、石炭中に存在する水銀の少なくとも一部を除去することを含むことができる。
【0260】
いくつかの実施形態では、石炭を177℃(350°F)を超えない第1の温度に加熱することは、石炭を約121℃~約177℃(約250°F~約350°F)、約135℃~約163℃(約275゜F~約325゜F)、約140℃~約157℃(約285゜F~約315゜F)、約146℃~約152℃(約295゜F~約305゜F)、約145℃~約149℃(約295゜F~約300゜F)、約149℃~約152℃(約300゜F~約305゜F)、約143℃(約290゜F)、約146℃(約295゜F)、約149℃(約300゜F)、約149℃(約301゜F)、約150℃(約302゜F)、約151℃(約303゜F)、約151℃(約304゜F)、約152℃(約305゜F)、約154℃(約310゜F)、約157℃(約315゜F)、約160℃(約320゜F)、約162℃(約325゜F)、約166℃(約330゜F)、約168℃(約335゜F)、約171℃(約340゜F)、174℃(約345゜F)、または約176℃(約350゜F)を超えないように第1の温度に加熱することを含む。石炭が第1の温度に加熱されると、自由水および石炭中の結合水の少なくとも一部が気化され、掃引ガス中に除去される。いくつかの実施形態では、石炭は、水分除去反応器および/または振動流動床システムで加熱することができる。水分除去反応器の乾燥補助装置には、高温ガス発生器、石炭供給装置、およびバルブを含めることができる。
【0261】
石炭を第1の温度に加熱した後、石炭を水銀除去反応器に移すことができ、そこで石炭を少なくとも260℃(500°F)の第2の温度に加熱することができる。いくつかの実施形態では、石炭は、水銀除去反応器内で、約204.4℃~約171.1(約400゜F~約700゜F)、約232℃~約343℃(約450゜F~約650゜F)、約260℃~316℃(約500゜F~約600゜F)、約274℃~約302℃(約525゜F~約575゜F)、279℃~299℃(約535゜F~約570゜F)、282℃~約270℃(約540゜F~約565゜F)、約285℃~293℃(約545゜F~約560゜F)、約288℃~約291℃(約550゜F~約555゜F)、少なくとも約260℃(約500゜F)、少なくとも266℃(約510゜F)、少なくとも271℃(約520゜F)、少なくとも277℃(約530゜F)、少なくとも283℃(約540゜F)、少なくとも約285℃(約545゜F)、少なくとも288℃(約550゜F)、少なくとも約291℃(約555゜F)、約288℃(約550゜F)、約288℃(約551゜F)、289℃(約552゜F)、約289℃(約553゜F)、約290℃(約554゜F)、約291℃(約555゜F)、約291℃(約556゜F)、約292℃(約557゜F)、約292℃(約558゜F)、約293℃(約559゜F)、または293℃(約560゜F)に加熱される。
【0262】
ダウンフロー反応器を使用して、石炭を高温の不活性ガスに曝し、水銀を少なくとも一部および/または1つ以上のドーパントの少なくとも一部を揮発させて除去することができる。例えば、石炭中の水銀の約70%~約80%を揮発させて石炭から除去することができる。場合によっては、他のドーパントまたは不純物、例えばカドミウム、セレン、および/または石炭中に存在する可能性のある炭素以外の任意の他の元素を石炭から除去することができる。石炭は、水銀除去反応器で3番目の温度に冷却することもできる。3番目の温度は、約204℃(約400゜F)未満、約191℃(約375゜F)未満、約177℃(約350゜F)未満、約163℃(約325゜F)未満、約149℃(約300゜F)未満、約135℃(約275゜F)未満、または約121℃(約250゜F)未満である。第3の温度に冷却すると、石炭は、石炭から還元酸化グラフェンを形成する前にサイズを小さくなり得る。
【0263】
上記のように、石炭から還元酸化グラフェンを形成することは、以下を含み得る:ブロック1520で石炭を酸化して石炭酸化物を形成し;ブロック1530で石炭酸化物を遠心分離し;ブロック940で遠心分離した後、石炭酸化物から酸化グラフェンを含む沈殿物を収集し;ブロック950で酸化グラフェンを還元して、還元酸化グラフェンを生成する。ブロック1520において、石炭を酸化して酸化石炭を形成することは、石炭を硫酸、硝酸、または過マンガン酸カリウムの少なくとも1つ、または過酸化水素と混合して酸化石炭を形成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、石炭を硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、または過酸化水素の少なくとも1つと混合して石炭酸化物を形成することは、石炭を硫酸と混合し、次に硝酸を石炭と硫酸の混合物と混合することを含むことができる。
【0264】
いくつかの実施形態では、石炭を硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、または過酸化水素の少なくとも1つと混合して酸化石炭を形成することは、石炭、硫酸、および硝酸の混合物を所定の時間撹拌することを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、石炭、硫酸、および硝酸の混合物は、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、約1時間~約5時間、約2時間~約4時間、約2.5時間~約3.5時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約1時間未満、約2時間未満、約3時間未満、約4時間未満、または約5時間未満の時間撹拌され得る。
【0265】
いくつかの実施形態では、石炭を硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、または過酸化水素の少なくとも1つと混合して、石炭酸化物を形成することは、石炭、硫酸、および硝酸の混合物を攪拌した後、この石炭、硫酸、および硝酸の混合物に過マンガン酸カリウムを混合し、次に石炭、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物を所定の時間撹拌する。いくつかの実施形態では、石炭、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物は、約25℃~約45℃、約30℃~約40℃、約33℃~約37℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、または約45℃に加熱されたホットプレート上で攪拌するようにすることができる。いくつかの実施形態では、石炭、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物は、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、約1時間~約6時間、約3時間~約5時間、約3.5時間~約4.5時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約1時間未満、約2時間未満、約3時間未満、約4時間未満、約5時間未満、または約6時間未満攪拌するようにすることができる。
【0266】
いくつかの実施形態では、石炭を硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、または過酸化水素の少なくとも1つと混合して酸化石炭を形成することは、石炭、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物を水で希釈して溶液を形成することを含むことができる。石炭、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物と水との混合は、混合物:水希釈比が、例えば、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、または約1:8とされる。
【0267】
いくつかの実施形態では、石炭を硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、または過酸化水素のうちの少なくとも1つと混合して酸化石炭を形成することは、希釈した溶液を過酸化水素と混合することを含み得る。過酸化水素は10%の過酸化水素とすることができる。過酸化水素を溶液と混合すると、溶液は黄色または黄緑色に変わる。
【0268】
いくつかの実施形態では、石炭を硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、または過酸化水素の少なくとも1つと混合して酸化石炭を形成することは、過酸化水素と混合された溶液の第1の遠心分離を行うことを含み得る。過酸化水素と混合した溶液は、少なくとも約15分、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約60分、約15分~約45分、約15分、約30分、約45分、または約60分などの所定の時間遠心分離することができる。過酸化水素と混合した溶液は、遠心分離機に依存する可能性がある所定の毎分回転数(RPM)で遠心分離することができる。いくつかの実施形態では、過酸化水素と混合された溶液は、約500RPMで遠心分離される。
【0269】
いくつかの実施形態において、石炭を硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、または過酸化水素の少なくとも1つと混合して酸化石炭を形成することは、第1の遠心分離を行った後、過酸化水素と混合された溶液の上澄みを過酸化水素と混合した溶液の沈殿物から分離することを含み得る。上澄みには石炭酸化物が含まれており、沈殿物は廃棄される。上澄みが沈殿物から分離されたら、上澄みを所定の上澄み:水希釈比で、水で希釈することができる。例えば、上澄みは水で、1:0.5、1:1、1:1.5、1:2、0.5:1、1.5:1、または2:1の希釈率で希釈できる。
【0270】
ブロック1530で、第2の遠心分離において石炭酸化物を遠心分離することができる。遠心分離される石炭酸化物は、上記の水および石炭酸化物の希釈液を含み得る。石炭酸化物と水は、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約25分、少なくとも約30分、少なくとも35分、少なくとも約40分、約10分~約40分、約15分~約25分、約15分、約20分、約25分、または約30分などの所定の時間遠心分離することができる。石炭酸化物および水は、遠心分離機に依存し得る所定のRPMで遠心分離され得る。いくつかの実施形態では、石炭酸化物および水は、上述の過酸化水素と混合された溶液の遠心分離のRPMよりも高いRPMで遠心分離され得る。例えば、石炭酸化物および水は、10,000RPM以上、例えば約12,800RPMなどで遠心分離することができる。
【0271】
ブロック1540において、酸化グラフェンは、石炭酸化物および水を遠心分離した後に沈殿物として収集することができ、遠心分離の上澄みは廃棄物となり得る。場合によっては、ブロック1540は、石炭酸化物が水中にある間に石炭酸化物を超音波処理することを含むことができる。場合によっては、ブロック1540は、沈殿物としてすでに収集されている酸化グラフェンを超音波処理することを含むことができる。
【0272】
ブロック1550では、酸化グラフェンを還元して、還元酸化型グラフェンを形成することができる。酸化グラフェンを還元すると、酸化グラフェンから酸素含有基が除去され、少なくとも部分的にグラフェンの導電率が回復する。いくつかの実施形態では、酸化グラフェンを還元して還元酸化グラフェンを形成することは、少なくとも酸化グラフェンを超音波処理することを含むことができる。水と酸化グラフェンの官能基との間の相互作用は、石炭酸化物層の剥離を促進する。酸化グラフェンは、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、約5分~約15分、約5分、約10分、約15分、または約20分などの所定時間、超音波処理することができる。超音波処理後、酸化グラフェンおよび/または還元酸化グラフェンを分析して、ラマン分光分析を使用して酸化グラフェンおよび/または還元酸化グラフェンの品質を決定することができる。
【0273】
いくつかの実施形態では、酸化グラフェンを還元して還元酸化グラフェンを形成することは、酸化グラフェンを超音波処理した後に標準反応器(par reactor)内で酸化グラフェンを水熱処理することを含むことができる。酸化グラフェンは、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、約1時間~約6時間、約3時間~約5時間、約3.5時間~約4.5時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約1時間未満、約2時間未満、約3時間未満、約4時間未満、約5時間未満、または約6時間未満などの所定の時間、標準反応器で水熱処理することができる。酸化グラフェンは、約100℃~約300℃、約130℃~約230℃、約170℃~約190℃、約175℃~約185℃、少なくとも約100℃、少なくとも約140℃、少なくとも約170℃、少なくとも約180℃、少なくとも約190℃、約170℃、約175℃、約180℃、約185℃、または約190℃などの所定の温度において標準反応器内で水熱処理することができる。酸化グラフェンが標準反応器で還元された後、結果として得られる溶液は、真っ黒なフレークとチャンクで透明になる。真っ黒なフレークとチャンクは還元グラフェンであり、ラマン分光法で確認できる。
【0274】
方法1500の1つまたは複数の実施形態のステップは、
図16A-16Dに示されるラマン分光グラフに示されるように、驚くほど改善されたグラフェンを生成した。
具体的には、
図16Aは、未処理(非熱処理)のモナークシーム石炭(Monarch seam coal)のサンプルのラマン分光グラフである。モナークシーム石炭には、DバンドとGバンドという2つの特徴的なラマン振動モードがある。Dバンド(1350cm
-1)は、欠陥に起因するラマンバンドである。Dバンドは、sp
2ハイブリッドカーボンのリングブリージングモードを表す。アクティブにするためには、リングはグラフェンエッジまたは欠陥に隣接している必要がある。Gバンド(1573cm
-1)は1次ラマンスペクトルであり、sp
2ハイブリッドグラフェン層上の隣接する2つの炭素原子の面内振動に対応する。Gピークは、Γ点の高周波E
2gフォノンに対応する。
【0275】
図16Bは、熱処理されたモナーク石炭のサンプルのラマン分光グラフである。
図16Bに示されるように、熱処理されたモナークシーム石炭はまた、2つの特徴的なラマン振動モード:DバンドおよびGバンドを有する。
図16Cは、
図16Bの熱処理されたモナーク炭のサンプルに対する
図16Aのモナークシーム石炭のサンプルの比較を示すラマン分光グラフである。この比較は、Dバンド(欠陥誘起ラマンモード)の強度が低いため、熱処理された石炭の欠陥が生のモナークシーム石炭よりも少ないことを示している。この強度の違いは、(IG/ID)熱処理>(IG/ID)生として表示される。この比較は、Gバンド(グラファイトモード)が原料石炭サンプルよりも熱処理石炭サンプルでより鋭く対称的であるため、グラファイト化とグラフェン形成が熱処理石炭サンプルで優れていることも示している。したがって、本開示による石炭の熱処理は、グラフェン形成を改善し、石炭中の欠陥を減らす。
【0276】
図16Dは、熱処理されたモナークシーム石炭からのグラフェンのサンプルのラマン分光グラフである。図からわかるように、強度にはDバンド、Gバンド、2Dバンドの3つの鋭いピークが含まれている。これらのピークの鋭さは、例えば、
図16A~16Dのグラフの比較的広いピークおよび全体的な形状と比較して、実質的に純粋なグラフェンの存在を示す。
図16Dは、石炭から首尾よく誘導された実質的に純粋なグラフェンナノプレートレットを示している。
【0277】
方法1500の1つ以上の実施形態のステップはまた、驚くべきことに、石炭からグラフェンを形成するための従来のプロセスと比較して高い収率で酸化グラフェンを生成した。例えば、驚くべきことに、少なくとも約149℃(約300°F)の温度で石炭を熱処理し、次に石炭から還元酸化グラフェンを形成すると、約10重量パーセント~約20重量パーセントの収率で還元酸化グラフェンが得られることが観察された。方法1500の1つまたは複数の実施形態のステップは、石炭の少なくとも約5重量パーセント、石炭の少なくとも約10重量パーセント、石炭の少なくとも約15重量パーセント、石炭の少なくとも約20重量パーセント、石炭の少なくとも約25重量パーセント、石炭の少なくとも約30重量パーセント、石炭の少なくとも約35重量パーセント、石炭の少なくとも約40重量パーセント、少なくとも約45重量パーセントの石炭、少なくとも約50重量パーセントの石炭、約2重量パーセント~約50重量パーセントの石炭、約4重量パーセント~約40重量パーセントの石炭、石炭の8重量パーセントと約30重量パーセント、石炭の約10重量パーセント~約20重量パーセント、石炭の約12重量パーセント~約17重量パーセント、石炭の約5重量パーセント~約10重量パーセント、約10重量パーセント~約15石炭の重量パーセント、石炭の約15重量パーセント~約20重量パーセント、石炭の約20重量パーセント~約25重量パーセント、石炭の約25重量パーセント~約30重量パーセント、約30重量パーセント石炭の重量パーセントと約35重量パーセント、石炭の約35重量パーセントと約40重量パーセントの間、石炭の約40重量パーセントと約45重量パーセントの間、石炭の約45重量パーセントと約50重量パーセント、石炭の約5重量パーセント、石炭の約10重量パーセント、石炭の約12重量パーセント、石炭の約14重量パーセント、石炭の約16重量パーセント、約18重量石炭のパーセント、石炭の約20重量パーセント、石炭の約22重量パーセント、石炭の約24重量パーセント、石炭の約25重量パーセント、石炭の約30重量パーセント、約35重量パーセント石炭、石炭の約40重量パーセント、石炭の約45重量パーセント、または石炭の約50重量パーセントの収率で還元酸化グラフェンを生成することができる。
【0278】
方法1500の1つまたは複数の実施形態のステップはまた、驚くべき有用な濃度のドーパントを有する酸化グラフェンを生成した。還元酸化グラフェンのドーパントには、アンチモン、ヒ素、バリウム、ベリリウム、ホウ素、臭素、カドミウム、塩素、クロム、コバルト、銅、フッ素、鉛、リチウム、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、セレン、銀、ストロンチウム、タリウム、スズ、バナジウム、亜鉛、および/またはジルコニウムの1つ以上を含むことがある。場合によっては、還元酸化グラフェンに存在する1つ以上のドーパントは、点欠陥などの最終的に形成される合成グラフェンに1つ以上のタイプの欠陥を生成する可能性がある。場合によっては、これらの欠陥は、電気的特性など、結果として得られるグラフェンの特性を向上または変化させる可能性がある。したがって、場合によっては、グラフェン中の所望の量の1つまたは複数のドーパントは、点欠陥などの欠陥の所望の量および/または分布のグラフェンをもたらすことができる。酸化グラフェンに存在する1つ以上のドーパントまたは不純物原子は、最大約0.1原子%、最大約0.5原子%、最大約1原子%、最大約2原子%、最大約5原子%、最大約10原子%、または最大約15原子%以上となり得る。いくつかのケースでは、酸化グラフェン中の1つまたは複数のドーパントまたは不純物原子のいずれかの濃度は、たとえば、約0.1原子%~約15原子%、約1原子%~約10原子%、または約2原子%~約5原子%を含み得る。
【0279】
いくつかの実施形態では、方法1500のブロック1510に関してより詳細に説明されるように、還元酸化グラフェン中の1つまたは複数のドーパントの濃度は、石炭を熱処理するステップの間に制御される。いくつかの実施形態では、1つ以上のドーパントは、石炭の熱処理中に除去された蒸気中に収集され、方法1500の1つ以上のステップ中に所定の濃度で少なくとも部分的に石炭または酸化グラフェンに戻されるようにすることができる。
【0280】
グラフェンおよび1つまたは複数のドーパントを含むグラフェン組成物の様々な実施形態も本明細書で開示されている。グラフェン組成物は、方法1500においては、グラフェン、酸化グラフェン、および/または還元酸化グラフェンの1つ以上を含むことができる。グラフェン組成物中の1つ以上のドーパントは、アンチモン、ヒ素、バリウム、ベリリウム、ホウ素、臭素、カドミウム、塩素、クロム、コバルト、銅、フッ素、鉛、リチウム、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、セレン、銀、ストロンチウム、タリウム、スズ、バナジウム、亜鉛、および/またはジルコニウムの少なくとも1つを含み得る。
【0281】
グラフェンに存在する1つ以上のドーパントまたは不純物原子は、最大約0.1原子%、最大約0.5原子%、最大約1原子%、最大約2原子%、最大約5原子%、最大約10原子%、または最大約15原子%以上を含む濃度で存在することができる。いくつかの場合では、最終的に形成される合成グラフェンの1つ以上のドーパントまたは不純物原子のいずれかの濃度は、たとえば、約0.1原子%~約15原子%、約1原子%~約10原子%、または約2原子%と約5原子%となり得る。
【0282】
図17は、本明細書に記載され、いくつかの実施形態による、1つまたは複数の先進炭素材料を生産するための処理施設におけるエネルギーおよび石炭の流れを示す図である。
図17に示され、本明細書に記載されているように、ワイオミング州のブルック鉱山などの鉱山からの原炭を処理して、炭素繊維、およびオプションで建設資材などの1つ以上の追加の先進炭素材料、および/または活性炭を形成することができる。
【0283】
図18は、本明細書に記載の実施形態に従って処理されて、活性炭、グラフェン及び電池や建築および建設材料などで使用される材料などの様々な先進炭素材料を形成するときの、例えばハイウォールマイニングからの原炭の処理の流れを示す図である。図示されているように、いくつかの実施形態によれば、石炭の処理では、処理された石炭自体がさらなる処理にかけられて他の先進炭素材料を形成することができる先進炭素材料を生成するようなものとすることができる。さらに、いくつかの実施形態では、先進炭素材料の生産からの副産物自体をさらなる処理にかけ、本明細書に記載されるような他の先進炭素材料を生産するようにすることができる。
【0284】
図19は、一実施形態による、本明細書に記載されているプロセスによる、様々な先進炭素材料への原炭のプロセスフローを示す図である。
図8はさらに、いくつかの実施形態に従って、本明細書に記載のプロセスに従って製造された先進炭素材料が、自動車グレードのCFRPまたはグラフェンベースのバイオセンサーなどの高価値最終製品の1つまたは複数の構成要素としてどのように利用できるかを示す。
炭素繊維の用途
【0285】
方法100、200、300、400、または1300の少なくとも1つにおいて生成される炭素繊維は様々な用途で使用されるように構成でき、任意選択的に、これらの方法が、1つまたは複数の用途においてこの炭素繊維を使用するようにすることができる。一実施形態では、炭素繊維は、炭素繊維強化複合材で使用されるように構成することができる。例えば、炭素繊維を少なくとも1つのマトリックス材料と組み合わせて、当技術分野で知られている、または将来開発される可能性のある任意のプロセスによって炭素繊維強化複合材を形成することができる。マトリックス材料は、ポリマー(例えば、石炭から作られた樹脂)、金属、またはセラミック材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。
いくつかの場合には、マトリックスは、本明細書に開示されている追加の先進炭素材料のいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、炭素繊維強化ポリマーを所望の構造に形成することができる。いくつかの実施形態では、この追加の先進炭素材料は、本明細書に記載のプロセスによって生成でき、処理施設によって1つ以上の他の材料と組み合わせられて、所望の形状を有する複合材料を生成できる。
【0286】
いくつかの実施形態では、炭素繊維強化複合体は、炭素繊維を含む金属またはコンクリートを含むことができる。いくつかの例では、炭素繊維強化複合材料を3D印刷できる。いくつかの例では、本明細書に記載されているように石炭から製造された炭素繊維または炭素繊維強化複合材は、コンクリートの鉄筋として使用でき、または他の建築材料として使用できる。
【0287】
一実施形態では、本明細書に開示される炭素繊維は、炭素繊維強化複合材の所望の化学的または機械的特性を達成するために、ユーザーが現場で変化させることができる。場合によっては、本明細書に記載のプロセスによって石炭から生成された第1の炭素繊維は、第1の炭素繊維とは異なる所定量の第2の炭素繊維と混合することができる。一例では、第1の炭素繊維および第2の炭素繊維は両方とも石炭から形成されるが、異なる特性を示す(例えば、第1および第2の炭素繊維は異なる不純物を含む)。一例では、第1の炭素繊維は石炭から形成され、第2の炭素繊維は油から形成される。第1および第2の炭素繊維の量は、第1および第2の炭素繊維から形成された炭素繊維強化複合材料の所望の特性に基づいて選択することができる。たとえば、ユーザーがより高いヤング率を望む場合、石炭から生成された第1の炭素繊維を所定量追加して油から形成された第2の炭素繊維のヤング率を上げるようにすることができる。
【0288】
場合によっては、炭素繊維などの先進炭素材料は、活性炭を含み、および/または必要に応じて機能化および調整することができる。場合によっては、本明細書に記載されている先進炭素材料または炭素繊維のいずれかを機能化するか、または使用して機能化製品を形成することができる。例えば、場合によっては、本明細書に記載の方法に従って製造された先進炭素材料を機能化して、水、大気または他の媒体から必要に応じて1つまたは複数の所定の材料、元素、および/または物質を吸着するようにすることができる。場合によっては、本明細書に記載の方法に従って製造された先進炭素材料は、本明細書に記載の処理設備などの石炭処理プラントによって生成された1つまたは複数のタイプの希土類元素を吸着することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載された方法に従って製造された先進炭素材料は、海水から1つ以上の貴重な所定の元素または化合物を吸着することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載された方法に従って製造された先進炭素材料は、周囲大気からCO2を吸着することができる。
樹脂の用途
【0289】
方法500、600、700、800、または1300の少なくとも1つおいて生成された樹脂は、それぞれが炭素および水素を含む複数のモノマー単位と、原炭に含まれていた最初にあった1つ以上の不純物の残りの選択された量とを含む。本明細書で開示される樹脂は、様々な用途で使用されるように構成することができ、任意選択で、本発明に係る方法は、これらの用途の1つまたは複数で樹脂を使用することを含むことができる。一実施形態では、樹脂は、ポリマー部品または製品を製造するように構成することができる。そのような実施形態では、樹脂は、ポリマー部品または製品を製造するために、処理設備によってさらなる処理にかけられることができる。例えば、樹脂を使用して、シート、押出成形、成形プロセスまたは他の適切なプロセスを使用しての三次元構造を作ることができる。
【0290】
一実施形態では、樹脂は、3Dプリンティングプロセスなどによって炭素の3次元(「3D」)デバイスを生成するようにすることができる。3Dプリンティングプロセスには、樹脂をメッシュ、中空オブジェクト、中実オブジェクト、またはその他の製品に成形することが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される3Dプリンティングプロセスによって生成される樹脂は、カーボン3D社(Carbon3D、Inc)によって開発された連続液界面製造(CLIP)プロセスにおいて使用され、処理施設によって多種多様なポリマーオブジェクトを製造することができる。カーボン3D社は、ここに開示されている樹脂を使用してCLIPプロセスによって選択可能な特性を持つ最終製品を提供することができる。したがって、処理施設は、本明細書に記載されるように石炭から直接得られるポリマー部品を印刷できる、カーボン3D社によって開発されたM2プリンターなどの1つまたは複数のCLIPプリンターを含むことができる。たとえば、ここで説明するプロセスによって石炭から製造された樹脂は、個々の患者の解剖学的構造に合わせてカスタマイズされた歯科製品を印刷するために、処理施設においてCLIPプロセスで使用できる。カスタム歯科製品を例示したが、ほとんどすべての形式の3Dオブジェクトは、ここで説明されているプロセスによって作製できる。一実施形態では、3Dプリンティングプロセスで使用される樹脂は、その中に混合された1つまたは複数の添加剤を含むことができる。例えば、樹脂はその中にグラフェンを含むことができる。
【0291】
樹脂を含む3D印刷された製品は、各顧客のニーズに合わせることができる。たとえば、そのような3Dプリント製品は、各顧客のカスタム測定に対応する寸法を持つことができる。一例では、本明細書に記載されたプロセスによって製造された樹脂を使用して3D印刷された製品は、カスタム仕様のヘルメット、パッド、またはスポーツ活動および/または戦闘で使用するための他の防護服を含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザーまたは顧客の1つまたは複数の身体部分をスキャンして、それらの寸法を3D印刷製品のカスタム設計に組み込むことができる。場合によっては、本明細書に記載されているプロセスによって製造された樹脂を使用するカスタム3D印刷製品は、カスタムフィットのホースシューズおよび/またはサドルを含むことができる。
【0292】
一実施形態では、本明細書に開示される樹脂は、最終的な3D印刷製品の所望の化学的または機械的特性を達成するために、ユーザーが現場で修正することができる。例えば、本明細書に記載されているプロセスによって石炭から製造された第1の樹脂は、第1のヤング率などの最終硬化状態で第1の物理的特性を有することができる。ユーザーがこの特性を調整したい場合、ユーザーは、石炭から生成された所定量の第2の樹脂または他の追加の先進炭素材料を第1の樹脂に直接追加できるが、第2の樹脂とその量は、石炭から製造された第1の樹脂の第1の物理的性質への調整の性質に基づき決められる。たとえば、ユーザーがより高いヤング率を望む場合、第1の樹脂のヤング率を上げるように、石炭から生成された所定量の第2の樹脂を追加するように指示できる。場合によっては、この追加は3D印刷されたオブジェクトの望ましい硬化材料特性に基づいて自動的に行われる。
【0293】
実施形態では、3D印刷された物体の材料特性は、UV活性化可能である本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成される2つ以上の樹脂を利用することにより、物体の体積全体にわたって変化させることができるが、この2つ以上の樹脂はそれぞれ硬化されたときに異なる特性を有し、それぞれが異なる波長のUV光によって活性化されるようなものである。例えば、いくつかの実施形態では、第1の剛性などの第1の材料特性を有する石炭から生成された第1の樹脂は、UV光の第1の波長によって活性化することができる。第2の剛性などの第2の異なる材料特性を有する石炭から生成される第2の樹脂は、第2の異なる波長のUV光によって活性化することができる。樹脂は、3Dプリントされている製品を形成するためにUV光で活性化できる。UV光の波長を調整して、製品の材料特性を変化させることができる。例えば、第1の樹脂の材料特性が望まれる製品の部分には、第1の樹脂の活性化波長に対応する波長を有するUV光を使用することができる。次に、波長を第2の樹脂の活性化波長に変更して、印刷物の材料特性が第1の樹脂の特性から第2の樹脂の特性に変わるようにすることができる。
【0294】
一実施形態では、樹脂は、積層造形プロセスで使用されるように構成することができる。一実施形態では、ブロック160中に生成される樹脂は、炭素繊維強化複合材のマトリックスなどの複合材のマトリックスの少なくとも一部を形成するように構成することができる。
グラフェンの用途
【0295】
本明細書に記載される方法およびプロセスによって生成される先進炭素材料または材料類は、多種多様な用途で使用することができる。場合によっては、本明細書に記載されている処理設備によって生成された先進炭素材料は、この先進炭素材料から物体、デバイス、および他の製品を生成するためにさらに処理することができる。他の実施形態では、先進炭素材料は、使用するために他の生産設備に分配することができる。重要なことに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスは、2つ以上のタイプの先進炭素材料を作ることができ、それら先進炭素材料は処理施設で組み合わされてさらなる製品にすることができるということである。
【0296】
場合によっては、グラフェンなどの先進炭素材料を、必要に応じて官能化し調整することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載されている先進炭素材料またはグラフェンの形態のいずれかを使用して、所望の元素または化合物を吸着するか、または官能化製品を形成することができる。例えば、いくつかの場合においては、本明細書に記載の方法に従って製造された先進炭素材料を官能化して、1つまたは複数の所定の材料、元素、および/または物質を、水、大気または他の媒体から必要に応じて吸着することができる。場合によっては、本明細書に記載の方法に従って製造された先進炭素材料は、本明細書に記載の処理設備などの石炭処理プラントによって生成された1つまたは複数のタイプの希土類元素を吸着できる。いくつかの場合において、本明細書に記載された方法に従って製造された先進炭素材料は、海水から1つ以上の貴重な所定の元素または化合物を吸着することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載された方法に従って製造された先進炭素材料は、周囲大気からCO2を吸着することができる。
【0297】
いくつかの場合において、本明細書に記載される方法に従って形成されたグラフェンは、1つ以上の元素または化合物の支持体または基板として使用され得る。場合によっては、これらの元素または化合物を利用して、所望の用途に用いたり、所定の電気的、化学的、および/または物理的特性を持たせたりすることができる。例えば、場合によっては、本明細書に記載の方法に従って形成されたグラフェンを層状に配置して、任意の数の所望の機能を果たすことができる1つまたは複数の酵素の支持体、足場、または基質として機能させることができる。場合によっては、グラフェン支持構造によって支持された酵素は、例えば周囲環境からのCO2を吸着して、メタンなどの二次生成物に変換することができる。
【0298】
場合によっては、本明細書で説明するように、第1の量のピッチを処理して第1の先進炭素材料を生成でき、第2の量のピッチを処理して第2の異なる先進炭素材料を生成できる。場合によっては、第1および第2の先進炭素材料を組み合わせて、新しい材料を形成および/または生成することができる。例えば、第1の先進炭素材料は炭素繊維を含むことができ、第2の先進炭素はポリマーまたは樹脂を含むことができる。次に、第1および第2の先進炭素材料を処理設備によって組み合わせて、当技術分野で既知の、または将来開発できる任意のプロセスによって炭素繊維強化ポリマーを生成することができる。場合によっては、炭素繊維強化ポリマーは所望の構造、例えば、顧客が指定した部品または製品に形成することができる。いくつかの実施形態では、先進炭素材料は、本明細書に記載のプロセスによって生成でき、所望の形状を有する複合材料を生成するために処理設備によって1つ以上の他の材料と組み合わせることができる。例えば、先進炭素材料は、カーボンナノチューブを含むことができる。次に、これらのカーボンナノチューブを、処理施設によって金属化して、カーボンナノチューブ金属マトリックス複合材を生成することができる。場合によっては、カーボンナノチューブ金属マトリックス複合材はバルク材料を含むことができるが、いくつかの他の場合では、カーボンナノチューブ金属マトリックス複合材は所望の形状に形成することができる。場合によっては、カーボンナノチューブ金属マトリックス複合材は、当技術分野で既知の任意のプロセスによって、または将来開発できる任意のプロセスによって、例えば粉末冶金プロセス、電気化学プロセス、溶融プロセスなどによって形成することができる。
【0299】
先進炭素材料が樹脂を含むことができるいくつかの実施形態では、樹脂は、ポリマー部品または製品を製造するために、処理設備によってさらなる処理にかけることができる。いくつかの場合においては、樹脂を3Dプリンティングプロセスで使用して、メッシュ、中空オブジェクト、中実オブジェクト、またはその他の製品などのポリマー構造を形成できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスによって生成された樹脂を、カーボン3D社(Carbon3D、Inc)によって開発された連続液界面製造(CLIP)プロセスを使用して、処理施設によって多種多様なポリマー物体を生成することができる。カーボン3D社は、CLIPプロセスによって選択可能な特性を持つ最終製品を提供するために、いくつかの異なる樹脂を使用している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法およびプロセスを使用して、CLIPプロセスで使用される任意の樹脂、例えば、ポリウレタン樹脂、エステル樹脂、エポキシ樹脂などを製造することができる。したがって、処理施設は、カーボン3D社によって開発されたM2プリンターなどの1つまたは複数のCLIPプリンターを備えることができ、本明細書に記載されるように石炭から直接得られるポリマー部品を印刷することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスによって石炭から製造された先進炭素材料は、個々の患者の解剖学的構造に合わせてカスタマイズされた歯科製品を印刷するために、処理施設によってCLIPプロセスで使用できる。カスタム歯科製品が例としたが、ほとんどすべての形状の3次元オブジェクトは、ここで説明されているプロセスによって作成できる。
【0300】
例えば、先進炭素材料が3D印刷で使用するための1つまたは複数の樹脂を含むいくつかの実施形態では、そのような樹脂を使用して、各顧客のニーズに固有の製品を3D印刷することができる。たとえば、そのような3Dプリント製品は、各顧客のカスタム測定に対応する寸法を持つことができる。いくつかの例では、本明細書に記載されているプロセスによって製造された樹脂を使用して3D印刷された製品は、カスタマイズされたヘルメット、パッド、またはスポーツ活動や戦闘で使用するその他の防護服を含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザーまたは顧客の1つまたは複数の身体部分をスキャンすることができ、それらの寸法を3D印刷製品のカスタム設計に組み込むことができる。場合によっては、本明細書に記載されているプロセスによって製造された樹脂を使用するカスタム3D印刷製品は、カスタムフィットのホースシューズおよび/またはサドルを含むことができる。
【0301】
いくつかの実施形態では、3Dプリンティングプロセスで使用される先進炭素材料樹脂は、最終的な3D印刷製品の所望の化学的または機械的特性を達成するために、ユーザーが現場で修正することができる。例えば、本明細書に記載されるプロセスによって石炭から製造された第1(最初)の樹脂は、第1のヤング率などの最終硬化状態で第1の物理的特性を有することができる。ユーザーがこの特性を調整したい場合は、石炭から生成された所定量の第2の樹脂またはその他の先進炭素材料を第1の樹脂に直接添加することができる。第2の樹脂とその量は、石炭から製造された第1の樹脂の第1の物理的性質への調整による。たとえば、ユーザーがより高いヤング率を望む場合、第1の樹脂のヤング率を上げるために、石炭から生成された所定量の第2の樹脂を追加するように指示できる。場合によっては、この追加は3D印刷されたオブジェクトの望ましい硬化材料特性に基づいて自動的に行われる。
【0302】
いくつかの実施形態では、3D印刷された物体の材料特性は、UV活性化可能である本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成された2つ以上の樹脂を利用することにより、物体の体積全体にわたって変化させることができ、その場合の2つ以上の樹脂のそれぞれは、硬化時に異なる材料特性を持ち、そして、それぞれが異なる波長のUV光によって活性化される。例えば、いくつかの実施形態では、第1の剛性などの第1の材料特性を有する石炭から生成される第1の樹脂は、UV光の第1の波長によって活性化することができる。第2の剛性などの第2の異なる材料特性を有する石炭から生成された第2の樹脂は、第2の異なる波長のUV光によって活性化することができる。樹脂はUVライトによって活性化され、3Dプリントされている製品を形成できる。また、UVライトの波長を調整して、プリントされている製品の材料特性を変化させることができる。例えば、第1の樹脂の材料特性が望まれる製品の部分には、第1の樹脂の活性化波長に対応する波長を有するUV光を使用することができる。次に、波長を第2の樹脂の活性化波長に変化させて、印刷物の材料特性が第1の樹脂の特性から第2の樹脂の特性に変わるようにすることができる。
【0303】
いくつかの実施形態では、グラフェンまたは他の先進炭素材料を、グラフェンまたは官能化グラフェンインクの製造に使用することができる。グラフェンインクは、本開示に従ってグラフェンから生成され、ソース(source)上に印刷されるか、またはチャネルに注がれてグラフェンベースのアレイを生成することができる。
【0304】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプロセスによって生成される第1の先進炭素材料は、第2の異なる先進炭素材料を生成するための後続のプロセスで使用され得る。例えば、第1の先進炭素材料は分子グラフェン膜を含むことができる。この分子グラフェン膜を本明細書に記載のプロセスで使用して、熱分解または液化プロセスによる生成物を化学的に分離して、樹脂を製造することができる。場合によっては、グラフェン膜を介したこの形態の化学分離は、通常使用される他の分離プロセスよりも熱効率が高くなる可能性がある。これらの樹脂は、CLIPプロセスで、たとえばメッシュを印刷するために使用できる。
【0305】
先進炭素材料がグラフェンを含むいくつかの実施形態では、グラフェンは、例えば、グラフェンセンサーを形成するために、処理設備によってさらなる処理に供することができる。いくつかの実施形態では、グラフェンセンサーはグラフェンインクを含むことができる。例えば、グラフェンセンサーは、ドープされたグラフェンを含むエリアまたはポイントへの回路として、ドープされていないグラフェンインクを含むことができる。そのような実施形態では、ドープされたグラフェン領域または点が検出でき、ドープされていないグラフェンインクが信号をコンピューティングデバイスまたはユーザーインターフェースに運ぶことができる。いくつかの実施形態では、グラフェンセンサーは、フレークベースのグラフェンバイオセンサーなどのフレークベースのグラフェンセンサーを含むことができる。そのような実施形態では、いくつかのグラフェンフレークをドープすることができ、回路として機能するいくつかのグラフェンフレークおよび/またはグラフェンインクはドープされない。これらのグラフェンセンサーは、ハンドヘルドデバイスによって病気を検出するための使い捨てチップとして使用できる。グラフェンセンサーは、ライム病やジカウイルスなどの疾患を患者の血液、尿、唾液、またはその他の体液や生体物質から病気を即座に検出できるため、研究室に輸送する血液サンプルを保管する必要がなくなる。さらに、本明細書に記載のプロセスは、例えばCLIPプロセスによって、ハンドヘルドデバイスの本体、および/またはマイクロ流体チャンバなどの消耗品または付属品を印刷形成するために使用することもできる。
【0306】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプロセスによって生成された先進炭素材料は、多種多様な他の用途で使用することができる。例えば、先進炭素材料は、リチウムイオン電池の電極として使用できる炭素発泡体を含むことができる。より具体的には、本明細書に記載されているプロセスによって生成されたグラフェンまたは還元酸化グラフェンは、電池の電極に使用することができる。電池の電極に使用される、本明細書に記載されるプロセスによって生成されるグラフェンまたは還元酸化グラフェンは、本明細書に記載される量のいずれかで、本明細書に記載される1つ以上のドーパントを含み得る。場合によっては、先進炭素材料は、大気中のCO2回収プロセスで使用できる活性炭を含むことができる。場合によっては、大気中のCO2再捕獲プロセスは、処理施設によって実行することができ、捕獲されたCO2は本明細書で説明するプロセスで使用することができる。
【0307】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って形成されたグラフェンなどの先進炭素材料を使用して、ソーラーパネルを製造することができる。場合によっては、これらの太陽電池パネルは、他の従来の方法で製造された太陽電池パネルよりも高い効率を持つことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプロセスに従って形成された先進炭素材料は、エレクトロスピニングプロセスの前駆体として使用することができる。例えば、先進炭素材料を、ミクロンレベルの分解能を有する足場または他の構造をエレクトロスピンするのに使用することができる。場合によっては、エレクトロスピニングで使用される先進炭素材料は、本明細書に記載されているプロセスに従って石炭から生成された生体材料であり得る。いくつかの実施形態では、先進炭素材料を使用して、ゲル、例えば、ヒドロゲルまたはシリコーンゲルなどの医療グレードのゲルを製造することができる。
【0308】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から製造された1つまたは複数の先進炭素材料は、乗用車、トラック、または他の自動車の製造における自動車グレードの材料として使用できる。例えば、炭素繊維、樹脂、および/またはCFRPは、自動車のフレーム、構造部品、ボディパネル、エンジンブロック、および/または他の部品として使用することができる。場合によっては、コンポーネントを3D印刷したり、ユーザーの好みに応じてカスタム設計したりすることができる。
【0309】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成された1つまたは複数の先進炭素材料を使用して、クロマトグラフィーカラム、膜、およびフィルターなどの化学プロセスまたは生物学的プロセスで使用する製品を形成することができる。いくつかの場合において、クロマトグラフィーカラム、膜、および/またはフィルターは、本明細書に記載されるプロセスに従って、石炭から生成される1つ以上の先進炭素材料から3D印刷され得る。場合によっては、クロマトグラフィーカラム、膜、および/またはフィルターを使用して、さまざまな溶液から抗体、細菌、寄生虫、および/または重金属を分離または除去することができる。
【0310】
いくつかの実施形態では、本出願の開示に従って強化グラフェンを生成することができる。強化グラフェンには、グラフェンとナノチューブが含まれる。本明細書に記載される1つ以上のドーパントを有するグラフェンは、別のドーパントを有するナノチューブと化学的に結合することができる。この化学結合は、カーボンナノチューブとグラフェンシートの間に形成でき、グラフェンシートの繰り返し層がグラフェンフィルターを形成できるようにする。本開示によるグラフェンフィルターは、化学リンカーを使用して形成することもできる。たとえば、化学リンカーの両端にある異なるドーパント金属により、化学リンカーは方向性を持ち、グラフェンシート間のスペースを制御できる。グラフェンシートには、化学リンカーとは異なる反応性ドーパントがプレドープされている。
【0311】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成された1つまたは複数の先進炭素材料を使用して、回路基板を形成することができる。例えば、本明細書に記載されているように石炭から製造された炭素発泡体は3D印刷して回路基板を形成することができる。場合によっては、炭素発泡回路基板は、一般的なプリント回路基板よりも優れた電気的および熱的特性を持つことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成される1つまたは複数の先進炭素材料は、合成グラフェンであり得、そして例えば量子ドットの形成およびコンピュータチップにおける様々な電子用途で使用され得る。場合によっては、グラフェンを使用して、病気のバイオマーカーやウイルスなど、生物学的に活性な分子や物質を分離および/または識別できるバイオセンサーを作成することができる。
【0312】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成される1つまたは複数の先進炭素材料は、炭素繊維を含む金属またはコンクリート、グラフェン、または他の先進炭素材料などの複合材料を含むことができる。いくつかの例では、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの1つ以上の先進炭素材料を含む金属を3D印刷することができる。いくつかの例では、本明細書で説明されているように石炭から製造された炭素繊維またはCFRPをコンクリートの鉄筋として使用でき、また他の建設または建築材料として使用することができる。
追加の先進炭素材料
【0313】
前述のように、本明細書に記載の方法およびプロセスを使用して炭素繊維、および任意選択で、石炭から1つまたは複数の追加の先進炭素材料を生成することができる。本明細書で使用される場合、追加の先進炭素材料という用語は、炭素を含む1つまたは複数の非炭素繊維材料を指すことができる。追加の先進炭素材料は、ピッチの少なくとも1つ(例えば、炭素繊維を形成するために使用されないピッチの部分)または本明細書に開示される方法において生成される1つ以上の副産物から形成され得る。一例では、本明細書で開示される方法を利用してある量の炭素繊維を生成し、その後、ある量の少なくとも1つの追加の先進炭素材料を生成することができる。一例では、方法100は、例えば、本明細書に開示される方法を利用する並行処理によって、ある量の炭素繊維およびある量の少なくとも1つの第2の先進炭素材料を同時に生成するために利用できる。いくつかの実施形態では、追加の先進炭素材料は樹脂、ポリマー、または他の炭化水素材料であり得る。
【0314】
一実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される方法において生成されるピッチまたは副産物から樹脂を形成することを含むことができる。たとえば、少なくともピッチから形成された樹脂には、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、メタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、芳香族縮合環構造(多環芳香族炭化水素など)、および他の適切な樹脂が含まれる。一例では、本明細書に開示されるプロセスに従って形成される樹脂は、樹脂前駆体から形成される樹脂を含み得る。樹脂前駆体の例には、C2化合物(例えば、エタン、エチレン、アセチレンなど)、C3化合物(例えば、プロピレン、シクロプロパン、プロペンなど)、C4化合物(例えば、ブタジエン、ブタン、t-ブタノールなど)が含まれる。)、B化合物、T化合物、ハロゲン化合物、フェノール、またはその他の適切な樹脂前駆体を含む。
【0315】
一実施形態では、ピッチを処理し、例えば、ピッチを1つまたは複数の有機化合物(例えば、オレフィン、他の樹脂前駆体、他のポリマー)に形成し、それを重合することにより、ここ開示される樹脂の少なくとも1つを生成することができる。一実施形態では、石炭液化抽出物を処理施設で処理して、本明細書で開示される樹脂の少なくとも1つを形成することができる。一実施形態では、本明細書で開示される樹脂を形成することは、ピッチ、副産物、または樹脂がすでに形成されている場合は樹脂に1つまたは複数の添加剤を加えることを含むことができる。ピッチ、副産物、または樹脂に添加される添加剤は、1つ以上の光活性剤(例えば、1つ以上の紫外線活性剤)または1つ以上の熱活性剤を含むことができる。
【0316】
そのような実施形態では、樹脂は、ポリマー部品または製品を製造するために、処理設備によってさらなる処理を受けることができる。例えば、樹脂を使用して、シート、押出成形、成形プロセスまたは他の適切なプロセスを使用する三次元構造を作ることができる。一実施形態では、樹脂は、3Dプリンティングプロセスなどによって炭素三次元(「3D」)デバイスを作るように構成することができる。3Dプリンティングプロセスには、樹脂をメッシュ、中空オブジェクト、中実オブジェクト、またはその他の製品に成形することが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の3Dプリンティングプロセスによって生成された樹脂は、カーボン3D社(Carbon3D、Inc)によって開発された連続液界面製造(CLIP)プロセスで使用することができる。一実施形態では、3D印刷された物体の材料特性は、全体にわたって変化することができる。一実施形態では、3D印刷された物体の材料特性は、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成された2つ以上の樹脂を利用することにより、物体の体積全体にわたって変化することができ、ここでの2つ以上の樹脂のそれぞれは、硬化および/またはそれぞれが異なる刺激によって活性化さたときに異なる材料特性を有するものである。一実施形態では、樹脂は、積層造形プロセス(additive manufactuing process)で使用されるように構成することができる。
【0317】
一実施形態では、本明細書で開示される方法は、ピッチの少なくとも1つまたは副産物の1つまたは複数を処理して、合成グラファイトを形成することを含むことができる。場合によっては、合成グラファイトをさらに処理して合成グラフェンを形成することができる。例えば、ピッチの少なくとも1つまたは副産物の1つ以上は、熱、高圧、および/または1つ以上の触媒への曝露によって処理されて、合成グラファイトを形成することができる。本明細書で使用する場合、合成グラファイトという用語は、前駆体材料から生成された任意のグラファイト材料(例えば、地球で自然に発生しない任意のグラファイト材料)を指すために使用される。一実施形態では、本明細書に開示される方法は、処理設備によって合成グラファイトを処理してまたは変化させて、合成グラフェンを形成することをさらに含むことができる。本明細書で使用される場合、合成グラフェンは、合成的に形成されたグラファイトから生成または誘導されたグラフェン材料を指す。例えば、合成グラファイトは、機械的剥離に供されて合成グラフェンを生成することができる。本明細書で説明するように、所望の量の1つまたは複数の不純物は、選鉱された石炭に残り、それによって、生成された合成グラフェンに組み込まれて合成グラフェンの化学的、電気的および/または物理的特性を調整する。
【0318】
一実施形態において、本明細書に開示される方法は、方法において生成される任意のチャーをさらに処理して、活性炭などの1つまたは複数の追加の先進炭素材料を生成することを含むことができる。一例では、チャーを処理することは、チャーを(例えば、窯内で)炭化または加熱することを含むことができる。次に、チャーは、物理的活性化プロセスまたは化学的活性化プロセスによって活性化され得る。物理的活性化は、チャーをアルゴンおよび/または窒素を含む雰囲気中で加熱すること、またはチャーを酸化雰囲気中で加熱することを含むことができる。化学的活性化は、チャーを酸、塩基、または塩などの1つまたは複数の化学物質で含浸することを含むことができる。場合によっては、化学的活性化は、含浸チャーを炭化または加熱して活性化することをさらに含むことができる。場合によっては、化学的活性化は物理的活性化よりも低い温度と少ないエネルギーで行うことが可能である。さらに、場合によっては、方法100によって生成された化学副産物は、化学的活性化プロセス中に利用することができる。
【0319】
場合によっては、追加の先進炭素材料は主に炭素原子を含むことができる。いくつかの実施形態では、追加の先進炭素材料は少なくとも1つの炭素発泡体、または熱分解炭素を含むことができる。いくつかの実施形態では、追加の先進炭素材料は、当技術分野で知られているか、または将来開発される可能性のある炭素の同素体など、1つ以上の炭素の同素体を含むことができる。場合によっては、追加の先進炭素材料は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンメガチューブ、カーボンナノリボン、カーボンナノバッド、グラフェン、グラファイトナノプレートレット、量子ドット、フラーレン(バックミンスターフラーレンまたはマルチコアフラーレン)を含む。
【0320】
場合によっては、追加の先進炭素材料は炭素に加えて元素を含むことができ、例えば、ポリマーまたは他の炭化水素材料とすることができる。例えば、追加の先進炭素材料は、熱硬化性または熱可塑性ポリマーを含むことができる。場合によっては、追加の先進炭素材料は、ポリエステル、ビニルエステル、またはナイロンポリマーを含むことができる。
【0321】
いくつかの場合において、追加の先進炭素材料は、生物学的に有用な材料または生体高分子を含み得る。言い換えれば、追加の先進炭素材料は、生物系または生物で使用されるか、生体適合性であるか、または典型的には生物によって生産される炭素を含む材料を含むことができる。例えば、追加の先進炭素材料は、タンパク質、アミノ酸、核酸、コラーゲン、キトサン、糖、または他の生物学的材料であり得る。場合によっては、追加の先進炭素材料は、生物学的および/または化学的プロセスで使用するための膜などの多孔質材料を含むことができる。例えば、追加の先進炭素材料は、穴あきグラフェンを含むことができる。
追加の先進炭素材料のアプリケーション
【0322】
本明細書に記載される方法およびプロセスによって生成される追加の先進炭素材料は、多種多様な用途で使用することができる。場合によっては、本明細書に記載されている処理施設によって生成される追加の先進炭素材料は、追加の先進炭素材料から物体、デバイス、および他の製品を生成するためにさらに処理されることができる。他の実施形態では、追加の先進炭素材料は、使用するために他の生産設備に分配することができる。重要なことに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプロセスは、処理施設でさらなる製品に組み合わせることができる2つ以上のタイプの追加の先進炭素材料を生成することができる。
【0323】
そのような実施形態では、樹脂は、ポリマー部品または製品を製造するために、加工設備によってさらなる加工に供することができる。例えば、樹脂を使用して、シート、押出成形、成形プロセスまたは他の適切なプロセスを使用する三次元構造を生成することができる。一実施形態では、樹脂は、3Dプリンティングプロセスなどによって炭素三次元(「3D」)デバイスを生成するように構成することができる。3Dプリンティングプロセスには、樹脂をメッシュ、中空オブジェクト、中実オブジェクト、またはその他の製品に成形することが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の3Dプリンティングプロセスによって生成された樹脂は、カーボン3D社によって開発された連続液界面製造(CLIP)プロセスで使用することができる。実施形態では、3D印刷された物体の材料特性は、本明細書に記載のプロセスに従って生成された2つ以上の樹脂を利用することにより全体にわたって変化することができ、ここでの2つ以上の樹脂のそれぞれは、硬化時および/またはそれぞれが異なる刺激によって活性化されたときに異なる材料特性を有するものである。一実施形態では、樹脂は、積層造形プロセスで使用されるように構成することができる。
【0324】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプロセスによって生成される第1の追加の先進炭素材料は、後続のそのようなプロセスで使用されて、第2の異なる追加の先進炭素材料を生成することができる。例えば、最初の追加の先進炭素材料は分子グラフェン膜を含むことができる。この分子グラフェン膜を本明細書に記載のプロセスで使用して、熱分解または液化プロセスの生成物を化学的に分離して、炭素繊維を生成することができる。場合によっては、グラフェン膜を介したこの形態の化学分離は、通常使用される他の分離プロセスよりも熱効率が高くなる可能性がある。これらの炭素繊維は、CLIPプロセスで、たとえばメッシュを印刷するために使用できる。
【0325】
追加の先進炭素材料がグラフェンを含むいくつかの実施形態では、グラフェンは、例えば、グラフェンセンサーを形成するために、処理施設によってさらなる処理に供され得る。これらのグラフェンセンサーは、ハンドヘルドデバイスによって病気を検出するための使い捨てチップとして使用できる。グラフェンセンサーは、ライム病やジカウイルスなどの疾患を、患者の血液、尿、唾液、またはその他の体液や生体物質から即座に検出できるため、研究室に輸送するために血液サンプルを保管する必要がなくなる。さらに、本明細書に記載のプロセスは、例えばCLIPプロセスによって、ハンドヘルドデバイスの本体、および/またはマイクロ流体チャンバなどの消耗品または付属品を印刷するために使用することもできる。
【0326】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプロセスによって生成される追加の先進炭素材料は、多種多様な他の用途で使用することができる。例えば、追加の先進炭素材料は、リチウムイオン電池の電極として使用できる炭素発泡体を含むことができる。場合によっては、追加の先進炭素材料は、大気中のCO2回収プロセスで使用できる活性炭を含むことができる。場合によっては、大気中のCO2再捕獲プロセスが処理施設によって行われ、捕獲されたCO2はここで説明するプロセスで使うことができる。
【0327】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプロセスに従って形成されたグラフェンなどの追加の先進炭素材料を使用して、ソーラーパネルを製造することができる。いくつかの場合においては、これらのソーラーパネルは、他の従来の方法で製造されたソーラーパネルよりも高い効率を持つことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプロセスに従って形成された追加の先進炭素材料は、エレクトロスピニングプロセスの前駆体として使用することができる。例えば、追加の先進炭素材料を使用して、ミクロンレベルの分解能を有する足場または他の構造をエレクトロスピンすることができる。場合によっては、エレクトロスピニングで使用される追加の先進炭素材料は、本明細書に記載されているプロセスに従って石炭から生成された生体材料であり得る。いくつかの実施形態では、追加の先進炭素材料を使用して、ゲル、例えば、ヒドロゲルまたはシリコーンゲルなどの医療グレードのゲルを製造することができる。
【0328】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から製造された1つまたは複数の追加の先進炭素材料は、乗用車、トラック、または他の自動車の製造における自動車グレードの材料として使用できる。例えば、石炭から形成された樹脂を含む炭素繊維強化複合材料は、自動車のフレーム、構造部品、ボディパネル、エンジンブロック、および/または他の部品として使用できる。場合によっては、コンポーネントを3D印刷したり、ユーザーの好みに応じてカスタム設計したりできる。
【0329】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成される1つまたは複数の追加の先進炭素材料を使用して、クロマトグラフィーカラム、膜、およびフィルターなどの化学的または生物学的プロセスで使用する製品を形成することができる。いくつかの場合において、クロマトグラフィーカラム、膜、および/またはフィルターは、本明細書に記載されるプロセスに従って石炭から生成された1つ以上の追加の先進炭素材料から3D印刷され得る。場合によっては、クロマトグラフィーカラム、膜、および/またはフィルターを使用して、さまざまな溶液から抗体、細菌、寄生虫、および/または重金属を分離または除去することができる。
【0330】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプロセスに従って石炭から生成された1つまたは複数の追加の先進炭素材料を使用して、回路基板を形成することができる。例えば、本明細書に記載されているように石炭から製造された炭素発泡体は、回路基板を形成するために3D印刷され得る。場合によっては、炭素発泡体の回路基板は、一般的なプリント回路基板よりも優れた電気的および熱的特性を持つことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスに従って石炭から生成される1つまたは複数の追加の先進炭素材料は合成グラフェンであり、さまざまな電子用途、たとえば量子ドットの形成およびコンピュータチップで使用できる。場合によっては、グラフェンを使用して、病気のバイオマーカーやウイルスなど、任意の数の生物学的に活性な分子または物質を分離および/または識別できるバイオセンサーを製造できる。
【0331】
特に明記しない限り、(請求項以外の)明細書で使用される、寸法、物理的特性などを表すものなど、すべての数または表現は、「おおよそ」という用語によって修飾されるものであると理解されるべきである。少なくとも、均等論の適用を請求項に限定しようとするものとしてではなく、「ほぼ」という用語によって修飾される明細書または請求項に記載された各数値パラメータは、列挙された有効数字の数に照らし、通常の丸め手法を適用されるべきである。さらに、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」という用語は、非限定的および限定的の両方の用語として解釈されるべきである。
【0332】
さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、ありとあらゆる部分範囲またはそこに含まれるありとあらゆる個別の値を列挙する請求項を包含し、サポートを提供すると理解されるべきである。たとえば、1~10の範囲は、最小値1と最大値10の間および/またはそれらを含むすべての部分範囲または個々の値を列挙するクレームを含み、サポートを提供すると解釈されるべきである。つまり、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わるすべての部分範囲(たとえば、5.5~10、2.34~3.56など)または1~10の任意の値(たとえば、3、5.8、9.9994など)である。