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特許7522669モジュール式ガンマカメラ及びモジュール式ガンマカメラ組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】モジュール式ガンマカメラ及びモジュール式ガンマカメラ組立体
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20240718BHJP
   G01T 1/29 20060101ALI20240718BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20240718BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01T1/167 C
G01T1/29 C
G01T1/24
G01T7/00 B
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021002209
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2021119340
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】2020-37125
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】521014180
【氏名又は名称】アドバーカーム エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ヤンー、ヤクベク
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ、ドゥブラヴォヴァ
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0209672(US,A1)
【文献】特開2011-185796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0293068(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282153(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0267577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール式ガンマカメラ(1)であって、過渡電離放射線の少なくとも1つのハイブリッド型半導体検出器(2)、及び、過渡電離放射線の伝播方向に前記ハイブリッド型半導体検出器(2)の正面に配置される過渡電離放射線の少なくとも1つのコリメータ(3)を備え、交換可能なコリメータ(3)のホルダが設けられる前側に少なくとも1つの開口部(5)を有し、ヒートシンク(6)を接続する少なくとも1つの手段が設けられる後側を有し、隣接するハウジング(4)をモジュール式にチェーン接続する接続手段が設けられるその側面を有するハウジング(4)からなり、過渡放射線の少なくとも1つのハイブリッド型半導体検出器(2)は前記ハウジング(4)内に配置されることを特徴とする、モジュール式ガンマカメラ。
【請求項2】
前記接続手段は、交換可能なピン(8)の穴を有する関節式カップリング(7)として実現されることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール式ガンマカメラ。
【請求項3】
前記ハイブリッド型半導体検出器(2)は、最大で2000μmの厚さを有するTimepix3であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のモジュール式ガンマカメラ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のモジュール式ガンマカメラ組立体(1)であって、該組立体の前記ハウジング(4)は円形に接続されることを特徴とする、モジュール式ガンマカメラ組立体。
【請求項5】
上下に配置される少なくとも2つの円によって形成されることを特徴とする、請求項4に記載の組立体。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のモジュール式ガンマカメラ組立体(1)であって、該組立体の前記ハウジング(4)は列をなして接続されることを特徴とする、モジュール式ガンマカメラ組立体。
【請求項7】
モジュール式ガンマカメラ(1)の少なくとも1つの実装されないハウジング(4)を備えることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項8】
過渡電離放射線を前記ハウジング(4)の前記開口部(5)に伝達する通路が設けられる遮蔽シリンダ(9)又は遮蔽板が設けられることを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過渡電離放射線の検出及びデジタル記録を用いた、イメージング技法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
過渡電離放射線を使用するイメージング技法は、人間の活動の多くの分野においてますます使用されている。過渡電離放射線を使用するイメージング技法は、産業における品質管理及び非破壊試験、医学における診断及び治療、科学に使用されており、例えば、セキュリティ用途における手荷物及び積送品の管理等においても使用されている。イメージング技法は、それらの内部構造を表示するために、又は、構造物内に位置する材料についての情報を得るために、光学的に不透明な物体を通して使用される過渡電離放射線のタイプの貫通性を利用する。
【0003】
これらのイメージング技法を実行するイメージング検出器は、過渡電離放射線が入射するその検出表面領域に、画像センサを常に含まなければならない。したがって、画像センサは、過渡電離放射線を捕捉する機能を特に有しなければならない。使用される過渡電離放射線は、物質を貫通する能力を有するため、イメージング検出器も貫通することができる。したがって、センサの材料及び設計は、所与のタイプの過渡電離放射線に対して検出効率を最大限に高めるように、すなわち、所与の過渡電離放射線の可能な限り多くの粒子、例えばX線光子がセンサにおいて信号を発するように、特別に適合されなければならない。
【0004】
近年、単一変換の原理に基づいて動作する半導体検出器が、過渡電離放射線のセンサとして、イメージングにますます使用されており、この場合、入射する電離放射線は、半導体素子において電気信号を直接的に発する。このように作用する多数の素子が、専門家の団体ではピクセルと呼ばれる1つの半導体チップ上に形成され、したがって、いわゆる走査チップである画像センサを作り出す。ピクセルである各素子からの信号は、専門のハードウェア及びソフトウェアにおいてさらに処理され、これによって最終的な画像を作り出す。これらの半導体放射線検出器は、半導体ピクセル検出器又はセンサと称される。個々のピクセルからの電気信号を処理するハードウェアは、多くの場合に、読み出し電子チップ、又は簡潔に読み出しチップと呼ばれる、独立したチップ上に形成される。半導体ピクセル検出器の走査チップは、通常は読み出しチップ上に直接的に位置付けられ、読み出しチップに重なり、接点のマトリクスによって読み出しチップに電気的に接続される。双方のチップのそのような配置は、恒久的な(取り外し不可能な)ユニットを形成し、これは、ハイブリッド型半導体ピクセル検出器、又は簡潔にハイブリッド型検出器と称される。幾つかの場合に、読み出し電子チップは、走査チップにおいて電気信号を発した過渡電離放射線の各個々の粒子についての情報をデジタルに記録するように設計されている。
【0005】
ハイブリッド型半導体検出器の例は、専門家の団体において既知であるMedipix2、Medipix3、Timepix及びTimepix3半導体検出器、又は、Pilatus及びEiger検出器である。ハイブリッド型半導体検出器の個々のピクセルは通常、正方形の形状であり、Medipix2、Medipix3、Timepix、Timepix3チップの場合に辺の長さは55μmであり、Eigerチップの場合に辺の長さは75μmであり、Pilatusチップの場合に辺の長さは172μmである、といった具体である。したがって、ピクセルサイズは、全てのハイブリッド型半導体検出器に一般化することができない。
【0006】
ハイブリッド型半導体検出器は、例えば特許文献1から既知であるように、カメラにおいて既に一般的に使用されており、この場合、走査チップは、カメラの任意に大きい連続的な検出表面積を作り出すように、並んで構築される。
【0007】
過渡電離放射線のコリメータがカメラの隣に配置される場合、この配置は、専門家の団体においてはガンマカメラとして既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】チェコ実用新案第28374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、過渡電離放射線の検出のためのモジュール式ガンマカメラを作り出すことであり、これは、モジュール式ガンマカメラ組立体を作り出すことで、検査される物体が発する過渡電離放射線の走査において走査ジオメトリの変形の可能性を広げることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
設けた課題は、以下の本発明によるモジュール式ガンマカメラを作り出すことによって解決される。
【0011】
モジュール式ガンマカメラは、過渡電離放射線の少なくとも1つの半導体ハイブリッド型検出器、及び、過渡電離放射線の伝播方向に半導体ハイブリッド型検出器の正面に配置される過渡電離放射線の少なくとも1つのコリメータを備える。
【0012】
本発明の核心は、モジュール式ガンマカメラが、過渡放射線の少なくとも1つのハイブリッド型検出器を収容し、交換可能なコリメータのホルダが設けられる前側に少なくとも1つの開口部を有するハウジングからなることに基づく。コリメータを交換する能力は、好ましくは、測定される物体の検査における走査ジオメトリの変形の範囲を広げる。同時に、モジュール式ガンマカメラのハウジングは、ヒートシンクを接続する手段が設けられる後側を有する。ヒートシンクは、接続されると、ハウジングの後側を閉じるだけではなく、ハウジング内の温度を調節し、モジュール式ガンマカメラの熱に敏感な構成要素への損傷を防止することを助ける。さらに、ハウジングは、隣接するハウジングをモジュール式にチェーン接続する接続手段が設けられるその側面を有する。これは、過渡電離放射線の好適な走査ジオメトリを作り出すために、測定の差し迫った必要性に従ってモジュール式ガンマカメラ組立体を作り出すのに便利である。
【0013】
本発明によるモジュール式ガンマカメラの好ましい実施形態では、接続手段は、取り外し可能なピンの穴を有する関節式カップリングとして実現される。取り外し可能なピンは、隣接するハウジングの任意の分離を防止し、関節式カップリングは、チェーンがハウジングから、直線から弧状に曲がることを可能にする。
【0014】
好ましくは、モジュール式ガンマカメラには、厚さが最大で2000μmであるTimepix3と呼ばれる市販のハイブリッド型半導体検出器が備え付けられる。この特定のハイブリッド型半導体検出器は、広範な過渡電離放射線の検出及び記録に好適である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、モジュール式ガンマカメラの組立体が形成され、組立体のハウジングは円形に接続される。円形配置は、測定される物体を複数の角度から同時に走査することを可能にする。走査ジオメトリの可能な変形の範囲を広げることに関して、組立体が上下に配置される少なくとも2つの円によって形成される場合に、好ましい変形である。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態では、組立体のハウジングが列をなして接続される、モジュール式ガンマカメラの組立体が形成される。そのような配置は、より大きい物体を一方の側から走査するために、1つの方向における視野を増大させることを可能にする。
【0017】
本発明による組立体の好ましい実施形態では、組立体は、モジュール式ガンマカメラの少なくとも1つの実装されないハウジングを備える。実装されないハウジングの使用は、この場合も同様に、走査ジオメトリの可能な変形の範囲を広げる。
【0018】
組立体に、過渡電離放射線をハウジングの開口部に伝達する通路が設けられる遮蔽シリンダ又は遮蔽板が設けられる場合に好ましい。遮蔽シリンダ又は板は、モジュール式ガンマカメラを、不所望の方向からくる過渡放射線から保護する。加えて、遮蔽シリンダ又は板は、組立体のモジュール式ガンマカメラを、走査ジオメトリの正確な位置に固定することを助ける。
【0019】
モジュール式ガンマカメラの利点は、走査ジオメトリの種々の変形を、モジュール式ガンマカメラの好適な組立体を用いて、又は、コリメータの好適な交換によって準備する可能性を含む。モジュール式ガンマカメラのハウジングは、モジュール式ガンマカメラの敏感な構成要素を保護するのに十分ロバストであるが、組立体内で良好にチェーン接続可能でもある。
【0020】
本発明を、以下の図によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ガンマカメラハウジングを示す図であり、ハウジングの断面を含む。
図2】2つのモジュール式ガンマカメラを示す図であり、モジュール式ガンマカメラのうちの一方は、前方を向いて示されており、モジュール式ガンマカメラのうちの他方は後方を向いて示されている。
図3】モジュール式ガンマカメラの円形の組立体の一部の断面、及び、イメージング方法の原理を示す図である。
図4】円形配置のモジュール式ガンマカメラの組立体を示す図である。
図5】円形の2段階の配置のモジュール式ガンマカメラの組立体を示す図である。
図6】列配置のモジュール式ガンマカメラの組立体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下で記載され示される本発明の実施形態の特定の例は、例示のために提供されるに過ぎず、本明細書において提供される例に本発明を限定するものではないことを理解されたい。当業者は、本明細書において記載される本発明の特定の実施形態に対するより多くの又はより少ない均等物を提供することを見出すか、又は、日常的な実験に基づいて提供可能である。
【0023】
図1は、モジュール式ガンマカメラ1のハウジング4を示している。ハウジング4は、断面A-A及びB-Bでより良く示されているように、ハイブリッド型半導体検出器2を収容するよう中空である。ハウジング4の前側には、過渡電離放射線の歪みのない通過のための開口部5が設けられている。ハウジング4の後側は、構成要素を設置するために部分的に開口しており、ヒートシンク6を固定する手段、例えばねじのねじ山が設けられている。ヒートシンク6は、ハウジング4の背面に位置付けられ、付加的なパッシブフィン付きヒートシンクを設けることができる。関節式カップリング7がハウジング4の側面に形成されており、ハウジング4は、隣接するハウジング4とともに着座すると、関節式カップリング7を通る取り外し可能なピン8によって接続される。ハウジング4は金属又は硬質プラスチックから作られ、一方で、ヒートシンク6は、熱伝導率の値が高い金属から作られる。
【0024】
図2は2つのモジュール式ガンマカメラ1を示している。ハウジング4の前側には、ねじ留めホルダ内に交換可能なコリメータ3が取り付けられている。ヒートシンク6がハウジング4の背面に取り付けられている。当業者は、走査ジオメトリを調整するために種々のタイプの交換可能なコリメータ3を日常的に表現及び設計することが可能である。
【0025】
図3は、モジュール式ガンマカメラ1の円形の組立体の或るセクションの断面、及び、測定されるサンプル10を走査する原理を示している。モジュール式ガンマカメラ1は、取り外し可能なピン8によって固定される関節式カップリング7によってチェーン接続されている。ハウジング4は、ハイブリッド型半導体検出器2、例えば、厚さが最大で2000μmのTimepix3を収容するが、当業者は、他の既知のハイブリッド型半導体検出器2の使用を示唆することができる。個々のモジュール式ガンマカメラ1は、遮蔽シリンダ9によって過渡電離放射線の通過が遮蔽されている。加えて、遮蔽シリンダ9に隣接するモジュール式ガンマカメラ1は、組立体のうちのモジュール式ガンマカメラ1のいずれかに外力が作用する場合に、遮蔽シリンダ9が、モジュール式ガンマカメラ1が組立体内の所与の位置から偏位することを防止することを確実にする。遮蔽シリンダ9は、過渡電離放射線の吸収値が高い材料、例えば鉛、タングステン等から作られる。
【0026】
ハイブリッド型半導体検出器2は、データ収集コンピュータへの容易な接続のために、USB2コネクタ(図示せず)に接続されている。
【0027】
モジュール式ガンマカメラ1の別の実施形態では、それらのハウジング4は、過渡電離放射線を遮蔽することができる材料から作ることができる。
【0028】
図4は、12個のモジュール式ガンマカメラ1の円形の組立体を示している。
【0029】
図5は、12個のモジュール式ガンマカメラ1及び12個の実装されないハウジング4の2段階の円形の組立体を示している。円形にした段階上でモジュール式ガンマカメラ1及び実装されないハウジング4を交互にすることによって、走査ジオメトリの別の変形を可能にする。段階間の距離は、取り外し可能なピン8に取り付けられる等しい高さの距離スペーサ11を使用することによって解決される。
【0030】
図6は、12個のモジュール式ガンマカメラ1の列の組立体を示している。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によるモジュール式ガンマカメラは、科学用途、産業、医学において、並びに、光学的に不可視の構造のイメージング及び材料分析の文脈において過渡電離放射線を複数の角度から同時に走査することが必要などの用途でも、応用される。
【符号の説明】
【0032】
1 モジュール式ガンマカメラ
2 ハイブリッド型半導体検出器
3 コリメータ
4 ハウジング
5 開口部
6 ヒートシンク
7 関節式カップリング
8 取り外し可能なピン
9 遮蔽シリンダ
10 測定される物体
11 距離スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6