(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ファンシュラウド及び送風装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/52 20060101AFI20240718BHJP
F04D 29/54 20060101ALI20240718BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F04D29/52 C
F04D29/54 E
F01P11/10 E
(21)【出願番号】P 2021016086
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】野中 涼
(72)【発明者】
【氏名】太田 秀岳
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0061201(KR,A)
【文献】特表2007-532814(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0124945(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/52
F04D 29/54
F01P 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転するシャフトにファンが取り付けられているファンモータを固定するためのファンシュラウドにおいて、
前記回転軸線に直交する径方向に沿って前記ファンの周囲に広がるシュラウド壁面と、
前記シュラウド壁面に、前記シュラウド壁面の厚さ方向に貫通形成され、前記ファンモータにより生成される風の通過を許容する複数の通風開口部と、を備え、
前記通風開口部は、前記回転軸線方向からみて一定方向に長いスリット状に形成されており、
前記回転軸線方向からみて複数の前記通風開口部の長手方向に沿ってそれぞれ設けられ、前記風を一定の方向に誘導する偏向ルーバーを有し、
各前記偏向ルーバーは、
前記シュラウド壁面の法線方向のうち、前記風の上流に向かって、かつ前記シュラウド壁面の面方向と交差する方向に沿って斜めに突出する傾斜壁と、
前記傾斜壁における前記シュラウド壁面とは反対側端から前記シュラウド壁面の面方向に沿ってそれぞれ同一方向に向かって突出する横壁と、
を有し、
前記通風開口部は、
前記シュラウド壁面に形成される壁面側開口部と、
隣接する前記横壁間に形成される横壁側開口部と、
を有し、
前記通風開口部の短手方向において、前記壁面側開口部と前記横壁側開口部とのうち、前記風の下流側に位置する開口部の幅は、前記風の上流側に位置する開口部の幅よりも小さく、
前記通風開口部における前記風の下流側の開口面積は、前記通風開口部における前記風の上流側の開口面積よりも小さい
ことを特徴とするファンシュラウド。
【請求項2】
前記傾斜壁は、前記シュラウド壁面から前記風の上流側に向かって突出しており、
前記壁面側開口部の前記幅は、前記横壁側開口部の前記幅よりも小さいことを特徴とする請求項
1に記載のファンシュラウド。
【請求項3】
熱交換器及び前記熱交換器よりも後方に配置されたエンジンを有する車両に取り付けられる請求項1
又は請求項
2に記載のファンシュラウドと、
前記ファンシュラウドに固定される前記ファンモータと、を備え、
前記風によって前記熱交換器を冷却する送風装置であって、
前記熱交換器と前記エンジンとの間に、前記ファンシュラウドが配置されていることを特徴とする送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンシュラウド及び送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるラジエータ等の熱交換器の冷却用として、この熱交換器の進行方向後方に送風装置が設けられる。送風装置は、ファンモータと、ファンモータのシャフトに取り付けられたファンと、ファンの周囲をカバーするファンシュラウドと、を備えている。ファンシュラウドは、車両に固定される。ファンモータは、ファンシュラウドに固定される。ファンとしては、例えば軸流ファンが用いられる。
このような構成のもと、ファンが回転するとファンブレードによって熱交換器よりも進行方向前方から空気が引き込まれ、熱交換器、ファンの順で風が通る。このように熱交換器に風を通過させることにより、熱交換器の冷却が促進される。
【0003】
ここで、このような送風装置では、シャフトに近い箇所の風速は十分確保することができるが、シャフトから径方向に離間するほど風速が遅くなる。また、車両の走行時にはファンシュラウドが壁となり、送風装置を通る走行風の抜けが悪い。このため、ファンシュラウドに、素通しフレーム部を設けた技術が開示されている。素通しフレーム部は、走行風等の通過を許容する開口を有している。これにより、送風装置を通る走行風の抜けを向上できる。また、ファン回転時において、シャフトから径方向に離間した箇所の風速を補うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱交換器は、車両のエンジンルームの前部に設けられる場合が多い。すなわち、熱交換器、送風装置の順で通過する風は、この送風装置を抜けてエンジンルーム内のエンジン等に当たる。エンジンによって反射された風が逆流して素通しフレーム部の開口を通過すると、送風装置の風量性能が低下してしまう可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、ファン回転時において、シャフトから径方向に離間した箇所の風速を確保するとともに、例えば車両走行時における走行風の抜けを向上させつつ、風量性能が低下してしまうことを防止できるファンシュラウド及び送風装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るファンシュラウドは、回転軸線回りに回転するシャフトにファンが取り付けられているファンモータを固定するためのファンシュラウドにおいて、前記回転軸線に直交する径方向に沿って前記ファンの周囲に広がるシュラウド壁面と、前記シュラウド壁面に、前記シュラウド壁面の厚さ方向に貫通形成され、前記ファンモータにより生成される風の通過を許容する複数の通風開口部と、を備え、前記通風開口部は、前記回転軸線方向からみて一定方向に長いスリット状に形成されており、前記回転軸線方向からみて複数の前記通風開口部の長手方向に沿ってそれぞれ設けられ、前記風を一定の方向に誘導する偏向ルーバーを有し、各前記偏向ルーバーは、前記シュラウド壁面の法線方向のうち、前記風の上流に向かって、かつ前記シュラウド壁面の面方向と交差する方向に沿って斜めに突出する傾斜壁と、前記傾斜壁における前記シュラウド壁面とは反対側端から前記シュラウド壁面の面方向に沿ってそれぞれ同一方向に向かって突出する横壁と、を有し、前記通風開口部は、前記シュラウド壁面に形成される壁面側開口部と、隣接する前記横壁間に形成される横壁側開口部と、を有し、前記通風開口部の短手方向において、前記壁面側開口部と前記横壁側開口部とのうち、前記風の下流側に位置する開口部の幅は、前記風の上流側に位置する開口部の幅よりも小さく、前記通風開口部における前記風の下流側の開口面積は、前記通風開口部における前記風の上流側の開口面積よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通風開口部の上流側と下流側とで圧力差を生じさせることができる。つまり、通風開口部の下流側の圧力は、通風開口部の上流側の圧力よりも高くなる。このため、通風開口部を介して風が逆流してしまうことを防止できる。よって、ファン回転時のシャフトから径方向に離間した箇所の風速を確保するとともに、例えば車両走行時における走行風の抜けを向上させつつ、風量性能が低下してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における車両のエンジンルームの構造を例示する斜視図。
【
図2】本発明の実施形態における送風装置を前方からみた斜視図。
【
図3】本発明の実施形態におけるファンシュラウドを後方からみた斜視図。
【
図5】本発明の実施形態におけるシュラウド壁面の一部を前方からみた拡大斜視図。
【
図6】本発明の実施形態における偏向ルーバーを通過する風の流れを示す説明図。
【
図7】本発明の実施形態におけるファンモータを駆動させた際の通風開口部を通過する風のシミュレーション結果を示す図。
【
図8】本発明の実施形態における車両の走行時における通風開口部を通過する風のシミュレーション結果を示す図。
【
図9】本発明の実施形態の第1変形例におけるファンシュラウドを後方からみた斜視図。
【
図10】本発明の実施形態の第2変形例におけるファンシュラウドを後方からみた斜視図。
【
図11】本発明の実施形態の第4変形例における偏向ルーバーの軸方向に沿う断面図。
【
図12】本発明の実施形態の第5変形例におけるシュラウド壁面の一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
<車両>
図1は、送風装置1を備える車両100のエンジンルーム101の構造を例示する斜視図である。なお、
図1では説明を分かりやすくするために車載熱交換器102を透過した状態(2点鎖線)で示している。
送風装置1は、車両100のラジエータやコンデンサ等の車載熱交換器102を冷却するために用いられる。以下の説明では、車両100の進行方向前方を単に前方、進行方向後方を単に後方、重力方向上方を単に上方、重力方向下方を単に下方と称する。また、以下の説明において、送風装置1における前方、後方、上方、下方は、車両100に送風装置1を取り付けた姿勢での方向を指しているものとする。
【0012】
図1に示すように、車両100は、車室前方のエンジンルーム101内にエンジン105が搭載され、エンジン105の前方に、車載熱交換器102が搭載されている。前後方向で車載熱交換器102とエンジン105との間に、送風装置1が設けられている。送風装置1は、車載熱交換器102の通風面(後方の面)に対向して、車載熱交換器102に強制冷却風を流通させる。本実施形態では、送風装置1を1つ設けているが、送風装置1の個数は1つに限られるものではない。例えば、車幅方向に送風装置1を2つ並べて配置してもよい。
【0013】
<送風装置>
図2は、送風装置1を前方からみた斜視図である。
図2に示すように、送風装置1は、駆動源であるファンモータ2と、ファンモータ2により回転駆動されるファン3と、送風装置1の外郭を形成し、車載熱交換器102に固定されるファンシュラウド4と、を備えている。なお、以下の説明では、ファンモータ2の回転軸線Cと平行な方向を単に軸方向、ファンモータ2の回転方向を周方向、軸方向、及び周方向に直交する方向を径方向と称する。ファンモータ2の軸方向は、前後方向と一致している。
【0014】
<ファンモータ>
ファンモータ2は、ハウジング5と、ハウジング5内に収納された図示しないステータ、及びステータに対して回転自在に設けられたロータ6と、を備えている。ロータ6のシャフト7は、ハウジング5から突出されている。この突出されたシャフト7の先端に、ファン3が取り付けられている。
【0015】
ファン3は、いわゆる軸流ファンである。ファン3は、ファンモータ2を駆動することによって車載熱交換器102を介して空気を前方から吸引するように回転される。ファン3は、シャフト7の先端に取り付けられる有底筒状のファンボス8と、ファンボス8の外周面から径方向外側に向かって放射状に突設される複数(例えば、本実施形態では7個)のファンブレード9と、複数のファンブレード9の径方向外側を環状に連結する円筒状のリング部10と、を備えている。ファンボス8は、シャフト7と同軸に設けられている。ファンボス8は、後方に向けて開口されており、内側にファンモータ2のハウジング5の前端部が収容されている。リング部10は、シャフト7と同軸上に配置されている。
【0016】
<ファンシュラウド>
図3は、ファンシュラウド4を後方からみた斜視図である。
図3に示すように、ファンシュラウド4は、樹脂により形成されている。ファンシュラウド4は、中央にファンモータ2及びファン3を配置してファン3を径方向外側から取り囲むシュラウド壁面11を有している。シュラウド壁面11は、ファン3の周囲に車幅方向及び上下方向に沿って広がっている。
【0017】
より具体的には、シュラウド壁面11は、ファン3から離間するに従って僅かに前方(車載熱交換器102側)に向かって傾斜するようにスカート状に広がるように形成されている。前後方向からみてシュラウド壁面11の外形は、車幅方向に僅かに長い長方形状に形成されている。シュラウド壁面11によって車載熱交換器102の後面全体が覆われている。すなわち、シュラウド壁面11は、車載熱交換器102の後面全体を覆うことにより、ファン3の周囲と車載熱交換器102との間を塞ぐ壁板に相当している。
【0018】
シュラウド壁面11の中央に形成された開口部12は、軸方向(前後方向)からみて円形である。開口部12の周縁には、後方に向かって立ち上がる円筒状のリング部13が一体成形されている。リング部13の径方向中央には、軸方向からみて環状のモータ取付枠14が設けられている。モータ取付枠14は、リング部13に複数のステー15を介して支持されている。
モータ取付枠14に、ファンモータ2のハウジング5が固定されている。この状態では、ファンモータ2のシャフト7が後方(エンジン105側)に向かって突出されている。また、モータ取付枠14には、ハウジング5の底面側に、遮熱板26が取り付けられている。遮熱板26は、ファンモータ2をエンジン105から遮熱する役割を有している。
【0019】
シュラウド壁面11の外側縁には、全周に渡って外枠17が一体成形されている。外枠17は、シュラウド壁面11の外側縁から前方(車載熱交換器102側)に向かって突出されている。外枠17には、取付座18が車幅方向外側に向かって突出形成されている。取付座18は、外枠17の車幅方向両外側に、それぞれ2つずつ配置されている。取付座18は、ファンシュラウド4を車載熱交換器102に固定するためのものである。
【0020】
シュラウド壁面11の後面11aには、リング部13のステー15が連結されている箇所と取付座18とに跨る複数のリブ19が一体成形されている。また、シュラウド壁面11の後面11aには、リブ19とリング部13とで囲まれた領域に、それぞれ補リブ20が1つずつ一体成形されている。これらリブ19及び補リブ20は、シュラウド壁面11の機械的強度を高めるためのものである。
【0021】
図4は、
図3のA-A線に沿う断面図である。
図5は、シュラウド壁面11の一部を前方からみた拡大斜視図である。
図3から
図5に示すように、シュラウド壁面11には、リング部13を挟んで車幅方向両側に、複数の通風開口部21がシュラウド壁面11の厚さ方向に貫通形成されている。また、各通風開口部21は、リング部13と同心円上に配置され、軸方向(前後方向)からみて円弧状で、周方向に長いスリット状に形成されている。
【0022】
各通風開口部21の短手方向両側辺のうち、リング部13側(径方向内側)の側辺には、それぞれ偏向ルーバー22が一体成形されている。偏向ルーバー22は、鎧戸状に形成されている。すなわち、偏向ルーバー22は、シュラウド壁面11から前方(法線方向一方)に向かって突出された傾斜壁23と、傾斜壁23の前端から車幅方向内側に向かって屈曲延出された横壁24と、横壁24の長手方向両端とシュラウド壁面11との間を塞ぐ縦壁25と、を有している。
【0023】
傾斜壁23は、シュラウド壁面11から前方に向かうに従って徐々に車幅方向内側を向くように、シュラウド壁面11の法線方向に対して(面方向に対して)斜めに延出されている。横壁24は、シュラウド壁面11とほぼ平行である。縦壁25は、シュラウド壁面11の法線方向に沿っている。
【0024】
偏向ルーバー22を設けることにより、通風開口部21は、シュラウド壁面11に面して形成された壁面側開口部21aと、車幅方向(横壁24の短手方向、通風開口部21の短手方向)で隣り合う横壁24の間に形成された横壁側開口部21bと、で構成される。これら壁面側開口部21a及び横壁側開口部21bもリング部13と同心円上に配置され、軸方向(前後方向)からみて円弧状で、周方向に長いスリット状に形成されている。
ここで、壁面側開口部21aの短手方向の幅をWaとし、横壁側開口部21bの短手方向の幅をWbとしたとき、各幅Wa,Wbは、
Wa<Wb ・・・(1)
を満たす。
【0025】
<ファンシュラウドの作用>
次に、
図2、
図6、
図7に基づいて、ファンシュラウド4の作用について説明する。
図6は、ファンシュラウド4の偏向ルーバー22を通過する風の流れを示す説明図である。
図6は、前述の
図4に対応している。
図2、
図6に示すように、ファンモータ2を駆動させると、ファン3は車載熱交換器102を介して空気を前方から吸引するように回転される(
図2、
図3、
図6における矢印Y1参照)。ファン3を介してリング部13内を通過する風は、エンジンルーム101(
図1参照)へと流れる(
図2、
図3における矢印Y2参照)。
【0026】
一方、シュラウド壁面11の通風開口部21にもファン3によって吸引された風が通過する。このとき、偏向ルーバー22によって、通風開口部21を通過する風の向きが変わる。すなわち、偏向ルーバー22は、シュラウド壁面11から前方に向かうに従って徐々に車幅方向内側を向く傾斜壁23と、傾斜壁23の前端から車幅方向内側に向かって屈曲延出された横壁24と、を有する。このため、風の下流に向かうに従って前後方向に対して徐々に車幅方向外側に向く風の流路が形成される。よって、通風開口部21を介して後方に抜ける風の向きは、車幅方向外側に偏向される(
図2、
図3、
図6における矢印Y3)。
【0027】
より具体的には、通風開口部21及び偏向ルーバー22は、リング部13と同心円上に配置され、軸方向(前後方向)からみて円弧状で、周方向に長いスリット状に形成されている。このため、通風開口部21を介して後方に抜ける風の向きは、リング部13を中心として径方向に広がる放射状になる。
また、通風開口部21は、シュラウド壁面11に面して形成された壁面側開口部21aと、シュラウド壁面11の前方に形成された横壁側開口部21bと、で構成されている。このため、風は、横壁側開口部21bを通り、次いで壁面側開口部21aを通り、後方(エンジンルーム101内)へと流れていく。
【0028】
ここで、壁面側開口部21aの短手方向の幅Wa、及び横壁側開口部21bの短手方向の幅Wbは、上記式(1)を満たしている。すなわち、通風開口部21のうち、風の下流側に位置する壁面側開口部21aの開口面積は、通風開口部21のうち、風の上流側に位置する横壁側開口部21bの開口面積よりも小さい。この結果、横壁側開口部21bでの風圧(風の上流側での風圧)よりも壁面側開口部21aでの風圧(風の下流側での風圧)が高くなる。
【0029】
ところで、送風装置1を介して後方へと流れる風は、エンジンルーム101内の部品(例えば、エンジン105等)によって反射される。そして、この風が通風開口部21を介して前方へと逆流しようとする。しかしながら、通風開口部21での風の上流側と下流側とで圧力差が生じている。すなわち、通風開口部21は、この通風開口部21における風の下流側となる壁面側開口部21aでの風圧が風の上流側となる横壁側開口部21bでの風圧よりも高い。この圧力差と、風の下流側となる壁面側開口部21aでの風圧が高いこと、とにより、通風開口部21を介した風の逆流が阻止される。
【0030】
図7は、ファンモータ2を駆動させた際の通風開口部21を通過する風のシミュレーション結果を示す図である。
図7中、ラインLは車載熱交換器102の後面に相当する。つまり、
図7において、上部が前方(車載熱交換器102側)であり、下部がエンジン105側である。
図7に示すように、通風開口部21を介した風の逆流が阻止されていることが確認できる。
【0031】
また、車両100の走行時には、シュラウド壁面11に通風開口部21が形成されているので、通風開口部21を介して走行風が前方から後方へとスムーズに通過する。この際、偏向ルーバー22によって、通風開口部21を介して後方に抜ける風の向きは、車幅方向外側になる。このため、エンジンルーム101内の風を当てたくない部品に風が当たってしまうこと等を抑制できる。
【0032】
図8は、車両100の走行時における通風開口部21を通過する風のシミュレーション結果を示す図である。
図8は、
図7に対応している。
図8に示すように、車両100の走行時には、通風開口部21を介して走行風が前方から後方へとスムーズに通過していることが確認できる。また、エンジンルーム101内の部品に走行風が当たり、通風開口部21を介して風が逆流してしまうのが阻止されていることが確認できる。
【0033】
このように、上述の実施形態におけるファンシュラウド4は、ファン3の周囲に広がるシュラウド壁面11と、シュラウド壁面11に、シュラウド壁面11の厚さ方向に貫通形成された通風開口部21と、を備えている。通風開口部21のうち、風の下流側に位置する壁面側開口部21aの開口面積は、通風開口部21のうち、風の上流側に位置する横壁側開口部21bの開口面積よりも小さい。このため、通風開口部21における風の上流側と下流側とで圧力差を生じさせることができる。つまり、通風開口部21における風の下流側の壁面側開口部21aの圧力は、通風開口部21における風の上流側の横壁側開口部21bの圧力よりも高くなる。したがって、通風開口部21を介して風が逆流してしまうことを防止できる。よって、ファン3の回転時のシャフト7から径方向に離間した箇所の風速を確保するとともに、車両100の走行時における走行風の抜けを向上させつつ、風量性能が低下してしまうことを防止できる。
【0034】
また、各通風開口部21の短手方向両側辺のうち、リング部13側(径方向内側)の側辺に偏向ルーバー22を一体成形することにより、壁面側開口部21aと横壁側開口部21bとを形成している。そして、壁面側開口部21aの短手方向の幅Waと横壁側開口部21bの短手方向の幅Wbとを上記式(1)を満たすようにしている。このため、通風開口部21における風の上流側と下流側との圧力差を容易に生じさせることができる。また、偏向ルーバー22によって通風開口部21を通過する風の風向きを任意に偏向でき、この偏向された風を利用することで、送風装置1の後方の部品(エンジン105等)の冷却効果をコントロールできる。
【0035】
偏向ルーバー22は、シュラウド壁面11から前方に向かって突出された傾斜壁23と、傾斜壁23の前端から車幅方向内側に向かって屈曲延出された横壁24と、横壁24の長手方向両端とシュラウド壁面11との間を塞ぐ縦壁25と、を有している。このような偏向ルーバー22によって、前後方向に対して車幅方向外側に向く風の流路を確実に形成することができる。このため、偏向ルーバー22によって通風開口部21を通過する風の風向きをより確実に偏向できる。
【0036】
傾斜壁23は、シュラウド壁面11から前方(法線方向一方)に向かって突出されている。このため、風の上流側において、通風開口部21を通過しようとする風は、まず、傾斜壁23に当たって通風開口部21内へと流入される。よって、通風開口部21を通過する風の風向きを確実に偏向できる。
【0037】
とりわけ、上述の実施形態のように、前後方向で車載熱交換器102とエンジン105との間に設けられた送風装置1において、エンジン105等によって反射された風が逆流して通風開口部21を通過してしまうことを確実に防止できる。このため、ファン3の回転時のシャフト7から径方向に離間した箇所の風速を確保するとともに走行風の抜けを向上させつつ、風量性能が低下してしまうことを防止できる送風装置1を提供できる。
【0038】
なお、上述の実施形態では、通風開口部21は、リング部13と同心円上に配置され、軸方向(前後方向)からみて円弧状で、周方向に長いスリット状に形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、通風開口部21の形状は、種々変更可能である。例えば、以下に変形例を挙げて説明する。
【0039】
[第1変形例]
<ファンシュラウド>
図9は、第1変形例におけるファンシュラウド4を後方からみた斜視図である。
図9は、前述の
図3に対応している。
図9に示すように、通風開口部21を、車幅方向に長いスリット状に形成してもよい。この場合、複数の通風開口部21を、上下方向に並べて配置する。ここで、各通風開口部21のうち、上半分に配置されている通風開口部21には、通風開口部21を通過後の風向きが上方向となるように偏向ルーバー22が形成されている。一方、各通風開口部21のうち、下半分に配置されている通風開口部21には、通風開口部21を通過後の風向きが下方向となるように偏向ルーバー22が形成されている。
【0040】
このように構成した場合であっても、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、偏向ルーバー22による通風開口部21を通過する風の風向きのバリエーションを増やすことができる。
【0041】
[第2変形例]
<ファンシュラウド>
図10は、第2変形例におけるファンシュラウド4を後方からみた斜視図である。
図10は、前述の
図3に対応している。
図10に示すように、通風開口部21を、上下方向に長いスリット状に形成してもよい。この場合、複数の通風開口部21を、車幅方向に並べて配置する。このような構成のもと、通風開口部21を通過後の風は、車幅方向外側に向かう。
したがって、上述の第2変形例によれば、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、偏向ルーバー22による通風開口部21を通過する風の風向きのバリエーションを増やすことができる。
【0042】
[第3変形例]
また、上述の実施形態では、偏向ルーバー22は、シュラウド壁面11から前方(法線方向一方)に向かって突出された傾斜壁23と、傾斜壁23の前端から車幅方向内側に向かって屈曲延出された横壁24と、横壁24の長手方向両端とシュラウド壁面11との間を塞ぐ縦壁25と、を有している場合について説明した。さらに、傾斜壁23は、シュラウド壁面11から前方に向かうに従って徐々に車幅方向内側を向くように、シュラウド壁面11の法線方向に対して(面方向に対して)斜めに延出されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、傾斜壁23を、シュラウド壁面11から後方に向かって突出させてもよい。
【0043】
この場合、傾斜壁23を、シュラウド壁面11から後方に向かうに従って徐々に車幅方向外側を向くように延出する。これにより、通風開口部21を介して後方に抜ける風の向きは、車幅方向外側になる。
また、この場合、通風開口部21のうち、壁面側開口部21aが風の上流側に位置することになり、横壁側開口部21bが風の下流側に位置することになる。このため、壁面側開口部21aの短手方向の幅Wa、及び横壁側開口部21bの短手方向の幅Wbは、
Wa>Wb ・・・(2)
を満たす。
このように構成することで、通風開口部21を介した風の逆流を阻止できる。
【0044】
[第4変形例]
また、偏向ルーバー22を、以下のように形成してもよい。
図11は、第4変形例における偏向ルーバー22の軸方向に沿う断面図である。
図11に示すように、偏向ルーバー22を傾斜壁23のみで構成してもよい。横壁24(
図4参照)を形成しなくてもよい。このように構成した場合であっても、壁面側開口部21aの短手方向の幅Wa、及び横壁側開口部21bの短手方向の幅Wbを、上記式(1)を満たすようにすることにより、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0045】
[第5変形例]
図12は、第5変形例におけるシュラウド壁面11の一部断面図である。
上述の実施形態では、通風開口部21に偏向ルーバー22を一体成形し、壁面側開口部21aの短手方向の幅Wa、及び横壁側開口部21bの短手方向の幅Wbを、上記式(1)を満たすようにすることにより、通風開口部21における風の下流側の風圧を風の上流側の風圧よりも高くする場合について説明した。
しかしながらこれに限られるものではなく、
図12に示すように、通風開口部21の断面形状において、風の下流側における開口幅Kaを、風の上流側における開口幅Kbよりも小さくしてもよい。このように構成することで、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
[第6変形例]
上述の実施形態では、通風開口部21を一方向(周方向、上下方向及び車幅方向のいずれか)に長いスリット状に形成した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、通風開口部21はさまざまな形状とすることができる。例えば、通風開口部21を前後方向(軸方向)からみて円形状に形成し、この通風開口部21をシュラウド壁面11上に複数配置してもよい。
このように構成した場合であっても、上述の第5変形例のように通風開口部21における風の下流側の開口面積を風の上流側の開口面積よりも小さくすることにより、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。通風開口部21の開口面積の大きさは、シュラウド壁面11の前後の面で風圧の圧力差が生じる大きさとする。
【0047】
その他、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、送風装置1は、車両100の車載熱交換器102等を冷却するために用いられる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな冷却装置として送風装置1を用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…送風装置
2…ファンモータ
3…ファン
4…ファンシュラウド
7…シャフト
11…シュラウド壁面
21…通風開口部
21a…壁面側開口部
21b…横壁側開口部
22…偏向ルーバー
23…傾斜壁
24…横壁
100…車両
102…車載熱交換器(熱交換器)
105…エンジン
C…回転軸線
Wa,Wb…幅
Ka,Kb…開口幅