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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】運転者支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240718BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240718BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240718BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60W50/14
B60W40/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021018572
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121299
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】土屋 大樹
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-172966(JP,A)
【文献】特開平08-290726(JP,A)
【文献】特開2005-018651(JP,A)
【文献】特開2011-170593(JP,A)
【文献】特開2018-128834(JP,A)
【文献】特開2019-156146(JP,A)
【文献】特開2020-013182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
G07C 1/00 - 15/00
G08B 23/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム及びハブの間をスポークによって接続されたステアリングホイールと、運転者を撮像可能なカメラと、を備えた車両に搭載され、前記カメラで撮像された撮像画像に基づいて、前記運転者の支援を行う運転者支援システムであって、
前記撮像画像を処理すると共に前記撮像画像に基づき前記運転者の支援に係る制御を行う制御部を有し、
前記カメラは、前記車両のインストルメントパネル又はダッシュボードに設けられると共に、前記ステアリングホイールにおいて前記リム及び前記ハブの間に存在する内側領域と向き合う位置に配置されており、
前記制御部は、前記スポークが前記撮像画像を所定範囲で占有することを条件として、前記運転者の支援を行わない一方、前記撮像画像の所定範囲が、前記スポークにより占有された場合において、前記撮像画像の占有された時間が所定の閾値を下回ることを条件として、運転者の支援を継続すること、を特徴とする運転者支援システム。
【請求項2】
前記制御部が、前記撮像画像において前記スポークによって占有される範囲の大きさに基づいて、前記運転者の支援に係る制御対象への制御の態様を変更すること、を特徴とする請求項1に記載の運転者支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の運転者支援システムに関する。さらに詳しくは、車両における脇見検知や居眠り検知等による運転者の支援が可能な運転者支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転者が、適正な運転状態にあるか否かを判定し、運転者が適正な運転状態にないと判定した場合に、運転者に対して警告等を行う運転状態判定装置が知られている。上述した運転状態判定装置として、例えば、運転者が、脇見運転をしているか否かを判定し、運転者が脇見運転をしていると判定した場合に警報を発する脇見運転判定装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上述した特許文献1に係る発明では、車両を運転する運転者を撮像するための視線計測カメラ(単にカメラと称する)が設けられている。前記カメラは、車室内の運転席前側に設置するものとされている。上述した運転者の運転状態を判定するためのカメラは、多くの場合、運転者の撮像が干渉されないように車内のダッシュボード上やルームミラーの近傍、Aピラー等に設置されている。そのため、車内における意匠が損なわれる問題が発生している。そこで、上述した車内の意匠性を向上すべく、例えば、インストルメントパネルのメータ内に前記カメラを配置することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-39933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにインストルメントパネル内にカメラを配置する場合は、カメラを目立たなくすることができるので、意匠性は改善されると考えられる。しかしながら、インストルメントパネルは、ステアリングホイール(単にステアリングとも称する)と対向するように配置されているため、運転者のステアリングの操作により、前記ステアリングとカメラとの干渉が生じる問題がある。すなわち、ステアリングは、リム及びハブの間にスポークを有するため、前記スポークがステアリングの舵角によってカメラと干渉する問題がある。
【0006】
ところで、特許文献1に係る脇見運転判定装置は、運転者の運転中は、カメラにより運転者の顔を撮像し、撮像された撮像画像に基づいて、運転者の視線の動きを判定することにより、運転者の脇見の有無を判定している。そのため、上述のように、インストルメントパネル内にカメラを設けた場合は、頻繁にスポークによる干渉を受け、誤検知される問題が生じる。その結果、頻繁に警報が発せられ、運転者の運転を阻害することが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、車両における車内の意匠性を損なうことなく、精度の良い運転者の支援が可能な運転者支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の運転者支援システムは、リム及びハブの間をスポークによって接続されたステアリングホイールと、運転者を撮像可能なカメラと、を備えた車両に搭載され、前記カメラで撮像された撮像画像に基づいて、前記運転者の支援を行う運転者支援システムであって、前記撮像画像を処理すると共に前記撮像画像に基づき前記運転者の支援に係る制御を行う制御部を有し、前記カメラは、前記車両のインストルメントパネル又はダッシュボードに設けられると共に、前記ステアリングホイールにおいて前記リム及び前記ハブの間に存在する内側領域と向き合う位置に配置されており、前記制御部は、前記スポークが前記撮像画像を所定範囲で占有することを条件として、前記運転者の支援を行わないこと、を特徴とするものである。
【0009】
上述した運転者支援システムは、車両に搭載されるカメラがインストルメントパネルやダッシュボードに設けられており、ステアリングホイールにおいてリム及びハブの間に存在する内側領域と向き合う位置に配置されている。そのため、車両における車内の意匠性が損なわれることがない。また、運転者のステアリングホイールの操作に伴い、スポークが撮像画像を占有した場合は、運転者に対しての支援が行われないため、頻繁に運転者の支援が行われることがない。ここで、運転者の支援は、例えば、運転者に異常が認められた際の警報音の発報や警告の表示が挙げられる。従って、警報音の発報や警告の表示が頻繁に行われることにより、運転者の運転が阻害されることを抑制できる。これらにより、車両における車内の意匠性を確保しつつ、運転者の運転を阻害しない運転者支援システムを提供することができる。
【0010】
(2)上述した本発明の運転者支援システムは、前記制御部が、前記撮像画像において前記スポークによって占有される範囲の大きさに基づいて、前記運転者の支援に係る制御対象への制御の態様を変更するとよい。
【0011】
上述した運転者支援システムは、スポークによって撮像画像が占有される範囲の大きさ(占有レベルとも称する)に応じて、運転者に対する支援に係る制御対象への制御の態様を変更できる。ここで、運転者の支援に係る制御対象への制御の態様の変更は、例えば、運転者の異常検知と判断される場合の警報音の大きさや、警報音の間隔を増加又は減少させるものとできる。これにより、例えば、スポークによって撮像画像の占有される範囲の大きさが、小さい場合は、運転者の異常として、警報音の音量を大きくすることができる。また、スポークによって撮像画像の占有される範囲の大きさが大きい場合は、カメラがスポークによって遮蔽されたものとして、警報音の音量を小さくすることができる。このように、撮像画像の占有レベルに応じて運転者の支援に係る制御を行うことにより、より正確に運転者の支援を行うことができる。
【0012】
(3)上述した本発明の運転者支援システムは、前記車両が、前記ステアリングホイールの舵角を検知する舵角検知部を備えており、前記制御部が、前記舵角検知部で検知される前記舵角に基づいて、前記運転者の支援を行うとよい。
【0013】
かかる構成によれば、ステアリングホイールの舵角に基づいた正確な制御を行うことができる。従った、精度の良い運転者の支援を行うことができる。また、検知したステアリングホイールの舵角に基づいて、予測的に運転者の支援を行うことも可能である。
【0014】
(4)上述した本発明の運転者支援システムは、前記撮像画像の50%以上が、前記スポークにより占有されることを条件として、前記制御部による制御が停止されるとよい。
【0015】
かかる構成によれば、制御部による制御の停止が、頻繁に行われ過ぎることを抑制できる。すなわち、撮像画像に影響を及ぼすような場合において、制御部による制御が停止される。これにより、撮像画像に影響がない場合は、制御部による制御が継続されるので、精度の良い運転者の支援を行うことができる。また、制御切り替えのタイムラグによる撮像画像の欠落を抑制できる効果が期待できる。
【0016】
(5)上述した本発明の運転者支援システムは、前記撮像画像の所定範囲が、前記スポークにより占有された場合において、前記撮像画像の占有された時間が所定の閾値を下回ることを条件として、前記制御部による運転者の支援が継続されるとよい。
【0017】
かかる構成によれば、スポークによる撮像画像の占有が、短時間(例えば、閾値が1s)の場合に制御部による制御が停止されることを抑制できる。これにより、制御切り替えのタイムラグによる撮像画像の欠落を抑制できる効果が期待できる。ここで、閾値は、使用するカメラの性能やスポークの形状等に応じて、各種の値に設定することができる。
【0018】
(6)上述した本発明の運転者支援システムは、前記運転者の支援が、前記運転者の脇見検知、居眠り検知、運転姿勢検知の少なくとも1つに対して行われるとよい。
【0019】
上述した運転者支援システムは、運転者の脇見検知、居眠り検知、及び運転姿勢検知における運転者の支援を効果的に行うことができる。また、これらの検知を、車両の意匠性を損なうことなく提供することが可能である。ここで、運転者の支援は、運転者の脇見検知、居眠り検知、及び運転姿勢検知のいずれか1つ又は、複数の組み合わせにより行うことができる。
【0020】
(7)上述した本発明の運転者支援システムは、前記カメラが、前記インストルメントパネル又は前記ダッシュボードにおけるメータ内に配置されているとよい。
【0021】
かかる構成によれば、カメラをより目立たなくすることができる。これにより、車内の意匠性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両における車内の意匠性を損なうことなく、精度の良い運転者の支援が可能な運転者支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る運転者支援システムを搭載した車両の一実施形態を表すイメージ図である。
図2】本発明に係る運転者支援システムを搭載する車両の運転席周りの拡大図である。
図3】本発明に係る運転者支援システムの一実施形態を表す構成図である。
図4】(a)及び(b)は、本発明に係る運転者支援システムの動作を説明する説明図である。
図5】本発明に係る運転者支援システムにおける制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る運転者支援システム10の一実施形態について、図1図3を参照しながら以下に詳細を説明する。まず、運転者支援システム10が搭載される車両1の構成について説明する。
【0025】
≪車両の構成について≫
図1図3に示すように、車両1は、運転席周りに設けられるインストルメントパネル3と、運転者D(図1参照)が操作するためのステアリングホイール2(ステアリング2とも称する)と、インストルメントパネル3に設けられたメータ4と、運転者Dを撮像可能なカメラ5と、を備えている。車両1は、前記の他、車両1の各種の制御を統括的に行う車両ECU8(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)と、警報音等を発するスピーカー6と、ステアリングホイール2の舵角を検知する舵角検知部7等を備えている。また、車両1は、本発明に係る運転者支援システム10による運転者の支援に係る制御を司る制御部11を備えている。
【0026】
図2は、車両1の運転席周りの拡大図である。インストルメントパネル3は、車両1における車内の前方側に形成されており、メータ4(メータ表示部4a)やステアリングホイール2が設けられている。また、前記の他、インストルメントパネル3は、各種の操作スイッチやエアコン吹き出し口等を備えている。ここで、インストルメントパネル3は、ダッシュボード9を含んでいてもよい。
【0027】
ステアリングホイール2は、車両1のインストルメントパネル3に回転可能に支持されている。ステアリングホイール2は、円環状に形成されたリム2bと、リム2bの中心に位置し、回転軸(図示せず)に支持されるハブ2cと、リム2b及びハブ2cの間を接続するスポーク2a等により形成されている。ステアリングホイール2は、運転者Dの操舵による回転が可能であり、ステアリングホイール2を回転させることにより、車両1を方向転換させることができる。ステアリングホイール2の操舵は、適宜、電動パワーステアリングや油圧式パワーステアリング等の機構により補助するようにすればよい。また、ステアリングホイール2は、適宜、高さの調整が可能なチルト機構や前後方向の調整が可能な機構を有するものとしてもよい。
【0028】
メータ4は、インストルメントパネル3に設けられており、ステアリングホイール2におけるリム2b及びハブ2cの間に存在する内側領域と向き合う位置に配置されている。また、メータ4は、メータ表示部4aを有している。メータ表示部4aは、例えば、速度表示、変速機に係るシフト表示、警告表示等の各種の表示を行うことができる。運転者Dは、メータ4を、ステアリングホイール2におけるリム2b及びハブ2cの間に存在する内側領域を介して確認することができる。従って、メータ4は、ステアリングホイール2の操作により、スポーク2aに遮蔽されることがある。
【0029】
カメラ5は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を有しており、運転者Dを撮像することができる。カメラ5は、本実施形態では、インストルメントパネル3におけるメータ4内に配置されている。すなわち、カメラ5は、メータ4と同様に、ステアリングホイール2におけるリム2b及びハブ2cの間に存在する内側領域と向き合う位置に配置されている。従って、カメラ5は、ステアリングホイール2におけるリム2b及びハブ2cの感に存在する内側領域を介して運転者Dを撮像することができる。
【0030】
また、カメラ5は、適宜、赤外線カメラを用いることができる。カメラ5を赤外線撮像が可能なものとすることにより、車内が夜間のように暗い場合でも、運転者Dを確実に撮像することができる。カメラ5により撮像された撮像画像は、後述する制御部11に送信される。なお、カメラ5をメータ4内に設けない場合は、インストルメントパネル3やダッシュボード9に内蔵するとよい。これにより、意匠性を損なうことなく、カメラ5を設けることができる。また、カメラ5は、車両1に最初から搭載されるものだけではなく、後付けで搭載することも可能である。
【0031】
車両ECU8は、例えば、CPUやRAM等を搭載したマイコンで形成されており、車両1におけるエンジン等の駆動制御や変速機の制御等、車両1における各種の制御を統括的に行うことができる。車両ECU8は、後述する制御部11とCAN(Controller Area Network)により接続されており、制御部11との通信が可能である。なお、車両ECU8は、単一のものだけではなく、制御毎に複数設けられていてもよい。
【0032】
スピーカー6は、例えば、車両1におけるドアに内蔵されている(図1参照)。スピーカー6は、車両1における各種の音声を出力することができる。スピーカー6は、制御部11と接続されており、制御部11からの音声出力(例えば、警報音の発報)が可能である。なお、スピーカー6は、適宜の位置に適宜の個数を設けることができる。
【0033】
舵角検知部7は、ステアリングホイール2の舵角を検知可能な舵角センサにより形成されている。舵角検知部7は、例えば、ステアリングホイール2の回転軸(図示せず)の回転を検知可能な場所に設けることができる。例えば、電動パワーステアリングを用いる場合は、ステアリングホイール2の回転を支援する駆動モータ(図示せず)の回転数を検知すればよい。舵角検知部7は、車両ECU8を介して、制御部11とCANにより接続されており、制御部11に対して検知したステアリングホイール2の舵角を出力することができる。以上が、本発明の運転者支援システム10に用いられる車両1の構成であり、次に運転者支援システム10の構成について、以下に詳細を説明する。
【0034】
≪運転者支援システムの構成について≫
図3に示すように、運転者支援システム10は、当該システムにおける制御を司る制御部11を有している。制御部11は、例えば、CPUやRAM等を搭載したマイコンで形成されており、運転者D(図1参照)の支援を行うことができる。ここで、運転者Dの支援は、本実施形態においては、運転者Dの脇見検知、居眠り検知、及び運転姿勢検知(これらを総称して、運転者状態検知又はドライバーズモニターシステムとも称する)に関するものとされている。
【0035】
制御部11は、カメラ5で撮影された撮像画像を受信し、取得した撮像画像に基づいて、運転者Dの支援を行うことができる。ここで、運転者Dの支援は、例えば、運転者状態検知によって、運転者Dの脇見や居眠りなどの異常を検知した場合に行われる警報音の発報が例示される。運転者Dの支援は、警報音の発報に代えて、あるいは、警報音と共にメータ4(メータ表示部4a)に警告を表示するものとしてもよい。
【0036】
以上が、運転者支援システム10の構成であり、次に、運転者支援システム10における制御について、図5の制御フロー図に基づき、適宜、図4を参照しながら、以下に詳細を説明する。
【0037】
車両1の起動(イグニッションのオン)により、運転者支援システム10の制御が開始されると、運転者状態検知における各検知項目のキャリブレーション(校正)が行われる(ステップS1)。各検知項目のキャリブレーションでは、例えば、運転者状態検知に用いられるカメラ5や舵角検知部7等の各機器が正常に動作しているかなどの確認や各機器の動作の初期化などが行われる。
【0038】
各検知項目のキャリブレーションが完了すると、カメラ5による撮像が開始され、撮像画像が取得される。取得された撮像画像は、制御部11に転送される。制御部11は、運転者Dを検知したか否かの判定を行う(ステップS2)。
【0039】
ステップS2において、運転者Dが検知されない場合は、ステアリングホイール2の角度(舵角)が、運転者検知に影響を及ぼす角度であるか否かの判定が行われる(ステップS3)。ここで、ステアリングホイール2の角度の判定は、舵角検知部7による直接的な舵角検知によるものや、撮像画像を制御部11等で画像処理して間接的に得るものなど各種の方法で取得することができる。
【0040】
次に、ステアリングホイール2の角度の判定についての詳細について、図4(a)及び図4(b)を参照しながら説明する。
【0041】
図4(a)及び図4(b)は、ステアリングホイール2の操舵により、カメラ5が遮蔽される様子を図示したものである。図4(a)に示すように、ステアリングホイール2が中立の位置に位置する場合は、カメラ5はスポーク2aに遮蔽されることがない。そのため、カメラ5による撮像画像は、スポーク2aに占有されることがない。運転者Dがステアリングホイール2を左方向に操舵すると、図4(b)に示すように、スポーク2aがリム2bと一体に左回転し、スポーク2aがカメラ5を遮蔽する。これにより、撮影画像の所定範囲が、スポーク2aによって占有される。すなわち、運転者Dが検知されない状態となる。
【0042】
ここで、スポーク2aは、ステアリングホイール2において、所定の角度で形成されているため、スポーク2aにより占有される撮像画像の範囲は、ステアリングホイール2の角度に応じて決定される。従って、舵角検知部7により、ステアリングホイール2の角度が所定の角度となった場合に、スポーク2aが前記撮像画像を所定範囲で占有したものと判定することができる。なお、上述したステップS3(図5参照)において、舵角検知部7を用いずに、撮影画像の画像処理によって、ステアリングホイール2の角度が判定されてもよい。また、ステアリングホイール2の舵角に基づいて、予測的に運転者Dの支援が行われてもよい。
【0043】
図5に示すように、ステップS3において、ステアリングホイール2の角度が運転者検知に影響を及ぼす角度である場合は、制御部11による処理がステップS2に戻され、運転者Dの検知判定が再度行われる。すなわち、スポーク2aが撮像画像を所定範囲で占有することを条件として、後述するステップS4~ステップS6(脇見検知、居眠り検知、運転姿勢検知)による運転者Dの支援が抑制される。
【0044】
また、ステップS3において、ステアリングホイール2の角度が運転者検知に影響のある角度ではない場合は、運転者Dに何らかの異常が発生したものとして、警報音が発報される(ステップS7)。警報音の発報が行われると、再び、ステップS1からの処理が繰り返し行われる。なお、ステップS7の処理完了後、ステップS2の運転者検知に処理が戻されてもよい。
【0045】
上述したステップS2において、運転者Dが検知された場合は、運転者が脇見しているか否かが判定される(ステップS4)。ここで、脇見検知は、公知な各種の手段を用いることができる。例えば、撮像画像に基づいて、運転者Dの視線が、所定範囲以上、本来の視線位置からずれている場合に運転者Dが脇見をしていると判定すればよい。ステップS4において、運転者Dの脇見が検知された場合は、上述したステップS7に処理が進められ、警報音の発報が行われる。
【0046】
ステップS4において、運転者Dの脇見が検知されない場合は、運転者Dが居眠りしているか否かの検知が行われる(ステップS5)。ここで、居眠り検知は、公知な各種の手段を用いることができる。例えば、撮像画像に基づいて、運転者Dの瞳が、所定時間以上閉じていると判定される場合に運転者Dが居眠りをしているものと判定すればよい。ステップS5において、運転者Dの居眠りが検知された場合は、上述したステップS7に処理が進められ、警報音の発報が行われる。
【0047】
ステップS5において、運転者Dの居眠りが検知されない場合は、運転者Dの運転姿勢が適切か否かの検知が行われる(ステップS6)。ここで、運転者姿勢検知は、公知な各種の手段を用いることができる。例えば、撮像画像に基づいて、運転者Dの姿勢が、所定時間以上傾いていると判定される場合に運転者Dの姿勢が適切ではないものと判定すればよい。ステップS6において、運転者Dの居眠りが検知された場合は、上述したステップS7に処理が進められ、警報音の発報が行われる。ステップS6において、運転者姿勢が適切であると判定された場合は、ステップS1に戻って処理が繰り返し行われる。なお、ステップS6の処理完了後に、ステップS2の運転者検知に処理が戻されてもよい。
【0048】
上述したように、本発明の運転者支援システム10では、運転者Dのステアリングホイール2の操作に伴い、スポーク2aが撮像画像を占有した場合に、運転者Dに対して支援(運転者状態検知や警報発報等)が行われない。そのため、頻繁に運転者の支援が行われることがない。これにより、運転者への支援が頻繁に行われて、運転者の運転を阻害することを抑制することができる。これらにより、車両1における車内の意匠性を確保しつつ、運転者Dの運転を阻害しない運転者支援システム10を提供することができる。以上が、本発明の運転者支援システム10に係る制御フローである。次に、上述したステップS3におけるステアリングホイール2の角度の判定の変形例について、以下に説明する。なお、判定の方法が異なる以外は、構成が同様であるため、説明を省略する。
【0049】
≪変形例1≫
上述した実施形態では、ステアリングホイール2の角度が、運転者検知に影響を及ぼす角度であるか否かを判定しているが、変形例1では、制御部11が、撮像画像においてスポーク2aによって占有される範囲の大きさ(占有レベルとも称する)に基づいて、運転者Dの支援内容を変更するものとされている。ここで、運転者Dの支援内容の変更は、例えば、運転者の異常検知と判断される場合の警報音の大きさや、警報音の間隔を増加又は減少させるものとできる。これにより、例えば、スポーク2aによって撮像画像の占有される範囲の大きさが、小さい場合(例えば、撮像画像の50%未満)は、運転者Dの異常として、警報音の音量を大きくすることができる。また、スポーク2aによって撮像画像の占有される範囲の大きさが、大きい場合(例えば、撮像画像の50%以上)は、カメラ5がスポーク2aによって遮蔽されたものとして、警報音の音量を小さくすることができる。このように、変形例1では、より細かい制御により、より正確に運転者Dの支援を行うことができる。なお、占有レベルの閾値は、適宜、設定すればよい。また、占有レベルの段階に応じて、複数の閾値が設定されるものとしてもよい。
【0050】
≪変形例2≫
変形例2では、カメラ5により撮像された撮像画像の50%以上が、スポーク2aにより占有されることを条件として、制御部11による制御が停止される。すなわち、カメラ5がスポーク2aに50%以上遮蔽される場合は、カメラ5により正確に撮像画像が得られなくなる可能性が高くなるため、制御部11による運転者Dの制御を停止させるものである。これにより、運転者状態検知による誤検知を抑制することができる。また、制御部11による制御の停止が、頻繁に行われ過ぎることを抑制できる。すなわち、撮像画像に影響を及ぼすような場合において、制御部11による制御が停止される。これにより、撮像画像に影響がない場合は、制御部11による制御が継続されるので、精度の良い運転者の支援を行うことができる。また、制御切り替えのタイムラグによる撮像画像の欠落を抑制できる効果が期待できる。
【0051】
≪変形例3≫
変形例3では、撮像画像の所定範囲が、スポーク2aにより占有された場合において、前記撮像画像の占有された時間が所定の閾値を下回ることを条件として、制御部11による運転者Dの支援が継続されるものである。すなわち、スポーク2aによる撮像画像の占有が、短時間(例えば、閾値が1s)の場合に制御部11による制御が停止されることを抑制できる。これにより、制御切り替えのタイムラグによる撮像画像の欠落を抑制できる効果が期待できる。ここで、閾値は、使用するカメラの性能やスポークの形状等に応じて、各種の値に設定することができる。
【0052】
以上が、本発明に係る運転者支援システム10の実施形態であるが、本発明の運転者支援システム10は、上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変形を行うことができる。
【0053】
例えば、運転者支援システム10に用いられる車両1が備えるステアリングホイール2の形状や大きさは、各種の形状や大きさのものを採用することができる。また、スポーク2aの大きさや設けられる個数も各種の大きさや個数のものを採用することができる。また、車両1に搭載されるカメラ5も各種の大きさや性能のものを用いることができ、カメラ5の個数も単数だけではなく、複数のものとしてもよい。また、カメラ5は、車両1に最初から据え付けされるものだけではなく、後付けで搭載されるものでもよい。
【0054】
本実施形態では、カメラ5が、インストルメントパネル3のメータ4内に設けられるものとしたが、カメラ5は、本発明の目的を達成できる範囲で、各種の位置に設けることができる。例えば、カメラ5が、メータ4以外のインストルメントパネル3又はダッシュボード9に設けられるものであってもよい。かかる場合は、意匠性を損なわないように、インストルメントパネル3やダッシュボード9に内蔵すると良い。また、ステアリングホイール2が高さ調整のチルト機構や前後方向調整の機構を有するものである場合は、ステアリングホイール2の高さや前後方向の距離に応じて、撮像画像の占有レベルやステアリングホイール2の角度を設定することも可能である。
【0055】
本実施形態では、車両1にメータ4、カメラ5、スピーカー6、舵角検知部7、車両ECU8が搭載されているものとしたが、これらの機器のいずれか1つ又は複数が、運転者支援システム10に搭載されていてもよい。また、警報音の発報に代えて、警告の表示等を行う場合は、スピーカー6を搭載しなくてもよい。
【0056】
本実施形態では、スポーク2aが撮像画像を所定範囲で占有することを条件として、運転者Dの支援を行わないようにしているが、撮像画像が占有される範囲の大きさは、適宜、設定により変更することが可能である。また、本実施形態では、運転者Dの支援が、脇見検知、居眠り検知、運転者姿勢検知によるものとしているが、本発明は、これらに限定されるものではなく、カメラ5に基づく各種の運転者Dの支援に利用することができる。また、本実施形態では、運転者Dの支援において警報音の発報がスピーカー6により行われるものとしているが、警報音の発報に代え、あるいは、警報音の発報と共に、例えば、メータ4やナビゲーションシステムの画面等に警告が表示されるものとしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、制御部11が、舵角検知部7で検知される舵角に基づいて、運転者Dの支援を行うようにしているが、舵角検知部7を用いずに撮像画像の占有範囲に基づいて、運転者Dの支援制御を行うようにしてもよい。かかる場合は、撮像画像を画像処理によって処理するとよい。
【0058】
変形例2では、撮像画像の50%以上が、スポーク2aにより占有されることを条件として、制御部11による制御が停止されるようにしているが、スポーク2aにより占有される撮像画像の範囲は、適宜、変更することが可能である。例えば、撮像画像の30%以上がスポーク2aにより占有されることを条件としたり、例えば、撮像画像の70%以上がスポーク2aにより占有されることを条件としたりすることが可能である。
【0059】
また、変形例3では、撮像画像のスポーク2aによって占有された時間が所定の閾値を下回ることを条件として、制御部11による運転者Dの支援が継続されるようにしているが、前記閾値は、適宜の値に設定することができる。
【0060】
以上が、本発明に係る運転者支援システム10の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の運転者支援システムは、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池車等の各種の車両に利用することができる。また、本発明の運転者支援システムは、各種の車両に搭載される脇見検知、居眠り検知、運転姿勢検知等の運転者の運転状態を、カメラを用いて判定するシステムに好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
D :運転者
1 :車両
2 :ステアリングホイール(ステアリング)
2a:スポーク
2b:リム
2c:ハブ
3 :インストルメントパネル
4 :メータ
5 :カメラ
6 :スピーカー
7 :舵角検知部(舵角センサ)
8 :車両ECU
9 :ダッシュボード
10 :運転者支援システム
11 :制御部
図1
図2
図3
図4
図5