(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】駆動装置、モータ装置及び送風装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240718BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20240718BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02K11/33
(21)【出願番号】P 2021034496
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大兼 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 光和
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-226181(JP,A)
【文献】特開2011-119600(JP,A)
【文献】特開2009-182182(JP,A)
【文献】特開2018-182162(JP,A)
【文献】特開2014-060248(JP,A)
【文献】国際公開第2020/049772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の駆動制御を行うための制御基板と、
前記制御基板の一面に実装されたコネクタ、雑防素子、前記電気機器の電力制御を行う電力変換部、及び前記電力変換部の駆動制御を行う制御部と、
前記制御基板が収納されるケースと、
を備え、
前記ケースにおける前記制御基板の前記一面とは反対側の他面と対向する壁面は、
前記コネクタ、前記雑防素子、及び前記電力変換部と対向する箇所に設けられた凹凸形成領域と、
前記制御部と対向する箇所に設けられた非凹凸形成領域と、
を有し、
前記凹凸形成領域に、凹凸部が形成されている
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記ケースの前記壁面と、前記制御基板の前記他面とは、基板熱伝達部を介して接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ケースの前記壁面から前記制御基板側に向かって突出形成され、前記制御基板が載置される台座を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記台座上に形成された位置決め凸部と、
前記制御基板の前記位置決め凸部に対応する箇所に形成され、前記位置決め凸部が嵌め込まれる位置決め孔部と、
を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記凹凸部は、ディンプル形状である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記凹凸部は、前記ケースの壁面から前記制御基板とは反対側の外方に向かって凸となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記雑防素子は、前記制御基板の側辺に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記雑防素子と、前記ケースにおける前記雑防素子と前記制御基板の面方向で対向する側壁とは、素子熱伝達部を介して接続されている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記ケースにおける前記雑防素子と前記制御基板の面方向で対向する側壁に形成され、前記ケースを他の部位に固定するための固定部を有する
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記ケースは、金属板により形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の駆動装置と、
前記電気機器であるモータ部と、
を備える
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のモータ装置と、
前記モータ部に取り付けられるファンと、
を備える
ことを特徴とする送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、モータ装置及び送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のラジエータ冷却用の送風装置として、モータと、このモータの駆動制御を行う駆動装置と、が一体化されたものがある。このものは、モータの軸方向に駆動装置が並んで配置されている。駆動装置は、モータが固定されるケースと、ケース内に収納される制御基板と、を備える。制御基板には、外部電源が接続されるコネクタと、モータへ供給される電力を制御するスイッチング素子等からなる電力変換部と、電力変換部の駆動制御を行うIC等からなる制御部と、ノイズ除去用の雑防素子であるコンデンサと、等が実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の従来技術にあっては、モータや駆動装置は共に発熱するので、駆動装置を熱害から保護するために駆動装置を効率よく放熱させることが重要である。
しかしながら、単純にケースに放熱用のヒートシンク等を設けると、送風装置全体が大型化してしまうとともに、ヒートシンクを設ける分製造コストが増大してしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、製造コストを抑制しつつ放熱効果を高めることができる駆動装置、モータ装置及び送風装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る駆動装置は、電気機器の駆動制御を行うための制御基板と、前記制御基板の一面に実装されたコネクタ、雑防素子、前記電気機器の電力制御を行う電力変換部、及び前記電力変換部の駆動制御を行う制御部と、前記制御基板が収納されるケースと、を備え、前記ケースにおける前記制御基板の前記一面とは反対側の他面と対向する壁面は、前記コネクタ、前記雑防素子、及び前記電力変換部と対向する箇所に設けられた凹凸形成領域と、前記制御部と対向する箇所に設けられた非凹凸形成領域と、を有し、前記凹凸形成領域に、凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るモータ装置は、上記に記載の駆動装置と、前記電気機器であるモータ部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る送風装置は、上記に記載のモータ装置と、前記モータ部に取り付けられるファンと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケースの壁面を、特に放熱効果を高めたい箇所(比較的温度が高くなる素子のある場所)の凹凸形成領域と、放熱効果を優先する必要のない箇所(比較的温度が低い素子のある場所)の非凹凸形成領域と、に分け、凹凸形成領域のみに凹凸部を形成しているので、ケースの壁面全体に凹凸部を形成する場合と比較して製造コストを低減できる。また、必要な箇所に凹凸部を形成することで表面積をできる限り確保することで、放熱効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態におけるファン装置の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態におけるモータ装置のブロック図。
【
図3】本発明の実施形態におけるケース及び制御基板の分解斜視図。
【
図4】本発明の実施形態におけるケース及び制御基板をモータ部側からみた平面図。
【
図5】本発明の実施形態におけるケースをモータ部側からみた平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
<ファン装置>
図1は、ファン装置1の斜視図である。
図1は、説明を分かりやすくするために、各部の縮尺を適宜変更している。
図1に示すように、ファン装置1は、モータ装置2とモータ装置2に取り付けるファン3と、を備える。ファン装置1は、例えば車両のエンジンルーム等に設けられるラジエータ(いずれも図示しない)に冷却風を通すことで、ラジエータを冷却する。ファン3としては、例えば軸流ファンが用いられる。
【0013】
<モータ装置>
図2は、モータ装置2のブロック図である。
図1、
図2に示すように、モータ装置2は、モータ部4と、モータ部4と軸方向で並んで配置されるとともにモータ部4を支持し、かつモータ部4の駆動制御を行う駆動装置5と、を備える。モータ部4は、例えばブラシレスモータで、例えばアウタロータ型のモータである。モータ部4は、図示しないステータと、このステータの周囲を駆動装置5とは反対側から覆う有底筒状のロータ6と、を備える。このロータ6に、ファン3が取り付けられている。
【0014】
<駆動装置>
駆動装置5は、一面7aにモータ部4の図示しないステータが固定される板状のベース部(請求項における他の部位の一例)7と、ベース部7の一面7aとは反対側の他面7bに固定されるケース8と、ケース8に収納されモータ部4の駆動制御を行うための制御基板9と、を主構成としている。
【0015】
ベース部7は、厚さ方向からみて一方向に長い長方形状に形成されている。ベース部7には、厚さ方向からみて長手方向の一端と、短手方向の両端とに、それぞれベース取付座10が一体成形されている。ベース取付座10は、ベース部7の面方向に沿って外側に張り出している。ベース取付座10には、図示しないボルトが挿通される貫通孔10aが形成されている。これら貫通孔10aに図示しないボルトを挿通し、例えば図示しないファンシュラウドにベース部7を締結固定する。
【0016】
また、ベース部7には、厚さ方向からみて長手方向の他端に、電源用コネクタハウジング11a及び信号用コネクタハウジング11bが設けられている。電源用コネクタハウジング11aには、外部電源Gdから延びる図示しない外部電源コネクタが嵌着される。電源用コネクタハウジング11a内に、図示しない電源用端子が設けられている。この電源用端子が、外部電源コネクタに接続される。また、信号用コネクタハウジング11bには、外部制御機器Gsから延びる図示しない外部信号コネクタが嵌着される。信号用コネクタハウジング11b内に、図示しない信号用端子が設けられている。この信号用端子が、外部信号コネクタに接続される。
【0017】
<制御基板>
図3は、ケース8及び制御基板9の分解斜視図である。
図4は、ケース8及び制御基板9をモータ部4側からみた平面図である。
図2から
図4に示すように、制御基板9は、例えばいわゆるプリント基板である。制御基板9は、厚さ方向からみてベース部7の形状に対応するように一方向に長い長方形状に形成されている。すなわち、制御基板9は、2つの短辺9a,9b(第1短辺9a、第2短辺9b)と、2つの長辺9c,9d(第1長辺9c、第2長辺9d)と、を有する。
【0018】
2つの短辺9a,9bは、制御基板9の厚さ方向からみて、制御基板9の長手方向で対向している。2つの長辺9c,9dは、制御基板9の厚さ方向からみて、制御基板9の短手方向で対向している。制御基板9の面方向は、ベース部7の面方向に沿っている。また、制御基板9の第2短辺9bの位置と、ベース部7に設けられた各コネクタハウジング11a,11bの位置とが一致している。
【0019】
制御基板9のベース部7側の一面9eには、モータ部4から延びる図示しないモータ端子に接続されモータ部4に電力を供給するためのモータコネクタ(請求項におけるコネクタの一例)12と、電源用コネクタハウジング11aの電源用端子、及び信号用コネクタハウジング11bの信号端子に接続される外部機器コネクタ(請求項におけるコネクタの一例)13と、雑防素子である複数(例えば、本実施形態では7つ)のコンデンサ16と、モータ部4への電力制御を行う電力変換部14と、電力変換部14の駆動制御を行う制御部15と、が実装されている。
【0020】
モータコネクタ12は、制御基板9の第1短辺9aに沿って配置されている。モータコネクタ12は、制御基板9の第1短辺9aのほぼ全体に渡って延びている。
外部機器コネクタ13は、制御基板9の第2短辺9bに沿って配置されている。制御基板9の厚さ方向からみて、外部機器コネクタ13の長さは、第2短辺9bの長さよりも若干短い。そして、外部機器コネクタ13は、第2短辺9bの中央からやや第1長辺9c寄りに配置されている。
【0021】
複数のコンデンサ16は、制御基板9の第1長辺9cに沿って配置されている。
電力変換部14は、例えば、3つの電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)17を備える。電力変換部14は、制御基板9の厚さ方向からみて、制御基板9の長手方向中央よりもモータコネクタ12寄りの第1領域A1に配置されている。電力変換部14のうち、各電界効果トランジスタ17は、モータコネクタ12を挟んで第1短辺9aとは反対側に、制御基板9の短手方向に沿って並んで配置されている。
【0022】
制御部15は、例えば、マイコン(Micro Computer)18や制御IC(Integrated Circuit)19を備える。制御部15は、電力変換部14よりも制御基板9の第2短辺9b側で、かつ外部機器コネクタ13やコンデンサ16が配置されている領域を除いた第2領域A2に配置されている。制御部15のうち、制御IC19は、制御基板9の厚さ方向からみて制御基板9の長手方向中央でかつ短手方向中央からやや第2長辺9dよりに配置されている。マイコン18は、制御IC19よりも制御基板9の第2短辺9b側に配置され、かつ制御IC19と制御基板9の長手方向に沿って並んで配置されている。
【0023】
この他に、制御基板9には、第1短辺9aと第2長辺9dとの間の角部9gと、第2短辺9bと第1長辺9cとの間の角部9hとに、それぞれ厚さ方向に貫通する位置決め孔部20a,20bが形成されている。各位置決め孔部20a,20bは、ケース8に対する制御基板9の位置決め用に用いられる。
【0024】
<ケース>
図5は、ケース8をモータ部4側からみた平面図である。
図5のケース8の向きは、
図4のケース8及び制御基板9の向きと一致している。
図1、
図3から
図5に示すように、ケース8は、金属板にプレス加工を施すことにより、ベース部7側に開口部8aを有する箱状に形成されている。すなわち、ケース8は、底壁(請求項における壁面の一例)8bと、底壁8bの周縁からベース部7側に向かって屈曲延出された側壁8cと、を有する。底壁8bは、制御基板9の厚さ方向からみて制御基板9の形状に対応するように一方向に長い長方形状に形成されている。
【0025】
このような底壁8bに、制御基板9が一面9eとは反対側の他面9fを向けて配置される。すなわち、底壁8bは、制御基板9の他面9fと対向している。底壁8bの4つの角部8e,8f,8g,8hには、台座21a,21b,21c,21dが底壁8bから開口部8a側に向かって突出形成されている。台座21a~21dは、制御基板9の他面9fが載置される箇所である。台座21a~21d上に載置された制御基板9の他面9fと底壁8bとの間には、一定の間隙が形成される。
【0026】
図6は、
図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図3から
図6に示すように、4つの台座21a~21dのうち、制御基板9の位置決め孔部20a,20bが形成されている箇所に対応する2つの台座21a,21cには、位置決め凸部22a,22bが突出形成されている。これら位置決め凸部22a,22bに、位置決め孔部20a,20bが嵌め込まれる。この位置決め凸部22a,22bと制御基板9の位置決め孔部20a,20bとにより、ケース8に対する制御基板9の位置決めが高精度に行われる。
【0027】
ここで、
図3から
図5に示すように、底壁8bには、凹凸形成領域Akと、非凹凸形成領域Ahと、が設けられている。凹凸形成領域Akは、底壁8bのうち、各台座21a~21d上に制御基板9の他面9fを載置した状態で、制御基板9に実装された各コネクタ12,13、電力変換部14、及びコンデンサ16と制御基板9の厚さ方向で対向する箇所に設けられている。非凹凸形成領域Ahは、底壁8bのうち、凹凸形成領域Akを除いた箇所に設けられている。換言すれば、非凹凸形成領域Ahは、各台座21a~21d上に制御基板9の他面9fを載置した状態で、制御基板9に実装された制御部15と制御基板9の厚さ方向で対向する箇所に設けられている。
【0028】
底壁8bの凹凸形成領域Akには、底壁8bから制御基板9とは反対側に突出する複数の凸部(請求項における凹凸部の一例)23が形成されている。複数の凸部23は、ディンプル形状である。ケース8は、金属板にプレス加工を施して形成されているので、底壁8bの制御基板9側からみると、凸部23の形成箇所には凹部23aが形成されている。
【0029】
また、ケース8の側壁8cには、開口部8a側の端部に、底壁8bの面方向に沿って外側に張り出すフランジ部24が一体成形されている。フランジ部24には、複数(本実施形態では6つ)のケース取付座(請求項における固定部の一例)25が一体成形されている。ケース取付座25は、フランジ部24の面方向に沿って外側に張り出している。ケース取付座25は、フランジ部24の周方向に沿って等間隔に配置されている。すなわち、ケース取付座25は、4つの角部と、フランジ部24の2つの長辺の長手方向中央と、に配置されている。各ケース取付座25には、ボルト26が挿通される貫通孔25aが形成されている。これら貫通孔25aにボルト26(
図1参照)を挿通し、ベース部7にケース8を締結固定する。
【0030】
このように構成されたケース8に収納される制御基板9は、
図3、
図4に示すように、制御基板9の他面9fと底壁8bとの間隙に熱伝導性を有する基板側接着剤(請求項における基板熱伝達部の一例)J1を塗布することにより、ケース8に固定される。換言すれば、底壁8bと制御基板9の他面9fとは、基板側接着剤J1を介して接続される。台座21a~21d上に制御基板9を配置して制御基板9の他面9fと底壁8bとの間に一定の間隙が形成されることで、基板側接着剤J1には一定の厚さが確保される。
【0031】
また、コンデンサ16にも熱伝導性を有する素子側接着剤(請求項における素子熱伝達部の一例)J2が塗布される。複数のコンデンサ16は、制御基板9の第1長辺9cに沿って配置されているので、ケース8の側壁8cに接近している。この側壁8cとコンデンサ16とは、制御基板9の面方向で対向している。側壁8cとコンデンサ16との間にも素子側接着剤J2が塗布され、側壁8cにコンデンサ16が固定される。換言すれば、側壁8cにコンデンサ16とは、素子側接着剤J2を介して接続される。
【0032】
<ファン装置の動作>
次に、ファン装置1の動作について説明する。
ファン装置1は、例えば、車体のラジエータの背面(エンジン側の面)にファンシュラウド(いずれも図示しない)を介して固定される。この固定された状態では、例えばファン3がラジエータ側を向き、駆動装置5側がエンジン側を向いた姿勢である。
【0033】
図示しない外部制御機器Gsから出力される信号は、駆動装置5の外部機器コネクタ13を介して制御部15に入力される。制御部15は、外部制御機器Gsからの出力信号に基づいて、電力変換部14を駆動するための信号を生成する。電力変換部14は、制御部15の信号に基づいて、モータ部4に外部電源Gdの電力を制御して供給する。これにより、モータ部4が駆動される。モータ部4の駆動により、ファン3が回転される。
【0034】
ファン3が回転されることにより、ラジエータを挟んでエンジンとは反対側の先方から空気が吸引される。これにより、モータ部4から駆動装置5側へと風が流れる。すなわち、風は、駆動装置5を構成するケース8の底壁8bを通ってエンジン側へと流れる。
ところで、ファン装置1を駆動すると、駆動装置5の制御基板9に実装されている各電子機器が発熱される。とりわけ、各コネクタ12,13、電力変換部14、及びコンデンサ16は、制御部15よりも高温になる。このような制御基板9の熱は、基板側接着剤J1を介してケース8の底壁8bに伝達されて放熱される。
【0035】
また、特にコンデンサ16の熱は、素子側接着剤J2を介してケース8の側壁8cに伝達されて放熱される。各コンデンサ16は、制御基板9の第1長辺9cに沿って配置されているので、全てのコンデンサ16がケース8の側壁8cに近接配置されている。このため、各コンデンサ16の熱は、素子側接着剤J2を介してケース8の側壁8cに効率よく伝達される。
【0036】
ここで、ケース8の底壁8bには、高温になる各コネクタ12,13、電力変換部14、及びコンデンサ16と制御基板9の厚さ方向で対向する箇所に、凹凸形成領域Akが設けられている。この凹凸形成領域Akに、ディンプル形状の複数の凸部23が形成されている。このため、凹凸形成領域Akの表面積が増大し、放熱が促進される。
また、凸部23は、外側(底壁8bから制御基板9とは反対側)に向けて突出している。このため、ケース8の底壁8bを通る風が凸部23に当たって、さらに放熱が促進される。
【0037】
また、ファン装置1が駆動されることにより、ファン装置1の全体が微振動する。
ここで、コンデンサ16は、他の電子部品(素子)と比較して制御基板9からの立ち上がり高さが高い。このため、ファン装置1の微振動によって揺れ(首振りし)やすい。しかしながら、コンデンサ16は、ケース8の側壁8cに素子側接着剤J2を介して固定されているので、コンデンサ16の揺れが防止される。
【0038】
しかも、ケース8の側壁8cから張り出すフランジ部24には、ケース取付座25が一体成形されている。コンデンサ16が制御基板9の面方向で対向される側壁8cの長辺には、長手方向中央と長手方向両端(角部)との3箇所にケース取付座25が一体成形されている。このように、コンデンサ16に近接する側壁8cをケース取付座25によって強固に締結固定することで、コンデンサ16に近接する側壁8cの振動が抑制される。この結果、コンデンサ16にファン装置1の駆動時の振動が伝達されにくくなる。
【0039】
このように、上述の実施形態では、ケース8の底壁8bに、凹凸形成領域Akと非凹凸形成領域Ahとを設けている。凹凸形成領域Akは、底壁8bのうち、各台座21a~21d上に制御基板9の他面9fを載置した状態で、制御基板9に実装された各コネクタ12,13、電力変換部14、及びコンデンサ16と制御基板9の厚さ方向で対向する箇所に設けられている。非凹凸形成領域Ahは、底壁8bのうち、凹凸形成領域Akを除いた箇所、換言すれば、各台座21a~21d上に制御基板9の他面9fを載置した状態で、制御基板9に実装された制御部15と制御基板9の厚さ方向で対向する箇所に設けられている。そして、比較的高温となる電子部品(各コネクタ12,13、電力変換部14、及びコンデンサ16)に対応する凹凸形成領域Akにのみ凸部23を形成し、凹凸形成領域Akにのみ底壁8bの表面積を増大させている。
【0040】
このように、ケース8の底壁8b全体に凸部23を形成するのではなく、ケース8の底壁8bを、特に放熱効果を高めたい箇所の凹凸形成領域Akと、放熱効果が優先する必要のない箇所(比較的温度が低い制御部15に対応する箇所)の非凹凸形成領域Ahと、に分けている。このため、ケース8の底壁8b全体に凸部23を形成する場合と比較して製造コストを低減できる。また、必要な箇所に凸部23を形成することで表面積をできる限り確保することで、放熱効果を高めることができる。
【0041】
製造コストを低減しつつ放熱効果を高めることでエネルギーの無駄な浪費を抑えることができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」及び目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に貢献することが可能となる。
【0042】
また、制御基板9は、この制御基板9の他面9fとケース8の底壁8bとの間隙に熱伝導性を有する基板側接着剤J1を塗布することにより、ケース8に固定される。換言すれば、底壁8bと制御基板9の他面9fとは、基板側接着剤J1を介して接続される。このため、ケース8の底壁8bに制御基板9の熱を効率よく伝達できる。
【0043】
ケース8の底壁8bには、台座21a~21dが突出形成されている。この台座21a~21d上に、制御基板9を配置して制御基板9の他面9fと底壁8bとの間に一定の間隙が形成されることで、基板側接着剤J1には一定の厚さが確保される。このため、効果的に、かつ満遍なく、ケース8の底壁8bに制御基板9の熱を伝達させることができる。
【0044】
4つの台座21a~21dのうち、制御基板9の位置決め孔部20a,20bが形成されている箇所に対応する2つの台座21a,21cには、位置決め孔部20a,20bに嵌め込まれる位置決め凸部22a,22bが突出形成されている。この位置決め凸部22a,22bと制御基板9の位置決め孔部20a,20bにより、ケース8に対する制御基板9の位置決めを高精度に行うことができる。また、対角線上に位置決め凸部22a,22bを配置しているので、任意の一辺に位置決め凸部を並べて配置する場合と比較して、ケース8に制御基板9を確実に位置決め固定できる。
【0045】
ケース8の凹凸形成領域Akに形成された凸部23は、ディンプル形状である。このため、凸部23を容易に形成することができる。
また、凸部23は、外側(底壁8bから制御基板9とは反対側)に向けて突出している。このため、ケース8の底壁8bを通る風が凸部23に当たりやすくなり、さらに底壁8bの放熱効果を高めることができる。
【0046】
各コンデンサ16は、制御基板9の第1長辺9cに沿って配置されている。このため、コンデンサ16は、ケース8の側壁8cに近接配置されている。このため、各コンデンサ16の熱をケース8の側壁8cに伝達しやすくでき、コンデンサ16の放熱効果を高めることができる。
【0047】
また、側壁8cとコンデンサ16との間にも素子側接着剤J2が塗布され、側壁8cにコンデンサ16が固定される。換言すれば、側壁8cにコンデンサ16とは、素子側接着剤J2を介して接続される。このため、コンデンサ16の熱を、素子側接着剤J2を介してケース8の側壁8cに効率よく伝達でき、コンデンサ16の放熱効果を高めることができる。これに加え、素子側接着剤J2によって、コンデンサ16の揺れを防止できる。
【0048】
しかも、ケース8の側壁8cから張り出すフランジ部24には、ケース取付座25が一体成形されている。コンデンサ16が制御基板9の面方向で対向される側壁8cの長辺には、長手方向中央と長手方向両端(角部)との3箇所にケース取付座25が一体成形されている。このように、コンデンサ16に近接する側壁8cをケース取付座25によって強固に締結固定することで、コンデンサ16に近接する側壁8cの振動を抑制できる。この結果、コンデンサ16にファン装置1の駆動時の振動が伝達されにくくすることができる。
【0049】
ケース8は、金属板にプレス加工を施すことにより形成されている。このため、ケース8の放熱効果を確実に高めることができる。また、金属板にプレス加工を施すだけで、容易にケース8を形成することができる。
【0050】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば上述の実施形態では、ファン装置1は、例えば車両のエンジンルーム等に設けられるラジエータ(いずれも図示しない)に冷却風を通すことで、ラジエータを冷却するためのものである場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな冷却装置としてファン装置1を用いることが可能である。また、モータ装置2を駆動するための駆動装置5としてだけでなく、さまざまな電気機器の駆動ドライバとして駆動装置5を適用することができる。
【0051】
また、上述の実施形態では、ケース8の底壁8bに、外側(底壁8bから制御基板9とは反対側)に向けて突出するディンプル形状の凸部23を形成した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、底壁8bの表面積が増大するように凹凸部が形成されていればよい。例えば、底壁8bの内側(制御基板9側)に突出する凸部23を形成してもよい。凹凸の両者を形成してもよい。凸部23の形状もディンプル形状に限られるものではなく、例えば鋸状であってもよい。底壁8bに凹凸形成領域Akと、非凹凸形成領域Ahと、が設けられていればよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、制御基板9の他面9fと底壁8bとの間隙に熱伝導性を有する基板側接着剤J1を塗布することにより、ケース8に制御基板9を固定した場合について説明した。ケース8の側壁8cとコンデンサ16との間にも素子側接着剤J2を塗布することにより、側壁8cにコンデンサ16を固定した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、各接着剤J1,J2を使用しなくてもよい。各接着剤J1,J2に代わって熱伝達可能な部材を用いてもよい。シート状やゲル状の熱伝達部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…ファン装置、2…モータ装置、3…ファン、4…モータ部、5…駆動装置、6…ロータ、7…ベース部(他の部位)、7a…一面、7b…他面、8…ケース、8a…開口部、8b…底壁(壁面)、8c…側壁、8e,8f,8g,8h…角部、9…制御基板、9a…第1短辺、9b…第2短辺、9c…第1長辺、9d…第2長辺、9e…一面、9f…他面、9g,9h…角部、10…ベース取付座、10a…貫通孔、11a…電源用コネクタハウジング、11b…信号用コネクタハウジング、12…モータコネクタ(コネクタ)、13…外部機器コネクタ(コネクタ)、14…電力変換部、15…制御部、16…コンデンサ、17…電界効果トランジスタ、18…マイコン、19…制御IC、20a,20b…孔部、21a…各台座、21a,21b,21c,21d…台座、22a,22b…凸部、23…凸部(凹凸部)、23a…凹部、24…フランジ部、25…ケース取付座(固定部)、25a…貫通孔、26…ボルト、A1…第1領域、A2…第2領域、Ah…非凹凸形成領域、Ak…凹凸形成領域、Gd…外部電源、Gs…外部制御機器、J1…基板側接着剤(基板熱伝達部)、J2…素子側接着剤(素子熱伝達部)