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特許7522689在庫管理システム、在庫管理装置及び保管庫
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】在庫管理システム、在庫管理装置及び保管庫
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
B65G1/137 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021048403
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147235
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】栗山 哲
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】原 和規
(72)【発明者】
【氏名】中島 一州
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-135502(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110430(WO,A1)
【文献】特開2006-298554(JP,A)
【文献】特開2020-045216(JP,A)
【文献】特開2007-137636(JP,A)
【文献】特開2009-298569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫内アンテナが取得した情報と、前記保管庫の扉が開いている期間において、前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫外アンテナが取得した情報とに基づき、前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断する在庫管理装置、
を備える在庫管理システムであって、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記庫内アンテナの電波照射領域の一部は、前記庫外アンテナの電波照射領域の一部と重複
前記在庫管理装置は、
前記庫内アンテナ又は前記庫外アンテナのいずれかを使用する旨をユーザから受け付けた場合、
前記庫内アンテナ又は前記庫外アンテナのいずれかが取得した情報に基づき、前記扉が開いている期間における前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断すること、
を特徴とする在庫管理システム。
【請求項2】
保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫内アンテナが取得した情報と、前記保管庫の扉が開いている期間において、前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫外アンテナが取得した情報とに基づき、前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断する在庫管理装置、
を備える在庫管理システムであって、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記庫内アンテナの電波照射領域の一部は、前記庫外アンテナの電波照射領域の一部と重複
前記在庫管理装置は、
前記扉が開いている期間においては、前記庫外アンテナが照射する電力を第1の電力に設定し、
前記扉が閉じている期間においては、前記庫外アンテナが照射する電力を、前記第1の電力より大きい第2の電力に設定すること、
を特徴とする在庫管理システム。
【請求項3】
前記庫外アンテナの電波照射方向は、
前記庫外アンテナの移動に関係なく一定であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の在庫管理システム。
【請求項4】
前記庫外アンテナは、
前記保管庫の引き出し又は筐体のフレームに設置されていること、
を特徴とする請求項に記載の在庫管理システム。
【請求項5】
前記庫外アンテナは、
前記扉以外の扉に設置されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の在庫管理システム。
【請求項6】
前記庫内アンテナの電波照射領域は、
前記扉が開いている期間において、前記扉の位置を含むこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の在庫管理システム。
【請求項7】
前記庫内アンテナの電波照射領域は、
前記扉の内側に設置された物品保持手段の位置を含むこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の在庫管理システム。
【請求項8】
前記庫内アンテナは、
前記保管庫の天井に設置されていること、
を特徴とする請求項に記載の在庫管理システム。
【請求項9】
前記在庫管理システムは、
前記保管庫の周辺に存在する人を検知する人感センサを備え、
前記在庫管理装置は、
前記人感センサが人を検知した場合、前記庫外アンテナが照射する電力を前記第2の電力とすること、
を特徴とする請求項に記載の在庫管理システム。
【請求項10】
前記在庫管理システムは、
前記保管庫が設置される空間の照度を検知する照度センサを備え、
前記在庫管理装置は、
前記扉が開いたこと、前記照度が所定の閾値より大きくなったこと、又は、前記人感センサが人を検知したことを契機として、前記庫内アンテナ及び/又は前記庫外アンテナに対し給電を開始すること、
を特徴とする請求項に記載の在庫管理システム。
【請求項11】
前記在庫管理装置は、
前記扉が閉じた直後において前記庫外アンテナが最後に前記物品を検知すると、前記庫外アンテナの受信電力と前記庫内アンテナの受信電力とを比較し、前記庫内アンテナの受信電力のほうが大きい場合、当該物品が前記保管庫内に存在すると判断し、
前記扉が閉じた直後において前記庫内アンテナが最後に前記物品を検知すると、前記庫外アンテナの受信電力と前記庫内アンテナの受信電力とを比較し、前記庫外アンテナの受信電力のほうが大きい場合、当該物品が前記保管庫外に存在すると判断すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の在庫管理システム。
【請求項12】
前記在庫管理装置は、
前記庫内アンテナ及び前記庫外アンテナが読み取った結果が記憶される読取情報、及び、前記保管庫内に存在する物品が記憶される在庫情報を記憶しており、
前記読取情報に基づいて、前記在庫情報を必要に応じ修正すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の在庫管理システム。
【請求項13】
保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫内アンテナと、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫外アンテナと、通信可能に接続されており、
前記庫内アンテナ及び前記庫外アンテナが取得した情報に基づき、前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断する在庫管理装置であって、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記庫内アンテナの電波照射領域の一部は、前記庫外アンテナの電波照射領域の一部と重複
前記在庫管理装置は、
前記庫内アンテナ又は前記庫外アンテナのいずれかを使用する旨をユーザから受け付けた場合、
前記庫内アンテナ又は前記庫外アンテナのいずれかが取得した情報に基づき、前記扉が開いている期間における前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断すること、
を特徴とする在庫管理装置。
【請求項14】
保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫内アンテナと、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫外アンテナと、通信可能に接続されており、
前記庫内アンテナ及び前記庫外アンテナが取得した情報に基づき、前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断する在庫管理装置であって、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記庫内アンテナの電波照射領域の一部は、前記庫外アンテナの電波照射領域の一部と重複
前記在庫管理装置は、
前記扉が開いている期間においては、前記庫外アンテナが照射する電力を第1の電力に設定し、
前記扉が閉じている期間においては、前記庫外アンテナが照射する電力を、前記第1の電力より大きい第2の電力に設定すること、
を特徴とする在庫管理装置。
【請求項15】
庫内アンテナ、庫外アンテナ及び在庫管理装置を有する保管庫であって、
前記庫内アンテナは、
前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取り、
前記庫外アンテナは、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取り、
前記在庫管理装置は、
前記庫内アンテナ及び前記庫外アンテナが取得した情報に基づき、前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断し、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記庫内アンテナの電波照射領域の一部は、前記庫外アンテナの電波照射領域の一部と重複
前記在庫管理装置は、
前記庫内アンテナ又は前記庫外アンテナのいずれかを使用する旨をユーザから受け付けた場合、
前記庫内アンテナ又は前記庫外アンテナのいずれかが取得した情報に基づき、前記扉が開いている期間における前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断すること、
を特徴とする保管庫。
【請求項16】
庫内アンテナ、庫外アンテナ及び在庫管理装置を有する保管庫であって、
前記庫内アンテナは、
前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取り、
前記庫外アンテナは、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取り、
前記在庫管理装置は、
前記庫内アンテナ及び前記庫外アンテナが取得した情報に基づき、前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断し、
前記保管庫の扉が開いている期間において、前記庫内アンテナの電波照射領域の一部は、前記庫外アンテナの電波照射領域の一部と重複
前記在庫管理装置は、
前記扉が開いている期間においては、前記庫外アンテナが照射する電力を第1の電力に設定し、
前記扉が閉じている期間においては、前記庫外アンテナが照射する電力を、前記第1の電力より大きい第2の電力に設定すること、
を特徴とする保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫管理システム、在庫管理装置及び保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、保管庫の内部を視認することなく保管庫内に保管している物品を知る技術が普及している。特許文献1の保管庫においては、保管庫の扉が開けられたことを契機として、保管庫内に設置されたリーダ/ライタ装置が、保管庫内部の物品に添付された情報記録担体に対して、データの読み出し及び書き込みを行う。特許文献2の物品管理システムにおいては、保管庫の扉の内側に設置された第1のアンテナと、外側に設置された第2のアンテナとが、保管庫に出入りする物品に添付されたタグを読み取る。第1のアンテナの読取領域は、第2のアンテナの読込領域とは重複しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-276809号公報
【文献】特開2020-135502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、保管庫内で電波を情報記録担体(タグ)に照射する場合、水分を含む食品又は金属製の障害物が電波を偶然遮ることがある。特許文献1の保管庫は、リーダ/ライタ装置を保管庫内に備えるが、保管庫外には備えない。したがって、仮にリーダ/ライタ装置が情報記録担体を読み取れない場合、その物品は、保管庫内に存在しないと判断される。
【0005】
特許文献2の物品管理システムは、保管庫の内外にアンテナを備える。しかしながら、両者の読取領域は重複していないので、第1のアンテナがタグを読み取れない場合、第2のアンテナが第1のアンテナに代替してタグを読み取ることができない。
そこで、本発明は、保管庫内のアンテナ及び保管庫外のアンテナが、協働して保管庫内のタグを読み取ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の在庫管理システムは、保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫内アンテナが取得した情報と、前記保管庫の扉が開いている期間において、前記保管庫に保管されている物品のタグを読み取る庫外アンテナが取得した情報とに基づき、前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断する在庫管理装置、を備える在庫管理システムであって、前記保管庫の扉が開いている期間において、前記庫内アンテナの電波照射領域の一部は、前記庫外アンテナの電波照射領域の一部と重複前記在庫管理装置は、前記庫内アンテナ又は前記庫外アンテナのいずれかを使用する旨をユーザから受け付けた場合、前記庫内アンテナ又は前記庫外アンテナのいずれかが取得した情報に基づき、前記扉が開いている期間における前記物品の前記保管庫に対する入庫及び出庫を判断すること、を特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保管庫内のアンテナ及び保管庫外のアンテナが、協働して保管庫内のタグを読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】在庫管理装置の構成等を説明する図である。
図2】アンテナの位置等を説明する図である。
図3】アンテナの位置等を説明する図である。
図4】アンテナの位置等を説明する図である。
図5】アンテナの位置等を説明する図である。
図6】開閉情報の一例である。
図7】読取情報の一例である。
図8】在庫情報の一例である。
図9】アンテナ・センサ設定画面の一例である。
図10】庫外アンテナの照射電力を説明する図である。
図11】アンテナの受信電力を説明する図である。
図12】アンテナの受信電力を説明する図である。
図13】処理手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、キッチンにおいて、冷蔵庫等の保管庫に食品を保管する例である。しかしながら、本発明は、生産現場等、キッチン以外の空間において、食品以外の物品を保管する例にも一般的に適用可能である。
【0010】
(在庫管理装置)
図1は、在庫管理装置1の構成等を説明する図である。在庫管理装置1は、一般的なコンピュータ(サーバ、PC、携帯端末装置等)である。在庫管理装置1は、中央制御装置11、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を備える。これらは、バスで相互に接続されている。
【0011】
補助記憶装置15は、開閉情報31、読取情報32及び在庫情報33(詳細後記)を格納している。主記憶装置14における入出力処理部21及び在庫管理部22は、プログラムである。中央制御装置11は、これらのプログラムを補助記憶装置15から読み出して主記憶装置14にロードすることによって、それぞれのプログラムの機能(詳細後記)を実現する。補助記憶装置15が在庫管理装置1から独立した構成であってもよい。
【0012】
キッチン3に1又は複数の保管庫4が存在する。ここでの保管庫3としては、冷蔵庫が想定されているが、保管庫3は、冷却機能を有さない食品庫又は食品棚であってもよい。保管庫4は、庫内アンテナ6及び庫外アンテナ7を有する。庫内アンテナ6は、保管庫4の内部空間の天井等に設置されている。庫外アンテナ7は、保管庫の外側、例えば、引き出しの外部面等に設置されている。
【0013】
本実施形態においては、RFID(Radio Frequency Identifier)タグ52が個々の食品51に添付されており、RFIDタグ内の電子チップは、食品に関する様々なデータ(メーカ名、アイテム名等の情報を示すコード)を記憶している。庫内アンテナ6及び庫外アンテナ7は、RFIDタグ52に対して電波を照射し、反射した電波を受信することによって、当該データを読み取ることができる。
【0014】
ある食品51は、キッチン3に運び込まれ、その後、保管庫4内に保管される。このとき、まず庫外アンテナ7がRFIDタグ52を読み取り、次に庫内アンテナ6がRFIDタグ52を読み取る。調理タイミングが到来すると、その食品は、保管庫4から取り出され、その後、調理の準備等のためにキッチン3に仮置きされる。このとき、まず庫内アンテナ6がRFIDタグ52を読み取り、次に庫外アンテナ7がRFIDタグ52を読み取る。図1には、保管庫4の扉は図示されていない。しかしながら、扉が開いているとき、庫外アンテナ7が庫内アンテナ6の役割を補完するのが、本実施形態の特徴である。
【0015】
在庫管理装置1は、ネットワーク2を介して、庫内アンテナ6及び庫外アンテナ7と通信可能であり、それらの電波照射タイミング及び照射電力を制御することもできる。さらに、在庫管理装置1は、ネットワーク2を介して、扉開閉センサ及び引き出し開閉センサ(図示せず)とも通信可能である。キッチン3内の任意の位置に、キッチン3内における人の存在を検知する人感センサ(図示せず)及びキッチン3内の照度を検知する照度センサ(図示せず)が設置されている。在庫管理装置1は、ネットワーク2を介して、これらのセンサとも通信可能である。在庫管理装置1、庫内アンテナ6及び庫外アンテナ7は、在庫管理システムを構成する。在庫管理装置1は、保管庫4と一体になっていてもよい。
【0016】
(アンテナの位置)
図2は、アンテナの位置等を説明する図である。図2の保管庫4は、一般的な冷蔵庫である。保管庫4は、上下4段の保管室を有する。図2では、保管庫の扉41及び引き出し42は、閉じている。最上段の保管室内側の天井に庫内アンテナ6が設置されている。庫内アンテナ6は、自身の電波照射領域8内に存在するRFIDタグ52を読み取ることができる。上から2段目の保管室の引き出し42の外面に庫外アンテナ7が設置されている。庫外アンテナ7は、自身の電波照射領域9内に存在するRFIDタグ52を読み取ることができる。電波照射領域9は、キッチン3内の調理台等を含むように、図2の記載よりも遥かに大きくなっていてもよい。
【0017】
図3もまた、アンテナの位置等を説明する図である。図3では、扉41は閉じており、引き出し42は、開いている。図2と比較すると、庫外アンテナ7の電波照射領域9は、引き出し42が引き出された長さだけ、図3の右側に平行移動している。ここで、引き出し42が製氷室である場合、氷の出し入れが主であるので、引き出し42を引き出した際は庫外アンテナ7から電波を照射しない構成に簡略化してもかまわない。
【0018】
図3では、引き出し42が手前に引かれると、庫外アンテナ7は前面に移動する。しかしながら、引き出し42がその内部を前後にスライドする筐体の前面フレーム上側に庫外アンテナ7が固定されていてもよい。この場合、引き出し42が図3の状態に引き出されても、電波照射領域9は、図2における当該領域9に留まる。つまり、電波の照射点(起点)が、図2における扉41及び引き出し42の前面が構成する面に常時含まれる。
【0019】
図4もまた、アンテナの位置等を説明する図である。図4では、扉41は開いており、引き出し42は、閉じている。扉41が開いていることに起因して、庫内アンテナ6の電波照射領域8は、図2に比して拡大している。一方、庫外アンテナ7の電波照射領域9は、扉41の開閉とは関係なく、図2と同じ位置及び大きさを維持している。これは、扉41に用いられている真空断熱材の被覆材や鋼板等の影響で、扉41によって電波が遮蔽されているからである。扉41の内側には、物品保持手段43(ドアポケット43)が設置されている。ドアポケット43は、電波照射領域8及び電波照射領域9の両方に含まれる。図4のように、扉41を開いた場合、電波照射領域8の一部が電波照射領域9の一部と重複していることが、本実施形態の特徴である。
【0020】
図2図4において、本実施形態では庫内アンテナ6は、最上段の保管室の天井面に下向き(下に電波を照射するように)設置されている。しかしながら、庫内アンテナ6は、最上段の保管室の床面上の位置であって、扉41が閉まっているときに物品保持手段43をその真下から見上げる位置(図4符号45)に、上向きに(上に電波を照射するように)設置されていてもよい。
【0021】
図5もまた、アンテナの位置等を説明する図である。図5では、引き出し42は、閉じており、上から3段目の保管室の引き出し44は開いている。上から3段目の保管室内側の天井に庫内アンテナ6が設置されている。庫内アンテナ6は、自身の電波照射領域8内に存在するRFIDタグ52を読み取ることができる。図2及び図4における電波照射領域8に違いが生じるのと同様の影響により、図5における庫内アンテナ6から照射される電波は、引き出し44の前面で遮蔽される。したがって、図5に示した電波照射領域8は、引き出し44の外側の保管庫前の領域を含みにくい。このとき、電波照射領域8の一部が、電波照射領域9の一部と重複する。つまり、庫外アンテナ7は、上から3段目の保管室44(引き出し44)内のRFIDタグ52を読み取ることができる。
【0022】
図2図5で明らかなように、庫外アンテナ7が引き出し42の前面に設置されている限り、庫外アンテナ7の電波照射方向は、庫外アンテナ7の移動に関係なく一定である。このことにより、扉41又は引き出し44が開いているときに、庫内アンテナ6の電波照射領域8の一部が、庫外アンテナ7の電波照射領域9の一部と確実に重複する。
【0023】
(開閉情報)
図6は、開閉情報31の一例である。開閉情報31においては、時刻欄101に記憶されている時刻に関連付けて、扉欄102には扉が、開閉状態欄103には開閉状態が、アンテナ照射電力欄104にはアンテナ照射電力が記憶されている。
時刻欄101の時刻は、庫外アンテナ及び庫内アンテナが電波を照射した時刻である。ここでは単純化のため、電波が2秒間隔で照射される例を示したが、実際の照射間隔は、それよりも遥に短い“数ミリ秒”である。
扉欄102の扉は、保管庫4の扉を一意に特定する番号である。なお、ここでの扉は、引き出しも含む概念である。
開閉状態欄103の開閉状態は、扉が開いていることを示す“開”、又は、扉が閉じていることを示す“閉”のいずれかである。
【0024】
アンテナ照射電力欄104のアンテナ照射電力は、庫内アンテナの照射電力(欄104a)及び庫外アンテナの照射電力(欄104b)である。いずれの単位も“dBm”である。ユーザは、庫内アンテナの照射電力及び庫外アンテナの照射電力のそれぞれを、扉の開閉状態ごとに設定することができる。庫内アンテナの照射電力及び庫外アンテナの照射電力は、“照射しない”であってもよい。
図6の例では、在庫管理装置1が2秒の周期で庫内アンテナ及び庫外アンテナの両方に電波を同時に照射させる。しかしながら、在庫管理装置1は、数ミリ秒の周期で、いずれか一方を交互に照射させてもよい。
【0025】
以降では、わかりやすさのために、最上段の保管室内に存在する食品、及び、保管庫外のキッチン内に存在する食品を管理する例を説明する。この例では、最上段の保管室は、その天井面に庫内アンテナ6を有し、前面に観音開きの扉41を有する。上から2段目の保管室は、引き出し42であり、引き出し42の前面に庫外アンテナ7を有する(図2)。ユーザが扉41を開け、引き出し42を閉じたままに維持したとき、庫内アンテナ6の電波照射領域の一部が庫外アンテナ7の電波照射領域の一部と重複する。ユーザが扉41を開け、引き出し42を開けたときでも、庫内アンテナ6の電波照射領域の一部が庫外アンテナ7の電波照射領域の一部と重複する。
【0026】
(読取情報)
図7は、読取情報32の一例である。読取情報32においては、時刻欄111に記憶されている時刻に関連付けて、アンテナ欄112にはアンテナが、アンテナ受信電力欄113にはアンテナ受信電力が、メーカ名欄114にはメーカ名が、アイテム名欄115にはアイテム名が、移動欄116には移動フラグが記憶されている。
時刻欄111の時刻は、庫内アンテナ6又は庫外アンテナ7が、RFIDタグ52が反射する電波を受信した、すなわち、RFIDタグ52を読み取った時刻である。
【0027】
アンテナ欄112のアンテナは、“庫内”又は“庫外”のいずれかである。“庫内”は、RFIDタグ52を読み取ったアンテナが庫内アンテナ6であることを示す。“庫外”は、RFIDタグ52を読み取ったアンテナが庫外アンテナ7であることを示す。
アンテナ受信電力欄113のアンテナ受信電力は、庫内アンテナ6又は庫外アンテナ7がRFIDタグ52から受信した電波の電力(強さ)であり、単位は“dBm”である。
【0028】
メーカ名欄114のメーカ名は、RFIDタグ52から読み取られたコードをデータベースと照合して得られた、食品のメーカ名である。
アイテム名欄115のアイテム名は、RFIDタグ52から読み取られたコードをデータベースと照合して得られた、食品の名称(普通名詞)である。
移動欄116の移動フラグは、在庫管理装置1が庫外から庫内への食品の移動を検知したことを示す“入庫”、又は、庫内から庫外への食品の移動を検知したことを示す“出庫”の何れかである。
【0029】
図7の例は、図6の例に対応している。図7を見ると、例えば以下のことがわかる。
〈9時59分58秒〉
・このとき、扉は閉じていた(図6参照)。
・庫内アンテナは、保管庫内に存在する“A社”の“うどん”及び“C社”の“ヨーグルト”を読み取った。
・事実として、保管庫内には“B社”の“ドレッシング”が存在していた。しかしながら、例えば金属等が電波を妨害した結果、庫内アンテナは、“B社”の“ドレッシング”を読み取ることができなかった。つまり“( )”は、読取失敗を示す。
・庫外アンテナは、保管庫外の例えば調理台上に存在する“D社”の“瓶ビール”を読み取った。
【0030】
〈10時00分00秒〉
・このとき、扉は開いていた(図6)。
・庫内アンテナは、保管庫内に存在する“A社”の“うどん”及び“C社”の“ヨーグルト”を読み取った。
・事実として、保管庫内には“B社”の“ドレッシング”が存在していた。しかしながら、例えば金属等が電波を妨害した結果、庫内アンテナは、“B社”の“ドレッシング”を読み取ることができなかった。
・庫外アンテナは、保管庫内に存在する“B社”の“ドレッシング”を読み取った。“B社”の“ドレッシング”は、例えば扉41の内側のドアポケット43(図4)に保管されていたので、庫外アンテナは、これを読み取ることができた。
・庫外アンテナは、保管庫外の例えば調理台上に存在する“D社”の“瓶ビール”を読み取った。
【0031】
・在庫管理装置1は、10時00分00秒の読取情報を9時59分58秒の読取情報と比較し、扉が開いた直後に初めて庫外アンテナが“B社”の“ドレッシング”を検知したことを認識した。このケースは、庫内アンテナが“B社”の“ドレッシング”を読み取れていないことを傍証している。
【0032】
〈10時00分02秒〉
・このとき、扉は開いていた(図6)。
・庫内アンテナは、保管庫内に存在する“A社”の“うどん”及び“D社”の“瓶ビール”を読み取った。
・事実として、保管庫内には“B社”の“ドレッシング”が存在していた。しかしながら、例えば金属等が電波を妨害した結果、庫内アンテナは、“B社”の“ドレッシング”を読み取ることができなかった。
・庫外アンテナは、保管庫内に存在する“B社”の“ドレッシング”を読み取った。B社の“ドレッシング”は、例えば扉の内側のドアポケット43(図4)に保管されていたので、庫外アンテナは、これを読み取ることができた。
・庫外アンテナは、保管庫外の例えば調理台上に存在する“C社”の“ヨーグルト”を読み取った。
【0033】
・在庫管理装置1は、10時00分02秒の読取情報を10時00分00秒の読取情報と比較し、“D社”の“瓶ビール”が庫外から庫内に移動するのを検知した。その結果、在庫管理装置1は、“D社”の“瓶ビール”の移動欄116に“入庫”を記憶した。
・在庫管理装置1は、同様の比較において、“C社”の“ヨーグルト”が庫内から庫外に移動するのを検知した。その結果、在庫管理装置1は、“C社”の“ヨーグルト”の移動欄116に“出庫”を記憶した。
【0034】
〈10時00分10秒〉
・このとき、扉は閉じていた(図6参照)。
・庫内アンテナは、保管庫内に存在する“A社”の“うどん”及び“D社”の“瓶ビール”を読み取った。
・事実として、保管庫内には“B社”の“ドレッシング”が存在していた。しかしながら、例えば金属等が電波を妨害した結果、庫内アンテナは、“B社”の“ドレッシング”を読み取ることができなかった。
・庫外アンテナは、保管庫外の例えば調理台上に存在する“C社”の“ヨーグルト”を読み取った。
【0035】
前記の他に、庫内アンテナ6及び庫外アンテナ7の動作を以下のようにしてもよい。
メインの動作として、庫内アンテナ6及び庫外アンテナ7の両者は、扉41が開くと読取動作を開始し、扉41が閉じた後所定の期間は読取動作を継続する。ただし、扉41が閉じた直後に、庫外アンテナ7の照射電力を高めてもよい。
サブの動作として、キッチン3内に設置された人感センサ等が人を検知した場合、仮に扉41が閉まっていても、庫外アンテナ7が読取動作を開始する。この場合、庫内アンテナ6も読取動作を開始してよい。
【0036】
(在庫情報)
図8は、在庫情報33の一例である。在庫情報33においては、区分欄121に記憶されている区分に関連付けて、時刻欄122には時刻が、在庫位置欄123には在庫位置が、メーカ名欄124にはメーカ名が、アイテム名欄125にはアイテム名が、摘要欄126には摘要が記憶されている。
区分欄121の区分は、在庫を確定する時刻に付された任意の名称であり、ここでは、今回扉が開いた直前を示す“直前”、及び、今回扉が閉じた直後を示す“現在”である。
時刻欄122の時刻は、在庫を確定する時刻である。
在庫位置欄123の在庫位置は、“庫内”又は“庫外(キッチン)”のいずれかである。やや逆説的ではあるが、庫外においても在庫を確定する、つまり、保管庫4外かつキッチン3内の空間に存在する食品を管理するのも本実施形態の特徴である。
【0037】
メーカ名欄124のメーカ名は、図7のメーカ名と同じである。
アイテム名欄125のアイテム名は、図7のアイテム名と同じである。
摘要欄126の摘要は、“削除”、“上書き”又は“追加”のいずれかである。“削除”は、そのレコードがその時刻のその在庫位置には存在するが、次の時刻のその在庫位置には存在しないことを示す。“追加”は、そのレコードがその時刻のその在庫位置には存在するが、前の時刻のその在庫位置には存在しないことを示す。“上書き”は、そのレコードがその時刻のその在庫位置に存在し、前の時刻のその在庫位置にも存在することを示す。
【0038】
図8の例は、図7の例に対応している。図8を見ると、例えば以下のことがわかる。
・今回の開扉の前後において、“C社”の“ヨーグルト”が庫内から庫外(キッチン)に移動した。
・今回の開扉の前後において、“D社”の“瓶ビール”が庫外(キッチン)から庫内に移動した。
・今回の開扉の前後において、“A社”の“うどん”は、庫内から移動しなかった。
【0039】
(アンテナ・センサ設定画面)
図9は、アンテナ・センサ設定画面61の一例である。在庫管理装置1は、在庫管理装置1のユーザから、アンテナ・センサ設定画面61上で、アンテナ等に関する設定を受け付ける。図9における庫内アンテナ6、庫外アンテナ7及び扉41の位置関係は、図2及び図4に示す通りである。
【0040】
ユーザは、通常、庫内アンテナ欄62において“使用する”を選択し、庫外アンテナ欄63においても“使用する”を選択する。図9では、■は選択を、□は非選択を示す。庫外アンテナの電波照射領域が、庫内アンテナの照射領域の大半と重複する場合、ユーザは、庫内アンテナを“使用しない”に設定し、庫外アンテナを“使用する”に設定することもできる。
【0041】
ユーザは、庫内アンテナについて“使用する”を選択した場合、開扉時の照射電力を欄62aに、閉扉時の照射電力を欄62bに設定することができる。ユーザは、庫外アンテナについて“使用する”を選択した場合、開扉時の照射電力を欄63aに、閉扉時の照射電力を欄63bに設定することができる。一般に、ユーザが食品を保管庫に入庫する速度よりも、食品を保管庫から出庫する速度の方が大きい。また、庫内における食品の移動距離よりも、庫外における食品の移動距離の方が大きい。したがって、多くの場合、ユーザは、庫外での検知精度を高めるため、“#oo<#oc”のように設定する。図9の途中であるが、一旦説明は図10に移る。
【0042】
庫内アンテナの電波照射領域の一部が、庫外アンテナの電波照射領域の一部と重複している。このことに起因して、庫内アンテナだけを使用した場合、庫外アンテナだけを使用した場合、又は、これらの両方を使用した場合のいずれであっても、扉41が開いている期間に保管庫への食品の入庫及び出庫を検知できることが、本実施形態の特徴である。
なお、電波の照射の開始について、扉の取っ手等にタッチセンサ(静電容量センサ)が付されており、ユーザが扉を開けようと取っ手に触れたときに、タッチセンサがオンになって“開”を検知する(つまり電波照射開始)構成でもよい。
【0043】
図10は、庫外アンテナの照射電力を説明する図である。縦軸は、庫外アンテナの照射電力である。横軸は、時間である。扉が開いた時刻“開扉”から扉が閉じた時刻“閉扉”までの期間において、庫外アンテナの照射電力は、第1の電力“#oo”である。それ以外の期間は、庫外アンテナの照射電力は、第2の電力“#oc”( #oo<#oc)である。説明は、図9に戻る。
【0044】
ユーザは、キッチン内人感センサ欄64において、“使用する”又は“使用しない”のいずれかを選択する。キッチン内に人がいるときにのみ食品の在庫を管理したい場合、ユーザは“使用する”を選択する。ユーザは、キッチン内照度センサ欄65において、“使用する”又は“使用しない”のいずれかを選択する。例えば夜間キッチン内に人が入ってきたときにのみ食品の在庫を管理したい場合、ユーザは“使用する”を選択する。
【0045】
ユーザが庫外アンテナについて“使用する”を選択し、かつ、キッチン内人感センサ欄64又はキッチン内照度センサ欄65の少なくとも一方において“使用する”を選択する場合がある。この場合、在庫管理装置1は、人感センサによる人の検知を契機として、又は、照度センサによる所定の閾値以上の照度の検知を契機として、庫外アンテナの照射電力を、第2の電力“#oc”( #oo<#oc)とする。このようにすると、キッチン内の人に妨害されることなく、庫外センサは、食品を読み取ることができる。
【0046】
ユーザは、アンテナ電波照射期間欄66において、庫内アンテナ及び庫外アンテナの電波照射期間を設定する。通常、ユーザは、欄66b及び欄66fを選択し、それぞれの“[ ]”内に“0”を入力する。同様にユーザは、欄64において“使用する”を選択した場合、欄66c及び/又は欄66gを選択し、“[ ]”内に適当な値を入力する。ユーザは、欄65において“使用する”を選択した場合、欄66d及び/又は欄66hを選択し、“[ ]”内に適当な値を入力する。
なお、照射電力については、本実施形態ではユーザが入力することとしたが、ユーザの無線免許要・不要の意向に応じて、保管庫4の提供者が、“36dBm”以下の適当な値を設定してもよい。また、ユーザが、強(無線基地局免許に対応している場合)、中(無線基地局申請が不要な場合)、弱(無線基地局申請が不要な場合)のような3段階から選択してもよい。
【0047】
いま、庫内アンテナの照射電力が時系列で一定であるとする。食品と庫内アンテナとの間の距離が時系列で小さくなる(食品が庫内アンテナに近づく)と、庫内アンテナの受信電力(受信する電波強度)は、時系列で大きくなる。庫外アンテナの照射電力も時系列で一定であるとする。食品と庫外アンテナとの間の距離が時系列で小さくなる(食品が庫外アンテナに近づく)と、庫外アンテナの受信電力は、時系列で大きくなる。もちろん、距離だけが受信電力を決定するわけではないが、受信電力の時系列変化は、距離に大きく影響される。
【0048】
図11は、アンテナの受信電力を説明する図である。図11の縦軸は、アンテナの受信電力である。横軸は、時間である。庫内アンテナの受信電力を時系列でドットしたものが“●”であり、庫外アンテナの受信電力を時系列でドットしたものが“○”である。図11の例では、庫内アンテナ及び庫外アンテナのそれぞれが時系列で交互に電波を照射している。
【0049】
扉が開いている期間において、庫内アンテナの受信電力は、時系列で増加したのち減少している。庫外アンテナの受信電力は、低い水準で安定している。扉が閉まった際に、保管庫4の設置状況等の影響を受け、庫外アンテナが庫内の食品のRFIDタグから電波を受信する場合がある。図11は、まさにこのような例であり、庫外アンテナ7が、“閉扉”の直後に、RFIDタグから最後に電波を受信している(符号71)。○71の受信電力は、充分に減衰しており、●72の受信電力に比して、充分に低い。このとき、在庫管理装置1は、“閉扉”の後、食品は庫内に存在していると判断する。
【0050】
図12もまた、アンテナの受信電力を説明する図である。図12の縦軸及び縦軸は、図11と同じである。図11と同様に図12でもまた、庫内アンテナの受信電力を時系列でドットしたものが“●”であり、庫外アンテナの受信電力を時系列でドットしたものが“○”である。図12の例でも、庫内アンテナ及び庫外アンテナのそれぞれが時系列で交互に電波を照射している。
【0051】
扉が開いている期間において、庫内アンテナの受信電力は、時系列で増加したのち減少している。庫外アンテナの受信電力は、時系列で増加している。扉が閉まった際に、庫内アンテナからの電波が庫外に漏洩し、庫内アンテナが庫外の食品のRFIDタグから電波を受信する場合がある。図12は、まさにこのような例であり、庫内アンテナ6が、“閉扉”の直後に、RFIDタグから最後に電波を受信している(符号73)。●73の受信電力は、充分に減衰しており、○74の受信電力に比して、充分に低い。このとき、在庫管理装置1は、“閉扉”の後、食品は庫外に存在していると判断する。
【0052】
なお、扉41を閉じる間に、扉41に設けたドアポケット43に保管した食品に取り付けられたRFIDタグ52と、庫内アンテナ6との距離や方向が変化する。このことに応じて、庫内アンテナ6は、RFIDタグ52が反射する電波をより受信しやすいという特徴も備える。同様に、引き出し44を閉じる間に、引き出し44内に保管した食品に取り付けられたRFIDタグ52と、庫内アンテナ6との距離や方向が変化する。このことにも応じて、庫内アンテナ6は、RFIDタグ52が反射する電波をより受信しやすいという特徴も備える。
【0053】
(処理手順)
図13は、処理手順のフローチャートである。
ステップS201において、在庫管理装置1の入出力処理部21は、アンテナ及びセンサの設定を受け付ける。具体的には、第1に、入出力処理部21は、出力装置13にアンテナ・センサ設定画面61(図9)を表示する。
第2に、入出力処理部21は、ユーザがアンテナ・センサ設定画面61の各欄に選択結果又は数値を入力するのを受け付ける。説明の便宜上、ここでユーザは、図9に記載した通りに、選択結果及び数値を入力したとする。そして、その後、入出力処理部21は、“10時00分00秒”において、扉41が開けられたのを検知したとする。
【0054】
ステップS202において、入出力処理部21は、庫内アンテナで読み取る。具体的には、入出力処理部21は、庫内アンテナに電波を照射させ、RFIDタグが反射する電波を受信させる。このとき、庫内アンテナは、複数の食品に添付されているRFIDタグを同時に読み取るものとする。
【0055】
ステップS203において、入出力処理部21は、庫外アンテナで読み取る。具体的には、入出力処理部21は、庫外アンテナに電波を照射させ、RFIDタグが反射する電波を受信させる。このとき、庫外アンテナは、複数の食品に添付されているRFIDタグを同時に読み取るものとする。
【0056】
ステップS204において、入出力処理部21は、開閉情報31(図6)のレコードを作成する。具体的には、入出力処理部21は、開閉情報31のレコードを作成し、補助記憶装置15に記憶する。このとき、入出力処理部21は、図6のレコード105bを作成することになる。説明の便宜上、入出力処理部21は、前回“閉扉”直後のデータをそのまま、今回“開扉”直前のデータ(レコード105a)として維持しているものとする。
【0057】
ステップS205において、入出力処理部21は、読取情報32(図7)のレコードを作成する。具体的には、入出力処理部21は、読取情報32のレコードを作成し、補助記憶装置15に記憶する。このとき、入出力処理部21は、図7のレコード118a、118b、118c及び118dを作成することになる。説明の便宜上、入出力処理部21は、前回“閉扉”直後のデータをそのまま、今回“開扉”直前のデータ(レコード117a、117b及び117c)として維持しているものとする。
【0058】
ステップS206において、入出力処理部21は、アンテナ電波照射期間が終了したか否かを判断する。ステップS201においてアンテナ・センサ設定画面61(図9)の欄66b及び欄66fが選択され、それぞれに“0秒”が入力されている。そこで、入出力処理部21は、扉41が閉じられるのを検知した場合(ステップS206“Yes”)、ステップS207に進み、それ以外の場合(ステップS206“No”)、ステップS202へ戻る。戻った先のステップS204において、開閉情報31のレコード105c以降が蓄積され、ステップS205において、読取情報32のレコード119a~119d以降が蓄積されていくことになる。
【0059】
ステップS207において、在庫管理装置1の在庫管理部22は、検証対象の読取情報32(図7)を取得する。具体的には、在庫管理部22は、読取情報32のうち、以下のレコードを補助記憶装置15から取得する。ここで取得された読取情報32のレコードは、“対象レコード”ともよばれる。
・今回“開扉”直前のレコード117a、117b及び117c
・ステップS205において作成したレコード118a~118d、119a~119d、・・・、120a~120c
【0060】
ステップS208において、在庫管理部22は、食品の移動を特定する。具体的には、在庫管理部22は、対象レコードを時系列に参照したうえで、食品(メーカ名とアイテム名との組合せ)のそれぞれを以下のように分類する。
〈1〉当初庫内アンテナのみが読み取り、その後、庫外アンテナのみが読み取っている食品。“C社”の“ヨーグルト”がこれに該当する。
〈2〉当初庫外アンテナのみが読み取り、その後、庫内アンテナのみが読み取っている食品。“D社”の“瓶ビール”がこれに該当する。
【0061】
〈3〉当初庫内アンテナのみが読み取り、その後も、庫内アンテナのみが読み取っている食品。“A社”の“うどん”がこれに該当する。
〈4〉当初庫外アンテナのみが読み取り、その後も、庫外アンテナのみが読み取っている食品。図7には、このケースに該当する食品は存在しない。
〈5〉今回“開扉”直後(10時00分00秒)に初めて庫外アンテナが読み取った食品。“B社”の“ドレッシング”がこれに該当する。
【0062】
ステップS209において、在庫管理部22は、直前の在庫情報33(図8)を取得する。具体的には、在庫管理部22は、今回“開扉”直前(9時59分58秒)における在庫情報33(図8)のレコード127a、127b及び127cを取得する。ここで取得されるレコードは、前回“閉扉”直後のデータが今回“開扉”直前(9時59分58秒)のデータとしてそのまま記憶されていたものである。このとき、在庫管理部22は、ステップS208において〈1〉又は〈2〉に該当した食品の摘要欄126に“削除”を記憶し、〈3〉又は〈4〉に該当した食品の摘要欄126を空欄とする。
【0063】
ステップS210において、在庫管理部22は、現在の在庫情報33(図8)を作成する。具体的には、在庫管理部22は、今回“閉扉”直後(10時00分10秒)における在庫情報33(図8)のレコード128a、128b及び128cを作成する。このとき、在庫管理部22は、ステップS208において〈1〉又は〈2〉に該当した食品の摘要欄126に“追加”を記憶し、〈3〉又は〈4〉に該当した食品の摘要欄126に“上書き”を記憶する。
在庫管理部22は、ステップS209及びS210において、読取情報32に基づき、直前の在庫情報33を現在の在庫情報33に修正していることになる。
【0064】
ステップS211において、在庫管理装置1の入出力処理部21は、現在の在庫情報33を表示する。具体的には、入出力処理部21は、在庫情報33のうち、レコード128a~128cを出力装置13に表示する。このとき、入出力処理部21は、レコード127a~127cを併せて表示してもよい。その後、処理手順を終了する。
【0065】
(処理手順開始の契機)
図13においては特に記載していないが、入出力処理部21が図13のフローチャートを開始する、すなわち、庫内アンテナ及び/又は庫外アンテナに対して給電を開始する契機として、以下のそれぞれ、又は、以下の少なくとも2つの組合せが想定され得る。
〈11〉扉開閉センサが、扉41が開くことを検知すること。
〈12〉人感センサが、保管庫4周辺の人を検知すること。
〈13〉照度センサが、キッチン3の照度が所定の閾値以上であることを検知すること。
【0066】
(庫内アンテナのみを使用するケース)
ステップS201の“第2”において、ユーザがアンテナ・センサ設定画面61(図9)の庫内アンテナ欄62において“使用する”を選択し、庫外アンテナ欄63において“使用しない”を選択する場合がある。この場合、入出力処理部21は、ステップS203を省略する。さらに、ステップS205及びステップS207以降の処理において、入出力処理部21及び在庫管理部22は、庫内アンテナの読取に関する処理のみを行う。
【0067】
(庫外アンテナのみを使用するケース)
ステップS201の“第2”において、ユーザがアンテナ・センサ設定画面61の庫外アンテナ欄63において“使用する”を選択し、庫内アンテナ欄62において“使用しない”を選択する場合がある。この場合、入出力処理部21は、ステップS202を省略する。さらに、ステップS205及びステップS207以降の処理において、入出力処理部21及び在庫管理部22は、庫外アンテナの読取に関する処理のみを行う。
【0068】
(本実施形態の効果)
本実施形態の在庫管理システムの効果は以下の通りである。
(1)在庫管理システムは、保管庫の扉が開いている場合、庫内アンテナ及び庫外アンテナの両者によって保管庫内の食品を読み取ることができる。
(2)在庫管理システムは、保管庫の扉が開いている場合、庫内アンテナ又は庫外アンテナの片方によって保管庫内の食品を読み取ることができる。
(3)在庫管理システムは、保管庫の扉が開いている場合、庫外アンテナの位置にかかわらず、保管庫内の食品を庫外アンテナに読み取らせることができる。
(4)在庫管理システムは、庫外アンテナの電波照射方向を一定に維持することができる。
【0069】
(5)在庫管理システムは、庫外アンテナが保管庫内の電波障害を受けにくくすることができる。
(6)在庫管理システムは、保管庫の扉が開いた場合、保管庫の外部空間にはみ出た食品を庫内アンテナに読み取らせることができる。
(7)在庫管理システムは、保管庫の外部空間にはみ出たドアポケット内の食品を庫内アンテナに読み取らせることができる。
(8)在庫管理システムは、庫内アンテナを保管庫の天井に設置することによって、庫内アンテナの電波照射領域を大きくし、庫内アンテナの電波照射領域と庫外アンテナの電波照射領域の重複部分も大きくすることができる。
【0070】
(9)在庫管理システムは、移動速度がより速く、移動範囲もより大きい庫外での食品の移動を、庫外アンテナに確実に読み取らせることができる。
(10)在庫管理システムは、庫外アンテナがキッチンにいる人の影響を受けることを回避することができる。
(11)在庫管理システムは、人がキッチンにいるときに限定して、アンテナに給電することができる。
(12)在庫管理システムは、庫内アンテナ及び庫内アンテナの受信電力の大きさに基づき、食品の位置を判断することができる。
(13)在庫管理システムは、アンテナが読み取った結果に基づき、保管庫内の在庫状態を修正することができる。
【0071】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0072】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。在庫管理装置1の各種情報は、クラウド上に存在していてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 在庫管理装置
2 ネットワーク
3 キッチン
4 保管庫
6 庫内アンテナ
7 庫外アンテナ
8、9 電波照射領域
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
16 通信装置
21 入出力処理部
22 在庫管理部
31 開閉情報
32 読取情報
33 在庫情報
41 扉
42、44 引き出し
43 物品保持手段(ドアポケット)
51 食品
52 RFIDタグ
61 アンテナ・センサ設定画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13