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特許7522693場所打ちコンクリート杭の施工方法および杭頭成形補助具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】場所打ちコンクリート杭の施工方法および杭頭成形補助具
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
E02D5/34 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021065597
(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公開番号】P2022161068
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 定幸
(72)【発明者】
【氏名】秋月 通孝
(72)【発明者】
【氏名】村松 晃次
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼澤 昌義
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-131964(JP,A)
【文献】特開2006-037492(JP,A)
【文献】特開2021-042606(JP,A)
【文献】特開平04-024325(JP,A)
【文献】特開昭57-021623(JP,A)
【文献】特開昭59-000419(JP,A)
【文献】特開2007-146538(JP,A)
【文献】特開2016-003444(JP,A)
【文献】特開2009-102915(JP,A)
【文献】特開2015-078564(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01473413(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を削孔して掘削孔を形成する削孔工程と、
前記掘削孔にコンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭を形成する打設工程と、
前記コンクリートを所定期間養生する養生工程と、
前記場所打ちコンクリート杭の頭部を成形する成形工程と、を備える場所打ちコンクリート杭の施工方法であって、
前記打設工程において、前記場所打ちコンクリート杭の仕上り高さに応じて前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部に平面視環状の杭頭成形補助具を周設し、
前記杭頭成形補助具は、外縁が前記場所打ちコンクリート杭の一般部の外面と一致するとともに前記一般部の外径よりも小さい内径を有した平面視環状の第一片と、前記第一片の内周縁部に垂直に立設されて上端が前記仕上り高さと一致する第二片とからなる断面視L字状の鋼材からなり、
前記打設工程では、前記仕上り高さよりも高い位置まで前記コンクリートを打設し、
前記成形工程では、前記第二片の上端を基準として、前記場所打ちコンクリート杭の上端が前記仕上り高さにおいて表面が平滑になるように前記場所打ちコンクリート杭の頭部を成形することを特徴とする、場所打ちコンクリート杭の施工方法。
【請求項2】
前記打設工程において、前記仕上り高さよりも高い位置に打設する前記コンクリートに、亀裂誘発治具を埋め込むことを特徴とする、請求項1に記載の場所打ちコンクリート杭の施工方法。
【請求項3】
場所打ちコンクリート杭の施工時に、前記場所打ちコンクリート杭の上端よりも高い位置に打設されたコンクリートの余盛部と前記場所打ちコンクリート杭の頭部との境界部に面して前記場所打ちコンクリート杭の頭部に周設される杭頭成形補助具であって、
外縁が前記場所打ちコンクリート杭の一般部の外面と一致し、前記一般部の外径よりも小さい内径を有した平面視環状の第一片と、前記第一片の内周縁部に垂直に立設された第二片とからなる断面視L字状の鋼材からなることを特徴とする、杭頭成形補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリート杭の施工方法および杭頭成形補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
杭基礎構造は、フーチング、基礎梁、柱脚などの地中構造体に、地中に形成された杭の頭部を剛接合してなるのが一般的である。しかしながら、前記従来の杭基礎構造では、地震時等の外力により生じる曲げ応力が杭と地中構造体との接合部において最大になることから、補強を目的として多量の補強鉄筋を配筋する必要がある。補強鉄筋が増えると、材料費が高くなるとともに、地中構造体の鉄筋と干渉することから配筋作業に手間がかかる。
そのため、本出願人は、特許文献1に示すように、地中構造体を場所打ちコンクリート杭の杭頭部に載置することで、大きな水平力が作用した場合であっても、地中構造体や杭に過剰な断面力が発生することを抑制することを可能とした基礎構造を開示している。特許文献1の基礎構造は、場所打ちコンクリート杭の杭頭部を高強度コンクリートにより構築するものである。
特許文献1の基礎構造では、場所打ちコンクリートの上端が平滑に成形されているのが望ましい。一方、打設直後の杭頭部をコテ仕上げするのは手間がかかる。また、打設直後に杭頭部を平滑に仕上げた場合であっても、コンクリートが硬化する過程で杭頭部の高さ位置に変化が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-261946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、場所打ちコンクリート杭の杭頭部を高品質に成形することを可能とした場所打ちコンクリート杭の施工方法およびこの施工方法に使用する杭頭成形補助具を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の場所打ちコンクリート杭の施工方法は、地盤を削孔して掘削孔を形成する削孔工程と、前記掘削孔にコンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭を形成する打設工程と、前記コンクリートを所定期間養生する養生工程と、前記場所打ちコンクリート杭の頭部を成形する成形工程とを備える場所打ちコンクリート杭の施工方法である。前記打設工程において、前記場所打ちコンクリート杭の仕上り高さに応じて前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部に平面視環状の杭頭成形補助具を周設する。この杭頭成形補助具は、外縁が前記場所打ちコンクリート杭の一般部の外面と一致するとともに前記一般部の外径よりも小さい内径を有した平面視環状の第一片と、前記第一片の内周縁部に垂直に立設されて上端が前記仕上がり高さと一致する第二片とからなる断面視L字状の鋼材からなる。また、前記打設工程では前記仕上り高さよりも高い位置まで前記コンクリートを打設する。さらに、前記成形工程では、前記第二片の上端を基準として、前記場所打ちコンクリート杭の上端が前記仕上り高さにおいて表面が平滑になるように前記場所打ちコンクリート杭の頭部を成形する
かかる場所打ちコンクリート杭の施工方法によれば、仕上げ高さよりも高い位置までコンクリート(余盛部)を打設しておき、コンクリートの養生後に余盛部を斫り、切断または研磨することにより杭頭部を成形するため、所望の仕上げ高さにおいて平滑な端面を形成することができる。また、杭頭部は、半球状、縁部に段差やテーパーを有した形状等の自由な形状に成形することができる。
【0006】
なお、前記打設工程において前記仕上り高さに応じて前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部に平面視環状の杭頭成形補助具を周設しておき、前記成形工程では前記杭頭成形補助具の上端を基準として前記場所打ちコンクリート杭の頭部を成形するのが望ましい。
かかる場所打ちコンクリート杭の施工方法によれば、杭頭成形補助具を定規にして杭頭部の成形作業を行うことができる。
このような、杭頭成形補助具は、外縁が前記場所打ちコンクリート杭の一般部の外面と一致し、前記一般部の外径よりも小さい内径を有した平面視環状の第一片と、前記第一片の内周縁部に垂直に立設された第二片とからなる断面視L字状の鋼材により構成すればよい。前記杭頭成形補助具の下面が外側に向かうに従って低くなるように傾斜していれば、杭頭部の周縁にテーパーを簡易に形成することができる。
また、前記打設工程において、前記仕上り高さよりも高い位置に打設する前記コンクリート(余掘り部)に、亀裂誘発治具が埋め込んでおけば、高強度コンクリートにより形成された杭頭部と余掘り部との境界部において、余掘り部の撤去をより簡易に行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の場所打ちコンクリート杭の施工方法およびこの施工方法に使用する杭頭成形補助具によれば、場所打ちコンクリート杭の杭頭部を高品質に成形することが可能となる。そのため、杭の頭部に構造物の地中構造体を載置する杭基礎構造における場所打ちコンクリートの施工に好適に採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態の杭基礎構造の一部を示す断面図である。
図2】場所打ちコンクリート杭の施工方法を示すフローチャートである。
図3】場所打ちコンクリート杭の施工方法の各工程の作業状況を示す図であって、(a)は削孔工程、(b)は打設工程、(c)は(b)に続く打設工程、(d)は成形工程である。
図4】コンクリート打設状況を示す断面図であって、(a)は下部コンクリート打設状況、(b)は上部コンクリート打設状況である。
図5】杭頭部と余盛部との境界部を示す拡大断面図である。
図6】第一実施形態の杭頭形成補助具を示す図であって、(a)は平面図、(b)は拡大断面図である。
図7】亀裂誘発治具の平面図である。
図8】(a)および(b)は他の形態に係る亀裂湯初治具を示す平面図である。
図9】第二実施形態の杭基礎構造の一部を示す断面図である。
図10】第二実施形態の杭頭形成補助具を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
第一実施形態では、杭基礎構造1の場所打ちコンクリート杭2の施工方法について説明する。図1に本実施形態の基礎構造の一部を示す。本実施形態の杭基礎構造1は、図1に示すように、場所打ちコンクリート杭2と、場所打ちコンクリート杭2の上端21に載置された地中構造体3とを備えている。本実施形態の場所打ちコンクリート2と地中構造体3は、一体に固定されたものではなく、いわゆる半剛接合された状態である。
図2に本実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工方法を示す。図2に示すように、本実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工方法は、削孔工程S1と、打設工程S2と、養生工程S3と、成形工程S4とを備えている。図3に各工程の作業状況を示す。
【0010】
削孔工程S1は、図3(a)に示すように、地盤Gを削孔して掘削孔4を形成する工程である。掘削孔4は、場所打ちコンクリート杭2の構築箇所の地盤Gを掘削することで、場所打ちコンクリート杭2の外形(外径)と同形状(同じ内径)に形成する。掘削孔4は、場所打ちコンクリート杭2が杭基礎構造1として必要な支持力を確保できる深さを確保する。本実施形態では、アースドリルにより掘削孔4を形成するが、掘削孔4の掘削方式は限定されるものではない。
【0011】
打設工程S2は、図3(b)および(c)に示すように、掘削孔4にコンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭2を形成する工程である。本実施形態の場所打ちコンクリート杭2は、強度の異なる二種類のコンクリートを深さ方向に連続して打設することにより、杭頭部22の設計基準強度がその他の部分(一般部23)の設計基準強度よりも高められている(図1参照)。本実施形態では、一般部23のコンクリート(下部コンクリートC1)の設計基準強度Fcを30N/mm、杭頭部22のコンクリート(上部コンクリートC2)の設計基準強度を80N/mmとするが、場所打ちコンクリート杭2を構成するコンクリートの設計基準強度は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、杭の上部と下部とでコンクリート強度を打分けを実施しない場合、すなわち深さ方向に同一設計基準強度であってもよい。
【0012】
図4(a)~(b)に打設工程S2の施工状況を示す。
コンクリートの打設は、図3(b)に示すように、まず、掘削孔4内に鉄筋かご(鉄筋24)を挿入する。次に、図4(a)に示すように、掘削孔4の底部から、トレミー管Pを利用して、所定高さ(以下、「先行打設高さ」という)まで一般部23のコンクリート(下部コンクリートC1)を打設する。続いて、図4(b)に示すように、トレミー管Pの先端を下部コンクリートC1に挿入した状態で、下部コンクリートC1のコンクリート打設面よりも下方から杭頭部22のコンクリート(上部コンクリートC2)の打設を開始する。なお、上部コンクリートC2は、図3(c)に示すように、場所打ちコンクリート杭2の仕上り高さFH(上端21の位置)よりも高い位置まで打設する。本実施形態では、場所打ちコンクリート杭2の仕上り高さFHよりも高い位置に打設されたコンクリート部分を余盛部25と称する。
【0013】
図5に杭頭部22の拡大断面図を示す。
本実施形態では、図5に示すように、場所打ちコンクリート杭2の縦筋(主筋)のうちの少なくとも一部(以下、「連結筋26」という)が、場所打ちコンクリート杭2の上端21から突出している。連結筋26は、場所打ちコンクリート杭2に上載される地中構造体3に埋め込まれることで、場所打ちコンクリート杭2と地中構造体3との連結部材として機能する(図1参照)。連結筋26は、余盛部25の上面から突出する長さを有している。また、連結筋26の上端には、余盛部25を撤去する際の連結筋26の位置を示すための目印27が設けられている。目印27は、例えば、色がついた粘着テープを巻き付けてもよいし、連結筋26にペンキなどで着色しても負い。
【0014】
また、本実施形態では、場所打ちコンクリート杭2の杭頭部22に平面視環状の杭頭成形補助具5を周設する。図6(a)は杭頭成形補助具5の平面図、図6(b)は杭頭成形補助具5の拡大断面図である。
杭頭成形補助具5は、場所打ちコンクリート杭2の上端21の位置出し、および、杭頭部22の形状を所望の形状に形成するための部材として機能する。本実施形態では、場所打ちコンクリート杭2の上端部において、杭頭成形補助具5を利用して場所打ちコンクリート杭2を縮径するものとする。本実施形態の杭頭成形補助具5は、断面視L字状の鋼材(いわゆるアングル材)を加工することにより形成されている。杭頭成形補助具5は、余盛部25と杭頭部22との境界部に面して場所打ちコンクリート杭2の頭部に周設されている。杭頭成形補助具5は、下側に配設された第一片51が水平になるように配設されていて、かつ、第一片51の内周縁部には第一片51に対して垂直に第二片52が立設されている。第一片51の外縁は、場所打ちコンクリート杭2の外面と一致している。すなわち、杭頭成形補助具5は、場所打ちコンクリート杭2の外径よりも小さい内径を有した平面視環状の鋼材からなる。また、第二片52の上端(補助具上端53)は、場所打ちコンクリート杭2の上端21(仕上り高さ)の周縁の高さと一致している。本実施形態の杭頭成形補助具5は、弧状に形成された四つの補助具形成部材54,54,…を連結することにより平面視円形を呈している。隣り合う補助具形成部材54同士は、両補助具形成部材54,54にまたがって配設された取付部材55を両補助具形成部材54,54に固定することにより連結する。
【0015】
コンクリートを打設する際には、図5に示すように、場所打ちコンクリート杭2の仕上り高さ(杭頭成形補助具5の上端)よりも高い位置に亀裂誘発治具6を配設しておく。すなわち、本実施形態では、余盛部25のコンクリート中に亀裂誘発治具6が埋め込まれている。亀裂誘発治具6は、余盛部25に亀裂を生じやすくすることで、余盛部25のみを撤去しやすくする。亀裂誘発治具6は、接合面亀裂誘発部61と、縦方向亀裂誘発部62とにより構成されている。図7に、亀裂誘発治具6の平面図を示す。
接合面亀裂誘発部61は、図7に示すように、複数の開口が形成された網状部材である。本実施形態の接合面亀裂誘発部61は、内径が異なる三つの環状部材63~65と、環状部材63~65同士の間に配設されて環状部材63~65同士を連結する複数の帯状部材66とにより形成されている。接合面亀裂誘発部61を構成する環状部材63~65のうちの最も外側に配設された環状部材65の内径は、杭頭成形補助具5の内径と同等であり、図5に示すように、杭頭成形補助具5に上載されている。なお、接合面亀裂誘発部61の構成は限定されるものではなく、例えば、図8(a)に示すように、環状部材の内側に複数の板状部材66,66,…を組み合わせることにより網状(格子状)を呈していてもよいし、図8(b)に示すように複数の孔67,67,…が形成された板材であってもよい。
縦方向亀裂誘発部62は、図5に示すように、接合面亀裂誘発部61の上面に立設されている。本実施形態の縦方向亀裂誘発部62は、複数の棒材からなる。縦方向亀裂誘発部62は、余盛部25と同等の高さを有している。
【0016】
養生工程S3は、掘削孔内の打設コンクリートを所定期間養生する工程である(図3(c)参照)。打設コンクリートに所定の強度が発現したら、余盛部25を撤去して、杭頭部22の成形を行う(成形工程S4)。
【0017】
成形工程S4は、図3(d)に示すように、場所打ちコンクリート杭2の頭部を成形する工程である。成形工程S4では、場所打ちコンクリート杭2の上端21が仕上り高さにおいて表面が平滑になるように成形する。場所打ちコンクリート杭2の頭部を成形する際には、杭頭成形補助具5の上端を基準として余盛部25のコンクリートを斫り取る。このとき、目印27により連結筋26や杭頭成形補助具5の位置を確認し、連結筋26に衝撃を与えないようにするとともに、杭頭レベルを確認しながら作業を行う。コンクリートを斫り取る手段に制限はないが、仕上がり高さ位置においては、打撃系の斫り工具(ブレーカーなど)よりも、カッターやワイヤーソー等の切断工具を用いることが好ましい。このような切断工具を使用すると、コンクリートやモルタルによりコンクリート表面を補修せずとも、上端21を平滑に成形することができる。
余盛部25には亀裂誘発治具6が埋め込まれているため、コンクリートに亀裂が生じやすい。また、余盛部25と杭頭部22の境界部に接合面亀裂誘発部61が配設されているため、杭頭部22の上方において亀裂が生じやすく、余盛部25を斫り取る際に杭頭部に影響が生じ難い。
余盛部25の撤去に伴い、亀裂誘発治具6および杭頭成形補助具5を撤去する。
【0018】
本実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工方法によれば、仕上げ高さよりも高い位置までコンクリート打設して余盛部25を形成し、コンクリートの養生後に余盛部25を斫り取ることにより杭頭部を成形するため、所望の仕上げ高さにおいて所望の形状に杭頭処理できる。
また、杭頭成形補助具5を定規にして杭頭部の成形作業を行うことができる。杭頭部22に杭頭成形補助具5が周設されているため、杭頭部22の外形が大きくなり過ぎることを防止できる。
また、余盛部25に亀裂誘発治具6が埋め込んでおけば、高強度コンクリートにより形成された杭頭部22と余盛部25との境界部において、余盛部25を撤去し易くなる。さらに、亀裂誘発治具6により、余盛部25と杭頭部22との境界部に亀裂が生じ易くなるため、仕上り高さFHに合わせて成形し易い。そのため、杭頭部22への影響を最小限に抑えることができる。
また、杭頭部22から突出した状態で配筋された連結筋26に目印27が設けられているため、コンクリートの斫り高さを確認しやすい。
本実施形態では、強度の異なるコンクリートを連続的に打設し、コンクリート強度を切換える打設手順を示した。一般的には、成形工程S4の前に、杭頭部22を余分に斫り取り、強度の高いコンクリートを打設する工程が含まれる。その際には、杭頭部のコンクリート打設のための掘削・型枠、さらにはそれに備えた山留計画などが必要となるが、本実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工法によれば、これらの作業を省略できる。さらに、本実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工方法によれば、杭頭処理時(成形時)に、杭頭部22の周囲の掘削およびそれに備えた山留を低減または省略できるため、施工の手間を削減し、工期短縮化を図ることができる。また、残土処分に要する手間および費用を低減できる。
【0019】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、杭基礎構造1の場所打ちコンクリート杭2の施工方法について説明する。図9に第二実施形態の杭基礎構造1を示す。第二実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工方法は、図9に示すように、場所打ちコンクリート杭2の上端縁にテーパーを形成する点で、場所打ちコンクリート杭2の上端縁に段差を形成する引用文献1の場所打ちコンクリート杭2の施工方法と異なっている。
図10に第二実施形態の杭頭成形補助具5を示す。第二実施形態の杭頭成形補助具5は、図10(a)に示すように、下面が外側に向かうに従って低くなるように傾斜していることで、場所打ちコンクリート杭2の上端縁にテーパー面を形成する。本実施形態の杭頭成形補助具5は、弧状に形成された四つの補助具形成部材54,54,…を連結することにより平面視円形を呈している。図10(b)に示すように、補助具形成部材54の端部には、フランジ57が形成されている。隣り合う補助具形成部材54,54は、互いのフランジ57同士を重ねた状態で、両フランジ57,57を貫通させたボルトBにナットNを螺合することにより連結する。補助具形成部材54を構成する材料は限定されるもんではなく、例えば、筒状部材であってもよいし、密実な部材であってもよい。
【0020】
この他、第二実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工方法の詳細および各部材の構成は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
第二実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工方法によれば、図9に示すように、場所打ちコンクリート杭2の上端縁部にテーパーを簡易に形成することができる。この他の第二の実施形態の場所打ちコンクリート杭2の施工法の作用効果は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0021】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、杭頭成形補助具5の上端が場所打ちコンクリート杭2の仕上り時の上端21の周縁の高さと一致するように杭頭成形補助具を設けるものとしたが、杭頭成形補助具5の高さ位置はこれに限定されるものではない。例えば、場所打ちコンクリート杭2の仕上り高さよりも所定の大きさだけ低くてもよい。
前記実施形態では、四つの補助具形成部材54,54,…を組み合わせることにより杭頭成形補助具5を形成するものとしたが、杭頭成形補助具5の分割数は限定されるものではなく、例えば二つや三つであってもよいし、五つ以上に分割されていてもよい。
前記実施形態では、主筋の一部を場所打ちコンクリート杭2の上端21から突出させて、場所打ちコンクリート杭2と地中構造体3との連結部材として使用したが、場所打ちコンクリート杭2と地中構造体3との連結部材は、主筋とは別に設けてもよい。このような連結部材は、場所打ちコンクリート杭2の中心部に設けた芯鉄筋であってもよい。また、場所打ちコンクリート杭2と地中構造体3との連結部材は、必要に応じて設置すればよく、省略してもよい。すなわち、全ての縦筋(主筋)の上端高さを仕上がり高さFH以下としてもよい。
前記実施形態では、余盛部25を斫り取る場合ついて説明したが、杭頭部22を成形方法は限定されるものではなく、ワイヤーソー等を利用して余盛部25を切断してもよいし、グラインダー等を利用して研磨してもよい。
杭頭形成補助具および亀裂誘発治具を構成する材料は鋼材に限定されるものではない。
前記実施形態では、杭の上部と下部とでコンクリート強度を打分ける場合について説明したが、本発明は、深さ方向に同一設計基準強度の杭において杭頭処理を必要とする場合にも適用できる.
【符号の説明】
【0022】
1 杭基礎構造
2 場所打ちコンクリート杭
21 上端
22 杭頭部
23 一般部
24 鉄筋(鉄筋かご)
25 余盛部
26 連結筋
27 目印
3 地中構造体
4 掘削孔
5 杭頭成形補助具
6 亀裂誘発治具
FH 仕上り高さ
G 地盤
S1 削孔工程
S2 打設工程
S3 養生工程
S4 成型工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10