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特許7522699中空粒子、該中空粒子の製造方法、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】中空粒子、該中空粒子の製造方法、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20240718BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240718BHJP
   C08K 7/26 20060101ALI20240718BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240718BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C08L101/00
C08K7/26
B32B27/20 Z
H01B3/12 336
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021079300
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172938
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダオ グエン ズイ フオン
(72)【発明者】
【氏名】中村 司
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-233611(JP,A)
【文献】特開2012-136363(JP,A)
【文献】国際公開第2007/102569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C08L 101/00
C08K 7/26
B32B 27/20
H01B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子にシェル形成材料を被覆してコアシェル粒子を得ること、
前記コアシェル粒子から前記コア粒子を除去して中空粒子前駆体を得ること、および、
前記中空粒子前駆体にシェル形成材料を被覆すること、を含み、
一次粒子のDSLが下記式(1)を満足し、殻の厚みが75nm以上、且つ破壊強度が16MPa以上であり、シリカを含む、中空粒子の製造方法:
1≦DSL≦1.5・・・(1)
ここで、DSL=D75L/D25Lであり、D25LおよびD75Lは、それぞれ、走査型電子顕微鏡による観察において、無作為に選んだ100個の一次粒子の長径を測定し、サイズを小さい方から順に並べたときの25番目および75番目の値を示す。
【請求項2】
前記コア粒子が下記一般式(I)で表されるアルナイト型化合物を含む、請求項1に記載の製造方法:
[Al1-xM’(SO 2-(OH)・mHO・・・(I)
式(I)中、MはNa、K、NH およびHからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオンであり、M’はCu2+、Zn2+、Ni2+、Sn4+、Zr4+およびTi4+からなる群から選択される少なくとも1種の陽イオンであり、a、m、x、yおよびzは、それぞれ、0.8≦a≦1.35、0≦m≦5、0≦x≦0.4、1.7≦y≦2.5、4≦z≦7を満足する。
【請求項3】
前記コア粒子を除去する前に、前記コアシェル粒子を焼成すること、を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記コアシェル粒子を650℃以下で焼成する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記シェル形成材料で被覆された前記中空粒子前駆体を焼成すること、を含む、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記中空粒子前駆体を900℃以上で焼成する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記中空粒子前駆体の焼成前に、前記中空粒子前駆体に酸処理を施すこと、を含む、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記シェル形成材料はケイ酸ナトリウム又はテトラエトキシシランを含む、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子、該中空粒子の製造方法、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、情報通信機器の分野では、高周波数帯での通信に対応すべく、電子部材(代表的には、樹脂部材)の低誘電率化、低誘電正接化が求められている。これを実現すべく、例えば、比誘電率の低い空気を部材に含有させることが提案されている。具体的には、中空粒子を用いて空気を導入することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年の情報通信機器の高速大容量化から、誘電特性のさらなる向上が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-56158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、誘電特性の向上を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態による中空粒子は、シリカを含み、一次粒子のDSLが下記式(1)を満足し、破壊強度が10MPa以上である。
1≦DSL≦1.5・・・(1)
ここで、DSL=D75L/D25Lであり、D25LおよびD75Lは、それぞれ、走査型電子顕微鏡による観察において、無作為に選んだ100個の一次粒子の長径を測定し、サイズを小さい方から順に並べたときの25番目および75番目の値を示す。
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、BET比表面積が30m/g以下である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、直径が1nmから100nmの細孔の積算細孔容積が0.1cc/g以下である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、中空率が30%以上95%以下である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、アスペクト比が2未満である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、長径が0.5μm以上10μm以下である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、殻の厚みが25nm以上500nm以下である。
1つの実施形態においては、上記シリカは無定形シリカである。
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、Alを含み、Al/Siのモル比が0.0001以上0.1以下である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、Naを含み、Na/Siのモル比が0.001以上0.025以下である。
【0007】
本発明の別の実施形態による樹脂組成物は、樹脂、および、上記中空粒子を含む。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態による樹脂成形体は、上記樹脂組成物から形成される。
本発明のさらに別の実施形態による積層体は、上記樹脂組成物から形成される樹脂層を有する。
1つの実施形態においては、上記樹脂層の厚みは25μm以下である。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態による上記中空粒子の製造方法は、コア粒子にシェル形成材料を被覆してコアシェル粒子を得ること、前記コアシェル粒子から前記コア粒子を除去して中空粒子前駆体を得ること、および、前記中空粒子前駆体にシェル形成材料を被覆すること、を含む。
1つの実施形態においては、上記コア粒子は下記一般式(I)で表されるアルナイト型化合物を含む。
[Al1-xM’(SO 2-(OH)・mHO・・・(I)
式(I)中、MはNa、K、NH およびHからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオンであり、M’はCu2+、Zn2+、Ni2+、Sn4+、Zr4+およびTi4+からなる群から選択さる少なくとも1種の陽イオンであり、a、m、x、yおよびzは、それぞれ、0.8≦a≦1.35、0≦m≦5、0≦x≦0.4、1.7≦y≦2.5、4≦z≦7を満足する。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記コア粒子を除去する前に、上記コアシェル粒子を焼成すること、を含む。上記コアシェル粒子を650℃以下で焼成してもよい。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記シェル形成材料で被覆された上記中空粒子前駆体を焼成すること、を含む。上記中空粒子前駆体を900℃以上で焼成してもよい。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記中空粒子前駆体の焼成前に、上記中空粒子前駆体に酸処理を施すこと、を含む。
1つの実施形態においては、上記シェル形成材料はケイ酸ナトリウムを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、一次粒子の粒子サイズが所定の均一性を満足する中空粒子を用いることで、誘電特性を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】長径および短径を説明する模式図である。
図2】本発明の1つの実施形態における積層体の概略断面図である。
図3A】実施例1の中空粒子のSEM観察写真である。
図3B】実施例2の中空粒子のSEM観察写真である。
図3C】比較例1の中空粒子のSEM観察写真である。
図4A】実施例1の中空粒子のTEM観察写真である。
図4B】実施例2の中空粒子のTEM観察写真である。
図4C】比較例1の中空粒子のTEM観察写真である。
図5A】実施例1の樹脂成形体の断面SEM観察写真である。
図5B】実施例2の樹脂成形体の断面SEM観察写真である。
図5C】比較例1の樹脂成形体の断面SEM観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0013】
(用語の定義)
本明細書における用語の定義は、下記の通りである。
1.粒子の長径
走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した値であり、無作為に選んだ一次粒子の長径(例えば、図1のL)の平均値である。なお、一次粒子とは、SEMより観察される最小の粒子であって、凝集している粒子(二次粒子)とは区別される。
2.粒子の短径
SEM観察により測定した値であり、無作為に選んだ一次粒子の短径(例えば、図1のT)の平均値である。
3.アスペクト比(長径/短径)
上記粒子の長径から上記粒子の短径を除して算出した値である。
【0014】
A.中空粒子
本発明の1つの実施形態における中空粒子は、代表的には、シリカ(例えば、無定形シリカ)で形成される。中空粒子のシリカの含有量は、例えば95重量%以上であり、好ましくは97重量%以上であり、さらに好ましくは98重量%以上である。
【0015】
上記中空粒子は、Alを含み得る。Alの含有量は、例えばAl/Siのモル比で0.1以下であり、好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.04以下である。一方、Alの含有量は、例えば、Al/Siのモル比で0.0001以上である。Alの含有量は、例えば、Al/Siのモル比で0.001以上であってもよい。なお、Al/Siのモル比は、エネルギー分散型X線分光法(EDS)による組成分析により求めることができる。
【0016】
中空粒子は、Naを含み得る。Naの含有量は、例えばNa/Siのモル比で0.025以下であり、好ましくは0.020以下である。一方、Naの含有量は、例えば、Na/Siのモル比で0.001以上である。なお、Na/Siのモル比は、エネルギー分散型X線分光法(EDS)による組成分析により求めることができる。
【0017】
中空粒子のKubelka-Munk変換(以下、KM変換と称する場合がある)シラノール基面積は、好ましくは1500-/g以下であり、より好ましくは1000-/g以下であり、さらに好ましくは700-/g以下である。本発明の実施形態によれば、後述の高い中空率および/または高い破壊強度と、このような低いKM変換シラノール基面積を両立し得る。一方、中空粒子のKM変換シラノール基面積は、例えば1-/g以上である。
【0018】
中空粒子の一次粒子は、1≦DSL≦1.5を満足し、好ましくは1≦DSL≦1.4であり、さらに好ましくは1≦DSL≦1.3である。ここで、DSLはD75L/D25Lであり、D25LおよびD75Lは、それぞれ、走査型電子顕微鏡による観察において、無作為に選んだ100個の一次粒子の長径を測定し、サイズを小さい方から順に並べたときの25番目および75番目の値を示す。
【0019】
中空粒子の一次粒子は、1≦DST≦1.5を満足することが好ましく、より好ましくは1≦DST≦1.4であり、さらに好ましくは1≦DST≦1.3である。ここで、DSTはD75T/D25Tであり、D25TおよびD75Tは、それぞれ、走査型電子顕微鏡による観察において、無作為に選んだ100個の一次粒子の短径を測定し、サイズを小さい方から順に並べたときの25番目および75番目の値を示す。
【0020】
上記中空粒子のアスペクト比は、好ましくは2未満であり、さらに好ましくは1.9以下ある。一方、中空粒子のアスペクト比は、1以上であり、好ましくは1を超え、さらに好ましくは1.1以上である。
【0021】
中空粒子の形状は、任意の適切な形状を有し得る。中空粒子の形状としては、例えば、楕円状、球状、凝集塊状、鱗片状、板状、膜状、円柱状、角柱状、扁平形状、碁石状、米粒状が挙げられる。好ましくは、球状、碁石状が採用される。このような形状を採用することにより、例えば、上記DSLおよびDSTを良好に満足させ得る。
【0022】
中空粒子の長径は、好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上である。例えば、後述の中空率を十分に満足し得るからである。一方、中空粒子の長径は、好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。例えば、用いられる部材の小型化(薄膜化)に大きく寄与し得るからである。
【0023】
中空粒子の短径は、好ましくは0.25μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。例えば、後述の中空率を十分に満足し得るからである。一方、中空粒子の短径は、好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。例えば、用いられる部材の小型化(薄膜化)に大きく寄与し得るからである。
【0024】
中空粒子の殻の厚みは、好ましくは25nm以上であり、より好ましくは50nm以上であり、さらに好ましくは75nm以上である。このような厚みによれば、例えば、後述の樹脂組成物を作製する際に、中空粒子が壊れるのを効果的に防止し得る。一方、中空粒子の殻の厚みは、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは350nm以下であり、さらに好ましくは250nm以下である。このような厚みによれば、後述の中空率を十分に満足し得、誘電特性の向上、軽量化に大きく寄与し得る。なお、殻の厚みは、TEM観察により測定することができる。例えば、無作為に選んだ中空粒子の殻の厚みを測定し、その平均値を算出することにより求められる。
【0025】
中空粒子の中空率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは45%以上であり、特に好ましくは50%以上である。このような中空率によれば、例えば、誘電特性の向上、軽量化に大きく寄与し得る。一方、中空粒子の中空率は、好ましくは95%以下であり、より好ましくは90%以下であり、さらに好ましくは85%以下であり、特に好ましくは80%以下である。このような中空率によれば、例えば、後述の樹脂組成物を作製する際に、中空粒子が壊れるのを効果的に防止し得る。なお、中空率は、上記長径および短径と上記殻の厚みから算出することができる。
【0026】
上記長径に対する上記殻の厚みの比(殻の厚み/長径)は、好ましくは0.01以上0.33以下であり、より好ましくは0.02以上0.25以下であり、さらに好ましくは0.03以上0.25以下である。
【0027】
中空粒子のBET比表面積は、好ましくは30m/g以下であり、より好ましくは20m/g以下であり、さらに好ましくは10m/g以下である。一方、中空粒子のBET比表面積は、例えば0.5m/g以上であり、1m/g以上であってもよい。
【0028】
中空粒子の細孔容積(直径が1nmから100nmの細孔の積算細孔容積)は、好ましくは0.1cc/g以下であり、より好ましくは0.08cc/g以下であり、さらに好ましくは0.06cc/g以下である。このような細孔容積によれば、例えば、後述の樹脂組成物において、中空粒子内部へ樹脂が侵入するのを効果的に防止し、誘電特性の向上に大きく寄与し得る。一方、中空粒子の細孔容積(直径が1nmから100nmの細孔の積算細孔容積)は、例えば0.01cc/g以上である。
【0029】
中空粒子の細孔容積(直径が1nmから10nmの細孔の積算細孔容積)は、好ましくは0.01cc/g以下であり、より好ましくは0.007cc/g以下であり、さらに好ましくは0.005cc/g以下である。このような細孔容積によれば、例えば、後述の樹脂組成物において、中空粒子内部へ樹脂が侵入するのを効果的に防止し、誘電特性の向上に大きく寄与し得る。一方、中空粒子の細孔容積(直径が1nmから10nmの細孔の積算細孔容積)は、例えば0.001cc/g以上である。
【0030】
中空粒子の破壊強度は、10MPa以上であり、より好ましくは12MPa以上であり、さらに好ましくは14MPa以上であり、特に好ましくは16MPa以上である。このような破壊強度によれば、例えば、後述の樹脂組成物を作製する際に、中空粒子が壊れるのを効果的に防止し得る。その結果、粒子の中空状態が保持され、誘電特性の向上に大きく寄与し得る。一方、中空粒子の破壊強度は、例えば800MPa以下である。
【0031】
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、任意の適切な表面処理剤による表面処理が施されている。表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤、多価アルコールと脂肪酸とのエステル類、アクリル系ポリマーおよびシリコーン処理剤からなる群から選択される少なくとも1つが用いられる。
【0032】
上記中空粒子の製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。本発明の1つの実施形態に係る中空粒子の製造方法は、コア粒子にシェル形成材料を被覆してコアシェル粒子を得ること、コアシェル粒子からコア粒子を除去して中空粒子前駆体を得ること、および、中空粒子前駆体にシェル形成材料を被覆すること、を含む。中空粒子前駆体に対してシェル形成材料の被覆を行うことにより、例えば、中空率の低下を抑制しながら、強固なシェルを形成し得る。具体的には、コア粒子を除去して得られる中空粒子前駆体(シェル)は細孔を有し、脆い状態であり得るが、この細孔をシェル形成材料で埋めることにより、シェルを収縮(例えば、軟化収縮)させずに、シェルを強固にすることができる。
【0033】
上記コア粒子は、その一次粒子が1≦DSL≦1.5を満足することが好ましく、さらに好ましくは1≦DSL≦1.4、特に好ましくは1≦DSL≦1.3である。また、コア粒子の一次粒子は、1≦DST≦1.5を満足することが好ましく、さらに好ましくは1≦DST≦1.4、特に好ましくは1≦DST≦1.3である。なお、DSLおよびDSTについては、上述のとおりである。
【0034】
コア粒子のアスペクト比は、好ましくは2未満であり、さらに好ましくは1.9以下である。一方、コア粒子のアスペクト比は、1以上であり、好ましくは1を超え、さらに好ましくは1.1以上である。コア粒子の形状としては、例えば、楕円状、球状、凝集塊状、鱗片状、板状、膜状、円柱状、角柱状、扁平形状、碁石状、米粒状が挙げられる。好ましくは、球状、碁石状が採用される。
【0035】
コア粒子の長径は、好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上である。一方、コア粒子の長径は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。コア粒子の短径は、好ましくは0.25μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。一方、コア粒子の短径は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0036】
コア粒子の形成材料としては、上記DSLおよびDSTを良好に満足し得る材料が好ましく用いられる。1つの実施形態においては、コア粒子は、下記一般式(I)で表されるアルナイト型化合物で形成される。
[Al1-xM’(SO 2-(OH)・mHO・・・(I)
(式(I)中、MはNa、K、NH およびHからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオンであり、M’はCu2+、Zn2+、Ni2+、Sn4+、Zr4+およびTi4+からなる群から選択さる少なくとも1種の陽イオンであり、a、m、x、yおよびzは、それぞれ、0.8≦a≦1.35、0≦m≦5、0≦x≦0.4、1.7≦y≦2.5、4≦z≦7を満足する)
【0037】
上記シェル形成材料としては、例えば、ケイ酸ナトリウム(NaO・nSiO)、テトラエトキシシラン(Si(OCHCH)に代表されるアルコキシシランが用いられる。1つの実施形態においては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)が用いられる。Naが存在することにより、例えば、後述の焼成において軟化しやすく、焼成温度の制御を容易に行い得る場合がある。
【0038】
シェル形成材料による被覆量は、任意の適切な方法により調整され得る。例えば、ケイ酸ナトリウムを含むシェル形成材料を用いて被覆を行う際のpH値を制御することで、被覆量を調整する。具体的には、ケイ酸ナトリウムは、高pH領域(例えば、pH11以上)において安定であり得ることから、pH値を下げることによりケイ酸ナトリウム分子を縮合させて、シリカを効率的にコア粒子上に析出させる。ここで、コア粒子が上記アルナイト型化合物を含む場合、アルナイト型化合物の水スラリー自体が酸性(例えば、pH3~5)を示し得ることから、例えば、pH値を下げるためのpH調整剤を使用しなくても、シリカを効率的にコア粒子上に析出させることができる。なお、シェル形成材料を用いて被覆する際に加熱(例えば、80℃~90℃に)することによっても、シェルの形成(具体的には、シェルの析出および形成速度)を促進し得る。
【0039】
また、被覆を行う際のシェル形成材料の濃度、配合量等を制御することによっても、被覆量を調整することができる。ケイ酸ナトリウムを含むシェル形成材料でコア粒子を被覆する場合、シェル形成材料(ケイ酸ナトリウム)の濃度は、例えば、0.1mol/L~2mol/Lである。
【0040】
上記コア粒子の除去は、代表的には、酸性溶液にコア粒子を溶解させることにより行う。酸性溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸が用いられる。溶解させる温度は、例えば、30℃~90℃であり、好ましくは50℃~80℃である。このような温度によれば、シェルが壊れやすくなる等の不具合を抑制しながら効率的にコア粒子を溶解させ得る。1つの実施形態においては、例えば、コア粒子と反応して得られる物質(例えば、塩)を再利用する観点から、酸性溶液として硫酸を用いる。硫酸の濃度は、例えば、0.1mol/L~3mol/Lである。
【0041】
上記中空粒子の製造方法は、上記コア粒子を除去する前に、上記コアシェル粒子を焼成することを含み得る。コア粒子が上記アルナイト型化合物を含む場合、コア粒子の除去を行う前に、焼成(例えば、大気雰囲気下で)を行うことが好ましい。アルナイト型化合物は耐酸性を有し得ることから、焼成によりアルナイト型化合物は変化し、焼成後のコア粒子は酸性溶液に溶解しやすい状態となるからである。具体的には、アルナイト型化合物を含むコア粒子は、凝集密度の低い部分は酸性溶液に溶解しやすいが、凝集密度の高い部分は酸性溶液に溶解しにくく、酸性溶液への溶解量は、例えば30重量%程度にとどまる。焼成により、アルナイト型化合物から酸性溶液に溶解しやすい酸化アルミニウム(Al)を生成させ、コア粒子の酸性溶液への溶解性を向上させることができる。
【0042】
コアシェル粒子の焼成の温度は、例えば300℃~900℃であり、好ましくは300℃~650℃である。このような焼成温度によれば、シェルの結晶化を抑制して、上記酸化アルミニウムを生成させ得る。焼成時間は、例えば、0.5時間~20時間である。焼成は、連続的に行ってもよいし、異なる温度で多段的に行ってもよい。なお、多段的に焼成を行う場合、上記焼成時間は、各段階の焼成時間の合計である。
【0043】
上記中空粒子前駆体の被覆に用いられるシェル形成材料は、上記コア粒子の被覆に用いられるシェル形成材料に対応して選択されることが好ましい。具体的には、上記コア粒子の被覆に用いられるシェル形成材料としてケイ酸ナトリウムが採用される場合、中空粒子前駆体の被覆に用いられるシェル形成材としては、好ましくは、ケイ酸ナトリウムが採用される。
【0044】
ケイ酸ナトリウムを含むシェル形成材料で中空粒子前駆体を被覆する際も、pH値を制御することにより被覆量を調整することが好ましい。具体的には、ケイ酸ナトリウムは、高pH領域(例えば、pH11以上)において安定であり得ることから、例えば、pH調整剤を用いてpH値を下げることにより、ケイ酸ナトリウム分子を縮合させて、シリカを効率的に中空粒子前駆体に析出させることが好ましい。pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸等の酸性溶液が用いられる。
【0045】
上記中空粒子の製造方法は、シェル形成材料で被覆された中空粒子前駆体を焼成することを含み得る。具体的には、中空粒子前駆体の焼成は、中空粒子前駆体に対するシェル形成材料による被覆を行った後に行い得る。シェルに対して焼成を行うことにより、誘電特性の向上に大きく寄与し得る中空粒子を得ることができる。具体的には、シェル表面の疎水性を向上させ得る。さらに具体的には、シェル表面のシラノール基をシロキサンに変化させ得る。また、後述の樹脂組成物を作製する際の樹脂への配合(分散)が容易な中空粒子を得ることができる。具体的には、焼成により適度に収縮(具体的には、軟化収縮)させることにより、粒子同士の融着を防止しながら、シェル表面の細孔を埋めて表面が滑らかな(例えば、上記BET比表面積、細孔容積を良好に達成し得る)中空粒子を得ることができる。
【0046】
中空粒子前駆体の焼成の温度は、例えば300℃~1300℃であり、好ましくは700℃~1300℃であり、より好ましくは900℃~1300℃である。このような焼成温度によれば、上記疎水化が良好に達成され得る。また、このような焼成温度による焼成を行っても高い中空率を達成し得ることが、本発明の特徴の一つである。具体的には、シェル形成材料の被覆により上記細孔が埋められた状態の中空粒子前駆体に対して焼成を行うことで、シェルの収縮(具体的には、軟化収縮)を抑制しながら、疎水化が良好に達成され得る。中空粒子前駆体の焼成時間は、例えば、0.1時間~10時間である。焼成は、連続的に行ってもよいし、異なる温度で多段的に行ってもよい。なお、多段的に焼成を行う場合、上記焼成時間は、各段階の焼成時間の合計である。
【0047】
上記中空粒子の製造方法は、上記中空粒子前駆体の焼成前に、中空粒子前駆体に酸処理を施すことを含み得る。酸処理は、代表的には、塩酸、硫酸等の酸性溶液を用いて行われる。シェル形成材料としてケイ酸ナトリウムが採用される場合、中空粒子前駆体はNaを含み得る。酸処理によりNaが除去されることにより、中空粒子前駆体の焼成温度を高く設定し得、誘電特性の向上に大きく寄与し得る中空粒子を得ることができる。
【0048】
本発明の1つの実施形態においては、上記中空粒子は樹脂材料の機能付与剤として用いられる。以下、上記中空粒子を含む樹脂組成物について説明する。
【0049】
B.樹脂組成物
本発明の1つの実施形態における樹脂組成物は、樹脂および上記中空粒子を含む。樹脂組成物(後述の樹脂成形体)において、上記中空粒子は、その中空状態が良好に保持され得る。
【0050】
上記樹脂は、例えば、得られる樹脂組成物の用途等に応じて、任意の適切な樹脂が選択され得る。例えば、樹脂は熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、変性ポリイミドが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。
【0051】
上記樹脂組成物における上記中空粒子の含有割合は、好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは0.5重量%以上である。一方、上記含有割合は、好ましくは90重量%以下であり、さらに好ましくは85重量%以下である。
【0052】
樹脂組成物において、樹脂100重量部に対し、中空粒子を0.5重量部以上含有させることが好ましく、さらに好ましくは1重量部以上である。一方、樹脂100重量部に対し、中空粒子を300重量部以下含有させることが好ましく、さらに好ましくは200重量部以下である。
【0053】
樹脂組成物における中空粒子の体積比率は、好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上である。一方、樹脂組成物における中空粒子の体積比率は、好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは60%以下である。例えば、樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得るからである。
【0054】
樹脂組成物(樹脂成形体)における粒子(フィラー)の中空率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは45%以上であり、特に好ましくは50%以上である。
【0055】
上記樹脂組成物は、任意成分を含み得る。任意成分としては、例えば、硬化剤(具体的には、上記樹脂の硬化剤)、低応力化剤、着色剤、密着向上剤、離型剤、流動調整剤、脱泡剤、溶剤、充填剤が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。1つの実施形態においては、樹脂組成物は硬化剤を含む。硬化剤の含有量は、樹脂100重量部に対し、例えば、1重量部~150重量部である。
【0056】
上記樹脂組成物の作製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、上記樹脂中に、任意の適切な分散方法により、上記中空粒子を分散させることにより、樹脂組成物を得る。分散方法としては、例えば、ホモミキサー、ディスパー、ボールミル等の各種攪拌機による分散、自転公転ミキサーによる分散、3本ロールを用いた剪断力による分散、超音波処理による分散が挙げられる。
【0057】
上記樹脂組成物は、代表的には、所望の形状に成形された樹脂成形体とされる。例えば、モールドを用いて所望の形状に成形された樹脂成形体とされる。樹脂成形体の成形に際し、樹脂組成物は、任意の適切な処理(例えば、硬化処理)が施され得る。
【0058】
本発明の1つの実施形態においては、上記樹脂組成物は、積層体に含まれる樹脂層とされる。以下、上記樹脂組成物で形成される樹脂層を有する積層体について説明する。
【0059】
C.積層体
図2は、本発明の1つの実施形態における積層体の概略断面図である。積層体10は、樹脂層11と金属箔12とを有する。樹脂層11は、上記樹脂組成物から形成される。具体的には、樹脂層11は、上記樹脂と上記中空粒子とを含む。図示しないが、積層体10は、その他の層を含み得る。例えば、樹脂層11の片側(金属箔12が配置されない側)に積層される基材(代表的には、樹脂フィルム)が挙げられる。積層体10は、代表的には、配線回路基板として用いられる。
【0060】
上記樹脂層の厚みは、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上である。一方、樹脂層の厚みは、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。このような厚みによれば、例えば、近年の電子部材の小型化に十分に対応することができる。
【0061】
上記金属箔を形成する金属としては、任意の適切な金属が用いられ得る。例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。金属箔の厚みは、例えば、2μm~35μmである。
【0062】
上記積層体の作製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、上記基材上に上記樹脂組成物を塗工して塗工層を形成し、この塗工層上に上記金属箔を積層して積層体を得る。別の具体例としては、上記金属箔に上記樹脂組成物を塗工して塗工層を形成して積層体を得る。代表的には、任意の適切なタイミングで、塗工層に加熱や光照射等の処理を施し、塗工層を硬化させる。塗工に際し、上記樹脂組成物を、任意の適切な溶剤に溶解させて用いてもよい。
【実施例
【0063】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は、断りがない限り、下記の通りである。
1.粒子の長径
FE-SEM観察により粒子の長径を算出した。具体的には、粒子のSEM写真の中から無作為に選んだ100個の一次粒子の長径を測定し、得られた測定値の算術平均(平均長径)を求めた。なお、SEM観察の倍率は10000倍とした。
2.粒子の短径
FE-SEM観察により粒子の短径を算出した。具体的には、粒子のSEM写真の中から無作為に選んだ100個の一次粒子の短径を測定し、得られた測定値の算術平均(平均短径)を求めた。なお、SEM観察の倍率は10000倍とした。
3.DSLおよびDST
FE-SEM観察により算出した。具体的には、粒子のSEM写真の中から無作為に選んだ100個の一次粒子それぞれについて長径を測定し、75番目の値(D75L)を25番目の値(D25L)で除してDSLを算出した。また、粒子のSEM写真の中から無作為に選んだ100個の一次粒子それぞれについて短径を測定し、75番目の値(D75T)を25番目の値(D25T)で除してDSTを算出した。
4.アスペクト比
FE-SEM観察によりアスペクト比を算出した。具体的には、上記粒子の平均長径を上記粒子の平均短径で除してアスペクト比を算出した。
5.中空粒子の殻の厚み
TEM観察により粒子の殻の厚みを算出した。具体的には、粒子のTEM写真の中から無作為に選んだ10個の一次粒子の殻の厚みを測定し、得られた測定値の算術平均(平均厚み)を求めた。なお、TEM観察の倍率は10000倍および100000倍とした。
6.中空率
上記長径および短径と上記殻の厚みから算出した。具体的には、上記一次粒子径(長径、短径)および上記殻の厚みを用い、粒子の形状を円柱における体積で近似し、下記式により中空率を算出した。
中空率=中空粒子の中空域体積÷中空粒子の体積×100
中空粒子の体積=π×半径×高さ=π×(長径÷2)×短径
中空粒子の中空域体積=π×((長径-殻厚み×2)÷2)×(短径-殻厚み×2)
7.BET比表面積
マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorp-mini」で測定した。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、BET多点法による解析で比表面積を求めた。
8.細孔容積
マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorp-max」で測定した。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、BJH法による解析で細孔容積(直径が1nmから100nmの細孔の積算細孔容積および直径が1nmから10nmの細孔の積算細孔容積)を求めた。
9.破壊強度
破壊強度を、微小圧縮試験機(島津製作所社製の「MCT-510」)にて、測長キットおよびサイド観察キットを用いて測定した。具体的には、下部加圧板の上に試料を極微量散布し、下記の条件にて、一粒子ずつ破壊試験を行った。
・試験力:0.980mN
・負荷速度:0.0223mN/sec
・上部加圧圧子:平面φ20μm
10粒子について測定し、測定した粒子の粒子径d(mm)と破壊点の試験力P(N)の値から破壊強度Cs(MPa)を算出し、平均値を算出した。
破壊強度Csは、JIS R 1639-5の「ファインセラミックス顆粒特性の測定方法-第5部:単一顆粒圧壊強さ」の次式から算出した。
Cs=2.48P/πd
10.KM変換シラノール基面積
FT-IR拡散反射法によりシラノール基量(シラノール基面積)を測定した。具体的には、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社製の「FT/IR-4100」)にて拡散反射法測定キット(日本分光株式会社製の「DR PRO410-M型」)を用い、バックグラウンド試料KBr0.017g、所定量(0.0014g~0.0031g)の測定試料を用いて、測定を行った。
得られたスペクトルをKM(Kubelka-Munk)変換処理して定量分析を行った。具体的には、シラノール基が含まれる3900cm-1~3100cm-1のピーク面積を求め、単位重量当たりのKM変換シラノール基面積(-/g)を算出した。
なお、範囲3900cm-1~3100cm-1には、3740cm-1の孤立シラノール基、3650cm-1の隣接する孤立シラノール基、3400cm-1付近の表面吸着水由来のシラノール基が含まれる。
【0064】
[実施例1]
(中空シリカ粒子の調製)
楕円状のアルナイト粒子粉末(NaAl(SO(OH)、長径:1.98μm、DSL:1.13、短径:1.35μm、DST:1.18、アスペクト比:1.47)100gをイオン交換水0.675Lで懸濁しアルナイト粒子のスラリーを得た。
【0065】
次いで、得られたアルナイト粒子のスラリーを撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.538mol/Lの3号水ガラス(NaO・3.14SiO、富士フィルム和光純薬製)98.62mlを4時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させた後、脱水・水洗し、コアシェル粒子前駆体1のケーキを得た。
【0066】
次いで、得られたコアシェル粒子前駆体1のケーキをイオン交換水0.675Lで懸濁し、撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.538mol/Lの3号水ガラス98.62mlを2時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させて、攪拌しながら15時間置いた後、脱水・水洗し、コアシェル粒子前駆体2のケーキを得た。得られたコアシェル粒子前駆体2のケーキをイオン交換水0.675Lで懸濁し、撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.538mol/Lの3号水ガラス98.62mlを2時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させて、攪拌しながら15時間置いた後、脱水・水洗し、その後、100℃で1日乾燥してコアシェル粒子の粉末を得た。
【0067】
次いで、得られたコアシェル粒子の粉末を500℃で3時間、さらに、550℃で1時間焼成した。なお、焼成によりアルナイト粒子は下記のように変化していると考えられる。
NaAl(SO(OH)→NaAl(SO+Al+3H
【0068】
次いで、焼成されたコアシェル粒子101.4gにイオン交換水1Lを加え、室温撹拌下で再懸濁し、これに、1.1mol/Lの硫酸866mlを加え、90℃に加温し、5時間反応させてコア粒子を溶解させ、中空シリカ前駆体1のスラリーを得た。得られた中空シリカ前駆体1のスラリーを脱水・水洗して中空シリカ前駆体1のケーキを得た。
【0069】
次いで、得られた中空シリカ前駆体1のケーキをイオン交換水1Lで懸濁し、撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.538mol/Lの3号水ガラス7.4mlを10分かけて加えた後、さらに、0.538mol/Lの3号水ガラス36.98mlと0.5mol/Lの硫酸42.99mlを同時に加え始め、3号水ガラスは50分かけて加え、硫酸は60分かけて加えた。こうして得られたスラリーを30分間熟成させた後、脱水・水洗して中空シリカ前駆体のケーキを得た。これと同様の操作をあと2回繰り返し、中空シリカ前駆体2のケーキを得た。
【0070】
次いで、得られた中空シリカ前駆体2のケーキに、イオン交換水0.675L、2mol/Lの硫酸46ml加えて90℃で1時間半置き、中空シリカ前駆体3のスラリーを得た。その後、脱水・水洗して得られたケーキを100℃で1日乾燥して中空シリカ前駆体3の粉末を得た。
【0071】
次いで、得られた中空シリカ前駆体3の粉末を、電気炉(大気雰囲気下)にて、1100℃で2時間焼成し、中空シリカ粒子(長径:1.96μm、DSL:1.13、短径:1.63μm、DST:1.33、アスペクト比:1.20、殻の厚み:97nm、中空率:72%、BET比表面積:7.5m/g、細孔容積:0.033cc/g、破壊強度:20.8MPa、KM変換シラノール基面積:695-/g)を得た。なお、得られた中空シリカ粒子ついて、日本電子株式会社製の「JED-2300」を用いたEDS測定の組成分析により、コア粒子由来のAlとシリカシェル由来のSi比を算出したところ、Al/Siのモル比は0.018であった。
【0072】
(樹脂組成物の調製)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製の「JER806」)44.23gおよび得られた中空シリカ粒子(フィラーともいう)9.00gを、自転公転ミキサー(シンキー株式会社製の「ARV-310P」)を用いて、大気圧下、自転1000rpm、公転2000rpmの条件で3分混合し混合物を得た。
得られた混合物と、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤(四国化成株式会社製の「2E4MZ」)2.21gとを、自転公転ミキサーを用いて、自転1000rpm、公転2000rpm、0.7kPaの条件で3分混合し樹脂組成物を得た。
【0073】
(樹脂成形体の作製)
得られた樹脂組成物を、厚み1.0mmのテフロン(登録商標)製の型に流し込み、80℃で1時間プレス成型した。冷却後、成形体を型から取り出し、乾燥機中に150℃、4時間置いてさらに加熱硬化させた。その後、成形体を冷却し、評価用サンプルを得た。
【0074】
[実施例2]
(中空シリカ粒子の調製)
楕円状のアルナイト粒子粉末(NaAl(SO(OH)、長径:1.98μm、DSL:1.13、短径:1.35μm、DST:1.18、アスペクト比:1.47)100gをイオン交換水0.5Lで懸濁しアルナイト粒子のスラリーを得た。
【0075】
次いで、得られたアルナイト粒子のスラリーを撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.528mol/Lの3号水ガラス(NaO・3.14SiO、富士フィルム和光純薬製)100mlを4時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させた後、脱水・水洗し、コアシェル粒子前駆体1のケーキを得た。
【0076】
次いで、得られたコアシェル粒子前駆体1のケーキをイオン交換水0.5Lで懸濁し、撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.538mol/Lの3号水ガラス150mlを2時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させて、攪拌しながら15時間置いた後、脱水・水洗し、コアシェル粒子前駆体2のケーキを得た。得られたコアシェル粒子前駆体2のケーキをイオン交換水0.5Lで懸濁し、撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.538mol/Lの3号水ガラス150mlを2時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させて、攪拌しながら15時間置いた後、脱水・水洗し、その後、100℃で1日乾燥してコアシェル粒子の粉末を得た。
【0077】
次いで、得られたコアシェル粒子の粉末を500℃で3時間、さらに、550℃で1時間焼成した。なお、焼成によりアルナイト粒子は下記のように変化していると考えられる。
NaAl(SO(OH)→NaAl(SO+Al+3H
【0078】
次いで、焼成されたコアシェル粒子90.7gにイオン交換水1Lを加え、室温撹拌下で再懸濁し、これに、1.1mol/Lの硫酸688mlを加え、90℃に加温し、5時間反応させてコア粒子を溶解させ、中空シリカ前駆体1のスラリーを得た。得られた中空シリカ前駆体1のスラリーを脱水・水洗して中空シリカ前駆体1のケーキを得た。
【0079】
次いで、得られた中空シリカ前駆体1のケーキをイオン交換水1Lで懸濁し、撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.538mol/Lの3号水ガラス26.18mlを10分かけて加えた後、さらに、0.538mol/Lの3号水ガラス130.82mlと0.5mol/Lの硫酸149.88mlを同時に加え始め、3号水ガラスは50分かけて加え、硫酸は60分かけて加えた。こうして得られたスラリーを30分間熟成させた後、脱水・水洗して中空シリカ前駆体のケーキを得た。これと同様の操作をあと2回繰り返し、得られたケーキを100℃で1日乾燥して中空シリカ前駆体2の粉末を得た。
【0080】
次いで、得られた中空シリカ前駆体2の粉末を、電気炉(大気雰囲気下)にて、1100℃で2時間焼成し、中空シリカ粒子(長径:2.16μm、DSL:1.10、短径:1.85μm、DST:1.15、アスペクト比:1.17、殻の厚み:235nm、中空率:46%、BET比表面積:4.8m/g、細孔容積:0.029cc/g、KM変換シラノール基面積:663-/g)を得た。なお、Al/Siのモル比は0.019であった。
【0081】
(樹脂成形体の作製)
上記中空シリカ粒子を用いたこと、および、中空シリカ粒子の配合量を13.93gとしたこと以外は実施例1と同様にして、成形体(評価用サンプル)を得た。
【0082】
[比較例1]
(中空シリカ粒子の調製)
楕円状のアルナイト粒子粉末(NaAl(SO(OH)、長径:1.48μm、DSL:1.10、短径:1.08μm、DST:1.09、アスペクト比:1.36)2.38kgをイオン交換水15.8Lで懸濁しアルナイト粒子のスラリーを得た。
【0083】
次いで、得られたアルナイト粒子のスラリーを撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.57mol/Lの3号水ガラス(NaO・3.14SiO、富士フィルム和光純薬製)2.322Lを4時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させた後、脱水・水洗し、コアシェル粒子前駆体1のケーキを得た。
【0084】
次いで、得られたコアシェル粒子前駆体1のケーキをイオン交換水15.8Lで懸濁し、撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.57mol/Lの3号水ガラス2.322Lを2時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させた後、脱水・水洗し、コアシェル粒子前駆体2のケーキを得た。得られたコアシェル粒子前駆体2のケーキをイオン交換水15.8Lで懸濁し、撹拌しながら90℃に加温し、これに、0.57mol/Lの3号水ガラス2.322Lを2時間かけて加えた。こうして得られたスラリーを1時間熟成させた後、脱水・水洗し、その後、100℃で1日乾燥してコアシェル粒子の粉末を得た。
【0085】
次いで、得られたコアシェル粒子の粉末を500℃で3時間、さらに、550℃で1時間焼成した。なお、焼成によりアルナイト粒子は下記のように変化していると考えられる。
NaAl(SO(OH)→NaAl(SO+Al+3H
【0086】
次いで、焼成されたコアシェル粒子2170gにイオン交換水1Lを加え、室温撹拌下で再懸濁し、これに、1.26mol/Lの硫酸15Lを加え、90℃に加温し、5時間反応させてコア粒子を溶解させ、中空シリカ前駆体1のスラリーを得た。得られた中空シリカ前駆体1のスラリーを脱水・水洗して中空シリカ前駆体1のケーキを得た。得られたケーキを100℃で1日乾燥して中空シリカ前駆体1の粉末を得た。
【0087】
次いで、得られた中空シリカ前駆体1の粉末を、電気炉(大気雰囲気下)にて、800℃で2時間焼成し、中空シリカ粒子(長径:1.55μm、DSL:1.10、短径:1.12μm、DST:1.14、アスペクト比:1.38、殻の厚み:54nm、中空率:78%、BET比表面積:39m/g、細孔容積:0.136cc/g、KM変換シラノール基面積:230718-/g)を得た。なお、Al/Siのモル比は0.027であった。
【0088】
(樹脂成形体の作製)
上記中空シリカ粒子を用いたこと、および、中空シリカ粒子の配合量を2.79gとしたこと以外は実施例1と同様にして、成形体(評価用サンプル)を得た。なお、実施例と同等の配合量となるように中空シリカ粒子の配合を試みたが、粒子が破壊したり、エポキシ樹脂および硬化剤に粒子を配合したワニスにおいて増粘および摩擦熱による発熱が起こり樹脂の硬化が促進されたりして、これ以上、配合することができなかった。
なお、実施例と同等の配合量を達成できなかった原因として、高いBET比表面積、高い細孔容積、高いシラノール基量、中空粒子の破壊による比表面積の上昇が考えられる。
【0089】
[比較例2]
中空シリカ粒子を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、成形体(評価用サンプル)を得た。
【0090】
<XRD測定>
実施例1,2および比較例1の中空シリカ粒子について、X線回折(PANalytical製の「EMPYRIAN」)で分析したところ、無定形(アモルファス)シリカであった。
【0091】
<FE-SEM観察>
実施例1,2および比較例1の中空シリカ粒子について、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製の「JSM-7600F」)により観察した(倍率:10000倍)。実施例1の中空シリカ粒子の観察結果を図3Aに示し、実施例2の中空シリカ粒子の観察結果を図3Bに示し、比較例1の中空シリカ粒子の観察結果を図3Cに示す。いずれにおいても、粒径が均一な粒子であることが確認できる。
【0092】
<TEM観察>
実施例1,2および比較例1の中空シリカ粒子について、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製の「JEM-2100PLUS」)による観察した(倍率:10000倍)。実施例1の中空シリカ粒子の観察結果を図4Aに示し、実施例2の中空シリカ粒子の観察結果を図4Bに示し、比較例1の中空シリカ粒子の観察結果を図4Cに示す。いずれにおいても、コア粒子の楕円形状を保った中空粒子であることが確認できる。
【0093】
<樹脂成形体の評価>
実施例および比較例の樹脂成形体(評価用サンプル)について、密度、断面観察、誘電特性の測定を行った。また、樹脂成形体の空隙率および樹脂成形体におけるフィラー中空率を算出した。評価結果を表1にまとめる。また、実施例1の樹脂成形体の観察結果を図5Aに示し、実施例2の樹脂成形体の観察結果を図5Bに示し、比較例1の樹脂成形体の観察結果を図5Cに示す。
【0094】
(密度の測定)
電子密度計(アルファーミラージュ株式会社製の「SD120L」)により樹脂成形体の密度を測定した。具体的には、得られた樹脂成形体を超音波カッターで5cm×6cmのサイズにカットし、カットして得られた成形体サンプルを測定に供した。
【0095】
(樹脂成形体の空隙率)
上記密度の測定結果から、樹脂成形体の空隙率(樹脂成形体における空気の体積の割合)Va%を算出した。
(樹脂成形体におけるフィラー中空率)
上記樹脂成形体の空隙率Va%の値から、樹脂成形体におけるフィラー中空率Va/(Va+Vs)を算出した。ここで、Vsは、下記式から求めることができる。
【数1】
Vc:樹脂成形体の体積
Vs:粒子の殻の体積
Va:樹脂成形体における空気の体積
Vr:樹脂の体積
mc:樹脂成形体重量(g)
ρc:樹脂成形体の密度(g/ml)
ms:粒子(殻)の重量(g)
ρs:粒子の殻の密度(2.28(g/ml))
mr:樹脂の重量(g)
ρr:樹脂の密度(g/ml)
wf:樹脂の重量を100重量部(phr)としたときの粒子(フィラー)の重量部(phr)
【0096】
(樹脂成形体の断面観察)
得られた成形体サンプルをクロスセクションポリッシャー(日本電子株式会社製の「IB-09010CP」)で切断し、断面をFE-SEM(日本電子株式会社製の「JSM-7600F」、倍率:5000倍もしくは10000倍)で観察した。
【0097】
(誘電率および誘電正接の測定)
得られた成形体サンプルの誘電率および誘電正接を以下の条件で測定した。
・測定方法:IEC 62810に準拠(空洞共振器摂動法)
・試料形状:長さ55mm以上、幅1.6~2.4mm、高さ0.7~1.0mm
・試験条件:周波数10GHz
・測定数:2回
・状態調節:23℃±1℃、50%RH±5%RH、24時間<
・試験室環境:23℃±1℃、50%RH±5%RH
・測定装置:PNAネットワークアナライザN5222B(キーサイト・テクノロジー株式会社製)
・空洞共振器:10GHz用CP531(株式会社関東電子応用開発製)
【0098】
【表1】
【0099】
比較例1では、樹脂への配合により、中空率が大きく低下していることが確認できる。比較例1では、樹脂成形体の断面観察において、中空粒子の破壊が確認され、図5Cに示すように、中空領域への樹脂の侵入も確認できた。一方、実施例においては、樹脂成形体の断面観察により、中空領域への樹脂の侵入は確認されず、中空粒子の破壊が抑制されていること(特に、実施例2において)が確認できた。
比較例1において低誘電正接化されていない原因として、シラノール基量が多いことが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の中空粒子は、代表的には、電子材料に好適に用いられ得る。他にも、例えば、断熱材料、防音材料、衝撃緩衝材料、応力緩衝材料、光学材料、軽量化材料に用いられ得る。
【符号の説明】
【0101】
L 長径
T 短径
10 積層体
11 樹脂層
12 金属箔
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C