(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】コージェネレーション試運転遠隔監視システム、温度計測装置、アプリケーションプログラム、及び、コージェネレーション試運転遠隔監視方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240718BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20240718BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
F24H1/00 631A
H01M8/04 J
(21)【出願番号】P 2021106691
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】村山 雄紀
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/045593(WO,A1)
【文献】特開2021-158015(JP,A)
【文献】特開2020-140853(JP,A)
【文献】特開2018-31522(JP,A)
【文献】特開2019-145379(JP,A)
【文献】特開2018-173184(JP,A)
【文献】特開2010-212175(JP,A)
【文献】特開2016-189235(JP,A)
【文献】特開2019-21464(JP,A)
【文献】特開2020-95362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コージェネレーション設備と、
温度計測機能と通信機能とを備える監視装置と、
前記監視装置と通信可能なモバイル端末と、
を有し、
前記コージェネレーション設備は、
発電時に排熱を発生する発電装置と、
貯水を貯留する貯水タンクと、
前記貯水タンクに貯留される前記貯水を前記貯水タンクから前記発電装置に供給する第1配管と、
前記発電装置が発生する前記排熱により加熱された前記貯水を前記発電装置から前記貯水タンクに供給する第2配管と、
を有しており、
前記発電装置が発電する場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させる一方、前記発電装置が発電しない場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させず、
前記監視装置は、前記コージェネレーション設備のメンテナンス後、前記発電装置を試運転する場合に、
前記第1配管の温度と前記第2配管の温度とを計測する温度計測処理と、
前記温度計測処理にて計測した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度に基づいて前記発電装置の動作状態を前記モバイル端末に通知する通知処理と、
を実行し、
前記モバイル端末は、前記通知を受信して表示すること、
を特徴とするコージェネレーション試運転遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載するコージェネレーション試運転遠隔監視システムにおいて、
前記監視装置は、前記通知処理にて、前記温度計測処理にて計測した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度との温度差を算出し、前記温度差が所定時間内に発電開始閾値以上になった場合、前記発電装置が発電を完了したことを前記モバイル端末に通知すること、
を特徴とするコージェネレーション試運転遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するコージェネレーション試運転遠隔監視システムにおいて、
前記監視装置は、第1装置と第2装置とを備え、
前記第1装置は、
電池と、
第1制御部と、
第1通信部と、
前記第1配管に着脱可能に取り付けられる第1温度センサと、
前記第2配管に着脱可能に取り付けられる第2温度センサと、
を有し、
前記第1制御部は、
前記第1温度センサと前記第2温度センサとを用いて前記温度計測処理を実行し、前記温度計測処理にて計測した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度を、前記第1通信部を用いて前記第2装置に送信する温度送信処理を実行し、
前記第2装置は、
第2制御部と、
第2通信部と、
を有し、
前記第2制御部は、
前記第1装置から送信された前記第1配管の温度と前記第2配管の温度とを前記第2通信部を用いて受信する温度受信処理を実行し、
さらに、前記温度受信処理にて受信した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度に基づいて前記通知処理を実行すること、
を特徴とするコージェネレーション試運転遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載するコージェネレーション試運転遠隔監視システムにおいて、
前記第2装置は、前記第1装置から前記第1配管の温度と前記第2配管の温度を前記第2通信部を用いて受信しない場合、通信エラーが発生したことを前記モバイル端末に通知すること、
を特徴とするコージェネレーション試運転遠隔監視システム。
【請求項5】
発電時に排熱を発生する発電装置と、貯水を貯留する貯水タンクとを、第1配管と第2配管を介して接続するコージェネレーション設備であって、前記発電装置が発電する場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させる一方、前記発電装置が発電しない場合、前記発電装置と前記貯水タンクとの間で前記貯水を循環させない前記コージェネレーション設備に、着脱可能に取り付けられる温度計測装置であって、
電池と、
制御部と、
通信部と、
前記第1配管の温度を計測する第1温度センサと、
前記第2配管の温度を計測する第2温度センサと、
を有し、
前記制御部は、
前記第1温度センサが計測した前記第1配管の温度と、前記第2温度センサが計測した第2配管の温度とを、前記通信部を用いて判定装置に送信し、前記判定装置は、前記第1配管の温度と前記第2配管の温度とを受信し、受信した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度に基づいて前記発電装置の動作状態をモバイル端末に通知すること、
を特徴とする温度計測装置。
【請求項6】
請求項5に記載する温度計測装置において、
前記電池と前記制御部と前記通信部とを内包する防水性を有するケーシングと、
前記ケーシングに内設され、前記電池から電力を供給されて送風する循環ファンと、
を有し、
前記ケーシングは、
1又は2以上の換気口と、
前記第1温度センサと前記第2温度センサを前記制御部に接続する接続ケーブルが挿通される挿通穴と、
を形成されていること、
を特徴とする温度計測装置。
【請求項7】
発電時に排熱を発生する発電装置と、貯水を貯留する貯水タンクとを、第1配管と第2配管を介して接続するコージェネレーション設備であって、前記発電装置が発電する場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させる一方、前記発電装置が発電しない場合、前記発電装置と前記貯水タンクとの間で前記貯水を循環させない前記コージェネレーション設備のメンテナンス後、試運転される前記発電装置の動作状態を監視する監視装置、に組み込まれるアプリケーションプログラムであって、
前記監視装置に、
前記第1配管の温度と前記第2配管の温度とを計測する温度計測処理と、
前記温度計測処理にて計測した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度に基づいて前記発電装置の動作状態をモバイル端末に通知する通知処理と、
を実行させること、
を特徴とするアプリケーションプログラム。
【請求項8】
発電時に排熱を発生する発電装置と、貯水を貯留する貯水タンクとを、第1配管と第2配管を介して接続するコージェネレーション設備であって、前記発電装置が発電する場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させる一方、前記発電装置が発電しない場合、前記発電装置と前記貯水タンクとの間で前記貯水を循環させない前記コージェネレーション設備のメンテナンス後、試運転される前記発電装置の動作状態を、監視装置とモバイル端末を用いて遠隔監視するコージェネレーション試運転遠隔監視方法であって、
前記監視装置が、
前記第1配管の温度と前記第2配管の温度を取得し、取得した前記第1配管の温度と第2配管の温度に基づいて前記発電装置の動作状態を前記モバイル端末に通知し、
前記モバイル端末が、前記通知を受信して表示すること、
を特徴とするコージェネレーション試運転遠隔監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コージェネレーション設備の試運転を遠隔監視するコージェネレーション試運転遠隔監視システム、温度計測装置、アプリケーションプログラム、及び、コージェネレーション試運転遠隔監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電時に発生する排熱を回収して利用するコージェネレーション設備は、ピーク電力削減による省エネルギー、エネルギーコスト削減、二酸化炭素放出量削減などのメリットがあり、工場や住宅などに広く普及している。
【0003】
コージェネレーション設備の施工時、例えば、発電ユニットに電源線と、給水管と、ガス配管を接続した状態で、コージェネレーション設備の試運転を開始し、試運転と並行して接続以外の残施工を行うことで、コージェネ設備の施工時間の短縮が図られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コージェネレーション設備は、定期的にメンテナンスが行われる。コージェネレーション設備は、メンテナンス後、発電装置を試運転され、発電の可否を確認される。発電装置は、
図9(a)に示すメンテナンス時間W11中に停止されるので、試運転開始時に冷えている。そのため、発電装置は、試運転開始後、温められて、実際に発電するまでの起動時間W12として、1~2時間を要する。メンテナンス作業は、施工作業と異なり、試運転と並行して行える作業が少ない。従来、メンテナンス作業者は、試運転が完了するまで現場で待機していたため、無駄な待ち時間が生じていた。よって、従来のコージェネレーション設備のメンテナンス作業には改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、メンテナンスしたコージェネレーション設備の発電装置を試運転する場合に、発電装置の動作状態を遠隔監視できるようにすることで、コージェネレーション設備のメンテナンス作業効率を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、(1)コージェネレーション設備と、温度計測機能と通信機能とを備える監視装置と、前記監視装置と通信可能なモバイル端末と、を有し、前記コージェネレーション設備は、発電時に排熱を発生する発電装置と、貯水を貯留する貯水タンクと、前記貯水タンクに貯留される前記貯水を前記貯水タンクから前記発電装置に供給する第1配管と、前記発電装置が発生する前記排熱により加熱された前記貯水を前記発電装置から前記貯水タンクに供給する第2配管と、を有しており、前記発電装置が発電する場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させる一方、前記発電装置が発電しない場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させず、前記監視装置は、前記コージェネレーション設備のメンテナンス後、前記発電装置を試運転する場合に、前記第1配管の温度と前記第2配管の温度とを計測する温度計測処理と、前記温度計測処理にて計測した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度に基づいて前記発電装置の動作状態を前記モバイル端末に通知する通知処理と、を実行し、前記モバイル端末は、前記通知を受信して表示すること、を特徴とする。
【0008】
上記構成を有するコージェネレーション試運転遠隔監視システムでは、作業者は、コージェネレーション設備のメンテナンス後、発電装置を試運転させた場合、試運転させた発電装置の動作状態をモバイル端末を介して確認できる。そのため、作業者は、コージェネレーション設備のメンテナンス後、当該コージェネレーション設備の発電完了を確認するまで現場で待機しなくても、別のコージェネレーション設備のメンテナンス等を行うことが可能になる。よって、上記構成のコージェネレーション試運転遠隔監視システムによれば、メンテナンス作業者の無駄な待ち時間を減らし、コージェネレーション設備のメンテナンス作業効率を向上させることができる。
【0009】
(2)(1)に記載するコージェネレーション試運転遠隔監視システムにおいて、前記監視装置は、前記通知処理にて、前記温度計測処理にて計測した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度との温度差を算出し、前記温度差が所定時間内に発電開始閾値以上になった場合、前記発電装置が発電を完了したことを前記モバイル端末に通知すること、が好ましい。
【0010】
上記構成を有するコージェネレーション試運転遠隔監視システムでは、例えば、作業者は、試運転中のコージェネレーション設備と別の場所で作業をしていても、そのコージェネレーション設備が発電を完了したことを、確認することができる。
【0011】
(3)(1)又は(2)に記載するコージェネレーション試運転遠隔監視システムにおいて、前記監視装置は、第1装置と第2装置とを備え、前記第1装置は、電池と、第1制御部と、第1通信部と、前記第1配管に着脱可能に取り付けられる第1温度センサと、前記第2配管に着脱可能に取り付けられる第2温度センサと、を有し、前記第1制御部は、前記第1温度センサと前記第2温度センサとを用いて前記温度計測処理を実行し、前記温度計測処理にて計測した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度を、前記第1通信部を用いて前記第2装置に送信する温度送信処理を実行し、前記第2装置は、第2制御部と、第2通信部と、を有し、前記第2制御部は、前記第1装置から送信された前記第1配管の温度と前記第2配管の温度とを前記第2通信部を用いて受信する温度受信処理を実行し、さらに、前記温度受信処理にて受信した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度に基づいて前記通知処理を実行すること、が好ましい。
【0012】
上記構成を有するコージェネレーション試運転遠隔監視システムでは、監視装置は、第1配管と第2配管の温度を計測する機能を第1装置に持たせ、第1配管と第2配管の温度に基づいて発電装置の動作状態を通知する機能を第2装置に持たせることで、第1装置の消費電力が抑制され、第1装置が電池のみで数時間可動できるようにしている。これにより、第1装置がコンパクトになり、現場へ第1装置を持ち運び、邪魔にならないようにコージェネレーション設備に設置しやすくなる。
【0013】
(4)(3)に記載するコージェネレーション試運転遠隔監視システムにおいて、前記第2装置は、前記第1装置から前記第1配管の温度と前記第2配管の温度を前記通信部を用いて受信しない場合、通信エラーが発生したことを前記モバイル端末に通知すること、が好ましい。
【0014】
上記構成のコージェネレーション試運転遠隔監視システムは、第1装置と第2装置との通信不良を早期に解消し、監視精度を向上させることができる。
【0015】
本発明の別態様は、(5)発電時に排熱を発生する発電装置と、貯水を貯留する貯水タンクとを、第1配管と前記第2配管を介して接続するコージェネレーション設備であって、前記発電装置が発電する場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させる一方、前記発電装置が発電しない場合、前記発電装置と前記貯水タンクとの間で前記貯水を循環させない前記コージェネレーション設備に、着脱可能に取り付けられる温度計測装置であって、電池と、制御部と、通信部と、前記第1配管の温度を計測する第1温度センサと、前記第2配管の温度を計測する第2温度センサと、を有し、前記制御部は、前記第1温度センサが計測した前記第1配管の温度と、前記第2温度センサが計測した第2配管の温度とを、前記通信部を用いて判定装置に送信し、前記判定装置は、前記第1配管の温度と前記第2配管の温度とを受信し、受信した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度に基づいて前記発電装置の動作状態をモバイル端末に通知すること、を特徴とする。
【0016】
上記構成の温度計測装置は、第1配管と第2配管の温度を計測する機能を有し、第1配管の温度と第2配管の温度に基づいて発電装置の動作状態をモバイル端末に通知する機能を持たないため、消費電力が抑制され、電池のみで数時間可動できる。これにより、温度計測装置がコンパクトになり、現場へ温度計測装置を持ち運び、邪魔にならないようにコージェネレーション設備に設置しやすくなる。
【0017】
(6)(5)に記載する温度計測装置において、前記電池と前記制御部と前記通信部とを内包する防水性を有するケーシングと、前記ケーシングに内設され、前記電池から電力を供給されて送風する循環ファンと、を有し、前記ケーシングは、1又は2以上の換気口と、前記第1温度センサと前記第2温度センサを前記制御部に接続する接続ケーブルが挿通される挿通穴と、を形成されていること、が好ましい。
【0018】
上記構成の温度計測装置は、天候や置き場所を気にせずに屋外で使用でき、また、ケーシングの内部温度上昇により動作不良を生じることを回避できる。
【0019】
本発明の別態様は、(7)発電時に排熱を発生する発電装置と、貯水を貯留する貯水タンクとを、第1配管と前記第2配管を介して接続するコージェネレーション設備であって、前記発電装置が発電する場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させる一方、前記発電装置が発電しない場合、前記発電装置と前記貯水タンクとの間で前記貯水を循環させない前記コージェネレーション設備のメンテナンス後、試運転される前記発電装置の動作状態を監視する監視装置、に組み込まれるアプリケーションプログラムであって、前記監視装置に、前記第1配管の温度と前記第2配管の温度とを計測する温度計測処理と、前記温度計測処理にて計測した前記第1配管の温度と前記第2配管の温度に基づいて前記発電装置の動作状態をモバイル端末に通知する通知処理と、を実行させること、を特徴とする。
【0020】
上記構成を有するアプリケーションプログラムを組み込まれた監視装置は、コージェネレーション設備の第1配管の温度と第2配管の温度に基づいて発電装置の動作状態をモバイル端末に通知する。そのため、作業者は、コージェネレーション設備のメンテナンス後、当該コージェネレーション設備の発電可否を確認するまで現場で待機しなくても、別のコージェネレーション設備のメンテナンス等を行いながら、当該コージェネレーション設備の発電装置の動作状態をモバイル端末を介して確認することができる。よって、コージェネレーション設備のメンテナンス作業効率が向上する。
【0021】
本発明の別態様は、(8)発電時に排熱を発生する発電装置と、貯水を貯留する貯水タンクとを、第1配管と前記第2配管を介して接続するコージェネレーション設備であって、前記発電装置が発電する場合、前記貯水タンクと前記発電装置との間で前記貯水を循環させる一方、前記発電装置が発電しない場合、前記発電装置と前記貯水タンクとの間で前記貯水を循環させない前記コージェネレーション設備のメンテナンス後、試運転される前記発電装置の動作状態を、監視装置とモバイル端末を用いて遠隔監視するコージェネレーション試運転遠隔監視方法であって、前記監視装置が、前記第1配管の温度と前記第2配管の温度を取得し、取得した前記第1配管の温度と第2配管の温度に基づいて前記発電装置の動作状態を前記モバイル端末に通知し、前記モバイル端末が、前記通知を受信して表示すること、を特徴とする。
【0022】
上記構成を有するコージェネレーション試運転遠隔監視方法では、作業者は、コージェネレーション設備のメンテナンス後、発電装置を試運転させた場合、試運転させた発電装置の動作状態をモバイル端末を介して確認できる。そのため、作業者は、コージェネレーション設備のメンテナンス後、当該コージェネレーション設備の発電可否を確認するまで現場で待機しなくても、別のコージェネレーション設備のメンテナンス等を行うことが可能になる。よって、上記構成のコージェネレーション試運転遠隔監視方法によれば、コージェネレーション設備のメンテナンス作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、メンテナンスしたコージェネレーション設備の発電装置を試運転する場合に、発電装置の動作状態を遠隔監視できるようにすることで、コージェネレーション設備のメンテナンス作業効率を向上させることができる技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るコージェネレーション試運転遠隔監視システムの概略構成図である。
【
図4】コージェネレーション設備の試運転時の動作を説明する図である。
【
図5】コージェネレーション設備の試運転時の動作を説明する図である。
【
図6】コージェネレーション設備の試運転時の動作を説明する図である。
【
図7】モバイル端末に表示される画面の一例である。
【
図9】従来のシステムと本形態のシステムの作業時間のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係るコージェネレーション試運転遠隔監視システム、温度計測装置、アプリケーションプログラム、及び、コージェネレーション試運転遠隔監視方法の実施形態について図面に基づいて説明する。本形態のコージェネレーション試運転遠隔監視システムは、産業用あるいは家庭用のコージェネレーション設備のメンテナンスに使用される。
【0026】
(コージェネレーション試運転遠隔監視システムの構成)
図1は、本発明の実施形態に係るコージェネレーション試運転遠隔監視システム100の概略構成図である。コージェネレーション試運転遠隔監視システム100は、コージェネレーション設備1と、監視装置2と、モバイル端末5と、を備える。
【0027】
コージェネレーション設備1は、例えば、工場や住宅などに設置される。コージェネレーション設備1は、発電を行う燃料電池ユニット12と、湯を貯留する貯湯ユニット11と、を備える。コージェネレーション設備1は、燃料電池ユニット12の発電部121と貯湯ユニット11の貯水タンク111が第1配管13と第2配管14を介して接続されており、発電部121と貯水タンク111との間で貯水を循環させることにより、発電部121が発電時に発生する排熱を貯水タンク111に回収する。このようなコージェネレーション設備1は、発電部121が発電した電力を、設置先に設けられた照明や電化製品などの電力負荷に供給する一方、貯水タンク111に貯留した湯を、設置先に設けられた給湯設備や空調設備や床暖房などの熱負荷に供給する。コージェネレーション設備1については後述する。
【0028】
監視装置2は、コージェネレーション設備1の第1配管13と第2配管14の温度を計測し、第1配管13の温度と第2配管14との温度に基づいてコージェネレーション設備1の発電部121の動作状態をモバイル端末5に通知する装置である。監視装置2の構成については後述する。
【0029】
モバイル端末5は、持ち運び可能な通信端末であり、例えば、メンテナンス作業者が使用するスマートフォンやタブレットなどである。モバイル端末5は、監視装置2から通知を受信して表示する。
【0030】
(コージェネレーション設備の構成)
図1に示すように、コージェネレーション設備1の貯湯ユニット11は、貯水タンク111に貯留する湯を、熱負荷からの要求に応じて供給する装置である。貯水タンク111は、常に、水や湯で満たされている。例えば、浴槽200は、給湯管112を介して貯水タンク111に接続され、給湯管112に配設された給湯バルブ113が開閉されることにより、湯張りが自動的に行われる。貯水タンク111は、湯張りに使用した湯の分だけ、図示しない給水管から水道水を供給される。貯水タンク111の貯湯量は、貯湯センサ114により検出される。
【0031】
燃料電池ユニット12は、発電部121が発生した電力を、電力負荷からの要求に応じて供給する装置である。本形態の発電部121は、都市ガスを改質して取り出した水素と、空気に含まれる酸素とを化学反応させて発電を行う。発電部121は、発電時に排熱を発生する。
【0032】
第1配管13は、一端が貯水タンク111の底部111aに接続し、他端が発電部121の入力ポート121aに接続されており、低温の貯水を貯水タンク111の底部111aから発電部121に供給する。第2配管14は、一端が発電部121の出力ポート121bに接続され、他端が貯水タンク111の頂部111bに接続されており、発電部121で加熱された高温の貯水を貯水タンク111の頂部111bに戻す。これにより、貯水タンク111と発電部121との間で貯水を循環させる循環回路が形成されている。
【0033】
バイパス配管15は、第1配管13と第2配管14に接続し、貯水タンク111を迂回して貯水を巡回させる巡回回路を形成する。バイパス配管15には、バイパスバルブ16が配設されている。第1配管13は、バイパス配管15に接続する位置より上流側(貯水タンク111側)に、供給バルブ17が配設されている。第2配管14は、発電部121の出力ポート121b付近に循環ポンプ18が配設され、その循環ポンプ18の出力側に温度センサ20が配設されている。
【0034】
コージェネレーション設備1は、制御装置19により動作を制御される。制御装置19は、バイパスバルブ16、供給バルブ17、循環ポンプ18、温度センサ20、給湯バルブ113、貯湯センサ114に通信可能に接続されている。なお、発電部121は「発電装置」の一例である。発電部121の発電方法は、ガスタービンやガスエンジンなど、発電時に排熱を発生するものであればよく、燃料電池に限らない。また、コージェネレーション設備1は、天然ガスや石油など、都市ガス以外を一次エネルギーにして発電してもよい。
【0035】
(監視装置の構成)
図1に示すように、監視装置2は、温度計測機能と通信機能とを備える温度計測装置3と、通信機能と通知機能とを備える判定装置4と、で構成されている。温度計測装置3は「第1装置」の一例であり、判定装置4は「第2装置」の一例である。
【0036】
図2は、温度計測装置3の構成図である。温度計測装置3は、開閉可能なケーシング31の内部に、第1制御部32とモバイルバッテリ33が配設されている。モバイルバッテリ33は、小型の二次電池であり、ケーシング31に着脱可能に取り付けられる。第1制御部32とモバイルバッテリ33は、電源ケーブル331を介して任意に接続できる。モバイルバッテリ33は「電池」の一例である。なお、温度計測装置3が内蔵する電池は、二次電池に限らず、乾電池等の一次電池や、太陽光で発電するソーラー電池などであってもよい。温度計測装置3は、屋外で使用されるため、ケーシング31が防水性を有している。
【0037】
第1制御部32には、第1温度センサ34の接続ケーブル343と、第2温度センサ35の接続ケーブル353と、が着脱可能に接続されている。第1温度センサ34と第2温度センサ35は、接続ケーブル343,353がケーシング31の挿通穴312に挿通され、ケーシング31の外部に設けられている。第1温度センサ34と第2温度センサ35は、それぞれ、第1配管13と第2配管14に着脱可能に装着できる樹脂製のブラケット342,352に挿入されている。
【0038】
第1制御部32には、判定装置4などの外部装置との通信を制御する通信機36が接続されている。ケーシング31は、対向する側面に換気口311,311が設けられ、換気ファン39が内設されている。換気ファン39は、第1制御部32に接続され、動作を制御される。
【0039】
第1制御部32は、操作部37と表示部38とを備えている。操作部37は、例えば、第1温度センサ34と第2温度センサ35を用いた温度の計測を終了させるための温度計測終了ボタン37aと、第1制御部32をシャットダウンさせるためのシャットダウンボタン37bと、を含む。表示部38は、LEDランプであり、点灯色(緑色、赤色など)や点灯方式(連続点灯、点滅点灯など)により、温度計測装置3の動作状態を表示する。
【0040】
なお、操作部37と表示部38は、本形態に限定されない。例えば、操作部37と表示部38はタッチパネルで構成してもよい。また、操作部37のボタン数は本形態に限定されない。また、表示部38は、複数のLEDで構成してもよいし、液晶ディスプレイで構成してもよい。
【0041】
図3は、監視装置2の電気ブロック図である。温度計測装置3の第1制御部32は、周知の小型コンピュータであり、CPU71とメモリ72を備えるコンピュータ61に、ネットワークインタフェース(以下「ネットワークIF」とする)62と、入出力IF63と、電源IF64と、操作部37と、表示部38が接続されている。
【0042】
ネットワークIF62には、通信機36が接続されている。ネットワークIF62および通信機36は、「第1通信部」、「通信部」の一例である。入出力IF63には、第1温度センサ34と、第2温度センサ35と、換気ファン39が接続されている。電源IF64には、モバイルバッテリ33が接続されている。
【0043】
メモリ72は、不揮発性メモリと、揮発性メモリを含む。メモリ72は、各種のプログラムやデータが記憶されている。メモリ72には、例えば、第1温度センサ34と第2温度センサ35を用いて第1配管13と第2配管14の温度を計測し、判定装置4に送信する温度計測プログラムが記憶されている。また、メモリ72は、例えば、判定装置4のネットワークアドレスや、自装置(温度計測装置3)を識別する端末識別情報が記憶されている。また、メモリ72は、一時的な記憶領域としても使用される。CPU71は、メモリ72からプログラムを読み出して実行することにより、各種処理を行う。
【0044】
判定装置4は、例えば、インターネットに接続可能なクラウドサーバであり、固有のネットワークアドレスを付与されている。判定装置4は、第2制御部41に通信部46が接続されている。通信部46は「第2通信部」の一例である。通信部46は、温度計測装置3やモバイル端末5などの外部装置との通信を制御するハードウェアを含む。
【0045】
メモリ43は、不揮発性メモリと、揮発性メモリを含む。メモリ43には、各種のプログラムやデータが記憶されている。メモリ43には、例えば、温度計測装置3から通信部46を介して受信した第1配管13の温度と第2配管14の温度に基づいて発電部121の動作状態をモバイル端末5に通知する通知プログラムが記憶されている。通知プログラムは「アプリケーションプログラム」の一例である。
【0046】
また、メモリ43には、判定装置4にアクセス可能な端末の端末識別情報が登録されている。メモリ43に記憶される端末識別情報は、1つに限らず、複数でもよい。つまり、判定装置4は、温度計測装置3毎に設けられてもよいし、複数の温度計測装置3に1台で対応できるように設けられてもよい。メモリ43は、各端末識別情報に、通知先のアドレス情報が関連付けて記憶されている。アドレス情報は、通知先となるモバイル端末5をネットワーク上で識別するための情報である。本形態のアドレス情報は、メールアドレスとする。端末識別情報とアドレス情報は、一対一で関連付けられてもよいし、一対N(N≧2)で関連付けられてもよい。
【0047】
なお、判定装置4は、作業者や管理者の操作により、端末識別情報に関連付けられるアドレス情報を変更できるようにしてもよい。例えば、モバイル端末5が判定装置4の専用端末でなく、各作業者が個別に使用する個別端末である場合、当該温度計測装置3の端末識別情報に関連付けて記憶されるアドレス情報を、作業者に応じて書き換えれば、通知先を適宜変更できる。
【0048】
(動作説明)
続いて、コージェネレーション試運転遠隔監視システム100の動作を説明する。ここでは、作業者Zが、ある1日に、X宅に設置されたコージェネレーション設備1(以下、「コージェネレーション設備1X」とする)と、Y宅に設置されたコージェネレーション設備1(以下、「コージェネレーション設備1Y」とする)をメンテナンスする場合を例にして説明する。
【0049】
図4~
図5は、コージェネレーション設備1(1X,1Y)の試運転時の動作を説明する図である。
図7は、モバイル端末5に表示される画面の一例である。
図8は、発電可否判定のイメージ図である。
図8の縦軸は、温度差を示し、横軸は時間を示す。
図8のグラフCは、監視装置2が算出した第1配管13の温度と第2配管14の温度との温度差を示す。
図9は、従来のシステムと本形態のシステムの作業時間のイメージ図である。
【0050】
作業者Zは、作業道具を持って作業現場へ移動する。作業道具には、複数の温度計測装置3(以下、X宅で使用される温度計測装置3を「温度計測装置3X」、Y宅で使用される温度計測装置3を「温度計測装置3Y」とする)と、モバイル端末5が含まれる。温度計測装置3X,3Yは、温度計測を行わない場合、モバイルバッテリ33と第1制御部32が電源ケーブル331を介して接続されていない。
【0051】
図9(b)のW21に示すように、作業者Zは、X宅のコージェネレーション設備1Xについて、貯湯ユニット11や燃料電池ユニット12を停止させた状態で、部品交換や修理等のメンテナンスを行う。
【0052】
このとき、
図4に示すように、コージェネレーション設備1Xの制御装置19は、バイパスバルブ16と供給バルブ17を弁閉状態にし、循環ポンプ18を駆動させない。そのため、貯水の循環も巡回も行われない。
【0053】
図9(b)のW22に示すように、作業者Zは、コージェネレーション設備1Xのメンテナンスが終了したら、温度計測装置3Xをコージェネレーション設備1Xに設置する。
【0054】
具体的に、作業者Zは、温度計測装置3Xのケーシング31を開いて、第1制御部32とモバイルバッテリ33とを電源ケーブル331を介して接続し、ケーシング31を閉じる。そして、作業者Zは、ブラケット342,352を介して図示しないベルトを用いて第1配管13と第2配管14に取り付け、第1温度センサ34と第2温度センサ35を第1配管13と第2配管14に取り付ける。そして、作業者Zは、ケーシング31を邪魔にならない場所に置く。
【0055】
コージェネレーション設備1Xは、モードを選択するための図示しない選択ボタンを備えている。モードには、電力又は熱の需要に応じて発電部121に発電を行わせる通常運転モードと、電力又は熱の需要に関係なく、発電部121に定格運転させる試運転モードとが、含まれている。作業者Zは、温度計測装置3Xの設置が完了したら、図示しない選択ボタンを介して試運転モードを実行させる。これにより、メンテナンスしたコージェネレーション設備1Xが試運転を開始する。作業者Zは、事務的な作業を終えたら、試運転の完了を待たずにY宅へ移動し、別のコージェネレーション設備1Yのメンテナンスを行う。
【0056】
試運転を開始したコージェネレーション設備1Xは、メンテナンス中に停止されているため、発電部121が冷えている。そのため、発電部121が改質温度まで温められて実際に発電するまでに、時間がかかる。その時間は例えば50分程度である。発電部121が改質温度まで温められていない間に、貯水タンク111に貯留されている貯水を貯水タンク111と発電部121との間で循環させると、ぬるい湯が貯水タンク111の頂部111bに入り、成層蓄熱が崩れる可能性がある。つまり、例えば、貯水タンク111内の60℃程度の高温水が貯留される高温層と、30℃程度の低温水が貯留される低温層との境界が曖昧になる可能性がある。この場合、貯湯センサ114が貯湯量114を検出できなくなる。
【0057】
そこで、コージェネレーション設備1Xの制御装置19は、温度センサ20が検出する温度が目標温度に到達するまで、
図5に示すように、供給バルブ17を弁閉状態としたまま、バイパスバルブ16を弁開状態とし、循環ポンプ18を駆動させる。目標温度は、例えば、60℃~65℃である。これにより、第1配管13や第2配管14に残存して発熱部121からの排熱を回収するための水が、貯水タンク111を迂回して、第1配管13と第2配管14とバイパス配管15を巡回する。なお、制御装置19は、発電部121が改質温度に到達するまで、水を巡回させてもよい。
【0058】
制御装置19は、温度センサ20が検出する温度が目標温度に到達すると、
図6に示すように、バイパスバルブ16を弁開状態から弁閉状態に切り替え、供給バルブ17を弁閉状態から弁開状態に切り替える。これにより、貯水タンク111の貯水が、貯水タンク111と発電部121との間で循環し始める。貯水タンク111の底部111aから第1配管13を介して発電部121に供給された低温の貯水は、発電部121の排熱により加熱された後、発電部121から第2配管14を介して貯水タンク111の頂部111bに戻される。よって、貯水タンク111は、貯湯量(蓄熱量)が増える。
【0059】
発電部121は、試運転モードが開始されてから所定時間経過すると、最終工程を開始する。発電部121は、最終工程が終了すると、水素と酸素を直接反応させて発電を開始する。制御装置19は、発電部121が発電を開始したことを検出すると、試運転が終了したと判断し、図示しない動作表示部(例えばLEDランプ)に発電完了を表示させる。制御装置19は、発電部121が発電を開始した後、しばらくすると、試運転モードを通常運転モードに自動的に切り換える。なお、試運転モードは、作業者Zが図示しない選択ボタンを用いて手動で通常運転モードに切り換えられてもよい。
【0060】
温度計測装置3Xの第1制御部32は、モバイルバッテリ33から電力を供給されて起動すると、メモリ72から温度計測プログラムを読み出して各種処理を実行する。すなわち、第1制御部32は、第1温度センサ34と第2温度センサ35が計測した第1配管13の温度と第2配管14の温度を、入出力IF63を介して取得し始める(温度計測処理の一例)。
【0061】
そして、第1制御部32は、メモリ72から判定装置4のネットワークアドレスを読み出し、温度情報を判定装置4に送信し始める(温度送信処理の一例)。温度情報は、第1温度センサ34が計測した第1配管13の温度と、第2温度センサ35が計測した第2配管14の温度と、温度計測装置3Xの端末識別情報と、が含まれている。
【0062】
温度計測装置3は、第1配管13と第2配管14の温度を常時取得し、判定装置4に送信してもよい。また、温度計測装置3は、モバイルバッテリ33の電力消耗を抑制するために、第1配管13と第2配管の温度を、例えば5分間隔など定期的に取得し、判定装置4に送信してもよい。また、温度計測装置3は、モバイルバッテリ33の電力消費を抑制するために、第1制御部32の起動後、コージェネレーション設備が供給バルブ17とバイパスバルブ16の開閉状態を切り替えると予想される時間(例えば50分)の少し前に、第1配管13と第2配管14の温度計測を開始し、温度情報を判定装置4に送信してもよい。
【0063】
判定装置4の第2制御部41は、起動時に通知プログラムを読み出し、各種処理を実行する。すなわち、第2制御部41は、温度計測装置3Xから送信された温度情報を、通信部46を介して受信すると(温度受信処理の一例)、受信した温度情報に含まれる第1配管13の温度と第2配管14の温度に基づいて発電部121の動作状態をモバイル端末5に通知する(通知処理の一例)。
【0064】
具体的に、コージェネレーション設備1Xが、
図5に示すように、供給バルブ17を弁閉状態、バイパスバルブ16を弁開状態にして、発電部121からの排熱を回収するための水を、貯水タンク111を迂回して巡回させている場合、第1配管13を流れる水の温度と第2配管14を流れる水の温度は、同程度になる。第1配管13と第2配管14は流通する水と同程度の温度になる。
【0065】
このようにコージェネレーション設備1Xにおいて水が貯水タンク111を迂回して巡回している場合、
図8のA1に示すように、判定装置4が、温度計測装置3Xから受信した温度情報に基づいて算出した、第1温度センサ34が計測する第1配管13の温度と、第2温度センサ35が測定する第2配管14の温度との温度差は、ほぼ0℃となり、発電開始閾値D以上にならない。この場合、判定装置4は、発電部121が発電の準備中である可能性が高いので、モバイル端末5に通知を行わない。
【0066】
上述したように、コージェネレーション設備1Xが、
図6に示すように、供給バルブ17を弁開状態、バイパスバルブ16を弁閉状態にして、貯水タンク111の貯水を貯水タンク111と発電部121との間で循環させ始めると、貯水タンク111の底部111aにある低温(例えば5℃~25℃)の貯水が、第1配管13を流れ始める。これにより、第1配管13の温度が徐々に低下する。一方、第2配管14には、発電部121で排熱を回収した高温(例えば60℃~65℃)の貯水が流れ続ける。そのため、第2配管14の温度はあまり変化しない。よって、コージェネレーション設備1Xが貯水の循環を開始すると、第1配管13の温度と第2配管14の温度に温度差が生じ始める。貯水が所定の時間循環すると、第1配管13の温度が下げ止まって安定し、第1配管13と第2配管14の温度差が例えば35℃~55℃で安定する。
【0067】
判定装置4は、
図8のA2に示すように、温度計測装置3Xから受信した温度情報に基づいて算出した、第1温度センサ34が計測する第1配管13の温度と、第2温度センサ35が測定する第2配管14の温度との温度差が、発電開始閾値Dより小さい場合、発電部121が発電を完了していない可能性が高いので、モバイル端末5に通知を行わない。なお、本形態では、発電開始閾値Dを30℃とするが、発電開始閾値Dはこれに限定されない。発電開始閾値Dはコージェネレーション設備1Xの設置環境等に応じて設定変更してよい。
【0068】
一方、判定装置4は、
図8のA3に示すように、温度計測装置3Xから受信した温度情報に基づいて算出した、第1温度センサ34が計測する第1配管13の温度と、第2温度センサ35が測定する第2配管14の温度との温度差が、発電開始閾値D以上であると判断した場合、温度差が発電開始閾値D以上である状態が判定待ち時間B以上継続されたか否かを判断する。算出した温度差が何らかの要因で一時的に発電開始閾値D以上になった場合に、発電部121が発電を完了したと判定装置4が誤判定することを防ぐためである。判定待ち時間Bは、例えば、5分である。
【0069】
判定装置4は、算出した温度差が発電開始閾値D以上である状態が判定待ち時間B以上継続されたと判断した場合、発電部121が発電を完了したと判定する。この場合、判定装置4は、温度情報に含まれる温度計測装置3Xに関連付けられたメールアドレス(アドレス情報)を、メモリ43から読み出す。そして、判定装置4は、読み出したメールアドレス宛に、発電部121が発電を完了したことを通知する。以下、この通知を「発電完了通知」とする。発電完了通知には、判定に用いた温度情報に含まれる温度計測装置3Xの端末識別情報や、後の処置を指示するメッセージが付加されている。
【0070】
本形態では、温度計測装置3Xの端末識別情報には、作業者Zが使用するモバイル端末5のメールアドレスが関連付けて記憶されており、判定装置4は、作業者Zが使用するモバイル端末5に発電完了通知を送る。
【0071】
作業者Zが使用するモバイル端末5は、通知を受信すると、その通知を表示する。なお、通知は、メールアプリ等を用いてユーザ操作によりモバイル端末5に表示させてもよいし、プッシュ通知等を用いてモバイル端末5に自動表示させてもよい。
【0072】
モバイル端末5は、発電完了通知を判定装置4から受信すると、例えば
図7(a)に示す発電成功通知画面D1を表示する。発電成功通知画面D1は、温度計測装置3Xの端末識別情報「device1」と、「正常に発電を開始しました。」などの発電部121が発電を完了したことを示すメッセージと、「温度計測装置を回収して下さい。」などの後の処置を指示するメッセージが表示されている。
【0073】
よって、作業者Zは、Y宅でコージェネレーション設備1Yを作業していても、発電成功通知画面D1を見て、コージェネレーション設備1Xが発電を完了したことを確認できる。つまり、作業者は、コージェネレーション設備1Xの発電部121が起動する起動時間中に、コージェネレーション設備1Yのメンテナンスを行うことができる。
【0074】
作業者Zは、例えば
図9(b)のW23に示すように、後日都合がよいときに、コージェネレーション設備1Xに設置した温度計測装置3Xを回収する。
【0075】
一方、判定装置4は、算出した温度差が発電開始閾値D以上にならない場合、あるいは、算出した温度差が発電開始閾値D以上である状態が判定待ち時間B以上継続されない場合、モバイル端末5に発電完了通知を送らない。そのため、試運転を開始してから起動時間(例えば1~2時間)が経過しても、モバイル端末5が
図7(a)に示す発電成功通知画面D1を表示しない場合、作業者Zは、コージェネレーション設備1Xの発電部121が発電を完了しなかったことを、Y宅で作業しながら確認できる。この場合、作業者Zは、X宅に戻り、コージェネレーション設備1Xの現況を確認する。
【0076】
なお、作業者Zは、メンテナンスしたコージェネレーション設備1Yを試運転する場合、上記と同様に、温度計測装置3Yをコージェネレーション設備1Yの第1配管13と第2配管14に取り付ける。温度計測装置3Yは、温度計測装置3Xと同様に、温度情報を判定装置4に送信する。判定装置4は、温度計測装置3Yから受信した温度情報に含まれる端末識別情報「device2」から、温度計測装置3Yから受信した温度情報を温度計測装置3Xから受信した温度情報と区別し、コージェネレーション設備1Yの発電部121の動作状態を監視できる。本形態では、判定装置4は、温度計測装置3Yの端末識別情報「device2」に、作業者Zが使用するモバイル端末5のメールアドレスを関連付けて、メモリ43に記憶しているので、判定装置4は、温度計測装置3Yが計測した第1配管13の温度と第2配管14の温度との温度差に基づく通知を、作業者Zのモバイル端末5に送る。
【0077】
通知を受信したモバイル端末5は、例えば
図7(c)に示す通知画面D3を表示する。通知画面D3には、端末識別情報「device2」が表示されている。そのため、通知画面D3を見た作業者Zは、コージェネレーション設備1Yの発電部121が発電を完了したことを確認できる。つまり、作業者Zは、複数のコージェネレーション設備1X,1Yをメンテナンスする場合に、各コージェネレーション設備1X,1Yの動作状態をモバイル端末5で個別に確認できる。
【0078】
ところで、監視装置2は、温度計測装置3Xのモバイルバッテリ33が充電切れしたり、第1温度センサ34と第2温度センサ35の接続ケーブル343,353が第1制御部32から外れたり、判定装置4の第2制御部41がフリーズしたり、温度計測装置3Xまたは判定装置4の通信環境が悪化したりすると、判定装置4が温度計測装置3Xから第1配管13と第2配管14の温度を受信できなくなる。この場合、判定装置4は、途中で通信できなくなった温度計測装置3Xの端末識別情報に関連付けられたメールアドレス宛に、通信エラーが発生したことを示す通信エラー通知を送る。
【0079】
モバイル端末5は、通信エラー通知を受信すると、例えば
図7(b)に示す通信エラー通知画面D2を表示する。通信エラー通知画面D2には、温度計測装置3Xの端末識別情報「device1」と、「温度を計測できません。」など通信不良を通知するメッセージと、「現場に戻り、現況を確認して下さい。」など後の処置を指示するメッセージと、が表示されている。作業者Zは、通信エラー通知画面D2を見て、X宅に戻り、モバイルバッテリ33を交換したり、接続ケーブル343,353の接続状態を確認し、通信不良を解消させることができる。
【0080】
作業者Zは、例えば、温度計測装置3Xの回収時や、発電に失敗したコージェネレーション設備1Xの現況を確認するためにX宅に戻った時に、温度計測装置3Xが動作している場合、温度計測終了ボタン37aを操作し、温度計測を終了させる。そして、作業者Zは、シャットダウンボタン37bを操作し、第1制御部32をシャットダウンする。
【0081】
作業者Zは、温度計測装置3Xを回収する場合、第1制御部32とモバイルバッテリ33から電源ケーブル331を外す。これにより、モバイルバッテリ33の無駄な電力消費を抑制できる。また、コージェネレーション設備1Xの再点検等を行い、再度試運転する場合、作業者Zは、モバイルバッテリ33を予備のモバイルバッテリに交換し、上記と同様に、温度計測装置3Xをコージェネレーション設備1Xに取り付け、発電部121の動作状態を遠隔監視してもよい。
【0082】
温度計測装置3は、温度計測終了ボタン37aを操作されると、第1温度センサ34と第2温度センサ35を用いて温度を計測しなくなり、温度情報を判定装置4に送信しなくなる。この場合、判定装置4は、温度計測装置3Xを用いて第1配管13と第2配管14の温度を取得できなくなるので、温度計測装置3Xに関連付けられたメールアドレス宛に、通信エラー通知を送る。モバイル端末5は、通信エラー通知を受信すると、
図7(b)に示す通信エラー通知画面D2を表示する。これにより、作業者Zは、温度計測装置3Xと判定装置4との通信が遮断され、温度計測装置3Xを用いた遠隔監視の処理が終了したことを確認できる。
【0083】
ここで、例えば、コージェネレーション設備1Xの制御装置19は、図示しない選択ボタンを用いて試運転モードが選択されたときに、貯湯センサ114の検出結果に基づいて貯水タンク111に湯が満タンに貯留されていると判断した場合、循環ポンプ18を駆動させない。つまり、コージェネレーション設備1Xが試運転を開始しない。この場合、制御装置19は、給湯バルブ113を弁開させ、浴槽200に湯張りを行うことで、貯水タンク111の湯量を減らす。この場合、制御装置19は、浴槽200の排水栓を閉じることを促す通知を行い、作業者Z等に排水栓を手動で閉じさせてもよい。また、浴槽200が自動開閉可能な排水栓を有する場合、制御装置19が湯張り時に排水栓を自動で閉じてもよい。その後、制御装置19は、上述したように、発電部121の試運転を開始する。これによれば、貯水タンク111の湯を有効活用しつつ、コージェネレーション設備1Xの動作状態を遠隔監視できるようになる。
【0084】
上記のように使用される温度計測装置3X,3Yは、屋外に設置されるコージェネレーション設備1X,1Yに設置される。温度計測装置3X,3Yは、第1制御部32やモバイルバッテリ33や通信機36が防水性を有するケーシング31に収容されているので、雨水や埃などで動作不良を生じにくい。また、温度計測装置3X,3Yは、真夏に日光に晒されたり、動作時に、第1制御部32やモバイルバッテリ33が発熱したりしても、換気ファン39が駆動し、ケーシング31を換気するので、熱による動作不良を生じ難い。
【0085】
(作用効果)
以上説明したように、本形態のコージェネレーション試運転遠隔監視システム100では、作業者Zは、コージェネレーション設備1Xのメンテナンス後、発電部121を試運転させた場合、試運転させた発電部121の動作状態をモバイル端末5を介して確認できる。そのため、作業者Zは、コージェネレーション設備1Xのメンテナンス後、当該コージェネレーション設備1Xの発電完了を確認するまで現場で待機しなくても、別のコージェネレーション設備1Yのメンテナンス等を行うことが可能になる。よって、本形態のコージェネレーション試運転遠隔監視システム100によれば、メンテナンス作業者の無駄な待ち時間を減らし、コージェネレーション設備1(1X,1Y)のメンテナンス作業効率を向上させることができる。
【0086】
特に、メンテナンス後の試運転時に発電部121が発電を完了しないケースは、例えば1000~2000回に1回程度と非常に少ない。従って、本形態のように、メンテナンス後の試運転時に発電部121の動作状態あるいは発電可否を遠隔監視できれば、従来無駄にしていた時間を別の作業に当てることができるようになり、メンテナンス効率を向上させる上で非常に有益である。
【0087】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。例えば
監視装置2(判定装置4)からモバイル端末5への通知は、発電完了通知、通信エラー通知に限られない。例えば、監視装置2(判定装置4)は、算出した温度差が所定時間内に発電開始閾値D以上にならない場合、発電部121が発電を完了しなかったことを示す発電失敗通知をモバイル端末5に送ってもよい。この場合、モバイル端末5は、例えば
図7(d)に示す発電失敗通知画面D5を表示し、発電部121が発電に失敗したことを作業者に知らせる。なお、発電完了通知と発電失敗通知の通知方法は、同じでもよいし、例えば、発電完了通知はユーザ操作を介して表示させ、発電失敗通知はプッシュ通知するなど、異なってもよい。
【0088】
監視装置2(判定装置4)は、発電完了通知を送った後、第1配管34と第2配管35の温度差に基づいてコージェネレーション設備1の発電動作エラーを検出した場合、発電動作エラー通知をモバイル端末5に送信してもよい。これにより、作業者は、別の場所で別の作業等を行いながら、発電を完了したはずのコージェネレーション設備1に発電動作エラーが発生したことを確認し、現場に戻って現況確認することが可能になる。
【0089】
例えば、上記形態の監視装置2は、温度計測装置3と判定装置4より構成されているが、温度計測機能と通知機能とを備える装置1台で監視装置を構成してもよい。但し、上記形態のように、監視装置2を、温度計測機能と通信機能を有する温度計測装置3と、通信機能と通知機能を有する判定装置4とに分けることで、温度計測装置3の消費電力が抑制され、温度計測装置3がモバイルバッテリ33のみで数時間可動できるようにしている。これにより、温度計測装置3がコンパクトになり、現場へ温度計測装置3を持ち運び、邪魔にならないようにコージェネレーション設備1に設置しやすくなる。
【0090】
例えば、通信エラー通知は、モバイル端末5に通知しなくてもよい。但し、判定装置4が、温度計測装置3から第1配管13の温度と第2配管14の温度を受信しない場合に通信エラー通知をモバイル端末5に通知することで、温度計測装置3と判定装置4との通信不良を早期に解消し、監視精度を向上させることができる。
【0091】
例えば、温度計測装置3は、換気機能を備えなくてもよい。ただし、換気口311をケーシング31に設けたり、換気ファン39をケーシング31に内設したりすることにより、ケーシング31の内部温度上昇を抑制し、温度計測装置3の動作不良を回避できる。また、ケーシング31は防水性がなくてもよい。ただし、ケーシング31が防水性を有することで、天候や置き場所を気にせずに屋外で使用できる。
【0092】
メンテナンス作業の手順は上記形態と異なっても良い。例えば、例えば、温度計測装置3は、コージェネレーション設備1の試運転を開始した後に、第1配管13と第2配管14に第1温度センサ34と第2温度センサ35を取り付け、コージェネレーション設備1に設置してもよい。また、監視装置4の処理手順は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記形態と異なってもよい。
【符号の説明】
【0093】
100 コージェネレーション試運転遠隔監視システム
1 コージェネレーション設備
2 監視装置
5 モバイル端末
12 燃料電池ユニット
111 貯水タンク
13 第1配管
14 第2配管