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特許7522706電源制御装置、電源装置、及び電源制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】電源制御装置、電源装置、及び電源制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/10 20190101AFI20240718BHJP
   H01M 10/48 20060101ALN20240718BHJP
   H02J 7/00 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
B60L58/10
H01M10/48 P
H02J7/00 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021133412
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023027996
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-056937(JP,A)
【文献】特開2008-109840(JP,A)
【文献】特開2008-118828(JP,A)
【文献】特開2015-084638(JP,A)
【文献】特開2016-077124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154779(US,A1)
【文献】国際公開第2013/145618(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/239640(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/100799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/00
B60L 58/00
H01M 10/42
H02J 1/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置の充放電を制御する電源制御装置であって、
前記電源装置から前記負荷への放電電流と、前記バッテリと前記キャパシタとの出力電流の比率である放電電流比率と、前記電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を有し、
前記電源装置から前記負荷への放電電流の測定値を取得し、
取得した前記電源装置から前記負荷への放電電流の測定値に対応する前記電源装置の電源損失が最小となる前記放電電流比率を前記関係情報から求め、
前記放電電流比率が前記関係情報から求めた前記放電電流比率となるように、前記DC/DCコンバータにより、前記キャパシタの放電電流を調整する電源制御装置。
【請求項2】
前記バッテリと前記キャパシタとの少なくとも一つの電池状態を推定し、
推定した前記電池状態に応じて、前記関係情報を更新する請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置の充放電を制御する電源制御装置であって、
前記発電部から前記電源装置への充電電流と、前記バッテリと前記キャパシタとの入力電流の比率である充電電流比率と、前記電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を有し、
前記発電部から前記電源装置への充電電流の測定値を取得し、
取得した前記発電部から前記電源装置への充電電流の測定値に対応する前記電源装置の電源損失が最小となる前記充電電流比率を前記関係情報から求め、
前記充電電流比率が前記関係情報から求めた前記充電電流比率となるように、前記DC/DCコンバータにより、前記キャパシタの充電電流を調整する電源制御装置。
【請求項4】
前記バッテリと前記キャパシタとの少なくとも一つの電池状態を推定し、
推定した前記電池状態に応じて、前記関係情報を更新する請求項3に記載の電源制御装置。
【請求項5】
負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、
前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータと、
前記バッテリ及び前記キャパシタの充放電を制御する請求項1~4の何れか1項に記載の電源制御装置と
を備える電源装置。
【請求項6】
負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置の充放電をコンピュータを用いて制御する電源制御方法であって、
前記電源装置から前記負荷への放電電流と、前記バッテリと前記キャパシタとの出力電流の比率である放電電流比率と、前記電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を有し、
前記電源装置から前記負荷への放電電流の測定値を取得し、
取得した前記電源装置から前記負荷への放電電流の測定値に対応する前記電源装置の電源損失が最小となる前記放電電流比率を前記関係情報から求め、
前記放電電流比率が前記関係情報から求めた前記放電電流比率となるように、前記DC/DCコンバータにより、前記キャパシタの放電電流を調整する電源制御方法。
【請求項7】
負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置の充放電をコンピュータを用いて制御する電源制御方法であって、
前記発電部から前記電源装置への充電電流と、前記バッテリと前記キャパシタとの入力電流の比率である充電電流比率と、前記電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を有し、
前記発電部から前記電源装置への充電電流の測定値を取得し、
取得した前記発電部から前記電源装置への充電電流の測定値に対応する前記電源装置の電源損失が最小となる前記充電電流比率を前記関係情報から求め、
前記充電電流比率が前記関係情報から求めた前記充電電流比率となるように、前記DC/DCコンバータにより、前記キャパシタの充電電流を調整する電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御装置、電源装置、及び電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スターターモータ等の大電流が流れる大電流負荷と発電機とが並列に接続されたバッテリと、発電機が発生した回生電力を蓄電するキャパシタと、回生電力をキャパシタに対応する電圧に変換し、キャパシタの出力を負荷に対応する電圧に変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-77124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池の内部抵抗が充電率や劣化状態や電池温度等によって変化することにより、二次電池の充放電時にはその内部抵抗に応じた電源損失が発生する。それに対して、上記キャパシタは、内部抵抗が低いことにより充放電時の電源損失が抑えられる。しかしながら、キャパシタの端子間電圧が、充電率によって大きく変化することにより、キャパシタの端子間電圧とシステムの電圧(上記バッテリ等のメイン電源の電圧)とを整合するためのDC/DCコンバータが必須となる。このDC/DCコンバータの変換損失によりキャパシタによる電源損失の抑制効果が相殺され、システム全体では充放電時の効率が悪化することも考えられる。このシステム全体での充放電時の効率の悪化は、発熱量の増加を引き起こし、システム温度の上昇を抑えるためのより強力な冷却機構を必要とすることにつながる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、二次電池の高効率な充放電を実現できる電源制御装置、電源装置、及び電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源制御装置は、負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置の充放電を制御する電源制御装置であって、前記電源装置から前記負荷への放電電流と、前記バッテリと前記キャパシタとの出力電流の比率である放電電流比率と、前記電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を有し、前記電源装置から前記負荷への放電電流の測定値を取得し、取得した前記電源装置から前記負荷への放電電流の測定値に対応する前記電源装置の電源損失が最小となる前記放電電流比率を前記関係情報から求め、前記放電電流比率が前記関係情報から求めた前記放電電流比率となるように、前記DC/DCコンバータにより、前記キャパシタの放電電流を調整する。
【0007】
本発明の電源制御装置は、負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置の充放電を制御する電源制御装置であって、前記発電部から前記電源装置への充電電流と、前記バッテリと前記キャパシタとの入力電流の比率である充電電流比率と、前記電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を有し、前記発電部から前記電源装置への充電電流の測定値を取得し、取得した前記発電部から前記電源装置への充電電流の測定値に対応する前記電源装置の電源損失が最小となる前記充電電流比率を前記関係情報から求め、前記充電電流比率が前記関係情報から求めた前記充電電流比率となるように、前記DC/DCコンバータにより、前記キャパシタの充電電流を調整する。
【0008】
本発明の電源装置は、負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換する電力変換部と、前記バッテリ及び前記キャパシタの充放電を制御する上記の電源制御装置とを備える。
【0009】
本発明の電源制御方法は、負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置の充放電をコンピュータを用いて制御する電源制御方法であって、前記電源装置から前記負荷への放電電流と、前記バッテリと前記キャパシタとの出力電流の比率である放電電流比率と、前記電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を有し、前記電源装置から前記負荷への放電電流の測定値を取得し、取得した前記電源装置から前記負荷への放電電流の測定値に対応する前記電源装置の電源損失が最小となる前記放電電流比率を前記関係情報から求め、前記放電電流比率が前記関係情報から求めた前記放電電流比率となるように、前記DC/DCコンバータにより、前記キャパシタの放電電流を調整する。
【0010】
本発明の電源制御方法は、負荷及び発電部に並列に接続されるバッテリ及びキャパシタと、前記キャパシタと直列に接続され前記キャパシタの充放電電力を変換するDC/DCコンバータとを備える電源装置の充放電をコンピュータを用いて制御する電源制御方法であって、前記発電部から前記電源装置への充電電流と、前記バッテリと前記キャパシタとの入力電流の比率である充電電流比率と、前記電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を有し、前記発電部から前記電源装置への充電電流の測定値を取得し、取得した前記発電部から前記電源装置への充電電流の測定値に対応する前記電源装置の電源損失が最小となる前記充電電流比率を前記関係情報から求め、前記充電電流比率が前記関係情報から求めた前記充電電流比率となるように、前記DC/DCコンバータにより、前記キャパシタの充電電流を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の電源部の充電電流比率又は放電電流比率の設定により複数の電源部を備える電源装置の電源損失を最小化することができ、よって、二次電池の高効率な充電又は放電を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備える電源装置の概略を示す図である。
図2図2は、図1に示す制御装置の機能を示すブロック図である。
図3図3は、電源装置の放電電流と放電時のメイン電源部の電源損失と放電時の電圧変換部の変換効率と放電時のサブ電源部の電源損失との関係の一実施例を示す表である。
図4図4は、サブ電源部の出力電流と放電時の電圧変換部の変換効率との関係の一実施例を示すグラフである。
図5図5は、メイン電源部の出力電流と放電時のメイン電源部の電源損失との関係、及びサブ電源部の出力電流と放電時のサブ電源部の電源損失との関係の一実施例を示すグラフである。
図6図6は、電源装置から負荷への放電電流をメイン電源部とサブ電源部とで分担した場合の電源装置の放電電流と放電電流比率と電源装置の電源損失の合計値との関係を示す表である。
図7図7は、電源装置から負荷への放電電流をメイン電源部とサブ電源部とで分担した場合の電源装置の放電電流と放電電流比率と電源装置の電源損失の合計値との関係を示すグラフである。
図8図8は、図1及び図2に示す制御装置による充電制御について説明するためのフローチャートである。
図9図9は、図1及び図2に示す制御装置による放電制御について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、以下に示す実施形態は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態において、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置100を備える電源装置1を示す図である。この図に示すように、電源装置1は、メイン電源部2と、サブ電源部3と、電流センサ4,5,6と、電圧センサ7と、制御装置100とを備える。メイン電源部2とサブ電源部3とは、負荷(発電部)Lに並列で接続されている。
【0015】
メイン電源部2は、メイン二次電池21を備える。メイン二次電池21は、リチウムイオンバッテリ等のエネルギー密度が高い二次電池である。サブ電源部3は、サブ二次電池31と、電圧変換部32とを備える。サブ二次電池31は、メイン二次電池21よりも相対的に出力密度が高く内部抵抗が低いリチウムイオンキャパシタやチタン酸リチウムイオン二次電池等の二次電池である。電圧変換部32は、電源装置1の電圧(メイン二次電池21の電圧)とサブ二次電池31の電圧とを整合するためのDC/DCコンバータ等である。サブ二次電池31と電圧変換部32とは直列に接続されている。
【0016】
電流センサ4は、メイン電源部2の入出力電流を測定して測定値を制御装置100に送信する。また、電流センサ5は、サブ電源部3の入出力電流を測定して測定値を制御装置100に送信する。さらに、電流センサ6は、電源装置1と負荷(発電部)Lとの間の充放電電流を測定して測定値を制御装置100に送信する。なお、電流センサ4,5,6のいずれか一つ(例えば電流センサ6)を省略し、その省略する電流センサによる電流測定を、残りの2つの電流センサの測定値から算出することに代えてもよい。
【0017】
電圧センサ7は、メイン二次電池21の端子間電圧を測定して測定値を制御装置100に送信する。制御装置100は、電流センサ4,5,6及び電圧センサ7から送信された測定値に基づいてメイン電源部2及びサブ電源部3の電池状態を推定する。メイン電源部2及びサブ電源部3の電池状態を示す指標としては、メイン二次電池21の内部抵抗、電源電圧、電圧変換部32の変換効率等を例示できる。
【0018】
電源装置1は、車載用あるいは定置用の電源である。この電源装置1のメイン二次電池21及びサブ二次電池31は、不図示の充電回路を通じて発電部から電力を供給されて充電され、充電された電力を放電して負荷Lに電力を供給する。電源装置1が車載用の場合には、駆動用モータ、エアコン、各種車載電装品等が負荷Lとなる。なお、駆動用モータは負荷Lにもなり発電部にもなる。また、電源装置1が定置用の場合には、家庭内の家電、商用電源系統、液晶表示器、通信モジュール等が負荷Lとなり、太陽光発電システム等が発電部となる。
【0019】
図2は、図1に示す制御装置100の機能を示すブロック図である。この図に示すように、制御装置100は、電池状態解析部101と、マップ生成部102と、電流制御部103とを備える。
【0020】
電池状態解析部101は、電流センサ4から送信されるメイン電源部2の入出力電流の測定値、電流センサ5から送信されるサブ電源部3の入出力電流の測定値、電流センサ6から送信される電源装置1と負荷Lとの間の充放電電流の測定値、及び電圧センサ7から送信されるメイン二次電池21の端子間電圧の測定値とに基づいて、メイン電源部2、及びサブ電源部3の電池状態を推定する。具体的には、電池状態解析部101は、電流センサ4,5,6及び電圧センサ7の測定値に基づいて、メイン二次電池21の内部抵抗、電源電圧、電圧変換部32の変換損失等を推定する。
【0021】
マップ生成部102は、予め作成された放電電流比率マップ及び充電電流比率マップを有しており、これらの放電電流比率マップ及び充電電流比率マップを、電池状態解析部101によるメイン二次電池21の内部抵抗、電源電圧、電圧変換部32の変換損失の推定結果に応じて更新する。放電電流比率マップは、電源装置1から負荷Lへの放電電流と、放電時の電源装置1の電源損失の合計値と、メイン電源部2の出力電流とサブ電源部3の出力電流との比率である放電電流比率との関係を示す情報である。
【0022】
放電時の電源装置1の電源損失の合計値Pは、下記(1)式で表される。
=PDM+PDS …(1)
DMは放電時のメイン電源部2の電源損失であり、PDSは放電時のサブ電源部3の電源損失である。
【0023】
放電時のメイン電源部2の電源損失PDMは、下記(2)式で表され、放電時のサブ電源部3の電源損失PDSは、下記(3)式で表される。
DM=I ×r …(2)
は電源装置1から負荷Lへの放電電流であり、rはメイン電源部2の内部抵抗である。
DS=I×V×η …(3)
はメイン二次電池21の電源電圧であり、ηはサブ電源部3の放電時の電圧変換部(DC/DCコンバータ)32の変換効率である。
【0024】
充電時の電源装置1の電源損失の合計値P’は、下記(4)式で表される。
’=PDM’+PDS’ …(4)
DM’は充電時のメイン電源部2の電源損失であり、PDS’は充電時のサブ電源部3の電源損失である。
【0025】
充電時のメイン電源部2の電源損失PDM’は、下記(5)式で表され、充電時のサブ電源部3の電源損失PDS’は、下記(6)式で表される。
DM’=I×r …(5)
’は負荷Lから電源装置1への充電電流である。
DS’=I’×V×η’ …(6)
η’はサブ電源部3の充電時の電圧変換部(DC/DCコンバータ)32の変換効率である。
【0026】
ここで、サブ電源部3の電源損失PDS,PDS’を計算する際、サブ二次電池31の内部抵抗は十分に低い(例えば、0.001Ω)と想定して、サブ二次電池31の内部抵抗により生じる損失は計算に入れていない。
【0027】
図3は、電源装置1の放電電流Iと放電時のメイン電源部2の電源損失PDMと放電時の電圧変換部32の変換効率ηと放電時のサブ電源部3の電源損失PDSとの関係の一実施例を示す表である。図4は、サブ電源部3の出力電流と放電時の電圧変換部32の変換効率ηとの関係の一実施例を示すグラフである。また、図5は、メイン電源部2の出力電流と放電時のメイン電源部2の電源損失PDMとの関係、及びサブ電源部3の出力電流と放電時のサブ電源部3の電源損失PDSとの関係の一実施例を示すグラフである。本実施例では、メイン二次電池21の端子間電圧を370V、メイン二次電池21の内部抵抗を0.1Ω、サブ二次電池31の内部抵抗を0.001Ωと仮定した。
【0028】
図3の表、及び図5のグラフに示すように、メイン電源部2の電源損失PDMは、メイン電源部2の出力電流の増加に伴って漸増する。それに対して、サブ電源部3の電源損失PDSは、サブ電源部3の出力電流の増加に対して不規則に増減する。
【0029】
図6は、電源装置1から負荷Lへの放電電流Iをメイン電源部2とサブ二次電池31とで分担した場合の電源装置1の放電電流Iと放電電流比率αと電源装置1の電源損失の合計値Pとの関係を示す表である。また、図7は、電源装置1から負荷Lへの放電電流Iをメイン電源部2とサブ二次電池31とで分担した場合の電源装置1の放電電流Iと放電電流比率αと電源装置1の電源損失の合計値Pとの関係を示すグラフである。
【0030】
放電電流比率αは、メイン電源部2の出力電流とサブ電源部3の出力電流との比率が1:0の場合に、α=1.0となり、メイン電源部2の出力電流とサブ電源部3の出力電流との比率が0:1の場合に、α=0となる。また、放電電流比率αは、メイン電源部2の出力電流とサブ電源部3の出力電流との比率が1:1の場合に、α=0.5となる。
【0031】
図7に示すように、電源装置1の電源損失の合計値Pを縦軸、放電電流比率αを横軸とするグラフのプロファイルは、電源装置1の放電電流Iによって多様である。例えば、電源装置1の放電電流Iが100Aの場合には、電源装置1の電源損失の合計値Pが放電電流比率αの増加に伴って漸減する。この場合、放電電流比率αを1.0に設定することにより、電源装置1の電源損失の合計値Pを最小化できる。それに対して、電源装置1の放電電流Iが150A,200A,250A,300Aの場合には、電源装置1の電源損失の合計値Pが放電電流比率αの増加に対して不規則に増減する。電源装置1の放電電流Iが150A,200Aの場合、放電電流比率αを1.0に設定することにより、電源装置1の電源損失の合計値Pを最小化できる。また、電源装置1の放電電流Iが250Aの場合、放電電流比率αを0に設定することにより、電源装置1の電源損失の合計値Pを最小化できる。さらに、電源装置1の放電電流Iが300Aの場合、放電電流比率αを0.15とすることにより、電源装置1の電源損失の合計値Pを最小化できる。即ち、放電時の電源装置1の電源損失の合計値Pを最小化するためには、電源装置1の放電電流Iに応じて放電電流比率αを設定する必要がある。
【0032】
詳細な実施例を挙げての説明は省略するが、充電時のメイン電源部2の電源損失PDM’は、メイン電源部2の充電電流の増加に伴って漸増する。それに対して、充電時のサブ電源部3の電源損失PDS’は、サブ電源部3の充電電流の増加に対して不規則に増減する。このため、充電時の電源装置1の電源損失の合計値P’を最小化する充電電流比率α’は、電源装置1の充電電流I’によって変動する。また、図示は省略するが、充電時の電源装置1の電源損失の合計値P’を縦軸、充電電流比率α’を横軸とするグラフのプロファイルは、電源装置1の充電電流I’によって多様である。そのため、充電時の電源装置1の電源損失の合計値P’を最小化するためには、電源装置1の充電電流I’に応じて充電電流比率α’を設定する必要がある。
【0033】
そこで、図2に示す電流制御部103が、放電時の電源装置1の電源損失の合計値Pを最小化するために、電源装置1の放電電流Iに応じて、電圧変換部32の出力電流の調整により放電電流比率αを設定する。また、電流制御部103が、充電時の電源装置1の電源損失の合計値P’を最小化するために、電源装置1の充電電流I’に応じて、電圧変換部32の入力電流の調整により充電電流比率α’を設定する。
【0034】
なお、充電電流比率α’は、メイン電源部2の入力電流とサブ電源部3の入力電流との比率が1:0の場合に、α’=1.0となり、メイン電源部2の入力電流とサブ電源部3の入力電流との比率が0:1の場合に、α’=0.1となる。また、充電電流比率α’は、メイン電源部2の入力電流とサブ電源部3の入力電流との比率が1:1の場合に、α’=0.5となる。
【0035】
図8は、制御装置100による放電制御について説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、電源装置1が放電モードに設定されると開始されてステップS1に移行する。
【0036】
ステップS1において、電池状態解析部101は、電流センサ4から送信されるメイン電源部2の出力電流の測定値、電流センサ5から送信されるサブ電源部3の出力電流の測定値、電流センサ6から送信される電源装置1から負荷Lへの放電電流Iの測定値、及び電圧センサ7から送信されるメイン電源部2の端子間電圧の測定値を取得する。
【0037】
次に、ステップS2において、電池状態解析部101は、ステップS1で取得した電流や電圧の測定値に基づいて、メイン二次電池21の内部抵抗r、電源電圧V、電圧変換部32の変換効率ηを推定する。
【0038】
次に、ステップS3において、マップ生成部102は、ステップS2における電池状態解析部101によるメイン二次電池21の内部抵抗r、電源電圧V、電圧変換部32の変換効率ηの推定結果に応じて、放電電流比率マップを更新する。
【0039】
次に、ステップS4において、電流制御部103は、現時点で設定されている放電電流比率αが適切であるか否かを判定する。具体的には、電流制御部103は、電流センサ6により測定された放電電流Iに対応する電源装置1の電源損失の合計値Pの最小値、及びこの電源装置1の電源損失の合計値Pの最小値に対応する放電電流比率αを、ステップS3で更新された放電電流比率マップから求める。そして、電流制御部103は、放電電流比率マップから求めた放電電流比率αと現時点で設定されている放電電流比率αとを比較し、両者の差が所定範囲内であるか否かを判定する。ステップS4において肯定判定がされた場合には処理を終了し、ステップS4において否定判定がされた場合にはステップS5に移行する。なお、ステップS4において、放電電流比率マップから求めた放電電流比率αと現時点で設定されている放電電流比率αとの差が所定範囲内であるか否かを判定することに代えて、両者が一致するか否かを判定してもよい。
【0040】
ステップS5において、電流制御部103は、現時点で設定されている放電電流比率αが、ステップS4で求められた放電電流比率αと一致するように、DC/DCコンバータ等の電圧変換部32の出力電流を調整する。以上で処理を終了する。
【0041】
図9は、制御装置100による充電制御について説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、電源装置1が充電モードに設定されると開始されてステップS11に移行する。
【0042】
ステップS11において、電池状態解析部101は、電流センサ4から送信されるメイン電源部2の入力電流の測定値、電流センサ5から送信されるサブ電源部3の入力電流の測定値、電流センサ6から送信される負荷Lから電源装置1への充電電流I’の測定値、及び電圧センサ7から送信されるメイン二次電池21の端子間電圧の測定値を取得する。
【0043】
次に、ステップS12において、電池状態解析部101は、ステップS11で取得した電流や電圧の測定値に基づいて、メイン二次電池21の内部抵抗r、電源電圧V、電圧変換部32の変換効率η’を推定する。
【0044】
次に、ステップS13において、マップ生成部102は、ステップS12における電池状態解析部101によるメイン二次電池21の内部抵抗r、電源電圧V、電圧変換部32の変換効率η’の推定結果に応じて、充電電流比率マップを更新する。
【0045】
次に、ステップS14において、電流制御部103は、現時点で設定されている充電電流比率α’が適切であるか否かを判定する。具体的には、電流制御部103は、電流センサ6により測定された充電電流I’に対応する電源装置1の電源損失の合計値P’の最小値、及びこの電源装置1の電源損失の合計値P’の最小値に対応する充電電流比率α’を、ステップS13で更新された充電電流比率マップから求める。そして、電流制御部103は、充電電流比率マップから求めた充電電流比率α’と現時点で設定されている充電電流比率α’とを比較し、両者の差が所定範囲内であるか否かを判定する。ステップS14において肯定判定がされた場合には処理を終了し、ステップS14において否定判定がされた場合にはステップS15に移行する。なお、ステップS14において、充電電流比率マップから求めた充電電流比率α’と現時点で設定されている充電電流比率α’との差が所定範囲内であるか否かを判定することに代えて、両者が一致するか否かを判定してもよい。
【0046】
ステップS15において、電流制御部103は、現時点で設定されている充電電流比率α’が、ステップS14で求められた充電電流比率α’と一致するように、DC/DCコンバータ等の電圧変換部32の入力電流を調整する。以上で処理を終了する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の制御装置100は、電源装置1から負荷Lへの放電電流Iと、メイン電源部2の出力電流とサブ電源部3の出力電流との比率である放電電流比率αと、電源装置1の放電時の電源損失の合計値Pとの関係を示す放電電流比率マップを有する。この制御装置100は、電源装置1から負荷Lへの放電電流Iの測定値を取得し、取得した放電電流Iの測定値と電源装置1の放電時の電源損失の合計値Pの最小値とに対応する放電電流比率αを放電電流比率マップから求め、求めた放電電流比率αとなるように、電圧変換部32から負荷Lへ出力される出力電流を調整する。これによって、メイン電源部2とサブ電源部3とを備える電源装置1の放電時の電源損失を最小限に抑えることができる。また、当該電源装置1の電源損失を抑えて放電時の効率を向上できることから、電源装置1の発熱量の増加を抑えることができ、以て、電源装置1の温度上昇を抑えるためのより強力な冷却機構を不要にできる。
【0048】
また、本実施形態の制御装置100は、電流センサ4,5,6から取得される電流の測定値や電圧センサ7から取得されるメイン二次電池21の端子間電圧の測定値等から、メイン電源部2及びサブ電源部3の電池状態(メイン二次電池21の内部抵抗rや電源電圧Vや電圧変換部32の変換効率η等)を推定する。そして、制御装置100は、推定したメイン電源部2及びサブ電源部3の電池状態に応じて、放電電流比率マップを更新する。これによって、メイン二次電池21やサブ二次電池31のSOC(State Of Charge)や電池温度や電流値等の条件の組み合わせ毎に放電電流比率αの最適条件を求めることができ、常に低損失の放電制御を実現することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の制御装置100は、負荷(発電部)Lから電源装置1への充電電流I’と、メイン電源部2の入力電流とサブ電源部3の入力電流との比率である充電電流比率α’と、電源装置1の充電時の電源損失の合計値P’との関係を示す充電電流比率マップを有する。この制御装置100は、負荷(発電部)Lから電源装置1への充電電流I’の測定値を取得し、取得した充電電流I’の測定値と電源装置1の充電時の電源損失の合計値P’の最小値とに対応する充電電流比率α’を充電電流比率マップから求め、求めた充電電流比率α’となるように、負荷(発電部)Lから電圧変換部32へ入力される入力電流を調整する。これによって、メイン電源部2とサブ電源部3とを備える電源装置1の充電時の電源損失を最小限に抑えることができる。また、当該電源装置1の電源損失を抑えて充電時の効率を向上できることから、電源装置1の発熱量の増加を抑えることができ、以て、電源装置1の温度上昇を抑えるためのより強力な冷却機構を不要にできる。
【0050】
また、本実施形態の制御装置100は、電流センサ4,5,6から取得される電流の測定値や電圧センサ7から取得されるメイン二次電池21の電圧の測定値等から、メイン電源部2及びサブ電源部3の電池状態(メイン二次電池21の内部抵抗rや電源電圧Vや電圧変換部32の変換効率η等)を推定する。そして、制御装置100は、推定したメイン電源部2及びサブ電源部3の電池状態に応じて、充電電流比率マップを更新する。これによって、メイン二次電池21やサブ二次電池31のSOCや電池温度や電流値等の条件の組み合わせ毎に充電電流比率α’の最適条件を求めることができ、常に低損失の充電制御を実現することが可能となる。
【0051】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態に変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせる等してもよい。
【0052】
例えば、上記実施形態では、放電電流比率αの設定を、DC/DCコンバータ等の電圧変換部32によるサブ電源部3の出力電流の調整により行ったが、他の電流調整機構によるサブ電源部3の出力電流の調整により行ってもよい。また、上記実施形態では、充電電流比率α’の設定を、DC/DCコンバータ等の電圧変換部32によるサブ電源部3の入力電流の調整により行ったが、他の電流調整機構によるサブ電源部3の入力電流の調整により行ってもよい。
【0053】
また、電源装置1の電源損失の合計値P,P’の算出方法は、上記実施形態の方法には限定されず、電源装置1の回路構成に応じて適宜選択すればよい。また、上記実施形態では、電池状態解析処理において、メイン二次電池21の電池状態(内部抵抗rや電源電圧V)、及び電圧変換部32の変換効率ηを推定したが、サブ二次電池31の電池状態(内部抵抗や電源電圧等)を推定してもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態では、メイン電源部2とサブ電源部3とを備える電源装置1を例に挙げて本発明を説明したが、3個以上の電源部を備える電源装置にも本発明を適用できる。この場合、放電電流と、3個以上の電源部の放電電流比率と、電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を予め有しておき、取得した放電電流の測定値に対応する電源装置の電源損失が最小となる3個以上の電源部の放電電流比率を関係情報から求め、3個以上の電源部の放電電流比率を、関係情報から求めた放電電流比率となるように調整すればよい。また、充電電流と、3個以上の電源部の充電電流比率と、電源装置の電源損失との関係を示す関係情報を予め有しておき、取得した充電電流の測定値に対応する電源装置の電源損失が最小となる3個以上の電源部の充電電流比率を関係情報から求め、3個以上の電源部の充電電流比率を、関係情報から求めた充電電流比率となるように調整すればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 :電源装置
2 :メイン電源部(電源部)
21 :メイン二次電池(二次電池)
3 :サブ電源部(電源部)
31 :サブ二次電池(二次電池)
32 :電圧変換部
100 :制御装置(電源制御装置、コンピュータ)
:放電電流
:電源損失の合計値(電源装置の電源損失)
:充電電流
:電源損失の合計値(電源装置の電源損失)
L :負荷(発電部)
α :放電電流比率
α’ :充電電流比率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9