(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ベアリングストッパプレート
(51)【国際特許分類】
F16C 35/077 20060101AFI20240718BHJP
F16C 19/14 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F16C35/077
F16C19/14
(21)【出願番号】P 2021148209
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】米本 真也
(72)【発明者】
【氏名】菊池 晃太郎
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0245591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/077
F16C 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを回転可能に支持するベアリングをケースとの間で軸線方向に挟持して、周方向に沿って設けられた少なくとも三つからなる複数の締結部において固定するベアリングストッパプレートであって、
前記複数の締結部のうち、周方向に隣り合う二つの前記締結部間の外縁は、前記ベアリングの外輪よりも軸径方向の外側に位置しており、
前記複数の締結部のうち、周方向に隣り合う二つの前記締結部間の内縁は、前記ベアリングの内輪よりも軸径方向の外側に位置しているとともに、直線的に形成された直線状部とされており、
前記複数の締結部のうち、一つの前記締結部に近接する内縁は、前記ベアリングの保持器よりも軸径方向の外側に位置しており、
前記複数の締結部のうち、周方向に隣り合う二つの前記直線状部間は、曲線的に形成された曲線状部とされており、
前記ベアリングに挿入される前記シャフトの組付時におけるガイドとなる内接円を想定した場合に、前記直線状部が前記内接円に対して外接するように形成されていること、を特徴とするベアリングストッパプレート。
【請求項2】
周方向に隣り合う二つの前記締結部間において、当該二つの前記締結部間の中央に向けて前記軸径方向の幅が大きくなるように形成されていること、を特徴とする
請求項1に記載のベアリングストッパープレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリングストッパプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベアリングストッパプレートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、無段変速機のプーリが配置されたシャフトを支持する軸受を保持する構造において、軸受の外輪の変形を抑制する構造が開示されている。
【0004】
上記特許文献1に開示された構造では、シャフトを支持する軸受の外輪が、トランスアクスルリアカバー、及びベアリングリテーナ(ベアリングストッパプレート)によって、軸線方向に挟持されている。ベアリングリテーナがトランスアクスルリアカバーに対してボルトにより固定されることによって、軸受が保持されている。
【0005】
また、上記特許文献1の構造では、ベアリングリテーナにおけるボルト固定位置、及び隣り合う二つのボルト間の位置(中央位置)によって、ベアリングリテーナの厚みを変更し、軸受を保持する力を周方向において均等化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1における構造では、ベアリングリテーナの厚みを変更することにより生産性が悪化し、コストが掛かる(増大する)という不都合がある。このため、生産性を向上させるとともにコストの増大を抑制し、ベアリングに対する面圧の均一化を図ることが望まれている。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消すべくなされたものであって、生産性を向上させるとともにコストの増大を抑制し、ベアリングに対する面圧の均一化を図ることが可能なベアリングストッパプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、次のように構成されている。
【0010】
(1)本発明によるベアリングストッパプレートは、シャフトを回転可能に支持するベアリングをケースとの間で軸線方向に挟持して、周方向に沿って設けられた少なくとも三つからなる複数の締結部において固定するベアリングストッパプレートであって、前記複数の締結部のうち、周方向に隣り合う二つの前記締結部間の外縁は、前記ベアリングの外輪よりも軸径方向の外側に位置しており、前記複数の締結部のうち、周方向に隣り合う二つの前記締結部間の内縁は、前記ベアリングの内輪よりも軸径方向の外側に位置しているとともに、直線的に形成された直線状部とされており、前記複数の締結部のうち、一つの前記締結部に近接する内縁は、前記ベアリングの保持器よりも軸径方向の外側に位置しており、前記複数の締結部のうち、周方向に隣り合う二つの前記直線状部間は、曲線的に形成された曲線状部とされていること、を特徴とする。
【0011】
本発明のベアリングストッパプレートは、上記構成とすることにより、周方向に隣り合う二つの締結部間におけるベアリングに対する接触面積を拡大させ、これにより、締結部間の剛性を増加させたものとされている。そのため、本発明によれば、ベアリングストッパプレートの浮きを抑制することができる。さらに、本発明のベアリングストッパプレートは、複数の締結部のうち一つの締結部に近接する内縁における曲線状部が軸径方向の外側へ拡大することによって、締結部付近の接触面積を縮小させ、締結部付近の剛性を抑制したものとされている。そのため、本発明のベアリングストッパプレートは、締結部付近におけるベアリングに対する局部的な応力集中を抑制することができる。これらの結果、本発明のベアリングストッパプレートは、ベアリングに対する面圧を均一化することができる。言い換えると、本発明によれば、ベアリングストッパプレートにおいて、剛性を弱くしたい領域と強くしたい領域とを効果的に配置することができる。
【0012】
また、本発明のベアリングストッパプレートは、ベアリングストッパプレートの内縁(内径形状)が直線状部及び曲線状部を接続した形状となっており鋭角形状ではない。そのため、上述した構成によれば、ベアリングストッパプレートの製造時における型寿命を向上することができる。その結果、生産性を向上することができるとともに、コストの増大を抑制することができる。
【0013】
また、上記構成によれば、複数の締結部のうち一つの締結部に近接する内縁においては、ベアリングの潤滑通路を塞がない構造となるため、潤滑流量を確保することができる。
【0014】
(2)本発明によるベアリングストッパプレートにおいて、好ましくは、前記ベアリングに挿入される前記シャフトの組付時におけるガイドとなる内接円を想定した場合に、前記直線状部が前記内接円に対して外接するように形成されていること、を特徴とする。このように構成すれば、シャフトの組付時におけるベアリングストッパプレートの軸中心部に対するばらつきを抑制することができる。その結果、ベアリングに対する面圧を均一化することができるとともに、シャフトの組付性を向上することができる。
【0015】
(3)本発明によるベアリングストッパプレートにおいて、好ましくは、前記複数の締結部は、周方向に等角度間隔で設けられていること、を特徴とする。このように構成すれば、複数の締結部における締結力を周方向に沿って等角度間隔に均一化されるため、ベアリングストッパプレートにおけるベアリングに対する面圧を周方向に沿って均一化することができる。
【0016】
(4)本発明によるベアリングストッパプレートにおいて、好ましくは、前記複数の締結部のうち一つの前記締結部、及び軸中心部を通る直線に対して線対称形状に形成されていること、を特徴とする。このように構成すれば、ベアリングストッパプレートにおける締結部及び軸中心部を通る直線に対して、一方側及び他方側においてベアリングに対する面圧を略等しくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る態様によれば、生産性を向上させるとともにコストの増大を抑制し、ベアリングに対する面圧の均一化を図ることが可能なベアリングストッパプレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るベアリングストッパプレートを備える変速ユニットの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るベアリングストッパプレートを備える変速ユニットの構成を示す要部拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るベアリングストッパプレート、及びセカンダリ軸を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るベアリングストッパプレート、及びベアリングを軸線方向から見た図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るベアリングストッパプレートを軸線方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るベアリングストッパプレートを備える変速ユニットについて説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。
【0020】
図1に示すように、変速ユニット1は、車両に搭載されて、走行用の駆動源としてのエンジン2(E/G)2が発生する動力を変速するユニットである。車両は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)ベースのパートタイム4WD(four-wheel-drive:4輪駆動)車である。
【0021】
エンジン2は、たとえば、3気筒4ストロークエンジンであり、クランクシャフトが車体の前後方向に対して縦向きになる縦置きで搭載される。エンジン2の気筒数は、3気筒に限らず、4気筒以上であってもよいし、2気筒以下であってもよい。また、エンジン2のストローク数は、4ストロークに限らず、2ストロークであってもよい。
【0022】
変速ユニット1は、外殻をなすユニットケース3内に、トルクコンバータ4、CVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)5、及びトランスファ6を備えている。
【0023】
<ユニットケース>
ユニットケース3は、トルクコンバータ4、及びCVT5を収容するトランスミッションケースと、トランスファ6を収容するトランスファケースとを含む。トランスミッションケースは、第一トランスミッションケース11、第二トランスミッションケース12、及び第三トランスミッションケース13の3分割で構成されている。トランスファケースは、第一トランスファケース14、及び第二トランスファケース15の2分割で構成されている。第一トランスミッションケース11、第二トランスミッションケース12、第三トランスミッションケース13、第一トランスファケース14、及び第二トランスファケース15は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される。
【0024】
第一トランスミッションケース11、第二トランスミッションケース12、及び第三トランスミッションケース13は、前側(エンジン2側)からこの順に並べられている。第一トランスミッションケース11と第二トランスミッションケース12とがボルト16で締結され、第二トランスミッションケース12と第三トランスミッションケース13とがボルト17で締結されることにより、第一トランスミッションケース11、第二トランスミッションケース12、及び第三トランスミッションケース13は、一体化されている。
【0025】
第一トランスファケース14、及び第二トランスファケース15は、前側からこの順に並べられている。第一トランスファケース14と第二トランスファケース15とは、ボルト18で締結されることにより一体化されている。そして、第一トランスファケース14がボルト19で第三トランスミッションケース13に締結されることにより、トランスミッションケース、及びトランスファケースは、一体化されている。
【0026】
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ4は、第一トランスミッションケース11内に収容されている。トルクコンバータ4は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンハブ23、タービンランナ24、ロックアップ機構25、及びステータ26を備えている。
【0027】
フロントカバー21は、車両(車体)の前後方向に延びる回転軸線を中心に略円板状に延び、その外周端部がエンジン2側と反対側(後述する無段変速機構42側)である後側に屈曲した形状をなしている。フロントカバー21の中心部は、前側に膨出している。この膨出した部分には、エンジン2のクランクシャフトが相対回転不能に結合される。
【0028】
ポンプインペラ22は、フロントカバー21の後側に配置されている。ポンプインペラ22の外周端部は、フロントカバー21の外周端部に接続され、回転軸線を中心にフロントカバー21と一体回転可能に設けられている。ポンプインペラ22の内面には、複数のブレード27が放射状に並べて配置されている。
【0029】
タービンハブ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されている。
【0030】
タービンランナ24は、タービンハブ23に固定されている。タービンランナ24のポンプインペラ22との対向面には、複数のブレード28が放射状に並べて配置されている。
【0031】
ロックアップ機構25は、ロックアップピストン31、及びダンパ機構32を備えている。
【0032】
ロックアップピストン31は、略円環板状をなし、その内周端部がタービンハブ23に外嵌されて、フロントカバー21とタービンランナ24との間に位置している。ロックアップピストン31に対してタービンランナ24側の係合側油室33の油圧がフロントカバー21側の解放側油室34の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がフロントカバー21側に移動する。そして、ロックアップピストン31がフロントカバー21に押し付けられると、ポンプインペラ22とタービンランナ24とが直結(ロックアップオン)される。逆に、解放側油室34の油圧が係合側油室33の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がタービンランナ24側に移動する。ロックアップピストン31がフロントカバー21から離間した状態では、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結が解除(ロックアップオフ)される。
【0033】
ダンパ機構32は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結時にエンジン2からの振動を減衰するための機構である。
【0034】
ステータ26は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との間に配置されている。
【0035】
ロックアップオフの状態において、エンジントルクによりポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ24に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ24のブレード28で受けられて、タービンランナ24が回転する。このとき、トルクコンバータ4の増幅作用が生じ、タービンランナ24には、エンジントルクよりも大きなトルクが発生する。
【0036】
<CVT>
CVT5は、第二トランスミッションケース12、及び第三トランスミッションケース13内に収容されている。CVT5は、入力軸41、無段変速機構42、出力軸43、及びリバース伝達機構44を備えている。変速ユニット1は、エンジン2の後側に、CVT5の入力軸41が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで配置されている。
【0037】
入力軸41は、中空軸に形成されて、トルクコンバータ4の回転軸線上を延びている。入力軸41の前端部は、トルクコンバータ4内に挿入されて、タービンハブ23とスプライン嵌合している。
【0038】
なお、以下の説明において、入力軸41の軸線が延びる方向を「軸線方向」という。また、軸線方向と直交する方向、つまり入力軸41の径方向を「軸径方向」という。
【0039】
入力軸41の後端部は、第二トランスミッションケース12内に配置された機械式のオイルポンプ45に回転可能に支持されている。具体的には、オイルポンプ45は、ポンプケース46と、ポンプケース46に後側から接合されるポンプカバー47と、ポンプケース46内のスペースに配置されるポンプギヤ48と、ポンプギヤ48に相対回転不能に結合されるポンプ軸49とを備えている。ポンプカバー47は、第二トランスミッションケース12に固定され、ポンプケース46内のスペースを後側から閉鎖している。ポンプケース46の前端部には、後側に略円柱状に凹んだ凹部51が形成されている。入力軸41の後端部は、凹部51内に挿入されて、入力軸41の周面と凹部51の内周面との間に介在されるベアリング52を介してポンプケース46に回転可能に支持されている。
【0040】
ポンプ軸49は、ポンプケース46、及びポンプカバー47を貫通して設けられている。ポンプ軸49は、ポンプケース46から前側に延び、入力軸41にその内周面との間に隙間を空けて挿通されている。ポンプ軸49の前端部は、トルクコンバータ4のフロントカバー21に達し、そのフロントカバー21の中心部に相対回転不能に接続されている。これにより、エンジン2の動力によりフロントカバー21が回転すると、フロントカバー21と一体にポンプ軸49、及びポンプギヤ48が回転し、オイルポンプ45から油圧が発生する。
【0041】
無段変速機構42は、プライマリ軸54、セカンダリ軸55、プライマリプーリ56、セカンダリプーリ57、及びベルト58を備えている。
【0042】
プライマリ軸54は、第一トランスミッションケース11と第二トランスミッションケース12との間において、入力軸41に対して車両の後側から見て右下方に離間した位置で、入力軸41と平行に延び、その軸心まわりに回転可能に設けられている。
【0043】
セカンダリ軸55は、第一トランスミッションケース11と第二トランスミッションケース12との間において、入力軸41の軸心に対して車両の後側から見て左上方に離間した位置で入力軸41と平行に延び、その軸心まわりに回転可能に設けられている。
【0044】
プライマリプーリ56は、プライマリ軸54に固定されたプライマリ固定シーブ61と、プライマリ固定シーブ61にベルト58を挟んで対向配置され、プライマリ軸54に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたプライマリ可動シーブ62とを備えている。プライマリ可動シーブ62は、プライマリ固定シーブ61に対して前側に配置されている。プライマリ可動シーブ62に対してプライマリ固定シーブ61側と反対側、つまり前側には、シリンダ63が設けられ、プライマリ可動シーブ62とシリンダ63との間には、油圧室(ピストン室)64が形成されている。
【0045】
ここで、本実施形態では、
図2に示すように、セカンダリ軸55に固定されたセカンダリ固定シーブ65の前側(エンジン2側)には、前側から後側に沿って、ボールベアリング510と、ベアリングストッパプレート520とが配されている。また、ボールベアリング510は、内輪511と、外輪512と、内輪511及び外輪512の間に配される保持器513と、保持器513に保持されるボール514とにより構成されている。
【0046】
第二トランスミッションケース12には、略円柱状に凹んだ凹部12aが形成されている。セカンダリ軸55の前端部(周面)には、ボールベアリング510が設けられる段差部55aが形成されている。セカンダリ軸55は、段差部55aの外周面と凹部12aの内周面との間に介在されるボールベアリング510を介して、第二トランスミッションケース12に回転可能に支持されている。ボールベアリング510の内輪511は、セカンダリ軸55の段差部55aの外周面と接している。ボールベアリング510の外輪512は、凹部12aの内周面と接している。
【0047】
セカンダリ軸55の段差部55aの後側には、ベアリングストッパプレート520が設けられるプレート取付部55bが形成されている。ベアリングストッパプレート520は、ボルト530により第二トランスミッションケース12に締結固定されている。これにより、ベアリングストッパプレート520が、第二トランスミッションケース12との間で、セカンダリ軸55(シャフト)を回転可能に支持するボールベアリング510を軸線方向に挟持している。
【0048】
図3~
図5に示すように、ベアリングストッパプレート520は、軸線方向から見て、略三角形状に形成されている。ベアリングストッパプレート520は、略三角形状の各頂点に対応する位置に、周方向に沿って三つの締結部521が設けられている。三つの締結部521は、周方向に等角度間隔(本実施形態では、120°間隔)で設けられている。ベアリングストッパプレート520は、三つの締結部521においてボルト530により第二トランスミッションケース12に対して固定されている。
【0049】
図4及び
図5に示すように、ベアリングストッパプレート520において、三つの締結部521のうち周方向に隣り合う二つの締結部521間の外縁522は、ボールベアリング510の外輪512よりも軸径方向の外側に位置している。
【0050】
三つの締結部521のうち、二つの締結部521間の内縁523は、直線的に形成された直線状部524とされている。三つの締結部521のうち、周方向に隣り合う二つの締結部521間の内縁523(直線状部524)は、ボールベアリング510の内輪511よりも軸径方向の外側で、かつ外輪512よりも軸径方向の内側に位置している。すなわち、二つの締結部521間の内縁523(直線状部524)は、略ボールベアリング510の保持器513と重なる位置に配されている。これにより、ベアリングストッパプレート520におけるボールベアリング510に対する接触面積が拡大する。
【0051】
三つの締結部521のうち、周方向に隣り合う二つの直線状部524間は、曲線的に形成された曲線状部525とされている。三つの締結部521のうち、一つの締結部521における軸径方向の内側に近接する内縁523(曲線状部525)は、ボールベアリング510の保持器513よりも軸径方向の外側に位置している。言い換えると、一つの締結部521における軸径方向の内側に近接する内縁523(曲線状部525)は、ボールベアリング510の外輪512と重なる位置に配されている。これにより、ベアリングストッパプレート520におけるボールベアリング510に対する接触面積が縮小する。
【0052】
図5に示すように、ベアリングストッパプレート520の外縁522は、曲線状部522aと、円弧部522bと、直線状部522cとを有している。曲線状部522aは、締結部521における軸径方向の外側に位置している。円弧部522bは、内縁523の直線状部524における軸径方向の外側に位置している。直線状部522cは、曲線状部522aと円弧部522bとを接続するように配されている。円弧部522b及び直線状部522cは、全体的に見て、軸径方向の外側に向かって膨出するような形状に形成されている。
【0053】
ボールベアリング510に挿入されるセカンダリ軸55(シャフト)の組付時におけるガイドとなる内接円ICを想定した場合に、直線状部524が内接円に対して外接するように形成されている。
【0054】
三つの締結部521のうち一つの締結部521、及び軸中心部Oを通る直線に対して線対称形状に形成されている。三つの締結部521のうち一つの締結部521、及び軸中心部Oを通る直線上における軸径方向の幅W1(曲線状部525と曲線状部522aとの間の長さ)は、周方向に隣り合う二つの締結部521間、及び軸中心部Oを通る直線における軸径方向の幅W2(直線状部524と円弧部522bとの間の長さ)よりも大きい。
【0055】
セカンダリプーリ57は、セカンダリ軸55に固定されたセカンダリ固定シーブ65と、セカンダリ固定シーブ65にベルト58を挟んで対向配置され、セカンダリ軸55に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたセカンダリ可動シーブ66とを備えている。セカンダリ可動シーブ66は、セカンダリ固定シーブ65に対して後側に配置されている。セカンダリ可動シーブ66に対してセカンダリ固定シーブ65と反対側、つまり後側には、ピストン67が設けられ、セカンダリ可動シーブ66とピストン67との間には、油圧室68が形成されている。
【0056】
ベルト58は、無端状に形成され、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間に挟まれた状態でプライマリプーリ56に巻き掛けられるとともに、セカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間に挟まれた状態でセカンダリプーリ57に巻き掛けられている。
【0057】
無段変速機構42では、プライマリプーリ56、及びセカンダリプーリ57の各油圧室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ56、及びセカンダリプーリ57の各溝幅が変更されることにより、ベルト変速比(プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比)が一定の変速比範囲内で連続的に無段階で変更される。
【0058】
具体的には、ベルト変速比が小さくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ56のプライマリ可動シーブ62がプライマリ固定シーブ61側に移動し、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ56に対するベルト58の巻き掛け径が大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、ベルト変速比が小さくなる。
【0059】
ベルト変速比が大きくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト58に対するセカンダリプーリ57の推力がベルト58に対するプライマリプーリ56の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、ベルト変速比が大きくなる。
【0060】
セカンダリプーリ57の油圧室68には、バイアススプリング69が設けられている。バイアススプリング69は、一端がセカンダリ可動シーブ66に弾性的に当接し、他端がピストン67に弾性的に当接している。バイアススプリング69の弾性力により、セカンダリ可動シーブ66、及びピストン67が互いに離間する方向に付勢されている。セカンダリ可動シーブ66には、油圧室68内の油圧、及びバイアススプリング69による付勢力が付与され、ベルト58には、それに応じた挟圧が付与される。
【0061】
また、入力軸41には、軸線方向の中央部に、入力軸ギヤ81が一体に形成されている。これに対応して、プライマリ軸54には、入力軸ギヤ81と噛合するプライマリ入力ギヤ82が相対回転可能に支持されている。これらの互いに噛合する入力軸ギヤ81、及びプライマリ入力ギヤ82とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転を許容/禁止する前進クラッチ83が設けられている。前進クラッチ83の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
【0062】
前進クラッチ83は、クラッチドラム84、クラッチハブ85、及びクラッチピストン86を備えている。クラッチドラム84は、内周端がプライマリ軸54に固定され、プライマリ軸54から軸径方向に延び、外周端部がプライマリ入力ギヤ82側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ85は、プライマリ入力ギヤ82と一体に形成され、プライマリ入力ギヤ82から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム84の外周端部に対して軸径方向の内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン86は、クラッチドラム84とクラッチハブ85との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン86は、クラッチドラム84に液密的に当接しており、クラッチドラム84とクラッチピストン86との間には、クラッチピストン86に作用する油圧が供給される油圧室87が形成されている。また、クラッチピストン86は、リターンスプリング88により、後側に弾性的に付勢されている。
【0063】
クラッチドラム84の外周端部とクラッチハブ85とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム84に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ85に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室87に供給される油圧により、クラッチピストン86が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、前進クラッチ83が係合する。前進クラッチ83の係合により、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転が禁止され、プライマリ入力ギヤ82が回転すると、プライマリ軸54がプライマリ入力ギヤ82と一体に回転する。前進クラッチ83の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング88の付勢力により、クラッチピストン86が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、前進クラッチ83が解放される。前進クラッチ83の解放により、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転が許容され、プライマリ入力ギヤ82が回転しても、その回転がプライマリ軸54に伝達されない。
【0064】
セカンダリ軸55には、セカンダリ入力ギヤ91が相対回転可能に支持されている。セカンダリ入力ギヤ91は、軸線方向において、入力軸ギヤ81とオイルポンプ45との間に配置されている。また、セカンダリ入力ギヤ91とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転を許容/禁止する後進クラッチ92が設けられている。後進クラッチ92の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
【0065】
後進クラッチ92は、クラッチドラム93、クラッチハブ94、及びクラッチピストン95を備えている。クラッチドラム93は、内周端がセカンダリ軸55に固定され、セカンダリ軸55から軸径方向に延び、外周端部がセカンダリ入力ギヤ91側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ94は、セカンダリ入力ギヤ91と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ91から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム93の外周端部に対して軸径方向内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン95は、クラッチドラム93とクラッチハブ94との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン95は、クラッチドラム93に液密的に当接しており、クラッチドラム93とクラッチピストン95との間には、クラッチピストン95に作用する油圧が供給される油圧室96が形成されている。また、クラッチピストン95は、リターンスプリング97により、後側に弾性的に付勢されている。
【0066】
クラッチドラム93の外周端部とクラッチハブ94とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム93に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ94に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室96に供給される油圧により、クラッチピストン95が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、後進クラッチ92が係合する。後進クラッチ92の係合により、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転が禁止され、セカンダリ入力ギヤ91が回転すると、セカンダリ軸55がセカンダリ入力ギヤ91と一体に回転する。後進クラッチ92の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング97の付勢力により、クラッチピストン95が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、後進クラッチ92が解放される。後進クラッチ92の解放により、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転が許容され、セカンダリ入力ギヤ91が回転しても、その回転がセカンダリ軸55に伝達されない。
【0067】
出力軸43は、入力軸41に対して後側に間隔を空けて、入力軸41と同一軸線上に配置されている。言い換えれば、入力軸41と出力軸43とは、軸線方向に間隔を空けてそれぞれ前後に、車両の前後方向に沿った縦向きに延びる共通の軸線を有するように配置されている。出力軸43には、出力軸ギヤ101が一体に形成されている。これに対応して、セカンダリ軸55には、出力軸ギヤ101と噛合するセカンダリ出力ギヤ102が相対回転不能に支持されている。
【0068】
リバース伝達機構44は、入力軸41の動力(回転)をセカンダリ入力ギヤ91に伝達する機構である。リバース伝達機構44には、リバースアイドラ軸103、第一リバースギヤ104、及び第二リバースギヤ105が含まれる。リバースアイドラ軸103は、軸線方向に延び、第一トランスミッションケース11と第二トランスミッションケース12とに跨がって、第一トランスミッションケース11、及び第二トランスミッションケース12に回転可能に支持されている。第一リバースギヤ104は、リバースアイドラ軸103と一体に形成されて、入力軸ギヤ81と噛合している。第二リバースギヤ105は、第一リバースギヤ104の後側において、リバースアイドラ軸103と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ91と噛合している。
【0069】
<トランスファ>
トランスファ6は、出力軸43の動力(回転)を車両の前輪に伝達する機構である。トランスファ6には、伝達軸111、第一スプロケット112、第二スプロケット113、チェーン114、及び4WDクラッチ115が含まれる。
【0070】
伝達軸111は、出力軸43に対して軸径方向に間隔を空けた位置で、出力軸43と平行をなして、第一トランスファケース14と第二トランスファケース15とに跨がって延びている。伝達軸111の後端部には、ボールベアリング116の内輪が圧入により固定されている。また、伝達軸111には、ボールベアリング116から前側に間隔を空けた位置に、ボールベアリング117の内輪が圧入により固定されている。そして、ボールベアリング116の外輪が第二トランスファケース15に固定的に保持され、ボールベアリング117の外輪が第一トランスファケース14に固定的に保持されることにより、伝達軸111は、第一トランスファケース14、及び第二トランスファケース15に回転可能に支持されている。
【0071】
第一スプロケット112は、第一トランスファケース14、及び第二トランスファケース15に回転可能に支持されて、出力軸43に相対回転可能に外嵌されている。具体的には、第一スプロケット112は、出力軸43の周囲を取り囲む略円環板状のスプロケット部121と、スプロケット部121の内周部から前側に延出する前側延出部122と、スプロケット部121の内周部から後側に延出する後側延出部123とを一体に有している。スプロケット部121の外周部には、複数の歯が周方向に等間隔で形成されている。前側延出部122には、ボールベアリング124の内輪が圧入により外嵌されている。また、後側延出部123には、ボールベアリング125の内輪が圧入により外嵌されている。そして、ボールベアリング124の外輪が第一トランスファケース14に固定的に保持され、ボールベアリング125の外輪が第二トランスファケース15に固定的に保持されている。これにより、第一スプロケット112は、出力軸43に相対回転可能に外嵌された状態で、ボールベアリング124,125を介して、第一トランスファケース14、及び第二トランスファケース15に回転可能に支持されている。
【0072】
第二スプロケット113は、ボールベアリング116及び117の間において、伝達軸111と一体に、伝達軸111から軸径方向に張り出す略円環板状に形成されている。第二スプロケット113の外周部には、複数の歯が周方向に等間隔で形成されている。
【0073】
チェーン114は、無端状に形成され、第一スプロケット112のスプロケット部121、及び第二スプロケット113に巻き掛けられている。
【0074】
4WDクラッチ115は、第一スプロケット112の前側に設けられている。4WDクラッチ115は、クラッチドラム131、クラッチハブ132、クラッチピストン133、及びキャンセラ134を備えている。
【0075】
出力軸43には、出力軸ギヤ101と第一スプロケット112との間に、略円筒状の筒状部材135が外嵌されて固定されている。筒状部材135と第一スプロケット112との間には、間隔が空けられている。筒状部材135の軸線方向の中央部であって、セカンダリ軸55の後端部と軸径方向に対向する位置には、軸径方向に張り出す鍔状の接続部136が筒状部材135と一体に形成されている。
【0076】
クラッチドラム131は、出力軸43の軸線を中心に回転対称に形成され、軸線方向に見て、筒状部材135の接続部136の全周を取り囲む略円環形状をなしている。クラッチドラム131の内周端は、接続部136に固定されている。クラッチドラム131は、内周端から軸線方向と交差する方向に延び、セカンダリ軸55を後側に越え、セカンダリ軸55に対して軸線方向に後側から対向する位置で後側に屈曲して、その位置から軸線方向に延びている。言い換えれば、クラッチドラム131は、接続部136から後側に向けて拡径する拡径部137と、拡径部137の後端(外周端)から軸線方向の後側に延びる略円筒状の円筒状部138とを一体に有しており、拡径部137の前端部は、セカンダリ軸55の後端部に対して軸径方向に対向し、円筒状部138は、セカンダリ軸55に対して軸線方向に後側から対向している。また、クラッチドラム131の軸線方向に延びる部分、つまり円筒状部138は、第一スプロケット112の前側延出部122と軸径方向に対向している。円筒状部138の内周面には、複数のクラッチプレート139が軸線方向に間隔を空けて並べて保持されている。
【0077】
第一スプロケット112と筒状部材135との間には、支持部材141が設けられている。支持部材141は、出力軸43を取り囲む略円筒状の外嵌部142と、外嵌部142の前端部から軸径方向に延出する鍔状(円環板状)の鍔状部143とを一体的に有している。外嵌部142は、第一スプロケット112の前側延出部122と出力軸43との間に進入し、第一スプロケット112の前側延出部122は、外嵌部142、及びクラッチドラム131の円筒状部138と軸径方向に対向している。外嵌部142の外周面は、第一スプロケット112の前側延出部122の内周面とスプライン嵌合により相対回転不能に結合されている。外嵌部142の内周面は、出力軸43の周面と密着しておらず、出力軸43の外周面と外嵌部142の内周面との間には、微小な隙間が生じている。これにより、支持部材141は、第一スプロケット112との間で相対的な回転が不能であり、かつ、出力軸43との間で相対的な回転が可能である。筒状部材135と支持部材141との間には、それらの相対回転時のメカニカルロスを低減するため、スラストベアリング144が介在されている。
【0078】
クラッチハブ132は、出力軸43の軸線を中心に回転対称に形成され、軸線方向に見て、支持部材141の鍔状部143の全周を取り囲む略円環形状をなしている。クラッチハブ132の内周端は、鍔状部143に固定されている。クラッチハブ132は、鍔状部143から軸径方向の外側に延び、クラッチドラム131の円筒状部138に対して軸径方向の内側に間隔を空けた位置で後側に屈曲して、その位置から軸線方向に延びている。言い換えれば、クラッチハブ132は、鍔状部143から周囲に延出する略円環板状の円環板状部151と、円環板状部151の外周端から軸線方向の後側に延びる略円筒状の円筒状部152とを一体に有しており、円筒状部152は、クラッチドラム131の円筒状部138に対して軸径方向の内側に配置されて、その円筒状部138とともに二重円筒状をなしている。円筒状部152の外周面には、複数のクラッチディスク153が軸線方向に間隔を空けて並べて保持されている。クラッチプレート139とクラッチディスク153とは、軸線方向に交互に並べられている。
【0079】
クラッチピストン133は、クラッチドラム131とクラッチハブ132との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン133は、筒状部材135から屈曲を繰り返しつつクラッチプレート139に向けて延びている。クラッチピストン133の途中部分には、シール部材154が設けられており、クラッチピストン133の位置にかかわらず、シール部材154がクラッチドラム131に液密的に当接する。これにより、クラッチドラム131とクラッチピストン133との間には、クラッチピストン133に作用する油圧が供給される油圧室155が形成されている。
【0080】
キャンセラ134は、クラッチハブ132とクラッチピストン133との間に設けられている。キャンセラ134は、略円環板状に形成されている。キャンセラ134の内周端は、筒状部材135に固定されている。キャンセラ134の外周端には、シール部材156が設けられており、このシール部材156は、クラッチピストン133の位置にかかわらず、クラッチピストン133に当接する。クラッチピストン133とキャンセラ134との間には、リターンスプリング157が介在されている。このリターンスプリング157の付勢力(弾性力)により、クラッチピストン133とキャンセラ134とは、互いに離間する方向に弾性的に付勢されている。
【0081】
クラッチピストン133は、油圧室155に供給される油圧により、クラッチプレート139側に移動し、クラッチプレート139を押圧する。この押圧により、クラッチプレート139とクラッチディスク153とが圧接し、4WDクラッチ115が係合する。4WDクラッチ115の係合により、クラッチドラム131とクラッチハブ132との相対回転が阻止されて、支持部材141が出力軸43、及び筒状部材135と一体に回転し、支持部材141と一体に第一スプロケット112が回転する。第一スプロケット112の回転(動力)は、チェーン114を介して第二スプロケット113に伝達され、第二スプロケット113を第一スプロケット112と同方向に回転させる。そして、第二スプロケット113と一体に、伝達軸111が回転する。
【0082】
4WDクラッチ115の係合状態から油圧室155の油圧が解放されると、リターンスプリング157の付勢力により、クラッチピストン133がキャンセラ134から離間する方向に移動し、クラッチピストン133によるクラッチプレート139の押圧が解除される。その結果、クラッチプレート139とクラッチディスク153との圧接が解除されて、4WDクラッチ115が解放される。4WDクラッチ115の解放により、クラッチドラム131とクラッチハブ132との相対回転が許容される。そのため、出力軸43、及び筒状部材135が回転しても、その回転は、支持部材141、及び第一スプロケット112に伝達されず、それゆえ、第一スプロケット112からチェーン114、及び第二スプロケット113を介して伝達軸111にも伝達されない。
【0083】
<油供給構造>
第二トランスミッションケース12の底部には、バルブボディ191が設けられている。バルブボディ191には、変速ユニット1の各部へのオイルの供給を制御するための各種のバルブを含む油圧回路が形成されている。また、第二トランスミッションケース12の底部には、ストレーナ192が設けられている。ストレーナ192は、バルブボディ191と横並びで配置される本体部193と、本体部193から延出し、その先端部がバルブボディ191の下側に配置される管部194とを備えている。また、第二トランスミッションケース12には、オイルパン195が下側から複数のボルト196で固定されている。ストレーナ192の管部194の先端部は、オイルパン195の中央部に位置しており、その先端部の下面は、オイルパン195内に貯留されるオイルを吸い込むためのオイル吸込口197として開口している。
【0084】
オイルポンプ45のポンプギヤ48の回転により吸引力が発生し、その吸引力により、オイルパン195に貯留されているオイルがオイル吸込口197から管部194内に吸い込まれる。管部194内に吸い込まれたオイルは、管部194内を本体部193に向けて流れ、本体部193内に設けられた濾過材を通過する。オイルが濾過材を通過することにより、オイル中に含まれる異物が濾過材に捕獲されて、オイル中から異物が除去される。濾過材を通過したオイルは、バルブボディ191に供給される。そして、バルブボディ191から無段変速機構42などのオイルの供給を必要とする各部に作動油または潤滑油としてオイルが供給される。
【0085】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果(1)~(5)を得ることができる。
【0086】
(1)上記実施形態によるベアリングストッパプレート520では、周方向に隣り合う二つの締結部521間の外縁522をボールベアリング510の外輪512よりも軸径方向の外側に位置させ、周方向に隣り合う二つの締結部521間の内縁523(直線状部524)をボールベアリング510の内輪511よりも軸径方向の外側に位置させ、締結部521に近接する内縁523をボールベアリング510の保持器513よりも軸径方向の外側に位置させ、周方向に隣り合う二つの直線状部524間を曲線的に形成された曲線状部525とした。上記実施形態によれば、周方向に隣り合う二つの締結部521間におけるボールベアリング510に対する接触面積が拡大することによって、締結部521間の剛性が増加するため、ベアリングストッパプレート520の浮きを抑制することができる。さらに、三つの締結部521のうち一つの締結部521に近接する内縁523における曲線状部525が軸径方向の外側へ拡大することによって、締結部521付近の接触面積が縮小し、締結部521付近の剛性が低下するため、締結部521付近におけるボールベアリング510に対する局部的な応力集中を抑制することができる。これらの結果、ボールベアリング510に対する面圧を均一化することができる。言い換えると、ベアリングストッパプレート520において、剛性を弱くしたい領域と強くしたい領域とを効果的に配置することができる。
【0087】
また、上記実施形態によれば、ベアリングストッパプレート520の内縁523(内径形状)が直線状部524及び曲線状部525を接続した形状となっており鋭角形状ではないため、ベアリングストッパプレート520の製造時における型寿命を向上することができる。その結果、生産性を向上することができるとともに、コストの増大を抑制することができる。
【0088】
また、上記実施形態によれば、締結部521に近接する内縁523においては、ボールベアリング510の潤滑通路を塞がない構造となるため、潤滑流量を確保することができる。
【0089】
(2)上記実施形態によるベアリングストッパプレート520では、ボールベアリング510に挿入されるセカンダリ軸55の組付時におけるガイドとなる内接円ICを想定した場合に、直線状部524が内接円に対して外接するように形成した。これにより、セカンダリ軸55の組付時におけるベアリングストッパプレート520の軸中心部Oに対するばらつきを抑制することができる。その結果、ボールベアリング510に対する面圧を均一化することができるとともに、セカンダリ軸55の組付性を向上することができる。
【0090】
(3)上記実施形態によるベアリングストッパプレート520では、三つの締結部521を周方向に120°の等角度間隔で設けた。これにより、三つの締結部521における締結力を周方向に沿って等角度間隔に均一化されるため、ベアリングストッパプレート520におけるボールベアリング510に対する面圧を周方向に沿って均一化することができる。
【0091】
(4)上記実施形態によるベアリングストッパプレート520を、三つの締結部521のうち一つの締結部521、及び軸中心部Oを通る直線に対して線対称形状に形成した。これにより、ベアリングストッパプレート520における締結部521及び軸中心部Oを通る直線に対して、一方側及び他方側においてボールベアリング510に対する面圧を略等しくすることができる。
【0092】
(変形例)
上記実施形態は、以下のように変更した構成とすることもできる。
【0093】
上記実施形態では、ベアリングストッパプレートが三つの締結部を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベアリングストッパプレートが四つ以上の締結部を有していてもよい。
【0094】
上記実施形態では、周方向に隣り合う二つの締結部間の内縁が直線状部とされている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、内縁が直線的な形状であれば、内縁の形状が必ずしも直線である必要はなく、例えば、直線的な曲線や、直線的な波線であってもよい。
【0095】
上記実施形態では、ベアリングストッパプレートの三つの締結部を等角度間隔で設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、三つの締結部の角度間隔を適宜設定することが可能である。
【0096】
上記実施形態では、ベアリングストッパプレートを線対称形状に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベアリングストッパプレートの形状を適宜設定することが可能である。
【0097】
上記実施形態は、いずれも本発明の適応の例示であり、特許請求の範囲に記載の範囲内におけるその他いかなる実施形態も、発明の技術的範囲に含まれることは当然のことである。
【符号の説明】
【0098】
12 :第二トランスミッションケース(ケース)
55 :セカンダリ軸(シャフト)
510 :ボールベアリング
511 :内輪
512 :外輪
513 :保持器
520 :ベアリングストッパプレート
521 :締結部
522 :外縁
523 :内縁
524 :直線状部
525 :曲線状部
IC :内接円
O :軸中心部