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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】低臭気または無臭気吸入乾燥剤ポリマー
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20240718BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20240718BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20240718BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20240718BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240718BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
B01J20/18 B
B01J20/12 A
B01J20/10 D
B01D53/28
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/34
A61K47/32
A61K9/72
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021500063
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019039741
(87)【国際公開番号】W WO2020006363
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】62/692,641
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501014005
【氏名又は名称】シーエスピー テクノロジーズ,インコーポレイティド
【住所又は居所原語表記】960 West Veterans Boulevard, Auburn, Alabama 36832 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストリンガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】アブラムス,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,ゲイリー
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0180785(US,A1)
【文献】特開2016-131831(JP,A)
【文献】特開2007-037614(JP,A)
【文献】特開2016-135366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61K 9/72
B01J 20/18
B01J 20/12
B01J 20/10
B01D 53/28
A61K 47/02
A61K 47/04
A61K 47/34
A61K 47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品を患者に投与するための流路を画定する本体部分と、
前記流路内に位置し、前記本体部分に固定されるか、または前記本体部分と一体化された捕捉ポリマーとを備える吸入器であって、前記捕捉ポリマーは、メタロセン触媒を使用して調製されたポリプロピレンベースポリマー、モレキュラーシーブ乾燥剤と臭気吸着親水性ゼオライト材料とを含む活性剤、およびチャネリング剤を含むモノリシック材料を含み、さらに、前記捕捉ポリマーは実質的に無臭である、吸入器。
【請求項2】
医薬品を患者に投与するための流路を画定する本体部分と、
前記流路内に位置し、前記本体部分に固定されるか、または前記本体部分と一体化された捕捉ポリマーとを備える吸入器であって、前記捕捉ポリマーは、メタロセン触媒を使用して調製されたポリプロピレンベースポリマー、モレキュラーシーブ乾燥剤と臭気吸着親水性ゼオライト材料とを含む活性剤、およびチャネリング剤を含むモノリシック材料を含み、さらに、16グラム量の前記捕捉ポリマーは、60℃で最大72時間加熱した後に4ppm未満の揮発性有機化合物を放出する、吸入器。
【請求項3】
前記捕捉ポリマーが、室温で検出可能な揮発性有機化合物を放出しない、請求項1または2に記載の吸入器。
【請求項4】
16グラム量の前記捕捉ポリマーが、60℃で最大72時間加熱した後に4ppm未満の揮発性有機化合物を放出する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項5】
乾燥粉末吸入器である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項6】
エアロゾル吸入器である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項7】
定量吸入器である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項8】
前記捕捉ポリマーが、前記医薬品を収容する前記本体部分の区画内に配置されるか、またはそれと流体連通している、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記活性剤が、前記捕捉ポリマーの30重量%~80重量%、任意選択で30重量%~75重量%、任意選択で30重量%~70重量%、任意選択で35重量%~70重量%、任意選択で40重量%~65重量%、任意選択で45重量%~55重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項10】
前記モレキュラーシーブ乾燥剤が、前記捕捉ポリマーの15重量%~79重量%、任意選択で15重量%~75重量%、任意選択で15重量%~70重量%、任意選択で15重量%~60重量%、任意に15重量%~50重量%、任意選択で30重量%~70重量%、任意選択で30重量%~60重量%、任意選択で30重量%~50重量%、任意選択で40重量%~70重量%、任意選択で40重量%~60重量%、任意選択で45重量%~70重量%、任意選択で45重量%~60重量%、任意選択で45重量%~55重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項11】
前記臭気吸着親水性ゼオライト材料が、前記捕捉ポリマーの1重量%~15重量%、任意選択で1重量%~12重量%、任意選択で1重量%~10重量%、任意選択で1重量%~8重量%、任意選択で4重量%~12重量%、任意選択で4重量%~8重量%、任意選択で6重量%~12重量%、任意選択で6重量%~10重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項12】
低臭気吸入器を製造する方法であって、医薬品を患者に投与するための流路を画定する本体部分と、前記流路内に位置し、前記本体部分に固定されるか、または前記本体部分と一体化された捕捉ポリマーとを提供するステップを含み、
前記捕捉ポリマーは、メタロセン触媒を使用して調製されたポリプロピレンベースポリマー、モレキュラーシーブ乾燥剤と臭気吸着モレキュラーシーブ材料とを含む活性剤、およびチャネリング剤を含むモノリシック材料を含み、
さらに、前記捕捉ポリマーは無臭であるか、または実質的に無臭である、方法。
【請求項13】
医薬品を、それを必要とする患者に投与する方法に使用される吸入器であって、前記方法は、吸入器内の前記医薬品を送達するステップを含み、前記吸入器は、
医薬品を患者に投与するための流路を画定する本体部分と、
前記流路内に位置し、前記本体部分に固定されるか、または前記本体部分と一体化された捕捉ポリマーとを備え、前記捕捉ポリマーは、メタロセン触媒を使用して調製されたポリプロピレンベースポリマー、モレキュラーシーブ乾燥剤と臭気吸着モレキュラーシーブ材料とを含む活性剤、およびチャネリング剤を含むモノリシック材料を含み、さらに、前記捕捉ポリマーは無臭であるか、または実質的に無臭である、吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本開示は、吸入器に関し、より具体的には、既存の乾燥吸入器と比較して低減された量の揮発性臭気を生成するように構成された乾燥剤を有する吸入器に関する。任意選択で、本開示の概念の吸入器内の乾燥剤は、無臭または実質的に無臭である。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
制御および/または規制されなければならない環境で保管、出荷、および/または利用されることが好ましい品物は数多くある。例えば、水分制御分野では、その中に閉じ込められた過剰な水分を吸収する能力を有する容器および/またはパッケージが望ましいと認識されている。医療、電子機器、および食品包装の用途において、水分、酸素、エチレン、および他の気体物質の制御が望ましい場合がある。
【0003】
従来、乾燥剤、酸素吸着剤、および他の活性剤は、例えば、パッケージの内部環境を制御するために、包装内の小袋またはキャニスタに収容されたゆるい粒子として未加工形態で使用されてきた。多くの用途では、このようなゆるく保管された活性物質を有することは望ましくない。この問題に対処するために、本出願の譲受人は、活性剤を含む活性捕捉ポリマーを開発したが、そのようなポリマーは、所望の形態、例えば、容器ライナー、プラグ、フィルムシート、ペレット、および他のそのような構造に押出しおよび/または成形されることができる。任意選択で、そのような活性捕捉ポリマーは、捕捉ポリマーの表面とその内部との間にチャネルを形成して、選択された材料(例えば、水分)を捕捉活性剤(例えば、水分を吸収するための乾燥剤)に透過させる、ポリエチレングリコール(PEG)等のチャネリング剤を含み得る。捕捉ポリマーは、二相配合物(すなわち、チャネリング剤を含まずにベースポリマーおよび活性剤を含む)または三相配合物(すなわち、ベースポリマー、活性剤、およびチャネリング剤を含む)であってもよい。捕捉ポリマーは、例えば、米国特許第5,911,937号、同第6,080,350号、同第6,124,006号、同第6,130,263号、同第6,194,079号、同第6,214,255号、同第6,486,231号、同第7,005,459号、および米国特許公開第2016/0039955号に記載されており、これらの各々は、完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
吸入器(例えば、限定されないが、乾燥粉末、エアロゾル、および/または定量)は、乾燥剤捕捉ポリマーを使用し得る一般的なタイプの薬物送達デバイスである。しかしながら、既知の吸入器の1つの問題は、使用者にとって不快な臭いを排出することが多く、使用することが不快になることである。臭気の源は、吸入器、吸入器の一部、または乾燥剤捕捉ポリマーに使用される材料を形成するための成形中の、ポリマー材料を含む使用される材料の分解に起因し得る。したがって、使用者に対し悪臭を排出しない、および/または除去する乾燥剤捕捉ポリマーを有する改善された吸入器を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、一態様において、吸入器が提供される。吸入器は、医薬品を患者に投与するための流路を画定する本体部分と、本体部分に固定されるか、または本体部分と一体化された流路内の捕捉ポリマーとを備える。捕捉ポリマーは、ベースポリマー、活性剤、および任意選択でチャネリング剤を含むモノリシック材料を有する。捕捉ポリマーは、揮発性有機化合物を吸着することができ、検出可能な量の揮発性有機化合物を放出しない。
【0006】
任意選択で、本開示の概念による吸入器のいずれかの実施形態において、捕捉ポリマーは、室温で検出可能な揮発性有機化合物を放出しない。
【0007】
任意選択で、本開示の概念による吸入器のいずれかの実施形態において、16グラム量の捕捉ポリマーは、60℃で最大72時間加熱した後に4ppm未満、任意選択で2ppm未満、任意選択で0の揮発性有機化合物を放出する。
【0008】
任意選択で、本開示の概念による吸入器のいずれかの実施形態において、活性剤は、1)乾燥剤、任意選択でモレキュラーシーブ、シリカゲル、粘土、またはベースポリマーよりも研磨性のある顆粒状材料である別の乾燥剤、および、2)臭気吸着材料、任意選択でゼオライト、任意選択で親水性ゼオライトである。
【0009】
任意選択で、本開示の概念による吸入器のいずれかの実施形態において、捕捉ポリマーは、医薬品を収容する本体部分の区画内に配置されるか、またはそれと流体連通している。
【0010】
任意選択で、いずれかの実施形態において、吸入器は、乾燥粉末吸入器、エアロゾル吸入器、または定量吸入器である。
【0011】
任意選択で、本開示の概念による吸入器のいずれかの実施形態において、活性剤は、捕捉ポリマーの30重量%~80重量%、任意選択で30重量%~75重量%、任意選択で30重量%~70重量%、任意選択で35重量%~70重量%、任意選択で40重量%~65重量%、任意選択で45重量%~55重量%である。
【0012】
任意選択で、本開示の概念による吸入器のいずれかの実施形態において、乾燥剤は、捕捉ポリマーの15重量%~79重量%、任意選択で15重量%~75重量%、任意選択で15重量%~70重量%、任意選択で15重量%~60重量%、任意に15重量%~50重量%、任意選択で30重量%~70重量%、任意選択で30重量%~60重量%、任意選択で30重量%~50重量%、任意選択で40重量%~70重量%、任意選択で40重量%~60重量%、任意選択で45重量%~70重量%、任意選択で45重量%~60重量%、任意選択で45重量%~55重量%である。
【0013】
任意選択で、本開示の概念による吸入器のいずれかの実施形態において、臭気吸着材料は、捕捉ポリマーの1重量%~15重量%、任意選択で1重量%~12重量%、任意選択で1重量%~10重量%、任意選択で1重量%~8重量%、任意選択で4重量%~12重量%、任意選択で4重量%~8重量%、任意選択で6重量%~12重量%、任意選択で6重量%~10重量%である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
同様の参照番号が同様の要素を示す以下の図面と併せて、本発明について説明する。
【0015】
図1】本開示の概念の方法および装置による、パッケージまたは薬物送達デバイス上に堆積され得る捕捉ポリマーから形成されたプラグの斜視図である。
図2図1の線2-2に沿って取られた断面図(cross section)である。
図3】本開示の概念の方法および装置による、パッケージまたは薬物送達デバイス上に堆積され得る捕捉ポリマーの別の実施形態から形成されたプラグを示す、図2の断面図と同様の断面図である。
図4】本開示の概念の方法に従って使用され得る捕捉ポリマーの概略図であり、活性剤は、吸収(absorbing)または吸着材料(adsorbing material)、例えば乾燥剤または酸素スカベンジャーである。
図5】本開示の概念の任意選択の態様による捕捉ポリマーから形成されたプラグが収容された容器の断面図である。
図6】プラグおよび容器が一体的に形成された、図5の断面と同様の容器の断面図である。
図7】本開示の概念の任意選択の態様による捕捉ポリマーから形成されたライナーが収容された容器の断面図である。
図8】バリア層と一体的に形成された、本開示の概念の任意選択の態様による捕捉ポリマーから形成されたシートまたはフィルムの断面図(cross sectional view)である。
図9】本開示の概念の1つの非限定的な実施形態による、任意選択の吸入器の一部の概略図である。
図10】非乾燥剤ポリマーバイアルを対照として、本開示の概念による乾燥剤配合物(M3050-451)および本開示の概念を代表しない高VOC排出乾燥剤(M3003-451)の非限定的な実施形態からの揮発性有機化合物(VOC)濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本明細書で使用される場合、「活性」という用語は、本開示の概念に従い、選択された材料(例えば、水分または酸素)に作用する、それと相互作用する、またはそれと反応することができるものとして定義される。このような作用または相互作用の例として、選択された材料の吸収、吸着、または放出を挙げることができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「活性剤」という用語は、(1)ベースポリマーと不混和性であり、ベースポリマーおよびチャネリング剤と混合および加熱されたときに溶解しない、すなわち、ベースポリマーまたはチャネリング剤のいずれかの融点よりも高い融点を有し、また(2)選択された材料に作用する、それと相互作用する、またはそれと反応する材料として定義される。「活性剤」という用語は、選択された材料(複数可)を吸収、吸着、または放出する材料を含み得るが、これらに限定されない。本開示の概念による活性剤は、鉱物粒子の形態であり得るが、(別途特許請求されない限り)本開示の概念は、鉱物粒子状活性剤に限定されると見なされるべきではない。しかしながら、本開示の概念は、鉱物形態である活性剤、例えばモレキュラーシーブまたはシリカゲルで形成された捕捉ポリマーに特に好適である。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ベースポリマー」という用語は、捕捉ポリマーのための構造を提供するために使用されるポリマーである。ベースポリマーは、好ましくは、活性剤を含む捕捉ポリマーを形成するために押出されるか、または成形されることができる。ベースポリマーは、任意選択で、チャネリング剤のものより実質的に低い、低い、または実質的に同等の、選択された材料の気体透過速度を有する。例として、そのよう透過速度は、選択された材料が水分であり、かつ活性剤が吸水乾燥剤である実施形態において、水蒸気透過速度である。ベースポリマーの主な機能は、捕捉ポリマーのための構造を提供することである。好適なベースポリマーとしては、熱可塑性ポリマー、例えばポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-メタクリレートコポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアクリリアニトリル(polyacrylianitrile)、ポリスルホン、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸、ポリウレタン、およびポリアセタール、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を挙げることができる。
【0019】
ベースポリマーおよびチャネリング剤の水蒸気透過速度のそのような比較を参照すると、一実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの少なくとも2倍の水蒸気透過速度を有する。別の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの少なくとも5倍の水蒸気透過速度を有する。別の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの少なくとも10倍の水蒸気透過速度を有する。また別の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの少なくとも20倍の水蒸気透過速度を有する。また別の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの少なくとも50倍の水蒸気透過速度を有する。また別の実施形態において、チャネリング剤は、ベースポリマーの少なくとも100倍の水蒸気透過速度を有する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「チャネリング剤」または「チャネリング剤(複数)」という用語は、ベースポリマーと不混和性であり、かつベースポリマーよりも速い速度で気相物質を輸送する親和性を有する材料として定義される。任意選択で、チャネリング剤は、チャネリング剤をベースポリマーと混合することによって形成される場合、捕捉ポリマーを通してチャネルを形成することができる。任意選択で、そのようなチャネルは、ベースポリマーのみよりも速い速度で、捕捉ポリマーを通して選択された材料を透過させることができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「チャネル」または「相互連結チャネル」という用語は、ベースポリマーを貫通し、かつ互いに相互連結され得るチャネリング剤から形成される通路として定義される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「捕捉ポリマー」という用語は、活性剤と、任意選択で、全体に捕捉または分配されたチャネリング剤とを有する少なくともベースポリマーから形成されたモノリシック材料として定義される。したがって、捕捉ポリマーは、二相ポリマーおよび三相ポリマーを含む。本明細書において、鉱物形態である活性剤を有する捕捉ポリマーは、「鉱物捕捉ポリマー」を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「モノリシック」、「モノリシック構造」、または「モノリシック組成物」という用語は、2つ以上の別個の巨視的な層または部分から成らない組成物または材料として定義される。したがって、「モノリシック組成物」は、多層複合体を含まないが、任意選択で、そのような構成要素の一部であってもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「相」という用語は、全体に均一に分配されて構造または組成物にそのモノリシックな特性を与えるモノリシック構造または組成物の一部または構成要素として定義される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「選択された材料」という用語は、活性剤に作用するか、またはそれと相互作用もしくは反応し、捕捉ポリマーのチャネルを通して透過することができる材料として定義される。例えば、乾燥剤が活性剤として使用される実施形態において、選択された材料は、乾燥剤によって吸着され得る水分または気体であってもよい。吸着材料が活性剤として使用される実施形態において、選択された材料は、ある特定の揮発性有機化合物であってもよく、吸着材料は、活性炭素であってもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「三相」という用語は、3つ以上の相を含むモノリシック組成物または構造として定義される。本開示の概念に従って使用され得る三相組成物の例は、ベースポリマー、活性剤、およびチャネリング剤から形成された捕捉ポリマーである。任意選択で、三相組成物または構造は、追加の相、例えば着色剤を含んでもよい。
【0027】
本開示の概念による方法に好適な捕捉ポリマー
図1~8は、本開示の概念による、捕捉ポリマー10、および捕捉ポリマーから形成された様々なパッケージアセンブリまたはパッケージアセンブリもしくは薬物送達デバイスの構成要素を示す。捕捉ポリマー10は各々、ベースポリマー25、チャネリング剤35、および活性剤30を含む。図示されるように、チャネリング剤35は、捕捉ポリマー10を通して相互連結チャネル45を形成する。活性剤30の少なくともいくつかは、チャネル45が活性剤30と捕捉ポリマー10の外側との間を捕捉ポリマー10の外面に形成されたチャネル開口部48を介して連通するように、これらのチャネル45内に含有される。活性剤30は、例えば、以下にさらに詳細に記載される、様々な吸収または吸着材料のうちのいずれか1つであり得る。チャネリング剤、例えば35が好ましいが、本開示の概念は、任意選択でチャネリング剤を含まない捕捉ポリマーを広く含む。
【0028】
好適なベースポリマーとしては、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-メタクリレートコポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアクリリアニトリル(polyacrylianitrile)、ポリスルホン、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸、ポリウレタン、およびポリアセタール、またはそれらのコポリマーもしくは混合物を挙げることできる。好ましい実施形態において、ポリプロピレンまたはポリセイレン(polytheylene)等のポリオレフィンが使用される。
【0029】
好適なチャネリング剤には、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリグリコール、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、グリセリンポリアミン、ポリウレタン、およびポリアクリル酸またはポリメタクリル酸を含むポリカルボン酸が含まれ得る。代替として、チャネリング剤35は、例えば、CLARIANT製のPolyglykol B01/240等のプロピレンオキシド重合体-モノブチルエーテル等の水溶性ポリマーであってもよい。他の実施形態において、チャネリング剤は、CLARIANT製のPolyglykol B01/20等のプロピレンオキシド重合体モノブチルエーテル、CLARIANT製のPolyglykol D01/240等のプロピレンオキシド重合体、エチレン酢酸ビニル、ナイロン6、ナイロン66、または上記の任意の組み合わせであってもよい。
【0030】
本開示の概念による好適な活性剤は、乾燥化合物および臭気吸着物質等の吸収または吸着材料を含む。図4は、活性剤30が吸収および/または吸着材料である、本開示の概念による捕捉ポリマー10の実施形態を示す。矢印は、捕捉ポリマー10の外側から、チャネル45を通り、選択された材料を吸収または吸着する活性剤30の粒子までの、選択された材料、例えば水分または気体の経路を示す。
【0031】
活性剤が乾燥剤である場合、所定の用途に好適な任意の乾燥剤が使用され得る。典型的には、物理吸着乾燥剤が多くの用途に好ましい。これらは、モレキュラーシーブ、シリカゲル、粘土、およびデンプンを含み得る。代替として、乾燥剤は、水を含有する結晶を形成する化学化合物、または水と反応して新たな化合物を形成する化合物であってもよい。
【0032】
活性剤が臭気吸着物質である場合、任意の好適な微細孔物質が使用され得る。例えば、木炭、多孔質ガラス、粘土、および天然または合成ゼオライトを含むアルミノシリケート鉱物である。一部の材料は、二重乾燥剤および臭気吸着物質であり得る。
【0033】
任意選択で、いずれかの実施形態において、活性剤は、酸素スカベンジャーであってもよい。
【0034】
また、好適な吸着材料には、(1)限定されないが、ニッケル、銅、アルミニウム、ケイ素、はんだ、銀、金等の金属および合金、(2)銀めっき銅、銀めっきニッケル、銀めっきガラス微小球等の金属めっき粒子、(3)BaTiO、SrTiO、SiO、Al、ZnO、TiO、MnO、CuO、Sb、WC、融合シリカ、ヒュームドシリカ、非晶質融合シリカ、ソル-ゲルシリカ、ゾル-ゲルチタン酸塩、混合チタン酸塩、イオン交換樹脂、リチウム含有セラミック、中空ガラス微小球、(4)炭素、活性炭、カーボンブラック、ケッチェムブラック、ダイヤモンド粉末等の炭素系材料、(5)ポリブタジエン、ポリシロキサン、および半金属、セラミック等のエラストマー、ならびに(6)他の充填剤および顔料が含まれ得る。
【0035】
別の例において、吸着材料は、酸化カルシウム等の二酸化炭素スカベンジャーであってもよい。水分および二酸化炭素の存在下で、酸化カルシウムは炭酸カルシウムに変換される。したがって、酸化カルシウムは、二酸化炭素の吸着が必要とされる用途において、吸着材料として使用され得る。そのような用途には、保存が含まれる。
【0036】
混合物中の活性剤濃度が高いほど、最終組成物の吸収または吸着容量が大きくなる(場合による)と考えられる。しかしながら、活性剤濃度が高過ぎると、捕捉ポリマーがより脆くなり得、活性剤、ベースポリマー、およびチャネリング剤の溶融混合物の熱形成、押出成形、または射出成形のいずれかがより困難になり得る。一実施形態において、活性剤充填レベルは、捕捉ポリマーの総重量に対して、10重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%、より好ましくは40重量%~60重量%、およびさらにより好ましくは45重量%~55重量%の範囲であってもよい。任意選択で、チャネリング剤は、2重量%~10重量%の範囲内、好ましくは約5重量%で提供されてもよい。任意選択で、ベースポリマーは、組成物全体の10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~35重量%の範囲であってもよい。任意選択で、例えば組成物全体の約2重量%の着色剤が添加される。
【0037】
図1を参照すると、任意選択の実施形態による捕捉ポリマーから構築されたインサート20が示されている。インサート20は、容器、吸入器、薬物送達デバイス、もしくは他のエンクロージャ内に堆積され得るか、または基板(例えば箔)上に堆積され得るプラグ55の形態である。任意選択で、インサート20は、基板と一体化されている。例えば、インサート20は、2ショット成形プロセスまたは別の成形プロセスによって基板に成形されてもよい。好ましい実施形態において、基板およびベースポリマー25は、プロセスを容易にするために類似のまたは同じ材料である。
【0038】
図2を参照すると、活性剤30および親水剤またはチャネリング剤35と均一にブレンドされたベースポリマー25を含む捕捉ポリマー10から構築されたプラグ55の断面図が示されている。図2の図では、捕捉ポリマーは、相互連結チャネル45が捕捉ポリマー10全体に形成され、固化したプラグ55全体に通路を確立するように固化されている。図1および2の両方から理解され得るように、通路は、プラグ55の外面のチャネル開口部48で終端する。これらの図は、これらの構成要素および構造の実際のサイズではなく、異なる相およびチャネルを伝えるための概略図であることに留意されたい。
【0039】
図3は、図2のプラグ55と同様の構造および構成のプラグ55の実施形態を示し、相互連結チャネル45は、図2のものと比較すると非常に細かい。これは、チャネリング剤35と共に二量体剤(すなわち可塑剤)を使用することに起因し得る。二量体剤は、ベースポリマー25とチャネリング剤35との間の適合性を強化し得る。この強化された適合性は、ブレンドの粘度の低下によって容易になり、これにより、通常条件下では、均一な溶液への組み合わせに抵抗し得るベースポリマー25およびチャネリング剤35のより徹底的なブレンドが促進され得る。二量体剤が添加された捕捉ポリマー10を固化すると、捕捉ポリマー10を通して形成される相互連結チャネル45の分散度が高くなり、また多孔度が低くなり、それによってプラグ55全体により高い密度の相互連結チャネルが確立される。
【0040】
本明細書に開示されるもの等の相互連結チャネル45によって、水分、気体、または臭気等の所望の材料の、一般的にこれらの材料の浸透に抵抗して材料に対するバリアとして作用するベースポリマー25を介した透過が容易になる。このため、ベースポリマー25自体は、活性剤30がその中に捕捉され得るバリア物質として作用する。チャネリング剤35から形成された相互連結チャネル45は、所望の材料が捕捉ポリマー10を通って移動するための経路を提供する。これらの相互連結チャネル45がなければ、比較的少量の所望の材料が、ベースポリマー25を通って活性剤30に、または活性剤30から透過されると考えられる。所望の材料が活性剤30に透過される場合、例えば、活性剤30が乾燥剤または酸素吸着剤等の活性剤である実施形態において、所望の材料は、活性剤30によって吸着され得る。
【0041】
本発明の捕捉ポリマー10は、多数の用途を有する。1つの例示的な用途は、食品および医薬等の比較的少量の製品を含有するのに好適な剛性容器61の構築である。多くの場合、これらのタイプの製品は、制御された環境(例えば、減少した水分および/または酸素)中で出荷および保管されなければならない。容器61はまた、吸入器または他の薬物送達デバイス内の区画、例えば、患者に送達される医薬品を保管するための区画を表し得ることを理解されたい。一実施形態において、本発明の捕捉ポリマー10は、容器61の内部に含めるためにインサートとして形成されてもよい。インサートの1つの形態の例は、図5および6に示されるもの等の任意の好適な形状のプラグ55である。プラグ55は、単に容器内に堆積されることによってその目的を果たすが、プラグ55はまた、内部空間内で移動しないように内部位置に固定されてもよい。プラグ55は、図5および6に示されるように、ポリマー容器61の底部の受容位置にぴったりと押し込まれるような形状およびサイズのディスクとして形成されてもよい。
【0042】
図7に示される他の実施形態において、ライナー70は、容器本体60の内面に実質的に適合する外面を有する捕捉ポリマー10から形成され得る。上記のプラグ55と同様に、ライナー70は、容器本体60内の位置に圧入されるような大きさであってもよく、容器本体60からの意図しない脱着を防止するのに十分に密着して保持される。代替として、プラグ55またはライナー70のいずれかを最初に構築して硬化させることができ、次いで、捕捉ポリマーを含まないポリマー容器本体60のより大きな収縮特性が、容器本体60をプラグ55またはライナー70の周りにぴったり収縮させて、互いに容易に離脱することがないように、その周りに容器本体60を構築することができる。さらなる実施形態において、プラグ55またはライナー70のいずれかの形態をとるインサートは、容器本体60と同時に共成形されてもよく、これにより、各々が互いに一体的に接合される。そのような共成形によって形成される実施形態において、捕捉ポリマー10インサートおよび容器本体60の粘度は、一緒に成形される液体または溶融材料の2つの相の適切かつ所望の位置を容易にするためにほぼ等しくてもよい。
【0043】
図8に示されるようなさらに別の実施形態において、2つのシートまたはフィルム75、80は、別々に成形され、後に組み合わされて、包装ラップを形成する。代替として、シートまたはフィルム75、80は、共押出されてもよい。複合体として2つのシート75、80を含む包装ラップは、捕捉ポリマー10活性シート75によって形成される内面(上記実施形態で考察されるようなインサート20に対応する参照番号と一致する「20」とも称される)で活性特性を提供し、バリアシート80によって形成される外面で耐蒸気性または気体不透過性特性を提供する。任意選択で、シート75、80のこの複合体は、本開示の概念の任意選択の態様に従って薬物送達デバイスに組み込まれてもよい。
【0044】
本開示の概念による薬物送達デバイス
本開示の概念は、投与された薬物の流路内に位置付けられた捕捉ポリマーを含む、薬物送達デバイス、任意選択で吸入器を提供する。任意選択で、投与された薬物は、固体の形態である。捕捉ポリマーは、ベースポリマー、活性剤、および任意選択でチャネリング剤を含むモノリシック材料を含む。任意選択で、活性剤は、乾燥剤および微細孔臭気吸着材料を含む。任意選択で、乾燥剤は、モレキュラーシーブである。任意選択で、微細孔臭気吸着材料は、ゼオライトである。任意選択で、ゼオライトは、親水性ゼオライトである。
【0045】
本開示の概念は、薬物送達デバイスの例として吸入器を使用して、以下により詳細に説明される。
【0046】
図9は、本開示の概念の1つの非限定的な実施形態による、吸入器100の一部の概略図である。吸入器100は、例えば、限定されないが、乾燥粉末吸入器、エアロゾル吸入器、または定量吸入器であってもよい。示される例において、吸入器100は、乾燥粉末吸入器であるが、本開示の概念は、これに限定されるものではない。
【0047】
吸入器100は、上部分104、下部分106、および主ハウジング部分108を任意選択で備える本体部分102を含む。本体部分102は、医薬品200(例えば、限定されないが、医薬)を患者に投与するための流路110を画定する。主ハウジング部分108は、所定量の医薬品200を含有するように構成された区画120を有する。図示されるように、吸入器100は、任意選択で乾燥剤捕捉ポリマーである捕捉ポリマー130をさらに有する。例示的な実施形態において、捕捉ポリマー130は、主ハウジング部分108に固定される。しかしながら、好適な代替の吸入器(図示せず)において、捕捉ポリマーは、本開示の概念の範囲から逸脱することなく、本体部分と一体化されていてもよいことが理解されるであろう。
【0048】
図9を引き続き参照すると、捕捉ポリマー130は、医薬品200を収容する本体部分102の区画120内に位置する(例えば、および/またはそれと流体連通している)。図示されるように、吸入器100は、区画120内の医薬品200を密封するために、主ハウジング部分108に連結された密封要素(例えば、限定されないが、箔部材140)をさらに任意選択で含む。したがって、箔部材140が使用者によって除去または穿刺されると、医薬品200が使用者によって吸入され得ることが理解されるであろう。したがって、捕捉ポリマー130は、流路110内に位置するように構成される。さらに、本開示の概念によれば、吸入器100は、従来技術の吸入器と比較して、使用者に著しく低い量の揮発性臭気(さらには検出可能な揮発性有機化合物または「VOC」がゼロ程度まで低い)を発するように有利に構成される。
【0049】
具体的には、捕捉ポリマーを含む従来技術の吸入器(図示せず)は、比較的高いレベルの揮発性有機化合物を発する捕捉ポリマーを有し、したがって、使用者に全体的に不快な経験(味および/または匂い)を提供する。しかしながら、本開示の概念の一例の実施形態において、吸入器100の捕捉ポリマー130によって発せられる揮発性有機化合物の濃度は、好ましくは40パーツパーミリオン未満、より好ましくは25パーツパーミリオン未満、より好ましくは、4パーツパーミリオン未満、任意選択で2パーツパーミリオン未満、任意選択で1パーツパーミリオン未満、任意選択で0の検出可能なパーツパーミリオンである。したがって、使用者が箔部材140を除去して医薬品200を吸入する際、従来技術の吸入器と比較して、有意により快適な臭いが存在することが理解されるであろう。
【0050】
捕捉ポリマー130は、好ましくは、ベースポリマー、活性剤、および任意選択でチャネリング剤を有するモノリシック材料を含む。一例の実施形態において、捕捉ポリマー130は、チャネリング剤を含む。活性剤は、乾燥剤、任意選択でモレキュラーシーブ、シリカゲル、粘土、またはベースポリマーよりも研磨性のある顆粒状材料である別の乾燥剤であってもよい。活性剤はまた、臭気吸着材料、任意選択で、ゼオライトを含む微細孔材料を含んでもよい。活性剤の合計(例えば、乾燥剤および臭気吸着剤の組み合わせ)は、捕捉ポリマー130の20重量%~80重量%、任意選択で30重量%~75重量%、任意選択で30重量%~70重量%、任意選択で35重量%~70重量%、任意選択で40重量%~65重量%、任意選択で45重量%~55重量%であってもよい。乾燥剤は、捕捉ポリマー130の15重量%~79重量%、任意選択で15重量%~75重量%、任意選択で15重量%~70重量%、任意選択で15重量%~60重量%、任意選択で15重量%~50重量%、任意選択で30重量%~70重量%、任意選択で30重量%~60重量%、任意選択で30重量%~50重量%、任意選択で40重量%~70重量%、任意選択で40重量%~60重量%、任意選択で45重量%~70重量%、任意選択で45重量%~60重量%、任意選択で45重量%~55重量%であってもよい。臭気吸着材料は、捕捉ポリマー130の1重量%~15重量%、任意選択で1重量%~12重量%、任意選択で1重量%~10重量%、任意選択で1重量%~8重量%、任意選択で4重量%~12重量%、任意選択で4重量%~8重量%、任意選択で6重量%~12重量%、任意選択で6重量%~10重量%であってもよい。
【0051】
さらに、一例の実施形態において、ベースポリマーおよび/またはチャネリング剤は、メタロセン触媒を使用して調製される。別の実施形態において、乾燥剤は、臭気吸着ゼオライトと組み合わされる。臭気吸着ゼオライトの例は、ZEOflair(登録商標)1000の名称でZEOCHEMによって販売されているような親水性吸着剤である。その結果、捕捉ポリマー130は、典型的には処理後にそれらの触媒を保持するこれまでの従来技術の捕捉ポリマー(図示せず)よりも著しく清浄である。さらに、メタロセンは、従来技術の捕捉ポリマーと比較して、処理中に捕捉ポリマー130から除去するのが容易であるためより清浄であり、従来技術の捕捉ポリマーでは、それらの触媒は通常、処理中に捕捉ポリマー中に詰まる。メタロセンはまた、捕捉ポリマー130を形成するためのエネルギー要件を有利に低下させる。
【0052】
別の態様において、本開示の概念はまた、低臭気吸入器または無臭気吸入器を製造する方法を提供する。本方法は、医薬品を患者に投与するための流路を画定する本体部分と、流路内に位置し、本体部分に固定されるか、または本体部分と一体化された捕捉ポリマーとを提供するステップを含み、捕捉ポリマーは、ベースポリマー、活性剤、および任意選択でチャネリング剤を含むモノリシック材料を含み、さらに、室温での捕捉ポリマーは、無臭であるか、または少なくとも実質的に無臭である。任意選択の実施形態において、室温での捕捉ポリマー(体積約166mLで約16gの量)は、本明細書に記載のような検出機器によって測定される場合、4パーツパーミリオン未満、任意選択で2パーツパーミリオン未満、任意選択で1パーツパーミリオン未満、好ましくは0パーツパーミリオンの揮発性有機化合物濃度をもたらす。任意選択の実施形態において、60℃で72時間加熱した後の捕捉ポリマー(体積約166mLで約16gの量)は、40パーツパーミリオン未満、好ましくは25パーツパーミリオン未満、より好ましくは4パーツパーミリオン未満、より好ましくは2パーツパーミリオン未満、最も好ましくは0パーツパーミリオンの揮発性有機化合物濃度をもたらす。吸入器の本体部分または任意の部分の材料は、特に限定されない。
【0053】
別の態様において、本開示の概念は、医薬品を、それを必要とする患者に投与する方法であって、吸入器内の医薬品を送達するステップを含む方法を提供し、吸入器は、医薬品を患者に投与するのための流路を画定する本体部分と、流路内に位置し、本体部分に固定されるか、または本体部分と一体化された捕捉ポリマーとを備え、捕捉ポリマーは、ベースポリマー、活性剤、および任意選択でチャネリング剤を含むモノリシック材料を含み、さらに、捕捉ポリマーは、本明細書に記載の検出機器によって測定されるように、40パーツパーミリオン未満、好ましくは25パーツパーミリオン未満、より好ましくは4パーツパーミリオン未満、さらにより好ましくは0パーツパーミリオンの揮発性有機化合物濃度をもたらす。
【実施例
【0054】
実施例1
乾燥剤捕捉ポリマー樹脂M-3050およびM-3057を、以下に従って調製した。
【表1】
【0055】
参照乾燥剤捕捉ポリマーM-3003も、以下に従って調製した。
【表2】
【0056】
実施例2
乾燥剤捕捉ポリマーM-3050、M-3057、および参照ポリマーM-3003を、各々バイアル内のスリーブの材料として使用し、バイアル内に押出成形して、それぞれスリーブバイアルM-3050-451、M-3057-451、およびM-3003-451を形成した。バイアルおよびスリーブの寸法は以下の通りである。
【表3】
【0057】
実施例3
M-3050-451(スリーブ重量約16グラム)およびM-3003-451(スリーブ重量約16グラム)の各々の3つのバイアル、ならびにブランクとして非乾燥剤捕捉ポリマーを有する1つのバイアルを、各々アルミ圧着キャップで密封し、140゜F(60℃)のオーブン内に一晩置いた。バイアルから排出される臭気の尺度としての揮発性有機化合物(VOC)の濃度を、光イオン化検出器を有するGCMSによってバイアルの各々のヘッドスペース内の気体を分析することによって測定した。
【0058】
結果を図10に示す。任意選択の本発明の乾燥剤捕捉ポリマースリーブを有するバイアルから排出される臭気は、参照バイアルからのものより有意に少なく、非乾燥剤バイアルと同等である。
【0059】
ヒト対象による嗅覚試験では、ブランク試料(非乾燥剤バイアル)が、ごくわずかな臭気を排出したかまたは臭気がなかった(すなわち、無臭または実質的に無臭であった)M-3050-451バイアルよりもわずかに臭気があったことが明らかとなった。
【0060】
実施例4
室温で、または室温に続き140゜F(60℃)で72時間閉じた構成で保管されたM-3050-451、M-3057-451、およびM-3003-451の各々の5つのスリーブバイアルを、内部放出VOC濃度について評価した。シリンジに接続されたチューブを有する穿刺装置を使用して、バイアルの蓋を穿刺した。バイアルの各々のヘッドスペース内の気体を、接続されたチューブを介してシリンジ(65mL)を使用して収集し、PHOTOVAC 2020 COMBO PROガス分析器に直接注入した。内部空洞内のVOC濃度(平均)は、以下の表の通りである。
【表4】
【0061】
ヒト対象による嗅覚試験では、M-3003-451バイアルが、室温または加熱後に検出可能な臭気を排出しなかったM-3050-451またはM-3057-451バイアルよりも著しく臭気があったことが明らかとなった。
【0062】
ここでのVOCおよび嗅覚試験は、任意選択の本発明の樹脂が吸入器に組み込むための低臭気または無臭気乾燥剤捕捉樹脂であることを実証している。
【0063】
本発明について、その具体的な例を参照して詳細に説明してきたが、その趣旨および範囲から逸脱することなく、それに様々な変更および修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10