(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】変性ジエンエラストマーをベースとするゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 19/00 20060101AFI20240718BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240718BHJP
C08C 19/25 20060101ALI20240718BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C08L19/00
C08K3/36
C08C19/25
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021524188
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 FR2019052641
(87)【国際公開番号】W WO2020094988
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】ド-ゴードマリ ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】シャタール ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ディール シャルロット
(72)【発明者】
【氏名】ロース ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ガデンヌ ブノワ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/034195(WO,A1)
【文献】特開2020-059778(JP,A)
【文献】特開2016-017097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のことを特徴とする、少なくとも、シリカを含む補強用充填剤および変性ジエンエラストマーを含むエラストマーマトリックスをベースとするゴム組成物:
-シリカ含有量が80phr以上
であり、
-変性ジエンエラストマー含有量が75phr以上であり、かつ
-前記変性ジエンエラストマーが、その構造内にn-官能性分岐単位(nは、少なくとも1および最大で9
の値を有する)を含む高分子を含み、前記n-官能性分岐単位は、エラストマー分枝で置換され、かつ少なくとも1個の窒素原子を含む基を介して互いに結合されている、少なくとも2個のケイ素原子を含む基からなり、ケイ素原子と窒素原子の間の結合がスペーサー基を介して生成されて
おり、
前記変性ジエンエラストマーが、その変性ジエンエラストマーの総質量に対して、少なくとも35質量%の、3個の枝分かれを有する分岐高分子を含むか、および/または
前記変性ジエンエラストマーが、その変性ジエンエラストマーの総質量に対して、多くても25質量%の、4個以上の枝分れを有する分岐高分子を含む、
上記ゴム組成物。
【請求項2】
前記変性ジエンエラストマーのエラストマー分枝の末端(その末端はケイ素原子に結合されていない)が、窒素原子を含む官能基を担持していることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、下記式Iに対応することを特徴とする、請求項1または2記載の組成物:
E
i(OR)
3-iSi-(G1-X-G2)
m-Si(OR)
3-jE
j
(式中:
Eは、ジエンエラストマー分枝を示し、
R基は、互いに独立して、C
1-C
10
アルキル基
を示し、
G1およびG2は、互いに独立して、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC
1-C
18
脂肪族炭化水素基、または二価のC
6-C
18芳香族炭化水素基を示し;
Xは、少なくとも1個の窒素原子を含む基を示し;
iおよびjは、互いに独立して、0から3まで変化する整数であり、ここで、i+jは少なくとも1に等しく、
mは、1から20まで変化する整数である)。
【請求項4】
前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が式Iに対応し、式Iにおいて、mが値1を有し、Xが下記から選ばれる基:
(1)式IIの基
【化1】
(ここで、R'基は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖または分枝鎖の二価のC
1-C
18脂肪族基
を示す)、
(2)>N-G3-SiR''
aE
k(OR)
3-a-k基
(ここで、
G3は、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC
1-C
18
脂肪族炭化水素基、または二価のC
6-C
18芳香族炭化水素基であり、
R''は、C
1-C
4アルキル基
を示し、
R基は、互いに独立して、C
1-C
10
アルキル基
を示し、
aは、値0または1を有する整数を示し、kは、0から3まで変化する整数であり、ここで、a+kは、3以下である、ただし、i+j+kは、少なくとも1に等しく、かつ最大で9
である
)、
(3)>N-Y基
(ここで、
Yは、C
1-C
4アルキル基、またはC
6-C
18
アリール基、または水素原子、または-R1-A基(ここで、R1は1~18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価の炭化水素基を示し、Aは窒素原子を含む基である)
を示す)、
を示す、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が式Iに対応し、式Iにおいて、Eが、鎖末端に、窒素原子を含む基
を担持する、ジエンエラストマー分枝を示すことを特徴する、請求項
3または4記載の組成物。
【請求項6】
前記変性ジエンエラストマーが、その変性ジエンエラストマーの総質量に対して、少なくとも50質量%の分岐高分子を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
下記の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、
または少なくとも9つ
が認められることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか1項記載の組成物:
- 前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、2個のケイ素原子と1個の窒素原子とを含む、
- 窒素原子を含む基が、C
1-C
4アルキル基
で置換された窒素原子である、
- 前記スペーサー基が、3~8個の炭素原子を有する飽和および直鎖の二価の脂肪族基である、
- 1個以上のケイ素原子を置換しているアルコキシ基が、1~4個の炭素原子を含
む、
、
- 1個以上のケイ素原子を置換しているアルコキシ
基の全部または一部は加水分解されてヒドロキシル基を与える
、
- 前記
変性ジエンエラストマーが、ブタジエン/スチレンコポリマーである
、
- ケイ素原子に結合されていないエラストマー分枝の末端の全部または一部が、鎖末端のモル数に対して、アミン官能基で官能化されている
、
- エラストマー分枝の平均Mnが、150 000g/mol未満
である、
- 前記変性ジエンエラストマーが、少なくとも50質量%の、少なくとも3個の枝分れを有する分岐高分子を含む
、
- 前記変性ジエンエラストマーが、少なくとも35質量%の、3個の枝分れを有する分岐高分子を含む。
【請求項8】
全部または一部が、請求項1~
7のいずれか1項記載の組成物により構成された半完成品を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ジエンエラストマーと、補強用充填剤としてのシリカとを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術
燃料の節約と環境を保護する必要性が優先事項になってきたので、例えば、アンダーレイヤー、サイドウォールまたはトレッドなどのタイヤの組成物に関与する様々な半完成品の製造において使用することができるゴム組成物の形で加工ができるために、かつ転がり抵抗を低減させたタイヤを得るために、できるだけ低いヒステリシスを有する混合物を生産することが望ましい。
理想的には、例えば、タイヤトレッドは、高い耐摩耗性を含むと共にそのタイヤに低転がり抵抗を与える、本質的にしばしば矛盾している非常に多くの技術的要求を満たさなければならない。
さらに、この混合物のヒステリシスの低減、転がり抵抗の低減の証拠もまた、加工に対する適合性を損なわずに保つと共に、エラストマーのクリープ強度を維持させることを達成させなければならない。
ヒステリシスを低下させる目的を達成するために、多くの解決策が既に試みられている。特に、このように変性されるポリマーと、これがカーボンブラックまたは補強用無機充填剤であるかにかかわらず、充填剤との間の良好な相互作用を得るために官能化剤、カップリング剤または星型分岐剤による重合終了時のジエンポリマーおよびコポリマーの構造の変性が挙げられる。
シリカのような補強用無機充填剤を含有する混合物に関連して、特にアルコキシシラン官能基による官能化と他の官能基、特にアミン、イミン、エポキシあるいはチオール官能基による官能化とを組み合せるかまたは組み合せずに、アルコキシシラン誘導体で官能化されたジエンポリマーを使用することが提案されている。
【0003】
アミノ官能基を担持するアルコキシシラン化合物による官能化は、特許文献に広く記載されている。アミノ基を担持するアルコキシシラン官能基によって鎖末端で官能化されたエラストマーは、タイヤの製造を意図としたゴム組成物において、シリカと、カーボンブラックと、これら2つの充填剤の混合物でさえ等しく充分に混ぜ合わされている。
文献WO 2009133068 A1号には、本出願人会社がその一部に、鎖内に、アルコキシシラン官能基およびアミン官能基を担持する基を有し、この基のケイ素原子が2部のジエンエラストマー鎖に結合しているエラストマーのカップリングされた単位から本質的に構成された官能化ジエンエラストマーを記載している。鎖の中央で官能化されたこのエラストマーは、特にタイヤトレッドとして使用するために、それが存在している組成物について改善された機械的特性および動的特性、特に改善されたヒステリシス与えると共に、良好な生加工を維持する。
文献EP 2 003 146 A2号およびUS 2014/0243476A1号には、少なくとも1個ケイ素原子および少なくとも1個の窒素原子を共に有する官能化剤で変性されたジエンエラストマーが記載されいる。JP 2016017097A号には、少なくとも1個のケイ素原子および少なくとも1個の窒素原子を共に有し、官能化剤に結合されていない鎖の末端にアミノ官能基を担持する官能化剤で変性されたジエンエラストマーが記載されている。これらの文献には、低含有量の補強用充填剤を有しかつタイヤ用途を意図したゴム組成物の機械的特性および動的特性が改善され、特にウェットグリップにおける利益、放熱性の向上、転がり抵抗または耐摩耗性の利益が強調されている。
【0004】
ある種のタイヤの性能品質を達成するために、タイヤの異なる部分を構成するゴム組成物中に多かれ少なかれ補強用充填剤を使用することが必要となる場合がある。しかしながら、実際の点で、これらの性能品質の一部を達成するための多量の充填剤の使用が、所望の転がり抵抗の低減と矛盾している。このことは、トレッドを製造するために使用される混合物中に高い含有量の補強用充填剤を使用することが、必要に応じて多くの場合抑制的な方法で、ゴム組成物のヒステリシス損失の顕著な増加を伴う転がり抵抗特性にしばしば不利であるからである。
本発明が解決しようとする技術的課題は、ゴム組成物の動的特性および転がり抵抗が低減されたタイヤの製造にこれらの組成物を使用するためのその加工に対する補強用充填剤の含有量の増加の影響を弱めることである。
その調査研究を継続中に、本出願人会社は、ゴム組成物中にある種の特定の変性ジエンエラストマーを使用することにより、加工/ヒステリシスの妥協点に対する補強用充填剤の含有量の増加の影響を減少させることが可能であることを発見した。従って、高含有量の補強用充填剤を含むタイヤ用ゴム組成物を得ると共に、組成物のヒステリシスおよび加工特性に対するこの高い含有量の効果を最小にすることが可能である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の説明
従って、本発明の主題は、下記のことを特徴とする、少なくとも、シリカを含む補強用充填剤および変性ジエンエラストマーを含むエラストマーマトリックスをベースとするゴム組成物である:
-シリカ含有量が80phr以上であり、
-変性ジエンエラストマー含有量が75phr以上であり、
-上記変性ジエンエラストマーが高分子を含み、その構造内に、エラストマー分枝で置換され、少なくとも1個の窒素原子を含む基を介して互いに結合されている少なくとも2個のケイ素原子を含む基からなり、ケイ素原子と窒素原子との結合がスペーサー基を介して生成されている、n-官能性分岐単位(nは、少なくても1、好ましくは3および最大で9、好ましくは最大で6の値を有する)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
特に明記されていない限り、示される全てのパーセント(%)は、質量%である。さらに、「aとbの間」という表現により示される値の任意の間隔は、いずれも、aよりも大きくから「b」よりも小さいまでに至る値の範囲を示し(すなわち、限界値aとbは除外する)、一方「a~b」という表現により示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに至る値の範囲を意味する(すなわち、厳密な限定値aおよびbを含む)。本文書において、値の間隔が「a~b」という表現により示されている場合、「aとbの間」という表現により示される間隔もまた示される。
「ベースとする組成物」という表現は、使用する各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味し、これらのベース構成成分の一部は、少なくとも部分的に、その組成物の製造の様々な段階の間、特にその架橋または加硫の間、互いに反応できかつ/または反応することを意図されている。
本説明において、「phr」という略語は、エラストマーマトリックス中に存在するエラストマー100質量部当たりの質量部を意味し、エラストマーマトリックスはゴム組成物中に存在する全てのエラストマーを示す。
本特許出願において、化合物と関連しての「主に」または「主な」は、この化合物が組成物中の同じタイプの化合物の中で主要であること、すなわち、同じタイプの化合物の中で最大質量分率を示すことを意味すると理解されたい。従って、変性ジエンエラストマーの「主な」官能単位は、変性ジエンエラストマーの総質量に対して、ジエンエラストマーを構成する官能化単位の中で最大質量分率を示すことである。あるタイプの化合物を1種だけ含む系において、これは本発明の意味の範囲内で主要なものである。
【0007】
本説明において、ムーニー粘度は、規格ASTM D1646に従って測定した、化合物、特に変性ジエンエラストマーの化合物のML(1+4)100℃ムーニー粘度を意味すると理解されたい。
本説明において、それ以上の情報が与えられていない場合、第一級アミンまたは第二級アミンは、当業者に公知の保護基で保護されているかまたは保護されていない第一級アミンまたは第二級アミンを意味すると理解されたい。
本説明において、変性ジエンエラストマーは、リビングジエンエラストマーと、このリビングジエンエラストマーの反応性末端に対して少なくとも6個の官能基を含む化合物(この化合物は少なくとも2個のケイ素原子および少なくとも1個の窒素原子が含まれる複数種のヘテロ原子を含んでいる)との官能化反応から得られる高分子の混合物を意味すると理解されたい。
当業者は、上記リビングエラストマーに対して反応性の1個よりも多い官能基を含む作用剤との変性反応が、変性エラストマーの官能性直鎖単位を構成する、鎖末端において、および鎖の中央で官能化された(カップリングされたとも呼ばれる)高分子の混合物、および変性エラストマーの分岐高分子を構成する、官能化剤により担持された反応性官能基として少なくとも3個の枝分れおよび多くても同じ数だけの枝分れを有する高分子の混合物をもたらすことを理解するであろう。操作条件、主に官能化剤とリビング鎖とのモル比およびその反応性官能基の数によっては、高分子のある種の単位は多かれ少なかれ、実際には主要であっても混合物中に存在する。
【0008】
本説明において、「モノマー単位」という表現は、これがジエンか否かに関わりなく、問題のモノマーから得られるポリマーの繰り返し単位として理解される。
本説明において、「分岐単位」という表現は、リビングジエンエラストマー鎖が反応しかつジエンエラストマー鎖が生じる官能化剤から得られる、非反復単位(ポリマーにはそれらの1つだけが存在する)として理解される。
本発明に関連して、変性ジエンエラストマーだけでなくゴム組成物の化合物の合成に使用したモノマーが、化石起源またはバイオ由来起源のものであり得ることは明記されるべきである。この場合には、これらは、一部または全部バイオマスから得られてもよく、バイオマスから得られる再生可能な原料から得られるものであってもよい。
従って、本発明は、下記のことを特徴とする、少なくとも、シリカを含む補強用充填剤および変性ジエンエラストマーを含むエラストマーマトリックスをベースとするゴム組成物に関する:
-シリカ含有量が80phr以上であり、
-変性ジエンエラストマー含有量が75phr以上であり、
-上記変性ジエンエラストマーが高分子を含み、その構造内に、エラストマー分枝で置換され、少なくとも1個の窒素原子を含む基を介して互いに結合されている少なくとも2個のケイ素原子を含む基からなり、ケイ素原子と窒素原子との結合がスペーサー基を介して生成されている、n-官能性分岐単位(nは、少なくても1、好ましくは少なくても3および最大で9、好ましくは最大で6の値を有する)を含む。
【0009】
本発明に従う組成物において、変性ジエンエラストマーとして使用できるジエンエラストマーは、既知のように、少なくとも部分的に共役または非共役ジエンモノマー単位で構成された合成エラストマーを意味するものとして理解すべきである。
合成ジエンエラストマーは、より詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
(a)-ジエンモノマー、特に共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー、特に4~12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー、
(b)-1種以上のジエンモノマーを互いにまたは1種以上のビニル芳香族モノマーと共重合して得られる任意のコポリマー。
コポリマー(b)の場合、これは20質量%~99質量%のジエン単位および1質量%~80質量%のビニル芳香族モノマーから得られる単位を含有する。
共役ジエンとしては、特に次のものが適している:1,3-タジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジ(C1-C5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたは2,4-ヘキサジエン。共役ジエンは、好ましくは1,3-タジエンの誘導体、より好ましくは1,3-タジエンである。
【0010】
ビニル芳香族化合物としては、例えば、次のものが適している:スチレン、オルト-、メタ-またはパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。好ましくは、ビニル芳香族化合物はスチレンである。
ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。このようなコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、より詳細にはブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)からなる群から選択される。
ジエンエラストマーは、使用される重合条件に左右される任意のミクロ構造を有していてもよい。
ジエンエラストマーは、ブロック、ランダム、シーケンシャル、ミクロシーケンシャルなどのエラストマーであってもよい。
本発明によれば、変性ジエンエラストマーは、その構造内に、n-官能性分岐単位(nは、互いに独立して、各高分子ついての値を有する)を含む高分子の混合物である。この分岐単位は、エラストマー分枝で置換され、少なくとも1個の窒素原子を含む基によって互いに結合されている少なくとも2個のケイ素原子を含む基からなり、ケイ素原子と窒素原子との結合は、スペーサー基を介して生成されている。
【0011】
本発明の1つの実施態様によれば、変性ジエンエラストマーのエラストマー分枝の数平均モル質量は、150 000g/mol未満、好ましくは40 000g/mol~100 000g/molである。
本発明の1つの実施態様によれば、その末端がケイ素原子に結合されていない、変性ジエンエラストマーのエラストマー分枝の末端は、窒素原子を含む官能基、好ましくは環式または非環式アミン官能基を含む官能基を担持できる。好ましくは、変性ジエンエラストマーのエラストマー分枝の末端は、環式または非環式アミン官能基によって、エラストマー分枝のモル数に対して少なくとも70mol%まで官能化される。
本発明の1つの実施態様によれば、変性ジエンエラストマーは、その構造内に、それぞれ多くても3個のエラストマー分枝および多くても3個のヒドロキシル基またはアルコキシ基で置換された少なくとも2個のケイ素原子を含む高分子を含む。
ケイ素原子を置換するアルコキシ基は、本発明のいくつかの変形例によれば、部分的にまたは完全にヒドロキシル化されてヒドロキシル基を得る。これらの変形例によれば、変性ジエンエラストマーに担持された好ましくは少なくとも50mol%のアルコキシ基が加水分解されてヒドロキシル基を得る。特に、変性ジエンエラストマーに担持された少なくとも80mol%のアルコキシ官能基が加水分解されて、実際には100%ものヒドロキシル基を得る。
【0012】
ケイ素原子を置換するアルコキシ基のアルキル基は、互いに独立して、ケイ素原子に置換されたアルコキシ基のアルキル基は、独立して互いに独立して、C1-C10、実際にはC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、より好ましくはメチルおよびエチルから選ばれる。
本発明によれば、分岐単位は、少なくとも2個のケイ素原子を含み、これらの原子は、少なくとも1個の窒素原子を含む基を介して互いに結合されており、ケイ素原子と窒素原子との結合は、スペーサー基を介して生成されている。このスペーサー基は、飽和または不飽和の環式または非環式の二価のC1-C18脂肪族炭化水素基または二価のC6-C18芳香族炭化水素基、好ましくは直鎖または分枝鎖の二価のC1-C10脂肪族炭化水素基であると定義できる。好ましくは、このスペーサー基は、1~8個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する飽和および直鎖の二価の脂肪族炭化水素である。
本発明によれば、分岐単位は、n-官能性であり、すなわち、n個のジエンエラストマー分枝がこの単位に結合されており、ここで、nは少なくとも1個、好ましくは多くても9個、好ましくは多くても6個の値を有する。
【0013】
本発明の有利な実施形態によれば、n-官能性分岐単位は、エラストマー分枝で置換され、少なくとも1個の窒素原子を含む二価の基を介して、好ましくは窒素原子を含む基を介して互いに結合されている2個のケイ素原子を含み、ケイ素原子と窒素原子との結合はスペーサー基を介して生成されている。
本発明の1つの実施形態によれば、n-官能性分岐単位は、エラストマー分枝で置換され、少なくとも1個の窒素原子を含む三価の基を介して、好ましくは窒素原子を含む基を介して互いに結合されている3個のケイ素原子を含み、ケイ素原子と窒素原子との結合はスペーサー基を介して生成されている。
スペーサー基について、好ましいかまたは好ましいものではない種々の変形例、エラストマー分枝の数またはアルコキシ基によるケイ素原子の置換は、本発明の2つの前の実施形態と組み合せることができ、すなわち、n-官能性分岐単位は2個のケイ素原子を含み、n-官能性分岐単位は3個のケイ素原子を含むn-官能性分岐単位を含む。
【0014】
本発明の変性ジエンエラストマーの高分子は、特に下記の式Iに対応する:
Ei(OR)3-iSi-(G1-X-G2)m-Si(OR)3-jEj
(式中:
-Eは、ジエンエラストマー分枝を示し、
-R基は、互いに独立して、C1-C10、実際にはC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、または水素原子を示し、
-G1およびG2は、互いに独立して、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC1-C18、好ましくはC1-C10脂肪族炭化水素基、より好ましくは飽和および直鎖の二価のC3-C8脂肪族炭化水素基、または二価のC6-C18芳香族炭化水素基を示し、
-Xは、少なくとも1個の窒素原子を含む基を示し、
-iおよびjは、互いに独立して、0から3まで変化する整数であり、ここでi+jは少なくとも1に等しく、
-mは、1から20まで変化する整数、好ましくは1である)。
【0015】
本発明の変形例によれば、Xは、下記式IIの基を示す:
>N-Y
(ここで、Yは、C1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、またはC6-C18、好ましくはC6アリール基、または水素原子、または-R1-A基(ここで、R1は1~18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価の炭化水素基を示し、Aは窒素原子を含む基である)を示す)。
【0016】
本発明の別の変形例によれば、Xは、下記式IIIの基を示す:
【化1】
(ここで、R'基は、同一であっても異なっていてもよい、直鎖または分枝鎖の二価のC
1-C
18脂肪族基、好ましくはメチレンまたはエチレンを示す)。
【0017】
本発明のさらに別の変形例によれば、変性ジエンエラストマーの高分子は、Xが下記式IVの基を示す式Iに対応する:
>N-G3-SiR''aEk(OR)3-a-k
(ここで、
-G3は、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC1-C18、好ましくはC1-C10脂肪族炭化水素基、より好ましくは飽和および直鎖の二価のC3-C8脂肪族炭化水素基、または二価のC6-C18芳香族炭化水素基であり、
-R''は、C1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルを示し、
-R基は、互いに独立して、C1-C10、実際にはC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、より好ましくはメチルまたはエチルを示し、
-aは、値0または1を有する整数を示し、kは、0から3まで変化する整数であり、ここで、a+kは、3以下である、ただし、i+j+kは、少なくとも1および最大で9、好ましくは最大で8、より好ましくは最大で7、さらにより好ましくは最大で6である)。
【0018】
本発明によれば、変性ジエンエラストマーの高分子は、好ましくは、mが値1を有する式Iに対応する。
本発明によれば、変性ジエンエラストマーの高分子は、mが値1を有し、Xが種々の変形例における上記のような基を示す、式Iに対応することが好ましい。
変性ジエンエラストマーは、特に、mが値1を有し、Xが>N-Y基(ここで、YはC1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、特にメチルを示す)を示す、式Iに対応することがより好ましい。
前述のものと組み合せることができる本発明の変形例によれば、Eは、鎖末端に窒素原子を含む基、より詳しくは環式または非環式アミン官能基を担持するジエンエラストマーを示す。
本発明によれば、分岐高分子は、その分岐点が少なくとも3個のジエンエラストマーブロック、すなわち、3個、4個、5個および6個の枝分れを有する高分子、および必要に応じて7個、8個および9個、実際にはさらに多くの枝分れで構成された混合物に結合されている全ての高分子からなる。技術的現実と実現可能性の理由から、これらの高分子は、分岐単位のいずれかの側に、ケイ素原子についてジエンエラストマーブロックの分布を示すことが好ましい。すなわち、エラストマー分枝は、すべて同じ分岐点に結合されとは限らず、ケイ素原子上に分布される。従って、3分岐高分子は、分岐単位の一端に2つのエラストマー分枝およびもう一端に1つのエラストマー分枝を含むことができ、4分岐高分子は、分岐単位の一端に2つのエラストマー分枝および分岐単位のもう一端に2個のエラストマー分枝または分岐単位の一端に3個のエラストマー分枝およびもう一端に1つのエラストマー分枝など、を含むことができる。
【0019】
本発明の有利な変形例によれば、分岐高分子の質量含有量は、変性ジエンエラストマーの全質量に対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%である。
本発明の特に好ましい別の実施形態によれば、変性ジエンエラストマーは、変性ジエンエラストマーの総質量に対して、少なくとも50質量%の分岐高分子、好ましくは少なくとも80質量%を含む。
mが値1を有する好ましい変形例に従い式Iを参照してこの変形例を説明するために、変性ジエンエラストマーの高分子が式(I)に対応する場合、変性ジエンエラストマーの総質量に対して、少なくとも50質量%の高分子、好ましくは少なくとも80質量%が式Iに対応し、ここで、i+jが少なくとも3に等しいかまたは、状況によっては、i+j+kが少なくとも3に等しいことを読者は理解するであろう。
本発明のもう1つの好ましい別の実施形態に従う変性ジエンエラストマーは、前の変形例と組み合せることができ、変性ジエンエラストマーの総質量に対して、少なくとも35質量%の、3個の枝分れを有する分岐高分子、好ましくは少なくとも40%を含む。
mが値1を有する好ましい変形例に従う式Iを参照してこの変形例を説明するために、変性ジエンエラストマーの高分子が式Iに対応する場合、変性ジエンエラストマーの総質量に対して、少なくとも35質量%の高分子、好ましくは少なくとも40質量%が式Iに対応し、ここで、i+jが少なくとも3に等しいかまたは、状況によっては、i+j+kが少なくとも3に等しいことを読者は理解するであろう。
【0020】
本発明のもう1つの好ましい別の実施形態に従う変性ジエンエラストマーは、2つの前の変形例の一方またはもう一方とまたはこの2つの組合せと組み合せることができ、変性ジエンエラストマーの総質量に対して、多くても25質量%の、4個以上の枝分れを有する分岐高分子を含む。
mが値1を有する好ましい変形例に従う式Iを参照してこの変形例を説明するために、変性ジエンエラストマーの高分子が式Iに対応する場合、変性ジエンエラストマーの総質量に対して、多くても25質量%の高分子が式Iに対応し、ここで、i+jが少なくとも4に等しいかまたは、状況によっては、i+j+kが少なくとも4に等しいことを読者は理解するであろう。
変性ジエンエラストマーの種類、エラストマー分枝の官能化、そのMn、アルコキシ官能基、ケイ素原子の数、スペーサー基および少なくとも1個の窒素原子を含む基、分岐高分子の含有量、3-分岐高分子の含有量などに関する種々の好ましい変形例および態様は、それらの適合性の下で互いに組み合せることができる。
【0021】
本発明の有利な変形例によれば、その構造内に少なくとも1個の窒素原子を含む基を介して互いに結合されている少なくとも2個のケイ素原子を含む分岐単位を含み、ケイ素原子と窒素原子との結合がスペーサー基を介して生成されている変性ジエンエラストマーは、下記の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つおよび好ましくは全部が認められる:
-変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、2個のケイ素原子と1個の窒素原子とを含む、
-窒素原子を含む基が、C1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、特にメチルで置換された窒素原子である、
-スペーサー基が、3~8個の炭素原子を有する飽和および直鎖の二価の脂肪族基である、
-1個以上のケイ素原子を置換しているアルコキシ基が、1~4個の炭素原子を含み;好ましくは、メトキシ基またはエトキシ基である、
-1個以上のケイ素原子を置換しているアルコキシ官能基の全部または一部を加水分解してヒドロキシル基を得る、
-ジエンエラストマーが、ブタジエン/スチレンコポリマーである、
-ケイ素原子に結合されていないエラストマー分枝の末端の全部または一部、好ましくは70mol%が、鎖末端のモル数に対して、アミン官能基で官能化されている、
-エラストマー分枝の平均Mnが、150 000g/mol未満、好ましくは40 000g/mol~100 000g/molである、
-変性ジエンエラストマーが、少なくとも50質量%の、少なくとも3個の枝分れを有する分岐高分子を含む、
-変性ジエンエラストマーが、少なくとも35質量%の、3個の枝分れを有する分岐高分子を含む。
【0022】
本発明のこれらの有利な変形例によれば、変性ジエンエラストマーは、好ましい態様に従い、多くても25質量%の、4個以上の枝分れを有する分岐高分子含むことができる。
本発明に従う変性ジエンエラストマーは、少なくとも1種のジエンモノマーの重合から得られるリビングジエンエラストマーと、少なくとも2個のトリアルコキシシリル基またはトリハロシリル基を含む分子から選ばれた特定の官能化剤との反応を含む合成プロセスに従って得ることができ、このトリアルコキシシリル基またはトリハロシリル基は少なくとも1個の窒素原子を含む基を介して互いに結合しており、ケイ素原子と窒素原子との結合はスペーサー基を介して生成されている。
本発明のもう1つの主題は、少なくとも、80phr以上、好ましくは100phr以上のシリカ含有量を含む補強用充填剤、および75phr以上の変性ジエンエラストマーの含有量を含むエラストマーマトリックスをベースとするゴム組成物であり、この変性ジエンエラストマーが下記のその特定の有利で好ましい態様が含まれる、この合成プロセスによって得られている。
重合段階は、従来通り、特に、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機化合物によって、開始されるアニオン重合により行うことができる。少なくとも1種の共役ジエンモノマーの重合は、鎖末端に反応性部位を有するエラストマー鎖を生成する。この時に一般に使用される用語は、リビングエラストマーまたはリビング鎖である。
【0023】
アニオン重合に関連して、重合開始剤は、任意の公知のアニオン開始剤であってもよい。しかしながら、リチウムのようなアルカリ金属、バリウムのようなアルカリ土類金属を含む開始剤を使用することが好ましい。リチウムのようなアルカリ金属を含む開始剤を使用することが好ましい。適切な有機リチウム開始剤は、特に、少なくとも1つの炭素-リチウム結合または少なくとも1つの窒素-リチウム結合を含むものである。代表的な化合物は、エチルリチウム、n-ブチルリチウム(n-BuLi)またはイソブチルリチウムのような脂肪族有機リチウムならびにピロリジンおよびヘキサメチレンイミンのような環状第二級アミンから得られるリチウムアミドである。このようなアニオン重合開始剤は当業者に公知である。
重合は、それ自体公知の方法で実施できる。重合は、一般に、0℃と110℃の間の温度、好ましくは40℃~100℃、実際には50℃~90℃の温度で実施される。重合プロセスは、溶液中でより濃縮されたもしくはより濃縮されてないまたは希釈された媒体中で実施できる。重合溶媒は、例えばペンタン、ヘキサンヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンのような脂肪族または脂環式炭化水素、またはベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素であってもよい不活性炭化水素溶媒が好ましい。
【0024】
本発明に関連して使用できるモノマーは、上に記載されている。
ジエンエラストマーのミクロ構造を改良するために、変性剤および/またはランダム化剤を適切な量で添加してもよいし、添加しなくてもよい。これは当業者の一般的な知識の範囲内である。
重合段階に関連するこれらの変形例は、下記の好ましいまたは別の態様および変形例と組み合せることができる。
少なくとも1種の共役ジエンモノマーの重合は、リビングエラストマー鎖を生成する。これらのリビング鎖またはリビングエラストマーは、その後、変性段階中で変性剤と反応させる。変性剤は、エラストマーの反応性部位に対して反応性の少なくとも1種の基を含み、この場合アルコキシ基またはハロゲン原子がケイ素原子に置換する。
リビングジエンエラストマーと反応させることを意図した変性剤の量は、本質的に、所望の変性ジエンエラストマーのタイプに依存する。一般に、変性剤と重合開始剤の金属とのモル比は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.15、より好ましくは少なくとも0.25、および多くても0.45、好ましくは多くても0.40、実際には多くても0.35である。従って、変性段階の特に有利な変形例によれば、官能化剤と重合開始剤の金属とのモル比は、0.25~0.40の範囲内の値を有する。
【0025】
エラストマーへの変性剤の添加および変形例とエラストマーとの反応の条件は、アルコキシシランまたはハロシラン化合物を使用するアニオン重合の変性については従来のものであり、当業者に公知である。これらの条件は、特定の制限を含まない。
例えば、リビングジエンエラストマーとのこの反応は、官能化剤をリビングエラストマー鎖に、またはその逆に添加することにより、-20℃と100℃の間の温度で行うことができる。この反応は、勿論、1種以上の異なる官能化剤により行うことができる。
リビングエラストマーと官能化剤とのブレンドは、任意の適切な手段で、特に、静的型の利用可能な撹拌を有する任意のミキサーおよび/または当業者には知られている完全撹拌タイプの任意の動的ミキサーを使用して行うことができる。後者は、数分、例えば2分から数時間、例えば2時間まで変化できるリビングジエンポリマーと官能化剤との反応時間を決定する。
【0026】
本発明の変形例によれば、変性剤は下記式Vに対応するシラン化合物から選ばれる:
(Y)3Si-(G1-X-G2)m-Si(Y)3
(式中:
-Yは、ハロゲン原子、特に塩素、またはアルコキシ基OR(Rは、互いに独立して、C1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルを示す)のいずれかを示し、
-G1およびG2は、互いに独立して、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC1-C18、好ましくはC1-C10脂肪族炭化水素基、より好ましくは飽和および直鎖の二価のC3-C8脂肪族炭化水素基、または二価のC6-C18芳香族炭化水素基を示し;
-Xは、少なくとも1個の窒素原子を含む基を示し、
-mは、1~20の範囲の整数である)。
【0027】
本発明の変形例によれば、Xは、式VIの基を示す:
>N-Y
(ここで、Yは、C1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、または-R1-A(ここで、R1は1~18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価の炭化水素基を示し、Aは窒素原子を含む基である)を示す)。
例えば、官能基Xが>N-Y基(ここで、YはC1-C4アルキル基、またはC6アリール基、またはトリアルキルシリル基を示す)を示す分子として、化合物ビス(トリエトキシシリルアルキル)トリメチルアミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)エチルアミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)プロピルルアミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)ブチルアミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)フェニルアミン、およびこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリエトキシシリル化合物、化合物ビス(トリメトキシシリルアルキル)-N-トリメチルシリルアミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)-N-トリメチルシリルアミン(ここで、アルキル基はC1-C10、好ましくはC3-C8である)が挙げられる。
例えば、官能基Xが>N-Y基(ここで、Yは-R1-A基(ここで、R1は1~18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価の炭化水素基を示し、Aは窒素原子を含む基である)を示す分子として、化合物ビス(トリエトキシシリルアルキル)(3-メチルアミノプロピル)アミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)(3-ヘキサメチレンアミノプロピル)アミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)(3-イミダゾリルプロピル)アミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)(3-ジヒドロイミダゾリルプロピル)アミン、およびこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物(ここで、アルキル基はC1-C10、好ましくはC3-C8である)が挙げられる。
【0028】
本発明のさらに他の変形例によれば、Xは、下記式VIIの基を示す:
【化2】
(ここで、R'は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖または分子鎖の二価のC
1-C
18脂肪族基、好ましくはメチレンまたはエチレンを示す)。
例えば、官能基Xが式IIの基を示す分子として、化合物ビス(トリメトキシシリルアルキル)ピペラジン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)ピペラジン、ビス(トリメトキシシリルアルキル)イミダゾリジン、ビス(トリメトキシシリルアルキル)イミダゾリジン、ビス(トリメトキシシリルアルキル)ヘキサヒドロピリミジン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)ヘキサヒドロピリミジン(ここで、アルキル基はC
1-C
10、好ましくはC
3-C
8である)が挙げられる。
【0029】
本発明の他の変形例によれば、Xは式VIIIの基を示す:
>N-G3-SiR''a(OR)3-a
(ここで
-G3は、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC1-C18、好ましくはC1-C10脂肪族炭化水素基、より好ましくは飽和および直鎖の二価のC3-C8脂肪族炭化水素基、または二価のC6-C18芳香族炭化水素基を示し、
-R''は、C1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルを示し、
-R基は、互いに独立して、C1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルを示し、
-aは、値0または1を有する)。
例えば、官能基Xが-N-G3-SiR''(OR)2基を示す分子として、化合物ビス(トリエトキシシリルアルキル)ジエトキシメチルシリルアルキルアミン、ビス(トリエトキシシリルアルキル)ジエトキシエチルシリルアルキルアミン(ここで、アルキル基はC3-C8である)、さらにこれらの化合物に対応するトリメトキシ化合物およびジメトキシ化合物が挙げられる。
例えば、官能基Xが-N-G3-Si(OR)3基を示す分子として、化合物トリス(トリエトキシシリルアルキル)アミン、トリス(トリメトキシシリルアルキル)アミン(ここで、アルキル基は、C1-C10、好ましくはC3-C8である)が挙げられる。
【0030】
本発明の好ましい変形例によれば、Xの表示に関連する前の変形例およびG1およびG2の表示に関連するものの各々と組み合せることができ、mは値1を有する。
本発明の特に好ましい変形例によれば、本発明に従う分子は、R基がメチル基またはエチル基を示し、Xが>N-Y基(ここで、YはC1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルを示し、G1およびG2が共に、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC1-C18、好ましくはC1-C10脂肪族炭化水素基、より好ましくは飽和および直鎖の二価のC3-C8脂肪族炭化水素基を示し、mは値1を有する、式IVに対応する。
これらの好ましい分子の中には、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、およびこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリエトキシシリル化合物、化合物ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-トリメチルシリルアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-N-トリメチルシリルアミンが挙げられる。
これらの重合段階および官能化段階の終了時に、本発明に従う変性ジエンエラストマーの合成プロセスが、変性ジエンエラストマーの回収する段階によってそれ自体公知の方法で続けることができる。
【0031】
本発明によれば、ゴム組成物は、上記のような少なくとも75phrの変性ジエンエラストマー、好ましくは少なくとも80phr、より好ましくは100phrの変性ジエンエラストマーを含むエラストマーマトリックスを含む。変性ジエンエラストマーは、上記のようないくつかの変性ジエンエラストマーの混合物からなることができる。
本発明の変形例によれば、エラストマーマトリックスは、25phr未満の、好ましくは20phr未満の上記変性ジエンエラストマー以外の少なくとも1種のジエンエラストマーを含むことができる。相補的なジエンエラストマーとして、天然か合成かにかかわらず任意のジエンエラストマーが挙げられる。特に、ジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択できる。ブタジエンコポリマーは、特に、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)からなる群から選択される。
本発明によれば、ゴム組成物はまた、少なくとも80phrのシリカ、好ましくは少なくとも100phr、および多くても200phr、好ましくは多くても150phrを含み、最適含有量は目標とする特定の用途に従って知られている通り異なっている。
【0032】
使用されるシリカは、当業者に公知の任意の補強用シリカ、特に、BET比表面積およびCTAB比表面積が共に450m2/g未満、好ましくは30~400m2/g、特に60m2/gと300m2/gの間、好ましくは130m2/gと300m2/gの間、実際には130m2/gと250m2/gの間である任意の沈降シリカまたはヒュームドシリカであってもよい。
シリカに加えて、その能力がタイヤトレッドの製造に使用できるゴム組成物を補強するのに知られている任意の他のタイプの補強用充填剤、例えばカーボンブラックまたは別の補強用無機充填剤、あるいはこれらの充填剤の混合物を使用することが可能である。
カーボンブラックとして、個別にまたは混合物の形で使用される全てのカーボンブラック、特に、タイヤのトレッドに従来使用されているHAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック類(「タイヤ級」ブラック類)が適している。より詳しくは、この中で、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズ(ASTM級)の補強用カーボンブラックが挙げられる。
「補強用無機充填剤」は、本特許出願において、定義により、その色合いおよびその由来(天然または合成)が何であっても、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強することのできる、任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;このような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面にヒドロキシル基(-OH)基の存在に特徴がある。
シリカ(SiO2)の他に、シリカ質タイプ、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、あるいは、例えばUS 6 610 261号およびUS 6 747 087号に記載されている補強用酸化チタンもまた、特に補強用無機充填剤として適している。特に、アルミナ質タイプの鉱質充填剤の中で、アルミナ(Al2O3)または水酸化(酸化)アルミニウムが挙げられる。
【0033】
別の種類の補強用充填剤、特にカーボンブラックも補強用充填剤として適している。ただし、これらの補強用充填剤はシリカ質層で覆われているかあるいはその表面に、官能部位、特にヒドロキシル部位を含み、充填剤とエラストマーとの結合を確立するためにカップリング剤の使用を必要とする。一例として、例えば、特許文献WO 96/37547号およびWO 99/28380号に記載されているようなタイヤ用のカーボンブラックが挙げられる。
シリカを含む補強性無機充填剤が供給される物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは他の適切な高密度化形態のいずれの形状であれ重要でない。勿論、補強用無機充填剤は、異なる補強用充填剤の混合物、特に上述のような高分散性シリカ質充填剤の混合物も意味すると理解されたい。
本発明の有利な変形例によれば、補強用充填剤は、主にシリカであり、すなわち、補強用充填剤の総質量の50質量%を超えるシリカを含んでいる。
この変形例によれば、カーボンブラックも存在する場合には、20phr未満、好ましくは10phr未満の含有量で、かつ0.5phrを超える、特に1phr以上の含有量で使用できる。
補強用充填剤としてのシリカの使用は、充填剤とエラストマーとの結合を確立するためにカップリング剤の使用を必要とする場合がある。その場合、カップリング剤として、オルガノシラン、特に、アルコキシシランポリスルフィドまたはメルカプトシラン、または少なくとも二官能性ポリオルガノシロキサンも使用することが可能である。
このようなカップリング剤は、上記の変性ジエンエラストマーの合成に使用される変性剤と混同してはならない。
【0034】
本発明に従う組成物がカップリング剤を含む場合、その量は補強用無機充填剤に左右される。その含有量は、この充填剤の含有量に従い当業者によって容易に調整される;典型的には、カーボンブラック以外の無機充填剤の量に対して、0.5質量%~15質量%、好ましくは6質量%~12質量%の程度である。
また、本発明に従うゴム組成物は、カップリング活性剤、充填剤を被覆するための作用剤またはより一般的には、知られている通り、エラストマーマトリックス中の充填剤の分散の改善および組成物の粘度の低下によって、生状態で加工されるその能力を改善することのできる加工助剤を含有することができ、これらの物質は、例えば、加水分解性シラン、例えば、アルキルアルコキシシラン、ポリオール、ポリエーテル、第一級、第二級または第三級アミン、またはヒドロキシル化もしくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
また、本発明に従うゴム組成物は、上記のカーボンブラックまたはその他の補強用無機充填剤の全部または一部を置き換えることができる補強用有機充填剤を含むことができる。補強用有機充填剤の例として、出願WO-A-2006/069792号、WO-A-2006/069793号、WO-A-2008/003434号およびWO-A-2008/003435号に記載されているような官能化されたポリビニル有機充填剤が挙げられる。
【0035】
本発明に従うゴム組成物は、少なくとも1種の可塑剤を含有していてもよい。タイヤゴム組成物の当業者に知られている通り、この可塑剤は、ガラス転移温度(Tg)が高い炭化水素樹脂、Tgが低い炭化水素樹脂、可塑化油およびそれらの混合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、可塑剤は、高Tg炭化水素樹脂、可塑化油およびそれらの混合物から選ばれる。
本発明の有利な変形例によれば、組成物中の可塑剤の合計含有量は、20phr以上、好ましくは50phr以上、有利には多くても100phrである。
定義によれば、Tgが高い炭化水素樹脂は、周囲温度および圧力(20℃、1気圧)で定義上は固体であるが、可塑化油は、周囲温度で液体であり、Tgが低い炭化水素樹脂は、周囲温度で粘性である。Tgは、規格ASTM D3418(1999)に従って測定される。
知られている通り、Tgが高い炭化水素樹脂は熱可塑性炭化水素樹脂であり、それのTgは20℃より高い。本発明に関連して使用できるTgが高い好ましい炭化水素樹脂は、当業者には周知であり、商業的に入手可能である。
可塑剤は、また、「低Tg」と呼ばれる、20℃で液体である、すなわち、定義によれば、Tgが20℃未満、好ましくは40℃未満である、可塑化油(または増量剤オイル)を含有していてもよい。
【0036】
エラストマーに対するその可塑化特性が知られる、芳香族または非芳香族の性質であるかにかかわらず、任意の増量剤オイルを使用できる。周囲温度(20℃)において、多かれ少なかれ粘性であるこれらのオイルは、特に、周囲温度で本質的に固体であるTgが高い炭化水素樹脂と異なり、液体(すなわち、確認として、その容器の形状を最後には取る能力を有する物質)である。
ナフテン油(低粘度または高粘度、特に水素化されているかまたは水素化されていない)、パラフィン油、MES(中程度の抽出溶媒和物)オイル、TDAE(処理済み留出芳香族抽出物)オイル、RAE(残留芳香族抽出物)オイル、TRAE(処理残留芳香族抽出物)オイルおよびSRAE(安全性残留芳香族抽出物)オイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、リン酸可塑剤、スルホン酸可塑剤ならびにこれらの化合物の混合物からなる群から選択される可塑化用オイルが特に適している。
本発明に従うゴム組成物はまた、当業者に公知の、タイヤ用ゴム組成物、特にトレッドゴム組成物に一般に使用される通常の添加剤および加工助剤の全部または一部、例えば、非補強用充填剤、顔料、保護剤、例えば、オゾン防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤または酸化防止剤、疲労防止剤、補強用樹脂(例えば、出願WO 02/10269号に記載されているもの)または、例えば、イオウおよび他の加硫剤、および/または過酸化物および/またはビスマレイミドに基づく架橋系を含むことができる。
【0037】
本発明の非常に有利な変形例によれば、上記ゴム組成物は、下記のようなものである:
*上記変性ジエンエラストマーは、次の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つおよび好ましくは全部を示す:
-上記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、2個のケイ素原子と1個の窒素原子とを含む、
-窒素原子を含む基が、C1-C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、特にメチルで置換された窒素原子である、
-上記スペーサー基が、3~8個の炭素原子を有する飽和および直鎖の二価の脂肪族基である;
-1個以上のケイ素原子を置換しているアルコキシ基が、1~4個の炭素原子を含み;好ましくは、メトキシ基またはエトキシ基である;
-1個以上のケイ素原子を置換しているアルコキシ官能基の全部または一部、好ましくは少なくとも50mol%を加水分解してヒドロキシル基を得る;
-上記ジエンエラストマーが、ブタジエン/スチレンコポリマーである;
-ケイ素原子に結合されていないエラストマー分枝の末端の全部または一部、好ましくは少なくとも70mol%が、鎖末端のモル数に対して、アミン官能基で官能化されている;
-上記エラストマー分枝の平均Mnが、150 000g/mol未満、好ましくは40 000g/mol~100 000g/molである、
-上記変性ジエンエラストマーが、少なくとも50質量%の、少なくとも3個の分枝を有する分岐高分子を含む;
-上記変性ジエンエラストマーが、少なくとも35質量%の、3個の分枝を有する分岐高分子を含む。
*これは、20phr以上、好ましくは50phr以上の少なくとも1種の可塑剤を含む、
*これは、架橋系または加硫系を含む。
【0038】
本発明に従うゴム組成物は、適切なミキサー内で当業者に周知の2つの連続する調製段階を使用して製造される:
-第1の熱機械加工または混練段階(「非生産」段階)、これは単一の熱機械的段階で行うことができ、この間に、架橋系を除く全ての必要な成分、特にエラストマーマトリックス、充填剤および任意選択の他の各種添加剤を標準の内部ミキサー(例えば『バンバリー』タイプ)のような適切なミキサー内に導入する。充填剤のエラストマーへの混入は、熱機械的に混錬することにより1回以上行うことができる。
-第2の機械加工段階(「生産」段階)、これは上記第1の非生産段階で得られた混合物を、典型的には120℃未満、例えば40℃と100℃の間の低めの温度まで冷却した後、オープンミルのような外部ミキサーで実施される。次いで、架橋系が混入され、次いで、混ぜ合せた混合物が数分間、例えば5分と15分の間混合する。
この非生産段階は、高温で、110℃と200℃の間、好ましくは130℃と185℃の間の最高温度まで、一般に2分と10分の間の時間行うことができる。
【0039】
このようにして得られた最終組成物は、その後、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはプレートの形にカレンダー加工するか、あるいは、例えば、車両のタイヤトレッドとして使用できるゴム半完成(または型出し)要素の形で押出される。
生状態(架橋または加硫前)または硬化状態(架橋または加硫後)であってもよい上記組成物は、タイヤに使用できる半完成品とすることができる。
上記組成物の架橋は、当業者に公知の方法で、例えば130℃と200℃の間の温度で、加圧下に実施できる。
本発明に従って補強されたゴム組成物を特徴付ける高含有量の充填剤にもかかわらず、ヒステリシス/生の加工特性の妥協点が維持されることによって、このような組成物がタイヤ、非常に詳しくはトレッドの任意の半完成品を構成することができ、特にその転がり抵抗を低減させると共に、高含有量の補強用充填剤に関するその性能品質を向上させることに留意されたい。
従って、本発明の最終主題は、全部または一部が本発明に従う組成物により構成される半完成品、特にトレッドを含むタイヤである。
本発明の上記特性、さらに他のことのより良い理解は、具体的な説明として限定することなく示される、本発明のいくつかの実施例の以下の説明を読むことにより得られるであろう。
【実施例】
【0040】
I-使用する測定法および試験
サイズ排除クロマトグラフィーによるカップリングまたは星型分岐前の枝分れのMnの値の定量
SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)技術は、多孔質ゲルで充填されたカラムを通してそのサイズに従って溶液中の高分子を分離することを可能にする。この高分子は、その流体力学的体積に応じて分離され、最初に最もかさばったものが溶出される。
絶対的な方法ではないSECにより、ポリマーのモル質量の分布を把握できる。市販の標準製品から種々の数平均モル質量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を決定することができ、多分散指数(PI=Mw/Mn)を「ムーア」較正を介して計算できる。
分析前にこのポリマー試料の特別な処理はない。これは、溶出溶媒に約1g.l-1の濃度で簡単に可溶化される。次いで、この溶液を注入前に0.45μmの多孔度を有するフィルターで濾過する。
使用される装置は、Waters Allianceクロマトグラフィーラインである。溶出溶媒は、テトラヒドロフラン+1容量%のジイソプロピルアミン+1容量%のトリエチルアミンであり、流量は、1ml.min-1であり、系の温度は、35℃であり、分析時間は、30分である。Styragel HT6E商品名を有する2列のWatersカラムの一組が用いられる。このポリマー試料の溶液の注入容積は100μlである。この検出器は、Waters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを操作するためのソフトウェアは、Waters Empowerシステムである。
計算された平均モル質量は、次のミクロ構造を有するSBRについて作成された較正曲線と関連している:25質量%のスチレンタイプの単位、23質量%の1,2-タイプの単位および50質量%のトランス-1,4-タイプの単位。
【0041】
高分解能サイズ排除クロマトグラフィー(高分解能SEC)技術による線状高分子および分岐高分子の含有量の決定
高分解能SEC技術を使用して、ポリマー試料中に存在する分子鎖の異なる集団の質量パーセントを決定する。
分析前にこのポリマー試料の特別な処理はない。これは溶出溶媒に約1g.l-1の濃度で簡単に可溶化される。次いで、この溶液を注入前に0.45μmの多孔度を有するフィルターで濾過する。
使用される装置は、Waters Alliance 2695クロマトグラフィーラインである。溶出溶媒は、テトラヒドロフランであり、流量は、0.2ml.min-1であり、系の温度は、35℃である。連続した3本の同一カラムの一組が使用される(Shodex、長さ300mm、直径8mm)。一組のカラムの理論的なプレートの数は、22 000よりも多い。このポリマー試料の溶液の注入容積は50μlである。この検出器は、Waters 2414示差屈折計であり、クロマトグラフデータを操作するためのソフトウェアは、Waters Empowerシステムである。
25質量%計算されたモル質量は、次のミクロ構造を有するSBRについて作成された較正曲線と関連している:25質量%のスチレンタイプの単位、23質量%の1,2-タイプの単位および50質量%のトランス-1,4-タイプの単位。
【0042】
ムーニー粘度の決定
ポリマーおよびゴム組成物の場合、ムーニー粘度ML(1+4)100℃は、規格ASTM D-1646に従って測定される。
規格ASTM D-1646に記載されているように、振動コンシストメーターが使用される。ムーニー塑性測定は次の原理に従って実施される:生の状態(すなわち、硬化前)にある組成物は、100℃に加熱した円筒形チャンバ内で成形される。1分間の予熱後、ロータが試験標本内に2回転/分で回転し、4分間回転させた後この運動を維持するための作動トルクが測定される。ムーニー可塑性ML(1+4)は、「ムーニー単位」(MU、ここで1MU=0.83 N.m)で表される。
【0043】
示差熱量測定
エラストマーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計を使用して規格ASTM D3418(1999)に従って決定される。
【0044】
動的特性
動的特性、特にtanδmaxは、粘度分析計(Metravib VA4000)で規格ASTM D 5992-96に従って測定される。単純な交互正弦剪断応力に、10Hzの周波数で、規格ASTM D 1349-99に従う標準温度条件(23℃)下に供した加硫された組成物のサンプル(厚さ2mmおよび断面積79mm2を有する円筒状試験標本)の応答が記録される。頂点間歪み振幅掃引を0.1%から50%まで(外向きサイクル)、次いで、50%から0.1%まで(戻りサイクル)で実施する。より詳細には、使用する結果は、損失係数tanδである。戻りサイクルについては、tanδmaxと表示される、観測されたtanδの最大値が示される。この値は材料のヒステリシスを表し、本発明の場合には転がり抵抗を表す:tanδmaxの値が小さいほど、転がり抵抗は低い。
【0045】
II-エラストマーの調製の実施例
ポリマーAの調製:官能性SBR-対照
44kgのメチルシクロヘキサンを含有する、約2バールの窒素圧下に維持した90リットルの反応器に、1.74kgのスチレンおよび5.84kgのブタジエン、さらにメチルシクロヘキサン中のテトラヒドロフランの0.36mol.l-1溶液を注入する。n-ブチルリチウムの添加により重合されるこの溶液中の不純物を中和した後、716mlの、メチルシクロヘキサン中の0.06mol.l-1のn-ブチルリチウムを添加する。重合は50℃で行われる。
45分後、モノマーの転化率は68%に達する。この含有量は、200mmHgの減圧下に140℃で乾燥した抽出物を計量することにより決定される。SEC RIで測定した、カップリング前の枝分れMnの値は120 000g.mol-1である。
次いで、1.19リットルの、メチルシクロヘキサン中のN,N-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランの0.018mol.l-1溶液を添加する(n(N,N-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン/n(n-ブチルリチウム)=0.5)。この溶液を50℃の温度で30分間撹拌する。次いで、この溶液を、エラストマー100部当たり0.8部(phr)の4,4'-メチレンビス(2,6-ジ(tert-ブチル)フェノール)およびエラストマー100部当たり0.2部(phr)のN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミンを添加することによって抗酸化にする。このように処理されたコポリマーは、蒸気ストリッピング操作によってその溶液から分離され、次いで、オープンミルで100℃において15分間乾燥させる。
ポリマーのムーニー粘度は70である。
高分解能SECにより決定された、1個の枝分れ、2個の枝分れ、3個の枝分れ、4個の枝分れ、5個の枝分れおよび6個の枝分れ構成要素の分布は次の通りである:10/87/2/1/0/0。
このコポリマーのガラス転移温度は-63℃である。
【0046】
ポリマーBの調製:本発明に従う官能性SBR
43kgのメチルシクロヘキサンを含有する、約2バールの窒素圧下に維持した90リットルの反応器に、1.67kgのスチレンおよび5.91kgのブタジエン、さらにメチルシクロヘキサン中のテトラヒドロフランの0.36mol.l-1溶液を注入する。n-ブチルリチウムの添加により重合されるこの溶液中の不純物を中和した後、1628mlの、メチルシクロヘキサン中の0.06mol.l-1のn-ブチルリチウムを添加する。重合は50℃で行われる。
40分後、モノマーの転化率は69%に達する。この含有量は、200mmHgの減圧下に140℃で乾燥した抽出物を計量することにより決定される。SEC RIで測定した、カップリング前の枝分れMnの値は52 000g.mol-1である。
次いで、1.38リットルの、メチルシクロヘキサン中のビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミンの0.022mol.l-1溶液を添加する(n(ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン)/n(n-ブチルリチウム)=0.3)。この溶液を50℃の温度で30分間撹拌する。次いで、この溶液を、エラストマー100部当たり0.8部(phr)の4,4'-メチレンビス(2,6-ジ(tert-ブチル)フェノール)およびエラストマー100部当たり0.2部(phr)のN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミンを添加することによって抗酸化にする。このように処理されたコポリマーは、オーブン内の脱気操作によって、その溶液から分離される。
ポリマーのムーニー粘度は38である
高分解能SECにより決定された、1個の枝分れ、2個の枝分れ、3個の枝分れ、4個の枝分れ、5個の枝分れおよび6個の枝分れ構成要素(1b/2b/3b/4b/5b/6b)の分布は次の通りである:2/11/48/33/5/1。
このコポリマーのガラス転移温度は-64℃である。
【0047】
ポリマーCの調製:本発明に従う官能性SBR
44kgのメチルシクロヘキサンを含有する、約2バールの窒素圧下に維持した90リットルの反応器に、1.67kgのスチレンおよび5.91kgのブタジエン、さらに1.01リットルの、メチルシクロヘキサン中のテトラヒドロフランの0.36mol.l-1溶液を注入する。n-ブチルリチウムの添加により重合されるこの溶液中の不純物を中和した後、999mlの、メチルシクロヘキサン中の0.06mol.l-1のn-ブチルリチウムを添加する。重合は50℃で行われる。
42分後、モノマーの転化率は68%に達する。この含有量は、200mmHgの減圧下に140℃で乾燥した抽出物を計量することにより決定される。SEC RIで測定した、カップリング前の枝分れMnの値は81 000g.mol-1である。
次いで、0.76リットルの、メチルシクロヘキサン中のビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミンの0.022mol.l-1溶液を添加する(n(ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン)/n(n-ブチルリチウム)=0.26)。この溶液を50℃の温度で30分間撹拌する。次いで、この溶液を、エラストマー100部当たり0.8部(phr)の4,4'-メチレンビス(2,6-ジ(tert-ブチル)フェノール)およびエラストマー100部当たり0.2部(phr)のN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミンを添加することによって抗酸化にする。このように処理されたコポリマーは、オーブン内の脱気操作によって、その溶液から分離される。
ポリマーのムーニー粘度は71である。
高分解能SECにより決定された、1個の枝分れ、2個の枝分れ、3個の枝分れ、4個の枝分れ、5個の枝分れおよび6個の枝分れ構成要素(1b/2b/3b/4b/5b/6b)の分布は次の通りである:3/5/39/50/4/0。
このコポリマーのガラス転移温度は-64℃である。
【0048】
ポリマーDの調製:枝分れの末端におけるアミン官能性のSBR-対照
44kgのメチルシクロヘキサンを含有する、約2バールの窒素圧下に維持した90リットルの反応器に、1.67kgのスチレンおよび5.91kgのブタジエン、さらにメチルシクロヘキサン中のテトラヒドロフランの0.36mol.l-1溶液を注入する。n-ブチルリチウムの添加により重合されるこの溶液中の不純物を中和した後、785mlの、メチルシクロヘキサン中の0.06mol.l-1のリチウムヘキサメチレンイミンを添加する。重合は50℃で行われる。
49分後、モノマーの転化率は70%に達する。この含有量は、200mmHgの減圧下に140℃で乾燥した抽出物を計量することにより決定される。SEC RIで測定した、カップリング前の枝分れMnの値は113 000g.mol-1である。
次いで、1.22リットルの、メチルシクロヘキサン中のN,N-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランの0.018mol.l-1溶液を添加する(n(N,N-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン)/n(リチウムヘキサメチレンイミン)=0.5)。この溶液を50℃の温度で30分間撹拌する。次いで、この溶液を、エラストマー100部当たり0.8部(phr)の4,4'-メチレンビス(2,6-ジ(tert-ブチル)フェノール)およびエラストマー100部当たり0.2部(phr)のN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミンを添加することによって抗酸化にする。このように処理されたコポリマーは、蒸気ストリッピング操作によってその溶液から分離され、次いで、オープンミルで100℃において15分間乾燥させる。
ポリマーのムーニー粘度は62である。
高分解能SECにより決定された、1個の枝分れ、2個の枝分れ、3個の枝分れ、4個の枝分れ、5個の枝分れおよび6個の枝分れ構成要素(1b/2b/3b/4b/5b/6b)の分布は次の通りである:8/88/3/2/0/0。
このコポリマーのガラス転移温度は-63℃である。
【0049】
ポリマーEの調製:本発明に従う枝分れの末端におけるアミン官能性のSBR
43kgのメチルシクロヘキサンを含有する、約2バールの窒素圧下に維持した90リットルの反応器に、1.67kgのスチレンおよび5.91kgのブタジエン、さらにメチルシクロヘキサン中のテトラヒドロフランの0.36mol.l-1溶液を注入する。n-ブチルリチウムの添加により重合されるこの溶液中の不純物を中和した後、1376mlの、メチルシクロヘキサン中の0.06mol.l-1のリチウムヘキサメチレンイミンを添加する。重合は50℃で行われる。
43分後、モノマーの転化率は70%に達する。この含有量は、200mmHgの減圧下に140℃で乾燥した抽出物を計量することにより決定される。SEC RIで測定した、カップリング前の枝分れMnの値は52 000g.mol-1である。
次いで、1.38リットルの、メチルシクロヘキサン中のビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミンの0.022mol.l-1溶液を添加する(n(ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン)/n(リチウムヘキサメチレンイミン)=0.3)。この溶液を50℃の温度で30分間撹拌する。次いで、この溶液を、エラストマー100部当たり0.8部(phr)の4,4'-メチレンビス(2,6-ジ(tert-ブチル)フェノール)およびエラストマー100部当たり0.2部(phr)のN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミンを添加することによって抗酸化にする。このように処理されたコポリマーは、オーブン内の脱気操作によってその溶液から分離される。
ポリマーのムーニー粘度は48である。
高分解能SECにより決定された、1個の枝分れ、2個の枝分れ、3個の枝分れ、4個の枝分れ、5個の枝分れおよび6個の枝分れ構成要素(1b/2b/3b/4b/5b/6b)の分布は次の通りである:3/11/48/32/5/2。
このコポリマーのガラス転移温度は-64℃である。
【0050】
ポリマーFの調製:本発明に従う枝分れの末端におけるアミン官能性のSBR
44kgのメチルシクロヘキサンを含有する、約2バールの窒素圧下に維持した90リットルの反応器に、1.67kgのスチレンおよび5.91kgのブタジエン、さらにメチルシクロヘキサン中のテトラヒドロフランの0.36mol.l-1溶液を注入する。n-ブチルリチウムの添加により重合されるこの溶液中の不純物を中和した後、1096mlの、メチルシクロヘキサン中の0.06mol.l-1のリチウムヘキサメチレンイミンを添加する。重合は50℃で行われる。
48分後、モノマーの転化率は69%に達する。この含有量は、200mmHgの減圧下に140℃で乾燥した抽出物を計量することにより決定される。SEC RIで測定した、カップリング前の枝分れMnの値は86 000g.mol-1である。
次いで、0.76リットルの、メチルシクロヘキサン中のビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミンの0.022mol.l-1溶液を添加する(n(ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン)/n(リチウムヘキサメチレンイミン)=0.27)。この溶液を50℃の温度で30分間撹拌する。次いで、この溶液を、エラストマー100部当たり0.8部(phr)の4,4'-メチレンビス(2,6-ジ(tert-ブチル)フェノール)およびエラストマー100部当たり0.2部(phr)のN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミンを添加することによって抗酸化にする。このように処理されたコポリマーは、オーブン内の脱気操作によってその溶液から分離される。
ポリマーのムーニー粘度は86である。
高分解能SECにより決定された、1個の枝分れ、2個の枝分れ、3個の枝分れ、4個の枝分れ、5個の枝分れおよび6個の枝分れ構成要素(1b/2b/3b/4b/5b/6b)の分布は次の通りである:3/5/41/49/2/0。
このコポリマーのガラス転移温度は-63℃である。
【0051】
III-ゴム組成物の調製の実施例
エラストマーA~Fを、各々2種類の異なる異なる配合物に従って補強用充填剤としてシリカを含んでいる、トレッドタイプのゴム組成物の調製に使用した。
下記の組成物の各々を、第1の工程では、熱機械加工により、次いで、第2の仕上げ工程では、機械加工により製造される。
実験室の内部ミキサーに次の成分が導入され、その容量は400cm3であり、70%充填され、約90℃の開始温度を有する:エラストマー、シリカの2/3、ブラック、カップリング剤およびオイル、次いで約1分後に、補強用充填剤の残り、樹脂、抗酸化剤、ステアリン酸および抗オゾンワックス、次いで約2分後に一酸化亜鉛。
熱機械加工段階を4~5分間、約160℃の最大落下温度まで行われる。
このようにして、上述した第1の工程の熱機械加工時間が行われ、この第1の工程中のブレードの平均速度は50rpmであることが指定されている。
このようにして得られた混合物を回収し、冷却された後、外部ミキサー(ホモフィニシャ)において、イオウおよび促進剤を30℃で添加し、この混ぜ合せた混合物をさらに3~4分間混合する(上述した第2の工程の機械加工)。
このようにして得られた組成物は、次いで、その物理的特性または機械的特性を測定するためのプレート(厚さが2~3mmの範囲である)または薄いゴムシートの形に、または所望の寸法に切断および/またはアセンブリした後に、例えば、タイヤの半完成品として、特にトレッドに、直接使用できる型出し要素の形にカレンダー加工される。
架橋は、150℃で40分間行われる。
【0052】
各々の組成物は、下記の配合物(phr:エラストマー100部当たりの部で表される)を
示す:
表1
シリカ:HDSタイプのRhodia社からのZeosil 1165MP。
カーボンブラック:Cabot社からのASTM N234グレード
オイル:85質量%のオレイン酸を含むヒマワリ油、Novance社からのLubrirob Tod 1880
樹脂:ExxonMobil社からの芳香族DCPD樹脂、Escorez 5600またはPR383
カップリング剤:Degussa社からのシランTESPT Si69
DPG:ジフェニルグアニジン(Flexsys社からのPerkacit DPG)
促進剤:CBS:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsys社からのSantocure CBS)
抗酸化剤:Flexsys社からのN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
【0053】
これらの2つの配合物は、主な相違点として充填剤の含有量を示す。他の相違点は、充填剤の含有量が変化したときの当業者に公知の適応である。このようにして、全可塑剤含有量(オイル+樹脂)が高すぎないモジュラスを保持するために充填剤の含有量を増加させる。シランおよびDPGの含有量もまたシリカ充填剤の含有量に調節される。
【0054】
IV-結果:
次の式に従い性能指数を算出する:100/(tanδ値*ムーニー混合物値)。
この指数が大きいほど、転がり抵抗が低くかつ/または混合物の粘度が低く、したがって加工が容易になる。
【0055】
【0056】
上記実施例は、下記のことを示す:
組成物1Aと組成物1Bとを比較すると、本発明に従うエラストマーは、対照のエラストマーよりも性能指数が優れている
組成物2Aと組成物2Bとを比較すると、本発明に従うエラストマーは、性能指数がより優れている。
従って、本発明に従うエラストマーは、いかなる配合物および含有量が使用されても性能指数がより優れている。
1Dと1Eとを比較すると、本発明に従うエラストマーは、これもまた鎖末端にアミン官能基を含んでいるこの対照と比較して向上した性能妥協点を示す。
2Dと2Eとを比較すると、本発明に従うエラストマーも、これもまた鎖末端にアミン官能基を含んでいるこの対照と比較して向上した性能妥協点を示す。
従って、鎖末端にアミン官能基を有する本発明に従うエラストマーは、鎖末端にアミンを示すが本発明に従わないポリマーと比較して向上した性能を示す。
1Bと2Bとを比較すると、本発明に従うポリマーの性能指数が最高含有量のシリカ充填剤を示す配合物1において高いことも注目される。
1Eと2Eとを比較すると、本発明に従う鎖末端にアミン官能基を有するエラストマーが、高含有量の充填剤を有する配合物1において向上した性能指数を示すことが結論される。
最後に、1Bと1Eとを比較すると、ポリマーが鎖末端のアミン官能基を示す場合には、本発明に従うポリマーが、低tanδ23℃値、すなわち、低転がり抵抗に達するのに特に有用であることが認められる。
【0057】
上記実施例は、本発明に従う変性ジエンエラストマーを含む組成物が従来技術の変性ジエンエラストマーを含む組成物よりも良好な低tanδ/低ムーニー混合物の妥協点を有し、特に、ヒステリシス/ムーニー妥協点におけるこの利益は、配合物が高いシリカ含有量を含有するにつれて全て高くなる。
この利益はまた、特定のポリマーが枝分れの末端にアミン官能基を含有するのにつれて全て高くなる。
結果として、80phr以上の高いシリカ含有量、および特定の変性エラストマーを含む本発明に従うゴム組成物の使用は、予想外に、低いシリカ含有量を含む組成物と比較して、tanδ/低ムーニー妥協点を維持することを可能にする。従って、本発明は、補強用充填剤の含有量の増加に直接関連するタイヤのある種の性能から恩恵を得ることを可能にすると共に、組成物の加工およびそのヒステリシスの特性、これによりタイヤの転がり抵抗に対するこの高い含有量の影響を最小限にする。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕下記のことを特徴とする、少なくとも、シリカを含む補強用充填剤および変性ジエンエラストマーを含むエラストマーマトリックスをベースとするゴム組成物:
-シリカ含有量が80phr以上、好ましくは100phr以上であり、
-変性ジエンエラストマー含有量が75phr以上であり、かつ
-前記変性ジエンエラストマーが高分子を含み、その構造内に、エラストマー分枝で置換され、かつ少なくとも1個の窒素原子を含む基を介して互いに結合されている少なくとも2個のケイ素原子を含む基からなり、ケイ素原子と窒素原子の間の結合がスペーサー基を介して生成されている、n-官能性分岐単位(nは、少なくても1および多くても9、好ましくは多くても6の値を有する)を含む。
〔2〕前記変性ジエンエラストマーのエラストマー分枝が、40 000g/mol~100 000g/molの範囲の数平均モル質量(Mn)を有することを特徴とする、前記〔1〕記載の組成物。
〔3〕前記変性ジエンエラストマーのエラストマー分枝の末端(その末端はケイ素原子に結合されていない)が、窒素原子を含む官能基を担持していることを特徴とする、前記〔1〕または〔2〕記載の組成物。
〔4〕前記変性ジエンエラストマーの構造内の前記n-官能性分岐単位が少なくとも2個のケイ素原子を含み;好ましくは、前記分岐単位が2個のケイ素原子を含み、各々が多くても3個のエラストマー分枝および多くても3個のアルコキシ基で置換されていることを特徴とする、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の組成物。
〔5〕前記変性ジエンエラストマーに担持されたアルコキシ基の全部または一部が加水分解されて、ヒドロキシル基を得ることを特徴とする、前記〔4〕記載の組成物。
〔6〕前記スペーサー基が、飽和または不飽和の環式または非環式の二価のC
1
-C
18
脂肪族炭化水素基または二価のC
6
-C
18
芳香族炭化水素基、好ましくは直鎖または分枝鎖の二価のC
1
-C
10
脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖の二価のC
3
-C
8
炭化水素基であることを特徴とする、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の組成物。
〔7〕前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、下記式Iに対応することを特徴とする、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の組成物:
Ei(OR)
3-i
Si-(G1-X-G2)
m
-Si(OR)
3-j
E
j
(式中:
-Eは、ジエンエラストマー分枝を示し、
-R基は、互いに独立して、C
1
-C
10
、実際にはC
1
-C
8
アルキル基、好ましくはC
1
-C
4
アルキル基、より好ましくはメチルまたはエチルを示し、
-G1およびG2は、互いに独立して、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC
1
-C
18
、好ましくはC
1
-C
10
脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖および飽和の二価のC
3
-C
8
脂肪族炭化水素基、または二価のC
6
-C
18
芳香族炭化水素基を示し;
-Xは、少なくとも1個の窒素原子を含む基を示し;
-iおよびjは、互いに独立して、0から3まで変化する整数であり、ここで、i+jは少なくとも1に等しく、
-mは、1から20まで変化する整数、好ましくは1である)。
〔8〕前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、mが値1を有し、Xが下記から選ばれる基を示す、式Iに対応することを特徴とする、前記〔7〕記載の組成物:
(1)式IIの基:
【化1】
(ここで、R'基は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖または分枝鎖の二価のC
1
-C
18
脂肪族基、好ましくはメチレンまたはエチレンを示す);
(2)>N-G3-SiR''
a
E
k
(OR)
3-a-k
基
(ここで、
-G3は、飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖の環式または非環式の二価のC
1
-C
18
、好ましくはC
1
-C
10
脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖および飽和の二価のC
3
-C
8
脂肪族炭化水素基、または二価のC
6
-C
18
芳香族炭化水素基であり、
-R''は、C
1
-C
4
アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルを示し、
-R基は、互いに独立して、C
1
-C
10
、実際にはC
1
-C
8
アルキル基、好ましくはC
1
-C
4
アルキル基、より好ましくはメチルまたはエチルを示し、
-aは、値0または1を有する整数を示し、kは、0から3まで変化する整数であり、ここで、a+kは、3以下である、ただし、i+j+kは、少なくとも1に等しく、かつ最大で9、好ましくは最大で8、より好ましくは最大で7、さらにより好ましくは最大で6である、
(3)>N-Y基
(ここで、
-Yは、C
1
-C
4
アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、またはC
6
-C
18
、好ましくはC
6
アリール基、または水素原子、または-R1-A基(ここで、R1は1~18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価の炭化水素基を示し、Aは窒素原子を含む基である)。
〔9〕前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、mが値1を有し、Xが>N-Y基(ここで、Yは、C
1
-C
4
アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、特にメチルを示す)を示す、式Iに対応することを特徴とする、前記〔8〕記載の組成物。
〔10〕前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、Eが、鎖末端に、窒素原子を含む基、より詳しくは環式または非環式アミン官能基を含む基を担持する、ジエンエラストマー分枝を示す、式Iに対応することを特徴する、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項記載の組成物。
〔11〕前記変性ジエンエラストマーが、その変性ジエンエラストマーの総質量に対して、少なくとも50質量%の分岐高分子を含むことを特徴とする、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の組成物。
〔12〕前記変性ジエンエラストマーが、その変性ジエンエラストマーの総質量に対して、少なくとも35質量%の、3個の枝分かれを有する分岐高分子を含むことを特徴とする、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項記載の組成物。
〔13〕前記変性ジエンエラストマーが、その変性ジエンエラストマーの総質量に対して、多くても25質量%の、4個以上の枝分れを有する分岐高分子を含むことを特徴とする、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項記載の組成物。
〔14〕下記の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つおよび好ましくは全部が認められることを特徴とする、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項記載の組成物:
-前記変性ジエンエラストマーを構成する高分子が、2個のケイ素原子と1個の窒素原子とを含む、
-窒素原子を含む基が、C
1
-C
4
アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、特にメチルで置換された窒素原子である、
-前記スペーサー基が、3~8個の炭素原子を有する飽和および直鎖の二価の脂肪族基である、
-1個以上のケイ素原子を置換しているアルコキシ基が、1~4個の炭素原子を含み、好ましくは、メトキシ基またはエトキシ基である;
-1個以上のケイ素原子を置換しているアルコキシ官能基の全部または一部を加水分解してヒドロキシル基を得る;
-前記ジエンエラストマーが、ブタジエン/スチレンコポリマーである;
-ケイ素原子に結合されていないエラストマー分枝の末端の全部または一部が、鎖末端のモル数に対して、アミン官能基で官能化されている;
-エラストマー分枝の平均Mnが、150 000g/mol未満、好ましくは40 000g/mol~100 000g/molである、
-前記変性ジエンエラストマーが、少なくとも50質量%の、少なくとも3個の枝分れを有する分岐高分子を含む;
-前記変性ジエンエラストマーが、少なくとも35質量%の、3個の枝分れを有する分岐高分子を含む。
〔15〕全部または一部が、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項記載の組成物により構成された半完成品を含むタイヤ。