(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】非侵襲的モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20240718BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20240718BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20240718BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240718BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N33/497 Z
G01N27/00 J
G01N27/04 D
G01N27/22 A
(21)【出願番号】P 2021526443
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 US2019061530
(87)【国際公開番号】W WO2020102573
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521205928
【氏名又は名称】エアベティック・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トールス,アーナー
(72)【発明者】
【氏名】ハウシュ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,ロイド
(72)【発明者】
【氏名】フィッツジェラルド,マット
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08652040(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0174853(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0132783(US,A1)
【文献】欧州特許第02762880(EP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0215795(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104316573(CN,A)
【文献】Souvik Das,Significance of Exhaled Breath Test in Clinical Diagnosis:A Special Focus on the Detection of Diabetes Mellitus,J. Med. Biol. Eng.,2016年,36,pp.605-624,DOI 10.1007/s40846-016-0164-6
【文献】Jan Hendrik Leopold,Glucose prediction by analysis of exhaled metabolites a systematic review,BMC Anesthesiology,2014年,14:46,pp.1-9,http://www.biomedcentral.com/1471-2253/14/46
【文献】飯塚陽子,皮膚ガス測定による無侵襲血糖モニタリングシステムの開発,医療機器開発推進研究事業, 平成26年度委託業務成果報告書,2015年03月,pp.1-17
【文献】近藤孝晴,生体ガスと病気の診断,におい・かおり環境学会誌,2017年,48巻6号,pp.402-409
【文献】KUMAMOTO UNIVERSITY,揮発性有機化合物検出用の高感度ガスセンサーを開発,EurekAlert!, NEWS RELEASE,2017年02月01日,https://www.eurekalert.org/news-releases/716894?language=japanese
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/497
G01N 27/22
A61B 5/08
A61B 5/145
A61B 5/1477
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を含む使用者からの試料中の少なくとも1つの分析物の非侵襲的モニタリングによって使用者の生理学的状態を評価するための方法であって、
a.ウェアラブルデバイスを提供することであって、使用者がデバイスを着用する、ことと、
b.ウェアラブルデバイスのセンサシステムを訓練試料に曝露することと、
c.センサシステムを介して訓練試料中の少なくとも1つの分析物を検出することであって、センサシステムが分析物の存在下で信号を生成する、ことと、
d.信号を分析して、訓練試料中の少なくとも1つの分析物の存在、量又は濃度を決定することと、
e.独立した手段によって使用者を生理学的状態のために試験することと、
f.試験結果を提供し、その試験結果を訓練試料中の少なくとも1つの分析物の、決定された存在、量、または濃度と照合することと、
g.少なくとも照合された試験結果に基づいて、ウェアラブルデバイスを訓練することと、
を含み、
方法がさらに、
h.ウェアラブルデバイスのセンサシステムをモニタリング試料に暴露することと、
i.センサシステムを介してモニタリング試料中の少なくとも1つの分析物を検出するステップと、
j.信号を分析して、モニタリング試料中の少なくとも1つの分析物の存在、量、または濃度を決定するステップと、
を
含み、
k.モニタリング試料中の少なくとも1つの分析物の、決定された存在、量、または濃度と、少なくとも訓練と
が、使用者の生理学的状態を
評価するために提供される、方法。
【請求項2】
訓練試料は間接試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
訓練試料は、使用者から発せられる少なくとも1つの分析物を含む周囲空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生理学的状態は、低血糖症、感染症、呼吸器感染症、尿路感染症、胃腸感染症、肥満、糖尿病、I型糖尿病、又はII型糖尿病である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2-5つの分析物が検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
単一の分析物が検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
分析物は、訓練試料中に十億分の1と百万分の10との間の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
分析物は揮発性有機化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分析物は、揮発性有機化合物であり、訓練試料中に十億分の1と百万分の10の間の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
分析物は揮発性有機化合物であり、生理学的状態は高血糖症である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
揮発性有機化合物は、
a.アセトン、及び1つ以上の追加の揮発性有機化合物、
b.エタノール、及び1つ以上の追加の揮発性有機化合物、又は
c.イソプレン、及び1つ以上の追加の揮発性有機化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
揮発性有機化合物は、アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
揮発性有機化合物は、アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、又は上記の任意の組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
揮発性有機化合物は、アセトン、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
揮発性有機化合物は、エタノール、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート、アセトン、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
揮発性有機化合物は、イソプレン、及びアセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
揮発性有機化合物は、エタノール、メチルナイトレート又はエチルベンゼンのうちの1つ以上である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
揮発性有機化合物は、アセトン、ペンチルナイトレート、メタノール、プロパン、又はイソプレンのうちの1つ以上である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
センサシステムを試料に暴露することは、使用者がデバイスに直接息を吐き出すことを必要とせずに実施される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
センサシステムを試料に暴露することは、使用者が、デバイスに息を吐き出すことを必要とせずに実施され
る、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
センサシステムをモニタリング試料に暴露することは、モニタリングプロセスを開始するため、モニタリングプロセスを完了するため、モニタリングプロセスの結果を決定するため、または結果を見るための、使用者のアクションを必要とせずに実施される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多くの人が、分析物の定期的なモニタリング(限定しないが、分析物の濃度の決定など)を必要とする様々な疾患及び症状を患っている。例えば、I型糖尿病及びII型糖尿病の両方を含む糖尿病病態の有病率は増加しつつある。そのような患者は、例えば、血液中の分析物、例えば、血液中のグルコースの存在又はグルコースの濃度をモニタする必要があり得る。
【背景技術】
【0002】
先行技術では、特定の分析物、特に揮発性有機化合物(VOC)の量又は濃度が、被験者が所与の疾患又は症状を患っている、又は患いやすいことを示すことができると仮定している。しかし、このような手法の結果は決定的なものではなく、1つ以上の分析物と所与の病気又は症状との間に相関関係があると報告する研究も、相関関係がないと報告する研究もある。一例として、1型糖尿病の被験者について考慮する。I型糖尿病を適切に管理するために、被験者は血糖濃度を正確にモニタすることを必要とする。血糖濃度が高すぎる(高血糖症)、又は低すぎる(低血糖症)場合、深刻な結果を回避するために被験者の側で是正措置をとらなければならない。低血糖症は、痙攣、昏睡、さらには死を結果としてもたらし得る。低血糖症と関連付けられる1つ以上のVOCなどの1つ以上の分析物をモニタする(例えば、濃度を決定する)ことによって、被験者が低血糖症を患っている、患いやすい、又は患う危険性があり、必要な是正措置をとるように彼/彼女はアラートされてもよい。
【0003】
医療費全体のうちますます大きな割合が、このような症状の被験者のケア及び治療に割り当てられている。特に、症状を適切にモニタしていない人(例えば、グルコース濃度を適切にモニタしていないI型糖尿病の人物)の医療費は上昇しつつある。このような状態のモニタリングに応じない理由の1つは、モニタリングには痛みを伴うこと(例えば、指先穿刺)、実施するのが困難であること、使用者がプロセスを開始する必要があること、及び/又は使用者が持ち運ばなければならない特別な機器を必要であるためである。さらに、多くの場合、このようなモニタリングは、すべての付随する不都合とともに、昼間/夜間に間隔を空けて頻繁に繰り返されなければならない。したがって、先行技術のデバイス及び方法には、減少したモニタリングを結果としてもたらす欠点及び短所がある。
【0004】
本開示は、被験者から生じている1つ以上の分析物の存在を正確で簡便にモニタするデバイスを提供することにより、先行技術の問題への解決策を提供するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Siegal,et al.(J.Breath Res,11(2),2017)
【文献】Greiter,et al.(Diabetes Technol Ther,12,pp455-463,2010)
【文献】Kim,et al.(Exhaled Breath Sensors,in Smart Sensors for Health and Environment Monitoring,C.-M Kyung(ed),Springer Science+Business Media,2015)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ウェアラブルデバイスの使用者からの試料中の分析物の存在、量及び/又は濃度の非侵襲的モニタリングのためのウェアラブルデバイスを提供する。ある実施形態では、分析物は、使用者の生理学的状態を示すか、又はそれに関連している。ある実施形態では、分析物は、被験者が疾患又は症状を患っていること、患いやすいこと、又は患う危険性があることを示す。
【0007】
第1の態様では、本開示は、ウェアラブルデバイスの使用者からの試料中の分析物の非侵襲的モニタリングのためのウェアラブルデバイスを提供する。
【0008】
第2の態様では、本開示は、ウェアラブルデバイスの使用者からの試料中の分析物の非侵襲的モニタリングのためのウェアラブルデバイスであって、デバイスが試料を分析して、分析物の存在、量及び/又は濃度を決定する、ウェアラブルデバイスを提供する。
【0009】
第3の態様では、本開示は、ウェアラブルデバイスの使用者からの試料中の分析物の非侵襲的モニタリングのためのウェアラブルデバイスであって、デバイスが試料を分析して、分析物の存在、量及び/又は濃度を決定して、使用者にそのような分析の結果をアラートする、ウェアラブルデバイスを提供する。
【0010】
第4の態様では、本開示は、使用者からの試料中の分析物の存在、濃度、及び/又は量を正確に決定及び/又は報告するデバイス、システム及び方法を提供する。
【0011】
第5の態様では、本開示は、使用者からの試料中の分析物の非侵襲的モニタリングによって、使用者の生理学的状態を評価するための方法であって:a)本開示のウェアラブルデバイスを提供することであって、使用者がデバイスを着用する、ことと;b)ウェアラブルデバイスを使用者からの試料に曝露することと;c)試料を分析して分析物の存在、量及び/又は濃度を決定して、結果を作り出すことと;d)任意選択で、(i)結果を使用者に提供すること;(ii)使用者に結果をアラートすること;及び/又は(iii)結果が生理学的状態の許容範囲内にあるか許容範囲外にあるかを使用者に通知することとを含む方法を提供する。
【0012】
第6の態様では、本開示は、使用者からの試料中の分析物の非侵襲的モニタリングによって使用者が疾患又は症状を患っている、患いやすい、又は患う危険性があるかどうかを決定するための方法であって:a)本開示のウェアラブルデバイスを提供することであって、使用者がデバイスを着用する、ことと;b)ウェアラブルデバイスを使用者からの試料に曝露することと;c)試料を分析して分析物の存在、量及び/又は濃度を決定して、結果を作り出すことと;d)任意選択で、(i)結果を使用者に提供すること;(ii)使用者に結果をアラートすること;及び/又は(iii)結果が疾患又は症状の許容範囲内にあるか許容範囲外にあるかを使用者に通知することとを含む方法を提供する。
【0013】
第1から第6の態様のいずれかにおいて、非侵襲的モニタリングは、使用者がデバイスに直接試料を提供する(例えば、デバイスに直接息を吐き出す)ことを必要とせずに実施される。
【0014】
第1から第6のいずれかの態様において、非侵襲的モニタリングは、使用者が、デバイスに息を吐き出してモニタリングプロセスを開始すること、モニタリングプロセスを完了すること、モニタリングプロセスの結果を決定すること、及び/又はそのような結果を見ることを必要とせずに実施される。
【0015】
第1から第6のいずれかの態様において、非侵襲的モニタリングは、モニタリングプロセスを開始するため、モニタリングプロセスを完了するため、モニタリングプロセスの結果を決定するため、及び/又はそのような結果を見るための使用者のアクションを必要とせずに実施される。
【0016】
第1から第6のいずれかの態様において、分析物は、使用者の生理学的状態(限定されないが、低血糖症など)を示すか、又はそれに関連する。
【0017】
上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態は低血糖症である。上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態は、感染症である。上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態は、呼吸器感染症である。上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態は、尿路感染症である。上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態は、胃腸感染症である。上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態は、肥満である。上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態は、糖尿病である。上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態はI型糖尿病である。上記実施形態のいずれかにおいて、生理学的状態は、II型糖尿病である。
【0018】
第1から第6の態様のいずれかにおいて、分析物は疾患又は症状と関連付けられており、使用者が疾患又は症状を患っている、患いやすい、又は患う危険性があるかどうかを決定するために使用されることができる。
【0019】
第1から第6の態様のいずれかにおいて、結果は使用者に提供される。ある実施形態では、結果は、分析物の存在、濃度及び/又は量である。ある実施形態では、結果は、分析物の存在である。ある実施形態では、結果は、分析物の濃度である。ある実施形態では、結果は、分析物の量である。
【0020】
第1から第6のいずれかの態様において、ウェアラブルデバイスの使用は、使用者のノンコンプライアンスのリスクを低減し、それにより、使用者による(意図的であれ非意図的であれ)ノンコンプライアンスの可能性を減少させる。
【0021】
第1から第6のいずれかの態様において、ウェアラブルデバイスは、i)ハウジングと;ii)入口ポートと;iii)ハウジングの内部のチャンバと;iv)入口ポートと流体連通する第1の端部、及びチャンバと流体連通する第2の端部を有する入口通路と;v)センサシステムと;vi)センサシステムと通信するコントローラとを備える。ウェアラブルデバイスは、以下のコンポーネント:無線通信モジュール、膜(入口ポート及び/又は出口ポートのうちの1つ以上を覆う膜など)、出口ポート、ポンプアセンブリ、使用者入力部、及び通知モジュールのうちの1つ以上をさらに備えてもよい。
【0022】
第1から第6のいずれかの態様において、ウェアラブルデバイスは、i)ハウジングと;ii)複数の入口ポートと;iii)ハウジングの内部のチャンバと;iv)各入口ポートのための入口通路であって、各入口通路がその入口ポートと流体連通する第1の端部、及びチャンバと流体連通する第2の端部を有する、入口通路と;v)センサシステムと;vi)センサシステムと通信するコントローラとを備える。ウェアラブルデバイスは、以下のコンポーネント:無線通信モジュール、膜(入口ポート及び/又は出口ポートのうちの1つ以上を覆う膜など)、出口ポート、ポンプアセンブリ、使用者入力部、及び通知モジュールのうちの1つ以上をさらに備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示のウェアラブルデバイスの一実施形態の外観図である。
【
図2】本開示のウェアラブルデバイスの例示的構成を示す図である。
【
図3】本開示のウェアラブルデバイスの代替的例示的構成を示す図である。
【
図4】本開示のウェアラブルデバイスの代替的例示的構成を示す図である。
【
図5】
図2のデバイスの例示的動作モードを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本明細書で「電子デバイス」により行われると説明されているアクションはすべて、スマートフォン又はスマートウォッチに含まれているプログラムなどのモバイルアプリケーションの制御下で行われ得る。
【0025】
本明細書に説明されるすべての方法及びタスクは、コンピュータシステムによって行われ、完全に自動化され得る。コンピュータシステムは、場合によっては、説明された機能を行うためにネットワークを上で通信及び相互運用する多数の違うコンピュータ又はコンピューティングデバイス(物理サーバ、ワークステーション、ストレージアレイ、及びクラウドコンピューティングリソースを含むが、これらに限定されない)を含むことができる。そのような各コンピューティングデバイスは、典型的には、メモリ又は他の非一時的コンピュータ可読記憶媒体(ソリッドステートストレージデバイス、ディスクドライブ、サムドライブなどを含むが、これらに限定されない)に記憶されたプログラム命令の実行のための1つ以上のプロセッサを備える。本明細書に開示される機能は、プログラム命令で具現化されてもよい。本明細書に開示される様々な機能は、システムの特定用途向け回路に実装されてもよい。コンピュータシステムが多数のコンピューティングデバイスを備える場合、これらのデバイスは同じ所に配置されていてもよいが、その必要はない。ある実施形態では、開示される方法及び/又はタスクの結果は、本明細書に説明されたものを含む物理的ストレージデバイスを異なる状態に変換することによって、持続的に記憶されてもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、クラウドベースのコンピューティングシステムであってもよい。
【0026】
本明細書に説明される機能は、そのような機能を実施するために設計されたアルゴリズムを用いて実行されてもよい。アルゴリズムは、本開示のデバイス(特に、ウェアラブルデバイス)のプロセッサの一部であっても、又は本明細書に説明されるコンピュータシステムのプロセッサの一部であってもよい。実施形態によっては、本開示に説明される任意の方法プロセス又はアルゴリズムの機能は、開示される順序とは異なる順序で行われることができる。さらに、ある実施形態では、本明細書に説明される機能は、例えば、マルチスレッド処理、割込み処理、又は多数のプロセッサ若しくはプロセッサコアを通して、又は他の並列アーキテクチャ上で、同時に行われることができる。ある実施形態では、本明細書に説明される機能は順次行われることができる。
【0027】
本願で説明される例証的な論理ブロック、モジュール、ルーチン、及びアルゴリズムのステップは、電子ハードウェア(ASIC又はFPGAデバイスなど)、汎用コンピュータハードウェア上で走るコンピュータソフトウェア、又はその両方の組み合わせとして実装されることができる。例えば、様々な例証的なコンポーネント、ブロック、モジュール、及びステップは、それらの機能性の観点から一般的に上述された。このような機能性が、専用のハードウェアとして実装されるか、汎用ハードウェア上で走るソフトウェアとして実装されるかは、特定の用途及びシステム全体に課せられる設計上の制約に依存する。説明した機能性は、特定の用途ごとに種々の方法で実装されることができるが、そのような実装の決定は、本開示をそのような実装に限定するものと解釈されるべきではない。
【0028】
本願で説明される例証的な論理ブロック、モジュール、ルーチン、及びアルゴリズムのステップは、汎用プロセッサデバイス、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲート若しくはトランジスタ論理、ディスクリートハードウェアコンポーネント、又は上記の任意の組み合わせなどのマシンによって実装されることができる。汎用プロセッサデバイスは、マイクロプロセッサであってもよいが、代わりに、プロセッサデバイスは、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシン、又は上記の組み合わせであってもよい。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、又は他の形態の非一時的コンピュータ可読記憶媒体に存在することができる。例示的な記憶媒体は、プロセッサデバイスが記憶媒体から情報を読み取り、記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサデバイスに結合されることができる。別法として、記憶媒体は、プロセッサデバイスと一体化されることができる。プロセッサデバイス及び記憶媒体は、ASIC内に存在できる。このASICは、使用者端末内に存在できる。別法として、プロセッサデバイス及び記憶媒体は、使用者端末内でディスクリートなコンポーネントとして存在できる。
【0029】
「含む」、「備える」、「有する」などの用語は同義であり、包括的に、オープンエンドで使用され、追加の要素、特徴、アクション、動作などを排除するものではない。
【0030】
「又は」という用語は、例えば、要素のリストをつなげるために使用されるとき、「又は」という用語が、リスト内の要素の1つ、いくつか、又はすべてを意味するように、その包括的な意味で(その排他的な意味ではなく)使用される。
【0031】
別段の指定がない限り、「X、Y、又はZのうちの少なくとも1つ」という語句などの離接的な語句は、アイテム、用語などがX、Y、若しくはZのいずれか、又はこれらの組み合わせ(例えば、X、Y、及び/又はZ)であってもよいことを表すために一般的に使用されるものとして、文脈とともに理解される。
【0032】
本開示は、使用者から発せられる、又は使用者に由来する分析物の存在、量及び/又は濃度を非侵襲的にモニタするウェアラブルデバイスを提供することによって、先行技術の欠点に対する解決策を提供する。ある実施形態では、分析物の存在、量及び/又は濃度は、使用者の生理学的状態を示すか、又はそれに関連している。ある実施形態では、分析物の存在、量及び/又は濃度は、使用者が疾患又は症状を患っている、患いやすい、又は患う危険性があるかどうかを決定するために使用される。特に、本開示は、使用者から発せられる、又は使用者に由来する分析物を非侵襲的にモニタする(例えば、試料を分析して、分析物の存在、量及び/又は濃度を決定する)ウェアラブルデバイスを提供することによって、先行技術の欠点に対する解決策を提供するものであり、非侵襲的モニタリングは、モニタリングプロセスを開始するため、モニタリングプロセスを完了するため、モニタリングプロセスの結果を決定するため、及び/又はそのような結果を見るための使用者の側での何らかのアクションを必要とせずに実施される。
【0033】
試料
試料は、ウェアラブルデバイスの使用者に由来する、又は発せられる分析物を含む任意の気体又は流体であってもよい。一実施形態では、試料は間接試料である。間接試料とは、使用者によってデバイスに直接導入されない試料である(例えば、使用者がチューブを通してデバイスの入口ポートに息を吹き込む)。一実施形態では、試料は、デバイスに導入される前に、使用者の周囲環境(例えば、周囲空気)と混じり合う。特定の実施形態では、試料は、ウェアラブルデバイス及び使用者を取り囲む周囲空気である。試料が周囲空気であるとき、分析物はウェアラブルデバイスの使用者から生じているか、又は由来するものであり、標的分析物が使用者を取り囲む周囲空気に含まれるように周囲空気と混合される。例えば、ウェアラブルデバイスの使用者は、分析物が周囲空気と混ざるように、分析物を息で吐き出す、分析物を皮膚を通じて排出する(VOCは体温で揮発する)、分析物を発汗を通じて排出する、分析物をエクリン腺、アポクリン腺、及び/若しくは皮脂腺を通じて排出する、又は上記の任意の組み合わせを行ってもよい。
【0034】
ある実施形態では、試料は、使用者が試料をデバイスに直接導入することを意味する直接試料であってもよい。直接試料とは、デバイスの較正に有用であることができ、又は、間接試料が実行可能ではない環境に使用者がいるとき(例えば、使用者が、分析物の検出に干渉する高濃度のVOC又は他の化合物が存在する閉鎖環境にいるとき)に必要になることがある。
【0035】
ある実施形態では、試料は、使用者から発せられる分析物(例えば、呼気に含まれる、又は使用者から排出される分析物)を含む周囲空気である。ある実施形態では、試料は呼気である。ある実施形態では、試料は呼気であり、試料は使用者によってデバイスに直接導入される(例えば、使用者はデバイスの入口ポートに直接息を吐き出す)。
【0036】
分析物及び揮発性有機化合物
人間及び動物は、VOC、脂質、ペプチド、及びその他の化合物などを含む、多くの異なる種類の化合物の混合物を放出する。好ましい実施形態では、分析物はVOCである。放出される化合物、特にVOCの組成は、健康な人と特定的な疾患又は症状がある人との間で異なる可能性があり、使用者の所与の生理学的状態を示すか、又は関連することができる。
【0037】
一実施形態では、分析物は、試料中に1十億分率(ppb)以上、1000百万分率(ppm)以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物は、試料中に1ppb以上、100ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物は、試料中に1ppb以上、10ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物は、試料中に10ppb以上、1000ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物は、試料中に100ppb以上、1000ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物は、試料中に1ppm以上、1000ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物は、試料中に1ppbと10ppmの間の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物は、試料中に1ppbと750ppbの間の濃度で存在する。
【0038】
人間から放出される多くのVOCは、ある疾患と相関している。したがって、ある実施形態では、分析物はVOCである。種々のVOCが、本開示のウェアラブルデバイスによって検出され得る。一実施形態では、生理学的状態、生理学的状態の素因、疾患若しくは症状、又は疾患若しくは症状の素因と関連付けられることが当該技術で知られている任意のVOCが検出され得る。一実施形態では、VOCは、293.15K(20℃)で0.01kPa超の蒸気圧を伴う任意の炭素系化合物である。
【0039】
一実施形態では、分析物はVOCであり、VOCは試料中に1十億分率(ppb)以上、1000百万分率(ppm)以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物はVOCであり、VOCは試料中に1ppb以上、100ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物はVOCであり、VOCは試料中に1ppb以上、10ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物はVOCであり、VOCは試料中に10ppb以上、1000ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物はVOCであり、VOCは試料中に100ppb以上、1000ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物はVOCであり、VOCは試料中に1ppm以上、1000ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物はVOCであり、VOCは試料中に1ppbと10ppmの間の濃度で存在する。別の実施形態では、分析物はVOCであり、VOCは試料中に1ppbと750ppbの間の濃度で存在する。
【0040】
ある実施形態では、単一のVOCが、本開示のウェアラブルデバイスのセンサシステムによって検出される。ある実施形態では、2つ以上のVOCが、本開示のウェアラブルデバイスのセンサシステムによって検出される。一実施形態では、検出されるVOCは、アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン(オルトキシレン)、M/P-キシレン(メタキシレン又はパラキシレン)、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせである。別の実施形態では、検出されるVOCは、アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、又は上記の任意の組み合わせである。
【0041】
別の実施形態では、検出されるVOCは、アセトン、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせである。別の実施形態では、検出されるVOCは、アセトン、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、又は上記の任意の組み合わせである。別の実施形態では、検出されるVOCは、アセトン、及びペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、メタノール、プロパン、イソプレン、又は上記の任意の組み合わせである。別の実施形態では、検出されるVOCは、アセトン、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、メタノール、プロパン、又はイソプレンのうちの1つ以上である。別の実施形態では、検出されるVOCは、アセトン、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、メタノール、プロパン、又はイソプレンのそれぞれである。
【0042】
別の実施形態では、検出されるVOCは、エタノール、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、アセトン、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせである。別の実施形態では、検出されるVOCは、エタノール、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、アセトン、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、又は上記の任意の組み合わせである。別の実施形態では、検出されるVOCは、エタノール、及びメチルナイトレート又はエチルベンゼンのうちの1つ以上である。別の実施形態では、検出されるVOCは、エタノール、メチルナイトレート及びエチルベンゼンのそれぞれである。
【0043】
別の実施形態では、検出されるVOCは、イソプレン、及びアセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせである。
【0044】
ある実施形態では、検出されるVOCは、アセトン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、イソプレン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、メチルナイトレート、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、エタノール、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、メタノール、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、プロパノール、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、メタン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、プロパン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、エチルベンゼン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、O-キシレン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、M/P-キシレン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、ホルムアルデヒド、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、検出されるVOCは、アセトアルデヒド、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。
【0045】
2つ以上のVOCがセンサシステムによって検出される場合、少なくとも2つのVOCが検出されてもよく、少なくとも3つのVOCが検出されてもよく、少なくとも4つのVOCが検出されてもよく、少なくとも5つのVOCが検出されてもよく、少なくとも6つのVOCが検出されてもよく、少なくとも7つのVOCが検出されてもよく、少なくとも8つのVOCが検出されてもよく、少なくとも9つのVOCが検出されてもよく、又は10以上のVOCが検出されてもよい。上記において、検出されるVOC数の上限値は、15、20、25、又は50のVOCであってもよい。したがって、一例として、少なくとも2つのVOCが検出されるとき、2から15までのVOC、2から10までのVOC、2から5までのVOC、2から4までのVOC、又は2から3までのVOCが、センサシステムによって検出されてもよい。
【0046】
一実施形態では、VOC及び組み合わせは、そのような教示のために参照により本明細書に組み込まれるSiegal,et al.(J.Breath Res,11(2),2017)に開示されている通りである。一実施形態では、VOC及び組み合わせは、そのような教示のために参照により本明細書に組み込まれるGreiter,et al.(Diabetes Technol Ther,12,pp455-463,2010)に開示されている通りである。
【0047】
本開示では、そのようなVOCが特定の生理学的状態と関連付けられている理由にかかわらず、VOCの検出を提供するが、科学的原理は、どのVOCが特定の生理学的状態と関連付けられているかを知らせることができる。人間の息は、吸入された空気、CO2、水蒸気、少量のタンパク質、及びVOCで構成される。VOCは、体内の代謝反応、体内に存在する細菌若しくは他の有機体からの代謝反応を含むがこれらに限定されない種々の生理学的過程及び非生理学的過程を通じて、生理学的シグナリングの役割のために作り出されるガスとして、又は吸入された大気成分からの代謝物として作成される。
【0048】
ほんの一例として、以下は低血糖症の決定における選択したVOCの有用性の科学的根拠を提供する。
【0049】
アセトンは、脂肪分解又は脂質過酸化から作り出されるアセトアセテートの脱炭酸に由来することができる。したがって、このようなケトン体の合成及び分解は、血糖値と関連している。
【0050】
ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)及びメチルナイトレートは、有機ペルオキシラジカル(RO2・)、超酸化物イオン(O2・-)、又は酸化反応の他の副産物が関わる経路で生成され得る。酸化ストレスは低血糖症と関連付けられているため、これらの化合物レベルは低血糖症を示す酸化状態の変化を反映できる。
【0051】
エタノール、メタノール、プロパノール、及びプロパンの産出は、腸内細菌叢の細菌の活動(例えば、腸内細菌及び酵母菌によるグルコースのアルコール発酵)によるものであってもよい。そのため、エタノール及びメタノールのレベルは、グルコース濃度の変動に反応する。
【0052】
エチルベンゼン、O-キシレン、及びM/P-キシレンは、一般的に、吸入され、肝臓によって部分的に代謝された後、より低い濃度で吐き出される。急激に始まる高血糖症は、肝代謝を抑制し、呼気中のこれらの化合物の増加した濃度を引き起こす可能性がある。
【0053】
一実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、VOCは、アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の組み合わせである。
【0054】
ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは:(1)アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、若しくは上記の任意の組み合わせ;(2)アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(3)アセトン、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、若しくは上記の任意の組み合わせ;(4)アセトン、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(5)アセトン、及びペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、メタノール、プロパン、イソプレン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(6)エタノール、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、アセトン、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、若しくは上記の任意の組み合わせ;(7)エタノール、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、アセトン、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(8)エタノール、及びメチルナイトレート、エチルベンゼン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(9)イソプレン、及びアセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又は上記の任意の組み合わせ;10)エタノール、メチルナイトレート、及びエチルベンゼン;又は11)アセトン、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、メタノール、プロパン、及びイソプレンである。
【0055】
ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、アセトン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、イソプレン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、メチルナイトレート、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、エタノール、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、メタノール、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、プロパノール、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、メタン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、プロパン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、エチルベンゼン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、O-キシレン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、M/P-キシレン、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、ホルムアルデヒド、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは、アセトアルデヒド、及び任意選択で1つ以上の追加のVOCである。
【0056】
センサシステム
種々のセンサが、本開示のデバイスに使用されることができる。一実施形態では、関心のある分析物を検出するために当該技術で知られている任意のセンサが使用されてもよい。一実施形態では、関心のあるVOCを検出するために当該技術で知られている任意のセンサが使用されてもよい。別の実施形態では、センサは、半導体金属酸化物センサ、電気化学センサ、電界効果トランジスタセンサ、抵抗センサ、化学抵抗センサ、又は容量センサである。一実施形態では、上記センサのそれぞれの特性は、分析物との相互作用によって変わる。
【0057】
ある実施形態では、センサは、VOCを含む特定的な分析物に対する吸着及び/又は変換効率を増加又は減少させるようにセンサを修正することによって、増加した感度及び/又は選択性を示すように修正されることができる。
【0058】
センサは、分析物(例えば、VOC)を検出することが可能なセンサ材料を含む。分析物は、センサ材料との相互作用/結合時に、材料の物理的特性、化学的特性、及び/又は電子的特性に変化を引き起し、信号を結果としてもたらす。一実施形態では、信号は、試料中の分析物の存在、量、又は濃度に直接相関している。一実施形態では、信号は、センサ材料又はセンサ材料を含むセンサの導電性(抵抗)の変化、静電容量の変化、又は電流の変化などであるが、これらに限定されない電気的特性の変化である。信号は、所与の分析物に関する結果を作り出すためにコントローラによって分析される。
【0059】
一実施形態では、ナノ材料がセンサ材料でコーティングされている。ナノ材料は、様々な材料で形成されてもよい。一実施形態では、ナノ材料は、金ナノ粒子、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、カーボンブラック、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される。ナノ材料は、センサ材料の表面コーティングでコーティングされている。一実施形態では、センサ材料は、C1-C20チオール-アルカン、C1-C20チオール-芳香族化合物、多環芳香族炭化水素、カルボン酸、デカンチオール、ドデカンチオ、tert-ドデカンチオール、4-メトキシ-トルエンチオール、2-ニトロ-4-トリフルオロ-メチルベンゼンチオール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される1つ以上の官能基を含む。別の実施形態では、センサ材料は、ポリピロール、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(エチレン-ブロック-エチレンオキシド)(PE-b-PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、又はこれらの組み合わせである。別の実施形態では、センサ材料は、TiO2、SnO2、Cr2O3、Mn2O3、Co3O4、NiO、CuO、SrO、In2O3、WO3、V2O3、Fe2O3、GeO2、Nb2O5、MoO3、Ta2O5、La2O3、CeO2、及びNd2O3であり、好適なドーパント(タングステン、パラジウム、プラチナ、チタン、ランタン、及び亜鉛などであるが、これらに限定されない)を伴う、又は伴わない。
【0060】
ある実施形態では、センサシステムは複数のセンサを備え、複数のセンサのサブセットは、いくつかの違う分析物がセンサシステムによって検出されるように、特定的な分析物(例えば、特定的なVOC)を検出するように設計される。
【0061】
一実施形態では、センサは、そのような教示のために参照により本明細書に組み込まれるKim et al.(Exhaled Breath Sensors,in Smart Sensors for Health and Environment Monitoring,C.-M Kyung(ed),Springer Science+Business Media,2015)に説明されているようなものである。
【0062】
好ましい実施形態では、センサシステムは、本明細書に説明された少なくとも1つのセンサと、センサによって生成される信号を記憶するためにセンサと通信するデータモジュールとを備える。2つ以上のセンサが存在するとき、データモジュールは、センサシステムの各センサに対して存在する。センサ及びデータモジュールは、多数の要素のうちの単一の要素であってもよい。データモジュールは、信号をコントローラ又は別個のコンピューティングデバイス(例えば、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、又はコンピュータ)に送信してもよく、信号は、デバイスのコントローラ又は別個のコンピューティングデバイスのプロセッサによって記憶及び/又は処理される。
【0063】
代替的に、センサシステムの各センサは、信号をデバイスのコントローラ又は別個のコンピューティングデバイス(例えば、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、又はコンピュータ)のプロセッサに直接送信し、信号は別個のコンピューティングデバイスによって記憶及び/又は処理される。
【0064】
一実施形態では、本願に説明されるセンサは、金属酸化物センサである。金属酸化物検知層の抵抗は、標的分析物が存在すると変わる。動作中、二酸化窒素又はオゾンなどの酸化ガスは抵抗を増加させるが、VOC及び一酸化炭素などの還元ガスは抵抗を低くする。ヒータ出力の調整及び/又は金属酸化物層のドーピングが使用されて、センサの選択性を調整できる。VOC検出には、還元ガスに対して最も高い感度を示す金属酸化物センサが好ましい。これは典型的には、タングステン、パラジウム、プラチナ、チタン、ランタン、亜鉛、及び他のドーパントなどであるが、これらに限定されないドーパントを伴う、又は伴わずに、酸化スズが300-700℃の温度に加熱されたセンサを意味する。使用されてもよい他の酸化物は、好適なドーパントを伴う、又は伴わない、TiO2、Cr2O3、Mn2O3、Co3O4、NiO、CuO、SrO、In2O3、WO3、V2O3、Fe2O3、GeO2、Nb2O5、MoO3、Ta2O5、La2O3、CeO2、及びNd2O3を含むが、これらに限定されない。代わりに、異なるドーパントを伴う金属酸化物センサが使用されることができる。例えば、異なるヒータ温度を伴う、又は伴わず、酸化スズセンサ及びタングステンをドープした酸化スズセンサが使用されて、分析物のサブセットに対する選択性を変更されることができる。
【0065】
一実施形態では、本開示に説明されるセンサは、化学抵抗センサである。そのようなセンサは、既製の電極(好ましくは微小電極)上にナノ核化(nano-nucleated)又はナノ構造材料を堆積させることによって作成されることができる。ナノ核化材料は、センサに特異性を提供し、単一の分析物(例えば、アセトン)又は関連分析物のグループ(例えば、O-キシレン及びM/P-キシレン)を検出する。センサは、試料中の気体状分析物(すなわち、化学化合物)と相互作用して、センサの1つ以上の電気的特性を変える(例えば、抵抗の変化)。電気的特性の変化が使用されて、試料中の分析物の存在、量又は濃度を決定する。特定の実施形態では、センサシステムは、複数のチャネルを含む支持体から成っており、各チャネルはセンサ(ナノ核化材料で少なくとも部分的にコーティングされた電極)を含む。
【0066】
一実施形態では、センサ又はセンサシステムは、そのような教示のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/548,801号に説明されている通りである。一実施形態では、センサ又はセンサシステムは、そのような教示のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/547,499号に説明されている通りである。
【0067】
一実施形態では、センサからの信号(電気的特性の変化)がデジタル信号処理と組み合わされて、人間の息に見出される、関心のある分析物を検出する。一実施形態では、センサからの信号は、任意選択で、信号調節ステップ(ノイズフィルタリング、増幅などであるが、これらに限定されない)を受ける。次に、各センサからの信号(信号が事前調節ステップを受けたかどうかにかかわらず)が分析されて、試料中の分析物の存在、量又は濃度を決定する。一実施形態では、信号はパターン認識技術を受けて、関心のある分析物からの信号を、湿度、温度及び交差感受性(cross-sensitive)ガスなどの不要な信号から分離する。このセンサ構成は、周囲温度で人間の息中の十億分率(ppb)範囲のVOCの検出を提供する。
【0068】
一実施形態では、信号は、そのような教示のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/548,763号に説明される通りに処理される。一実施形態では、信号は、そのような教示のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/547,499号に説明される通りに処理される。一実施形態では、信号は、そのような教示のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第62/799,537号に説明される通りに処理される。
【0069】
コントローラ
一実施形態では、コントローラは、以下のうちの少なくとも1つを行うようにプログラムされている:i)サンプリングプロセスを開始する;ii)センサシステムの出力(すなわち、センサシステムによって生成された信号)を受信する;iii)センサシステムの出力を評価して、使用者からの試料中の分析物の存在、量及び/又は濃度(すなわち、結果)を決定する;iv)分析物の存在、量及び/又は濃度が、生理学的状態の許容範囲内にあるか、又は生理学的状態の許容範囲外であるかを決定する;v)結果を使用者にアラートする;vi)試験結果が許容範囲内にあるか、又は許容範囲外であるかを使用者にアラートする;vii)上記のいずれかをメモリに記憶する;viii)信号を別個のコンピューティングデバイスに送信する(コンピューティングデバイスは、次いで、ステップiii)からvii)のいずれかを任意の組み合わせで実施することができる);又はix)上記の任意の組み合わせ。
【0070】
本明細書で使用される際、デバイスのコントローラは、本明細書に説明されたプロセッサに等しい。
【0071】
本実施形態の一態様では、ステップ「サンプリングプロセスを開始する」は、以下のことのうちの少なくとも1つを含む:i)センサシステムをアクティブ化して分析物を検出すること;ii)サンプリングパラメータを決定すること;iii)サンプリングパラメータを評価して、サンプリングプロセスが完了され得るかどうかを決定すること;及びiv)デバイスパラメータを修正してサンプリングプロセスを容易にすること。
【0072】
本実施形態の別の態様では、ステップ「サンプリングプロセスを開始する」は、以下のことのうちの少なくとも1つを含む:i)サンプリングパラメータを決定すること;ii)サンプリングパラメータを評価し、サンプリングプロセスが完了され得るかどうかを決定すること;iii)任意選択で、デバイスパラメータを修正してサンプリングプロセスを容易にすること;iv)センサシステムをアクティブ化してサンプリングプロセスを完了できれば分析物を検出すること。サンプリングプロセスが完了され得なければ、使用者は、サンプリングプロセスが完了され得ないことがアラートされ、任意選択で、(サンプリングパラメータに基づく)サンプリングプロセスが完了され得ない理由が提供されてもよい。
【0073】
例えば、(本明細書で述べた)あるサンプリングパラメータは、分析物の適切な検出に干渉することが知られていることがある(例えば、高濃度のCO2又は60%超の相対湿度)。このような場合、使用者は、例えば、減少したCO2濃度、より低い相対湿度を有する別の場所に移動することができる。代替的に、使用者は、デバイスを口に近づけてデバイスに息を吐き出すこともできる。さらに、使用者はその時のモニタリングプロセスを単にスキップするか、又は分析物をモニタする代わりの方法を使用することができる。
【0074】
本実施形態の一態様では、ステップ「サンプリングプロセスを開始する」は、使用者がウェアラブルデバイスに息を吐き出すことを必要とせずに実施される。本実施形態の別の態様では、サンプリングプロセスを開始するために、使用者のアクションは必要とされない。本実施形態の別の態様では、使用者のアクションは、結果を提供するためにサンプリングプロセスが開始された後のいかなるアクションにも必要とされない。そのため、本開示は、モニタリングプロセスを自動化するウェアラブルデバイスを提供する。
【0075】
ニューラルネットワーク、クラスタ分析、及び他の人工知能システムは、本開示のウェアラブルデバイスと結合されてもよい。上記は、センサシステムを訓練すること、コントローラを訓練すること(例えば、読み取りをいつ開始するかを決定する、又はサンプリングパラメータを評価する)、何が生理学的状態の許容範囲内にあるか、若しくは生理学的状態の許容範囲外にあるかを改善すること、及び/又は結果(すなわち、分析物の存在、量又は濃度)のさらなる分析を提供することに役立つことができる。さらに、上記が使用されて、経時的に結果を改善し、経時的に特定の使用者ごとに結果をカスタマイズすることができる。ニューラルネットワーク、クラスタ分析及び他の人工知能システムは、コントローラの一部として組み込まれても、ウェアラブルデバイスの別個のコンポーネントとして存在しても、又は受信デバイスのプログラムとして存在してもよい。
【0076】
特定的な実施形態では、バックプロパゲーションアルゴリズムを用いる多数のニューラルネットワークモジュールは、(コントローラなどによる)データの処理後のパターン認識に使用される。バックプロパゲーションアルゴリズムは、ネットワークの出力と、全入力パターンに対する所望の出力との間の平均二乗誤差を最小化する誤差法の勾配降下に基づく。バックプロパゲーションは、1つの入力層、1つの出力層及び少なくとも1つの隠れ層を有する多層フィードフォワードネットワークである。各層は後続の層と完全に接続されている。学習プロセス中、各ニューロンの入力ベクトル及び出力が層ごとに計算される。最終層の出力と所望の目標ベクトルとの差は、前の層にバックプロパゲートされ、伝達関数の微分によって修正され、接続重みは、Widrow-Hofflearning規則を用いて調整される。
【0077】
このプロセスを使用すると、マルチモジュールニューラルネットワークを用いたインテリジェントな分類器は、それ自体が蒸気認識を行うために特定的な蒸気グループ専用であるように構築される。各モジュールは、それぞれに好適なアーキテクチャを持つバックプロパゲーションアルゴリズムネットワークからなる。マルチモジュールニューラルネットワークの使用は、全ての目標VOCの識別知識すべてを単一のネットワークに収容する必要をなくす。多数のネットワークを使用することによって、各ネットワークは特定的なVOCに対して訓練される。
【0078】
ウェアラブルデバイスの概要
ウェアラブルデバイスは、ウェアラブルデバイスが所望されるように配置されるように、使用者によって着用されることができる。一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、手首に着用される。別の実施形態では、ウェアラブルデバイスは、首周りに着用される。他の実施形態では、ウェアラブルデバイスは、衣料品にリバーシブルに取り付けられる。別の実施形態では、ウェアラブルデバイスは、脇、胸又は腹部などであるが、これらに限定されない身体の特定の領域に隣接して置かれる。別の実施形態では、ウェアラブルデバイスは、脇、胸又は腹部などであるが、これらに限定されない身体の特定の領域に隣接して置かれるか、又は衣類の下(シャツの下などであるが、これに限定されない)に着用される。ウェアラブルデバイスは、リストバンド、クリップ、ストラップ、接着パッドなど、デバイスの着用及び/又は配置に対応する要素をさらに備えていてもよい。
【0079】
一実施形態では、ウェアラブルデバイス1は、以下のコンポーネント:i)ハウジング10と;ii)入口ポート20と;iii)ハウジングの内部のチャンバ30と;iv)入口ポート20と流体連通する第1の端部41及びチャンバ30と流体連通する第2の端部42を有する入口通路40と;v)センサシステム50と;vi)センサシステムと通信するコントローラ60とを備える。
【0080】
ハウジングは、ウェアラブルデバイスの様々なコンポーネントを囲み、損傷及び環境からコンポーネントを保護するように機能する。ハウジングは任意の所望の形状であってもよく、形状は、その形状が本明細書に説明されている様々なコンポーネント及び機能を可能にするものであれば重要ではない。ハウジングは、耐衝撃性プラスチック及びポリマー、金属、又はこれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない任意の所望の材料で製造される。ハウジングは内部部分を画定し、その少なくとも一部は中空になっており、追加のコンポーネントをハウジング内に含むことを可能にする。本明細書に説明されたように、ハウジングは、デバイスの中空内部部分と連通している1つ以上の開口部をハウジングの外部に含むことができる。
【0081】
入口ポートは、試料(例えば、周囲空気)がウェアラブルデバイスに入り、センサシステムに接触することを可能にする。入口ポートは、ハウジングの外部と流体連通しており、ハウジングの外部に開口部を形成している。
【0082】
入口チャネルは、第1の端部で入口ポートと流体連通し、第2の端部でウェアラブルデバイスの内部部分(チャンバなど)と流体連通している。入口チャネルは、試料(例えば、周囲空気)をセンサシステムへと送達するのに役立つ。(後述する)膜も、入口ポートに、又は入口ポートとチャンバとの間に配置されてもよい。ある実施形態では、膜が存在し、入口チャネルの第1の端部又は第2の端部に配置されている。ある実施形態では、膜が存在し、入口ポートに、又は入口ポートに隣接して配置される。
【0083】
ある実施形態では、入口チャネルは、狭窄点を備える。狭窄点は、構築点の直前及び/又は直後の入口チャネルの部分の直径よりも直径が小さい入口チャネルの部分として定義される。狭窄点は、試料が入口チャネルを通り抜ける際に、試料の流量を増加させるのに役立つ。狭窄点は、入口チャネル内で所望のように配置されてもよい。本実施形態の一態様では、狭窄点は、入口チャネルの第1の端部又は第2の端部に、又は隣接して配置されている。本実施形態の別の態様では、狭窄点は、入口チャネルの第1の端部と第2の端部との間に配置されている。入口チャネルの第2の端部は、好ましくは、試料がセンサシステムに接触できるように配置される。ある実施形態では、1つ以上の伝達チャネルは、試料をセンサシステムに直接導く。存在するとき、伝達チャネルは、入口チャネルの第2の端部と連通する第1の端部と、センサシステムの一部分と連通する第2の端部とを有することができる。
【0084】
チャンバは、ハウジングの内部に中空エリアを画定し、ウェアラブルデバイスのコンポーネント(例えば、センサシステム及び/又はコントローラ)を収容する空間を提供するように機能する。チャンバは、入口チャネルを介して入口ポートと流体連通し、出口チャネルを介して(存在しているとき)出口ポートと流体連通する。チャンバは、ウェアラブルデバイスの単一のコンポーネント又は多数のコンポーネントを収容することができる。ウェアラブルデバイスは、2つ以上のチャンバのうちの単一のチャンバを含んでいてもよく、各チャンバは、任意選択で1つ以上の追加のチャンバと流体連通している。
【0085】
このセンサシステムにより、試料中の分析物を検出することができる。ある実施形態では、試料は周囲空気であり、分析物は1つ以上のVOCである。センサシステムは、本明細書でより詳細に説明され、本明細書に説明された任意のセンサシステムは、説明されているウェアラブルデバイスで使用されてもよい。ある実施形態では、センサシステムは、チャンバ内に設置される。
【0086】
ある実施形態では、センサシステム及びコントローラは、当該技術で知られているように、プリント回路板に置かれ、相互に接続されている。
【0087】
別の実施形態では、ウェアラブルデバイス1は:i)ハウジング10と;ii)複数の入口ポート20と;iii)ハウジングの内部のチャンバ30と;iv)各入口ポート20のための入口通路40であって、各入口通路は、その入口ポート20と流体連通する第1の端部41、及びチャンバ30と流体連通する第2の端部42を伴う、入口通路40と;v)センサシステム50と;vi)センサシステムと通信するコントローラ60とを備える。
【0088】
本実施形態の一態様では、ウェアラブルデバイスは、第1の入口ポート及び第2の入口ポート、並びに第1の入口チャネル及び第2の入口チャネルを備える。第1の入口ポート及び第2の入口ポートは、互いに所望の幾何学的関係で配置されてもよい。幾何学的関係は、センサシステムへの試料の効率的な導入を提供するため、及び/又はウェアラブルデバイスを取り囲む異なるエリアから試料が得られることを可能にするために選択されることができる。本実施形態の一態様では、第1の入口ポート及び第2の入口ポートは、ハウジングの反対側に配置されている。本実施形態の一態様では、第1の入口ポート及び第2の入口ポートは、互いに実質的に一直線上に配置されている。実質的に互いに一直線上とは、一方の入口ポート(例えば、第1の入口ポート)の中心を通って直線が引かれたときに、他方の入口ポート(例えば、第2の入口ポート)の中心が、前記直線の任意の方向から5°以内になることを意味する。
【0089】
本実施形態の一態様では、ウェアラブルデバイスは、第1の入口ポート、第2の入口ポート、第3の入口ポート及び第4の入口ポート、並びに第1の入口チャネル、第2の入口チャネル、第3の入口チャネル及び第4の入口チャネルを備える。第1の入口ポート、第2の入口ポート、第3の入口ポート、及び第4の入口ポートは、互いに所望の幾何学的関係で配置されてもよい。幾何学的関係は、センサシステムへの試料の効率的な導入を提供するため、及び/又はウェアラブルデバイスを取り囲む異なるエリアから試料が得られることを可能にするために選択されることができる。本実施形態の一態様では、第1の入口ポート及び第2の入口ポートは、互いに実質的に一直線上に配置され、第3の入口ポート及び第4の入口ポートは、互いに実質的に一直線上に配置されている。
【0090】
ある実施形態では、センサシステム及びコントローラは、当該技術で知られているように、プリント回路板に置かれ、相互に接続されている。
【0091】
説明した実施形態のいずれかにおけるウェアラブルデバイスは、後述する追加のコンポーネントを任意選択で含んでもよい。
【0092】
一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、無線通信モジュールをさらに備える。無線通信モジュールは、例えば、無線周波数、Bluetooth、又は移動通信システム送信デバイスのためのグローバルシステムを含む、1つ以上のタイプの無線通信デバイスを含むことができる。ある実施形態では、無線通信は、直接のWiFi接続(802.111b/g/n)又は4G若しくは5Gセル接続などのeセル接続を介して行われる。無線モジュールは、コントローラと通信して、受信デバイス(移動電話、タブレット、携帯電話、コンピュータ、又は他のタイプのパーソナルコンピューティングデバイスなどであるが、これらに限定されない)への情報の送信を可能にする。本実施形態のある態様では、ウェアラブルデバイスと受信デバイスとの間の通信は、プライバシーを確保するために暗号化されている。好適な暗号化方法は、PGP、GnuPG、GPG4Win、Axcryptなどを含むが、これらに限定されない。通信が暗号化されると、ウェアラブルデバイスが最初に使用されるときに、受信デバイスにプログラムすることができる鍵が選択され得る。適切な鍵は、データとともにウェアラブルデバイスによって送信される。ある実施形態では、無線通信モジュールが存在するとき、センサシステム、コントローラ及び無線通信モジュールは、当該技術で知られているように、プリント回路板に置かれ、相互に接続されている。
【0093】
一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、膜をさらに備える。膜の機能は、分析物が周囲空気の試料とともに自由に通過することを可能にしながら、周囲空気の試料中に浮遊している微粒子がチャンバに入るのを防止又はその量を低減する。さらに、ある実施形態では、膜は、周囲空気の試料中の水分量を除去又は低減する材料から作製されている。水分は、本明細書に説明されるあるセンサの動作に干渉する可能性がある。好適な材料は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、延伸ポリプロピレンを含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、膜は、入口ポートに、又は入口ポートとチャンバとの間に配置される。
【0094】
一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、出口ポートをさらに備える。出口ポートの機能は、試料の(例えば、周囲)空気がセンサシステムと接触した後にウェアラブルデバイスから出ることを可能にすることである。出口ポートは、ハウジングの外部と流体連通しており、ハウジングの外部に開口部を形成している。出口チャネルは、第1の端部で出口ポートと流体連通し、第2の端部でウェアラブルデバイスの内部部分(チャンバなど)と流体連通している。(入口チャネルについて上述した)膜は、また、出口ポートに、又は出口ポートとチャンバとの間に配置されてもよい。
【0095】
一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、ポンプアセンブリをさらに備える。ポンプアセンブリは、試料(例えば、周囲空気)を入口ポートを通して、試料がセンサシステムと接触するチャンバへと吸引することを支援するように機能する。また、ポンプアセンブリは、所望であれば、試料チャンバから試料を除去するのを助けることができる。ポンプアセンブリは、電動ファン、マイクロポンプ、又はペリスタポンプであってもよい。ポンプアセンブリは、試料をデバイス内に吸引するのに好適なハウジングの内部部分に設置されてもよい。例えば、ある態様では、ポンプアセンブリは、出口チャネルの第2の端部において、又は出口チャネルの第2の端部に隣接して設置され、出口チャネルの第2の端部と流体連通している。ポンプアセンブリは、さらに、入口チャネルの第2の端部において、又は入口チャネルの第2の端部に隣接して設置され、入口チャネルの第2の端部と流体連通していてもよい。他の位置も本開示の範囲内である。
【0096】
一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、入口ポート/入口チャネル及び/又は出口ポート/出口チャネルの閉鎖部をさらに備える。存在するとき、このような閉鎖部は、コントローラと通信し、試料が採取されるときに開き、他のときには閉じていることができる。好適な閉鎖部及びそれらの動作は当該技術で知られている。
【0097】
一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、使用者入力部をさらに備える。使用者入力部は、使用者が、コントローラによってプログラムされた読み取り以外の読み取りを開始することを望むときに使用されることができる。使用者入力部は、少なくともコントローラと通信し、押しボタンなどの形態であってもよい。
【0098】
一実施形態では、ウェアラブルデバイスは、通知モジュールをさらに備える。ウェアラブルデバイスの通知モジュールは、使用者に結果をアラートするのに役立つ。通知モジュールは、少なくともコントローラと通信する。通知モジュールは、視覚ディスプレイ(例えば、LEDディスプレイなど)、可聴機能(例えば、チャープ、ビープ又はトーンなど)、又は触覚機能(例えば、振動など)であってもよい。ある実施形態では、通知モジュールは視覚ディスプレイであり、結果が許容範囲内にあるときは緑色の光を表示し、結果が許容範囲外にあるときは赤色の光を表示し、又は結果が許容範囲外に近づく(例えば、10%以内になる)ときは黄色の光を表示する、1つ以上の円形LEDの形態をとることができる。
【0099】
ある好ましい実施形態では、説明した実施形態のうちのいずれかにおけるウェアラブルデバイスは、無線通信モジュールをさらに備える。
【0100】
ある好ましい実施形態では、説明した実施形態のうちのいずれかにおけるウェアラブルデバイスは、出口ポート及びポンプアセンブリをさらに備える。
【0101】
ある好ましい実施形態では、説明した実施形態のうちのいずれかにおけるウェアラブルデバイスは、膜をさらに備える。
【0102】
ある好ましい実施形態では、説明した実施形態のうちのいずれかにおけるウェアラブルデバイスは、無線通信モジュール、出口ポート及びポンプアセンブリをさらに備える。
【0103】
ある好ましい実施形態では、説明した実施形態のうちのいずれかにおけるウェアラブルデバイスは、無線通信モジュール及び膜をさらに備える。
【0104】
ある好ましい実施形態では、説明した実施形態のうちのいずれかにおけるウェアラブルデバイスは、無線通信モジュール、出口ポート、ポンプアセンブリ及び膜をさらに備える。
【0105】
図1は、本開示のウェアラブルデバイス1の一実施形態の斜視図を示す。バンド200(例えば、時計バンドなど)をさらに備え、使用者が手首にウェアラブルデバイス1を置くことを可能にするウェアラブルデバイス1が図示されている。ハウジング10、入口ポート20、膜25(ハッチマークで示す)、使用者入力部100及び通知モジュール102も図示されている。
【0106】
図2は、ウェアラブルデバイス1の例示的実施形態の部分分解図を示す。単一の入口ポート20と、狭窄点43を伴う単一の入口通路40と、チャンバ30と、センサシステム50と、コントローラ60と、無線モジュール70と、出口ポート80と、出口チャネル85と、ポンプアセンブリ90と、入口ポート20及び出口ポート80に配置された膜25とを備えるウェアラブルデバイスが図示されている。デバイスは、使用者入力部100、一連のLEDライトの形態の通知モジュール102、及び別個のコンピューティングデバイス(すなわち、受信デバイス)に接続するための入力ポート104をさらに備える。
図2では、ポンプアセンブリ90は、入口ポート20の反対側に設置されているが、ポンプアセンブリ90の他の場所が本開示の範囲内である。
【0107】
図3は、2つの入口ポート20a及び20bと、各入口通路が狭窄点43を備える2つの入口通路40a及び40bと、チャンバ30と、センサシステム50と、コントローラ60と、無線モジュール70と、出口ポート80と、出口チャネル85と、ポンプアセンブリ90と、入口ポート20a及び20b並びに出口ポート80に配置された膜25とを備えるウェアラブルデバイス1の例示的実施形態を示す。本実施形態では、センサシステム50、コントローラ60及び無線モジュール70は、プリント回路板110に存在する。デバイスは、使用者入力部100、一連のLEDライトの形態の通知モジュール102、及び別個のコンピューティングデバイス(すなわち、受信デバイス)に接続する入力ポート104をさらに備える。
【0108】
図4は、4つの入口ポート20aから20dと、各入口通路が狭窄点43を備える4つの入口通路40aから40dと、チャンバ30と、センサシステム50と、コントローラ60と、無線モジュール70と、出口ポート80と、出口チャネル85と、ポンプアセンブリ90と、入口ポート20aから20d及び出口ポート80に配置された膜25とを備えるウェアラブルデバイス1の例示的な実施形態を示す。本実施形態では、センサシステム50、コントローラ60及び無線モジュール70は、プリント回路板110に存在する。デバイスは、使用者入力部100、一連のLEDライトの形態の通知モジュール102、及び受信デバイス又は他のコンピューティングデバイスに接続するためのポートをさらに備える。
図4では、ポンプアセンブリ90、出口ポート80及び出口チャネル85は、プリント回路板90(図示せず)の下に設置されているが、ポンプアセンブリ90の他の場所が本開示の範囲内である。
【0109】
ベースライン値の設定、訓練、及びサンプリングパラメータの評価
一実施形態では、本開示のウェアラブルデバイス、システム及び/又は方法は、特定的な使用者のためのベースライン(本明細書では「ベースライン値」とも呼ばれる)を設定する。ベースライン値は、分析物がない場合に決定された結果を反映する。ベースライン値は、コントローラによって記憶されてもよく、ベースライン値は、本明細書に説明されているように決定された任意の値から減算されてもよい。
【0110】
ウェアラブルデバイスは、また、結果を特定の使用者に合わせて調整するように訓練されてもよい。一実施形態では、結果はウェアラブルデバイスによって提供される。その結果は、デバイス及び/又は別個のコンピューティングデバイスによって記憶される。次に、使用者は、独立した手段で生理学的状態を(例えば、低血糖症が生理学的状態であるとき、指先穿刺(finger prick)試験又は他の先行技術の試験によって血糖値を測定することによって)試験する。決定された血糖値が(例えば、受信デバイスのアプリケーション又はウェアラブルデバイスの入力を通じて)提供される。独立して決定された結果は、生理学的状態に対して許容範囲内である、又は生理学的状態に対して許容範囲外であることが注記されてもよい。次いで、独立して決定された結果は、ウェアラブルデバイスを用いて得られた結果と照合される(例えば、ウェアラブルデバイスを用いて得られた結果が6つのVOCの濃度であり、独立して決定された結果が血糖濃度である場合、6つのVOCの濃度は、対応するグルコース濃度と照合される)。訓練プロセスは、任意の回数繰り返されてもよい。ある実施形態では、訓練プロセスは、ウェアラブルデバイスが使用者に最初に着用されるときに実行される。ある実施形態では、訓練プロセスは、ウェアラブルデバイスが使用者に一定期間着用された後に実施される。ニューラルネットワーク、クラスタ分析及び/又は他の人工知能システムも、(例えば、受信した訓練プロセスから追加の訓練結果を推定するために)訓練プロセスに使用されてもよい。訓練プロセスが多数回実行されると、独立して決定された結果と最も高い精度及び再現性で相関する特定的なVOC又はVOCの特定的な組み合わせが識別され得る。このように、訓練プロセスを通じて、各々の人に対して検出されるVOCの性質は、使用者ごとに経時的に改善されてもよい。ニューラルネットワーク、クラスタ分析及び/又は他の人工知能システムがこの分析に使用されてもよい。
【0111】
加えて、ウェアラブルデバイスの動作パラメータは、特定的な条件下で、又は試験に関連付けられたあるパラメータに基づいて、使用者のために決定されてもよい。したがって、特定のパラメータが結果の精度に悪影響を与えると決定されることがあり、そのようなパラメータが存在すると決定されたとき、パラメータの存在が結果に注記されても、又はその値が破棄されてもよい。本実施形態のある態様では、コントローラは、結果に関連付けられたサンプリングパラメータを決定し、記録する。このようなサンプリングパラメータは、i)環境因子の存在;ii)時間的因子(例えば、サンプリングプロセスが開始、停止及び/又は完了された時間);iii)食事因子(例えば、使用者により最後に食品又は飲料アイテムが消費された時間、又は特定の食品又は飲料アイテムの消費);iv)生理学的因子(例えば、使用者により特定の活動が行われた時間、使用者の全般的な健康);及びv)投薬因子(例えば、使用者が服用している可能性のある処方薬又は非処方アイテム)を含むが、これらに限定されない。様々なサンプリングパラメータは、受信デバイスなどを通して使用者によって入力され、その後、ウェアラブルデバイスのコントローラに送信されても、又は第三者から得られてもよい(例えば、環境条件に関して、又はウェアラブルデバイスの追加のセンサによって得られてもよい)。
【0112】
コントローラは、結果に1つ以上のサンプリングパラメータをタグ付けすることができる。ウェアラブルデバイスを用いて得られた結果が、別の方法でおおよそ同じ時間に決定された結果と相関しないとき、サンプリングパラメータが評価されて、特定のサンプリングパラメータが結果に干渉しているかどうかを決定することができる。例えば、以下の仮定のシナリオを考慮せよ。結果が、使用者の生理学的状態の決定をが正確に提供しない(すなわち、使用者が低血糖症を患っていない、又は低血糖症の危険性がない)。結果に関連付けられたサンプリングパラメータを調べると、相対湿度が30%超、時刻が午前10時であると決定された。結果が使用者の生理学的状態の決定を正確に提供しない追加の事例において、相対湿度が30%超、時刻が午後1時であると決定された。この仮定のシナリオでは、相対湿度が30%以上であることが結果に悪影響を及ぼすサンプリングパラメータであると決定されることができるが、結果が決定された時刻は結果に悪影響を及ぼさないサンプリングパラメータであると決定され得る。
【0113】
動作モード例
ここで
図5も参照すると、ウェアラブルデバイス1の動作を示すフローチャートが示されている。
図5は、動作中の
図2のウェアラブルデバイス1を図示しているが、この説明は、説明したウェアラブルデバイス1の他の実施形態にも適用可能である。
図5は、試料として周囲空気を、分析物としてVOCを使用する低血糖症の試験を図示するが、他の条件が試験され、他の試料が使用され、他の分析物が決定されてもよい。試験は、コントローラ60がウェアラブルデバイス1のセンサシステム50をアクティブ化することから始まる(ステップA)。コントローラは、所定のスケジュールで、又は使用者によって(例えば、ウェアラブルデバイス1の使用者入力部100を通して)指示された通りに試験を始めるようにプログラムされてもよい。センサシステム50をアクティブ化した後、コントローラは、ポンプアセンブリ90をアクティブ化して、入口通路20a及び20bを介してチャンバ30に周囲空気の試料を吸引する(又は、代替的に、入口を開くか、又は入口へのアクセスを提供する)。周囲空気は、膜25を通過して、大きな微粒子をろ過し、及び/又は周囲空気中の含水量を除去又は低減する(ステップB)。
【0114】
その後、試料はセンサシステム50に曝露される/接触する。センサシステム50は、センサシステム50のセンサが反応するVOCが試料内に存在するとき、信号(すなわち、データ)を提供するために試料中に存在するVOCを検出する。試料がセンサシステム50と接触した後、分析物に関するデータは、センサからデータモジュール52に(又は代替的に、プロセッサ、メモリ又は別個のコンピューティングデバイス、その他適したものに直接)伝達される。コントローラ60は、データモジュール52を呼び出す又はアクティブ化することにより、データモジュール52から信号を獲得する。次に、コントローラ60は、コントローラ60に提供される命令に従って信号を処理して、結果(1つ以上のVOCの存在、濃度及び/又は量であってもよい)を提供する(ステップD)。コントローラ60は、任意選択で、結果から低血糖症の状態を決定してもよい。状態は、例えば、「正常」、「境界」、又は「低血糖症」など、所望の任意の状態であることができる。データ、結果、及び/又は状態は、任意選択で、コントローラによってメモリ(スペート(spate)メモリ又はコントローラの一部であってもよい)に保存される(ステップE)。代替的に、信号は、本明細書に説明されているように、別個のコンピューティングデバイスによって処理されてもよい。コントローラは、データ、結果及び/又は状態を使用して、ウェアラブルデバイス1の通知モジュール102を通して、例えば、可視アラート(例えば、LEDインディケータを通じて)、可聴アラート(例えば、可聴アラーム)、又は触覚アラート(例えば、振動アラーム)などのアラートを使用者に提供することができる。代替的に、データ、結果及び/又は状態は、コントローラ60から、無線モジュール70を介して1つ以上の受信デバイス(すなわち、別個のコンピューティングデバイス)に送信される。受信デバイスは、上述のように、データ、結果及び/若しくは状態を表示し、並びに/又は使用者にアラートを提供することができる。加えて、いくつかの実施形態では、データ、結果及び/若しくは状態、並びに/又はアラートは、ローカルに提供されることと、受信デバイスに無線で送信されることとの両方が可能である(ステップF)。
【0115】
送信されたデータ、結果及び/又は状態は、使用者及び/又は使用者の選択した介護者、家族若しくはその他所望の受信者に送信されることができる。ウェアラブルデバイス1と受信デバイスとの間の通信は、送信されたデータ、結果及び/又は状態のプライバシーを確保するために、本明細書に説明されているように暗号化されることができる。受信デバイスは、送信された情報を観察及び分析するインタフェースとして役立つアプリケーションを含み、また、経時的に送信された情報の表示を提供して、送信された情報の選択された時間枠の履歴を使用者に提供するとともに、異なる時間枠のデータ、結果及び/又は状態を比較するように、プログラムされることができる。
【0116】
要約すると、コントローラは、センサシステムによって生成されたデータを収集し、データを処理して、データ、結果及び/若しくは状態を提供し、並びに/又はそのデータ、結果及び/若しくは状態をメモリに記憶することができる。データ、結果及び/又は状態は、ウェアラブルデバイス及び/又は受信デバイスでローカルに表示されることができる。アラートは、ウェアラブルデバイス及び/又は受信デバイスを通じてローカルに提供されることができる。データ、結果及び/若しくは状態、並びに/又はアラートは、使用者及び使用者の介護者、家族又はその他所望の受信者に提供されることができる。
【0117】
好ましい実施形態では、非侵襲的モニタリングは、使用者がデバイスに直接試料を提供する(例えば、デバイスに直接息を吐き出す)ことを必要とせずに実施される。
【0118】
好ましい実施形態では、非侵襲的モニタリングは、使用者が、デバイスに息を吐き出してモニタリングプロセスを開始すること、モニタリングプロセスを完了すること、モニタリングプロセスの結果を決定すること、及び/又はそのような結果を見ることを必要とせずに実施される。
【0119】
好ましい実施形態では、非侵襲的モニタリングは、モニタリングプロセスを開始するため、モニタリングプロセスを完了するため、モニタリングプロセスの結果を決定するため、及び/又はそのような結果を見るための使用者のアクションを必要とせずに実施される。
【0120】
上述の方法及び装置は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲及び特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者により本開示の範囲及び特許請求の範囲内の様々な修正がなされ得ることを理解すべきである。本明細書に説明されるセンサは、医療用途に加えて様々なモニタ用途で使用されることができる。特定的なハードウェア要素が説明されているが、均等の要素が使用されることができ、システム内のコンポーネントの数を低減させるために構造が再構成され得ることは、通常の当業者には明らかであろう。
【0121】
使用方法
説明したウェアラブルデバイスは、1つ以上の分析物をモニタするために被験者によって使用されることができる。このようなモニタリングが使用されて、使用者が彼の/彼女の健康状態を経時的にモニタし、所与の疾患又は症状を患うのを回避することができる。本開示のウェアラブルデバイスは、モニタリングプロセスを開始又は完了するためのステップを使用者が取ることを必要とせずに分析物に関する情報を提供するため、分析物モニタリングに伴うノンコンプライアンスのリスクが減少し、その結果、使用者の健康に利益をもたらす。
【0122】
本開示のウェアラブルデバイスは、多くの方法で使用されることができる。一実施形態では、本開示は、使用者からの試料中の分析物の非侵襲的モニタリングによって、使用者の生理学的状態を評価するための方法であって:a)本開示のウェアラブルデバイスを提供することであって、使用者がデバイスを着用する、ことと;b)ウェアラブルデバイスのセンサシステムを試料に曝露することと;c)センサシステムを介して分析物を検出することであって、センサシステムが分析物の存在下で信号を生成する、ことと;d)信号を分析して分析物の存在、量及び/又は濃度を決定して、結果を作り出すことと;e)任意選択で、(i)結果を使用者に提供すること;(ii)使用者に結果をアラートすること;及び/又は(iii)結果が生理学的状態の許容範囲内にあるか許容範囲外にあるかを使用者に通知することとを含む方法を提供する。
【0123】
別の実施形態では、本開示は、使用者からの試料中の分析物の非侵襲的モニタリングによって使用者が疾患又は症状を患っている、患いやすい、又は患う危険性があるかどうかを決定するための方法であって:a)本開示のウェアラブルデバイスを提供することであって、使用者がデバイスを着用する、ことと;b)ウェアラブルデバイスのセンサシステムを試料に曝露することと;c)センサシステムを介して分析物を検出することであって、センサシステムが分析物の存在下で信号を生成する、ことと;d)信号を分析して分析物の存在、量及び/又は濃度を決定して、結果を作り出すことと;e)任意選択で、(i)結果を使用者に提供すること;(ii)使用者に結果をアラートすること;及び/又は(iii)結果が疾患又は症状の許容範囲内にあるか許容範囲外にあるかを使用者に通知することとを含む方法を提供する。
【0124】
一実施形態では、生理学的状態が評価されるとき、生理学的状態は低血糖症である。一実施形態では、生理学的状態が評価されているとき、生理学的状態は、感染症、呼吸器感染症、尿路感染症、胃腸感染症、肥満、糖尿病、I型糖尿病、又はII型糖尿病である。
【0125】
本明細書に説明された方法のある態様では、非侵襲的モニタリングは、使用者がデバイスに直接試料を提供する(例えば、デバイスに直接息を吐き出す)ことを必要とせずに実施される。本明細書に説明された方法のある態様では、非侵襲的モニタリングは、使用者が、デバイスに息を吐き出してモニタリングプロセスを開始すること、モニタリングプロセスを完了すること、モニタリングプロセスの結果を決定すること、及び/又はそのような結果を見ることを必要とせずに実施される。本明細書に説明された方法のある態様では、非侵襲的モニタリングは、モニタリングプロセスを開始するため、モニタリングプロセスを完了するため、モニタリングプロセスの結果を決定するため、及び/又はそのような結果を見るための使用者のアクションを必要とせずに実施される。
【0126】
ウェアラブルデバイスは、本明細書に説明される任意のデバイスであってもよい。試料は、本明細書に説明される任意の試料であってもよい。一実施形態では、試料は間接試料である。間接試料とは、使用者によってデバイスに直接導入されない試料である(例えば、使用者がチューブを通してデバイスの入口ポートに息を吹き込む)。一実施形態では、試料は、デバイスに導入される前に、使用者の周囲環境(例えば、周囲空気)と混じり合う。特定の実施形態では、試料は、ウェアラブルデバイス及び使用者を取り囲む周囲空気である。試料が周囲空気であるとき、分析物はウェアラブルデバイスの使用者から生じているか、又は由来するものであり、標的分析物が使用者を取り囲む周囲空気に含まれるように周囲空気と混合される。
【0127】
分析物は、本明細書に説明される任意の分析物であってもよく、試料中に本明細書に説明される任意の濃度(例えば、1ppbと10ppmの間の濃度)で存在してもよい。ある実施形態では、分析物はVOCである。ある実施形態では、分析物はVOCであり、生理学的状態は高血糖症である。ある実施形態では、生理学的状態は低血糖症であり、検出されるVOCは:(1)アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、若しくは上記の任意の組み合わせ;(2)アセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(3)アセトン、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、若しくは上記の任意の組み合わせ;(4)アセトン、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(5)アセトン、及びペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、メタノール、プロパン、イソプレン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(6)エタノール、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、アセトン、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、若しくは上記の任意の組み合わせ;(7)エタノール、及びメチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、アセトン、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、イソプレン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(8)エタノール、及びメチルナイトレート、エチルベンゼン、若しくは上記の任意の組み合わせ;(9)イソプレン、及びアセトン、メチルナイトレート、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、エタノール、メタノール、プロパノール、メタン、プロパン、エチルベンゼン、O-キシレン、M/P-キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、若しくは上記の任意の組み合わせ;10)エタノール、メチルナイトレート、及びエチルベンゼン、又は11)アセトン、ペンチルナイトレート(例えば、2-ペンチルナイトレート)、メタノール、プロパン、及びイソプレンである。