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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240718BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20240718BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/895
A61Q1/02
A61K8/891
A61K8/19
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021529993
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025160
(87)【国際公開番号】W WO2021002285
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019123124
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020081091
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】小河 頌子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】池田 智子
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079717(WO,A1)
【文献】特開平09-087129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2~8質量%の高級アルコール、
(B)2~20質量%の非イオン性界面活性剤、
(C)シリコーンエラストマー粉末、
(D)色材、
(E)水、及び
(F)油分を含有し、
前記(B)非イオン性界面活性剤が、
(b1)1~10質量%の直鎖飽和アルキルとポリアルキレングリコールとのエーテルを含む第1の界面活性剤と、
(b2)1~10質量%のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む第2の界面活性剤と、を含有し、
前記(D)色材が(d1)着色顔料および(d2)白色顔料を含み、前記(d1)着色顔料が化粧料全量に対して0.5質量%以上の酸化鉄を含有し、前記(d2)白色顔料が化粧料全量に対して2~10質量%の酸化チタンを含む、ことを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
(d1)着色顔料が、赤酸化鉄、黄酸化鉄及び黒酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
(C)シリコーンエラストマー粉末が、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリシリコーン-1クロスポリマー、ポリシリコーン-22、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
ポリイソブテンを含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化化粧料に関する。さらに詳しくは、肌の欠点を隠ぺいする補正効果に優れ、なおかつ肌に柔らかくフィットしてハリ感を与えることのできる水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション等のメーキャップ化粧料に求められる重要な役割の一つである「美的役割」には、肌の色味調整や毛穴等の凹凸補正をすることが含まれる。従来のファンデーション等においては、肌の色味を補正するための高屈折率を有する成分や、光拡散効果により肌の凹凸を目立ちにくくする粉末成分が配合されていた(特許文献1)。
【0003】
上記のようなソフトフォーカス効果を有する粉末成分を製品に配合して効果を持続的に発揮させるには粉末成分を化粧料中に均一に分散させる必要がある。特に、水中油型乳化化粧料は、肌に塗布した際にみずみずしい感触を与えるという利点を有するが、疎水性表面を持つ粉末成分を安定に保持することが困難であった。
【0004】
特許文献2には、αゲル構造を導入した水相に疎水性粉末を配合した水性化粧料が記載され、特許文献3には、水相にαゲル構造を導入し、油相に特定の糖エステルを配合するとともに粉末分散効果を持つ液状高級脂肪酸を配合することにより、内油相の疎水性粉末の安定性を向上させた水中油型乳化化粧料が記載されている。これらの文献に記載された化粧料は、配合した粉末成分に基づく補正効果を発揮するが、粉末成分を増量すると安定性を維持するのが困難になり、内油相に分散した疎水性粉末が外水相に浸出して色縞を生じる懸念があった。また、これらの化粧料は肌にハリ感を与えるものではなかった。
【0005】
肌にハリ感を与える化粧料には、従来からポリビニルアルコール等の被膜形成性を持つ水溶性高分子が配合されている(特許文献4)。これらの水溶性高分子が形成する被膜は、小じわをのばして肌にハリ感を付与するという効果を有する。しかしながら、被膜が経時的に硬くなり、つっぱり感を生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-201829号公報
【文献】WO2017/150519号公報
【文献】特許第5913411号公報
【文献】特開2011-148716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水中油型乳化化粧料でありながらソフトフォーカス効果を有する粉末成分を安定に保持することにより使用感と肌補正効果に優れるのみならず、小じわやたるみを目立たせずにハリ感を付与するという従来の補正化粧料になかった効果を併せ持つ化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水相にαゲル構造を導入した水中油型乳化化粧料において、αゲルを構成する成分の配合量を特定範囲に調整し、なおかつシリコーンエラストマー粉末を配合することによって上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)1~10質量%の高級アルコール、
(B)2~20質量%の非イオン性界面活性剤、
(C)シリコーンエラストマー粉末、
(D)色材、
(E)水、及び
(F)油分を含有し、前記(D)色材が(d1)着色顔料を含み、当該着色顔料が0.5質量%以上の酸化鉄を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型乳化化粧料は、従来技術に比較して多量のαゲル構成成分を含有しており、それらが水とともに、層状結晶の親水部の間に水が保持されたラメラ状の会合体(αゲル)を形成することにより化粧料の系全体を増粘して柔軟性及び適度な硬さをもったゲルとする。そのため、乳化安定性が著しく向上するとともに、配合した粉末成分が均一に分散された状態で保持される。一方、粉末成分としてソフトフォーカス効果を有するシリコーンエラストマー粉末を含めることで、αゲル構成成分を増量してもべたつきを生じず、補正効果が長時間維持されるのみならず、使用時に柔軟なフィット感を与えるとともに小じわやたるみを目立たなくさせ、肌にハリ感を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A)高級アルコール
本発明の水中油型乳化化粧料(以下、単に「本発明の化粧料」ともいう)に配合される(A)高級アルコールは、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において使用できるものであれば特に限定されず、例えば、飽和直鎖一価アルコール、不飽和一価アルコールなどが挙げられる。
【0012】
飽和直鎖一価アルコールとしては、ドデカノール(ラウリルアルコール)、トリドデカノール、テトラドデカノール(ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(セリルアルコール)等が挙げられる。不飽和一価アルコールとしては、エライジルアルコール等が挙げられる。本発明では経時安定性の点から飽和直鎖一価アルコールが好ましい。
【0013】
(A)高級アルコールは、上記の1種または2種以上を用いることができる。本発明では2種以上の脂肪族アルコールの混合物を用いるのが好ましく、さらに好ましくは、その混合物の融点が60℃以上となるような組み合わせである。この融点は60℃未満であると、処方によっては系の温度安定性が低下する場合がある。本発明では、炭素数12~22の直鎖飽和アルキル基を有する高級アルコールを用いるのが好ましく、例えば、ステアリルアルコールとベヘニルアルコールの組み合わせが特に好ましい。
【0014】
(A)高級アルコールの配合量は、水中油型乳化化粧料全量に対して1~10質量%であり、好ましくは2~8質量%である。(A)高級アルコールの配合量が1質量%未満であると肌にハリ感を与えることができず、10質量%を超えると十分な乳化安定性が得られない場合がある。
【0015】
(B)非イオン性界面活性剤
本発明の水中油型乳化化粧料に使用される(B)非イオン性界面活性剤は、特に限定されるものではない。具体例としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、マルチトールヒドロキシ脂肪族アルキルエーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油グリセリル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、テトラポリオキシエチレン・テトラポリオキシプロピレン-エチレンジアミン縮合物、ポリオキシエチレン-ミツロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド、ポリオキシエチレン-プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-アルキルアミン、ポリオキシエチレン-脂肪酸アミド、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸などが挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種でも2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0016】
本発明にあっては、(B)非イオン性界面活性剤の中でも、親水性のもの、例えば、HLBが8以上、あるいはHLBが10以上の界面活性剤が好ましく用いられる。なお、本明細書において、2種以上の界面活性剤のHLBは、各界面活性剤の配合量に基づいて加重平均した値とする。
【0017】
本発明における(B)非イオン性界面活性剤は、(b1)αゲルの形成に主に寄与する界面活性剤(第1の界面活性剤)、及び(b2)化粧料の系全体の乳化に主に寄与する界面活性剤(第2の界面活性剤)を含むのが好ましい。前記の(b1)第1の非イオン性界面活性剤と(b2)第2の非イオン性界面活性剤とは、同一の物質からなる場合も異なる物質からなる場合もあるが、ともに親水性であるものが好ましい。
【0018】
(b1)第1の界面活性剤としては、直鎖飽和アルキル(好ましくは炭素数12~22)とポリアルキレングリコール(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等)とのエーテルを用いるのが好ましい。具体例としては、グリセリンモノステアリルエーテル(バチルアルコール)、POE(20)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(25)ステアリルエーテル、POE(30)ステアリルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル、POE(20)モノイソステアリン酸グリセリン、POE(60)モノイソステアリン酸グリセリン、POE(20)モノステアリン酸ソルビタン、ヤシ脂肪酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル、ラウラミドMEA、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリン酸PEG-32、ラウリン酸PEG-40硬化ヒマシ油、オレイン酸PEG-14、オレイン酸ポリグリセリル-6、ジラウリン酸PEG-32、PEG-11コカミド等を挙げることができるが、これらに限定されない。特に、POE(20)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(30)ステアリルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0019】
(b2)第2の界面活性剤としては、比較的嵩高い分子構造を有する界面活性剤が好ましい。具体的には、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(10E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(30E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油コハク酸からなる群から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0020】
本発明の化粧料における(B)非イオン性界面活性剤の配合量は、(b1)第1の界面活性剤と(b2)第2の界面活性剤の合計で、水中油型乳化化粧料全量に対して2~20質量%である。(b1)第1の界面活性剤及び(b2)第2の界面活性剤の配合量は、各々、水中油型乳化化粧料全量に対して1~10質量%の範囲内とするのが好ましい。
(b1)第1の非イオン性界面活性剤の配合量が1質量%未満であると肌にハリ感を付与するのに十分なαゲルが形成されず、10質量%を超えて配合するとべたつきの原因となる場合がある。(b2)第2の非イオン性界面活性剤の配合量が1質量%未満であると化粧量全体の乳化安定性が不十分となり、10質量%を超えて配合するとαゲルの形成を阻害する場合がある。
【0021】
(C)シリコーンエラストマー粉末
本発明の化粧料で用いられる(C)シリコーンエラストマー粉末としては、特に限定されないが、シリコーンエラストマー球状粉末が好ましい。中でも、球状シリコーンゴム粉末をシリコーン樹脂で被覆した白色球状のシリコーン複合粉末を用いるのが好ましい。シリコーンエラストマー球状粉末の平均粒径の範囲は、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは1~50μmである。また、シリコーンエラストマー球状粉末のJIS-A硬度は10~80の範囲とするのが好ましい。
【0022】
本発明における(C)シリコーンエラストマー粉末としては、例えば、化粧品成分表示名称でいうところの、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリシリコーン-1クロスポリマー、ポリシリコーン-22、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等から選択される1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0023】
(c)シリコーンエラストマー粉末は、市販品を用いてもよく、例えば、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー[製品名:KSP-100、KSP-101、KSP-102、KSP-105(信越化学工業(株)製)]、ポリシリコーン-1クロスポリマー[製品名:KSP-411(信越化学工業(株)製)、ポリシリコーン-22[製品名:KSP-441(信越化学工業(株)製)]、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー[製品名:トレフィルE-506S、トレフィルE-508(東レ・ダウコーニング(株)製)]等を挙げることができる。中でも、信越化学工業(株)製のKSPシリーズのシリコーンエラストマー粉末、即ち、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリシリコーン-1クロスポリマー、及び/又はポリシリコーン-22を用いるのが好ましい。
【0024】
本発明の化粧料における(C)シリコーンエラストマー粉末の配合量は1~10質量%とするのが好ましく、2~8質量%がより好ましい。(C)シリコーンエラストマー粉末の配合量が化粧料全量に対して1質量%未満であると凹凸補正効果が十分に発揮されなくなり、べたつきも生じる。10質量%を超えて配合すると塗布時のフィット感が低下する場合がある。
【0025】
また、本発明の化粧料では、前記(C)シリコーンエラストマー粉末の配合量が当該化粧料に配合される使用性粉末の合計配合量に占める比率を60質量%以上とするのが好ましい。ここで、「使用性粉末」とは、化粧料の使用性を向上させるために配合される有機又は無機の粉末、特に球状粉末や板状粉末を意味し、微粒子酸化チタン等の紫外線散乱剤及び顔料(着色顔料、白色顔料、体質顔料、真珠光沢顔料)は含まない。使用性粉末の例としては、シリコーン樹脂粉末,PMMA等の樹脂粉末、シリカ粉末、マイカ、硫酸バリウム粉末等が挙げられる。
(C)成分であるシリコーンエラストマー粉末は、油相又は水相のいずれに配合してもよいが、水相に配合することが好ましい。
【0026】
(D)色材
本発明における(D)色材は、(d1)着色顔料、(d2)白色顔料、(d3)体質顔料、(d4)真珠光沢顔料、(d5)有機合成色素(染料、レーキ、有機顔料を含む)及び(d6)天然色素を包含する。なお、本明細書においては、(d1)着色顔料、(d2)白色顔料及び(d3)体質顔料を包括して「無機顔料」ということもある。
【0027】
本発明の化粧料においては、前記(D)色材は、(d1)着色顔料を必須成分として含有し、当該(d1)着色顔料は、化粧料全量に対して0.5質量%以上の酸化鉄を含有している。(d1)着色顔料が含有する酸化鉄は、赤酸化鉄(ベンガラ)、黄酸化鉄、及び黒酸化鉄から選択される1種又は2種以上とするのが好ましく、当該(d1)着色顔料は、酸化鉄に加えて群青を代表例とする着色無機顔料を含有していてもよい。
【0028】
本発明の化粧料における(d1)着色顔料に含まれる酸化鉄の配合量は少なくとも0.5質量%である。0.5質量%未満であると十分なメーキャップ効果が得られない。酸化鉄配合量の上限値は、特に限定されないが、通常は5質量%以下、好ましくは2質量%以下である。
【0029】
本発明における(D)色材は、(d1)着色顔料に加えて、(d2)白色顔料、(d3)体質顔料、(d4)真珠光沢顔料、(d5)有機合成色素(染料、レーキ、有機顔料を含む)及び(d6)天然色素から選択される他の色材を含有していてもよい。特に、本発明の化粧料をファンデーションとして提供する場合には、(d2)白色顔料を配合するのが好ましい。
【0030】
(d2)白色顔料は、酸化チタン及び酸化亜鉛を代表例とする無機顔料である。本発明では、酸化チタンが好ましく用いられる。
酸化チタンは、隠蔽性を高める観点から、平均粒径が0.1μm以上、例えば、0.1μm~1μm、好ましくは0.1μm~0.8μmのものを使用するのが好ましい。ただし、これらに限定されず、肌補正効果、分散性及び乳化安定性を損なわない範囲であれば、上記以外の平均粒径の酸化チタンを用いることもできる。本開示における平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)等による観察により測定した値から算出した平均値である。
【0031】
本発明の化粧料における(d1)着色顔料、(d2)白色顔料、あるいは(d3)体質顔料を含む無機顔料は、疎水性表面を持つ無機顔料とし、それらを油相(内相)に配合するのが好ましい。
【0032】
無機顔料の表面疎水化処理方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン;トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等による処理)、脂肪酸処理(パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等による処理)、脂肪酸石鹸処理(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸等による処理)、脂肪酸エステル処理(デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等による処理)等が挙げられる。
【0033】
本発明の化粧料における疎水化処理酸化チタンの配合量は、水中油型乳化化粧料全量に対して、1~20質量%であり、好ましくは2~10質量%であり、最も好ましくは3~7質量%である。例えば、ファンデーションやコンシーラー等の色補正効果を必要とする化粧料の場合、疎水化処理酸化チタンの配合量が1質量%未満では十分な肌補正効果を得ることができず、20質量%を超えると乳化安定性が損なわれる場合がある。
【0034】
(E)水
本発明の化粧料に使用される(E)水は特に限定されず、具体的に示すとすれば、精製水、イオン交換水などが挙げられる。
(E)水の配合量は、水中油型乳化化粧料全量に対して、25~90質量%が好ましく、さらに好ましくは30~80質量%であり、最も好ましくは30~60質量%である。
【0035】
(F)油分
本発明の化粧料に使用される(F)油分は、水中油型乳化化粧料の内相の油相を構成する。本発明に使用できる油分は特に限定されず、化粧品に用いられているものの中から安定性を損なわない範囲で選択することができる。好ましい油分としては、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、液体油脂等を挙げることができる。
【0036】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、イソヘキサデカン、イソドデカン等が使用される。
【0037】
エステル油としては、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリイソステアリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、パルミチン酸イソプロピル、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、セバシン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソデシル等が使用できる。
【0038】
シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴムなどが例示される。
【0039】
液体油脂としては、アマニ油、ツバキ油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ナタネ油、大豆油、落花生油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等がある。
【0040】
本発明における(F)油分には紫外線吸収剤(特に、常温で液状のもの)も含まれる。紫外線吸収剤としては、オクチルメトキシシンナメート、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、ビスレゾルシニルトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オキシベンゾン-3等が挙げられる。
【0041】
(F)油分の配合量は、特に限定されないが、水中油型乳化化粧料全量に対して、5~30質量%が好ましい。
【0042】
本発明の化粧料は、前記の必須成分(A)~(F)を上記のように配合することにより、従来の補正用化粧料に比較して多量のαゲル構成成分((A)及び(b1))が化粧量全体を適度に増粘する。それにより、肌に対して柔軟にフィットしてハリ感を付与するのみならず、(C)シリコーンエラストマー粉末が水相中に均一に分散されて安定に保持される。一方、油相中には(d1)着色顔料や(d2)白色顔料等の(D)色材が安定に保持され色縞を生じることがない。
【0043】
本発明の化粧料は、8,000mPa・s~40,000mPa・s(B型粘度計、30℃、12rpm)の粘度を有するのが好ましく、10,000mPa・s~25,000mPa・s(B型粘度計、30℃、12rpm)の粘度とするのがより好ましい。
【0044】
本発明の化粧料は、前記の必須成分(A)~(F)に加えて、化粧料、特にメーキャップ化粧料に通常配合されうる他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
【0045】
例えば、特許文献3に記載された化粧料において必須成分とされているイソステアリン酸等の液状高級脂肪酸を配合すると粉末成分の分散性が向上するので好ましい。しかしながら、液状高級脂肪酸を多量に配合するとαゲルの形成が阻害される場合があるため、本発明における液状高級脂肪酸の配合量は1質量%未満とするのが好ましく、より好ましくは0.9質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下であり、本発明は液状高級脂肪酸を配合しない態様も包含する。
【0046】
本発明の化粧料には保湿剤を配合するのが好ましい。保湿剤は特に限定されず、化粧料等に通常配合されるものから選択できる。例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物、トレハロース、エリスリトール、POE・POPランダム共重合体メチルエーテル等が挙げられる。
【0047】
他の任意成分としては、増粘剤、低級(C1~C6)アルコール、天然高分子、合成高分子、酸化防止剤、緩衝剤、各種薬剤、防腐剤、香料等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
なお、水溶性の増粘剤として、ヒドロキシエチルセルロース、サクシノグリカン、ジェランガム、寒天等の多糖類誘導体や2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体を用いることができる。しかし、ジェランガム、寒天、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体を配合する場合、その配合量がαゲル構成成分((A)高級アルコール+(B)非イオン性界面活性剤)の合計配合量の1/9以上であると、化粧料が硬くなりすぎるので好ましくない。よって、ジェランガム、寒天、及び/又は2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む共重合体を配合する場合、その配合量は、αゲル構成成分の配合量の1/9未満、好ましくは1/10以下とするのが好ましい。
【0049】
本発明の化粧料は、水中油型乳化化粧料に汎用されている製造方法に従って製造することができる。例えば、水相成分と油相成分を別々に混合した後、水相成分混合物中に油相成分混合物を添加して適宜攪拌して乳化させることにより製造できる(製法I)。
あるいは、(D)色材、(b2)第2の界面活性剤を含む(E)水の一部、及び(F)油分の一部(「第1の油分」とする)を含む「第1の乳化物(1)」を調製し、(A)高級アルコール、(b1)第1の界面活性剤、(E)水の残部、及び(F)油分の残部(「第2の油分」とする)を
含む「第2の乳化物」を別途調製し、第1の乳化物と第2の乳化物とを混合する方法で製造することができる(製法II)。
さらに、(D)色材、(b2)第2の界面活性剤を含む(E)水、及び(F)油分の一部(「第1の油分」とする)を含む「第1の乳化物(2)」を調製し、(A)高級アルコール、(b1)第1の界面活性剤、及び(F)油分の残部(「第2の油分」とする)を混合したものを、第1の乳化物に添加して更に乳化する方法で製造することができる(製法III)。
ここで、製法II及び製法IIIにおける「第1の油分」は、炭化水素油及びシリコーン油から選択される非極性油を含むのが好ましく、「第2の油分」は、エステル油及び紫外線吸収剤から選択される極性油を含むのが好ましい。
(C)シリコーンエラストマー粉末は、製法Iにおける水相成分、製法IIにおける「第1の乳化物(1)」または「第2の乳化物」の水相部分、製法IIIにおける「第1の乳化物(2)」の水相部分に配合するのが好ましい。
【0050】
本発明の化粧料は、肌補正効果及びハリ感付与に優れた皮膚用化粧料、中でも、ファンデーション等のメーキャップ化粧料として提供するのに適したものである。
本発明の化粧料は、リキッドタイプ又はクリームタイプのファンデーションとして提供するのに適しており、例えば、チューブ型容器、ディスペンサー容器、ジャー容器等に収容した形態、あるいは、水不溶性スポンジ、発泡フォーム担体等に含浸させたクッションタイプファンデーションの形態で提供するのが好ましい。
【実施例
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
【0052】
表1及び表2に示す処方の水中油型乳化化粧料を製造し、以下の評価を行った。
【0053】
実施例及び比較例の各化粧料を肌に適用し、「べたつきのなさ」、「ハリ感」、「小じわ隠し効果」、「伸ばしやすさ」、及び「4時間後の化粧持ち」を、以下の基準に従って官能評価した。「4時間後の化粧持ち」とは、4時間後に粉浮き・脂浮きが見られないという化粧持ちの良さを表す指標である。
A:非常に感じられる。
B:感じられる。
C:あまり感じられない。
D:全く感じられない。
【0054】
「安定性」は、各例の化粧料を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:きわめて安定で変化が見られない。
B:安定であり変化がほとんど見られない。
C:不安定で色縞が生じた。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1及び表2に示されるように、本発明の化粧料(実施例1~5)は、すべての評価項目で満足できる結果であった。しかし、αゲル構成成分((A)及び(b1))の配合量が少ない比較例1は安定性が劣り、ハリ感を与えることができなかった。一方、(C)シリコーンエラストマー粉末を配合しない比較例2ではべたつきを生じ、小じわ隠し効果も劣るものとなった。また、比較例1及び2は、化粧持ちの点でも不十分であった。
【0058】
以下に本発明の化粧料の別の処方例を挙げる。この処方の化粧料も前記実施例1と同等の特性を有していた。
(処方例1)
配合成分 配合量(質量%)
水 53.76
ジプロピレングリコール 5
1,3-BG 7
フェノキシエタノール 0.5
PEG-60硬化ヒマシ油 1.2
ヒドロキシエチルセルロース 0.12
サクシノグリカン 0.1
イソステアリン酸 0.7
揮発性ジメチコン 2.84
ポリエーテル変性シリコーン 0.39
ポリグリセリン変性シリコーン 0.23
疎水化処理酸化チタン 4.08
疎水化処理酸化鉄 0.71
水添ポリデセン 3
ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート 3
オクチルメトキシシンナメート 6
ステアリルアルコール 0.78
ベヘニルアルコール 1.8
グリセリンモノステアリルエーテル 0.99
POE(20)ベヘニルエーテル 1.8
(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/
シルセスキオキサン)クロスポリマー 6
合計 100