(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20240718BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B22D17/22 E
B22D17/32 B
B22D17/32 A
B22D17/32 J
(21)【出願番号】P 2021534548
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2020018083
(87)【国際公開番号】W WO2021014707
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019136121
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】辻 眞
(72)【発明者】
【氏名】林 勇人
(72)【発明者】
【氏名】野田 三郎
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-107953(JP,A)
【文献】特開昭51-129817(JP,A)
【文献】特開2004-255430(JP,A)
【文献】特開昭59-156560(JP,A)
【文献】特開2015-163411(JP,A)
【文献】特開2012-011395(JP,A)
【文献】特開2004-195880(JP,A)
【文献】特開2000-167893(JP,A)
【文献】特開平07-185773(JP,A)
【文献】特開平09-225619(JP,A)
【文献】特開平08-132211(JP,A)
【文献】特開2018-149550(JP,A)
【文献】特開平04-123856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/22
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースの上に固定され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、
前記ベースの上に型開閉方向に移動可能に設けられ、可動金型を前記固定金型に対向して保持する可動ダイプレートと、
前記固定金型と前記可動金型とで形成される空洞の中に溶湯を充填し、前記溶湯に第1の圧力を加える射出装置と、
前記空洞の中に充填された前記溶湯を、
前記射出装置で加圧される非製品領域に対し製品領域を間に挟んで反対側の非製品領域で加圧し、前記溶湯に第2の圧力を加える第1の加圧装置と、
前記第2の圧力が前記第1の圧力より高くなるように前記第1の加圧装置を制御する制御部と、
を備え
、
前記射出装置は、前記空洞に通じる射出スリーブと、前記射出スリーブの中を摺動し、前記溶湯に前記第1の圧力を加える射出プランジャと、前記射出プランジャを移動させる射出アクチュエータと、前記射出アクチュエータを駆動する第1の液圧回路と、を有し、
前記第1の加圧装置は、前記溶湯に前記第2の圧力を加える第1の加圧プランジャと、前記第1の加圧プランジャを移動させる第1の加圧アクチュエータと、前記第1の加圧アクチュエータを駆動する第2の液圧回路と、を有し、
前記第1の液圧回路は、前記第1の液圧回路を流れる第1の作動液の流れを制御する第1のバルブと、前記第1の作動液の流量を大きくするための第1のアキュムレータと、を有し、
前記第2の液圧回路は、前記第2の液圧回路を流れる第2の作動液の流れを制御する第2のバルブと、前記第2の作動液の流量を大きくするための第2のアキュムレータと、を有し、
前記第1の液圧回路は、前記第1の作動液の流量を大きくするための第1の背圧吸収シリンダを有し、
前記第2の液圧回路は、前記第2の作動液の流量を大きくするための第2の背圧吸収シリンダを有し、
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブはサーボバルブであることを特徴とするダイカストマシン。
【請求項2】
前記第2の液圧回路は、前記第1の加圧アクチュエータの加圧側に設けられた第1の液圧センサと、前記第1の加圧アクチュエータの背圧側に設けられた第2の液圧センサと、を有し、
前記制御部は、前記第1の液圧センサと前記第2の液圧センサの測定値に基づき、前記第2の圧力を制御することを特徴とする請求項
1記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記第2の液圧回路は、前記第1の加圧アクチュエータの加圧側と背圧側を短絡する短絡流路と、前記短絡流路に設けられ前記第2の作動液に含まれるガスを抜くためのガス抜きバルブを有することを特徴とする請求項
1又は請求項2記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記第2の液圧回路は、前記第2の作動液の流量を測定する流量センサを有し、前記制御部は前記流量センサの測定値に基づき、前記第1の加圧プランジャの速度を制御することを特徴とする請求項
1ないし請求項
3いずれか一項記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記第1の加圧アクチュエータは前記固定ダイプレートの中に設けられ、前記第1の加圧プランジャは前記固定金型の中に設けられることを特徴とする請求項
1ないし請求項
4いずれか一項記載のダイカストマシン。
【請求項6】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力の1.1倍以上3倍以下であることを特徴とする請求項
1ないし請求項
5いずれか一項記載のダイカストマシン。
【請求項7】
前記空洞の中に充填された前記溶湯を、前記空洞の前記製品領域以外の領域で加圧し、前記溶湯に第3の圧力を加える第2の加圧装置を、更に備え、
前記制御部は、前記第3の圧力が前記第1の圧力より高くなるように前記第2の加圧装置を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項
6いずれか一項記載のダイカストマシン。
【請求項8】
前記第2の加圧装置は、前記溶湯に前記第3の圧力を加える第2の加圧プランジャと、前記第2の加圧プランジャを移動させる第2の加圧アクチュエータと、前記第2の加圧アクチュエータを駆動する第3の液圧回路と、を有することを特徴とする請求項
7記載のダイカストマシン。
【請求項9】
前記第2の加圧装置と前記射出装置との間の距離は、前記第1の加圧装置と前記射出装置の間の距離よりも小さく、
前記制御部は、前記第2の圧力が前記第3の圧力より高くなるように前記第1の加圧装置及び前記第2の加圧装置を制御することを特徴とする請求項
7又は請求項
8記載のダイカストマシン。
【請求項10】
前記制御部は、前記空洞の中への前記溶湯の充填が完了した後、10msec以内に前記溶湯の加圧が開始されるように前記第1の加圧装置を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項
9いずれか一項記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内の空洞に射出装置を用いて溶湯を充填することで、成形品を製造するダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンは、型締装置を用いて型締めされた金型内の空洞に、射出装置を用いて溶湯を充填することで、成形品(ダイカスト品)を製造する。ダイカストマシンは、成形品の製造時に溶湯に加えられる鋳造圧力を低減することが望まれる。鋳造圧力を低減することで、型締装置や射出装置に要求される能力が低減でき、ダイカストマシンの製造コストが低減できる。
【0003】
特許文献1には、型締シリンダ内の油圧の増圧変動を検出し、加圧ピンによる金型キャビティ内への充填圧力を制御して凝固収縮速度に応じてメタルを供給しながら過剰な圧力がかからないようにするダイカストマシンが記載されている。しかしながら、特許文献1のダイカストマシンでは、大幅な鋳造圧力の低減は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、成形品の製造時に溶湯に加えられる鋳造圧力を低減できるダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のダイカストマシンは、ベースと、前記ベースの上に固定され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、前記ベースの上に型開閉方向に移動可能に設けられ、可動金型を前記固定金型に対向して保持する可動ダイプレートと、前記固定金型と前記可動金型とで形成される空洞の中に溶湯を充填し、前記溶湯に第1の圧力を加える射出装置と、前記空洞の中に充填された前記溶湯を、前記射出装置で加圧される非製品領域に対し製品領域を間に挟んで反対側の非製品領域で加圧し、前記溶湯に第2の圧力を加える第1の加圧装置と、前記第2の圧力が前記第1の圧力より高くなるように前記第1の加圧装置を制御する制御部と、を備え、前記射出装置は、前記空洞に通じる射出スリーブと、前記射出スリーブの中を摺動し、前記溶湯に前記第1の圧力を加える射出プランジャと、前記射出プランジャを移動させる射出アクチュエータと、前記射出アクチュエータを駆動する第1の液圧回路と、を有し、前記第1の加圧装置は、前記溶湯に前記第2の圧力を加える第1の加圧プランジャと、前記第1の加圧プランジャを移動させる第1の加圧アクチュエータと、前記第1の加圧アクチュエータを駆動する第2の液圧回路と、を有し、前記第1の液圧回路は、前記第1の液圧回路を流れる第1の作動液の流れを制御する第1のバルブと、前記第1の作動液の流量を大きくするための第1のアキュムレータと、を有し、前記第2の液圧回路は、前記第2の液圧回路を流れる第2の作動液の流れを制御する第2のバルブと、前記第2の作動液の流量を大きくするための第2のアキュムレータと、を有し、前記第1の液圧回路は、前記第1の作動液の流量を大きくするための第1の背圧吸収シリンダを有し、前記第2の液圧回路は、前記第2の作動液の流量を大きくするための第2の背圧吸収シリンダを有し、前記第1のバルブ及び前記第2のバルブはサーボバルブである。
【0011】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第2の液圧回路は、前記第1の加圧アクチュエータの加圧側に設けられた第1の液圧センサと、前記第1の加圧アクチュエータの背圧側に設けられた第2の液圧センサと、を有し、前記制御部は、前記第1の液圧センサと前記第2の液圧センサの測定値に基づき、前記第2の圧力を制御することが好ましい。
【0012】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第2の液圧回路は、前記第1の加圧アクチュエータの加圧側と背圧側を短絡する短絡流路と、前記短絡流路に設けられ前記第2の作動液に含まれるガスを抜くためのガス抜きバルブを有することが好ましい。
【0013】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第2の液圧回路は、前記第2の作動液の流量を測定する流量センサを有し、前記制御部は前記流量センサの測定値に基づき、前記第1の加圧プランジャの速度を制御することが好ましい。
【0014】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第1の加圧アクチュエータは前記固定ダイプレートの中に設けられ、前記第1の加圧プランジャは前記固定金型の中に設けられることが好ましい。
【0015】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第2の圧力は、前記第1の圧力の1.1倍以上3倍以下であることが好ましい。
【0016】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記空洞の中に充填された前記溶湯を、前記空洞の前記製品領域以外の領域で加圧し、前記溶湯に第3の圧力を加える第2の加圧装置を、更に備え、前記制御部は、前記第3の圧力が前記第1の圧力より高くなるように前記第2の加圧装置を制御することが好ましい。
【0017】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第2の加圧装置は、前記溶湯に前記第3の圧力を加える第2の加圧プランジャと、前記第2の加圧プランジャを移動させる第2の加圧アクチュエータと、前記第2の加圧アクチュエータを駆動する第3の液圧回路と、を有することが好ましい。
【0018】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第2の加圧装置と前記射出装置との間の距離は、前記第1の加圧装置と前記射出装置の間の距離よりも小さく、前記制御部は、前記第2の圧力が前記第3の圧力より高くなるように前記第1の加圧装置及び前記第2の加圧装置を制御することが好ましい。
【0019】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記制御部は、前記空洞の中への前記溶湯の充填が完了した後、10msec以内に前記溶湯の加圧が開始されるように前記第1の加圧装置を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成形品の製造時に溶湯に加えられる鋳造圧力を低減できるダイカストマシンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態のダイカストマシンの全体構成を示す模式図。
【
図2】第1の実施形態のダイカストマシンの射出装置及び第1の加圧装置の模式図。
【
図3】第1の実施形態のダイカストマシンの固定金型を含む模式図。
【
図4】第1の実施形態のダイカストマシンの第1の液圧回路の模式図。
【
図5】第1の実施形態のダイカストマシンの第2の液圧回路の模式図。
【
図6】第1の実施形態のダイカストマシンの信号処理系の構成を示すブロック図。
【
図7】第1の実施形態のダイカストマシンの射出装置及び第1の加圧装置の動作の一例を示すグラフ。
【
図8】第2の実施形態のダイカストマシンの全体構成を示す模式図。
【
図9】第2の実施形態のダイカストマシンの射出装置、第1の加圧装置及び第2の加圧装置の模式図。
【
図10】第2の実施形態のダイカストマシンの固定金型を含む模式図。
【
図11】第2の実施形態のダイカストマシンの第2の液圧回路及び第3の液圧回路の模式図。
【
図12】第3の実施形態のダイカストマシンの固定金型を含む模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
なお、本明細書では、液圧の一例として、油圧を用いて説明する。例えば、液圧回路の一例として油圧回路、液圧アクチュエータの一例として油圧アクチュエータ、液圧センサの一例として油圧センサ、液圧装置の一例として油圧装置を用いて説明する。油圧にかえて、例えば、水圧を用いることも可能である。また、本明細書では、作動液の一例として、作動油を用いて説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のダイカストマシンは、ベースと、ベースの上に固定され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、ベースの上に型開閉方向に移動可能に設けられ、可動金型を固定金型に対向して保持する可動ダイプレートと、固定金型と可動金型とで形成される空洞の中に溶湯を充填し、溶湯に第1の圧力を加える射出装置と、空洞の中に充填された溶湯を、空洞の製品領域以外の領域で加圧し、溶湯に第2の圧力を加える第1の加圧装置と、第2の圧力が第1の圧力より高くなるように第1の加圧装置を制御する制御部と、を備える。
【0025】
図1は、第1の実施形態のダイカストマシンの全体構成を示す模式図である。
図1は、一部に断面図を含む側面図である。第1の実施形態のダイカストマシン100は、コールドチャンバ式のダイカストマシンである。
【0026】
ダイカストマシン100は、型締装置10、押出装置12、射出装置14、第1の加圧装置16、金型18、制御ユニット20を備える。
【0027】
ダイカストマシン100は、ベース22、固定ダイプレート24、可動ダイプレート26、リンクハウジング28、タイバー30を備える。
【0028】
ダイカストマシン100は、金型18の内部(
図1中の空洞Ca)に液状金属(溶湯)を射出して充填し、その液状金属を金型18内で凝固させることにより、ダイカスト品を製造する機械である。金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛合金、又は、マグネシウム合金である。
【0029】
金型18は、固定金型18aと可動金型18bを含む。金型18は、型締装置10と射出装置14との間に設けられる。
【0030】
固定ダイプレート24はベース22の上に固定される。固定ダイプレート24は、固定金型18aを保持することが可能である。
【0031】
可動ダイプレート26は、ベース22の上に型開閉方向に移動可能に設けられる。型開閉方向とは、
図1に示す型開方向及び型閉方向の両方向を意味する。可動ダイプレート26は、可動金型18bを固定金型18aに対向して保持することが可能である。
【0032】
リンクハウジング28は、ベース22の上に設けられる。リンクハウジング28には、型締装置10を構成するリンク機構の一端が固定される。
【0033】
固定ダイプレート24とリンクハウジング28は、タイバー30により固定される。タイバー30は、固定金型18aと可動金型18bに型締力が加えられている間は、型締力を支える。
【0034】
型締装置10は、金型18の開閉及び型締めを行う機能を有する。
【0035】
射出装置14は、金型18の空洞Caに溶湯を射出し、空洞Caの中に充填された溶湯を加圧する機能を有する。射出装置14は、空洞Caの中に充填された溶湯に第1の圧力を加える機能を有する。
【0036】
第1の加圧装置16は、金型18の空洞Caの中に充填された溶湯を、空洞Caの製品領域以外の領域で加圧する機能を有する。第1の加圧装置16は、空洞Caの中に充填された溶湯に第2の圧力を加える機能を有する。
【0037】
押出装置12は、製造されたダイカスト品を金型18から押し出す機能を有する。
【0038】
制御ユニット20は、制御装置32(制御部)、入力装置34、表示装置36を含む。制御ユニット20は、型締装置10、押出装置12、射出装置14、及び、第1の加圧装置16を用いたダイカストマシン100の成形動作を制御する機能を有する。
【0039】
入力装置34は、オペレータの入力操作を受け付ける。オペレータは、入力装置34を用いて、ダイカストマシン100の成形条件等の設定が可能となる。入力装置34は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを用いたタッチパネルである。
【0040】
表示装置36は、例えば、ダイカストマシン100の成形条件、動作状況等を画面に表示する。表示装置36は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。
【0041】
制御装置32は、各種の演算を行って、ダイカストマシン100の各部に制御指令を出力する機能を有する。制御装置32は、例えば、成形条件等を記憶する機能を有する。制御装置32は、例えば、射出装置14の動作を制御する。制御装置32は、例えば、金型18の空洞Caの中への溶湯の充填状況に基づき、第1の加圧装置16の動作を制御する。制御装置32は、第2の圧力が第1の圧力より高くなるように第1の加圧装置を制御する。
【0042】
制御装置32は、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。制御装置32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0043】
図2は、第1の実施形態のダイカストマシンの射出装置及び第1の加圧装置の模式図である。
図3は、第1の実施形態のダイカストマシンの固定金型を含む模式図である。
図3(a)は、固定金型18aを可動ダイプレート26の側から見た平面図である。
図3(b)は、可動金型18bを固定ダイプレート24の側から見た平面図である。
【0044】
射出装置14は、射出スリーブ40、射出プランジャ42、射出アクチュエータ44、第1の油圧回路46(第1の液圧回路)、及び、位置センサ48を有する。射出スリーブ40は、給湯口40aを有する。射出プランジャ42は、射出プランジャチップ42aと射出プランジャロッド42bとを含む。射出アクチュエータ44は、射出シリンダ44a、射出ピストン44b、ロッド側室44x、キャップ側室44yを含む。
【0045】
射出スリーブ40は、金型18の空洞Caに通じる。射出スリーブ40は、例えば、固定金型18aに連結された筒状の部材である。射出スリーブ40は、例えば、円筒形状である。
【0046】
射出プランジャ42は、射出スリーブ40の中を摺動する。射出プランジャロッド42bの先端に固定された射出プランジャチップ42aが、射出スリーブ40の中を前後方向に摺動する。射出スリーブ40の中を射出プランジャチップ42aが前方へ摺動することにより、射出スリーブ40の中の溶湯が金型18の中に押し出される。
【0047】
射出プランジャ42は、金型18の空洞Caの中に溶湯が充填された後、溶湯を加圧して溶湯に第1の圧力を加える。
【0048】
給湯口40aは、例えば、射出スリーブ40の上部に設けられる。例えば、図示しないラドルにより溶湯が給湯口40aから射出スリーブ40内に供給される。
【0049】
射出アクチュエータ44は、例えば、油圧アクチュエータである。射出アクチュエータ44は、射出プランジャ42を移動させる機能を有する。射出シリンダ44a内の射出ピストン44bが、射出プランジャロッド42bを押し引きすることにより、射出プランジャ42が移動する。
【0050】
第1の油圧回路46は、射出アクチュエータ44を駆動する機能を有する。第1の油圧回路46は、第1の液圧回路の一例である。第1の油圧回路46は、射出シリンダ44aのロッド側室44xとキャップ側室44yに接続される。第1の油圧回路46は、射出シリンダ44aの加圧側と背圧側に配管で接続される。
【0051】
位置センサ48は、射出プランジャ42の位置を検出する機能を有する。位置センサ48は、例えば、光学式又は磁気式のリニアエンコーダである。位置センサ48で検出される射出プランジャ42の位置を微分することで、射出プランジャ42の速度を検出することが可能である。
【0052】
第1の加圧装置16は、第1の加圧プランジャ52、第1の加圧アクチュエータ54、第2の油圧回路56(第2の液圧回路)、及び、第1のロードセンサ58を有する。第1の加圧プランジャ52は、第1の加圧プランジャチップ52aと第1の加圧プランジャロッド52bとを含む。第1の加圧アクチュエータ54は、第1の加圧シリンダ54a、第1の加圧ピストン54b、第1のロッド側室54x、第1のキャップ側室54yを含む。
【0053】
固定金型18aと可動金型18bとで形成される空洞Caは、製品領域Cax(
図2でハッチングされた領域)と非製品領域Cayとを有する。製品領域Caxで凝固する溶湯はダイカスト品として利用される。非製品領域Cayで凝固する溶湯は、例えば、トリミング工程において除去されダイカスト品として利用されない。非製品領域Cayは、例えば、ランナー、オーバーフロー、エアベントなどである。
【0054】
例えば、固定金型18aの非製品領域Cayに第1のガイド領域18xが設けられる。第1のガイド領域18xは、例えば、固定金型18aに設けられた円柱形状の窪みである。第1のガイド領域18xは、射出スリーブ40に対して、製品領域Caxの反対側に設けられる。第1のガイド領域18xと射出スリーブ40との間に、製品領域Caxが挟まれる。
【0055】
第1の加圧プランジャ52は、第1のガイド領域18xの中を摺動する。第1の加圧プランジャロッド52bの先端に固定された第1の加圧プランジャチップ52aが、第1のガイド領域18xの中を前後方向に摺動する。
【0056】
第1の加圧プランジャ52は、金型18の空洞Caの中に溶湯が充填された後、溶湯を加圧して溶湯に第2の圧力を加える。第1のガイド領域18xの中を第1の加圧プランジャチップ52aが前方へ摺動することにより、溶湯が加圧される。
【0057】
第1の加圧アクチュエータ54は、例えば、油圧アクチュエータである。第1の加圧アクチュエータ54は、第1の加圧プランジャ52を移動させる機能を有する。第1の加圧シリンダ54a内の第1の加圧ピストン54bが、第1の加圧プランジャロッド52bを押し引きすることにより、第1の加圧プランジャ52が移動する。
【0058】
第1の加圧装置16の第1の加圧アクチュエータ54は、例えば、
図1に示すように固定ダイプレート24の中に設けられる。
【0059】
第2の油圧回路56は、第1の加圧アクチュエータ54を駆動する機能を有する。第2の油圧回路56は、第2の液圧回路の一例である。第2の油圧回路56は、第1の加圧シリンダ54aの第1のロッド側室54xと第1のキャップ側室54yに接続される。第2の油圧回路56は、第1の加圧シリンダ54aの加圧側と背圧側に配管で接続される。
【0060】
第1のロードセンサ58は、第1の加圧プランジャロッド52bに加えられる荷重を測定する機能を有する。例えば、第1のロードセンサ58により、第1の加圧プランジャロッド52bの縮み具合を判定することで、金型18の空洞Caの中への溶湯の充填の完了を検知することが可能である。
【0061】
金型18には、例えば、溶湯圧力センサ60が設けられる。溶湯圧力センサ60は空洞Caに充填された溶湯の圧力を直接測定することで、金型18の空洞Caの中への溶湯の充填の完了を検知することが可能である。
【0062】
射出装置14及び第1の加圧装置16の動作は、制御装置32(制御部)により制御される。第1の油圧回路46及び第2の油圧回路56の動作は、制御装置32(制御部)により制御される。第1の油圧回路46及び第2の油圧回路56は、無線又は有線によって、制御装置32に接続される。
【0063】
図4は、第1の実施形態のダイカストマシンの第1の油圧回路の模式図である。第1の油圧回路46は、射出アクチュエータ44を駆動する。
【0064】
第1の油圧回路46は、第1のバルブ70、第1のアキュムレータ71、第1の背圧吸収シリンダ72、ポンプ73、タンク74、加圧側油圧センサ75、背圧側油圧センサ76、配管78a、78b、78c、78d、78e、78fを有する。
【0065】
第1のバルブ70は、第1の油圧回路46を流れる第1の作動油(第1の作動液)の流れを制御する。第1のバルブ70は、ポンプ73から射出アクチュエータ44への第1の作動油の供給及び停止を制御する。第1のバルブ70は、射出アクチュエータ44からタンク74への第1の作動油の排出及び停止を制御する。
【0066】
第1のバルブ70は、例えば、サーボバルブである。サーボバルブは、電磁力を用いて流路を切り替える電磁方向切換弁である。サーボバルブは、入力信号に対して高い応答性能を有する。
【0067】
第1のアキュムレータ71は、ポンプ73と第1のバルブ70との間に設けられる。第1のアキュムレータ71は、高圧の封入ガスを用いてエネルギーを蓄積し、瞬間的にそのエネルギーを放出することで、第1の作動油の流量を大きくする。第1のアキュムレータ71を設けることで、射出アクチュエータ44を高速に動作させ、射出アクチュエータ44により高い圧力を発生させることが可能となる。
【0068】
第1の背圧吸収シリンダ72は、第1のバルブ70とタンク74との間に設けられる。第1の背圧吸収シリンダ72を設けることで、射出アクチュエータ44の背圧側の圧力、すなわち、射出シリンダ44aのロッド側室44xの圧力を急速に低減することが可能となる。したがって、射出アクチュエータ44を高速に動作させることが可能となる。
【0069】
加圧側油圧センサ75は、第1のバルブ70と射出アクチュエータ44との間に設けられる。加圧側油圧センサ75は、配管78cに設けられる。加圧側油圧センサ75は、射出アクチュエータ44の加圧側、すなわち、キャップ側室44yの圧力を測定することが可能である。
【0070】
背圧側油圧センサ76は、第1のバルブ70と射出アクチュエータ44との間に設けられる。背圧側油圧センサ76は、配管78dに設けられる。背圧側油圧センサ76は、射出アクチュエータ44の背圧側、すなわち、ロッド側室44xの油圧を測定することが可能である。
【0071】
図5は、第1の実施形態のダイカストマシンの第2の油圧回路の模式図である。第2の油圧回路56は、第1の加圧アクチュエータ54を駆動する。
【0072】
第2の油圧回路56は、第2のバルブ80、第2のアキュムレータ81、第2の背圧吸収シリンダ82、ポンプ83、タンク84、加圧側油圧センサ85(第1の液圧センサ)、背圧側油圧センサ86(第2の液圧センサ)、流量センサ87、配管88a、88b、88c、88d、88e、88f、88g、ガス抜きバルブ89を有する。
【0073】
第2のバルブ80は、第2の油圧回路56を流れる第2の作動油(第2の作動液)の流れを制御する。第2のバルブ80は、ポンプ83から第1の加圧アクチュエータ54への第2の作動油の供給及び停止を制御する。第2のバルブ80は、第1の加圧アクチュエータ54からタンク84への第2の作動油の排出及び停止を制御する。
【0074】
第2のバルブ80は、例えば、サーボバルブである。サーボバルブは、電磁力を用いて流路を切り替える電磁方向切換弁である。サーボバルブは、入力信号に対して高い応答性能を有する。
【0075】
第2のアキュムレータ81は、ポンプ83と第2のバルブ80との間に設けられる。第2のアキュムレータ81は、高圧の封入ガスを用いてエネルギーを蓄積し、瞬間的にそのエネルギーを放出することで、第2の作動油の流量を大きくする。第2のアキュムレータ81を設けることで、第1の加圧アクチュエータ54を高速に動作させ、第1の加圧アクチュエータ54により高い圧力を発生させることが可能となる。
【0076】
第2の背圧吸収シリンダ82は、第2のバルブ80とタンク84との間に設けられる。第2の背圧吸収シリンダ82を設けることで、第1の加圧アクチュエータ54の背圧側の圧力、すなわち、第1の加圧シリンダ54aのロッド側室54xの圧力を急速に低減することが可能となる。したがって、第1の加圧アクチュエータ54を高速に動作させることが可能となる。
【0077】
加圧側油圧センサ85は、第2のバルブ80と第1の加圧アクチュエータ54との間に設けられる。加圧側油圧センサ85は、第1の液圧センサの一例である。加圧側油圧センサ85は、配管88cに設けられる。加圧側油圧センサ85は、第1の加圧アクチュエータ54の加圧側、すなわち、キャップ側室54yの油圧を測定することが可能である。
【0078】
背圧側油圧センサ86は、第2のバルブ80と第1の加圧アクチュエータ54との間に設けられる。背圧側油圧センサ86は、第2の液圧センサの一例である。背圧側油圧センサ86は、配管88dに設けられる。背圧側油圧センサ86は、第1の加圧アクチュエータ54の背圧側、すなわち、ロッド側室54xの油圧を測定することが可能である。
【0079】
流量センサ87は、配管88dに流れる第2の作動油の流量を測定する。第2の作動油の流量を測定することで、第1の加圧ピストン54bの速度、すなわち、第1の加圧プランジャロッド52b及び第1の加圧プランジャチップ52aの速度、すなわち、第1の加圧プランジャ52の速度をモニタすることが可能である。
【0080】
配管88gは、第1の加圧アクチュエータ54の加圧側と背圧側を短絡する短絡流路である。配管88gは、配管88cと配管88dとの間を、ガス抜きバルブ89を開放することで、第1の加圧アクチュエータ54をバイパスして短絡する。
【0081】
配管88cと配管88dとの間を、第1の加圧アクチュエータ54をバイパスして短絡することで、第2の作動油の中に溜まったガス(エア)を抜くことが可能となる。第2の作動油の中に溜まったガス(エア)を抜くことで、第1の加圧アクチュエータ54及び第2の油圧回路56の動作が安定する。
【0082】
図6は、第1の実施形態のダイカストマシンの信号処理系の構成を示すブロック図である。
【0083】
制御装置32は、例えば、
図6に示すように、成形条件設定部32a、射出制御部32b、加圧制御部32cを有する。
【0084】
成形条件設定部32aは、入力装置34からの信号に基づいて、ダイカストマシン100の種々の成形条件を設定する機能を有する。成形条件設定部32aは、例えば、射出装置14の射出プランジャ42の射出速度、第1の加圧装置16の動作開始タイミング等を設定する。
【0085】
射出制御部32bは、射出装置14の動作を制御する。具体的には、例えば、第1の油圧回路46の中に設けられた第1のバルブ70に指令信号を伝達し、第1のバルブ70の開閉を制御することで、射出装置14の動作を制御する。
【0086】
射出制御部32bは、例えば、位置センサ48でモニタされる射出プランジャ42の速度に基づき第1のバルブ70の開閉を制御し、射出プランジャ42の速度を制御する。また、例えば、加圧側油圧センサ75及び背圧側油圧センサ76で測定される油圧の測定値に基づき第1のバルブ70の開閉を制御し、射出プランジャ42が溶湯に加える第1の圧力を制御する。
【0087】
加圧制御部32cは、第1の加圧装置16の動作を制御する。具体的には、例えば、第2の油圧回路56の中に設けられた第2のバルブ80に指令信号を伝達し、第2のバルブ80の開閉を制御することで、第1の加圧装置16の動作を制御する。
【0088】
加圧制御部32cは、空洞Caの中への溶湯の充填が完了した後に、第1の加圧装置16により溶湯の加圧が開始されるように第1の加圧装置16を制御する。加圧制御部32cは、空洞Caの中への溶湯の充填が完了した後に、第1の加圧装置16の動作が開始するように第1の加圧装置16を制御する。
【0089】
加圧制御部32cは、例えば、位置センサ48でモニタされる射出プランジャ42の速度に基づき、第2のバルブ80の開閉を制御し、第1の加圧プランジャ52の動作の開始を制御する。例えば、射出プランジャ42が停止後、即座に第1の加圧プランジャ52の動作が開始するように制御する。射出プランジャ42が停止した時点を、空洞Caへの溶湯の充填が完了した時点と判断する。
【0090】
加圧制御部32cは、例えば、溶湯圧力センサ60の測定値に基づき第2のバルブ80の開閉を制御し、第1の加圧プランジャ52の動作の開始を制御する。例えば、溶湯に加えられる圧力が所定の圧力に達した後、即座に第1の加圧プランジャ52の動作が開始するように制御する。溶湯圧力が所定の圧力に達した時点を、空洞Caへの溶湯の充填が完了した時点と判断する。
【0091】
加圧制御部32cは、例えば、第1のロードセンサ58の測定値に基づき第2のバルブ80の開閉を制御し、第1の加圧プランジャ52の動作の開始を制御する。例えば、第1の加圧プランジャロッド52bの荷重が所定の値に達した後、即座に第1の加圧プランジャ52の動作が開始するように制御する。第1の加圧プランジャロッド52bの荷重が所定の値に達した時点を、空洞Caへの溶湯の充填が完了した時点と判断する。
【0092】
加圧制御部32cは、例えば、加圧側油圧センサ85及び背圧側油圧センサ86で測定される油圧の測定値に基づき第2のバルブ80の開閉を制御し、第1の加圧プランジャ52が溶湯に加える第2の圧力を制御する。加圧制御部32cは、第2の圧力が第1の圧力の1.1倍以上3倍以下となるように第2のバルブ80の開閉を制御する。
【0093】
加圧制御部32cは、例えば、流量センサ87の測定値に基づき第2のバルブ80の開閉を制御し、第1の加圧プランジャ52の速度を制御する。
【0094】
次に、ダイカストマシン100の動作の一例について説明する。特に、ダイカストマシン100の射出装置14及び第1の加圧装置16の動作について説明する。ダイカストマシン100の射出装置14及び第1の加圧装置16の動作以外の動作、例えば、型締装置10や押出装置12の動作については、記述を省略する。
【0095】
図7は、第1の実施形態のダイカストマシンの射出装置及び第1の加圧装置の動作の一例を示すグラフである。横軸は時間である。時間が経過するほど、プロットされる点は紙面右側に位置する。紙面左側の縦軸は、射出速度、すなわち射出プランジャ42の速度を示している。また、紙面右側の縦軸は、空洞Ca内の溶湯に加えられる圧力を示している。
【0096】
図7中実線Cvは射出プランジャ42の速度、
図7中実線Cpは溶湯に加えられる圧力である。
図7中点線Cxは、バリ吹き臨界曲線である。溶湯に加えられる圧力がバリ吹き臨界曲線を超えると、溶湯に加えられる圧力が型締力を上回りバリが発生するおそれがある。
【0097】
時刻t0で、制御装置32の射出制御部32bからの指令により、射出装置14の射出プランジャ42が動作を開始する。射出プランジャ42の動作の開始に先立ち、射出スリーブ40の中に、給湯口40aから溶湯が供給される。
【0098】
時刻t0からt1の間は、射出プランジャ42の速度は低速度である。射出プランジャ42の速度は、例えば、1m/sec未満である。
【0099】
時刻t1から、射出プランジャ42の速度が増加する。射出プランジャ42の速度は、例えば、1m/sec以上である。時刻t1では、射出プランジャチップ42aが給湯口40aを塞いだ状態にある。
【0100】
時刻t2で、射出プランジャ42は停止する。時刻t2の時点で、固定金型18aと可動金型18bとで形成される空洞Caの中への溶湯の充填が完了する。
【0101】
射出プランジャ42が停止する前から、射出プランジャ42による溶湯の加圧が開始する。溶湯の充填中に巻き込まれる空気による鋳巣や、充填完了後に溶湯が凝固する際に発生する鋳巣を減少させるために、充填完了後に高い圧力が溶湯に加えられる。
【0102】
射出プランジャ42により、溶湯に加えられる圧力は第1の圧力P1である。第1の圧力P1は、射出ピストン44bに加えられる力と、射出ピストン44bと射出プランジャチップ42aの面積比から算出できる。
【0103】
射出プランジャ42が停止した際には、瞬間的に第1の圧力P1を超えるサージ圧が発生する場合がある。サージ圧がバリ吹き臨界曲線を超えると、溶湯に加えられる圧力が型締力を上回りバリが発生するおそれがある。
【0104】
例えば、空洞Caの中への溶湯の充填が完了した時点で、制御装置32の加圧制御部32cからの指令により、第1の加圧装置16の第1の加圧プランジャ52が動作を開始する。例えば、射出プランジャ42が停止したことをトリガーにして、第1の加圧プランジャ52の動作を開始する。例えば、溶湯に加えられる圧力が所定の圧力に達したことをトリガーにして、第1の加圧プランジャ52の動作を開始する。また、例えば、第1の加圧プランジャロッド52bの荷重が所定の値に達したことをトリガーにして、第1の加圧プランジャ52の動作を開始する。
【0105】
空洞Caの中への溶湯の充填が完了した後、例えば、10msec以内に第1の加圧プランジャ52による溶湯の加圧が開始されるようにする。
【0106】
第1の加圧プランジャ52により溶湯に加えられる圧力は、第2の圧力である。第2の圧力P2は、第1の加圧ピストン54bに加えられる力と、第1の加圧ピストン54bと第1の加圧プランジャチップ52aの面積比から算出できる。
【0107】
第2の圧力は、第1の圧力よりも大きい。第2の圧力は、例えば、第1の圧力の1.1倍以上3倍以下である。第2の圧力は、例えば、第1の圧力の1.2倍以上1.5倍以下である。
【0108】
射出プランジャ42により加えられる第1の圧力に、第1の加圧プランジャ52により第2の圧力が加えられることで、最終的に溶湯に加えられる圧力が増加する。最終的に溶湯に加えられる圧力が鋳造圧力である。
【0109】
次に、第1の実施形態のダイカストマシン100の作用及び効果について説明する。
【0110】
例えば、第1の加圧装置を備えないダイカストマシンでは、溶湯の充填中に巻き込まれる空気による鋳巣や、充填完了後に溶湯が凝固する際に発生する鋳巣を減少させるために、射出プランジャの停止後に高い圧力を溶湯に加える必要がある。すなわち、鋳造圧力を高くする必要がある。
【0111】
溶湯の充填完了後に、時間の経過と共に溶湯の凝固が進む。このため、射出プランジャの溶湯の加圧による圧力の伝搬が制限される。したがって、特に、射出プランジャから遠い領域の溶湯の圧力を所望の圧力にするためには、射出プランジャにより高い圧力を溶湯に加える必要がある。
【0112】
しかしながら、鋳造圧力を高くするためには、型締装置や射出装置に要求される能力が高くなる。具体的には、例えば、型締装置による型締力を高くするために高い圧力を発生する油圧装置やリンク機構が必要となる。また、例えば、射出装置により高い圧力を加えるために、増圧ピストン等の増圧機構を追加する必要がある。したがって、ダイカストマシンの製造コストが高くなり問題となる。
【0113】
また、射出プランジャにより高い圧力を溶湯に加えようとすると、サージ圧がバリ吹き臨界曲線を超え、溶湯に加えられる圧力が型締力を上回りバリが発生するおそれがある。
【0114】
第1の実施形態のダイカストマシン100は、射出装置14に加え、第1の加圧装置16を備える。第1の加圧装置16は、金型18の空洞Caの中に充填された溶湯の凝固が進行する前に、空洞Caの製品領域以外の領域で溶湯を加圧する。
【0115】
凝固が進行する前の溶湯に対して、射出装置14と第1の加圧装置16の両方で圧力を加えることにより、溶湯内に圧力が均一に伝わりやすくなる。このため、凝固した後のダイカスト品に、偏析、粗大化組織、鋳巣が生じることを抑制できる。したがって、鋳造圧力を低減することが可能となる。よって、型締装置や射出装置の能力を大きくする必要が無くなり、ダイカストマシンの製造コストを低減することが可能となる。
【0116】
さらに、制御装置32が、射出装置14により溶湯に加えられる第1の圧力よりも高い第2の圧力が、第1の加圧装置16により溶湯に加えられるよう第1の加圧装置16を制御する。したがって、ある程度、溶湯が凝固しても溶湯に十分な圧力が加わる。
【0117】
また、第2の圧力を第1の圧力よりも高くすることにより、バリの発生を抑制することが可能となる。第1の圧力が低いため、射出プランジャ42が停止した際のサージ圧が低くなり、バリの発生が抑制される。
【0118】
溶湯に十分な圧力を加える観点から、第2の圧力は第1の圧力の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましい。また、バリの発生を抑制する観点から、第2の圧力は第1の圧力の3倍以下であることが好ましく、1.5倍以下であることがより好ましい。
【0119】
第1の実施形態のダイカストマシン100は、金型18の空洞Caの非製品領域Cayを加圧する。したがって、加圧により生じる溶湯内の偏析の影響をダイカスト品が受けることがない。よって、高い品質のダイカスト品を製造することが可能である。
【0120】
また、第1の実施形態のダイカストマシン100は、鋳造圧力を低減することで、金型18に加えられる機械的ストレスが低減される。したがって、金型18の寿命が延びる。
【0121】
溶湯の凝固が進行する前に加圧するために、制御装置32は、金型18の空洞Cの中への溶湯の充填が完了した後、10msec以内に第1の加圧装置16による溶湯の加圧が開始されるように、第1の加圧装置16を制御することが好ましい。
【0122】
例えば、
図7に示す時刻t2から時刻t3までの経過時間が、10msec以下であることが好ましい。
【0123】
例えば、制御装置32は、射出プランジャ42が停止後、10msec以内に第1の加圧プランジャ52の動作が開始するように第1の加圧装置16を制御することが好ましい。また、例えば、制御装置32は、溶湯に加えられる圧力が所定の圧力に達した後、10msec以内に第1の加圧プランジャ52の動作が開始するように第1の加圧装置16を制御することが好ましい。また、例えば、第1の加圧プランジャロッド52bの荷重が所定の値に達した後、10msec以内に第1の加圧プランジャ52の動作が開始するように第1の加圧装置16を制御することが好ましい。
【0124】
溶湯に十分な圧力を加える観点から、固定金型18aの第1のガイド領域18xは、製品領域Caxを間に挟んで、射出スリーブ40の反対側に設けられることが好ましい。すなわち、第1の加圧装置16は、射出装置14により加圧される非製品領域Cayに対し、製品領域Caxを間に挟んで、反対側の非製品領域Cayを加圧するように設けられることが好ましい。
【0125】
溶湯の凝固が進行する前に溶湯を加圧するために、第1の加圧装置16は、射出装置14と同様に、高い応答性を有し、かつ、高速で動作することが好ましい。
【0126】
第1の加圧装置16が高い応答性を備える観点から、第2のバルブ80は、応答性の高いサーボバルブであることが好ましい。
【0127】
第1の加圧装置16を高速に動作させる観点から、第2の油圧回路56は、第2のアキュムレータ81及び第2の背圧吸収シリンダ82を有することが好ましい。第2のアキュムレータ81及び第2の背圧吸収シリンダ82を有することで、第2の作動油の流量を大きくすることが可能となり、第1の加圧装置16の高速動作が可能となる。
【0128】
第1の加圧装置16により溶湯に加えられる第2の圧力を精度高く制御する観点から、制御装置32は、加圧側油圧センサ85及び背圧側油圧センサ86で測定される油圧の測定値に基づき第2のバルブ80の開閉を制御し、第1の加圧プランジャ52が溶湯に加える第2の圧力を制御することが好ましい。
【0129】
第2の油圧回路56は、第1の加圧アクチュエータ54の加圧側と背圧側を短絡する短絡流路である配管88gと、ガス抜きバルブ89を有することが好ましい。第1の加圧アクチュエータ54及び第2の油圧回路56の動作が安定する。
【0130】
第2の油圧回路56が流量センサ87を有し、制御装置32の加圧制御部32cは、流量センサ87の測定値に基づき第2のバルブ80の開閉を制御して、第1の加圧プランジャ52の速度を制御することが好ましい。第1の加圧プランジャ52の速度が安定する。
【0131】
第1の加圧装置16の第1の加圧アクチュエータ54は、固定ダイプレート24の中に設けられることが好ましい。また、第1の加圧プランジャ52は固定金型18aの中に設けられることが好ましい。固定金型18aに第1の加圧アクチュエータ54を設けないことで、固定金型18aの設計及び製造が容易になる。
【0132】
以上、第1の実施形態によれば、第1の加圧装置16を備えることにより、鋳造圧力を低減できるダイカストマシンを実現することが可能となる。
【0133】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のダイカストマシンは、空洞の中に充填された溶湯を、空洞の製品領域以外の領域で加圧する第2の加圧装置を、更に備える点で、第1の実施形態のダイカストマシンと異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0134】
図8は、第2の実施形態のダイカストマシンの全体構成を示す模式図である。
図8は、一部に断面図を含む側面図である。第2の実施形態のダイカストマシン200は、コールドチャンバ式のダイカストマシンである。
【0135】
ダイカストマシン200は、型締装置10.押出装置12、射出装置14、第1の加圧装置16、第2の加圧装置17、金型18、制御ユニット20を備える。
【0136】
ダイカストマシン200は、ベース22、固定ダイプレート24、可動ダイプレート26、リンクハウジング28、タイバー30を備える。
【0137】
第1の加圧装置16及び第2の加圧装置17は、金型18の空洞Caの中に充填された溶湯を、空洞Caの製品領域以外の領域で加圧する機能を有する。
【0138】
図9は、第2の実施形態のダイカストマシンの射出装置、第1の加圧装置、及び第2の加圧装置の模式図である。第1の加圧装置16の動作及び機能と、第2の加圧装置17の動作及び機能は加圧する位置が異なるだけで、基本的には同様である。
【0139】
図10は、第2の実施形態のダイカストマシンの固定金型を含む模式図である。
図10(a)は、固定金型18aを可動ダイプレート26の側から見た平面図である。
図10(b)は、可動金型18bを固定ダイプレート24の側から見た平面図である。
【0140】
射出装置14は、射出スリーブ40、射出プランジャ42、射出アクチュエータ44、第1の油圧回路46、及び、位置センサ48を有する。射出スリーブ40は、給湯口40aを有する。射出プランジャ42は、射出プランジャチップ42aと射出プランジャロッド42bとを含む。射出アクチュエータ44は、射出シリンダ44a、射出ピストン44b、ロッド側室44x、キャップ側室44yを含む。
【0141】
第1の加圧装置16は、第1の加圧プランジャ52、第1の加圧アクチュエータ54、第2の油圧回路56、及び、第1のロードセンサ58を有する。第1の加圧プランジャ52は、第1の加圧プランジャチップ52aと第1の加圧プランジャロッド52bとを含む。第1の加圧アクチュエータ54は、第1の加圧シリンダ54a、第1の加圧ピストン54b、第1のロッド側室54x、第1のキャップ側室54yを含む。
【0142】
第2の加圧装置17は、第2の加圧プランジャ62、第2の加圧アクチュエータ64、第3の油圧回路66(第3の液圧回路)、及び、第2のロードセンサ68を有する。第2の加圧プランジャ62は、第2の加圧プランジャチップ62aと第2の加圧プランジャロッド62bとを含む。第2の加圧アクチュエータ64は、第2の加圧シリンダ64a、第2の加圧ピストン64b、第2のロッド側室64x、第2のキャップ側室64yを含む。
【0143】
例えば、固定金型18aの非製品領域Cayに第1のガイド領域18xが設けられる。第1のガイド領域18xは、例えば、固定金型18aに設けられた円柱形状の窪みである。また、例えば、固定金型18aの別の非製品領域Cayに第2のガイド領域18yが設けられる。第2のガイド領域18yは、例えば、固定金型18aに設けられた円柱形状の窪みである。
【0144】
第2のガイド領域18yは、例えば、製品領域Caxを挟んで、第1のガイド領域18xの反対側に設けられる。第1のガイド領域18xと第2のガイド領域18yとの間に、製品領域Caxが挟まれる。第2の加圧装置17は、例えば、第1の加圧装置16により加圧される非製品領域Cayに対し、製品領域Caxを間に挟んで、反対側の非製品領域Cayを加圧するように設けられる。
【0145】
第2の加圧装置17の第2の加圧アクチュエータ64は、例えば、
図8に示すように固定ダイプレート24の中に設けられる。
【0146】
第2の加圧装置17により溶湯に加えられる圧力は、第3の圧力である。第2の加圧プランジャ62により溶湯に加えられる圧力は、第3の圧力である。第3の圧力は、第1の圧力よりも大きい。第3の圧力は、例えば、第1の圧力の1.1倍以上1.5倍以下である。
【0147】
図11は、第2の実施形態のダイカストマシンの第2の油圧回路及び第3の油圧回路の模式図である。第2の油圧回路56は、第1の加圧アクチュエータ54を駆動する。第3の油圧回路66は、第2の加圧アクチュエータ64を駆動する。第3の油圧回路66は、第3の液圧回路の一例である。第2の油圧回路56の動作及び機能と、第3の油圧回路66の動作及び機能は、基本的には同様である。
【0148】
第2の油圧回路56は、第2のバルブ80、第2のアキュムレータ81、第2の背圧吸収シリンダ82、ポンプ83、タンク84、加圧側油圧センサ85(第1の液圧センサ)、背圧側油圧センサ86(第2の液圧センサ)、流量センサ87、配管88a、88b、88c、88d、88e、88f、88g、ガス抜きバルブ89を有する。
【0149】
第3の油圧回路66は、第3のバルブ90、第2のアキュムレータ81、第2の背圧吸収シリンダ82、ポンプ83、タンク84、加圧側油圧センサ95、背圧側油圧センサ96、流量センサ97、配管98e、98f、98g、ガス抜きバルブ99を有する。
【0150】
第2の油圧回路56と第3の油圧回路66との間で、第2のアキュムレータ81、第2の背圧吸収シリンダ82、ポンプ83、及びタンク84は共用される。
【0151】
第2の実施形態のダイカストマシン200は、射出装置14に加え、第1の加圧装置16及び第2の加圧装置17を備える。第1の加圧装置16及び第2の加圧装置17は、金型18の空洞Caの中に充填された溶湯の凝固が進行する前に、空洞Caの製品領域以外の領域で溶湯を加圧する。
【0152】
凝固が進行する前の溶湯に対して、射出装置14と第1の加圧装置16及び第2の加圧装置17を用いて3箇所で圧力を加える。したがって、第1の実施形態のダイカストマシン100に比べて、さらに溶湯内に圧力が均一に伝わりやすくなり、鋳巣を効果的に減少させることが可能となる。したがって、さらに鋳造圧力を低減することが可能となる。よって、さらに型締装置や射出装置の能力を大きくする必要が無くなり、ダイカストマシンの製造コストを低減することが可能となる。
【0153】
以上、第2の実施形態によれば、第1の加圧装置16及び第2の加圧装置17を備えることにより、さらに鋳造圧力を低減できるダイカストマシンを実現することが可能となる。
【0154】
(第3の実施形態)
第3の実施形態のダイカストマシンは、空洞の中に充填された溶湯を、空洞の製品領域以外の領域で加圧する第3の加圧装置を、更に備える点で、第1の実施形態及び第2の実施形態のダイカストマシンと異なる。以下、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0155】
図12は、第3の実施形態のダイカストマシンの固定金型を含む模式図である。
図12(a)は、固定金型18aを可動ダイプレート26の側から見た平面図である。
図12(b)は、可動金型18bを固定ダイプレート24の側から見た平面図である。
【0156】
射出装置14は、射出スリーブ40、射出プランジャ42、射出アクチュエータ44、第1の油圧回路46、及び、位置センサ48を有する。射出スリーブ40は、給湯口40aを有する。射出プランジャ42は、射出プランジャチップ42aと射出プランジャロッド42bとを含む。射出アクチュエータ44は、射出シリンダ44a、射出ピストン44b、ロッド側室44x、キャップ側室44yを含む。
【0157】
第1の加圧装置16は、第1及び第2の実施形態と同様、第1の加圧プランジャ52、第1の加圧アクチュエータ54、第2の油圧回路56、及び、第1のロードセンサ58を有する。第1の加圧プランジャ52は、第1の加圧プランジャチップ52aと第1の加圧プランジャロッド52bとを含む。第1の加圧アクチュエータ54は、第1の加圧シリンダ54a、第1の加圧ピストン54b、第1のロッド側室54x、第1のキャップ側室54yを含む。
【0158】
第2の加圧装置17は、第2の実施形態と同様、第2の加圧プランジャ62、第2の加圧アクチュエータ64、第3の油圧回路66(第3の液圧回路)、及び、第2のロードセンサ68を有する。第2の加圧プランジャ62は、第2の加圧プランジャチップ62aと第2の加圧プランジャロッド62bとを含む。第2の加圧アクチュエータ64は、第2の加圧シリンダ64a、第2の加圧ピストン64b、第2のロッド側室64x、第2のキャップ側室64yを含む。
【0159】
第3の加圧装置19は、第1の加圧装置16及び第2の加圧装置17と同様の構成を有する。第3の加圧装置19は、第3の加圧プランジャ、第3の加圧アクチュエータ94、図示しない第3の油圧回路、及び、図示しない第3のロードセンサを有する。第3の加圧プランジャは、第3の加圧プランジャチップ92aと図示しない第3の加圧プランジャロッドとを含む。第3の加圧アクチュエータ94は、図示しない第3の加圧シリンダa、第3の加圧ピストン、第3のロッド側室、第3のキャップ側室を含む。
【0160】
例えば、固定金型18aの非製品領域Cayに第1のガイド領域18xが設けられる。第1のガイド領域18xは、例えば、固定金型18aに設けられた円柱形状の窪みである。また、固定金型18aの別の非製品領域Cayに第2のガイド領域18yが設けられる。第2のガイド領域18yは、例えば、固定金型18aに設けられた円柱形状の窪みである。また、固定金型18aの更に別の非製品領域Cayに第3のガイド領域18zが設けられる。第3のガイド領域18zは、例えば、固定金型18aに設けられた円柱形状の窪みである。
【0161】
第2のガイド領域18yと第3のガイド領域18zは、製品領域Caxを挟んで、製品領域Caxの左右に設けられる。製品領域Caxは、第2のガイド領域18yと第3のガイド領域18zとの間に挟まれる。
【0162】
第1の加圧装置16の第1の加圧アクチュエータ54、第2の加圧装置17の第2の加圧アクチュエータ64、及び、第3の加圧装置の第3の加圧アクチュエータ94は、例えば、固定ダイプレート24の中に設けられる。
【0163】
第2の加圧装置17により溶湯に加えられる圧力は、第3の圧力である。第2の加圧プランジャ62により溶湯に加えられる圧力は、第3の圧力である。第3の圧力は、第1の圧力よりも大きい。第3の圧力は、例えば、第1の圧力の1.1倍以上3倍以下である。第3の圧力は、例えば、第2の圧力よりも小さい。
【0164】
第3の加圧装置19により溶湯に加えられる圧力は、第4の圧力である。第3の加圧プランジャにより溶湯に加えられる圧力は、第4の圧力である。第4の圧力は、第1の圧力よりも大きい。第4の圧力は、例えば、第1の圧力の1.1倍以上3倍以下である。第4の圧力は、例えば、第2の圧力よりも小さい。
【0165】
第2のガイド領域18yと射出スリーブ40との間の距離は、第1のガイド領域18xと射出スリーブ40との間の距離よりも小さい。第3のガイド領域18zと射出スリーブ40との間の距離は、第1のガイド領域18xと射出スリーブ40との間の距離よりも小さい。
【0166】
第2の加圧プランジャチップ62aと射出プランジャチップ42aとの間の距離は、第1の加圧プランジャチップ52aと射出プランジャチップ42aとの間の距離よりも小さい。第3の加圧プランジャチップ92aと射出プランジャチップ42aとの間の距離は、第1の加圧プランジャチップ52aと射出プランジャチップ42aとの間の距離よりも小さい。
【0167】
第2の加圧装置17と射出装置14との間の距離は、第1の加圧装置16と射出装置14との間の距離よりも小さい。第3の加圧装置19と射出装置14との間の距離は、第1の加圧装置16と射出装置14との間の距離よりも小さい。
【0168】
第3の実施形態のダイカストマシンは、射出装置14に加え、第1の加圧装置16、第2の加圧装置17、及び、第3の加圧装置を備える。第1の加圧装置16、第2の加圧装置17、及び、第3の加圧装置19は、金型18の空洞Caの中に充填された溶湯の凝固が進行する前に、空洞Caの製品領域以外の領域で溶湯を加圧する。
【0169】
凝固が進行する前の溶湯に対して、射出装置14、第1の加圧装置16、第2の加圧装置17、及び、第3の加圧装置19を用いて4箇所で圧力を加える。したがって、第1の実施形態のダイカストマシン100、及び、第2の実施形態のダイカストマシン200に比べて、さらに溶湯内に圧力が均一に伝わりやすくなり、鋳巣を効果的に減少させることが可能となる。したがって、さらに鋳造圧力を低減することが可能となる。よって、さらに型締装置や射出装置の能力を大きくする必要が無くなり、ダイカストマシンの製造コストを低減することが可能となる。
【0170】
第3の圧力は、第2の圧力よりも小さいことが好ましい。言い換えれば、第2の圧力は第3の圧力よりも大きいことが好ましい。
【0171】
第4の圧力は、第2の圧力よりも小さいことが好ましい。言い換えれば、第2の圧力は第4の圧力よりも大きいことが好ましい。
【0172】
製品領域Caxに溶湯を注入する射出装置14から、第2の加圧装置17、及び、第3の加圧装置19より離れた位置にある第1の加圧装置16によって加えられる圧力を高くする。これにより、更に溶湯内に圧力が均一に伝わりやすくなり、鋳巣を効果的に減少させることが可能となる。また、不要に溶湯の圧力が上がり、バリが発生することを抑制できる。
【0173】
以上、第3の実施形態によれば、第1の加圧装置16、第2の加圧装置17、及び、第3の加圧装置19を備えることにより、さらに鋳造圧力を低減できるダイカストマシンを実現することが可能となる。
【0174】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。実施形態においては、ダイカストマシンなどで、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされる、ダイカストマシンなどに関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0175】
第1の実施形態においては、第1の加圧装置16の第1の加圧アクチュエータ54が、固定ダイプレート24の中に設けられる場合を例に説明したが、第1の加圧アクチュエータ54は、例えば、可動ダイプレート26の中、固定金型18aの中、可動金型18bの中、あるいはその他の部分に設けられても構わない。第2の実施形態の第2の加圧アクチュエータ64、第3の実施形態の第2の加圧アクチュエータ64及び第3の加圧アクチュエータ94の設けられる位置に関しても同様である。
【0176】
第1の実施形態においては、第1の加圧プランジャ52が、固定金型18aの中に設けられる場合を例に説明したが、第1の加圧プランジャ52は、可動金型18bの中に設けられても構わない。第2の実施形態の第2の加圧プランジャ62、第3の実施形態の第2の加圧プランジャ62及び第3の加圧プランジャの設けられる位置に関しても同様である。
【0177】
第2の実施形態においては、加圧装置が第1の加圧装置16及び第2の加圧装置17の2個の場合、第3の実施形態においては、加圧装置が第1の加圧装置16、第2の加圧装置17、及び、第3の加圧装置19の3個の場合を例に説明したが、加圧装置を4個以上設けることも可能である。
【0178】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのダイカストマシンは、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0179】
10 型締装置
12 押出装置
14 射出装置
16 第1の加圧装置
17 第2の加圧装置
18 金型
18a 固定金型
18b 可動金型
18x 第1のガイド領域
18y 第2のガイド領域
18z 第3のガイド領域
19 第3の加圧装置
20 制御ユニット
22 ベース
24 固定ダイプレート
26 可動ダイプレート
28 リンクハウジング
30 タイバー
32 制御装置(制御部)
32a 成形条件設定部
32b 射出制御部、
32c 加圧制御部
34 入力装置
36 表示装置
40 射出スリーブ
42 射出プランジャ
42a 射出プランジャチップ
42b 射出プランジャロッド
44 射出アクチュエータ
44a 射出シリンダ
44b 射出ピストン
44x ロッド側室
44y キャップ側室
46 第1の油圧回路(第1の液圧回路)
48 位置センサ
52 第1の加圧プランジャ
52a 第1の加圧プランジャチップ
52b 第1の加圧プランジャロッド
54 第1の加圧アクチュエータ
54a 第1の加圧シリンダ
54b 第1の加圧ピストン
54x 第1のロッド側室
54y 第1のキャップ側室
56 第2の油圧回路(第2の液圧回路)
58 第1のロードセンサ
60 溶湯圧力センサ
62 第2の加圧プランジャ
62a 第2の加圧プランジャチップ
62b 第2の加圧プランジャロッド
64 第2の加圧アクチュエータ
64a 第2の加圧シリンダ
64b 第2の加圧ピストン
64x 第2のロッド側室
64y 第2のキャップ側室
66 第3の油圧回路(第3の液圧回路)
68 第2のロードセンサ
70 第1のバルブ
71 第1のアキュムレータ
72 第1の背圧吸収シリンダ
73 ポンプ
74 タンク
75 加圧側油圧センサ
76 背圧側油圧センサ
78a-f 配管
80 第2のバルブ
81 第2のアキュムレータ
82 第2の背圧吸収シリンダ
83 ポンプ
84 タンク
85 加圧側油圧センサ(第1の液圧センサ)
86 背圧側油圧センサ(第2の液圧センサ)
87 流量センサ
88a-f 配管
88g 配管(短絡流路)
89 ガス抜きバルブ
90 第3のバルブ
92a 第3の加圧プランジャチップ
94 第3の加圧アクチュエータ
95 加圧側油圧センサ
96 背圧側油圧センサ
97 流量センサ
98e-g 配管
99 ガス抜きバルブ
100 ダイカストマシン
200 ダイカストマシン
Ca 空洞
Cax 製品領域
Cay 非製品領域(製品領域以外の領域)