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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240718BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20240718BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
F15B11/042
F15B11/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021539293
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030520
(87)【国際公開番号】W WO2021029399
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019148139
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西川原 理一
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-303805(JP,A)
【文献】国際公開第2009/123047(WO,A1)
【文献】特開2006-144851(JP,A)
【文献】特開2006-009888(JP,A)
【文献】特開2014-005866(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105527(WO,A1)
【文献】特開2015-059591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
F15B 11/042
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作する操作装置と、
センターバイパス油路と、
前記センターバイパス油路に配置された固定絞りと、
前記固定絞りの上流側における作動油の圧力である制御圧に基づいて前記油圧ポンプの吐出量をネガティブコントロールによって制御する制御装置と、を備え、
前記ネガティブコントロールの制御特性は、前記制御圧と、前記油圧ポンプの目標吐出量に相当する指令値との対応関係によって定められ、
前記制御装置は、前記指令値の下限と上限との間の全範囲にわたって、前記操作装置の操作量に応じて前記ネガティブコントロールの制御特性を変化させる、
ショベル。
【請求項2】
前記操作装置は、操作レバーであり、
前記操作レバーがフルレバー操作されたときの前記ネガティブコントロールの制御特性は、前記指令値の下限と上限との間の全範囲にわたって、前記操作レバーがハーフレバー操作されたときの前記ネガティブコントロールの制御特性と異なる、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
下部走行体と、
前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作する操作装置と、
センターバイパス油路と、
前記センターバイパス油路に配置された固定絞りと、
前記固定絞りの上流側における作動油の圧力である制御圧に基づいて前記油圧ポンプの吐出量をネガティブコントロールによって制御する制御装置と、を備え、
前記ネガティブコントロールの制御特性は、前記制御圧と、前記油圧ポンプの目標吐出量に相当する指令値との対応関係を表す傾斜線によって定められ、
前記傾斜線は、前記制御圧及び前記指令値の第1の組み合わせで決まる上端点と前記制御圧及び前記指令値の第2の組み合わせで決まる下端点とを結ぶ線であり、
前記上端点に対応する前記指令値は、前記下端点に対応する前記指令値よりも大きく、
前記上端点に対応する前記制御圧は、前記下端点に対応する前記制御圧よりも小さく、
前記上端点は、前記指令値の上限である最大指令値と前記制御圧の第1設定圧とによって表され、
前記下端点は、前記指令値の下限である最小指令値と前記制御圧の第2設定圧とによって表され、
前記上端点及び前記下端点の少なくとも一方の位置は可変であり、
前記制御装置は、前記指令値が前記最小指令値に固定された状態で前記第2設定圧を変化させることで前記下端点の位置を変化させるよう構成されている、
ョベル。
【請求項4】
前記上端点に対応する前記制御圧の設定値は、可変であり、且つ、前記固定絞りの下流側における作動油の圧力である背圧よりも高くなるように設定される、
請求項3に記載のショベル。
【請求項5】
前記上端点及び前記下端点の少なくとも一方の位置は、前記操作装置の操作量の変化に応じて変化し、
前記操作装置のうちの一つの操作量の変化に応じて変化する前記上端点及び前記下端点の少なくとも一方の位置の変化量は、前記操作装置のうちの別の一つの操作量の変化に応じて変化する前記上端点及び前記下端点の少なくとも一方の位置の変化量とは異なる、
請求項3に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガティブコントロール方式の油圧システムを搭載するショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネガティブコントロール方式の油圧システムを搭載するショベルが知られている(特許文献1参照。)。ネガティブコントロール方式の油圧システムでは、油圧ポンプが吐出する作動油のうち、ショベルの各部を動かすための油圧アクチュエータに流入しない作動油は、センターバイパス油路に配置された絞りを通って作動油タンクに排出される。油圧ポンプの吐出量は、この絞りの上流側における作動油の圧力である制御圧に応じて制御される。制御圧は、絞りを通過する作動油の流量が大きいほど大きくなる。油圧アクチュエータが操作されると、油圧アクチュエータに流入する作動油の流量が増加するため、絞りを通過する作動油の流量は減少し、制御圧は低下する。そのため、油圧ポンプは、制御圧が低下するほど吐出量が増加するように制御される。油圧アクチュエータが操作されたときに、十分な量の作動油を油圧アクチュエータに流入させるためである。一方で、油圧ポンプは、制御圧が増加するほど吐出量が減少するように制御される。油圧アクチュエータが操作されていないときに、作動油が無駄に排出されてしまうのを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4843105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなネガティブコントロール方式の油圧システムでは、油圧ポンプの吐出量と制御圧との対応関係は固定的に設定されている。そのため、油圧ポンプが必要以上の作動油を吐出してしまう状況、或いは、油圧ポンプが必要な作動油を吐出できない状況が発生し得る。
【0005】
上述に鑑み、油圧ポンプの吐出量をより柔軟に制御できるネガティブコントロール方式の油圧システムを搭載したショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを操作する操作装置と、センターバイパス油路と、前記センターバイパス油路に配置された固定絞りと、前記固定絞りの上流側における作動油の圧力である制御圧に基づいて前記油圧ポンプの吐出量をネガティブコントロールによって制御する制御装置と、を備え、前記ネガティブコントロールの制御特性は、前記制御圧と、前記油圧ポンプの目標吐出量に相当する指令値との対応関係によって定められ、前記制御装置は、前記指令値の下限と上限との間の全範囲にわたって、前記操作装置の操作量に応じて前記ネガティブコントロールの制御特性を変化させる。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、油圧ポンプの吐出量をより柔軟に制御できるネガティブコントロール方式の油圧システムを搭載したショベルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るショベルの側面図である。
図2図1のショベルに搭載される駆動システムの構成例を示す概略図である。
図3】吐出量制御機能の構成例を示す図である。
図4】参照テーブルの内容の一例を説明する図である。
図5】参照テーブルの内容の別の一例を説明する図である。
図6】参照テーブルの内容の更に別の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る建設機械としての掘削機(ショベル100)について説明する。図1はショベル100の側面図である。図1に示すショベル100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3には作業要素としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には作業要素としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端に作業要素及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成している。ブーム4は、ブームシリンダ7により駆動され、アーム5は、アームシリンダ8により駆動され、バケット6は、バケットシリンダ9により駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。
【0010】
図2は、図1のショベル100に搭載される駆動システムの構成例を示す図である。図2では、機械的動力伝達ラインが二重線で示され、作動油ラインが実線で示され、パイロットラインが破線で示され、且つ、電気制御ラインが一点鎖線で示されている。
【0011】
ショベル100の駆動システムは、主に、エンジン11、ポンプレギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、及びコントローラ30等を含む。
【0012】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0013】
メインポンプ14は、作動油をコントロールバルブユニット17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプであり、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。
【0014】
ポンプレギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するように構成されている。本実施形態では、ポンプレギュレータ13は、コントローラ30からの指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節してメインポンプ14の吐出量を制御する。ポンプレギュレータ13は、斜板傾転角に関する情報をコントローラ30に対して出力してもよい。具体的には、ポンプレギュレータ13は、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する左ポンプレギュレータ13L、及び、右メインポンプ14Rの吐出量を制御する右ポンプレギュレータ13Rを含む。
【0015】
パイロットポンプ15は、操作装置26を含む各種油圧機器に作動油を供給するように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、パイロットポンプ15が担っていた機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、コントロールバルブユニット17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で操作装置26等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。
【0016】
コントロールバルブユニット17は、複数の制御弁を動作可能に収容するように構成されている。本実施形態では、コントロールバルブユニット17は、メインポンプ14が吐出する作動油の流れを制御する複数の制御弁を含む。コントロールバルブユニット17は、それら制御弁を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。複数の制御弁は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクT1に流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ20、及び旋回用油圧モータ21を含む。走行用油圧モータ20は、左走行用油圧モータ20L及び右走行用油圧モータ20Rを含む。
【0017】
旋回用油圧モータ21は、上部旋回体3を旋回させる油圧モータである。旋回用油圧モータ21のポートに接続される油路21Pは、リリーフ弁22及びチェック弁23を介して油路44に接続されている。具体的には、油路21Pは、左油路21PL及び右油路21PRを含む。リリーフ弁22は、左リリーフ弁22L及び右リリーフ弁22Rを含む。チェック弁23は、左チェック弁23L及び右チェック弁23Rを含む。
【0018】
左リリーフ弁22Lは、左油路21PLにおける作動油の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、左油路21PLにおける作動油を油路44に排出する。また、右リリーフ弁22Rは、右油路21PRにおける作動油の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、右油路21PRにおける作動油の作動油を油路44に排出する。
【0019】
左チェック弁23Lは、左油路21PLにおける作動油の圧力が油路44における作動油の圧力より低くなった場合に開き、油路44から左油路21PLに作動油を補給する。右チェック弁23Rは、右油路21PRにおける作動油の圧力が油路44における作動油の圧力より低くなった場合に開き、油路44から右油路21PRに作動油を補給する。この構成により、チェック弁23は、旋回用油圧モータ21の制動時に吸い込み側ポートに作動油を補給できる。
【0020】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、油圧式であり、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力であるパイロット圧は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する、操作装置26を構成するレバー又はペダルの操作方向及び操作量に応じた圧力である。但し、操作装置26は電気式であってもよい。
【0021】
具体的には、操作装置26は、左操作レバー、右操作レバー、左走行操作レバー、右走行レバー、左走行操作ペダル、及び右走行ペダル等を含む。左操作レバーは、アーム操作レバー及び旋回操作レバーとして機能する。右操作レバーは、ブーム操作レバー及びバケット操作レバーとして機能する。
【0022】
温度センサ27は、作動油タンクT1における作動油の温度を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力するように構成されている。
【0023】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力するように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出する左吐出圧センサ28L、及び、右メインポンプ14Rの吐出圧を検出する右吐出圧センサ28Rを含む。
【0024】
操作圧センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出するための装置である。操作内容は、例えば、操作方向及び操作量(操作角度)等である。本実施形態では、操作圧センサ29は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26を構成するレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出する圧力センサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。但し、操作装置26の操作内容は、操作角センサ、加速度センサ、角速度センサ、レゾルバ、電圧計、又は電流計等、圧力センサ以外の装置の出力を用いて検出されてもよい。
【0025】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。
【0026】
センターバイパス油路40は、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁を通る作動油ラインであり、左センターバイパス油路40L及び右センターバイパス油路40Rを含む。
【0027】
制御弁170は、走行直進弁としてのスプール弁である。制御弁170は、下部走行体1の直進性を高めるべくメインポンプ14から左走行用油圧モータ20L及び右走行用油圧モータ20Rのそれぞれに作動油が供給されるように作動油の流れを切り換える。具体的には、走行用油圧モータ20と他の何れかの油圧アクチュエータとが同時に操作された場合、左メインポンプ14Lが左走行用油圧モータ20L及び右走行用油圧モータ20Rの双方に作動油を供給できるように制御弁170は切り換えられる。他の油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合には、左メインポンプ14Lが左走行用油圧モータ20Lに作動油を供給でき、且つ、右メインポンプ14Rが右走行用油圧モータ20Rに作動油を供給できるように、制御弁170は切り換えられる。
【0028】
制御弁171は、メインポンプ14が吐出する作動油を走行用油圧モータ20へ供給し、且つ、走行用油圧モータ20が吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。具体的には、制御弁171は、制御弁171L及び制御弁171Rを含む。制御弁171Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行用油圧モータ20Lへ供給し、且つ、左走行用油圧モータ20Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換える。制御弁171Rは、左メインポンプ14L又は右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行用油圧モータ20Rへ供給し、且つ、右走行用油圧モータ20Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換える。
【0029】
制御弁172は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をオプションの油圧アクチュエータへ供給し、且つ、オプションの油圧アクチュエータが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。オプションの油圧アクチュエータは、例えば、グラップル開閉シリンダである。
【0030】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ21へ供給し、且つ、旋回用油圧モータ21が吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0031】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
【0032】
制御弁175は、メインポンプ14が吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。具体的には、制御弁175は、制御弁175L及び制御弁175Rを含む。制御弁175Lは、ブーム4の上げ操作が行われた場合にのみ作動し、ブーム4の下げ操作が行われた場合には作動しない。
【0033】
制御弁176は、メインポンプ14が吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。具体的には、制御弁176は、制御弁176L及び制御弁176Rを含む。
【0034】
本実施形態では、制御弁170~176はパイロット式スプール弁であるが、操作装置26が電気式である場合には、電磁スプール弁であってもよい。
【0035】
操作装置26としての操作レバーが電気式である場合、レバー操作量は、電気信号としてコントローラ30へ入力される。また、パイロットポンプ15と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置される。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、操作レバーを用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、レバー操作量に対応する電気信号によって電磁弁を制御してパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。なお、各制御弁は、上述のように電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式の操作レバーのレバー操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0036】
戻り油路41は、コントロールバルブユニット17内に配置された作動油ラインであり、左戻り油路41L及び右戻り油路41Rを含む。油圧アクチュエータから流出して制御弁171~176を通過した作動油は、戻り油路41を通って作動油タンクT1に向かって流れる。
【0037】
パラレル油路42は、センターバイパス油路40に並行する作動油ラインである。本実施形態では、パラレル油路42は、左センターバイパス油路40Lに並行する左パラレル油路42L、及び、右センターバイパス油路40Rに並行する右パラレル油路42Rを含む。左パラレル油路42Lは、制御弁171L、172、173、又は175Lによって左センターバイパス油路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル油路42Rは、制御弁171R、174、又は175Rによって右センターバイパス油路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0038】
ここで、図2の油圧システムで採用されるネガティブコントロールについて説明する。センターバイパス油路40には、最も下流にある制御弁175のそれぞれと作動油タンクT1との間に絞り18が配置されている。メインポンプ14が吐出した作動油の流れは、絞り18で制限される。そして、絞り18は、ポンプレギュレータ13を制御するための制御圧を発生させる。具体的には、絞り18は、開口面積が固定である固定絞りであり、左絞り18L及び右絞り18Rを含む。絞り18は、開口面積が大きいほど、制御圧の急変に対する安定性を高める傾向を有する。また、絞り18は、開口面積が小さいほど、制御圧の応答性を高める傾向を有する。左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左ポンプレギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。同様に、右メインポンプ14Rが吐出した作動油の流れは、右絞り18Rで制限される。そして、右絞り18Rは、右ポンプレギュレータ13Rを制御するための制御圧を発生させる。
【0039】
制御圧センサ19は、絞り18の上流で発生する制御圧を検出するセンサであり、左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。本実施形態では、制御圧センサ19は、検出した値をコントローラ30に対して出力するように構成されている。コントローラ30は、制御圧に応じた指令をポンプレギュレータ13に対して出力する。ポンプレギュレータ13は、指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14の吐出量を制御する。具体的には、ポンプレギュレータ13は、制御圧が大きいほどメインポンプ14の吐出量を減少させ、制御圧が小さいほどメインポンプ14の吐出量を増大させる。
【0040】
ネガティブコントロールにより、図2の油圧システムは、油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合には、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス油路40で発生させるポンピングロスを含む。油圧アクチュエータが操作されている場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を操作対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
【0041】
センターバイパス油路40及び戻り油路41は、絞り18の下流で油路43の合流点に接続される。油路43は、合流点の下流で二手に分岐し、コントロールバルブユニット17の外にある油路45及び油路46に接続される。すなわち、センターバイパス油路40及び戻り油路41のそれぞれを流れる作動油は油路43で合流した後で油路45又は油路46を通って作動油タンクT1に至る。また、油路43は、旋回用油圧モータ21の吸い込み側における作動油の不足を補填するための作動油ラインである油路44を介して旋回用油圧モータ21に接続されている。
【0042】
油路45は、油路43と作動油タンクT1とを接続する作動油ラインである。油路45には、チェック弁50、オイルクーラ51、及びフィルタ53が配置されている。
【0043】
チェック弁50は、一次側と二次側の圧力差が所定の開弁圧力差を上回った場合に開く弁である。本実施形態では、チェック弁50は、スプリング式逆止弁であり、上流側の圧力が下流側の圧力より高く且つその圧力差が開弁圧力差を上回る場合に開いてコントロールバルブユニット17内の作動油をオイルクーラ51に向けて流出させる。この構成により、チェック弁50は、油路43及び油路44における作動油の圧力を開弁圧より高いレベルに維持でき、旋回用油圧モータ21の吸い込み側における作動油の不足を確実に補填できるようにする。この場合、開弁圧は、絞り18に対する背圧の下限値となる。そして、絞り18に対する背圧は、チェック弁50を通過する作動油の流量が大きくなるほど大きくなる。チェック弁50は、コントロールバルブユニット17に統合されていてもよく、省略されてもよい。チェック弁50が省略される場合、油路45、チェック弁50、オイルクーラ51、及びフィルタ53のそれぞれにおける圧力損失は、絞り18に対する背圧となる。そして、絞り18に対する背圧は、油路45を通過する作動油の流量が大きくなるほど大きくなる。
【0044】
オイルクーラ51は、油圧システムを循環する作動油を冷却するための装置である。本実施形態では、オイルクーラ51は、エンジン11が駆動する冷却ファンによって冷却される熱交換器ユニットに含まれている。熱交換器ユニットは、ラジエータ、インタクーラ、及びオイルクーラ51等を含む。また、本実施形態では、油路45は、チェック弁50とオイルクーラ51とを接続する油路部分45aと、オイルクーラ51と作動油タンクT1とを接続する油路部分45bを含む。油路部分45bにはフィルタ53が配置されている。
【0045】
油路46は、オイルクーラ51をバイパスするバイパス油路である。本実施形態では、油路46は、一端が油路43に接続され、他端が作動油タンクT1に接続されている。一端がチェック弁50とオイルクーラ51との間で油路45に接続されていてもよい。また、油路46にはチェック弁52が配置されている。
【0046】
チェック弁52は、チェック弁50と同様に、一次側と二次側の圧力差が所定の開弁圧力差を上回った場合に開く弁である。本実施形態では、チェック弁52は、スプリング式逆止弁であり、上流側の圧力が下流側の圧力より高く且つその圧力差が開弁圧力差を上回る場合に開いてコントロールバルブユニット17内の作動油を作動油タンクT1に向けて流出させる。チェック弁52の開弁圧力差は、チェック弁50の開弁圧力差より大きい。そのため、コントロールバルブユニット17内の作動油は、最初にチェック弁50を通って流れ、その後にオイルクーラ51を流れる際の抵抗によって圧力が開弁圧を上回った場合にチェック弁52を通って流れる。チェック弁52は、コントロールバルブユニット17に統合されていてもよい。
【0047】
次に、図3を参照し、コントローラ30がメインポンプ14の吐出量を制御する機能(以下、「吐出量制御機能」とする。)の一例について説明する。図3は、吐出量制御機能を実現するコントローラ30の構成例を示す。本実施形態では、コントローラ30は、パワー制御部30A、省エネルギ制御部30B、最小値選択部30C、最大値設定部30D及び電流指令出力部30Eを有する。
【0048】
パワー制御部30Aは、メインポンプ14の吐出量を制御する機能の1つであるパワーコントロールを実現する制御部であり、メインポンプ14の吐出圧Pdに基づいて吐出量Qの指令値Qdを導き出すように構成されている。パワーコントロールは、メインポンプ14の吐出量と吐出圧との積で表される吸収パワーがエンジン11の出力パワー以下となるようにメインポンプ14の吐出量を調整する機能である。本実施形態では、パワー制御部30Aは、吐出圧センサ28が出力する吐出圧Pdを取得する。そして、パワー制御部30Aは、参照テーブルを参照し、取得した吐出圧Pdに対応する指令値Qdを導き出す。参照テーブルは、メインポンプ14の許容最大吸収パワー(例えば許容最大吸収馬力)と吐出圧Pdと指令値Qdとの対応関係を参照可能に保持するPQ線図に関する参照テーブルであり、不揮発性記憶装置に予め記憶されている。パワー制御部30Aは、例えば、予め設定されているメインポンプ14の許容最大吸収馬力と吐出圧センサ28が出力する吐出圧Pdとを検索キーとして参照テーブルを参照することで、指令値Qdを一意に決定できる。
【0049】
省エネルギ制御部30Bは、メインポンプ14の吐出量を制御する機能の1つであるネガティブコントロールを実現する制御部であり、制御圧Pnに基づいて吐出量の指令値Qnを導き出すように構成されている。本実施形態では、省エネルギ制御部30Bは、制御圧センサ19が出力する制御圧Pnを取得する。そして、省エネルギ制御部30Bは、参照テーブルを参照し、取得した制御圧Pnに対応する指令値Qnを導き出す。参照テーブルは、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を参照可能に保持する参照テーブルであり、不揮発性記憶装置に予め記憶されている。
【0050】
最小値選択部30Cは、複数の入力値から最小値を選択して出力するように構成されている。本実施形態では、最小値選択部30Cは、指令値Qdと指令値Qnのうちの小さい方を最終指令値Qfとして出力するように構成されている。
【0051】
省エネルギ制御部30Bが導き出す指令値Qnは、典型的には、仕上げ作業又は均し作業等の比較的低負荷の作業が行われる場合に、最小値選択部30Cによって選択される。一方で、パワー制御部30Aが導き出す指令値Qdは、典型的には、掘削作業等の比較的高負荷の作業が行われる場合に、最小値選択部30Cによって選択される。
【0052】
最大値設定部30Dは、最大指令値Qmaxを出力するように構成されている。最大指令値Qmaxは、メインポンプ14の最大吐出量に対応する指令値である。本実施形態では、最大値設定部30Dは、不揮発性記憶装置等に予め記憶されている最大指令値Qmaxを電流指令出力部30Eに出力するように構成されている。
【0053】
電流指令出力部30Eは、ポンプレギュレータ13に対して電流指令を出力するように構成されている。本実施形態では、電流指令出力部30Eは、最小値選択部30Cが出力する最終指令値Qfと最大値設定部30Dが出力する最大指令値Qmaxとに基づいて導き出される電流指令Iをポンプレギュレータ13に対して出力する。なお、電流指令出力部30Eは、最終指令値Qfに基づいて導き出される電流指令Iをポンプレギュレータ13に対して出力してもよい。
【0054】
次に、図4を参照し、省エネルギ制御部30Bが参照する参照テーブルの内容について説明する。図4は、参照テーブルの内容である、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を示す図である。具体的には、図4は、制御圧センサ19が検出する制御圧Pnを横軸に配し、指令値Qnを縦軸に配している。折れ線(傾斜線GLを含む。)は、指令値Qnと制御圧Pnとの関係を示している。指令値Qnは、メインポンプ14の目標吐出量に相当する。コントローラ30は、メインポンプ14の実際の吐出量Qが目標吐出量となるようにポンプレギュレータ13を制御する。目標吐出量は、ブリード流量Qbとシリンダ流量Qcとの合計流量に相当する。ブリード流量Qbは、絞り18を通過する作動油の流量であり、シリンダ流量Qcは、油圧シリンダ(図4の例では、アームシリンダ8のボトム側油室)に流入する作動油の流量である。なお、ブリード流量Qbは、制御圧が高くなるにつれて大きくなる。
【0055】
より具体的には、図4は、均し作業の際に左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されたときに参照される参照テーブルの内容を示す図である。図4は、左操作レバーがインチング操作されたときの制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を実線で示している。インチング操作は、例えば、左操作レバーが中立位置にあるときのレバー操作量を0%とし、左操作レバーが最大限に傾けられたときのレバー操作量を100%としたときの、20%未満のレバー操作量での操作を意味する。また、図4は、左操作レバーがハーフレバー操作されたときの制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を破線で示している。ハーフレバー操作は、例えば、20%以上80%未満のレバー操作量での操作を意味する。同様に、図4は、左操作レバーがフルレバー操作されたときの制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を一点鎖線で示している。フルレバー操作は、例えば、80%以上のレバー操作量での操作を意味する。
【0056】
本実施形態では、省エネルギ制御部30Bは、上端点A及び下端点Bを通る傾斜線GLを利用して制御圧Pnに対応する指令値Qnを導き出すように構成されている。
【0057】
上端点Aは、傾斜線GLの上端を定める点であり、最大指令値Qmaxと、第1設定圧Pxとによって表される。最大指令値Qmaxは、ネガティブコントロールで使用される指令値の上限であり、例えば、メインポンプ14の最大斜板傾転角に対応する固定値である。第1設定圧Pxは、左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されたときのパイロット圧であるアーム閉じパイロット圧に応じて変化する可変値である。
【0058】
下端点Bは、傾斜線GLの下端を定める点であり、最小指令値Qminと、第2設定圧Pyとによって表される。最小指令値Qminは、ネガティブコントロールで使用される指令値の下限であり、例えば、メインポンプ14の最小斜板傾転角より所定角度だけ大きい斜板傾転角(例えばスタンバイ流量に対応する斜板傾転角)に対応する固定値である。第2設定圧Pyは、アーム閉じパイロット圧とは無関係に設定される固定値であり、例えば、スタンバイ流量の作動油が絞り18を通過するときの制御圧に対応している。
【0059】
図4に示す例では、省エネルギ制御部30Bは、上端点Aの位置を横軸方向に変化させることで、すなわち、第1設定圧Pxを変化させることで、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を調整できるように構成されている。
【0060】
具体的には、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときと、ハーフレバー操作が行われているときと、フルレバー操作が行われているときのそれぞれで、上端点Aの位置を異ならせることによって、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を、そのときのショベル100の状態に適したものに調整している。なお、図4に示す例では、説明の便宜上、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときと、ハーフレバー操作が行われているときと、フルレバー操作が行われているときの3段階で上端点Aの位置を変化させているが、実際には、所定の制御周期毎にアーム閉じパイロット圧に応じて上端点Aの位置を無段階に変化させるように構成されている。
【0061】
より具体的には、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときには、図4の実線で示すように、上端点Aを初期上端点A1(第1設定圧Pxが設定値Px1(ゼロ)のときの点)から変位させずに傾斜線GLが傾斜線GL1となるように構成されている。
【0062】
省エネルギ制御部30Bは、ハーフレバー操作が行われているときには、図4の破線で示すように、傾斜線GLが傾斜線GL2となるように、上端点Aを初期上端点A1から上端点A2に変位させる。上端点A2は、対応する制御圧Pnの設定値Px2が、初期上端点A1に対応する設定値Px1(ゼロ)よりもΔP1だけ大きい点である。また、省エネルギ制御部30Bは、フルレバー操作が行われているときには、図4の一点鎖線で示すように、傾斜線GLが傾斜線GL3となるように、上端点Aを上端点A3に変位させる。上端点A3は、対応する制御圧Pnの設定値Px3が、上端点A2に対応する設定値Px2よりもΔP2だけ大きい点である。
【0063】
このように上端点Aの位置を横軸方向に変化させることによって、省エネルギ制御部30Bは、アーム閉じが行われるときに絞り18を通じて無駄に作動油タンクT1に排出されてしまう作動油の流量を減少させることができる。
【0064】
例えば、インチング操作で左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されているときに、仮に傾斜線GLが、フルレバー操作のときに採用される傾斜線GL3に固定されていた場合、アームシリンダ8に流入する作動油の流量であるシリンダ流量Qcとして流量Qc1を確保するためには、実際の制御圧Pnは、値P1となっている必要がある。この場合、ブリード流量Qbは、流量Qb1となる。
【0065】
これに対し、傾斜線GLとして傾斜線GL1が採用された場合、シリンダ流量Qcとして流量Qc1を確保するためには、実際の制御圧Pnは、値P1より小さい値P2となっていればよい。この場合、ブリード流量Qbは、流量Qb1よりΔQだけ小さい流量Qb2となる。制御圧Pnが小さいほどブリード流量Qbは小さいためである。すなわち、省エネルギ制御部30Bは、シリンダ流量Qcを流量Qc1で維持しながらブリード流量QbをΔQだけ減少させることができ、ひいては、メインポンプ14の吐出量を抑えることができる。
【0066】
このように、コントローラ30は、操作装置26の操作内容に応じてネガティブコントロールの制御特性を変化させることによって、メインポンプ14の吐出量をより柔軟に制御できる。具体的には、省エネルギ制御部30Bは、アーム閉じパイロット圧に応じて傾斜線GLを調整することによって、シリンダ流量Qcを減少させることなくブリード流量Qbを減少させることができる。そのため、省エネルギ制御部30Bは、作動油タンクT1に無駄に排出されてしまう作動油の量を減少させることができる。
【0067】
なお、省エネルギ制御部30Bは、例えば、制御圧Pnが値P2のときに、指令値Qnとして値Q2を導き出す。
【0068】
また、上述のように上端点Aを変位させることによって、省エネルギ制御部30Bは、フルレバー操作でアーム閉じが行われるときに、高い背圧のために吐出量Qが小さくなってしまうのを防止できる。
【0069】
例えば、フルレバー操作で左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されているときに、仮に傾斜線GLが、インチング操作のときに採用される傾斜線GL1に固定されていた場合、背圧が、初期上端点A1における第1設定圧Pxの設定値Px1(ゼロ)より大きい値P3であれば、指令値Qnは、最大指令値Qmaxより小さい値Q3に制限されてしまう。すなわち、メインポンプ14は、フルレバー操作が行われており、吐出量Qをできるだけ大きくすべき状況にあるにもかかわらず、最大斜板傾転角に設定されることはない。制御圧Pnは、絞り18の下流側における作動油の圧力である背圧の値P3よりも小さい値にはなり得ないためである。具体的には、この場合の制御圧Pnは、絞り18を通過する作動油の流量であるブリード流量Qbによってではなく、背圧によって決まってしまうためであり、コントローラ30は、ブリード流量Qbによって決定されるべき、本来の制御圧Pnに対応する指令値Qnを導き出すことができないためである。
【0070】
これに対し、傾斜線GLとして傾斜線GL3が採用された場合、上端点A3は、第1設定圧Pxの設定値Px3が背圧の値P3以上となるように設定される。この場合、省エネルギ制御部30Bは、実際の制御圧Pnが値P3のときに、指令値Qnとして最大指令値Qmaxを導き出す。その結果、メインポンプ14は、最大斜板傾転角となるように制御され、最大吐出量で作動油を吐出できる。
【0071】
なお、図4を参照する上述の説明は、左操作レバーをアーム閉じ方向に単独で操作したときに適用されているが、左操作レバーをアーム開き方向、左旋回方向、又は右旋回方向に単独で操作したとき、或いは、右操作レバーをブーム上げ方向、ブーム下げ方向、バケット閉じ方向、又はバケット開き方向に単独で操作したときにも同様に適用される。或いは、上述の説明は、走行レバーを前進方向又は後進方向に単独で操作したときにも同様に適用される。更に、上述の説明は、1又は複数の操作装置26による複合操作が行われたときにも同様に適用される。この場合、コントローラ30は、ΔP1及びΔP2を含む上端点Aの変位量が、左操作レバーが単独で操作されているときと、右操作レバーが単独で操作されているときとで異なるように構成されていてもよい。或いは、コントローラ30は、上端点Aの変位量が、左操作レバーがアーム閉じ方向に単独で操作されているときと、左操作レバーがアーム開き方向に単独で操作されているときとで異なるように構成されていてもよい。或いは、コントローラ30は、上端点Aの変位量が、単独操作が行われているときと、複合操作が行われているときとで異なるように構成されていてもよい。
【0072】
次に、図5を参照し、省エネルギ制御部30Bが参照する参照テーブルの内容の別の一例について説明する。図5は、参照テーブルの内容である、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を示す図であり、図4に対応している。
【0073】
図5に示す対応関係は、傾斜線GLの上端を定める上端点Aを固定とし傾斜線GLの下端を定める下端点Bを可変とした点で図4に示す対応関係と異なるが、その他の点で図4に示す対応関係と共通している。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0074】
図5に示す例では、省エネルギ制御部30Bは、下端点Bの位置を変化させることで、すなわち、第2設定圧Pyを変化させることで、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を調整できるように構成されている。
【0075】
具体的には、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときと、ハーフレバー操作が行われているときと、フルレバー操作が行われているときのそれぞれで、下端点Bの位置を異ならせることで、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係をそのときのショベル100の状態に適したものに調整している。なお、図5に示す例では、説明の便宜上、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときと、ハーフレバー操作が行われているときと、フルレバー操作が行われているときの3段階で下端点Bの位置を変化させているが、実際には、所定の制御周期毎にアーム閉じパイロット圧に応じて下端点Bの位置を無段階に変化させるように構成されている。
【0076】
より具体的には、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときには、図5の実線で示すように、下端点Bを初期下端点B1から変位させずに傾斜線GLが傾斜線GL11となるように構成されている。
【0077】
この場合、アームシリンダ8のボトム側油室に流入する作動油の流量であるシリンダ流量Qcは、制御圧Pnが値Pzから第2設定圧Pyの設定値Py1に向かって減少するにつれて緩やかに増加するように制御される。吐出量Qが最小指令値Qminに相当する量で維持される状況下でブリード流量Qbが減少していくためである。そのため、ショベル100の操作者は、制御圧Pnが値Pzから第2設定圧Pyの設定値Py1までの範囲において、左操作レバーをアーム閉じ方向に少しずつ傾けることで、シリンダ流量Qcを少しずつ増大させることができる。すなわち、操作者は、制御圧Pn(レバー操作量)の比較的広い範囲にわたってアーム5のインチング操作を実行できる。その結果、ショベル100は、アーム5がインチング操作されるときのアーム5の動き出しの操作性を高めることができる。
【0078】
省エネルギ制御部30Bは、ハーフレバー操作が行われているときには、図5の破線で示すように、傾斜線GLが傾斜線GL12となるように、下端点Bを初期下端点B1から下端点B2に変位させる。下端点B2は、対応する制御圧Pnの設定値Py2が、初期下端点B1に対応する制御圧Pnの設定値Py1よりもΔP3だけ大きい点である。また、省エネルギ制御部30Bは、フルレバー操作が行われているときには、図5の一点鎖線で示すように、傾斜線GLが傾斜線GL13となるように、下端点Bを下端点B3に変位させる。下端点B3は、対応する制御圧Pnの設定値Py3が、下端点B2に対応する制御圧Pnの設定値Py2よりもΔP4だけ大きい点である。
【0079】
このように下端点Bを変位させることによって、省エネルギ制御部30Bは、アーム閉じが行われるときに絞り18を通じて無駄に作動油タンクT1に排出されてしまう作動油の流量を減少させることができる。
【0080】
例えば、インチング操作で左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されているときに、仮に傾斜線GLが、フルレバー操作のときに採用される傾斜線GL13に固定されていた場合、アームシリンダ8に流入する作動油の流量であるシリンダ流量Qcとして流量Qc1を確保するためには、実際の制御圧Pnは、値P1となっている必要がある。この場合、ブリード流量Qbは、流量Qb1となる。
【0081】
これに対し、傾斜線GLとして傾斜線GL11が採用された場合、シリンダ流量Qcとして流量Qc1を確保するためには、実際の制御圧Pnは、値P1より小さい値P2となっていればよい。この場合、ブリード流量Qbは、流量Qb1よりΔQだけ小さい流量Qb2となる。制御圧Pnが小さいほどブリード流量Qbは小さいためである。すなわち、省エネルギ制御部30Bは、シリンダ流量Qcを流量Qc1で維持しながらブリード流量QbをΔQだけ減少させることができ、ひいては、メインポンプ14の吐出量を抑えることができる。
【0082】
なお、省エネルギ制御部30Bは、例えば、制御圧Pnが値P2のときに、指令値Qnとして値Q2を導き出す。
【0083】
このように、省エネルギ制御部30Bは、アーム閉じパイロット圧に応じて傾斜線GLを調整することによって、シリンダ流量Qcを減少させることなくブリード流量Qbを減少させることができる。そのため、省エネルギ制御部30Bは、作動油タンクT1に無駄に排出されてしまう作動油の量を減少させることができる。
【0084】
また、上述のように下端点Bを変位させることによっても、上端点Aを変位させた場合と同様に、省エネルギ制御部30Bは、フルレバー操作でアーム閉じが行われるときに、高い背圧のために吐出量Qが小さくなってしまうのを防止できる。
【0085】
なお、図5を参照する上述の説明は、左操作レバーをアーム閉じ方向に単独で操作したときに適用されているが、左操作レバーをアーム開き方向、左旋回方向、又は右旋回方向に単独で操作したとき、或いは、右操作レバーをブーム上げ方向、ブーム下げ方向、バケット閉じ方向、又はバケット開き方向に単独で操作したときにも同様に適用される。或いは、上述の説明は、走行レバーを前進方向又は後進方向に単独で操作したときにも同様に適用される。更に、上述の説明は、1又は複数の操作装置26による複合操作が行われたときにも同様に適用される。この場合、コントローラ30は、ΔP3及びΔP4を含む下端点Bの変位量が、左操作レバーが単独で操作されているときと、右操作レバーが単独で操作されているときとで異なるように構成されていてもよい。或いは、コントローラ30は、下端点Bの変位量が、左操作レバーがアーム閉じ方向に単独で操作されているときと、左操作レバーがアーム開き方向に単独で操作されているときとで異なるように構成されていてもよい。或いは、コントローラ30は、下端点Bの変位量が、単独操作が行われているときと、複合操作が行われているときとで異なるように構成されていてもよい。
【0086】
また、コントローラ30は、アーム閉じ方向に傾けられた左操作レバーが中立状態に戻されるとき、すなわち、左操作レバーのレバー操作量が減少するときには、下端点Bの位置を変化させないように、すなわち、下端点Bをそのときの位置で固定するように構成されていてもよい。メインポンプ14の吐出量が急減してしまうのを防止するためである。すなわち、アーム5の閉じ速度が急減してしまうのを防止するためである。この場合、コントローラ30は、左操作レバーが中立状態に戻ったとき、すなわち、左操作レバーのレバー操作量がゼロになったときに、下端点Bの位置を初期下端点B1の位置に戻すように構成されていてもよい。
【0087】
次に、図6を参照し、省エネルギ制御部30Bが参照する参照テーブルの内容の更に別の一例について説明する。図6は、参照テーブルの内容である、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を示す図であり、図4及び図5のそれぞれに対応している。
【0088】
図6に示す対応関係は、傾斜線GLの上端を定める上端点A、及び、傾斜線GLの下端を定める下端点Bの双方の位置を可変とした点で図4及び図5のそれぞれに示す対応関係と異なるが、その他の点で図4及び図5のそれぞれに示す対応関係と共通している。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0089】
図6に示す例では、省エネルギ制御部30Bは、上端点A及び下端点Bのそれぞれの位置を変化させることで、すなわち、第1設定圧Px及び第2設定圧Pyのそれぞれを変化させることで、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係を調整できるように構成されている。
【0090】
具体的には、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときと、ハーフレバー操作が行われているときと、フルレバー操作が行われているときのそれぞれで、上端点A及び下端点Bのそれぞれの位置を異ならせることで、制御圧Pnと指令値Qnとの対応関係をそのときのショベル100の状態に適したものに調整している。なお、図6に示す例では、説明の便宜上、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときと、ハーフレバー操作が行われているときと、フルレバー操作が行われているときの3段階で上端点A及び下端点Bのそれぞれの位置を変化させているが、実際には、所定の制御周期毎にアーム閉じパイロット圧に応じて上端点A及び下端点Bのそれぞれの位置を無段階に変化させるように構成されている。
【0091】
より具体的には、省エネルギ制御部30Bは、インチング操作が行われているときには、図6の実線で示すように、上端点Aを初期上端点A1から変位させずに、且つ、下端点Bを初期下端点B1から変位させずに、傾斜線GLが傾斜線GL21となるように構成されている。
【0092】
この場合、アームシリンダ8のボトム側油室に流入する作動油の流量であるシリンダ流量Qcは、制御圧Pnが値Pzから第2設定圧Pyの設定値Py1に向かって減少するにつれて緩やかに増加するように制御される。吐出量Qが最小指令値Qminに相当する量で維持される状況下でブリード流量Qbが減少していくためである。そのため、ショベル100の操作者は、制御圧Pnが値Pzから第2設定圧Pyの設定値Py1までの範囲において、左操作レバーをアーム閉じ方向に少しずつ傾けることで、シリンダ流量Qcを少しずつ増大させることができる。すなわち、操作者は、制御圧Pn(レバー操作量)の比較的広い範囲にわたってアーム5のインチング操作を実行できる。その結果、ショベル100は、アーム5がインチング操作されるときのアーム5の動き出しの操作性を高めることができる。
【0093】
省エネルギ制御部30Bは、ハーフレバー操作が行われているときには、図6の破線で示すように、傾斜線GLが傾斜線GL22となるように、上端点Aを初期上端点A1から上端点A2に変位させ、且つ、下端点Bを初期下端点B1から下端点B2に変位させる。上端点A2は、対応する制御圧Pnの設定値Px2が、初期上端点A1に対応する制御圧Pnの設定値Px1よりもΔP1だけ大きい点である。下端点B2は、対応する制御圧Pnの設定値Py2が、初期下端点B1に対応する制御圧Pnの設定値Py1よりもΔP3だけ大きい点である。また、省エネルギ制御部30Bは、フルレバー操作が行われているときには、図6の一点鎖線で示すように、傾斜線GLが傾斜線GL23となるように、上端点Aを上端点A3に変位させ、且つ、下端点Bを下端点B3に変位させる。上端点A3は、対応する制御圧Pnの設定値Px3が、上端点A2に対応する制御圧Pnの設定値Px2よりもΔP2だけ大きい点である。下端点B3は、対応する制御圧Pnの設定値Py3が、下端点B2に対応する制御圧Pnの設定値Py2よりもΔP4だけ大きい点である。
【0094】
このように上端点A及び下端点Bのそれぞれを変位させることによって、省エネルギ制御部30Bは、アーム閉じが行われるときに絞り18を通じて無駄に作動油タンクT1に排出されてしまう作動油の流量を減少させることができる。
【0095】
例えば、インチング操作で左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されているときに、仮に傾斜線GLが、フルレバー操作のときに採用される傾斜線GL23に固定されていた場合、アームシリンダ8に流入する作動油の流量であるシリンダ流量Qcとして流量Qc1を確保するためには、実際の制御圧Pnは、値P1となっている必要がある。この場合、ブリード流量Qbは、流量Qb1となる。
【0096】
これに対し、傾斜線GLとして傾斜線GL21が採用された場合、シリンダ流量Qcとして流量Qc1を確保するためには、実際の制御圧Pnは、値P1より小さい値P2となっていればよい。この場合、ブリード流量Qbは、流量Qb1よりΔQだけ小さい流量Qb2となる。制御圧Pnが小さいほどブリード流量Qbは小さいためである。すなわち、省エネルギ制御部30Bは、シリンダ流量Qcを流量Qc1で維持しながらブリード流量QbをΔQだけ減少させることができ、ひいては、メインポンプ14の吐出量を抑えることができる。
【0097】
なお、省エネルギ制御部30Bは、例えば、制御圧Pnが値P2のときに、指令値Qnとして値Q2を導き出す。
【0098】
このように、省エネルギ制御部30Bは、アーム閉じパイロット圧に応じて傾斜線GLを調整することによって、シリンダ流量Qcを減少させることなくブリード流量Qbを減少させることができる。そのため、省エネルギ制御部30Bは、作動油タンクT1に無駄に排出されてしまう作動油の量を低減させることができる。
【0099】
また、上述のように上端点A及び下端点Bのそれぞれを変位させることによっても、上端点Aのみを変位させた場合或いは下端点Bのみを変位させた場合と同様に、省エネルギ制御部30Bは、フルレバー操作でアーム閉じが行われるときに、高い背圧のために吐出量Qが小さくなってしまうのを防止できる。
【0100】
例えば、フルレバー操作で左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されているときに、仮に傾斜線GLが、インチング操作のときに採用される傾斜線GL21に固定されていた場合、背圧が、初期上端点A1における第1設定圧Pxの設定値Px1(ゼロ)より大きい値P3であれば、指令値Qnは、最大指令値Qmaxより小さい値Q3に制限されてしまう。すなわち、メインポンプ14は、フルレバー操作が行われており、吐出量Qをできるだけ大きくすべき状況にあるにもかかわらず、最大斜板傾転角に設定されることはない。制御圧Pnは、背圧の値P3よりも小さい値にはなり得ないためである。具体的には、この場合の制御圧Pnは、絞り18を通過する作動油の流量であるブリード流量Qbによってではなく、背圧によって決まってしまうためであり、コントローラ30は、ブリード流量Qbによって決定されるべき、本来の制御圧Pnに対応する指令値Qnを導き出すことができないためである。
【0101】
これに対し、傾斜線GLとして傾斜線GL23が採用された場合、上端点A3は、第1設定圧Pxの設定値Px3が背圧の値P3以上となるように設定される。この場合、省エネルギ制御部30Bは、実際の制御圧Pnが値P3のときに、指令値Qnとして最大指令値Qmaxを導き出す。その結果、メインポンプ14は、最大斜板傾転角となるように制御され、最大吐出量で作動油を吐出できる。
【0102】
なお、図6を参照する上述の説明は、左操作レバーをアーム閉じ方向に単独で操作したときに適用されているが、左操作レバーをアーム開き方向、左旋回方向、又は右旋回方向に単独で操作したとき、或いは、右操作レバーをブーム上げ方向、ブーム下げ方向、バケット閉じ方向、又はバケット開き方向に単独で操作したときにも同様に適用される。或いは、上述の説明は、走行レバーを前進方向又は後進方向に単独で操作したときにも同様に適用される。更に、上述の説明は、1又は複数の操作装置26による複合操作が行われたときにも同様に適用される。この場合、コントローラ30は、ΔP1及びΔP2を含む上端点Aの変位量が、左操作レバーが単独で操作されているときと、右操作レバーが単独で操作されているときとで異なるように構成されていてもよい。ΔP3及びΔP4を含む下端点Bの変位量についても同様である。或いは、コントローラ30は、上端点Aの変位量が、左操作レバーがアーム閉じ方向に単独で操作されているときと、左操作レバーがアーム開き方向に単独で操作されているときとで異なるように構成されていてもよい。下端点Bの変位量についても同様である。或いは、コントローラ30は、上端点Aの変位量が、単独操作が行われているときと、複合操作が行われているときとで異なるように構成されていてもよい。下端点Bの変位量についても同様である。
【0103】
上述のように、本発明の実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に搭載されるエンジン11と、エンジン11によって駆動される油圧ポンプとしてのメインポンプ14と、油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータを操作する操作装置26と、メインポンプ14の吐出量をネガティブコントロールによって制御する制御装置としてのコントローラ30と、を備えている。そして、コントローラ30は、操作装置26の操作内容に応じてネガティブコントロールの制御特性を変化させるように構成されている。
【0104】
この構成により、ショベル100は、メインポンプ14の吐出量をより柔軟に制御できる。その結果、ショベル100は、例えば、均し作業の際に、インチング操作によって左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されたときに、ネガティブコントロールの制御特性が固定されている場合に比べ、広いレバー操作量の範囲にわたって、レバー操作量の増加に応じてメインポンプ14の吐出量を緩やかに増加させることができる。そのため、ショベル100の操作者は、アーム5の細かな動きを意図したとおりに実現できる。
【0105】
操作装置26は、典型的には、左操作レバー、右操作レバー、左走行レバー、又は右走行レバー等の操作レバーである。そして、操作レバーがフルレバー操作されたときのネガティブコントロールの制御特性は、例えば、操作レバーがハーフレバー操作されたときのネガティブコントロールの制御特性とは異なるように調整される。
【0106】
その結果、ショベル100は、例えば、均し作業の際に、ハーフレバー操作によって左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されたときに、ネガティブコントロールの制御特性が固定されている場合に比べ、アームシリンダ8に流入する作動油の流量であるシリンダ流量Qcを減少させることなく、アームシリンダ8に流入することなく作動油タンクT1に排出される作動油の流量であるブリード流量Qbを減少させることができる。
【0107】
また、ショベル100は、例えば、均し作業の際に、フルレバー操作によって左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されたときに、ネガティブコントロールの制御特性が固定されている場合に比べ、より確実にメインポンプ14の吐出量を最大限に増加させることができる。傾斜線GLの上端を定める点である上端点Aに対応する制御圧Pnの設定値が背圧よりも大きくなるように調整されるためである。
【0108】
ネガティブコントロールの制御特性は、例えば、センターバイパス油路40に配置された絞り18の上流側における作動油の圧力である制御圧Pnと、メインポンプ14の吐出量に関する指令値Qnとの対応関係を表す傾斜線GLによって定められる。そして、コントローラ30は、望ましくは、傾斜線GLの上端点A及び下端点Bの少なくとも一方の位置が可変となるように構成される。
【0109】
具体的には、傾斜線GLの上端点Aは、例えば図4に示すように、アーム閉じパイロット圧(レバー操作量)の変化に応じて横軸方向に変化するように構成されていてもよい。なお、上端点Aは、その位置が縦軸方向にも変化するように構成されていてもよい。
【0110】
或いは、傾斜線GLの下端点Bは、例えば図5に示すように、アーム閉じパイロット圧(レバー操作量)の変化に応じて横軸方向に変化するように構成されていてもよい。なお、下端点Bは、その位置が縦軸方向にも変化するように構成されていてもよい。
【0111】
或いは、傾斜線GLの上端点A及び下端点Bの双方は、例えば図6に示すように、アーム閉じパイロット圧(レバー操作量)の変化に応じて横軸方向に変化するように構成されていてもよい。なお、上端点A及び下端点Bの双方は、各位置が縦軸方向にも変化するように構成されていてもよい。
【0112】
傾斜線GLの上端点Aに対応する制御圧Pnの設定値は、望ましくは、可変であり、且つ、絞り18の下流側における作動油の圧力である背圧よりも高くなるように設定される。この設定により、ショベル100は、例えば、均し作業の際に、フルレバー操作によって左操作レバーがアーム閉じ方向に操作されたときに、メインポンプ14の吐出量が不必要に制限されてしまうのを防止できる。すなわち、ショベル100は、制御圧Pnの最小値が、絞り18を通過する作動油の流量であるブリード流量Qbによってではなく、背圧によって決まってしまう場合であっても、ブリード流量Qbによって決まる本来の制御圧Pnに対応する指令値Qnを導き出すことができる。
【0113】
なお、フルレバー操作によって走行レバーが操作されたときの上端点Aに対応する制御圧Pnの設定値は、フルレバー操作によって左操作レバーがアーム閉じ方向又はアーム開き方向に操作されたときの上端点Aに対応する制御圧Pnの設定値よりも大きくなるように構成されていてもよい。油圧モータが単独で駆動されたときの背圧は、典型的には、油圧シリンダが単独で駆動されたときの背圧よりも大きいためである。
【0114】
傾斜線GLの上端点A及び下端点Bの少なくとも一方の位置は、望ましくは、操作装置26の操作量の変化に応じて変化する。この場合、操作装置26のうちの一つの操作量の変化に応じて変化する傾斜線GLの上端点A及び下端点Bの少なくとも一方の位置の変化量は、操作装置26のうちの別の一つの操作量の変化に応じて変化する傾斜線GLの上端点A及び下端点Bの少なくとも一方の位置の変化量とは異なるように調整される。
【0115】
例えば、操作装置26のうちの一つである左操作レバーのアーム閉じ方向におけるレバー操作量の変化に応じて変化する傾斜線GLの上端点Aの位置の変化量は、操作装置26のうちの別の一つである右操作レバーのブーム上げ方向におけるレバー操作量の変化に応じて変化する傾斜線GLの上端点Aの位置の変化量とは異なるように調整される。下端点Bについても同様である。
【0116】
また、左操作レバーのアーム閉じ方向におけるレバー操作量の変化に応じて変化する傾斜線GLの上端点Aの位置の変化量は、左操作レバーのアーム開き方向におけるレバー操作量の変化に応じて変化する傾斜線GLの上端点Aの位置の変化量とは異なるように調整されてもよい。下端点Bについても同様である。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施形態が説明された。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【0118】
例えば、上述の実施形態では、傾斜線GLは、上端点Aと下端点Bとを結ぶ直線分であるが、上端点Aと下端点Bとを結ぶ、2つ以上の屈折点を有する折れ線であってもよく、上端点Aと下端点Bとを結ぶ曲線であってもよく、上端点Aと下端点Bとを結ぶ、直線と曲線の組み合わせであってもよい。
【0119】
また、上述の実施形態では、省エネルギ制御部30Bは、上端点Aの位置と下端点Bの位置とを決定することで傾斜線GLを定めるように構成されているが、一つ又は二つ以上の別の点を決定することで傾斜線GLを定めるように構成されていてもよい。
【0120】
また、上述の実施形態では、省エネルギ制御部30Bは、操作圧センサ29が検出するパイロット圧に基づいて上端点A及び下端点Bの少なくとも一方の位置を変化させるように構成されている。しかしながら、省エネルギ制御部30Bは、操作圧センサ29が検出するパイロット圧と、背圧を検出する背圧センサの検出値とに基づいて上端点A及び下端点Bの少なくとも一方の位置を変化させるように構成されていてもよい。背圧センサは、例えば、センターバイパス油路40における絞り18の下流側の油路部分、すなわち、絞り18と油路43との間の油路部分にある作動油の圧力を背圧として検出する圧力センサである。省エネルギ制御部30Bは、この背圧センサの検出値に基づき、上端点Aに対応する制御圧Pnの設定値が背圧よりも高くなるように、上端点Aを変位させてもよい。
【0121】
本願は、2019年8月9日に出願した日本国特許出願2019-148139号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0122】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 13・・・ポンプレギュレータ 14・・メインポンプ 15・・・パイロットポンプ 17・・・コントロールバルブユニット 18・・・絞り 19・・・制御圧センサ 20・・・走行用油圧モータ 20L・・・左走行用油圧モータ 20R・・・右走行用油圧モータ 21・・・旋回用油圧モータ 21P・・・油路 22・・・リリーフ弁 23・・・チェック弁 26・・・操作装置 27・・・温度センサ 28・・・吐出圧センサ 29・・・操作圧センサ 30・・・コントローラ 30A・・・パワー制御部 30B・・・省エネルギ制御部 30C・・・最小値選択部 30D・・・最大値設定部 30E・・・電流指令出力部 40・・・センターバイパス油路 41・・・戻り油路 42・・・パラレル油路 43~46・・・油路 45a、45b・・・油路部分 50・・・チェック弁 51・・・オイルクーラ 52・・・チェック弁 53・・・フィルタ 171~176・・・制御弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6