(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】2-アルキルアントラセンを分離する方法、および、過酸化水素を製造するためのその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 7/14 20060101AFI20240718BHJP
C07C 15/27 20060101ALI20240718BHJP
C07C 50/16 20060101ALI20240718BHJP
C07C 45/28 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C07C7/14
C07C15/27
C07C50/16
C07C45/28
(21)【出願番号】P 2021560963
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2020078563
(87)【国際公開番号】W WO2020211572
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】201910300813.5
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910300499.0
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宗保寧
(72)【発明者】
【氏名】鄭博
(72)【発明者】
【氏名】朱振興
(72)【発明者】
【氏名】潘智勇
(72)【発明者】
【氏名】▲ケキ▼思遠
(72)【発明者】
【氏名】高國華
(72)【発明者】
【氏名】費建奇
(72)【発明者】
【氏名】毛俊義
(72)【発明者】
【氏名】唐暁津
(72)【発明者】
【氏名】胡立峰
(72)【発明者】
【氏名】劉錚
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107602368(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109574779(CN,A)
【文献】特表2004-525893(JP,A)
【文献】米国特許第04255343(US,A)
【文献】工業化学雑誌,1965年,68(3),P.474-476
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/
C07C 15/
C07C 50/
C07C 45/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントラセンアルキル化反応の反応生成物から2-アルキルアントラセンを分離する工程であって、上記アントラセンアルキル化反応は、アルキル化反応溶媒および触媒の存在下における、アルキル化条件下でのアントラセンとアルキル化試薬との反応である、工程、を含み、
上記アントラセンアルキル化反応の反応生成物は、アントラセンと、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物と、を含み、
上記アルキルは、1つまたは複数
のC
4-C
7アルキ
ルであり、
上記分離は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離を含み、
上記アルキル化試薬は、2~8個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテル物質のうちの1種以上であり、上記アルキル化試薬に対するアントラセンのモル比は、0.2:1~20:1であり、
上記アルキル化反応は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液と、アルキル化試薬とを接触させて行い;
上記アルキル化反応の条件は、反応温度が100~250℃であり、反応圧力が0~1MPaであり、反応時間が0.01~48時間であることを含み、
上記アントラセンの含有量は、上記アントラセンおよびアルキル化反応溶媒の総重量に基づいて、5~60重量%であり、
上記触媒の含有量は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり、
上記触媒が固体酸触媒又は液体酸触媒であり、
上記触媒が固体酸触媒である場合、上記アルキル化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせであり、
上記溶媒Bに対する上記溶媒Aの体積比は、0.01~100であり、
上記固体酸触媒は、活性モレキュラーシーブおよびバインダーを含有し、上記活性モレキュラーシーブの含有量は、上記固体酸触媒の総重量に基づいて30~95重量%であり、上記バインダーの含有量は、上記固体酸触媒の総重量に基づいて5~70重量%であり、
上記活性モレキュラーシーブは、Xゼオライト、Yゼオライト、βゼオライト、ZSM-5ゼオライト、SAPOゼオライト、および、メソ多孔質ゼオライトのうちの1種以上であり、上記バインダーは、無機バインダーであり、当該無機バインダーは、耐熱性無機酸化物および/またはケイ酸塩であり、
上記触媒が液体酸触媒である場合、上記アルキル化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒である、
2-アルキルアントラセンの調製方法。
【請求項2】
上記アルキルは、直鎖状または分枝状のブチル、直鎖状または分枝状のペンチル、直鎖状または分枝状のヘキシル、および、直鎖状または分枝状のヘプチルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記分離は、以下を含む、請求項1または2に記載の方法:
(a)上記アントラセンアルキル化反応の反応生成物を溶融状態に加熱すること、冷却および結晶化すること、アントラセン結晶、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを得るために分離すること、発汗させるために上記アントラセン結晶を加熱すること、および、発汗液とアントラセン結晶とを分離すること;
(b)1工程の蒸留、または、多工程の蒸留によって、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物から、2-アルキルアントラセンを分離すること。
【請求項4】
工程(a)において、
上記溶融温度は、200~270℃であり;
上記冷却および結晶化のための温度は、180~210℃であり、上記冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.1~10℃/時間であり、上記冷却および結晶化のための時間は、1~5時間であり;
上記アントラセン結晶を発汗させるための温度上昇速度は、0.1~8℃/時間であり;
上記発汗を停止させる温度は、190~210℃であり;
上記発汗量は、上記アントラセン結晶の5~40重量%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記工程(a)の冷却および結晶化には、上記溶融混合物の量に基づいて、0.1~10重量
%の量の、結晶種としてのアントラセンを添加する工程が、さらに含まれる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
上記工程(a)では、
上記溶融温度は、210~250℃であり;
上記冷却および結晶化のための温度は、190~200℃であり、上記冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.5~5℃/時間であり、上記冷却および結晶化のための時間は、1.5~4時間であり;
上記アントラセン結晶を発汗させるための温度上昇速度は、0.2~4℃/時間であり;
上記発汗を停止させる温度は、195~205℃であり;
上記発汗量は、上記アントラセン結晶の10~30重量%であり;
上記冷却および結晶化には、上記溶融混合物の量に基づいて、0.2~5重量%の量の、結晶種としてのアントラセンを添加する工程が、さらに含まれる、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記発汗液を再利用して上記溶融結晶化の工程へ戻し、アルキルアントラセンを含む上記反応生成物と共に上記溶融結晶化を行う、請求項3~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物が、2種類の物質の混合物、または、3種類以上の物質の混合物であり、2-アルキルアントラセンの沸点が、最低または最高である場合に、上記2-アルキルアントラセンの1工程の蒸留分離が行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物が、3種類以上の物質の混合物であり、上記2-アルキルアントラセンの沸点が、上記混合物中の沸点が最も高い物質の沸点と、上記混合物中の沸点が最も低い物質の沸点との間である場合に、多工程の蒸留が行われ、
上記多工程の蒸留は、以下を含む、請求項3に記載の方法:
モード1:
2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを、第1の蒸留分離に供して、軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cj2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液を第2の蒸留に供して、軽質成分Cj3-アントラセンを含む蒸留液、および、目的生成物Ci-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンは、複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j1は、1<j1<i+1であり;
上記重質成分Cj2-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j2は、i<j2<41であり;
上記軽質成分Cj3-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j3は、1<j3<iである;または、
モード2:
2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを、第3の蒸留に供して、軽質成分Cm1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を第4の蒸留に供して、目的生成物Ci-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm3-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cm1-アントラセンは、アルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m1は、1<m1<iであり;
上記重質成分Cm2-アントラセンは、複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m2は、i-1<m2<41であり;
上記重質成分Cm3-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m3は、i<m3<41であり;
ここで、j1、j2、j3、m1、m2およびm3は、整数であり、目的生成物Ci-アントラセン中のiは、アルキル側鎖の総炭素数を表し、i=4~7の整数である。
【請求項10】
第1の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
第2の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
第3の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
第4の真空蒸留の条件は、以下を含む、請求項9に記載の方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8である。
【請求項11】
第1の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は260~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3であり;
第2の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~300℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5であり;
第3の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は260~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3であり;
第4の真空蒸留の条件は、以下を含む、請求項9に記載の方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~300℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5である。
【請求項12】
上記反応生成物は、さらにアルキル化反応溶媒を含み;
上記方法は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離の前に、上記アルキル化反応溶媒を分離する工程をさらに含み;
上記アルキル化反応溶媒の分離は、上記アントラセンアルキル化反応の反応生成物を蒸留塔内における蒸留に供して、アルキル化反応溶媒を含む蒸留液、アントラセンを含むボトム生成物、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物を生成させることを含み;
蒸留のため
の条件は、蒸留塔の底部の温度が100~300℃であり
、蒸留塔の頂部圧力が常圧である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記触媒は、固体酸触媒であり、
上記アルキル化反応溶媒は
、溶媒A
と溶媒Bとの組み合わせであり;
上記溶媒Aは
、C
6-C
12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり
、上記置換基は、C
1-C
4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり、上記溶媒Bは、N-アルキル置換アミドであり、アルキル置換基の数は、1~2であり、各アルキル置換基は、独立してC
1-C
4アルキルであり;
上記溶媒Bに対する上記溶媒Aの体積比は、0.1~10であり;
上記アントラセンの含有量は、上記アントラセンおよびアルキル化反応溶媒の総重量に基づいて
、8~50重量%であり;
上
記固体酸触媒は、活性モレキュラーシーブおよびバインダーを含有し、上記活性モレキュラーシーブの含有量は、上記固体酸触媒の総重量に基づいて30~95重量%であり、上記バインダーの含有量は、上記固体酸触媒の総重量に基づいて5~70重量%であり、
上記活性モレキュラーシーブは
、Yゼオライトであり、上記バインダーは
、アルミナであり;
上記触媒の含有量は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液の総重量に基づいて、0.5~30重量%で
ある、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記溶媒Aは、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり;
上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記触媒は上記液体酸触媒であり;
上記アルキル化反応溶媒は
、C
6-C
12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素の1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であ
り、上記置換基は、C
1-C
4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり;
上記アントラセンの含有量は、上記アントラセンおよびアルキル化反応溶媒の総重量に基づいて、8~50重量%であり;
上記液体酸触媒は、メタンスルホン酸および/またはパラトルエンスルホン酸であり;
上記触媒の含有量は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液の総重量に基づいて
、0.5~30重量%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
上記アルキル化反応溶媒は、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
2-アルキルアントラセンの触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製のための、および、2-アルキルアントラキノンを使用する過酸化水素の調製のための、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法の使用であって、
上記触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製は、酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、分離によって得られた2-アルキルアントラセンと、酸化剤とを接触させて、酸化反応を行う工程であって
、上記接触させる方法が、2-アルキルアントラセン、触媒および酸化反応溶媒を含む供給原料液と、酸化剤とを接触させて、上記酸化反応を行う方法である、工程、を含み;
上記酸化剤は、過酸化水素であ
り;
上記触媒は、Ca、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Ru、Co、Ni、La、および、Ceの酸素含有化合物のうちの1種以上であり;
上記酸化反応の条件は、反応温度が10~200℃であり
、反応圧力が0~1MPaであり
、反応時間が0.01~48時間であ
ること、を含み;
上記酸化剤の2-アルキルアントラセンに対するモル比は、0.01:1~100:1であ
り;
上記酸化剤の上記触媒に対するモル比は、0.01:1~100:1であ
り、
上記酸化反応溶媒は、炭素数が1~4の脂肪アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、N-アルキル置換アミド、および、N-アルキルピロリドンのうちの1種以上であり;当該アルキル置換基の数が、1~2であり、アルキル置換基の各々が、独立してC
1
-C
4
アルキルであり;又は
上記酸化反応溶媒は、以下の(1)または(2)であり:
(1)溶媒A、または、
(2)溶媒Aと溶媒Bとの組み合わせであって、上記溶媒Bに対する上記溶媒Aの体積比は、0.01~100であり;
上記溶媒Aは、C
6
-C
12
の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、上記置換基は、C
1
-C
4
アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり、上記溶媒Bは、N-アルキル置換アミドであり、アルキル置換基の数は、1~2であり、各アルキル置換基は、独立してC
1
-C
4
アルキルであり;
上記2-アルキルアントラセンの総含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%である、使用。
【請求項18】
上記酸化剤は、過酸化水素であり、当該過酸化水素は、過酸化水素の水溶液の形態で使用され;
上記触媒は、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、メタチタン酸、二酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニル、メタバナジン酸ナトリウム、クロム酸カリウム、セスキオキシドクロム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、タングステン酸ナトリウム、セスキオキシドマンガン、二酸化マンガン、二酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、セスキオキシドニッケル、硝酸ランタン、セスキオキシドランタン、および、二酸化セリウムのうちの1種以上であり;
上記酸化反応の条件は、反応温度が20~120℃であり、反応圧力が0~0.5MPaであり、反応時間が0.5~24時間であること、を含み;
上記酸化剤の2-アルキルアントラセンに対するモル比は、1:1~50:1であり;
上記酸化剤の上記触媒に対するモル比は、0.1:1~30:1であり;
上記酸化反応溶媒は、メタノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、および、N-エチルピロリドンのうちの1種以上であり;又は
上記酸化反応溶媒は、以下の(1)または(2)であり:
(1)溶媒A、または、
(2)溶媒Aと溶媒Bとの組み合わせであって、上記溶媒Bに対する上記溶媒Aの体積比は、0.05~10であり;
上記溶媒Aは、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり;
上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上であり;
上記2-アルキルアントラセンの総含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび酸化反応溶媒の総重量に基づいて、5~50重量%である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
2-アルキルアントラセンの触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製のための、および、2-アルキルアントラキノンを使用する過酸化水素の調製のための、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法の使用であって、
上記触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製は、酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、分離によって得られた2-アルキルアントラセンと、酸化剤とを接触させて、酸化反応を行う工程であって
、上記接触させる方法が、2-アルキルアントラセン、触媒および酸化反応溶媒を含む供給原料液と、酸化剤とを接触させて、上記酸化反応を行う方法である、工程、を含み;
上記酸化剤は、tert-ブチルヒドロペルオキシドであり;
上記触媒は、担体、および、当該担体上の活性成分を含み;
上記活性成分の含有量は、上記触媒中の上記担体の重量、および、元素含有量に基づいて、0.01~40重量%であ
り;
上記活性成分は、P、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの1つ以上であり;
上記担体は、耐熱性無機酸化物であり;
上記酸化反応溶媒は
、C
6-C
12の、アルカン、シクロアルカン、および、芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり
、上記置換基は、C
1-C
4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり;
上記酸化反応の条件は、反応温度が10~150℃であ
り;反応圧力が0~1MPaであり、反応時間が0.01~48時間であ
り;
上記触媒の含有量は、触媒および酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.01~50重量%であ
り;
上記2-アルキルアントラセンに対する酸化剤のモル比は、0.01:1~100:1であ
り;
上記2-アルキルアントラセンの合計含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび上記酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であ
る、使用。
【請求項20】
上記触媒は、担体、および、当該担体上の活性成分を含み;
上記活性成分の含有量は、上記触媒中の上記担体の重量、および、元素含有量に基づいて、0.1~30重量%であり;
上記活性成分は、Pと、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの少なくとも1つとの組み合わせであり;
元素含有量に基づいて、上記VA族の元素に対する上記遷移金属の質量比は、1~20:1であり;
上記担体は、耐熱性無機酸化物であり;
上記耐熱性無機酸化物は、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、および、シリカ-アルミナ複合酸化物のうちの1種以上であり、上記シリカ-アルミナ複合酸化物中、酸化物として、SiO
2
の含有量が0.01~70重量%であり、Al
2
O
3
の含有量が30~99.9重量%であり;
上記酸化反応溶媒は、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、および、テトラクロロベンゼンのうちの1種以上であり;
上記酸化反応の条件は、反応温度が20~100℃であり;反応圧力が0~0.5MPaであり、反応時間が0.5~24時間であり;
上記触媒の含有量は、触媒および酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.5~30重量%であり;
上記2-アルキルアントラセンに対する酸化剤のモル比は、1:1~50:1であり;
上記2-アルキルアントラセンの合計含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび上記酸化反応溶媒の総重量に基づいて、5~50重量%である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
上記触媒は、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させ、当該含浸させた
担体を乾燥および焼成する調製方法によって得られるものであり;
上記含浸の温度は、0~100℃であ
り;
上記含浸の時間は、4~24時間であ
り;
上記乾燥の温度は、90~125℃であり;
上記乾燥の時間は、1~12時間であり;
上記焼成の温度は、300~700℃であり;
上記焼成の時間は、2~6時間であり;
上記担体、および、上記活性成分の可溶性化合物は、上記触媒中の上記担体の重量に基づいて、元素としての上記活性成分の含有量が0.01~40重量%であ
る量にて使用され;
上記活性成分の可溶性化合物は、P、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの1種以上の元素の可溶性化合物であり;
上記担体は、耐熱性無機酸化物である、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
上記触媒は、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させ、当該含浸させた担体を乾燥および焼成する調製方法によって得られるものであり;
上記含浸の温度は、20~80℃であり;
上記含浸の時間は、6~12時間であり;
上記乾燥の温度は、90~125℃であり;
上記乾燥の時間は、1~12時間であり;
上記焼成の温度は、300~700℃であり;
上記焼成の時間は、2~6時間であり;
上記担体、および、上記活性成分の可溶性化合物は、上記触媒中の上記担体の重量に基づいて、元素としての上記活性成分の含有量が0.1~30重量%である量にて使用され;
上記活性成分の可溶性化合物は、Pの可溶性化合物と、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの少なくとも1つの元素の可溶性化合物との組み合わせであり;
上記活性成分の可溶性化合物は、上記触媒中の元素としての量が、VA族の元素に対する遷移金属の質量比として1~20:1となるように使用され:
上記担体は、耐熱性無機酸化物であり;
上記耐熱性無機酸化物は、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、および、シリカ-アルミナ複合酸化物のうちの1種以上であり、上記シリカ-アルミナ複合酸化物中、酸化物として、SiO
2
の含有量が0.01~70重量%であり、Al
2
O
3
の含有量が30~99.9重量%である、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
上記2-アルキルアントラキノンを使用する過酸化水素の調製は、2-アルキルアントラキノンの加工液を、水素化、酸化、および、抽出に供することを含み、
上記水素化の前に、上記2-アルキルアントラキノンの加工液は、前処理に供され、
上記前処理の方法は、上記2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させて吸着脱硫および不純物除去を行うこと、上記吸着脱硫および不純物除去に供された上記2-アルキルアントラキノンの加工液を分離すること、および、洗浄すること、を含み、
上記2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させるための条件は、以下を含む:
温度は、10~200℃であり;
圧力は、0~3MPaであり;
接触回数は、1~5回であり、各接触の時間は、0.01~24時間であり;
上記接触は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は500~2000rpmであり;
上記吸着剤の使用量は、上記2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて、0.01~40重量%であり、
上記アルカリ溶液中のアルカリは、無機塩基であり、当該無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および、炭酸カリウムのうちの少なくとも1種であり;
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記アルカリ溶液の体積比は、0.1~10であり、
上記洗浄の条件は、洗浄された上記2-アルキルアントラキノンの加工液のpH値が中性となる条件であり、上記洗浄は、酸洗浄と水洗浄とを順に含み;
上記酸洗浄に使用される酸は、無機酸であり、当該無機酸は、硫酸、塩酸、硝酸およびリン酸のうちの少なくとも1種であり、上記酸は、酸溶液の形態で使用され;
上記酸洗浄の条件は、温度が5~100℃であり、圧力が0~1MPaである、ことを含み;
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記酸溶液の体積比は、0.1~10であり;
上記酸洗浄の回数は、1~5回であり、各酸洗浄の時間は、0.01~24時間であり;
上記酸洗浄は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は、500~2000rpmであり、
上記水洗浄の条件は、圧力が0~1MPaであり、温度が5~100℃である、ことを含み;
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記水の体積比は、0.1~10であり;
上記水洗浄の回数は、1~5回であり、各水洗浄の時間は、0.01~24時間であり;
上記水洗浄は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は、500~2000rpmであり;
上記吸着剤は、アモルファス合金であり、当該アモルファス合金は、ニッケルを含み、
上記アモルファス合金は、さらに、アルミニウム、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデン、および、コバルトのうちの1種以上の金属を含み;
上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は35~95重量%であり、他の金属の総含有量は5~65重量%である、
請求項
17~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
上記アモルファス合金は、ニッケルおよびアルミニウム、並びに、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属を含
み;
上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は35~95重量%であり、上記アルミニウムの含有量は0.5~40重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は0.1~50重量%であ
る、請求項
23に記載の使用。
【請求項25】
上記吸着剤のX線回折パターンでは、20~80°の2θ角度範囲において、45±1°に拡散ピークが現れる、請求項
23又は24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、2-アルキルアントラセンの分離方法に関する。本発明は、特に、アントラセンの反応(アルキル化など)から2-アルキルアントラセンを分離し、次いで、触媒酸化(catalytic oxidation)を行うことによる、2-アルキルアントラキノンを調製する方法、および、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
過酸化水素は、環境に優しい重要な基礎化学物質であり、産業との関連性が高い。中国は、2008年以降、過酸化水素の生産の第一の主要国となり、2015年の消費量は、10,000,000t/a(27.5%と算出される)を超える。現在、国内外における過酸化水素の製造技術は、主に、アントラキノン法である。当該技術における2-アルキルアントラキノンは、技術プロセスの「担体」として使用され、過酸化水素の品質および収率に対して直接的な影響を及ぼす。
【0003】
無水フタル酸プロセスは、2-アルキルアントラキノンを製造するための第一の方法である。しかしながら、当該方法は、深刻な汚染問題を有する。1トンの2-エチルアントラキノンを製造するために、1.76トンの無水AlCl3および4.2トンの発煙H2SO4(20%)が必要であり、無水AlCl3および発煙H2SO4の回収は困難性が高く、かつ、後処理のプロセスが複雑である。
【0004】
2-アルキルアントラキノンと、混合溶媒(無極性溶媒と極性溶媒とからなる混合溶媒)とを一定の割合で混合して加工液を調製すると、当該加工液は、再生して利用できる。過酸化水素は、水素化、酸化、抽出、乾燥、精製などのプロセスによって調製され得る。2-アルキルアントラキノンの加工液は、不純物を含むため、当該加工液は、プロセス操作および製品指標に対して、重大な影響を及ぼす。
【0005】
したがって、環境保護およびクリーンな生産の観点から、2-アルキルアントラキノンの環境に優しい生産プロセスを開発することは、非常に重要である。しかしながら、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理技術に関する報告は見出されておらず、それ故に、2-アルキルアントラキノンの加工液の新しい前処理方法の開発も、求められている。
【0006】
US4255343は、2-tert-ペンチルアントラセンの合成方法を開示する。当該合成方法は、アントラセン、トリクロロベンゼンおよびメタンスルホン酸を、特定の温度および圧力の条件下において、均一に混合する工程と、系にアルケンを導入して、アントラセンとのアルキル化反応を行う工程と、を含む。固体の生成物は、主に、残ったアントラセンおよび一連のアルキルアントラセンの生成物であり、ここには、アントラセンが42重量%含まれ、2-アルキルアントラセンが47重量%含まれ、残りには、二置換アントラセン生成物および他の副生成物が含まれる。この特許は、アントラセンのアルキル化によって2-tert-ペンチルアントラセンを調製する方法を提供するが、複雑な製造系から2-アルキルアントラセンを分離する方法を提供せず、より高い沸点/凝固点を有するアルキルアントラセン系の最も重要な分離問題を回避して、さらに、2-アルキルアントラセンのその後の適用を提供しない。
【0007】
TW200623958は、イオン性の溶液を使用することによってアントラセンアルキル化を触媒する方法を開示し、アルキル化反応の触媒系は、60~93.7重量%のイオン性の溶液、および、1~8重量%の塩化アルミニウムを含有する混合物である。実施例では、溶媒としてBmimPF6が用いられ、アントラセンおよびtert-ブチルクロライドのアルキル化反応を70℃で触媒するために、適量のAlCl3が添加され、生成物2,6-tert-ブチルアントラセンの収率は、90%である。
【0008】
Perezromeroらは、H2O2を用いてアントラセンまたは2-アルキルアントラセンを酸化することによって、対応するアントラキノンを調製することを提案した。触媒は、Cuを含むTpxCu(NCMe)であり、80℃で2時間の反応によって、95%のアントラセン変換率、および、98%のアントラキノン選択性が得られる。
【0009】
US3,953,482は、H2O2を用いて2-アルキルアントラセンを酸化することによって2-アルキルアントラキノンを調製するためのプロセスを開示している。溶媒として脂肪アルコールが用いられ、触媒として濃塩酸が用いられ、酸化剤としてH2O2(60%)が用いられ、反応は、常圧下、40~100℃にて60分間行われる。より良好な反応効果を得ることができる。2-ペンチルアントラセンの変換率は94%であり、2-ペンチルアントラキノンの選択率は97%と高い。しかしながら、当該特許は、触媒として濃塩酸を使用し、当該濃塩酸は、腐食性が強く、反応後に発生する塩素含有廃水は、処理することができず、このことは、環境保護に苦難をもたらす。さらに、濃塩酸の使用は、アントラセン環の塩素化をもたらす傾向があり、分離することが困難なアルキルアントラセンクロライド生成物の形成をもたらし、生成物のより高い塩素含有量をもたらす。当該特許は、2-アルキルアントラセンの酸化方法を提案する。しかしながら、2-アルキルアントラセンは、自然界に存在するリソースから分離することができず、自主的に調製するしかない。当該特許は、また、2-アルキルアントラセンを得るための効率的な方法を提供せず、同様に、特許の適用を制限する。
【0010】
その結果、アントラセンを供給原料として使用して2-アルキルアントラキノンを調製するためのプロセス技術の全セットについての報告は、入手できない。本発明の発明者は、2-アルキルアントラキノンの加工液を用いて過酸化水素を調製するための水素化プロセスでは、一般的に貴金属パラジウム触媒が用いられ、固定床の形態の触媒水素化プロセスでは、触媒中のパラジウムの担持量が比較的多いため、触媒の活性および安定性が良好であることを見出した。しかしながら、スラリー床または流動床の形態の触媒水素化の場合には、使用する微粉末触媒中のパラジウムの担持量を著しく低減することができる。しかしながら、触媒は、容易に化学的に失活し、製造プロセスの連続的な安定性、および、生成物の品質は、保証され得ない。本発明の発明者は、アルキルアントラキノン生成物および混合溶媒の供給源および純度の影響により、最終的に調製される2-アルキルアントラキノンの加工液における硫黄含有量は略1~6mg/kgであることを、研究によって見出した。これらの硫化物は、加工液の水素化プロセスにおける貴金属パラジウム触媒の失活、および、それによる触媒の有効寿命の減少を招き、使用コストを増大させるだけではなく、プロセス効率へ重大な影響を与える。したがって、プロセス全体の効率を改善し、かつ、反応環境を浄化するために、2-アルキルアントラキノンの加工液は、脱硫および不純物除去のために、前処理される必要がある。
【0011】
現在、液相の脱硫技術は、水素化脱硫技術と非水素化脱硫技術に分けることができ、水素化脱硫技術は、水素が2-アルキルアントラキノンと反応し得るため、2-アルキルアントラキノンの加工液の脱硫処理プロセスには適していない。非水素化脱硫技術には、酸化脱硫、抽出脱硫、アルキル化脱硫、および、吸着脱硫などが含まれる。吸着脱硫技術は、簡単な操作、穏やかな条件、少ない設備投資、良好な脱硫効果、不純物の導入がない等の利点を有し、特に2-アルキルアントラキノンの加工液の脱硫プロセスに適している。
【0012】
本発明者らの研究以前には、従来技術において、2-アルキルアントラキノンの加工液の吸着脱硫に関する報告はない。従って、2-アルキルアントラキノンの加工液のための吸着剤としてアモルファス合金を使用することについて、報告されていない。アモルファス合金は、燃料油から硫化物を吸着除去することが報告されているが、吸着のプロセスおよび条件は、吸着脱硫プロセスが水と接触することを防止することを必要とする。
【0013】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、従来技術に基づくアントラセンの反応から分離された2-アルキルアントラセンの触媒酸化によって、2-アルキルアントラキノンを調製するための新たな方法、すなわち、供給原料としてのアントラセンの反応からのアルキルアントラセンを含む反応生成物の調製、2-アルキルアントラセンを製造するための反応生成物の分離、および、2-アルキルアントラキノンを製造するための2-アルキルアントラセンの酸化反応、を含む一体化された方法、を提供することである。
【0014】
加えて、本発明は、また、2-アルキルアントラキノンの加工液の新規な前処理方法を提供することを目的とし、当該前処理方法は、加工液の不純物含有量および硫黄含有量を明らかに減少させることができる。
【0015】
さらに、本発明の目的は、アントラセンのアルキル化から得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による2-アルキルアントラキノンを調製するための、および、従来技術に基づいた2-アルキルアントラキノンを用いた過酸化水素を調製するための、新規な方法、すなわち、供給源としてのアントラセンのアルキル化反応および分離による2-アルキルアントラセンの調製、2-アルキルアントラセンの酸化反応による2-アルキルアントラキノンの調製、および、2-アルキルアントラキノンを用いた過酸化水素の調製、を含む一体化された方法、を提供することである。
【0016】
一態様において、本発明は、アントラセンのアルキル化によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法を提供し、当該調製方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
(1)アルキル化条件下で、アルキル化反応溶媒および触媒の存在下で、アントラセンとアルキル化試薬とを接触させてアルキル化反応を行い、アルキルアントラセンを含む反応生成物を生成する工程であって、上記アルキル化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせである、工程;
(2)工程(1)にて得られたアルキルアントラセンを含む反応生成物を分離する工程であって、当該分離の方法は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離を含む、工程;
(3)酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンと酸化剤とを接触させて酸化反応を行う工程であって、上記酸化剤は、過酸化水素であり、上記触媒は、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、遷移金属の酸素含有化合物、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上である、工程。
【0017】
本発明によって供給されるアントラセンのアルキル化によって得られる2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンを調製するための全ての技術的経路は、合理的であり、かつ、実行可能であり、環境に優しい2-アルキルアントラキノンの調製のための新しい方向性を開く。本発明が提供する方法では、組み合わされた溶媒が、アルキル化反応プロセスにおける反応溶媒として用いられ、その結果、当該反応溶媒の特性を効果的に制御および調節することができ、溶媒和効果が発揮され、アントラセンの溶解性が改善され、アルキル化反応が促進される。本発明が提供する方法では、アントラセン-アルキルアントラセン生成物の分離プロセスにおける操作の困難性が、溶融結晶-蒸留カップリング分離技術によって著しく低減され得、中間目的生成物である2-アルキルアントラセンの純度および全収率が改善される。
【0018】
本発明が提供する方法では、構築された2-アルキルアントラセンの触媒酸化システムは、簡単かつ効率的であり、触媒の分離および回収における難易度は低く、腐食性は無く、設備投資および酸化廃液の後処理費用は低減され、かつ、2-アルキルアントラセンの変換が効率的に実現され得る。好ましくは、本発明が提供する方法では、2-アルキルアントラセンの酸化によるアントラキノンの調製のための反応プロセスにおいて、組み合わされた溶媒システムが用いられ、その結果、溶媒の特性が調節されることによって2-アルキルアントラセンの酸化反応が強化され得、反応の選択性、および、生成物の収率が向上され得る。加えて、本発明が提供する方法はまた、プロセスの簡略化、高効率化、および、低汚染という利点を有する。
【0019】
別の態様において、本発明は、アントラセンの反応からの分離によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法を提供し、当該調製方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
(1)アントラセンからアルキルアントラセンを含む反応生成物を調製する工程;
(2)工程(1)にて得られたアルキルアントラセンを含む反応生成物を分離する工程であって、当該分離の方法は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離を含む、工程;
(3)酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンと酸化剤とを接触させて酸化反応を行う工程であって、上記酸化剤は、tert-ブチルヒドロペルオキシドであり、上記触媒は、担体、および、当該担体上の活性成分を含み、上記活性成分は、VA族の元素、および、遷移金属のうちの1つ以上である、工程。
【0020】
当該態様において、本発明によって供給されるアントラセンの反応からの分離によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製のための全ての技術的経路は、合理的であり、かつ、実行可能であり、環境に優しい2-アルキルアントラキノンの調製のための新しい方向性を開く。本発明が提供する方法では、アントラセン-アルキルアントラセン生成物の分離プロセスにおける操作の困難性が、溶融結晶-蒸留カップリング分離技術によって著しく低減され得、中間目的生成物である2-アルキルアントラセンの純度および全収率が改善される。本発明が提供する方法では、構築された2-アルキルアントラセンの触媒酸化システムは、供給原料の変換効率が高く、選択性が良好であり、触媒の分離および回収における難易度は低く、腐食性(stream corrosivity)は無く、設備投資は低減される。加えて、本発明が提供する方法はまた、プロセスの簡略化、高効率化、および、低汚染という利点を有する。
【0021】
別の態様において、本発明は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理方法を提供し、当該前処理方法は、上記2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させて吸着脱硫および不純物除去を行うこと、上記吸着脱硫および不純物除去に供された上記2-アルキルアントラキノンの加工液を分離すること、および、洗浄すること、を含み、上記吸着剤は、アモルファス合金であり、当該アモルファス合金は、ニッケルを含む。
【0022】
好ましくは、上記アモルファス合金は、さらに、アルミニウム、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデン、および、コバルトのうちの1種以上の金属を含む。
【0023】
好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は35~95重量%であり、他の金属の総含有量は5~65重量%であり、より好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、他の金属の総含有量は10~50重量%である。
【0024】
好ましくは、上記アモルファス合金は、ニッケルおよびアルミニウム、並びに、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属を含み、より好ましくは、上記アモルファス合金は、クロムと鉄との組み合わせ、クロムと銅との組み合わせ、クロムとモリブデンとの組み合わせ、および、クロムとコバルトとの組み合わせのうちの少なくとも1つの組み合わせを含み;上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は35~95重量%であり、上記アルミニウムの含有量は0.5~40重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は0.1~50重量%であり、より好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、上記アルミニウムの含有量は1~30重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は1~40重量%であり、更に好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、上記アルミニウムの含有量は1~15重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は5~40重量%である。
【0025】
好ましくは、2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させるための条件は、以下を含む:温度は、10~200℃であり、より好ましくは25~170℃であり;圧力は、0~3MPaであり、より好ましくは0~2MPaであり;より好ましくは、接触回数は、1~5回であり、より好ましくは2~4回であり、各接触の時間は、0.01~24時間であり、好ましくは0.5~8時間であり;更に好ましくは、上記接触は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は500~2000rpmであり、より好ましくは800~1200rpmである。
【0026】
更に、本発明はまた、過酸化水素の調製方法を提供し、当該調製方法は、2-アルキルアントラキノンの加工液を、水素化、酸化、および、抽出に供することを含み、当該調製方法はまた、新たに調製された2-アルキルアントラキノンの加工液を前処理することを含み、当該前処理は、本発明によって提供される2-アルキルアントラキノンの加工液を前処理する方法である。
【0027】
本発明によって提供される2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理方法では、2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させて吸着脱硫および不純物除去を行う。例えば、加工液、アルカリ溶液、および、吸着剤を同時に接触させることによって、アルカリ溶液を用いた洗浄、および、吸着脱硫を行う。ここで、上記吸着剤は、ニッケルに基づくアモルファス合金である。ニッケルに基づくアモルファス合金は、アルカリ溶液中において優れた安定性を有し、かつ、優れた脱硫活性を有する。それ故に、本発明は、2-アルキルアントラキノンの加工液のアルカリ洗浄と吸着脱硫とのカップリングを創造的に提供し、その結果、一連の前処理プロセスは短縮され得、プロセスの効率は向上され得、不純物除去および硫黄含有量の低減の効果は向上され得る。これによって、2-アルキルアントラキノンの加工液を過酸化水素の調製に用いると、水素化プロセスにおける貴金属パラジウム触媒の被毒および不活性化の問題が効果的に解決され、このことは、良好な工業的用途の見通しを有する。
【0028】
本発明はまた、以下のような、グループDの、一連の技術的解決策を提供する。
【0029】
1.アントラセンアルキル化反応の反応生成物から2-アルキルアントラセンを分離する工程であって、上記アントラセンアルキル化反応は、アルキル化反応溶媒および触媒の存在下における、アルキル化条件下でのアントラセンとアルキル化試薬との反応である、工程、を含み、
上記アントラセンアルキル化反応の反応生成物は、アントラセンと、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物と、を含み、
好ましくは、上記アルキルは、1つまたは複数の、好ましくは1つの、C4-C7アルキル、例えばC4-C6アルキルであり、
特に好ましくは、上記アルキルは、直鎖状または分枝状のブチル、直鎖状または分枝状のペンチル、直鎖状または分枝状のヘキシル、および、直鎖状または分枝状のヘプチルから選択され、
最も好ましくは、上記アルキルは、直鎖状または分枝状のブチル、直鎖状または分枝状のペンチル、直鎖状または分枝状のヘキシル、および、直鎖状または分枝状のヘプチルのうちの1つである、2-アルキルアントラセンの調製方法。
【0030】
2.上記分離は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離を含む、技術的解決策D1の方法。
【0031】
3.上記分離は、以下を含む、技術的解決策D1またはD2の方法:
(a)上記アントラセンアルキル化反応の反応生成物を溶融状態に加熱すること、冷却および結晶化すること、アントラセン結晶、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを得るために分離すること、発汗(sweat)させるために上記アントラセン結晶を加熱すること、および、発汗液とアントラセン結晶とを分離すること;
(b)1工程の蒸留、または、多工程の蒸留によって、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物から、2-アルキルアントラセンを分離すること。
【0032】
4.工程(a)において、
上記溶融温度は、200~270℃であり、好ましくは210~250℃であり;
上記冷却および結晶化のための温度は、180~210℃であり、上記冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.1~10℃/時間であり、上記冷却および結晶化のための時間は、1~5時間であり;
好ましくは、上記冷却および結晶化のための温度は、190~200℃であり、上記冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.5~5℃/時間であり、上記冷却および結晶化のための時間は、1.5~4時間であり;
上記アントラセン結晶を発汗させるための温度上昇速度は、0.1~8℃/時間であり、好ましくは0.2~4℃/時間であり;
温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、上記アントラセン結晶の溶融温度よりも低い温度であり、好ましくは、温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、210℃以下の温度であり、より好ましくは、上記温度を、上記冷却および結晶化のための温度よりも5~15℃高い温度にまで上昇させ、温度が210℃よりも低い時に上記発汗を停止させ;
さらに好ましくは、上記発汗を停止させる温度は、190~210℃であり、最も好ましくは195~205℃であり;
上記発汗量は、上記アントラセン結晶の5~40重量%であり、好ましくは10~30重量%である、技術的解決策D3の方法。
【0033】
5.上記工程(a)の冷却および結晶化には、上記溶融混合物の量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.2~5重量%の量の、結晶種としてのアントラセンを添加する工程が、さらに含まれる、技術的解決策D3またはD4の方法。
【0034】
6.上記発汗液を再利用して上記溶融結晶化の工程へ戻し、アルキルアントラセンを含む上記反応生成物と共に上記溶融結晶化を行う、技術的解決策D3~D5のいずれか1つの方法。
【0035】
7.工程(b)において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物が、2種類の物質の混合物、または、3種類以上の物質の混合物であり、2-アルキルアントラセンの沸点が、最低または最高である場合に、上記2-アルキルアントラセンの1工程の蒸留分離が行われる、技術的解決策D3の方法。
【0036】
8.工程(b)において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物が、3種類以上の物質の混合物であり、上記2-アルキルアントラセンの沸点が、上記混合物中の沸点が最も高い物質の沸点と、上記混合物中の沸点が最も低い物質の沸点との間である場合に、多工程の蒸留が行われ、
上記多工程の蒸留は、以下を含む、技術的解決策D3の方法:
モード1:
2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを、第1の蒸留分離に供して、軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cj2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液を第2の蒸留に供して、軽質成分Cj3-アントラセンを含む蒸留液、および、目的生成物Ci-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンは、複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j1は、1<j1<i+1であり;
上記重質成分Cj2-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j2は、i<j2<41であり;
上記軽質成分Cj3-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j3は、1<j3<iである;または、
モード2:
2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを、第3の蒸留に供して、軽質成分Cm1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を第4の蒸留に供して、目的生成物Ci-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm3-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cm1-アントラセンは、アルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m1は、1<m1<iであり;
上記重質成分Cm2-アントラセンは、複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m2は、i-1<m2<41であり;
上記重質成分Cm3-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m3は、i<m3<41であり;
ここで、j1、j2、j3、m1、m2およびm3は、整数であり、目的生成物Ci-アントラセン中のiは、アルキル側鎖の総炭素数を表し、i=4~7の整数である。
【0037】
9.第1の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力(the top pressure of the distillation column)は0.01~20KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数(the theoretical plate number)は20~90であり、塔頂還流比(the top reflux ratio)は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は210~340℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は220~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は260~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3であり;
第2の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は200~310℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は220~305℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は220~300℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5であり;
第3の真空蒸留の条件は、以下を含み:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は210~340℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は220~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は260~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3であり;
第4の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策D8の方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は200~310℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は220~305℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPa(絶対圧力)であり、当該塔の底部の温度は220~300℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5である。
【0038】
10.上記反応生成物は、さらにアルキル化反応溶媒を含み;
上記方法は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離の前に、上記アルキル化反応溶媒を分離する工程をさらに含み;
上記アルキル化反応溶媒の分離は、上記アントラセンアルキル化反応の反応生成物を蒸留塔内における蒸留に供して、アルキル化反応溶媒を含む蒸留液、アントラセンを含むボトム生成物、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物を生成させることを含み;
蒸留のための好ましい条件は、蒸留塔の底部の温度が100~300℃であり、好ましくは150~200℃であり、蒸留塔の頂部圧力が常圧である、技術的解決策D1~D9のいずれか1つの方法。
【0039】
11.上記アルキル化試薬は、2~8個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテル物質のうちの1種以上であり、好ましくは4~7個、例えば、4~6個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテル物質のうちの1種以上であり、より好ましくは4~7個、例えば、4~6個の炭素原子を含むモノオレフィンであり;
上記アルキル化試薬に対するアントラセンのモル比は、0.2:1~20:1であり、好ましくは0.5:1~5:1である、技術的解決策D1~D10のいずれか1つの方法。
【0040】
12.アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液と、アルキル化試薬とを接触させて、上記アルキル化反応を行い;
好ましくは、上記アルキル化反応の条件は、反応温度が100~250℃であり、好ましくは120~200℃であり、反応圧力が0~1MPa(ゲージ圧)であり、好ましくは0.05~0.5MPa(ゲージ圧)であり、反応時間が0.01~48時間であり、好ましくは0.5~24時間であることを含む、技術的解決策D1~D11のいずれか1つの方法。
【0041】
13.上記アルキル化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせであり;
好ましくは、上記溶媒Aは、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、より好ましくは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり、上記溶媒Bは、N-アルキル置換アミドであり、アルキル置換基の数は、1~2であり、各アルキル置換基は、独立してC1-C4アルキルであり;
より好ましくは、上記溶媒Aは、ポリアルキル置換ベンゼンのうちの1種以上であり、上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上であり;
最も好ましくは、溶媒Aは、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり、溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミドであり;
上記溶媒Bに対する上記溶媒Aの体積比は、0.01~100であり、好ましくは0.1~10であり;
上記アントラセンの含有量は、上記アントラセンおよびアルキル化反応溶媒の総重量に基づいて、5~60重量%であり、好ましくは8~50重量%であり;
上記触媒は、固体酸触媒であり、当該固体酸触媒は、活性モレキュラーシーブおよびバインダーを含有し、上記活性モレキュラーシーブの含有量は、上記固体酸触媒の総重量に基づいて30~95重量%であり、バインダーの含有量は、上記固体酸触媒の総重量に基づいて5~70重量%であり、
上記活性モレキュラーシーブは、Xゼオライト、Yゼオライト、βゼオライト、ZSM-5ゼオライト、SAPOゼオライト、および、メソ多孔質ゼオライトのうちの1種以上であり、好ましくはYゼオライトであり、上記バインダーは、無機バインダーであり、当該無機バインダーは、耐熱性無機酸化物および/またはケイ酸塩であり、好ましくはアルミナであり;
上記触媒の含有量は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり、好ましくは0.5~30重量%である、技術的解決策D1~D12のいずれか1つの方法。
【0042】
14.上記アルキル化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒であり;
好ましくは、上記アルキル化反応溶媒は、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素の1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、より好ましくは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり;
より好ましくは、上記アルキル化反応溶媒は、ポリアルキル置換ベンゼンのうちの1種以上であり;
最も好ましくは、上記アルキル化反応溶媒は、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり;
上記アントラセンの含有量は、上記アントラセンおよびアルキル化反応溶媒の総重量に基づいて、5~60重量%であり、好ましくは8~50重量%であり;
上記触媒は、液体酸のうちの1種以上であり、好ましくはメタンスルホン酸および/またはパラトルエンスルホン酸であり;
上記触媒の含有量は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり、好ましくは0.5~30重量%である、技術的解決策D1~D12のいずれか1つの方法。
【0043】
15.2-アルキルアントラセンの触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製のための、および、2-アルキルアントラキノンを使用する過酸化水素の調製のための、技術的解決策D1~D14のいずれか1つの方法の使用であって、
上記触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製は、酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、分離によって得られた2-アルキルアントラセンと、酸化剤とを接触させて、酸化反応を行う工程であって、好ましくは、上記接触させる方法が、2-アルキルアントラセン、触媒および酸化反応溶媒を含む供給原料液と、酸化剤とを接触させて、上記酸化反応を行う方法である、工程、を含み;
上記酸化剤は、過酸化水素であり、好ましくは当該過酸化水素は、過酸化水素の水溶液の形態で使用され;
上記触媒は、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、遷移金属の酸素含有化合物、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上であり;
好ましくは、上記触媒は、IIA族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、VIII族の金属、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上であり;
より好ましくは、上記触媒は、Ca、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Ru、Co、Ni、La、および、Ceの酸素含有化合物のうちの1種以上であり;
最も好ましくは、上記触媒は、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、メタチタン酸、二酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニル、メタバナジン酸ナトリウム、クロム酸カリウム、セスキオキシドクロム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、タングステン酸ナトリウム、セスキオキシドマンガン、二酸化マンガン、二酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、セスキオキシドニッケル、硝酸ランタン、セスキオキシドランタン、および、二酸化セリウムのうちの1種以上であり;
上記酸化反応の条件は、反応温度が10~200℃であり、好ましくは20~120℃であり、反応圧力が0~1MPaであり、好ましくは0~0.5MPaであり、反応時間が0.01~48時間であり、好ましくは0.5~24時間であること、を含み;
上記酸化剤の2-アルキルアントラセンに対するモル比は、0.01:1~100:1であり、好ましくは1:1~50:1であり;
上記酸化剤の上記触媒に対するモル比は、0.01:1~100:1、好ましくは0.1:1~30:1である、使用。
【0044】
16.上記酸化反応溶媒は、20℃における誘電率が2.8超である溶媒であり、好ましくは、上記酸化反応溶媒が、20℃における誘電率が2.8超、50以下である溶媒であり、
より好ましくは、上記酸化反応溶媒は、炭素数が1~4の脂肪アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、N-アルキル置換アミド、および、N-アルキルピロリドンのうちの1種以上であり;当該アルキル置換基の数が、1~2であり、アルキル置換基の各々が、独立してC1-C4アルキルであり;
最も好ましくは、上記酸化反応溶媒は、メタノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、および、N-エチルピロリドンのうちの1種以上であり;
上記2-アルキルアントラセンの総含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である、技術的解決策D15の使用。
【0045】
17.上記酸化反応溶媒は、以下の(1)または(2)であり:
(1)20℃における誘電率が1~10である溶媒A、または、
(2)20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせ、好ましくは、上記溶媒Bに対する上記溶媒Aの体積比は、0.01~100であり、好ましくは0.05~10であり;
好ましくは、上記溶媒Aは、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、より好ましくは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり、上記溶媒Bは、N-アルキル置換アミドであり、アルキル置換基の数は、1~2であり、各アルキル置換基は、独立してC1-C4アルキルであり;
より好ましくは、上記溶媒Aは、ポリアルキル置換ベンゼンのうちの1種以上であり、上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上であり;
最も好ましくは、上記溶媒Aは、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり、上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミドであり;
上記2-アルキルアントラセンの総含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である、技術的解決策D15の使用。
【0046】
18.2-アルキルアントラセンの触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製のための、および、2-アルキルアントラキノンを使用する過酸化水素の調製のための、技術的解決策D1~D14のいずれか1つの方法の使用であって、
上記触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製は、酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、分離によって得られた2-アルキルアントラセンと、酸化剤とを接触させて、酸化反応を行う工程であって、好ましくは、上記接触させる方法が、2-アルキルアントラセン、触媒および酸化反応溶媒を含む供給原料液と、酸化剤とを接触させて、上記酸化反応を行う方法である、工程、を含み;
上記酸化剤は、tert-ブチルヒドロペルオキシドであり;
上記触媒は、担体、および、当該担体上の活性成分を含み;
好ましくは、上記活性成分の含有量は、上記触媒中の上記担体の重量、および、元素含有量に基づいて、0.01~40重量%であり、好ましくは0.1~30重量%であり;
好ましくは、上記活性成分は、VA族の元素、および、遷移金属のうちの1つ以上であり、より好ましくは、上記活性成分は、VA族の元素、並びに、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの1つ以上であり、最も好ましくは、上記活性成分は、P、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの1つ以上であり;
さらに好ましくは、上記活性成分は、VA族の元素と、遷移金属との組み合わせであり、より好ましくは、上記活性成分は、VA族の元素と、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの少なくとも1つとの組み合わせであり、最も好ましくは、上記活性成分は、Pと、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの少なくとも1つとの組み合わせであり;
任意ではあるが、好ましくは、元素含有量に基づいて、上記VA族の元素に対する上記遷移金属の質量比は、1~20:1であり;
上記担体は、耐熱性無機酸化物であり;
好ましくは、上記耐熱性無機酸化物は、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、および、シリカ-アルミナ複合酸化物のうちの1種以上であり、上記シリカ-アルミナ複合酸化物中、酸化物として、SiO2の含有量が0.01~70重量%であり、好ましくは5~40重量%であり、Al2O3の含有量が30~99.9重量%であり、好ましくは60~95重量%であり;
上記酸化反応溶媒は、C6またはそれ以上の、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカン、および、芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり、好ましくは、上記酸化反応溶媒は、ハロゲン化ベンゼンのうちの1種以上であり;
最も好ましくは、上記酸化反応溶媒は、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、および、テトラクロロベンゼンのうちの1種以上であり;
上記酸化反応の条件は、反応温度が10~150℃であり、好ましくは20~100℃であり;反応圧力が0~1MPa(ゲージ圧)であり、好ましくは0~0.5MPa(ゲージ圧)であり、反応時間が0.01~48時間であり、好ましくは0.5~24時間であり;
上記触媒の含有量は、触媒および酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり、好ましくは0.5~30重量%であり;
上記2-アルキルアントラセンに対する酸化剤のモル比は、0.01:1~100:1であり、好ましくは1:1~50:1であり;
上記2-アルキルアントラセンの合計含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび上記酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である、使用。
【0047】
19.上記触媒は、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させ、当該含浸させた支持体を乾燥および焼成する調製方法によって得られるものであり;
好ましくは、上記含浸の温度は、0~100℃であり、より好ましくは20~80℃であり;
好ましくは、上記含浸の時間は、4~24時間であり、より好ましくは6~12時間であり;
好ましくは、上記乾燥の温度は、90~125℃であり、
好ましくは、上記乾燥の時間は、1~12時間であり;
好ましくは、上記焼成の温度は、300~700℃であり、
好ましくは、上記焼成の時間は、2~6時間であり;
好ましくは、上記担体、および、上記活性成分の可溶性化合物は、上記触媒中の上記担体の重量に基づいて、元素としての上記活性成分の含有量が0.01~40重量%であり、好ましくは0.1~30重量%である量にて使用され;
好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素、および、遷移金属のうちの1つ以上の可溶性化合物であり、より好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素、並びに、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの1つ以上の可溶性化合物であり、最も好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、P、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの1種以上の元素の可溶性化合物であり;
さらに好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素の可溶性化合物と遷移金属の可溶性化合物との組み合わせであり、より好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素の可溶性化合物と、VB族、VIB族およびVIII族のうちの少なくとも1つの金属の可溶性化合物との組み合わせであり、最も好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、Pの可溶性化合物と、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの少なくとも1つの元素の可溶性化合物との組み合わせであり;
任意であるが、好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、上記触媒中の元素としての量が、VA族の元素に対する遷移金属の質量比として1~20:1となるように使用され:
好ましくは、上記担体は、耐熱性無機酸化物であり;
好ましくは、上記耐熱性無機酸化物は、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、および、シリカ-アルミナ複合酸化物のうちの1種以上であり、上記シリカ-アルミナ複合酸化物中、酸化物として、SiO2の含有量が0.01~70重量%であり、好ましくは5~40重量%であり、Al2O3の含有量が30~99.9重量%であり、好ましくは60~95重量%である、技術的解決策D18の使用。
【0048】
20.上記2-アルキルアントラキノンを使用する過酸化水素の調製は、2-アルキルアントラキノンの加工液を、水素化、酸化、および、抽出に供することを含み、
上記水素化の前に、上記2-アルキルアントラキノンの加工液は、前処理に供され、
上記前処理の方法は、上記2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させて吸着脱硫および不純物除去を行うこと、上記吸着脱硫および不純物除去に供された上記2-アルキルアントラキノンの加工液を分離すること、および、洗浄すること、を含み、
上記吸着剤は、アモルファス合金であり、当該アモルファス合金は、ニッケルを含み、
好ましくは、上記ニッケルの含有量は、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、35~95重量%であり、好ましくは50-90重量%であり;
より好ましくは、上記アモルファス合金は、さらに、アルミニウム、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデン、および、コバルトのうちの1種以上の金属を含み、
さらに好ましくは、上記2-アルキルアントラキノンの加工液は、新たに調製された2-アルキルアントラキノンの加工液である、技術的解決策D15~D19のいずれか1つの使用。
【0049】
21.上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は35~95重量%であり、他の金属の総含有量は5~65重量%であり、
より好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、他の金属の総含有量は10~50重量%である、技術的解決策D20の使用。
【0050】
22.上記アモルファス合金は、ニッケルおよびアルミニウム、並びに、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属を含み、好ましくは、上記アモルファス合金は、クロムと鉄との組み合わせ、クロムと銅との組み合わせ、クロムとモリブデンとの組み合わせ、および、クロムとコバルトとの組み合わせのうちの少なくとも1つの組み合わせを含み;
上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は35~95重量%であり、上記アルミニウムの含有量は0.5~40重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は0.1~50重量%であり;
好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、上記アルミニウムの含有量は1~30重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は1~40重量%であり;
より好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、上記アルミニウムの含有量は1~15重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は5~40重量%である、技術的解決策D20の使用。
【0051】
23.上記吸着剤のX線回折パターンでは、20~80°の2θ角度範囲において、45±1°に拡散ピークが現れる、技術的解決策D19~D21のいずれか1つの使用。
【0052】
24.上記2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させるための条件は、以下を含む、技術的解決策D19~D21のいずれか1つの使用:
温度は、10~200℃であり、好ましくは25~170℃であり、
圧力は、0~3MPa(ゲージ圧)であり、好ましくは0~2MPa(ゲージ圧)であり;
好ましくは、接触回数は、1~5回であり、より好ましくは2~4回であり、各接触の時間は、0.01~24時間であり、より好ましくは0.5~8時間であり;
好ましくは、上記接触は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は500~2000rpmであり、より好ましくは800~1200rpmであり;
上記吸着剤の使用量は、上記2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて、0.01~40重量%であり、好ましくは1~10重量%であり、
上記アルカリ溶液中のアルカリは、無機塩基であり、当該無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および、炭酸カリウムのうちの少なくとも1種であり、好ましくは水酸化ナトリウムであり、上記アルカリ溶液は、好ましくはアルカリ水溶液であり;
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記アルカリ溶液の体積比は、0.1~10であり、好ましくは0.5~2である。
【0053】
25.上記洗浄の条件は、洗浄された上記2-アルキルアントラキノンの加工液のpH値が中性となる条件であり、好ましくは、上記洗浄は、酸洗浄と水洗浄とを順に含み;
上記酸洗浄に使用される酸は、無機酸であり、当該無機酸は、硫酸、塩酸、硝酸およびリン酸のうちの少なくとも1種であり、好ましくはリン酸であり、上記酸は、酸溶液、好ましくは酸水溶液の形態で使用され;
上記酸洗浄の条件は、温度が5~100℃であり、好ましくは20~60℃であり、圧力が0~1MPa(ゲージ圧)であり、好ましくは0~0.5MPa(ゲージ圧)である、ことを含み;
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記酸溶液の体積比は、0.1~10であり、好ましくは0.5~2であり;
好ましくは、上記酸洗浄の回数は、1~5回であり、好ましくは2~4回であり、各酸洗浄の時間は、0.01~24時間であり、好ましくは0.5~8時間であり;
好ましくは、上記酸洗浄は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は、500~2000rpmであり、より好ましくは800~1200rpmであり、
上記水洗浄の条件は、圧力が0~1MPa(ゲージ圧)であり、好ましくは0~0.5MPa(ゲージ圧)であり、温度が5~100℃であり、好ましくは20~60℃である、ことを含み;
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記水の体積比は、0.1~10であり、好ましくは0.5~2であり;
好ましくは、上記水洗浄の回数は、1~5回であり、好ましくは2~4回であり、各水洗浄の時間は、0.01~24時間であり、好ましくは0.5~8時間であり;
好ましくは、上記水洗浄は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は、500~2000rpmであり、より好ましくは800~1200rpmである、技術的解決策D19~D24のいずれか1つの使用。
【0054】
本発明はまた、以下のような、グループAの、一連の技術的解決策を提供する。
【0055】
1.アントラセンのアルキル化によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法であって、当該調製方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
(1)アルキル化条件下で、アルキル化反応溶媒および触媒の存在下で、アントラセンとアルキル化試薬とを接触させてアルキル化反応を行い、アルキルアントラセンを含む反応生成物を生成する工程であって、上記アルキル化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせである、工程;
(2)工程(1)にて得られたアルキルアントラセンを含む反応生成物を分離する工程であって、当該分離の方法は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離を含む、工程;
(3)酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンと酸化剤とを接触させて酸化反応を行う工程であって、上記酸化剤は、過酸化水素であり、上記触媒は、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、遷移金属の酸素含有化合物、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上である、工程。
【0056】
2.工程(1)において、
上記溶媒Aは、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、より好ましくは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり;
より好ましくは、上記溶媒Aは、ポリアルキル置換ベンゼンのうちの1種以上であり、最も好ましくは、上記溶媒Aは、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,3,4,5-テトラメチルベンゼン、1,3,5,6-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり;
上記溶媒Bは、N-アルキル置換アミドであり、アルキル置換基の数は、1~2であり、各アルキル置換基は、独立してC1-C4アルキルであり;
より好ましくは、上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上であり、最も好ましくは、上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミドである、技術的解決策A1の調製方法。
【0057】
3.工程(1)において、上記溶媒Bに対する上記溶媒Aの体積比は、0.01~100であり、好ましくは0.1~10である、技術的解決策A1またはA2の調製方法。
【0058】
4.工程(1)において、上記アントラセンの含有量は、上記アントラセンおよびアルキル化反応溶媒の総重量に基づいて、5~60重量%であり、好ましくは8~50重量%である、技術的解決策A1~A3のいずれか1つの調製方法。
【0059】
5.工程(1)において、上記アルキル化試薬は、2~8個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテル物質のうちの1種以上であり、好ましくは4~6個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテル物質のうちの1種以上であり、より好ましくは4~6個の炭素原子を含むモノオレフィンである、技術的解決策A1の調製方法。
【0060】
6.工程(1)において、上記アルキル化試薬に対するアントラセンのモル比は、0.2:1~20:1であり、好ましくは0.5:1~5:1である、技術的解決策A1またはA5の調製方法。
【0061】
7.工程(1)において、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液と、アルキル化試薬とを接触させて、上記アルキル化反応を行う、技術的解決策A1の調製方法。
【0062】
8.工程(1)において、上記触媒は、固体酸触媒であり、当該固体酸触媒は、活性モレキュラーシーブおよびバインダーを含み、上記活性モレキュラーシーブの含有量は、上記固体酸触媒の総重量に基づいて30~95重量%であり、上記バインダーの含有量は、上記固体酸触媒の総重量に基づいて5~70重量%であり、
上記活性モレキュラーシーブは、Xゼオライト、Yゼオライト、βゼオライト、ZSM-5ゼオライト、SAPOゼオライト、および、メソ多孔質ゼオライトのうちの1種以上であり、好ましくはYゼオライトであり、上記バインダーは、無機バインダーであり、当該無機バインダーは、耐熱性無機酸化物および/またはケイ酸塩であり、好ましくはアルミナであり;
上記触媒の含有量は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり、好ましくは0.5~30重量%である、技術的解決策A7の調製方法。
【0063】
9.工程(1)において、上記アルキル化反応の条件は、反応温度が100~250℃であり、好ましくは120~200℃であり、反応圧力が0~1MPaであり、好ましくは0.05~0.5MPaであり、反応時間が0.01~48時間であり、好ましくは0.5~24時間であることを含む、技術的解決策A1の調製方法。
【0064】
10.上記工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物は、アントラセンと、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物と、を含み、
上記工程(2)は、以下を含む、技術的解決策A1~A9のいずれか1つの調製方法:
(2-2)工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物を溶融状態に加熱すること、冷却および結晶化すること、アントラセン結晶、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物の流れを得るために分離すること、発汗させるために上記アントラセン結晶を加熱すること、および、発汗液とアントラセン結晶とを分離すること;
(2-3)1工程の蒸留、または、多工程の蒸留によって、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物から、2-アルキルアントラセンを分離すること。
【0065】
11.工程(2-2)において、上記溶融温度は、200~270℃であり、好ましくは210~250℃である、技術的解決策A10の調製方法。
【0066】
12.工程(2-2)において、
上記冷却および結晶化のための温度は、180~210℃であり、上記冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.1~10℃/時間であり、上記冷却および結晶化のための時間は、1~5時間であり;
好ましくは、上記冷却および結晶化のための温度は、190~200℃であり、上記冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.5~5℃/時間であり、上記冷却および結晶化のための時間は、1.5~4時間である、技術的解決策A10またはA11の調製方法。
【0067】
13.工程(2-2)において、上記冷却および結晶化には、上記溶融混合物の量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.2~5重量%の量の、結晶種(crystal seed)としてのアントラセンを添加する工程が、さらに含まれる、技術的解決策A12の調製方法。
【0068】
14.工程(2-2)において、
上記アントラセン結晶を発汗させるための温度上昇速度は、0.1~8℃/時間であり、好ましくは0.2~4℃/時間であり;
温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、上記アントラセン結晶の溶融温度よりも低い温度であり、好ましくは、温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、210℃以下の温度であり、より好ましくは、上記温度を、冷却結晶化温度よりも5~15℃高い温度にまで上昇させ、温度が210℃よりも低い時に上記発汗を停止させ;
さらに好ましくは、上記発汗を停止させる温度は、190~210℃であり、最も好ましくは195~205℃である、技術的解決策A10またはA11の調製方法。
【0069】
15.上記発汗量は、上記アントラセン結晶の5~40重量%であり、好ましくは10~30重量%である、技術的解決策A14の調製方法。
【0070】
16.上記方法は、上記発汗液を再利用して上記溶融結晶化の工程へ戻し、アルキルアントラセンを含む上記反応生成物と共に上記溶融結晶化を行うこと、を更に含む、技術的解決策A14の調製方法。
【0071】
17.工程(2-3)において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物が、2種類の物質の混合物、または、3種類以上の物質の混合物であり、2-アルキルアントラセンの沸点が、最低または最高である場合に、上記2-アルキルアントラセンの1工程の蒸留分離が行われる、技術的解決策A10の調製方法。
【0072】
18.工程(2-3)において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物が、3種類以上の物質の混合物であり、上記2-アルキルアントラセンの沸点が、上記混合物中の沸点が最も高い物質の沸点と、上記混合物中の沸点が最も低い物質の沸点との間である場合に、多工程の蒸留が行われ、
上記多工程の蒸留は、以下を含む、技術的解決策A10の調製方法:
モード1:
2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを、第1の蒸留分離に供して、軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cj2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液を第2の蒸留に供して、軽質成分Cj3-アントラセンを含む蒸留液、および、目的生成物Ci-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数j1が1<j1<i+1の整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
上記重質成分Cj2-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数j2がi<j2<41の整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
上記軽質成分Cj3-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数j3が1<j3<iの整数であるアルキルアントラセン生成物であり;または、
モード2:
2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを、第3の蒸留に供して、軽質成分Cm1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を第4の蒸留に供して、目的生成物Ci-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm3-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cm1-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数m1が1<m1<iの整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
上記重質成分Cm2-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数m2がi-1<m2<41の整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
上記Cm3-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数m3がi<m3<41の整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
ここで、目的生成物Ci-アントラセンにおいて、iは、アルキル側鎖の総炭素数を表し、i=4~7の整数である。
【0073】
19.上記多工程の真空蒸留では、モード1において、第1の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策A18の調製方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は210~340℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3である。
【0074】
20.上記多工程の真空蒸留では、モード1において、第2の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策A18またはA19の調製方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は200~310℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~300℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5である。
【0075】
21.上記多工程の真空蒸留では、モード2において、第3の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策A18の調製方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は210~340℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3である。
【0076】
22.上記多工程の真空蒸留では、モード2において、第4の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策A18またはA21の調製方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は200~310℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~300℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5である。
【0077】
23.工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物は、さらにアルキル化反応溶媒を含み;
工程(2)は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離の前に、上記アルキル化反応溶媒を分離する工程(2-1)をさらに含み;
工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物を蒸留塔内における蒸留に供して、アルキル化反応溶媒を含む蒸留液、アントラセンを含むボトム生成物、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物を生成させることを含む、技術的解決策A10~A22のいずれか1つの調製方法。
【0078】
24.工程(2-1)において、蒸留の条件は、塔の底部の蒸留温度が100~300℃であり、好ましくは150~200℃であり、蒸留塔の頂部圧力が常圧である、ことを含む、技術的解決策A23の調製方法。
【0079】
25.工程(3)において、上記触媒は、IIA族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、VIII族の金属、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上である、技術的解決策A1の調製方法。
【0080】
26.上記触媒は、Ca、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Ru、Co、Ni、La、および、Ceの酸素含有化合物のうちの1種以上である、技術的解決策A25の調製方法。
【0081】
27.上記触媒は、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、メタチタン酸、二酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニル、メタバナジン酸ナトリウム、クロム酸カリウム、セスキオキシドクロム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、タングステン酸ナトリウム、セスキオキシドマンガン、二酸化マンガン、二酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、セスキオキシドニッケル、硝酸ランタン、セスキオキシドランタン、および、二酸化セリウムのうちの1種以上である、技術的解決策A26の調製方法。
【0082】
28.上記接触させる方法は、2-アルキルアントラセン、触媒および酸化反応溶媒を含む供給原料液と、酸化剤とを接触させて、上記酸化反応を行う方法である、技術的解決策A1の調製方法。
【0083】
29.上記酸化剤の上記触媒に対するモル比は、0.01:1~100:1であり、好ましくは0.1:1~30:1である、技術的解決策A1、A25~A28のいずれか1つの調製方法。
【0084】
30.上記酸化反応の条件は、反応温度が10~200℃であり、好ましくは20~120℃であり、反応圧力が0~1MPaであり、好ましくは0~0.5MPaであり、反応時間が0.01~48時間であり、好ましくは0.5~24時間であること、を含む、技術的解決策A1、A25~A28のいずれか1つの調製方法。
【0085】
31.上記過酸化水素は、過酸化水素の水溶液の形態で使用され;
上記酸化剤の2-アルキルアントラセンに対するモル比は、0.01:1~100:1であり、好ましくは1:1~50:1である、技術的解決策A1、A25~A28のいずれか1つの調製方法。
【0086】
32.上記酸化反応溶媒は、20℃における誘電率が2.8超である溶媒であり、好ましくは、上記酸化反応溶媒は、20℃における誘電率が2.8超、50以下である溶媒であり、
より好ましくは、上記酸化反応溶媒は、炭素数が1~4の脂肪アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、N-アルキル置換アミド、および、N-アルキルピロリドンのうちの1種以上であり;当該アルキル置換基の数が、1~2であり、アルキル置換基の各々が、独立してC1-C4アルキルであり;
最も好ましくは、上記酸化反応溶媒は、メタノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、および、N-エチルピロリドンのうちの1種以上であり;
上記2-アルキルアントラセンの総含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である、技術的解決策A1、A25~A28のいずれか1つの調製方法。
【0087】
33.上記酸化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせであり、
上記溶媒Aは、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、より好ましくは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり、
より好ましくは、上記溶媒Aは、ポリアルキル置換ベンゼンのうちの1種以上であり、最も好ましくは、上記溶媒Aは、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,3,4,5-テトラメチルベンゼン、1,3,5,6-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり、
上記溶媒Bは、N-アルキル置換アミドであり、アルキル置換基の数は、1~2であり、各アルキル置換基は、独立してC1-C4アルキルであり;
より好ましくは、上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上であり、最も好ましくは、上記溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミドであり;
上記2-アルキルアントラセンの総含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である、技術的解決策A1、A25~A28のいずれか1つの調製方法。
【0088】
34.上記溶媒Bに対する上記溶媒Aの体積比は、0.01~100であり、好ましくは0.05~10である、技術的解決策A33の調製方法。
【0089】
本発明は更に、以下のような、グループBの、一連の技術的解決策を提供する。
【0090】
1.アントラセンの反応からの分離によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法であって、当該調製方法は、以下の工程を含む:
(1)アントラセンからアルキルアントラセンを含む反応生成物を調製する工程;
(2)工程(1)にて得られたアルキルアントラセンを含む反応生成物を分離する工程であって、当該分離の方法は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離を含む、工程;
(3)酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンと酸化剤とを接触させて酸化反応を行う工程であって、上記酸化剤は、tert-ブチルヒドロペルオキシドであり、上記触媒は、担体、および、当該担体上の活性成分を含み、上記活性成分は、VA族の元素、および、遷移金属のうちの1つ以上である、工程。
【0091】
2.工程(1)において、上記アントラセンからアルキルアントラセンを含む反応生成物を調製する工程は、酸化条件下で、アルキル化反応溶媒および触媒の存在下で、アントラセンとアルキル化試薬とを接触させて、アルキル化反応を行う工程を含み、
好ましくは、上記接触させる方法は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液と、アルキル化試薬とを接触させて、上記アルキル化反応を行う方法である、技術的解決策B1の調製方法。
【0092】
3.上記アルキル化試薬は、2~8個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテル物質のうちの1種以上であり、好ましくは4~6個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテル物質のうちの1種以上であり、より好ましくは4~6個の炭素原子を含むモノオレフィンである、技術的解決策B2の調製方法。
【0093】
4.工程(1)において、上記アルキル化試薬に対するアントラセンのモル比は、0.2:1~20:1であり、好ましくは0.5:1~5:1である、技術的解決策B2またはB3の調製方法。
【0094】
5.工程(1)において、上記アルキル化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が1~10である溶媒であり;
上記アルキル化反応溶媒は、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、より好ましくは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり、
より好ましくは、上記アルキル化反応溶媒は、ポリアルキル置換ベンゼンのうちの1種以上であり、最も好ましくは、アルキル化反応溶媒は、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,3,4,5-テトラメチルベンゼン、1,3,5,6-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり;
上記アントラセンの含有量は、上記アントラセンおよびアルキル化反応溶媒の総重量に基づいて、5~60重量%であり、好ましくは8~50重量%である、技術的解決策B2の調製方法。
【0095】
6.工程(1)において、上記アルキル化反応の条件は、反応温度が100~250℃であり、好ましくは120~200℃であり、反応圧力が0~1MPaであり、好ましくは0.05~0.5MPaであり、反応時間が0.01~48時間であり、好ましくは0.5~24時間であることを含む、技術的解決策B2~B5のいずれか1つの調製方法。
【0096】
7.工程(1)において、上記触媒は、液体酸のうちの1種以上であり、好ましくはメタンスルホン酸および/またはパラトルエンスルホン酸であり;
上記触媒の含有量は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり、好ましくは0.5~30重量%である、技術的解決策B2~B5のいずれか1つの調製方法。
【0097】
8.上記工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物は、アントラセンと、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物と、を含み、
上記工程(2)は、以下を含む、技術的解決策B1~B7のいずれか1つの調製方法:
(2-2)工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物を溶融状態に加熱すること、冷却および結晶化すること、アントラセン結晶、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物の流れを得るために分離すること、発汗させるために上記アントラセン結晶を加熱すること、および、発汗液とアントラセン結晶とを分離すること;
(2-3)1工程の蒸留、または、多工程の蒸留によって、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物から、2-アルキルアントラセンを分離すること。
【0098】
9.工程(2-2)において、上記溶融温度は、200~270℃であり、好ましくは210~250℃である、技術的解決策B8の調製方法。
【0099】
10.工程(2-2)において、
上記冷却および結晶化のための温度は、180~210℃であり、上記冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.1~10℃/時間であり、上記冷却および結晶化のための時間は、1~5時間であり;
好ましくは、上記冷却および結晶化のための温度は、190~200℃であり、上記冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.5~5℃/時間であり、上記冷却および結晶化のための時間は、1.5~4時間である、技術的解決策B8またはB9の調製方法。
【0100】
11.工程(2-2)において、上記冷却および結晶化には、上記溶融混合物の量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.2~5重量%の量の、結晶種としてのアントラセンを添加する工程が、さらに含まれる、技術的解決策B10の調製方法。
【0101】
12.工程(2-2)において、
上記アントラセン結晶を発汗させるための温度上昇速度は、0.1~8℃/時間であり、好ましくは0.2~4℃/時間であり;
温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、上記アントラセン結晶の溶融温度よりも低い温度であり、好ましくは、温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、210℃以下の温度であり、より好ましくは、上記温度を、冷却結晶化温度よりも5~15℃高い温度にまで上昇させ、温度が210℃よりも低い時に上記発汗を停止させ;
さらに好ましくは、上記発汗を停止させる温度は、190~210℃であり、最も好ましくは195~205℃である、技術的解決策B8またはB9の調製方法。
【0102】
13.上記発汗量は、上記アントラセン結晶の5~40重量%であり、好ましくは10~30重量%である、技術的解決策B12の調製方法。
【0103】
14.上記方法は、上記発汗液を再利用して上記溶融結晶化の工程へ戻し、アルキルアントラセンを含む上記反応生成物と共に上記溶融結晶化を行うこと、を更に含む、技術的解決策B12の調製方法。
【0104】
15.工程(2-3)において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物が、2種類の物質の混合物、または、3種類以上の物質の混合物であり、2-アルキルアントラセンの沸点が、最低または最高である場合に、上記2-アルキルアントラセンの1工程の蒸留分離が行われる、技術的解決策B8の調製方法。
【0105】
16.工程(2-3)において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物が、3種類以上の物質の混合物であり、上記2-アルキルアントラセンの沸点が、上記混合物中の沸点が最も高い物質の沸点と、上記混合物中の沸点が最も低い物質の沸点との間である場合に、多工程の蒸留が行われ、
上記多工程の蒸留は、以下を含む、技術的解決策B8の調製方法:
モード1:
2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを、第1の蒸留分離に供して、軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cj2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液を第2の蒸留に供して、軽質成分Cj3-アントラセンを含む蒸留液、および、目的生成物Ci-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数j1が1<j1<i+1の整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
上記重質成分Cj2-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数j2がi<j2<41の整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
上記軽質成分Cj3-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数j3が1<j3<iの整数であるアルキルアントラセン生成物であり;または、
モード2:
2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの上記生成物の流れを、第3の蒸留に供して、軽質成分Cm1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を第4の蒸留に供して、目的生成物Ci-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm3-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cm1-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数m1が1<m1<iの整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
上記重質成分Cm2-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数m2がi-1<m2<41の整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
上記Cm3-アントラセンは、アルキル側鎖の総炭素数m3がi<m3<41の整数であるアルキルアントラセン生成物であり;
ここで、目的生成物Ci-アントラセンにおいて、iは、アルキル側鎖の総炭素数を表し、i=4~7の整数である。
【0106】
17.上記多工程の真空蒸留では、モード1において、第1の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策B16の調製方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は210~340℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は260~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3である。
【0107】
18.上記多工程の真空蒸留では、モード1において、第2の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策B16またはB17の調製方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は200~310℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~305℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5である。
【0108】
19.上記多工程の真空蒸留では、モード2において、第3の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策B16の調製方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は210~340℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は260~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3である。
【0109】
20.上記多工程の真空蒸留では、モード2において、第4の真空蒸留の条件は、以下を含む、技術的解決策B16またはB19の調製方法:
蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8であり;
より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は200~310℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7であり;
さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~305℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5である。
【0110】
21.工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物は、さらに反応溶媒を含み;
工程(2)は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離の前に、上記反応溶媒を分離する工程(2-1)をさらに含み;
工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物を蒸留塔内における蒸留に供して、反応溶媒を含む蒸留液、アントラセンを含むボトム生成物、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物を生成させることを含む、技術的解決策B8~B20のいずれか1つの調製方法。
【0111】
22.工程(2-1)において、蒸留の条件は、塔の底部の蒸留温度が100~300℃であり、好ましくは150~200℃であり、蒸留塔の頂部圧力が常圧である、ことを含む、技術的解決策B21の調製方法。
【0112】
23.工程(3)において、上記活性成分は、VA族の元素、並びに、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの1つ以上であり、好ましくは、上記活性成分は、VA族の元素と、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの少なくとも1つとの組み合わせである、技術的解決策B1の調製方法。
【0113】
24.上記活性成分は、P、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの1つ以上であり、好ましくは、上記活性成分は、Pと、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの少なくとも1つとの組み合わせである、技術的解決策B23の調製方法。
【0114】
25.上記担体は、耐熱性無機酸化物であり;
上記耐熱性無機酸化物は、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、および、シリカ-アルミナ複合酸化物のうちの1種以上であり、
上記シリカ-アルミナ複合酸化物中、酸化物として、SiO2の含有量が0.01~70重量%であり、好ましくは5~40重量%であり、Al2O3の含有量が30~99.9重量%であり、好ましくは60~95重量%である、技術的解決策B1の調製方法。
【0115】
26.上記活性成分の含有量は、上記触媒中の上記担体の重量、および、元素含有量に基づいて、0.01~40重量%であり、好ましくは0.1~30重量%である、技術的解決策B1、B23~B25のいずれか1つの調製方法。
【0116】
27.上記触媒中の活性成分は、VA族の元素と、遷移金属との組み合わせであり、
上記VA族の元素に対する上記遷移金属の質量比は、元素含有量に基づいて、1~20:1である、技術的解決策B26の調製方法。
【0117】
28.上記触媒の調製方法は、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させ、当該含浸させた支持体を乾燥および焼成することを含み、
上記活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素、および、遷移金属のうちの1つ以上の可溶性化合物である、技術的解決策B1、B23~B27のいずれか1つの調製方法。
【0118】
29.上記活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素、並びに、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの1つ以上の可溶性化合物であり、好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素の可溶性化合物と、VB族、VIB族およびVIII族のうちの少なくとも1つの金属の可溶性化合物との組み合わせである、技術的解決策B28の調製方法。
【0119】
30.上記活性成分の可溶性化合物は、P、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの1種以上の元素の可溶性化合物であり、好ましくは、上記活性成分の可溶性化合物は、Pと、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの少なくとも1つの元素の可溶性化合物との組み合わせである、技術的解決策B29の調製方法。
【0120】
31.上記担体、および、上記活性成分の可溶性化合物は、上記触媒中の上記担体の重量に基づいて、元素としての上記活性成分の含有量が0.01~40重量%であり、好ましくは0.1~30重量%である量にて使用される、技術的解決策B28の調製方法。
【0121】
32.上記活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素の可溶性化合物と遷移金属の可溶性化合物との組み合わせであり、
上記活性成分の可溶性化合物は、上記触媒中の元素としての量が、VA族の元素に対する遷移金属の質量比として1~20:1となるように使用される、技術的解決策B31の調製方法。
【0122】
33.上記含浸の条件は、以下を含む、技術的解決策B28の調製方法:
上記含浸の温度は、0~100℃であり、好ましくは20~80℃であり;
上記含浸の時間は、4~24時間であり、好ましくは6~12時間であり;
上記含浸された担体を乾燥させる温度は、90~125℃であり;
上記乾燥の時間は、1~12時間であり;
上記含浸された担体を焼成する温度は、300~700℃であり;
上記焼成の時間は、2~6時間である。
【0123】
34.上記接触させる方法は、2-アルキルアントラセン、触媒および酸化反応溶媒を含む供給原料液と、酸化剤とを接触させて、上記酸化反応を行う方法である、技術的解決策B1の調製方法。
【0124】
35.上記触媒の含有量は、上記触媒および酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり、好ましくは0.5~30重量%である、技術的解決策B34の調製方法。
【0125】
36.上記酸化反応の条件は、反応温度が10~150℃であり、好ましくは20~100℃であり、反応圧力が0~1MPaであり、好ましくは0~0.5MPaであり、反応時間が0.01~48時間であり、好ましくは0.5~24時間であること、を含む、技術的解決策B1、B23~B35のいずれか1つの調製方法。
【0126】
37.上記酸化剤の2-アルキルアントラセンに対するモル比は、0.01:1~100:1であり、好ましくは1:1~50:1である、技術的解決策B1、B23~B35のいずれか1つの調製方法。
【0127】
38.上記酸化反応溶媒は、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上であり、より好ましくは、上記酸化反応溶媒は、ハロゲン化ベンゼンのうちの1種以上であり、最も好ましくは、上記酸化反応溶媒は、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、および、テトラクロロベンゼンのうちの1種以上であり、
上記2-アルキルアントラセンの合計含有量は、上記2-アルキルアントラセンおよび上記酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である、技術的解決策B1、B23~B35のいずれか1つの調製方法。
【0128】
本発明は更に、以下のような、グループCの、一連の技術的解決策を提供する。
【0129】
1.2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理方法であって、
上記調製方法は、上記2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させて吸着脱硫および不純物除去を行うこと、上記吸着脱硫および不純物除去に供された上記2-アルキルアントラキノンの加工液を分離すること、および、洗浄すること、を含み、
上記吸着剤は、アモルファス合金であり、当該アモルファス合金は、ニッケルを含む、調製方法。
【0130】
2.上記ニッケルの含有量は、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、35~95重量%であり、好ましくは50-90重量%である、技術的解決策C1の前処理方法。
【0131】
3.上記アモルファス合金は、さらに、アルミニウム、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデン、および、コバルトのうちの1種以上の金属を含む、技術的解決策C1またはC2の前処理方法。
【0132】
4.上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は35~95重量%であり、他の金属の総含有量は5~65重量%であり、
好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、他の金属の総含有量は10~50重量%である、技術的解決策C1~C3のいずれか1つの前処理方法。
【0133】
5.上記アモルファス合金は、ニッケルおよびアルミニウム、並びに、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属を含み、好ましくは、上記アモルファス合金は、クロムと鉄との組み合わせ、クロムと銅との組み合わせ、クロムとモリブデンとの組み合わせ、および、クロムとコバルトとの組み合わせのうちの少なくとも1つの組み合わせを含み;
上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は35~95重量%であり、上記アルミニウムの含有量は0.5~40重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は0.1~50重量%であり;
好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、上記アルミニウムの含有量は1~30重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は1~40重量%であり;
より好ましくは、上記アモルファス合金の総重量に基づいて、上記ニッケルの含有量は50~90重量%であり、上記アルミニウムの含有量は1~15重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は5~40重量%である、技術的解決策C1~C3のいずれか1つの前処理方法。
【0134】
6.上記吸着剤のX線回折パターンでは、20~80°の2θ角度範囲において、45±1°に拡散ピークが現れる、技術的解決策C1~C5のいずれか1つの前処理方法。
【0135】
7.上記2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させるための条件は、以下を含む、技術的解決策C1~C6のいずれか1つの前処理方法:
温度は、10~200℃であり、好ましくは25~170℃であり;
圧力は、0~3MPaであり、好ましくは0~2MPaであり;
好ましくは、接触回数は、1~5回であり、より好ましくは2~4回であり、各接触の時間は、0.01~24時間であり、より好ましくは0.5~8時間であり;
好ましくは、上記接触は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は500~2000rpmであり、より好ましくは800~1200rpmである。
【0136】
8.上記吸着剤の使用量は、上記2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて、0.01~40重量%であり、好ましくは1~10重量%である、技術的解決策C1~C7のいずれか1つの前処理方法。
【0137】
9.上記アルカリ溶液中のアルカリは、無機塩基であり、当該無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および、炭酸カリウムのうちの少なくとも1種であり、好ましくは水酸化ナトリウムであり、上記アルカリ溶液は、好ましくはアルカリ水溶液であり、
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記アルカリ溶液の体積比は、0.1~10であり、好ましくは0.5~2である、技術的解決策C1~C7のいずれか1つの前処理方法。
【0138】
10.上記洗浄の条件は、洗浄された上記2-アルキルアントラキノンの加工液のpH値が中性となる条件であり、好ましくは、上記洗浄は、酸洗浄と水洗浄とを順に含む、技術的解決策C1の前処理方法。
【0139】
11.上記酸洗浄に使用される酸は、無機酸であり、当該無機酸は、硫酸、塩酸、硝酸およびリン酸のうちの少なくとも1種であり、好ましくはリン酸であり、上記酸は、酸溶液の形態で使用され、好ましくは酸水溶液の形態で使用され;
上記酸洗浄の条件は、温度が5~100℃であり、好ましくは20~60℃であり、圧力が0~1MPaであり、好ましくは0~0.5MPaである、ことを含み;
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記酸溶液の体積比は、0.1~10であり、好ましくは0.5~2であり;
好ましくは、上記酸洗浄は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は、500~2000rpmであり、より好ましくは800~1200rpmである、技術的解決策C10の前処理方法。
【0140】
12.上記水洗浄の条件は、圧力が0~1MPaであり、好ましくは0~0.5MPaであり、温度が5~100℃であり、好ましくは20~60℃である、ことを含み;
上記2-アルキルアントラキノンの加工液に対する上記水の体積比は、0.1~10であり、好ましくは0.5~2であり;
上記水洗浄の回数は、1~5回であり、好ましくは2~4回であり、各水洗浄の時間は、0.01~24時間であり、好ましくは0.5~8時間であり;
好ましくは、上記水洗浄は、撹拌下で行われ、当該撹拌の回転速度は、500~2000rpmであり、より好ましくは800~1200rpmである、技術的解決策C10の前処理方法。
【0141】
13.2-アルキルアントラキノンの加工液を、水素化、酸化、および、抽出する工程を有する、過酸化水素の調製方法であって、
上記調製方法はまた、上記水素化の前に、上記2-アルキルアントラキノンの加工液を前処理する工程を有し、
上記前処理の方法は、技術的解決策C1~C12のいずれか1つの前処理方法である、過酸化水素の調製方法。
【0142】
組み合わせることが実施できる限りにおいて、上述した技術的解決策A~Dの4つのグループの各々は、1つ以上の他の技術的解決策と任意に組み合わされ得る。
【0143】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の理解を深めるために、図面が用いられる。当該図面は、本発明を説明するために、以降の特定の実施形態と共に、明細書の一部を構成する。しかしながら、本発明は、これらに限定されない。
【0144】
図1は、本発明の一実施形態に係る、アントラセンの反応からの分離によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法のフローチャートである。
【0145】
図2は、本発明の一実施形態に係る、アントラセンアルキル化生成物の分離、溶融結晶化、および、多段真空蒸留を含むカップリング技術を示す。
【0146】
図3は、本発明の一実施形態に係る、アントラセンアルキル化生成物の分離、溶融結晶化、および、多段真空蒸留を含むカップリング技術を示す。
【0147】
図4は、本発明に係る、アントラセンアルキル化生成物の分離、溶融結晶化、および、真空蒸留を含む技術における、溶融結晶化の工程のフローチャートである。
【0148】
図5は、本発明に係る、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理のプロセスのフローチャートである。
【0149】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書に記載の範囲の端点、および、値は、厳密な範囲、および、値に限定されない。これらの範囲および値は、これらの範囲および値に近い値を包含すると理解されるべきである。数値範囲について、当該範囲の2つの端の値、当該範囲の何れかの端の値、個々のポイントのいずれかの値、個々のポイントの2つの値は、互いに組み合わされて、1つ以上の新たな数値範囲を形成し得る。これらの数値範囲は、本明細書中に具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0150】
本発明において、2-アルキルアントラキノンは、2-アルキル-9,10-アントラキノンを意図し、以下では、2-アルキルアントラキノンと呼ぶ。
【0151】
本明細書において、反対の説明が無い限り、真空蒸留について記載するセクション中で特定する圧力は、KPaにて絶対圧力にて記載し、他のセクション中で特定する圧力は、MPaにてゲージ圧にて記載する。
【0152】
本発明の一態様によれば、アントラセンのアルキル化によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法であって、当該調製方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
(1)アルキル化条件下で、アルキル化反応溶媒および触媒の存在下で、アントラセンとアルキル化試薬とを接触させてアルキル化反応を行い、アルキルアントラセンを含む反応生成物を生成する工程であって、上記アルキル化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせである、工程;
(2)工程(1)にて得られたアルキルアントラセンを含む反応生成物を分離する工程であって、当該分離の方法は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離を含む、工程;
(3)酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンと酸化剤とを接触させて酸化反応を行う工程であって、上記酸化剤は、過酸化水素であり、上記触媒は、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、遷移金属の酸素含有化合物、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上である、工程。
【0153】
本発明の別の態様によれば、アントラセンの反応からの分離によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法であって、当該調製方法は、以下の工程を含む:
(1)アントラセンからアルキルアントラセンを含む反応生成物を調製する工程;
(2)工程(1)にて得られたアルキルアントラセンを含む反応生成物を分離する工程であって、当該分離の方法は、溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離を含む、工程;
(3)酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンと酸化剤とを接触させて酸化反応を行う工程であって、上記酸化剤は、tert-ブチルヒドロペルオキシドであり、上記触媒は、担体、および、当該担体上の活性成分を含み、上記活性成分は、VA族の元素、および、遷移金属のうちの1つ以上である、工程。
【0154】
(1)アルキル化反応
本発明によれば、供給原料であるアントラセンは、アルキルアントラセンを含む反応生成物を生成するために、反応され得る。アントラセンからアルキルアントラセンを含む反応生成物を生成する方法は、アントラセン環内へアルキル基を導入してアルキルアントラセンを形成するための、あらゆる単一の反応であってもよいし、複数の反応の組み合わせであってもよい。工程(1)から得られる反応生成物中のアントラセン環の構造を有する物質は、残ったアントラセン、2-アルキルアントラセン、および、一連のアルキルアントラセンの生成物、を含む。反応方法の相違のために、供給原料であるアントラセンが完全に変換され得なかった場合に、反応生成物が残ったアントラセンを含み得ることが、当業者によく知られている。アルキルアントラセンが単一の物質ではない場合、当該アルキルアントラセンはまた、混合物であり得る。したがって、供給原料であるアントラセンから調製されたアルキルアントラセンを含む反応生成物は、通常、アントラセン、2-アルキルアントラセン、および、一連のアルキルアントラセンの生成物を含む。
【0155】
本発明によれば、
図1に示すように、工程(1)にてアントラセンからアルキルアントラセンを含む反応生成物を生成する方法は、アルキル化条件下で、アルキル化反応溶媒および触媒の存在下で、アントラセンとアルキル化試薬とを接触させてアルキル化反応を行う工程を有する。
【0156】
本発明によれば、アントラセンと、アルキル化試薬および触媒とを接触させる様式は、アントラセンのアルキル化によってアルキルアントラセンを生成し得る、あらゆる様式であり得る。好ましくは、十分な反応を達成するために、接触の様式は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液と、アルキル化試薬とを接触させて、上記アルキル化反応を行う様式である。
【0157】
本発明では、工程(1)にて、アルキル化条件下で、アルキル化反応溶媒および触媒の存在下で、アントラセンとアルキル化試薬とを接触させる方法は、特に限定されない。好ましくは、アルキル化反応をより良く行うことを確実にするために、初めに、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を、アントラセン-触媒-アルキル化反応溶媒の供給原料液に製剤する。次いで、アルキル化試薬を加えて、アルキル化反応を行う。アントラセン-触媒-アルキル化反応溶媒の供給原料液を製剤する温度は、100~250℃であり、より好ましくは120~200℃である。
【0158】
本発明によれば、アルキル化反応溶媒は、アントラセンを溶解することができる、不活性な有機溶媒である。
【0159】
工程(1)のアルキル化反応において、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aが、単独で用いられ得る。
【0160】
工程(1)のアルキル化反応において、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとを組み合わせた溶媒もまた、アルキル化反応溶媒として用いられ得、その結果、溶媒の特性が、目的の様式に調節され得る。供給原料であるアントラセンの溶解性が、溶媒和(solvation)によって増強され得、アルキル化反応が促進され得、アントラセンの変換が向上され得る。本発明によれば、工程(1)のアルキル化反応溶媒が溶媒Aと溶媒Bとの組み合わせであると、本発明の目的が達成され得る。しかしながら、溶媒の特性を調節することによってアルキル化反応を増強するという、本発明の目的をより良く達成するためには、溶媒Bに対する溶媒Aの体積比は、0.01~100であり、より好ましくは0.1~10である。
【0161】
より具体的に、アルキル化反応の溶媒Aは、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、より好ましくは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、好ましくは、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上である。より好ましくは、溶媒Aは、ポリアルキル置換ベンゼンのうちの1種以上であり、最も好ましくは、溶媒Aは、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上である。
【0162】
アルキル化反応の溶媒Bは、N-アルキル置換アミドであり、アルキル置換基の数は、1~2であり、各アルキル置換基は、独立してC1-C4アルキルであり、より好ましくは、溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上であり、最も好ましくは、溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミドである。
【0163】
本発明において、N-アルキル置換アミドは、下記を意図し、
【0164】
【0165】
ここで、R0は、C1-4アルキレンを意図し、R1およびR2は、各々独立して水素およびC1-4アルキルから選択され、好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つは、水素ではない。
【0166】
アルキル化反応溶媒の量は、良好な反応媒体の提供の効果を達成するために、アントラセンが十分に溶解し得る量であればよい。したがって、工程(1)にて使用されるアルキル化反応溶媒の量は、特に限定されない。好ましくは、アントラセンの含有量は、アントラセンおよびアルキル化反応溶媒の総重量に基づいて、5~60重量%であり、好ましくは8~50重量%である。
【0167】
他に示さない限り、アントラセンアルキル化反応の条件および方法は、当該分野における従来の条件および方法から選択され得る。
【0168】
本発明において、アルキル化試薬は、当該分野において公知の、あらゆるアルキル化試薬であり得る。当該アルキル化試薬は、アントラセン環内にアルキル基を導入して、アルキルアントラセンを生成し得る。例えば、アルキル化試薬は、2~8個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテルのうちの1種以上であり得、好ましくは、4~6個の炭素原子を含む、アルケン、アルコール、ハロ炭化水素、および、エーテルのうちの1種以上であり得、より好ましくは、4~6個の炭素原子を含むモノオレフィンであり得る。
【0169】
本発明において、アルキル化試薬は、アントラセン環内にアルキル基を導入してアルキルアントラセンを生成し得る量にて使用される。アルキル化試薬に対するアントラセンのモル比は、0.2:1~20:1であり、より好ましくは0.5:1~5:1である。
【0170】
本発明によれば、工程(1)において、アルキル化反応の条件は、一般的に、反応温度が100~250℃であり得、好ましくは120~200℃であり得、反応時間が0.01~48時間であり得、好ましくは0.5~24時間であり得、反応圧力が0~1MPaであり得、好ましくは0.05~0.5MPaであり得る、ことを含む。
【0171】
本発明によれば、工程(1)において、アルキル化反応をより容易に進めるために、アルキル化反応は、触媒の存在下にて行われる。
【0172】
特に、触媒は、アントラセンのアルキル化反応を触媒することができる、あらゆる形態および種類の酸触媒であり得る。例えば、触媒は、液体酸触媒、または、固体酸触媒である。
【0173】
例えば、触媒は、液体酸のうちの1種以上であり、好ましくはメタンスルホン酸および/またはパラトルエンスルホン酸である。
【0174】
上記固体酸としては、ゼオライトおよびゼオライト様触媒、クレイ(clays)、金属酸化物および金属複合酸化物、担持された酸(supported acids)、硫酸酸化物(sulfated oxides)、層状の遷移金属酸化物、金属塩、ヘテロポリ酸(heteropolyacids)、および、樹脂触媒が挙げられる。上記固体酸は、好ましくは、ゼオライト触媒、担持された酸、ヘテロポリ酸、および、樹脂触媒のうちの1種以上から選択される。例えば、ゼオライト様触媒にとって、固体酸触媒は、活性モレキュラーシーブおよびバインダーを含む。固体酸触媒中における、活性モレキュラーシーブの含有量、および、バインダーの含有量は、バインダーの含有量が活性モレキュラーシーブを特定の強度を形状にするために十分である限りにおいて、かつ、活性モレキュラーシーブの含有量が触媒反応を実現するために十分である限りにおいて、特に限定されない。一般的に、固体酸触媒の総重量に基づいて、活性モレキュラーシーブの含有量は1~99重量%であり得、バインダーの含有量は1~99重量%であり得る。触媒の強度および触媒活性のバランスの観点から、固体酸触媒の総重量に基づいて、活性モレキュラーシーブの含有量は30~95重量%であり、バインダーの含有量は5~70重量%である。活性モレキュラーシーブおよびバインダーの種類は、特に限定されず、従来技術から適宜選択され得る。一般的に、活性モレキュラーシーブは、Xゼオライト、Yゼオライト、βゼオライト、ZSM-5ゼオライト、SAPOゼオライト、および、メソ多孔質モレキュラーシーブのうちの1種以上から選択され得、好ましくはYゼオライトである。バインダーは、無機バインダー、または、有機バインダーであり得、好ましくは無機バインダーである。当該無機バインダーは、耐熱性(refractory)の無機酸化物および/またはケイ酸塩であり得、例えば、当該バインダーは、アルミナ、シリカ、チタニア(titania)、マグネシア(magnesia)、ジルコニア、トリア(thoria)、べリリア(beryllia)、および、クレイ(clay)のうちの1種以上であり得、より好ましくはアルミナであり得る。本発明において、固体酸触媒の形状は、特に限定されず、当該分野において適宜選択され得る。例えば、固体酸触媒の形状は、球状、帯状、環状、クローバー状などであり得る。パッキングに好都合であることから、球状粒子が好ましく、当該球状粒子の粒径は、10~1000μmであり得、より好ましくは20~300μmであり得る。
【0175】
上記触媒の使用量は、当該分野において従来用いられる量であり得、上記触媒の含有量は、アントラセン、触媒およびアルキル化反応溶媒を含む供給原料液の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり得、好ましくは0.5~30重量%であり得る。
【0176】
本発明によれば、工程(1)において、供給原料のアントラセンからアルキルアントラキノンを生成するためのプロセスでは、触媒を使用する必要がある。反応後の当該触媒は、当該分野における従来の分離方法によって、工程(1)の後、かつ、工程(2)の前に、触媒の性質に基づいて分離され得る。
【0177】
(2)アントラセンおよび2-アルキルアントラセンの分離
物理的性質の解析から判るように、アントラセンの沸点は340℃であり、アルキルアントラセン生成物、および、アントラセンホモログは、異なる沸点を有し、生成物の分離は、真空蒸留技術によって達成され得る。しかしながら、当該技術の困難性は、アントラセンの融点が215℃と高いこと、真空蒸留技術のみを採用することによる高い凝固点を有するアントラセンの分離は運転上の困難性が大きく、一旦パイプライン内に熱保存の問題が現れると、閉塞現象が起こりやすく、プロセスの連続的かつ安定的な運転に重大な影響を及ぼすこと、である。さらに、アントラセンは非常に容易に昇華し、昇華温度の制御が困難であり、パイプラインの閉塞の機会が著しく増加する。したがって、アントラセン-アルキルアントラセン生成物の分離を達成するために、単に真空蒸留技術を使用することは、現実的ではない。
【0178】
したがって、本発明の発明者らは、溶融結晶化-蒸留分離の方法によって、アントラセンおよびアルキルアントラセン生成物を分離することを提案する。アルキルラントラセンは、側鎖の置換基によって、アントラセンの環構造の高い規則性を損ない、その結果、アルキルアントラセン生成物の融点は明らかに低下する。例えば、低炭素数のアルキルアントラセン生成物1<アルキルアントラセンのアルキル側鎖の炭素数j1<8)の融点は130~190℃であり、高炭素数のアルキルアントラセン生成物(7<アルキルアントラセンのアルキル側鎖の炭素数j2<18)の融点は150~190℃である。融点は、アントラセンの融点である215℃よりも明らかに低く、アルキルアントラセンとアントラセンとの間には、融点の大きな差異が存在する。そこで、本発明の発明者らは、まず、溶融結晶化技術を採用して、最も融点が高く、分離作業を実現するのが最も困難なアントラセンを結晶化方式にて分離および除去し、次いで、一工程または多工程の真空蒸留技術を採用して、沸点の違いに応じて、沸点がより高いアルキルアントラセンの混合物をさらに分離することを提案した。
【0179】
これに基づいて、本発明では、工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物は、アントラセン、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物を含み、
工程(2)は、以下を含む、
(2-2)工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物を溶融状態に加熱すること、冷却および結晶化すること、アントラセン結晶、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物の流れを得るために分離すること、発汗させるために上記アントラセン結晶を加熱すること、および、発汗液とアントラセン結晶とを分離すること;
(2-3)1工程の蒸留、または、多工程の蒸留によって、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物から、2-アルキルアントラセンを分離すること。
【0180】
本発明の一実施形態によれば、
図4に示すように、溶融結晶化の工程は、溶融結晶化システム内で行われ得る。当該溶融結晶化システム内では、反応生成物の混合物からのアントラセンの結晶化による分離が行われ得る。当該溶融結晶化システムは、中間溶融タンク、および、溶融結晶装置を含む。アントラセンを含む溶融生成物、および、蒸留塔内で加熱および溶融された一連のアルキルアントラセンの生成物は、中間溶融タンクへ送られ、次いで、溶融結晶装置内へ導入される。溶融結晶化のプロセスを実施するために使用される装置は、溶融結晶装置であり、結晶化のプロセスは、層状結晶化または懸濁結晶化であってもよく、操作モードは、バッチ操作または連続操作であってもよい。しかしながら、本発明は、これに限定されない。しかしながら、バッチ操作のモードにおける層状結晶化が、より好ましい。溶融結晶装置内における温度の上昇および低下は、熱交換媒体を溶融結晶装置内に導入することによって達成される。加熱され溶融した材料が融解結晶装置に入った後、冷却媒体を介して温度を低下させ、その結果、より高い融点を有するアントラセンが結晶化されて分離され、さらに、アントラセンと一連のアルキルアントラセンの生成物との分離が実現される。
【0181】
本発明では、溶融結晶化の(2-2)の工程において、アントラセンの結晶化による分離をより良好に実現するために、溶融温度を、200~270℃に制御し、好ましくは210~250℃に制御する。本発明によれば、溶融結晶化プロセスは、本質的に、冷却および結晶化、発汗、および、好ましくはアントラセン結晶の加熱および再溶融の3つの工程を含む。
【0182】
本発明によれば、冷却および結晶化のための温度は、180~210℃であり得、好ましくは190~200℃であり得る。アントラセンの結晶化による分離をより良好に実現するために、冷却および結晶化のための温度降下速度は、0.1~10℃/時間であり得、好ましくは0.5~5℃/時間であり得、冷却および結晶化のための時間(すなわち、結晶成長時間)、は、1~5時間に調節され得、好ましくは1.5~4時間に調節され得る。
【0183】
本発明によれば、結晶化速度を増大させるために、冷却および結晶化のプロセスにおいて、結晶種としてのアントラセンを添加する工程を含むことが好ましい。当該結晶種は、具体的な冷却および結晶化のプロセスに応じた量にて添加され得る。さらに好ましくは、結晶種としてアントラセンを、溶融混合物の量に基づいて、0.1~10重量%の量、好ましくは0.2~5重量%の量だけ添加する。
【0184】
本発明によれば、アントラセン結晶の純度を更に向上させるために、アントラセン結晶を発汗させる操作を更に行う必要がある。結晶層が形成された後、結晶層の温度は、結晶層の温度上昇速度を制御することによって、ゆっくりと平衡温度に近づく。結晶層中の不純物の不均一な分布のために、より多くの不純物を有する局所の結晶は、より低い融点を有し、発汗モードにて、結晶から最初に溶融および分離される。プロセスの発汗速度および発汗度を制御することによって、結晶の純度および分離精度を著しく向上させることができ、次いで、アントラセンおよびアルキルアントラセン生成物の完全な分離を達成することができる。このことは、アルキルアントラセン生成物のその後の分離および精製において、圧力を低下させる。
【0185】
本発明では、溶融結晶化の工程にて、結晶の純度および分離精度をより向上させる観点から、アントラセン結晶を発汗させるための温度上昇速度は、0.1~8℃/時間に調節され、好ましくは0.2~4℃/時間に調節される。温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、結晶化したアントラセン結晶を溶融させ得ない。したがって、温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、アントラセン結晶の溶融温度よりも低くなくてはならない。好ましくは、温度を上昇させ、当該温度にて発汗を停止させる温度は、210℃以下の温度であり、より好ましくは、上記温度を、冷却結晶化の温度よりも5~15℃高い温度にまで上昇させ、温度が210℃よりも低い時に発汗を停止させる。発汗を停止させる温度についての上述した原理に従い、発汗を停止させる温度は、190~210℃であり、より好ましくは195~205℃である。アントラセン結晶の純度をさらに増加させるために、発汗量も制御され得、好ましくは、発汗量は、上記結晶の5~40重量%であり、より好ましくは10~30重量%である。
【0186】
本発明によれば、分離精度をさらに向上させるために、回収された発汗液は、再利用される、すなわち、発汗液は、溶融結晶化の工程へ再利用される。発汗液およびアルキルアントラセンを含む反応生成物、すなわち、アントラセンおよび一連のアルキルアントラセンの生成物を含む混合物は、加熱されて溶融し、次いで、冷却および結晶化される。
【0187】
本発明によれば、発汗が完了した後、分離されたアントラセン結晶の温度は、更に215℃以上に上昇され得、アントラセン結晶は、液体中に完全に溶融した後、回収されて再利用される。
【0188】
本発明の方法による融解および結晶化の後、回収された結晶化していない流れは、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物の流れであり、当該流れは、主に、一連のアルキルアントラセンの生成物(換言すれば、実質的にアントラセンを含んでいない)によって構成される。
【0189】
本発明では、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物の沸点は、アントラセンの沸点(340℃)よりも高い。したがって、一連のアルキルアントラセンの生成物の分離という目的を更に達成するために、蒸留技術が必要である。それ故に、1工程の蒸留、または、多工程の蒸留によって、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物から、2-アルキルアントラセンが分離され得る。
【0190】
本発明では、溶融結晶化の(2-3)の工程において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物が2種類の物質の混合物、または、3種類以上の物質の混合物であり、かつ、2-アルキルアントラセンの沸点が最低または最高である場合に、2-アルキルアントラセンの1工程の蒸留分離が行われる。(2-3)の工程において、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物が、3種類以上の物質の混合物であり、かつ、2-アルキルアントラセンの沸点が、上記混合物中の沸点が最も高い物質の沸点と、上記混合物中の沸点が最も低い物質の沸点との間である場合に、多工程の蒸留が行われる。
【0191】
本発明の一実施形態では、(2-3)の工程において、多工程の蒸留の方法は、以下のモード1またはモード2を含む:
モード1:
図2に示すように、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物の流れを、第1の蒸留分離に供して、軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cj2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;上記軽質成分Cj1-アントラセンを含む蒸留液を第2の蒸留に供して、軽質成分Cj3-アントラセンを含む蒸留液、および、目的生成物Ci-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cj1-アントラセンは、複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j1は、1<j1<i+1であり;上記重質成分Cj2-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j2は、i<j2<41であり;上記軽質成分Cj3-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数j3は、1<j3<iであり;
上記目的生成物Ci-アントラセンにおいて、iはアルキル側鎖の総炭素数を表し、i=4~7の整数であり、置換の位置は2位の位置(2 position)であり、すなわち2-アルキルアントラセン、アルキル側鎖の総炭素数は4~7であり、j1、j2およびj3は全て整数である。
【0192】
第1の真空蒸留の条件は、以下を含む:蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8である。より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は210~340℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7である。さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~320℃、例えば260~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3である。当該操作条件下において、底部生成物は、主にCj2-アントラセン生成物(アルキル側鎖の総炭素数j2は、i<j2<41の整数である)であり、塔の頂部の蒸留液は、Cj1-アントラセン生成物(アルキル側鎖の総炭素数j1は、1<j1<i+1の整数である)である。
【0193】
第2の真空蒸留の条件は、以下を含む:蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8である。より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は210~310℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7である。さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~305℃、例えば220~300℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5である。当該操作条件下において、底部生成物は、目的生成物Ci-アントラセン(2-アルキルアントラセン、アルキル側鎖の総炭素数は、4~7である)であり、塔の頂部の蒸留液は、Cj3-アントラセン生成物(アルキル側鎖の総炭素数j3は、1<j3<iの整数である)である。
【0194】
例えば、
図2に示すように、アルキルアントラセン混合物は、C2-アントラセン~C20-アントラセンの連続的なホモログ混合物であり、一方、C5-アントラセンは、分離される目的生成物である。第1の蒸留を介して、塔の頂部にて、C2-アントラセン~C5-アントラセンを含む軽質成分が得られ、塔の底部にて、C6-アントラセン~C20-アントラセンを含む重質成分が得られる。C2-アントラセン~C5-アントラセンの混合物は、第2の蒸留に供され、塔の頂部にて得られる軽質成分は、C2-アントラセン~C4-アントラセンの混合物を含み、目的生成物C5-アントラセンは、塔の底部にて得られる。
【0195】
モード2:
図3に示すように、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物の流れを、第3の蒸留分離に供して、軽質成分Cm1-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;上記重質成分Cm2-アントラセンを含むボトム生成物を第4の蒸留に供して、目的生成物Ci-アントラセンを含む蒸留液、および、重質成分Cm3-アントラセンを含むボトム生成物を生成し;
上記軽質成分Cm1-アントラセンは、アルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m1は、1<m1<iであり;
上記重質成分Cm2-アントラセンは、複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m2は、i-1<m2<41であり;
上記重質成分Cm3-アントラセンは、1つのアルキルアントラセンまたは複数のアルキルアントラセンの混合物であり、各アルキルアントラセンについて、アルキル側鎖の総炭素数m3は、i<m3<41であり;
上記目的生成物Ci-アントラセンにおいて、iはアルキル側鎖の総炭素数を表し、i=4~7の整数であり、置換の位置は2位の位置(2 position)であり、すなわち2-アルキルアントラセン、アルキル側鎖の総炭素数は4~7であり、m1、m2およびm3は全て整数である。
【0196】
第3の真空蒸留の条件は、以下を含む:蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~360℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8である。より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は210~340℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7である。さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~320℃、例えば260~320℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~3である。当該操作条件下において、底部生成物は、主にCm2-アントラセン生成物(アルキル側鎖の総炭素数m2は、i-1<m2<41の整数である)であり、塔の頂部の蒸留液は、Cm1-アントラセン生成物(アルキル側鎖の総炭素数m1は、1<m1<iの整数である)である。
【0197】
第4の真空蒸留の条件は、以下を含む:蒸留塔の頂部圧力は0.01~20KPaであり、当該塔の底部の温度は180~330℃であり、理論段数は20~90であり、塔頂還流比は0.5~8である。より好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.1~10KPaであり、当該塔の底部の温度は200~310℃であり、理論段数は30~75であり、塔頂還流比は1~7である。さらに好ましくは、蒸留塔の頂部圧力は0.5~2KPaであり、当該塔の底部の温度は220~305℃、例えば220~300℃であり、理論段数は40~75であり、塔頂還流比は1~5である。当該操作条件下において、塔の頂部の蒸留液は、目的生成物Ci-アントラセン(2-アルキルアントラセン、アルキル側鎖の総炭素数は、4~7である)であり、底部生成物は、Cm3-アントラセン生成物(アルキル側鎖の総炭素数m3は、i<m3<41の整数である)である。
【0198】
例えば、
図3に示すように、アルキルアントラセン混合物は、C2-アントラセン~C30-アントラセンの連続的なホモログ混合物であり、一方、C5-アントラセンは、分離される目的生成物である。第3の蒸留を介して、塔の頂部にて、C2-アントラセン~C4-アントラセンを含む軽質成分が得られ、塔の底部にて、C5-アントラセン~C20-アントラセンを含む重質成分が得られる。C5-アントラセン~C20-アントラセンの混合物は、第4の蒸留に供され、目的生成物C5-アントラセンは、塔の頂部にて得られ、塔の低部にて得られる重質成分は、C6-アントラセン~C20-アントラセンの混合物を含む。
【0199】
本発明によれば、多工程の真空蒸留における各真空蒸留の特定の操作条件は、各真空蒸留プロセスにおける、塔の頂部蒸留液、および、塔の底部生成物の異なる蒸留範囲に基づいて、温度および圧力の範囲の操作内で適切に選択され得る。
【0200】
本発明によれば、当技術分野で知られている様々な真空蒸留装置(例えば、シーブトレイカラム、または、充填カラム、より好ましくは充填カラム)を、多工程の真空蒸留において使用することがでる。
【0201】
本発明によれば、工程(1)における反応のプロセスおよび操作条件に応じて、アントラセンよりも沸点が低い他の物質(例えば、反応溶媒、および、他の副生成物(例えば、アルキル化反応の後に残ったアルキル化試薬))であって、軽質成分と呼ばれる物質が、生じ得る。工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物は、更に反応溶媒を含む。溶融結晶化によるアントラセンの分離、および、蒸留による2-アルキルアントラセンの分離の前に、反応溶媒を分離する工程(2-1)が、更に行われる。溶媒を分離するための方法としては、当該分野の従来の分離方法を採用することができる。好ましくは、2-アルキルアントラセン生成物を含む混合溶液中の反応溶媒は、更なる分離効率の向上、および、操作の簡略化の観点から、常圧蒸留によって分離される。本発明の一実施形態によれば、分離方法は、(2-1)工程(1)にて得られるアルキルアントラセンを含む反応生成物を蒸留塔内における蒸留に供して、反応溶媒を含む蒸留液、アントラセンを含むボトム生成物、および、2-アルキルアントラセンを含む一連のアルキルアントラセンの生成物を生成させること、を含む。加えて、分離された反応溶媒は、反応の要件にしたがって、再利用されてもよいし、廃棄のために回収されてもよい。加えて、他の副生成物も、アントラセン-アルキルアントラセン分離の前に分離され得、従来の分離方法(例えば、蒸留)によって除去され得る。
【0202】
好ましくは、工程(2-1)において、蒸留の条件は、蒸留塔の底部の温度が100~300℃であり、好ましくは150~200℃であり、蒸留塔の頂部圧力が常圧である、ことを含む。
【0203】
(3)アルキルアントラキノンを生成するための触媒酸化
本発明によれば、分離によって得られる中間生成物である2-アルキルアントラセンは、2-アルキルアントラキノンを生成するために、反応され得る。工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンから2-アルキルアントラキノンを生成する方法は、2-アルキルアントラセンから2-アルキルアントラキノンを得るための、あらゆる単一の反応であってもよいし、複数の工程の反応の組み合わせであってもよい。
【0204】
本発明によれば、工程(3)において、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンから2-アルキルアントラキノンを生成する方法は、2-アルキルアントラセンの酸化反応によって2-アルキルアントラキノンを生成する方法である。具体的に、工程(3)において、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンから2-アルキルアントラキノンを生成する方法は、酸化条件下で、酸化反応溶媒および触媒の存在下で、工程(2)にて得られた2-アルキルアントラセンと酸化剤とを接触させて酸化反応を行うことを含み、上記酸化剤は、過酸化水素であり、上記触媒は、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、遷移金属の酸素含有化合物、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上であり、または、上記酸化剤は、tert-ブチルヒドロペルオキシドであり、上記触媒は、担体、および、当該担体上の活性成分を含み、上記活性成分は、VA族の元素、および、遷移金属のうちの1つ以上である。
【0205】
(3.1)酸化剤としての過酸化水素
本発明によれば、工程(3)において、酸化剤(過酸化水素)、および、触媒(アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、遷移金属の酸素含有化合物、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上)が、組み合わされて用いられる。これによって、2-アルキルアントラセンの変換が、効率良く実現され得る。更に、2-アルキルアントラセンの触媒酸化システムは、簡単であり、効率がよく、触媒の分離および回収における難易度は低く、腐食性は無く、設備投資および酸化廃液の後処理費用は低減される。
【0206】
好ましくは、工程(3)において、触媒は、IIA族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、VIII族の金属、および、ランタニド系列金属の酸素含有化合物のうちの1種以上である。例えば、IIA族に基づくものは、Be、Mg、Ca、Sr、および、Baの酸素含有化合物であり得、IVB族に基づくものは、Ti、および、Zrの酸素含有化合物であり得、VB族に基づくものは、V、Nb、および、Taの酸素含有化合物であり得、VIB族に基づくものは、Cr、Mo、および、Wの酸素含有化合物であり得、VIIB族に基づくものは、Mn、および、Reの酸素含有化合物であり得、VIII族に基づくものは、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、および、Ptの酸素含有化合物であり得、ランタニド系列に基づくものは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および、Luの酸素含有化合物であり得る。より好ましくは、触媒は、Ca、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Ru、Co、Ni、La、および、Ceの酸素含有化合物のうちの1種以上である。最も好ましくは、触媒は、水酸化カルシウム;水酸化バリウム;メタチタン酸を含むチタン(IV)オキシ化合物;二酸化ジルコニウムおよび硝酸ジルコニルを含むジルコニウム(IV)オキシ化合物;メタバナジン酸ナトリウムを含むバナジウム(V)オキシ化合物;クロム酸カリウムおよびセスキオキシドクロムを含むクロム(VI)オキシ化合物;モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウムおよび三酸化モリブデンを含むモリブデン(VI)オキシ化合物;タングステン酸ナトリウムを含むタングステン(VI)オキシ化合物;セスキオキシドマンガンおよび二酸化マンガンを含む、マンガン(III)オキシ化合物およびマンガン(IV)オキシ化合物;二酸化ルテニウムを含むルテニウム(VI)オキシ化合物;酸化コバルトを含むコバルト(III)オキシ化合物;酸化ニッケルおよびセスキオキシドニッケルを含む、ニッケル(II)オキシ化合物およびニッケル(III)オキシ化合物;硝酸ランタンおよびセスキオキシドランタンを含むランタン(III)オキシ化合物;二酸化セリウムを含むセリウム(IV)オキシ化合物;のうちの1種以上から選択される。
【0207】
本発明によれば、工程(3)において、操作の利便性のため、酸化剤としての過酸化水素は、好ましくは過酸化水素の水溶液の形態で使用され、当該酸化剤の濃度は、特に限定されず、当該分野の従来技術にしたがって選択され得る。
【0208】
本発明によれば、工程(3)にて用いられる酸化剤および触媒の量は、広い範囲から選択され得る。好ましくは、本発明の目的をより良く達成するために、酸化剤の触媒に対するモル比は、0.01:1~100:1であり、より好ましくは0.1:1~30:1である。
【0209】
本発明によれば、2-アルキルアントラセンと、酸化剤および触媒とを接触させる方法は、2-アルキルアントラセンを酸化して2-アルキルアントラキノンを得ることができる、あらゆる方法であり得る。好ましくは、十分な反応を達成するために、接触方法は、2-アルキルアントラセン、触媒および酸化反応溶媒を含む供給原料液と、酸化剤とを接触させて、酸化反応を行う方法である。
【0210】
本発明によれば、工程(3)において、酸化反応の条件および方法は、上述した過酸化水素の酸化剤および特定の触媒を別にすれば、当該分野の従来の条件および方法から選択され得る。
【0211】
本発明によれば、工程(3)において、2-アルキルアントラセンを酸化して2-アルキルアントラキノンを生成するために、酸化剤は以下のような量にて使用される、つまり、酸化剤の2-アルキルアントラセンに対するモル比は、好ましくは0.01:1~100:1であり、より好ましくは1:1~50:1である。
【0212】
本発明によれば、工程(3)において、酸化反応の条件は、一般的に以下の条件を含む:反応温度が10~200℃であり得、好ましくは20~200℃であり得;反応時間が0.01~48時間であり得、好ましくは0.5~24時間であり得;反応圧力が0~1MPaであり得、好ましくは0~0.5MPaであり得る。
【0213】
本発明によれば、工程(3)において、酸化反応溶媒は、アントラセンを溶解することができる、不活性な有機溶媒である。
【0214】
本発明の一実施形態において、酸化反応溶媒は、20℃における誘電率が2.8超である溶媒であり、好ましくは、酸化反応溶媒は、20℃における誘電率が2.8超、50以下である溶媒であり;より好ましくは、酸化反応溶媒は、炭素数が1~4の脂肪アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、N-アルキル置換アミド、および、N-アルキルピロリドンのうちの1種以上である。炭素数が1~4の脂肪アルコールは、一価アルコール、または、多価アルコールであり得る。N-アルキル置換アミドにおいて、アルキル置換基の数は、1~2であり、アルキル置換基の各々は、独立してC1-C4アルキルである。最も好ましくは、酸化反応溶媒は、メタノール、tert-ブチルアルコール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、および、N-エチルピロリドンのうちの1種以上である。酸化反応溶媒の量は、良好な反応媒体の提供の効果を達成するために、2-アルキルアントラセンが十分に溶解し得る量であればよい。好ましくは、2-アルキルアントラセンの含有量は、2-アルキルアントラセンおよび酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である。
【0215】
本発明の別の態様によれば、酸化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aである。
【0216】
本発明の別の態様によれば、酸化反応溶媒は、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと、20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせである。
【0217】
本発明の発明者は、工程(3)の酸化反応において、20℃における誘電率が1~10である溶媒Aと20℃における誘電率が10超、50以下である溶媒Bとの組み合わせを、酸化反応溶媒として用いると、これによって、目的の様式にて溶媒の特性を制御できること、溶媒和によって2-アルキルアントラセンの溶解性が増強されること、酸化反応が促進されること、および、2-アルキルアントラセンの変換が向上すること、を見出した。
【0218】
本発明によれば、好ましくは、溶媒Aは、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、上記芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上であり、より好ましくは多置換ベンゼンの1種以上であり、上記置換基は、好ましくは、C1-C4アルキルおよびハロゲンのうちの1種以上である。より好ましくは、溶媒Aは、ポリアルキル置換ベンゼンのうちの1種以上であり、最も好ましくは、溶媒Aは、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上である。
【0219】
本発明によれば、好ましくは、溶媒Bは、N-アルキル置換アミドであり、アルキル置換基の数は、1~2であり、各アルキル置換基は、独立してC1-C4アルキルであり、より好ましくは、溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上であり、最も好ましくは、溶媒Bは、N,N-ジメチルホルムアミドである。
【0220】
本発明において、N-アルキル置換アミドは、下記を意図し、
【0221】
【0222】
ここで、R0は、C1-4アルキレンを意図し、R1およびR2は、各々独立して水素およびC1-4アルキルから選択され、好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つは、水素ではない。
【0223】
本発明によれば、工程(3)において、溶媒の特性を制御することによって酸化反応を促進するという本発明の目的をより良く達成するために、溶媒Bに対する溶媒Aの体積比は、0.01~100であり、より好ましくは0.05~10である。
【0224】
(3.2)酸化剤としてのtert-ブチルヒドロペルオキシド
本発明によれば、工程(3)において、酸化剤であるtert-ブチルヒドロペルオキシドと、担持された触媒とが組み合わされて用いられ、その結果、供給原料の変換が向上され得、選択性が良好になり、触媒の分離および回収における難易度は低く、技術的条件が緩やかであり、材料の腐食がなく、設備投資が低減され得る。
【0225】
好ましくは、工程(3)において、触媒中の活性成分は、VA族の元素、並びに、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの1つ以上であり、好ましくは、VA族の元素と、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの少なくとも1つとの組み合わせである。具体的に、VA族の元素は、N、P、As、Sb、および、Biから選択され得、VB族の金属は、V、Nb、および、Taから選択され得、VIB族の金属は、Cr、Mo、および、Wから選択され得、VIII族の金属は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、および、Ptから選択され得る。さらに好ましくは、活性成分は、P、V、Cr、Mo、Fe、および、Coのうちの1種以上であり、最も好ましくは、活性成分は、Pと、V、Cr、Mo、Fe、および、Coのうちの少なくとも1種との組み合わせである。触媒中の担体は、耐熱性無機酸化物、および、モレキュラーシーブのうちの1種以上から選択され得、好ましくは、耐熱性無機酸化物である。耐熱性無機酸化物は、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、および、シリカ-アルミナ複合酸化物のうちの1種以上であり得、シリカ-アルミナ複合酸化物中、酸化物として、SiO2の含有量が0.01~70重量%であり得、好ましくは5~40重量%であり得、Al2O3の含有量が30~99.9重量%であり得、好ましくは60~95重量%であり得る。
【0226】
触媒中の担体および活性成分の含有量は、特に限定されない。触媒中の担体および活性成分の含有量は、触媒作用にかかわる。さらに好ましくは、触媒中の担体の重量に基づいて、かつ、元素含有量に基づいて、活性成分の含有量は、0.01~40重量%であり、より好ましくは0.1~30重量%である。さらに好ましくは、触媒の触媒機能をさらに向上させるために、触媒中の活性成分は、VA族の元素、および、遷移金属の組み合わせであり、VA族の元素に対する遷移金属の質量比は、元素含有量に基づいて、1~20:1である。
【0227】
本発明によれば、触媒は、従来の含浸法によって調製され得、例えば、乾燥含浸法(dry impregnation method)(換言すれば、等量含浸法(isometric impregnation method))によって、または、例えば溶液滴下含浸法(ncipient wetness impregnation method)によって調製され得る。具体的なプロセスは、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させ、当該含浸させた支持体を乾燥および焼成することを含む。活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素、および、遷移金属のうちの1種以上の可溶性化合物である。
【0228】
それらの中で、活性成分中に複数の元素が存在する場合には、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させる方法は、以下の2つの方法にしたがって行われ得る:(1)複数の活性成分の可溶性化合物の溶液を混合溶液として調製し、次いで、担体を含浸させる;(2)様々な活性成分の可溶性化合物の各溶液に、担体を順次含浸させる(様々な元素の可溶性化合物の溶液を担体に含浸させる順序は、任意に選択することができる)。
【0229】
本発明によれば、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させる条件には、一般的に、温度、および、時間が含まれる。含浸の温度は、0~100℃であり得、より好ましくは20~80℃であり得る。含浸の時間は、活性成分の可溶性化合物の分散度に応じて、適宜選択され得る。好ましくは、含浸の時間は、4~24時間であり、より好ましくは6~12時間である。更に、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液中の溶媒の量は、一方では、活性成分の化合物が溶媒中に十分に可溶であることができる量であり、他方では、担体の十分な分散が保証される量である。好ましくは、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液中の溶媒の量は、担体1gに基づいて、0.05~10mLであり、好ましくは0.1~5mLである。本発明によれば、溶液中の溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、ペンタノールのうちの1種以上から選択され得る。
【0230】
本発明によれば、担体、および、活性成分の可溶性化合物の量は、広い範囲から選択され得る。好ましくは、担体、および、活性成分の可溶性化合物は、触媒中の担体の重量に基づいて、元素としての活性成分の含有量が0.01~40重量%であり、より好ましくは0.1~30重量%である量にて使用される。本発明によれば、活性成分の可溶性化合物は、VA族の元素、並びに、VB族、VIB族およびVIII族の金属のうちの1つ以上の可溶性化合物である。さらに好ましくは、活性成分の可溶性化合物は、P、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの1種以上の元素の可溶性化合物である。触媒の触媒性能をさらに向上させるために、活性成分の可溶性化合物は、好ましくは、VA族の元素の可溶性化合物と、VB族、VIB族およびVIII族のうちの少なくとも1つの金属の可溶性化合物との組み合わせである。最も好ましくは、活性成分の可溶性化合物は、Pと、V、Cr、Mo、FeおよびCoのうちの少なくとも1つの元素の可溶性化合物との組み合わせである。
【0231】
本発明によれば、可溶性化合物は、一般的に水可溶性化合物であり、具体的な例として、P、V、Cr、Mo、Fe、および、Coの可溶性化合物が挙げられる。金族の可溶性化合物は、硝酸塩、塩化物、アンモニウム塩、および、金属のような物のうちの少なくとも1種以上であり得る。非金属の可溶性化合物は、リン酸アンモニウム、メタバナジウム酸アンモニウム、クロム酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、硝酸鉄、または、硝酸コバルトであり得、好ましくは、リン酸アンモニウム、メタバナジウム酸アンモニウム、クロム酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、硝酸鉄、および、硝酸コバルトからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0232】
本発明によれば、活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させた後、当該担体を乾燥させる条件は、あらゆる従来の乾燥条件であり得る。例えば、乾燥温度は、90~125℃であり得、乾燥時間は、1~12時間であり得る。
【0233】
本発明によれば、乾燥された担体(活性成分の可溶性化合物を含有する溶液に担体を含浸させ、含浸させた担体を乾燥させて得られる、担体)を焼成する条件には、一般的に、焼成温度、および、焼成時間が含まれる。焼成温度は、300~700℃であり得、焼成時間は、焼成温度に応じて選択され得るが、一般的に2~6時間であり得る。焼成は、一般的に、流れる空気、および、静止した空気の両方を含む、空気雰囲気中にて行われる。
【0234】
本発明によれば、工程(3)において、酸化剤および触媒の使用量は、広い範囲から選択され得る。好ましくは、触媒の含有量は、触媒および酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.01~50重量%であり、好ましくは0.5~30重量%である。
【0235】
本発明によれば、2-アルキルアントラセンと、酸化剤および触媒とを接触させる方法は、2-アルキルアントラセンを酸化して2-アルキルアントラキノンを得ることができる、あらゆる方法であり得る。好ましくは、十分な反応を達成するために、接触させる方法は、2-アルキルアントラセン、触媒および酸化反応溶媒を含む供給原料液と、酸化剤とを接触させて、酸化反応を行う方法である。
【0236】
本発明によれば、工程(3)において、酸化反応の条件および方法は、上述したtert-ブチルヒドロペルオキシドの酸化剤および特定の触媒を別にすれば、当該分野の従来の条件および方法から選択され得る。
【0237】
本発明によれば、工程(3)において、2-アルキルアントラセンを酸化して2-アルキルアントラキノンを生成するために、酸化剤は、以下のような量にて使用される、つまり、酸化剤の2-アルキルアントラセンに対するモル比は、好ましくは0.01:1~100:1であり、より好ましくは1:1~50:1である。
【0238】
本発明によれば、工程(3)において、酸化反応の条件は、一般的に以下の条件を含む:反応温度が10~150℃であり得、好ましくは20~100℃であり得;反応時間が0.01~48時間であり得、好ましくは0.5~24時間であり得;反応圧力が0~1MPaであり得、好ましくは0~0.5MPaであり得る。
【0239】
本発明によれば、工程(3)において、酸化反応溶媒は、2-アルキルアントラセンを溶解することができる、不活性な有機溶媒である。酸化反応溶媒は、極性有機溶媒、または、無極性有機溶媒であり得る。酸化反応溶媒は、N-アルキル置換アミドであり得、ここで、アルキル置換基の数が、1~2であり、アルキル置換基の各々が、独立してC1-C4アルキルであり、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、および、N,N-ジメチルプロピオンアミドのうちの1種以上である。
【0240】
本発明において、N-アルキル置換アミドは、下記を意図し、
【0241】
【0242】
ここで、R0は、C1-4アルキレンを意図し、R1およびR2は、各々独立して水素およびC1-4アルキルから選択され、好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つは、水素ではない。好ましくは、酸化反応溶媒は、無極性有機溶媒であり、酸化反応溶媒は、C6以上、好ましくはC6-C12の、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素のうちの1種以上であり、芳香族炭化水素は、置換または非置換であり、好ましくは一置換ベンゼンまたは多置換ベンゼンの1種以上である。とりわけ、置換基がC1-C4アルキルである場合、酸化反応溶媒は、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、および、2,3,5,6-テトラメチルベンゼンのうちの1種以上であり得る。さらに好ましくは、酸化反応溶媒は、ハロゲン化ベンゼンのうちの1種以上であり、最も好ましくは、酸化反応溶媒は、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、および、テトラクロロベンゼンのうちの1種以上である。これらのうち、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、および、テトラクロロベンゼンは、それらの様々な立体異性体を包含する。
【0243】
酸化剤にもかかわらず、本発明によれば、工程(3)において、酸化反応溶媒の量は、良好な反応媒体の提供の効果を達成するために、2-アルキルアントラセンが十分に溶解し得る量であればよい。好ましくは、2-アルキルアントラセンの含有量は、2-アルキルアントラセンおよび酸化反応溶媒の総重量に基づいて、0.1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である。
【0244】
酸化剤にもかかわらず、本発明によれば、工程(3)において、2-アルキルアントラセンから2-アルキルアントラキノンを生成するためのプロセスでは、触媒を使用する必要があり、反応後の触媒は、触媒の性質に基づいて、従来の分離方法によって分離され得る。生成物中の2-アルキルアントラキノンが目的生成物であり、残った2-アルキルアントラセンを含む他の物質、溶媒、および、生成された副生成物が存在する場合には、これらの他の物質は、従来の分離方法および分離方法の組み合わせを用い、当該物質の性質の相違に基づいて、各々、除去または精製され得る。
【0245】
(4)2-アルキルアントラキノン加工液の前処理、および、過酸化水素の生成
本発明によれば、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理方法は、2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させて吸着脱硫および不純物除去を行うこと、吸着脱硫および不純物除去に供された2-アルキルアントラキノンの加工液を分離すること、および、洗浄すること、を含み、吸着剤は、アモルファス合金であり、当該アモルファス合金は、ニッケルを含む。
【0246】
本発明によれば、アモルファス合金中の各成分は、アモルファスな形態にて存在する。このことは、XRD法によって検証され得る。XRDパターンが広がった回折ピークを示す場合、合金はアモルファスな形態を有していると確認することができる。具体的に、本発明に用いられるアモルファス合金の吸着剤が、主要な活性成分としてニッケルを含むと、当該アモルファス材料のX線回折パターンでは、20~80°の2θ角度範囲において、45±1°に拡散ピークが現れる。
【0247】
本発明によれば、吸着剤は、アモルファス合金であり、当該アモルファス合金は、アモルファス合金における主要な活性成分として使用されるニッケルを含み、ニッケルの含有量は、アモルファス合金の総重量に基づいて、35~95重量%であり得、好ましくは50-90重量%であり得る。
【0248】
好ましくは、アモルファス合金は、さらに、アルミニウム、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデン、および、コバルトのうちの1種以上の金属を含む。アモルファス合金の総重量に基づいて、ニッケルの含有量は35~95重量%であり、他の金属の総含有量は5~65重量%であり、より好ましくは、アモルファス合金の総重量に基づいて、ニッケルの含有量は50~90重量%であり、他の金属の総含有量は10~50重量%である。他の金属が、アルミニウム、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種である場合には、他の金属の総含有量は、上述した1種の金属の含有量を意図する。一方、アルミニウム、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの2種以上である場合には、他の金属の総含有量は、上述した2種以上の金属の総含有量を意図する。
【0249】
本発明の特定の形態によれば、吸着脱硫の効果を更に向上させる観点から、アモルファス合金は、ニッケルおよびアルミニウム、並びに、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属を含み、好ましくは、アモルファス合金は、クロムと鉄との組み合わせ、クロムと銅との組み合わせ、クロムとモリブデンとの組み合わせ、および、クロムとコバルトとの組み合わせのうちの少なくとも1つの組み合わせを含み、アモルファス合金の総重量に基づいて、ニッケルの含有量は35~95重量%であり、アルミニウムの含有量は0.5~40重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は0.1~50重量%であり、好ましくは、アモルファス合金の総重量に基づいて、ニッケルの含有量は50~90重量%であり、アルミニウムの含有量は1~30重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は1~40重量%であり、より好ましくは、アモルファス合金の総重量に基づいて、ニッケルの含有量は50~90重量%であり、アルミニウムの含有量は1~15重量%であり、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の金属の総含有量は5~40重量%である。ここで、アモルファス合金の総重量は、100重量%である。
【0250】
本発明によれば、アモルファス合金の調製方法は、アモルファス合金の構成を本発明にしたがって選択することを別にすれば、従来の方法にしたがえばよい。好ましくは、アモルファス合金の調製方法は、以下の工程を含む:ニッケル、並びに、アルミニウム、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデン、および、コバルトのうちの1種以上の別の金属を、上述した含有量の範囲にて含む混合物、好ましくは、ニッケルおよびアルミニウム、並びに、鉄、クロム、銅、亜鉛、モリブデンおよびコバルトのうちの1種以上の別の金属を、上述した含有量の範囲にて含む混合物を、真空条件下、これらの融点よりも高い温度にて合金化すること;銅ロール回転速度が600~1000rpm(一態様では、好ましくは800rpm)であり、噴霧圧力が0.05~0.1MPaである急速冷却条件の下、真空冷却によって、合金を急速に冷却すること;基準に沿って形状化された合金片を形成すること;および、得られた合金を60~80μmの粒径に破砕して、マスター合金(master alloy)を生成すること。当該マスター合金は、還元性雰囲気(例えば、水素雰囲気)中にて、一定温度の加熱処理に供される。加熱処理の条件は、以下を含む:温度は500~800℃(一態様では、好ましくは600℃)であり、一定温度の加熱処理の時間は2~5時間(一態様では、好ましくは3時間)である。熱処理されたマスター合金は、無機塩基の水溶液中におけるアルカリ処理に供され、ここで、アルカリ処理の温度は80~120℃(一態様では、好ましくは100℃)であり、一定温度の処理における時間は30分間~2時間(一態様では、好ましくは1時間)であり、無機塩基は一般的に水酸化ナトリウムであり、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は一般的に20~40重量%であり;次いで、蒸留水を用いて、中性(換言すれば、pH=7)へと洗浄され;次いで、水が除去される。特に、水洗浄の温度は、好ましくはアルカリ処理の温度と同じであり、例えば、80~100℃(一態様では、好ましくは80℃)であり得る。水を除去する方法は、合金の分野における従来の方法であり得る。例えば、洗浄されたマスター合金はベンゼンの中に配置され、常圧にて共沸蒸留が行われ、次いで、後の使用のために、マスター合金はベンゼンの中で保存され得る。
【0251】
本発明によれば、2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させるための条件には、通常、温度、圧力、および、時間が含まれる。ここで、温度の範囲は、10~200℃であり得、好ましくは25~170℃であり得、圧力および時間は、接触の温度にしたがって、適切に調節され得る。例えば、圧力の範囲は、0~3MPaであり得、好ましくは0~2MPaであり得る。2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させる回数は、特に限定されない。2-アルキルアントラキノンの加工液中の不純物を十分に溶解および沈殿させ、かつ、硫化物を十分に吸着させる観点から、2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させる回数は、1~5回であり、より好ましくは2~4回であり、各接触の時間は、0.01~24時間であり、より好ましくは0.5~8時間である。アルカリ洗浄および脱硫プロセスのための各接触の後、アルカリ廃液のみ排出される必要があり、吸着剤は使用され続け、アルカリ洗浄および吸着脱硫が完全に終了した後で、アルカリ廃液および吸着剤は排出される。特に、接触の様式は、好ましくは以下の通りである:アルカリ溶液中で、2-アルキルアントラキノンの加工液と吸着剤とが完全に混合され、好ましくは、接触は、撹拌下でも行われ、当該撹拌の回転速度は500~2000rpmであり得、より好ましくは800~1200rpmであり得る。
【0252】
本発明によれば、アルカリ溶液中のアルカリは、通常、無機塩基であり、当該無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および、炭酸カリウムのうちの少なくとも1種から選択され得、好ましくは水酸化ナトリウムである。アルカリ溶液は、通常、アルカリ水溶液である。アルカリ溶液の濃度は、不純物が十分に除去される限りにおいて特に限定されず、異なる温度における異なる無機塩基の溶解性にしたがって、当業者によって適宜選択され得る。本発明の一実施形態によれば、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、0.1~70重量%であり得、好ましくは1~50重量%であり得る。更に、使用されるアルカリ溶液の量は、2-アルキルアントラキノンの加工液中の不純物が十分に溶解および沈殿できる限りにおいて、特に限定されない。2-アルキルアントラキノンの加工液に対するアルカリ溶液の体積比は、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.5~2である。
【0253】
本発明によれば、2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させることによって、加工液の吸着脱硫が達成され得るが、本発明の目的をより良く達成することを可能にするために、吸着脱硫の効果をより向上させる観点から、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて、用いられる吸着剤の量は、0.01~40重量%であり、好ましくは1~10重量%である。
【0254】
本発明は、アルカリ溶液を用いる不純物(例えば、非置換アントラキノン、および、アントラキノンダイマー)の洗浄、および、2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液中の吸着剤と接触させることによる吸着脱硫の2つのプロセスを行う。アルカリ洗浄と脱硫とがカップリングした処理方法は、コストを非常に低減させ、かつ、プロセスを簡略化させる。加えて、本発明に用いられるニッケルに基づくアモルファス合金は、アルカリ溶液中で保存される。このことは、合金の性能をより安定化させ、その結果、2-アルキルアントラキノンの加工液脱硫および不純物除去の効果をより向上させ得ること、を保証し得る。
【0255】
本発明によれば、2-アルキルアントラキノンの加工液中の不純物を更に除去するために、および、2-アルキルアントラキノンの加工液のpHの値を中性にするために、上記方法はまた、吸着脱硫およびアルカリ洗浄による不純物の除去が行われた2-アルキルアントラキノンの加工液の分離、および、洗浄を含む。好ましくは、上記洗浄は、酸洗浄と水洗浄とを順に含む。吸着脱硫およびアルカリ洗浄による不純物の除去が終わった後、吸着脱硫および不純物除去に供された2-アルキルアントラキノンの加工液の分離が、従来のルーチンの分離方法を用いて行われ得る。例えば、アルカリ溶液、および、2-アルキルアントラキノンの加工液の分離方法は、遠心分離の方法、または、置いておいて複数の層に分離する方法であり得る。複数の層に分離する方法では、下側の層は、不純物を含むアルカリ溶液であり、上側の層は、2-アルキルアントラキノンの加工液であり、下側の層であるアルカリ溶液の相が除去される。2-アルキルアントラキノンの加工液、および、吸着剤の分離方法は、従来の固液分離方法(例えば、濾過)であり得る。
【0256】
本発明によれば、酸洗浄に使用される酸、および、酸洗浄の条件は、吸着脱硫およびアルカリ洗浄による不純物の除去に供された2-アルキルアントラキノンの加工液中に残るアルカリが中和される、酸および条件である。
【0257】
本発明によれば、酸洗浄の方法は、従来の方法であり得る。例えば、酸洗浄に用いられる酸は、一般的に無機酸であり、当該無機酸は、硫酸、塩酸、硝酸およびリン酸のうちの少なくとも1種であり得、好ましくはリン酸であり得る。当該酸は、酸溶液の形態で使用され、一般的に酸水溶液の形態で使用される。酸溶液の濃度は、2-アルキルアントラキノンの加工液中に残るアルカリ/アルカリ溶液を十分に中和できる限りにおいて、特に限定されない。本発明の一実施形態によれば、リン酸水溶液の濃度は、0.1~83重量%であり得、好ましくは0.5~20重量%であり得る。
【0258】
本発明によれば、酸洗浄の条件は、当該分野における従来の条件であり得る。例えば、酸洗浄の条件には、温度、および、圧力が含まれる。2-アルキルアントラキノンの加工液中に残るアルカリ/アルカリ溶液を十分に中和するという観点から、酸洗浄の温度は、5~100℃であり、好ましくは20~60℃であり、酸洗浄の圧力は、酸洗浄の温度にしたがって適切に調節され得るが、一般的に0~1MPaであり、好ましくは0~0.5MPaである。
【0259】
本発明によれば、酸溶液の量、酸洗浄の回数、および、各酸洗浄の時間は、2-アルキルアントラキノンの加工液中に残るアルカリ/アルカリ溶液を十分に中和できる限りにおいて、特に限定されない。2-アルキルアントラキノンの加工液に対する酸溶液の体積比は、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.5~2である。酸洗浄の回数は、1~5回であり、好ましくは2~4回であり、各酸洗浄の時間は、一般的に0.01~24時間であり、好ましくは0.5~8時間である。
【0260】
本発明によれば、好ましくは、酸洗浄はまた、撹拌下で行われる。撹拌の回転速度は、500~2000rpmであり得、より好ましくは800~1200rpmであり得る。
【0261】
本発明によれば、水洗浄の方法および条件は、2-アルキルアントラキノンの加工液のpHの値が中性である限りにおいて、従来の方法および条件であり得る。
【0262】
本発明によれば、水洗浄の条件には、一般的に、温度、および、圧力が含まれる。2-アルキルアントラキノンの加工液中に残るアルカリ溶液を十分に除去して、加工液のpHの値を中性にするという観点から、水洗浄の温度は、5~100℃であり、好ましくは20~60℃であり、水洗浄の圧力は、水洗浄の温度にしたがって適切に調節され得るが、一般的に0~1MPaであり、好ましくは0~0.5MPaである。より好ましくは、水洗浄の条件は、酸洗浄の条件と同じである。
【0263】
本発明によれば、水洗浄における水量、水洗浄の回数、および、各水洗浄の時間は、2-アルキルアントラキノンの加工液中に残る酸/酸溶液を十分に希釈および除去できる限りにおいて、特に限定されない。2-アルキルアントラキノンの加工液に対する水の体積比は、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.5~2である。水洗浄の回数は、1~5回であり得、好ましくは2~4回であり得、各水洗浄の時間は、一般的に0.01~24時間であり、好ましくは0.5~8時間である。
【0264】
本発明によれば、好ましくは、水洗浄は撹拌下で行われる。撹拌の回転速度は、500~2000rpmであり得、好ましくは800~1200rpmであり得る。
【0265】
加えて、酸洗浄の方法および水洗浄の方法は、酸溶液および水の各々と-アルキルアントラキノンの加工液とを完全に混合し、次いで、遠心分離、または、置いておいて複数の層に分離し(下側の層は、不純物を含む酸溶液/水であり、上側の層は、2-アルキルアントラキノンの加工液である)、次いで、下側の層の洗浄溶液の相を除いて、洗浄された2-アルキルアントラキノンの加工液を得ることによって、実現され得る。
【0266】
本発明によって提供される前処理方法における2-アルキルアントラキノンの加工液は、特に限定されず、当該加工液の硫黄含有量(硫黄元素の重量)は、1~6mg/kgであり得、その中の硫化物として、主に、無機硫化物(例えば、硫酸塩、有機硫化物、例えば、チオフェンなど)が含まれる。
【0267】
2-アルキルアントラキノンの加工液の構成および生成方法は、本発明では特に限定されず、当該分野における従来の構成および生成方法であり得る。例えば、2-アルキルアントラキノンの加工液は、一般的に、2-アルキルアントラキノンと、無極性溶媒および極性溶媒によって構成される混合溶媒とを混合することによって、調製される。ここで、混合溶媒中の2-アルキルアントラキノンの含有量は、100~300g/Lであり、混合溶媒中における極性溶媒に対する無極性溶媒の比は、一般的に1~3:1であり、無極性溶媒は、沸点の範囲が160~240℃である高沸点アルキルベンゼン混合物、9~10の炭素原子を有するアルキルベンゼン、および、これらの混合物のうちの1種以上から選択され得、極性溶媒は、トリオクチルフォスフェイト、メチルシクロヘキシルアセテート、テトラブチルウレア、および、ジイソブチルメタノールのうちの1種以上から選択され得る。特に、2-アルキルアントラキノンのアルキル置換基は、アントラキノン環の2位の位置(2 position)に配置され、アルキル置換基の炭素数は、特に限定されず、例えば、C1~C8アルキル(例えば、C1~C6アルキル、または、C1~C5アルキル)であり得、これらの特定の例(但し、当該例に限定されない)としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびその異性体、n-ヘキシルおよびその異性体、n-ヘプチルおよびその異性体、n-オクチルおよびその異性体などが挙げられる。
【0268】
本発明に係る2-アルキルアントラキノンの加工液の調製方法は、
図5を参照して、詳細に説明される。
【0269】
2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理プロセスは、
図5の技術的プロセスに示すように行われる。2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理プロセスは、具体的に、以下の工程を含む:2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液および吸着剤と接触させて、アルカリ溶液洗浄および吸着脱硫の2つのプロセスを同時に完了させる工程。アルカリ溶液洗浄および吸着脱硫のカップリング処理プロセスによれば、アルカリ溶液の廃水のみが、アルカリ洗浄および脱硫の各ラウンドの後に、排出される。混合溶液は、置いておくことによって複数の層に分離し、下側の層のアルカリ溶液の廃水は排出され、吸着剤はまだ使用される。アルカリ洗浄および脱硫が、必要とされる回数にしたがって完了したした時、混合溶液は、置いておくことによって複数の層に分離する。下側の層のアルカリ溶液の廃水は排出され、次いで、固液分離(例えば、フィルター濾過(filtering))が行われる。吸着剤が排出された後、分離された加工液は、酸洗浄プロセスへ送られる。本発明の酸洗浄プロセスにしたがって、洗浄が行われる。各酸洗浄プロセスが完了した後、混合溶液は、置いておくことによって複数の層に分離する。下側の層の酸溶液の廃水は、排出される。酸洗浄プロセスが必要とされる回数にしたがって完了したした時、混合溶液は、置いておくことによって複数の層に分離する。下側の層の酸溶液の廃水は排出され、分離された加工液は、水洗浄プロセスへ送られる。本発明の水洗浄プロセスにしたがって、洗浄が行われる。各水洗浄プロセスが完了した後、混合溶液は、置いておくことによって複数の層に分離する。下側の層の水洗浄溶液の廃水は、排出される。水洗浄プロセスが必要とされる回数にしたがって完了したした時、かつ、加工液中の不純物および硫黄のインデックス(indexes)が要求に合った後に、加工液の前処理プロセスは終了し、分離された加工液は、その後のプロセスへ送られる。
【0270】
本発明はまた、過酸化水素の調製方法を提供し、当該調製方法は、2-アルキルアントラキノンの加工液を、水素化、酸化、および、抽出する工程を含み、当該方法はまた、新たに調製された2-アルキルアントラキノンの加工液を前処理する工程を含み、当該前処理する工程は、本発明によって提供される2-アルキルアントラキノンの加工液を前処理する方法にて行われる。
【0271】
本発明によれば、過酸化水素の調製方法は、一般的に、以下の工程を含む:
(1)水素化反応条件下で、触媒の存在下で、2-アルキルアントラキノンの加工液を水素ガスと接触させて、2-アルキルアントラキノンおよび水素化された2-アルキルアントラキノンを含む水素化液にする、水素化工程;
(2)酸化反応条件下で、水素化液を酸素ガスまたは酸素含有ガスと接触させて、過酸化水素および2-アルキルアントラキノンを含む酸化液を得る、酸化工程;
(3)酸化液から過酸化水素を抽出して、過酸化水素およびラフィネート(raffinate)を含む抽出物を得る、抽出工程。
【0272】
加えて、水素化の前および/または後において、白土床(white clay bed)または他のプロセスを用いた加工液の再生精製が、含まれ得る。
【0273】
新たに調製された2-アルキルアントラキノンの加工液の水素化の前に、本発明の方法を用いる2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理が、さらに含まれる。好ましくは、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理の後、および、水素化の前に、2-アルキルアントラキノンの加工液の含水量を3000mg/kg未満にするために、従来の方法にしたがって脱水を行うことができる。
【0274】
本発明の過酸化水素の調製方法は、本発明の前処理方法を用いた前処理を行うことによって、新たに調製された2-アルキルアントラキノンの加工液の水素化の前に、不純物除去および脱硫を達成し、これによって、触媒の良好な活性および安定性を実現し、その結果、本発明の目的を達成する。したがって、水素化工程、酸化工程、および、抽出工程の具体的な操作条件は、特に限定されない。これらの工程は、アントラキノン法による過酸化水素の製造のための従来の条件下にて、行われ得る。それ故に、本明細書では、これ以上の説明を省略する。
【0275】
そこで、本発明について、実施例を介して、以下に詳細に説明する。
【0276】
クロマトグラフの分析法(chromatographic analysis method)によって、材料の組成データを得た。
【0277】
クロマトグラフの分析法:アジレント社7890A;クロマトグラフのカラム:DB-1(50m×0.25mm×0.25μm)。試料注入口(inlet)温度:330℃、試料サイズ:0.2μL、分割比(split ratio):20:1、キャリアガス:窒素、定流量モードでの流速:0.7mL/分、および、温度プログラミング:温度を110℃で10分間保持し、次いで、温度を5℃/分の速度で320℃まで上昇させ、温度を18分間保持する。FID検出器:温度:350℃、水素流量:35mL/分、空気流量:350mL/分、パージガス:窒素、および、流量:25mL/分。
【0278】
(I)工程(1)のアルキル化反応において、アントラセン変換率をX1(モル%)と定義し、モル基準で計算した生成物の選択率(product selectivity)をS(モル%)と定義した。各物質の質量分率を、そのクロマトグラフのピーク面積割合にて表し、モル質量と合わせて、各物質のモル基準での分率W(fraction W)(モル%)を計算した。
【0279】
ANはアントラセンを表し、Ci-ANは2-アルキルアントラセンを表し、Cj-ANは他のアルキルアントラセンを表す。
【0280】
アントラセン変換率は、以下の式1に従って計算した:
【0281】
【0282】
2-アルキルアントラセン選択率は、以下の式2に従って計算した:
【0283】
【0284】
(II)工程(2)の分離では、ある物質の純度Bは当該物質の質量分率であり、分離されたアントラセンの純度はB1であり、分離された2-アルキルアントラセンの純度はB2であり、および、クロマトグラフの分析データに基づいた算出により当該純度を求めた。分離すべきアントラセンとアルキルアントラセンとの混合物をクロマトグラフの分析に供した。高純度の2-アルキルアントラセンおよびメシチレンを用いることにより、外部標準検量線を作成し、アントラセンおよび2-アルキルアントラセンの混合物中の2-アルキルアントラセンの含有量を定量的に計算し、W0(g)と表した。本発明により提唱された方法に従って実際に分離して得られた2-アルキルアントラセンの量をW1(g)と表記した。分離のための収率Yは、下記の式3に従って計算した。
【0285】
【0286】
(III)工程(3)の酸化反応では、Ci-AN変換率をX2と定義し、生成物選択率Sをモル基準(モル%)で計算した。各物質の質量分率をクロマトグラフのピーク面積百分率で表し、モル質量と合わせて、各物質のモル基準での分率W(モル%)を計算した。
【0287】
Ci-ANは2-アルキルアントラセンを表し、Ci-AOは2-アルキルアントラキノンを表し、Ci-Xは他の副生成物を表す。
【0288】
2-アルキルアントラセン変換率は、以下の式4に従って計算した:
【0289】
【0290】
2-アルキルアントラキノン選択率は、以下の式5に従って計算した:
【0291】
【0292】
以下の実施例A1~A17にて、本発明によって提供される2-アルキルアントラキノンの調製の例示を提供する。
【0293】
<実施例A1>
(I)アルキル化反応
2-ペンチルアントラセン(すなわち、2-tert-ペンチルアントラセン、以下同じ)は、アントラセンおよびイソペンテン(すなわち、2-イソペンテンまたは2-メチル-2-ブテン、以下同じ)をアルキル化することによって調製した。メシチレンおよびN,N-ジメチルホルムアミドは、混合溶媒として使用され、触媒は、活性Yゼオライトを含む球状触媒であり、バインダーとしてアルミナを用いた。触媒の総重量に基づき、活性Yゼオライトの含有量は82重量%であり、バインダーの含有量は18重量%であり、触媒粒子の平均粒子径は100μmであった。アントラセン460g、メシチレン640mL、N,N-ジメチルホルムアミド160mL、触媒205gを2L撹拌槽に室温で投入した。密閉後、回転速度1000rpmにて165°Cまで昇温し、圧力は0.3MPaであった。イソペンテン151gを、6.6g/分の供給速度でプランジャーポンプ(plunger pump)を用いて槽に添加した。イソペンテンの供給が終了したら、反応条件を変えないままで270分間の反応を継続した後、反応を終了させた。10バッチの反応を同じ条件下で行い、触媒の分離後、アルキル化反応生成物を均一に集め、アルキルアントラセン分離のための供給原料として使用した。
【0294】
(II)分離
アルキル化反応生成物を常圧蒸留システムに送り、常圧下で165℃まで昇温し、アントラセンよりも低い沸点を有する残留イソペンテン、メシチレン、N,N-ジメチルホルムアミド等の軽質成分を順次分離することができた。残りは、アントラセン-アルキルアントラセンの固体混合物であり、当該混合物を220℃まで加熱し、溶融状態に維持し、バッチ溶融結晶化システムへ送った。溶融結晶化装置は管状結晶化装置であり、冷却媒体を導入して冷却および結晶化を開始した。温度降下速度は0.5℃/時間、冷却および結晶化温度は200℃、結晶種として添加するアントラセンの量は、溶融混合物の質量の0.5重量%であり、結晶成長時間は2時間に制御した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリーム(stream)を排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は0.2℃/時間であり、発汗仕上げ温度は205℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて25重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置へ入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させた。ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は259℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂部蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は248℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-ペンチルアントラセンを底部生成物として回収した。
【0295】
(III)酸化反応
2-ペンチルアントラセンを液相酸化に供し、2-ペンチルアントラキノンを調製した。8Lのガラス槽にメタノール3000mL、2-ペンチルアントラセン150g、クロム酸カリウム156gを加えた。反応は常圧、65℃で行い、過酸化水素水1368g(過酸化水素含有量30重量%)を蠕動ポンプでタンク内に添加し、供給速度は2g/分とした。供給終了後、条件を変化させず維持したまま、2時間反応を継続した。反応終了後、槽内のストリームを20Lのガラス撹拌槽へ移し、メシチレン2000mLおよび純水3000mLを加えて抽出、洗浄した。静置後、2-ペンチルアントラキノンを含むメシチレン相を上層として分離し、蒸留して最終生成物2-ペンチルアントラキノンを得た。下層の水相を蒸留し、水を除去した後、触媒を回収することができた。
【0296】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における、分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離のための全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0297】
<比較例A1>
工程(I)において、反応溶媒としてメシチレンのみを用い;工程(II)において、アントラセンの沸点よりも低い沸点を有する軽質成分の蒸留による除去の後、溶融結晶化の代わりに、アントラセンを真空蒸留により直接分離した以外は、実施例A1の方法に従って、2-アルキルアントラキノンを調製した。アントラセンを分離するための蒸留塔は、アントラセンを分離するための真空蒸留システムであり、塔頂圧は8KPa、蒸留温度は275℃、理論段数は20、塔頂還流比は0.7であった。塔底部蒸留物を、実施例A1と同じ条件下で、第1の真空蒸留および第2の真空蒸留へ送った。
【0298】
工程(III)において、メタノール3000mL、2-ペンチルアントラセン150g、および、36重量%の塩酸307gを5Lのガラス槽に送った。反応は常圧、65℃にて行い、過酸化水素水342g(過酸化水素含有量30重量%)を蠕動ポンプにて槽内に添加し、供給速度は2g/分とした。供給終了後、条件を変えずに2時間反応を継続した。反応終了後、槽内の流れを20Lのガラス撹拌槽へ移し、メシチレン2000mLおよび純水3000mLを加えて抽出、洗浄した。静置後、2-ペンチルアントラキノンを含有するメシチレン相を上層として分離し、蒸留して最終生成物2-ペンチルアントラキノンを得た。
【0299】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られるアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0300】
<実施例A2>
工程(II)において、温度降下速度が5.0℃/時間、結晶化温度が190℃、結晶種として添加されるアントラセンの量が、溶融混合物の4重量%の量を含み、結晶成長時間を4時間に制御したことを除いて、2-アルキルアントラキノンを、実施例A1の方法に従って調製した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させた。温度上昇速度は4℃/時間であり、発汗仕上げ温度は195℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて10重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は259℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂圧力は1KPaであり、塔底温度は248℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-ペンチルアントラセンは、底部生成物として回収した。
【0301】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られるアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチラントラセン転化率X2および2-ペンチラントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0302】
<実施例A3>
工程(II)において、未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムに供して第3の真空蒸留を実施し、塔頂圧を1KPaであり、塔底温度を252℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比を1.5であることを除いて、実施例A1の方法に従って、2-アルキルアントラキノンを調製した。底部蒸留物を第4の真空蒸留に供し、ここで、頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は264℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-ペンチルアントラセンを頂部生成物として回収した。
【0303】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離により得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0304】
<実施例A4>
工程(II)において、温度降下速度を2℃/時間とし、結晶化温度を192℃、結晶種子として添加されるアントラセンの量が溶融混合物の質量の2重量%を含み、結晶成長の時間を3時間に制御したことを除き、2-アントラキノンを実施例A1の方法に従って調製した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムに送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は2.0℃/時間であり、発汗仕上げ温度は197℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて15重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと合わせ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は259℃であり、理論段数は40であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂圧力は1KPaであり、塔底温度は248℃であり、理論段数は40であり、塔頂還流比は3であった。2-ペンチルアントラセンを、底部生成物として回収した。
【0305】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物である2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0306】
<実施例A5>
工程(II)において、温度降下速度を1℃/時間とし、結晶化温度を197℃、結晶種子として添加されるアントラセンの量が溶融混合物の質量の1重量%を含み、結晶成長の時間を1.5時間に制御したことを除き、2-アントラキノンを実施例A1の方法に従って調製した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムに送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は0.6℃/時間であり、発汗仕上げ温度は202℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて20重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと合わせ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムに送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は0.8KPaであり、塔底部の温度は239℃であり、理論段数は75であり、塔頂還流比は2であった。塔頂蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂圧力は1.2KPaであり、塔底温度は274℃であり、理論段数は75であり、塔頂還流比は4であった。2-ペンチルアントラセンは、底部生成物として回収した。
【0307】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物である2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0308】
<実施例A6>
工程(II)において、温度降下速度を1.5℃/時間とし、結晶化温度を195℃、結晶種子として添加されるアントラセンの量が溶融混合物の質量の1.5重量%を含み、結晶成長の時間を2.5時間に制御したことを除き、2-アントラキノンを実施例A1の方法に従って調製した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は1℃/時間であり、発汗仕上げ温度は199℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて30重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと合わせ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムに送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は1.2KPaであり、塔底部の温度は279℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1であった。塔頂蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂圧力は0.8KPaであり、塔底温度は236℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は1であった。2-ペンチルアントラセンは、底部生成物として回収した。
【0309】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物である2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0310】
<実施例A7>
2-ブチルアントラキノンが目的物であった場合、工程(I)において、2-メチル-2-ブテンを121gの量でイソブチレンに変更し、アルキル化反応を、実施例A1と同じ方法で行ったことを除いて、他の物質および反応条件は実施例A1と同じであった。工程(II)では、温度降下速度を0.5℃/時間、冷却および結晶化温度を200℃、結晶種として添加するアントラセンの量を溶融混合物の質量の0.5重量%とし、結晶成長時間を2時間に制御した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムに送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は0.2℃/時間であり、発汗仕上げ温度は205℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて25重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。
【0311】
未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂圧は1KPaであり、塔底部の温度は250℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂部蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は238℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-ブチルアントラセンを底部生成物として回収した。工程(III)において、酸化反応溶媒は、1,3,5-トリメチルベンゼン300mLとN,N-ジメチルホルムアミド2700mLとの混合物であった。触媒は、79gの量の二酸化ジルコニウムであった。過酸化水素水は1453gであり、反応温度は95℃であった。
【0312】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ブチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ブチルアントラセンの純度B2、2-ブチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ブチルアントラセン変換率X2および2-ブチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0313】
<実施例A8>
2-ヘキシルアントラセンが目的物であった場合、工程(I)において、2-メチル-2-ブテンを181gの量で2-メチル-2-ペンテンに変更し、アルキル化反応を、実施例A1と同じ方法で行ったことを除いて、他の物質および反応条件は実施例A1と同じであった。工程(II)では、温度降下速度を0.5℃/時間、冷却および結晶化温度を200℃、結晶種として添加するアントラセンの量を溶融混合物の質量の0.5重量%とし、結晶成長時間を2時間に制御した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムに送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は0.2℃/時間であり、発汗仕上げ温度は205℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて25重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。
【0314】
未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムに送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂圧は1KPaであり、塔底部の温度は273℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂部蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は261℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-へキシルアントラセンを底部生成物として回収した。工程(III)において、酸化反応溶媒は、1,3,5-トリメチルベンゼン300mLとN,N-ジメチルホルムアミド2700mLとの混合物であった。触媒は、224gの量のメタチタン酸であった。過酸化水素水は1298gであり、反応温度は95℃であった。
【0315】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ヘキシルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ヘキシルアントラセンの純度B2、2-ヘキシルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ヘキシルアントラセン変換率X2および2-ヘキシルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0316】
<実施例A9>
工程(I)は、混合溶媒を、2,3,5,6-テトラメチルベンゼン640mLおよびN,N-ジメチルホルムアミド160mLに変化させたことを除いて、実施例A1と同じであった。
【0317】
工程(II)は実施例A1と同じであった。
【0318】
工程(III)は、2-ペンチルアントラセンの使用量が266gであったこと、酸化反応溶媒は1,3,5-トリメチルベンゼン2700mLおよびN,N-ジメチルホルムアミド300mLの混合物であったこと、を除いて、実施例A1と同じであった。触媒は、116gの量の硝酸ランタン六水和物であった。過酸化水素水は607.5gの量であり、反応温度は120℃であった。
【0319】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0320】
<実施例A10>
工程(I)は、混合溶媒を、1,3,5-トリメチルベンゼン640mLおよびN,N-ジメチルアセトアミド160mLに変化させたことを除いて、実施例A1と同じであった。
【0321】
工程(II)は実施例A1と同じであった。
【0322】
工程(III)は、2-ペンチルアントラセンの使用量が600gであったこと、酸化反応溶媒は1,3,5-トリメチルベンゼン1500mLおよびN,N-ジメチルホルムアミド1500mLの混合物であったこと、を除いて、実施例A1と同じであった。触媒は、262gの量の硝酸ランタン六水和物であった。過酸化水素水は1370gの量であり、反応温度は120℃であった。
【0323】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0324】
<実施例A11>
工程(I)は、混合溶媒を、1,3,5-トリメチルベンゼン720mLおよびN,N-ジメチルホルムアミド80mLに変化させたことを除いて、実施例A1と同じであった。
【0325】
工程(II)は実施例A1と同じであった。
【0326】
工程(III)は、酸化反応溶媒は2,3,5,6-テトラメチルベンゼン300mLおよびN,N-ジメチルアセトアミド2700mLの混合物であった点を除いて、実施例A1と同じであった。触媒は、74gの量の二酸化ジルコニウムであった。過酸化水素水は1368gの量であり、反応温度は95℃であった。
【0327】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0328】
<実施例A12>
工程(I)は、混合溶媒を、メシチレン80mLおよびN,N-ジメチルアセトアミド720mLに変化させたことを除いて、実施例A1と同じであった。
【0329】
工程(II)は実施例A1と同じであった。
【0330】
工程(III)は、酸化反応溶媒が1,3,5-メシチレン3000mLであった点を除いて、実施例A1と同じであった。触媒は、124gの量のモリブデン酸ナトリウムであった。過酸化水素水溶液は1368gの量であり、反応温度は95℃であった。
【0331】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0332】
<実施例A13>
(I)アルキル化反応
アントラセンおよびイソペンテンのアルキル化により2-ペンチルアントラセンを調製し、ここで、メシチレンおよびN,N-ジメチルホルムアミドは混合溶媒として使用し、触媒は活性Yゼオライトを含有する球状触媒であり、アルミナをバインダーとして使用し、触媒の総重量に基づいて、活性Yゼオライトの含有量は82重量%であり、バインダーの含有量は18重量%であり、触媒粒子の平均粒子径は100μmであった。アントラセン76g、メシチレン640mL、N,N-ジメチルホルムアミド160mL、および触媒333.6gを、室温で2L撹拌槽に充填した。密閉後、回転速度1000rpmで110°Cまで昇温し、圧力は0.15MPaとした。イソペンテン60gを、プランジャーポンプを用いて3g/分の供給速度で添加することにより、槽に添加した。イソペンテンの供給が終了した際、反応条件を変えずに270分間反応を継続した後、反応を終了した。10バッチの反応を同じ条件下で実施し、触媒の分離後、アルキル化反応生成物を均一に回収し、アルキルアントラセン分離のための供給原料として使用した。
【0333】
工程(II)および工程(III)は、実施例A1と同じであった。
【0334】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0335】
<実施例A14>
(I)アルキル化反応
アントラセンおよびイソペンテンのアルキル化により2-ペンチルアントラセンを調製し、ここで、メシチレンおよびN,N-ジメチルホルムアミドは組み合わされた溶媒として使用し、触媒は活性Yゼオライトを含有する球状触媒であり、アルミナをバインダーとして使用し、触媒の総重量に基づいて、活性Yゼオライトの含有量は82重量%であり、バインダーの含有量は18重量%であり、触媒粒子の平均粒子径は100μmであった。アントラセン229g、メシチレン640mL、N,N-ジメチルホルムアミド160mL、および触媒4.68gを、室温で2L撹拌槽に充填した。密閉後、回転速度1000rpmで130°Cまで昇温し、圧力は0.15MPaとした。イソペンテン18gを、プランジャーポンプを用いて2g/分の供給速度で添加することにより、槽に添加した。イソペンテンの供給が終了した際、反応条件を変えずに270分間反応を継続した後、反応を終了した。10バッチの反応を同じ条件下で実施し、触媒の分離後、アルキル化反応生成物を均一に回収し、アルキルアントラセン分離のための供給原料として使用した。
【0336】
工程(II)および工程(III)は、実施例A1と同じであった。
【0337】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0338】
<実施例A15>
工程(I)および工程(II)の両方は、実施例A1と同じであった。例外は、工程(III)において、2-ペンチルアントラセンの使用量は150gであり、酸化反応溶媒は3000mLのN,N-ジメチルホルムアミドであったことであった。触媒は74gの量の二酸化ジルコニウムであった。過酸化水素水は1368gの量であり、反応温度は95℃であった。
【0339】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0340】
<実施例A16>
工程(I)および工程(II)の両方は、実施例A1と同じであった。例外は、工程(III)において、2-ペンチルアントラセンの使用量は150gであり、酸化反応溶媒は3000mLのN,N-ジメチルホルムアミドであったことであった。触媒は124gの量のモリブデン酸ナトリウムであった。過酸化水素水は1368gの量であり、反応温度は95℃であった。
【0341】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0342】
<実施例A17>
工程(I)および工程(II)の両方は、実施例A1と同じであった。例外は、工程(III)において、2-ペンチルアントラセンの使用量は150gであり、酸化反応溶媒は3000mLのN,N-ジメチルホルムアミドであったことであった。触媒は97gの量の酸化鉄であった。過酸化水素溶液は1368gの量であり、反応温度は95℃であった。
【0343】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Aに示した。
【0344】
【0345】
表Aの結果から、本発明によって提供される、アントラセンのアルキル化によって得られる2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法において、アルキル化反応の反応媒体として組み合わされた溶媒を使用することによって、アルキル化反応が強化され、アントラセンの変換効率が向上し、目的生成物の製造を容易になることがわかる。溶融結晶-蒸留カップリング分離技術を用いることによって、分離によって得られたアントラセン結晶の純度、中間体生成物である2-ペンチルアントラセン(2-ブチルアントラセン、2-ヘキシルアントラセン)の純度、および、2-ペンチルアントラセン(2-ブチルアントラセン、2-ヘキシルアントラセン)の分離プロセスの全収率が、従来技術と比較して明らかに改善され、最終的に得られた2-アルキルアントラキノンの全収率も改善された。
【0346】
従来技術と比較して、少し低い効率にもかかわらず、本発明によって提供される2-アルキルアントラセンの酸化技術は、システムを簡略化できる、腐食性が無い、塩素含有廃水が発生しない、触媒を簡単に回収できる、および、簡便かつ清潔なプロセスを実現できる、という利点を有する。開発された組み合わされた溶媒システムは、溶媒の特性を調節することによって、2-アルキルアントラセンの変換を増強させ得、2-アルキルアントラキノンの選択性を向上させ得る。それ故に、本発明によって提供される方法は、2-アルキルアントラセンの環境に優しい調製のための新たな方向性を開いた。
【0347】
後述する実施例B1~B17は、本発明によって提供される2-アルキルアントラセンの調製の例示を提供する。
【0348】
<実施例B1>
(I)アルキル化反応
2-ペンチルアントラセン(すなわち、2-tert-ペンチルアントラセン、以下同じ)は、アントラセンおよびイソペンテン(すなわち、2-イソペンテンまたは2-メチル-2-ブテン、以下同じ)をアルキル化することによって調製した。メシチレンを溶媒として使用し、メタンスルホン酸を触媒として使用した。アントラセン460g、メシチレン800mL、メタンスルホン酸42gを2L撹拌槽に室温で投入した。密閉後、回転速度1000rpmにて165°Cまで昇温し、圧力は0.3MPaであった。イソペンテン151gを、6.6g/分の供給速度でプランジャーポンプを用いて槽に添加した。イソペンテンの供給が終了したら、反応条件を変えないままで270分間の反応を継続した後、反応を終了させた。10バッチの反応を同じ条件下で行い、触媒の分離後、アルキル化反応生成物を均一に集め、アルキルアントラセン分離のための供給原料として使用した。
【0349】
(II)分離
アルキル化反応生成物を常圧蒸留システムに送り、常圧下で165℃まで昇温し、アントラセンよりも低い沸点を有する残留イソペンテン、メシチレン等の軽質成分を順次分離することができた。残りは、アントラセン-アルキルアントラセンの固体混合物であり、当該混合物を220℃まで加熱し、溶融状態に維持し、バッチ溶融結晶化システムへ送った。溶融結晶化装置は管状結晶化装置であり、冷却媒体を導入して冷却および結晶化を開始した。温度降下速度は0.5℃/時間、冷却および結晶化温度は200℃、結晶種として添加するアントラセンの量は、溶融混合物の質量の0.5重量%であり、結晶成長時間は2時間に制御した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリーム(stream)を排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は0.2℃/時間であり、発汗仕上げ温度は205℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて25重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置へ入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。
【0350】
未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させた。ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は300℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂部蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は240℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-ペンチルアントラセンを底部生成物として回収した。
【0351】
(III)酸化反応
担持された個体触媒の調製は、以下の工程を含む:リン酸アンモニウム7.6g、クロム酸アンモニウム54g、および、80℃の水80mLを均一に混合し、担持SiO2-Al2O3複合体133g(微小球の平均粒径は100μm、Al2O3の含有量は92重量%)を混合物中に分散させて、6時間含浸させた。含浸した担体を110℃の乾燥炉内に配置し、12時間乾燥させて、粉末を得た。当該粉末を、マッフル炉内で5℃/分の加熱速度で500℃にまで加熱し、5時間焼成して担持された固体触媒を得た。担持された元素の総量は、担体の重量に基づいて、元素の観点から15重量%であった。担持されたPの含有量は1.2重量%であり、担持された金属Crの含有量は13.8重量%であり、触媒は、P(1.2wt%)-Cr(13.8wt%)/SiO2-Al2O3(92wt%)として示された。上述した工程は、十分な触媒が調製されるまで、数回繰り返された。
【0352】
2-ペンチルアントラセンを液相酸化に供し、2-ペンチルアントラキノンを調製した。8Lのガラス槽に、クロロベンゼン3000mL、2-ペンチルアントラセン150g、および、上述した担持された個体触媒587gを加えた。反応は常圧、80℃で行い、tert-ブチルヒドロペルオキシド1089gを蠕動ポンプでタンク内に添加し、供給速度は5g/分とした。供給終了後、条件を変化させず維持したまま、合計20時間反応を継続した。反応終了後、沈殿または濾過によって触媒を除去し、反応液を蒸留して、最終生成物である2-ペンチルアントラキノンを得た。
【0353】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における、分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離のための全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0354】
<比較例B1>
工程(II)において、アントラセンの沸点よりも低い沸点を有する軽質成分の蒸留による除去の後、溶融結晶化の代わりに、アントラセンを真空蒸留により直接分離した以外は、実施例B1の方法に従って、2-アルキルアントラキノンを調製した。アントラセンを分離するための蒸留塔は、アントラセンを分離するための真空蒸留システムであり、塔頂部圧力は8KPa、蒸留温度は275℃、理論段数は20、塔頂還流比は0.7であった。塔底部蒸留物を、実施例B1と同じ条件下で、第1の真空蒸留および第2の真空蒸留へ送った。
【0355】
工程(III)において、メタノール3000mL、2-ペンチルアントラセン150g、および、36重量%の塩酸307gを5Lのガラス槽に送った。反応は常圧、65℃にて行い、過酸化水素水342g(過酸化水素含有量30重量%)を蠕動ポンプにて槽内に添加し、供給速度は2g/分とした。供給終了後、条件を変えずに2時間反応を継続した。反応終了後、槽内の流れを20Lのガラス撹拌槽へ移し、メシチレン2000mLおよび純水3000mLを加えて抽出、洗浄した。静置後、2-ペンチルアントラキノンを含有するメシチレン相を上層として分離し、蒸留して最終生成物である2-ペンチルアントラキノンを得た。
【0356】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られるアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0357】
<実施例B2>
工程(II)において、温度降下速度が5.0℃/時間、結晶化温度が190℃、結晶種として添加されるアントラセンの量が、溶融混合物の4重量%の量を含み、結晶成長時間を4時間に制御したことを除いて、2-アルキルアントラキノンを、実施例B1の方法に従って調製した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムに送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は4.0℃/時間であり、発汗仕上げ温度は195℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて10重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は300℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂圧力は1KPaであり、塔底温度は240℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-ペンチルアントラセンを、底部生成物として回収した。
【0358】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物である2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0359】
<実施例B3>
工程(II)において、未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムに供して第3の真空蒸留を実施し、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底温度は290℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であることを除いて、実施例B1の方法に従って、2-アルキルアントラキノンを調製した。底部蒸留物を第4の真空蒸留に供し、ここで、頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は305℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-ペンチルアントラセンを頂部生成物として回収した。
【0360】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離により得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0361】
<実施例B4>
工程(II)において、温度降下速度を2℃/時間とし、結晶化温度を192℃とし、結晶種子として添加されるアントラセンの量が溶融混合物の質量の2重量%を含み、結晶成長の時間を3時間に制御したことを除き、2-アントラキノンを実施例B1の方法に従って調製した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は2.0℃/時間であり、発汗仕上げ温度は197℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて15重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は300℃であり、理論段数は40であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は240℃であり、理論段数は40であり、塔頂還流比は3であった。2-ペンチルアントラセンを、底部生成物として回収した。
【0362】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物である2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0363】
<実施例B5>
工程(II)において、温度降下速度を1℃/時間とし、結晶化温度を197℃とし、結晶種子として添加されるアントラセンの量が溶融混合物の質量の1重量%を含み、結晶成長の時間を1.5時間に制御したことを除き、2-アントラキノンを実施例B1の方法に従って調製した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は0.6℃/時間であり、発汗仕上げ温度は202℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて20重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は0.8KPaであり、塔底部の温度は280℃であり、理論段数は75であり、塔頂還流比は2であった。塔頂蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は1.2KPaであり、塔底部の温度は266℃であり、理論段数は75であり、塔頂還流比は4であった。2-ペンチルアントラセンを、底部生成物として回収した。
【0364】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物である2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0365】
<実施例B6>
工程(II)において、温度降下速度を1.5℃/時間とし、結晶化温度を195℃とし、結晶種子として添加されるアントラセンの量が溶融混合物の質量の1.5重量%を含み、結晶成長の時間を2.5時間に制御したことを除き、2-アントラキノンを実施例B1の方法に従って調製した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は1℃/時間であり、発汗仕上げ温度は199℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて30重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムに送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は1.2KPaであり、塔底部の温度は320℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1であった。塔頂蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は0.8KPaであり、塔底部の温度は228℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は1であった。2-ペンチルアントラセンを、底部生成物として回収した。
【0366】
工程(I)でのアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物である2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0367】
<実施例B7>
2-ブチルアントラキノンが目的物であった場合、工程(I)において、2-メチル-2-ブテンを121gの量でイソブチレンに変換し、アルキル化反応を、実施例B1と同じ方法で行ったことを除いて、他の物質および反応条件は実施例B1と同じであった。工程(II)では、温度降下速度を0.5℃/時間、冷却および結晶化温度を200℃、結晶種として添加するアントラセンの量を溶融混合物の質量の0.5重量%とし、結晶成長時間を2時間に制御した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は0.2℃/時間であり、発汗仕上げ温度は205℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて25重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。
【0368】
未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムへ送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は291℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂部蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は221℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-ブチルアントラセンを、底部生成物として回収した。工程(III)において、触媒の量を832.5gに変えた。
【0369】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ブチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ブチルアントラセンの純度B2、2-ブチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ブチルアントラセン変換率X2および2-ブチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0370】
<実施例B8>
2-ヘキシルアントラセンが目的物であった場合、工程(I)において、2-メチル-2-ブテンを181gの量で2-メチル-2-ペンテンに変換し、アルキル化反応を、実施例B1と同じ方法で行ったことを除いて、他の物質および反応条件は実施例B1と同じであった。工程(II)では、温度降下速度を0.5℃/時間、冷却および結晶化温度を200℃、結晶種として添加するアントラセンの量を溶融混合物の質量の0.5重量%とし、結晶成長時間を2時間に制御した。結晶化が完了した後、未結晶化ストリームを排出し、真空蒸留システムへ送った。結晶化装置中の結晶をゆっくりと加熱し、発汗させ、温度上昇速度は0.2℃/時間であり、発汗仕上げ温度は205℃であり、発汗量は結晶質量に基づいて25重量%であり、発汗液を再循環させ、溶融結晶化装置に入るストリームと接触させ、一緒に結晶化に関与させた。
【0371】
未結晶化アルキルアントラセン混合物を真空蒸留システムに送り、第1の真空蒸留を進行させ、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は310℃であり、理論段数は65であり、塔頂還流比は1.5であった。塔頂部蒸留物を第2の真空蒸留に供し、ここで、塔頂部圧力は1KPaであり、塔底部の温度は251℃であり、理論段数は70であり、塔頂還流比は3であった。2-へキシルアントラセンを底部生成物として回収した。工程(III)において、触媒の量を175.3gに変えた。
【0372】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ヘキシルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)における分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ヘキシルアントラセンの純度B2、2-ヘキシルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ヘキシルアントラセン変換率X2および2-ヘキシルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0373】
<実施例B9>
(I)アルキル化反応
アントラセンおよびイソペンテンのアルキル化により2-ペンチルアントラセンを調製し、ここで、メシチレンを溶媒として使用し、メタンスルホン酸を触媒として使用した。アントラセン76g、メシチレン800mL、および、メタンスルホン酸12gを、室温で2L撹拌槽に充填した。密閉後、回転速度1000rpmで110°Cまで昇温し、圧力は0.15MPaとした。イソペンテン60gを、プランジャーポンプを用いて3g/分の供給速度で添加することにより、槽に添加した。イソペンテンの供給が終了した際、反応条件を変えずに270分間反応を継続した後、反応を終了した。10バッチの反応を同じ条件下で実施し、触媒の分離後、アルキル化反応生成物を均一に回収し、アルキルアントラセン分離のための供給原料として使用した。
【0374】
工程(II)および工程(III)は、実施例B1と同じであった。
【0375】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0376】
<実施例B10>
アントラセンおよびイソペンテンのアルキル化により2-ペンチルアントラセンを調製し、ここで、メシチレンを溶媒として使用し、メタンスルホン酸を触媒として使用した。アントラセン229g、メシチレン800mL、および、メタンスルホン酸40gを、室温で2L撹拌槽に充填した。密閉後、回転速度1000rpmで130°Cまで昇温し、圧力は0.2MPaとした。イソペンテン18gを、プランジャーポンプを用いて2g/分の供給速度で添加することにより、槽に添加した。イソペンテンの供給が終了した際、反応条件を変えずに270分間反応を継続した後、反応を終了した。10バッチの反応を同じ条件下で実施し、触媒の分離後、アルキル化反応生成物を均一に回収し、アルキルアントラセン分離のための供給原料として使用した。
【0377】
工程(II)および工程(III)は、実施例B1と同じであった。
【0378】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0379】
<実施例B11>
工程(I)および工程(II)は、実施例B1と同じであった。相違点は、工程(III)において、酸化剤の使用量を150gに変えたことであった。
【0380】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0381】
<実施例B12>
工程(I)および工程(II)は、実施例B1と同じであった。相違点は、工程(III)において、酸化剤の使用量を272.25gに変えたことであった。
【0382】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0383】
<実施例B13>
工程(I)および工程(II)は、実施例B1と同じであった。相違点は、工程(III)において、酸化剤をN,N-ジメチルホルムアミドとし、触媒の使用量を503gに変えたことであった。
【0384】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0385】
<実施例B14>
工程(I)および工程(II)は、共に実施例B1と同じであった。相違点は、工程(III)において、触媒をCr/SiO2-Al2O3(92重量%)に変えたことであった。
【0386】
担持された個体触媒の調製は、以下の工程を含む:クロム酸アンモニウム58.68g、および、80℃の水80mLを均一に混合し、担持SiO2-Al2O3複合体133g(微小球の平均粒径は100μm、Al2O3の含有量は92重量%)を混合物中に分散させて、6時間含浸させた。含浸した担体を110℃の乾燥炉内に配置し、12時間乾燥させて、粉末を得た。当該粉末を、マッフル炉内で5℃/分の加熱速度で500℃にまで加熱し、5時間焼成して担持された固体触媒を得た。担持された金属Crの総量は、担体の重量に基づいて、元素の観点から15重量%であった。触媒は、Cr/SiO2-Al2O3(92wt%)として示された。上述した工程は、十分な触媒が調製されるまで、数回繰り返された。
【0387】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0388】
<実施例B15>
工程(I)および工程(II)は、共に実施例B1と同じであった。相違点は、工程(III)において、触媒をP(1.2重量%)-Ni(13.8重量%)/SiO2-Al2O3(92重量%)に変えたことであった。
【0389】
担持された個体触媒の調製は、以下の工程を含む:リン酸アンモニウム7.6g、硝酸ニッケル57.3g、および、水80mLを均一に混合し、担体SiO2-Al2O3複合体133g(微小球の平均粒径は100μm、Al2O3の含有量は92重量%)を混合物中に分散させて、6時間含浸させた。含浸した担体を110℃の乾燥炉内に配置し、12時間乾燥させて、粉末を得た。当該粉末を、マッフル炉内で5℃/分の加熱速度で500℃にまで加熱し、5時間焼成して担持された固体触媒を得た。担持された元素の総量は、担体の重量に基づいて、元素の観点から15重量%であった。担持されたPの含有量は1.2重量%であり、担持された金属Niの含有量は13.8重量%であり、触媒は、P(1.2重量%)-Ni(13.8重量%)/SiO2-Al2O3(92重量%)として示された。上述した工程は、十分な触媒が調製されるまで、数回繰り返された。
【0390】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0391】
<実施例B16>
工程(I)および工程(II)は、共に実施例B1と同じであった。相違点は、工程(III)において、触媒をP(0.8重量%)-Cr(9.2重量%)/SiO2-Al2O3(92重量%)に変えたことであった。
【0392】
担持された個体触媒の調製は、以下の工程を含む:リン酸アンモニウム5.07g、クロム酸アンモニウム35.99g、および、80℃の水80mLを均一に混合し、担体SiO2-Al2O3複合体133g(微小球の平均粒径は100μm、Al2O3の含有量は92重量%)を混合物中に分散させて、6時間含浸させた。含浸した担体を110℃の乾燥炉内に配置し、12時間乾燥させて、粉末を得た。当該粉末を、マッフル炉内で5℃/分の加熱速度で500℃にまで加熱し、5時間焼成して担持された固体触媒を得た。担持された元素の総量は、担体の重量に基づいて、元素の観点から10重量%であった。担持されたPの含有量は0.8重量%であり、担持された金属Crの含有量は9.2重量%であり、触媒は、P(0.8重量%)-Cr(9.2重量%)/SiO2-Al2O3(92重量%)として示された。上述した工程は、十分な触媒が調製されるまで、数回繰り返された。
【0393】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0394】
<実施例B17>
工程(I)および工程(II)は、共に実施例B1と同じであった。相違点は、工程(III)において、触媒をP(1.44重量%)-Cr(16.56重量%)/SiO2-Al2O3(92重量%)に変えたことであった。
【0395】
担持された個体触媒の調製は、以下の工程を含む:リン酸アンモニウム9.12g、クロム酸アンモニウム64.78g、および、80℃の水80mLを均一に混合し、担体SiO2-Al2O3複合体133g(微小球の平均粒径は100μm、Al2O3の含有量は92重量%)を混合物中に分散させて、6時間含浸させた。含浸した担体を110℃の乾燥炉内に配置し、12時間乾燥させて、粉末を得た。当該粉末を、マッフル炉内で5℃/分の加熱速度で500℃にまで加熱し、5時間焼成して担持された固体触媒を得た。担持された元素の総量は、担体の重量に基づいて、元素の観点から18重量%であった。担持されたPの含有量は1.44重量%であり、担持された金属Crの含有量は16.56重量%であり、触媒は、P(1.44重量%)-Cr(16.56重量%)/SiO2-Al2O3(92重量%)として示された。上述した工程は、十分な触媒が調製されるまで、数回繰り返された。
【0396】
工程(I)におけるアントラセン変換率X1および2-ペンチルアントラセン選択率SCi-AN;工程(II)において分離によって得られたアントラセンの純度B1、中間体生成物2-ペンチルアントラセンの純度B2、2-ペンチルアントラセン分離の全収率Y;工程(III)における2-ペンチルアントラセン変換率X2および2-ペンチルアントラキノン選択率SCi-AOを表Bに示した。
【0397】
【0398】
表Bの結果から、以下のことがわかる:本発明によって提供される、アントラセンの反応からの分離によって得られる2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法において、溶融結晶-蒸留カップリング分離技術を用いることによって、分離によって得られたアントラセン結晶の純度、中間体生成物である2-ペンチルアントラセン(2-ブチルアントラセン、2-ヘキシルアントラセン)の純度、および、2-ペンチルアントラセン(2-ブチルアントラセン、2-ヘキシルアントラセン)の分離プロセスの全収率が、従来技術と比較して明らかに改善され、最終的に得られた2-アルキルアントラキノンの全収率も改善された。
【0399】
更に、本発明によって提供されるアントラセンの反応からの分離によって得られる2-アルキルアントラセンの触媒酸化による2-アルキルアントラキノンの調製方法における2-アルキルアントラセン酸化技術は、酸化剤であるtert-ブチルヒドロペルオキシドと本発明の担持された触媒とを組み合わせて用いることによって、従来技術と比較して、供給原料の変換効率が少し低いにもかかわらず、選択性が良好である、腐食性が無い、塩素含有廃水が発生しない、触媒を簡単に回収できる、および、簡便かつ清潔なプロセスを実現できる、という利点を有する。それ故に、本発明によって提供される方法は、2-アルキルアントラセンの環境に優しい調製のための新たな方向性を開いた。
【0400】
以下の実施例では、2-ペンチルアントラキノンと、無極性溶媒のメシチレンおよび極性溶媒のジイソブチルメタノールとを接触させることによって、2-ペンチルアントラキノンの加工液を調製した。ここで、無極性溶媒および極性溶媒の混合溶媒中における2-ペンチルアントラキノンの含有量は、220g/Lであり、混合溶媒中における、極性溶媒に対する無極性溶媒の体積比は、3:2であった。
【0401】
以下の実施例では、2-ペンチルアントラキノンの加工液中における硫黄の含有量の決定方法は、全硫黄法であり、全硫黄含有量をUV蛍光法、SHT068-2000によって測定した。
【0402】
以下の実施例では、2-ペンチルアントラキノンの加工液中における不純物の含有量の決定方法は、クロマトグラフ分析法であり、分析条件は以下の通りであった:アジレント社7890A;クロマトグラフのカラム:DB-1(50m×0.25mm×0.25μm)。試料注入口(inlet)温度:330℃、試料サイズ:0.2μL、分割比(split ratio):20:1、キャリアガス:窒素、定流量モードでの流速:0.7mL/分、および、温度プログラミング:温度を110℃で10分間保持し、次いで、温度を5℃/分の速度で320℃まで上昇させ、温度を18分間保持する。FID検出器:温度:350℃、水素流量:35mL/分、空気流量:350mL/分、パージガス:窒素、および、流量:25mL/分。面積標準化:溶媒を除いたアントラキノン物質群のピーク面積を標準化した。不純物のクロマトグラフピーク面積のフラクションは、その質量フラクションを示す。
【0403】
<調製実施例C1>
当該調製実施例は、アモルファス合金Ni-Fe-Al吸着剤の調製を例示する。ニッケル25g、アルミニウム50g、および、鉄15gを石英管の中に加え、高周波炉内で1300℃超にまで加熱して、それらを溶融し合金化した。次いで、合金液を、石英管の下のノズルから、回転速度800rpmの銅ローラー上へ噴霧した(噴霧圧力:0.08MPa)。冷却水を銅ローラー内へ導入した。合金液を、急速に冷却し、銅ローラーの接線に沿って送り出して(threw out)、スケール状のストリップ(scale-shaped strip)を形成した。スケール状のストリップを、60~80μmの粒径に破砕して、マスター合金を得た。X線粉体回折計(Japan Rigaku D/MAX-2500 X線回折計、CuKα-ray、電流:100mA、サンプルを下に加えた)を用いて、得られたマスター合金に対してXRD解析を行った。得られたXRDパターンでは、20~80°の2θ角度範囲に拡散ピークが現れた。当該拡散ピークはアモルファス合金の典型的な特徴であって、得られたNi-Fe-Al合金生成物がアモルファスの形態であることを示していた。マスター合金を水素雰囲気中での熱処理に供し、ここで、熱処理の温度は600℃であり、一定温度での処理時間は3時間であった。熱処理したマスター合金を、20重量%の水酸化ナトリウム1000gを含む三口フラスコへゆっくりと加え、温度を100℃に調節し、一定温度にて1時間、攪拌した。加熱および攪拌を止めた後、液体を除き(decanted)、合金を、蒸留水を用いて、80℃にてpH値7へと洗浄した。次いで、ベンゼンを加え、大気圧(常圧)における共沸蒸留によって、水を除去した。合金は、使用するまで、ベンゼン中で保存した。得られた吸着剤の成分を表Cに示す。
【0404】
<調製実施例C2~C6>
アモルファス合金の吸着剤を、使用した金属の量および合金成分を除いて、調製実施例C1の方法にしたがって調製した。得られた吸着剤の成分を表Cに示す。
【0405】
【0406】
<実施例C1>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理、および、過酸化水素の調製を例示する。
【0407】
300mLの2-ペンチルアントラキノンの加工液(初期硫黄含有量は2.5mg/kgであった)を1000mLのガラス攪拌槽内に配置し、アイソメトリック(isometric)な水酸化ナトリウム水溶液、および、調製実施例C2にて調製(吸着剤として)したニッケルに基づくアモルファス合金Ni82Fe3.1Cr6.2Al8.7を加えて、吸着脱硫、および、アルカリ洗浄不純物除去のカップリング処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液の濃度は10重量%であり、洗浄圧力は常圧であり、洗浄温度は50℃であり、攪拌の回転速度は1000rpmであり、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて吸着剤の使用量は10重量%であり、洗浄回数は4回であり、各洗浄の時間は4時間であった。吸着脱硫、および、アルカリ洗浄不純物除去の各カップリング処理(最後ではない)の完了後、システムは静置されて複数の層に分離され、下側の層のアルカリ廃水は排出され、吸着剤は、次の操作である脱硫およびアルカリ洗浄のために、攪拌槽内に残された。吸着脱硫、および、アルカリ洗浄不純物除去の最後のカップリング処理の後、システムは静置されて複数の層に分離され、下側の層のアルカリ廃水は排出され、吸着剤は、濾過および排出された。上側の層に分離された加工液に対して、洗浄のために、アイソメトリックなリン酸水溶液を加えた。リン酸水溶液の濃度は10重量%であり、洗浄圧力は常圧であり、洗浄温度は50℃であり、攪拌の回転速度は1000rpmであり、洗浄回数は4回であり、各洗浄の時間は4時間であった。各酸洗浄(最後ではない)の完了後、システムは静置されて複数の層に分離され、下側の層の酸廃水は排出された。最後の酸洗浄が完了した後、システムは静置されて複数の層に分離され、下側の層の酸廃水は排出され、上側の層に分離された加工液に対して、洗浄のために、アイソメトリックな脱イオン水を加えた。洗浄圧力は常圧であり、洗浄温度は50℃であり、攪拌の回転速度は1000rpmであり、洗浄回数は4回であり、各洗浄の時間は4時間であった。各水洗浄(最後ではない)の完了後、システムは静置されて複数の層に分離され、下側の層の水廃水は排出された。最後の水洗浄が完了した後、システムは静置されて複数の層に分離され、下側の層の水廃水は排出され、上側の層に分離された加工液は、次のプロセスへ送られた。前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0408】
前処理された2-ペンチルアントラキノンの加工液を脱水して含水量を3000mg/kg未満にした後、脱水された加工液を、過酸化水素を製造するための小さな連続的な実験装置へ導入した。過酸化水素の製造プロセスは、以下を含む:白土床を用いた加工液の吸着;加工液の水素化;白土床を用いた水素化液の吸着;水素化液の酸化;酸化液の抽出;および、加工液の乾燥。
【0409】
水素化の条件:攪拌槽内における連続的な水素化プロセス、温度:60℃、圧力:0.3MPa、および、一定圧力水素消費モードでの水素の供給。加工液の滞留時間は20分間であり、触媒は微粒子Pd/Al2O3(Pd含有量は1.8重量%)であり、水素化の効率は12g/Lであった。
【0410】
酸化の条件:逆流接触酸化プロセス(countercurrent contact oxidation process)、温度:60℃、圧力:常圧、水素化液の流速:12.5mL/分、純酸素の流速:80mL/分(標準的な条件)、および、滞留時間:30分間。
【0411】
白土床を用いた、加工液および水素化液の吸着条件:温度:50℃、圧力:常圧、液相の流速:12.5mL/分、および、滞留時間:15分間。
【0412】
抽出条件:連続的なシーブトレイカラムプロセス、温度:40℃、圧力:常圧。純水の流速は0.25mL/分であり、加工液の流速は12.5mL/分であった。含水量が3000mg/kg未満になるまで、真空にてラフィネートを乾燥させた。次いで、ラフィネートを水素化システム内へリサイクルした。抽出物を、生成物として回収した。試験結果を、表Eに示す。
【0413】
<実施例C2>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0414】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件の中で、洗浄温度を80℃に変え、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0415】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0416】
<実施例C3>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0417】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件の中で、洗浄温度を30℃に変え、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0418】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0419】
<実施例C4>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0420】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件の中で、吸着剤の使用量を、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて7重量%に変え、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0421】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0422】
<実施例C5>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0423】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件の中で、吸着剤の使用量を、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて5重量%に変え、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0424】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0425】
<実施例C6>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0426】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件の中で、吸着剤の使用量を、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて1重量%に変え、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0427】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0428】
<実施例C7>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0429】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、吸着剤を、調製実施例C3にて調製したニッケルに基づくアモルファス合金Ni89Fe2.8Cr4.9Al3.3とし、吸着剤の使用量を、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて5重量%とし、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0430】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0431】
<実施例C8>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0432】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、吸着剤を、調製実施例C4にて調製したニッケルに基づくアモルファス合金Ni75.4Fe8.0Cr7.3Al9.3とし、吸着剤の使用量を、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて5重量%とし、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0433】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0434】
<実施例C9>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0435】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、吸着剤を、調製実施例C1にて調製したニッケルに基づくアモルファス合金Ni58.4Fe32.3Al9.3とし、吸着剤の使用量を、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて5重量%とし、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0436】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0437】
<実施例C10>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0438】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、2-ペンチルアントラキノンの加工液の初期の硫黄含有量が6.0mg/kgであり、吸着剤を調製実施例C4にて調製したニッケルに基づくアモルファス合金Ni75.4Fe8.0Cr7.3Al9.3とし、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件が、洗浄圧力が常圧であること、洗浄温度が80℃であること、攪拌の回転速度が1000rpmであること、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて吸着剤の使用量が10重量%であること、洗浄回数が4回であること、および、各洗浄の時間が4時間であること、を含む、以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0439】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0440】
<実施例C11>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0441】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、2-ペンチルアントラキノンの加工液の初期の硫黄含有量が1.0mg/kgであり、吸着剤を調製実施例C4にて調製したニッケルに基づくアモルファス合金Ni75.4Fe8.0Cr7.3Al9.3とし、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件が、洗浄圧力が常圧であること、洗浄温度が80℃であること、攪拌の回転速度が1000rpmであること、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて吸着剤の使用量が10重量%であること、洗浄回数が4回であること、および、各洗浄の時間が4時間であること、を含む、以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0442】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0443】
<実施例C12>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0444】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、2-ペンチルアントラキノンの加工液の初期の硫黄含有量が2.0mg/kgであり、吸着剤を調製実施例C4にて調製したニッケルに基づくアモルファス合金Ni75.4Fe8.0Cr7.3Al9.3とし、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件が、洗浄圧力が常圧であること、洗浄温度が80℃であること、攪拌の回転速度が1000rpmであること、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて吸着剤の使用量が10重量%であること、洗浄回数が4回であること、および、各洗浄の時間が4時間であること、を含む、以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0445】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0446】
<実施例C13>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0447】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理に用いた水酸化ナトリウム水溶液の濃度を20重量%とした以外は、実施例C2の方法と同じであった。
【0448】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0449】
<実施例C14>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0450】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理に用いた水酸化ナトリウム水溶液の濃度を5重量%とした以外は、実施例C2の方法と同じであった。
【0451】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0452】
<実施例C15>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0453】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の回数が2回であり、各接触の時間が4時間であり、撹拌の回転速度が1000rpmである以外は、実施例C2の方法と同じであった。
【0454】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0455】
<実施例C16>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0456】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、酸洗浄の条件が、洗浄の温度が40℃であること、撹拌の回転速度が1000rpmであること、洗浄の回数が2回であること、各洗浄の時間が4時間であること以外は、実施例C2の方法と同じであった。
【0457】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0458】
<実施例C17>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0459】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、吸着剤が調製実施例C5にて調製したNiに基づくアモルファス合金Ni74.8Co7.7Cr9.3Al8.2であり、使用される吸着剤の量が、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて5重量%であり、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0460】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0461】
<実施例C18>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0462】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、吸着剤が調製実施例C6にて調製したNiに基づくアモルファス合金Ni82.6Cu3.7Cr6.2Al7.5であり、使用される吸着剤の量が、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて5重量%であり、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0463】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0464】
<実施例C19>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0465】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、吸着剤が調製実施例C7にて調製したNiに基づくアモルファス合金Ni79Mo5.3Cr7Al8.7であり、使用される吸着剤の量が、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて5重量%であり、他の条件を変えなかった以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0466】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0467】
<実施例C20>
当該実施例は、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理を例示する。
【0468】
2-ペンチルアントラキノンの加工液の前処理の方法は、アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の条件が、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が10重量%であること、温度が150℃であること、圧力が1.5MPaであること、撹拌の回転速度が1000rpmであること、使用される吸着剤の量が、2-アルキルアントラキノンの加工液の重量に基づいて10重量%であること、洗浄の回数が4回であること、および、各洗浄の時間が4時間であることを含む以外は、実施例C1の方法と同じであった。
【0469】
前処理の前後における加工液のインデックスパラメーターを表Dに示す。
【0470】
【0471】
<比較例C1>
当該比較例は、パラジウム触媒の活性による、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理の効果を例示する。
【0472】
新たに調製された2-アルキルアントラキノンの加工液を、前処理することなく過酸化水素の調製に直接用いたこと以外は、2-アルキルアントラキノンの加工液を用いることによる実施例C1の方法にしたがって、過酸化水素を調製した。試験結果を、表Eに示す。
【0473】
<比較例C2>
当該比較例は、パラジウム触媒の活性による、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理の効果を例示する。
【0474】
アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の工程において、新たに調製された2-アルキルアントラキノンの加工液をアルカリ溶液のみと混合して、吸着脱硫を行うこと無く、アルカリ洗浄を行い、次いで、実施例C1の方法にしたがって酸洗浄および水洗浄の前処理を行って、過酸化水素を製造する以外は、2-アルキルアントラキノンの加工液を用いることによる実施例C1の方法にしたがって、過酸化水素を調製した。試験結果を、表Eに示す。
【0475】
<比較例C3>
当該比較例は、パラジウム触媒の活性による、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理の効果を例示する。
【0476】
アルカリ洗浄および吸着脱硫のカップリング処理の工程において、新たに調製された2-アルキルアントラキノンの加工液を吸着剤のみと混合して、アルカリ洗浄、酸洗浄および水洗浄を含む前処理洗浄を行うこと無く、吸着脱硫を直接行って、過酸化水素を調製した以外は、2-アルキルアントラキノンの加工液を用いることによる実施例C1の方法にしたがって、過酸化水素を調製した。試験結果を、表Eに示す。
【0477】
【0478】
表Dおよび表Eから、本発明によって提供される2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理方法は、加工液中の不純物および硫黄の含有量を著しく低減し得ること、触媒がより高い活性および安定性を有することを確実にするために過酸化水素の製造に使用される場合に触媒の耐久年数を延長し得ること、その結果、加工液の水素化における貴金属パラジウム触媒の被毒および不活性化の問題を効果的に解決することができ、かつ、当該方法は良好な工業的用途の見通しを有すること、が理解できる。
【0479】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されない。本発明の技術思想の範囲内で、他の任意の好適な方法での様々な技術的特徴の組合せを含む、様々な簡単な修正を、本発明の技術的解決策に行うことができる。これらの簡単な変更およびそれらの組み合わせも、本発明の範囲に属する本発明の記載とみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0480】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、アントラセンの反応からの分離によって得られた2-アルキルアントラセンの触媒酸化による、2-アルキルアントラキノンの調製方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、アントラセンアルキル化生成物の分離、溶融結晶化、および、多段真空蒸留を含むカップリング技術を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、アントラセンアルキル化生成物の分離、溶融結晶化、および、多段真空蒸留を含むカップリング技術を示す。
【
図4】本発明に係る、アントラセンアルキル化生成物の分離、溶融結晶化、および、真空蒸留を含む技術における、溶融結晶化の工程のフローチャートである。
【
図5】本発明に係る、2-アルキルアントラキノンの加工液の前処理のプロセスのフローチャートである。