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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】高密度光データ記録
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/0045 20060101AFI20240718BHJP
   G11B 7/0065 20060101ALI20240718BHJP
   G11B 7/24012 20130101ALI20240718BHJP
   G11B 7/24088 20130101ALI20240718BHJP
   G11B 7/005 20060101ALI20240718BHJP
   G11B 7/135 20120101ALI20240718BHJP
   G03H 1/12 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
G11B7/0045 A
G11B7/0065
G11B7/24012
G11B7/24088
G11B7/005 Z
G11B7/135
G03H1/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021566274
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 US2020021926
(87)【国際公開番号】W WO2020226746
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】16/408,374
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ブラック,リチャード ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,パトリック ネイル
(72)【発明者】
【氏名】ドレヴィスカス,ロカス
(72)【発明者】
【氏名】ドネリー,オースティン ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム,ヒュー デイビッド ポール
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-238251(JP,A)
【文献】米国特許第10236027(US,B1)
【文献】特開2001-291242(JP,A)
【文献】特開2010-020883(JP,A)
【文献】特開2008-097682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/0045
G11B 7/0065
G11B 7/24012
G11B 7/24088
G11B 7/005
G11B 7/135
G03H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基板にデータを記録する方法であって、当該方法は、
コヒーレント光パルス列の偏光角を変調するステップと、
該偏光角が変調されている間に、前記コヒーレント光パルス列を、相対速度で前記固体基板を通って移動する軌跡に集束させるステップと、を含み、
前記相対速度、該相対速度の方向における前記軌跡の幅、及び前記偏光角の変調レートは、前記基板が、前記軌跡の前記幅内で、前記光パルス列の偏光角の異なる2つ以上のパルスを受け取るものであり、
該2つ以上のパルスは、前記軌跡の前記幅内の前記基板の異なる部分に、2つ以上の異なるシンボルを記録する、
方法。
【請求項2】
前記2つ以上のパルスは、前記固体基板の1行の一致する複数のボリュームのうちの第1のボリューム内で受け取られ、当該方法は、
前記コヒーレント光パルス列の振幅を維持ステップと、前記軌跡がその行の前記第1のボリュームから第2のボリュームに移動する際に、前記偏光角を変調し続けるステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つ以上のパルスの受け取りによって、前記軌跡の前記幅内に2つ以上のボクセルが形成され、該2つ以上のボクセルのそれぞれが、光をプローブするために異なる複屈折を提示する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2つ以上のパルスには、1つ又は複数の初期パルスと、該1つ又は複数の初期パルスのいずれかよりも後で受け取られる1つ又は複数の後期パルスとが含まれ、該1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって、少なくとも1つの前記ボクセルの前記複屈折が設定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって設定される前記複屈折の方位角が、前記1つ又は複数の後期パルスの前記偏光角によって決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数の初期パルスの受け取りによって、前記1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって設定される方位角において少なくとも1つの前記ボクセルの前記複屈折の位相差の大きさが増大される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数の初期パルスの前記偏光角は、前記2つ以上のボクセルの外側であるが前記軌跡の前記幅内にある位相差の大きさがシンボル符号化閾値を下回ったままであるように変化する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記偏光角を変調するステップは、一連の予め選択した角度を介して前記コヒーレント光パルス列の電界ベクトルの振動面を同期的に回転させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コヒーレント光パルス列は、一連の光パルスを含み、各光パルスが10ピコ秒以下の持続時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
データ記録システムであって、当該データ記録システムは、
軌跡に焦点を合わせたコヒーレント光パルス列の偏光角を変調するように構成された変調システムと、
前記コヒーレント光パルス列を前記軌跡において受け取るように配置された固体基板と、
前記偏光角が変調されている間に、相対速度で前記固体基板に対する前記軌跡の相対位置を変化させるように構成されたアクチュエータと、
エンコーダと、を含み、該エンコーダは、
前記基板が、前記軌跡の幅内で、前記光パルス列の偏光角が異なり、2つ以上の異なるシンボルを符号化する2つ以上のパルスを受け取るように、前記偏光角の変調レート及び前記相対速度を制御するように構成される、
データ記録システム。
【請求項11】
前記2つ以上のパルスは、前記固体基板の一連の連続し、一致する複数のボリュームのうちの第1のボリューム内で受け取られ、前記エンコーダは、前記軌跡が前記一連の複数のボリュームのうちの前記第1のボリュームから第2のボリュームに移動する際に、前記コヒーレント光パルス列の振幅を維持するように構成される、請求項10に記載のデータ記録システム。
【請求項12】
前記2つ以上のパルスの受け取りによって、前記軌跡の前記幅内に2つ以上のボクセルが形成され、前記2つ以上のボクセルのそれぞれが、光をプローブするために異なる複屈折を提示する、請求項10に記載のデータ記録システム。
【請求項13】
前記2つ以上のパルスには、1つ又は複数の初期パルスと、該1つ又は複数の初期パルスよりも後で受け取られる1つ又は複数の後期パルスとが含まれ、該1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって、少なくとも1つの前記ボクセルの前記複屈折の方位角が設定され、前記1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって設定される前記方位角は、前記1つ又は複数の後期パルスの前記偏光角によって決定される、請求項12に記載のデータ記録システム。
【請求項14】
前記1つ又は複数の初期パルスの受け取りによって、前記1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって設定される前記方位角において少なくとも1つの前記ボクセルの前記複屈折の位相差の大きさが増大される、請求項13に記載のデータ記録システム。
【請求項15】
前記コヒーレント光パルス列を放出するように構成されたレーザをさらに含み、前記変調システムは、偏光変調器及び空間光変調器の1つ又は複数を含む、請求項10に記載のデータ記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、高密度光データ記録に関する。
【背景技術】
【0002】
高出力、短パルスレーザ放射照度を使用して、ガラス等の固体誘電体基板にデータを光学的に書き込み、格納することができる。放射照度は、基板による非線形の多光子吸収によって生じる長寿命の格子摂動をその焦点に誘導する。場合によっては、格子摂動は、放射照度が集束される点で基板内に埋め込まれた非常に小さな回折格子の光学特性を有している。この方法で基板に書き込まれたデータは、偏光イメージングを使用して読み戻されて、基板内に形成された様々な格子状の摂動を調べることができる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示する例は、固体基板にデータを記録する方法に関する。この方法は、コヒーレント光パルス列の偏光角を変調するステップと、偏光角が変調されている間に、コヒーレント光パルス列を、相対速度で固体基板を通って移動する軌跡に集束させるステップとを含む。この方法では、相対速度、相対速度の方向における軌跡の幅、及び偏光角の変調レートは、基板が、軌跡の幅内で、光パルス列の偏光角の異なる2つ以上のパルスを受け取るようなものである。このようにして、2つ以上のパルスは、軌跡の幅内の基板の異なる部分に、2つ以上の異なるシンボルを記録する。
【0004】
他の例は、偏光イメージングによってプローブ可能な少なくとも1つの一連の隣接するボクセルボリュームを含む固体基板に関する。この少なくとも1つの一連のボクセルボリュームは、隣接する第1及び第2の複屈折ボクセルボリュームを含み、第1のボクセルボリュームの複屈折によって第1の書き込みシンボルが符号化され、第2のボクセルボリュームの複屈折によって第2の書き込みシンボルが符号化される。
【0005】
さらに他の例は、変調システム、固体基板、アクチュエータ、及びエンコーダを含むデータ記録システムに関する。変調システムは、軌跡に焦点を合わせたコヒーレント光パルス列の偏光角を変調するように構成され、固体基板は、コヒーレント光パルス列を軌跡において受け取るように配置される。アクチュエータは、偏光角が変調されている間に、相対速度で、固体基板に対する軌跡の相対位置を変化させるように構成される。エンコーダは、基板は、軌跡の幅内で、光パルス列の偏光角が異なり、2つ以上の異なるシンボルを符号化する2つ以上のパルスを受け取るように、相対速度及び偏光角の変調レートを制御するように構成される。
【0006】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明する、簡略化した形式で概念の選択を紹介するために提供される。この概要は、特許請求の範囲に記載された主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求の範囲に記載された主題の範囲を制限するために使用されることも意図していない。さらに、特許請求の範囲に記載された主題は、本開示のいずれかの部分に記載された不利な点のいずれか又は全てを解決する実施態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】統合したデータ検索を備えた例示的な光データ記録システムの態様を示す図である。
図1B】統合したデータ検索を備えた例示的な光データ記録システムの態様を示す図である。
図2】例示的な光データ記録システムの例示的な書き込みヘッドの態様を示す図である。
図3】データを基板に光学的に記録するための比較方法の態様を示す図である。
図4図3の比較方法の例示的な実行によって修正された、基板の層の相補的な複屈折マップを示す図である。
図5】データを基板に光学的に記録するための例示的な方法の態様を示す図である。
図6図5の方法の例示的な実行によって修正された、基板の層の相補的な複屈折マップを示す図である。
図7図5の方法の例示的な実行によって修正された、基板の層の相補的な複屈折マップを示す図である。
図8】例示的な光データ記録システムの他の例示的な書き込みヘッドの態様を示す図である。
図9】例示的な光データ記録システムの他の例示的な書き込みヘッドの態様を示す図である。
図10】統合したデータ検索を備えた例示的な光データ記録システムの例示的な読み取りヘッドの態様を示す図である。
図11】例示的なコンピュータシステムの態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記のように、高出力のコヒーレント放射照度を使用して、データを、ガラス又は他の固体基板に書き込むことができる。「ボクセル」という用語は、本明細書では、個々のデータ値(すなわち、シンボル(symbol:記号))が格納され得る基板の任意の個別のボリュームを指すために使用される。ボクセルに格納されるデータは、様々な形式を取り得る。原則として、基板格子のミュラー行列係数のいずれかを操作して、データを符号化することができる。シリカガラス基板を使用した例では、集束した偏光放射照度からの格子摂動は、焦点に局在化する非ネイティブ複屈折の形態を取る。従って、基板の各ボクセルは、位相差の大きさ(retardance magnitude)がδdで方位角がφの非常に小さな波長板としてモデル化することができる。これらのモデルパラメータを独立して操作して、所与のボクセルに所望のシンボルを書き込むことができ、書き込みビームの偏光角が、方位角φを決定し、書き込みビームのエネルギーが、いくつかの例では、波長板格子の強度、従って位相差の大きさδdを決定する。
【0009】
達成可能な方位角及び/又は位相差の大きさの連続空間を離散的な間隔に分割することによって、すなわち、そのボクセルの複屈折を離散的な間隔のうちの1つ内に強制することによって、マルチビットデータ値を各ボクセルに符号化することができる。このようにして、各ボクセルは、Q>=1の異なる方位角のそれぞれにおいてR>=1の異なる位相差の大きさのうちの1つを符号化することができる。いくつかの例では、ボクセル構造の多くの平行な層は、基板の照射された表面の下の指定された深さにレーザ放射照度を集束させることによって、同じ基板に書き込まれ得る。この光データ記録モードは、「5D光ストレージ」と呼ばれる。
【0010】
高密度でデータを記録するために、隣接するボクセルを連続して、又は略隣接するように位置付けし、信頼できる書き込み可能性及び読み取り可能性の限界まで各ボクセルボリュームを縮小することが望ましい場合がある。この戦略は、書き込みビームが基板を通してラスターされる実施態様において、データ書き込み帯域幅を増大させることもできる。しかしながら、現在のアプローチでは、ボクセルのボリュームは、書き込みビームの焦点を合わせることができる軌跡(locus)のサイズによって制限される。最小軌跡サイズは、理想的な場合には回折限界に近づき得るが、実際には光学的非理想性のためにはるかに大きくなる可能性がある。
【0011】
これらの問題に対処し、さらに他の利点を与えるために、光データ記録の多光子メカニズムを利用する例について、本明細書で開示する。本明細書に開示するアプローチでは、レーザの焦点が基板を通って移動する際に、データが実質的に連続した行で基板に書き込まれる。焦点で受け取ったパルスの蓄積は、基板の照射量をプライミング(prime)し、書き込みプロセスに益々柔軟にさせる。このシナリオでは、所与のボリューム内で受け取った最終パルスのみが波長板を最終方向に固定し、それによりシンボルをボクセルにコミットする。従って、連続的又は略連続的な行又は一連の書き込まれたボクセルが基板内に形成され、高い記憶密度及び帯域幅を提供する。
【0012】
以下に説明する例では、1つ又は複数の図で実質的に同じであり得る構成要素、プロセスステップ、及び他の要素が、協調的に特定され、最小限の繰り返しで説明される。しかしながら、協調的に特定された要素もある程度異なる場合があることに留意されたい。さらに、図は概略図であり、一般に縮尺通りに描いていないことに留意されたい。むしろ、図に示される様々な図面の縮尺、アスペクト比、及び構成要素の数は、特定の特徴又は関係を見やすくするために意図的に歪められている場合がある。
【0013】
図1Aは、統合したデータ検索を備えた例示的な光データ記録システム10Aの態様を示している。データ記録システム10Aは、固体誘電体基板12Aにデータを書き込んで格納するように構成される。基板は実施態様毎に異なる場合があるが、少なくともデータの書き込み及び読み取りに使用される放射照度の波長範囲では、一般に一次的に透明である。いくつかの実施態様では、基板はポリマーであり得る。いくつかの実施態様では、基板は、シリカガラス、溶融石英、又は溶融シリカ等の無機ガラスであり得る。いくつかの実施態様では、基板は、機械的に安定した支持層に結合された、比較的薄い光学層(例えば、30~300ミクロン)の形態を取ることができる。
【0014】
データ記録システム10Aのバッファ14は、基板12Aに書き込むべき入力データストリーム16をバッファリングするように構成される。いくつかの実施態様では、入力データストリームにはデジタルデータが含まれ得る。エンコーダ18は、バッファからのデータを解析し、適切な制御信号を書き込みヘッド20に提供するように構成され、それによって、データは、本明細書の方法に従って、所定の符号化スキームに従って書き込まれる。符号化及び書き込みプロセスの追加の態様は、書き込みコントローラ22によって制御される。
【0015】
基板12Aが、図1Aに、XY並進ステージ24上に配置された長方形のスラブの形態で示されている。図1Bは、基板12Bが回転ディスクの形態を取る別の光データ記録システム10Bの態様を示している。他の例では、例えば回転シリンダーのように、基板は異なった形状となり得る。他の例では、書き込みヘッド20は、1つ又は複数の方向及び/又は回転で移動するように構成され得、基板は静止し得る。さらに他の例では、基板は、書き込みヘッドに対して静止し得、この書き込みヘッドは、書き込みを基板の特定の領域に向けるための適切なビームステアリング構成要素を含み得る。基板及び書き込みヘッドが互いに対して移動する任意の実施態様において、瞬間相対速度を含む相対運動は、エンコーダ18によって制御され得る。
【0016】
図2は、光データ記録システム10の例示的な書き込みヘッド20Aの態様を示している。書き込みヘッド20Aは、高出力レーザ26及び変調システム28Aを含む。変調システムは、電子的にアドレス指定可能な偏光変調器(PM)30及び焦点システム32を含む。
【0017】
レーザ26は、固定位相及び偏光のコヒーレント光パルス列を放出するように構成される。いくつかの実施態様では、レーザは、固定波長帯域で発光するフェムト秒レーザであり得る。詳細な実施態様に応じて、紫外、可視、近赤外、及び中赤外の波長帯域が全て想定される。いくつかの実施態様では、レーザは、非常に高いエネルギーの非常に短いパルスを提供するために、Qスイッチ及び/又はモードロックされ得る。詳細な実施態様に応じて、ピコジュールからマイクロジュールの範囲のパルスエネルギーを使用することができる。いくつかの例では、レーザからの放射照度は、持続時間が数十~数千フェムト秒の光子パルスの繰り返しパルス列を含み得る。いくつかの例では、1~100MHzの繰り返しレートを使用できるが、より速い繰り返しレート及びより遅い繰り返しレートも想定される。詳細な実施態様に応じて、個々のパルスの幅は、例えば、10フェムト秒~10ピコ秒の範囲になる。いくつかの実施態様では、非線形光学プロセスを採用する光高調波発生器を使用して、より短い波長の光を形成することができる。他の形態のレーザ放射照度も想定される。コヒーレント光パルス列の振幅が変調される例では、エンコーダ18は、変調を制御するように構成され得る。
【0018】
図2の書き込みヘッド20Aでは、変調システム28Aは、レーザ26からのコヒーレント光パルス列がPM30を通過するように、レーザ26の光学的に下流に配置される。反射性及び回折性のPMの変形例も想定される。PMは、制御可能に可変の角度によって、コヒーレント光パルス列の偏光状態を回転させるように構成された非イメージング能動光学系である。コヒーレント光パルス列が平面偏光される例では、偏光状態の変調は、一連の予め選択した角度を介してコヒーレント光パルス列の電場ベクトルの振動面を同期的に回転させることを含む。書き込みヘッド20Aでは、PM30は、エンコーダ18に動作可能に結合される。エンコーダは、偏光状態に適用される可変回転を規定する電子信号をPMに提供する。
【0019】
このようにして、変調システムは、焦点システム32によって軌跡34に集束したコヒーレント光パルス列の偏光角を変調するように構成される。「軌跡(locus)」という用語は、本明細書では、コヒーレント光パルス列(すなわち、書き込みビーム)が、基板の複屈折を変更するのに十分なエネルギーで集束される空間の領域を指す。いくつかの例では、軌跡は、書き込みビームの焦点ボリューム全体を含み得る。他の例では、軌跡は焦点ボリューム内の「ホットスポット」に対応し得る。図2に示されるように、基板12は、軌跡34に集束したコヒーレント光パルス列を受け取るように配置される。データが基板12の複数の深さ層に書き込まれる例では、焦点システム32は、エンコーダ18によって制御される調整可能な焦点距離を有し得、それによって、書き込みビームの放射照度を、基板の任意の選択した深さの層に集束させることができる。他の例では、書き込みヘッド20Aと基板12との間の距離を変化させて、コヒーレント光パルス列を受け取る基板の深さ層を選択することができる。書き込みヘッド20Aが、変調した偏光角を有する単一の書き込みビームを使用するが、本開示は、固定又は可変偏光の複数の書き込みビームを混合することによって必要な可変偏光が提供される構成も包含する。ビーム混合構成では、コヒーレント光パルス列は、照射された軌跡の観点から規定される。換言すると、パルス列は、単一の書き込みビーム又は2つ以上の異なる書き込みビームからのパルスを含み得る。
【0020】
一時的に図1Aに戻ると、基板12Aは、アクチュエータ36に機械的に結合されるステージ24によって支持される。基板を1つ又は複数の方向に動かすことによって、アクチュエータは、基板に対する軌跡34の相対位置を変化させる。事実上、書き込みビームの偏光角が変調されているときでも、アクチュエータは、軌跡に相対速度を与える。当然、同様の効果は、(図1Bに示されるように)書き込みヘッドに対して基板を回転させることによって、基板を固定したまま書き込みヘッドを動かすことによって、又は基板と書き込みヘッドとの両方を同時に動かすことによっても達成され得る。いくつかの例では、書き込みヘッド20は、書き込みヘッドと基板との間の相対変位を感知するように構成された感覚構成要素(図示せず)を含み得る。相対変位は、X、Y、及び/又はZ方向において感知され得る。いくつかの例では、相対変位は、エンコーダ18及び/又は書き込みコントローラ22への出力データとして提供され、アクチュエータ36及び/又は焦点システム32を閉ループ方式で制御するために使用され得る。全体的な変位制御スキームは、基板内の軌跡の動きを正確に制御し、所望の機能を達成するために、予め決定した軌道及び設定点を使用することができる。
【0021】
本明細書に記載の構成に基づいて、書き込みヘッド20は、そのボクセル(基板の各ボクセルi)の複屈折特性によって符号化された、基板の各ボクセルiにシンボルSiを書き込むように構成され得る。シンボルは、デジタル値又はビットシーケンス(例えば、00、01、10、11)として表すことができる。これは、例えば、2つの可能な方位角のいずれか及び各方位角の2つの可能な位相差の大きさのいずれかを符号化することによって実現することができる。別の例示的な符号化には、単一の位相差の大きさにおいて3つの可能な偏光角が含まれ得る。一般に、各ボクセルは、Q>=1の異なる方位角のそれぞれでR>=1の異なる位相差の大きさのうちの1つを符号化することができ、ここで、Q及びRは整数である。偏光角及び/又は位相差の大きさのより大きなメニューの使用は、各ボクセルに書き込まれるより長いビットシーケンスに対応し得る。
【0022】
図3は、データを基板に光学的に記録するための比較方法38の態様を示している。説明を容易にするために、本明細書の方法について、上記の構成を引き続き参照しながら説明する。しかしながら、異なる構成でも方法をサポートすることができることが理解されよう。
【0023】
方法38の40において、レーザ26を励起して、振幅変調したコヒーレント光パルス列が提供される。図3のグラフ42は、方法38の実行中にレーザ26からのコヒーレントパルス列の瞬間パワーを表す。このグラフに示されるように、パルス列の振幅は、個々のボクセル44を基板12に書き込むのと一致するように変調される。46において、レーザからのコヒーレントパルス列は、基板の所定の深さの層に集束される。より具体的には、コヒーレント光パルス列は、軌跡34に焦点が合わせられる。48において、アクチュエータ36は、それが移動する基板に対する軌跡に相対速度を与えるように作動される。いくつかの例では、エンコーダ18は、軌跡が基板の複数の深さ層のそれぞれを通ってラスター化するように、アクチュエータ36及び焦点システム32を制御することができ、アクチュエータは、各行の書き込み中に実質的に一定の相対速度を与える。「行(row)」という用語は、本明細書では、ボリュームがたまたま直線上にあるかどうかにかかわらず、基板の一連の軌跡サイズのボリュームを指すことに留意されたい。従って、「行」及び「一連の(series)」という用語は、この文脈では同じ意味で使用される。例えば、基板が回転ディスクである実施態様では、一連の基板ボリュームは、行ではなく円弧上にある場合がある。さらに、いくつかの例では、行は、材料の深さの範囲に沿って配置され得る。
【0024】
引き続き図3を参照すると、50において、コヒーレント光パルス列の偏光角は、軌跡が相対速度で基板を通って移動し続けるので、ボクセルを現在の軌跡内に書き込むための複屈折の所定の方位角を提供するように変調される。図3のグラフ52は、PM30によって制御される偏光角を表し、グラフ54は、現在の軌跡で基板に符号化された複屈折の位相差の大きさを表す。この方法では、基板の所与の軌跡サイズのボリュームに向けられた全てのパルスは、同じ偏光角を有する。その結果、異なるシンボルを有する3つの異なるボクセル44A、44B、及び44Cが書き込まれる。この方法では、各ボクセルが2つ以上の軌跡サイズのボリュームの重ね合わせであるため、各ボクセルは、軌跡34よりもスキャン方向により広くなる。
【0025】
図4は、一例では、比較方法38の実行によって修正された基板の層の相補的な複屈折マップを示している。図4の左側のパネルは、いくつかの行のボクセルが書き込まれた後の基板層上のXY位置の関数としての方位角のマップ56である。図4の右側のパネルは、位相差の大きさの対応するマップ58である。両方のマップは、ボクセル同士の間にかなりの未書き込みスペースがあるボクセルの規則的なアレイを示しており、各ボクセルは検出可能な位相差の大きさを有している。
【0026】
いくつかのシナリオでは、データ密度及び位相差の大きさは、低減されたスキャン速度で比較方法38を適用することによって増大され得る。しかしながら、この救済策では、データ記録の帯域幅を対応して増大させることはできない。さらに、データ密度は、最終的に、書き込みビームが集束され得る軌跡34の最小サイズによって制限されるであろう。前に述べたように、軌跡の最小サイズは、理想的な場合には回折限界に近づき得るが、実際には光学的非理想性のためにはるかに大きくなる可能性がある。
【0027】
これらの問題を考慮して、図5は、データを基板に光学的に記録するための改良した方法60の態様を示している。方法60の62において、レーザ26を励起して、コヒーレント光パルス列が提供される。図5のグラフ64は、方法60の実行中にレーザ26からのコヒーレントパルス列の瞬間パワーを表す。比較方法38のようにレーザからのパルス列の振幅を変調する代わりに、方法60の振幅は、閾値、例えば、基板の複屈折を変更するのに十分なエネルギーを提供するための閾値を超えて維持される。いくつかの例では、振幅は一定に保持され得る。46’において、レーザからのコヒーレント光パルス列が基板の所定の深さの層に集束される。より具体的には、コヒーレント光パルス列は、軌跡34に焦点が合わせられる。48’において、アクチュエータ36は、それが移動する基板に対して軌跡に相対速度を与えるように作動される。データが基板の複数の深さ層に書き込まれる例では、焦点システム32は、上記のように、焦点深さを調整するために適切に制御され得る。
【0028】
50’において、コヒーレント光パルス列の偏光角は、軌跡が相対速度で基板を通って移動し続けるので、ボクセルを現在の軌跡内に書き込むための複屈折の所定の方位角を提供するように変調される。一例では、図5のグラフ72は、PM30によって制御されるコヒーレント光パルス列の偏光角を表し、グラフ74は、現在の軌跡で基板に符号化される複屈折の大きさを表す。この方法では、相対速度、相対速度の方向における軌跡の幅、及び偏光角の変調レートは、基板が、軌跡の幅内で、光パルス列の偏光角の異なる2つ以上のパルスを受け取ることができるようなものである。換言すると、偏光角が変調されている間に、コヒーレント光パルス列は、相対速度で基板を通って移動する軌跡34に焦点を合わせたままである。この動作により、軌跡の幅内で、偏光角が異なる2つ以上のパルスが発生(deliver)する。2つ以上のパルスは、全て軌跡の幅内の基板の異なる部分に、2つ以上の異なるシンボルを記録する。いくつかの実施態様では、偏光角は、期間T=W/V内で少なくとも1回変更され得、ここで、Vは相対速度であり、Wは相対速度の方向における軌跡の幅である。
【0029】
図5に示されるように、偏光角が変調され、軌跡が基板を通って移動し続けるので、偏光角が異なる2つ以上のパルスが、基板の軌跡サイズのボリューム内で受け取られる。当然、2つ以上のパルスを受け取る軌跡サイズのボリュームは、固体基板の一連(例えば、行)の連続した一致する(congruent:合同な)複数のボリュームのうちの1つであり得る。いくつかの例では、偏光角は引き続き変調され、コヒーレント光パルス列の振幅は、軌跡が一連のボリューム内のあるボリュームから別のボリュームに移動する際に維持され続ける。
【0030】
2つ以上のパルスの受け取りによって、軌跡の幅内に2つ以上のボクセル44’が形成される。一般に、2つ以上のボクセル(例えば、ボクセル44A’、44B’、44C’)のそれぞれは、基板のその後の読み取り中に光をプローブするために異なる複屈折を提示し得る。別の言い方をすれば、2つ以上のパルスは、軌跡の幅内の基板の異なる部分に、2つ以上の異なるシンボルを記録することができる。
【0031】
図5の方法は、誘電体基板における光データ記憶の多光子メカニズムによって通知される。特に、照射軌跡での高エネルギーパルスの蓄積は、基板の照射量をプライミングし、書き込みプロセスに益々柔軟にさせる。このシナリオでは、所与のボリューム内で受け取られた最終パルスのみが波長板の向きを最終値に固定し、それによりシンボルをボクセルにコミットする。従って、連続的又は略連続的な行の書き込まれたボクセル44’が基板内に形成され得る。これにより、データを高密度及び高帯域幅で記録することができる。
【0032】
所与のボクセル44’の観点から、軌跡34内で受け取られる2つ以上のパルスには、1つ又は複数の初期(early)パルスと、1つ又は複数の後期(late)パルス(すなわち、初期パルスのいずれかよりも後で受け取られるパルス)とが含まれる。初期パルスにより、軌跡の下のボリューム全体がデータ書き込みに対してより柔軟になる。後期パルスは、軌跡が移動する直前に、そのボリューム内の左端のボクセルの複屈折を設定する。例えば、ボクセル44C’の観点から、パルス76Aは初期パルスであり、パルス76Bは後期パルスである。パルス76Aは、ボクセル44C’に対応するボリュームを含む、軌跡の下のボリュームをプライミングする。次に、後期パルス76Bは、ボクセル44C’の複屈折をその最終値に設定する。後期パルスを送信した直後に、軌跡はボクセル44C’に出入りし、符号化した複屈折、特に後期パルスの偏光角によって決定される複屈折の方位角を安全に保つ。事実上、1つ又は複数の初期パルスは、1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって最終的に設定される方位角で、各ボクセルの複屈折の位相差の大きさを先制的に増大させる。この増大は、初期パルスが受け取られないという仮定の場合と比較しており、この場合に、位相差の大きさは非常に小さい可能性がある。
【0033】
図6は、一例では、例示的な方法60の実行によって修正された、基板の層の相補的な複屈折マップを示している。図6の左側のパネルは、いくつかの行のボクセルが書き込まれた後の基板層上のXY位置の関数としての方位角のマップ78である。図6の右側のパネルは、位相差の大きさの対応するマップ80である。両方のマップは、ボクセル同士の間にスペースが殆ど又は全くないボクセルの規則的なアレイを示しており、各ボクセルは強い位相差の大きさを有している。
【0034】
引き続き図面を参照すると、図7のマップ82は、いくつかの行のボクセルが書き込まれた後の基板12の単層上のXY位置の関数としてプロットされた実験的な方位角マップである。偏光イメージングによって取得したこれらのデータは、図5の方法に従って形成された修正された基板が、隣接する第1及び第2の複屈折ボクセルボリュームを有する少なくとも1つの一連の隣接するボクセルボリュームを含むことを示している。マップ82の多くの例では、第1のボクセルボリュームの複屈折は、第1の書き込まれるシンボルを符号化し、第2のボクセルボリュームの複屈折は、第1のもの(書き込まれるシンボル)と等しくない第2の書き込まれるシンボルを符号化する。特に、第1のボクセルボリュームの複屈折は、第2のボクセルボリュームの複屈折と方位角が異なり得る。図7のプロット84は、マップ82の示された走査線のセクションを通る1Dスライスを示している。プロットは、シンボル同士の間の非常に鋭い遷移を示しており、プライミングされた基板材料が書き込みビームの変化する偏光に非常に迅速に応答することを示している。
【0035】
一時的に図5に戻ると、グラフ74は、位相差の大きさの十分に高い値、すなわち、各シンボルを他の可能なシンボルと区別するのに十分な解像度で、ボクセル複屈折が利用可能な読み取り構成要素によって測定可能である値を達成するために、多くのパルスを所与の軌跡に向ける必要があるかもしれないことを示す(下記参照)。この状態は、初期のデータの書き込みによってプライミングされていないボクセルをデータのセクターの境界に含む、行の第1のボクセルを書き込むのに困難を示す可能性がある。しかしながら、この問題でさえ、移動する軌跡を介して一連の初期パルス及び後期パルスを提供することで対処することができる。特に、書き込みビームの偏光角は、軌跡が境界領域を通って移動する際に広範囲の角度によって変調され、その領域に特定のシンボルをコミットするのを回避し、それでも軌跡内の領域をプライミングすることができる。次に、軌跡が境界領域を完全に出て、第1のボクセルが書き込まれる基板の部分内に入ると、偏光角は、第1のボクセルに望ましい方位角を達成するように変調される。
【0036】
事実上、軌跡がまだ部分的に境界領域内にある間に送達される様々な偏光角のパルスは、第1の書き込まれたボクセルの観点からの「初期」パルスである一方、軌跡が境界領域を一度出て送達される特定の偏光角のパルスは、そのボクセルの観点から「後期」パルスである。この例では、初期パルスの偏光角は、書き込まれるボクセルの外側であるが軌跡の幅内にある位相差の大きさが、シンボル符号化閾値を下回ったままであるように変化し得る。1行又は他の一連のボクセルのうちの初期ボクセルを予めシード処理(re-seeding)又はプライミングする他の方法も想定される。例えば、そのようなプライミングは、書き込みビームの偏光状態を、現在の実施態様におけるどのシンボルにも対応しない状態に変調することによって実行(enacted)され得る。いくつかの非限定的な例では、平面偏光が各シンボルを書き込むために使用される実施態様において、書き込みビームの偏光状態は、円形又は他に楕円偏光に変調され得る。
【0037】
一時的に図2に戻ると、変調システム28Aを備えた書き込みヘッド20Aは、各基板ボクセルを連続的に記録するように構成され得る。しかしながら、本開示に完全に一致する他の書き込みヘッドは、スループットを向上させるために並列又は超並列データ記録をサポートする。データを並列に書き込むために、高出力レーザの出力を独立して変調された複数の子ビームに分割して、複数のボクセルを同時に書き込むことができる。しかしながら、各子ビームは、書き込むシンボルに適した特定の偏光状態に回転する必要がある。
【0038】
図8は、光データ記録システム10Bの例示的な書き込みヘッド20Bの態様を示している。書き込みヘッド20Bは、高出力レーザ26及び変調システム28Bを含む。変調システムは、電子的にアドレス指定可能な偏光変調器(PM)30、及び焦点システム32を含む。並列書き込みを可能にするために、書き込みヘッド20Bは、電子的にアドレス指定可能な液晶空間光変調器(LCSLM)86Bも含む。
【0039】
LCSLM86Bは、動的デジタルホログラムとして構成される。LCSLMは、レーザ26のコヒーレント波面を受け取るピクセル要素のアレイを含む。各ピクセル要素内の液晶(LC)は、その要素を通過する放射照度に可変の位相遅延を与える。最先端のLCSLMでは、位相遅延は、アレイの全てのピクセル要素に共通する固有の方向にある。各ピクセル要素は独立してアドレス指定できるため、可変位相遅延の大きさは、ピクセルレベルまで制御することができる。他の格子と同様に、LCSLMの近距離場(near-field)に与えられた位相遅延は、基板12が位置付けされる遠距離場(far-field)に干渉パターンを作成する。LCSLMの各ピクセル要素からの近距離場位相遅延を制御することによって、遠距離場干渉パターンを制御して、基板の任意の層の各ボクセルを所望の強度で照射することができる。
【0040】
図8の書き込みヘッド20Bにおいて、LCSLM86Bからのホログラフィック投影は、ホログラフィック投影の偏光状態を制御可能に可変の角度で回転させるように構成された非イメージング能動光学系であるPM30を通過する。基板に対して、ホログラフィック投影は、書き込みビームの平行な2Dアレイとして「表示」され、各書き込みビームが制御された偏光及び強度を有しており、各ビームが基板12の対応するボクセルにマッピングされる。ビーム(つまり、ボクセル)を書き込むためのLCSLMピクセルのマッピングは必ずしも1:1のマッピングではないが、他の適切なマッピングの中でも、2:1、4:1、又は10:1の場合がある。いくつかの例では、実際に達成可能な書き込みビームの数は、LCSLMのピクセル数の約1/4である。
【0041】
書き込みヘッド20Bでは、LCSLM86B及びPM30は、それぞれ、エンコーダ18に動作可能に結合される。LCLSMに対して、エンコーダは、ホログラフィック投影をデジタル的に規定する電子信号を提供する。PMに対して、エンコーダは、ホログラフィック投影の偏光状態に適用される可変回転を規定する電子信号を提供する。
【0042】
いくつかの実施態様では、LCSLM86Bのピクセル位置のアレイは、レーザ26の波面に順次露光される重なり合わない又はわずかに重なり合う複数のホログラフィックゾーンにグループ化され得る。各ホログラフィックゾーンは、任意の所望の形状(例えば、長方形、くさび形、リング形等)の2次元領域であり得る。従って、LCSLM86Bは、LCSLM対レーザの相対位置を変更するように構成された走査ステージに機械的に結合することができる。このようにして、LCSLMの各ホログラフィックゾーンを順番に照射することができる。走査ステージは、並進及び/又は回転することができ、LCSLMがアドレス指定される度に複数回(4、9、16回等)前進することができる。このアプローチは、LCSLMの時間帯域幅を、その最大リフレッシュレートを超えて効果的に乗算する。それにもかかわらず、いくつかの例では、レーザ、LCSLM、PM、及び基板を所定の位置に固定することができる。データが基板12の複数の深さ層に書き込まれる例では、調整可能な対物レンズ焦点システム32は、LCSLMからの書き込みビームの放射照度を基板の任意の選択した深さ層に集束させるように構成される。
【0043】
上記の構成では、LCSLM86Bは、主に、レーザ波面を必要な数の子ビームに分割するために使用される一方、PM30は、書き込まれるデータに基づいて遠距離場偏光の回転を設定する。他の例では、単一のLCSLMを使用して、位相と偏光との両方をピクセルレベルまで制御する。この動作は、適切に構成されたLCSLMの能力の範囲内であり、図9の書き込みヘッド20Cによって実行される。
【0044】
図9のLCSLM86Cのピクセル要素のアレイは、波面の異なる部分の位相及び偏光を異なる量だけ変調し、異なる部分から書き込み可能な光学特性を有する基板に光を回折するように構成される。特に、LCSLMは、波面の様々な部分を様々な近距離場偏光に変調し、様々な遠距離場偏光で基板ボクセルのアレイに光を画像化するように構成される。この目的のために、エンコーダロジックは、データを受け取り、イメージング光学系から回折された光によってデータが基板に書き込まれるように、位相及び偏光の変調を制御するように構成される。そのようなデータは、イメージング光学系から回折された光によって同時に書き込まれた同等でない第1及び第2のデータ値を含み得る。2つの異なるパラメータの制御は、独立して、又は相関関係を使用して実行することができる。
【0045】
概念的には、位相と偏光との両方を制御するより直接的なモードは、各パラメータを独立して制御することである。これは、様々なピクセル要素が位相を変調するためにアドレス指定可能であり、偏光を変調するために独立してアドレス指定可能であるLCSLMを介して達成することができる。換言すると、LCSLMは、ネマティックダイレクタ(nematic director)に2つの独立した自由度を提供するように構成される。一方向への回転は、位相及び他の偏光に影響を与える。事実上、LCSLM86Cのピクセル構成により、各ピクセルがX及びY偏光成分の波面の位相を独立して変調できるようになり得る。こうして、入射波面が平面偏光されている場合に、修正されたLCSLMは、独立してアドレス指定可能な電極に印加される電圧Vij及びUijによって制御され、波面の各部分を独立して可変的に回転及び可変的に遅延させることができる。
【0046】
位相及び偏光の相関制御は、別の有用なデータ書き込みモードの基礎である。さらに、相関制御は、ピクセル毎に1つの被写界深度のみを提供するLCSLMを使用して実現することができる。この目的のために、LCSLM86Cは、2つの異なる、しかし相互に関連するホログラムを同時に投影するようにプログラムすることができ、一方は水平偏光の位相差(phase retardance)を表し、他方は垂直偏光の位相差を表す。
【0047】
一時的に図1Aに戻ると、光データ記録システム10Aの読み取りヘッド90は、読み取りコントローラ92によって供給されるパラメータに従って基板12Aに記憶されているデータを読み取るように構成される。次に、データは、デコーダ94に渡され、デコーダ94は、データを復号化して読み取りバッファ96に出力し、読み取りバッファ96から出力ストリーム98が利用可能になる。
【0048】
図10は、例示的な読み取りヘッド90の態様を示している。読み取りヘッドは、偏光光学プローブ100及び解析カメラ(analyzer camera)102を含む。偏光光学プローブは、低出力ダイオードレーザ又は他の偏光光源を含み得る。読み取りコントローラ92は、偏光光学プローブに動作可能に結合され、偏光光学プローブの発光の偏光面の角度を制御するように構成される。
【0049】
解析カメラ102は、高解像度/高フレームレートのCMOS又は他の適切な光検出器アレイを含み得る。解析カメラは、偏光光学プローブ100からの光が基板12Aのボクセルと相互作用した後に、そのような光を画像化するように構成される。他の例では、解析カメラの代わりに、1つ又は複数の個別のフォトダイオード又は他の検出器を使用してもよい。図10が、偏光された光線が媒体を通ってカメラに透過することを示しているが、光線は、代替の構成では、媒体からの反射によってカメラに到達し得る。
【0050】
解析カメラ102によって取得された各画像フレームは、同時に又は迅速に連続して取り込まれた複数の構成(component:成分)画像を含み得る。解析カメラは、構成画像の対応するピクセルアレイで、異なる偏光面の局所的な強度を解決することができる。この目的のために、解析カメラは、例えば、液晶リターダー(retarder)又はポッケルス(Pockels)セルの形態の切り替え可能又は調整可能な偏光コントロールを含み得る。1つの特定の例では、偏光された光学プローブ100が4つの異なる偏光角を経て回転される際に、基板12の各標的部分の4つの画像が解析カメラによって順番に取得される。このプロセスは、多次元ベクトルの基底ベクトルの測定に似ており、ここで、「ベクトル」は、画像化されたターゲット部分のボクセルの複屈折特性をキャプチャする。いくつかの例では、背景画像も取得され、これは、構成画像内のサンプルに依存しない偏光ノイズの分布をキャプチャする。
【0051】
データが基板12の複数の層から読み取られる例では、読み取りヘッド90は、調整可能な焦点収集システム104を含み得る。調整可能な焦点収集システムは、光記憶媒体の選択した深さ層から回折した光を集め、及び他の光線を拒否する(除去する)。他の実施態様では、干渉法に基づくレンズレスイメージングを使用することができる。さらに他の実施態様では、読み取りヘッドと基板との間の距離を変化させて、解析カメラ又は他の検出器によって画像化された基板の深さ層を選択することができる。
【0052】
図10において、データデコーダ94は、解析カメラ102から構成画像を受け取り、基板12に格納されたデータを検索するために必要な画像処理を実行するように構成される。そのようなデータは、機械学習法及び/又はカノニカル(canonical)方法に従って復号化され得、それらの方法では、観察可能な物理的特性が1つ又は複数の中間体を介して基板から読み取られたデータに接続される。
【0053】
多数の変形、拡張、及び省略も同様に企図されるので、前述の説明及び図面は、限定的な意味で考慮すべきではない。例えば、図5は、方位角が変化するが、パルス列振幅が一連のボクセルに亘って一定に保たれるデータ記録シナリオを示しているが、その態様は厳密には必要ではない。他の例では、パルス列振幅は、閾値振幅、例えば、本明細書に開示するボクセルプライミング効果を達成するための最小振幅を超えて変調され得る。そのアプローチは、同じ方位角を示す波長板が波長板の相対的な強度によって区別される符号化スキームを可能にし、書き込まれた各シンボルに利用可能なビットシーケンスを長くすることができる。
【0054】
上記の説明は、コヒーレント光パルス列の焦点軌跡34が一定の相対速度で基板12を通って移動することができることを示しているが、他の例では、書き込みヘッド、書き込みビーム、及び/又は基板の動きを制御する機構は、書き込みプロセス中に相対速度を変化させるように制御することができる。例えば、軌跡は、基板の中にデータを書き込むのを容易にするために、基板の特定のボリュームに亘って一時停止され得る。
【0055】
上記の説明が、シンボル空間に固定された複数の方位角を生成するために、コヒーレント光パルス列を対応する固定した複数の偏光状態に変調することができることを示している。しかしながら、いくつかの例では、動的等化及び事前歪みが、生成された偏光状態に適用され得、それによって、連続範囲の偏光状態が実際に使用される。このアプローチは、ボクセルが非常に高密度で書き込まれる場合に、あるボクセルから別のボクセルへの複屈折の最適な遷移を可能にし得る。
【0056】
さらに、図8及び図9は、LCSLM技術を使用する並列データ書き込みを示しているが、他の多くの並列書き込みアプローチもまた企図される。これらには、例として、デジタルマイクロミラーアレイ及び他のMEMSアレイ構造、固定位相板、及びビームスプリッターを介した空間光変調が含まれる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明する方法及びプロセスは、1つ又は複数のコンピュータ装置のコンピュータシステムに結び付けられ得る。特に、そのような方法及びプロセスは、コンピュータアプリケーションプログラム又はサービス、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)、ライブラリ、及び/又は他のコンピュータプログラム製品として実現され得る。
【0058】
図11は、上記の方法及びプロセスのうちの1つ又は複数を実行することができるコンピュータシステム106の非限定的な実施形態を概略的に示している。コンピュータシステム106は簡略化した形態で示している。コンピュータシステム106は、1つ又は複数のベンチトップ又はサーバコンピュータ及び/又は専用の電子コントローラの形態を取ることができる。エンコーダ18、コントローラ22及び92、及びデコーダ94は、コンピュータシステム106の例である。
【0059】
コンピュータシステム106は、論理プロセッサ108、揮発性メモリ112、及び不揮発性記憶装置110を含む。コンピュータシステム106は、オプションで、表示サブシステム114、入力サブシステム116、通信サブシステム118、及び/又は図10に示されていない他の構成要素を含み得る。
【0060】
論理プロセッサ108は、命令を実行するように構成された1つ又は複数の物理装置を含む。例えば、論理プロセッサは、1つ又は複数のアプリケーション、プログラム、ルーチン、ライブラリ、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、又は他の論理構造の一部である命令を実行するように構成され得る。このような命令は、タスクの実行、データタイプの実装、1つ又は複数のコンポーネントの状態の変換、技術的効果の達成、又は他の方法で目的の結果に到達するために実装され得る。
【0061】
論理プロセッサは、ソフトウェア命令を実行するように構成された1つ又は複数の物理プロセッサ(ハードウェア)を含み得る。追加的又は代替的に、論理プロセッサは、ハードウェア実装ロジック又はファームウェア命令を実行するように構成された1つ又は複数のハードウェア論理回路又はファームウェア装置を含み得る。論理プロセッサ108のプロセッサは、シングルコア又はマルチコアであり得、その上で実行される命令は、順次、並列、及び/又は分散処理のために構成され得る。論理プロセッサの個々の構成要素は、オプションで、2つ以上の別個の装置に分散され得、それら装置は、遠隔に配置され、及び/又は協調処理のために構成され得る。論理プロセッサの態様は、クラウドコンピューティング構成で設定されたリモートアクセス可能なネットワークコンピュータ装置によって仮想化及び実行することができる。このような場合に、これらの仮想化された態様は、様々な異なるマシンの異なる物理論理プロセッサで実行されることが理解されよう。
【0062】
不揮発性記憶装置110は、本明細書で説明する方法及びプロセスを実施するために論理プロセッサによって実行可能な命令を保持するように構成された1つ又は複数の物理装置を含む。そのような方法及びプロセスが実施されると、不揮発性記憶装置110の状態は、例えば、異なるデータを保持するように変換され得る。
【0063】
不揮発性記憶装置110は、取り外し可能及び/又は組み込み式である物理装置を含み得る。不揮発性記憶装置110は、光メモリ(例えば、CD、DVD、HD-DF、Blu-Ray Disc等)、半導体メモリ(例えば、ROM、EPROM、EEPER、FLASHメモリ等)、及び/又は磁気メモリ(例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、テープドライブ、MRAM等)、又は他の大容量記憶装置技術を含み得る。不揮発性記憶装置110は、不揮発性、動的、静的、読み取り/書き込み、読み取り専用、順次アクセス、位置アドレス指定可能、ファイルアドレス指定可能、及び/又はコンテンツアドレス指定可能装置を含み得る。不揮発性記憶装置110は、不揮発性記憶装置110への電力が遮断された場合でも命令を保持するように構成されることが理解されよう。
【0064】
揮発性メモリ112は、ランダムアクセスメモリを含む物理装置を含み得る。揮発性メモリ112は、典型的に、ソフトウェア命令の処理中に情報を一時的に格納するために論理プロセッサ108によって利用される。揮発性メモリ112は、典型的に、揮発性メモリ112への電力が遮断されたときに命令を記憶し続けないことが理解されよう。
【0065】
論理プロセッサ108、揮発性メモリ112、及び不揮発性記憶装置110の態様は、1つ又は複数のハードウェア論理コンポーネントに一緒に統合することができる。このようなハードウェア論理コンポーネントには、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム固有集積回路(PASIC)及び特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム固有標準製品(PSSP)及び特定用途向け標準製品(ASSP)、システムオンチップ(SOC)、及び複雑なプログラマブル論理装置(CPLD)が含まれ得る。
【0066】
含まれる場合に、表示サブシステム114は、不揮発性記憶装置110によって保持されるデータの視覚的表現を提示するために使用され得る。視覚的表現は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)の形態を取ることができる。本明細書で説明する方法及びプロセスが、不揮発性記憶装置によって保持されるデータを変更し、こうして不揮発性記憶装置の状態を変換するので、表示サブシステム114の状態は、同様に、基になるデータの変化を視覚的に表すように変換され得る。表示サブシステム114は、事実上あらゆるタイプの技術を利用する1つ又は複数の表示装置を含み得る。そのような表示装置は、共有エンクロージャ内の論理プロセッサ108、揮発性メモリ112、及び/又は不揮発性記憶装置110と組み合わせることができ、又はそのような表示装置は、周辺表示装置であり得る。
【0067】
含まれる場合に、入力サブシステム116は、キーボード、マウス、タッチスクリーン等の1つ又は複数のユーザ入力装置を含むか、又はこのユーザ入力装置とインターフェースすることができる。含まれる場合に、通信サブシステム118は、本明細書に記載の様々なコンピュータ装置を互いに、そして他の装置と通信可能に結合するように構成することができる。通信サブシステム118は、1つ又は複数の異なる通信プロトコルと互換性のある有線及び/又は無線通信装置を含み得る。非限定的な例として、通信サブシステムは、無線電話ネットワーク、又は有線又は無線のローカル又はワイドエリアネットワークを介した通信(例えば、Wi-Fi接続を介したHDMI)のために構成され得る。いくつかの実施形態では、通信サブシステムは、コンピュータシステム106が、インターネット等のネットワークを介して他の装置との間でメッセージを送信及び/又は受信するのを可能にし得る。
【0068】
結論として、本開示の一態様は、固体基板にデータを記録する方法を対象としている。この方法は、コヒーレント光パルス列の偏光角を変調するステップと;偏光角が変調されている間に、コヒーレント光パルス列を、相対速度で固体基板を通って移動する軌跡に集束させるステップと;を含み、相対速度、相対速度の方向における軌跡の幅、及び偏光角の変調レートは、基板が、軌跡の幅内で、光パルス列の偏光角の異なる2つ以上のパルスを受け取るようなものであり、2つ以上のパルスは、軌跡の幅内の基板の異なる部分に、2つ以上の異なるシンボルを記録する。
【0069】
いくつかの実施態様では、2つ以上のパルスは、固体基板の1行の一致する複数のボリュームのうちの第1のボリューム内で受け取られ、ここで、この方法は、コヒーレント光パルス列の振幅を維持するステップと、軌跡がその行の第1のボリュームから第2のボリュームに移動する際に、偏光角を変調し続けるステップとをさらに含む。いくつかの実施態様では、2つ以上のパルスの受け取りによって、軌跡の幅内に2つ以上のボクセルが形成され、2つ以上のボクセルのそれぞれが、光をプローブするために異なる複屈折を提示する。いくつかの実施態様では、2つ以上のパルスには、1つ又は複数の初期パルスと、1つ又は複数の初期パルスのいずれかよりも後で受け取られる1つ又は複数の後期パルスとが含まれ、1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって、少なくとも1つのボクセルの複屈折が設定される。いくつかの実施態様では、1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって設定される複屈折の方位角が、1つ又は複数の後期パルスの偏光角によって決定される。いくつかの実施態様では、1つ又は複数の初期パルスの受け取りによって、1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって設定される方位角において少なくとも1つのボクセルの複屈折の位相差の大きさが増大される。いくつかの実施態様では、1つ又は複数の初期パルスの偏光角は、2つ以上のボクセルの外側であるが軌跡の幅内の位相差の大きさがシンボル符号化閾値を下回ったままであるように変化する。いくつかの実施態様では、偏光角を変調するステップは、一連の予め選択した角度を介してコヒーレント光パルス列の電場ベクトルの振動面を同期的に回転させるステップを含む。いくつかの実施態様では、コヒーレント光パルス列は、それぞれが10ピコ秒以下の持続時間を有する一連の光パルスを含む。
【0070】
本開示の別の態様は、固体基板を対象としている。この固体基板は、偏光イメージングによってプローブ可能な少なくとも1つの一連の隣接するボクセルボリュームを含み、少なくとも1つの一連のボクセルボリュームは、隣接する第1及び第2の複屈折ボクセルボリュームを含み、第1のボクセルボリュームの複屈折が第1の書き込まれるシンボルを符号化し、第2のボクセルボリュームの複屈折が第2に書き込まれるシンボルを符号化する。
【0071】
いくつかの実施態様では、第1の書き込まれるシンボルは、第2の書き込まれるシンボルとは異なる。いくつかの実施態様では、第1のボクセルボリュームの複屈折は、第2のボクセルボリュームの複屈折と方位角が異なる。いくつかの実施態様では、基板はシリカガラスを含む。
【0072】
本開示の別の態様は、データ記録システムを対象としている。データ記録システムは、軌跡に焦点を合わせたコヒーレント光パルス列の偏光角を変調するように構成された変調システムと;コヒーレント光パルス列を軌跡において受け取るように配置された固体基板と;偏光角が変調されている間に、相対速度で固体基板に対する軌跡の相対位置を変化させるように構成されたアクチュエータと;エンコーダと;を含む。エンコーダは、基板が軌跡の幅内で、光パルス列の偏光角が異なり、2つ以上の異なるシンボルを符号化する2つ以上のパルスを受け取るように、相対速度及び偏光角の変調レートを制御するように構成される。
【0073】
いくつかの実施形態では、2つ以上のパルスは、固体基板の一連の連続し、一致する複数のボリュームのうちの第1のボリューム内で受け取られ、エンコーダは、軌跡が一連の複数のボリュームのうちの第1のボリュームから第2のボリュームに移動する際に、コヒーレント光パルス列の振幅を維持するように構成される。いくつかの実施態様では、2つ以上のパルスの受け取りによって、軌跡の幅内に2つ以上のボクセルが形成され、2つ以上のボクセルのそれぞれが、光をプローブするために異なる複屈折を提示する。いくつかの実施態様では、2つ以上のパルスには、1つ又は複数の初期パルスと、1つ又は複数の初期パルスよりも後で受け取られる1つ又は複数の後期パルスとが含まれ、1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって、少なくとも1つのボクセルの複屈折の方位角が設定され、1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって設定される方位角は、1つ又は複数の後期パルスの偏光角によって決定される。いくつかの実施態様では、1つ又は複数の初期パルスの受け取りによって、1つ又は複数の後期パルスの受け取りによって設定される方位角において少なくとも1つのボクセルの複屈折の位相差の大きさが増大される。いくつかの実施態様では、データ記録システムは、コヒーレント光パルス列を放出するように構成されたレーザをさらに含み、変調システムは、偏光変調器及び空間光変調器の1つ又は複数を含む。いくつかの実施態様では、アクチュエータは、軌跡に対して固体基板を移動させるように構成される。
【0074】
本明細書で説明した構成及び/又はアプローチは、本質的に例示的なものであり、これらの特定の例は、多数の変形が可能であるため、限定的な意味で考慮すべきではないことが理解されよう。本明細書で説明した特定のルーチン又は方法は、任意の数の処理戦略のうちの1つ又は複数を表し得る。このように、図示及び/又は説明した様々な行為は、図示及び/又は説明した順序で、他の順序で、並行して実行され、又は省略され得る。同様に、上記のプロセスの順序を変更することができる。
【0075】
本開示の主題は、本明細書に開示した様々なプロセス、システム及び構成、並びに他の特徴、機能、行為、及び/又は特性の全ての新規で非自明な組合せ及びサブコンビネーションだけでなく、その全ての均等物も含む。
図1A
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