(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ハイブリッド動力伝達機構を備えるマシンと対応する制御方法
(51)【国際特許分類】
B64D 35/08 20060101AFI20240718BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240718BHJP
B64C 27/10 20230101ALI20240718BHJP
B64D 27/10 20060101ALI20240718BHJP
B64D 27/33 20240101ALI20240718BHJP
B64D 35/025 20240101ALI20240718BHJP
B64D 35/06 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B64D35/08
B60K17/04 Z
B64C27/10
B64D27/10
B64D27/33
B64D35/025
B64D35/06
(21)【出願番号】P 2021566999
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 FR2020050892
(87)【国際公開番号】W WO2020240134
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-24
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521126678
【氏名又は名称】ヴォルテエアロ
【氏名又は名称原語表記】VOLTAERO
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ボッティ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】エスティン,ディディエ
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03039614(FR,A1)
【文献】特表2008-545579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0010652(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0283519(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0068007(US,A1)
【文献】特開平08-198192(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108082500(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0027508(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/10 -27/12
B64D 27/10
B64D 27/33
B64D 35/025
B64D 35/06 -35/08
B64U 30/21
B64U 30/24
B64U 50/19 -50/20
B64U 50/34
B60K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構を備えたマシン(100)、例えば航空機であって、
前記動力伝達機構は、
羽根付き推進系(3)と、
前記羽根付き推進系(3)を駆動するのを可能にするように構成された第1熱機関(1A)及び第2熱機関(1B)を備える熱駆動系(1)と、
前記羽根付き推進系(3)を駆動するのを可能にするように構成された電気駆動系(2)であって、該電気駆動系の出力シャフト(26)が前記羽根付き推進系の入力シャフト(A3)に減速システムを介して接続され、且つ前記電気駆動系の出力シャフト(26)が前記熱駆動系(1)の出力シャフト(13)と同軸である電気駆動系(2)と、
該電気駆動系(2)に電力を供給するのを可能にするバッテリー(40)を備える電源システム(4)と、
前記熱機関(1A、1B)のいずれか又はそれぞれを係合させて前記羽根付き推進系(3)を駆動するのを可能にするように該熱機関(1A、1B)の前記出力シャフト(13)とそれぞれの前記熱機関(1A、1B)との間に構成されたクラッチシステム(10)と
を備え、
前記クラッチシステム(10)はまた、前記羽根付き推進系(3)に対して前記熱機関(1A、1B)のいずれか又はそれぞれを解放するのを可能にするように構成され、
前記電気駆動系(2)は前記熱駆動系(1)と前記羽根付き推進系(3)との間に前記熱駆動系(1)と直列に配置され、前記マシン(100)は、前記熱駆動系(1)の前記クラッチシステム(10)及び前記電気駆動系(2)の電源システム(4)を制御するための制御ユニットを備え、前記制御ユニットは、前記2つの熱機関(1A、1B)のいずれか一方を解放し、他の前記熱機関(1B)は係合されたままとし、前記電気駆動系(2)に電力を供給するよう前記電源システム(4)を制御して前記羽根付き推進系(3)を前記2つの熱機関(1A、1B)の1つと前記電気駆動系(2)とによって駆動するのを可能にし、或いは前記2つの熱機関(1A、1B)を使用可能に制御し、或いは前記2つの熱機関(11A、1B)をともに係合解除し前記電気駆動系(2)に電力を供給するよう前記電源システム(4)を制御して、前記電気駆動系(2)のみを使用して前記羽根付き推進系(3)を駆動するように構成されてなることを特徴とするマシン(100)。
【請求項2】
前記電気駆動系は、該電気駆動系の中心軸の周りに均等に配置された複数の電気モーター(201、202)を有することを特徴とする請求項1記載のマシン(100)。
【請求項3】
前記制御ユニットは前記2つの熱機関(1A、1B)を係合させて回転運動を前記熱駆動系(1)から前記羽根付き推進系(3)へ前記電気駆動系(2)を介して、前記バッテリー(40)を消費することも再充電するもなく、伝達するのを可能にするように構成されることを特徴とする請求項1又は2記載のマシン(100)。
【請求項4】
前記羽根付き推進系(3)は2つの羽根付きロータ(31、32)を備え、前記ロータ(31、32)はそれぞれ羽根が設けられた垂直回転シャフト(A31、A32)を備え、回転駆動状態では互いに反対方向に回転するように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項5】
該マシンは前記熱駆動系(1)の出力シャフト(13)を備え、前記熱駆動系(1)の前記クラッチシステム(10)は前記熱機関(1A、1B)の出力シャフトと回転運動を前記熱機関の1つ又はそれぞれから前記熱駆動系(1)の前記出力シャフト(13)へ伝達するように構成された運動伝達システム(12)との間に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項6】
前記動力伝達機構は減速システム(21)を備え、前記減速システム(21)は前記熱駆動系(1)の出力シャフト(13)と前記電気駆動系(2)の入力の間に配置された歯車列を備えることを特徴とする請求項1から5記載のマシン(100)。
【請求項7】
前記マシンは前記電気駆動系の出力シャフト(26)を備え、前記動力伝達機構は、前記電気駆動系(2)の出力に配置され回転運動を前記電気駆動系(2)から前記電気駆動系(2)の前記出力シャフト(26)へ伝達するように構成された伝達システム(23)を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項8】
前記動力伝達機構は、前記電気駆動系(2)の前記出力シャフト(26)と前記羽根付き推進系(3)の前記入力シャフト(A3)の間の前記減速システム(5)は、好ましくは遊星歯車列を備えることを特徴とする請求項1-7のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項9】
前記羽根付き推進系(3)の前記入力シャフト(A3)にかさ歯車減速装置(6)が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項10】
前記各電気モーター(201、202)は、例えば前記電気モーターの故障時に前記電気モーターを前記他の電気モーターから機械的に分離するのを可能にするクラッチ解除システム、例えばドッグ・クラッチ解除システムを備えることを特徴とする請求項
2に記載のマシン(100)。
【請求項11】
前記各熱機関(1A、1B)の出力は約150kWであり、前記電気駆動系(2)の出力は約180kWであり、好ましくは前記電気駆動系(2)の1電気モーター(201、202)当り60kWであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項12】
前記制御ユニットは前記2つの熱機関(1A、1B)を係合させ、前記電気駆動系(2)に電力を供給して前記羽根付き推進系(3)を前記2つの熱機関(1A、1B)と前記電気駆動系(2)の組み合わせによって駆動するのを可能にするように構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項13】
前記制御ユニットは前記2つの熱機関(1A、1B)を係合させて前記電気駆動系(2)を駆動し、一方で前記電気駆動系(2)を介して回転運動を前記熱駆動系(1)から前記羽根付き推進系(3)へ伝達しながら前記電源システム(4)の前記バッテリー(40)を再充電するのを可能にするように構成されることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項14】
前記マシンは前記電気駆動系(2)が収容され前記電気駆動系(2)を冷却するのを可能にする開口及び/又は空洞が形成されたケースを備え、前記動力伝達機構は、好ましくは前記熱機関(1A、1B)を冷却するための水冷システムを備えることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のマシン(100)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載のマシン(100)を制御するための方法であって、前記熱機関(1A、1B)の1つ又はそれぞれを前記羽根付き推進系(3)に対して係合させる又は解放すること、及び/又は前記電気駆動系の前記電源システム(4)を制御して前記電気駆動系(2)に電力を供給する又は前記バッテリー(40)を再充電することを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱駆動系及び電気駆動系を含む動力伝達機構を備える航空機などのマシンに概ね関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術は下記の構成を持つ動力伝達機構を備える航空機などのマシンを開示する。この動力伝達機構は羽根付き推進系、電気駆動系、電気駆動系に電力を供給するのを可能にするバッテリー、及びバッテリーの再充電を可能にする交流発電機を伴う熱機関を備える。
【0003】
しかし、熱駆動系の故障の場合、残る電力は航空機の安全な制御を保証するに十分でないと判明することがある。
【0004】
特許文献1は熱駆動系によって供給される動力に加えて追加の動力を供給して航空機のロータを駆動するために熱駆動系と、熱駆動系に並列に配置された電気駆動系とを備える航空機を記述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2016/083104号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題の全て又は一部を克服するのを可能にする新規のマシンを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明の主題は、動力伝達機構を備えたマシン、例えば航空機であって、前記動力伝達機構は、
羽根付き推進系と、
前記羽根付き推進系を駆動するのを可能にするように構成された第1熱機関及び第2熱機関を備える熱駆動系と、
前記羽根付き推進系を駆動するのを可能にするように構成された電気駆動系と、
前記電気駆動系に電力を供給するのを可能にするバッテリーを備える電源システムと、
前記熱機関のいずれか又はそれぞれを係合させて前記羽根付き推進系を駆動するのを可能にするように構成されたクラッチシステムと
を備え、前記クラッチシステムはまた、前記羽根付き推進系に対して前記熱機関のいずれか又はそれぞれを解放するのを可能にするように構成されることを特徴とするマシンである。
【0008】
互いに対して解放可能な2つの熱機関を備えるこのようなハイブリッド動力伝達構成は、熱機関の1つが不良である場合に航空機の安全な制御を保証するのを可能にする。このような構成は、マシンがヘリコプターである場合に特に有用である。
【0009】
従って、マシンのプロペラ推進系は電気駆動系及び/又は一部又は全部が使用される熱駆動系によって独立して又は同時に駆動されてもよい。
【0010】
従って、特にマシンが航空機である場合の離陸時の安全が向上する。電気伝達チェーンに問題がある場合、熱駆動系は2つの熱機関の1つ又は組み合わせを使用してプロペラを駆動するために引き継いでよい。
【0011】
また、電気推進モードだけを使用する可能性は、航空機が市街地又は市街地周辺で少ない騒音生成で離陸し着陸するのを可能にする。
【0012】
熱機関の他方を係合させたまま熱機関の1つを解放できることは、機関故障を克服する又は、例えば巡航構成でエネルギー消費を減らすのを可能にする。
【0013】
幾つかの実施形態によれば、本マシンは次の利点の全て又は幾つかを得るのを可能にする:
・離陸及び着陸時の低騒音
・使用可能駆動系冗長性と駆動系構成の適合可能性とによる高度の動作時安全性
・エネルギー消費の可能な最適化
・離陸及び着陸時のCO2排出の低減
・タービンの使用と比べた動力伝達機構の保守作業の低減可能性。
【0014】
本マシンはまた、次の特徴の1つ以上を任意の技術的に可能な組み合わせで備えてもよい。
【0015】
本発明の1つの有利な特徴によれば、前記電気駆動系は前記熱駆動系と前記羽根付き推進系との間に前記熱駆動系と直列に配置される。
【0016】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記熱駆動系の前記クラッチシステム及び前記電気駆動系の前記電源システムを制御するための制御ユニットを備え、前記制御ユニットは前記2つの熱機関を係合させて回転運動を前記熱駆動系から前記羽根付き推進系へ前記電気駆動系を介して、前記バッテリーを消費することも再充電するもなく、伝達するのを可能にするように構成される。
【0017】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記熱駆動系の前記クラッチシステム及び前記電気駆動系の前記電源システムを制御するための制御ユニットを備え、前記制御ユニットは前記2つの熱機関の1つを、例えば前記熱機関が故障の場合に解放し、前記他の熱機関は係合されたままで、前記電気駆動系に電力を供給するために前記電源システムを制御して前記羽根付き推進系を前記2つの熱機関の1つと前記電気駆動系とによって駆動するのを可能にするように構成される。
【0018】
本発明の1つの有利な特徴によれば、前記羽根付き推進系は2つの羽根付きロータを備え、前記ロータはそれぞれ羽根が設けられた垂直回転シャフトを備え、回転駆動状態では互いに反対方向に回転するように構成される。
【0019】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記熱駆動系の出力シャフトを備え、前記熱駆動系の前記クラッチシステムは前記熱機関の出力シャフトと回転運動を前記熱機関の1つ又はそれぞれから前記熱駆動系の前記出力シャフトへ伝達するように構成された運動伝達システムの間に配置される。
【0020】
本発明の1つの有利な特徴によれば、
前記動力伝達機構は減速システムを備え、前記減速システムは前記熱駆動系の出力シャフトと前記電気駆動系の入力の間に配置された歯車列を好ましくは備える。
【0021】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記電気駆動系の出力シャフトを備え、前記動力伝達機構は、前記電気駆動系の出力に配置され回転運動を前記電気駆動系から前記電気駆動系の前記出力シャフトへ伝達するように構成された伝達システムを備える。
【0022】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記電気駆動系の出力シャフトと前記羽根付き推進系の入力シャフトとを備え、前記動力伝達機構は、前記電気駆動系の前記出力シャフトと前記羽根付き推進系の前記入力シャフトの間に減速システム、好ましくは遊星歯車列を備える。
【0023】
本発明の1つの有利な特徴によれば、前記羽根付き推進系の前記入力シャフトにかさ歯車減速装置が設けられている。
【0024】
本発明の1つの有利な特徴によれば、前記電気駆動系は、好ましく中心軸の周りに均等に配置された複数の、好ましくは3つの電気モーターを有する。
【0025】
本発明の1つの有利な特徴によれば、前記各電気モーターは、例えば前記電気モーターの故障時に前記電気モーターを前記他の電気モーターから機械的に分離するのを可能にするクラッチ解除システム、例えばドッグ・クラッチ解除システムを備える。
【0026】
本発明の1つの有利な特徴によれば、前記各熱機関の出力は約150kWであり、前記電気駆動系の出力は約180kWであり、好ましくは前記電気駆動系の1電気モーター当り60kWである。
【0027】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記熱駆動系の前記クラッチシステム及び前記電気駆動系の前記電源システムを制御するための制御ユニットを備え、前記制御ユニットは前記2つの熱機関を係合させ、前記電気駆動系に電力を供給して前記羽根付き推進系を前記2つの熱機関と前記電気駆動系の組み合わせによって駆動するのを可能にするように構成される。
【0028】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記熱駆動系の前記クラッチシステム及び前記電気駆動系の前記電源システムを制御するための制御ユニットを備え、前記制御ユニットは前記2つの熱機関を係合させて前記電気駆動系を駆動し、一方で前記電気駆動系を介して回転運動を前記熱駆動系から前記羽根付き推進系へ伝達しながら前記電源システムの前記バッテリーを再充電するのを可能にするように構成される。
【0029】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記熱駆動系の前記クラッチシステム及び前記電気駆動系の前記電源システムを制御するための制御ユニットを備え、前記制御ユニットは前記2つの熱機関を解放して前記電源システムを制御し前記電気駆動系に電力を供給して前記羽根付き推進系を前記電気駆動系だけで駆動するのを可能にするように構成される。
【0030】
1つの特定の態様によれば、上記制御ユニットによって許可される様々な動作モードは互いに選択されうる。
【0031】
本発明の1つの有利な特徴によれば、該マシンは前記電気駆動系が収容され前記電気駆動系を冷却するのを可能にする開口及び/又は空洞が形成されたケースを備え、前記動力伝達機構は、好ましくは前記熱機関を冷却するための水冷システムを備える。
【0032】
本発明はまた、上記のマシンを制御するための方法であって、前記熱機関の1つ又はそれぞれを前記羽根付き推進系に対して係合させる又は解放すること、及び/又は前記電気駆動系の前記電源システムを制御して前記電気駆動系に電力を供給する又は前記バッテリーを再充電することを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の他の特徴及び利点は、下記の説明からより明らかとなろう。下記の説明は純粋に例示的で非限定で添付の図面を参照しながら読まれるべきである。
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る航空機、この場合ヘリコプターの概略図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る
図1のような航空機の動力伝達機構の概略図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態に係る動力伝達機構の、熱推進及び電気推進を組み合わせる、例えば離陸及び/又は上昇モード時の概略図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態に係る航空機の動力伝達機構の熱推進及びバッテリー再充電モード時の概略図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態に係る航空機の動力伝達機構の電気推進モードのみ時の概略図である。
【
図6】本発明の1つの実施形態に係る航空機の動力伝達機構の熱推進モードのみ時の概略図である。
【
図7】本発明の1つの実施形態に係る飛行中の航空機の、例えば水平飛行及び/又は熱機関の1つが故障の場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の概念は、本発明の概念の実施形態を示す添付の図面を参照して下記により完全に記述される。図面において、構成要素のサイズ及び相対サイズは明確さのために誇張される場合がある。全図面に亘って類似の数字は類似の構成要素を指す。しかし、本発明の概念は多数の異なる形態で実施されてもよく、本書に説明された実施形態に限定されると解釈されるべきでない。それどころか、これらの実施形態は、記述が完全で本発明の概念の範囲を当業者に伝えるように提示されている。下記の実施形態は簡略化のために航空機の用語及び構造と関連して説明される。下記に説明するように、本マシンはまた、航海用マシンであってもよい。
【0035】
明細書をとおして「1つの実施形態」への言及は、1つの実施形態に関連して記述された機能、構造、又は特定の特徴は本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、明細書をとおして様々な箇所にある表現「1つの実施形態において」は、必ずしも同じ実施形態への言及ではない。また、1つ以上の実施形態の機能、構造、又は特定の特徴は、任意の適切なやり方で組み合わされてもよい。
【0036】
図1に動力伝達機構を備えるヘリコプター100であるマシンが例示されている。
【0037】
別の例では、マシンは、飛行機又はドローンなどの別の種類の航空機であってもよい。マシンはまた、航海用マシンであってもよい。
【0038】
ヘリコプターの動力伝達機構は2つの反対回転ロータ31、32を含む羽根付き推進系3を備える。別の例では、単一ロータを備えてもよい。
【0039】
ヘリコプターはまた、前記動力伝達機構又は独立した駆動系で駆動されうるトルク平衡ロータ又は何か他のトルク平衡装置を備えてもよい。マシンが2つの反対回転ロータを備える場合、トルク平衡装置は必要ない。
【0040】
下記の記述はヘリコプターについてされるが、羽根付き推進系を備えた他の種類のマシンにも当てはまる。特に、マシンの種類に依って、航空機の羽根付き推進系は飛行機又は船用の1つ以上のプロペラを備えてもよいことは理解されるであろう。
【0041】
また、本記述は仏国特許出願第1801092号明細書(本願の出願日にまだ未公開)に記載されたマシンなどのマシンに、この特許出願第1801092号明細書に記載された熱機関を下記のように互いに分離されうる2つの熱機関からなる組立体で置き換えることで、適用されうる。
【0042】
図2に示すように、動力伝達機構は、羽根付き推進系3を駆動するのを可能にするように構成された熱駆動系1(下記に詳細に記述する)を備える。
【0043】
熱駆動系
熱駆動系1は第1熱機関1A及び第2熱機関1Bを含む。第1及び第2熱機関のそれぞれは出力シャフトを備える。
【0044】
各熱機関1A、1Bの出力は、例えば150kWである。
【0045】
動力伝達機構は熱機関1A、1Bを冷却するための水冷システムを好ましくは備える。
【0046】
クラッチシステム
動力伝達機構は熱機関1A、1Bのいずれか又はそれぞれを係合させて羽根付き推進系3を駆動するのを可能にするクラッチシステム10を備える。
【0047】
クラッチシステム10は、熱駆動系1と羽根付き推進系3の間で運動を伝達するための運動伝達チェーンと第1熱機関1A及び/又は第2熱機関1Bを係合させるのを可能にするように選択的に制御されうるクラッチ10A及びクラッチ10Bを備える。
【0048】
クラッチシステム10はまた、熱機関1A、1Bのいずれか又はそれぞれを羽根付き推進系3から分離(解放)するのを可能にするように構成される。
【0049】
「羽根付き推進系3から分離する」の意味は、熱駆動系1が、熱駆動系1と羽根付き推進系3の間を延びる力又は運動伝達チェーンから切り離されることである。
【0050】
熱駆動系1のクラッチシステム10は、熱機関1A、1Bの出力シャフトと運動伝達系12の間に置かれる。
【0051】
運動伝達システム12は熱機関の1つ又はそれぞれから熱駆動系1のシャフト13(出力シャフトと呼ばれる)へ回転運動を伝達するように構成される。
【0052】
システム12は、例えば一組の歯車、又はホイール及びベルトセット又はチェーンセットを備える。
【0053】
出力シャフト13は下記の運動伝達機構を介して羽根付き推進系3に結合され又は結合可能である。
【0054】
伝達機構
伝達機構は熱駆動系1の出力シャフト13と電気駆動系2の入力の間に位置する歯車列21を備える減速システムを備える。
【0055】
この歯車列は入力シャフト13と、電気駆動系2の入力シャフトによって支持された遊星歯車とを含む。
【0056】
伝達機構はまた、電気駆動系2の出力に配置され電気駆動系2からの回転運動を電気駆動系のシャフト(出力シャフト26と呼ばれる)へ伝達するように構成された伝達システム23を備える。電気駆動系2は図に示した例において複数の電気モーターを備える。
【0057】
出力シャフト26は出力シャフト13と同軸であるのが好ましい。
【0058】
伝達システム23は、出力シャフト26を介して減速システム5に作用するのを可能にする例えば約1.4の比の減速ユニットを構成する。
【0059】
減速システム5は減速比が、例えば約3である遊星歯車列5を備える。
【0060】
遊星歯車列5は電気駆動系2の出力シャフト26と羽根付き推進系3の入力シャフトA3の間に位置する。
【0061】
電気駆動系
動力伝達機構はまた、羽根付き推進系3を駆動するのを可能にするように構成された電気駆動系2を備える。
【0062】
電源システム4は電気駆動系2に電力を供給するのを可能にするバッテリー40を備える。勿論、バッテリー40は一組のバッテリーを備えてもよい。
【0063】
電源システム4はまた、高電圧ハウジング41及び制御器42を備える電気管理システム41、42を備える。
【0064】
高電圧ハウジング41はバッテリー40と電気駆動系2の間の電源回路を開閉するのを可能にする。制御器42はバッテリー40によって提供されるか又は電気駆動系2が発電機として動作する時に生成される電流を処理するのを可能にする。
【0065】
図に示した例では、電気駆動系2は複数の電気モーター201、202を有する。電気モーターは好ましくは中心軸の周りに均等に配置される。有利にも、電気駆動系は出力軸26と同軸の仮想軸の周りに120度ピッチで配置された3つのモーターを備える。従って、図に示した例では、2つのモーターだけが示されているが、3番目が存在する。
【0066】
電気駆動系2の出力は180kWで、好ましくは1電気モーター2当り60kWである。
【0067】
各電気モーター201、202は減速システム21に結合された入力シャフトと出力伝達システム23に結合された出力シャフトとを有する。
【0068】
各電気モーター201、202は、例えば電気モーターの故障時にその電気モーターを他の電気モーターから機械的に分離するのを可能にするクラッチ解除システムを備える。クラッチ解除システムはドッグ・クラッチ解除システムであってもよい。
【0069】
通常、クラッチシステムが言及される時、それは摩擦又はドッグタイプであってもよい。
【0070】
動力伝達機構は電気駆動系2が収容されたケースを備える。電気駆動系2を冷却するのを可能にするために開口及び/又は空洞がケースに形成されてもよい。
【0071】
推進系
図に示した実施形態によれば、羽根付き推進系3は、羽根付き垂直回転シャフトA31、A32をそれぞれ備える2つの羽根付きロータ31、32を備える。ロータ31、32は回転駆動時、互いに反対方向に回転するように構成される。
【0072】
羽根付き推進系3の入力シャフトA3にかさ歯車減速装置6が設けられる。かさ歯車減速装置6は、例えば約3.7の減速比のかさ歯車を備える。
【0073】
図に示した例では、各ロータシャフトA31、A32に、羽根付き推進系3の入力シャフトA3によって支持されるかさ歯車6と協働するように構成された円錐軸受面316、326が設けられる。
【0074】
特定の態様によれば、動力伝達機構は、熱駆動系1のクラッチシステム10及び電気駆動系2の電源システム4を制御するのを可能にする制御ユニットを備える。
【0075】
制御方法の実施例
図に示した例では、クラッチは開いていると簡略化して示されている。しかし、下記の記述は、実施される制御方法に従って各クラッチの実際の開(解除)又は閉(係合)構成を指定する。また、活性な運動伝達チェーンと、適切な場合、電源システムによって送り出されるか受け取られる電流とを表すために矢印が参照矢印と別に追加されている。
【0076】
上記の動力伝達機構は、クラッチの構成を適合させることで航空機の様々な制御方法を実行するのを可能にする。
【0077】
制御ユニットは、実行する動作に応じて動力伝達機構の様々な動作構成を選択するのを可能にするように構成される。
【0078】
図3に示した第1動作構成によれば、制御ユニットは2つの熱機関1A、1Bの係合と電気駆動系2の電源とを制御して、2つの熱機関1A、1Bと電気駆動系2の組み合わせによって羽根付き推進系3を駆動する。
図3に示したこの動作モードは、高出力が要求される場合、特に離陸時に特に有用である。
【0079】
従って、動力伝達機構は、2つの熱機関によって提供される回転運動と電気モーターによって提供される回転運動とを組み合わせて羽根付き推進系を駆動するのを可能にする。
【0080】
図4に示した第2動作構成によれば、制御ユニットは、2つの熱機関1A、1Bの係合を制御し電気駆動系2を駆動して、電気駆動系2を介して熱駆動系1から羽根付き推進系3へ回転運動を伝達する一方、電源システム4を制御してバッテリー40を再充電する。
【0081】
図4に示したこの動作モードは、推進系3の出力要求が熱駆動系1によって提供されうる出力より低い時及びバッテリー40が再充電を必要とする時に使用されてよい。
【0082】
動力伝達機構のこのような動作モードは熱機関1の余剰動力をバッテリー40を飛行中に再充電するために(特にバッテリーが離陸時に電気推進のために使用された場合)使用するのを可能にする。
【0083】
特定の態様によれば、駆動系2、特に図に示した例でそれを構成する電気モーターは、ロータにおいて二様の出力を有し、電気モーターが動作状況に応じてモーター及び/又は発電機であることを許す。
【0084】
従って、巡航モードでは、熱機関1A、1Bによって提供される動力は主推進源である。電気モーターは発電機に変換されバッテリーパック40を変換器42及び電力電子装置41を介して再充電する。
【0085】
有利なことに、提供される動力は、推進用に熱駆動系による約260kWとバッテリーの再充電用に30kWである。
【0086】
図5に示した第3動作構成によれば、制御ユニットは、2つの熱機関1A、1Bの解放を制御し電源システム4を電気駆動系2に電力を供給するように制御する。従って、羽根付き推進系3は電気駆動系2のみによって駆動される。
図5に示したこの動作モードは、特に静かな着陸に有用である。
【0087】
従って、着陸モードでは電気エネルギーを電気駆動系2に提供するバッテリー40及び電気管理システム41、42によって電気モードだけを作動させることができる。
【0088】
図6に示した第4動作構成によれば、制御ユニットは、2つの熱機関1A、1Bの係合を制御し回転運動を熱駆動系1から羽根付き推進系3へ伝達するが、電流を消費も生成もしない。
【0089】
熱駆動系1の回転運動は羽根付き推進系3へ電気駆動系2を介して伝達される。この時、電気駆動系2は受動的である。言い換えると、電気駆動系2は熱駆動系1と推進系3の間の運動伝達チェーン内の単に機械的リンクとして働く。
図6に示したこの動作モードは、電源システムの故障時に特に有用である。
【0090】
図7に示した第5動作構成によれば、制御ユニットは、例えば熱機関1Aの故障時に2つの熱機関1A、1Bの一方1Aの解放を制御し、他の熱機関1Bは係合されたままにする。有利なことに、制御ユニットはまた、電源システム4を電気駆動系2に電力を供給するように制御する。従って、羽根付き推進系3は2つの熱機関1A、1Bの1つと好ましくは電気駆動系2とによって駆動される。
【0091】
図7に示したこの動作モードは、1つの熱機関の故障時に特に有用である。
【0092】
従って、熱機関の1つの故障時に、推進系3に機能させ続けるために故障した熱機関を解放し残りの熱機関の出力、例えば150kWを維持することができる。残りの熱機関の出力は電気モーターの出力に加えられ推進系3を駆動でき、それによりその航空機の安全な着陸を実行するのを可能にする。
【0093】
この動作モードはまた、例えば巡航飛行構成時にエネルギー消費を低減するために使用されてもよい。
【0094】
通常、各熱機関1は停止されるか又は待機しながら空転してもよい。
【0095】
特定の態様
クラッチシステムが上記の制御ユニットを備える手動又は自動制御装置によって1つの構成から別の構成へ切り換わるように制御される場合がありうる。制御装置は制御ユニットに接続され操縦士が動力伝達機構の1つの構成から別の構成へ切り換えるのを許すマン・マシンインターフェースを備えてもよい。動力伝達機構の1つの構成から別の構成への切り換えが、所定の条件が満たされると制御ユニットによって自動的に引き起こされる場合もありうる。
【0096】
特に、コンピュータなどの制御ユニットが、クラッチを作動させて1つの構成から別の構成へ切り換わるようにするためのシステムを制御するのを可能にする場合がありうる。制御ユニットはプロセッサ、又はプロセッサによって実行可能なコンピュータ命令群が記憶されたデータメモリの形態、又はマイクロコントローラの形態を取ってもよい。
【0097】
言い換えると、説明された機能及びステップはコンピュータプログラム又はハードウェア部品(例えば、プログラム可能ゲートアレイ)によって実行されてよい。特に、上記の制御ユニットによって実行される機能及びステップは、プロセッサ又はコントローラ内に組み込まれた命令群又はコンピュータモジュールによって、又は専用電子部品又はFPGA又はASIC部品によって実行されてもよい。コンピュータ部品及び電子部品を組み合わせることも可能である。
【0098】
本発明は図面に示された実施形態に限定されない。
【0099】
また、用語「comprising」は他の要素又はステップを排除しない。また、上記の実施形態の1つに関して説明した特徴又はステップはまた、上記の他の実施形態の他の特徴又はステップと組み合わせて使用されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 熱駆動系
1A 第1熱機関
1B 第2熱機関
2 電気駆動系
3 羽根付き推進系
4 電源システム
5 減速システム
6 かさ歯車減速装置
10 クラッチシステム
10A、10B クラッチ
12 運動伝達システム
13 出力シャフト
21 歯車列
23 伝達システム
26 出力シャフト
31、32 羽根付きロータ
40 バッテリー
41 高電圧ハウジング
42 制御器
100 マシン(ヘリコプター)
201、202 電気モーター
316、326 円錐軸受面
A3 入力シャフト
A31、A32 垂直回転シャフト