IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ヒューズ溶断検出回路 図1
  • 特許-ヒューズ溶断検出回路 図2
  • 特許-ヒューズ溶断検出回路 図3
  • 特許-ヒューズ溶断検出回路 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ヒューズ溶断検出回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/50 20200101AFI20240718BHJP
   G01R 31/74 20200101ALI20240718BHJP
【FI】
G01R31/50
G01R31/74
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022045338
(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公開番号】P2023139680
(43)【公開日】2023-10-04
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】中山 正人
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-520502(JP,A)
【文献】特開2009-273208(JP,A)
【文献】特開2019-015230(JP,A)
【文献】特表2022-524031(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085893(WO,A1)
【文献】特表2019-514340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0049263(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0376137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池とヒューズとが直列に接続された出力回路に設けられたヒューズ溶断検出回路であって、
前記ヒューズ溶断検出回路は、
検出抵抗と、測定スイッチと、第1抵抗とが直列に接続され、前記出力回路と並列に接続された検出ラインと、
前記検出ラインのうち前記測定スイッチと前記第1抵抗の間の接続点と、前記出力回路のうち前記電池と前記ヒューズの間の接続点とに接続された第2抵抗と、
基準電位に対する前記電池の電池電圧を測定する第1の電圧測定部と、
前記基準電位に対する前記検出抵抗に印加される検出電圧を測定する第2の電圧測定部と
前記測定スイッチがオンの状態のときに前記第2の電圧測定部によって測定された前記検出電圧に基づいて前記ヒューズが溶断しているか否かを判定するように構成された制御部と
を有し、
前記制御部は、前記測定スイッチがオンの状態のときの前記検出電圧に基づいて、前記測定スイッチがオープン故障しているか否かを判定するように構成されている、
ヒューズ溶断検出回路。
【請求項2】
前記制御部では、
前記検出電圧が予め定められた第1電圧である場合に前記ヒューズが溶断していないと判定する処理と、
前記検出電圧が前記第1電圧よりも低い予め定められた第2電圧である場合に前記ヒューズが溶断していると判定する処理と、
前記検出電圧が前記第2電圧よりも低い予め定められた第3電圧である場合に前記測定スイッチがオープン故障していると判定する処理と
が実行されるように構成された、請求項に記載されたヒューズ溶断検出回路。
【請求項3】
前記第2の電圧測定部は、前記測定スイッチがオフの状態のときの前記検出電圧をさらに測定し、
前記制御部は、前記測定スイッチがオフの状態のときの前記検出電圧に基づいて、前記測定スイッチがクローズ故障しているか否かを判定する、請求項1または2に記載されたヒューズ溶断検出回路。
【請求項4】
前記第1抵抗の抵抗値は、前記第2抵抗の抵抗値よりも高い、請求項1~3のいずれか一項に記載されたヒューズ溶断検出回路。
【請求項5】
前記第2抵抗の抵抗値は、前記第1抵抗の抵抗値よりも高い、請求項1~3のいずれか一項に記載されたヒューズ溶断検出回路。
【請求項6】
前記第1抵抗の抵抗値に対する前記第2抵抗の抵抗値の比は、0.9~1.1である、請求項1~3のいずれか一項に記載されたヒューズ溶断検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズ溶断検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-86069号公報には、複数の電池モジュールが直列に接続された走行用バッテリと、走行用バッテリの電池モジュールの電圧を検出する電圧検出回路とを備えた車両用の電源装置が開示されている。走行用バッテリでは、プラス側とマイナス側の電池ブロックは、ヒューズを介して直列に接続されている。ヒューズと電池ブロックの第1の中間接続点は、基準接続ラインを介して電圧検出回路に接続されている。電池ブロックでは、複数の電池モジュールは、接続点において直列に接続されている。接続点は、検出スイッチを介して電圧検出回路に接続されている。検出スイッチは、複数のスイッチブロックに分割されている。同公報に開示されている車両用の電源装置では、各々のスイッチブロックをオンオフに切り換えることによって、基準接続ラインの断線とヒューズの断線のいずれか一方または両方が検出できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-86069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、ヒューズが設けられている回路において、ヒューズの溶断を精度よく検出したいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示されるヒューズ溶断検出回路は、電池とヒューズとが直列に接続された出力回路に設けられている。ヒューズ溶断検出回路は、検出抵抗と、測定スイッチと、第1抵抗とが直列に接続され、出力回路と並列に接続された検出ラインと、検出ラインのうち測定スイッチと第1抵抗の間の接続点と、出力回路のうち電池とヒューズの間の接続点とに接続された第2抵抗と、基準電位に対する電池の電池電圧を測定する第1の電圧測定部と、基準電位に対する検出抵抗に印加される検出電圧を測定する第2の電圧測定部とを有している。
かかるヒューズ溶断検出回路によると、ヒューズの溶断を精度よく検出できる。
【0006】
ヒューズ溶断検出回路は、測定スイッチがオンの状態のときに第2の電圧測定部によって測定された検出電圧に基づいてヒューズが溶断しているか否かを判定するように構成された制御部をさらに有していてもよい。
制御部は、測定スイッチがオンの状態のときの検出電圧に基づいて、測定スイッチがオープン故障しているか否かを判定するように構成されていてもよい。
制御部では、検出電圧が予め定められた第1電圧である場合にヒューズが溶断していないと判定する処理と、検出電圧が第1電圧よりも低い予め定められた第2電圧である場合にヒューズが溶断していると判定する処理と、検出電圧が第2電圧よりも低い予め定められた第3電圧である場合にスイッチがオープン故障していると判定する処理とが実行されるように構成されていてもよい。
第2の電圧測定部は、測定スイッチがオフの状態のときの検出電圧をさらに測定しうる。制御部は、測定スイッチがオフの状態のときの検出電圧に基づいて、測定スイッチがクローズ故障しているか否かを判定してもよい。
第1抵抗の抵抗値は、第2抵抗の抵抗値よりも高くてもよい。
第2抵抗の抵抗値は、第1抵抗の抵抗値よりも高くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、出力回路1を示す回路図である。
図2図2は、測定スイッチ34がオンの状態、かつ、ヒューズ12が溶断していない状態における、出力回路1を示す回路図である。
図3図3は、測定スイッチ34がオンの状態、かつ、ヒューズ12が溶断している状態における、出力回路1を示す回路図である。
図4図4は、制御部50で実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される技術の一実施形態について図面を参照して説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略される。
【0009】
〈出力回路1〉
図1は、出力回路1を示す回路図である。図1に示されているように、出力回路1は、電池10と、ヒューズ12と、ヒューズ溶断検出回路20とを備えている。この実施形態では、電池10として、複数の二次電池10aが直列に接続された電池モジュールが用いられている。電池10の構成は特に限定されない。電池10としては、例えば、単数の二次電池10aが用いられてもよく、複数の二次電池10aが用いられていてもよい。複数の二次電池10aは、直列に接続されているものに限定されず、並列に接続されていてもよく、直列に接続された二次電池10aと並列に接続された二次電池10aが含まれていてもよい。本明細書において、「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池(すなわち化学電池)の他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(すなわち物理電池)を包含する概念である。
【0010】
出力回路1では、電池10とヒューズ12とが直列に接続されている。ヒューズ12は、電池10の正極と、図示しない出力先の電気機器とを繋ぐ正極側の接続ライン14に設けられている。電池10の負極には、電池10と、図示しない出力先の電気機器とを繋ぐ負極側の接続ライン16が接続されている。負極側の接続ライン16は、基準ライン18に接続されている。基準ライン18は、電池10の電位の基準電位となる、図示しない基準電位点に接続されている。
【0011】
ヒューズ12は、電池10および出力回路1に接続されている機器に過電流が流れることを保護する。ヒューズ12は、予め設定された定格電流以上の電流が流れると溶断するように構成されている。出力回路1には、ヒューズ12の溶断を検知するヒューズ溶断検出回路20が設けられている。
【0012】
〈ヒューズ溶断検出回路20〉
ヒューズ溶断検出回路20は、予め定められたタイミングでヒューズ12が溶断しているか否かを検出する。ヒューズ溶断を検出するタイミングは特に限定されないが、例えば、電気機器の使用前に実施されうる。また、ヒューズ溶断の検出は、電気機器の使用中の異常発生時に実施されうる。例えば、電気機器に電力が供給されない異常が発生した場合に、ヒューズの溶断を検出することによって、当該異常の原因が特定されうる。ヒューズ溶断検出回路20は、検出ライン30と、第2抵抗38と、電圧測定部40と、制御部50とを有している。検出ライン30は、検出抵抗32と、測定スイッチ34と、第1抵抗36とを有している。この実施形態では、これらのヒューズ溶断検出回路20の構成要素は、同一の基板20a上に設けられている。
【0013】
〈検出ライン30〉
検出ライン30では、検出抵抗32と、測定スイッチ34と、第1抵抗36がこの順で直列に接続されている。測定スイッチ34は、検出抵抗32と第1抵抗36の間に設けられている。測定スイッチ34は、後述する制御部50によってオンの状態とオフの状態が切り替え可能に構成されている。特に限定されないが、測定スイッチ34としては、例えば、半導体スイッチが用いられる。
【0014】
検出ライン30の第1抵抗36側の端部は、正極側の接続ライン14の接続点14aに接続されている。また、検出ライン30の検出抵抗32側の端部は、基準ライン18の接続点18aに接続されている。このため、検出ライン30は、基準ライン18を介して出力回路1と並列に接続されている。
【0015】
〈第2抵抗38〉
第2抵抗38は、検出ライン30と出力回路1に接続されている。第2抵抗38の一端は、検出ライン30のうち測定スイッチ34と第1抵抗36の間の接続点30aに接続されている。第2抵抗38の他端は、出力回路1のうち電池10の正極とヒューズ12の間の接続点14bに接続されている。この実施形態では、第2抵抗38の他端は、後述する第1接続ライン41を介して接続点14bに接続されている。
【0016】
〈電圧測定部40〉
電圧測定部40は、第1接続ライン41、第2接続ライン42および第3接続ライン43を介して出力回路1と接続されている。第1接続ライン41は、電池10の正極とヒューズ12の間に接続されている。第2接続ライン42は、電池10の負極と接続点18aの間に接続されている。第3接続ライン43は、検出抵抗32と測定スイッチ34の間に接続されている。
【0017】
電圧測定部40は、第1測定器44と、第2測定器45と、通信部46とを備えている。この実施形態では、第1測定器44が第1の電圧測定部に対応し、第2測定器45が第2の電圧測定部に対応する。第1測定器44は、基準電位に対する電池10の電池電圧Vbを測定する。第2測定器45は、基準電位に対する検出抵抗32に印加される検出電圧Vraを測定する。第1測定器44および第2測定器45は、図示しないチャネル切り替え回路やA/D変換器等を含んでいてもよい。図示は省略するが、第1測定器44は、二次電池10aの正極および負極と複数の配線で接続されていており、電池10を構成するそれぞれの二次電池10aの電圧を測定可能に構成されていてもよい。第1測定器44および第2測定器45で測定されたアナログ電圧信号は、A/D変換器によってアナログ-デジタル変換される。変換されたデジタル電圧信号は、通信部46に送信される。通信部46は、例えば、通信用インターフェースを含んでいる。通信部46は、ヒューズ溶断検出回路20の制御部50と通信可能に接続されている。通信部46は、デジタル変換された電池電圧Vbおよび検出電圧Vraを、ヒューズ溶断検出回路20の制御部50に送信する。なお、第1測定部と第2測定部の構成は特に限定されない。第1測定部と第2測定部は、例えば、複数の電圧測定器によって実現されていてもよく、電圧を測定する回路を切り替え可能な1つの電圧測定器によって実現されていてもよい。
【0018】
〈制御部50〉
制御部50は、測定スイッチ34のオンの状態およびオフの状態を制御する。また、制御部50は、電圧測定部40によって測定された電圧に基づいてヒューズ12の溶断を判定する。制御部50は、例えば、マイクロコンピュータである。制御部50は、例えば、通信用インターフェースと、CPUと、ROMと、RAMとを備えている。
【0019】
制御部50は、指示部51と、判定部52とを備えている。指示部51および判定部52は、例えば、複数のプロセッサによって実現されてもよい。指示部51は、測定スイッチ34のオンの状態およびオフの状態の切り替えを指示する。判定部52は、電圧測定部40の通信部46から受信した電圧(この実施形態では、検出電圧Vra)に基づいてヒューズ12が溶断しているか否かを判定する。
【0020】
ところで、測定スイッチ34がオンの状態の場合には、検出抵抗32に電流が流れる。電池10の電力消費を抑える観点から、ヒューズ12の溶断を検出しないタイミングでは、測定スイッチ34がオフの状態であることが好ましい。例えば、測定スイッチ34が長時間オンの状態である場合、電池10から放電され、電池10の充電量が低下しうる。
【0021】
指示部51は、予め定められたヒューズ12の溶断を検出するタイミングで測定スイッチ34のオンの状態およびオフの状態を切り替える指示をする。指示部51は、測定スイッチ34と通信可能に構成されている。指示部51から測定スイッチ34にスイッチ切り替え信号が送信されることによって、測定スイッチ34がオンの状態およびオフの状態が切り替えられうる。ヒューズ12の溶断を検出するタイミングは、例えば、制御部50のメモリに記憶されていてもよい。
【0022】
制御部50の判定部52は、測定スイッチ34がオンの状態のときに電圧測定部40の第2測定器45によって測定された検出電圧Vraに基づいてヒューズ12の溶断を判定する。図2は、測定スイッチ34がオンの状態、かつ、ヒューズ12が溶断していない状態における、出力回路1を示す回路図である。この実施形態では、第1抵抗36と第2抵抗38は、同じ抵抗値Rbを有している。検出抵抗32は、抵抗値Raを有している。図2に示されているように、ヒューズ12が溶断していない場合には、第1抵抗36、第2抵抗38、検出抵抗32には電圧がかかり、それぞれ電流I1,I2,Ia1が流れる。
【0023】
ここで、第1抵抗36と第2抵抗38は、並列に接続された状態で、検出抵抗32に直列に接続されている。そのため、検出抵抗32、第1抵抗36および第2抵抗38の合成抵抗は、Ra+(Rb/2)である。検出抵抗32に印加される検出電圧Vraは、以下の式1で表される。
Vra=Vb×Ra/(Ra+(Rb/2))・・・式1
本明細書において、測定スイッチ34がオンの状態、かつ、ヒューズ12が溶断していない状態で、検出抵抗32に印加されると計算される、上記式1で表される検出電圧Vraを、適宜に「第1電圧」と称する。第1電圧V1は、ヒューズ溶断検出回路20に用いられる抵抗(この実施形態では、検出抵抗32、第1抵抗36および第2抵抗38)の抵抗値と、電圧測定部40の第1測定器44によって測定される電池電圧Vbに基づいて定められる。
【0024】
一方、ヒューズ12が溶断している場合には、電圧測定部40では、式1で表される検出電圧Vraとは異なる値が検出される。図3は、測定スイッチ34がオンの状態、かつ、ヒューズ12が溶断している状態における、出力回路1を示す回路図である。図3に示されているように、ヒューズ12が溶断している場合であっても、第2抵抗38、検出抵抗32には電圧がかかり、電流Ia2が流れる。しかしながら、ヒューズ12が溶断している場合には、ヒューズ12の出力端と出力先との間に設けられた図示しない出力遮断装置によって第1抵抗36への出力が遮断されうる。第1抵抗36には電圧がかからず、電流が流れない。
【0025】
ここで、検出抵抗32と第2抵抗38の合成抵抗は、Ra+Rbである。検出抵抗32に印加される検出電圧Vraは、下記の式2で表される。
Vra=Vb×Ra/(Ra+Rb)・・・式2
本明細書において、測定スイッチ34がオンの状態、かつ、ヒューズ12が溶断している状態で、検出抵抗32に印加されると計算される、上記式2で表される検出電圧Vraを、適宜に「第2電圧」と称する。第2電圧V2は、第1電圧V1よりも低い電圧である。第2電圧V2は、第1電圧V1と同様、ヒューズ溶断検出回路20に用いられる抵抗の抵抗値と、電圧測定部40の第1測定器44によって測定される電池電圧Vbに基づいて定められる。例えば、この実施形態では、第1電圧は、Vb×Ra/(Ra+(Rb/2))で表される(式1参照)。第2電圧V2は、Vb×Ra/(Ra+Rb)で表される(式2参照)。そのため、第2電圧V2は、第1電圧V1よりも低い値となる。
【0026】
検出抵抗32、第1抵抗36および第2抵抗38の抵抗値は予め決められている。電池10の電池電圧Vbは、電圧測定部40で測定される値であり、ヒューズ12の溶断の有無には影響されない。このことから、制御部50の判定部52は、測定スイッチ34がオンの状態のときに電圧測定部40で測定された検出電圧Vraに基づいてヒューズ12の溶断を判定することができる。例えば、検出抵抗32に印加される検出電圧Vraが、式1で示される第1電圧V1である場合には、ヒューズ12が溶断していないと判定され、式2で示される第2電圧V2である場合には、ヒューズ12が溶断していると判定される。
【0027】
ところで、検出ライン30に設けられている測定スイッチ34は、例えば、経年劣化等によって不具合が起こる可能性がある。上述したヒューズ溶断検出回路20では、ヒューズ12が溶断しているか否かが検出されるだけではなく、測定スイッチ34の不具合も検出されうる。測定スイッチ34の不具合としては、例えば、オープン故障とクローズ故障が挙げられる。オープン故障は、測定スイッチ34が常に切り離された状態になる不具合である。測定スイッチ34のオープン故障では、例えば、制御部50の指示部51が、測定スイッチ34をオンの状態に切り替えることを指示した場合にも、オフの状態が維持される。クローズ故障は、測定スイッチ34が常に固着された状態になる不具合である。測定スイッチ34のクローズ故障では、例えば、制御部50の指示部51が、測定スイッチ34をオフの状態に切り替えることを指示した場合にも、オンの状態が維持される。
【0028】
また、ヒューズ溶断検出回路20では、制御部50は、測定スイッチ34がオンの状態のときの検出電圧Vraに基づいて、測定スイッチ34がオープン故障しているか否かを判定しうる。
【0029】
測定スイッチ34がオープン故障している場合には、上述したように、指示部51が測定スイッチ34をオンの状態に切り替えることを指示した場合にも、オフの状態が維持される。この場合、第1抵抗36および第2抵抗38に電圧がかかり、第1抵抗36および第2抵抗38には電流が流れる。検出抵抗32には電圧がかからず、電流は流れない。検出抵抗32には電圧が印加されないため、電圧測定部40における検出電圧Vraの測定値は0になりうる。このように、測定スイッチ34をオン状態に指示した状態で、検出電圧Vraが0であることを検出することによって、測定スイッチ34がオープン故障していると判定される。なお、本明細書において、測定スイッチ34がオフの状態で測定されうる検出電圧Vraを、適宜「第3電圧」とも称する。
【0030】
また、ヒューズ溶断検出回路20では、測定スイッチ34がクローズ故障しているか否かを判定しうる。この実施形態では、電圧測定部40は、測定スイッチ34がオフの状態のときの検出電圧Vraをさらに測定する。制御部50は、測定スイッチがオフの状態のときの検出電圧Vraに基づいて、測定スイッチ34がクローズ故障しているか否かを判定する。
【0031】
測定スイッチ34がクローズ故障している場合には、上述したように、指示部51が測定スイッチ34をオフの状態に切り替えることを指示した場合にも、オンの状態が維持される。この場合、第1抵抗36、第2抵抗38および検出抵抗32それぞれに電圧がかかり、電流が流れる。電圧測定部40における検出電圧Vraの測定値は0以外の値が示される。換言すると、検出電圧Vraは、第3電圧以外になりうる。このように、測定スイッチ34をオフ状態に指示した状態で、検出電圧Vraが0ではない場合、測定スイッチ34は、クローズ故障していると判定される。
【0032】
以下、制御部50で実行される処理について、一例を挙げて説明するが、本発明をかかる形態に示すものに限定することを意図したものではない。
【0033】
この実施例における回路構成は、上述した出力回路1およびヒューズ溶断検出回路20と同様である。電池10の電池電圧Vbは48Vである。検出抵抗32の抵抗値Raは4.7kΩである。第1抵抗36の抵抗値Rbは200kΩである。第2抵抗38の抵抗値Rbは200kΩである。
【0034】
なお、検出抵抗32、第1抵抗36および第2抵抗38は、電圧測定部40の電圧測定範囲と電池電圧Vbが取りうる最大電圧とに基づいて定められうる。第1抵抗36、第2抵抗38および検出抵抗32の合成抵抗の抵抗値R12+Raに対する検出抵抗32の抵抗値Raは、電池電圧Vbの最大値に対する第2測定器45の電圧測定範囲の上限値Vm以下に設定されうる。換言すると、Ra/(R12+Ra)≦Vm/Vbを満たすように、用いられる抵抗が定められうる。
【0035】
上記の式1より、測定スイッチ34がオンの状態、かつ、ヒューズ12が溶断していない状態では、第2測定器45で測定される検出電圧Vra(第1電圧V1)は、2.15Vと計算される。上記の式2より、測定スイッチ34がオンの状態、かつ、ヒューズ12が溶断している状態では、第2測定器45で測定される検出電圧Vra(第2電圧V2)は、1.1Vと計算される。制御部50は、第1測定器44で測定される電池電圧Vbに基づいて第1電圧V1および第2電圧V2を計算できるように構成されうる。
【0036】
図4は、制御部50で実行される処理を示すフローチャートである。ヒューズ12の溶断を検出する予め定められたタイミングで、処理が開始される。
【0037】
図4のステップS10では、制御部50の指示部51は、測定スイッチ34をオフの状態からオンの状態に切り替える処理を実行する。測定スイッチ34がオンの状態に切り替えられると、指示部51はさらに、電圧測定部40に電池電圧Vbと検出電圧Vraの測定を指示する。電圧測定部40の第1測定器44は、電池電圧Vbを測定する。ここでは、電池電圧Vbは、上述したように48Vである。電圧測定部40の第2測定器45は、検出電圧Vraを測定する。測定された電池電圧Vbと検出電圧Vraは、通信部46を介して制御部50の判定部52に送信される。続いて、ステップS20に進む。
【0038】
図4のステップS20では、制御部50では、検出電圧Vraが第1電圧V1(ここでは、2.15V)である場合にヒューズ12が溶断していないと判定する処理が実行される。判定部52は、受信した検出電圧Vraが第1電圧V1である場合には、ステップS20の判定をYesとし、ステップS21に進む。なお、かかる処理において、第1電圧V1は、測定誤差を考慮して所要の幅を持った数値が設定されうる。検出電圧Vraと第1電圧V1との差が所要の差以内(特に限定されないが、例えば、0.05V以内)であれば、「検出電圧Vraが第1電圧V1である」と判定されるように設定されていてもよい。例えば、「検出電圧が第1電圧である場合」には、検出電圧と第1電圧の差が所要の差以内である場合が含まれる。以下、第2電圧および第3電圧についても同様に所要の幅を持った数値が設定されうる。「検出電圧が第2電圧である場合」には、検出電圧と第2電圧の差が所要の差以内である場合が含まれる。「検出電圧が第3電圧である場合」には、検出電圧と第3電圧の差が所要の差以内である場合が含まれる。
【0039】
ステップS21では、ヒューズ12は溶断していないと判定され、予め定められた出力先(例えば、出力回路1が設けられた装置を有するユーザの端末)に結果が出力される。ステップS20において、検出電圧Vraが第1電圧V1ではない場合には、ステップS20の判定をNoとし、ステップS30に進む。
【0040】
図4のステップS30では、制御部50では、検出電圧Vraが第2電圧V2(ここでは、1.1V)である場合にヒューズ12が溶断していると判定する処理が実行される。判定部52は、受信した検出電圧Vraが第2電圧V2である場合には、ステップS30の判定をYesとし、ステップS31に進む。ステップS31では、ヒューズ12は溶断していると判定され、予め定められた出力先に結果が出力される。ステップS30において、検出電圧Vraが第2電圧V2ではない場合には、ステップS30の判定をNoとし、ステップS40に進む。
【0041】
図4のステップS40では、制御部50では、検出電圧Vraが第3電圧V3(ここでは、0V)である場合に測定スイッチ34がオープン故障していると判定する処理が実行される。判定部52は、受信した検出電圧Vraが第3電圧V3である場合には、ステップS40の判定をYesとし、ステップS41に進む。ステップS41では、測定スイッチ34がオープン故障していると判定され、結果が予め定められた出力先に出力される。ステップS40において、検出電圧Vraが第3電圧V3ではない場合には、ステップS30の判定をNoとし、ステップS42に進む。ステップS42では、出力回路1に含まれる回路(例えば、ヒューズ溶断検出回路20)に故障している箇所がある可能性があると判定され、予め定められた出力先に結果が出力される。
【0042】
ステップS21,S31,S41,S42のいずれかのステップが終了すると、続いて、ステップS50に進む。
【0043】
図5のステップS50では、制御部50の指示部51は、測定スイッチ34をオンの状態からオフの状態に切り替える処理を実行する。測定スイッチ34がオフの状態に切り替えられると、ステップS10と同様、指示部51は、電圧測定部40に電池電圧Vbと検出電圧Vraの測定を指示する。測定された電池電圧Vbと検出電圧Vraは、通信部46を介して制御部50の判定部52に送信される。続いて、ステップS60に進む。
【0044】
図5のステップS60では、制御部50では、検出電圧Vraが第3電圧V3(ここでは、0V)ではない場合に測定スイッチ34がクローズ故障していると判定する処理が実行される。判定部52は、受信した検出電圧Vraが第3電圧V3ではない場合には、ステップS60の判定をNoとし、ステップS61に進む。ステップS61では、測定スイッチ34がクローズ故障していると判定され、結果が予め定められた出力先に出力される。ステップS60において、検出電圧Vraが第3電圧V3である場合には、ステップS60の判定をYesとし、ヒューズの溶断を検知する処理が終了する。
【0045】
上述したように、ヒューズ溶断検出回路20は、検出抵抗32、測定スイッチ34および第1抵抗36が直列に接続され、出力回路1と並列に接続された検出ライン30と、検出ライン30のうち測定スイッチ34と第1抵抗36の間の接続点30aと、出力回路1のうち電池10とヒューズ12の間の接続点14bに接続された第2抵抗38と、基準電位に対する電池10の電池電圧Vbおよび基準電位に対する検出抵抗32に印加される検出電圧Vraを測定する電圧測定部40と、測定スイッチ34がオンの状態のときに電圧測定部40によって測定された検出電圧Vraに基づいてヒューズ12の溶断を判定する制御部50とを有している。かかる構成によって、ヒューズ12が溶断している場合と溶断していない場合とで、検出電圧Vraが異なる値になる。検出電圧Vraを測定することによって、ヒューズ12が溶断しているか否かを判定することができる。また、測定スイッチ34と第1抵抗36の間と、ヒューズ12の入力端とに接続された第2抵抗38が設けられている。これによって、ヒューズ12が溶断している場合と(この例では、1.1V)、測定スイッチ34がオープン故障している場合(この例では、0V)とでは、検出電圧Vraが異なる値になる。その結果、ヒューズ12の溶断と、測定スイッチ34のオープン故障とを判別することができる。
【0046】
上述したように、これらのヒューズ溶断検出回路20の構成要素は、同一の基板20a上に設けられている。例えば、第2抵抗38の接続ラインは、電圧測定部40を出力回路1に接続する第1接続ライン41と共通とすることができる。このように、各構成要素を基板20a上に配置することによって上記回路構成を実現することができる。例えば、基板20aの外部からヒューズ12や測定スイッチ34の状態を検出するための配線や機器を接続する必要がない。基板20a上のみの簡易な構成でヒューズ溶断検出回路20が構成されうる。
【0047】
上述した実施形態では、第1抵抗36と第2抵抗38は、同じ抵抗値Rbを有しているが、かかる形態に限定されない。第1抵抗36と第2抵抗38の抵抗値は、任意に設定されうる。
【0048】
例えば、上述した実施形態のように、第1抵抗36と第2抵抗38の抵抗値が同程度である場合には、ヒューズ12が溶断していない正常時の検出電圧Vra(第1電圧V1:2.15V)に対して、ヒューズ12が溶断している場合の検出電圧Vra(第2電圧V2:1.1V)がおよそ半分である。また、測定スイッチ34がオープン故障している場合には、検出電圧Vra(第3電圧V3)は、0Vである。このため、これらの電圧値が明確に分かれ、各状態を判定しやすい。かかる観点から、第1抵抗36の抵抗値に対する第2抵抗38の抵抗値の比は、例えば、0.9~1.1に設定されうる。
【0049】
また、第2抵抗38の抵抗値が第1抵抗36の抵抗値よりも高いほど、ヒューズ12が溶断していない正常時の検出電圧Vra(第1電圧V1)に対してヒューズ12が溶断している場合の検出電圧Vra(第2電圧V2)が低くなる。換言すると、第1電圧V1と第2電圧V2の差が大きくなる。これによって、ヒューズ12が溶断しているか否かを検出しやすくなりうる。
【0050】
反対に、第1抵抗36の抵抗値が第2抵抗38の抵抗値よりも高いほど、ヒューズ12が溶断していない正常時の検出電圧Vra(第1電圧V1)に対してヒューズ12が溶断している場合の検出電圧Vra(第2電圧V2)が高くなる。このため、第2電圧V2と第3電圧V3の差が大きくなる。その結果、回路が故障している場合に、ヒューズ12が溶断しているか、それとも、測定スイッチ34がオープン故障しているか、といった回路の故障の原因を検出しやすくなりうる。このように、出力回路1の構成やヒューズ溶断検出回路20を設ける目的に合わせて、第1抵抗36と第2抵抗38の抵抗値が設定されるとよい。
【0051】
以上、ここで開示される技術について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示されるヒューズ溶断検出回路は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【符号の説明】
【0052】
1 出力回路
10 電池
12 ヒューズ
20 ヒューズ溶断検出回路
30 検出ライン
32 検出抵抗
34 測定スイッチ
36 第1抵抗
38 第2抵抗
40 電圧測定部
44 第1測定器
45 第2測定器
46 通信部
50 制御部
51 指示部
52 判定部

図1
図2
図3
図4