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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】粉砕材混合樹脂材料の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/18 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
B29C45/18 ZAB
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022088260
(22)【出願日】2022-05-31
(65)【公開番号】P2023176138
(43)【公開日】2023-12-13
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小塚 誠
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-265798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0187807(US,A1)
【文献】特開2005-131854(JP,A)
【文献】特開2020-087446(JP,A)
【文献】特開平04-163013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 31/00
B29C 45/00
B29C 45/18
B29B 7/00
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バージン材と粉砕材を所定の比率により混合した粉砕材混合樹脂材料を可塑化して射出成形を行う粉砕材混合樹脂材料の成形方法において、予め、前記バージン材及び前記粉砕材の嵩密度を測定し、測定により得られた前記粉砕材の嵩密度に係わる粉砕材嵩密度データと前記バージン材の嵩密度に係わるバージン材嵩密度データに基づいて前記バージン材と前記粉砕材を所定の比率で混合した際における、少なくとも、可塑化時間,発熱量,の一方又は双方を含む所定の成形条件に対する変換係数を求めて登録するとともに、粉砕材の使用時に、少なくとも使用する粉砕材の嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材嵩密度データ,バージン材嵩密度データ,及び変換係数に基づいて成形条件を修正処理することを特徴とする粉砕材混合樹脂材料の成形方法。
【請求項2】
前記嵩密度は、ゆるみ嵩密度を用いることを特徴とする請求項1記載の粉砕材混合樹脂材料の成形方法。
【請求項3】
前記嵩密度の測定は、成形機の機能を利用して測定することを特徴とする請求項1記載の粉砕材混合樹脂材料の成形方法。
【請求項4】
前記嵩密度の測定は、前記粉砕材又は前記バージン材を、前記成形機のホッパーに投入し、当該ホッパーの少なくともシャッターより上方位置まで投入したなら当該シャッターを閉じ、この後、スクリュを回転させることにより、ノズルから排出されるドローリング状態の樹脂の重量を測定することを特徴とする請求項3記載の粉砕材混合樹脂材料の成形方法。
【請求項5】
前記ドローリング状態の樹脂の全重量を嵩密度データとして用いることを特徴とする請求項4記載の粉砕材混合樹脂材料の成形方法。
【請求項6】
前記変換係数は、粉砕材の面積,粉砕材の寸法,スクリュ形状の一又は二以上により補正することを特徴とする請求項1記載の粉砕材混合樹脂材料の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バージン材と粉砕材を所定の比率で混合した粉砕材混合樹脂材料を可塑化して射出成形を行う粉砕材混合樹脂材料の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機を使用する生産工場等では、成形用の樹脂材料としてバージン材のみではなく、成形後に発生するスプル・ランナ及び成形不良品等の不要成形物を再利用する場合も多い。この場合、これらの不要成形物を細かく粉砕した粉砕材を製作し、この粉砕材を所定の比率でバージン材(ペレット)に混合することにより、粉砕材混合樹脂材料として使用する。
【0003】
従来、このような粉砕材混合樹脂材料を利用して成形を行う成形手段としては、特許文献1に記載されるプラスチック成形機構及び特許文献2に記載されるスプール・ランナーの再利用機能を備えた樹脂成形装置が知られている。
【0004】
特許文献1に記載のプラスチック成形機構は、粗砕材と原料との混合を安定的かつ効率的に実施する回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構の提供を目的としたものであり、具体的には、成形金型から取り出された回収成形物を取出装置の材料落下口上方へ直接搬送する搬送手段と、材料落下口上部に固着した原料送り量調整手段の上面に配設され、搬送された回収成形物を粗砕する粗砕手段と、粗砕手段で粗砕された回収成形物を材料落下口へ落下させる貫通穴を有するとともに、原料をその送り量を調整しつつ貫通穴へ搬送して回収成形物及び原料を混合する原料送り量調整手段とを備えて構成したものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の樹脂成形装置は、成形機にスプール・ランナーの粉砕材を輸送するための大掛かりな装置を別途設けるような必要を無くし、樹脂成形装置全体の構成の簡素化、及び品種替えに際しての清掃の容易化を図ることを目的としたものであり、具体的には、成形機の樹脂成形位置からスプール・ランナーを取り出すための取出手段と、この取出手段によって取り出されたスプール・ランナーを粉砕するための粉砕機とを備えた樹脂成形装置であって、粉砕機は、取出手段から供給されたスプール・ランナーを粉砕して得られる粉砕材を成形機内へ供給するようにその粉砕材排出口が成形機に接続して設けられたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-125818号公報
【文献】特開平7-304038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した粉砕材混合樹脂材料を使用する従来の成形手段は、次のような課題も存在した。
【0008】
即ち、使用する粉砕材は、個々の粒形状や大きさが一定ではなく、ランダムな形態になるため、可塑化時における射出成形機のスクリュ内では溶融樹脂に空隙が生じやすい。この結果、樹脂の溶融不足やバラツキが発生し、成形品質の低下、更には成形不良の増加を来すなど、安定した成形及び生産を行うことができない難点がある。
【0009】
なお、粉砕材がランダムな形態であっても、その状態をある程度数値的に把握することができれば、必要な対応策を講じることも可能になるが、そのための適切な対応手段が存在しないとともに、仮に、対応するとしても、面倒で時間の要する測定作業等の工程が追加されることになるため、実際の生産現場では、生産に大幅な遅れを生じるなど、必ずしも現実的な対応方法とはならない。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した粉砕材混合樹脂材料の成形方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る粉砕材混合樹脂材料の成形方法は、上述した課題を解決するため、バージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率により混合した粉砕材混合樹脂材料Qを可塑化して射出成形を行うに際し、予め、バージン材Qp及び粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材Qcの嵩密度に係わる粉砕材嵩密度データDcとバージン材Qpの嵩密度に係わるバージン材嵩密度データDpに基づいてバージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率で混合した際における、少なくとも、可塑化時間Tm,発熱量Hw,の一方又は双方を含む所定の成形条件に対する変換係数Kcを求めて登録するとともに、粉砕材Qcの使用時に、少なくとも使用する粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材嵩密度データDc,バージン材嵩密度データDp,及び変換係数Kcに基づいて成形条件を修正処理することを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、嵩密度には、ゆるみ嵩密度を用いることが望ましい。一方、嵩密度の測定には、成形機Mの機能を利用して測定することができる。具体的には、粉砕材Qc又はバージン材Qpを、成形機Mのホッパー2に投入し、当該ホッパー2の少なくともシャッター3より上方位置まで投入したなら当該シャッター3を閉じ、この後、スクリュ4を回転させることにより、ノズル5から排出されるドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの重量を測定することができる。このドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの全重量を嵩密度データDp,Dcとして用いることができる。なお、変換係数Kcには、粉砕材Qcの面積,粉砕材Qcの寸法,スクリュ形状の一又は二以上により補正することができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る粉砕材混合樹脂材料の成形方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) バージン材Qp及び粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材Qcの嵩密度に係わる粉砕材嵩密度データDcとバージン材Qpの嵩密度に係わるバージン材嵩密度データDpに基づいてバージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率で混合した際における所定の成形条件に対する変換係数Kcを求め、少なくとも使用する粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材嵩密度データDc,バージン材嵩密度データDp,及び変換係数Kcに基づいて成形条件を修正処理するようにしたため、バージン材Qpに対して、ランダムな粒形状及び大きさを有する粉砕材Qcを混合して使用する場合であっても、樹脂の溶融不足やバラツキを回避し、樹脂の溶融状態を安定化させることができる。これにより、成形品質の向上及び均質化、更には成形不良の低減を図ることができるとともに、生産の遅れを伴うことなく生産の安定化を図ることができる。しかも、専門知識のないユーザ等であっても容易に実施することができる。
【0015】
(2) 所定の成形条件には、少なくとも、可塑化時間Tm,発熱量Hw,の一方又は双方を含ませたため、ランダムな粒形状や大きさを有する粉砕材Qcにより大きく影響を受けやすい可塑化時間Tmや発熱量Hwを修正することができる。これにより、これらの成形条件或いは関連する成形条件を容易に最適化することができる。
【0016】
(3) 好適な態様により、嵩密度に、ゆるみ嵩密度を用いれば、バージン材Qp及び粉砕材Qcに対して無用な外圧等が付加されない状態のより望ましい嵩密度を測定できるため、樹脂の溶融状態をより的確に把握することができ、この結果、より正確な粉砕材嵩密度データDc,バージン材嵩密度データDp及び変換係数Kcを得ることができるとともに、より適切な修正処理を行うことができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、嵩密度の測定を行うに際し、成形機Mの機能を利用して測定すれば、別途の大掛かりな測定装置等を用意する必要がないため、小規模の生産工場などであっても低コストに実施することができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、嵩密度の測定を行うに際し、粉砕材Qc又はバージン材Qpを、成形機Mのホッパー2に投入し、当該ホッパー2の少なくともシャッター3より上方位置まで投入したなら当該シャッター3を閉じ、この後、スクリュ4を回転させることにより、ノズル5から排出されるドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの重量を測定するようにすれば、生産に実際に使用するユーザーの所有する射出成形機Mを直接利用できるため、ユーザーは、射出成形機M自身の操作により容易かつ迅速に測定することができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、ドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの全重量を嵩密度データDp,Dcとして用いれば、ドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrに対する重量の測定結果をそのまま嵩密度と見做して利用できるため、生産現場において、ユーザーは目的とする嵩密度(みなし嵩密度)の測定を容易に実施することができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、変換係数Kcを、粉砕材Qcの面積,粉砕材Qcの寸法,スクリュ形状の一又は二以上により補正するようにすれば、影響を受けやすい物理的要素により変換係数Kcに対する微調整を行うことができるため、成形条件或いは関連する成形条件を、微調整の観点からより最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好適実施形態に係る粉砕材混合樹脂材料の成形方法の処理手順を示すフローチャート、
図2】同成形方法を実施できる射出成形機の機械的構造を示す構成図、
図3】同成形方法を実施できる射出成形機における処理系(制御系)のブロック系統図、
図4】同成形方法を実施できる射出成形機に備えるディスプレイにおける設定画面図、
図5】同成形方法に使用する粉砕材及びバージン材の説明図、
図6】同成形方法に使用する粉砕材及びバージン材のドローリング量とゆるみ嵩密度の相関特性図、
図7】同成形方法における工程説明図、
図8】同成形方法における他の工程説明図、
図9】同成形方法に利用できる嵩密度を考慮した可塑化時間の実測値と計算値の関係図、
図10】同成形方法に利用できる嵩密度を考慮した発熱量の実測値と計算値の関係図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る粉砕材混合樹脂材料の成形方法の理解を容易にするため、同成形方法を利用できる射出成形機Mの概要について、図2図7を参照して説明する。
【0024】
図2は、射出成形機M、特に、型締装置を省略した射出装置Miを示す。射出装置Miにおいて、6は加熱筒であり、この加熱筒6の前端部にはヘッド部6hを介してノズル5を備える。ノズル5は加熱筒6内部の溶融樹脂を仮想線で示す金型7に対して射出する機能を有する。
【0025】
一方、加熱筒6の後端付近の上部にはホッパー2を備える。図7に示すように、このホッパー2の下端開口2dは、加熱筒6に貫通形成した材料落下口6dを通して加熱筒6の内部に連通する。これにより、ホッパー2内の粉砕材混合樹脂材料Qは、材料落下口6dを通して加熱筒6の内部に供給される。さらに、下端開口2dには、この下端開口2dを開閉するシャッター3を配設する。このシャッター3は、図7に示す右側(射出成形機Mの後側)の位置へ変位させることにより、下端開口2dを閉塞する全閉ポジション、左側(射出成形機Mの前側)の位置へ変位させることにより、下端開口2dを開放する全開ポジションとなる。
【0026】
また、粉砕材混合樹脂材料Qは、バージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率により混合した樹脂材料であり、図5に、バージン材Qpと粉砕材Qc(Qcm,Qcs)の具体的なイメージを示す。図5(a)は、バージン材Qpによるペレットである。ほぼ一定の粒形状を有しており、ゆるみ嵩密度は、0.674〔kg/リットル〕である。図5(b)は、スプール・ランナー等を粉砕して得た標準的な大きさの粉砕材Qc(Qcm)である。ランダムな粒形状を有しており、ゆるみ嵩密度は、0.416〔kg/リットル〕である。図5(c)は、より細かく粉砕した粉砕材(微粉砕材)Qc(Qcs)であり、ゆるみ嵩密度は、0.466〔kg/リットル〕である。
【0027】
なお、図2中、8sは、ホッパー2の外周面に付設して、ホッパー2の内部に収容した樹脂材料Qを加熱するヒータ、8jは、材料落下口6dの周囲における加熱筒6に形成したウォータージャケットをそれぞれ示す。このヒータ8sは、温調ドライバ8dにおける給電回路8eに接続するとともに、ウォータージャケット8jは、温調ドライバ8dにおける温調水循環回路8wに接続する。温調水循環回路8wは、温調された水媒体(温水又は冷却水)をウォータージャケット8jに循環させることにより、材料落下口6dを通過する樹脂材料Qを温調(加熱又は冷却)することができる。さらに、給電回路8e及び温調水循環回路8wはコントローラ本体22にそれぞれ接続する。これにより、コントローラ本体22から温調ドライバ8dには、給電回路8e及び温調水循環回路8wに対する制御指令が付与される。
【0028】
また、加熱筒6の内部にはスクリュ4を回動自在及び進退自在に装填する。なお、スクリュ表面には、耐久性等を考慮した所定の表面素材(金属)によるコーティング処理が施されている。スクリュ4は、前側から後側に、メターリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを有する。一方、スクリュ4の後端部は、スクリュ駆動部13に結合する。スクリュ駆動部13は、スクリュ4を回転させるスクリュ回転機構13r及びスクリュ4を前進及び後退させるスクリュ進退機構13mを備える。スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mの駆動方式は、例示の場合、電動モータを用いた電気方式を示しているが、油圧回路を用いた油圧方式であってもよく、その駆動方式は問わない。そして、スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mは給電ドライバ13dに接続するとともに、この給電ドライバ13dはコントローラ本体22に接続する。これにより、コントローラ本体22から給電ドライバ13dに、スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mに対する制御指令が付与される。また、スクリュ4の速度及び位置等の物理量は、図示を省略した速度センサ及び位置センサ等により検出され、この検出信号は給電ドライバ13dに付与される。
【0029】
さらに、加熱筒6は、前側から後側に、加熱筒前部6f,加熱筒中部6m,加熱筒後部6rを有し、各部6f,6m,6rの外周面には、前部加熱部9f,中部加熱部9m,後部加熱部9rをそれぞれ付設する。同様に、ヘッド部6hの外周面には、ヘッド加熱部9hを付設するとともに、ノズル6nの外周面には、ノズル加熱部9nを付設する。これらの各加熱部9f,9m,9r,9h,9nはバンドヒータ等により構成できる。したがって、ノズル加熱部9n,ヘッド加熱部9h,前部加熱部9f,中部加熱部9m,後部加熱部9rは、加熱群部9を構成する。そして、この加熱群部9はヒータドライバ9dに接続するとともに、ヒータドライバ9dはコントローラ本体22に接続する。これにより、コントローラ本体22からヒータドライバ9dに、各加熱部9f,9m,9r,9h,9nに対する制御指令が付与され、また、加熱温度は、図示を省略した温度センサ(熱電対等)により検出され、この検出信号はヒータドライバ9dに付与される。
【0030】
一方、図3には、射出成形機Mの全体制御を司る成形機コントローラ21を示す。成形機コントローラ21は、CPU及び内部メモリ22m等のハードウェアを内蔵したコンピュータ機能を有する上述したコントローラ本体22を備えるとともに、コントローラ本体22には、ディスプレイ23を接続する。ディスプレイ23は、必要な情報表示を行う表示部23dを備えるとともに、タッチパネル23tが付設され、このタッチパネル23tを用いて、入力,設定,選択等の各種入力操作を行うことができる。また、コントローラ本体22には、各種アクチュエータを駆動(作動)するドライバ群24を接続する。このドライバ群24には、図2に示した前述の給電回路8e及び温調水循環回路8wを含む温調ドライバ8d,給電ドライバ13d及びヒータドライバ9dが含まれる。
【0031】
したがって、成形機コントローラ21は、HMI制御系及びPLC制御系を包含し、内部メモリ22mには、PLCプログラム及びHMIプログラムを格納する。PLCプログラムにより、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等が実行されるとともに、HMIプログラムにより、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等が実行される。
【0032】
また、コントローラ本体22に付属する内部メモリ22mには、本発明に関連して本実施形態に係る成形方法を実現するアプリケーションプログラム、即ち、流動解析処理プログラムPs及び粉砕材処理プログラムPiを格納する。これにより、成形機コントローラ21は、同成形方法に係わる主要な機能部となる、成形条件設定機能部Fs,ゆるみ嵩密度測定機能部Fd,変換係数設定機能部Fk,成形条件修正機能部Faを実現する。さらに、流動解析処理プログラムPsに関連して、流動解析処理部Fpを備えるとともに、この流動解析処理部Fpに関連して、可塑化時間予測処理部Fpm及び発熱量予測処理部Fphを備える。
【0033】
流動解析処理部Fpは、既に本出願人が提案した射出成形機の成形支援装置(特開2020-1183号公報,特願2021-121959号参照)を利用することができる。即ち、推定処理機能により樹脂材料に係る溶融状態の的確な情報(データ)を数値的に推定することができる。
【0034】
さらに、図4は、ディスプレイ23に表示される設定画面Vsを示す。設定画面Vsは、図4中、左側上部に、成形機及び樹脂設定欄31,中央上部に樹脂物性値設定欄32、右側上部に粘度設定欄33、下部左側に粉砕材設定欄34及び設定値入力部35、下部中央から下部右側に温度設定欄36、をそれぞれ配置するとともに、温度設定欄36の下方には、「流動解析開始」キー37及び「成形品の同一化」キー38を配置した画面構成を備える。この場合、成形機及び樹脂設定欄31には、成形機種の設定部31a、スクリュ種の設定部31b、樹脂種の設定部31c、強化繊維種の設定部31dを、それぞれ備えるとともに、樹脂物性値設定欄32には、比熱,熱伝導率,密度,融点,分解温度,溶融温度,吸水率,等の各種詳細物性値の入力部を備える。また、粉砕材設定欄34には、粉砕材の使用有無を選択する粉砕材使用の選択部34s,後述するドローリング重量を入力するバージン材重量入力部34p及び粉砕材重量入力部34cを備えるとともに、バージン材Qpと粉砕材Qcの混合比率を入力する混合比率入力部34mを備え、さらに、設定値入力部35は少なくとも計量時間入力部35aが含まれる。
【0035】
次に、このような射出成形機Mを利用して実施できる本実施形態に係る成形方法の概要について、図5図10を参照して説明する。
【0036】
一般に、粉砕材混合樹脂材料Qに使用する粉砕材Qcは、図5(b)及び(c)に示すように、個々の粒形状や大きさがランダムになるため、可塑化時における射出成形機Mのスクリュ4内では溶融樹脂に空隙が発生しやすい。この結果、樹脂の溶融不足やバラツキが発生し、成形品質の低下、更には成形不良の増加を来すなど、安定した成形及び生産を行うことができない難点がある。
【0037】
そこで、本実施形態に係る成形方法は、成形工場等の現場において、粉砕材Qcの嵩密度(ゆるみ嵩密度)の度合を、ユーザーが容易かつ的確に把握することができるようにするとともに、生産時の成形条件に直接反映できるようにした。具体的には、成形工場等に備える射出成形機Mを利用することにより、使用する粉砕材Qcのゆるみ嵩密度を簡便かつ迅速に測定可能にするとともに、この測定した結果により、生産時の成形条件を直接修正できるようにした。
【0038】
このように、ゆるみ嵩密度の測定を行うに際し、成形機Mの機能を直接利用して測定するようにすれば、別途の大掛かりな測定装置等を用意する必要がないため、小規模の生産工場などであっても低コストに実施することができる。また、嵩密度として、ゆるみ嵩密度を用いれば、バージン材Qp及び粉砕材Qcに対して無用な外圧や振動等が付加されない自然状態のより望ましい嵩密度を測定できるため、樹脂の溶融状態をより的確に把握することができ、この結果、より正確な粉砕材嵩密度データDc,バージン材嵩密度データDp及び変換係数Kcを得ることができるとともに、より適切な修正処理を行うことができる。
【0039】
射出成形機Mを直接利用したゆるみ嵩密度の測定は、図7及び図8に示すように行うことができる。
【0040】
まず、射出成形機Mのシャッター3を全開ポジションに切換え、測定対象の粉砕材Qcをホッパー2に投入する。粉砕材Qcの投入により、粉砕材Qcが徐々に蓄積されるため、粉砕材Qcの上面がホッパー2の少なくともシャッター3よりも上方の位置まで達したなら、シャッター3を右方へ変位させることにより、図7に示す全閉ポジションに切換える。これにより、シャッター3の下面から材料落下口6dの内部、さらに材料落下口6dの下端開口から下方に位置するスクリュ4の一定範囲に、一定の体積Vqの粉砕材Qcが充填される。
【0041】
この後、スクリュ4を回転させれば、粉砕材Qcは前方へ移送されるとともに、加熱部9r等を含む加熱群部9により加熱された加熱筒6により可塑化され、粉砕材Qcは、図8に示すように、ドローリング状態となってノズル5から排出される。ノズル5から排出されたドローリング状態の樹脂Qcrは、セットした容器Bにより受け取るとともに、全ての樹脂Qcrが排出されたなら、樹脂Qcrの全重量(=ドローリング量〔g〕)を測定する。測定したドローリング量〔g〕は粉砕材嵩密度データDcとして用いることができる。
【0042】
粉砕材Qcを測定する場合について説明したが、バージン材Qpについても同様に測定することができる。バージン材Qpについては形状及び大きさが一定のため、一回だけ測定を行い、データとして登録しておけば、特に変更がない限り、次回からは、データを読み出して利用することができる。
【0043】
このように、嵩密度の測定を行うに際し、粉砕材Qc又はバージン材Qpを、成形機Mのホッパー2に投入し、当該ホッパー2の少なくともシャッター3より上方位置まで投入したなら当該シャッター3を閉じ、この後、スクリュ4を回転させることにより、ノズル5から排出されるドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの重量を測定するようにすれば、実際に使用するユーザーの所有する射出成形機Mを直接利用できるため、ユーザーは、射出成形機M自身の操作により容易かつ迅速に測定することができる。また、ドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの全重量をバージン材嵩密度データDp,粉砕材嵩密度データDcとして用いれば、ドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrに対する重量の測定結果をそのまま嵩密度と見做して利用できるため、生産現場において、ユーザーは目的とする嵩密度(みなし嵩密度)の測定を容易に実施することができる。
【0044】
図6に、図5(a)-(c)に示した粉砕材Qcm,Qcs及びバージン材(ペレット)Qpのドローリング量〔g〕対ゆるみ嵩密度〔kg/リットル〕の関係を示す。図6に示すように、測定により得られるドローリング量とゆるみ嵩密度は、十分な相関関係を有することを確認できる。
【0045】
そこで、本実施形態では、比較的簡便な方法として、変換係数Kcを設定し、所定の成形条件(設定値)に、変換係数Kcを乗ずることにより、所定の成形条件を容易に修正できるようにした。なお、成形条件とは、成形を行う前に設定する設定条件値のみならず、成形後に生じる成形状態の良否を把握するモニタ値等も含む概念である。
【0046】
成形条件の一例となる可塑化時間Tmの場合、バージン材Qpのゆるみ嵩密度(ドローリング量)と粉砕材Qcのゆるみ嵩密度(ドローリング量)が既知であれば、変換係数Kcとして、「Kc=(バージン材Qpの嵩密度)/(粉砕材Qcの嵩密度)」により求めることができる。これにより、バージン材Qpに対する粉砕材Qcの混合比率が明らかになっていれば、この混合比率の度合により、上述した射出成形機Mにより求めたバージン材Qpと粉砕材Qcのゆるみ嵩密度(ドローリング量〔g〕)、即ち、変換係数Kcに基づいて可塑化時間Tmを修正することができる。
【0047】
具体的には、バージン材Qpのみの可塑化時間Tmは、前述した流動解析処理部Fpにより求めることができるため、バージン材Qpのゆるみ嵩密度(ドローリング量)及び粉砕材Qcのゆるみ嵩密度(ドローリング量)を測定することにより、変換係数Kcを求めるとともに、バージン材Qpと粉砕材Qcの混合比率に基づいて、粉砕材Qcを混合して使用する際の可塑化時間Tmsを予測することができる。即ち、予測値となる可塑化時間Tmsは、「Tms=Tm×Kc」により得ることができる。
【0048】
この変換係数Kcは、粉砕材Qcの面積(表面積),寸法,スクリュ形状等により変動するため、これらの形態により補正するとともに、この補正量は、必要に応じて実験等により調整し、最適化した変換係数Kcを登録する。このように、変換係数Kcを、粉砕材Qcの面積,粉砕材Qcの寸法,スクリュ形状の一又は二以上により補正するようにすれば、影響を受けやすい物理的要素により変換係数Kcに対する微調整を行うことができるため、成形条件或いは関連する成形条件を、微調整の観点からより最適化することができる。
【0049】
所定の成形条件の一例として、可塑化時間Tmを示したが、その他、粉砕材Qcのゆるみ嵩密度により大きく影響を受けやすい発熱量Hwをはじめ、他の成形条件であっても同様に修正することができる。このように、所定の成形条件に、少なくとも、可塑化時間Tm,発熱量Hw,の一方又は双方を含ませれば、ランダムな粒形状や大きさを有する粉砕材Qcにより大きく影響を受けやすい可塑化時間Tmや発熱量Hwを修正できるため、これらの成形条件或いは関連する成形条件を容易に最適化することができる。
【0050】
図9及び図10に、五種類の異なる形状のスクリュ4…を使用した際における上述した変換係数Kcにより算出した可塑化時間Tm及び発熱量Hwの修正結果を示す。即ち、図9は、変換係数Kcにより算出した可塑化時間Tmの計算値〔s〕と実際の可塑化時間Tmの実測値〔s〕の関係図を示すとともに、図10は、変換係数Kcにより算出した発熱量Hwの計算値〔℃〕と実際の発熱量Hwの実測値〔s〕の関係図を示す。いずれの計算値も嵩密度を考慮した修正した値である。図9に示す可塑化時間Tmの相関係数は「0.83」、図10に示す発熱量Hwの相関係数は「0.70」である。
【0051】
このように、バージン材Qpの成形条件に対して、嵩密度(ゆるみ嵩密度)を考慮した変換係数Kcにより修正したいわば予測値は、実測値に近い値として予測処理することができ、生産現場において実用的に利用することが可能である。なお、上述した発熱量Hwは、金型7に排出された樹脂の温度を測定する測定装置を使用し、排出時の最大樹脂温度と設定温度の差を発熱量とした。
【0052】
次に、本実施形態に係る粉砕材混合樹脂材料の成形方法について、各図を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0053】
最初に、生産(成形)後に発生するスプル・ランナ及び成形不良品等の不要成形物を、不図示の粉砕機等を利用して粉砕し、バージン材Qpに混合して使用する粉砕材Qcを製作する(ステップS1)。製作された粉砕材Qcを図5(b)及び(c)に示す。図5(b)は標準的な粉砕材Qc(Qcm)、図5(c)は標準的な粉砕材Qcmよりも細かな粉砕材(微粉砕材)Qc(Qcs)となる。
【0054】
次いで、製作した粉砕材Qcを、図7に示すように、シャッター3が全開ポジションにあるホッパー2に投入する(ステップS2)。これにより、粉砕材Qcは、材料落下口6d、更に、この下端開口から下方に位置するスクリュ4における一定範囲に蓄積される。この後、粉砕材Qcが徐々に蓄積され、粉砕材Qcの上面が少なくともシャッター3の上方位置に達したならシャッター3を全閉ポジションに切換える(ステップS3)。この状態が図7の状態となる。これにより、一定の体積Vqの粉砕材Qcが計量されることになる。
【0055】
次いで、スクリュ4を回転させることにより粉砕材Qcを前方へ移送する。これにより、図8に示すように、粉砕材Qcは前方へ移送されるとともに、加熱部9r等を含む加熱群部9により加熱された加熱筒6により可塑化される(ステップS4)。そして、可塑化された溶融樹脂Qcrは、ドローリング状態となり、ノズル5の先端から外部に排出される(ステップS5)。
【0056】
この排出工程は、全ての溶融樹脂Qcrがノズル5の先端から排出されるまで継続する(ステップS6)。一方、排出された溶融樹脂Qcrは、セットした容器Bにより受け取るとともに、排出が終了したならドローリング量に係わる重量〔g〕を測定する。この容器Bは、例えば、重量計を兼ねていてもよい。そして、測定したドローリング量は粉砕材嵩密度データDcとして登録する(ステップS7)。
【0057】
次いで、バージン材Qpに係るドローリング量(嵩密度)を取得する(ステップS8)。この場合、バージン材Qpのドローリング量(嵩密度)に関するデータが既に登録されていれば、そのデータを読み出す(ステップS9)。一方、登録されていなければ、上述した粉砕材Qcの測定と同様に測定することができる。即ち、シャッター3が全開ポジションにあるホッパー2にバージン材(ペレット)Qpを投入し、投入したバージン材Qpの上面が少なくともシャッター3の上方位置に達したならシャッター3を全閉ポジションに切換える(ステップS10,S11)。この後、スクリュ4を回転させ、バージン材Qpを前方へ移送し、加熱筒6により可塑化するとともに、可塑化されたドローリング状態の溶融樹脂Qcrをノズル5から排出させる(ステップS12,S13)。そして、全ての溶融樹脂Qcrが排出されたならドローリング量に係わる重量〔g〕を測定するとともに、測定したドローリング量は、バージン材嵩密度データDpとして登録する(ステップS14,S15)。なお、ステップS2-ステップS15の測定工程は、前述した粉砕材処理プログラムPiを利用し、ゆるみ嵩密度測定機能部Fdにより一部又は全部を自動で処理することが可能である。
【0058】
以上の測定工程により、バージン材Qp及び粉砕材Qcの嵩密度(ドローリング量)を得れるため、図4に示した設定画面Vsにおける粉砕材設定欄34におけるデータ入力を行う(ステップS16)。即ち、粉砕材使用の選択部34cの粉砕材の使用にチェックを入れるとともに、バージン材重量入力部34pにバージン材Qpのドローリング重量〔g〕(例示は「133.1」)を入力し、また、粉砕材重量入力部34cに粉砕材Qcのドローリング重量〔g〕(例示は「92.6」)を入力する。この場合、登録したデータDp,Dcをそのまま設定画面Vsに反映(転送)させてもよい。さらに、混合比率入力部34mに、バージン材Qpと粉砕材Qcの混合比率(重量比)を入力する。具体的には、バージン材Qpの配合量〔%〕(例示は「70」)と粉砕材Qcの配合量〔%〕(例示は「30」)を入力する。
【0059】
データ入力が終了したなら、流動解析開始キー36をONする(ステップS17)。これにより、流動解析処理プログラムPsが起動し、流動解析処理部Fpにより流動解析処理が行われる(ステップS18)。この流動解析処理は、前述したように、既に本出願人が提案した射出成形機の成形支援装置(特開2020-1183号公報,特願2021-121959号参照)を利用することができる。即ち、推定処理機能により樹脂材料に係る溶融状態の的確な情報(データ)を数値的に推定することができるとともに、特に、推定固相率,推定樹脂分解率,強化繊維の推定破損率,さらに、これらに基づく可塑化時間Tm,発熱量Hwを得ることができる。
【0060】
この流動解析処理では、基本的に、少なくともバージン材Qpに対する成形条件、特に、例示の場合、可塑化時間,発熱量を得るため、本実施形態に係る成形方法の主要機能により、粉砕材Qcを混合して使用する場合における修正処理を行う(ステップS19)。即ち、この修正処理を前述した成形条件修正機能部Faを用いて算出する。具体的には、可塑化時間予測処理部Fpmにより、可塑化時間Tmに対して変換係数Kcを乗じて修正値を求めるとともに、発熱量予測処理部Fphにより、発熱量Hwに対して変換係数Kcを乗じて修正値を求める。なお、可塑化時間Tmに対する変換係数Kcと発熱量Hwに対する変換係数Kcはそれぞれ個別に設定されている。そして、修正後の可塑化時間Tms等は設定画面Vqの表示に反映(更新)させる(ステップS20)。
【0061】
これにより、ユーザーは、嵩密度(ゆるみ嵩密度)が分からない粉砕材Qcをバージン材Qpに混合し、粉砕材混合樹脂材料Qとして使用する場合であっても、その溶融状態の推測により的確に把握することができるとともに、必要な成形条件を修正することにより、その最適化を図ることができる。
【0062】
このように、本実施形態に係る粉砕材混合樹脂材料の成形方法によれば、基本的な手法として、予め、バージン材Qp及び粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材Qcの嵩密度に係わる粉砕材嵩密度データDcとバージン材Qpの嵩密度に係わるバージン材嵩密度データDpに基づいてバージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率で混合した際における所定の成形条件に対する変換係数Kcを求めて登録するとともに、粉砕材Qcの使用時に、少なくとも使用する粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材嵩密度データDc,バージン材嵩密度データDp,及び変換係数Kcに基づいて成形条件を修正処理するようにしたため、バージン材Qpに対して、ランダムな粒形状及び大きさを有する粉砕材Qcを混合して使用する場合であっても、樹脂の溶融不足やバラツキを回避し、樹脂の溶融状態を安定化させることができる。これにより、成形品質の向上及び均質化、更には成形不良の低減を図ることができるとともに、生産の遅れを伴うことなく生産の安定化を図ることができる。しかも、専門知識のないユーザ等であっても容易に実施することができる。
【0063】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,材料,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0064】
例えば、バージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率により混合した粉砕材混合樹脂材料Qとは、バージン材Qpと粉砕材Qcのみを混合する意味ではなく、バージン材Qpと粉砕材Qcが含まれていれば足り、バージン材Qpと粉砕材Qcに加えて他の材料が含まれる場合を排除するものではない。また、この場合の所定の比率にはバージン材Qpが「0」の場合も含まれる。一方、変換係数Kcは、単純な数値による係数であってもよいし、変数や式が含まれる係数であってもよい。さらに、嵩密度には、ゆるみ嵩密度を用いることが望ましいが、一定の圧力を加えて体積を圧縮するなど、一定条件下の嵩密度を排除するものではない。他方、成形機Mの機能を利用して嵩密度を測定することが望ましいが、同様の機能を有する他の測定装置似より測定する場合を排除するものではない。また、成形機Mを利用する場合、粉砕材Qc又はバージン材Qpを、成形機Mのホッパー2に投入し、当該ホッパー2の少なくともシャッター3より上方位置まで投入したなら当該シャッター3を閉じ、この後、スクリュ4を回転させることにより、ノズル5から排出されるドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの重量を測定することができるが、その他、升等の容器により体積を測定した粉砕材Qc又はバージン材Qpをホッパー2に投入することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る粉砕材混合樹脂材料の成形方法は、バージン材(ペレット)と粉砕材を所定の比率で混合した粉砕材混合樹脂材料を可塑化して射出成形を行う各種射出成形機をはじめ、各種射出成形方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
2:ホッパー,3:シャッター,4:スクリュ,5:ノズル,Q:粉砕材混合樹脂材料,Qp:バージン材,Qc:粉砕材,Qpr:ドローリング状態の樹脂,Qcr:ドローリング状態の樹脂,Dc:粉砕材嵩密度データ,Dp:バージン材嵩密度データ,Kc:変換係数,M:成形機(射出成形機),Tm:可塑化時間,Hw:発熱量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10