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  • 特許-オメカムティブメカルビルの合成 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】オメカムティブメカルビルの合成
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/75 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C07D213/75 CSP
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022130911
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2019561794の分割
【原出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2022166243
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】62/664,363
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/527,174
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・カイエ
(72)【発明者】
【氏名】カイル・クアスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】シエンチン・シー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・コスビー
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ズーファン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】アーチャナ・ネアルグンダ
(72)【発明者】
【氏名】ビン・ピーター・クアン
(72)【発明者】
【氏名】リヤンシウ・グワン
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513678(JP,A)
【文献】特表2016-513683(JP,A)
【文献】特表2016-519071(JP,A)
【文献】特表2009-519951(JP,A)
【文献】特表2013-545741(JP,A)
【文献】特表2015-515966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する方法であって、
(a)アセトニトリル及びテトラヒドロフラン中でメチル4-(3-アミノ-2-フルオロベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート
【化1】
(PIPA)、フェニル(6-メチルピリジン-3-イル)カルバメート
【化2】
(PCAR)及びトリアルキルアミンを混合して粗オメカムティブメカルビルの溶液を生成する工程;
(b)前記粗オメカムティブメカルビル溶液からオメカムティブメカルビル遊離塩基を単離する工程;並びに
(c)前記単離されたオメカムティブメカルビル遊離塩基を、イソプロパノール及び水中で2~3モル当量の塩酸と混合して、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物
【化3】
を生成する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記トリアルキルアミンは、ジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(b)の単離は、前記工程(a)からの粗オメカムティブメカルビルの溶液に水を加えることによって、オメカムティブメカルビル遊離塩基を結晶化させる工程、及び前記結晶化したオメカムティブメカルビル遊離塩基をろ過する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
イソプロパノール及び水から前記オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を結晶化させる工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PCARは、5-アミノ-2-メチルピリジン
【化4】
(APYR)とフェニルクロロホルメートをアセトニトリル中で混合してPCARを生成する工程を含み、前記混合はN-メチルピロリジノン(NMP)の非存在下で行われる方法によって調製される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合は15~30℃の温度で1~15時間行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PCARは塩酸塩として生成される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
(i)パラジウム触媒の存在下で2-メチル-5-ニトロピリジン
【化5】
(NPYR)を水素化して粗APYRを生成する工程;及び
(ii)イソプロピルアセテート及びヘプタン中で前記粗APYRからAPYRを結晶化させる工程
を含む方法により、APYRを調製することをさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)の前に、イソプロピルアセテート中のNPYRを水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、続いて前記イソプロピルアセテート中の洗浄済みNPYRを木炭と混合する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
APYRとフェニルクロロホルメートを混合する前に、
(i)粗APYRのイソプロピルアセテート溶液であって、前記粗APYRは10重量%までのAPYR塩酸塩を含むもの、を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、前記洗浄済みAPYRを木炭と混合して、ろ過後にAPYR溶液を生成する工程;並びに
(ii)前記工程(i)のAPYR溶液から、イソプロピルアセテート及びヘプタンによりAPYRを結晶化する工程
を含む方法によりAPYRを精製する工程をさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
PCARを結晶化させる工程をさらに含む、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する方法であって、
(a)メチル4-(3-アミノ-2-フルオロベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート
【化6】
(PIPA)、トリホスゲン、及びトリアルキルアミンを、アセトニトリル及びテトラヒドロフラン中で混合してPIPAイソシアネートを生成する工程;
(b)前記PIPAイソシアネートと5-アミノ-2-メチルピリジン
【化7】
(APYR)を混合してオメカムティブメカルビル遊離塩基
【化8】
を生成する工程;
(c)前記オメカムティブメカルビル遊離塩基を、イソプロパノール及び水中で2~3モル当量の塩酸と混合して、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を生成する工程
を含み、工程(a)は、PIPA及び前記トリアルキルアミンをアセトニトリル中に含む第1の溶液と、トリホスゲンをテトラヒドロフラン中に含む第2の溶液とを、マイクロミキサーチップ及び反応ループを用いて混合して、前記PIPAイソシアネートを生成する工程を含む連続製造により行われる方法。
【請求項13】
工程(b)は、前記PIPAイソシアネートを含む溶液と前記APYRを含む溶液とを、Yミキサー及び反応ループを用いて混合する工程を含む連続製造により行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)パラジウム触媒の存在下で2-メチル-5-ニトロピリジン
【化9】
(NPYR)を水素化して粗APYRを生成する工程;及び
(ii)イソプロピルアセテート及びヘプタン中で前記粗APYRからAPYRを結晶化させる工程
を含む方法により、APYRを調製することを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
工程(i)の前に、イソプロピルアセテート中のNPYRを水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、続いて前記イソプロピルアセテート中の洗浄済みNPYRを木炭と混合する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
i)粗APYRのイソプロピルアセテート溶液であって、前記粗APYRは10重量%までのAPYR塩酸塩を含むもの、を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、前記洗浄済みAPYRを木炭と混合して、ろ過後にAPYR溶液を生成する工程;並びに
(ii)前記工程(i)のAPYR溶液から、イソプロピルアセテート及びヘプタンによりAPYRを結晶化する工程
を含む方法によりAPYRを精製する工程をさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記PIPAが、
(a)メチル4-(2-フルオロ-3-ニトロベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート
【化10】
(PIPN)、無機塩基の水溶液、及びトルエンを混合してPIPN遊離塩基溶液を生成する工程;
(b)パラジウム触媒の存在下、トルエン及びアルコールの混合溶媒中で前記PIPN遊離塩基溶液を水素化して、粗PIPAを生成する工程であって、前記アルコールは、エタノール又はイソプロパノールを含む工程;並びに
(c)ヘプタン及びトルエン中で前記粗PIPAから前記PIPAを結晶化させる工程
を含む方法により調製される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記無機塩基は水酸化ナトリウムを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オメカムティブメカルビル及びオメカムティブメカルビルの新規中間体の製造方法、並びに中間体の合成方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
心筋節は心臓における筋収縮の基本単位である。心筋節は、心筋ミオシン、アクチン、及び一連の調節タンパク質から構成される、高度に秩序化された細胞骨格構造である。小分子心筋ミオシン活性化因子の発見及び開発は、急性及び慢性の心不全及び拡張型心筋症(DCM)、並びに左及び/又は右の心室の収縮機能障害又は収縮予備能に関連する状態のための有望な治療につながる。心筋ミオシンは、心筋細胞中の細胞骨格モータータンパク質である。それは、化学エネルギーを機械的な力に変換することに直接関与し、心筋の収縮をもたらす。
【0003】
ベータ-アドレナリン受容体アゴニスト又はホスホジエステラーゼ活性阻害剤などの、現在の強心剤は、細胞内カルシウムの濃度を増加させ、それによって、心筋節の収縮性を増加させる。しかしながら、カルシウム濃度の増加は心筋収縮の速度を増加させ、収縮期駆出時間を短縮し、これは、潜在的に生命を脅かす副作用と関連付けられている。対照的に、心筋ミオシン活性化因子は、細胞内カルシウム濃度を増加させることなく、心筋ミオシンモータータンパク質の活性を直接刺激するメカニズムによって作用する。それらは、ミオシン酵素サイクルの律速段階を加速し、力発生状態に有利なようにそれをシフトさせる。このメカニズムは心臓収縮の速度を増加させるのではなく、代わりに収縮期駆出時間を長くし、可能性として酸素効率のより高い方法で、心筋収縮性及び心拍出量の増加をもたらす。
【0004】
米国特許第7,507,735号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)には、以下の構造:
【化1】
を有するオメカムティブメカルビル(AMG 423、CK-1827452)を含む、化合物の属が開示されている。
【0005】
オメカムティブメカルビルは、心臓収縮を引き起こすモータータンパク質である心筋ミオシンの直接活性化因子クラスの最初のものである。これは、院内及び外来の、両状況における患者の新しい継続的なケアを確立することを目的に、静脈内用及び経口用の両製剤による、心不全に対して可能性がある治療として評価が行われているところである。
【0006】
適正製造基準(good manufacturing procedure)(GMP)要件及び規制機関の承認(例えば、米国FDA及びEMA)を含む、API製造に特有の問題に対処するオメカムティブメカルビルの商業的製造プロセスに対する継続的な必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7,507,735号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書においては、ピペラジンメチルカルボキシレート(PMEC)リン酸塩、例えばPMECリン酸塩水和物が提供される。PMECは、或いはメチルピペラジン-1-カルボキシレートとも呼ばれる。
【0009】
さらに、本明細書においては、a)ピペラジンとメチルクロロホルメートとを混合してPMECを生成する工程;(b)PMECと0.5モル当量のリン酸とを混合してPMECリン酸塩を生成する工程;及び(c)任意選択により、工程(b)の混合物からPMECリン酸塩をろ過する工程を含む、PMECリン酸塩の合成方法が提供される。ある場合には、工程(a)は、PMEC対水の比が約2:1の水溶液(ここでPMECリン酸塩水和物が生成される)中で行われる。種々の場合に、工程(a)は、20~55℃の温度で1~12時間行われる。ある場合には、工程(a)で生成されるPMECは、メチレンクロリド、ジクロロエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物の溶液として単離される。より具体的には、単離は、(i)工程(a)で得られたPMECを有機溶媒で洗浄する工程;(ii)塩基を加えて塩基性水溶液を形成することによってpHを8~14に変える工程;及び(iii)メチレンクロリド、ジクロロエタン、2-メチルテトラヒドロフラン又はこれらの混合物によって、工程(ii)の塩基性水溶液からPMECを抽出する工程により行うことができる。
【0010】
また、本明細書においては、(a)2-フルオロ-3-ニトロトルエン、臭素酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウムをイソプロピルアセテート及び水中で混合して1-(ブロモメチル)-2-フルオロ-3-ニトロベンゼン(FNB)を生成する工程;(b)任意選択により、チオ硫酸ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、又はその両方でFNBを洗浄する工程;並びに(c)FNB、トリアルキルアミン塩基、及びピペラジンメチルカルボキシレート(「PMEC」)リン酸塩、例えばPMECリン酸塩水和物を混合してメチル4-(2-フルオロ-3-ニトロベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート(PIPN)を生成する工程を含む、PIPNの合成方法が提供される。ある場合には、FNBはチオ硫酸ナトリウム水溶液及び塩化ナトリウム水溶液で洗浄される。或いは、PIPNは、(a)2-フルオロ-3-ニトロトルエン、過酸化ベンゾイル、N-ブロモスクシンイミド及び酢酸を70~95℃の温度で混合して、1-(ブロモメチル)-2-フルオロ-3-ニトロベンゼン(FNB)を生成する工程;(b)任意選択により、FNBをトルエンで抽出する工程、FNBを塩基性水溶液で洗浄する工程又はその両工程;(c)FNB、トリアルキルアミン塩基、及びピペラジンメチルカルボキシレート(「PMEC」)リン酸塩、例えばPMECリン酸塩水和物を混合して、PIPNを生成する工程によって調製することができる。ある場合には、FNBはトルエンで抽出され、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄される。PIPNを調製するいずれの方法でも、PIPNは塩酸塩として生成することができる。PIPNを調製するいずれの方法でも、PMECリン酸塩、例えば、PMECリン酸塩水和物は、本明細書で開示されているように調製することができる。PIPNを調製するいずれの方法でも、トリアルキルアミン塩基は、ジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンを含む。PIPNを調製するいずれの方法でも、FNB、トリアルキルアミン塩基、及びPMECを混合する前に、この方法は、亜リン酸ジエチル及びトリアルキルアミンを加える工程、及び得られた混合物を30~65℃の温度で混合する工程をさらに含むことができる。
【0011】
本明細書においては、フェニル(6-メチルピリジン-3-イル)カルバメート(PCAR)を合成する方法であって、5-アミノ-2-メチルピリジン(APYR)とフェニルクロロホルメートをアセトニトリル中で混合してPCARを生成する工程を含み、その混合はN-メチルピロリジノン(NMP)の非存在下で行われる方法がさらに提供される。ある場合には、混合は15~30℃の温度で1~15時間行われる。種々の場合に、PCARは塩酸塩として生成される。ある場合には、本方法は、(i)パラジウム触媒の存在下で2-メチル-5-ニトロピリジン(NPYR)を水素化して粗APYRを生成する工程;及び(ii)イソプロピルアセテート及びヘプタン中で粗APYRからAPYRを結晶化させる工程を含む方法により、APYRを調製する工程をさらに含むことができる。種々の場合に、本方法は、工程(i)の前に、イソプロピルアセテート中でNPYRを水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、続いてイソプロピルアセテート中の洗浄したNPYRを木炭と混合する工程をさらに含むことができる。ある場合には、本方法は、APYRとフェニルクロロホルメートとを混合する前に、(i)粗APYRのイソプロピルアセテート溶液(粗APYRは10重量%までのAPYR塩酸塩を含む)を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、洗浄済APYRを木炭と混合して、ろ過後にAPYR溶液を生成する工程;並びに(ii)工程(i)のAPYR溶液から、イソプロピルアセテート及びヘプタンによりAPYRを結晶化する工程を含む方法によりAPYRを精製する工程をさらに含むことができる。種々の場合に、本方法はPCARを結晶化させる工程をさらに含むことができる。
【0012】
また、本明細書においては、メチル4-(3-アミノ-2-フルオロベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート(PIPA)の合成方法であって、(a)メチル4-(2-フルオロ-3-ニトロベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート(PIPN)、無機塩基の水溶液、及びトルエンを混合してPIPN遊離塩基溶液を生成する工程;(b)パラジウム触媒の存在下、トルエン及びアルコールの混合溶媒中でPIPN遊離塩基溶液を水素化して、粗PIPAを生成する工程(ここで、アルコールはエタノール又はイソプロパノールを含む);並びに(c)ヘプタン及びトルエン中で粗PIPAからPIPAを結晶化させる工程を含む方法が提供される。種々の場合に、無機塩基は水酸化ナトリウムを含む。
【0013】
本明細書においては、(a)メチル4-(3-アミノ-2-フルオロベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート(PIPA)、フェニル(6-メチルピリジン-3-イル)カルバメート(PCAR)、及びトリアルキルアミンをアセトニトリル及びテトラヒドロフラン中で混合して粗オメカムティブメカルビルの溶液を生成する工程;(b)粗オメカムティブメカルビルの溶液からオメカムティブメカルビル遊離塩基を単離する工程;並びに(c)単離されたオメカムティブメカルビル遊離塩基を、イソプロパノール及び水の中で2~3モル当量の塩酸と混合して、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を生成する工程を含む、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する方法がさらに提供される。種々の場合に、トリアルキルアミンはジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンを含む。ある場合には、工程(b)の単離は、工程(a)からの粗オメカムティブメカルビルの溶液に水を加えることによって、オメカムティブメカルビル遊離塩基を結晶化させる工程、及び結晶化されたオメカムティブメカルビル遊離塩基をろ過する工程を含む。種々の場合に、本方法は、イソプロパノール及び水からオメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を結晶化させる工程をさらに含むことができる。ある場合には、PCARは、本明細書に開示されるような方法を使用して調製される。
【0014】
また、本明細書においては、(a)メチル4-(3-アミノ-2-フルオロベンジル)ピペラジン-1-カボキシレート(PIPA)、トリホスゲン、及びトリアルキルアミンをアセトニトリル及びテトラヒドロフラン中で混合してPIPAイソシアネートを生成する工程;(b)PIPAイソシアネート及び5-アミノ-2-メチルピリジン(APYR)を混合してオメカムティブメカルビル遊離塩基を生成する工程;(c)オメカムティブメカルビル遊離塩基を、イソプロパノール及び水の中で2~3モル当量の塩酸と混合してオメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を生成する工程を含む、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する方法が提供される。ある場合には、工程(a)はPIPA及びトリアルキルアミンをアセトニトリル中に含む第1の溶液と、トリホスゲンをテトラヒドロフラン中に含む第2の溶液とを、マイクロミキサーチップ及び反応ループを用いて混合して、PIPAイソシアネートを生成する工程を含む連続製造により行われる。種々の場合に、工程(b)は、PIPAイソシアネートを含む溶液とAPYRを含む溶液とを、Yミキサー及び反応ループを用いて混合する工程を含む連続製造により行われる。ある場合には、APYRは、本明細書に開示されるような方法により調製される。ある場合には、PIPAは、本明細書に開示されるような方法により調製される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、メチルピペラジン-1-カルボキシレート(PMEC)の3つの塩形態-リン酸塩水和物形態、ヘミ硫酸塩形態、及び酢酸塩形態の動的蒸気吸収(DVS)等温プロットを示す。各塩について、DVSの重量増加開始を、記載のように測定した―ヘミ硫酸塩では35%相対湿度(RH);酢酸塩では50%RH;そしてリン酸塩水和物では65%RH。図では、リン酸塩水和物をリン酸塩又はヘミ-リン酸塩と称し、ヘミ硫酸塩を硫酸塩又はヘミ硫酸塩と称する。
図2図2はPMECリン酸塩水和物の示差走査熱量測定スペクトルを示す。
図3図3は、PMECリン酸塩水和物(四角)及びPMECスラリー(丸)の粉末X線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物は、心不全の治療用として経口製剤で使用される。特定の状態には、急性(又は非代償性)うっ血性心不全、及び慢性うっ血性心不全;特に収縮心機能不全に関連する疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
以前のオメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を製造する方法は、国際公開第2014/152270号パンフレットに開示されている。本明細書で開示のGMP製造シーケンスは、多くの点で以前の合成シーケンスと異なる。GMPシーケンスは、2~6工程に延長されている。このより長いGMPシーケンスは、除去することが困難な製造時の溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、NMP)を回避する工程、蒸発結晶化の使用を回避する工程、及び困難な溶媒交換を回避するために中間体を単離する工程を含む、代替的な製造シーケンスを提供する。
【0018】
オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を製造する以前の方法は、スキーム1に示されており、国際公開第2014/152270号パンフレットで詳細に論じられている。この方法は、商業的に入手可能な原料物質のFN-トルエン(FNT)及び5-アミノ-2-メチルピリジン(APYR)から、それぞれ規制APIの出発物質であるピペラジンニトロ-HCl(PIPN)及びフェニルカルバメート-HCl(PCAR)を非GMP的に調製する工程を含む。単離したGMP中間体ピペラジンアニリン(PIPA)は、水素化によりPIPNから調製し、その後PCARと結合してオメカムティブメカルビルを生成する。オメカムティブメカルビルの二塩酸塩水和物は、テレスコーププロセスにより対応する遊離塩基から製造され(すなわち、オメカムティブメカルビル遊離塩基は単離されない)、湿式粉砕後のろ過によって二塩酸塩水和物として単離される。全てのAPI出発物質は四角の枠内に示されている。
【0019】
【化2】
本明細書で開示する合成では、種々の規制機関、例えばEMA及びFDAの、API出発物質の選択及び正当化のための要件に適応させるために、API出発物質をシーケンスの始めの方に移動させた。そうしたことで、本明細書で開示する方法は、国際公開第2014/152270号パンフレットで開示された2工程のシーケンスと比較して、6つの工程を含む。この延長されたGMPシーケンスは、より短いシーケンスに対していくつかの利点を提供する。中間体ピペラジンニトロ-HCl(PIPN)の生成において、メチルピペラジン-1-カルボキシレート(PMEC)リン酸塩がPMEC遊離塩基の代わりに使用される。PMEC遊離塩基は種々の濃度のピペラジンを含有する油であり、これは不純物の生成をもたらす(例えば、生成物PIPN中のBISN、スキーム3を参照されたい)。対照的に、PMECリン酸塩は、ピペラジンの濃度が低くて一定である安定な結晶塩である。したがって、PMEC遊離塩基の代わりにPMECヘミ-リン酸塩ヘミ-水和物を使用することにより、不純物の生成が著しく減少する。本明細書で開示する方法はまた、PCARを調製する場合にN-メチルピロリジノン(NMP)を使用せずに済ませているが、これは、NMPを除去することが困難であるという点、EUのREACHプロトコルのリスト(化学物質の安全性リスト)に記載があるという点を考慮すれば利点である。さらに、本明細書で開示する方法は、PIPAの生成のためにPIPNの水素化を行う溶媒を変更しているが、これは以前の方法ではイソプロピルアセテートを使用するために蒸発結晶化操作を行っており、これによりしばしば材料の汚れ及び一貫性のない結果がもたらされるからである。本明細書に開示する方法では、イソプロパノール中のオメカムティブメカルビル遊離塩基の、20℃における溶解度が非常に低い(約12mg/mL)こと、またテトラヒドロフラン(THF)からイソプロパノールへの溶媒交換時に撹拌できないスラリーが生成することを考慮して、困難な溶媒交換は置き換えられる。
【0020】
オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製するための、本明細書で開示する新規な商業的方法をスキーム2に示す。それは6つのGMP工程を含む。指定された商業的に入手可能なAPI出発物質は、2-フルオロ-3-ニトロ-トルエン(FNT)、5-アミノ-2-メチルピリジン(APYR)、及びPMECリン酸塩水和物である。
【0021】
【化3】
FN-トルエンは、短い合成シーケンスを使用してトルエンから製造される原料物質である。生成した異性体の混合物を分別蒸留すると、許容される純度(GC面積は、他の異性体の0.5%以下)の所望の位置異性体2-フルオロ-3-ニトロ-トルエンが得られる。この方法を用いて製造された2-フルオロ-3-ニトロ-トルエン(FNT)は再現性のある特性を有し、商業的に入手可能なAPI出発物質として指定することができる。
【0022】
PIPNの製造:PMECリン酸塩、例えばPMECリン酸塩水和物は、ピペラジンから単一工程で調製されるAPI出発物質である。PIPNを調製する以前の方法は、購入可能な原料物質としてPMEC遊離塩基を使用したが、これは各種の量のピペラジンを含有する油である。25℃で貯蔵すると、LC面積で18%までのピペラジン濃度がPMEC遊離塩基中で観察された。スキーム3に示すように、残留ピペラジンは、生成物PIPN中に不純物BISNの生成をもたらす。
【0023】
【化4】
低濃度で且つ一定濃度のピペラジンを有するPMECの安定な結晶塩を、商業的に入手可能なAPI出発物質として探した。こうして、複数の塩をスクリーニングし、適切な候補を同定した。PMECリン酸塩、例えば、PMECリン酸塩水和物は図1に示すように、対応する硫酸塩及び酢酸塩よりも吸湿性が低いことが見出された。それは、湿気との接触を避けるために、気密性のアルミニウムバッグ中に貯蔵することができる。
【0024】
利点として、PMECリン酸塩、例えば、PMECリン酸塩水和物を反応混合物に直接加えて、PIPNを調製することができる。対照的に、PMEC酢酸塩は、FN-ブロミド(FNB)及び酢酸アニオンからの副生成物の生成を考慮して、反応混合物に加える前に、PMEC遊離塩基に変換しなければならない。PMECリン酸塩、例えば、PMECリン酸塩水和物は、低レベルのピペラジン(GC面積<0.4%)を含有するが、これは貯蔵時に増加しない。PMECリン酸塩、例えば、PMECリン酸塩水和物は、PIPNの製造に成功裡に利用されている。このように製造されたPIPNのバッチ(5kg)は、LC面積で0.1%未満の残留BISNを含有した。
【0025】
スキーム4に示すように、ピペラジンをメチルクロロホルメートで処理し、続いて水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、有機層中の遊離塩基としてPMECを抽出する工程を含む、PMECリン酸塩水和物を製造するプロセスが開発された。ジクロロメタンからt-ブチルメチルエーテルへの溶媒交換に続いて、リン酸の添加及びろ過によって目的の塩を結晶化させる。PMECリン酸塩水和物は、収率45~50%及びGC面積>99%でピペラジンから単離される。PMECリン酸塩水和物のサンプル中のピペラジン濃度は、GC面積<0.4%であることが観察されている。PMECリン酸塩水和物のDSCスペクトル及びXRPDパターンを、それぞれ図2及び3に示す。PMECリン酸塩は、約2:1のPMEC:リン酸塩の量論比を有し、したがって、本明細書では、PMECリン酸塩、又はPMECヘミ-リン酸塩、PMECリン酸塩として互換的に参照される。PMECリン酸塩の水和物は、本明細書で詳述されているように生成することができ、そのような水和物は約2:1:1のPMEC:リン酸塩:水の量論比を有し、PMECリン酸塩水和物、PMECヘミ-リン酸塩ヘミ-水和物、又はPMECリン酸塩水和物と互換的に言及される。PMECリン酸塩水和物中のPMEC、リン酸塩、及び水の比は上記の2:1:1の量論比とわずかに異なってもよく、例えば、6:4:3などの比であってもよいことは理解される。本明細書で開示する方法により調製される物質に対して、元素分析及び/又は単結晶X線構造分析を行うことができる。単離された塩中のPMEC、リン酸塩、及び水の比率は一貫しており、PMEC:リン酸塩:水の正確な比率の決定が、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物の調製における出発物質としての意図的な使用への、本明細書のPMECリン酸塩水和物の適合性に悪影響を与えるものではない。
【0026】
【化5】
PMECリン酸塩、例えば、PMECリン酸塩水和物を調製する一般的な合成方法は、ピペラジンとメチルクロロホルメートとを混合してPMECを生成する工程、0.5モル当量のリン酸(例えば、水溶液)を加えてリン酸塩を生成する工程、及び任意選択により塩をろ過する工程を含む。ピペラジンとメチルクロロホルメートの反応は、20~55℃の温度で1~12時間行うことができる。
【0027】
PMECリン酸塩を精製するための、特定の抽出方法及び反応後のワークアップ手順をスキーム4に示す。しかしながら、他のワークアップ手順を用いることもできる。PMECは、メチレンクロリド、ジクロロエタン、若しくは2-メチルテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物などの有機溶媒で抽出することによって、ピペラジンとメチルクロロホルメートの反応混合物中で生成したビス-PMECを除いて精製することができる。いくつかの実施形態で、有機溶媒はメチレンクロリドを含む。望ましくないビス-PMECは有機溶媒層に分離され、所望のPMECは水層に残る。PMECはさらに精製することができる。例えば、水溶液中のPMECは、塩基性水溶液の添加によって塩基性pH(例えば、8~14)に調節することができ、その場合、PMECは有機溶媒中にあり、メチレンクロリド、ジクロロエタン、若しくは2-メチルテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物などの有機溶媒で抽出することができる。ある場合には、有機溶媒はメチレンクロリドを含む。有機溶媒中のPMECは、抽出有機溶媒からメチルt-ブチルエーテル(MTBE)へと溶媒交換され、リン酸と反応させてリン酸塩を生成することができる。
【0028】
いくつかの特定の実施形態では、ピペラジンを、20±5℃で4.0体積(V)の水に懸濁させる。メチルクロロホルメート(1当量)をバッチ温度≦20℃に保ちながら≧1時間かけて加える。反応物を20±5℃で≧1時間撹拌する。1回以上のメチレンクロリド抽出を行い、メチレンクロリド層は毎回廃棄する。水層を10MのNaOH水溶液(0.8当量)で処理し、pHを9.5~10.3に調節する。水層にNaCl(1.47当量)を加え、メチレンクロリドで洗浄(2×4V)する。メチレンクロリド層を一緒にし、2.5Vまで蒸留する。メチルブチルエーテル(MTBE)(8V又は4.5V)を加え、溶液を2.5Vに濃縮する。MTBE(3.5又は4.5V)を加え、2.5Vに濃縮する。MTBE(3.5V)を再度加え、混合物を研磨ろ過する。ろ液を45±5℃(例えば、40~50℃)に温め、MTBE(1.5V又は3.5V)中の85%のリン酸(0.5当量)溶液を、45±5℃(例えば、40~50℃)のバッチ温度を維持しながら≧3時間にわたって加える。この懸濁液を2時間かけて20±5℃に冷却し、20±5℃で1時間撹拌する。懸濁液をろ過し、得られたケーキをMTBE(2V)で洗浄し、乾燥させる(例えば、窒素及び真空を使用して≧24時間)。PMECリン酸塩水和物の収率は48.5%であり、LC面積は100%、分析値は64.6重量%、カールフィッシャー滴定で含水率は4.2重量%、残留MTBEは0.44重量%、GCによる残留ピペラジンは0.2面積%である。
【0029】
FNTからのPIPNの製造手順:FNTは臭素化してFNBを生成することができ、これは次にPMECリン酸塩水和物と反応してPIPNを生成することができる(例えば、スキーム2の上の部分を参照されたい)。FNTは、70~95℃の温度で酢酸中のNBS及びベンゾイルクロリドとの反応により臭素化されてFNBを生成することができる。FNBは、任意選択により、トルエンで抽出、且つ/又は塩基性水溶液で洗浄して、不純物を除去することができる。或いは、FNTは、イソプロピルアセテート及び水中の臭素酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムとの反応により臭素化されて、FNBを生成することができる。臭素酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムとの反応によって生成したFNBは、任意選択により、チオ硫酸ナトリウムの水溶液及び/又は塩化ナトリウムの水溶液で洗浄して、不純物を除去することができる。FNBは、FNTからの生成法にかかわらず、任意選択により、30~65℃の温度で、ジエチルホスファイト及びトリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン)で処理し、望ましくない二臭素化不純物を低減することができる。FNBは、FNTからの生成法にかかわらず、トリアルキルアミン塩基(例えば、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン)及びPMECリン酸塩水和物と混合してPIPNを生成することができる。PIPNは、さらに塩酸と混合することにより塩酸塩形態に変換することができ、そしてさらに単離することができる。
【0030】
いくつかの特定の実施形態では、2-フルオロ-3-ニトロトルエン(3.0kg、1当量)、続いて過酸化ベンゾイル(0.03当量)及びN-ブロモスクシンイミド(0.56当量)を反応器に加える。酢酸(3V)を反応器に加え、バッチを83℃に加熱する。1.5時間後、NBS(0.56当量)の酢酸(1V)中スラリーを反応器に加える。さらに1.5時間後、NBS(0.56当量)の第2の酢酸(1V)中スラリーを反応器に加える。さらに5時間後、HPO(0.1当量)の酢酸(0.1V)中溶液を反応器に加え、バッチを30分間撹拌し、次いで20℃に冷却する。水(5.5V)及びトルエン(8V)を反応器に加え、バッチを30分間激しく撹拌する。その後、撹拌を停止し、層を分離させる。下側の水層を廃棄する。バッチ温度を30℃未満に維持しながら、NaOH(1.7当量)の水(7V)溶液を反応器に加える。バッチを30分間激しく撹拌する。撹拌を停止し、層を分離させる。バッチを清浄な反応器中にろ過し、層を分離させる。下側の水層を廃棄する。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.53当量)を、続いてメタノール(0.23V)を反応器に加え、バッチを40℃に加熱する。ジエチルホスファイト(0.46当量)のメタノール(0.23V)溶液を反応器に加え、バッチを3時間撹拌する。バッチを20℃に冷却する。2-フルオロ-3-ニトロトルエンのラジカル臭素化によって調製した、1当量の2-フルオロ-3-ニトロフェニルメチルブロミドのトルエン(9V)溶液に、2.3当量のジイソプロピルエチルアミンを20℃で加える。撹拌中の溶液に1.05当量のPMECリン酸塩水和物のメタノール(2.6V)溶液を滴下する。≧3時間の撹拌後、水(5V)を加え、層を分離する。有機相を飽和NHCl水溶液(5V)で2回、次いで飽和NaHCO水溶液(5V)で1回洗浄する。研磨ろ過後、トルエン層をイソプロパノール(9.7V)及び水(0.5V)で希釈する。溶液を55℃に温め、濃HCl(0.15V)を30分かけて加える。この溶液にPIPN-HCl(3モル%)の種を加え、55℃で15分間保持する。追加の濃HCl(0.62V)を4時間かけて加える。溶液を55℃で15分間保持し、≧1時間で20℃に冷却する。この溶液を30分間撹拌し、ろ過する。この結晶をIPA(5.6V)で2回洗浄する。ケーキを真空及び窒素下で乾燥させて、PIPN-HCl(82%収率、98.6重量%、99.6LCAP)を得る。
【0031】
別の特定の実施形態では、2-フルオロ-3-ニトロトルエン(3.0kg、1当量)を、続いて過酸化ベンゾイル(0.03当量)及びN-ブロモスクシンイミド(NBS、0.1当量)を反応器に加える。酢酸(2V)を反応器に加え、混合物を83℃に加熱する。反応混合物を1.5時間撹拌し、NBS(0.4当量)の酢酸(0.9V)中スラリーを加える。反応混合物を1.5時間撹拌し、NBS(0.4当量)の第2の酢酸(0.9V)中スラリーを加える。反応混合物を1.5時間撹拌し、NBS(0.8当量)の第2の酢酸(1.6V)中スラリーを加える。酢酸(1.0当量)を加え、反応混合物を1.5時間撹拌し、リン酸(HPO、0.1当量)の酢酸(0.1V)溶液を反応器に加える。この混合物を60分間撹拌し、20℃に冷却する。水(5.5V)及びトルエン(8V)を容器に加え、二相混合物を30分間激しく撹拌する。撹拌を停止し、層を分離させる。水層を廃棄する。温度を30℃未満に維持しながら、水酸化ナトリウム(1.7当量)の水(7V)溶液を加える。二相混合物を30分間激しく撹拌する。撹拌を停止し、層を分離させる。二相混合物をろ過し、層を分離させる。水層を廃棄する。反応混合物を別の清浄な容器に移し、元の容器をトルエン(1.2V)で濯ぎ、濯ぎ体積を反応混合物に加える。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.53当量)及びメタノール(0.23V)を有機層に加え、混合物を40℃に加熱する。ジエチルホスファイト(0.46当量)のメタノール(0.23V)溶液を加え、反応混合物を3時間撹拌する。この混合物を20℃に冷却する。2-フルオロ-3-ニトロトルエン(FNT)のラジカル臭素化によって調製されたFNBのトルエン溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(2.3当量)及びトルエン(1V)を加える。FNB溶液をメタノール(1.8V)及びPMECリン酸塩水和物(1.05当量)の溶液に加える。FNB溶液を含有した元の容器をメタノール(0.8V)で濯ぎ、濯ぎ体積を反応混合物に加える。反応混合物を25℃で4時間撹拌し、バッチ温度を30℃未満に維持しながら水(5V)を加える。二相混合物を30分間撹拌し、層を分離する。有機相を3M塩化アンモニウム水溶液(5V)で2回、1M炭酸水素ナトリウム水溶液(5V)で1回洗浄する。反応混合物を別の清浄な容器に移し、元の容器をトルエン(1V)で濯ぎ、濯ぎ体積を反応混合物に加える。研磨ろ過後、イソプロパノール(9.7V)及び水(0.6V)を有機溶液に加える。溶液を55℃に温め、32重量%の塩酸水溶液(0.25当量)を30分かけて加える。この溶液を55℃で15分間撹拌し、PIPN(塩酸塩、0.045当量)のイソプロパノール(0.2V)中スラリーにより種を加える。この懸濁液を55℃で30分間撹拌する。追加の32重量%の塩酸水溶液(1.0当量)を4時間かけて加える。この懸濁液を55℃で30分間撹拌し、2時間以内に20℃に冷却する。この懸濁液を30分間撹拌し、ろ過する。生成物ケーキをイソプロパノール(5.6V)で2回洗浄する。生成物ケーキをフィルター/ドライヤー上で乾燥させると、82%の収率でPIPNを得、分析値は98.6重量%、LC面積は99.6%である。
【0032】
いくつかの特定の実施形態では、2-フルオロ-3-ニトロトルエン(5.1g)をイソプロピルアセテート(30mL)に溶解し、臭素酸ナトリウム(14.9g)の水(50mL)溶液を加える。混合物を10℃まで冷却する。亜硫酸水素ナトリウム(10.3g)の水(100mL)溶液を20分かけて加える。得られた混合物を80℃で3時間加熱する。反応容器は、可視光に近づけることができる。内容物を20℃まで冷却し、相を分離する。有機相を10%チオ硫酸ナトリウム水溶液で、続いて飽和塩化ナトリウム水溶液で連続的に洗浄する。1-(ブロモメチル)-2-フルオロ-3-ニトロベンゼン(FNB)は分析収率74%で、ジブロミド生成物は分析収率11%で得られる。
【0033】
APYRの製造:5-アミノ-2-メチルピリジン(APYR)は原料物質として市販されているが、様々な量の塩酸塩(3~5重量%)を含有し、暗褐色又は黒色の物質として提供される。さらに、スキーム5に示すように、複数の遺伝毒性を有する不純物を含有している可能性がある。したがって、APYRを、高純度且つ一貫した純度を有する商業的に入手可能なAPI出発物質として使用するには、APYR精製の手順又はAPYRを調製する合成プロセスが望まれる。
【0034】
【化6】
提供するのは、対応する塩酸塩を10重量%まで含有するAPYRのイソプロピルアセテート溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、その後、有機相を木炭と混合することによりAPYRを精製する方法である。APYRは、任意選択により、有機相の共沸乾燥及び研磨ろ過後に、イソプロピルアセテート及びヘプタンから結晶化させることができる。APYRを精製する方法をスキーム6に示す。APYRの精製は、APYR塩酸塩のAPYR遊離塩基への変換、及びAPYRのイソプロピルアセテート溶液の塩基性水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を用いた、無機物質の同時除去を含む。木炭処理(例えば、木炭と混合し、懸濁液をろ過するか、又は木炭カプセルを通してイソプロピルアセテート溶液を再循環させる)に続いて、APYRを含む溶液を共沸的に乾燥させ、研磨ろ過する。透明なイソプロピルアセテート溶液を濃縮し、ヘプタンを加えてAPYRを結晶化させる。APYRは、LC面積>99%及び分析値>99重量%で単離される。
【0035】
【化7】
いくつかの特定の実施形態では、粗5-アミノ-2-メチルピリジン(APYR)のイソプロピルアセテート(IPAc)溶液(15体積)を、1NのNaOH水溶液(1.0体積)で洗浄し、溶液の色(COS)が工程管理で満たされる(COS≦20)まで木炭カプセルを通して循環させる。溶液を約6体積に濃縮することによって共沸乾燥し、イソプロピルアセテート(8体積)を加える。この混合物を別の容器へと研磨ろ過する。元の容器をイソプロピルアセテート(1.0体積)で濯ぎ、濯ぎ体積を反応混合物に加える。溶液を、例えば減圧蒸留によって濃縮し、生成物をイソプロピルアセテート及びヘプタン(1:4、10体積)から結晶化させる。ある場合には、溶液を60℃で3体積にまで濃縮し、精製APYR(1モル%)の種を加える。懸濁液を30分間撹拌し、3時間かけて20℃に冷却し、1時間撹拌する。ヘプタン(8体積)を3時間かけて加え、物質の結晶化を完了させる。懸濁液を1時間撹拌し、ろ過し、生成物ケーキをヘプタン(2×3体積)を用いて洗浄する。精製APYRは、ろ過により単離し、乾燥して収率90%で得、LC面積≧99%である。
【0036】
NPYRからのAPYR:ある場合には、スキーム6に概要が示されているように、APYRはNPYRから合成される。NPYRは、パラジウム触媒の存在下での水素化により粗APYRを生成し、これをイソプロピルアセテート及びヘプタンから結晶化させることができる。粗APYRを生成するためのNPYRの水素化は、塩基性水による洗浄及び木炭処理の後に行われる。木炭処理は、木炭と混合し、懸濁液をろ過する工程、又はイソプロピルアセテート溶液を木炭カプセルに再循環させる工程を含む。APYR溶液を共沸的に乾燥させ、研磨ろ過する。APYRをイソプロピルアセテート及びヘプタンから結晶化させる。ある場合には、NPYRは水素化の前に、イソプロピルアセテート及び水酸化ナトリウム水溶液による洗浄、及び木炭処理(木炭と混合し、次いで木炭をろ別する)の実施によって精製される。
【0037】
いくつかの特定の実施形態では、2-メチル-5-ニトロピリジン(NPYR)のイソプロピルアセテート(15V)溶液を1NのNaOH水溶液(2V)及び水(2V)で洗浄する。溶液は、任意選択により、溶液の色(COS)が工程管理で満たされるまで(COS≦20)、木炭カプセルを通して循環される。NPYRは、4.5バールの水素、例えば70psi/50~60℃(例えば55℃)で、5%のPd/Cの存在下(BASFにより販売されている活性炭Escat(商標)1421上、1.5重量%の担持)で約1時間水素化される。反応混合物は、ろ過し、約7Vに濃縮し、8Vのイソプロピルアセテートを加え、そして研磨ろ過することによって共沸乾燥する。溶液を60℃で3Vに減圧濃縮する。生成物を、任意選択により純粋なAPYR(1モル%)の種を加えることによって、且つ/又は任意選択により20℃に冷却することによって、イソプロピルアセテート及びヘプタン(1:4)から結晶化させる。生成物を任意選択によりろ過し、ヘプタン(2×3V)を用いて洗浄する。APYRは収率75%で単離され、LC面積≧99%である。
【0038】
PCARの製造:オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製するための以前に開示された方法では、PCAR調製の共溶媒としてN-メチルピロリジノン(NMP)が使用される。しかしながら、ケーキ中のNMPのレベルを5000ppm未満に減少させるために、30体積のアセトニトリルで洗浄する必要があるので、NMPを生成物ケーキから除去することは困難である。さらに、NMPは、化学物質によって引き起こされ得るリスクから、ヒトの健康及び環境の保護を改善するために採択された、欧州連合(European Union)によって規制されている、REACHプロトコルリストに掲載されており、潜在的に危険な溶媒である。NMPを使用せずに、上記のように調製された精製APYRを使用することによって、単離された結晶化PCAR中のAPYR塩酸塩の濃度は、LC面積で1%未満に容易に維持され得ることが見出された(スキーム7を参照されたい)。NMPを用いずに、この出発物質から調製され、単離されたPCAR中にはLC面積で1~2%のAPYR塩酸塩が見出されるので、上記のことは、精製されていないAPYRには該当せず、しかも驚くべき発見を構成している。
【0039】
このように、本明細書においては、NMPの非存在下、APYR及びフェニルクロロホルメートをアセトニトリル中で混合することによってPCARを調製する方法が提供される。反応は15~30℃で1~15時間行うことができる。この方法は、上記のようにして精製した(例えば、APYR塩酸塩及び暗色を除去するために)APYRを使用することができる。APYRは、上記のようにNPYRから調製することができる。PCARはその塩酸塩として生成することができる。PCARは例えば、塩酸塩として結晶化させることができる。
【0040】
いくつかの特定の実施形態では、5-アミノ-2-メチルピリジン(APYR)のACN(15体積)溶液を、20±5℃で3時間、生成物が反応混合物から結晶化する間、フェニルクロロホルメート(1.05当量)と反応させる。生成物スラリーをろ過し、ケーキをフィルター/ドライヤー上で乾燥させる。PCARは、収率97%、HPLC純度≧99%、APYR0.3%及びR-尿素0.25%で単離される。ある場合には、精製APYRにアセトニトリル(14体積)を加え、混合物を30分間撹拌する。この混合物を別の容器に研磨ろ過する。元の容器をアセトニトリル(1.0体積)で濯ぎ、濯ぎ体積を反応混合物に加える。PCARの種(0.01当量)の存在下、20℃で5時間かけてフェニルクロロホルメート(1.05当量)を加える。混合物をさらに2時間撹拌する。生成物をろ過により単離し、ケーキをアセトニトリル(2×2体積)で洗浄する。ケーキをフィルター/ドライヤー上で乾燥させる。PCARは収率97%で単離され、PCARのLC面積は≧99%であり、残留APYRのLC面積は0.3%である。
【0041】
【化8】
PIPAの製造:PIPNを水素化してPIPAを得る際に、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する以前の方法で使用した溶媒は、イソプロピルアセテートであった。水素化反応はこの溶媒中で十分に進行したが、5:95を超える比のイソプロピルアセテート:ヘプタン混合物中ではPIPAの溶解度が高いために、蒸発結晶化(生成物の結晶化の際に溶媒を蒸留)が必要であった。使用された高レベルのイソプロピルアセテートは、生成物溶液に種を加えた後に蒸留によって減少させる必要があり、したがって生成物の汚れ及びプロセスの頑健性の欠如をもたらす。本明細書で開示する方法では、イソプロピルアセテートはトルエンで置き換えられており、ろ過の直前に達成されるべきトルエン:ヘプタン比は30:70である(これにより蒸発結晶化が排除される)ことを考慮すれば、上記の全ての問題が排除されることになる。さらに、PIPAの溶解度を増加させ、副生物の水中での混和性を確実にするために、水素化反応の間、共溶媒としてエタノールが使用される。最後に、洗浄水溶液の容積を制限し、ガス放出を排除するために、商業的プロセスとしてのPIPNの遊離塩基化の操作を行えるよう、炭酸水素ナトリウム溶液を水酸化ナトリウム溶液で置き換えた。スキーム8に、本明細書で開示のPIPNからPIPAを調製する方法を示す。
【0042】
【化9】
このように、本明細書においては、PIPN(PIPN塩酸塩を含むことができる)、無機塩基の水溶液、及びトルエンを混合してPIPN遊離塩基溶液を生成する工程を含む、PIPAの合成方法が提供される。無機塩基は、例えば、炭酸水素ナトリウム又は水酸化ナトリウムとすることができる。いくつかの実施形態で、無機塩基は水酸化ナトリウムを含む。その後、PIPN遊離塩基溶液を、トルエン及びアルコール溶媒中、パラジウム触媒の存在下に水素化して、粗PIPAを生成する。アルコール溶媒は、エタノール又はイソプロパノールを含むことができる。その後、ヘプタン及びトルエン溶媒混合物からPIPAを結晶化させる。
【0043】
いくつかの特定の実施形態では、1当量のPIPN-HCl及びトルエンの混合物(4V)に、20℃で、1MのNaOH水溶液(3.3V)を加える。撹拌を1時間続けた後、相を分離する。有機層を水(2.4V)及び飽和食塩水(0.6V)の混合物で2回洗浄し、次いで有機層を3.8Vまで蒸留する。溶液をろ過し、反応器をトルエン(1V)で濯ぎ、濯ぎ溶液をろ過した後、有機層を一緒にする。トルエン層にPd/C(0.7重量%)を加え、この不均一混合物を水素化容器に加える。エタノール(1V)を混合物に加える。水素化は、60psigの水素下、20℃で行う。反応完了後、混合物をろ過し、トルエン(1V)で濯ぐ。混合物を2.4Vまで蒸留し、ヘプタン中1mol%PIPA(0.1V)の種を35℃で加え、その後、20℃まで冷却する。3時間でヘプタン(5.6V)の添加を完了する。混合物をろ過し、真空及び窒素下で乾燥させて、PIPA(収率90%、≧97.0重量%、≧98.0LCAP)を得る。
【0044】
いくつかの他の特定の実施形態では、トルエン(4体積)中に懸濁させた1当量のPIPN(塩酸塩)に、1N水酸化ナトリウム水溶液(3.3体積)を加える。二相混合物を20℃で1時間撹拌し、相を分離させる。有機層を0.9M塩化ナトリウム水溶液(3体積)で2回洗浄する。反応混合物を、約3.8体積に濃縮することによって共沸乾燥させ、研磨ろ過する。移送ラインをトルエン(1体積)で濯ぎ、濯ぎ溶液をPIPN溶液と一緒にする。エタノール(1体積)をPIPN溶液に加え、5%Pd/C(BASFからEscat1421として販売されている活性炭上、0.7重量%の触媒担持)の存在下、15℃、水素圧4バールを用いて出発物質の水素化を行う。反応が完了したら、混合物をろ過する。水素化オートクレーブ及びろ過済み触媒をトルエン(1V)で濯ぎ、濯ぎ溶液を反応混合物と一緒にする。溶液を2.4体積に濃縮し、ヘプタン中1モル%のPIPA(0.1体積)の種を38℃で加える。この混合物を38℃で30分間撹拌し、2時間かけて20℃に冷却し、その温度で30分間撹拌する。ヘプタン(5.6体積)を3時間かけて加え、混合物を30分間撹拌する。混合物をろ過し、フィルター/ドライヤー上で乾燥させる。ケーキをヘプタン:トルエン(7:3、全体で2体積)で1回、ヘプタン(2体積)で1回洗浄する。PIPAは88%の収率で単離され、分析値≧98.0重量%、LC面積≧98.0%である。
【0045】
オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物の調製:オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する、以前の方法は、オメカムティブメカルビルをTHF中の溶液として調製し、次いでその溶媒をイソプロパノールに交換するテレスコープ手順を含むものであった。しかしながら、20℃におけるイソプロパノール中のオメカムティブメカルビルの溶解度は、約10mg/mLであり、溶媒交換の終了時のイソプロパノールの全体積を考慮すると、溶媒交換の終了時には、この質量の95%が溶液外に出ることになり、撹拌することが困難又は不可能なスラリーの生成につながる。このスラリーが生成されると、物質移動が不十分であるために蒸留を行うことができず、スラリー中のTHF濃度は、工程管理(IPC)の仕様を超えて、例えば、GC面積1%以上残される。実際には、これは、混合物を撹拌可能にするために必要な、イソプロパノールの再添加に起因する製造の遅延につながり、その後、追加の蒸留及び残留THFの分析が続く。さらに、イソプロパノールと水の比は、蒸留終了時に変動するイソプロパノールの量、及びろ過時の母液損失に対する溶媒比(イソプロパノール/水)の影響を考慮して、工程管理を用いて検証しなければならない。
【0046】
以前に報告されたテレスコープ法で示された課題を考慮して、本明細書の開示のような、オメカムティブメカルビル遊離塩基の単離を開発した(スキーム9を参照されたい)。アセトニトリル及びTHF中でオメカムティブメカルビルを生成後、水を加え、オメカムティブメカルビル遊離塩基を、例えば、結晶化によって単離する。結晶凝集体は、迅速にろ過され、乾燥される。その後、オメカムティブメカルビル遊離塩基を、塩酸の存在下、イソプロパノール及び水に溶解して、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する。この修正された手順を使用することで、困難な溶媒交換は回避され、そしてイソプロパノールと水との比の測定については、塩生成工程の開始時に既知量の両溶媒が結晶オメカムティブメカルビル遊離塩基に加えられるので、不必要である。
【0047】
【化10】
このように、本明細書においては、PIPA、PCAR、及びトリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン)をアセトニトリル及びTHF中で混合してオメカムティブメカルビルを生成することにより、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する方法が提供される。オメカムティブメカルビルを遊離塩基として単離し、その後、イソプロパノール及び水中の2~3モル当量の塩酸と混合して、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を生成し、任意選択によりイソプロパノール及び水からこれを結晶化させることができる。オメカムティブメカルビル遊離塩基の単離は、水の添加及びろ過による結晶化により行うことができる。PIPA及びPCARは、上で開示したように調製することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、PIPA(2.1kg、1当量)を、続いてPCAR(1.1当量)、その後THF(2.5V)、最後にアセトニトリル(2.5V)を反応器に加える。得られたスラリーに、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.2当量)を加え、バッチを55℃で16時間加熱する。その後、水(5V)を15分かけて加え、オメカムティブメカルビル遊離塩基の種(0.05当量)を反応器に加える。バッチを15分間撹拌し、水(10V)を3時間かけて加える。バッチを1時間かけて20℃に冷却し、ろ過する。ケーキを3:1の水:アセトニトリル(3V)で洗浄し、次いでアセトニトリル(3×3V)で洗浄する。ケーキをフィルター/ドライヤー内で乾燥させる。オメカムティブメカルビル遊離塩基は、固体として、収率80%で単離され、LC面積99.9%、分析値99.3重量%である。
【0049】
オメカムティブメカルビル遊離塩基(2.6kg、1当量)を、続いて2-プロパノール(2.6V)及び水(1.53V)を反応器に加える。その後、バッチを45℃に加熱する。60℃未満のバッチ温度が維持される速度で、6MのHCl水溶液(2.2当量)を加える。バッチを60℃で30分間加熱し、清浄な反応器中に60℃でろ過する。元の容器をイソプロパノール:水混合物(1:1、全体で0.1体積)で濯ぎ、濯ぎ体積を反応混合物に加える。この溶液を45℃に冷却し、イソプロパノール(0.14又は0.1V)中のオメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物の種スラリー(0.05又は0.03当量)を反応器に加える。この懸濁液を1時間撹拌する。イソプロパノール(3.68V)を2時間かけて反応器に加える。この混合物を1時間かけて55℃に温め、その温度で30分間保持する。混合物を1時間かけて45℃に冷却する。混合物を2時間撹拌し、次いでイソプロパノール(7.37V)を3時間かけて反応器に加える。混合物を1時間撹拌し、その後2時間かけて20℃に冷却する。d90仕様が満たされるまで混合物を湿式粉砕し(例えば、≦110μm)、懸濁液をろ過する。湿潤ケーキをイソプロパノール:水(95:5、2V)で2回洗浄する。イソプロパノール濃度が1000ppm未満になるまで、湿潤ケーキを真空乾燥させる。ケーキは、任意選択により、例えば加湿窒素流を用いて、固形分の含水率が3.0~4.2重量%になるまで再水和させる。この物質が仕様を満たさない場合、再結晶させることができる。オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物は、固体として収率91.3%で単離され、LC面積99.96%、及び分析値100.1重量%である。
【0050】
連続製造によるオメカムティブメカルビル塩酸塩水和物の調製:本明細書で提供されるのは、連続製造法を用いてオメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する方法である。一般的な合成手順の概要を下記スキーム10に示す。
【0051】
【化11】
このように、本明細書においては、PIPA、トリホスゲン、及びトリアルキルアミンをアセトニトリル及びテトラヒドロフラン中で混合してPIPAイソシアネートを生成し;PIPAイソシアネートとAPYRを混合してオメカムティブメカルビル遊離塩基を生成し;オメカムティブメカルビル遊離塩基を、イソプロパノール及び水中の2~3モル当量の塩酸と混合してオメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を生成する工程を含む、オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物を調製する方法が提供される。PIPA、トリホスゲン及びトリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン)の反応は、マイクロミキサー及び反応ループを使用する連続製造により行うことができる。PIPAイソシアネートとAPYRとの反応は、Y-ミキサー及び反応ループを使用する連続製造により実施することができる。PIPA及び/又はAPYRは上記のように調製することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、連続製造は以下のように行われる。3つ口の1Lフラスコにアセトニトリル(471mL)を、続いてPIPA(100.09g、374mmol)を加え、固形分が溶解するまで混合物を撹拌する。ジイソプロピルエチルアミン(135ml、770mmol)を加え、その混合物を均質になるまで撹拌する。別の3つ口1LフラスコにTHF(620mL)を、続いてトリホスゲン(39.3g、131mmol)を加えて固形分が溶解するまで混合物を撹拌する。別の3つ口1Lフラスコに、アセトニトリル(598mL)を、続いてAPYR(47.3g、431mmol)を加える。固形分が溶解するまで混合物を撹拌する。フラスコを、アジアシリンジポンプに取り付ける。PIPA/ジイソプロピルエチルアミン溶液の流れを1.2mL/分(1.00当量のPIPA)で開始し、トリホスゲン溶液の流れを1.16mL/分(1.05当量のホスゲン)で開始する。プロセス流は、マイクロミキサーを通って混合され、その後3mLの反応ループを通過する。PIPAから、対応するイソシアネートへの変換は、ReactIRによりモニターする。ほぼ瞬時に定常状態に達する。
【0053】
APYR溶液の流れは、1.18mL/分(1.15当量)で開始する。PIPAイソシアネート及びAPYRの流れは、Yミキサーで合流し、51mL反応ループ装置(例えば、容積10mLの第1ループ、25mLの第2ループ、及び16mLの第3ループを有する3ループシステム)を通過する。反応物質の流れは、反応の進行をモニターするためのReactIRフローセルを通過し、MeOH(100mL)含有容器に回収される。この設定で5.5時間連続的に運転し、約1.3Lの反応生成物溶液を得る。
【0054】
ある場合には、生成物溶液を2Lの反応容器に移し、約350mLの体積に濃縮する。イソプロパノール(300mL)を加え、この混合物を350mLの体積にまで濃縮する。最後の操作を3回繰り返す。
【0055】
最終の蒸留後、容器に窒素を再充填し、追加のイソプロパノール300mL、続いて水125mLを加える。ジャケット温度を50℃に設定し、6MのHCl(82mL)をゆっくりと加える。ジャケット温度を45℃に下げ、イソプロパノール:水の1:1溶液(50mL)を加える。結晶化には、15mLのイソプロパノールに懸濁させたオメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物の追加の種5gを加え、その後、45℃で1時間保持する。イソプロパノール(227mL)を混合物に加え、温度を55℃に上げて1時間維持する。ジャケット温度を45℃に設定し、混合物を約16時間撹拌する。イソプロパノール(670mL)を90分かけて加える。ジャケット温度を20℃に下げ、混合物を2時間撹拌する。スラリーをろ過し、ケーキを800mLの95:5イソプロパノール:水で洗浄する。ケーキを真空下で乾燥させる。オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物は、93.5%の収率(99.09g)で単離され、純度は99.17重量%及び99.7%のLCAPである。
【0056】
ある場合には、反応混合物にイソプロパノール(315mL)及び水(125mL)が加えられる。混合物を50℃に加熱し、6Mの塩酸水溶液(82mL)を加える。この溶液を45℃に冷却し、イソプロパノール:水混合物(1:1、50mL)中のオメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物の種(5g)のスラリーを加える。この懸濁液を45℃で1時間撹拌する。イソプロパノール(227mL)を加え、混合物を55℃に1時間加温する。懸濁液を45℃に冷却し、16時間撹拌する。イソプロパノール(670mL)を90分間かけて加える。この混合物を20℃に冷却し、2時間撹拌する。スラリーをろ過し、ケーキを95:5のイソプロパノール:水の溶液(800mL)で洗浄する。ケーキをフィルター/ドライヤー上で乾燥させる。オメカムティブメカルビル二塩酸塩水和物は、収率93.5%(99.1g)で単離され、分析値99.17重量%、LC面積99.7%である。
【0057】
本明細書で開示された多くのプロセスは、任意選択として記した工程を含む。ある場合には、任意選択の工程は実施されない。他の場合には、任意選択の工程は実施される。
図1
図2
図3