(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】手術看護師管理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20240718BHJP
【FI】
G16H40/20
(21)【出願番号】P 2022187253
(22)【出願日】2022-11-24
(62)【分割の表示】P 2018209782の分割
【原出願日】2018-11-07
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 有美
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】礒田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 咲由美
(72)【発明者】
【氏名】星野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】本城 友基
(72)【発明者】
【氏名】松崎 健一
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-048786(JP,A)
【文献】特開2015-232767(JP,A)
【文献】特開2017-207811(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108734377(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の術式に対して、各手術看護師の介助の経験値
を術式毎に集計する集計部と、
前記複数の術式に対して術式毎に経験値の閾値が設定されており、前記集計部によって集計された前記各手術看護師の
術式毎の前記介助の経験値と
術式毎の前記閾値とを用いて、各手術看護師の経験ランクを判定する判定部と、
を具備する手術看護師管理装置。
【請求項2】
前記判定部が判定する前記経験ランクには、術式毎の経験ランクが含まれる、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項3】
前記集計部は、術式の類似性に応じて集計を調整する、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項4】
前記経験値は、直接介助の経験件数及び間接介助の経験件数の少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項5】
前記判定部の判定結果に基づいて手術予約調整表に各手術看護師を割り当てる担当割当部を、さらに具備する、
請求項
1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項6】
前記閾値を入力する入力部を、さらに具備する、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項7】
前記各手術看護師の介助の経験件数を術式毎に表示するとともに、前記術式毎の前記閾値を前記経験件数と一緒に表示する、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項8】
前記判定部によって得られた判定結果に基づく分類マークを表示する、
請求項1又は7に記載の手術看護師管理装置。
【請求項9】
個別の手術看護師に関する複数の術式についての経験ランクを、個人スキルマップとして表示する、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項10】
前記判定部によって判定された前記経験ランクに属する手術看護師の数の経時的推移を表示する、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項11】
前記判定部によって判定された前記経験ランクに属する手術看護師の数を、術式毎に表示する、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項12】
個別の手術看護師に関する複数の術式についての経験値の経時的推移を表示する、
請求項1に記載の手術看護師管理装置。
【請求項13】
コンピュータに、
複数の術式に対して、各手術看護師の経験値
を術式毎に集計する処理と、
集計された前記各手術看護師の
術式毎の前記経験値を
、術式毎に設定された閾値を用いて閾値判定することにより、各手術看護師の経験ランクを判定する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項14】
前記経験値は、直接介助の経験件数及び間接介助の経験件数の少なくとも一つを含む、
請求項
13に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術看護師の経験値などを管理する手術看護師管理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、看護師の技能(スキル)や経験値を管理するためのシステムや装置が、例えば特許文献1や特許文献2で開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された看護支援システムは、看護師の看護回数に基づいて看護師のスキルを判定する。特許文献2には、看護師のスキル評価情報に加えて、看護師の所属履歴に基づく参考情報を表示することで、「個々の看護師が自身の強み・弱みを的確に把握して、今後のキャリアプランに活かすことができ、ひいては、医療機関全体の医療レベルの向上を図ることができる。」(段落[0145])と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-242774号公報
【文献】特開2017-181897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2に記載された技術だけでなく、例えば従業員等のスキルや経験値を評価し、それを用いて業務レベルを引き上げることを促進する方法や装置は、広く普及している。ただし、実際にはスキルや経験値を把握するためのパラメータは、職種毎に異なるべきであり、このパラメータの選定が的確でないと、得られるスキルや経験値の評価も的確なものとはならない。
【0006】
しかしながら、手術看護師のスキルや経験値の評価を装置によって求めるためのパラメータについては十分な検討がなされておらず、例えば特許文献1、2等に記載された従来の考え方を用いたとしても、手術看護師に関する有効かつ的確なスキルや経験値の評価を装置によって行うことができるとは考えにくい。
【0007】
このように、手術看護師のスキルや経験値の評価を装置によって求めるための適切なパラメータについての検討がなされていないために、従来、手術看護師のスキルや経験値の評価は病院毎に異なっていたり、評価を行う上司によって異なるものとなっており、装置によって一律に信頼性良く求める方法は考えられていない。
【0008】
特に、手術看護師のスキルや経験値の評価は、手術看護師の手術への割当の指標にもなり得るので、人命に関わる非常に重要なものとなる。
【0009】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、手術看護師に関する経験値を一律に信頼性良く求めることができる手術看護師管理装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の手術看護師管理装置の一つの態様は、
各手術看護師の直接介助の経験件数及び間接介助の経験件数を、術式毎に集計する集計部と、
経験件数の閾値が設定されており、前記集計部によって集計された前記各手術看護師の直接介助の経験件数及び間接介助の経験件数と前記閾値とを用いて、各手術看護師の経験ランクを判定する判定部と、
を具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、手術看護師に関する経験値を一律に信頼性良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る手術看護師管理装置が適用される病院情報システムの概要を示す図
【
図2】実施の形態の手術看護師管理装置の機能ブロック図
【
図3】手術看護師管理用画像の例としての手術看護師スキルマップを示す図
【
図4】手術看護師管理用画像の例として、全ての術式について、複数の看護師の経験件数を表形式で一覧表示した例を示す図
【
図5】手術看護師管理用画像の例として、月毎のエキスパートの人数、スペシャリストの人数、そのどちらでもない人数に加えて、エキスパートの目標数、スペシャリストの最低数を表示した例を示す図
【
図6】月毎のエキスパートの目標数及びスペシャリストの最低数の設定画面の例を示す図
【
図7】手術看護師管理用画像の例として、全看護師について、術式毎のエキスパートの人数及びエキスパートになっていない人数をグラフ形成で表示した例を示す図
【
図8】
図8A、
図8Bは、手術看護師管理用画像の例として、個人の看護師について、月毎に、各術式の経験件数を表示した例を示す図
【
図9】他の実施の形態における係数テーブルを示す図
【
図10】他の実施の形態の手術看護師管理装置の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態を説明する前に、先ず、本発明に至った経緯について説明する。
【0014】
従来、手術看護師(手術室看護師とも呼ばれる)のスキルや経験値の評価は、個人又はグループ単位で管理されており、病院全体で管理する手段としては一般に手書きの集計表などが用いられている。また、例えばパソコン等に手術の経験を登録する場合もある。
【0015】
しかしながら、手術は基本手技を学ぶ手術から特殊手術まで多岐に亘り、さらに、看護師の担当内容には直接介助(器械出しとも呼ばれている)と間接介助(外回りとも呼ばれている)とがあるので、総合的な把握は非常に複雑である。例えばある術式によっては他の術式よりも要求される経験値が大きいものがあり、一般に直接介助は間接介助よりも要求される経験値が大きい。
【0016】
本発明の発明者らは、以下の処理を加えることにより、手術看護師に関する有効かつ的確なスキル評価や経験値を一律に信頼性良く求めることができると考え、本発明に至った。
(i)術式や科毎に経験件数を集計する。
(ii)直接介助と間接介助に分けて経験件数を集計する。
(iii)ランク分けのための閾値を術式や科毎に異なるものとする。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
<システム構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る手術看護師管理装置が適用される病院情報システム(hospital information system; HIS)の概要を示す図である。
図1の病院情報システムは、電子カルテシステムを上位システムとして、医事会計システム、放射線システム、中央検査システム、オーダリングシステム、物流管理システム及び急性期部門システム1がオンライン接続されている。
【0019】
急性期部門システム1はデータベースサーバー100を有する。データベースサーバー100は、データ交換器としてのゲートウェイサーバー101を介して上述の電子カルテシステムやオーダリングシステム等の病院情報システムに含まれる他のシステムと通信可能に接続されている。
【0020】
データベースサーバー100は、手術室や、集中治療室(ICU (Intensive Care Unit))、救命救急室(ER (emergency room))のデータを一元管理する。なお、以下では集中治療室及び救命救急室を、集中治療室又はICU-ERと略記する。
【0021】
手術室には、麻酔器200や生体情報モニター210が設けられており、これらが変換モジュール220を介してデータベースサーバー100にオンライン接続されている。ICU-ERには、図示しない人工呼吸器、大動脈バルーンポンプ及び生体情報モニター等が設けられており、これらが図示しない変換モジュールを介してデータベースサーバー100にオンライン接続されている。
【0022】
データベースサーバー100は、手術室やICU-ERに設けられた麻酔器200、生体情報モニター210、人工呼吸器(図示せず)、血液ガス分析装置(図示せず)等のデータをオンラインで収集して一元管理する。また、データベースサーバー100は、ゲートウェイサーバー101を介して電子カルテシステムやオーダリングシステム、中央検査システム等から患者属性や各種検査データ、薬剤オーダー、手術オーダー等のデータを取得可能となっている。さらには、急性期部門システム1からのデータを病院情報システムに含まれる他のシステムに送信することも可能となっている。
【0023】
データベースサーバー100は、術前の手術予約から、スケジューリング、術後の麻酔記録サマリまで、周術期を一元管理できる。
【0024】
また、データベースサーバー100には、手術室の端末103やICU-ERの端末104が接続されている。端末103、104はデータベースサーバー100からのデータを受け取って、麻酔チャート及び手術看護師管理用画像等の医療用画像を作成する機能を有する。
【0025】
端末103、104は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)等を有し、CPUがROMに保持されたプログラムを実行することにより、手術看護師管理装置としての機能を実現する。実際上、手術部門の端末103に、本実施の形態の手術看護師管理装置を実現するためのプログラムが組み込まれ、これにより端末103は、後述するような手術看護師管理用画像を形成し表示する。
【0026】
また、端末103によって形成された手術看護師管理用画像は、データベースサーバー100によって記録される。また、この手術看護師管理用画像は、Webサーバー102を介して院内又は外部の端末で参照することもできる。
【0027】
<手術看護師管理装置>
図2は、本実施の形態の手術看護師管理装置10の機能ブロック図である。実際には、上述したように本実施の形態の手術看護師管理装置10は、端末103等に組み込まれたプログラム等によって実現される。
【0028】
手術看護師管理装置10は、入力部11によって入力された入力データを集計部12に入力する。入力部11は例えば端末103のキーボードである。よって、具体的には集計部12には、ユーザーによるキー操作に入力された数値データや文字データ等が入力される。
【0029】
集計部12は、各手術看護師の直接介助の経験件数及び間接介助の経験件数を、術式毎に集計する。集計部12により得られた集計結果は、判定部13及び表示制御部14に送られる。
【0030】
判定部13は、術式毎に経験件数の閾値が設定されており、集計部12によって集計された各手術看護師の直接介助の経験件数及び間接介助の経験件数と閾値とを用いて、術式毎に各手術看護師の経験ランクを判定する。判定部13により得られた判定結果は、表示制御部14に送られる。なお、判定部13で用いられる閾値は、入力部11を介して予めユーザーによって設定することが可能となっている。
【0031】
表示制御部14は、集計部12から入力された集計結果及び判定部13から入力された判定結果を表示部15に表示する。
【0032】
<手術看護師管理用画像>
図3、
図4、
図5、
図7及び
図8は、手術看護師管理装置10によって作成され表示される手術看護師管理用画像の例を示す図である。
【0033】
図3は、手術看護師管理用画像の例としての手術看護師スキルマップを表示した例である。
図3の画像の左側には術式分類別スキルマップが表示されている。術式分類別スキルマップには、分類された術式(開心術、非開心術、術式分類A、術式分類B、………)毎に、各手術看護師の直接介助(器械出し)の経験件数及び間接介助(外回り)の経験件数が表示される。
図3の例では、「開心術」のタブが選択され「開心術」に関する経験件数が表示されているが、例えば「非開心術」のタブが選択された場合には「非開心術」に関する経験件数が表示される。
【0034】
ここで、経験件数のカウントの仕方は、原則として、1つの手術に最初から最後まで担当した場合に1件とする。ただし、経験件数のカウントの仕方はこれに限らない。例えば1つの手術を半分の時間だけ担当した場合には0.5件としてカウントするなどしてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、各手術看護師の経験ランクとして、「エキスパート」と「スペシャリスト」が用いられる。「エキスパート」は各術式で経験件数が閾値以上の人を意味し(例えば術式分類Aのエキスパート等と表現する)、「スペシャリスト」は全ての術式でエキスパートとなった人を意味する。
【0036】
図3の例では、直接介助(器械出し)及び間接介助(外回り)それぞれについて、エキスパートライン(エキスパートとなるための閾値)が表示されている。ここで、エキスパートラインは、直接介助(器械出し)と間接介助(外回り)とで異なることに注意されたい。具体的には、エキスパートラインは、間接介助(外回り)よりも直接介助(器械出し)の方が大きな値とされている。図の例では、間接介助(外回り)は10であり、直接介助(器械出し)は20である。
【0037】
また、エキスパートラインを超えた看護師にはエキスパートであることを示すマークが表示されている。さらに、エキスパートラインとの差が大きい看護師には「強化対象」(その術式に関する経験件数を特に増やす必要がある対象者)であることを示すマークが表示されている。なお、「強化対象」に選定する看護師は、エキスパートラインとの差が大きい看護師に限らず、教育プランを配慮した者を選定してもよい。例えばエキスパートに近い看護師を優先的に強化対象に選択してもよい。強化対象に選定する看護師は、管理者が手動で入力してもよいし、装置が所定の基準に基づいて選定してもよい。
【0038】
図から分かるように、ある術式について、間接介助(外回り)ではエキスパートであっても直接介助(器械出し)ではエキスパートでない看護師もいる。逆に、ある術式について、直接介助(器械出し)ではエキスパートであっても間接介助(外回り)ではエキスパートでない看護師もいる。
【0039】
図3の画像の右側には個人スキルマップが表示されている。個人スキルマップには、選択された看護師の全術式に関する経験件数が直接介助(器械出し)と間接介助(外回り)とに分けて表示される。
図3の例では、個人スキルマップがレーダーチャートの形式及び表の形式で表示されている。
【0040】
図4は、手術看護師管理用画像の例として、全ての術式について、複数の看護師の経験件数を表形式で一覧表示した例である。この表においては、全術式に関する経験件数が直接介助(器械出し)と間接介助(外回り)とに分けて表示されている。なお、エキスパート設定数は、ユーザーによって入力部11を介して閾値として設定可能である。
【0041】
図5は、手術看護師管理用画像の例として、月毎のエキスパートの人数、スペシャリストの人数、そのどちらでもない人数に加えて、エキスパートの目標数、スペシャリストの最低数を表示した例である。エキスパート及びスペシャリストの判定は、判定部13(
図2)によって行われるので、
図5の表示画像は判定部13の判定結果に基づいて作成される。
図5の画像は例えば病院内の全手術室看護師を対象としたものである。病院の管理者は、
図5の画像を見れば、月毎のエキスパート数及びスペシャリスト数の動向を知ることができるとともに、エキスパート数及びスペシャリスト数が目標値に対して不足しているか否かを判断できる。この結果、管理者は、病院として手術を行うために好ましいエキスパート数及びスペシャリスト数を確保できているかを一目で確認できるようになり、さらにそれに基づいて今後の対策を講ずることができる。
【0042】
図6は、月毎のエキスパートの目標数及びスペシャリストの最低数を設定するための画面の例を示す図である。管理者等のユーザーは、手術看護師管理装置10の表示部15に表示された
図6の設定画面を見ながら入力部11によって設定値を入力する。
【0043】
図7は、手術看護師管理用画像の例として、病院内の全手術室看護師について、術式毎のエキスパートの人数及びエキスパートになっていない人数をグラフ形成で表示した例である。
図7においても、各人数は、直接介助(器械出し)と間接介助(外回り)とに分けて表示されている。また、
図7の例では、エキスパートの目標数のグラフが表示されているとともに、エキスパートの目標数に対するエキスパートの不足分が強化対象人数として数値にて表示されている。
【0044】
図8A、
図8Bは、手術看護師管理用画像の例として、個人の看護師について、月毎に、各術式の経験件数を表示した例である。この画像により個人の看護師の成長過程を把握できる。また、この画像には、エキスパートになるための指標としての目標値も表示されている。なお、この目標値は、上述の術式毎及び直接介助(器械出し)毎、間接介助(外回り)毎に設定された目標値とは異なり、あくまでも目安としての目標値である。この目標値が単なる直線では無く折線となっているのは、担当する術式に応じてエキスパートの経験件数が異なるためである。また、
図8Bに示したように、エキスパートとなった術式にはそれを示すマーク(図では★印)が付される。
【0045】
<効果>
以上説明したように、本実施の形態の手術看護師管理装置10によれば、各手術看護師の直接介助の経験件数及び間接介助の経験件数を術式毎に集計する集計部12と、術式毎に経験件数の閾値が設定されており、集計部12によって集計された各手術看護師の直接介助の経験件数及び間接介助の経験件数と閾値とを用いて、術式毎に各手術看護師の経験ランクを判定する判定部13と、を有することにより、手術看護師に関する経験値を一律に信頼性良く求めることができる手術看護師管理装置10を実現できる。この結果、手術看護師管理装置10によって形成され表示された手術看護師管理用画像を見れば、管理者は、手術看護師の手術への割り当てや、手術看護師の教育管理等を容易かつ的確に行うことができるようになる。
【0046】
<他の実施の形態>
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0047】
(i)上述の実施の形態に加えて、集計部12は、手術看護師が所定期間以上直接介助及び又は間接介助をしなかった場合、直接介助の経験件数及び又は間接介助の経験件数を減算するようにしてもよい。例えば、術式Aの直接介助を行う期間が1ヶ月以上空いた場合には、術式Aの直接介助の経験件数を1ヶ月毎に0.5ずつ減算する。
【0048】
(ii)上述の実施の形態では、第1の術式と第2の術式との間に似た術式が含まれる場合には、第1の術式と第2の術式との間で経験件数を重複して加算してもよい。これについて、
図9を用いて説明する。図における「グループ分類」である心臓外科、血管外科、小児科、………にはそれぞれ上述の実施の形態の術式A、術式B、術式C、………に相当する複数の術式が含まれている。具体的には、心臓外科には、大動脈弁置換術や冠動脈バイパス術、上行血管置換術等の複数の術式が含まれている。血管外科にも、腹部大動脈瘤切除再建術やF-Fバイパス、顕微鏡下血管吻合術等の複数の術式が含まれている。
【0049】
これらの術式の中には術式A、B、C、………間で似ているものもある。例えば心臓外科に含まれる上行血管置換術と血管外科に含まれる腹部大動脈瘤切除再建術は似た手術である。よって、例えば上行血管置換術の直接介助を行った場合、その経験件数を「1」加算するだけでなく、腹部大動脈瘤切除再建術の直接介助の経験件数を所定ポイントだけ加算する。
図9のテーブルには、この所定ポイントを加算する際に用いる係数が設定されている。係数は、1よりも小さく、かつ、術式が似ているほど大きな値である。
図9のテーブルは集計部12に設けられている。具体例を挙げる。例えば看護師Aが上行血管置換術の直接介助を行った場合、心臓外科の直接介助の経験件数として1ポイントが加算される。加えて、血管外科の腹部大動脈瘤切除再建術の経験件数として1×係数(0.4)=0.4ポイントが加算される。
【0050】
(iii)経験ランクを判定するための閾値の設定は、必ずしも術式毎に行わなくてもよい。例えば
図9に示した、心臓外科、血管外科、小児科、………毎に設定して、心臓外科、血管外科、小児科、………毎に直接介助及び間接介助の経験ランクを求めるようにしてもよい。例えば心臓外科の経験ランクを求めるにあたっては、心臓外科に含まれる全術式の経験件数を直接介助及び間接介助に分けて加算し、その加算件数を閾値判定することにより、心臓外科の経験ランクとして判定してもよい。
【0051】
(iv)上述の実施の形態では、看護師を経験件数に応じてエキスパート、スペシャリストにランク分けした場合について述べたが、判定部13が行うランク分けはこれに限らず、例えばさらに詳細な経験ランクのランク分けを行ってもよい。
【0052】
上述の実施の形態では、主に1ヶ月単位での集計表示を行う場合について述べたが、勿論、年単位や期単位での集計表示を行うようにしてもよい。
【0053】
(v)上述の実施の形態の判定部13の判定結果を用いて各手術室への看護師の割り当てを行うようにしてもよい。
図10は、この割り当てを実現するための手術看護師管理装置20の機能ブロック図である。
図2との対応部分に同一符号を付して示す
図10において、手術看護師管理装置20は担当割当部21を有する。担当割当部21には、データベースサーバー100から手術予約調整表の情報が入力される。担当割当部21は、判定部13により得られた判定結果に基づいて手術看護師を手術予約調整表に含まれる手術に割り当てる。
【0054】
具体的には、担当割当部21は、手術看護師がエキスパートやスペシャリストであるか否かを加味した割り当てを行うことができる。また、担当割当部21は、手術看護師が強化対象者か否かを加味して割り当てを行うことができる。これにより、例えばエキスパートやスペシャリストを優先して手術に割り当てることができる。また、例えば強化対象者を優先して手術に割り当てることができる。勿論、担当割当部21は、各手術看護師の経験年数や休暇予定等の他の条件を加味した割り当てを行ってもよい。
【0055】
担当割当部21は、手術看護師に対して前回と同じ症例を重点的に担当するような、或いはまんべんなく症例を経験するような割り当てを行ってもよい。
【0056】
担当割当部21は、直接介助及び間接介助のそれぞれに関する手術看護師の経験値を加味して、各手術について直接介助及び間接介助への手術看護師の割り当てを行うことができる。
【0057】
担当割当部21によって割り当てられた割り当て結果は、入力部11を介してユーザーによって変更することもできる。この場合、担当割当部21はユーザーによる変更内容と変更理由を記憶しておき、次回からの割り当てはこの変更内容や変更理由を加味して行うようにしてもよい。これにより、例えばある個人の特性(例えば利き腕、身長、性格)や手術時間等を考慮した割り当て処理を行うこともできるようになる。
【0058】
ここで、従来は、手術への手術看護師の割り当て調整を行う看護師(師長、主任等)は、1症例ずつ、勤務表と照らし合わせて直接介助(器械出し)及び間接介助(外回り)の看護師を手術予約調整表に登録していた。この作業は、1症例に対して1分ほどかかるため、1日に40症例の手術を行う病院の場合、1日分で40分、1週間分をまとめて行う場合は3時間程度の時間を要していた。よって、手術への手術看護師の割り当て調整を行う看護師(師長、主任等)にとって大変な負担であった。
【0059】
図11は、病院における手術予約調整表の例を示す。このような非常に多くの手術(OPE1~OPE6)に各手術看護師の経験値を踏まえて各看護師を適切に割り当てるには非常に手間がかかる。
【0060】
本実施の形態の手術看護師管理装置20を用いれば、この負担を軽減できる。また、手術看護師管理装置20によれば、一定基準での割り振りを行うことができるので、手術看護師はまんべんなく症例を経験することが可能となる。また、手術室看護師全体のスキルアップを目指すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、手術看護師の経験値などを管理する手術看護師管理装置及びプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 急性期部門システム
10、20 手術看護師管理装置
11 入力部
12 集計部
13 判定部
14 表示制御部
15 表示部
21 担当割当部
100 データベースサーバー
101 ゲートウェイサーバー
102 Webサーバー
103、104 端末
200 麻酔器
210 生体情報モニター
220 変換モジュール