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特許7522816高価値の脂質を増強するための方法及び製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】高価値の脂質を増強するための方法及び製剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20240718BHJP
   C12P 7/6434 20220101ALI20240718BHJP
【FI】
C12N1/12 B
C12P7/6434
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200211
(22)【出願日】2022-12-15
(65)【公開番号】P2023089970
(43)【公開日】2023-06-28
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202121058693
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【微生物の受託番号】MTCC  MTCC 5890
(73)【特許権者】
【識別番号】518386656
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレイション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INDIAN OIL CORPORATION LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】598021878
【氏名又は名称】デパートメント、オブ、バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】DEPARTMENT OF BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】マートゥル、アンシュ シャンカル
(72)【発明者】
【氏名】メータ、プリーティ
(72)【発明者】
【氏名】ラニ、レーカ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ、ラヴィ プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】プリー、スレーシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール、サンカラ スリ ベンカタ
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101979623(CN,A)
【文献】Mar. Drugs,2019年,Vol.17,Article No.268
【文献】Bioprocess and Biosystems Engineering,2009年,Vol.32,pp.837-843
【文献】Chemical Engineering Journal,2015年,Vol.268,pp.187-196
【文献】Journal of Chemical Technology & Biotechnology,2016年,Vol.91,pp.1199-1207
【文献】Biotechnol. J.,2016年,Vol.11,pp.345-355
【文献】Korean J. Chem. Eng.,2013年,Vol.30, No.4,pp.787-789
【文献】Process Biochemistry,2019年,Vol.77,pp.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/38
C12P 7/00-7/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養培地中の炭素基質からのオメガ3脂肪酸の生産を増強するための培地補充組成物であって、0.25~0.65wt%のクエン酸、0.25~1wt%のリンゴ酸、及び0.0005~0.0015wt%のベンジルアミノプリンを含む調節剤を0.01~2wt%含前記培養培地は、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)(MTCC5890)を含む、組成物。
【請求項2】
前記調節剤は、0.1~10g/Lのクエン酸、0.1~12g/Lのリンゴ酸、及び1~15mg/Lのベンジルアミノプリンである、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記調節剤は、クエン酸、リンゴ酸及びベンジルアミノプリンが0.4:0.58:0.002の重量比である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記オメガ3脂肪酸はドコサヘキサエン酸である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
素基質からの、オメガ3脂肪酸の生産を増強する方法であって、
a.前記炭素基質を有する培養培地中のシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)(MTCC5890)を培養するステップ、
b.0.01~2wtの調節剤を含む培地補充組成物を前記培養培地に提供するステップ、
を含み、
前記調節剤は、0.25~0.65wt%のクエン酸、0.25~1wt%のリンゴ酸、及び0.0005~0.0015wt%のベンジルアミノプリンを含み、
オメガ3脂肪酸の生産を増強するための窒素ストレスの誘導を含まない
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記炭素基質はグリセロールである、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記培地補充組成物の前記調節剤は、0.1~10g/Lのクエン酸、0.1~12g/Lのリンゴ酸、及び1~15mg/Lのベンジルアミノプリンを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記培地補充組成物の前記調節剤は、クエン酸、リンゴ酸、及びベンジルアミノプリンを0.4:0.58:0.002の重量比で含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記培養培地は、5.3~9.5の範囲内のpHを有する、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一のリアクターにおける生産培地中の化学混合物の相乗効果を利用して、微細藻類のバイオマス及びオメガ3脂肪酸を含む脂質を単一のステップで同時に増強することを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
エネルギー源の需要が増え続け、化石燃料資源の枯渇が進行していることにより、研究の大部分が、石油原料に代わる再生可能なエネルギー代替品を見つけることに焦点を当てられている(Abomohra et al., 2016)。近年、バイオオイル又は微生物バイオマス由来燃料は、化石燃料の過剰使用により生じる有害な排出の負の結果に持続可能な方法で対抗するため、研究にとってのユニークなプラットフォームとなっている(Mehta et al., 2018)。そのようなプラットフォームを開発するための努力の大半は、緑藻類、スラウストキトリド(Thrautochytrids)及び酵母のようないくつかのグループの油脂性微生物の培養を含む。
【0003】
様々な油脂生産微生物の中で、スラウストキトリドは、その控えめで生得的なデノボ脂質生成と相まって、高価値の脂質を持続的に生成するための潜在的な候補として考えられている。この生物は、高い細胞濃度を示し、高価値な長鎖多価不飽和脂肪酸、つまりドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸とともにバイオディーゼル用の脂質液滴を生産するための顕著な能力を示している点でユニークである。
【0004】
脂質蓄積は、他の油脂性微生物のメカニズムと同様に、必須栄養素、例えば窒素(N)が細胞成長を制限したときに、この生物で得られる(Sun et al., 2018)。微細藻類は、低い油分蓄積で高いバイオマス生産(窒素充足状態)、又は高い油分蓄積で低いバイオマス生産(窒素枯渇状態)という、2つの相反する特徴を示す。脂質蓄積を増強するための栄養素がストレスとなる条件では、成長が止まり、全体として脂質の生産性が低下する可能性がある。従って、油脂性微生物において、増殖速度を低下させることなく脂質含量を高めることは、バイオマス由来のバイオ燃料生産の経済性を向上させるための必須条件である。
【0005】
過去の研究では、バッチ式、フェッドバッチ式、連続式、半連続式、及び二段式培養方法のような異なるタイプの発酵において、ストレスに基づく戦略を採用することで、微生物の脂質含量を増強する培養戦略の改善に主に焦点を当てた(Aziz et al., 2020)。これらの戦略は、第1段階で最適な成長条件を適用してバイオマス生産量を最大化し、第2段階で栄養枯渇の培地での脂質蓄積を維持する。特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4は、酸素制御法、つまり窒素がない脂質生産段階では溶存酸素を低くし、バイオマス密度を増加させる段階では溶存酸素を高くする二段階培養戦略を開示する。高溶存酸素を維持するための高混合・高通気により、激しい発泡や細胞の剪断が容易に起こる可能性がある。しかしながら、これらのバイオプロセスの工業規模での拡張のためには、より多くのコストとエネルギーが必要となる。これらの技術は、発酵の最適化のみを用いて微細藻類の脂質生産性を更に改善させることができない段階に至っている。特許文献5及び特許文献6は、微細藻類の混合物の炭素源として粗グリセロールを使用し、スラウストキトリド属を培地で培養し、粗グリセロールの反復供給を制御して高細胞密度が達成されるまで閾値濃度レベルを維持する供給バッチ戦略を記載した。ガス状基質から脂質を製造するための2段階連続システムが特許文献7に記載されている。特許文献8は、藻類培養物を供給バッチで成長させ、藻類バイオマスを負の成長加速段階で採取し、高い脂質含量を得る方法を開示している。しかしながら、これらの特許は、脂質生産のために窒素ストレス条件を用いることを包含し、脂質と高細胞密度バイオマスを同時に生産することを教示していない。
【0006】
過去において、既知の技術のいくつかは、脂質の質及び量を改善するために、相同組換え又はランダム挿入変異、微細藻類の遺伝子の分子改変、CSISPR関連トランスポザーゼ技術を提案した(Shahid et al., 2019)。例えば、特許文献9、特許文献10は、高脂質生産のために、異なる種の細菌、酵母及び真菌宿主における炭化水素修飾酵素の、つまり脂肪アシル-ACPチオエステラーゼ及び脂肪アシル-C0A/アルデヒドレダクターゼの遺伝子改変及び発現の方法を開示する。特許文献11は、ストレス誘導脂質生産に基づく方法であって、緑藻類で発現した新規タンパク質が、クロロフィルのような藻類成分の実質的な分解なしに、脂肪酸の増加又は変化をもたらす方法を開示した。特許文献12及び特許文献13は、1つ以上の単離スラウストキトリウムを含む方法と、部位特異性及び又はランダムによるその変異、全脂質中の高いDHA及びEPA含有量を生産することができる変異体の生成に関する。それにもかかわらず、全ての微細藻類株に対する効率的な遺伝子編集方法は存在せず、ほとんどの種の微細藻類において課題が残っている(Naduthodi et al., 2018)。更に、過去の特許では、窒素ストレス状態の成長の後期において、総脂質、DHA、DPAの含有量を改善する方法が開示された。従って、脂質及び長鎖不飽和脂肪酸の調節における主要な進歩の1つは、発酵における脂質含量を増強することができる費用対効果の高い効率的な化学添加物の選択であり得る(Sun et al., 2019)。
【0007】
近年、様々な化学分子(活性剤と阻害剤に分類される)が同定され、微細藻類の細胞内の脂質蓄積を直接改善するために使用されることが増えている(Sun et al., 2019 and 2018、Yu et al., 2015)。発表された研究のほとんどでは、様々な植物成長ホルモン、抗酸化剤、ビタミン、有機酸等の化学分子(例えば、フルボ酸、ジベレリン、アブシジン酸、アスコルビン酸、オーキシン、エタノールアミン、EDTA、セサモール、マロン酸、トリエチルアミン、ナフトキシ酢酸、サリチル酸及びジャスモン酸、6-ベンジルアミノプリン、安息香酸等)の脂質蓄積への影響が調べられて(Zhao et al, 2018、Yu et al., 2015)。これらの戦略は、バッチモード及び供給バッチモードでうまく適用され、窒素枯渇後の後段階でのみ総脂質収量が増加することが示された(Patel et al., 2015、Aziz et al., 2020)。過去の研究では、微生物の成長と脂質蓄積の両方を改善するために、最初の段階で化学的刺激剤を添加してバイオマス生産性を改善し、その後、窒素、塩ストレスのような任意のストレスを適用して脂質含量を増加させる段階的戦略が開発された(Sun et al., 2018)。例えば、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)とクリプテコディニウムコニー(Crypthecodinium cohnii)では、アスコルビン酸とセサモールとを添加することにより、脂質収量とドコサヘキサエン酸(DHA)生産性がそれぞれ14.5%、20.0%増加した(Liu et al. 2015、Ren et al. 2016)しかしながら、抗酸化物質の主な効果は、脂質の生合成そのものを誘導するのではなく、酸化的なダメージを軽減することのみであった。さらに、金属及び窒素ストレスを加えたサリチル酸とETAとナフトキシ酢酸(BNOA)とETAとの組み合わせは、クリプテコディニウムコニーの脂質蓄積を22.45%増加させた(Li et al., 2015)。シゾキトリウム属のDHA蓄積については、窒素欠乏での急速な脂質蓄積段階で培養培地に有機酸を補充すると、総脂肪酸のDHA含量を35%から60%に増加させることができた(Patil et al., 2015)。これらの研究は、化学物質は低用量で有効であり、培地への補充は、同時に高いバイオマス生産性と関連することなく、脂質含量を改善することができることを示唆した。この知見は、バイオマス生産と同時に脂質蓄積を増強するために、ストレス条件を操作することの重要性を物語っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第9,848,623号明細書
【文献】米国特許第10,351,814号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0298149号明細書
【文献】米国特許第8,124,384号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0281054号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0088317号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0122787号明細書
【文献】米国特許第9,434,898号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0047863号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0004715号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0322157号明細書
【文献】米国特許第10,085,465号明細書
【文献】米国特許第9,816,116号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、独自の組み合わせの化学添加剤を採用することで、栄養欠乏から切り離されたシングルステップ発酵において、微細藻類細胞からの油脂蓄積とバイオマスの同時生産を増強することが必要である。微小藻類の脂肪酸生産とバイオマス生産の速度を、栄養充足/栄養枯渇の発酵で比較し、栄養充足条件でのみ独自の組み合わせで化学調節剤を補充した。粗グリセロール(バイオディーゼル産業の副産物)及び/又は炭素源を含む任意の廃棄物ストリームとクエン酸/リンゴ酸/BAPを補充した培地の適切な組成での培養は、任意の欠乏条件に頼ることなく、同時に高いバイオマス及び脂質生産性を生じさせることができる。この方法は、使用される調節剤の独自の比率の累積的な相乗効果により、高いバイオマス及び油脂生産量をもたらす。このような生産性は、グルコース及び粗グリセロールベースの供給バッチ発酵で報告されているものにより達成される生産量よりも高い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、低コストの炭素基質からのバイオマス生産を損なうことなくオメガ3脂肪酸の生産を増強するための培地補充組成物であって、クエン酸(CA)、リンゴ酸(MA)、及びベンジルアミノプリン(BAP)を含む群から選択される調節剤を0.01~2%含む、培地補充組成物を提供する。
【0011】
本発明の特徴において、調節剤は、0.25%~0.65%のクエン酸、0.25%~1%のリンゴ酸、及び0.0005~0.0015%のベンジルアミノプリンである。
【0012】
本発明の別の特徴において、調節剤は、0.1~10g/Lのクエン酸、0.1~12g/Lのリンゴ酸、及び1~15mg/Lのベンジルアミノプリンである。
【0013】
本発明の別の特徴において、調節剤は、クエン酸、リンゴ酸及びベンジルアミノプリンであり、比率が0.4:0.58:0.002である。
【0014】
本発明の特徴において、オメガ3脂肪酸はドコサヘキサエン酸である。
【0015】
別の好適な実施形態において、本発明は、低コストの炭素基質からのバイオマス生産を損なうことなくオメガ3脂肪酸の生産を増強するための方法を提供し、該方法は以下のステップ、
a.クエン酸(CA)、リンゴ酸(MA)、及びベンジルアミノプリン(BAP)を含む群から選択される0.01~2%の調節剤を含む補充組成物を培養物に提供するステップ、及び、
b.シゾキトリウム属(MTCC5890)を含む種子培養物を提供するステップ、
を含み、
前記方法は、オメガ3脂肪酸の生産を増強するための窒素ストレスの誘導を必要としないことを特徴とする。
【0016】
本発明の別の特徴において、基質はグリセロールであり、菌株はシゾキトリウム属(MTCC5890)である。
【0017】
本発明の特徴において、補充組成物は、0.1~10g/Lのクエン酸(CA)、0.1~12g/Lのリンゴ酸(MA)、及び1~15mg/Lのベンジルアミノプリン(BAP)を含む。
【0018】
本発明の更に別の特徴において、補充組成物は、0.1~10g/Lのクエン酸(CA)、0.1~12g/Lのリンゴ酸(MA)、及び1~15mg/Lのベンジルアミノプリン(BAP)を含む。
【0019】
本発明の特徴において、培養物のpHは、5.3~9.5の範囲内にある。
【0020】
(本発明の目的)
本開示は、栄養欠乏から切り離されたシングルステップ発酵槽における微細藻類細胞からのバイオマス生産を伴う高油脂蓄積に関する。
【0021】
本発明の第1の目的は、単一のリアクターにおいてバイオマス及び高価値脂質の収量を同時に増強する方法を提供することであり、これは資本コスト及び運用コストの低減につながる。
【0022】
本発明の更に別の目的は、脂質及びバイオマス生産を増強するための、シゾキトリウム属(MTCC5890)株を提供することである。
【0023】
本発明の更なる目的は、自社開発した新規の菌株を使用することで、生産培地における独自の比率の化学調節剤の混合物を補充することにより、単一プロセスで、高いバイオマスと共に高価値脂質を著しく改善するプロセスを提供することである。
【0024】
本発明の更なる目的は、バイオマス及び脂質の生産を著しく改善するプロセスを提供することであり、それにより、発酵の連続プロセス中に、透過液をリサイクルして水及び他の残留栄養素を取得し、それらを発酵に再利用してプロセスを経済化することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、最適な投与量の添加剤混合物及び低コストの基質の累積効果を採用することにより、栄養ストレスを与えることなく、シングルステップで脂質/バイオマス生産性を増強させる方法を提供することにある。
【0026】
本発明の別の目的は、炭素を高付加価値のオメガ3脂肪酸及びバイオ燃料製品に変換し、経済的に実現可能な状態を達成するための費用対効果効率の高いハイパー脂質生産プラットフォームを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、シゾキトリウム属(MTCC5890)による対照生産培地における脂質及びバイオマス生産量に対する異なる濃度の粗グリセロールの効果を説明する。
図2図2は、シゾキトリウム属(MTCC5890)による対照生産培地における脂質及びバイオマス生産量に対する異なる濃度の純粋なグリセロールの効果を説明する。
図3図3は、シゾキトリウム属(MTCC5890)による生産培地における脂質及びバイオマス生産量に対する異なる濃度の調節剤、クエン酸(A)、リンゴ酸(B)及びベンジルアミノプリン(C)の効果を説明する。
図4図4は、特定の比率の調節剤の混合物を含む生産培地(A)及び対照(B)における、連続発酵でのバイオマス、総脂質、DHA生産性の変化を説明する。対照は、調節剤無添加を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の主な実施形態は、単一のリアクターにおいて脂質及びバイオマスを並行して増強するための連続発酵を含むプロセスを提供する。このプロセスは、混合物中の特定量の異なる調節剤の補充を採用し、それによって脂質、オメガ3脂肪酸、つまりDHA及びバイオマスの生産が同時に増強される。本発明は、バイオマス及び高価値脂質に対するストレス条件の悪影響を克服する戦略を提供する。混合物中の調節剤の組み合わせの協力的な相乗効果は、DHAに富む脂質の蓄積を増加させるだけでなく、単一のリアクターにおいて同時にバイオマスを増強する。更なる好ましい実施形態において、本発明は、発酵培養ブロスから栄養素画分及び水さえも回収し、プロセスにおいてリサイクルする、プロセスを提供する。
【0029】
微細藻類由来のバイオ燃料生産の経済性を改善するためには、成長速度を低下させることなく、微細藻類株中の脂質含量を増強することが必須条件である。本培養戦略の実施により、ストレス条件なしに脂質蓄積とバイオマス生産との両方を同時に増加させる。本発明では、窒素充足条件下で、化学添加物の新規な組み合わせと最適な投与量とを採用し、窒素欠乏条件と比較して、高価値なオメガ3脂肪酸(すなわちDHA)が濃縮されたバイオマス及び脂質の比生産性が著しく高くなる。窒素欠乏の必要性は普遍的なものではなく、微生物に窒素ストレスを与えることなく、単一の発酵槽で同時点に高い脂質生産性とバイオマス生産性を得ることが可能である。本発明の戦略は、全ての試験生物及び任意の望ましい栄養の組み合わせにおいて、バイオマス及び脂質の生産性を増強することが見出された。
【0030】
このプロセスは、スラウストキトリド、つまりシゾキトリウム属(MTCC5890)である微細藻類株が、いかなる窒素ストレスも与えずに単一のステップで高細胞密度バイオマス及び脂質の生産を同時に増強するために、発酵のエネルギー源として低コストの炭素基質/あらゆる廃棄物ストリーム及び化学調節剤を含む培地で培養されるステップを含む。炭素基質と化学調節剤との両方を独自且つ新規の割合で混合し、適切なpHの培地を得て、それにより微細藻類の成長に最適なpHを得るために酸及び塩基を加える必要性を排除する。
【0031】
本発明は、前処理を行わない粗廃グリセロールを藻類の成長の基質として用い、種々のオメガ3脂肪酸を含む脂質リッチバイオマスを製造する方法に関する。該方法は、(a)粗グリセロールを培養培地として提供するステップ、及び(b)粗グリセロール培養培地において、微細藻類種がDHA、EPA等のようなオメガ3脂肪酸を豊富に含む高脂質含有バイオマスを生産できる条件下でシゾキトリウム属を培養するステップ、を含む。
【0032】
実施例
本発明の更に別の態様において、新規なスロストキトリウム株、つまりシゾキトリウム属(MTCC5890)は、窒素源の存在下及び不存在下の両方で、未処理の高濃度粗グリセロールで繁殖するという独自の且つ予期しない特性を有することが見出された。本発明では、シゾキトリウム属(MTCC5890)に十分な窒素を供給しないことで、高い脂質蓄積と低いバイオマス生産とが引き起こされることが見出された。これにより、新規なシゾキトリウム属(MTCC5890)を、窒素欠乏を起こさずに単一のリアクターにおけるバイオマス、脂質、及びDHAの同時生産に利用するための様々な戦略を適応することが可能となり、例えば、発酵の特定の時点での化学調節剤の異なる組み合わせを修正すること、希釈率を高めること、及び選択された菌株を化学調節剤で修正されたこれらの高い濃度の粗グリセロール培地に適応させることを適用し、窒素欠乏を伴わないバイオマス、脂質及びDHAの生産を増強した。更に、新規なシゾキトリウム属(MTCC5890)のこのような独自の特性により、出願人は、バイオディーゼル産業の廃液、つまり粗グリセロールから栄養分を分離することにより、単一のリアクターで高いバイオマス、バイオディーゼルのための脂質、及び高価値なDHAを同時に生産する連続発酵を含む独自且つ新規の方法を開発する、及び到達することができた。
【0033】
(実施例1)
粗グリセロールの特性評価
2つの粗グリセロールサンプル(CG-1及びCG-2)はインドのバイオディーゼル製造会社から提供された。グリセロールサンプルは、メタノール、有機画分(FAME)石鹸、残留元素のような他の不純物と、グリセロールとの含有量を測定するために、特性評価を行った。粗グリセロールの密度は、室温(25±0.5℃)で粗グリセロールの体積と重量とを測定することによって決定された。pH測定のため、粗グリセロール(1.00g)を50mLmpの脱イオン(DI)水に溶かした。溶液のpHは、室温(25±0.5℃)でデジタルpHメーターによって測定された。Na、Mg、Al、P、K、Ca、Mn、Fe、Co、Cu、及びZnを含む元素は、ICP-MS(Agilent Technologies ICP-MS 7500 series, Santa Clara, CA)により測定した。粗グリセロールの石鹸含量は、AOCS Recommended Practice Cc 17-9532及びASTM D 4662-08 (Hu et al.,2012)を参照して決定した。粗グリセロールのグリセロール含量は、Aminex HPX-87Hカラム(Bio-Rad Laboratories, USA)を備えたHPLC(Waters Corp. USA)により、同じ操作条件に従って、前述(Singh et al, 2017)のように決定した。Zebron ZB-Bioethanolカラム(Phenomenex, 356385、30m×0.25mm、100μm厚)を備えたYL6500ガスクロマトグラフ(YL instruments、韓国)により、サンプルのメタノール濃度を分析した。インジェクタを250℃に保ち、サンプル量1μLを50:1の分割比で注入した。ヘリウムをキャリアガスとして使用し、その流速を1.5mL/minに維持した。オーブンを140℃(5分保持)から240℃(10分保持)まで、1分あたり4℃の速度でプログラムした。2-プロパノールを内部標準として使用した。メタノールのピークは、システム内蔵のクロマトグラフィソフトウェアを使用して、標準の保持時間との比較によって同定した。グリセロールとメタノールとの標準溶液を異なる濃度で分析し、外部検量線を作成した。有機画分の組成は、Mehta et al.,2018に記載されたプロトコルに従って、炎イオン化検出器(FID)および高速GCキャピラリーカラム(Omegawax100、15m×0.1mm、0.1μm厚)を備えたパーキンエルマークラス680GCシステム(Perkin Elmer clarus680、米国)を用いてガスクロマトグラフ(GC)によってそれらのFFA、FAMEに関して測定された。
【0034】
付加価値変換を考慮する前の粗グリセロールの化学組成物について、粗グリセロールの特性評価を行い、粗グリセロールの特性を表1に示した。粗グリセロール中のメタノール、水、有機画分等、脂肪のようないくつかの軽い不純物が存在するため、2つの粗グリセロールサンプル、つまりCG1及びCG2それぞれの密度は、1.12g/cm及び1.10g/cmであり、純グリセロールの密度(1.31g/cm)より低い。バイオディーゼル生産プロセスで残留したアルカリの存在により、CG-1及びCG-2は、7.5に近いpH値を有した。HPLCにより決定したCG-1及びCG-2の遊離グリセロール含量は、それぞれ76%及び78%であり、従来の報告(Hu et al., 2012)において報告されているグリセロール含量よりも比較的高かった。先行研究(Chen et al., 2020)とは異なり、粗グリセロール中の残留メタノール含量は少なく、5~7%の間であった。グリセロール含量とメタノール含量とにおける違いは、異なるバイオディーゼルプラントにおける様々なバイオディーゼル生産プロセスと回収後の効率とによって引き起こされる可能性が高い。
【0035】
また、粗グリセロール中のイオン含量もICP分析で決定した。触媒としてNaOHを使用しているため、ナトリウムイオンが多量に検出された。カリウム、カルシウム、鉄イオンのような他の陽イオンも検出されたが、微量の金属及び重金属元素は検出されず、粗グリセロールは安全性の問題がなく、更なる用途のために処理できることが示された。脂肪酸組成を分析したところ、パルミチン酸(C16:0)、オレイン酸(C18:1)、及びリノール酸(C18:2)の形態の有機画分がごくわずかに含まれていることも示された。
【表1】
【0036】
(実施例2)
粗グリセロール濃度の増殖及び脂質蓄積における効果
播種培養物の調製及び振とうフラスコでの脂質生産:本発明で使用するシゾキトリウム属(MTCC5890)は、2013年3月にインドの海洋サイトからMandovi-ZuariマングローブをわたるRibandarの30~35kmの全マングローブ域から分離した(Mathur et al, 2016).この菌株は18S配列決定により遺伝的特徴を明らかにし、得られた配列はNCBIデータベースに寄託した(アクセッション番号:KF668624)。シゾキトリウム属(MTCC5890)は、Microbial Type Culture Collection and Gene Bank (MTCC) Institute of Microbial Technology (IMTECH), Chandigarh, Indiaに寄託された。
【0037】
使用した定義生産培地(GM)は、60g/Lの粗グリセロール(別途規定)、10g/LのNaNO、1g/Lのペプトン、2.2g/LのKHPO、2.0g/LのMgSO・7HO、及び9g/Lの海塩を含み、初期pHは7.5であった。選択された分離菌株による成長及び脂質生産における粗グリセロール濃度の効果について、30~120g/Lの異なる粗グリセロール濃度を補充した生産培地で振とうフラスコ培養を行った。YPD(3%グルコース、0.1%ペプトン、1%酵母エキス、及び18g/L海塩)培地で48時間培養したシゾキトリウム属(MTCC5890)を接種物として用い、そこから約1010個(定義培地の10%(v/v))を、上記のように粗グリセロール濃度の異なる定義培地を含む異なるコニカルフラスコに接種した。フラスコは、振とう培養機内で以下の条件下、振とう速度200rpm、温度30℃~35℃で培養した。バイオマスを採取し、72時間後の脂質含量を分析した。脂質/バイオマス収量は、(YL/X)は、バイオマス1グラムあたりで生産された脂質のグラムとして算出され、バイオマスの脂質含有量に対応した。脂質/グリセロール収量(YL/S)は、消費されたグリセロール1グラムあたりの生産された脂質のグラムとして算出された。
【0038】
生産培地に30~120g/Lの範囲で異なる濃度の粗グリセロールを添加することで、シゾキトリウムMTCC5890株の成長と脂質蓄積における粗グリセロール濃度の効果を検討した。異なる初期濃度のグリセロールを用いることで、シゾキトリウム属(MTCC5890)の成長及び脂質生産に変化があったことが観察された(図1及び2)。初期グリセロール濃度の上昇は、バイオマス及び脂質収量における増加を引き起こした。しかしながら、グリセロール濃度が90h/Lで、7.78g/L/日という最も高いバイオマス生産性が達成され、バイオマス生産量が38.9g/L、バイオマス収量は0.45g/gグリセロールであった。図1(a)及び表1に示すように、脂質生産は3.63g/L/日の速度で、脂質/グリセロール収量(YL/S)は20%であった。本開示では、グリセロールから脂質へのかなりの変換率(20及び23%)が観察され、これは先行研究とほぼ一致しており、グリセロールからの最大理論脂質収量は約30%w/wであり、炭素フラックスの該当量は貯蔵炭水化物に流れ込むことが示されている。
【0039】
より高濃度の粗グリセロール(>90g/L)を含む培地で培養した場合、成長及び脂質生産において、わずかな減少が観察された。その結果、シゾキトリウム属(MTCC5890)を150g/Lの粗グリセロールを含む培地で培養した場合、より低い細胞バイオマス及び脂質濃度(それぞれ35.12±1.0及び16.8±0.4g/L)が得られた。生産される脂質量は多いが、グリセロール消費速度が徐々に低下することが、生産速度の低下も引き起こすため、グリセロール濃度が90g/Lの場合(3.63g/L/日)と比較して、濃度150g/Lでは、体積生産性は低くなった(3.3g/L/日)(図1)。細胞内脂質の最大量は、シゾキトリウム属(MTCC5890)株によって、グリセロール濃度90g/Lで生産され、続いて120g/L、及び150g/Lであり、それぞれ17.4g/L、14.8g/L、14.4g/Lの細胞内脂質が得られ、これらは乾燥バイオマス46.7、48.8、47.9%に対応することが示された。炭素濃度が高くなるほど、脂質/バイオマス収量(YL/X)が増加し、より多くの炭素フローが貯蔵脂質の合成に向けられたことを示している(図1)。
【0040】
粗グリセロールを30~90g/Lの範囲で添加した場合、120時間の培養終了時点で培地中の粗グリセロールはほぼ消費された。粗グリセロールを90g/L以上の高濃度で培地に添加した場合、シゾキトリウム属(MTCC5890)株によって完全に消費されず、特に120及び150g/Lの粗グリセロールでは、それぞれわずか66.5%及び50.1%が消費されたのみであった。これらの結果は先行研究(Chen et al., 2020; Patil et al., 2015)と一致し、高濃度の粗グリセロールでは細胞の代謝活動に浸透圧ストレスが残っている可能性を示唆し、そのためにバイオマスがわずかに減少することが観察された。更に、高濃度の粗グリセロールは、培地の粘度を上昇させ、溶解酸素濃度を制限することで物質移動に影響を与えた。そのため、培養物が高濃度のグリセロールを含む培地へ適応することに、より長い時間を要した。
【0041】
再現性及び制御性が高い培養培地を扱うため、粗グリセロール中で生ずる不純物の潜在的な効果を知るために、純グリセロールを対照として使用した。結果によれば、いずれの所与の濃度においても、純グリセロールと粗グリセロールとの消費プロファイルに有意な差は観察されなかったことを示した(図2)。驚くべきことに、シゾキトリウム属(MTCC5890)では、粗グリセロールの消費量が純グリセロールの消費量よりも著しく速く(それぞれ粗グリセロールでは~17.36gL-1-1、純グリセロールでは約16.44gL-1-1)、120時間後の異なる濃度において、乾燥細胞重量は、それぞれ、粗グリセロールで18~35gL-1の範囲、純グリセロールで16~32gL-1の範囲であった。粗グリセロールにおける脂質生産性(1.3~3.0gL-1-1)は、純グリセロールで得られたもの(1.1~2.9gL-1-1)に近く、ほぼ同じ脂質含量(それぞれ、粗グリセロールでは47.9%、純グリセロールでは47.01%)が得られた。粗グリセロールに存在する栄養素、塩、及び他の有機化合物は、純グリセロールと比較してバイオマス及び脂質の生産性を増強し、これらの発見は以前の報告(Raimondi et al., 2014)と一致する。
【0042】
(実施例3)
異なる化学調節剤の最適な比率を通じた脂質生成の誘導
窒素の存在下で、クエン酸CA(0.1~10g/L)、リンゴ酸MA(0.1~12g/L)、及びベンジルアミノプリンBAP(1~15mg/L)の濃度を変えて培養し、脂質蓄積及びDHA増強反応を培地処方に応じて検討した。窒素を添加しない培地を対照として維持した。しかし、グリセロールの濃度は、実施例2の実験で検討したものと同じ濃度で使用した。バッチ実験を、6g/Lグリセロールを含むGMにおいて24時間成長させた種培養物を10%v/vで接種した2Lの補充GM培地を含むパラレルバイオリアクター(Biojenik Engineering, Chennai, India)で実施した。培養物を35℃に保ち、0.75~1v/v/分で通気し、撹拌は溶解酸素を20%に保つため、150~900rpmの範囲で調節した。培地pH、インキュベーション温度、時間、及び撹拌は、それぞれ5.3~9.5、35℃、24時間であった。
【0043】
一般に、脂質生成誘導には窒素欠乏機構が必要であるとされている(Hegeset et al., 2019)。窒素存在下でのde novo脂質蓄積と化学調節剤との関係を理解する。しかし、窒素欠乏を伴わない、異なる濃度の化学調節剤の添加と脂質蓄積との関係を示した研究はない。本開示では、窒素欠乏条件を用いずに、外部調節剤の異なる組み合わせを最適化することにより、より高いバイオマス生産とオメガ3脂肪酸(DHA)とを同時に有する脂質含量を誘導することを試みた。
【0044】
図3を参照すると、クエン酸(0.25~65%)、リンゴ酸(0.25~1%)、BAP(0.0005~0.0015%)()を補充したGMは、窒素存在下であっても、脂質及びDHA収量をバイオマス生産と同時に増強させた。窒素欠乏/制限条件下では、脂質はバイオマス収量を損なわないことにより50~60%(細胞乾燥重量)にまで達した。窒素欠乏/制限条件下では、窒素存在下での脂質収量と比べ、脂質収量は著しく減少した。得られた脂質含量は、補充培地においてより高いバイオマス濃度(21~26g/L)で最大55~65%(細胞乾燥重量の)であり、窒素充足/枯渇条件下での非補充培地で得られた脂質含量よりも高かった。図3は、クエン酸(1%)及びBAP(0.0020%)(濃度を高くしても、脂質及びDHA収量は増強させなかったことを示す。微生物における効率的な脂質蓄積を達成するためには、アセチル-CoA及びNADPHを細胞のサイトゾル内に直接継続して供給することが、脂肪酸の生合成のために必要である(Ren et al., 2009)。サイトゾルへのクエン酸フラックスフローは、窒素制限条件下でATPクエン酸リアーゼによりアセチル-CoAに変換され、脂肪酸生合成に関与する(Ren et al., 2009)。リンゴ酸及びBAPに加えてクエン酸を外部添加することにより、サイトゾルへのクエン酸フラックスとNADPH供給とが増加し、直接アセチル-CoAに変換された。この結果は、窒素欠乏を伴わない適量の調節剤の外部添加により、TCAサイクルから脂肪酸生合成への代謝フラックスが促進されることを示した。
【0045】
(実施例4)
バイオマス及び脂質の生産性における異なる比率の化学調節剤の組み合わせの効果
本実施例は、好気性発酵バイオマス及び高価値脂質生産プロセスのための成長成分と共に基質として粗グリセロールを含む生産培地において補充された混合物中の化学調節剤の異なる比率の効果を示す。化学調節剤の交換及び組み合わせによって様々な比率を試験し、異なる比率の効果の一部を本実施例及び表2に示す。
【0046】
バッチ実験を、6g/Lグリセロールを含むGMにおいて24時間成長させた種培養物を10%v/vで接種した2Lの補充GM培地を含むパラレルバイオリアクター(Biojenik Engineering, Chennai, India)で実施した。培養物を35℃に保ち、0.75~1v/v/分で通気し、撹拌は溶解酸素を20%に保つため、150~900rpmの範囲で調節した。培地pH、インキュベーション温度、時間、及び撹拌は、それぞれ5.3~9.5、35℃、24時間であった。
【表2】

【0047】
表2は、脂質、バイオマス及びDHAの増強における化学調節剤の異なる比率の効果を示す。混合物において、リンゴ酸の比率が高く、クエン酸の濃度が低い場合、ある量のBAPの存在下で、バイオマスと高価値の脂質が同時に増強した。クエン酸:リンゴ酸:BAPの他の比率では、全体の生産性は向上しなかった。これらは、バイオマス、又は脂質、及び又はDHAのどれかを増強させた。成長培地全体の0.01~2%の範囲の特定のパーセントで、化学調節剤の混合物を備えると、バイオマスとともに高価値脂質が増加した。全体の収量が改善した。混合物中にクエン酸よりもリンゴ酸が多く存在すると、ミトコンドリアでのリンゴ酸塩のフラックスが増加し、クエン酸塩:リンゴ酸塩アンチポーターによってリンゴ酸塩がクエン酸塩に変換され、アセチル-CoAの継続的な供給が可能になると推測された。
【0048】
(実施例5)
脂質及びオメガ3脂肪酸濃度の増強における窒素過剰培地での独自の比率での調節剤の混合物の組み合わせ効果
本実施形態では、脂質、オメガ3脂肪酸、及びバイオマスを連続的に同時生産するための生産培地における調節剤添加の効果を示す。生産培地は、主に基質としてのグリセロールをすべての成長成分と共に含み、窒素欠乏を伴わずに脂質、オメガ3脂肪酸をバイオマスと共に増強させるための誘導剤として0.4:0.58:0.002(クエン酸:リンゴ酸:BAP)の比率で補充した。窒素ストレスを与えることなく、単一リアクターでの初期成長段階において、混合物中の調節剤の特定の比率を切り替えることにより、補充培地上での成長によって達成される高い細胞密度を、より高い全体的な脂質生産性に利用できるか否かを評価するために実験を設計した。
【0049】
シゾキトリウム属(MTCC5890)の選択菌株の接種物を、実施例2で説明したようにGM培地で調製し、35℃、200rpmで培養した。24時間経過接種物の10%を2L、又は5L、又は10Lのリアクターに加え、窒素源を有する調整された培地で半分満たした。補充培地を含まない発酵槽は対照とした。培養物は、マイクロスパージャー又は通常のドリルパイプスパージャーで通気した。培養物は、ラストン、ピッチブレード、又はマリンインペラなどを用いて100~900rpmで撹拌し、空気と酸素の組み合わせ供給により溶解酸素(DO)を10~50%以上に維持した。栄養物の吸収、バイオマス生産、及び脂質生産、DHA生産を測定するため、6~12時間の間隔で定期的にサンプルを採取した。リアクターのpHを、5.3~9.5の範囲とし、連続プロセス中は制御しなかった。
【0050】
バイオマス及び脂質の生産率を増強させるためのバイオリアクターにおける連続培養プロセスの開発により、任意の廃棄物から高価値の脂質を生産するための連続的な価値化プロセスを開発するために、段階的な最適化戦略を実施した。ペリスタルティックポンプによる(オーバーフロー管を通じた)連続培地供給と連続培養採取のために、2Lのバイオリアクターに2本のステンレスチューブを設置した。バイオリアクターは2日目に無菌培地で連続培養し、600~1200mld-1の供給率で開始した。最大希釈率と成長率とを得るため、培養物が取り除かれ始めるまで非滅菌培地を用いて供給率を徐々に増加させた。その後、10日間、より高い希釈率で供給を続け、培養期間中、培地レベルを維持した。
【0051】
排出液の流れは、屈折率検出器(RID)を備えるHPLCで測定した。OD600及び重量測定により成長をモニターした。ODから乾燥細胞重量への換算は、当研究室で決定した比率で行った。総脂質は、ガスクロマトグラフィ-炎イオン化検出器(GC-FID)を用いて、米国特許第9,890,402号明細書から適応した脂質抽出プロトコルの修正版を用いて定量化した。
【0052】
図4は、培地組成を特定の割合で切り替えた場合の脂質生産性を示す。この実験では、過剰な窒素の存在下での調節剤の特定の混合比は、調節剤を補充せずに同じ条件で行った実験よりもはるかに高い脂質、バイオマス及びDHA収量の増強を示した。図4aを参照すると、脂質とオメガ3脂肪酸との比生産性は、窒素存在下で補充された培地を使用しない対照発酵槽で達成されたものの約2~4倍である。一方、混合物中の調節剤の特定の割合を変更することで、より高い細胞密度を維持することができる。得られたバイオマス及び脂質の最大生産性は、それぞれ88g/L/日及び55g/L/日であった。また、上記の収量は、過去の文献研究で報告されている通常の発酵における生物によって得られる収量よりも良好であった。
【0053】
図4bを参照すると、補充した培地と比較して、補充していない培地では栄養の吸収率も低くなった。希釈率が高くなると、残留硝酸塩が多くなり、脂質の生産性が著しく低下した。これは、窒素の存在が脂質体膜の形成を抑制しているためと推測された。我々は、アセチル-CoAとNADPH形態での還元力との供給が少ないためではないかと仮説を立てた。補充培地を連続供給した場合に、窒素存在下において、細胞の生合成能力も維持しながら細胞量の減少なしに炭素源から脂質への移行が定常状態で成功した。本実験における、特定の混合比率での調節剤混合物の存在下での選択された分離株の性能に基づき、バイオマス、脂質、及びオメガ3脂肪酸収量は、培地に調節剤を補充しない通常の発酵条件と比較して、最大2.5~3.5倍改善した。
【0054】
表3を参照すると、オメガ3脂肪酸で濃縮された脂質の比生産性は、化学調節剤を補充しない対照発酵槽で達成されたものの約2倍である。一方、定常状態では、特定の濃度の化学調節剤に切り替えることで、はるかに高い細胞密度をサポートすることができる。バイオマス、脂質、及びDHAの最大生産性は、それぞれ70g/L/日、45g/L/日、15g/L/日であった。また、上記の収量は、過去の文献研究で報告されている化学修飾剤の有無によらない、他のスラウストキトリウム(Thraustochytrium)菌による通常の発酵で得られた収量よりも良好であった。
【表3】
【0055】
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【0057】
[付記]
[付記1]
低コストの炭素基質からのバイオマス生産を損なうことなくオメガ3脂肪酸の生産を増強するための培地補充組成物であって、クエン酸、リンゴ酸、及びベンジルアミノプリンを含む群から選択される調節剤を0.01~2%含む、組成物。
【0058】
[付記2]
前記調節剤は、0.25%~0.65%のクエン酸、0.25%~1%のリンゴ酸、及び0.0005~0.0015%のベンジルアミノプリンである、ことを特徴とする付記1に記載の組成物。
【0059】
[付記3]
前記調節剤は、0.1~10g/Lのクエン酸、0.1~12g/Lのリンゴ酸、及び1~15mg/Lのベンジルアミノプリンである、ことを特徴とする付記1に記載の組成物。
【0060】
[付記4]
前記調節剤は、クエン酸、リンゴ酸及びベンジルアミノプリンの比率が0.4:0.58:0.002である、ことを特徴とする付記1に記載の組成物。
【0061】
[付記5]
前記オメガ3脂肪酸はドコサヘキサエン酸である、ことを特徴とする付記1に記載の組成物。
【0062】
[付記6]
種子培養物に提供される低コストの炭素基質からのバイオマス生産を損なうことなく、オメガ3脂肪酸の生産を増強する方法であって、
a.クエン酸、リンゴ酸、及びベンジルアミノプリンを含む群から選択される調節剤を0.01~2%含む補充組成物を培養物に提供するステップ、
を含み、
オメガ3脂肪酸の生産を増強するための窒素ストレスの誘導を必要としない、
ことを特徴とする方法。
【0063】
[付記7]
前記種子培養物がシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)(MTCC5890)を含む、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0064】
[付記8]
前記基質はグリセロールである、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0065】
[付記9]
前記補充組成物中の前記調節剤は、0.25%~0.65%のクエン酸、0.25%~1%のリンゴ酸、及び0.0005~0.0015%のベンジルアミノプリンを含む、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0066】
[付記10]
前記補充組成物の前記調節剤は、0.1~10g/Lのクエン酸、0.1~12g/Lのリンゴ酸、及び1~15mg/Lのベンジルアミノプリンを含む、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0067】
[付記11]
前記補充組成物の前記調節剤は、クエン酸、リンゴ酸、及びベンジルアミノプリンを0.4:0.58:0.002の比率で含む、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0068】
[付記12]
前記培養物のpHは、5.3~9.5の範囲内にある、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
図1
図2
図3
図4