(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】放熱シートおよび放熱シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240718BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20240718BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240718BHJP
C01B 21/064 20060101ALI20240718BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240718BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240718BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240718BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H05K7/20 F
C01B21/064 Z
C08L83/04
C08K3/22
C08K3/36
C08K3/28
(21)【出願番号】P 2022508726
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011255
(87)【国際公開番号】W WO2021187609
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2020049711
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020049717
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020049718
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020049723
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】和田 光祐
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳孝
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/164002(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061447(WO,A1)
【文献】特開2019-172935(JP,A)
【文献】特開2011-96989(JP,A)
【文献】国際公開第2021/039500(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/373
H05K 7/20
C01B 21/064
C08L 83/04
C08K 3/22
C08K 3/36
C08K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、式(II):
D/W 式(II)
で表されるアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にある、放熱シート。
【請求項2】
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(III):
(D+W)/2 式(III)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、前記断面図の全面積に対する複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にある、放熱シート。
【請求項3】
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(IV):
(D+W)/2 式(IV)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、
面方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数n
wと、
厚さ方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数n
dと
の粒子数比率n
w/n
dが0.4以上1未満の範囲にある、放熱シート。
【請求項4】
前記熱伝導性充填材が、アルミナ、シリカ、二酸化チタン;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素;炭化ケイ素;水酸化アルミニウムから選択される単独または数種類の組合せである、請求項1~3のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項5】
前記熱伝導性充填材が、りん片状の六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる凝集体粒子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項6】
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートの製造方法であって、
前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、10~30質量%のシリコーン樹脂および、70~90質量%の熱伝導性充填材を混合して組成物を調製する組成物作製工程と、
前記組成物作製工程後に、組成物をシート状に成形するシート成形工程と、
前記シート形成工程後に、シートを加圧しながら硬化開始温度よりも低い予備加熱温度で予備加熱する予備加熱工程と、
前記予備加熱工程後に、前記予備加熱後のシートを、加圧しながら前記硬化開始温度以上の温度で加熱する硬化工程と、
を含み、
得られた放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、式(II):
D/W 式(II)
で表されるアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にある、製造方法。
【請求項7】
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートの製造方法であって、
前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、10~30質量%のシリコーン樹脂および、70~90質量%の熱伝導性充填材を混合して組成物を調製する組成物作製工程と、
前記組成物作製工程後に、組成物をシート状に成形するシート成形工程と、
前記シート形成工程後に、シートを加圧しながら硬化開始温度よりも低い予備加熱温度で予備加熱する予備加熱工程と、
前記予備加熱工程後に、前記予備加熱後のシートを、加圧しながら前記硬化開始温度以上の温度で加熱する硬化工程と、
を含み、
得られた放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(III):
(D+W)/2 式(III)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、前記断面図の全面積に対する複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にある、製造方法。
【請求項8】
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートの製造方法であって、
前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、10~30質量%のシリコーン樹脂および、70~90質量%の熱伝導性充填材を混合して組成物を調製する組成物作製工程と、
前記組成物作製工程後に、組成物をシート状に成形するシート成形工程と、
前記シート形成工程後に、シートを加圧しながら硬化開始温度よりも低い予備加熱温度で予備加熱する予備加熱工程と、
前記予備加熱工程後に、前記予備加熱後のシートを、加圧しながら前記硬化開始温度以上の温度で加熱する硬化工程と、
を含み、
得られた放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(IV):
(D+W)/2 式(IV)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、
面方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数n
wと、
厚さ方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数n
dと
の粒子数比率n
w/n
dが0.4以上1未満の範囲にある、製造方法。
【請求項9】
前記熱伝導性充填材が、りん片状の六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる凝集体粒子である、請求項6~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記熱伝導性充填材が、窒化ホウ素のりん片状の一次粒子が凝集してなる凝集体粒子である、請求項6~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シート用樹脂組成物からなる放熱シートであって、
前記樹脂組成物において、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~40質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が60~90質量%であり、前記熱伝導性充填材が六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる凝集体粒子であり、
厚さ方向に、0.4MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR
0.4とし、1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR
1.0としたとき、熱抵抗比R
0.4/R
1.0が1以上であり、
絶縁抵抗が5.0kV以上である放熱シート。
【請求項12】
前記熱伝導性充填材が、さらにアルミナ、シリカ、二酸化チタン;窒化アルミニウム、窒化ケイ素;炭化ケイ素;水酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれかを含む、請求項11に記載の放熱シート。
【請求項13】
厚さ方向に1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR
1.0としたとき、R
1.0が1.30℃以上である、請求項11または12に記載の放熱シート。
【請求項14】
請求項11~13のいずれかに1項に記載の放熱シートの製造方法であって、
前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、10~40質量%のシリコーン樹脂および、60~90質量%の熱伝導性充填材を混合して組成物を調製する組成物作製工程と、
前記組成物作製工程後に、組成物をシート状に成形するシート成形工程と、
前記シート形成工程後に、シートを加圧しながら硬化開始温度よりも低い予備加熱温度で予備加熱する予備加熱工程と、
前記予備加熱工程後に、前記予備加熱後のシートを、加圧しながら前記硬化開始温度以上の温度で加熱する硬化工程と、
を含む放熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品と、電子部品を冷却するためのヒートシンクまたは回路基板の放熱部分との間に使用する放熱シートおよび放熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、CPUなどの発熱性電子部品は様々な機器に搭載され、その適用分野は多岐にわたる。
【0003】
これらの発熱性電子部品は、内部抵抗のため電流を流すと発熱し、動作スピードが低下して動作不良に陥ることもあり、想定以上の発熱があると破壊され、発火するおそれもある。
従来、電子部品の使用時の発熱を効率よく放熱する対策として、熱伝導率の高い鉄、アルミニウム、銅(80~400W/mK)などの金属製のヒートシンクが用いられてきた。ヒートシンクの放熱特性は、熱抵抗によって評価され、この値が小さいほど放熱特性が高い。熱抵抗の値を小さくするために、表面積が広く、かつ、空気の流動性が高くなるように、複数のフィンやピンの配置が設計されている。
【0004】
しかしながら、このように放熱特性の高いヒートシンクを使用しても、電子部品に直接接触させて取り付けると、接触界面に熱伝導率の低い空気層(0.02W/mK)が存在し、その結果、十分な放熱効率を得ることができない。そのため、ヒートシンクと電子部品とは放熱シートを介して密着させる(
図1)。このような放熱シートとして、シリコーン樹脂に熱伝導性フィラーを分散させたものが使用されている。
このような、熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、金属アルミニウム、黒鉛等を用いることができる(特許文献1)。
【0005】
なかでも、六方晶窒化ホウ素(h-BN)の一次粒子は、りん片状の結晶構造を有し、化学的に非常に安定で、高い熱伝導性、電気絶縁性および耐熱性を兼ね備え、熱伝導性フィラーとして用いられる(特許文献2)。また、h-BNは、その結晶構造に由来して、面内方向(a軸方向ともいう)の熱伝導率が400W/mK、厚み方向(c軸方向ともいう)の熱伝導率が2W/mKであり、熱伝導率の異方性が著しく大きいため、特許文献2では、熱伝導率の異方性を解消するために、h-BNのりん片状の一次粒子を同一方向に配向させないように凝集させた一次粒子凝集体の使用が提案されている。
【0006】
一方、特許文献3では、凝集していないh-BNのりん片状の一次粒子を用いて、面方向の熱伝導性に優れる熱伝導性シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-229849号公報
【文献】特開2018-104253号公報
【文献】特開2012-039060号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】三村研史、「高熱伝導複合材料」、ネットワークポリマー、Vol.35、No.2(2014)、p.76-82
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、CPUなどの電子部品は、車載用途にも多く用いられ、特に、パワーデバイスは、整流、周波数変換、レギュレーターやインバータの機能を有し、電力制御や供給を行うことができるため、近年、車載用途中心でSiCパワーデバイスへの関心が高まっている。
【0010】
放熱シートには、高い熱伝導性とともに高い絶縁性が要求される。絶縁破壊電圧が低いと、放熱シートに絶縁不良が発生しやすくなり、電子部品へのダメージだけではなく、搭載する機械や車両の事故につながる。
【0011】
通常、電子部品にヒートシンクを取り付けるときの締付圧は0.2~0.4MPa程度であるが、車載用途の場合、走行時の振動対策のため、1.0MPa程度にまで締付圧を高くすることが望ましい。
【0012】
本発明者らは、凝集していないh-BNの一次粒子を用いた放熱シートでは、締付圧を0.2~0.4MPaから1.0MPa程度にまで上昇させると、熱抵抗が増大することを確認した。シート内部で熱伝導経路の崩壊(例えば、熱伝導性充填材の破折)が生じたためと考えられる。
【0013】
そこで、本発明では、車載用途で用いることを想定して、高い圧力を負荷しても、優れた熱伝導性および絶縁性を示す放熱シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%である、放熱シートを提供する。
【0015】
このとき、本発明の第1の発明では、前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー (Feret)定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー (Feret)定方向接線径をWで表したときに、2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、アスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲であれば、JIS C2110に準拠して測定した絶縁破壊電圧が5kV以上となり、ASTM D5470に準拠して測定した熱抵抗が、1.0MPaの締付圧で1.5℃/W以下となる。
【0016】
また、このとき、本発明の第2の発明では、前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー (Feret)定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー (Feret)定方向接線径をWで表したときに、2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、アスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲であれば、JIS C2110に準拠して測定した絶縁破壊電圧が5kV以上となり、ASTM D5470に準拠して測定した熱抵抗が、1.0MPaの締付圧で1.5℃/W以下となる。
【0017】
さらに、このとき、本発明の第3の発明では、前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー (Feret)定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー (Feret)定方向接線径をWで表したときに、2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、面方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数nwと、厚さ方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数ndとの粒子数比率nw/ndが0.4以上1未満の範囲であれば、JIS C2110に準拠して測定した絶縁破壊電圧が5kV以上となり、ASTM D5470に準拠して測定した熱抵抗が、1.0MPaの締付圧で1.5℃/W以下となる。
【0018】
また、このとき、本発明の第4の発明では、電子部品と放熱部分との間で、放熱シートを実際に使用する際、熱抵抗の観点からは薄い方が好ましいが、絶縁性の観点からは厚い方が好ましい。熱抵抗と絶縁性とのバランスが最も優れるという理由で、本発明では、0.3mm厚のシートに成形したときの熱抵抗値を測定する。
一般的な実使用の際、締付圧が0.8MPa以上と高い場合、シート厚が薄くなり、電子部品と放熱部分との密着性が高まることから、熱抵抗は低くなる。しかしながら、粒子内部のフィラーが大きく変形したり、シート強度が持たずに破れや亀裂が入ったりするので、熱抵抗が高くなり、なおかつ絶縁性も著しく低下する可能性があるので、従来の放熱シートには、高い締付圧を負荷することができなかった。
一方、締付圧が0.4MPa以下と低い場合、シート厚はあまり薄くならず、密着性も低いため、熱抵抗は高くなる。粒子内部のフィラーの変形が小さく、破れや亀裂が生じる可能性が極めて小さいが、車載部品として適用を検討した際に締付圧が低い状態で使用すると、部品がずれたり外れたりするため走行中の故障の原因となる。
このような観点から、低い締付圧から高い締め付け圧にかかわらず、低い熱抵抗を示す製品が理想的である。特に、高い締付圧下でも破れや亀裂が生じずに低い熱抵抗を示す製品の要求が従来以上に高まっているという理由で、厚さ方向に0.4MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値R0.4と、1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR1.0との熱抵抗比R0.4/R1.0に着目する必要がある。
この熱抵抗比R0.4/R1.0が1を超えれば、締付圧を0.4MPaから1.0MPaまで高くするほど、熱抵抗が下降すること、すなわち、熱伝導性が向上することを意味する。一方、熱抵抗比が1未満であれば、締付圧を高くすると熱抵抗が上昇すること、すなわち、熱伝導性が劣化することを意味し、シート内部で熱伝導経路が崩壊したことが示唆される。
このとき、ASTM D5470に準拠して、0.4MPaの締付圧で測定した熱抵抗R0.4と1.0MPaの締付圧で測定した熱抵抗R1.0との比(熱抵抗比R0.4/R1.0)が1を超える範囲であれば、JIS C2110に準拠して測定した絶縁破壊電圧が5kV以上となる。
【0019】
本発明の第1~3の発明の放熱シートの製造方法は、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、10~30質量%のシリコーン樹脂および、70~90質量%の熱伝導性充填材を混合して組成物を調製する組成物作製工程と、前記組成物作製工程後に、組成物をシート状に成形するシート成形工程と、
前記シート形成工程後に、シートを加圧しながら硬化開始温度よりも低い予備加熱温度で予備加熱する予備加熱工程と、前記予備加熱工程後に、前記予備加熱後のシートを、加圧しながら前記硬化開始温度以上の温度で加熱する硬化工程と、を含む。
【0020】
本発明の第4の発明の放熱シートの製造方法は、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、10~40質量%のシリコーン樹脂および、60~90質量%の熱伝導性充填材を混合して組成物を調製する組成物作製工程と、
前記組成物作製工程後に、組成物をシート状に成形するシート成形工程と、
前記シート形成工程後に、シートを加圧しながら硬化開始温度よりも低い予備加熱温度で予備加熱する予備加熱工程と、
前記予備加熱工程後に、前記予備加熱後のシートを、加圧しながら前記硬化開始温度以上の温度で加熱する硬化工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の放熱シートは、高い絶縁破壊電圧を有し、かつ、1.0MPa程度まで締付圧を高くしても良好な熱抵抗を有しているので、車載用途で用いても優れた特性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】六方晶窒化ホウ素(h-BN)のりん片状一次粒子(a)および、一次粒子が塊状に凝集してなる凝集体粒子(b)の熱伝導性の異方性を説明する概略図。
【
図3】本発明における粒子の観察手法を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.第1の発明
[第1の発明の放熱シート]
本発明の第1の発明の放熱シートは、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有し、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
【0024】
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、式(II):
【0025】
D/W 式(II)
で表されるアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にある。
【0026】
(放熱シートの構成要素)
<放熱シート用組成物>
本発明の第1の発明の放熱シートに使用するシリコーン樹脂としては、オルガノポリシロキサンであり、ケイ素原子に直結したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するものであれば直鎖状でも分岐状でもよい。このオルガノポリシロキサンは、1種類であっても、2種以上の異なる粘度のものの混合物でもよい。上記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基などが例示されるが、一般的に合成のし易さ及びコストの面からビニル基であることが好ましい。ケイ素原子に結合する他の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基などのアラルキル基;さらにはクロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などの置換炭化水素基などが挙げられる。これらのなかでは、メチル基であることが好ましい。ケイ素原子に結合するアルケニル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖の末端、途中の何れに存在してもよい。
【0027】
シリコーン樹脂が2液型である場合、既述のオルガノポリシロキサンの架橋剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上有するものが挙げられ、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。
【0028】
本発明の第1の発明の放熱シートに使用する熱伝導性充填材としては、熱伝導率が10W/m・Kを超える物質が望ましく、例えば、アルミナ、シリカ、二酸化チタンなどの金属酸化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物;炭化ケイ素;水酸化アルミニウムなどが挙げられ、単独または数種類を組み合わせて用いることができる。
アルミナ、シリカ、窒化ホウ素が好ましく、エネルギー的に安定な六方晶窒化ホウ素(hexagonal boron nitride; h-BN)が特に好ましい。
【0029】
六方晶窒化ホウ素(h-BN)の一次粒子はりん片状であり、熱伝導率に大きな異方性を有する(
図2a)。凝集体を構成する一次粒子の配向を制御することによって、凝集体全体の異方性を変化させることができる。りん片状の一次粒子を単に凝集させるだけでは、70質量%にまで充填率を上げても異方性を小さくならないが(非特許文献1)、例えば、特許文献2に記載の方法により、六方晶窒化ホウ素一次粒子を同一方向に配向させないように凝集させた一次粒子凝集体を調製すれば、凝集体全体として、熱伝導率の等方性を向上することができる(
図2b)。
【0030】
凝集体粒子の場合に、凝集力は特に限定されず、後述する製造方法にて、アスペクト比D/Wを所望の範囲に調整できればよい。凝集体粒子の圧壊強度は1MPa以上が好ましく、3MPa以上がより好ましく、5MPa以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、製造性等の点から、例えば40MPa以下が好ましく、30MPa以下がより好ましく、例えば、20MPa以下、または15MPa以下である。凝集体粒子の圧壊強度の好ましい範囲は、例えば、1~40MPa、1~30MPa、1~20MPaまたは1~15MPaである。
圧壊強度は市販されている微小粒子の圧壊強度測定が可能な圧縮試験器を用い、JIS R1639-5に準拠して測定する。このとき六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の粒子径をd(単位はmm)、破壊試験力をP(単位はN)とすると、圧壊強度Cs(単位はMPa)は、Cs=2.48P/πd2の式から算出される。なお本発明の第1の発明では、10個の凝集体粒子の圧壊強度の平均値を圧壊強度とする。
【0031】
熱伝導性充填材の平均粒子径は、好ましくは5~90μmである。熱伝導性充填材の平均粒子径が5μm以上であると、熱伝導性充填材の含有量を高くすることができる。一方、熱伝導性充填材の平均粒子径が90μm以下であると、放熱シートを薄くすることができる。このような観点から、熱伝導性充填材の平均粒子径は、より好ましくは10~70μmであり、さらに好ましくは15~50μmであり、とくに好ましくは15~45μmである。なお、熱伝導性充填材の平均粒子径は、例えば、ベックマンコールター社製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置、(LS-13 320)を用いて測定することができる。熱伝導性充填材の平均粒子径には、測定処理の前にホモジナイザーをかけずに測定したものを採用することができる。したがって、熱伝導性充填材が凝集体粒子の場合、熱伝導性充填材の平均粒径は凝集体粒子の平均粒子径である。なお、得られた平均粒子径は、例えば体積統計値による平均粒子径である。
また、「平均粒子径」は、六方晶窒化ホウ素など、一次粒子がりん片状の結晶形状を有する物質の場合、秩序または無秩序に配向して凝集した凝集体粒子の平均粒子径を意味する。
【0032】
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%である。熱伝導性充填材の含有量が70質量%以上の場合、放熱シートの熱伝導率が向上し、十分な放熱性能が得られやすい。また、熱伝導性充填材の含有量が90質量%以下の場合、放熱シートの成形時に空隙が生じやすくなることを抑制でき、放熱シートの絶縁性や機械強度を高めることができる。また、凝集体粒子と凝集体粒子以外粒子との組み合わせの場合には、凝集体粒子の含有量は熱伝導性充填材中に30質量%以上であってよく、40質量%以上であってよく、50質量%以上であってよく、60質量%以上であってよく、70質量%以上であってよい。また、80質量%以上や90質量%以上のようにほぼ凝集体粒子であってもよく、100質量%が凝集体粒子であってよい。また、本発明は比較的大きな粒径の凝集体粒子を適用する場合に有効であり、凝集体粒子の平均粒子径が10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上であってよい。ここで凝集体粒子以外の粒子としては、凝集していないアルミナ、シリカ等の金属酸化物粒子が好ましい。なお、凝集体粒子としては六方晶窒化ホウ素(h-BN)の凝集体粒子が好ましく、熱伝導性充填材の総量中、h-BNの凝集体粒子の割合を、80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上とする。
【0033】
なお、放熱シート用組成物には、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材以外のその他成分が含まれていてもよい。その他成分は、例えば、添加剤、不純物などである。その他成分の含有量は、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材の合計量100質量%に対して、例えば5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0034】
添加剤には、例えば、補強剤、増量剤、耐熱向上剤、難燃剤、接着助剤、導電剤、表面処理剤、顔料などが挙げられる。
【0035】
<補強層>
本発明の第1の発明の放熱シートは、補強層を備えていてもよい。補強層は、放熱シートの機械的強度をさらに向上させる役目を担い、さらには放熱シートが厚さ方向に圧縮されたとき、放熱シートの平面方向への延伸を抑制し、絶縁性を確保する効果も奏する。補強層には、例えば、ガラスクロス、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂などの樹脂フィルム、木綿、麻、アラミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維などの布繊維メッシュクロス、アラミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維などの不織布、ステンレス、銅、アルミニウムなどの金属繊維メッシュクロス、銅、ニッケル、アルミニウムなど金属箔などが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、熱伝導性及び絶縁性の観点から、ガラスクロスが好ましい。
【0036】
補強層としてガラスクロスを用いる場合、一般に市販されているような開口部を有するガラスクロスを使用できる。ガラスクロスの厚さは、好ましくは10μm~150μmである。ガラスクロスの厚さが10μm以上の場合、ハンドリング時にガラスクロスが壊れるのを抑制することができる。一方、ガラスクロスの厚さが150μm以下の場合、ガラスクロスによる放熱シートの熱伝導率の低下を抑制することができる。このような観点から、ガラスクロスの厚さは、より好ましくは20~90μmであり、さらに好ましくは30~60μmである。市販されているガラスクロスでは繊維径が4~9μmのものがあり、これらを放熱シートに使用することができる。またガラスクロスの引張強度は、例えば、100~1000N/25mmである。またガラスクロスの開口部の一辺の長さは、熱伝導性及び強度のバランスを取るという観点から、好ましくは0.1~1.0mmである。放熱シートに使用できるガラスクロスには、例えばユニチカ社製、商品名「H25 F104」がある。
【0037】
(放熱シートの形態)
本発明の第1の発明の放熱シートは、厚さが10μm超であれば、その形態は特に限定されない。また、厚みの上限も特に限定されないが500μm以下が好ましい。また、枚葉品でもロール品でもよい。より好ましくは0.10mm以上0.40mm以下である。
【0038】
[第1の発明の放熱シートの製造方法]
シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含む本発明の第1の発明の放熱シートは、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、10~30質量%のシリコーン樹脂および、70~90質量%の熱伝導性充填材を混合して組成物を調製する組成物作製工程と、前記組成物作製工程後に、組成物をシート状に成形するシート成形工程と、前記シート形成工程後に、シートを加圧しながら硬化開始温度よりも低い予備加熱温度で予備加熱する予備加熱工程と、前記予備加熱工程後に、前記予備加熱後のシートを、加圧しながら前記硬化開始温度以上の温度で加熱する硬化工程と、を含む製造方法により製造することができる。
【0039】
このようにして得られた本発明の第1の発明の放熱シートは、前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I)で表される2軸平均径[(D+W)/2]の大きい方から24番目までの粒子について、アスペクト比[D/W]の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にある。
なお、絶縁性を十分に高めるためには、アルキメデス法で密度を測定し、計算による理論密度と比較した相対密度で比較する方法で導出した相対密度が88%以上、90%以上、100%以下が好ましい。ここで、理論密度の計算は、例えば、放熱シートが熱伝導性充填材として窒化ホウ素を含み、樹脂としてシリコーン樹脂を含み、さらにガラスクロスを含む場合は、窒化ホウ素の密度を2.2g/cm3とし、シリコーン樹脂の密度を0.98g/cm3とし、ガラスクロスの密度を2.54g/cm3として計算する。また、放熱シートの質量を測定した後、溶剤を用いて放熱シートからシリコーン樹脂を除去して、窒化ホウ素及びガラスクロスの質量をそれぞれ測定する。放熱シートの質量から窒化ホウ素及びガラスクロスの質量を引き算した値がシリコーン樹脂の質量となる。これらの密度の値、及び測定した質量の値を使用して、放熱シートの理論密度を計算する。
【0040】
(組成物作製工程)
組成物作製工程では、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を混合して放熱シート用組成物を作製する。
【0041】
(シート成形工程)
シート成形工程では、放熱シート用組成物をシート状に成形して放熱シート用組成物シートを作製する。例えば、離型性を有するフィルム上に放熱シート用組成物を塗布することにより、放熱シート用組成物をシート状に成形することができる。塗布方法は特に限定されず、均一に塗布できるドクターブレード法、コンマコーター法、スクリーン印刷法、ロールコーター法などの公知の塗布方法を採用することができる。しかし、塗布した放熱シート用組成物の厚さを高い精度で制御できるという観点からドクターブレード法及びコンマコーター法が好ましい。なお、放熱シートが補強層を備える場合、離型性を有するフィルムの上に補強層を載置した後に、放熱シート用組成物を塗布することが好ましい。
【0042】
(予備加熱工程)
予備加熱工程では、放熱シート用組成物シートを加圧しながら硬化開始温度よりも低い予備加熱温度で放熱シート用組成物シートを予備加熱する。予備加熱温度では、放熱シート用組成物シートは硬化していないので、この工程により、放熱シートの絶縁破壊の原因となる気泡や空隙が十分に除去され、放熱部品のバリにより、または発熱性電子部品及び放熱シートの間もしくは放熱部品及び放熱シートの間に混入した異物により発生する放熱シートの絶縁不良を抑制することができる。なお、硬化開始温度は、放熱シート用組成物シートが硬化を開始する温度である。示差走査熱量測定(DSC)において発熱ピークが立ち上がる温度を意味する。したがって、硬化開始温度よりも低い温度では、放熱シート用組成物シートは硬化を開始しない。
【0043】
また、熱伝導性充填材が凝集体粒子の場合には、この工程により、凝集体粒子はほぐされ、一次粒子が弱い粒子間相互作用力で塊状に凝集した一次粒子凝集体となる。電流は放熱シートの中を一次粒子凝集体中の空隙を充填した樹脂を通って流れ、その結果、複雑な経路を経て流れることになる。これにより、放熱シートに絶縁不良が起こりにくくなり、放熱部品のバリにより、または発熱性電子部品及び放熱シートの間もしくは放熱部品及び放熱シートの間に混入した異物により発生する放熱シートの絶縁不良を抑制することができる。
【0044】
予備加熱工程で放熱シート用組成物シートを加圧するときの圧力は、好ましくは50~200kgf/cm2である。放熱シート用組成物シートを加圧するときの圧力を50kgf/cm2以上とすることにより、樹脂中の気泡をさらに十分に除去して放熱シートの密度を増加させ、放熱シートの絶縁性を向上させることができる。また、放熱シート用組成物シートを加圧するときの圧力を200kgf/cm2以下とすることにより、放熱シートの生産性を向上させることができるとともに、製造コストを低減できる。
また、熱伝導性充填材が凝集体粒子の場合には、凝集体粒子の形状を適度に保持しつつ凝集体粒子をほぐすことができるので、熱伝導性を低下させずに絶縁不良を抑制できる。このような観点から、放熱シート用組成物シートを加圧するときの圧力は、より好ましくは70~150kgf/cm2である。
【0045】
予備加熱温度は、好ましくは50~80℃である。予備加熱温度を50℃以上とすることにより、放熱シート用組成物シート中の塊状に凝集した凝集体粒子の凝集が崩れ過ぎて、粒子が配向し、これにより放熱シートの熱伝導率が低下してしまうことを抑制することができる。また、加熱温度を80℃以下とすることにより、樹脂を硬化させずに樹脂中の気泡を十分に除去して放熱シートの密度を増加させ、放熱シートの絶縁性を向上させることができる。このような観点から、予備加熱温度は、より好ましくは55~75℃である。
【0046】
予備加熱温度で放熱シート用組成物シートを予備加熱する加熱時間は、好ましくは5~10分である。加熱時間を5分以上とすることにより、樹脂中の気泡をさらに十分に除去して放熱シートの密度を増加させ、放熱シートの絶縁性を向上させることができる。また、加熱時間を10分以下とすることにより、放熱シートの生産性を向上させることができるとともに、製造コストを低減できる。このような観点から、加熱時間は、より好ましくは6~9分である。
【0047】
予備加熱工程における加圧圧力、予備加熱温度及び加熱時間を上述の範囲に調整することにより、凝集体粒子は適度にほぐされ、変形または配向するので、式(I)で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、式(II)で表されるアスペクト比の平均値を0.4以上1.4以下の範囲になるように調整することが容易になる。ただし、凝集体粒子のように変形する粒子を用いる場合には、具体的にどの程度の条件に設定するかを、凝集粒子の強度や樹脂の種類等に応じて適宜決定をする。例えば、強度の弱い凝集体粒子の場合には加圧圧力を弱めに設定する必要がある。用いる凝集体粒子を決めて、放熱シートを一度成形し、上記アスペクト比の平均値を確認して、潰れすぎていた場合には少し加圧圧力を弱く設定することで上記アスペクト比を調整できる。加熱温度や加熱時間についても、凝集体粒子の崩れやすさとの関係や、樹脂の充填しやすさ(気泡を除去しやすさ)等を考慮して、同様に、条件設定を行う。なお、放熱シートの断面を観察するだけで好適な条件を設定できるので、放熱シートの絶縁破壊電圧及び熱抵抗を測定して条件を設定するときに比べて、効率的に、高い絶縁破壊電圧を有し、かつ、1.0MPa程度まで締付圧を高くしても良好な熱抵抗を有する放熱シートを得るのに好適な条件に、予備加熱工程の条件を設定することができる。
【0048】
(硬化工程)
硬化工程では、予備加熱した放熱シート用組成物シートを加圧しながら硬化開始温度以上の温度で放熱シート用組成物シートを加熱する。これにより、放熱シート用組成物シートは硬化して放熱シートとなる。
【0049】
硬化工程で放熱シート用組成物シートを加圧するときの圧力は、好ましくは100~200kgf/cm2である。放熱シート用組成物シートを加圧するときの圧力を100kgf/cm2以上とすることにより、樹脂中の気泡をさらに除去して放熱シートの密度を増加させ、放熱シートの絶縁性をさらに向上させることができる。また、放熱シートが補強層を有する場合、樹脂と補強層との間の接合性を向上させることができる。また、放熱シート用組成物シートを加圧するときの圧力を200kgf/cm2以下とすることにより、放熱シートの生産性を向上させることができるとともに、製造コストを低減できる。このような観点から、放熱シート用組成物シートを加圧するときの圧力は、より好ましくは130~180kgf/cm2である。また、上記の通り、本発明では徐々に加熱加圧して、放熱シート中における空隙量を低減するために、硬化工程での加圧力は予備加熱での加圧力よりも大きい。
【0050】
硬化工程で、予備加熱した放熱シート用組成物シートを加熱する温度は、硬化開始温度以上の温度であれば、特に限定されないが、好ましくは130~200℃である。放熱シート用組成物シートの加熱温度を130℃以上とすることにより、放熱シート用組成物シートをさらに十分に硬化させることができる。また、放熱シート用組成物シートの加熱温度を200℃以下とすることにより、放熱シートの生産性を向上させることができるとともに、製造コストを低減できる。このような観点から、放熱シート用組成物シートの加熱温度は、より好ましくは140~180℃である。
【0051】
硬化工程で放熱シート用組成物シートを加熱する加熱時間は、好ましくは10~60分である。加熱時間を10分以上とすることにより、放熱シート用組成物シートをさらに十分に硬化させることができる。また、加熱時間を60分以下とすることにより、放熱シートの生産性を向上させることができるとともに、製造コストを低減できる。
【0052】
(低分子シロキサン除去工程)
本発明の第1の発明の放熱シートの製造方法は、硬化開始温度以上の温度で加熱した放熱シート用組成物シートを130~200℃の加熱温度で、2~30時間加熱する低分子シロキサン除去工程をさらに含むことが好ましい。これにより、樹脂中の低分子シロキサンを除去することができる。なお、樹脂中の低分子シロキサンの濃度が高いと、シロキサンガスが発生し、電気接点の摺動やスパークなどによるエネルギーで電気接点上にケイ素酸化物による絶縁被膜が生成して接点障害が起こる場合がある。放熱シート中の低分子シロキサン量は50ppm以下が好ましい。
【0053】
加熱温度を130℃以上とすることにより、樹脂中の低分子シロキサンを十分に除去することができる。加熱温度を200℃以下とすることにより、放熱シートの柔軟性を確保できる。また、放熱シートの生産性を向上させることができるとともに、製造コストを低減できる。このような観点から、加熱温度は、より好ましくは140~190℃である。
【0054】
加熱時間を2時間以上とすることにより、樹脂中の低分子シロキサンを十分に除去することができる。加熱時間を30時間以下とすることにより、放熱シートの生産性を向上させることができるとともに、製造コストを低減できる。このような観点から、加熱時間は、より好ましくは3~10時間である。
【0055】
[第1の発明の放熱シートの内部構造]
本発明の第1の放熱シートを、一方の表面から他方の表面まで厚さ方向に切断した断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、得られたSEM像を画像解析して、シリコーン樹脂に分散する特定の熱伝導性充填材の粒子を観察する。
放熱シートは、発熱性電子部品に接触するシートの一方の表面からヒートシンクなどが接触する他方の表面に向かって熱を伝達するため、画像解析において、シートの一方の表面から他方の表面までの熱伝達経路全てが含まれるように観察領域を設定する。また、観察領域内には、シリコーン樹脂に分散する熱伝導性充填材のうち、平均粒子径が15μm以上の粒子を、放熱シート厚み0.3mm当たり24個含む。この24個含む観察領域で、アスペクト比の平均値を計算する。この計算結果が0.4以上1.4以下の範囲にあればよい。ここで、アスペクト比の平均値は任意の5視野の平均とする。
【0056】
具体的には、例えば、観察領域を以下のように規定してもよい。SEMで放熱シートを撮像して得られた1つの画像が放熱シートの一方の表面及び他方の表面の両方を含むときの倍率の中で最大の倍率で撮像して得られた画像における放熱シートの断面の撮像されている範囲を観測領域とする。最大の倍率で撮像するので、放熱シートの一方の表面及び他方の表面の両方を含む画像の中で、熱伝導性充填材を最も大きく撮像できる。なお、画像のアスペクト比により、観察領域に含まれる熱伝導性充填材の数は変わるので、走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジース社製、商品名:SU6600型)で撮像した画像のアスペクト比と同じ画像のアスペクト比とする。
また、上記画像では、画像に含まれる熱伝導性充填材の数が24個に満たないときは、例えば、SEMで放熱シートを撮像して得られた1つの画像が24個の熱伝導性充填材を含むときの倍率の中で最大の倍率で撮像して得られた画像における放熱シートの断面の撮像されている範囲を観測領域とする。
なお、2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子とするのは、放熱シートに含まれる熱伝導性充填材のうち、絶縁破壊電圧及び締付時の熱抵抗に対して、大きな影響を与えるのは、大きな寸法を有する熱伝導性充填材であり、大きい方から24個の熱伝導性充填材を評価すれば、放熱シートにおける絶縁破壊電圧及び締付時の熱抵抗を十分な精度で評価できると考えられるからである。また、24個よりもさらに多くの熱伝導性充填材を評価してもよいが、24個の熱伝導性充填材を評価した場合に較べて、評価の精度はあまり高くならない。
【0057】
本発明の第1の発明における粒子の観察手法につき、
図3を用いてより詳細に説明する。
熱伝導性充填材の粒子のうち、観察領域に完全に包含されているものを観察対象とする。すなわち、粒子の一部が観察領域外にあれば、その粒子は除外する(
図3a)。
粒子は、複雑かつ不規則は形状をしており、その断面形状から単純かつ定量的に粒子径を表現することができない。そこで、フェレー (Feret)径、マーチン (Martin)径、ヘイウッド (Heywood)径などの様々な相当径が定義されている。本発明の第1の発明においては、フェレー (Feret)径を用いて粒子の大きさを規定する。フェレー定方向接線径は、規定された定方向について2本の平行線で粒子の一部に接するようにはさみ込んだときの2本の平行線の間隔に相当する。
観察対象とされた粒子について、厚さ方向のフェレー定方向接線径を測定してDで表し、面方向のフェレー定方向接線径を測定してWで表す(
図3b)。
【0058】
観測対象とされた粒子の全てにつき、厚さ方向のフェレー定方向接線径(D)および面方向のフェレー定方向接線径(W)を計測し、式(I):
【0059】
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径と、式(II):
【0060】
D/W 式(II)
で表されるアスペクト比と、
を算出する。
観測対象とされた全粒子につき2軸平均径で順位付けし、大きい方から24番目までの粒子について、アスペクト比の平均値を算出する。
【0061】
本発明の第1の発明の放熱シートは、粒子のアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にあることを特徴とする。アスペクト比の平均値がこの範囲にあることで、高い絶縁破壊電圧を有し、かつ、1.0MPa程度まで締付圧を高くしても良好な熱抵抗を示すので、車載用途で用いても優れた特性を発揮する。
具体的には、シリコーン樹脂に分散する熱伝導性充填材の粒子を24個含むように観察領域を設定する。観察領域の設定をこのように行い、24個の粒子のアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下であれば窒化ホウ素が面方向にある程度配向される為、絶縁性の高い窒化ホウ素による絶縁破壊経路を長くすることが可能となり高い絶縁破壊電圧を発現し、かつ窒化ホウ素が厚さ方向にも十分配向している為、熱伝導性も高い状態を維持できる。
【0062】
2.第2の発明
[第2の発明の放熱シート]
以下、本発明の第2の発明の放熱シートを説明する。なお、本発明の第2の発明の放熱シートについて、本発明の第1の発明の放熱シートと異なる点を主に説明し、本発明の第1の発明の放熱シートと同様な点についての説明は省略する。
【0063】
本発明の第2の発明の放熱シートは、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有し、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(III):
【0064】
(D+W)/2 式(III)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、前記断面図の全面積に対する複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にある。
【0065】
(第2の発明の放熱シートの構成要素)
本発明の第2の発明の放熱シートの構成要素は、本発明の第1の発明の放熱シートの構成要素と同様であるので、本発明の第2の発明の放熱シートの構成要素の説明は省略する。
【0066】
(第2の発明の放熱シートの形態)
本発明の第2の発明の放熱シートの形態は、本発明の第1の発明の放熱シートの形態と同様であるので、本発明の第2の発明の放熱シートの形態の説明は省略する。
【0067】
[第2の発明の放熱シートの製造方法]
本発明の第2の発明の放熱シートの製造法により得られた本発明の第2の発明の放熱シートは、前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(III)で表される2軸平均径[(D+W)/2]の24番目までの粒子について、前記断面図の全面積に対する複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にある。予備加熱工程を以下のように変更した。それ以外は、本発明の第2の放熱シートの製造方法は、本発明の第1の発明の放熱シートの製造方法と同様であるので、本発明の第2の発明の放熱シートの製造方法の説明は省略する。
【0068】
(予備加熱工程)
予備加熱工程における加圧圧力、予備加熱温度及び加熱時間の好ましい範囲等は同様であるが、第1の発明とは異なり、用いる粒子の強度や樹脂の種類等に応じて、上記面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲になるように、具体的な条件を決定する。例えば、強度の弱い凝集体粒子の場合には加圧圧力を弱めに設定する必要がある。用いる凝集体粒子を決めて、放熱シートを一度成形し、上記面積比率(Sr)を確認して、潰れすぎて面積比率(Sr)が小さ過ぎる場合には少し加圧圧力を弱く設定することで上記面積比率(Sr)を調整できる。加熱温度や加熱時間についても上記の通り、凝集体粒子の崩れやすさとの関係や、樹脂の充填しやすさ(気泡の減らしやすさ)等を考慮して、条件設定を行う。なお、放熱シートの断面を観察するだけで好適な条件を設定できるので、放熱シートの絶縁破壊電圧及び熱抵抗を測定して条件を設定するときに比べて、効率的に、高い絶縁破壊電圧を有し、かつ、1.0MPa程度まで締付圧を高くしても良好な熱抵抗を有する放熱シートを得るのに好適な条件に、予備加熱工程の条件を設定することができる。
【0069】
[第2の発明の放熱シートの内部構造]
以下、本発明の第2の発明の放熱シートの内部構造を説明する。なお、本発明の第2の発明の放熱シートの内部構造について、本発明の第1の発明の放熱シートの内部構造と異なる点を主に説明し、本発明の第1の発明の放熱シートの内部構造と同様な点についての説明は省略する。
【0070】
上記24個含む観察領域で、面積比率を計算する。本発明の第2の発明では、この計算結果が20%以上80%以下の範囲となる。ここで、面積比率は任意の5視野の平均とする。
【0071】
観測対象とされた粒子の全てにつき、厚さ方向のフェレー定方向接線径(D)および面方向のフェレー定方向接線径(W)を計測し、式(III):
【0072】
(D+W)/2 式(III)
で表される2軸平均径と、観測領域の全面積に対する複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率を算出する。
【0073】
本発明の第2の発明の放熱シートは、観測領域の断面図の全面積に対する、複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にあることを特徴とする。面積比率がこの範囲にあることで、高い絶縁破壊電圧を有し、かつ、1.0MPa程度まで締付圧を高くしても良好な熱抵抗を示すので、車載用途で用いても優れた特性を発揮する。
具体的には、シリコーン樹脂に分散する熱伝導性充填材の粒子を24個含むように観察領域を設定する。観察領域の設定をこのように行い、24個の粒子が全体に占める面積比率を20%以上80%以下にすることで、大きい粒子の比率が大きくなり粒子間の接触熱抵抗を低減できるという理由で、熱伝導性が高くなるという効果が得られ、かつ、粒子の充填率が低いまま高い熱伝導性を発現できるため、樹脂組成部中の欠陥が生じにくいという理由で、高い絶縁性をも兼ね備えることができるという効果が得られる。
【0074】
3.第3の発明
[第3の発明の放熱シート]
以下、本発明の第3の発明の放熱シートを説明する。なお、本発明の第3の発明の放熱シートについて、本発明の第1の発明の放熱シートと異なる点を主に説明し、本発明の第1の発明の放熱シートと同様な点についての説明は省略する。
【0075】
本発明の第3の発明の放熱シートは、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有し、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(IV):
【0076】
(D+W)/2 式(IV)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、
面方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数nwと、
厚さ方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数ndと
の粒子数比率nw/ndが0.4以上1未満の範囲にある。
【0077】
(第3の発明の放熱シートの構成要素)
本発明の第3の発明の放熱シートの構成要素は、本発明の第1の発明の放熱シートの構成要素と同様であるので、本発明の第3の発明の放熱シートの構成要素の説明は省略する。
【0078】
(第3の発明の放熱シートの形態)
本発明の第3の発明の放熱シートの形態は、本発明の第1の発明の放熱シートの形態と同様であるので、本発明の第3の発明の放熱シートの形態の説明は省略する。
【0079】
[第3の発明の放熱シートの製造方法]
本発明の第3の発明の放熱シートの製造法により得られた本発明の第3の発明の放熱シートは、前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(IV)で表される2軸平均径[(D+W)/2]の大きい方から24番目までの粒子について、粒子数比率[nw/nd]の平均値が0.4以上1未満の範囲にある。予備加熱工程を以下のように変更した。それ以外は、本発明の第3の放熱シートの製造方法は、本発明の第1の発明の放熱シートの製造方法と同様であるので、本発明の第3の発明の放熱シートの製造方法の説明は省略する。
【0080】
(予備加熱工程)
予備加熱工程における加圧圧力、予備加熱温度及び加熱時間の好ましい範囲等は同様であるが、第1の発明とは異なり、用いる粒子の強度や樹脂の種類等に応じて、上記粒子数比率[nw/nd]の平均値が0.4以上1未満の範囲になるように、具体的な条件を決定する。例えば、強度の弱い凝集体粒子の場合には加圧圧力を弱めに設定する必要がある。用いる凝集体粒子を決めて、放熱シートを一度成形し、上記粒子数比率[nw/nd]を確認して、潰れすぎて粒子数比率[nw/nd]が小さ過ぎる場合には少し加圧圧力を弱く設定することで上記粒子数比率[nw/nd]を調整できる。加熱温度や加熱時間についても上記の通り、凝集体粒子の崩れやすさとの関係や、樹脂の充填しやすさ(気泡の減らしやすさ)等を考慮して、条件設定を行う。なお、放熱シートの断面を観察するだけで好適な条件を設定できるので、放熱シートの絶縁破壊電圧及び熱抵抗を測定して条件を設定するときに比べて、効率的に、高い絶縁破壊電圧を有し、かつ、1.0MPa程度まで締付圧を高くしても良好な熱抵抗を有する放熱シートを得るのに好適な条件に、予備加熱工程の条件を設定することができる。
【0081】
[第3の発明の放熱シートの内部構造]
以下、本発明の第3の発明の放熱シートの内部構造を説明する。なお、本発明の第3の発明の放熱シートの内部構造について、本発明の第1の発明の放熱シートの内部構造と異なる点を主に説明し、本発明の第1の発明の放熱シートの内部構造と同様な点についての説明は省略する。
【0082】
上記24個含む観察領域で、粒子数比率[nw/nd]を計算する。この計算結果が0.4以上1未満の範囲にあればよい。ここで、粒子数比率は任意の5視野の平均とする。
【0083】
観測対象とされた粒子の全てにつき、厚さ方向のフェレー定方向接線径(D)および面方向のフェレー定方向接線径(W)を計測し、
式(IV):
【0084】
(D+W)/2 式(IV)
で表される2軸平均径と、
面方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数nwと、厚さ方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数ndを算出する。
複数の直線がひとつの粒子を横断する場合があるが、重複して計数する。単位長あたりの横断粒子の個数が、熱伝導性領域の存在確率を表す。
【0085】
つぎに、得られたnwおよびndを用いて、粒子数比率nw/ndを算出する。
観測対象とされた全粒子につき2軸平均径で順位付けし、大きい方から24番目までの粒子について、粒子数比率を算出する。
【0086】
本発明の第3の発明の放熱シートは、粒子数比率が0.4以上1未満の範囲にあることを特徴とする。粒子数比率がこの範囲にあることで、高い絶縁破壊電圧を有し、かつ、1.0MPa程度まで締付圧を高くしても良好な熱抵抗を有しているので、車載用途で用いても優れた特性を発揮する。
具体的には、シリコーン樹脂に分散する熱伝導性充填材の粒子を24個含むように観察領域を設定する。観察領域の設定をこのように行い、24個の粒子の粒子数比率が0.4以上1未満の範囲にあれば、粒子が潰れない程度に、粒子を面方向に広がるように変形されている。これにより厚さ方向の粒子の存在確率が増加する。この増加は厚さ方向の粒子間距離を短くすることや、厚さ方向に対する見かけ上の粒子間接触面積を大きくするという理由で放熱特性が改善される。また、絶縁性の高い窒化ホウ素粒子が面方向に多く存在することで絶縁層の低い樹脂層や空気層の欠陥の存在を大幅に低減できるという理由で絶縁性も改善できると考えられる。
4.第4の発明
[第4の発明の放熱シート]
以下、本発明の第4の発明の放熱シートを説明する。なお、本発明の第4の発明の放熱シートについて、本発明の第1の発明の放熱シートと異なる点を主に説明し、本発明の第1の発明の放熱シートと同様な点についての説明は省略する。
【0087】
本発明の第4の発明の放熱シートは、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有し、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~40質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が60~90質量%であり、前記熱伝導性充填材は、アルミナ、シリカ、二酸化チタンなどの金属酸化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物;炭化ケイ素;水酸化アルミニウムから選択される。
【0088】
(第4の発明の放熱シートの構成要素)
厚さ方向に、0.4MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR0.4とし、1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR1.0としたとき、熱抵抗比R0.4/R1.0が1以上である。
厚さ方向に1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR1.0としたとき、R1.0が1.30℃/W以上であることが好ましい。
それ以外は、本発明の第4の発明の放熱シートの構成要素は、本発明の第1の発明の放熱シートの構成要素と同様であるので、本発明の第4の発明の放熱シートの構成要素の説明は省略する。
【0089】
(第4の発明の放熱シートの形態)
本発明の第4の発明の放熱シートの形態は、本発明の第1の発明の放熱シートの形態と同様であるので、本発明の第4の発明の放熱シートの形態の説明は省略する。
【0090】
[第4の発明の放熱シートの製造方法]
組成物作製工程では、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を混合して放熱シート用組成物を作製する。本発明の第4の発明の放熱シートに使用する熱伝導性充填材としては、熱伝導率が10W/m・Kを超える物質が望ましく、例えば、アルミナ、シリカ、二酸化チタンなどの金属酸化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物;炭化ケイ素;水酸化アルミニウムなどが挙げられ、単独または数種類を組み合わせて用いることができる。特に、六方晶窒化ホウ素(hexagonal boron nitride; h-BN)の一次粒子が凝集してなる凝集体粒子を含むことが好ましい。
本発明の第4の発明の放熱シートの製造方法では、予備加熱工程を設けて徐々に加熱加圧することで、凝集体粒子を適度にほぐして、凝集体粒子を変形させまたは配向させることによって、熱抵抗比R0.4/R1.0が1以上になるように調整する。
このように、第1の発明とは異なり、用いる粒子の強度や樹脂の種類等に応じて、上記熱抵抗比R0.4/R1.0が1以上になるように、具体的な条件を決定する。例えば、強度の弱い凝集体粒子の場合には加圧圧力を弱めに設定する必要がある。用いる凝集体粒子を決めて、放熱シートを一度成形し、上記熱抵抗比R0.4/R1.0を確認して、潰れすぎて熱抵抗比R0.4/R1.0が小さ過ぎる場合には少し加圧圧力を弱く設定することで上記熱抵抗比R0.4/R1.0を調整できる。加熱温度や加熱時間についても上記の通り、凝集体粒子の崩れやすさとの関係や、樹脂の充填しやすさ(気泡の減らしやすさ)等を考慮して、条件設定を行う。
放熱シートに圧力を負荷して凝集体粒子が適度にほぐれると熱抵抗が低下するので、熱抵抗比R0.4/R1.0が1以上になるが、1未満であれば、ほぐれていないことが示唆される。低温よりの条件、高圧よりの条件ほど凝集体粒子がほぐれやすいことが分かった。
そこで、予備加熱工程において、上記熱抵抗比が1以上であるとき、温度を低くするか、圧力を高くして、1未満になるように条件設定する。
それら以外は、本発明の第4の放熱シートの製造方法は、本発明の第1の発明の放熱シートの製造方法と同様であるので、本発明の第4の発明の放熱シートの製造方法の説明は省略する。
【0091】
[第4の発明の放熱シートの内部構造]
以下、本発明の第4の発明の放熱シートの内部構造を説明する。なお、本発明の第4の発明の放熱シートの内部構造について、本発明の第1の発明の放熱シートの内部構造と異なる点を主に説明し、本発明の第1の発明の放熱シートの内部構造と同様な点についての説明は省略する。
【0092】
放熱シートは、発熱性電子部品に接触するシートの一方の表面からヒートシンクなどが接触する他方の表面に向かって熱を伝達するため、画像解析するときは、シートの一方の表面から他方の表面までの熱伝達経路全てが含まれるように観察領域を設定して、熱伝導性充填材粒子の分布、特に、厚さ方向の分布を確認する。
【0093】
[第1~4の発明の組合せ]
本発明の第1~4の発明のうち、2つ以上の発明を組み合わせることができる。
例えば、本発明の放熱シートは、第1の発明及び第2の発明を組み合わせて、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、式(II):
D/W 式(II)
で表されるアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にあり、前記断面図の全面積に対する複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にあってもよい。
【0094】
また、本発明の放熱シートは、第1の発明及び第3の発明を組み合わせて、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、式(II):
D/W 式(II)
で表されるアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にあり、
面方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数nwと、
厚さ方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数ndと
の粒子数比率nw/ndが0.4以上1未満の範囲にあってもよい。
【0095】
さらに、本発明の放熱シートは、第1の発明及び第4の発明を組み合わせて、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シート用樹脂組成物からなる放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~40質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が60~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、式(II):
D/W 式(II)
で表されるアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にあり、
前記樹脂組成物において、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~40質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が60~90質量%であり、前記熱伝導性充填材が六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる凝集体粒子であり、
厚さ方向に、0.4MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR0.4とし、1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR1.0としたとき、熱抵抗比R0.4/R1.0が1以上であり、
絶縁抵抗が5.0kV以上であってもよい。
【0096】
また、本発明の放熱シートは、第2の発明及び第3の発明を組み合わせて、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~30質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が70~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、前記断面図の全面積に対する複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にあり、 面方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数nwと、
厚さ方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数ndと
の粒子数比率nw/ndが0.4以上1未満の範囲にあってもよい。
【0097】
また、本発明の放熱シートは、第2の発明及び第4の発明を組み合わせて、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シート用樹脂組成物からなる放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~40質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が60~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、前記断面図の全面積に対する複数の粒子の断面形状の合計面積Sの面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にあり、
前記樹脂組成物において、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~40質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が60~90質量%であり、前記熱伝導性充填材が六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる凝集体粒子であり、
厚さ方向に、0.4MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR0.4とし、1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR1.0としたとき、熱抵抗比R0.4/R1.0が1以上であり、
絶縁抵抗が5.0kV以上であってもよい。
【0098】
また、本発明の放熱シートは、第3の発明及び第4の発明を組み合わせて、シリコーン樹脂および熱伝導性充填材を含有する放熱シートであって、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~40質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が60~90質量%であり、
前記放熱シートの一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の断面図において、前記熱伝導性充填材の断面形状について、厚さ方向のフェレー定方向接線径をDで表し、面方向のフェレー定方向接線径をWで表したときに、式(I):
(D+W)/2 式(I)
で表される2軸平均径の大きい方から24番目までの粒子について、
面方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数nwと、
厚さ方向に平行に20μm間隔で引いた直線が横断する粒子の、前記直線10μmあたりの個数ndと
の粒子数比率nw/ndが0.4以上1未満の範囲にあり、
前記樹脂組成物において、前記シリコーン樹脂および前記熱伝導性充填材の合計量100質量%中、前記シリコーン樹脂の含有量が10~40質量%であり、前記熱伝導性充填材の含有量が60~90質量%であり、前記熱伝導性充填材が六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる凝集体粒子であり、
厚さ方向に、0.4MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR0.4とし、1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR1.0としたとき、熱抵抗比R0.4/R1.0が1以上であり、
絶縁抵抗が5.0kV以上であってもよい。
【0099】
さらに、第1~3の発明を組み合わせてもよいし、第1、2及び4の発明を組み合わせてもよいし、第1、3及び4の発明を組み合わせてもよいし、第2、3及び4の発明を組み合わせてもよいし、第1~4の発明を組み合わせてもよい。
【実施例】
【0100】
1.第1の実施例
[実施例1]
(放熱シート用組成物の作製)
15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、70gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ20μm)を添加した後、固形分濃度が70重量%となるように粘度調整剤としてトルエンを添加し、タービン型撹拌翼を取り付けた撹拌機(HEIDON社製、商品名:スリーワンモーター)で15時間混合し、放熱シート用組成物を作製した。組成物の組成を表1に示す。
【0101】
(放熱シートの作製)
テフロン(登録商標)シート上にガラスクロス(ユニチカ株式会社製、商品名:H25 F104)を配置した後、上記の放熱シート用組成物を、ガラスクロス上にコンマコーターで厚さ0.2mmに塗工し、75℃で5分乾燥させた。次に、ガラスクロスが上側になるように乾燥させた放熱シート用組成物をひっくり返して、ガラスクロス上にコンマコーターで厚さ0.2mmに塗工し、75℃で5分乾燥させ、ガラスクロスの両面に放熱シート用組成物を塗工した放熱シート用組成物のシートを作製した。その後、平板プレス機(株式会社柳瀬製作所製)を用いて、予備加熱温度70℃、圧力120kgf/cm2の条件下で15分間のプレスを行った(予備加熱加圧工程)。その後、圧力150kgf/cm2のプレスを行いながら、10℃/分の昇温速度で温度を150℃まで上昇させた。そして、加熱温度(硬化開始温度以上の温度)150℃、圧力150kgf/cm2の条件下で45分間のプレスを行い、厚さ0.30mmの放熱シートを作製した。次いでそれを常圧、150℃の温度で4時間の加熱を行って低分子シロキサンを除去して、放熱シートを作製した。なお、放熱シートにおけるシリコーン樹脂および熱伝導性充填材の合計100質量%中、熱伝導性充填材の含有量は70質量%であった。
【0102】
(放熱シートの内部構造)
放熱シートを面に対して垂直に切断して、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジース社製、商品名:SU6600型)で反射電子像を撮像した。画像データをPanasonic社製パソコンに転送し、ソフトウェアimage proを用いて、放熱シートの切断面に含まれる熱伝導性充填材の断面形状を画像解析した。
SEM像において、シリコーン樹脂と比べて、六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子は暗く表示される。
観測領域に含まれる全ての六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子につき、厚さ方向のフェレー定方向接線径(D)および面方向のフェレー定方向接線径(W)を計測し、式(I)で表される2軸平均径[(D+W)/2]を測定した。
【0103】
2軸平均径の上位24個について測定したアスペクト比の平均値は0.5であった。アスペクト比の平均値が規定の範囲(0.4~1.4)内であるので、放熱シートの作製工程で凝集体粒子があまりつぶされていないことが分かった。アスペクト比(D/W)を表1に示す。
【0104】
(放熱シートの特性)
(1)絶縁性
JIS C2110に記載の方法に準拠して、放熱シートの絶縁破壊電圧を短時間破壊試験(室温23℃)にて測定した値に基づき、評価した。結果を表1に示す。
絶縁性の評価基準は以下の通りである。
A:絶縁破壊電圧が5kV以上
B:絶縁破壊電圧が3kV以上、5kV未満
C:絶縁破壊電圧が3kV未満
【0105】
(2)熱伝導性
ASTM D5470に記載の方法に準拠して、放熱シートの熱抵抗を測定した値に基づき、評価した。結果を表1に示す。
熱伝導性の評価基準は以下の通りである。
A:熱伝導率が5W/(m・K)以上
B:熱伝導率が3W/(m・K)以上、5W/(m・K)未満
C:熱伝導率が3W/(m・K)未満
【0106】
[実施例2]
10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、80gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ20μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作成した。
実施例1と同様にして、2軸平均径の上位24個について測定した結果、アスペクト比の平均値は0.8であった。アスペクト比の平均値が規定の範囲(0.4~1.4)内であるので、放熱シートの作製工程で凝集体粒子があまりつぶされていないことが分かった。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0107】
[実施例3]
15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、70gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作成した。
実施例1と同様にして、2軸平均径の上位24個について測定した結果、アスペクト比の平均値は1.0であった。アスペクト比の平均値が規定の範囲(0.4~1.4)内であるので、放熱シートの作製工程で凝集体粒子があまりつぶされていないことが分かった。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0108】
[実施例4]
12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、75gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例1と同様にして、2軸平均径の上位24個について測定した結果、アスペクト比の平均値は1.1であった。アスペクト比の平均値が規定の範囲(0.4~1.4)内であるので、放熱シートの作製工程で凝集体粒子があまりつぶされていないことが分かった。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0109】
[実施例5]
7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、85gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例1と同様にして、2軸平均径の上位24個について測定した結果、アスペクト比の平均値は1.2であった。アスペクト比の平均値が規定の範囲(0.4~1.4)内であるので、放熱シートの作製工程で凝集体粒子があまりつぶされていないことが分かった。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0110】
[実施例6]
7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、75gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)および10gのシリカ(粒子サイズ0.5μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例1と同様にして、2軸平均径の上位24個について測定した結果、アスペクト比の平均値は0.7であった。アスペクト比の平均値が規定の範囲(0.4~1.4)内であるので、放熱シートの作製工程で凝集体粒子があまりつぶされていないことが分かった。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0111】
[実施例7]
12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、65gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)および10gのアルミナ(粒子サイズ0.5μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例1と同様にして、2軸平均径の上位24個について測定した結果、アスペクト比の平均値は0.7であった。アスペクト比の平均値が規定の範囲(0.4~1.4)内であるので、放熱シートの作製工程で凝集体粒子があまりつぶされていないことが分かった。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0112】
[比較例1]
15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、70gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ20μm)を添加し、予備加圧加熱工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例1と同様にして、2軸平均径の上位24個について測定した結果、アスペクト比の平均値は0.2であり、規定の範囲(0.4~1.4)から外れているので、放熱シートの作製工程で凝集体粒子がつぶされていることが分かった。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0113】
[比較例2]
2.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および2.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、95gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ20μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートの作製を試みたが、成形することができず、評価はできなかった。
また、組成物の組成を表1に示す。
【0114】
[比較例3]
17.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および17.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、65gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ20μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0115】
[比較例4]
2.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および2.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、95gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートの作製を試みたが、成形することができず、評価はできなかった。
【0116】
[比較例5]
17.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および17.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、65gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成、実施例1と同様にして測定したアスペクト比の平均値、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表1に示す。
【0117】
【0118】
実施例1~7の放熱シートでは、アスペクト比の平均値が規定の範囲(0.4~1.4)内にあるので、絶縁性も熱伝導性も優れていた。特に、六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子を単独で使用すると、絶縁性も熱伝導性も非常に優れていた。
一方、予備加熱加圧工程を行わなかった比較例1では、凝集体粒子がつぶれて、絶縁性が低下した。
【0119】
2.第2の実施例
[実施例8]
(放熱シート用組成物の作製)
10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、80gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:11MPa、粒子サイズ48μm)を添加した後、固形分濃度が70重量%となるように粘度調整剤としてトルエンを添加し、タービン型撹拌翼を取り付けた撹拌機(HEIDON社製、商品名:スリーワンモーター)で15時間混合し、放熱シート用組成物を作製した。組成物の組成を表2に示す。
【0120】
(放熱シートの作製)
テフロン(登録商標)シート上にガラスクロス(ユニチカ株式会社製、商品名:H25 F104)を配置した後、上記の放熱シート用組成物を、ガラスクロス上にコンマコーターで厚さ0.2mmに塗工し、75℃で5分乾燥させた。次に、ガラスクロスが上側になるように乾燥させた放熱シート用組成物をひっくり返して、ガラスクロス上にコンマコーターで厚さ0.2mmに塗工し、75℃で5分乾燥させ、ガラスクロスの両面に放熱シート用組成物を塗工した放熱シート用組成物のシートを作製した。その後、平板プレス機(株式会社柳瀬製作所製)を用いて、予備加熱温度70℃、圧力120kgf/cm2の条件下で15分間のプレスを行った(予備加熱加圧工程)。その後、圧力150kgf/cm2のプレスを行いながら、10℃/分の昇温速度で温度を150℃まで上昇させた。そして、加熱温度(硬化開始温度以上の温度)150℃、圧力150kgf/cm2の条件下で45分間のプレスを行い、厚さ0.30mmの放熱シートを作製した。次いでそれを常圧、150℃の温度で4時間の加熱を行って低分子シロキサンを除去して、放熱シートを作製した。なお、放熱シートにおけるシリコーン樹脂および熱伝導性充填材の合計100質量%中、熱伝導性充填材の含有量は80質量%であった。
【0121】
(放熱シートの内部構造)
放熱シートを面に対して垂直に切断して、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジース社製、商品名:SU6600型)で反射電子像を撮像した。画像データをPanasonic社製パソコンに転送し、ソフトウェアIimage proを用いて、放熱シートの切断面に含まれる熱伝導性充填材の断面形状を画像解析した。
SEM像において、シリコーン樹脂と比べて、六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子は暗く表示される。
観測領域に含まれる全ての六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子につき、厚さ方向のフェレー定方向接線径(D)および面方向のフェレー定方向接線径(W)を計測し、大きい順から24個の粒子の断面形状の合計面積Sの、観測領域の全面積に対する面積比率(Sr)を算出した。面積比率を表2に示す。
【0122】
(放熱シートの特性)
(1)絶縁破壊電圧
第1の実施例と同様な方法で測定し、評価した。
【0123】
(2)熱抵抗
第1の実施例と同様な方法で測定し、評価した。
【0124】
[実施例9]
10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、80gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1.5MPa、粒子サイズ18μm)を添加した以外は、実施例8と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例8と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、面積比率(Sr)は27%であり、規定の範囲(20~80%)内であった。
また、組成物の組成、実施例8と同様にして測定した面積比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表2に示す。
【0125】
[実施例10]
7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、80gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:11MPa、粒子サイズ48μm)および5gのアルミナ(粒子サイズ0.5μm)を添加した以外は、実施例8と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例8と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、面積比率(Sr)は70%であり、規定の範囲(20~80%)内であった。
また、組成物の組成、実施例8と同様にして測定した面積比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表2に示す。
【0126】
[実施例11]
12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、75gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:11MPa、粒子サイズ48μm)を添加した以外は、実施例8と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例8と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、面積比率(Sr)は56%であり、規定の範囲(20~80%)内であった。
また、組成物の組成、実施例8と同様にして測定した面積比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表2に示す。
【0127】
[実施例12]
12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、65gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:11MPa、粒子サイズ48μm)および10gのアルミナ(粒子サイズ0.5μm)を添加した以外は、実施例8と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例8と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、面積比率(Sr)は56%であり、規定の範囲(20~80%)内であった。
また、組成物の組成、実施例8と同様にして測定した面積比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表2に示す。
【0128】
[比較例6]
10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、80gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1.5MPa、粒子サイズ18μm)を添加し、予備加圧加熱工程を行わなかった以外は、実施例8と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例8と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、面積比率(Sr)は22%であり、規定の範囲(20~80%)外であった。
実施例8と同様にして、放熱シートを面に対して垂直に切断して、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、放熱シートの切断面に含まれる熱伝導性充填材の断面形状を画像解析した。
また、組成物の組成、実施例8と同様にして測定した面積比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表2に示す。
【0129】
[比較例7]
10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および10gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、80gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)を添加し、予備加圧加熱工程を行わなかった以外は、実施例8と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例8と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、面積比率(Sr)は85%であり、規定の範囲(20~80%)を超過した。
また、組成物の組成、実施例8と同様にして測定した面積比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表2に示す。
【0130】
[比較例8]
2.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および2.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、95gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:12MPa、粒子サイズ50μm)を添加した以外は、実施例8と同様にして、放熱シートの作製を試みたが、成形することができず、評価はできなかった。
また、組成物の組成を表2に示す。
【0131】
[比較例9]
20gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および20gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、60gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ20μm)を添加した以外は、実施例8と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例8と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、面積比率(Sr)は35%であり、規定の範囲(20~80%)内であった。
また、組成物の組成、実施例8と同様にして測定した面積比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表2に示す。
【0132】
【0133】
実施例8~12の放熱シートでは、面積比率が規定の範囲(20~80%)内にあるので、絶縁性も熱伝導性も優れていた。特に、六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子を単独で使用すると、絶縁性も熱伝導性も非常に優れていた。
一方、予備加熱加圧工程を行わなかった比較例では、絶縁性が低下した。
【0134】
3.第3の実施例
[実施例13]
(放熱シート用組成物の作製)
7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、85gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:9MPa、粒子サイズ45μm)を添加した後、固形分濃度が70重量%となるように粘度調整剤としてトルエンを添加し、タービン型撹拌翼を取り付けた撹拌機(HEIDON社製、商品名:スリーワンモーター)で15時間混合し、放熱シート用組成物を作製した。
【0135】
(放熱シートの作製)
テフロン(登録商標)シート上にガラスクロス(ユニチカ株式会社製、商品名:H25 F104)を配置した後、上記の放熱シート用組成物を、ガラスクロス上にコンマコーターで厚さ0.2mmに塗工し、75℃で5分乾燥させた。次に、ガラスクロスが上側になるように乾燥させた放熱シート用組成物をひっくり返して、ガラスクロス上にコンマコーターで厚さ0.2mmに塗工し、75℃で5分乾燥させ、ガラスクロスの両面に放熱シート用組成物を塗工した放熱シート用組成物のシートを作製した。その後、平板プレス機(株式会社柳瀬製作所製)を用いて、予備加熱温度70℃、圧力120kgf/cm2の条件下で15分間のプレスを行った(予備加熱加圧工程)。その後、圧力150kgf/cm2のプレスを行いながら、10℃/分の昇温速度で温度を150℃まで上昇させた。そして、加熱温度(硬化開始温度以上の温度)150℃、圧力150kgf/cm2の条件下で45分間のプレスを行い、厚さ0.30mmの放熱シートを作製した。次いでそれを常圧、150℃の温度で4時間の加熱を行って低分子シロキサンを除去して、放熱シートを作製した。なお、放熱シートにおけるシリコーン樹脂および熱伝導性充填材の合計100質量%中、熱伝導性充填材の含有量は85質量%であった。
【0136】
(放熱シートの内部構造)
放熱シートを面に対して垂直に切断して、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジース社製、商品名:SU6600型)で反射電子像を撮像した。画像データをPanasonic社製パソコンに転送し、ソフトウェアimage proを用いて、放熱シートの切断面に含まれる熱伝導性充填材の断面形状を画像解析した。
SEM像において、シリコーン樹脂と比べて、六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子は暗く表示される。
観測領域に含まれる全ての六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子につき、厚さ方向のフェレー定方向接線径(D)および面方向のフェレー定方向接線径(W)を計測し、式(IV)で表される2軸平均径[(D+W)/2]を測定した。
【0137】
2軸平均径の上位24個について測定した粒子数比率の平均値は0.93であり、規定の範囲(0.4~1)内であった。粒子数比率を表3に示す。
【0138】
(放熱シートの特性)
(1)絶縁破壊電圧
第1の実施例と同様な方法で測定し、評価した。
【0139】
(2)熱抵抗
第1の実施例と同様な方法で測定し、評価した。
【0140】
[実施例14]
15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、70gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:2MPa、粒子サイズ:25μm)を添加した以外は、実施例13と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例13と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、粒子数比率は0.51であり、規定の範囲(0.4~1)内であった。
また、組成物の組成、実施例13と同様にして測定した粒子数比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表3に示す。
【0141】
[実施例15]
7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、75gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:11MPa、粒子サイズ:48μm)および10gのアルミナ(粒子サイズ:0.5μm)を添加した以外は、実施例13と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例13と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、粒子数比率は0.80であり、規定の範囲(0.4~1)内であった。
また、組成物の組成、実施例13と同様にして測定した粒子数比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表3に示す。
【0142】
[実施例16]
12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および12.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、75gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:2MPa、粒子サイズ:25μm)を添加した以外は、実施例13と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例13と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、粒子数比率は0.78であり、規定の範囲(0.4~1)内であった。
また、組成物の組成、実施例13と同様にして測定した粒子数比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表3に示す。
【0143】
[比較例10]
25gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および25gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、50gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:2MPa、粒子サイズ:25μm)を添加した以外は、実施例13と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例13と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、粒子数比率は0.31であり、規定の範囲(0.4~1)を下回った。
また、組成物の組成、実施例13と同様にして測定した粒子数比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表3に示す。
【0144】
[比較例11]
2.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および2.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、95gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:9MPa、粒子サイズ45μm)を添加した以外は実施例13と同様にして、放熱シートの作製を試みたが、成形することができず、評価はできなかった。
また、組成物の組成を表3に示す。
【0145】
[比較例12]
20gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および20gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、60gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:2MPa、粒子サイズ:25μm)を添加した以外は、実施例13と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例13と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、粒子数比率は0.74であり、規定の範囲(0.4~1)内であった。
また、組成物の組成、実施例13と同様にして測定した粒子数比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表3に示す。
【0146】
[比較例13]
15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、70gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:2MPa、粒子サイズ:25μm)を添加し、予備加圧加熱工程を行わなかった以外は、実施例13と同様にして、放熱シートを作製した。
実施例13と同様に2軸平均径の上位24個について測定した結果、粒子数比率は0.25であり、規定の範囲(0.4~1)を下回った。
また、組成物の組成、実施例13と同様にして測定した粒子数比率、ならびに得られた放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値に基づく評価の結果を、表3に示す。
【0147】
【0148】
実施例13~16の放熱シートでは、粒子数比率が規定の範囲(0.4~1)内にあるので、絶縁性も熱伝導性も優れていた。特に、六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子を単独で使用すると、絶縁性も熱伝導性も非常に優れていた。
一方、予備加熱加圧工程を行わなかった比較例4では、絶縁性が低下した。
【0149】
4.第4の実施例
[実施例17]
(放熱シート用組成物の作製)
18.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および18.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、63gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ:22μm)を添加した後、固形分濃度が70重量%となるように粘度調整剤としてトルエンを添加し、タービン型撹拌翼を取り付けた撹拌機(HEIDON社製、商品名:スリーワンモーター)で15時間混合し、放熱シート用組成物を作製した。
【0150】
(放熱シートの作製)
テフロン(登録商標)シート上にガラスクロス(ユニチカ株式会社製、商品名:H25 F104)を配置した後、上記の放熱シート用組成物を、ガラスクロス上にコンマコーターで厚さ0.2mmに塗工し、75℃で5分乾燥させた。次に、ガラスクロスが上側になるように乾燥させた放熱シート用組成物をひっくり返して、ガラスクロス上にコンマコーターで厚さ0.2mmに塗工し、75℃で5分乾燥させ、ガラスクロスの両面に放熱シート用組成物を塗工した放熱シート用組成物のシートを作製した。その後、平板プレス機(株式会社柳瀬製作所製)を用いて、予備加熱温度70℃、圧力120kgf/cm2の条件下で15分間のプレスを行った(予備加熱加圧工程)。その後、圧力150kgf/cm2のプレスを行いながら、10℃/分の昇温速度で温度を150℃まで上昇させた。そして、加熱温度(硬化開始温度以上の温度)150℃、圧力150kgf/cm2の条件下で45分間のプレスを行い、厚さ0.30mmの放熱シートを作製した。次いでそれを常圧、150℃の温度で4時間の加熱を行って低分子シロキサンを除去して、放熱シートAを作製した。なお、放熱シートにおけるシリコーン樹脂および熱伝導性充填材の合計100質量%中、熱伝導性充填材の含有量は63質量%であった。
【0151】
(放熱シートの内部構造)
放熱シートを面に対して垂直に切断して、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジース社製、商品名:SU6600型)で反射電子像を撮像した。
SEM像において、シリコーン樹脂と比べて、六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子は暗く表示される。
【0152】
(放熱シートの特性)
(1)絶縁破壊電圧
JIS C2110に記載の方法に準拠し、放熱シートの絶縁破壊電圧を、短時間破棄試験(室温23℃)にて評価した。結果を表4に示す。
【0153】
(2)熱抵抗
ASTM D5470に記載の方法に準拠し、放熱シートの熱抵抗を評価した。厚さ方向に、0.2~1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をそれぞれ測定する。0.2MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR0.2とし、0.4MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR0.4とし、1.0MPaの圧力を負荷したときの熱抵抗値をR1.0としたとき、熱抵抗比R0.2/R1.0およびR0.4/R1.0を算出した。結果を表4に示す。
【0154】
[実施例18]
15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、70gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ:22μm)を添加した以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0155】
[実施例19]
6.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および6.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、77gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:3MPa、粒子サイズ:60μm)および10gのアルミナ(粒子サイズ:5μm)を添加した以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0156】
[実施例20]
18.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および18.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、63gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:2MPa、粒子サイズ:70μm)を添加した以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0157】
[実施例21]
18.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および18.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、63gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:10MPa、粒子サイズ:50μm)を添加した以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0158】
[実施例22]
15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、70gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ:22μm)を添加した以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0159】
[実施例23]
20gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および20gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、45gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ:22μm)および15gのアルミナ(粒子サイズ:5μm)を添加した以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0160】
[実施例24]
15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および15gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、40gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1MPa、粒子サイズ:22μm)および30gのシリカ(粒子サイズ:5μm)を添加した以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0161】
[実施例25]
7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および7.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、85gのアルミナ(粒子サイズ:18μm)を添加した以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0162】
[比較例14]
13gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および13gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、74gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1.5MPa、粒子サイズ:32μm)を添加、予備加圧加熱工程を行わなかった以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0163】
[比較例15]
16.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20A)および16.5gのシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、型番:LR3303-20B)に、67gの六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子(圧壊強度:1.5MPa、粒子サイズ:32μm)を添加、予備加圧加熱工程を行わなかった以外は、実施例17と同様にして、放熱シートを作製した。
また、組成物の組成ならびに、実施例17と同様にして測定した、放熱シートの絶縁破壊電圧および熱抵抗の値を、表4に示す。
【0164】
【0165】
六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子を使用した実施例17~25放熱シートは、絶縁破壊電圧が5.0kV以上であり、かつ、熱抵抗比R0.2/R1.0およびR0.4/R1.0のいずれも1以上であった。すなわち、本発明の放熱シートは絶縁性に優れているだけではなく、高圧力(1.0MPa)負荷時で熱伝導性経路が破壊されることがなかった。なかでも、六方晶窒化ホウ素の凝集体粒子のみを使用した実施例17~25の放熱シートは、高圧力(1.0MPa)負荷時での熱抵抗が1.5℃/W以下であり、熱抵抗の絶対値も低く、自動車用途として最適であった。
一方、予備加熱加圧工程を行わなかった比較例14および15の放熱シートは、絶縁破壊電圧が5.0kV未満であり絶縁性に問題があった。熱抵抗比R0.2/R1.0およびR0.4/R1.0も1未満であった。
【0166】
実施例17~25の放熱シートについて、圧力負荷が0.2MPaから0.4MPa、さらに、1.0MPaに上昇すると、熱抵抗が下降している。このことは、圧力負荷によって放熱シートの厚みが減少したことにより、厚さ方向の熱伝導性粒子の分布密度が増大し(すなわち、粒子同士の距離の短縮)、熱伝導性が向上したためと考えられる。
一方、比較例14および15の放熱シートについて、圧力負荷が0.2MPaから0.4MPaまでは、上昇に伴って熱抵抗が下降するが、さらに、1.0MPaに上昇すると、再び熱抵抗が上昇する。このことは、圧力負荷が0.4MPaを超えて1.0MPaに上昇したとき、放熱シートの圧縮により、内部の熱伝導経路が破壊されることを示唆する。
また、実施例17~実施例19の内部構造を確認したところ、第1の発明と同様にアスペクト比の平均値が0.4以上1.4以下の範囲にあることが確認できた。
実施例20~実施例22の内部構造を確認したところ、第2の発明と同様に面積比率(Sr)が20%以上80%以下の範囲にあることが確認された。
実施例23~実施例25の内部構造を確認したところ、第3の発明と同様に粒子数比率nw/ndが0.4以上1未満の範囲にあることが確認された。
以上の通り、熱抵抗比R0.4/R1.0を1以上とし、ボイドが少なくなるように絶縁破壊電圧が所定の範囲になるように調整することが重要であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の放熱シートは、高い締付圧でヒートシンクを取り付けても、優れた熱伝導性および絶縁性を示すので、通常用途のみならず、車載用途でも、発熱性電子部品の熱的損傷から保護することができる。
【符号の説明】
【0168】
1 電子部品
2 ヒートシンク
3 空気層
4 放熱シート
10 放熱シート
11 シリコーン樹脂
12 熱伝導性充填材
12a 観察対象の熱伝導性充填材(凝集体粒子の熱伝導性充填材)
12b 観察非対象の熱伝導性充填材(りん片状一次粒子の熱伝導性充填材)