(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ホイールブレーキのブレーキダストを測定する測定リム
(51)【国際特許分類】
F16D 66/00 20060101AFI20240718BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20240718BHJP
B60S 5/00 20060101ALI20240718BHJP
G01M 17/007 20060101ALN20240718BHJP
G01N 1/02 20060101ALN20240718BHJP
G01N 15/06 20240101ALN20240718BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
B60T17/22 Z
B60S5/00
G01M17/007 E
G01N1/02 A
G01N15/06 D
(21)【出願番号】P 2022512743
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 AT2020060321
(87)【国際公開番号】W WO2021035271
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-01
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】パイン・アンドレアス
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017200941(DE,A1)
【文献】特開平11-059339(JP,A)
【文献】特開2008-196684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167975(US,A1)
【文献】特開2007-253878(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106950158(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 66/00
B60T 17/22
B60S 5/00
G01M 17/007
G01N 1/02
G01N 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲にわたって周設されたタイヤ設置面(18)を有する測定リムであって、タイヤ設置面が、外方へ閉鎖された内部空間を形成するために、一方側では端面壁部(11)に結合されており、反対側ではシール部(12)に結合されており、端面壁部(11)の中央範囲にはロータリジョイント(13)が設けられており、気体状の媒体がロータリジョイントを介して測定リム(1)の内部空間へ供給可能及び排出可能であることを特徴とする測定リム。
【請求項2】
端面壁部(11)が、円すい状に、中央範囲の方向へ先細に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定リム。
【請求項3】
ロータリジョイント(13)から測定リム(1)の内部空間へ延在する第1の流れ通路(35)を形成するために、測定リム(1)のリム壁部が中空壁部として構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定リム。
【請求項4】
第1の流れ通路(35)及び第2の流れ通路(36)を形成するために、測定リム(1)のリム壁部が二重中空壁部として構成されており、第1の流れ通路及び第2の流れ通路が、それぞれロータリジョイント(13)から測定リム(1)の内部空間へ延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定リム。
【請求項5】
第1の流れ通路(35)が、シール部(12)の範囲において測定リム(1)の内部空間へ開口していることを特徴とする請求項3又は4に記載の測定リム。
【請求項6】
シール部(12)の範囲には、少なくとも部分的に周囲にわたって延在する方向転換薄板(32)が設けられていることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の測定リム。
【請求項7】
第2の流れ通路(36)が、測定リム(1)の内部空間に隣接した、少なくとも部分的に穿孔された内壁部(37)で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の測定リム。
【請求項8】
温度センサ(27)が測定リム(1)に設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の測定リム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の測定リム(1)を有する、ホイールブレーキ(6)のブレーキダストを測定する測定配置構造であって、測定リム(1)が、ホイールブレーキ(6)によって制動可能なホイールシャフト(3)に固定されており、シール部(12)がブレーキ側に配置されており、ロータリジョイント(13)が、気体状の媒体を測定リム(1)へ供給する供給管路(16)と、ブレーキダスト粒子を含有する気体状の媒体を排出する排出管路(17)とに接続されており、排出管路(17)からの気体状の媒体を分岐させ、ブレーキダストの特性を測定する測定装置(26)へ供給するために、排出管路(17)に除去装置(25)が配置されていることを特徴とする測定配置構造。
【請求項10】
測定装置(26)によって測定される測定量(M)が、測定リム(1)の温度(T)又はホイールブレーキの一部の温度(T)に依存する補正ファクタによって補正されることを特徴とする請求項9に記載の測定配置構造。
【請求項11】
外方へ閉鎖された内部空間を有する測定リム(1)によってホイールブレーキ(6)のブレーキダストを測定する方法であって、測定リム(1)が、ホイールブレーキ(6)によって制動可能なホイールシャフト(3)に固定され、供給管路(16)によって、気体状の媒体が測定リム(1)のロータリジョイント(13)を介して測定リム(1)の内部空間へ供給され、排出管路(17)によって、ブレーキダスト粒子を含有する気体状の媒体がロータリジョイント(13)を介して排出され、除去装置(25)によって、気体状の媒体がロータリジョイント(13)の下流で排出管路(17)から分岐され、ブレーキダストの特性を測定する測定装置(26)へ供給されることを特徴とする方法。
【請求項12】
測定装置(26)によって測定される測定量(M)が、測定リム(1)の温度(T)又はホイールブレーキ(6)の一部の温度(T)に依存する補正ファクタによって補正されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具体的な本発明は、ホイールブレーキのブレーキダストを測定する測定リム並びにこのような測定リムを有するブレーキダストを測定する方法及び測定配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両による細塵による環境汚染は、以前から知られており、ますます厳しくなる法的な規制を受ける。ここで、これまでは、主に、排ガスを介して環境へ至る、内燃エンジンにおける内燃過程により生成される細塵汚染が焦点であった。しかし、これまでに、車両において他の細塵源も確認された。このとき、特に車両のブレーキ設備に焦点が当てられた。車両の動作中にブレーキディスク及びブレーキライニングの摩耗により細塵が生成され、当該細塵は、環境に至るとともに空気の細塵汚染の一因となっている。そのため、車両又はブレーキ設備の製造者は、ブレーキ設備による細塵の生成の低減にますます焦点を合わせている。ブレーキ設備を開発するために、しばしばブレーキ試験台が用いられ、当該ブレーキ試験台には、ブレーキ設備が設置され、動的なテストが行われる。ブレーキディスク/ブレーキライニングの摩耗による細塵の発生及び規模をより良好に判断することができるように、ブレーキダストを測定することができるためのこのようなブレーキ試験台が既に知られている。これについての例は、特許文献1である。専門文献、例えば非特許文献1でも既に扱われている。ここで、ブレーキ試験台におけるブレーキディスク及びブレーキライニングは、本質的にハウジングに入れられ、ハウジング内の空気が吸い込まれ、解析される。
【0003】
しかし、ブレーキ試験台は、道路上の車両における現実の使用を単に近似することしかできない。そのため、現実により近い判断のためには、道路上での動作中に現実の車両での測定を実行することが常に魅力的である。例えば、特許文献2には、道路上での現実の動作中に車両のホイールブレーキの粒子放出を測定し、分類する装置が示されており、当該装置は、同様にブレーキ試験台においても使用可能である。ここで、車両におけるブレーキディスク及びブレーキシューを有するブレーキは、ハウジングによって包囲される。ハウジングには空気が供給され、粒子を含有する空気は、ハウジングから排出され、測定システムへ供給される。このとき、各車両、各車輪及び各ブレーキについて固有のハウジングを形成することが必要であるという困難性がある。ホイールハウスにおいてハウジングを格納することができるように、ホイールシャフトを延長する必要があり得る。それとは別に、給気及び排気をホイールハウスにおいてガイドする必要があり、当該ホイールハウスには、いずれにしてもわずかなスペースしかなく、アクセスが困難である。給気及び排気をブレーキへ案内することができるように、車両のアンダーフロアは、しばしば穿孔される。したがって、当該装置は、実際の応用においては手間がかかるものである。
【0004】
特許文献3にはブレーキ粒子放出を測定する装置が記載されており、当該装置では、リムと共に回転する塵埃収集漏斗がホイールリムの外側リングに固定されている。粒子を含有する空気は、塵埃収集漏斗を介して吸い込まれ、粒子測定部へ供給される。しかし、ホイールリムはリム内側で密閉されていないため、粒子を含有する排気においてブレーキダストをタイヤダスト、道路ダスト又は周囲ダストから区別することができない。これにより、ブレーキダストの信頼性をもった定量化及び分類が阻害されてしまう。これとは別に、当該装置では、測定されるホイールリムの幾何学的な形状によって流れ特性が変化するため、様々な車両間又はホイールリム間でのブレーキダストの比較がほとんど不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/097901号
【文献】独国特許出願公開第102017006349号明細書
【文献】独国特許発明第102017200941号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Kukutschova J.ほか著, “On airborne nano/micro-sized wear particles released from low-metallic automotive brakes”, Environmental Pollution 159 (2011), 第998-1006ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
具体的な本発明の課題は、車両のブレーキ設備のブレーキダストの信頼性をもった定量化及び分類を可能とするとともに、同時に実際の応用における手間を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該課題は、周囲にわたって周設されたタイヤ設置面を備えた測定リムであって、タイヤ設置面が、外方へ閉鎖された内部空間を形成するために、一方側では端面壁部に結合されており、反対側ではシール部に結合されており、端面壁部の中央範囲にはロータリジョイントが設けられており、気体状の媒体がロータリジョイントを介して測定リムの内部空間へ供給可能及び排出可能である測定リムによって解決される。測定リムの当該構成により、測定リムの内部空間は外部空間に対して密閉され、これにより、測定リムの外部の粒子の相互汚染に至ることがなく、ブレーキダストの測定の信頼性及び再現性が改善される。気体状の媒体が測定リムにおいて案内された後、測定リムの流れ特性、特に流れの案内を最適化することができ、当該流れ特性は、従来のリムの多数の異なる幾何形状に依存しない。動作中の測定リムの自転によっても、流れ特性に意図的に影響を与えることができ、これによっても同様に効果的な粒子除去が可能となる。これにより、ブレーキダスト粒子の除去効率及び搬送効率を改善することが可能である。除去効率及び搬送効率は、測定時にできる限りわずかな粒子損失を有するようにするのに重要である。しかし、粒子検出の効率は同一に維持されるため、異なる車両及びブレーキ設備における比較可能な測定も可能である。これにより、とりわけ、ブレーキ試験台における測定も、ローラダイナモメータにおける測定及び現実の動作における測定と比較することができ、このことは、ブレーキ設備又はその構成要素の開発をサポートするものである。
【0009】
各リムに適合される必要があった特別なアタッチメント又はカバーがもはや不要であるため、測定リムの応用も、従来技術に比べて改善されることができる。加えて、狭いホイールハウスに部材を格納する必要がなく、また、接続部全体に外部から容易にアクセス可能なままであるため、アクセス性も容易化される。さらに、測定リムは、車両においても、また試験台においても同様に用いられることが可能であり、これにより、応用におけるフレキシビリティが向上する。
【0010】
中央範囲の方向へ円すい状に先細となった端面壁部は、測定リム内の流れガイドを改善するとともに、気体状の媒体の供給及び排出を容易にするものである。
【0011】
測定リムのリム壁部が、ロータリジョイントから測定リムの内部空間へ延在する第1の流れ通路を形成するために中空壁部として構成されていれば、測定リム内の流れガイドを更に改善することが可能である。特に、供給される気体状の媒体及び排出される気体状の媒体の流れを、測定リム内でより良好に分離することが可能である。このようにして、クロスフローを最小化することが可能である。同様のことは、第1の流れ通路及び第2の流れ通路を形成するために、測定リムのリム壁部が二重中空壁部として構成されており、第1の流れ通路及び第2の流れ通路が、それぞれロータリジョイントから測定リムの内部空間へ延在していることによって達成され得る。
【0012】
このとき、第1の流れ通路がシール部の範囲において測定リムの内部空間へ開口していれば、測定結果にネガティブに影響し得るシール部の範囲におけるデッドボリュームの形成をより良好に防止することが可能である。このために、少なくとも部分的に周囲にわたって延在する方向転換薄板がシール部の範囲に設けられていれば有利であり得る。デッドボリュームの形成を更により良好に回避することができるように、シール部の範囲における流れを方向転換薄板によって意図的に案内することが可能である。
【0013】
可能な一構成では、第2の流れ通路が、測定リムの内部空間に隣接した、少なくとも部分的に穿孔された内壁部で構成されている。流れが測定リムの回転によりいずれにしても径方向外方へ向けられているため、特に、径方向内方に位置する内壁部における排出部の配置が有利である。このとき、内壁部の方向への意図的な流れガイドのために測定リムのスポークが用いられることも可能である。
【0014】
以下に、具体的な本発明を、例示的、概略的、かつ、制限せずに本発明の有利な形態を示す
図1~
図6を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による測定リムの一構成を示す図である。
【
図2】測定リムを有する測定配置構造を示す図である。
【
図3】中空壁部を有する測定リムの一構成を示す図である。
【
図4】タイヤ設置面の範囲における流れガイド要素を有する測定リムの一構成を示す図である。
【
図5】シール部の範囲における流れガイド要素を有する測定リムの一構成を示す図である。
【
図6】二重中空壁部を有する測定リムの一構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には本発明による測定リム1が示されており、当該測定リムには、必要に応じてタイヤ2が従来の態様で取り付けられることが可能である。試験台における測定リム1の使用時には、タイヤ2を取り付ける必要はない。これに対して、道路上で動作される車両における測定リム1の使用時には、タイヤ2が必要となる。測定リム1は、ホイールシャフト3に固定されているとともに、動作時にはホイールシャフト3と共に回転する。測定リム1は、例えば従来の態様で、例えば周囲にわたって分配されたホイールボルトを用いて、パワートレイン(又はその一部)のホイールシャフト3のホイールハブ5に固定されることが可能である。ホイールハブ5は、当該ホイールハブ5を駆動するホイールシャフト3に結合されている。ホイールシャフト3は、同様に車両においては、車両に固定された部材、例えばホイールサスペンション4において回転可能に支持されている。非駆動のアクスルの車輪の場合には、ホイールハブ5も、車両に固定された部材、例えばホイールサスペンション4において回転可能に支持されることが可能である。しかし、測定リム1が駆動されるアクスルにおいて用いられるか、又は非駆動のアクスルにおいて用いられるかは、本発明にとって重要ではない。車両のパワートレインにおけるリムの固定は十分に知られているため、ここではこれについて詳細に言及しない。しかし、試験台、例えばブレーキ試験台又はパワートレイン試験台では、ホイールシャフト3は異なるように支持されることも可能であり、特に、例えばブレーキ試験台におけるホイールシャフト3は、電気モータの駆動軸であってもよい。
【0017】
ホイールシャフト3は、必要に応じてホイールブレーキ6によって制動されることが可能である。このために、ホイールブレーキの共に回転するブレーキ部分7、例えば(
図1に図示されるような)ディスクブレーキのブレーキディスク又はドラムブレーキのブレーキライニングは、ホイールハブ5に配置されることができるか、又はホイール軸3に直接配置されることが可能である。制動時には、共に回転するブレーキ部分7は、車両に固定されたブレーキ部分8、例えば(
図1におけるような)フローティングキャリパ10におけるブレーキライニング9又はドラムブレーキのブレーキライニングと協働する。制動のために、ブレーキ駆動部が十分知られた態様で設けられており、当該ブレーキ駆動部は、可動のブレーキライニング9を共に回転するブレーキ部分7へ押圧するか、又は当該ブレーキ部分から持ち上げる。見やすさの理由から、及びブレーキ駆動部は本発明にとって本質的でないため、当該ブレーキ駆動部は図示されていない。当然、ブレーキは、フローティングキャリパを有するディスクブレーキ又はドラムブレーキとは異なるように構成されることも可能である。
【0018】
従来のホイールリムとは異なり、測定リム1は、軸方向外側の端面において、すなわちホイールブレーキ6に対向して、例えば端面壁部11を用いて閉鎖されている。端面壁部11は、(
図1に図示されているように)好ましくは円すい状に軸方向外方へ先細となるように構成されている。軸方向内方の、ホイールシャフト3あるいはホイールサスペンション4の範囲、すなわちブレーキ側では、測定リム1は、例えばシール部12を用いて同様に閉鎖されている。シール部12は、同様に剛直な端面壁部であってよいが、例えばゴムベローズの形態のフレキシブルなシール部であってもよい。これにより、測定リム1は、軸方向外方及び軸方向内方へ閉鎖されたケースを形成する。測定リム1は、いずれにしても、タイヤ設置面18によって径方向外方へ閉鎖されている。タイヤ設置面18は、閉鎖されたケースを形成するために、外側の端面壁部11とシール部12を測定リム1の周囲にわたって結合している。
【0019】
軸方向外側の端面壁部11の中央範囲には、ロータリジョイント(回転フィードスルー)13が配置されている。このようなロータリジョイント13は、十分に知られているとともに、回転部分14を備えており、当該回転部分は、例えば周囲にわたって分配されたボルトを用いて、動作中に回転する測定リム1の端面壁部11に結合されている。回転部分14は、ロータリジョイント13の不動部分15に結合されている。不動部分(ここでは媒体管路16,17)から回転部分(ここでは測定リム1)へ媒体を伝達することができるように、ロータリジョイント13は流れ通路を形成している。供給管路16、例えばホースを介して、気体状の媒体を測定リム1へ供給することができ、排出管路17、例えばホースを介して、気体状の媒体を測定リム1から排出することが可能である。供給される媒体は、粒子のない気体、例えば空気であり、排出される媒体は、粒子を含有する気体、例えばブレーキダストを含有する空気である。
【0020】
考えられる測定構造が
図2に図示されている。ロータリジョイント13を有する測定リム1は、例えば従来のリムに代えて、試験台における車両又はドライブトレーンに固定されている。空気又は他の気体は、例えばブロワ21を用いて、供給管路16を介して測定リム1へ供給される。供給される空気における汚れ粒子及び塵埃粒子を取り除くために、追加的に、供給管路16における測定リム1の手前にフィルタ22、例えばHEPA(“High Efficiency Particulate Air”)フィルタのような懸濁物質フィルタを配置することも可能である。同時に、空気又は他の供給された気体は、排出管路17を介して排出される。このために、排出管路17に吸込みポンプ23を設けることも可能である。排出される空気に含まれるブレーキダスト粒子をフィルタで除去するために、吸込みポンプ23の上流において、又は排出される空気が周囲へ排出される前に、フィルタ24、例えばHEPA(“High Efficiency Particulate Air”)フィルタのような懸濁物質フィルタを配置することも可能である。基本的には、ブロワ21又は吸込みポンプ23のみでも十分であり得る。両者を用いる場合には、所望の圧力比(圧力特性)を調整するために、供給管路16及び排出管路17における流量は、互いに調和されることが可能である。しかし、排出管路17においての排出される粒子を含有する気体を排出管路17から分岐して測定装置26へ供給するために、測定リム1の上流には、いずれにしても、あり得るフィルタ24の上流には、除去装置25が設けられている。除去装置25は、例えば開放された端部を有するL字状のパイプであり、当該端部は、排出管路17において、排出管路17における流れ方向に抗して配置される。分岐される気体の量を調整することができるように、測定装置26は、固有の測定ポンプ又は流量制御装置も備えることが可能である。測定装置26又は除去装置25には、流量測定装置も設けることができる。測定装置26は、ブレーキダストの特性、例えば、排出された気体状の媒体におけるブレーキダスト粒子の量若しくは質量、大きさ若しくは質量によるブレーキダスト粒子の分布を検出(算出)するか、又はブレーキダストの他の特性を検出(算出)する。分析的な問題に応じて、測定装置26を用いて、例えば以下の測定量が(所定のサイクルにわたって)統合して、又は時間分解して検出(算出)されることが可能である:ブレーキダストの粒子質量、粒子数、粒径分布又は粒子組成。測定装置26は、検出された測定量Mを、評価のために評価ユニット28(コンピュータハードウェア及び/又はソフトウェア)へ送信することも可能である。同様に、測定リム1又はホイールブレーキ6の温度Tは、温度センサ27を用いて測定されることもでき、評価ユニット28(又は測定装置26)において、(以下において詳述するように)測定量Mの補正のために用いられることが可能である。
【0021】
図3による測定リム1の有利な一構成では、測定リム1のリム壁部は、第1の流れ通路35を形成するために少なくとも部分的に中空壁部として構成されている。第1の流れ通路35は、リム壁部に沿って、ロータリジョイント13から測定リム1の内部空間へ延在している。第1の流れ通路35を形成するために、ホイールブレーキ6とは反対側の端面壁部11は、中空空間30を有する中空壁部として構成されることが可能である。同様に、タイヤ設置面18は、少なくとも部分的に中空壁部31として構成されることができ、端面壁部11及びタイヤ設置面18の中空空間30,31は互いに結合されている。このとき、中空空間は、周方向にも、また径方向にも連続している必要はない。例えば、中空空間30,31には、補強薄板を配置することが可能である。好ましくは、この第1の流れ通路35は、シール部12の範囲において測定リム1の内部空間へ開口している。このことは、ホイールブレーキ6の後方での(すなわち気体状の媒体の排出部とは反対側での)ブレーキダスト粒子の搬出を有利に補助することが可能である。
【0022】
気体状の媒体の流れを意図的に軸方向から径方向へ方向転換させるために、シール部12の範囲には、すなわち測定リム1のブレーキ側の軸方向端部には、少なくとも部分的に周囲にわたって方向転換薄板32を設けることも可能である。好ましくは、流れは、シール部12に沿って径方向に内方へ、すなわちシール部12とホイールブレーキ6の間を流れるように方向転換される。このことも、ホイールブレーキ6の後方におけるデッドボリュームの形成を避けるように補助することが可能である。
【0023】
図3による構成においては、(
図3におけるように)供給される気体状の媒体も、また排出される、粒子を含有する気体状の媒体も第1の流れ通路35において案内されることができる。第1の場合には、ブレーキダスト粒子を含有する気体状の媒体が径方向中央範囲において排出され、第2の場合には、気体状の媒体は、中央範囲において端面壁部11へ供給される。
【0024】
内部空間に形成される、すなわち供給され、また排出される気体状の媒体の流れを意図的に案内し、及び/又は改善するために、測定リム1の内部空間には、流れガイド要素33も配置することが可能である。このような流れガイド要素33は、端面壁部11に、シール部12に、及び/又はタイヤ設置面18の範囲に配置されることが可能である。測定リム1のスポーク19も、測定リム1の内部空間における流れ及び流れ特性に意図的に影響を与えるために用いられることが可能である。
【0025】
図4による構成では、流れガイド要素33は、タイヤ設置面18の範囲で、径方向内方のリム壁部に測定リム1の周囲にわたって分配して配置されている。当該流れガイド要素は、測定リム1の回転時に端面壁部11における中央範囲の方向への気体状の媒体(中央範囲での気体状の媒体の排出時)の流れを補助するように、又は測定リム1の回転時にシール部12の方向への気体状の媒体(中央範囲での気体状の媒体の供給時)の流れを補助するように形成されている。当該流れガイド要素33は、(
図3、
図4又は
図6におけるように)リム壁部が中空壁部として形成されているかどうかに依存しない。
【0026】
図5による構成では、シール部12には、流れガイド要素33が周囲にわたって分配して配置されている。当該流れガイド要素は、リム壁部の方向へ径方向内方から径方向外方へ(矢印で示唆されている)又はその逆への流れを生成するように形成されている。このことも、ホイールブレーキ6の後方での(すなわち気体状の媒体の排出部とは反対側での)ブレーキダスト粒子の搬出を有利に補助することが可能である。当該流れガイド要素33は、(
図3、
図4又は
図6におけるように)リム壁部が中空壁部として形成されているかどうかに依存しない。
【0027】
別の有利な一構成では、
図6を参照して説明されるように、(
図3又は
図4におけるような)第1の流れ通路35及び第2の流れ通路36を形成するために、リム壁部が少なくとも部分的に二重中空壁部として構成されている。第2の流れ通路36も、リム壁部に沿って、ロータリジョイント13から測定リム1の内部空間へ延在している。第1の流れ通路35及び第2の流れ通路36は、少なくとも部分的に径方向に並んで配置されている。このために、
図3について説明されるように、測定リム1においては、第1の中空空間30が端面壁部11及びタイヤ設置面18に設けられることが可能である。径方向内方には、二重中空壁部を形成するために第2の中空空間33,34を配置することが可能である。端面壁部11及びタイヤ設置面18の第2の中空空間33,34は、互いに接続されている。このとき、中空空間33,34は、周方向にも、また径方向にも連続している必要はない。例えば、中空空間33,34には、補強薄板を配置することが可能である。好ましくは、径方向外方の第1の流れ通路35は、シール部12の範囲において測定リム1の内部空間へ開口している。測定リム1の内部空間に隣接する、第2の流れ通路36の径方向の内壁部37は、少なくとも部分的に穿孔して形成されているため、気体状の媒体は、内壁部37を貫通して流れることが可能である。例えば、第2の流れ通路36の端部が測定リムの内部空間で閉鎖されていることにより、好ましくは、第1の流れ通路35及び第2の流れ通路36は、互いに直接接続されていない。当該配置では、気体状の媒体は、径方向外方の第1の流れ通路35を介してロータリジョイント13から測定リム1の内部空間へ供給されることが可能である。ブレーキダスト粒子を含有する気体状の媒体は、穿孔された内壁部37を通して第2の流れ通路36へ流れ、リム壁部に沿ってロータリジョイント13へ案内され、そこで排出管路17を介して排出される。このとき、測定リム1の回転は、内壁部37の方向へ向けた径方向外方へのブレーキダスト粒子を含有する気体状の媒体の流れをサポートする。しかし、逆の配置、すなわち、第2の流れ通路36を介した供給及び第1の流れ通路35を介した排出も考えられる。
図6による構成においても、(タイヤ設置面18及び/又は端面壁部11の範囲での)内壁部37における、及び/又はシール部12における流れガイド要素33が可能である。
【0028】
ホイールブレーキ6における温度は、公知の態様で粒子放出に影響を与え、ここで、通常、より高い温度が粒子数の放出の増大につながることが当てはまる。しかし、このことは、必ずしも粒子質量には当てはまらない。なぜなら、ブレーキダスト粒子は、概してより高い温度においてはより小さいためである。そのため、現実の使用と比べてできる限り誤りのない、測定中のホイールブレーキ6の温度が粒子放出の測定にとって有利である。当然、ホイールブレーキ6のあらゆる種類のハウジングは、ホイールブレーキ6の周囲における流れ特性に影響を与え、したがって温度にも影響を与える。しかし、他方では、合理的な測定を行うことができるためには、ハウジングは、本発明による測定リム1にとって重要である。この潜在的な矛盾を軽減するために、適切な箇所、好ましくはホイールブレーキ6の範囲において、例えば
図2に図示されているように適切な温度センサ27の配置によって温度測定部を測定リム1に統合することが可能である。その後、(好ましくは同一の軸における)従来の修正されていないリムにおける温度も測定されれば、適当なテスト及び較正によって、得られる温度差に基づいてブレーキダストの測定量Mの温度補正を行うことが可能である。このために、適当なテストにおいて、温度(又は温度差)との所定の測定量の依存性を特定することが必要である。そして、これに基づき得られる関数は、補正ファクタの演算に用いられることが可能であり、当該補正ファクタにより、測定リム1において測定される測定量Mを修正されていないリムにおいて測定される通常温度へ補正される。
【0029】
さらに、例えば、測定リム1へ供給される気体状の媒体の通流を意図的に制御することで、測定リム1と修正されていない車両リムの間の温度差をゼロに維持することも可能であり、これにより、供給される気体状の媒体及び排出される気体状の媒体によって、測定リム1からの熱搬出も影響を受けることが可能である。このことは、あり得る温度差を後から補正する必要がないという利点を有している。