(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】セル、電池及び電力消費機器
(51)【国際特許分類】
H01M 50/595 20210101AFI20240718BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240718BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240718BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240718BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240718BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240718BHJP
【FI】
H01M50/595
H01M50/586
H01M10/04 Z
H01M10/04 W
H01M50/531
H01M50/105
H01M50/184 C
(21)【出願番号】P 2022513599
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2022071122
(87)【国際公開番号】W WO2022206099
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】202110335422.4
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 陽雨
(72)【発明者】
【氏名】▲ぐん▼ 祖禎
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲しん▼
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-151614(JP,A)
【文献】特開2011-044436(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047787(WO,A1)
【文献】特開2016-009683(JP,A)
【文献】中国実用新案第211907597(CN,U)
【文献】中国実用新案第209401661(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10、50/50
H01M10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体を含み、前記電極組立体の外面は、順に接続される第1の表面、第1の側面、第2の表面及び第2の側面を含み、前記第1の表面と前記第2の表面とは、対向して設けられ、前記第1の側面と前記第2の側面とは、対向して設けられ、前記電極組立体の外面は、第1の端面、及び前記第1の端面に対向する第2の端面をさらに含み、前記第1の端面及び前記第2の端面は、それぞれ前記第1の表面及び第2の表面に接続されるセルであって、
前記第1の側面に接着され、前記第1の側面から前記第1の表面及び/又は前記第2の表面まで延在する第1の粘着膜と、
前記第1の表面に接着され、前記第1の表面から前記第1の端面を介して前記第2の表面まで延在する第1の接着層であって、前記電極組立体の幅方向において、前記第1の粘着膜と前記第1の接着層とは、第1の表面及び/又は第2の表面に第1の重なり部分を有し、前記第1の重なり部分において、前記第1の粘着膜は、前記第1の表面及び/又は前記第2の表面と前記第1の接着層との間に設けられる第1の接着層と
、
前記第1の表面又は前記第2の表面に接着される第3の接着層とをさらに含み、
前記第1の重なり部分の面積と、前記第1の粘着膜と前記第1の接着層との間の接着力の積を第1の接着力と定義し、前記第1の粘着膜と前記電極組立体の外面との重なり面積と、両者間の接着力との積を第2の接着力と定義し、前記第1の接着力は第2の接着力未満であ
り、
前記電極組立体の幅方向において、前記第1の粘着膜と前記第3の接着層とは第3の重なり部分を有し、前記第3の重なり部分において、前記第3の接着層は、前記第1の粘着膜と前記第1の表面との間に設けられるか、又は、前記第1の粘着膜と前記第2の表面との間に設けられる、ことを特徴とするセル。
【請求項2】
前記電極組立体の幅方向において、前記第1の重なり部分の幅は1mm以上、且つ15mm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記第1の粘着膜と第1の表面及び/又は前記第2の表面との間の接着力は0.05N/mm以上、前記第1の粘着膜と前記第1の接着層との間の接着力は0.15N/mm以上である、ことを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項4】
前記第2の側面に接着され、前記第2の側面からそれぞれ前記第1の表面及び/又は前記第2の表面まで延在する第2の粘着膜と、
前記第1の表面に接着され、前記第1の表面から前記第1の端面を介して前記第2の表面まで延在する第2の接着層であって、前記電極組立体の幅方向において、前記第2の粘着膜と前記第2の接着層とは、第1の表面及び/又は第2の表面に第2の重なり部分を有し、前記第2の重なり部分において、前記第2の粘着膜は、前記第1の表面及び/又は前記第2の表面と前記第2の接着層との間に設けられる第2の接着層とをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項5】
前記電極組立体の幅方向において、
前記第2の粘着膜と前記第3の接着層とは
前記第3の重なり部分を有し、前記第3の重なり部分において、前記第3の接着層は、
第2の粘着膜と前記第1の表面との間に設けられるか、又は、
第2の粘着膜と前記第2の表面との間に設けられ
る、ことを特徴とする請求項4に記載のセル。
【請求項6】
前記電極組立体の幅方向において、前記第3の重なり部分の幅は1mm以上、且つ15mm以下である、ことを特徴とする請求項5に記載のセル。
【請求項7】
前記第1の粘着膜及び/又は第2の粘着膜と前記第3の接着層との間の接着力は0.15N/mm以上であり、前記第3の接着層と前記第1の表面又は前記第2の表面との間の接着力は0.15N/mm以上である、ことを特徴とする請求項5に記載のセル。
【請求項8】
前記第1の粘着膜と前記電極組立体の外面との重なり面積と、両者間の接着力との積を第2の接着力と定義し、前記第3の重なり部分の面積と、前記第1の粘着膜と前記第3の接着層との間の接着力の積を第3の接着力と定義し、前記第3の接着力は第2の接着力未満である、ことを特徴とする請求項5に記載のセル。
【請求項9】
前記セルは、前記電極組立体にそれぞれ電気的に接続される第1のタブ及び第2のタブをさらに含み、前記第1のタブと前記第2のタブは、間隔をおいて前記第2の端面から突出し、前記第1の粘着膜は、前記第2の表面まで延在し、前記第1のタブに接近し、前記第2の粘着膜は、前記第2の表面まで延在し、前記第2のタブに接近し、前記電極組立体の幅方向において、前記第1の粘着膜は、前記第2の表面に前記第1のタブと部分的に重なり、及び/又は前記第2の粘着膜は、前記第2の表面に前記第2のタブと部分的に重なり、重なり部分の幅は1mm以上、且つ20mm以下である、ことを特徴とする請求項4に記載のセル。
【請求項10】
前記第1の粘着膜及び/又は前記第2の粘着膜は、前記第2の表面に前記第1のタブと前記第2のタブとの間まで延在する、ことを特徴とする請求項9に記載のセル。
【請求項11】
前記電極組立体の幅方向において、前記第1の粘着膜及び/又は前記第2の粘着膜は、前記第1の表面に前記第1のタブと重ならない、ことを特徴とする請求項9に記載のセル。
【請求項12】
前記セルは、封止膜を含み、前記封止膜は、前記電極組立体を収容するための第1の溝及び第2の溝を含み、前記第1の溝の深さは前記第2の溝よりも深く、前記第1の表面は前記第1の溝の底面に対向し、前記第2の表面は前記第2の溝の底面に対向する、ことを特徴とする請求項9に記載のセル。
【請求項13】
ハウジングを含む電池であって、請求項1~12のいずれか1項に記載のセルをさらに含み、前記セルは、前記ハウジング内に設けられる、ことを特徴とする電池。
【請求項14】
電力消費機器であって、請求項13に記載の電池を含む、ことを特徴とする電力消費機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池技術分野に関し、特にセル、電池及び電力消費機器に関する。
【背景技術】
【0002】
セルは、一般に、電極組立体及び封止膜を含む。電極組立体と封止膜の内壁との間には一定の隙間がある。従って、セルが様々な原因で落下する時、電極組立体が封止膜の封止口を突き開いて電解液が漏れてしまう恐れがある。電極組立体の各層の電極シート間が変位するため、セル内が短絡し、さらに、発熱、着火又は爆発を引き起こすことがある。
【0003】
落下性能を改善するために、両面テープやホットメルトなど、電極組立体と封止膜との固定を補強する手段を用いる。該手段は、電極組立体の移動による衝撃を減少させることができ、両面テープ又はホットメルトは、セルの落下中において、一定の緩衝作用を果たすことができる。発明者らは、本願を実現する過程において、従来技術には、少なくとも以下の課題があると発現した。該手段は、セルの落下中において、接着箇所における集電体(例えば、アルミニウム箔)が引き裂かれることが多く、引き裂かれたバリが電極組立体におけるセパレータを突刺すため、電極組立体内部が短絡してしまうことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、落下性能を改善するセル、前記セルを用いる電池及び電力消費機器を提供する必要がある。
【0005】
本願の実施例は、電極組立体を含むセルを提供し、前記電極組立体の外面は、順に接続される第1の表面、第1の側面、第2の表面及び第2の側面を含み、前記第1の表面と前記第2の表面とは、対向して設けられ、前記第1の側面と前記第2の側面とは、対向して設けられ、前記電極組立体の外面は、第1の端面、及び前記第1の端面に対向する第2の端面をさらに含み、前記第1の端面及び前記第2の端面は、それぞれ前記第1の表面及び第2の表面に接続される。前記セルは第1の粘着膜及び第1の接着層をさらに含み、第1の粘着膜は前記第1の側面に接着され、前記第1の側面から前記第1の表面及び/又は前記第2の表面まで延在し、第1の接着層は前記第1の表面に接着され、前記第1の表面から前記第1の端面を介して前記第2の表面まで延在し、前記電極組立体の幅方向において、前記第1の粘着膜と前記第1の接着層とは、第1の表面及び/又は第2の表面に第1の重なり部分を有し、前記第1の重なり部分において、前記第1の粘着膜は、前記第1の表面及び/又は前記第2の表面と前記第1の接着層との間に設けられる。
【0006】
1つの可能な実施形態では、前記電極組立体の幅方向において、前記第1の重なり部分の幅は1mm以上、且つ15mm以下である。
【0007】
1つの可能な実施形態では、前記第1の粘着膜と第1の表面及び/又は前記第2の表面との間の接着力は0.05N/mm以上、前記第1の粘着膜と前記第1の接着層との間の接着力は0.15N/mm以上である。
【0008】
1つの可能な実施形態では、前記第1の重なり部分の面積と、前記第1の粘着膜と前記第1の接着層との間の接着力との積を第1の接着力と定義し、前記第1の粘着膜と前記電極組立体の外面との重なり面積と、両者間の接着力との積を第2の接着力と定義し、前記第1の接着力は第2の接着力未満である。
【0009】
1つの可能な実施形態では、前記セルは、前記第2の側面に接着され、前記第2の側面からそれぞれ前記第1の表面及び/又は前記第2の表面まで延在する第2の粘着膜と、前記第1の表面に接着され、前記第1の表面から前記第1の端面を介して前記第2の表面まで延在する第2の接着層であって、前記電極組立体の幅方向において、前記第2の粘着膜と前記第2の接着層とは、第1の表面及び/又は第2の表面に第2の重なり部分を有し、前記第2の重なり部分において、前記第2の粘着膜は、前記第1の表面及び/又は前記第2の表面と前記第2の接着層との間に設けられる第2の接着層とをさらに含む。
【0010】
1つの可能な実施形態では、前記セルは、前記第1の表面又は前記第2の表面に接着される第3の接着層であって、前記電極組立体の幅方向において、前記第1の粘着膜及び/又は前記第2の粘着膜と前記第3の接着層とは第3の重なり部分を有し、前記第3の重なり部分において、前記第3の接着層は、前記第1の粘着膜及び/又は第2の粘着膜と前記第1の表面との間に設けられるか、又は、前記第1の粘着膜及び/又は第2の粘着膜と前記第2の表面との間に設けられる第3の接着層をさらに含む。
【0011】
1つの可能な実施形態では、前記電極組立体の幅方向において、前記第3の重なり部分の幅は1mm以上、且つ15mm以下である。
【0012】
1つの可能な実施形態では、前記第1の粘着膜及び/又は第2の粘着膜と前記第3の接着層との間の接着力は0.15N/mm以上であり、前記第3の接着層と前記第1の表面又は前記第2の表面との間の接着力は0.15N/mm以上である。
【0013】
1つの可能な実施形態では、前記第1の粘着膜と前記電極組立体の外面との重なり面積と、両者間の接着力との積を第2の接着力と定義し、前記第3の重なり部分の面積と、前記第1の粘着膜と前記第3の接着層との間の接着力との積を第3の接着力と定義し、前記第3の接着力は第2の接着力未満である。
【0014】
1つの可能な実施形態では、前記セルは、前記電極組立体にそれぞれ電気的に接続される第1のタブ及び第2のタブをさらに含み、前記第1のタブと前記第2のタブは、間隔をおいて前記第2の端面から突出し、前記第1の粘着膜は前記第2の表面まで延在し、前記第1のタブに接近し、前記第2の粘着膜は、前記第2の表面まで延在し、前記第2のタブに接近し、前記電極組立体の幅方向において、前記第1の粘着膜は前記第2の表面に前記第1のタブと部分的に重なり、及び/又は前記第2の粘着膜は前記第2の表面に前記第2のタブと部分的に重なり、重なり部分の幅は1mm以上、且つ20mm以下である。
【0015】
1つの可能な実施形態では、前記第1の粘着膜及び/又は前記第2の粘着膜は前記第2の表面に前記第1のタブと前記第2のタブとの間まで延在する。
【0016】
1つの可能な実施形態では、前記電極組立体の幅方向において、前記第1の粘着膜及び/又は前記第2の粘着膜は前記第1の表面に前記第1のタブと重ならない。
【0017】
1つの可能な実施形態では、前記セルは、封止膜を含み、前記封止膜は、前記電極組立体を収容するための第1の溝及び第2の溝を含み、前記第1の溝の深さは前記第2の溝よりも深く、前記第1の表面は前記第1の溝の底面に対向し、前記第2の表面は前記第2の溝の底面に対向する。
【0018】
本願の別の実施例は、ハウジングを含む電池をさらに提供し、前記電池は、上記のいずれかのセルをさらに含み、前記セルは、前記ハウジング内に設けられる。
【0019】
本願の別の実施例は、上記のいずれかの電池を含む電力消費機器をさらに提供する。
【発明の効果】
【0020】
本願の実施例に係るセル、電池及び電力消費機器では、セルは、第1の重なり部分によって、セルが落下する時、第1の接着層に作用した一部の力を第1の粘着膜に移行し、それにより、電極組立体における電極シートによる第1の接着層に対する衝撃力を緩和し、接着箇所における電極組立体が引き裂かれるためセルが短絡するのを回避し、セルの落下性能をさらに効果的に改善する。第1の粘着膜の引き裂き抵抗能力は、電極組立体における電極シートよりも優れており、それにより、さらに電極組立体における電極シートが引き裂かれるリスクをさらに低減し、セルの安全性能を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願の一実施例におけるセルの正面構造の模式図である。
【
図2】本願の一実施例におけるセルの裏面構造の模式図である。
【
図3】本願の一実施例におけるセルの側面構造の模式図である。
【
図4】本願の一実施例におけるセルの側面構造の模式図である。
【
図5】本願の一実施例におけるセルの正面構造の模式図である。
【
図6】本願の一実施例におけるセルの側面構造の模式図である。
【
図7】本願の一実施例におけるセルの裏面構造の模式図である。
【
図8】本願の一実施例におけるセルの裏面構造の模式図である。
【
図9】本願の一実施例におけるセルの裏面構造の模式図である。
【
図10】本願の一実施例における封止膜の構造模式図である。
【
図11】本願の一実施例におけるセルの断面構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願の実施形態の図面と併せて、本願の実施形態における技術的解決手段を説明するが、説明された実施形態は、全ての実施形態ではなく、本願の一部の実施形態にすぎないことは明らかである。
【0023】
なお、あるコンポーネントが別のコンポーネントに「接続」されると考えられる場合、別のコンポーネントに直接接続されるか又はセンタリングコンポーネントも存在する可能性がある。1つのコンポーネントが別のコンポーネントに「設けられる」と考えられる場合、直接別のコンポーネントに設けられてもよいし、センタリングコンポーネントも存在してもよい。本明細書で使用される用語「トップ」、「ボトム」、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、および同様の表現は、説明の目的のためにのみ使用される。
【0024】
特に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は当業者が通常理解する意味と同じである。本出願の本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであって、本明細書を限定することを意図するものではない。
【0025】
本願の実施例は、電極組立体を含むセルを提供し、電極組立体の外面は、順に接続される第1の表面、第1の側面、第2の表面及び第2の側面を含み、第1の表面と第2の表面とは、対向して設けられ、第1の側面と第2の側面とは、対向して設けられ、電極組立体の外面は、第1の端面、及び第1の端面に対向する第2の端面をさらに含み、第1の端面及び第2の端面は、それぞれ第1の表面及び第2の表面に接続される。セルは、第1の粘着膜及び第1の接着層をさらに含み、第1の粘着膜は第1の側面に接着され、第1の側面から第1の表面及び/又は第2の表面まで延在する。第1の接着層は第1の表面に接着され、第1の表面は第1の端面を介して第2の表面まで延在し、電極組立体の幅方向において、第1の粘着膜と第1の接着層とは、第1の表面及び/又は第2の表面に第1の重なり部分を有し、第1の重なり部分において、第1の粘着膜は、第1の表面及び/又は第2の表面と第1の接着層との間に設けられる。
【0026】
本願の実施例に係るセルでは、第1の重なり部分によって、セルが落下する時、第1の接着層に作用した一部の力を第1の粘着膜に移行することにより、電極組立体における電極シートによる第1の接着層に対する衝撃力を緩和し、接着箇所における電極組立体が引き裂かれるため、セルが短絡するのを回避し、さらにセルの落下性能を効果的に改善する。第1の粘着膜の引き裂き抵抗能力は、電極組立体における電極シートよりも優れており、それにより、電極組立体における電極シートが引き裂かれるリスクをさらに低減し、セルの安全性能を向上させる。
【0027】
以下、図面に関連して、いくつかの実施形態について詳細に説明する。衝突しない場合には、下記の実施例と実施例の特徴とを組み合わせてもよい。
【0028】
図1、
図2及び
図3を併せて参照すると、本実施例セル100は、電極組立体10、第1の粘着膜20及び第1の接着層30を含む。
【0029】
電極組立体10の外面は、順に接続される第1の表面11、第1の側面13、第2の表面12及び第2の側面14を含む。第1の表面11と第2の表面12とは、対向して設けられ、第1の側面13と第2の側面14とは、対向して設けられる。電極組立体10の外面は、第1の端面15、及び第1の端面15に対向する第2の端面16をさらに含み、第1の端面15及び第2の端面16は、それぞれ第1の表面11及び第2の表面12に接続される。
【0030】
第1の粘着膜20は第1の側面13に接着され、第1の側面13から第1の表面11及び/又は第2の表面12まで延在する。第1の粘着膜20の電極組立体10から離れる面は、粘性を持たない。例えば、第1の粘着膜20は、片面テープであってもよく、該片面テープは、積層して設けられる絶縁層及び接着層を含み、絶縁層は、電極組立体10の表面を絶縁するために用いられ、接着層は、電極組立体10に接着される。第1の粘着膜20は、グリーンテープ又は高粘性グリーンテープであってもよいがこれらに限られない。
【0031】
第1の接着層30は第1の表面11に接着され、第1の表面11から第1の端面15を介して第2の表面12まで延在し、接着部位における電極組立体10を保護するために用いられる。電極組立体10の幅方向Aにおいて、第1の粘着膜20と第1の接着層30とは、第1の表面11及び/又は第2の表面12に第1の重なり部分30aを有し、第1の重なり部分30aでは、第1の粘着膜20は、第1の表面11及び/又は第2の表面12と第1の接着層30との間に設けられる。第1の重なり部分30aによって、セル100が落下する時、第1の接着層30に作用した一部の力を第1の粘着膜20に移行し、それにより、電極組立体10における電極シートによる第1の接着層30に対する衝撃力を緩和し、接着箇所における電極組立体10が引き裂かれるため、セル100が短絡するのを回避し、セル100の落下性能をさらに効果的に改善する。第1の粘着膜20の引き裂き抵抗能力は、電極組立体10における電極シートよりも優れており、それにより、電極組立体10における電極シートが引き裂かれるリスクをさらに低減し、セル100の安全性能を向上させる。
【0032】
第1の重なり部分30aの面積と、第1の粘着膜20と第1の接着層30との間の接着力との積を第1の接着力と定義し、第1の粘着膜20と電極組立体10の外面との重なり面積と、両者間の接着力との積を第2の接着力と定義する。第1の接着力は第2の接着力未満であることによって、第1の粘着膜20が大きすぎる力を受けて破断されるため、接着箇所における電極組立体10が引き裂かれるのを防止する
【0033】
いくつかの実施例では、電極組立体10の幅方向Aにおいて、第1の重なり部分30aの幅は1mm以上、且つ15mm以下である。第1の粘着膜20と第1の表面11及び/又は第2の表面12との間の接着力は0.05N/mm以上である。第1の粘着膜20と第1の接着層30との間の接着力は0.15N/mm以上である。第1の接着力が第2の接着力未満であることを満たすために、第1の重なり部分30aの幅、第1の粘着膜20と第1の表面11及び/又は第2の表面12との間の接着力、及び第1の粘着膜20と第1の接着層30との間の接着力が電極組立体10のサイズに応じて調整できることが理解され得る。
【0034】
引き続き
図1、
図2及び
図4を参照すると、いくつかの実施例では、セル100は、第2の粘着膜21及び第2の接着層31をさらに含む。第2の粘着膜21は、第2の側面14に接着され、第2の側面14から第1の表面11及び/又は第2の表面12までそれぞれ延在する。第2の接着層31は第1の表面11に接着され、第1の表面11及び第1の端面から第2の表面12まで延在する。電極組立体10の幅方向Aにおいて、第2の粘着膜21と第2の接着層31とは、第1の表面11及び/又は第2の表面12に第2の重なり部分31aを有し、第2の重なり部分において、第2の粘着膜21は、第1の表面11及び/又は第2の表面12と第2の接着層31との間に設けられる。
【0035】
第2の重なり部分31aによって、セル100が落下する時、第2の接着層31に作用した一部の力を第2の粘着膜21に移行し、それにより、電極組立体10における電極シートによる第2の接着層31に対する衝撃力を緩和し、接着箇所における電極組立体10が引き裂かれるためセル100が短絡するのを回避し、セル100の落下性能を効果的に改善する。第2の粘着膜21の引き裂き抵抗能力は、電極組立体10における電極シートよりも優れており、それにより、電極組立体10における電極シートが引き裂かれるリスクをさらに低減し、セル100の安全性能を向上させる。
【0036】
いくつかの実施例では、第2の接着層31と第1の接着層30とは、対称的に設けられ、それにより、第2の接着層31及び第1の接着層30は、電極組立体10における電極シートが衝撃する時、受ける力を均一にする。第2の粘着膜21と第1の粘着膜20とは、対称的に設けられ、それにより、第1の重なり部分30aと第2の重なり部分31aが対応する第1の粘着膜20及び第2の粘着膜21に印加する張力をほぼ同じにし、さらに、第1の粘着膜20及び第2の粘着膜21の応力ムラにより引き起こされる、一側の接着箇所における電極組立体10が引き裂かれるのを回避する。
【0037】
上記セル100では、電極組立体10の幅方向Aにおいて、第1の粘着膜20及び第2の粘着膜21の幅は5mm以上、100mm以下であり、電極組立体10の長さ方向Bにおいて、第1の粘着膜20及び第2の粘着膜21の長さは5mm以上、100mm以下である。
【0038】
再び
図1、
図3及び
図4を参照すると、いくつかの実施例では、セル100は、第1の表面11又は第2の表面12に接着される第3の接着層40をさらに含む。第3の接着層40の電極組立体10に向く表面、及び電極組立体10から離れる表面は、いずれも粘着性を有し、電極組立体10と、電極組立体10を収容する封止膜とを接続するとき、電極組立体10を封止膜の内壁に接着することで、セル100の落下中に、電極組立体10が封止膜の封止口を突き開いて電解液が漏れるのを防止し、セル100の落下性能をさらに効果的に改善する。例えば、第3の接着層40は両面テープであってもよい。該両面テープは、通常のゴム類、ホットメルト類のグルー又はテープなど、両面粘性を有する物質であってもよいがこれらに限られず、該両面テープは、単一の重合体又は重合体混合体であってもよいがこれらに限られない。
【0039】
電極組立体10の幅方向Aにおいて、第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21と第3の接着層40とは第3の重なり部分40aを有し、第3の重なり部分40aでは、第3の接着層40は、第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21と第1の表面11との間に設けられるか、又は、第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21と第2の表面12との間に設けられる。
【0040】
第3の重なり部分40aによって、セル100の落下中において、封止膜に接着された第3の接着層40に作用した一部の力を第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21に移行し、それにより、第3の接着層40と電極組立体10との間の引張力を低減させる。第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21の引き裂き抵抗能力は、電極組立体10における電極シートよりも優れており、それにより、電極組立体10における電極シートが引き裂かれるリスクをさらに低減し、セルの安全性能を向上させる。第3の重なり部分40aは、第3の接着層40と第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21との間に隙間があるのを回避し、さらに、セル100の落下中において、間隙部分の応力が集中するため、隙間での電極組立体10が引き裂かれるのを防止する
【0041】
第1の粘着膜20及び第2の粘着膜21と第3の接着層40とが第3の重なり部分40aを有する場合、第3の重なり部分40aは、第3の接着層40の両側に位置する第1の部分及び第2の部分を含む。該第1の部分と該第2の部分とは、対称的に設けられ、それにより、第3の接着層40が対応する第1の粘着膜20及び第2の粘着膜21に印加する張力をほぼ同じにし、第1の粘着膜20及び第2の粘着膜21の応力ムラにより引き起こされる、一側の接着箇所における電極組立体10が引き裂かれるのをさらに回避する。
【0042】
いくつかの実施例では、第1の粘着膜20と電極組立体10の外面との重なり面積と、両者間の接着力との積を第2の接着力と定義し、第3の重なり部分40aの面積と、第1の粘着膜20と第3の接着層40との間の接着力との積を第3の接着力と定義する。第3の接着力は第2の接着力未満であることによって、第1の粘着膜20が大きすぎる力を受けて破断を起こし、接着箇所における電極組立体10が引き裂かれることを防止する。同様に、第3の接着力も第2の粘着膜21と電極組立体10の外面との重なり面積と、両者間の接着力との積未満である。
【0043】
いくつかの実施例では、電極組立体10の幅方向Aにおいて、第3の重なり部分40aの幅は1mm以上、且つ15mm以下である。第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21と第3の接着層40との間の接着力は0.15N/mm以上、第3の接着層40と第1の表面又は第2の表面12との間の接着力は0.15N/mm以上である。第3の接着力が第2の接着力未満であることを満たすために、第3の重なり部分40aの幅、第1の粘着膜20と第1の表面11及び/又は第2の表面12との間の接着力、及び第1の粘着膜20と第1の接着層30との間の接着力が電極組立体10のサイズに応じて調整できることが理解され得る。
【0044】
図5及び
図6を参照すると、いくつかの実施例では、電極組立体10の長さ方向Bにおいて、第1の接着層30及び/又は第2の接着層31と第3の接着層40とは第4の重なり部分40bを有し、第4の重なり部分40bでは、第3の接着層40は、第1の接着層30及び/又は第2の接着層31と第1の表面11との間に設けられるか、又は、第1の接着層30及び/又は第2の接着層31と第2の表面12との間に設けられる。
【0045】
第4の重なり部分40bによって、第1の粘着膜20、第2の粘着膜21、第1の接着層30、第2の接着層31、及び第3の接着層40を互いに接続して一体保護構造を形成する。第3の接着層40によって、電極組立体10を封止膜の内壁に接着して一体構造を形成することによって、セル100の落下中において、電極組立体10が封止膜の封止口を突き開いて電解液が漏れるのを防止し、電極組立体10における電極シートが引き裂かれるのを防止し、セル100の落下性能を効果的に改善する。
【0046】
いくつかの実施例では、電極組立体10の長さ方向Bにおいて、第4の重なり部分40bの長さは1mm以上、且つ15mm以下である。
【0047】
上記セル100では、電極組立体10の幅方向Aにおいて、第3の接着層40の幅は5mm以上、100mm以下であり、電極組立体10の長さ方向Bにおいて、第3の接着層40の長さは5mm以上、100mm以下であり、電極組立体10の厚さ方向において、第3の接着層40の厚さは1um以上、且つ100um以下である。
【0048】
いくつかの実施例では、第3の接着層40は、長方形、正方形又は異形等の一体形状である。第3の接着層40は、分割型形状であることが理解される。
【0049】
図7を参照すると、セル100は、電極組立体10にそれぞれ電気的に接続される第1のタブ17及び第2のタブ18をさらに含む。第1のタブ17と第2のタブ18は、間隔をおいて第2の端面16から突出し、第1の粘着膜20は、第2の表面12まで延在し、第1のタブ17に接近する。第2の粘着膜21は、第2の表面12まで延在し、第2のタブ18に接近する。電極組立体10の幅方向Aにおいて、第1の粘着膜20は、第2の表面12に第1のタブ17と部分的に重なり、及び/又は第2の粘着膜21は、第2の表面12に第2のタブ18と部分的に重なり、重なり部分の幅は1mm以上、且つ20mm以下である。第1の粘着膜20と第1のタブ17とが部分的に重なり、及び/又は第2の粘着膜21と第2のタブ18とが部分的に重なることによって、第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21と電極組立体10の外面との接着強度を効果的に向上させ、電極組立体10における電極シートが引き裂かれるリスクをさらに低減する。
【0050】
図8を参照すると、いくつかの実施例では、第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21は、第2の表面12に第1のタブ17と第2のタブ18との間まで延在し、それにより、第1の粘着膜20と第1のタブ17との重なり面積、及び/又は第2の粘着膜21と第2のタブ18との重なり面積をさらに増加させ、第1の粘着膜20及び/又は第2の粘着膜21と電極組立体10の外面との接着強度をさらに効果的に向上させ、電極組立体10における電極シートが引き裂かれるリスクをさらに低減する。
【0051】
図9を参照すると、いくつかの実施例では、電極組立体10の幅方向Aにおいて、第1の粘着膜20は第1の表面11に第1のタブ17と重ならず、及び/又は第2の粘着膜21は第1の表面11に第2のタブ18と重ならないことによって、第1のタブ17と第2のタブ18との間の領域に対応する電極組立体10の厚さを減少させ、セル100のエネルギー密度を効果的に向上させる。
【0052】
図10を参照すると、セル100は、封止膜50を含み、封止膜50は、電極組立体10を収容するための第1の溝51及び第2の溝52を含み、第1の溝51の深さは第2の溝52よりも深く、第1の表面11は第1の溝51の底面に対向し、第2の表面12は第2の溝52の底面に対向する。第1の表面11は、電極組立体10の先端及び末端が位置する表面であり、第3の接着層40は、第1の表面11及び第1の溝51の底面にそれぞれ接着される。
【0053】
図11を参照すると、特定のいくつかの実施例では、第2の表面12の最外層は、巻き付けられた1層のアルミニウム箔及び2層のセパレータであり、巻き付けられた1層のアルミニウム箔及び2層のセパレータは、巻き付け方向に沿って、対応する第1の側面13又は第2の側面14まで延在する。従来の第1の表面及び第2の表面に多層のアルミニウム箔及び多層のセパレータが巻き付けられる形態に比べて、電極組立体10の厚さを減少させ、セル100のエネルギー密度を効果的に向上させる。
【0054】
本願の実施例は、ハウジング及びハウジング内に設けられるセル100を含む電池をさらに提供し、セルは、上記のいずれかのセルであってもよい。いくつかの実施の形態では、電池は、回路保護板をさらに含み、回路保護板は、セル100の電圧、電流、絶縁状態及び荷電状態等を監視し、電池の充放電過程を安全管理し、発生する可能性のある故障に対して警報および緊急保護処理を行い、電池の運転を安全かつ最適化に制御する。
【0055】
本願の実施例は、上記のいずれかの電池を含む電力消費機器をさらに提供する。
【0056】
また、当業者は、以上の実施例は、本願の限定としてではなく、本願の実質的精神範囲内において、以上の実施例に対する適切な変更及び変更が本願の開示の範囲内にある限り、本願を説明するために用いられるものであることを認識すべきである。
【符号の説明】
【0057】
セル 100
電極組立体 10
第1の表面 11
第2の表面 12
第1の側面 13
第2の側面 14
第1の端面 15
第2の端面 16
第1のタブ 17
第2のタブ 18
第1の粘着膜 20
第2の粘着膜 21
第1の接着層 30
第1の重なり部分 30a
第2の接着層 31
第2の重なり部分 31a
第3の接着層 40
第3の重なり部分 40a
第4の重なり部分 40b
封止膜 50
第1の溝 51
第2の溝 52