(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】コンクリートポンプ車用スペクタクルプレート、その調製方法およびコンクリートポンプ車
(51)【国際特許分類】
F04B 15/02 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
F04B15/02 G
(21)【出願番号】P 2022526498
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2021137795
(87)【国際公開番号】W WO2022199141
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】202111325943.8
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521560414
【氏名又は名称】ジエンスー エックスシーエムジー コンストラクション マシーナリー リサーチ インスティチュート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,ハイシャー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ボー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シーピン
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113458331(CN,A)
【文献】特開平06-101633(JP,A)
【文献】米国特許第05180294(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02436927(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第102518585(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの貫通孔(31)と、リッジ部(32)と二つの円弧部(33)
を有する分割構造体と、を備えた基材(3)であって、前記リッジ部(32)は前記二つの貫通孔(31)の間に設けられ、
前記二つの円弧部(33)の一方は前記二つの貫通孔(31)の一方に隣接し、前記二つの円弧部(33)の他方は前記二つの貫通孔(31)の他方に隣接しており、前記二つの円弧部(33)と前記リッジ部(32)とは、前記二つの貫通孔(31)を形成する、基材(3)と、
複数の第一部(11)と、
単一の第二部(12)と、を備えた第一耐摩耗体(1)
と、 二つの第二耐摩耗体(2)と、を備え、
前記第一部(11)と前記第二耐摩耗体(2)とが前記
二つの貫通孔(31)の内壁全体を形成し、
前記二つの貫通孔(31)
の内壁の一部は、それぞれ、前記複数の第一部(11)のうちの一つの第一部(11)
によって形成され、前記複数の第一部(11)は前記リッジ部(32)
の内壁に接続され、前記第二部(12)は、前記リッジ部(32)の表面上に配置され、前記二つの貫通孔(31)の間に位置
し、
前記二つの貫通孔(31)
の内壁の残りの部分は、それぞれ、前記二つの第二耐摩耗体(2)のうちの一つの第二耐摩耗体(2)
によって形成され、前記二つの第二耐摩耗体(2)は、前記二つの円弧部(33)にそれぞれ接続さ
れ、
前記第一耐摩耗体(1)の耐摩耗性は前記第二耐摩耗体(2)の耐摩耗性よりも大きく、前記第二耐摩耗体(2)の耐摩耗性は前記基材(3)の耐摩耗性よりも大きい、
コンクリートポンプ車用スペクタクルプレート。
【請求項2】
前記第二耐摩耗体(2)は第三部(21)と第四部(22)とを備え、前記第三部(21)は前記貫通孔(31)内に配置され、
前記第三部(21)は前記円弧部(33)の内壁に接続され、前記第四部(22)は前記第三部(21)に接続され、前記貫通孔(31)の外に突出する、請求項1に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレート。
【請求項3】
前記第四部(22)は前記第三部(21)の半径方向寸法よりも大きい半径方向寸法を有する、請求項2に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレート。
【請求項4】
前記第一耐摩耗体(1)の材料組成は、ジルコニア、アルミナおよび炭化ケイ素のうち少なくとも二つと炭化タングステンとを含み、前記第二耐摩耗体(2)の材料組成は、ジルコニア、アルミナおよび炭化ケイ素のうち少なくとも二つを含み、前記基材(3)の材料組成は鋳鋼を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレート。
【請求項5】
前記第一耐摩耗体(1)を調製するために、炭化タングステン粉末、鉄粉末を、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つと混合するステップと、
前記第二耐摩耗体(2)を調製するために、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つを鉄粉末と混合するステップと、
前記第一耐摩耗体(1)および前記二つの第二耐摩耗体(2)を鋳型に入れ、前記基材(3)を形成するために鋳鋼溶湯を注ぎ、前記スペクタクルプレートを形成するために前記基材(3)を前記第一耐摩耗体(1)および前記二つの第二耐摩耗体(2)と結合するステップと
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法。
【請求項6】
前記ジルコニア粉末、前記アルミナ粉末および前記炭化ケイ素粉末の粒径は、0.02mm~0.1mmの範囲である、請求項5に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法。
【請求項7】
前記炭化タングステン粉末の粒径は、5μm~10μmの範囲である、請求項5または6に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法。
【請求項8】
前記ジルコニア粉末、前記アルミナ粉末および前記炭化ケイ素のうちの少なくとも二つの組み合わせの前記鉄粉末に対する質量比は、1:1~3:1の範囲である、請求項5~7のいずれか一項に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法。
【請求項9】
前記ジルコニア粉末、前記アルミナ粉末および前記炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つの組み合わせに対する前記炭化タングステン粉末の質量比は、20%未満である、請求項5~8のいずれか一項に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法。
【請求項10】
前記炭化タングステン粉末と、前記鉄粉末と、前記ジルコニア粉末、前記アルミナ粉末および前記炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つと、が混合されて炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後に温度が第一プリセット期間維持され、その後、前記第一耐摩耗体(1)を得るために冷却が行われる、請求項5~9のいずれか一項に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法。
【請求項11】
前記鉄粉末と、前記ジルコニア粉末、前記アルミナ粉末および前記炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つと、が混合されて炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後に温度が第二プリセット期間維持され、その後、前記第二耐摩耗体を(2)得るために冷却が行われる、請求項5~10のいずれか一項に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法。
【請求項12】
前記鋳鋼溶湯を形成するために鋳鋼が1500℃~1550℃に加熱され、前記基材(3)を形成するために前記鋳鋼溶湯が1480℃~1520℃で前記鋳型に注ぎ込まれる、請求項5~11のいずれか一項に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか一項に記載のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートを備えたコンクリートポンプ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2021年11月10日に出願された中国特許出願第202111325943.8号に基づきその優先権を主張し、その開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、エンジニアリング機械の分野に関し、特にコンクリートポンプ車用スペクタクルプレート、その調製方法およびコンクリートポンプ車に関する。
【背景技術】
【0003】
スペクタクルプレートは、コンクリートポンプ車の摩耗部品である。ポンピング中には、スペクタクルプレートおよびカッティングリングが交互に往復して移動して相対的カッティング運動を行い、材料の吸引および供給を実現する。スペクタクルプレートは、良好な耐摩耗性を有する必要があるだけでなく、ある耐衝撃性および耐疲労性も有する必要がある。
【0004】
いくつかの関連技術において、スペクタクルプレートは、粗鋼基材中に超硬合金をはめ込むことによって調製される。スペクタクルプレートは、シングル合金+内孔サーフェーシング構造体、デュアル合金+内孔サーフェーシング構造体、全合金構造体などのものであり得、これにより全体の耐衝撃性を確保しながらスペクタクルプレートのカット表面および材料通過表面を耐摩耗性とし、部品の耐用年数を延ばすことができる。
【0005】
超硬合金と粗鋼基材とはろう付けにより接合されうる。しかし、シングル合金でもデュアル合金でも全合金でも、粗鋼基材は銅ろう付けによって超硬合金と接合され、このようにして調製されるスペクタクルプレートには以下の問題がある。(1)長期間の使用においては、粗鋼基材および銅ろう付けギャップの耐摩耗性が低く、摩耗後に超硬合金部が露出し、コンクリート石の衝撃摩耗に起因するひび割れを起こして、非耐摩耗性の粗鋼基材がコンクリートと直接接触しやすく、それにより搬送中のスラリー漏れ、およびスペクタクルプレートのさらに深刻な摩耗、ひいては早期故障がもたらされ、その結果部品交換のためのシャットダウンが必要となり、建設の進行に影響する。(2)生産および加工の観点から、合金はめ込み構造体のスペクタクルプレートを生産するには、粗鋼ブランキング、合金溝切り、合金型枠調製、ろう付け、サーフェーシング、合金表面研削、穴あけ、検査、塗料吹付等を含む多数の生産手順がある。(3)超硬合金の購入コストは高く、一般にスペクタクルプレート全体の価格の60%~80%を占め、その結果スペクタクルプレート全体の部品のコストが高くなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、
二つの貫通孔と、リッジ部と、二つの円弧部とを含む基材であって、リッジ部は二つの貫通孔の間に配置され、二つの円弧部とリッジ部とは、二つの貫通孔を形成する、基材と、
複数の第一部と第二部とを含む第一耐摩耗体であって、二つの貫通孔は、それぞれ、複数の第一部のうちの一つの第一部を備え、第一部はリッジ部に接続され、第二部は、リッジ部の表面上に配置され、二つの貫通孔の間に位置する、第一耐摩耗体と、
二つの第二耐摩耗体であって、二つの貫通孔は、それぞれ、二つの第二耐摩耗体のうちの一つの第二耐摩耗体を備え、二つの第二耐摩耗体は、二つの円弧部にそれぞれ接続される、第二耐摩耗体と
を含み、
第一耐摩耗体の耐摩耗性は第二耐摩耗体の耐摩耗性よりも大きく、第二耐摩耗体の耐摩耗性は基材の耐摩耗性よりも大きい、
コンクリートポンプ車用スペクタクルプレートが提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、第二耐摩耗体は第三部と第四部とを含み、第三部は貫通孔内に配置され、第四部は第三部に接続され、貫通孔の外に突出する。
【0008】
いくつかの実施形態では、第四部は第三部の半径方向寸法よりも大きい半径方向寸法を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、二つの貫通孔の各々の第一部と第二耐摩耗体とが貫通孔の内壁全体を形成する。
【0010】
いくつかの実施形態では、第一耐摩耗体の材料組成は、ジルコニア、アルミナおよび炭化ケイ素のうち少なくとも二つと、炭化タングステンと、を含み、第二耐摩耗体の材料組成は、ジルコニア、アルミナおよび炭化ケイ素のうち少なくとも二つを含み、基材の材料組成は鋳鋼を含む。
【0011】
本開示の別の態様では、以下のステップ:
第一耐摩耗体を調製するために、炭化タングステン粉末、鉄粉末と、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つと、を混合するステップと、
第二耐摩耗体を調製するために、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つを鉄粉末と混合するステップと、
第一耐摩耗体および二つの第二耐摩耗体を鋳型に入れ、基材を形成するために鋳鋼溶湯を注ぎ、スペクタクルプレートを形成するために基材を第一耐摩耗体および二つの第二耐摩耗体と結合するステップと
を含むコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末の粒径は、0.02mm~0.1mmの範囲である。
【0013】
いくつかの実施形態では、炭化タングステン粉末の粒径は、5μm~10μmの範囲である。
【0014】
いくつかの実施形態では、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素のうちの少なくとも二つの組み合わせの鉄粉末に対する質量比は、1:1~3:1の範囲である。
【0015】
いくつかの実施形態では、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つの組み合わせに対する炭化タングステン粉末の質量比は、20%未満である。
【0016】
いくつかの実施形態では、炭化タングステン粉末、鉄粉末と、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つと、が混合されて炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後に温度が第一プリセット期間維持され、その後、第一耐摩耗体を得るために冷却が行われる。
【0017】
いくつかの実施形態では、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つが鉄粉末と混合されて炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後に温度が第二プリセット期間維持され、その後、第二耐摩耗体を得るために冷却が行われる。
【0018】
いくつかの実施形態では、鋳鋼溶湯を形成するために鋳鋼が1500℃~1550℃に加熱され、基材を形成するために鋳鋼溶湯が1480℃~1520℃で鋳型に注ぎ込まれる。
【0019】
本開示の別の態様では、コンクリートポンプ車用スペクタクルプレートを含むコンクリートポンプ車が提供される。
【0020】
上述の技術的スキームに基づいて、本開示は少なくとも以下の有益な効果がある。
【0021】
いくつかの実施形態では、スペクタクルプレートのリッジ部の表面およびリッジ部に接続された貫通孔の内壁は、スペクタクルプレートがカッティングリングと協働する作業表面であり、これらはより摩耗しやすいため、リッジ部の表面および貫通孔の内壁のリッジ部に接続される部分には第一耐摩耗体が設けられ、貫通孔の内壁の他方の部分には第二耐摩耗体が設けられる。すなわちスペクタクルプレートがカッティングリングと協働するカット表面に、および材料通過孔に耐摩耗体が加えられ、それによりスペクタクルプレートの耐摩耗性が改善する。加えて、耐摩耗体の耐摩耗性および耐衝撃性を改善するために、リッジ部の耐摩耗体にプリセット量のタングステンが加えられる。
【0022】
ここに説明される図面は、本開示のさらなる理解を提供するために使用され、本出願の一部を構成する。本開示の例示的な実施形態およびその説明は、本開示を説明するために使用され、本開示に対する不適切な制限を構成するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態によるコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面に示す様々な部分の寸法は、実際の比例関係に従って描かれていないことが理解されねばならない。加えて、同一または類似の参照番号は、同一または類似の構成要素を指す。
【0025】
次に、本開示の様々な例示的な実施形態が、添付の図面を参照して詳細に説明される。
例示的な実施形態の説明は例示に過ぎず、本開示、その応用または使用に対するいかなる制限としても解釈されてはならない。本開示は、多数の異なる形態で実施することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されない。これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全であり、本開示の範囲が当業者に完全に伝わるように提供される。なお、別段の断りのない限り、これらの実施形態に記載された部分およびステップの相対的配置、材料の組成、数式および数値は、限定としてではなく例示としてのみ解釈されねばならない。
【0026】
本開示で使用される「第一」および「第二」のような語は、いかなる順序、量または重要性も示さず、異なる部分を区別するために使用されるにすぎない。「備える」および「含む」などの語は、語の前の要素が語の後に列挙された要素をカバーすることを意味し、他の要素をカバーする可能性は排除されない。「上」、「下」、「左」および「右」は、相対的位置関係を示すために使用されるにすぎない。記載された目的物の絶対位置が変化すると、それに応じて相対的位置関係も変化しうる。
【0027】
本開示において、特定のデバイスが第一デバイスと第二デバイスとの間に位置すると記載されるときには、その特定のデバイスと第一デバイスまたは第二デバイスとの間に介在するデバイスがあってもなくてもよい。特定のデバイスが他のデバイスに接続されていると記載されるときには、その特定のデバイスは、デバイスを介在させずに他のデバイスに直接接続されてもよいし、他のデバイスに直接接続されず、デバイスを介在させてもよい。
【0028】
本開示で使用される全ての用語(専門用語および科学用語を含む)は、特に別の定義がされない限り、本開示が属する技術の当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。また、例えば一般辞書に定義された用語は、関連技術の文脈でのそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されねばならず、ここで明示的にそのように定義されない限り、理想的または極めて形式的な意味で解釈されてはならないことも理解されねばならない。
【0029】
関連分野の通常の者に知られる技術、方法および設備は詳細には論じられないかもしれないが、適切な場合には、それらは本明細書の一部とみなされねばならない。
【0030】
摩耗プレートとも呼ばれるスペクタクルプレートは、コンクリートポンプの重要な部品である。メガネのような形状のため、スペクタクルプレートと呼称される。
【0031】
コンクリートポンプおよびポンプ車等のコンクリートポンプ機械では、スペクタクルプレートおよびカッティングリングはコンクリートポンピングシステムの重要な部品である。カッティングリングはS字型スイングパイプに接続される。スイングシリンダによって駆動されるS字型スイングパイプおよびカッティングリングは、片側のコンクリートシリンダポートから他方の側のコンクリートシリンダポートにスイングし、スペクタクルプレートはコンクリートホッパに固定され、その二つの貫通孔が片側のコンクリートシリンダポートおよび他方の側のコンクリートシリンダポートとそれぞれ連通する。このようにして、スイングシリンダがS字型スイングパイプおよびカッティングリングを駆動して移動させると、スペクタクルプレートおよびカッティングリングがスイッチング摩擦対を形成する。S字型スイングパイプおよびカッティングリングの急激なスイングにより、スペクタクルプレートとコンクリートとの間に摩擦が生成され、スペクタクルプレートはスイッチングの間に研磨粒子の衝撃力も受ける。したがって、スペクタクルプレートおよびカッティングリングは、動作中に衝撃力、せん断力および摩擦力を同時に受ける。
【0032】
スペクタクルプレートについては、摩滅衝撃およびカッティング摩耗に起因して、スペクタクルプレートのリッジ部32が通常は最初に摩耗して故障する。いくつかの関連技術では、スペクタクルプレートのリッジ部32は合金で補強されるが、それでもスペクタクルプレートの弱い部分である。
【0033】
これに基づいて、本開示のいくつかの実施形態は、スペクタクルプレートが摩耗しやすいという問題を解決するために、コンクリートポンプ車用スペクタクルプレート、その調製方法およびコンクリートポンプ車を提供する。
【0034】
図1および2に示すように、いくつかの実施形態は、基材3と、第一耐摩耗体1と二つの第二耐摩耗体2とを含むコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートを提供する。
【0035】
基材3は、二つの貫通孔31と、リッジ部32と二つの円弧部33とを含む。リッジ部32は二つの貫通孔31の間に設けられ、二つの円弧部33とリッジ部32とが二つの貫通孔31を形成する。
【0036】
第一耐摩耗体1は、複数の第一部11と、第二部12、とを含み、二つの貫通孔31には、それぞれ、複数の第一部11のうちの一つの第一部11が設けられ、複数の第一部11はリッジ部32に接続され、第二部12はリッジ部32の表面上に配置され、二つの貫通孔31の間に位置する。
【0037】
二つの貫通孔31には、それぞれ、一つの第二耐摩耗体2が設けられ、二つの第二耐摩耗体2は二つの円弧部33にそれぞれ接続される。
【0038】
ここで、第一耐摩耗体1の耐摩耗性は第二耐摩耗体2の耐摩耗性よりも大きく、第二耐摩耗体2の耐摩耗性は基材3の耐摩耗性よりも大きい。
【0039】
上述の実施形態では、スペクタクルプレートがカッティングリングと協働する摩耗部が分割構造体、すなわちリッジ部32および二つの円弧部33として設計される。リッジ部32の表面およびリッジ部32に接続された貫通孔31の内壁は、スペクタクルプレートがカッティングリングと協働する作業表面である。作業表面は、カット表面と材料通過孔の内壁表面とを含む。リッジ部32の表面がカット表面であり、貫通孔31の内壁表面が材料通過孔の内壁表面である。カット表面および材料通過孔はより摩耗しやすい。したがって、リッジ部32の表面および貫通孔31の内壁のリッジ部32に接続される部分には第一耐摩耗体1が設けられ、二つの円弧部32の内側側部、すなわち貫通孔31の内壁の他方の部分には第二耐摩耗体2が設けられる。その第一耐摩耗体1の耐摩耗性は第二耐摩耗体2の耐摩耗性よりも大きく、第二耐摩耗体2の耐摩耗性は基材3の耐摩耗性よりも大きいため、スペクタクルプレートのリッジ部32の耐摩耗性を改善することができ、スペクタクルプレートの耐用年数を延ばすことができる。
【0040】
図2に示すように、いくつかの実施形態では、第二耐摩耗体2は第三部21と第四部22とを含み、第三部21は貫通孔31内に設けられ、第四部22は第三部21に接続され、貫通孔31の外に突出する。
【0041】
二つの第二耐摩耗体2は二つの貫通孔31と円弧部33との間の接続部をカバーし、第四部22は第三部21に接続され、スペクタクルプレートの基材3を摩滅からより良好に保護するように貫通孔31の外に、すなわちカッティングリングの方向に突出する。
【0042】
いくつかの実施形態では、第四部22は第三部21の半径方向寸法よりも大きい半径方向寸法を有する。
【0043】
第四部22は、円弧部33の耐摩耗性を改善するために円弧部33の表面の一部をカバーする。
【0044】
いくつかの実施形態では、二つの貫通孔31の各々の第一部11と第二耐摩耗体2とが貫通孔31の内壁全体を形成する。
【0045】
各貫通孔31で、第一耐摩耗体1の第一部11はリッジ部32に近い位置に設けられ、第二耐摩耗体2はリッジ部32から離れた位置に設けられ、貫通孔31全体の内壁の耐摩耗性を改善するために第一部11と第二耐摩耗体2とが貫通孔31の内壁全体を形成し、リッジ部32に近い第一部11は第一耐摩耗体1であり、スペクタクルプレートのリッジ部32の耐摩耗性をさらに改善するために、第一耐摩耗体1の耐摩耗性は第二耐摩耗体2の耐摩耗性よりも大きい。
【0046】
いくつかの実施形態では、第一耐摩耗体1の材料組成は、ジルコニア、アルミナおよび炭化ケイ素のうち少なくとも二つと炭化タングステンとを含み、第二耐摩耗体2の材料組成は、ジルコニア、アルミナおよび炭化ケイ素のうち少なくとも二つを含み、基材3の材料組成は鋳鋼を含む。
【0047】
ジルコニア、アルミナおよび炭化ケイ素は耐摩耗性セラミック材料である。ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうち少なくとも二つが第二耐摩耗体2にされるということは、第二耐摩耗体2が耐摩耗性セラミック材料で作られ、したがって良好な耐摩耗性および耐衝撃性を有することを意味する。
【0048】
ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つと炭化タングステン粉末とが第一耐摩耗体1にされ、セラミック耐摩耗性材料へのタングステンの追加により第一耐摩耗体1の耐摩耗性および耐衝撃性がさらに改善される。
【0049】
本開示のいくつかの実施形態は、以下のステップ:
第一耐摩耗体1を調製するために、炭化タングステン粉末、鉄粉末と、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つとを混合するステップと、
第二耐摩耗体2を調製するために、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つを鉄粉末と混合するステップと、
第一耐摩耗体1および二つの第二耐摩耗体2を鋳型に入れ、基材3を形成するために鋳鋼溶湯を注ぎ、スペクタクルプレートを形成するために基材3を第一耐摩耗体1および二つの第二耐摩耗体2と結合するステップと
を含む上述のコンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法をさらに提供する。
【0050】
本開示の実施形態におけるスペクタクルプレートは、一体真空鋳造によって成形される。
【0051】
リッジ部32の表面およびリッジ部32に接続された貫通孔31の内壁は、スペクタクルプレートがカッティングリングと協働する作業表面である。リッジ部32の表面はカット表面であり、貫通孔31は材料通過孔である。カット表面および材料通過孔は、より摩耗しやすい。したがって、リッジ部32の表面および貫通孔31の内壁のリッジ部32に接続される部分には第一耐摩耗体1が設けられ、貫通孔31の内壁の他方の部分には第二耐摩耗体2が設けられる。すなわちスペクタクルプレートがカッティングリングと協働するカット表面および材料通過孔にセラミック耐摩耗体が加えられる。セラミック耐摩耗体と基材とは一体的に鋳造および成形され、その結果強固な接合が実現され、ろう付け、接合および他のプロセスによって引き起こされる合金または耐摩耗性層が落脱する問題が解決される。スペクタクルプレートは、使用時に通常の摩耗および故障をするのみであり、合金ブロックの脱落または反発(bouncing off)およびその他の理由によって引き起こされる20%早期故障の問題が回避される。
【0052】
スペクタクルプレートのリッジ部32の耐摩耗性が低いという問題を解決するために、耐摩耗体の耐摩耗性および耐衝撃性をさらに改善するべく、ある量のタングステンがリッジ部32の耐摩耗性材料に加えられる。
【0053】
本開示の実施形態では、スペクタクルプレートは一体真空鋳造によって成形されるが、これは粗鋼ブランキング、サーフェーシング、合金溝切り、合金型枠調製、ろう付け、合金表面研磨などの加工手順が不要であり、容易な加工、高い生産効率および低い総合コストの利点を有する。従来の超硬合金はめ込みプロセスと比較して、効率が1.5倍に高められうる。
【0054】
スペクタクルプレートの耐摩耗体はセラミック耐摩耗体であり、セラミック耐摩耗体のコストはスペクタクルプレート全体の価格の40%しか占めないため、全体のコストが大きく減少し、高いコストパフォーマンスが実現され、したがってユーザがより多くの選択肢をもつことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末の粒径は、0.02mm~0.1mmの範囲である。
【0056】
セラミック耐摩耗体は、スペクタクルプレートの主要な作業部に位置する。セラミック耐摩耗体は、高温鋳造によって成形される。粉末が大きい(0.02~0.1mm)ため、成形プロセスにおいて介在物および空気孔などの欠陥がある場合には、二次基材鋳造プロセスにおいて高温溶浸により有効な充填が行われることができ、そうすればスペクタクルプレートの作業表面は後の研削後に適用要件を満たすことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、炭化タングステン粉末の粒径は、5μm~10μmの範囲である。
【0058】
いくつかの実施形態では、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素のうちの少なくとも二つの組み合わせの鉄粉末に対する質量比は、1:1~3:1の範囲である。
【0059】
いくつかの実施形態では、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つの組み合わせに対する炭化タングステン粉末の質量比は、20%未満である。
【0060】
いくつかの実施形態では、炭化タングステン粉末、鉄粉末とジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つとが混合されて炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後に温度が第一プリセット期間維持され、その後、第一耐摩耗体1を得るために冷却が行われる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの少なくとも二つと鉄粉末とが混合されて炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後に温度が第二プリセット期間維持され、その後、第二耐摩耗体2を得るために冷却が行われる。
【0062】
いくつかの実施形態では、鋳鋼溶湯を形成するために鋳鋼が1500℃~1550℃に加熱され、基材3を形成するために鋳鋼溶湯が1480℃~1520℃で鋳型に注ぎ込まれる。
【0063】
いくつかの実施形態では、コンクリートポンプ車用スペクタクルプレートの調製方法は、主に以下のステップを含む。
【0064】
ステップ1:耐摩耗体が予め製作される。いずれも耐摩耗性セラミック粉末であるジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの二つ以上が混合され、耐摩耗性セラミック粉末の粒径は0.02mm~0.1mmである。炭化タングステン粉末(炭化タングステン粉末の粒径は5μm~10μmである)が耐摩耗性セラミック粉末に加えられ、次いで鉄粉末と混合される。ここで、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は(1~3):1であり、炭化タングステン粉末の耐摩耗性セラミック粉末に対する質量比は20%未満である。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持される。その後、第一耐摩耗体1を得るために冷却が行われる。
【0065】
いずれも耐摩耗性セラミック粉末であるジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末のうちの二つ以上が採用され、粉末の粒径は0.02mm~0.1mmである。耐摩耗性セラミック粉末は鉄粉末と混合され、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は(1~3):1である。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持される。その後、第二耐摩耗体2を得るために冷却が行われる。
【0066】
ステップ2:注型成形が行われる。容量1トンの中間周波炉で溶製が行われ、鋳鋼溶湯が鋳造溶湯として使用される。温度が1500℃~1550℃に高められる。完全溶湯が得られると、スペクタクルプレートの基材3を形成するために注湯温度1480℃~1520℃で注湯が行われ、基材3は予め調製された第一耐摩耗体1および二つの第二耐摩耗体2と冶金学的に結合される。
【0067】
ステップ3:砂落としおよび冷却が行われる。砂落としおよび鋳造鋳型洗浄が行われる。自然冷却後にセラミック耐摩耗性スペクタクルプレートブランクが得られ、スペクタクルプレート部品を得るために必要に応じて機械加工が行われる。
【0068】
上述の実施形態におけるスペクタクルプレートでは、鋳鋼溶湯を注ぐことにより基材3が形成され、リッジ部32の表面および貫通孔31がリッジ部32に隣接する部分に第一耐摩耗体1が設けられ、貫通孔31が円弧部33に隣接する部分に二つの第二耐摩耗体2が設けられる。各貫通孔31で、第一耐摩耗体1の第一部11はリッジ部32に近い位置に設けられ、第二耐摩耗体2はリッジ部32から離れた位置に設けられ、第一部11と第二耐摩耗体2とが貫通孔31の内壁全体を形成する。第二耐摩耗体2は、耐摩耗性セラミック粉末が鉄粉末と混合された後に得られる耐摩耗体であり、第一耐摩耗体1は、炭化タングステン粉末を含むリッジ部32に設けられる耐摩耗体である。ここで炭化タングステン粉末の粒径は5μm~10μmである。
【0069】
本開示の実施形態では、スペクタクルプレートのリッジ部32に位置する耐摩耗体にプリセット量の炭化タングステンが加えられ、それによりスペクタクルプレートの脆弱なリッジ部32の耐摩耗性が高められる。
【0070】
本開示の実施形態にしたがって調製されるスペクタクルプレート部品のセラミック耐摩耗体の硬度は88HRA超であり得、摩耗率は0.025%未満であり、曲げ強度は2400MPa超であり、衝撃靭性は5J/cm2超である。
【0071】
実施形態1
ステップ11:耐摩耗体が予め製作された。いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.02mmであるジルコニア粉末およびアルミナ粉末が混合された。炭化タングステン粉末(炭化タングステン粉末の粒径は5μmであった)が耐摩耗性セラミック粉末に加えられ、次いで鉄粉末と混合された。ここで、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は3:1であり、炭化タングステン粉末の耐摩耗性セラミック粉末に対する質量比は20%未満であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第一耐摩耗体1を得るために冷却が行われた。
【0072】
いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.02mmであるジルコニア粉末およびアルミナ粉末が使用された。耐摩耗性セラミック粉末は鉄粉末と混合され、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は3:1であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第二耐摩耗体2を得るために冷却が行われた。
【0073】
ステップ12:注型成形が行われた。容量1トンの中間周波炉で溶製が行われ、鋳鋼溶湯が鋳造溶湯として使用された。温度が1500℃~1550℃に高められた。完全溶湯が得られると、スペクタクルプレートの基材3を形成するために注湯温度1480℃~1520℃で注湯が行われ、基材3は予め調製された第一耐摩耗体1および二つの第二耐摩耗体2と冶金学的に結合された。
【0074】
ステップ13:砂落としおよび冷却が行われた。砂落としおよび鋳造鋳型洗浄が行われた。自然冷却後にセラミック耐摩耗性スペクタクルプレートブランクが得られ、スペクタクルプレート部品を得るために必要に応じて機械加工が行われた。
【0075】
実施形態1におけるスペクタクルプレートでは、鋳鋼溶湯を注ぐことにより基材3が形成され、リッジ部32の表面および貫通孔31がリッジ部32に隣接する部分に第一耐摩耗体1が設けられ、貫通孔31が円弧部33に隣接する部分に二つの第二耐摩耗体2が設けられた。各貫通孔31で、第一耐摩耗体1の第一部11はリッジ部32に近い位置に設けられ、第二耐摩耗体2はリッジ部32から離れた位置に設けられ、第一部11と第二耐摩耗体2とが貫通孔31の内壁全体を形成した。第二耐摩耗体2は、耐摩耗性セラミック粉末が鉄粉末と混合された後に得られる耐摩耗体であり、第一耐摩耗体1は、炭化タングステン粉末を含むリッジ部32に設けられる耐摩耗体であった。ここで炭化タングステン粉末の粒径は5μmであった。
【0076】
実施形態1では、スペクタクルプレートのリッジ部32に位置する耐摩耗体にプリセット量の炭化タングステンが加えられ、それによりスペクタクルプレートの脆弱なリッジ部32の耐摩耗性が高められた。
【0077】
実施形態1にしたがって調製されるスペクタクルプレート部品のセラミック耐摩耗体の硬度は89HRA超に達し得、摩耗率は0.024%未満であり、曲げ強度は3100MPaであり、衝撃靭性は6.2J/cm2超であった。
【0078】
実施形態2
ステップ21:耐摩耗体が予め製作された。いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.1mmであるジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末が使用された。炭化タングステン粉末(炭化タングステン粉末の粒径は10μmであった)が耐摩耗性セラミック粉末に加えられ、次いで鉄粉末と混合された。ここで、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は1:1であり、炭化タングステン粉末の耐摩耗性セラミック粉末に対する質量比は20%未満であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第一耐摩耗体1を得るために冷却が行われた。
【0079】
いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.1mmであるジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末が使用された。耐摩耗性セラミック粉末は鉄粉末と混合され、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は1:1であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第二耐摩耗体2を得るために冷却が行われた。
【0080】
ステップ22:注型成形が行われた。容量1トンの中間周波炉で溶製が行われ、鋳鋼溶湯が鋳造溶湯として使用された。温度が1500℃~1550℃に高められた。完全溶湯が得られると、スペクタクルプレートの基材3を形成するために注湯温度1480℃~1520℃で注湯が行われ、基材3は予め調製された第一耐摩耗体1および二つの第二耐摩耗体2と冶金学的に結合された。
【0081】
ステップ23:砂落としおよび冷却が行われた。砂落としおよび鋳造鋳型洗浄が行われた。自然冷却後にセラミック耐摩耗性スペクタクルプレートブランクが得られ、スペクタクルプレート部品を得るために必要に応じて機械加工が行われた。
【0082】
実施形態2におけるスペクタクルプレートでは、鋳鋼溶湯を注ぐことにより基材3が形成され、リッジ部32の表面および貫通孔31がリッジ部32に隣接する部分に第一耐摩耗体1が設けられ、貫通孔31が円弧部33に隣接する部分に二つの第二耐摩耗体1が設けられた。各貫通孔31で、第一耐摩耗体1の第一部11はリッジ部32に近い位置に設けられ、第二耐摩耗体2はリッジ部32から離れた位置に設けられ、第一部11と第二耐摩耗体2とが貫通孔31の内壁全体を形成した。第二耐摩耗体2は、耐摩耗性セラミック粉末が鉄粉末と混合された後に得られる耐摩耗体であり、第一耐摩耗体1は、炭化タングステン粉末を含むリッジ部32に設けられる耐摩耗体であった。ここで炭化タングステン粉末の粒径は10μmであった。
【0083】
実施形態2では、スペクタクルプレートのリッジ部32に位置する耐摩耗体にプリセット量の炭化タングステンが加えられ、それによりスペクタクルプレートの脆弱なリッジ部32の耐摩耗性および耐衝撃性が高められた。
【0084】
実施形態2にしたがって調製されるスペクタクルプレート部品のセラミック耐摩耗体の硬度は88HRA超に達し得、摩耗率は0.020%未満であり、曲げ強度は2412MPaであり、衝撃靭性は5.2J/cm2超であった。
【0085】
実施形態3
ステップ31:耐摩耗体が予め製作された。いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.08mmであるジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末が使用された。炭化タングステン粉末(炭化タングステン粉末の粒径は7μmであった)が耐摩耗性セラミック粉末に加えられ、次いで鉄粉末と混合された。ここで、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は2:1であり、炭化タングステン粉末の耐摩耗性セラミック粉末に対する質量比は20%未満であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第一耐摩耗体1を得るために冷却が行われた。
【0086】
いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.08mmであるジルコニア粉末、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末が使用された。耐摩耗性セラミック粉末は鉄粉末と混合され、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は2:1であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第二耐摩耗体2を得るために冷却が行われた。
【0087】
ステップ32:注型成形が行われた。容量1トンの中間周波炉で溶製が行われ、鋳鋼溶湯が鋳造溶湯として使用された。温度が1500℃~1550℃に高められた。完全溶湯が得られると、スペクタクルプレートの基材3を形成するために注湯温度1480℃~1520℃で注湯が行われ、基材3は予め調製された第一耐摩耗体1および二つの第二耐摩耗体2と冶金学的に結合された。
【0088】
ステップ33:砂落としおよび冷却が行われた。砂落としおよび鋳造鋳型洗浄が行われた。自然冷却後にセラミック耐摩耗性スペクタクルプレートブランクが得られ、スペクタクルプレート部品を得るために必要に応じて機械加工が行われた。
【0089】
実施形態3におけるスペクタクルプレートでは、鋳鋼溶湯を注ぐことにより基材3が形成され、リッジ部32の表面および貫通孔31がリッジ部32に隣接する部分に第一耐摩耗体1が設けられ、貫通孔31が円弧部33に隣接する部分に二つの第二耐摩耗体2が設けられた。各貫通孔31で、第一耐摩耗体1の第一部11はリッジ部32に近い位置に設けられ、第二耐摩耗体2はリッジ部32から離れた位置に設けられ、第一部11と第二耐摩耗体2とが貫通孔31の内壁全体を形成した。第二耐摩耗体2は、耐摩耗性セラミック粉末が鉄粉末と混合された後に得られる耐摩耗体であり、第一耐摩耗体1は、炭化タングステン粉末を含むリッジ部32に設けられる耐摩耗体であった。ここで炭化タングステン粉末の粒径は7μmであった。
【0090】
実施形態3では、スペクタクルプレートのリッジ部32に位置する耐摩耗体にプリセット量の炭化タングステンが加えられ、それによりスペクタクルプレートの脆弱なリッジ部32の耐摩耗性および耐衝撃性が高められた。
【0091】
実施形態3にしたがって調製されるスペクタクルプレート部品のセラミック耐摩耗体の硬度は89HRA超に達し得、摩耗率は0.023%未満であり、曲げ強度は2642MPaであり、衝撃靭性は5.1J/cm2超であった。
【0092】
実施形態4
ステップ41:耐摩耗体が予め製作された。いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.02mmであるジルコニア粉末およびアルミナ粉末が混合された。炭化タングステン粉末(炭化タングステン粉末の粒径は5μmであった)が耐摩耗性セラミック粉末に加えられ、次いで鉄粉末と混合された。ここで、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は2:1であり、炭化タングステン粉末の耐摩耗性セラミック粉末に対する質量比は20%未満であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第一耐摩耗体1を得るために冷却が行われた。
【0093】
いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.02mmであるジルコニア粉末およびアルミナ粉末が混合された。耐摩耗性セラミック粉末は鉄粉末と混合され、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は2:1であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1350℃~1480℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第二耐摩耗体2を得るために冷却が行われた。
【0094】
ステップ42:注型成形が行われた。容量1トンの中間周波炉で溶製が行われ、鋳鋼溶湯が鋳造溶湯として使用された。温度が1500℃~1550℃に高められた。完全溶湯が得られると、スペクタクルプレートの基材3を形成するために注湯温度1480℃~1520℃で注湯が行われ、基材3は予め調製された第一耐摩耗体1および二つの第二耐摩耗体2と冶金学的に結合された。
【0095】
ステップ43:砂落としおよび冷却が行われた。砂落としおよび鋳造鋳型洗浄が行われた。自然冷却後にセラミック耐摩耗性スペクタクルプレートブランクが得られ、スペクタクルプレート部品を得るために必要に応じて機械加工が行われた。
【0096】
実施形態4におけるスペクタクルプレートでは、鋳鋼溶湯を注ぐことにより基材3が形成され、リッジ部32の表面および貫通孔31がリッジ部32に隣接する部分に第一耐摩耗体1が設けられ、貫通孔31が円弧部33に隣接する部分に二つの第二耐摩耗体2が設けられた。各貫通孔31で、第一耐摩耗体1の第一部11はリッジ部32に近い位置に設けられ、第二耐摩耗体2はリッジ部32から離れた位置に設けられ、第一部11と第二耐摩耗体2とが貫通孔31の内壁全体を形成した。第二耐摩耗体2は、耐摩耗性セラミック粉末が鉄粉末と混合された後に得られる耐摩耗体であり、第一耐摩耗体1は、炭化タングステン粉末を含むリッジ部32に設けられる耐摩耗体であった。ここで炭化タングステン粉末の粒径は5μmであった。
【0097】
実施形態4では、スペクタクルプレートのリッジ部32に位置する耐摩耗体にプリセット量の炭化タングステンが加えられ、それによりスペクタクルプレートの脆弱なリッジ部32の耐摩耗性が高められた。
【0098】
実施形態4にしたがって調製されるスペクタクルプレート部品のセラミック耐摩耗体の硬度は88HRA超に達し得、摩耗率は0.087%超であり、曲げ強度は3300MPaであり、衝撃靭性は9.0J/cm2超であった。
【0099】
実施形態5
ステップ51:耐摩耗体が予め製作された。いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.08mmであるジルコニア粉末およびアルミナ粉末が混合された。炭化タングステン粉末(炭化タングステン粉末の粒径は5μmであった)が耐摩耗性セラミック粉末に加えられ、次いで鉄粉末と混合された。ここで、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は3:1であり、炭化タングステン粉末の耐摩耗性セラミック粉末に対する質量比は20%未満であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1300℃~1390℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第二耐摩耗体2を得るために冷却が行われた。
【0100】
いずれも耐摩耗性セラミック粉末であり、いずれも粒径0.08mmであるジルコニア粉末およびアルミナ粉末が混合された。耐摩耗性セラミック粉末は鉄粉末と混合され、耐摩耗性セラミック粉末の鉄粉末に対する質量比は3:1であった。混合された耐摩耗性材料は炉に入れられ、1300℃~1390℃に加熱され、完全溶融鉄が得られた後、温度が20分間維持された。その後、第二耐摩耗体2を得るために冷却が行われた。
【0101】
ステップ52:注型成形が行われた。容量1トンの中間周波炉で溶製が行われ、鋳鋼溶湯が鋳造溶湯として使用された。温度が1500℃~1550℃に高められた。完全溶湯が得られると、スペクタクルプレートの基材3を形成するために注湯温度1480℃~1520℃で注湯が行われ、基材3は予め調製された第一耐摩耗体1および二つの第二耐摩耗体2と冶金学的に結合された。
【0102】
ステップ53:砂落としおよび冷却が行われた。砂落としおよび鋳造鋳型洗浄が行われた。自然冷却後にセラミック耐摩耗性スペクタクルプレートブランクが得られ、スペクタクルプレート部品を得るために必要に応じて機械加工が行われた。
【0103】
実施形態5におけるスペクタクルプレートでは、鋳鋼溶湯を注ぐことにより基材3が形成され、リッジ部32の表面および貫通孔31がリッジ部32に隣接する部分に第一耐摩耗体1が設けられ、貫通孔31が円弧部33に隣接する部分に二つの第二耐摩耗体2が設けられた。各貫通孔31で、第一耐摩耗体1の第一部11はリッジ部32に近い位置に設けられ、第二耐摩耗体2はリッジ部32から離れた位置に設けられ、第一部11と第二耐摩耗体2とが貫通孔31の内壁全体を形成した。第二耐摩耗体2は、耐摩耗性セラミック粉末が鉄粉末と混合された後に得られる耐摩耗体であり、第一耐摩耗体1は、炭化タングステン粉末を含むリッジ部32に設けられる耐摩耗体であった。ここで炭化タングステン粉末の粒径は5μmであった。
【0104】
実施形態5では、スペクタクルプレートのリッジ部32に位置する耐摩耗体にプリセット量の炭化タングステンが加えられ、それによりスペクタクルプレートの脆弱なリッジ部32の耐摩耗性が高められた。
【0105】
実施形態5にしたがって調製されるスペクタクルプレート部品のセラミック耐摩耗体の硬度は81HRA超に達し得、摩耗率は0.109%超であり、曲げ強度は1630MPaであり、衝撃靭性は4.2J/cm2未満であった。
【0106】
上述の実施形態に基づいて、本開示は少なくとも以下の有益な効果がある。
(1)スペクタクルプレートは構造が単純で生産プロセスが単純であり、加工が容易で低コストである。
(2)スペクタクルプレートのセラミック耐摩耗体の粉末は厳密にスクリーニングおよび混合され、それにより不均一な混合によって引き起こされる耐摩耗性層の粉末の脱落および剥離の問題が解決される。
(3)耐摩耗性を高めるために、スペクタクルプレートの弱い位置であるリッジ部32に炭化タングステンが加えられる。
(4)スペクタクルプレートの基材とセラミック耐摩耗体とは冶金学的に結合され、銅ろう付けおよび耐摩耗性サーフェーシングプロセスは省かれるため、弱い作業部がない。
(5)スペクタクルプレートの基材と耐摩耗体とは高温鋳造によって全体に結合され、それによりスペクタクルプレートの作業面の耐摩耗性が高められる。
(6)スペクタクルプレートは一体的に形成されるが、作業面と非作業面とは異なる材料で作られ、それにより作業面の耐摩耗性が確保されるだけでなく、基材の被削性、設置および固定も確保される。
【0107】
本開示のいくつかの実施形態は、コンクリートポンプ車用スペクタクルプレートを含むコンクリートポンプ車をさらに提供する。
【0108】
スペクタクルプレート全体が高温鋳造により成形され、炭素鋼材料で作られる。耐摩耗体は高温鋳造によって基材と結合され、作業表面はセラミック耐摩耗体で構成され、それにより作業時のスペクタクルプレートの耐摩耗性が確保される。さらに、基材の靭性および被削性も保証される。
【0109】
本開示の上記の実施形態に基づいて、一つの実施形態の技術的特徴は、明示的に否定されない限り一つ以上の他の実施形態と有益に組み合わせられうる。
【0110】
本開示のいくつかの具体的実施形態が例によって詳細に説明されているが、当業者は、上述の例は説明のためのものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを理解するはずである。当業者は、本開示の範囲および精神から逸脱することなく上述の実施形態が改変されうるかまたはいくつかの技術的特徴が等価に置換されうることを理解するはずである。本開示の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。