(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】アデノ随伴ウイルスベクターの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C12N 15/861 20060101AFI20240718BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/35 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N7/01
C12N15/35
(21)【出願番号】P 2022547119
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 GB2021050235
(87)【国際公開番号】W WO2021156609
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-10-11
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518305392
【氏名又は名称】オックスフォード ジェネティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD GENETICS LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ケイウッド、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】スー、ウェイヘン
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/020992(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/141993(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03456822(EP,A1)
【文献】特表2002-505085(JP,A)
【文献】PNAS,2011年,Vol. 108, No. 34,pp. 14294-14299
【文献】J. Virol.,2014年,Vol. 88, No. 24,pp. 14126-14137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子を含むアデノウイルスベクターであって、
前記核酸分子のヌクレオチド配列は、少なくとも1つのAAV Repポリペプチドをコードし、前記Repポリペプチドコーディング配列は下記特徴を有する、アデノウイルスベクター。
(i)機能的AAV p5プロモーターに作動可能に関連していない;
(ii)機能的AAV p19プロモーターを含まず、および/または、機能的Rep52ポリペプチドおよび機能的Rep40ポリペプチドをコードしない;ならびに
(iii)
配列番号10に示される配列、または、配列番号10に対する配列同一性が少なくとも90%である変異体であって、かつ、宿主細胞中でアデノウイルスベクターの複製を阻害することができる配列、を有する機能的アデノウイルス阻害配列を含まない。
【請求項2】
前記ヌクレオチド配列が機能的AAV Rep78ポリペプチドおよび機能的AAV Rep68ポリペプチドをコードする、請求項1に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項3】
前記核酸分子がp5プロモーターを含まない、請求項1または2に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項4】
前記Repポリペプチドコーディング配列が、
(i)機能的AAV p5プロモーターに作動可能に関連しておらず;かつ
(iii)機能的AAV p40プロモーターを含まず、かつ、
前記機能的アデノウイルス阻害配列を含まない、
という特徴を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項5】
前記Rep78ポリペプチド
は、
野生型AAV rep遺伝子の野生型p5プロモーターと作動可能に関連する野生型Rep78ポリペプチドの発現レベルの10%未満である発現レベルで
発現される、請求項
2に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項6】
前記Rep52ポリペプチドおよび/またはRep40ポリペプチドは発現できない、請求項1~5のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項7】
前記アデノウイルス阻害配列は転写できない、請求項1~6のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項8】
宿主細胞における前記アデノウイルス阻害配列の転写が、前記宿主細胞中の野生型アデノウイルスの複製を阻害しないように、前記アデノウイルス阻害配列が修飾される、請求項1~7のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項9】
前記核酸分子が、アデノウイルス初期遺伝子のうちの一つに位置する、請求項1~8のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項10】
前記核酸分子が、E4、E2AおよびE2B発現カセットと同じ転写方向で、E1領域に位置する、請求項1~9のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項11】
前記核酸分子が上流のプロモーターと作動可能に関連しない、請求項
9または10に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項12】
前記アデノウイルスベクターがさらにAAV cap遺伝子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項13】
前記アデノウイルスベクターが、さらに、
単純ヘルペスウイルス由来のVP16転写アクチベーターまたはp53タンパク質由来のトランスアクチベータードメインをコードする、請求項1~12のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項14】
前記アデノウイルスベクターが、抑制可能な主要後期プロモーター(MLP)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項15】
(A)請求項1~14のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターである第1のアデノウイルスベクターと、
(B)第2のアデノウイルスベクターであって、
(i)AAV Capポリペプチドをコードする核酸分子、および/または
(ii)組み換えAAVゲノムをコードする核酸分子、
を含む第2のアデノウイルスベクターと、
を含む、キット。
【請求項16】
前記第1のアデノウイルスベクターが、前記第2のアデノウイルスベクターに存在するプロモーターを転写的に活性化することができるポリペプチドを、さらにコードする、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
AAV粒子を製造するためのプロセスであって、
前記プロセスが、
(a)哺乳類宿主細胞に、請求項1~14のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターである第1のアデノウイルスベクターを感染させる工程と、
(b)前記宿主細胞に第2のアデノウイルスベクターを感染させる工程であって、前記第2のアデノウイルスベクターが導入遺伝子を含む組み換えAAVゲノムを含み、前記第1のアデノウイルスベクターおよび前記第2のアデノウイルスベクターのうちの少なくとも一つがAAV cap遺伝子を含む、工程と、
(c)前記哺乳類宿主細胞を、培地で、導入遺伝子を含むAAV粒子が産生されるような条件下で、培養する工程と、
(d)AAV粒子を前記宿主細胞または前記細胞培地から単離または精製する工程とを含む、製造するためのプロセス。
【請求項18】
AAV粒子を製造するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(a)哺乳類宿主細胞に、請求項1~14のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターである第1のアデノウイルスベクターを感染させる工程であって、前記哺乳類宿主細胞は、前記宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれた組み換えAAVゲノムを含み、前記組み換えAAVゲノムは導入遺伝子を含み、
(i)前記アデノウイルスベクターはさらにAAV cap遺伝子を含むか、または (ii)AAV cap遺伝子が前記哺乳類宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれるか、または
(iii)前記細胞が、AAV cap遺伝子を含む第2のアデノウイルスベクターに感染している、工程と
(b)前記哺乳類宿主細胞を、培地で、前記導入遺伝子を含むAAV粒子が産生されるような条件下で、培養する工程と、
(c)AAV粒子を前記細胞または前記細胞培地から単離または精製する工程と、を含む、製造するためのプロセス。
【請求項19】
組み換えAAV粒子を製造するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(a)哺乳類宿主細胞に、請求項1~14のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターである第1のアデノウイルスベクターを感染させる工程であって、
(i)前記第1のアデノウイルスベクターはさらにAAV cap遺伝子を含むか、または
(ii)前記細胞が、AAV cap遺伝子を含む第2のアデノウイルスベクターに感染している、工程と
(b)前記哺乳類宿主細胞に導入遺伝子を含む組み換えAAVを感染させる工程と、
(c)前記哺乳類宿主細胞を、培地で、前記導入遺伝子を含むAAV粒子が産生されるような条件下で、培養する工程と、
(d)AAV粒子を前記細胞または前記細胞培地から単離および/または精製する工程と、を含む、製造するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのAAV Repポリペプチドをコードする核酸分子に関し、AAV p5プロモーター、AAV p19プロモーターおよびAAV p40プロモーターの一つ以上がRepポリペプチドの一つ以上の発現を低減もしくは除去するように修飾されるか、前記核酸分子が機能的Rep 52ポリペプチドもしくは機能的Rep 40ポリペプチドをコードしないか、または、前記核酸分子が機能的アデノウイルス阻害配列(inhibitor sequence)をコードしない。
【0002】
本発明はまた、2-アデノウイルス系を使用することにより組み換えAAVベクターを製造するプロセスに関し、AAV複製とパッケージングとに必要な遺伝子のすべて(すなわち、本発明のAAVRep配列、AAV cap、および、導入遺伝子を含むAAVトランスファーベクター)が、二つのアデノウイルス内にコードされてもよい。
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルス科に属する単鎖DNAウイルスである。このウイルスは、分裂細胞および非分裂細胞の両方を含む広い範囲の宿主細胞に感染することができる。また、このウイルスは、ほとんどの患者において限定的な免疫応答のみを引き起こす、非病原性ウイルスである。
【0004】
ここ数年間、AAV由来のベクターが、遺伝子送達の非常に有用かつ有望な形態として浮上している。これは、これらのベクターの下記の特性による。
- AAVは、小さいノンエンベロープウイルスであり、その内在遺伝子は二つのみ(repおよびcap)である。したがって、様々な遺伝子療法用のベクターを開発するために容易に操作できる。これは、AAVゲノムのrep遺伝子およびcap遺伝子の除去によって、また、これらの配列を患者に治療効果を提供しうる外因性配列(導入遺伝子)に置き換えることによって、達成される。
- AAV粒子は、剪断力、酵素、または溶媒によって容易に分解されない。このことは、これらのウイルスベクターの精製および最終製剤化を容易にする。
- AAVは非病原性であり、免疫原性が低い。これらのベクターを使用することにより、好ましくない炎症反応のリスクをさらに低減する。レンチウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノウイルスなどの他のウイルスベクターとは違い、AAVは害がなく、なんらかのヒトの疾患を起こす原因となるとは考えられていない。
- AAVベクターを使用して、患者に約4500bp以下の遺伝子配列を送達することができる。
- 野生型AAVベクターはヒト染色体19へ遺伝物質を挿入する時があることが示されている一方で、この特性は、rep遺伝子およびcap遺伝子をウイルスゲノムから取り除くことにより、AAV遺伝子治療ベクターから一般的には除去されている。かかる場合に、前記ウイルスは、宿主細胞内でエピソーム形態のままである。これらエピソームは非分裂細胞中で保全されるが、分裂細胞中では細胞分裂の間に失われる。
【0005】
天然型AAVゲノムは、それぞれが複数のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードする、rep遺伝子とcap遺伝子との二つの遺伝子を含み、rep遺伝子は、ウイルスゲノムの、AAVのライフサイクルおよび部位特異的な組み込みに必要な非構造的タンパク質をコードし、cap遺伝子は構造カプシドタンパク質をコードする。
【0006】
また、これらの二つの遺伝子の両側には、ヘアピン構造を構成する能力がある145個の塩基からなる末端逆位反復配列(ITR)がある。これらのヘアピン配列は、第2のDNA鎖のプライマーゼ独立性合成と、ウイルスDNAの宿主細胞ゲノムへの組み込みとのために必要である。
【0007】
ウイルスの組み込み能力を除去するために、組み換えAAVベクターはウイルスゲノムのDNAからrepおよびcapを除去する。かかるベクターを製造するために、導入遺伝子(単数または複数)の転写を駆動するためのプロモーターとともに、所望の導入遺伝子(単数または複数)が、末端逆位反復配列(ITR)の間に挿入され、前記rep遺伝子およびcap遺伝子が第2のプラスミドにトランスに提供される。アデノウイルスE4、E2aおよびVA遺伝子などのヘルパー遺伝子も提供される。rep遺伝子、cap遺伝子、およびヘルパー遺伝子は、細胞にトランスフェクトされた追加のプラスミド上に提供されてもよい。
【0008】
従来、AAVベクターの産生は異なる多数の経路から達成されている。
当初、AAVは野生型(WT)アデノウイルス血清型5を用い、rep遺伝子およびcap遺伝子とAAVゲノムとをコードするプラスミドを細胞にトランスフェクトして生成された。これにより、WTアデノウイルスがウイルス複製を容易にする数多くの因子をトランスに提供できるようになった。しかしこの手法には数多くの限界があった。たとえば、AAVの各バッチは純粋な生成物を提供するためには製造後にアデノウイルス(AV)粒子から分離しなければならないが、全てのAd5を確実に除去することは困難である。さらに、製造中に、細胞がAAVよりむしろアデノウイルス粒子の産生に膨大なリソースを充当していることも望ましくない。
【0009】
他の系では、rep遺伝子およびcap遺伝子を発現する安定的なパッケージ細胞株が使用されてきた。かかる系では、前記rep遺伝子およびcap遺伝子は細胞ゲノムに組み込まれ、したがってプラスミドベースのrep遺伝子およびcap遺伝子が不要になる。しかしながら、これらの遺伝子は、通常、その固有の毒性のせいで、組み込まれる頻度が低い(たとえば、細胞あたり1~2コピー)。これらの系はアデノウイルスベクターでの感染を必要とする。
【0010】
さらに最近では、アデノウイルスに基づく系は、AAV産生に必要なアデノウイルスゲノムの部分をコードするプラスミドに置き換えられた。これにより、最終ウイルス製剤に存在するアデノウイルス粒子に関する懸念の一部は解決したが、数多くの問題が残っている。その問題には、製造細胞株のトランスフェクションに十分なプラスミドを予め製造することが必要であることや、トランスフェクションのプロセスそれ自体が本質的に非効率であること、などがある。これらの系の収率も、Ad5に基づく手法と比べて低い。
【0011】
AAV遺伝子(repおよびcap)およびAAVトランスファーベクターをアデノウイルスにコードすることが、過去に広く調査されてきた(Fisher, K.J et al., 1996; Liu, X.L. et al., 1999)。AAVゲノムおよびAAV Cap DNA配列はアデノウイルスのゲノム内に挿入されたときには許容される一方、AAV Repタンパク質およびDNA配列は、アデノウイルスに対し致死的であり、その複製を阻害する。アデノウイルス複製におけるAAV Repの毒性にもかかわらず、AAV Repポリペプチドをコードするアデノウイルスの産生が成功したと報告した論文もいくつかある。しかしながら、これらのアデノウイルスは、産生での低い力価や、ウイルスの複数継代後のrep遺伝子の消失とあいまって、一般的に不安定である(Zhang, H.G et al. 2001; Zhang, X and Li, C-Y, Mol. Ther. 2001)。
【0012】
AAV Repによるアデノウイルスの阻害は、二つの主要なメカニズムにより引き起こされる。第一に、AAV Repタンパク質は、アデノウイルスプロモーター(MLP、E2B、E4を含む)の、潜在的な阻害剤である(Timpe J.M. et al., 2006)。第二に、アデノウイルス阻害配列は、(cap遺伝子の発現を駆動するためのウイルスによって普通は使用されるp40プロモーターの中に位置する)AAV rep DNA中にコードされる。この「阻害的」p40 DNA配列を組み換える(scrambling)ことにより、AAV rep遺伝子がアデノウイルス内に許容できることが、論文に示されている(Sitaraman, V. et al., 2011; Weger, S. et al., J. Virol. 2016)。
【0013】
本発明は、AAV rep遺伝子がアデノウイルスベクターに安定的にコードされることを可能にする工程の組み合わせに基づく。AAV rep遺伝子をアデノウイルスベクターに挿入し維持することが成功したことはこれまでに無かった。特に、一部の実施形態において、AAV rep遺伝子プロモーターp5、p19およびp40はすべて修飾されるか除去されている。p5プロモーターが除去されて、Rep78ポリペプチドおよびRep68ポリペプチドの発現を低減し、したがってその毒性を低減している。p19プロモーターが除去されて、Rep52ポリペプチドおよびRep40ポリペプチドの発現を停止し、p40プロモーター内のAV阻害配列が除去されるか修飾され、またはその転写が妨げられている。
【0014】
AVを使用してAAVを製造する際に、遺伝学的に異なる、望ましいAAVのそれぞれのために1つのAVを修飾するだけでよいことが好ましい。しかしながら、rep遺伝子、cap遺伝子、およびトランスファーAAVゲノムを組み合わせた分子のサイズは、E1/E3欠失AVベクターのパッケージング能力を超えてしまう。
【0015】
本発明者らは、二つのAVを使用することによって利点が得られることを発見した。遺伝学的に異なるAAVがユニークなカプシドおよびトランスファーAAVゲノムを含みうるので、本発明の一つの態様は、細胞を二つのAVベクターに接触させることに関し、二つのAVベクターの一つは、AAV Repコーディング配列を含むものであり、もう一つは、Capコーディング配列およびトランスファーAAVゲノム配列(後者はAAV末端逆位反復配列が隣接する配列として定義される)を含むものである。
【0016】
本発明者らは、また、Repコーディング配列およびAAV ITR配列が同じAVに存在することが、AVの増殖に有害であると判断した。かかるAVは回収できる一方で、その収量は典型的には、AVが各配列をそれぞれ独立して含む場合の5~10倍低い。
【0017】
したがって、本発明の他の態様では、Repコーディング配列はその発現を駆動するプロモーターを含まず、かつ、その転写方向は、AVゲノムのE2A転写ユニット、E2B転写ユニット、およびE4転写ユニットの転写方向と合致している。これによって、Repポリペプチドが、細胞に対する毒性を低減するために低レベル、基準レベルまたは最小レベルで発現されること、および、Repポリペプチドが、アデノウイルスパッケージングシグナルエレメントに埋め込まれた強力なE1Aプロモーターから転写リードスルーを介して、高レベルで転写されないことが確実になる。
【0018】
さらに他の態様では、rep遺伝子を含む第1のAVが、場合によっては、cap遺伝子の発現を駆動している第2のAV中のプロモーターを転写的に活性化させることができるタンパク質をもコードしてもよい。これによって、両方のAVが同じ細胞内に存在する場合にのみcap遺伝子の転写が誘導され、AVの製造中にAAV cap遺伝子を発現する負担を軽減する。
【0019】
本発明の目的は、AAV rep遺伝子を含む核酸分子であって、アデノウイルスベクターへの前記核酸分子の組み込み、および/またはその後の発現による毒性の低減のために、前記rep遺伝子プロモーターが修飾されるかまたは除去されている核酸分子を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、本発明の核酸分子を含むアデノウイルスベクター、および本発明の核酸分子を含む宿主細胞を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、本発明の核酸分子を含む改変された宿主細胞(modified host cell)およびアデノウイルスベクターを製造するプロセス、ならびにAAVを製造するプロセスを提供することである。
【0022】
一実施形態において、本発明は核酸分子を提供し、前記核酸分子のヌクレオチド配列は、少なくとも1つのAAV Repポリペプチドをコードし、前記Repポリペプチドコーディング配列は下記特徴のうちの二つまたは三つを有する。
(i)機能的AAV p5プロモーターに作動可能に関連していない。
(ii)機能的AAV p19プロモーターを含まないか、または、機能的Rep52ポリペプチドおよび機能的Rep40ポリペプチドをコードしない。
(iii)機能的AAV p40プロモーターを含まないか、または、機能的アデノウイルス阻害配列を含まない。
【0023】
好ましくは、前記ヌクレオチド配列は機能的AAV Rep78ポリペプチドおよび機能的AAV Rep68ポリペプチドをコードする。好ましくは、前記核酸分子は、作動可能に関連(operably-associated)するプロモーターの非存在下で、機能的AAV Rep52ポリペプチドまたは機能的AAV Rep40ポリペプチドを発現することができない。
【0024】
本発明の核酸分子は、DNAまたはRNAであってもよい。それは、一本鎖または二本鎖であってもよい。
【0025】
本明細書において、「rep遺伝子」という用語は、1つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードする遺伝子のことをいい、前記ORFの各々はAAV Rep非構造タンパク質またはその変異体もしくは誘導体をコードする。これらのAAV Rep非構造タンパク質(またはその変異体もしくは誘導体)は、AAVゲノムコピーおよび/またはAAVゲノムパッケージングに関与している。
【0026】
野生型rep遺伝子は、p5、p19およびp40の3つのプロモーターを含む。異なる長さの、二つの重複するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)は、p5から、およびp19から、産生することができる。これらのmRNAの各々は、1つのスプライスドナー部位と2つの異なるスプライスアクセプター部位とを使用し、スプライスアウトできるイントロンを含むか、またはスプライスアウトできないイントロンを含む。。このように、6つの異なるmRNAが形成でき、そのうち4つのみが機能的である。前記イントロンを除去していない二つのmRNA(p5から転写されたものと、p19から転写されたもの)は、共通ターミネーター配列まで読み取られ、かつRep78およびRep52をそれぞれコードする。前記イントロンの除去、および前記5'モストスプライスアクセプター部位(5'-most splice acceptor site)の使用は、なんらかの機能的なRepタンパク質の産生をもたらすわけではない-前記配列の残りのフレームがシフトするから正しいRep68タンパク質またはRep40タンパク質を産生できず、Rep78またはRep52のターミネーターがスプライスアウトされるのでそれらの正しいC末端を産生することもないだろう。逆に、前記イントロンの除去、および前記3’スプライスアクセプターの使用は、Rep68およびRep40の正しいC末端を産生し、Rep78およびRep52のターミネーターをスプライスアウトすることになるだろう。したがって、前記機能的スプライシングのみとすることは、イントロンをまとめてスプライスアウトすることを回避する(Rep78およびRep52を産生する)か、または、前記3’スプライスアクセプターを使用する(Rep68およびRep40を産生する)かのどちらかになる。その結果、重複した配列を持つ4つの異なる機能的Repタンパク質が、これらのプロモーターから合成できる。
【0027】
野生型rep遺伝子では、前記p40プロモーターは3'末端に位置する。Capタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)の転写は、野生型AAVゲノムでは、このプロモーターから開始される。
【0028】
前記4つの野生型Repタンパク質は、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40である。したがって、前記野生型rep遺伝子は、前記4つのRepタンパク質Rep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードする遺伝子である。
【0029】
本明細書において、「rep遺伝子」という用語は、野生型rep遺伝子およびその誘導体、ならびに、同等の機能を有する人工のrep遺伝子を含む。前記野生型rep遺伝子は、機能的Rep78ポリペプチド、機能的Rep68ポリペプチド、機能的Rep52ポリペプチド、および機能的Rep40ポリペプチドをコードする。
【0030】
特に好ましい実施形態において、前記ヌクレオチド配列は機能的Rep78ポリペプチドおよび機能的Rep68ポリペプチドをコードする。
【0031】
本明細書において、Rep78ポリペプチドという用語は、配列番号22のポリペプチドのことをいうか、またはその変異体であって、配列番号22のポリペプチドに対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%であり、かつ機能的Rep78ポリペプチドをコードする変異体のことをいう。本明細書において、Rep68ポリペプチドという用語は、配列番号23のポリペプチドのことをいうか、またはその変異体であって、配列番号23のポリペプチドに対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%であり、かつ機能的Rep68ポリペプチドをコードする変異体のことをいう。
【0032】
AAVの産生において、十分な機能的Repポリペプチドの非存在下で、低い力価(たとえばゲノムコピー)が観察される(qPCRにより測定できる)。これは、パッケージされるITRプラスミドがほとんど無く、効果的にパッケージされないという事実のためである。また、誇張された不完全体/完全体粒子比率(exaggerated empty:full particle ratio)を観察してもよい。これはELISAや光学密度測定によって測定できる。
【0033】
前記Rep78ポリペプチド/Rep68ポリペプチドは、ATPと結合し、かつ、ヘリカーゼ活性を有し、かつ、一本鎖のゲノム前駆体の蓄積の支援および予め形成されたAAVカプシドへの新たに形成されたDNA鎖のパッケージの支援に関与してもよい。
【0034】
Rep78ポリペプチド変異体またはRep68ポリペプチド変異体が発現しているかどうかをウエスタンブロットで判定し、これらのポリペプチドが正しい分子量で産生されているかを判定することが可能である。
【0035】
これらのポリペプチドの機能は、その精製された形態で、ATPの消費を判定する生物発光ATPアッセイを使用して判定してもよい。Rep78およびRep68はどちらもヘリカーゼ活性を有するので、適切なヘリカーゼアッセイも使用してもよい。
【0036】
生物発光ATPアッセイにおいて、野生型Rep78ポリペプチド(たとえば、配列番号22のもの)のATP消費のレベルの少なくとも80%(好ましくは少なくとも90%)のレベルのATP消費を有する試験Rep78ポリペプチドは、機能的Rep78ポリペプチドであるとみなすことができる。
【0037】
生物発光ATPアッセイにおいて、野生型Rep68ポリペプチド(たとえば、配列番号23のもの)のATP消費のレベルの少なくとも80%(好ましくは少なくとも90%)のレベルのATP消費を有する試験Rep68ポリペプチドは、機能的Rep68ポリペプチドであるとみなすことができる。
【0038】
野生型Rep78ポリペプチド(たとえば、配列番号22のもの)のヘリカーゼ活性レベルの少なくとも80%(好ましくは少なくとも90%)のレベルのヘリカーゼ活性を有する試験Rep78ポリペプチドは、機能的Rep78ポリペプチドであるとみなすことができる。
【0039】
野生型Rep68ポリペプチド(たとえば、配列番号23のもの)のヘリカーゼ活性レベルの少なくとも80%(好ましくは少なくとも90%)のレベルのヘリカーゼ活性を有する試験Rep68ポリペプチドは、機能的Rep68ポリペプチドであるとみなすことができる。
【0040】
前記野生型AAV(血清型2)rep遺伝子ヌクレオチド配列は、配列番号1に記載されている。
【0041】
一実施形態において、前記「rep遺伝子」またはRepポリペプチドコーディング配列は、配列番号1に対する配列同一性が少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、99%または100%であるヌクレオチド配列であって、Rep78ポリペプチド、Rep68ポリペプチド、Rep52ポリペプチドおよびRep40ポリペプチドの一つ以上をコードし、好ましくは、機能的Rep78ポリペプチドおよび機能的Rep68ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のことをいう。
【0042】
前記Rep52ヌクレオチド配列およびRep40ヌクレオチド配列は、本明細書において配列番号16および17に記載されている。前記Rep78ヌクレオチド配列およびRep68ヌクレオチド配列は、本明細書において配列番号20および21に記載されている。
【0043】
本明細書において、「cap遺伝子」という用語は、1つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードする遺伝子のことをいい、前記ORFの各々はAAV Cap構造タンパク質またはその変異体もしくは誘導体をコードする。これらAAV Cap構造タンパク質(またはその変異体もしくは誘導体)は、AAVカプシドを形成する。
【0044】
前記3つのCapタンパク質は、好適な細胞に感染することができる感染AAVウイルス粒子の産生を可能にするよう機能しなければならない。前記3つのCapタンパク質は、VP1、VP2、およびVP3であり、これらのサイズは、一般的にはそれぞれ87kDa、72kDa、および62kDaである。したがって、前記cap遺伝子は、3つのCapタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードする遺伝子である。
【0045】
野生型AAVにおいて、これらの3つのタンパク質はp40プロモーターから翻訳され、1つのmRNAを形成する。このmRNAが合成されたのちに、長いイントロンまたは短いイントロンを切り取ることができ、その結果2.3kbまたは2.6kbのmRNAを形成する。
【0046】
前記AAVカプシドは、60のカプシドタンパク質サブユニット(VP1、VP2、およびVP3)で構成され、前記サブユニットは、1:1:10の比率の正二十面体対称で配置され、3.9MDaの推定サイズを有する。
【0047】
本明細書において、「cap遺伝子」という用語は、野生型cap遺伝子およびその誘導体、ならびに、同等の機能を有する人工のcap遺伝子を含む。前記AAV(血清型2)cap遺伝子ヌクレオチド配列およびCapポリペプチド配列は、それぞれ、配列番号2および3に記載されている。本明細書において、「cap遺伝子」という用語は、好ましくは、配列番号2に記載の配列を有するヌクレオチド配列、または配列番号3のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のことをいうか、または配列番号2に対する配列同一性が少なくとも70%、80%、85%、90%、95%または99%、もしくは配列番号3のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対するヌクレオチド配列同一性が少なくとも80%、90%、95%または99%であり、VP1、VP2およびVP3ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のことをいう。
【0048】
前記rep遺伝子およびcap遺伝子は、好ましくはウイルス遺伝子であるか、またはウイルス遺伝子から由来する。より好ましくは、それらはAAV遺伝子であるか、またはAAV遺伝子から由来する。一部の実施形態において、前記AAVは、アデノ随伴デペンドパルボウイルスAである。他の実施形態において、前記AAVは、アデノ随伴デペンドパルボウイルスBである。
【0049】
11の異なるAAV血清型が公知である。前記公知の血清型はすべて、多様な組織タイプの細胞に感染することができる。組織特異性は、カプシド血清型によって決定される。前記AAVは、血清型1、血清型2、血清型3、血清型4、血清型5、血清型6、血清型7、血清型8、血清型9、血清型10、または血清型11由来であってもよい。好ましくは、前記AAVは、血清型1、血清型2、血清型5、血清型6、血清型7、血清型8、または血清型9であってもよい。最も好ましくは、前記AAV血清型は5である(すなわち、AAV5)。
【0050】
前記rep遺伝子およびcap遺伝子(および、その中のタンパク質コーディングORFの各々)は、1つ以上の異なるウイルス(たとえば、2つ、3つ、または4つの異なるウイルス)由来であってもよい。たとえば、前記rep遺伝子がAAV2由来であってもよく、一方で前記cap遺伝子がAAV5由来であってもよい。
【0051】
AAVのrep遺伝子およびcap遺伝子が系統や分離株によって異なることは、当業者に認識されている。かかる系統や分離株のすべてから由来するこれら遺伝子の配列が本明細書において含まれ、またそれらの誘導体も含まれる。
【0052】
本明細書において、「組み換えAAVゲノム」という用語は、AAV末端逆位反復配列(ITR)に隣接する導入遺伝子を(rep遺伝子およびcap遺伝子の代わりに)含むAAVゲノムのことをいう。本明細書において、「AAVゲノム」、「AAVトランスファーベクター」、および「トランスファープラスミド」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。それらはすべて、導入遺伝子に隣接する5'-および3'-ウイルス性(好ましくはAAV)末端逆位反復配列(ITR)を含むベクターのことをいう。
【0053】
前記導入遺伝子はコーディング配列であっても、非コーディング配列であってもよく、ゲノムDNAであってもcDNAであってもよい。好ましくは、前記導入遺伝子は、ポリペプチドまたはその断片をコードする。
好ましくは、導入遺伝子は1つ以上の転写制御エレメントおよび/または翻訳制御エレメント(たとえば、エンハンサー配列、プロモーター配列、ターミネーター配列など)と作動可能に関連する。
【0054】
一部の実施形態において、前記導入遺伝子は、治療ポリペプチドまたはその断片をコードする。好ましい治療ポリペプチドの例は、抗体、CAR-T分子、scFV、BiTE、DARPinおよびT細胞受容体を含む。
【0055】
一部の実施形態においては、治療ポリペプチドはDRD1などのGタンパク質共役受容体(GPCR)である。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは、免疫療法ターゲット、たとえばCD19、CD40またはCD38などである。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは、ヒトの視覚または網膜機能に関与する遺伝子の機能的コピー、たとえばRPE65またはREPなどの機能的コピーである。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは、ヒトの血液生成に関与する遺伝子の機能的コピーであるか、または第IX因子などの血液成分であるか、またはβまたはαサラセミアまたは鎌形赤血球貧血に関与するものである。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは、重症複合免疫不全(SCID)またはアデノシンデアミナーゼ欠損症(ADA-SCID)におけるものなどの免疫機能に関与する遺伝子の機能的コピーである。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは、細胞、たとえば増殖因子受容体の増殖を増加/減少させるタンパク質である。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドはイオンチャネルポリペプチドである。
【0056】
一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは免疫チェックポイント分子である。好ましくは、免疫チェックポイント分子は腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーメンバー(たとえば、CD27、CD40、OX40、GITRまたはCD137など)またはB7-CD28スーパーファミリーメンバー(たとえば、CD28、CTLA4またはICOSなど)である。好ましくは、免疫チェックポイント分子は、PD1、PDL1、CTLA4、Lag1、またはGITRである。
【0057】
一部の好ましい実施形態においては、導入遺伝子は、CRISPR酵素(たとえば、Cas9,dCas9、Cpf1、またはその変異体もしくは誘導体)またはCRISPR sgRNAをコードする。
【0058】
野生型AAV p5プロモーターは、Rep78ポリペプチドおよびRep68ポリペプチドの発現を促進する。前記p5プロモーターは、前記野生型rep遺伝子の5'末端に位置する。
【0059】
野生型AAV2 p5プロモーターは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列を有する。コア配列はボールドで強調表示されている。
【0060】
本明細書において、「機能的p5プロモーター」という用語は、配列番号4のヌクレオチド配列からなるかもしくはそれを含むヌクレオチド配列、あるいは、その変異体であって配列番号4に対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%である変異体からなるかもしくはそれを含み、かつ一つ以上のAAV Repポリペプチドをコードする、好ましくはRep78ポリペプチドおよびRep68ポリペプチドをコードする作動可能に関連するヌクレオチド分子の転写を促進することができる
ヌクレオチド配列のことをいう。
【0061】
p5プロモーターの活性レベルは、試験p5プロモーター配列を好適な導入遺伝子と作動可能に関連付けし、そして前記導入遺伝子の発現レベルについて解析することにより判定されてもよい。
【0062】
野生型p5プロモーター(同じ導入遺伝子と作動可能に関連付けられた場合)の発現レベルの5%未満(好ましくは1%未満)である発現レベルは、機能的ではないとみなされてもよい。
【0063】
一部の実施形態において、本発明の核酸分子において、(i)前記Repポリペプチドコーディング配列は、機能的AAV p5プロモーターに作動可能に関連していない。好ましくは、このヌクレオチド配列は、前記Repポリペプチドコーディング配列の上流(5')に位置し、より好ましくは前記Repポリペプチドコーディング配列のすぐ上流に位置する(すなわち、Repポリペプチドコーディング配列の5'末端に連続して連結している)。このようにして、Rep78ポリペプチドおよびRep68ポリペプチドの発現が低減され、したがってこれらのポリペプチドのアデノウイルスに対する毒性が低減される。
【0064】
作動可能に関連するプロモーターの非存在下で、前記Rep78ポリペプチドおよび/またはRep68ポリペプチドは、低レベル、ベースラインレベルまたは最小限レベルでのみ、本発明の核酸分子から発現できる。
【0065】
たとえば、野生型AAV p5プロモーター配列(たとえば、配列番号4)は、前記コア領域(上記強調表示されている)における変異の存在により非機能的にされてもよく、または、プロモーターのTATAエレメントにおける変異を有していてもよく、それによってTATAエレメントはTATA結合タンパク質および/または転写開始に必要である他の転写因子によって結合されることができない。
【0066】
したがって、一実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、コア領域および/またはTATAエレメントに1つ以上の変異を有するAAV p5プロモーターと作動可能に関連する。好ましくは、これらの変異は、AAV p5プロモーターのプロモーター活性を、配列番号4のプロモーターと比較して低減し、最も好ましくは、低減してそれを非機能的(上記に定義されたように)にする。
【0067】
一部の好ましい実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、配列番号4に対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%である配列番号4のヌクレオチド配列の変異体からなるかまたはそれを含むヌクレオチド配列と作動可能に関連し、ここで、前記変異体が導入遺伝子と作動可能に関連している場合、当該導入遺伝子の発現レベルは、配列番号4の配列を有するプロモーターが当該導入遺伝子と作動可能に関連付けられている場合の発現レベルの5%未満(好ましくは1%未満)である。
【0068】
他の実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、機能的または非機能的AAV p5プロモーターに作動可能に関連していない。
【0069】
この実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、配列番号4に対する配列同一性が少なくとも99%、95%、90%または85%未満であるヌクレオチド配列と作動可能に関連していてもよく、好ましくはプロモーター活性が全く無いかまたは本質的に無い前記ヌクレオチド配列と作動可能に関連していてもよい。
【0070】
一部の実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、IRESエレメントに作動可能に関連していない。一部の実施形態において、前記p5プロモーターはIRESに置換されない。
本発明のこの態様の一部の実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、配列番号5(ヒトβグロブリン遺伝子の5'非翻訳領域(UTR)の部分を形成する配列)と作動可能に関連している。
【0071】
野生型AAV p19プロモーターは、Rep52ポリペプチドおよびRep40ポリペプチドの発現を促進する。p19プロモーターは、前記野生型rep遺伝子内に位置する。
【0072】
野生型AAV2 p19プロモーターは、配列番号6に記載のヌクレオチド配列を有する。強調表示された部分は、TATAボックスおよびTSSエレメントである。
【0073】
本明細書において、「機能的p19プロモーター」という用語は、配列番号6のヌクレオチド配列からなるかもしくはそれを含むヌクレオチド配列、あるいは、その変異体であって配列番号6に対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%である変異体からなるかもしくはそれを含み、かつ一つ以上のAAV Repポリペプチドをコードする、好ましくはRep52ポリペプチドおよびRep40ポリペプチドをコードする作動可能に関連するヌクレオチド分子の転写を促進することができるヌクレオチド配列のことをいう。
【0074】
p19プロモーターの活性レベルは、試験p19プロモーター配列を好適な導入遺伝子に作動可能に関連付けし、そして前記導入遺伝子の発現レベルについて解析することにより判定されてもよい。野生型p19プロモーター(同じ導入遺伝子に作動可能に関連付けられた場合)の発現レベルの5%未満(好ましくは1%未満)の発現レベルは、機能的ではないとみなされてもよい。
【0075】
一部の実施形態において、本発明の核酸分子において、(ii)前記Repポリペプチドコーディング配列は、機能的AAV p19プロモーターを含んでいない。作動可能に関連するプロモーターの非存在下で、前記Rep52ポリペプチドおよび/またはRep40ポリペプチドは、本発明の核酸分子から発現できない。このようにして、Rep52ポリペプチドおよび/またはRep40ポリペプチドの発現が防止または阻害される。これらのポリペプチドは、組み換えAAV粒子の産生に必須ではないが、アデノウイルス産生を阻害することができる。その結果、Rep52ポリペプチドおよび/またはRep40ポリペプチドの発現の防止または阻害により、アデノウイルスが本発明の核酸分子を含む系においてアデノウイルスの産生を増加させる。
【0076】
たとえば、野生型AAV p19プロモーター配列(たとえば、配列番号6)は、前記TSSエレメントにおける変異の存在により非機能的にされていてもよいし、または、プロモーターのTATAエレメントにおける変異を有していてもよく、それによってTATAエレメントは、TATA結合タンパク質および/または転写開始に必要である他の転写因子によって結合されることができない。
【0077】
したがって、一実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、TSSエレメントおよび/またはTATAエレメントに1つ以上の変異を有するAAV p19プロモーターと作動可能に関連する。好ましくは、これらの変異は、AAV p19プロモーターのプロモーター活性を、配列番号6のプロモーターと比較して低減し、最も好ましくは、低減してそれを非機能的(上記に定義されたように)にする。
【0078】
一部の実施形態において、前記AAV p19プロモーターは、TATAボックスの一部またはすべてを含む欠失を有する。より好ましくは、前記Repポリペプチドコーディング配列はp19プロモーターを有し、TATAボックスのヌクレオチドの1つ以上(たとえば1つ、2つ、3つ、または4つ)を代わりのヌクレオチドと置換することによって、たとえばTATA配列をTTTTに変換することにより、TATAボックスが切除され(ablated)ている。好ましくは、前記変更は同義変異であるか、または前記変更はコーディング配列のフレームを保存している。これら実施形態において、前記p19プロモーターは機能的であってもよく、非機能的であってもよい。
【0079】
非機能的p19配列の一例が、配列番号7に記載されている。強調表示された配列は、前記プロモーターを非機能的にする、変異したTATAボックスエレメントである。
【0080】
一部の好ましい実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、配列番号6に対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%である配列番号6のヌクレオチド配列の変異体からなるかまたはそれを含むヌクレオチド配列と作動可能に関連し、ここで、前記変異体が導入遺伝子と作動可能に関連している場合、前記導入遺伝子の発現レベルは、配列番号6の配列を有するプロモーターが導入遺伝子と作動可能に関連付けられている場合の発現レベルの5%未満(好ましくは1%未満)である。
【0081】
他の実施形態において、前記Repコーディングポリペプチド配列は、機能的AAV p19プロモーターをコードするが、機能的Rep52ポリペプチドおよび/または機能的Rep40ポリペプチドをコードしない。
好ましくは、前記Rep78ポリペプチド/Rep68ポリペプチドの活性は、有意な影響を受けることはない。
【0082】
たとえば、Rep52ポリペプチド/Rep40ポリペプチドの開始コドンは、これらのポリペプチドの発現を排除するよう変異してもよい。一例において、前記開始コドン(メチオニン)をコードするヌクレオチド配列が変異してもよく、好ましくは、前記Rep78ポリペプチド/Rep68ポリペプチドの発現に有意な影響を及ぼすことなく変異してもよい。
【0083】
非機能的Rep52配列の例としては、配列番号16のヌクレオチド配列の変異体または配列番号18のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の変異体からなるヌクレオチド配列または該変異体を含むヌクレオチド配列であって、それに対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%であり、かつ機能的Rep52ポリペプチド配列をコードしないヌクレオチド配列がある。
【0084】
非機能的Rep40配列の例としては、配列番号17のヌクレオチド配列の変異体または配列番号19のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の変異体からなるヌクレオチド配列または該変異体を含むヌクレオチド配列であって、それに対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%であり、かつ機能的Rep40ポリペプチド配列をコードしないヌクレオチド配列がある。
【0085】
前記Rep52ポリペプチド/Rep40ポリペプチドは、ATPと結合し、かつヘリカーゼ活性を有し、かつ一本鎖のゲノム前駆体の蓄積の支援、および予め形成されたAAVカプシドへの新たに形成されたDNA鎖のパッケージの支援に関与してもよい。これらはRep78やRep68とは異なり、AAVの産生用のための使い捨て(disposable)であるとみなされることがよくある。
【0086】
Rep52ポリペプチド変異体またはRep40ポリペプチド変異体が発現しているかどうかをウエスタンブロットで判定し、これらのポリペプチドが正しい分子量で産生されているかを判定することが可能である。これらのポリペプチドの機能は、その精製された形態で、ATPの消費を判定する生物発光ATPアッセイを使用して判定してもよい。Rep52およびRep40はどちらもヘリカーゼ活性を有するので、適切なヘリカーゼアッセイも使用してもよい。
【0087】
野生型Rep52ポリペプチド(たとえば、配列番号18のもの)のヘリカーゼ活性レベルの5%未満(好ましくは1%未満)のレベルのヘリカーゼ活性を有する試験Rep52ポリペプチドは、非機能的Rep52ポリペプチドであると考えてよい。
【0088】
野生型Rep40ポリペプチド(たとえば、配列番号19のもの)のヘリカーゼ活性レベルの5%未満(好ましくは1%未満)のレベルのヘリカーゼ活性を有する試験Rep40ポリペプチドは、非機能的Rep40ポリペプチドであると考えてよい。
【0089】
野生型AAV p40プロモーターは、AAV Capポリペプチドの発現を促進する。p40プロモーターは、前記野生型AAV rep遺伝子の3’末端の近くに位置する。
【0090】
野生型AAV2 p40プロモーターは、配列番号8に記載のヌクレオチド配列を有する。強調表示されたエレメントは、TATAエレメントである。
【0091】
本明細書において、「機能的p40プロモーター」という用語は、配列番号8のヌクレオチド配列からなるかもしくはそれを含むヌクレオチド配列、あるいは、その変異体であって配列番号8に対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%である変異体からなるかもしくはそれを含み、かつ、1つ以上のAAV Repポリペプチドをコードする、好ましくは1つ以上のAAV Capポリペプチドをコードする作動可能に関連するヌクレオチド分子の転写を促進することができるヌクレオチド配列のことをいう。
【0092】
p40プロモーターの活性レベルは、試験p40プロモーター配列を好適な導入遺伝子に作動可能に関連付け、前記導入遺伝子の発現レベルについて解析することにより判定されてもよい。野生型p40プロモーター(同じ導入遺伝子に作動可能に関連付けられた場合)の発現レベルの5%未満(好ましくは1%未満)の発現レベルは、機能的ではないとみなされてもよい。
【0093】
一部の実施形態において、本発明の核酸分子において、(ii)前記Repポリペプチドコーディング配列は、機能的AAV p40プロモーターを含んでいない。このように、アデノウイルス阻害配列は転写されない。
【0094】
たとえば、野生型AAV p40プロモーター配列(たとえば、配列番号8)は、プロモーターのTATAエレメントにおける変異の存在により非機能的にされていてもよく、それによってTATAエレメントはTATA結合タンパク質および/または転写開始に必要である他の転写因子によって結合されることができない。
【0095】
したがって、一実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、TATAエレメントに1つ以上の変異を有するAAV p40プロモーターと作動可能に関連する。好ましくは、これらの変異は、AAV p40プロモーターのプロモーター活性を、配列番号8のプロモーターと比較して低減し、最も好ましくは、低減してそれを非機能的(上記に定義されたように)にする。
【0096】
一部の好ましい実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、配列番号8に対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%である配列番号8のヌクレオチド配列の変異体からなるかまたはそれを含むヌクレオチド配列と作動可能に関連し、ここで、前記変異体が導入遺伝子と作動可能に関連している場合、当該導入遺伝子の発現レベルは、配列番号8の配列を有するプロモーターが当該導入遺伝子と作動可能に関連付けられている場合の発現レベルの5%未満(好ましくは1%未満)である。
【0097】
他の実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、機能的または非機能的AAV p40プロモーターに作動可能に関連していない。この実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、配列番号8に対する配列同一性が少なくとも99%、95%、90%または85%未満であるヌクレオチド配列であって、好ましくはプロモーター活性が全く無いか本質的に無いヌクレオチド配列と作動可能に関連していてもよい。
【0098】
好ましい非機能的p40プロモーター配列が、配列番号9に記載されている。この配列において、TATAボックスエレメント、転写開始部位および転写因子結合部位が変異し、その一方で、Rep78ポリペプチドコーディング配列およびRep68ポリペプチドコーディング配列は維持されている。
【0099】
野生型AAV p40プロモーター配列は、アデノウイルス阻害配列を含む。本明細書において、「機能的アデノウイルス阻害配列(inhibitor sequence)」という用語は、アデノウイルスゲノムのシスに存在する場合に、そのアデノウイルスの複製を著しく阻害するヌクレオチド配列のことをいう。野生型AAV2アデノウイルス阻害配列は、配列番号10の配列を有する。この配列は、前記p40プロモーターおよびアデノウイルス阻害配列を形成する。前記TATAエレメントおよび転写開始部位は、阻害配列のコアを形成する。
【0100】
好ましくは、機能的アデノウイルス阻害配列は、配列番号10に示される配列を有するもの、または、配列番号10に対する配列同一性が少なくとも80%、85%、90%または95%であり、かつ、宿主細胞中でアデノウイルスベクターの複製を阻害することができる変異体として、定義される。
【0101】
アデノウイルス阻害配列の活性レベルは、分子クローニングによってアデノウイルス阻害配列を(シスまたはトランスに)AVベクターの配列に含め、その後前記AVを哺乳類細胞中に回収しようとすることにより、判定してもよい。野生型アデノウイルス阻害配列をAVに挿入することにより、いかなるAVベクターの回収や増殖(outgrowth)をも完全に防止するであろう。アデノウイルス阻害配列の配列修飾により、AVベクターを回収できるかもしれないが、その成功の度合いはまちまちである。これは回収されたAVの感染力価を測定することにより算出でき、阻害のレベルを判定する。AV力価を測定するために使用できるアッセイには、TCID50法や、プラークアッセイ法などがある。
【0102】
野生型アデノウイルス阻害配列の活性レベルの5%未満(好ましくは1%未満)の活性レベル(同じ条件下で)は、機能的ではないとみなされてもよい。
【0103】
野生型AAV rep遺伝子は、アデノウイルス阻害配列を含むp40プロモーター配列を含む。
【0104】
一部の実施形態において、本発明の核酸分子において、(iii)前記Repポリペプチドコーディング配列は、機能的アデノウイルス阻害剤配列を含んでいない。
【0105】
たとえば、アデノウイルス阻害配列がRepポリペプチドコーディング配列から除去されてもよく、またはアデノウイルス阻害配列が(たとえば、アデノウイルス阻害配列に1つ以上の変異をつくることにより)非機能的にされてもよい。
【0106】
宿主細胞においてアデノウイルス阻害配列の転写が宿主細胞中の野生型アデノウイルスの複製を著しく阻害しないように、前記アデノウイルス阻害配列が修飾されていてもよい。
【0107】
好ましくは、Repポリペプチドコーディング配列は機能的Rep78ポリペプチドおよび機能的Rep68ポリペプチドをコードし、すなわち、アデノウイルス阻害配列の除去、またはアデノウイルス阻害配列を非機能的にすることは、Rep78ポリペプチドおよびRep68ポリペプチドのアミノ酸コーディング配列に影響しない。
【0108】
好ましくは、同義コドン交換により、p40プロモーター内のAV阻害配列を除去し、Repコーディングアミノ酸を維持する。これにより、AV遺伝子の阻害が低減される。
【0109】
一部の実施形態において、Rep52ポリペプチドおよび/またはRep40ポリペプチドのための正しいコーディング配列を保持する必要が無い。
【0110】
一実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、機能的p40プロモーター配列を含み、すなわち、アデノウイルス阻害配列の除去、またはアデノウイルス阻害配列を非機能的にすることは、p40プロモーターの機能に影響せず、p40プロモーターの機能を著しく低減せず、または完全に除去したりしない。
【0111】
他の実施形態において、前記Repポリペプチドコーディング配列は、機能的p40プロモーター配列を含まず、すなわち、アデノウイルス阻害配列の除去、またはアデノウイルス阻害配列を非機能的にすることは、p40プロモーターの機能を完全に除去する。
【0112】
好ましくは、機能的p40プロモーター配列を有していないヌクレオチド配列は、配列番号11に記載の配列を有する。配列番号11において、同義コドン交換により、p40プロモーター内のAV阻害配列を除去して、Repコーディングアミノ酸を維持し、AV遺伝子の阻害を低減する。
【0113】
一部の実施形態において、本発明の核酸分子は、AAV Repポリペプチドコーディング配列と作動可能に関連する異種プロモーターを含んでいない。
【0114】
他の実施形態において、本発明の核酸分子は、AAV Repポリペプチドコーディング配列と近接するプロモーターを含んでいない。
【0115】
本明細書において、プロモーターおよび遺伝子という文脈での「作動可能に関連する」という用語は、問題となっているプロモーターと遺伝子とが、前記プロモーターが前記遺伝子の発現を促進できるほど互いに十分に近い距離で位置しているということを意味する。一部の実施形態において、前記プロモーターと前記遺伝子とは、並んでいるか(juxtaposed)、または近接している(contiguous)。
【0116】
好ましくは、Repポリペプチドコーディング配列(rep遺伝子)は、配列番号12に記載の配列を有するか、または、配列番号12に対するヌクレオチド配列同一性が少なくとも80%、85%、90%または95%である配列番号12の変異体を有し、ここで、p19プロモーターは非機能的であり、かつp40プロモーターは非機能的であり、かつアデノウイルス阻害配列は非機能的である。配列番号12において、p19プロモーターおよびp40プロモーターは切除され、Rep78コーディング配列およびRep68コーディング配列が保持されている。
【0117】
他の好ましい実施形態において、Repポリペプチドコーディング配列は下記の特徴を有する。
(i)機能的AAV p5プロモーターに作動可能に関連しておらず、かつ
(iii)機能的AAV p40プロモーターを含まず、かつ、機能的アデノウイルス阻害配列を含まない。
【0118】
より好ましくは、前記Repポリペプチドコーディング配列は、p19プロモーターを有し、ここで、TATAボックスは、たとえばTATAボックスのヌクレオチドの1つ以上(たとえば1つ、2つ、3つ、または4つ)を代わりのヌクレオチドと置換することによって切除され(ablated)ており、たとえばTATA配列をTTTTに変換することによって切除され(ablated)ている。
【0119】
一部の実施形態において、前記AAV p19プロモーターは、TATAボックスの一部またはすべてを含む欠失を含むか、またはTATA塩基の1つ以上がTATAから代わりのヌクレオチドに変わっている。好ましくは、前記変更は同義変異であるか、または前記変更はコーディング配列のフレームを保存している。
【0120】
p19プロモーターは機能的であってもよく、すなわちRep40ポリペプチドおよびRep52ポリペプチドはp19プロモーターから発現できる。または、p19プロモーターは非機能的であってもよい。
【0121】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明の核酸分子を含むアデノウイルスベクターを提供する。本発明の核酸分子は、アデノウイルスゲノムに安定的に組み込まれている。
【0122】
本発明の核酸分子を適応させるために、1つ以上のアデノウイルス遺伝子の一部またはすべて(好ましくはアデノウイルスヘルパー遺伝子ではない遺伝子)を欠失してもよい。
【0123】
たとえば、本発明の核酸分子は、アデノウイルス初期遺伝子のうちの一つに挿入されていしてもよく、または、初期遺伝子がアデノウイルスから欠失した部位に挿入されていしてもよい。後者の例では、欠失した初期遺伝子は、前記欠失した遺伝子を含む細胞株によって、たとえばアデノウイルスE1A領域およびE1B領域を含むHEK293細胞によって、トランス補完されてもよい。
【0124】
本発明の核酸分子は、アデノウイルスゲノムのE1欠失を含む領域に挿入されていてもよい。他の例では、アデノウイルスに必須ではない遺伝子もまた欠失することができ、これらの部位は本発明の核酸分子を挿入するために使用できる。たとえば、アデノウイルスベクターではE3遺伝子の大半が欠失できるので、本発明の核酸分子はE3領域に挿入されていてもよい。
【0125】
本発明の核酸分子は、(アデノウイルス遺伝子の転写の方向に対して)センスの向きで、またはアンチセンスの向きで、アデノウイルス遺伝子に挿入されていてもよい。本発明の好ましい実施形態は、本発明の核酸分子をE1領域に挿入する場合、本発明の核酸分子がE4、E2AおよびE2B発現カセットと同じ転写方向であることである。これは、(E1欠失AV中によく保持されている)E1Aプロモーターが、rep遺伝子発現を駆動するプロモーターとして動作しないようにするためである。前記E1Aプロモーターは、AVパッケージングシグナルを含んでいるので、除去できない。
【0126】
本発明の好ましい実施形態は、Repコーディング配列が上流プロモーターを含まないことである。
【0127】
一部の好ましい実施の形態において、本発明の核酸分子が、アデノウイルスE1遺伝子に挿入され、好ましくはE1遺伝子の一部が欠失している。好ましくは、前記E1遺伝子は、E1Aおよび/またはE1Bである。
【0128】
一実施形態において、本発明は、本発明の核酸分子を含むアデノウイルスベクターを提供し、(本発明の核酸分子によってコードされる)前記Repポリペプチドは、低レベル、ベースラインレベルまたは最小限レベルで発現する。
好ましくは、Repポリペプチドコーディング配列は、いかなる機能的プロモーターとも作動可能に関連していない。本明細書において、「低レベル、ベースラインレベル、または最小限レベル」という用語は、(野生型AAV rep遺伝子の)野生型p5プロモーターと作動可能に関連する野生型Rep78ポリペプチドの発現レベルの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満または10%未満である、本発明の核酸分子のRep78ポリペプチドの発現レベルのことをいう。このようにして、少なくともいくつかのAAVの産生を可能にするために、十分なRepポリペプチドが提供されるが、Repポリペプチドの発現レベルはアデノウイルスの複製を完全に阻害するには不十分である。
【0129】
一部の実施形態において、本発明の核酸分子は、本発明の核酸分子の発現がアデノウイルスプロモーターによって駆動されるように、好ましくは低レベルまたは最小レベルで駆動されるように、アデノウイルスゲノムに組み込まれる。
【0130】
他の実施形態において、本発明の核酸分子は、本発明の核酸分子の発現が作動可能に関連した異種プロモーターによって駆動されるように、好ましくは低レベルまたは最小レベルで駆動されるように、アデノウイルスゲノムに組み込まれる。
【0131】
作動可能に関連するプロモーターは、構成型プロモーターであってもよく、または誘導性プロモーターであってもよい。一部の実施形態において、前記プロモーターは構成型プロモーターである。他の実施形態において、前記プロモーターは、誘導性または抑制性である。
【0132】
構成型プロモーターの例としては、CMV、SV40、PGK(ヒトまたはマウス)、HSV TK、SFFV、ユビキチン、伸長因子アルファ、CHEF-1、FerH、Grp78、RSV、アデノウイルスE1A、CAG、もしくはCMVベータグロブリンプロモーター、またはそれらから誘導されたプロモーターなどがある。
【0133】
好ましくは、rep遺伝子プロモーターは、SV40プロモーター、または、それから誘導されたプロモーター、または、ヒト細胞およびヒト細胞株(たとえばHEKー293細胞)中のSV40プロモーターと比較して同等の強度のプロモーターもしくはそれより小さい強度のプロモーターである。
【0134】
一部の実施形態において、前記プロモーターは、誘導性または抑制性の制御性(プロモーター)エレメントを含むことにより、誘導性または抑制性である。
【0135】
たとえば、前記プロモーターは、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、IPTGまたはラクトースで誘導可能なものであってもよい。
【0136】
本発明の一部の実施形態において、本発明の核酸分子は、いかなる機能的プロモーターも含まず、かついかなる機能的プロモーターとも作動可能に関連していない。
【0137】
一部の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、AAV cap遺伝子をコードするヌクレオチド分子をさらに含む。
【0138】
好ましくは、前記AAV cap遺伝子は、AAV rep遺伝子または本発明の核酸分子とは並んでいない。特に、AAV cap遺伝子は、好ましくは、rep遺伝子p40プロモーター(野生型AAV p40プロモーターまたは本発明のp40プロモーター配列)と作動可能に関連していない。
【0139】
たとえば、好ましくは、前記AAV cap遺伝子は、AAV rep遺伝子(またはrep遺伝子プロモーター)または本発明の核酸分子の、1kb、2kb、3kb、4kb、または5kb以内のアデノウイルスゲノム中には存在しない。
【0140】
好ましくは、AAV cap遺伝子は異種プロモーターと作動可能に関連している。
好ましくは、AAV cap遺伝子は構成型プロモーターまたは誘導性プロモーターと作動可能に関連している。
【0141】
一部の実施形態において、AAV cap遺伝子はプロモーターと作動可能に関連していないか、または、最小のプロモーター、たとえば、CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーターの最小のプロモーター領域と作動可能に関連するか、、または、TATAボックスと、TATAボックスの下流で基礎転写を開始するために十分な制御性結合部位とを含む複合コアプロモーター領域と作動可能に関連する。プロモーターが使用されない場合は、TATAボックスは存在しない。これにより、cap遺伝子の低レベル、ベースラインレベルまたは最小限レベルでの発現が維持される。
【0142】
本明細書において、「低レベル、ベースラインレベル、または最小限レベル」という用語は、(たとえば野生型AAV中の)野生型p40プロモーターと作動可能に関連する野生型cap遺伝子の発現レベルの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満または10%未満である、cap遺伝子の発現レベルのことをいう。
【0143】
本明細書において、「異種」という用語は、問題となっている遺伝子が、生来的(naturally)に関連しているわけではない遺伝エレメントのことをいう。
【0144】
本発明の好ましい実施形態において、前記AAV cap遺伝子は、AAV rep遺伝子または本発明の核酸分子とは並んでいない。
【0145】
特に、AAV cap遺伝子は、アクチベータータンパク質およびrep遺伝子の両方をコードするAVにコードされたタンパク質によって活性化されるプロモーターの制御下で、AVに組み込まれる。
【0146】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の核酸分子を含むアデノウイルスベクター(第1のアデノウイルスベクター)は、(遠隔)プロモーター、たとえば第2のアデノウイルスベクターに存在するプロモーターを転写的に活性化することができるポリペプチドを、さらにコードする。好ましくは、前記第2のアデノウイルスベクターのプロモーターは、AAV cap遺伝子と作動可能に関連する(すなわち、その発現を駆動する)プロモーターである。
【0147】
一部の実施形態において、アデノウイルスベクターは、当該アデノウイルスベクターに存在しないプロモーターを転写的に活性化することができるポリペプチドをコードする。
【0148】
かかるポリペプチドの例としては、単純ヘルペスウイルス由来のVP16転写アクチベーター、およびp53タンパク質由来のトランスアクチベータードメインなどがある。これらの配列は、DNA結合ドメイン、クメート(cumate)結合部位またはテトラサイクリン結合部位に結合するものなどに連結してもよい。
【0149】
これによって、第1のアデノウイルスベクターと第2のアデノウイルスベクターとの両方が同じ細胞内に存在する場合にのみcap遺伝子の転写が誘導され、アデノウイルスの製造中にAAV cap遺伝子を発現する負担を軽減する。
【0150】
本発明は、また、本発明の核酸分子を含む宿主細胞も提供し、前記核酸分子は宿主細胞内にエピソーマルに存在する。前記宿主細胞は単離細胞であってもよく、たとえばそれらは生存する動物または生存する哺乳動物内に存在しない。好ましくは、前記宿主細胞は哺乳類細胞である。
哺乳類細胞の例は、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、サル、ウサギ、ロバ、ウマ、ヒツジ、ウシおよび類人猿に由来する任意の臓器または組織に由来するものを含む。
好ましくは、前記細胞はヒト細胞である。前記細胞は、初代細胞であってもよく、または不死化細胞であってもよい。
好ましい細胞には、HEK-293、HEK 293T、HEK-293E、HEK-293 FT、HEK-293S、HEK-293SG、HEK-293 FTM、HEK-293SGGD、HEK-293A、MDCK、C127、A549、HeLa、CHO、マウス骨髄腫、PerC6、911、およびVero細胞株がある。HEKー293細胞はE1Aタンパク質およびE1Bタンパク質を含むよう改変されており、このため、これらのタンパク質がヘルパープラスミドに供給される必要が無い。同様に、PerC6細胞および911細胞はより小さな改変を含み、これもまた使用することができる。
【0151】
最も好ましくは、ヒト細胞は、HEK293、HEK293T、HEK293A、PerC6、911、またはHeLaRC32である。他の好ましい細胞には、Hela細胞、CHO細胞およびVERO細胞などがある。
【0152】
本発明者らは、Repコーディング配列およびAAV ITR配列が同じアデノウイルスに存在することが、アデノウイルスの増殖に有害であると判断した。かかるアデノウイルスは回収できる一方で、その収量は典型的には、AVが各配列をそれぞれ独立して含む場合の5~10倍低い。したがって、Repコーディング配列およびAAV ITRs配列を分離すること、すなわちそれらを二つの別々のアデノウイルスベクターに配置することにより、利点が得られる。
【0153】
さらに他の実施形態において、本発明は、下記を含むキットを提供する:
(A)本発明の核酸分子を含む第1のアデノウイルスベクター、および
(B)下記を含む第2のアデノウイルスベクター、
(i)AAV Capポリペプチドをコードする核酸分子、および/または
(ii)組み換えAAVゲノムをコードする核酸分子。
【0154】
好ましくは、前記第1のアデノウイルスベクターは、前記第2のアデノウイルスベクターに存在するプロモーターを転写的に活性化することができるポリペプチドを、さらにコードする。好ましくは、前記第2のアデノウイルスベクター中のプロモーターは、AAV cap遺伝子と作動可能に関連する(すなわち、その発現を駆動する)プロモーターである。
【0155】
WO2019/020992は、後期アデノウイルス遺伝子の転写が、リプレッサーエレメントの主要後期プロモーターへの挿入により調節(阻害など)できることを開示している。アデノウイルス後期遺伝子の発現の「スイッチを切る」ことにより、細胞のタンパク質製造能力を所望の組み換えタンパク質またはAAV粒子の産生に転用することができる。好ましくは、本発明のアデノウイルスベクターは抑制可能な主要後期プロモーター(MLP)を含み、より好ましくは、前記MLPがアデノウイルス後期遺伝子の転写を調節または制御することのできる1つ以上のリプレッサーエレメントを含み、かつ前記リプレッサーエレメントの1つ以上がMLP TATAボックスの下流に挿入される。
【0156】
ウイルス(好ましくはAAV)粒子の産生に好ましい特徴は、下記のものがある。
-MLP TATAボックスと転写+1位との間に1つ以上のリプレッサーエレメントが挿入される。
- 前記リプレッサーエレメントが、リプレッサータンパク質と結合することのできるものである。
- リプレッサーエレメントと結合することのできるリプレッサータンパク質をコードする遺伝子が、アデノウイルスゲノム内でコードされる。
- 前記リプレッサータンパク質が、前記MLPの制御下で転写される。
- 前記リプレッサータンパク質が、テトラサイクリンリプレッサー、ラクトースリプレッサーまたはエクジソンリプレッサーであり、好ましくはテトラサイクリンリプレッサー(TetR)である。
- 前記リプレッサーエレメントが、配列番号13に示す配列を含むかまたはこれからなるテトラサイクリンリプレッサー結合部位である。
-前記MLPのヌクレオチド配列が、配列番号14または配列番号15に示す配列を含むかまたはこれからなる。
- リプレッサーエレメントの存在は、アデノウイルスE2Bタンパク質の産生に影響しない。
- 前記アデノウイルスベクターが、アデノウイルスL4 100Kタンパク質をコードし、かつ前記L4 100Kタンパク質は前記MLPの制御下にない。
- 導入遺伝子が、アデノウイルス初期領域の一つに挿入され、好ましくはトランスファープラスミドの代わりにアデノウイルスE1領域の中に挿入される。
- 前記導入遺伝子は、その5’-UTRに三分節系リーダー(TPL)を含む。
- 前記導入遺伝子は、治療ポリペプチドをコードする。
- 前記導入遺伝子は、ウイルスタンパク質をコードし、好ましくは細胞の中または外に集まってウイルス様粒子を産生することができるタンパク質をコードし、好ましくは前記導入遺伝子はノロウイルスVP1または肝炎B HBsAGをコードする。
【0157】
さらなる実施形態においては、本発明はまた、改変された宿主細胞を生成するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、
(a)本発明の核酸分子を宿主細胞に導入する工程を含み、
前記核酸分子は、
(i)前記宿主細胞のゲノムに安定的に組み込まれるか、または
(ii)前記宿主細胞内にエピソーマルに存在する。
【0158】
好ましくは、本発明の核酸分子は前記宿主細胞内にエピソーマルに存在する。
【0159】
本発明の一部の実施形態において、前記細胞中の本発明の核酸分子は、いかなる機能的プロモーターも含まず、かついかなる機能的プロモーターとも作動可能に関連していない。
【0160】
一部の実施形態において、前記宿主細胞は、Capポリペプチドおよび/またはAAVゲノムを発現する宿主細胞であるか、またはCapポリペプチドおよび/またはAAVゲノムを発現することができる宿主細胞である。
【0161】
たとえば、前記宿主細胞は、Capポリペプチドおよび/またはAAVゲノムをコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上のDNA分子が安定的に組み込まれる宿主細胞であってもよい。Capポリペプチドおよび/またはAAVゲノムをコードする前記ヌクレオチド配列は、好ましくは、好適な調節エレメントと作動可能に関連し、たとえば誘導性プロモーターまたは構成型プロモーターと作動可能に関連する。
【0162】
たとえば、前記宿主細胞は、Capポリペプチドおよび/またはAAVゲノムをコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上のDNAプラスミドまたはベクターを含む宿主細胞であってもよい。Capポリペプチドおよび/またはAAVゲノムをコードする前記ヌクレオチド配列は、好ましくは、好適な調節エレメントと作動可能に関連し、たとえば誘導性プロモーターまたは構成型プロモーターと作動可能に関連する。
【0163】
前記宿主細胞は、AAVパッケージング細胞またはAAV産生細胞であってもよい。
【0164】
本明細書において、1つ以上のプラスミドまたはベクターを細胞に「導入する」という用語は、形質転換を含み、特に、エレクトロポレーション、接合、感染、形質導入またはトランスフェクションのいずれの形態をも含む。
【0165】
さらなる実施形態においては、本発明は、改変されたアデノウイルスベクターを産生するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、
(a)本発明の核酸分子をアデノウイルスベクターに導入する工程を含む。
【0166】
好ましくは、前記核酸分子は、アデノウイルスベクターゲノムに安定的に組み込まれている。
【0167】
本発明の一部の実施形態において、前記アデノウイルスベクターゲノムの本発明の核酸分子は、いかなる機能的プロモーターも含まず、かついかなる機能的プロモーターとも作動可能に関連していない。
【0168】
さらなる実施形態においては、本発明は、AAV粒子を産生するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、
(a)哺乳類宿主細胞に本発明の第1のアデノウイルスベクターを感染させる工程と、
(b)前記宿主細胞に第2のアデノウイルスベクターを感染させる工程であって、
前記第2のアデノウイルスベクターは、導入遺伝子を含む組み換えAAVゲノムを含み、前記第1のアデノウイルスベクターおよび第2のアデノウイルスベクターのうちの少なくとも一つはAAV cap遺伝子を含む工程と、
(c)前記哺乳類宿主細胞を、培地で、導入遺伝子を含むAAV粒子が産生されるような条件下で、培養する工程と、
(d)AAV粒子を前記細胞または前記細胞培地から単離または精製する工程と、を含む。
【0169】
前記アデノウイルスベクターの少なくとも一つはまた、AAVゲノムをパッケージするために十分なヘルパー遺伝子(たとえば、E4、E1、E2a、およびVA)を含む。
【0170】
さらなる実施形態においては、本発明は、AAV粒子を産生するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、
(a)哺乳類宿主細胞にアデノウイルスベクターを感染させる工程であって、前記ベクターは、
(i)導入遺伝子を含む組み換えAAVゲノムと、
(ii)AAV cap遺伝子とを含み、
前記哺乳類宿主細胞は、前記宿主細胞内にエピソーマルに存在するかまたは前記宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれた本発明の核酸分子を含む、工程と、
(b)前記哺乳類宿主細胞を、培地で、導入遺伝子を含むAAV粒子が産生されるような条件下で、培養する工程と、
(c)AAV粒子を前記宿主細胞または前記細胞培地から単離または精製する工程と、を含む。
【0171】
前記アデノウイルスベクターはまた、AAVゲノムをパッケージするために十分なヘルパー遺伝子(たとえば、E2A遺伝子を含む、E4、E2aおよびVA)を含む。
【0172】
さらなる実施形態においては、本発明は、AAV粒子を産生するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、
(a)哺乳類宿主細胞に本発明の第1のアデノウイルスベクターを感染させる工程であって、
前記哺乳類宿主細胞は、前記宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれた組み換えAAVゲノムを含み、前記組み換えAAVゲノムは導入遺伝子を含み、ここで、
(i)前記アデノウイルスベクターは、さらにAAV cap遺伝子を含むか、または
(ii)AAV cap遺伝子が、前記哺乳類宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれるか、または
(iii)前記細胞が、AAV cap遺伝子を含む第2のアデノウイルスベクターに感染している、工程と
(b)前記哺乳類宿主細胞を、培地で、導入遺伝子を含むAAV粒子が産生されるような条件下で、培養する工程と、
(c)AAV粒子を前記細胞または前記細胞培地から単離または精製する工程と、を含む。
【0173】
前記細胞に存在する前記アデノウイルスベクターの少なくとも一つはまた、AAVゲノムをパッケージするために十分なヘルパー遺伝子(たとえば、E4、E1A、E1BおよびVA、ならびに場合によってはE2A遺伝子)を含む。
【0174】
さらなる実施形態においては、本発明は、組み換えAAV粒子を産生するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、
(a)哺乳類宿主細胞に本発明の第1のアデノウイルスベクターを感染させる工程であって、
(i)前記第1のアデノウイルスベクターは、さらにAAV cap遺伝子を含むか、または
(ii)前記細胞が、AAV cap遺伝子を含む第2のアデノウイルスベクターに感染している、工程と
(b)前記哺乳類宿主細胞に導入遺伝子を含む組み換えAAVを感染させる工程と、
(c)前記哺乳類宿主細胞を、培地で、導入遺伝子を含むAAV粒子が産生されるような条件下で、培養する工程と、
(d)AAV粒子を前記細胞または前記細胞培地から単離および/または精製する工程と、を含む。
【0175】
前記細胞に導入された(感染させた)前記アデノウイルスベクターの少なくとも一つはまた、AAVゲノムをパッケージするために十分なヘルパー遺伝子(たとえば、E4、E1A、E1BおよびVA、ならびに場合によってはE2A遺伝子)を含む。
【0176】
前記工程(a)および工程(b)における工程は、どのような順序で行われてもよい。導入遺伝子を含む前記初期組み換えAAVは、最初に、なんらかの好適な手段によって作成されればよい。
【0177】
上記の実施形態において、導入遺伝子および前記アデノウイルスベクターを含む前記初期組み換えAAVは、前記プロセスを繰り返すために、引き続きさらなる宿主細胞に再導入され(たとえば、再感染させ)てもよい。アデノウイルスの主要後期プロモーターが調節される例では、主にAAVが産生される。したがって、上記実施形態から産生されたAAV(の一部など)にくわえて、さらなるアデノウイルスベクターを前記宿主細胞に加えることにより、前記プロセスを繰り返すことができ、このように、さらなるアデノウイルスベクターを追加することを通じてAAVを継代培養する。このように、前記工程(a)および/または工程(b)を必要に応じて繰り返してもよい。
【0178】
二つのアミノ酸配列または核酸配列を整合するために利用できるアルゴリズムは、多数確立されている。典型的には、一つの配列が参照配列となり、参照配列に対して試験配列を比較すればよい。配列比較アルゴリズムは、試験配列の参照配列に対する百分率配列同一性を、指定されたプログラムパラメータに基づいて算出する。比較を目的としたアミノ酸配列または核酸配列の整合(alignment)は、たとえば、コンピュータ実行アルゴリズム(たとえば、GAP、BESTFIT、FASTAまたはTFASTA)、またはBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムなどによって実施されてもよい。
【0179】
百分率アミノ酸配列同一性および百分率ヌクレオチド配列同一性は、BLAST整合法を使用して判定してもよい(Altschul et al. (1997), "Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs", Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; and http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)。好ましくは、標準またはデフォルトの整合パラメータを用いる。
【0180】
タンパク質データベース内の類似した配列を見つけるために、標準タンパク質-タンパク質BLAST(blastp)を使用してもよい。他のBLASTプログラムと同様に、blastpは類似した局所的な領域を発見することができるように設計されている。配列の類似性が全配列に及ぶ場合、blastpは全般的整合も報告し、これはタンパク質同定の目的には好ましい結果である。好ましくは、標準またはデフォルトの整合パラメータを用いる。一部の場合では、「低複雑度フィルター」を外してもよい。
【0181】
BLASTタンパク質検索は、BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施することもある。比較を目的としたギャップ整合を得るために、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389の記載に従ってギャップBLAST(BLAST2.0に含まれる)を利用することができる。またその代わりに、PSI-BLAST(BLAST2.0に含まれる)を用いて、分子間の遠隔関係を検出する累次検索を実施することができる(Altschul et al. (1997)上記参照)。BLAST、ギャップBLAST、PSI-BLASTを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを用いてもよい。
【0182】
ヌクレオチド配列の比較については、MEGABLAST、不連続megablastおよびblastnを用いてこの目標を達成してもよい。好ましくは、標準またはデフォルトの整合パラメータを用いる。MEGABLASTは、非常に類似した配列間で長い整合を効率よく発見するよう特に設計されている。不連続MEGABLASTを用いて、本発明の核酸と類似しているが、同一ではないヌクレオチド配列を発見することができる。
【0183】
BLASTヌクレオチドアルゴリズムは、クエリをワードと呼ばれる短いサブ配列に分解することによって類似した配列を発見する。プログラムは、始めにクエリワードとの完全一致を特定する(ワードヒット)。次に、BLASTプログラムはこれらのワードヒットを多段階で拡張し、最終ギャップ整合を生成する。一部の実施形態においては、BLASTヌクレオチド検索はBLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12で実施することができる。
【0184】
BLAST検索の精度を支配する重要なパラメータの一つはワードサイズである。blastnがMEGABLASTよりも感度が高い最も重要な理由は、より短いデフォルトワードサイズ(11)を用いることである。このためblastnは、他の生物に由来する関連ヌクレオチド配列に対する整合発見において、MEGABLASTよりも優れている。blastnではワードサイズを調節することが可能であり、デフォルト値より短縮して最小で7とし、検索感度を高めることができる。
【0185】
新たに導入された不連続megablastページを用いることにより、より感度の高い検索を遂行することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/Web/Newsltr/FallWinter02/blastlab.html)。このページでは、Maら(Bioinformatics. 2002 Mar; 18(3): 440-5)によって報告されたものと同様のアルゴリズムを用いる。不連続megablastは、整合拡張のシードとして完全ワードマッチを必要とするのではなく、テンプレートのより長いウインドウ内で非連続ワードを用いる。コーディングモードでは、第1および第2コドン位置での一致の発見に注目する一方で、第3位の不一致を無視することにより、第3塩基のゆれを考慮に入れる。同じワードサイズを用いた不連続MEGABLASTにおける検索は、同じワードサイズを用いた標準的blastnよりも感度および効率が高い。不連続megablastに固有のパラメータは:ワードサイズ:11または12;テンプレート:16、18、または21;テンプレートタイプ:コーディング(0)、非コーディング(1)、または両方(2)である。
【0186】
一部の実施形態においては、デフォルトパラメータを用いてBLASTP2.5.0+アルゴリズム(NCBIから入手できるものなど)を用いうる。
【0187】
他の実施形態においては、ギャップコスト:Existence 11およびExtension 1による二つのタンパク質配列のNeedleman-Wunsch整合を用いたBLAST Global Alignmentプログラムを用いうる(NCBIから入手できるものなど)。
【0188】
本願に記載された各参照文献の開示はすべて、この参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【
図1】
図1は、rep遺伝子内の様々なAAVプロモーターを示した、野生型AAVゲノムの構造を示す。
【
図2A】
図2:AAV Repタンパク質は、アデノウイルス主要後期プロモーターからの基礎転写を抑制することができる。
【
図2B】
図2:AAV Repタンパク質は、アデノウイルス主要後期プロモーターからの基礎転写を抑制することができる。
【
図3A】
図3:AAV Rep DNAは、アデノウイルスゲノムへ安定的に組み込まれ複製される。
【
図3B】
図3:AAV Rep DNAは、アデノウイルスゲノムへ安定的に組み込まれ複製される。
【
図4A】
図4:TERAベクターとの共感染は、ヘルパーフリープラスミドトランスフェクション法と比較して、HEK293細胞におけるAAVの産生を著しく増大させる。
【
図4B】
図4:TERAベクターとの共感染は、ヘルパーフリープラスミドトランスフェクション法と比較して、HEK293細胞におけるAAVの産生を著しく増大させる。
【
図5】
図5:AAVトランスファーゲノムとAAV2 capとをコードするTERAベクターと、AAV Rep78-68をコードするTERAベクターとの共感染は、ヘルパーフリープラスミドトランスフェクション法と比較して、HEK293細胞におけるAAVの産生を著しく増大させる。
【
図6】
図6:HEK293細胞にTERA-AAVおよびTERA-RepCapを共感染させることによるAAVの産生、または、ヘルパーフリープラスミドトランスフェクション法によるAAVの産生。結果として、全AAV感染粒子と、AAV粒子を含む全ゲノムに対する形質導入粒子の比率とを示す。定量化は、AAVの段階希釈をHEK293細胞に加えてGFP陽性細胞を最も低い希釈でカウントする、改定TCID50法を介して行う。その後TCID50法にしたがいAAV力価を反転演算処理する。
【
図7】
図7:本発明がWO2019/020992に開示されているような抑制可能なアデノウイルス系を妨げないことを示す。全感染アデノウイルス粒子が示され、AAV Rep遺伝子およびAAV Cap遺伝子がアデノウイルスベクターに組み込まれても、AAV製剤のアデノウイルス混入を防止するためにこの手法が使用できることを表している。アデノウイルスヘキソン配列に対してQPCRにより定量化を行う。
【
図8】
図8:アデノウイルスベクターへのAAV Rep、Capおよびゲノムの組み込みが、プラスミドフリーのAAV産生を可能にし、プラスミドに基づく産生方法と比較して収率を著しく改善することを示す。定量化は、AAVベクターにおけるEGFP発現カセットに対してQPCRを使用する。
【
図9】
図9:AAV rep遺伝子およびAAV Cap遺伝子をコードするアデノウイルスベクターの連続継代。アデノウイルスヘキソン配列と比較したこれらの配列のQPCR定量化は、これらの遺伝子が安定的に挿入されており、長期にわたって伝播可能であることを示す。
【
図10】
図10:TERA-RepCapからのAAV Rep発現を示すウエスタンブロットであり、AAV Repの全主要アイソフォームの発現を示す。
【
図11】
図11:AAV Rep(TERA-RepCap、TERA2.0またはTERA2.0+Dox)をコードするアデノウイルスベクターを感染させた細胞、またはAAV2参照物質のウエスタンブロット
【
図12】
図12:AAV血清型5からのRepおよびCapをコードするものと、AAVゲノムをコードするものとの二つのアデノウイルスベクター(TERA2.0)を細胞に感染させた場合に、ヘルパーフリー法と比較して、AAV産生が高いことを示す。
【
図13】
図13:AAV血清型6からのRepおよびCapをコードするものと、AAVゲノムをコードするものとの二つのアデノウイルスベクター(TERA2.0)を細胞に感染させた場合に、ヘルパーフリー法と比較して、AAV産生が高いことを示す。
【
図14】
図14:AAV血清型9からのRepおよびCapをコードするものと、AAVゲノムをコードするものとの二つのアデノウイルスベクター(TERA2.0)を細胞に感染させた場合に、ヘルパーフリー法と比較して、AAV産生が高いことを示す。
【
図15】
図15Aは、Repコーディング配列をアデノウイルスベクターに組み込むことにより、Repをコードするプラスミドまたはトリプルプラスミド/ヘルパーフリー手法と比較して、AAVの収量を著しく増加させることを示す。
図15Bは、Repプロモーターが強力なCMVプロモーターから駆動される場合でも、AAV生産性に関してアデノウイルスベクターへの組み込みが著しく優れていることを示す。
【実施例】
【0190】
本発明は以下の実施例によってさらに例示され、別段の言及がない限りその部および割合は重量によるものであり、温度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示を目的としてのみ提示されることを理解すべきである。上記の考察およびこれらの実施例により、当業者は本発明の本質的特性を確認し、その主旨および範囲を逸脱することなく、本発明に多様な変更および変法を行って多様な用途および条件に適合させることができる。したがって、本願に提示および記載するものに加えて、本発明の多様な変法が、先行する記述により当業者に明らかになるであろう。そのような変法もまたは付属の請求項の範囲内となることを意図している。
【0191】
下記の実施例では、「TERAベクター」とは、WO2019/020992に記載のように、主要後期プロモーターからの後期アデノウイルス遺伝子の転写が調節されているアデノウイルスベクターのことをいう。WO2019/020992は、後期アデノウイルス遺伝子の転写が、主要後期プロモーターへのリプレッサーエレメントの挿入により調節(阻害など)できることを開示している。アデノウイルス後期遺伝子の発現の「スイッチを切る」ことにより、細胞のタンパク質製造能力を所望の組み換えタンパク質またはAAV粒子の産生に転用することができる。
【0192】
WO2019/020992は、主要後期プロモーターにリプレッサーエレメントを含むアデノウイルスベクターが、下流に、かつ主要後期プロモーターの転写制御下で、TetRタンパク質をコードすることもできることを開示している。ドキシサイクリンの非存在下で、前記TetRタンパク質は、主要後期プロモーターリプレッサーエレメントに結合し、プロモーターの活性を抑制する。ドキシサイクリンの存在下で、前記TetRタンパク質は、主要後期プロモーター中の主要後期プロモーターリプレッサーエレメントに結合できない。その結果、ドキシサイクリンの存在下で、アデノウイルスの主要後期プロモーターが活性化し、アデノウイルスの構造遺伝子が発現し、前記ウイルスの複製が起こりうる。
ベクター「TERA-AAV」は、AAVトランスファーゲノムをコードする。
【0193】
ベクター「TERA-RepCap」は、AAV RepおよびAAV Capをコードする。このコンストラクトにおいて、機能的Rep p5プロモーターまたは機能的p40プロモーターは存在せず、Repアデノウイルス阻害配列は存在せず、かつRep p19プロモーターが修飾されてTATAボックスが欠失しているが、前記プロモーターは機能を維持している。rep遺伝子がアデノウイルスのE1領域に挿入されている。CapはCMVプロモーターから発現している。cap遺伝子がアデノウイルスのE1領域に挿入されている。CMVプロモーターの転写方向は、Repコーディング配列に向かってはいない。
【0194】
TERA2.0の手法とは、TERA-AAVおよびTERA-RepCapを細胞に加えるプロセスのことをいう。
【0195】
ベクターTERA-RepCap5、TERA-RepCap6、およびTERA-RepCap9は、AAV5、AAV6、またはAAV9からのAAV Rep遺伝子およびAAV Cap遺伝子を、それぞれコードする。TERA-RepCap5において、前記Cap遺伝子は最小のCMVプロモーター領域によって駆動される。TERA-RepCap6およびTERA-RepCap9において、前記Cap遺伝子は全長のCMVプロモーターによって駆動される。これらのコンストラクトにおいて、機能的Rep p5プロモーターまたは機能的p40プロモーターは存在せず、Repアデノウイルス阻害配列は存在せず、かつRep p19プロモーターが修飾されてTATAボックスが切除されているが、前記プロモーターは機能を維持している。rep遺伝子がアデノウイルスのE1領域に挿入されている。Cap遺伝子発現カセットがアデノウイルスのE1領域に挿入されている。前記最小のCMVプロモーターまたは前記全長のCMVプロモーターの転写方向は、Repコーディング配列に向かってはいない。
【0196】
トリプルプラスミドトランスフェクションまたはヘルパーフリーの手法とは、(アデノウイルスの使用とは違って)アデノウイルスヘルパープラスミド、天然に見出されるようなAAV RepおよびAAV Capをコードするプラスミド、およびCMV駆動EGFP発現カセットがAAV ITRの間に挿入されているようなAAVゲノムを含むプラスミドのトランスフェクションのことをいう。
【0197】
前記プラスミドpRepCap2、pRepCap5、pRepCap6、pRepCap9は、AAV2、AAV5、AAV6、またはAAV9からのAAV Rep遺伝子およびAAV Cap遺伝子を、それぞれコードする。これらのコンストラクトにおいて、前記AAV rep遺伝子およびAAV Cap遺伝子は、天然に見出されるような構成である。
【0198】
前記プラスミドpAAV-EGFPは、AAVゲノムの左右のITRをコードする。EGFPレポーター遺伝子の発現を駆動するCMVプロモーターがITRの間に挿入され、それにポリアデニル化シグナルが続く。
【0199】
前記プラスミドpHelperは、AAVヘルパーに必要なアデノウイルス配列を含む。これは、E4領域、E2A領域、およびVA遺伝子を含む。本明細書に記載される研究に使用されるHEK293細胞に見出されるからといって、このプラスミドはアデノウイルスE1領域をコードするわけではない。
【0200】
実施例1:AAV Repタンパク質は、アデノウイルス主要後期プロモーターからの転写を抑制する。
アデノウイルス主要後期プロモーター(MLP)からの転写に対するAAV Repタンパク質の効果を判定するために、分子クローニング法によって、野生型MLP配列またはTetR抑制可能MLP配列を、EGFPレポータータンパク質を発現するプラスミドに挿入した。MLPプロモータープラスミドを、コントロールCMVプラスミド、またはCMVプロモーターの制御下でAAV Rep78、AAVRep68、AAVRep52もしくはAAVRep40を発現するプラスミドコンストラクトとともに、HEK293細胞に共トランスフェクトした。EGFPレポーターの発現を、トランスフェクションの48時間後にフローサイトメトリーによって定量化した。
その結果を
図2Aおよび2Bに示す。これらの結果は、Repタンパク質の高発現が、アデノウイルス主要後期プロモーターまたはTetR結合部位を含む主要後期プロモーターの修飾型の活性を阻害することを示している。
【0201】
実施例2:AAV rep DNAは、アデノウイルスゲノムへ安定的に組み込まれ複製される。
AAV Rep78ポリペプチドおよびAAV Rep68ポリペプチドをコードするアデノウイルスベクターを構築するために、p5プロモーターおよびp19プロモーター(AAV Rep52およびAAV Rep40の転写に関与)
、ならびにp40アデノウイルス阻害配列
を、(AAV Rep78ポリペプチドおよびAAV Rep68ポリペプチドは維持したままで)
スクランブルし(scramble)、かつ、分子クローニング法でアデノウイルスベクターのE1欠失領域に挿入した。
この結果、アデノウイルスベクターがRepコーディング配列とEGFPを発現するAAVゲノムとをコードする
図3Bに示すベクターの産生が起こった。
前記アデノウイルスベクターゲノムを、HEK293細胞にトランスフェクトし、完全な細胞変性効果を観察した後、トランスフェクションの15日後までにウイルスベクターを回収した。その後HEK293細胞でベクターを継代し(>5)、アデノウイルス粒子をDNaseで処理してカプセル化DNAを分解した。AAV Rep遺伝子配列およびアデノウイルスヘキソン遺伝子配列の存在を、QPCRによって判定した。その結果を
図3Aに示し、前記ベクターを
図3Bに示す。
図3Aは、AAV RepコーディングDNAの頻度と、アデウイルスヘキソンDNAの頻度が同数で存在することを示し、アデノウイルスゲノムへのRep DNAの挿入が安定的であることを表している。
【0202】
実施例3:TERAベクターとの共感染は、ヘルパーフリープラスミドトランスフェクション法と比較して、HEK293細胞におけるAAVの産生を著しく増大させる。
HEK293細胞を、48ウェル組織培養プレートフォーマットに9e4細胞/ウェルで24時間播種した。ヘルパーフリーのプラスミドで細胞をトリプルトランスフェクトするか、または、ドキシサイクリン0.5ug/mLまたはDMSOの存在下で、A)MOI 100で、EGFP発現カセットとCMVプロモーターによって駆動させたAAV2 Cap2遺伝子とともに、AAVトランスファーゲノムをコードするTERA(TERA-AAV-Cap)と、 B)MOI 50で、EGFP発現カセットとAAV Rep78-68sとともに、AAVトランスファーゲノムをコードするTERA(TERA-AAV-Rep)との共感染で、細胞をトリプルトランスフェクトした。AAVベクターを、形質導入の96時間後に回収し、カプセル化AAV粒子と混入しているアデノウイルス粒子とをQPCRで定量化した。
その結果を
図4Aに示し、前記ベクターを
図4Bに示す。これらの結果は、TERA-AAV-CapおよびTERA-AAV-Repの組み合わせを使用して、AAVが高力価で産生されうることを示している。
図4Aは、得られた力価が、ヘルパーフリーの手法のトリプルトランスフェクションで得られた力価よりもかなり高いことを示す。
図4Bは、TERA-AAV-RepおよびTERA-AAV-Capについて、AAV成分を含むアデノウイルスゲノムの模式図を示す。
【0203】
実施例4:AAVトランスファーゲノムおよびAAV2 CapをコードするTERAベクターと、AAV Rep78-68をコードするTERAベクターとの共感染は、ヘルパーフリープラスミドトランスフェクション法と比較して、HEK293細胞におけるAAVの産生を著しく増大させる。
HEK293細胞を48ウェル組織培養プレートフォーマットに9e4細胞/ウェルで24時間播種した。ヘルパーフリーのプラスミドで細胞をトリプルトランスフェクトするか、または、ドキシサイクリン0.5ug/mLまたはDMSOの存在下で、A)TERA-AAV-Capと、B)TERA-AAV-RepまたはC)AAV Rep78-68sをコードするTERA(TERA-Rep78-68)との(示されたMOIでの)共感染で細胞をトリプルトランスフェクトした。AAVベクターを、形質導入の96時間後に回収し、カプセル化AAV粒子と混入しているアデノウイルス粒子とをQPCRで定量化した。
その結果を
図5に示す。これらの結果は、AAV成分すべてを含む二つのウイルスが、AAV力価を改善し、これら力価はヘルパーフリー/トリプルプラスミドトランスフェクション手法で得られた力価よりもかなり高いということを示している。様々なウイルスベクターの組み合わせが
図5に示され、前記手法の柔軟性および多能性を示している。各産生において、少なくとも一つのウイルスベクターが本発明のRepコンストラクトを含む。
【0204】
実施例5:二つのTERAベクター、すなわちAAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターと、AAV repおよびAAV capをコードするTERAベクターとからなるTERA2.0システムを使用した、HEK293細胞におけるAAV2ベクターの産生
本明細書に記載の本発明の開発まで、AAV RepおよびAAV Capの両方を単一のアデノウイルスベクター内にコードすることは不可能だった。AAV製造の手法を単純化するために、血清型2からAAV RepとAAVカプシドとの両方をコードする新たなアデノウイルスベクターを構築した(TERA-RepCap)。この実施例において、この新たなアデノウイルスベクター(TERA-RepCap)をTERA-AAVと組み合わせて使用してのAAV産生を試験した。この手法をTERA-2.0と呼ぶ。この手法を、トリプルプラスミドトランスフェクション/ヘルパーフリー方法と比較した。
HEK293細胞にTERA-AAVおよびTERA-RepCapをそれぞれMOI 25で感染させて、TERA2.0を実現させた。
さらに、HEK293細胞をヘルパーフリープラスミド(pAAV-EGFP;pRepCap2;pHelper)でトリプルトランスフェクトした。細胞をベクターの回収前に4日間培養した。サンプルをDNAseで2時間37℃で処理し、EGFP導入遺伝子に対するプライマーおよびプローブを使用してqPCRで定量化した。これら二つの手法で産生されたAAVベクターを使用して、新鮮なHEK293細胞に感染させ、形質導入ユニットをTCID50アッセイによって定量化した。
その結果を
図6に示す。右の軸に示されるゲノムコピー(GC)と形質導入ユニット(TU)との比率は、qPCRによって判定された無傷のAAV粒子を、TCID50アッセイから測定された形質導入ユニットによって除することにより決定した。この実施例の結果は、TERA2.0を使用した細胞の感染(TERA-AAVおよびTERA-RepCapとの共感染)が、トリプルプラスミドトランスフェクションから産生された製剤と比較して、形質導入の能力のあるAAVベクターの産生を1000倍に増加できたことを示す。
【0205】
実施例6:TERA2.0手法を使用したAAV2産生プロセスからの混入アデノウイルスのレベルの判定
TERA2.0手法(TERA-AAVおよびTERA-RepCapとの共感染、それぞれMOI 25)を使用して感染させ、そしてドキシサイクリン0.5ug/mlまたはDMSO(-DOX)とともに4日間培養したHEK293細胞中でAAV産生を行い、た。ドキシサイクリン(DMSO処理群)の非存在下で、アデノウイルス後期遺伝子は抑制され、ウイルス複製サイクルが切断される(truncated)。さらに、増殖培地中のドキシサイクリンの存在は、TERAベクターからの後期アデノウイルス遺伝子の発現と、アデノウイルスの産生を可能にする。ベクターを3回凍結融解することにより回収し、混入アデノウイルスを新鮮なHEK293細胞に感染させることによるTCID50アッセイによって検出し、ドキシサイクリン0.5ug/mlを使用して培養した。
この実施例は、二つのTERAベクター、すなわちAAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターと、AAV RepおよびAAV CapをコードするTERAベクターとを使用した、ドキシサイクリン非存在下のAAVベクターの産生が、アデノウイルスの複製を著しく抑制し、混入の無いAAV製剤を生成したことを示す。ドキシサイクリン存在下でのAAV産生と比較して、混入アデノウイルスの99.999999%を超える減少(9 log reduction)が見られた。
【0206】
実施例7:1L攪拌タンクバイオリアクターでのトリプルプラスミドトランスフェクション法と比較した、TERA2.0システムを使用したHEK293細胞におけるAAV2ベクター産生
懸濁HEK293細胞をTERA2.0手法(TERA-AAVおよびTERA-RepCapを共感染)を使用してそれぞれMOI 25で感染させた。TCID50 Units/cell。
さらに、HEK293細胞をヘルパーフリープラスミド(pAAV-EGFP;pRepCap2;pHelper)でトリプルトランスフェクトした。細胞をベクターの回収前に4日間培養した。サンプルをDNAseで2時間37℃で処理し、EGFP導入遺伝子に対するプライマーおよびプローブを使用してqPCRで定量化し、無傷の粒子(ウイルスゲノム(VG))の力価を判定した。
この実施例は、AAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターとAAV RepおよびAAV CapをコードするTERAベクターとの共感染を利用して、懸濁適合HEK293細胞中で、AAV2ベクターが産生できることを示す。この手法から得られたAAV2ベクターの力価は、無傷の粒子において100倍を超える増加であった。
【0207】
実施例8:AAV repおよびAAV capをコードするTERAベクターのqPCRによる遺伝安定性の評価
TERA-RepCapをコードするプラスミドDNAを、ベクターの回収のためにHEK293細胞にトランスフェクトし、さらに連続継代によって増殖した。HYPERFlask細胞培養容器中で、HEK293細胞を感染させた(MOI 15)。3日後にベクターを回収し、塩化セシウム超遠心法によって精製し、連続継代4代を生成した。このプロセスを繰り返し、ベクター継代5、6、7代を作成した。各代で精製したTERA-RepCapベクターからDNAを抽出し、AAV2 rep遺伝子およびAAV2 cap遺伝子、ならびにAd5 ヘキソン遺伝子をqPCRによって定量化した。
図9のデータは、Ad5ヘキソンに対するAAV2 rep遺伝子およびAAV2 cap遺伝子のコピー数を示し、TERA-RepCapをコードするDNAプラスミドと比較した(ns、2要因分散分析(two-way ANOVA))。
この実施例は、AAV Rep遺伝子およびAAV Cap遺伝子が、HEK293細胞内での連続継代中に、TERAベクター内で安定的に伝播されることを示す。
【0208】
実施例9:AAV repおよびAAV capをコードするTERAベクターからのAAV Rep発現の評価。TERA2.0法を使用したAAV産生プロセスからのRepタンパク質のウエスタンブロット検出。
AAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクター(TERA-AAV)ならびにAAV RepおよびAAV CapをコードするTERAベクター(TERA-RepCap)で、HEK293細胞を共感染させた(MOI 各25)。感染の24時間および48時間後にサンプルを回収し、ウエスタンブロットによってAAV2 Rep抗体で、全細胞抽出物(25uL)を探索した。データは生物学的反復実験(duplicate biological replicates)として示す。
その結果を
図10に示す。この実施例は、AAV RepおよびAAV CapをコードするTERAベクターから高レベルのAAV Rep52およびAAV Rep40が発現し、低レベルのRep78およびRep68もまた発現することを示している。
【0209】
実施例10:AAV repおよびAAV capをコードするTERAベクターを使用して産生される粒子からのAAV2カプシドタンパク質の評価
HEK293細胞に、(ドキシサイクリン0.5μg/mLの存在下または非存在下で)TERA-AAVおよびTERE-RepCapを(MOI 各25)共感染させるか、または50GC/細胞でのAAV2粒子(TERA2.0から作成)のTERA-RepCap(MOI 25)との共感染を経て共感染させた。感染の96時間後にサンプルを回収し、抗AAV2 VP1/2/3抗体で細胞ライセート(25uL)を探索した。
その結果を
図11に示す。AAV2標準(ATCC VR-1616)も示される。
この結果は、AAV2カプシドサブユニットVP1、VP2およびVP3の相対的組成が、参照標準のAAV2ベクターと同じであり、また、トリプルプラスミドトランスフェクション法で産生される物質とも同じであることを示す。
【0210】
実施例11:二つのTERAベクター、すなわちAAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターと、AAV repおよびAAV cap5をコードするTERAベクターとからなるTERA2.0システムを使用した、HEK293細胞におけるAAV5ベクターの産生。AAV産生を、トリプルプラスミドトランスフェクション法と比較する。
上述したTERA2.0手法を使用してHEK293細胞を感染させるが、AAV2カプシドをAAV血清型5からのカプシドと交換した(TERA-AAVおよびTERA-RepCap5、Repは異種プロモーターからは発現せず、Cap5は最小のCMVプロモーターから発現する)。TERA-AAVはMOI 25で使用し、TERA-RepCap5は細胞あたり75個のゲノムコピー(GC)で使用した。または、HEK293細胞をヘルパーフリープラスミド(pAAV-EGFP;pRepCap5;pHelper)でトリプルトランスフェクトした。細胞をベクターの回収前に4日間培養した。サンプルをDNAseで2時間37℃で処理し、EGFP導入遺伝子に対するプライマーおよびプローブを使用してqPCRで定量化した。
その結果を
図12に示す。この実施例からの結果は、AAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターとAAV rep遺伝子およびAAV cap5遺伝子をコードするTERAベクターとの二つのTERAベクターとの共感染が、トリプルプラスミドトランスフェクション/ヘルパーフリー法と比較して、無傷のAAV5粒子の16倍を超える増加を可能にしたことを示す。
【0211】
実施例12:二つのTERAベクター、すなわちAAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターと、AAV RepおよびAAV Cap6をコードするTERAベクターとからなるTERA2.0システムを使用した、HEK293細胞におけるAAV6ベクターの産生。AAV産生を、トリプルプラスミドトランスフェクション法と比較する。
上述したTERA2.0手法を使用してHEK293細胞を感染させるが、AAV2カプシドをAAV血清型6からのカプシドと交換した(TERA-AAVおよびTERA-RepCap6)。TERA-AAVはMOI 25で使用し、TERA-RepCap6は細胞あたり75個のゲノムコピー(GC)で使用した。さらに、HEK293細胞をヘルパーフリープラスミド(pAAV-EGFP;pRepCap6;pHelper)でトリプルトランスフェクトした。細胞をベクターの回収前に4日間培養した。サンプルをDNAseで2時間37℃で処理し、EGFP導入遺伝子に対するプライマーおよびプローブを使用してqPCRで定量化した。
その結果を
図13に示す。この実施例からの結果は、AAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターとAAV Rep遺伝子およびAAV Cap6遺伝子をコードするTERAベクターとの二つのTERAベクターとの共感染が、トリプルプラスミドトランスフェクション法と比較して、無傷のAAV6粒子の18倍を超える増加を可能にしたことを示す。
【0212】
実施例13:二つのTERAベクター、すなわちAAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターと、AAV RepおよびAAV Cap9をコードするTERAベクターとからなるTERA2.0システムを使用した、HEK293細胞におけるAAV9ベクターの産生。AAV産生を、トリプルプラスミドトランスフェクション法と比較する。
上述したTERA2.0手法を使用してHEK293細胞を感染させるが、AAV2カプシドをAAV血清型9からのカプシドと交換した(TERA-AAVおよびTERA-RepCap9)。TERA-AAVはMOI 25で使用し、TERA-RepCap9は細胞あたり50個のゲノムコピー(GC)で使用した。さらに、HEK293細胞をヘルパーフリープラスミド(pAAV-EGFP;pRepCap9;pHelper)でトリプルトランスフェクトした。細胞をベクターの回収前に4日間培養した。サンプルをDNAseで2時間37℃で処理し、EGFP導入遺伝子に対するプライマーおよびプローブを使用してqPCRで定量化した。
その結果を
図14に示す。これらの結果は、AAVトランスファーゲノムをコードするTERAベクターとAAV rep遺伝子およびAAV Cap9遺伝子をコードするTERAベクターとの二つのTERAベクターとの共感染が、トリプルプラスミドトランスフェクション法と比較して、無傷のAAV9粒子の8.5倍を超える増加を可能にしたことを示す。
【0213】
実施例14:I)AAV RepをコードするTERAベクター(TERA-Rep)と、II)AAV-EGFPとCMVプロモーターで駆動されるAAV Cap2発現カセットとをコードするTERAベクター(TERA-AAVーEGFP-Cap2)との、二つのTERAベクターを使用した、HEK293細胞におけるAAV2ベクターの産生を、ヘルパーフリープラスミド法と比較し、または、TERA-Repを、天然型AAV p5プロモーターによって駆動されるRepコーディング配列をコードするプラスミドと交換したものと比較した。
AAV2-EGFPベクターを産生するために、HEK293細胞にTERA-Rep(MOI 5、10、または50)と、TERA-AAV-EGFP-Cap2(MOI 100)とを共感染させた。これを、プラスミドp5-RepをトランスフェクトしたHEK293細胞と比較した。この場合、Rep78ポリペプチド/Rep68ポリペプチドは天然型p5プロモーターから発現し、TERA-AAV-EGFP-Cap2と感染させた(MOI 100)。細胞をベクターの回収前に4日間培養した。サンプルをDNAseで2時間37℃で処理し、EGFP導入遺伝子に対するプライマーおよびプローブを使用してqPCRで定量化した。無傷のAAV2-EGFPの生産性を、ヘルパーフリートランスフェクション法(HF)と比較した。この場合、HEK293細胞はAAVトランスファーゲノムプラスミド(pAAV-EGFP)、プラスミドpRepCap2、およびプラスミドpHelperでトランスフェクトした。コントロールサンプルは、pRepCap2の代わりにスタッファーDNA(pUC19)でトランスフェクトし、DNAse処理の効率についての対照とした。
図15Aからの結果は、二つのTERAベクター:TERA-RepとTERA-AAV-EGFP-Cap2との共感染は、Rep発現プラスミドをトランスフェクションにより供給する場合、すなわちRepが天然型p5 AAVプロモーターから発現するか、または、ヘルパーフリープラスミドを介して発現する場合と比較して、は、無傷のAAV2ベクターの産生量を著しく増やしたことを示す。
図15Bの結果は、
図15Aの実験と同じ実験を示すが、Rep発現を駆動するp5プロモーターが強力なCMVプロモーターと置き換えられており、これは、TERA-Repの使用の場合と比較して、AAVの生産性を改善してはいない。
【0214】
参考文献
Fisher, K.J. et al (1996) A novel adenovirus-adeno-associated virus hybrid vector that displays efficient rescue and delivery of the AAV genome.Hum gene ther.7:2079-2087.
Liu, X.L et al (1999) Production of recombinant adeno-associated virus vectors using a packaging cell line and a hybrid recombinant adenovirus.Gene ther.6:293-299.
Sitaraman, V. et al (2011) Computationally designed adeno-associated virus (AAV) rep 78 is efficiently maintained within an adenovirus vector.Proc.Natl.Acad.Sci.108:14294-14299.
Timpe, J.M. et al (2006) Effect of adeno-associated virus on adenovirus replication and gene expression during coinfection.J. Virol.16:7807-7815.
Weger, S. et al (2016) A regulatory element near the 3' end of adeno-associated virus rep gene inhibits adenovirus replication in cis by means of p40 promoter-associated short transcripts.J. Virol.90:3981-3993.
Zhang, H-G. et al (2001) Recombinant adenovirus expressing adeno-associated virus cap and rep proteins supports production of high-titre recombinant adeno-associated virus.Gene ther.8:704-712.
Zhang, X. and Li, C-Y.(2001) Generation of recombinant adeno-associated virus vectors by a complete adenovirus-mediated approach.Mol.Ther.3:787-693.
【0215】
SEQUENCES
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
SEQUENCE LISTING FREE TEXT
<210> 1
<213> Rep nucleotide sequence (adeno-associated virus 2)
<210> 2
<213> Cap nucleotide sequence (adeno-associated virus 2)
<210> 3
<213> Cap amino acid sequence (adeno-associated virus 2)
<210> 4
<213> Wild-type adeno-associated virus 2 p5 promoter
<210> 5
<213> Sequence that forms part of the 5'-untranslated region (UTR) of the Homo sapiens beta-globin gene
<210> 6
<213> Wild-type adeno-associated virus 2 p19 promoter
<210> 7
<223> Non-functional p19 sequence
<210> 8
<213> Wild-type adeno-associated virus 2 p40 promoter
<210> 9
<223> Non-functional p40 promoter sequence
<210> 10
<213> Wild-type adeno-associated virus 2 adenovirus inhibitor
<210> 11
<223> Nucleotide sequence without a functional p40 promoter sequence
<210> 12
<223> rep gene sequence with p19 and p40 promoters ablated, retaining
the Rep78 and Rep68 coding sequences
<210> 13
<223> TetR binding site
<210> 14
<223> Modified MLP
<210> 15
<223> Modified MLP
<210> 16
<223> Rep52 nucleotide sequence
<210> 17
<223> Rep40 nucleotide sequence
<210> 18
<213> Rep52 amino acid sequence (adeno-associated virus 2)
<210> 19
<213> Rep40 amino acid sequence (adeno-associated virus 2)
<210> 20
<213> Rep78 nucleotide sequence (adeno-associated virus 2)
<210> 21
<213> Rep68 nucleotide sequence (adeno-associated virus 2)
<210> 22
<213> Rep78 amino acid sequence (adeno-associated virus 2)
<210> 23
<213> Rep68 amino acid sequence (adeno-associated virus 2)
【配列表】