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特許7522845ヌクレオチド系化合物のコロナウイルス感染症の治療での使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ヌクレオチド系化合物のコロナウイルス感染症の治療での使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7068 20060101AFI20240718BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
A61K31/7068
A61P31/14
A61K9/28
A61K9/48
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/08
C12N15/09 Z ZNA
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022551819
(86)(22)【出願日】2021-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2021077010
(87)【国際公開番号】W WO2021169861
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】202010125799.2
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521425261
【氏名又は名称】河南真実生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】常 俊標
(72)【発明者】
【氏名】杜 錦発
(72)【発明者】
【氏名】蒋 建東
(72)【発明者】
【氏名】李 玉環
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0259934(US,A1)
【文献】bioRxiv,2020年01月,p.1-8 ,doi: https://doi.org/10.1101/2020.01.30.927574
【文献】Signal Transduction and Targeted Therapy,2020年10月, 5(1),236, page 1-2
【文献】Advanced Science,2020年08月,7(19),2001435,page.1-10
【文献】medRxiv,2020年11月,page.1-24,doi: https://doi.org/10.1101/2020.11.16.20232884
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
COVID-19感染によって引き起こされるコロナウイルス感染症の予防又は治療薬を製造するための、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【化1】
式(I)中、
は、H、R -CO-、又は
【化2】
であり(ただし、Arは、フェニル基、又はナフチル基である。)
は、アジド基であり、
は、H、又はR-CO-であり、ただし、Rは、C-Cアルキル基であり、
は、Hであり、
Bは、式(II)で示され、
【化3】
(なお、式(II)中、Xは、-NHであり、Yは、CHである。)
Zは、Fであり、
は、H、及びC-Cアルキル基から選択されたものである。
【請求項2】
式(I)で示される化合物は、下記の化合物のいずれかである、請求項1に記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【化4】
【化5】
【請求項3】
式(I)化合物の薬学的に許容される塩は、式(I)化合物と下記の酸とで形成された塩を含み、前記酸は、塩酸、臭化水素酸、スルファミン酸、硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、グリコール酸、マロン酸、安息香酸、乳酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マンデル酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、パルミチン酸アスコルビル、サリチル酸、スルホサリチル酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、フタル酸、リジン、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、セリン、トレオニン、アラニン、イソロイシン、又はロイシンである、請求項1又は2に記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項4】
前記コロナウイルス感染症は、ヒト又は他の動物に感染して引き起こされる疾患を含み、特にヒトコロナウイルスがヒトに感染して引き起こされる疾患である、請求項1~3のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項5】
治療薬の剤形は、即時放出剤形、徐放剤形、又は放出制御剤形である、請求項1~3のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項6】
治療薬の剤形は、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、水性もしくは油性懸濁剤、粒剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、注射液、又は粉末注射剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオチド系化合物の新たな抗ウイルス使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス(Coronavirus、CoV)は、ウイルスエンベロープを有するフォワード一本鎖RNAウイルスであり、人類、他の哺乳動物及び鳥類で広く伝播し、呼吸道、腸管、肝臓及び神経系などの疾患を招くことがある。現在、7種類のCoVが人類の疾患を引き起こすと知られているが、そのうち、CoV-229E、-OC43、-NL63及び-HKU1の4種類が群衆で流行し、通常、一般的な風邪の症状を招く。一方、他のSARS-CoV、MERS-CoV及び新型コロナウイルス(2019-nCoV、又は称COVID-19)の3種類はいずれも、発症期間が短く、伝染性が強く、及び致死率が高いといった重大な危険性を帯びている。したがって、直接抗ウイルス薬を速やかに開発し、新型コロナウイルス感染を治療する必要が差し迫った。
【発明の概要】
【0003】
化合物1は、エイズ治療薬としてII期臨床治験を終え、安全性が良好である。
【0004】
【化1】
【0005】
発明者は、新型コロナウイルスが感染したMRC-5細胞内で、化合物1のインビトロ抗ウイルス活性を測定した。その結果、化合物1は微弱な新型コロナウイルスの抑制活性しか有しないことが分かった(EC50が25μM)。
【0006】
しかし、発明者は、式(1)化合物をそのまま研究性臨床試験に用いたところ、驚くことに、対照となる通常の治療と比較して、式(1)化合物で新型コロナウイルス肺炎の患者を治療した場合、ウイルス核酸検査での陰性化率、陰性化までの治療期間、治癒し退院するまでの時間のいずれにおいても明らかな優位性を示すことを見出した。発明者の見解では、化合物1が明確なウイルス抑制作用を示さなかったのは、インビトロで効果的にリン酸エステル化することができなかったことに関係している。
【0007】
このことに鑑み、本発明は、一の局面で、コロナウイルス感染症の予防又は治療薬を製造するための、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供し、別の局面で、本発明は、治療又は予防有効用量の式(I)化合物又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む、コロナウイルス感染症の予防又は治療法を提供する。
【0008】
式(I)の構造式は、下記のとおりである。
【0009】
【化2】
【0010】
式(I)中、
は、OR基がインビボで代謝してヒドロキシキル基を放出し、或いはO-リン酸基を形成することができるいかなる基であり、ORは好ましくは、エステル基であり、Rは好ましくは、H、R-CO-、又は
【0011】
【化3】
【0012】
であり、そのうち、Arは、フェニル及び置換フェニル基、ナフチル基及び置換ナフチル基であり、前記置換基は、C1-6アルキル基、F、Cl、Br、I、CN、N、OH、NH、OR、NHRから選択されたものであり、
は、H、アジド基、C-Cアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、C-Cアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、C-Cアルキニル基(例えば、エチニル基)、C-Cアルケニル基(例えば、エチレン基)、ハロゲン化C-Cアルキル基(例えば、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、トリフルオロエチル基)から選択されたものであり、
は、H、置換されてもよいR-CO-、置換されてもよいR-O(C=O)-、及び置換されてもよいRNH-CO-、そのうち、Rから選択されるC-Cアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソアミル基など)から選択されたものであり、そのうち、置換基は、C-Cアルキル基、ハロゲン原子(例えば、F、Cl)、CN、N、及びORから選択されたものである。
【0013】
は、H、OH、ハロゲン原子(例えば、F)、C-Cアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、C-Cアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)から選択されたものであり、
Bは、下記から選択されたものであり
【0014】
【化4】
【0015】
式中、Xは、-OH、-NH、RCONH-、RCOO-、RO(C=O)NH-から選択されたものであり、
は、-OH、-SH、-NH、RCOO-、RCOS-、RCONH-、RO(C=O)NH-から選択されたものであり、
は、H、F、-OH、及び-NHから選択されたものであり、
Yは、CH、及びNから選択されたものであり、
Zは、H、-OH、又はFであり、
は、H、C-Cアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)、C-Cアルキニル基(例えば、エチニル基)、C-Cアルケニル基(例えば、エチレン基)、ハロゲン化C-Cアルキル基(例えば、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、トリフルオロエチル基)、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、CN、N、OH、NH、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)で置換されてもよいフェニル基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、CN、N、OH、NH、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)で置換されてもよいナフチル基から選択されたものである。
【0016】
好ましくは、下記の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0017】
【化5A】
【化5B】
【0018】
式(I)化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、式(I)化合物と下記の酸とで形成された塩を含むが、これらに限定されず、前記酸は、塩酸、臭化水素酸、スルファミン酸、硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、グリコール酸、マロン酸、安息香酸、乳酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マンデル酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、パルミチン酸アスコルビル、サリチル酸、スルホサリチル酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、フタル酸、リジン、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、セリン、トレオニン、アラニン、イソロイシン、ロイシンなどである。
【0019】
式(I)化合物は、市販ルートで入手し、或いは周知の方法で製造することができる。
【0020】
本明細書において、コロナウイルス感染症は、コロナウイルス科のウイルス感染で引き起こされる疾患であり、ヒト又は他の動物に感染して引き起こされる疾患を含む。特に人コロナウイルスがヒトに感染して引き起こされる疾患であり、CoV-229E、-OC43、-NL63、-HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV、及び新型コロナウイルス(2019-nCoV、又はCOVID-19とも呼ばれる)の感染で引き起こされる疾患を含むが、これらに限定されない。
【0021】
式(I)化合物のコロナウイルス感染症の治療及び予防のための有効用量は、当業者が本明細書に記載の情報をもとに特定することができる。例えば、成年者の使用量は、1~500mg/日であってもよく、1~50mg/日であってもよく、1~20mg/日であってもよく、1~10mg/日であってもよく、5mg/日であってもよい。一回又は複数回に分けて投与することができる。
【0022】
投与方法は、経口投与又は非経口投与用であってもよい。即時放出剤形であってもよく、徐放剤形、放出制御剤形であってもよい。具体的な剤形は、当業界の様々な通常の剤形であってもよい。例えば、経口投与製剤としては、錠剤、ハードカプセル剤又はソフトカプセル剤、水性又は油性懸濁剤、粒剤、乳剤、シロップ剤、又はエリキシル剤などが挙げられる。注射剤としては、注射液、粉末注射剤などが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態によって本発明について更に説明する。ここで述べられた発明を実施するための形態は本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明を制限するものではない、と理解すべきである。
【0024】
試験例1.アズブディン(Azvudine)アミンホスフェートプロドラッグCL-236の抗新型コロナウイルス活性試験
(一)実験材料と試薬
1.細胞系:Huh 7細胞、本実験室で保存
2.ウイルス株:2019-nCoV(COVID-19)
3.実験薬:アズブディンアミンホスフェートプロドラッグ(CL-236)
4.陽性対照薬:レムデシビル
5.試薬:DMEM培地(Gibco)、ウシ胎児血清(Gibco)、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液、パンクレアチン、MTT(Amresco)など
6.キット:QIAamp viral RNAmini kit(52906、Qiagen)、One Step TB Green PrimeScript PLUS RT-PCR Kit(Perfect Real Time)(RR096A TaKaRa)
7.消耗品:細胞培養プレート、96穴ELISAプレートなど
8.計器:多機能マイクロプレートリーダー、StepOnePlus蛍光定量PCR装置、二酸化炭素インキュベーターなど
【0025】
(二)実験手順
1.アズブディンアミンホスフェートプロドラッグCL-236の細胞毒性測定
MTT法によりアズブディンアミンホスフェートプロドラッグCL-236のHuh 7細胞に対する毒性を測定した。MTTは、全称が3-(4,5)-ジメチルチアヒアゾ(-z-y1)-3,5-ジ-フェニルテトラゾリウムロミドであり、黄色の染料である。MTT比色法は、細胞の生存・成長を測定する方法である。その検出原理としては、生細胞ミトコンドリアにおけるコハク酸デヒドロゲナーゼは、外因性MTTを水不溶性の青紫の結晶であるホルマザン(Formazan)に還元して細胞内で蓄積することができるが、死んだ細胞にはこの機能がない。10%SDS(0.01mol/L HCl溶液に溶解)は、細胞におけるホルマザンを溶解でき、多機能マイクロプレートリーダーを用いて570nm波長でその吸光度値を測定することによって、生細胞の数を間接的に反映できる。一定の細胞数範囲内で、形成されたMTT結晶の量は細胞数に比例する。異なるインターフェロン濃度での570nm波長における吸光度値を測定することによって、当該医薬品濃度での細胞の生存率を算出でき、これによって当該医薬品の50%細胞毒性濃度(CC50)を算出する。
【0026】
1日前にHuh 7細胞を96穴プレートに接種しておき、1穴あたり1×10個であり(96穴プレートの一番端っこの穴を実験穴とせず、PBSを加えて他の穴の培地の揮発を防ぐことに留意)、細胞の状態を観察した。約50%になった時点で、アズブディンアミンホスフェートプロドラッグCL-236を、2%FBSを含むDMEM培地で2倍で希釈した後、100μL/穴で細胞プレートに接種し、各濃度の平行穴を6個設け、同時に対照グループ(医薬品を含まないグループ)及びブランクグループ(細胞を含まないグループ)を設けて、37℃、5%COのインキュベーターに入れて培養した。医薬品を加えた48h後、1穴あたり25μL MTT溶液(5mg/mL)を加えて、引き続き4h培養した後、1穴あたり125μL 10%SDS(0.01mol/L HCl溶液に溶解)を加えて、軽く通気して、2h放置し、結晶を十分に溶解して、ブランクグループでゼロを校正し、OD570を測定し、下記の式で生存率を算出した。また、医薬品の50%細胞毒性濃度(CC50)を算出した。
【0027】
生存率(%)=実験薬グループOD570/対照グループOD570×100%
【0028】
2.アズブディンアミンホスフェートプロドラッグCL-236の2019-nCoV(COVID-19)ウイルスに対する抑制効果評価
【0029】
Huh 7細胞モデルで抗ウイルス活性測定を行い、各試験に平行穴を3個設け、計3回繰り返した。
【0030】
1)Huh 7細胞を1穴あたり5×10個で24穴細胞培養プレートに接種し、37℃、5%COの培養条件で培養し、コンフルエンスが60%になった時点で、感染多重度MOIを0.005として、1穴あたり2%FBSを含むDMEM培地で希釈後の2019-nCoV(COVID-19)ウイルス液200μLをそれぞれ加えて、37℃、5%COのインキュベーターで1h吸着させた後、ウイルス液を捨て、陽性対照医薬品及びアズブディンアミンホスフェートプロドラッグCL-236を、2%FBSを含むDMEM培地で最大非毒性濃度から2倍で希釈し、500μL/穴で細胞プレートに加えた。同時に対照グループ(医薬品を含まないグループ)を設け、感染48h後に上澄みウイルス液を収集した。
【0031】
2)real-time RT-PCR(qRT-PCR)で収集されたウイルスをRNA定量した。
【0032】
収集された上澄みウイルス液をそれぞれ140μL取って、QIAamp viral RNAmini kitの取扱説明書に従ってRNAを抽出した。One Step TB Green PrimeScript PLUS RT-PCR Kit(Perfect Real Time)を用いてqRT-PCR測定を行い、
プライマーは、RBD-qF1、即ち、5’-CAATGGTTTAACAGGCACAGG-3’であり、
RBD-qR1は、5’-CTCAAGTGTCTGTGGATCACG-3’である。
【0033】
反応系の合計体積は20μLであり、詳しくは、10μL 2X One Step TB Green RT-PCR Buffer 4、1.2μL TaKaRa Ex Taq HS Mix、0.4μL PrimeScript PLUS RTase Mix、RBD-qF1及びRBD-qR1各0.8μL、0.4μL ROX Reference Dye(50X)、2μLウイルスRNA、4.4μL RNase Free dH2Oである。反応パラメータは、逆転写42℃ 5min、予備変性95℃ 10 sであり、PCR 40循環は、変性95℃ 10s、アニーリング及び伸長60℃ 30sを含む。
【0034】
3)各濃度における医薬品の抑制率を算出した。
【0035】
抑制率(%)=1-実験グループのウイルスRNAコピー数/医薬品を含まないグループのウイルスRNAコピー数×100%
【0036】
また、医薬品の半数効果濃度(EC50)を算出し、治療指数(TI)=50%細胞毒性濃度(CC50)/半数効果濃度(EC50)を算出した。
【0037】
(三)実験結果の計算
【表1】
【0038】
試験例2
臨床治験によって、化合物1を新型コロナウイルス(COVID-19)肺炎の治療に用いた有効性及び安全性を検証した。
【0039】
核酸試薬アッセイによって感染確定した新型コロナウイルス感染の患者を20例選択して、アズブディン(化合物1)グループ及びカレトラ対照グループに分けて、1グループあたり10例とした。アズブディングループ治療計画:1日に5mgを服用する(経口投与、5錠、1錠につき1mg)。カレトラ対照グループ治療計画:カレトラ(経口投与、2錠/日、250mg/錠)+アビドール錠(経口投与200mg/回、3回/日)+インターフェロン(500万U、エアロゾル吸入投与1日2回)。核酸の変化、体温の変化を測定して、各種症状について観察した。
【0040】
結果を下記の表に示した。
【表2】
【0041】
臨床治験の結果から、10例の新型コロナウイルス感染患者のうち、アズブディングループの患者は全員核酸検査で陰性化し、そのうちの7例は8日以内で退院したことが分かった。
【0042】
上記臨床治験の結果から、化合物1で新型コロナウイルス肺炎を治療した場合、患者の核酸検査での陰性化率、陰性化までの治療期間、治癒率及び治癒期間のいくつかの指標のいずれにおいても明らかな臨床治療の優位性を示すことが分かった。
【0043】
なかでも、1例のカレトラでサポートして20日間あまり治療しても陰性化できなかった患者は、化合物1で治療してから3日後に陰性化した。治療中では、医薬品関連の毒副作用は一切認められなかった。
【0044】
インビトロ測定系では、アズブディンは効果的にリン酸エステル化されて活性化することができなかったため、アズブディンのアミンホスフェートプロドラッグ(CL-236)を用いてその抗新型コロナウイルス活性を間接的に測定した。アズブディンでエイズを治療する治験において、アズブディンはヒトインビボで効果的に活性化されることが分かったから、ヒト臨床治験では、アズブディンアミンホスフェートプロドラッグではなく、アズブディンをそのまま用いて新型コロナウイルス性肺炎を治療した。
【配列表】
0007522845000001.app