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特許7522851半導体エピタキシャル構造および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】半導体エピタキシャル構造および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20240718BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240718BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20240718BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L29/80 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022559494
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2021079157
(87)【国際公開番号】W WO2021196974
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202010241496.7
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジービン
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207890(JP,A)
【文献】特表2008-512863(JP,A)
【文献】特表2016-539496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/32225(US,A1)
【文献】国際公開第2012/014883(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/188715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体エピタキシャル構造であって、
チャネル層、複合バリア層、およびドーピング層を有し、
前記ドーピング層には、Mgイオンがドーピングされ、前記ドーピング層は、前記複合バリア層上に配置され、
前記チャネル層は、前記複合バリア層の前記ドーピング層から遠い側に配置され、
前記複合バリア層は、積層方式で配置された、デジタル合金バリア層およびAlGaNバリア層を有し、
前記デジタル合金バリア層は、1または2以上のAlN層を有し、
前記複合バリア層は、3nm~50nmの範囲(ただし、40nm以上は除く)の厚さを有する、半導体エピタキシャル構造。
【請求項2】
前記デジタル合金バリア層は、前記ドーピング層と前記AlGaNバリア層の間に配置される、請求項1に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項3】
前記デジタル合金バリア層は、1から10の周期的なAlN層/GaN層により形成された積層された層である、請求項2に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項4】
前記デジタル合金バリア層の前記周期的なAlN層/GaN層におけるAl原子の量の割合は、10%から50%である、請求項3に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項5】
前記周期的なAlN層/GaN層における前記AlN層の厚さと前記GaN層の厚さの比は、m:nであり、mは3以下の正の整数であり、nは10以下の正の整数である、請求項4に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項6】
前記デジタル合金バリア層における前記Al原子の量の割合は、前記AlGaNバリア層における前記Al原子の量の割合と等しく、またはより大きい、請求項5に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項7】
2つのデジタル合金バリア層が存在し、前記2つのデジタル合金バリア層は、それぞれ、前記AlGaNバリア層の両側に配置され、
前記デジタル合金バリア層における前記Al原子の量の割合は、前記AlGaNバリア層における前記Al原子の量の割合と等しく、またはより大きい、請求項5に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項8】
前記半導体エピタキシャル構造は、さらに挿入層を有し、
前記挿入層の2つの対向する表面は、それぞれ、前記AlGaNバリア層および前記チャネル層に接続される、請求項1に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項9】
前記半導体エピタキシャル構造は、さらに基板を有し、
前記基板は、前記チャネル層の前記複合バリア層から遠い側に配置される、請求項8に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項10】
前記半導体エピタキシャル構造は、さらにバッファ層を有し、
前記バッファ層は、前記チャネル層の前記複合バリア層から遠い側の表面に配置される、請求項8または9に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項11】
前記半導体エピタキシャル構造は、さらに核生成層を有し、前記核生成層は、前記バッファ層の前記チャネル層から遠い側の表面に配置される、請求項10に記載の半導体エピタキシャル構造。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体エピタキシャル構造を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年3月31日に中国国家知的所有権庁に出願された「半導体エピタキシャル構造および半導体装置」という名称の中国特許出願第202010241496.7号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、半導体技術の分野に関し、特に、半導体エピタキシャル構造および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0003】
窒化ガリウム(GaN)は、広いバンドギャップおよび高い移動度等の利点のため、パワーエレクトロニクス装置、無線周波数装置などに広く使用されている。窒化ガリウムは、主に高電子移動度トランジスタ(HEMT)の分野で広く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の強化型HEMTは、順次積層されるチャネル層、バリア層、およびp-GaN層を有し、p-GaN層は、通常Mgイオンをドーピングすることにより導入される。しかしながら、Mgイオンは、拡散問題を有する。Mgイオンがバリア層およびチャネル層に大量に拡散すると、二次元電子ガス(2DEG)の密度および移動度が影響を受け、これによりオン抵抗増加が生じる
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願で提供される半導体エピタキシャル構造は、p-GaN層中のMgイオンがバリア層およびチャネル層に拡散し、これが2DEGの密度および移動度に影響を及ぼし、オン抵抗の増加の問題が生じるという課題を効果的に回避する。
【0006】
本願では、さらに半導体装置が提供される。
【0007】
本願における半導体エピタキシャル構造は、チャネル層、複合バリア層、およびドーピング層を有する。ドーピング層は、複合バリア層上に配置され、チャネル層は、複合バリア層のドーピング層から遠い側に配置され、複合バリア層は、積層方式で配置された、デジタル合金バリア層およびAlGaNバリア層を有し、デジタル合金バリア層は、1または2以上のAlN層を含む。
【0008】
本願では、複合バリア層は、ドーピング層とチャネル層の間に配置され、複合バリア層内のデジタル合金バリア層は、1または2以上のAlN層を含み、化合物により形成された積層原子層である。換言すれば、本願では、1または2以上のAlN層を含むデジタル合金バリア層は、ドーピング層とチャネル層の間に配置され、これにより、ドーピング層にドープされたMgイオンが複合バリア層およびチャネル層に拡散することが効果的に抑制でき、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造の電気的特性が確保される。また、デジタル合金バリア層は、さらに、AlGaNバリア層と同等の機能を有し、すなわち、デジタル合金バリア層およびAlGaNバリア層は、ともに複合バリア層を形成し、これは、チャネル層と共に分極効果を生じさせるように構成され、その結果、複合バリア層とチャネル層の間に2DEGが生じる。また、デジタル合金バリア層の成長速度は、AlGaNバリア層の成長速度よりも十分に低い。従って、デジタル合金バリア層とAlGaNバリア層が組み合わされ、Mgイオンの拡散が抑制される一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。デジタル合金バリア層の成長法では、Al原子の量の同じ割合の下、極めて小さな応力が生じ、これにより、高温高出力作動条件における応力により生じる逆圧電効果が回避される。
【0009】
ある実施形態では、デジタル合金バリア層は、ドーピング層とAlGaNバリア層の間に配置される。すなわち、デジタル合金バリア層は、AlGaNバリア層よりもドーピング層に近い。デジタル合金バリア層は、混合物により形成されるAlGaNバリア層に比べて、単純な物質または化合物により形成される原子層であるため、デジタル合金バリア層は、ドーピング層のMgイオンの拡散をより効果的に抑制することができる。従って、ドーピング層の近くにデジタル合金バリア層を配置することで、ドーピング層にドープされたMgイオンドーピングが複合バリア層およびチャネル層に拡散することをより効果的に抑制することができ、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造の電気的特性が確保される。もちろん、他の実施形態では、AlGaNバリア層は、ドーピング層とデジタル合金バリア層の間に接続される。
【0010】
ある実施形態では、デジタル合金バリア層は、1乃至10の周期的なAlN層/GaN層により形成された積層された層である。すなわち、AlN層およびGaN層は、周期的に配置され、デジタル合金バリア層が形成される。従ってデジタル合金バリア層の配置態様は、より規則的となり、その結果、ドーピング層にドープされたMgイオンが、複合バリア層およびチャネル層に拡散することがより良好に防止され、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造の電気的特性が確保される。また、デジタル合金バリア層の成長速度は、AlGaNバリア層の成長速度よりも有意に低い。従って、デジタル合金バリア層は、1乃至10周期のAlN層/GaN層で形成された積層された層に限定され、Mgイオンの拡散が抑制される一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。
【0011】
一実施形態では、デジタル合金バリア層の厚さは、1nmから10nmである。この厚さでは、デジタル合金バリア層は、AlGaNバリア層とより好適に組み合わせることができ、これにより、デジタル合金バリア層およびAlGaNバリア層の電気的特性が確保される。また、デジタル合金バリアの厚さは、1nmから10nmであり、Mgイオンが拡散することが抑制される一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。
【0012】
一実施形態では、AlGaNバリア層の厚さは、2nmから40nmであり、AlGaNバリア層の過度に厚い厚さによって生じる緩和現象であって、半導体エピタキシャル構造の電気的特性に影響を及ぼす、緩和現象が回避される。
【0013】
一実施形態では、デジタル合金バリア層における周期的AlN層GaN層におけるAl原子の量の割合は、10%から50%である。周期的AlN層/GaN層におけるAl原子の量の割合が10%から50%であることで、Mgイオンの拡散を有効に抑制でき、さらにデジタル合金バリア層におけるAl原子の量過度に高い割合によって生じる漏電現象を回避し、半導体エピタキシャル構造の電気的特性が確保される。
【0014】
ある実施形態では、周期的なAlN/GaN層におけるGaN層の厚さに対するAlN層の厚さの比は、m:nであり、ここでmは、3以下の正の整数であり、nは、10以下の正の整数である。すなわち、本実施形態では、周期的なAlN層GaN層におけるAl原子の量の割合は、周期的なAlN層/GaN層におけるGaN層の厚さに対するAlN層の厚さの比を制御することにより制御される。
【0015】
ある実施形態では、周期的なAlN層/GaN層におけるGaN層の厚さに対するAlN層の厚さの比は、1:3であり、デジタル合金バリア層は、Mgイオンの拡散を確実に抑制する一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。
【0016】
ある実施形態では、デジタル合金バリア層におけるAl原子の量の割合は、AlGaNバリア層におけるAl原子の量の割合よりも大きい。すなわち、ドーピング層に近いデジタル合金バリア層におけるAl原子の量の割合は、より高く、Mgイオンの拡散がより好適に防止される。もちろん、他の実施形態では、代わりに、デジタル合金バリア層におけるAl原子の量の割合AlGaNバリア層におけるAl原子の量の割合以下であってもよい。
【0017】
一実施形態では、2つのデジタル合金バリア層が存在し、該2つのデジタル合金バリア層は、それぞれ、AlGaNバリア層の両側に配置され、デジタル合金バリア層におけるAl原子の量の割合は、AlGaNバリア層におけるAl原子の量の割合よりも大きい。すなわち、Mgイオンが拡散することを好適に抑制するデジタル合金バリア層は、AlGaNバリア層の両側の各々に配置され、MgイオンがAlGaNバリア層に拡散することが効果的に抑制される。少数のMgイオンがAlGaNバリア層に拡散する場合でも、これらは、反対側のデジタル合金バリア層により、さらに抑制され、MgイオンがAlGaNバリア層を通ってチャネル層に拡散することが抑制され、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造の電気的特性が確保される。もちろん、他の実施形態では、代わりに、デジタル合金バリア層中におけるAl原子の量の割合AlGaNバリア層におけるAl原子の量の割合以下であってもよい。
【0018】
ある実施形態では、半導体エピタキシャル構造は、さらに、挿入層を有し、該挿入層の2つの対向する表面は、それぞれ、AlGaNバリア層およびチャネル層に接続される。この実施形態では、挿入層は、AlN層であり、挿入層のバンドギャップがより広くなり、チャネル層の分極効果が増強され、これにより、2DEGの密度を高めることができ、さらに応力緩和の機能、すなわち、複合バリア層とチャネル層の間の格子不整合を緩和する機能が得られる。
【0019】
一実施形態では、半導体エピタキシャル構造は、さらに基板を有し、該基板は、チャネル層の複合バリア層から遠い側に配置される。この実施形態では、基板の材料はシリコンである。もちろん、他の実施形態では、基板は、代わりに、サファイア、窒化ガリウム、炭化ケイ素、およびダイヤモンドのような、他の基板材料で構成されてもよい。基板は、チャネル層、複合バリア層、およびドーピング層のような層構造を担持するように構成される。
【0020】
一実施形態では、半導体エピタキシャル構造は、さらに、バッファ層を有し、該バッファ層は、チャネル層の複合バリア層から遠い側の表面に配置される。この実施形態では、バッファ層の材料は、AlGaNである。もちろん、他の実施形態では、バッファ層は、代わりに、AlNおよびGaNのような材料で構成されてもよい。バッファ層は、チャネル層と関連の層構造の間の力の作用を緩和するように構成される。
【0021】
一実施形態では、半導体エピタキシャル構造は、さらに、核生成層を有し、該核生成層は、バッファ層のチャネル層から遠い側の表面に配置される。この実施形態では、核生成層の材料は、AlNであり、材料間の格子不整合により生じる応力の作用が軽減される。
【0022】
本願における半導体装置は、前述の半導体エピタキシャル構造を有する。前述の半導体エピタキシャル構造を有する半導体装置は、Mgイオンがp-GaN層からバリア層およびチャネル層に拡散することにより生じるオン抵抗の増加を効果的に回避することができ、これにより、半導体装置のパワー密度がさらに改善され、より良好な電気的特性が得られる
【0023】
本用途では、複合バリア層は、ドーピング層とチャネル層の間に配置され、複合バリア層内のデジタル合金バリア層は、1または2以上のAlN層を有し、化合物により形成された積層原子層である。換言すれば、本用途では、1または2以上のAlN層を含むデジタル合金バリア層は、ドーピング層とチャネル層の間に配置され、これにより、ドーピング層にドープされたMgイオンが複合バリア層およびチャネル層に拡散することを効果的に抑制することができ、これにより、オン抵抗の増加が回避され、さらに半導体エピタキシャル構造の電気的特性が確保される。
【0024】
本願の実施態様または背景における技術的解決策をより明確に説明するため、以下、本願の実施態様または背景を記載した添付図面について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願の一実施形態による半導体エピタキシャル構造の概略的な構造図である。
図2図1による半導体エピタキシャル構造におけるデジタル合金バリア層の概略的な構造図である。
図3図2によるデジタル合金バリア層の特定の配置の概略的な構造図である。
図4図1によるAlGaNバリア層の特定の配置の概略的な構造図である。
図5】半導体エピタキシャル構造の別の概略的な構造図である。
図6】半導体エピタキシャル構造のさらに別の概略的な構造図である。
図7】半導体エピタキシャル構造のさらに別の概略的な構造図である。
図8】半導体エピタキシャル構造のさらに別の概略的な構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願の実施態様における添付図面を参照して、本願の実施態様について説明する。
【0027】
従来のHEMTは、ほとんどがDモード構造であり、p-GaN層のない欠乏モードHEMTである。すなわち、欠乏モードHEMTのチャネル層上にバリア層が配置され、分極効果によりチャネル層とバリア層の間に2DEGが形成される。バリア層は、2DEGの密度と移動度を高めるように設計される。バリア層は、主としてAlGaNバリア層を使用し、低い成長速度等の理由により、バリア層としてデジタル合金が使用されることはほとんどない。しかしながら、市販のHEMT構造は、Eモード構造である必要があり、これは、強化モードHEMTであり、欠乏モードHEMTに比べて危険ではなく、小さな静電力消費を有する。強化モードHEMTの主な実施の一つは、バリア層にp-GaNの層を加えることにより、閾値電圧を調整することである。すなわち、強化モードHEMTは、積層方式で連続的に設置された、チャネル層、バリア層、およびp-GaN層を有し、p-GaN層は、Mgイオンをドーピングすることにより形成される。矛盾点は、p‐GaN層におけるMgイオン濃度を増加させることによりホール濃度を高め、閾値電圧を正にドリフトさせる必要があることである。バリア層は、主にAlGaNバリア層を使用するため、AlGaNバリア層は、p-GaN層におけるMgイオンの拡散を抑制する上で僅かな効果しか有さず、Mgイオンの過度に高い濃度は、AlGaNバリア層を介してチャネル層に拡散し、これによりチャネル層のシート抵抗(Rsheet)およびオン抵抗(Ron)の増加が生じ、これにより、HEMTのパワー密度がさらに制限され、HEMTの電気的特性に影響が生じる。
【0028】
このため、本願の一実施形態では、p-GaN層におけるMgイオンの拡散が、チャネル層のシート抵抗(Rsheet)およびオン抵抗(Ron)の増加を引き起こし、これにより、HEMTのパワー密度がさらに制限され、HEMTの電気的特性に影響が生じるという問題を解決する半導体装置が提供される。半導体装置は、Mgイオンの拡散を効果的に抑制するとともに、デジタル合金バリアと従来のAlGaNバリアの複合構造を使用し、成長時間が抑制され、コストが低減される。
【0029】
半導体装置は、これに限られるものではないが、HEMTのようなパワー電子装置、2DEGを形成するヘテロ構造、および無線周波数装置を有する。本願では、特に、半導体装置がHEMTである例を用いて記載される。この用途における半導体装置は、半導体エピタキシャル構造を有する。半導体エピタキシャル構造を有する半導体装置は、Mgイオンがp-GaN層からバリア層およびチャネル層に拡散することにより生じるオン抵抗の増加を効果的に回避することができ、これにより、パワー密度がさらに改善され、優れた電気的特性が達成される。
【0030】
図1は、本願の実施形態による半導体エピタキシャル構造の概略的な構造図である。図1は、半導体エピタキシャル構造10の第1の実施形態である。
【0031】
本用途における半導体エピタキシャル構造10は、基板11、バッファ層12、チャネル層13、複合バリア層14、およびドーピング層15を有する。ドーピング層15は、複合バリア層14上に配置され、チャネル層13は、複合バリア層14のドーピング層15から遠い側に配置され、基板11は、チャネル層13の複合バリア層14から遠い側に配置され、バッファ層12は、基板11とチャネル層13の間に配置され、複合バリア層14は、積層方式で配置されるデジタル合金バリア層141およびAlGaNバリア層142を有し、デジタル合金バリア層141は、1または2以上のAlN層1411を有してもよい。
【0032】
本用途による半導体エピタキシャル構造10では、複合バリア層14は、ドーピング層15とチャネル層13の間に配置され、複合バリア層14内のデジタル合金バリア層141は、化合物により形成された積層原子層である1または2以上のAlN層1411を有してもよい。換言すれば、本用途では、1または2以上のAlN層1411を含むデジタル合金バリア層141は、ドーピング層15とチャネル層13の間に配置され、これにより、ドーピング層15内のドープされたMgイオンが複合バリア層14およびチャネル層13に拡散することを効果的に抑制することができ、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が確保される。またデジタル合金バリア層141は、さらに、AlGaNバリア層142と等価な機能、すなわち、デジタル合金バリア層141とAlGaNバリア層142が、相互に複合バリア層14を形成し、これは、チャネル層13と共に分極効果を発生させるように構成され、その結果、複合バリア層14とチャネル層13の間に2DEGが形成される。また、デジタル合金バリア層141の成長速度は、AlGaNバリア層142の成長速度よりも十分に低い。従って、デジタル合金バリア層141とAlGaNバリア層142とが組み合わされ、Mgイオンの拡散が抑制される一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。デジタル合金バリア層141の成長法では、Al原子の量の同じ割合の下、有意に小さな応力が生じ、これにより高温および高電力作動条件での応力により生じる逆圧電効果が回避される。
【0033】
本実施形態では、基板11の材料は、シリコンである。もちろん、他の実施形態では、基板11は、サファイア、窒化ガリウム、炭化ケイ素、およびダイヤモンドのような他の基板材料で構成されてもよい。基板11は、バッファ層12、チャネル層13、複合バリア層14、およびドーピング層15のような層構造を担持するように構成される。
【0034】
バッファ層12は、チャネル層13と対面する基板11の表面に配置され、バッファ層12の材料は、AlGaNである。もちろん、他の実施形態では、バッファ層12は、代わりに、AlNおよびGaNのような材料で構成されてもよい。バッファ層12の厚さは、0.5μmから10μmであり、バッファ層12は、基板11とチャネル層13の間の力の作用を緩和するように構成される。
【0035】
チャネル層13は、バッファ層12の基板11から遠い側の表面に接続され、チャネル層13の材料は、GaNである。もちろん、他の実施形態では、チャネル層13は、代わりに、AlGaNおよびInGaNのような材料で構成されてもよい。チャネル層13の厚さは、0.02μmから1μmであり、チャネル層13および複合バリア層14は、2DEGを形成するように機能する。
【0036】
本実施形態では、デジタル合金バリア層141は、ドーピング層15とAlGaNバリア層142の間に配置され、AlGaNバリア層142は、チャネル層13のバッファ層12から遠い側の表面に配置される。すなわち、チャネル層13、AlGaNバリア層142、デジタル合金バリア層141、およびドーピング層15は、積層方式で順次配置される。デジタル合金バリア層141の2つの対向する表面は、それぞれ、ドーピング層15およびAlGaNバリア層142に接続され、デジタル合金バリア層141は、AlGaNバリア層142よりもドーピング層15に近い。デジタル合金バリア層141は、混合物により形成されたAlGaNバリア層142と比べて、単純な物質または化合物により形成された原子層であるため、デジタル合金バリア層141は、ドーピング層15のMgイオンの拡散をより効果的に抑制できる。従って、デジタル合金バリア層141ドーピング層15の近くに配置することにより、ドーピング層15にドープされたMgイオンが複合バリア層14およびチャネル層13に拡散することがより効果的に抑制でき、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が確保される。もちろん、他の実施態様では、AlGaNバリア層142は、ドーピング層15とデジタル合金バリア層141の間に接続される。すなわち、代わりに、デジタル合金バリア層141の配置位置とAlGaNバリア層142の配置位置を交換することで、Mgイオンが複合バリア層14およびチャネル層13に大量に拡散することを効果的に抑制でき、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が確保される。
【0037】
本実施形態では、ドーピング層15は、デジタル合金バリア層141のAlGaNバリア層142から遠い側の表面に配置され、ドーピング層15は、GaN材料およびドーピングMgイオンにより形成されたPドーピング層15である。もちろん、他の実施態様では、デジタル合金バリア層141に対面するドーピング層15の表面は、デジタル合金バリア層141におけるGaN層1412と積層される。
【0038】
図2および図3を参照すると、図2は、図1よる半導体エピタキシャル構造におけるデジタル合金バリア層の概略的な構造図である。図3は、図2よるデジタル合金バリア層の特定の配置の概略的な構造図である。
【0039】
特に、窒化物材料では、AlN材料の不純物拡散抑制機能は、GaN材料よりも有意に高い。本実施形態では、デジタル合金バリア層141は、3つの周期的なAlN層1411/GaN層1412により形成された積層された層である。周期的なAlN層1411/GaN層1412は、1つのAlN層1411および1つのGaN層1412により形成され、3つの周期的なAlN層1411/GaN層1412は、1つのAlN層1411、1つのGaN層、1つのAlN層1411、1つのGaN層、1つのAlN層1411、および1つのGaN層により、積層方式で形成されることが理解され得る。換言すれば、3つの周期的なAlN層1411/GaN層1412は、順番および交互の積層方式で形成された、3つのAlN層1411および3つのGaN層により形成される。デジタル合金バリア層141におけるAlN層1411、およびドーピング層15のデジタル合金バリア層141に対面する表面、積層され、Mgイオンが拡散することを抑制することが助長される。本実施形態では、AlN層1411およびGaN層1412は、デジタル合金バリア層141を形成するように周期的に配置され、その結果、デジタル合金バリア層141の化合物AlNaおよびGaNbは、別個に規則的に列に配置される。デジタル合金バリア層141における化合物AlNaは、混合物AlGaNにおける化合物AlNaおよび化合物GaNbの不規則な配置に比べて、より規則的に配置され(図4参照)、これにより、ドーピング層15にドープされたMgイオンが複合バリア層14およびチャネル層13に拡散することがよりよく抑制でき、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が確保される。また、デジタル合金バリア層141の成長速度は、AlGaNバリア層142よりも有意に遅、すなわち、より多くの周期的なAlN層1411/GaN層1412の積層された層の形成に、より多くの製造時間が費やされる。従って、デジタル合金バリア層141は、3つの周期的なAlN層1411/GaN層1412により形成された積層された層に限定される。すなわち、デジタル合金バリア層141は、単に、Mgイオンの拡散が抑制されるように、Mgイオンの拡散を防止できる必要がある一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。もちろん、他の実施態様では、デジタル合金バリア層141は、1から10の周期的なAlN層1411/GaN層1412により形成された積層された層である。あるいは、デジタル合金バリア層141におけるGaNは、の化合物で置換されてもよく、例えば、デジタル合金バリア層141は、InN層/AlN層により形成された積層された層である。
【0040】
本実施形態におけるデジタル合金バリア層141の厚さは、6nmである。特に、この厚さでは、デジタル合金バリア層141は、AlGaNバリア層142とより好適に組み合わせることができ、これにより、デジタル合金バリア層141およびAlGaNバリア層142の電気的特性が確保される。また、デジタル合金バリア141の厚さは、6nmであり、Mgイオンが拡散することが抑制される一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。もちろん、他の実施形態では、デジタル合金バリア層141の厚さは、必要な場合、1nmから10nmであってもよい。
【0041】
デジタル合金バリア層141において、周期的なAlN層1411GaN層1412におけるAl原子の量割合は、25%であり、すなわち、全ての原子の量に対する、周期的なAlN層1411GaN層1412におけるAl原子の量割合25%である。本実施形態では、周期的なAlN層1411/GaN層1412におけるGaN層1412およびAlN層1411の単一層の厚さは、約0.5nmであり、周期的なAlN層1411/GaN層1412におけるGaN層1412の厚さに対するAlN層1411の厚さの比は、1:3である。3つのGaN層1412および1つのAlN層1411は、積層方式で順次配置され、その結果、周期的なAlN層1411GaN層1412におけるAl原子の量割合は、25%である。もちろん、周期的なAlN層1411/GaN層1412は、代わりに、1つのAlN層1411および3つのGaN層1412であり、これらは積層方式で順次配置されてもよく、あるいは1つのAlN層1411が、3つのGaN層1412の任意の2つの層の間に配置されてもよい。周期的なAlN層1411GaN層1412におけるAl原子の量割合が25%である場合、Mgイオンの拡散を効果的に抑制でき、デジタル合金バリア層141におけるAl原子の量過度に高い割合により生じる漏電現象を回避することができ、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が確保される。またデジタル合金バリア層141は、Mgイオンの拡散を抑制することができる一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。もちろん、他の実施形態では、周期的なAlN層1411GaN層1412におけるAl原子の量割合は、必要な場合、10%から50%であってもよい。例えば、単一のGaN層1412およびAlN層1411の厚さは、約0.5nmであり、周期的なAlN層1411/GaN層1412におけるGaN層1412の厚さに対するAlN層1411の厚さの比は、m:nであり、ここで、mは、3以下の正の整数であり、nは、10以下の正の整数である。すなわち、本実施形態では、周期的なAlN層1411/GaN層1412におけるAl原子の量割合は、周期的なAlN層1411/GaN層1412におけるGaN層1412の厚さに対するAlN層1411の厚さのを制御することにより、10%から50%に制御される。これにより、Mgイオンの拡散が効果的に抑制され、デジタル合金バリア層141におけるAl原子の量過度に高い割合により生じる漏電現象が回避され、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が確保される。
【0042】
図2に示すように、AlGaNバリア層142の厚さは、2nmから40nmであり、AlGaNバリア層142の過度に厚い厚さにより生じる緩和現象が回避される。すなわち、AlGaNバリア層142の過度に厚い厚さにより生じる応力の作用によって生じる変形(例えば、表面曲げ現象)はAlGaNバリア層142とAlGaNバリア層142で積層された層との間の適合性の不具合につながり、これにより、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が影響を受ける。AlGaNバリア層142におけるAl原子の量割合は、25%である。もちろん、他の実施形態では、AlGaNバリア層142におけるAl原子の量割合は、代替的に5%から30%であってもよく、特に、複合バリア層14全体が電気的特性要件を満たすように、デジタル合金バリア層141におけるAl原子の量割合に基づいて調整されてもよい。
【0043】
図5は、半導体エピタキシャル構造の別の概略的な構造図である。図5は、半導体エピタキシャル構造10の第2の実施形態である。この実施形態における半導体エピタキシャル構造10は、基板11、バッファ層12、チャネル層13、複合バリア層14、およびドーピング層15を有する。基板11、バッファ層12、およびチャネル層13は、積層方式で順次配置され、複合バリア層14は、チャネル層13のバッファ層12から遠い側に配置され、ドーピング層15は、複合バリア層14のチャネル層13から遠い側の表面に配置される。複合バリア層14は、積層方式で配置されたデジタル合金バリア層141およびAlGaNバリア層142を有し、デジタル合金バリア層141は、ドーピング層15に接近して配置される。この実施形態における半導体エピタキシャル構造10は、さらに、挿入層16を有し、該挿入層16の2つの対向する表面は、それぞれ、AlGaNバリア層142およびチャネル層13に接続される。本実施形態では、挿入層16はAlN層であり、挿入層16の大きなバンドギャップ(単位は、電子ボルト(ev)であり、拘束電子は、自由電子または電子ホールとなるため、価電子帯から伝導帯に遷移する十分なエネルギーが必要であり、このエネルギーの最小値がバンドギャップである)は、ャネル層13の分極効果を高め、これにより、2DEGの濃度が増加し、また応力緩和の機能、すなわち、複合バリア層14とチャネル層13の間の格子不整合を軽減する機能も得られる。もちろん、他の実施形態では、半導体エピタキシャル構造10は、代わりに核生成層17を含んでもよい。
【0044】
図6は、半導体エピタキシャル構造のさらに別の概略的な構造図である。図6は、半導体エピタキシャル構造10の第3の実施形態である。この実施形態における半導体エピタキシャル構造10は、基板11、バッファ層12、チャネル層13、複合バリア層14、およびドーピング層15を有する。バッファ層12およびチャネル層13は、積層方式で配置され、基板はバッファ層12のチャネル層13から遠い側に配置され、複合バリア層14は、チャネル層13のバッファ層12から遠い側に配置され、ドーピング層15は、複合バリア層14のチャネル層13から遠い側の表面に配置される。複合バリア層14は、積層方式で配置された、デジタル合金バリア層141およびAlGaNバリア層142を有し、デジタル合金バリア層141は、ドーピング層15に近接して配置される。複合バリア層14とチャネル層13の間に、挿入層16が配置される。この実施形態における半導体エピタキシャル構造10は、さらに、核生成層17を有し、該核生成層17は、基板11のバッファ層12と対面する側の表面に配置される。本実施形態では、核生成層17の材料は、AlNであり、材料間の格子不整合により生じる応力の作用が軽減される。もちろん、他の実施形態では、挿入層16は、複合バリア層14とチャネル層13の間に配置されず、すなわち、複合バリア層14は、チャネル層13に直接接続される。
【0045】
図7は、半導体エピタキシャル構造のさらに別の概略的な構造図である。図7は、半導体エピタキシャル構造10の第4の実施形態である。この実施形態における半導体エピタキシャル構造10は、基板11、核生成層17、バッファ層12、チャネル層13、挿入層16、複合バリア層14、およびドーピング層15を有し、これらは、積層方式で順次配置される。複合バリア層14は、積層方式で配置された、デジタル合金バリア層141およびAlGaNバリア層142を有し、デジタル合金バリア層141は、ドーピング層15に近接して配置される。本実施形態では、デジタル合金バリア層141におけるAl原子の量割合は、AlGaNバリア層142におけるAl原子の量割合よりも大きい。特に、デジタル合金バリア層141におけるAl原子の量割合と、AlGaNバリア層142におけるAl原子の量割合は、特定の要求に基づいて配置されてもよい。すなわち、ドーピング層15に近いデジタル合金バリア層141における原子の量割合は、より高くされ、Mgイオンが拡散することがより好適に抑制される。もちろん、他の実施形態では、代わりに、デジタル合金バリア層141におけるAl原子の量割合は、AlGaNバリア層142におけるAl原子の量割合以下であってもよい。核生成層17および/または挿入層16は、代わりに、半導体エピタキシャル構造10内に配置されなくてもよい。すなわち、基板11、バッファ層12、チャネル層13、挿入層16、複合バリア層14、およびドーピング層15が、積層方式で順次配置され、または基板11、核生成層17、バッファ層12、チャネル層13、複合バリア層14、およびドーピング層15が、積層方式で順次配置され、または基板11、バッファ層12、チャネル層13、複合バリア層14、およびドーピング層15が、積層方式で順次配置される。
【0046】
図8は、半導体エピタキシャル構造のさらに別の概略的な構造図である。図8は、半導体エピタキシャル構造10の第5の実施形態である。この実施形態における半導体エピタキシャル構造10は、基板11、核生成層17、バッファ層12、チャネル層13、挿入層16、複合バリア層14、およびドーピング層15を有し、これらは積層方式で順次配置される。複合バリア層14は、積層方式で配置された、デジタル合金バリア層141およびAlGaNバリア層142を有し、デジタル合金バリア層141は、ドーピング層15に近接して配置される。この実施形態では、2つのデジタル合金バリア層141が存在し、該2つのデジタル合金バリア層141は、それぞれ、AlGaNバリア層142の両側に配置され、すなわち、一つのデジタル合金バリア層141は、AlGaNバリア層142と挿入層16の間に追加される。デジタル合金バリア層141におけるAl原子の量割合は、AlGaNバリア層142におけるAl原子の量割合よりも大きい。この実施形態における2つのデジタル合金バリア層141の厚さは、同じであっても、異なっていてもよい。すなわち、Mgイオンの拡散を効果的に抑制するデジタル合金バリア層141は、AlGaNバリア層142の両側の各々に配置され、これにより、MgイオンがAlGaNバリア層142に拡散することが効果的に抑制できる。わずかなMgイオンがAlGaNバリア層142に拡散する場合であっても、これらは、反対側のデジタル合金バリア層141により抑制され、AlGaNバリア層142を介して、Mgイオンがチャネル層13に拡散することが抑制され、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が確保される。もちろん、他の実施形態では、代わりに、デジタル合金バリア層141におけるAl原子の量割合は、AlGaNバリア層142におけるAl原子の量割合以下であってもよい。あるいは、2つのAlGaNバリア層142が存在し、これらは、それぞれ、デジタル合金バリア層141の2つの側に配置される。あるいは、核生成層17および/または挿入層16は、半導体エピタキシャル構造10内に配置されなくてもよく、すなわち、基板11、バッファ層12、チャネル層13、挿入層16、複合バリア層14、およびドーピング層15が、積層方式で順次配置され、または基板11、核生成層17、バッファ層12、チャネル層13、複合バリア層14、およびドーピング層15が、積層方式で順次配置され、または基板11、バッファ層12、チャネル層13、複合バリア層14、およびドーピング層15が、積層方式で順次配置される。
【0047】
本願における保護範囲は、前述の第1の実施形態から第5の実施形態に限定されるものではなく、第1の実施形態から第5の実施形態の任意の組み合わせも、本願の保護範囲内にある。すなわち、前述の複数の実施形態は、実際のニーズに基づいてランダムに組み合わされてもよい。
【0048】
この用途では、複合バリア層14は、ドーピング層15とチャネル層13の間に配置され、複合バリア層14におけるデジタル合金バリア層141は、化合物により形成された積層原子層である、1または2以上のAlN層1411を有し、換言すれば、本用途では、1または2以上のAlN層1411を有するデジタル合金バリア層141が、ドーピング層15とチャネル層13の間に配置され、これにより、ドーピング層15におけるドープされたMgイオンが複合バリア層14およびチャネル層13に拡散することが効果的に抑制され、これにより、オン抵抗の増加が回避され、半導体エピタキシャル構造10の電気的特性が確保される。また、デジタル合金バリア層141は、さらに、AlGaNバリア層142と等価な機能を有し、すなわち、デジタル合金バリア層141とAlGaNバリア層142は、相互に複合バリア層14を形成し、これは、チャネル層13と共に分極効果を発生するように構成され、複合バリア層14とチャネル層13との間に、2DEGが形成される。また、デジタル合金バリア層141の成長速度は、AlGaNバリア層142よりも有意に低い。従って、デジタル合金バリア層141とAlGaNバリア層142とが組み合わされ、Mgイオンの拡散が抑制される一方、製品の製造効率が有効に向上し、製品の製造コストが低減される。デジタル合金バリア層141の成長法では、Al原子の量の同じ割合の下、有意に小さな応力が生じ、これにより、高温および高電力作動条件における応力により生じる逆圧電効果が回避される。
【0049】
前述の記載は、単に本願のいくつかの実施形態および実施例に過ぎず、本願の保護範囲は、これに限定されるものではない。本願に開示された技術範囲内で、当業者が容易に理解することができる任意の変更または置換は、本願の保護範囲に属する必要がある。従って、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従う必要がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8