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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ティルティングパッド軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
F16C17/03
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022566364
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021058413
(87)【国際公開番号】W WO2021223943
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】102020205769.9
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シュールケ,アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ラング,トーマス
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-525102(JP,A)
【文献】実開昭49-053144(JP,U)
【文献】特公昭37-008655(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティルティングパッド(1,2,3)を有するティルティングパッド軸受(10)であって、該ティルティングパッドが、前記ティルティングパッド軸受(10)の作動時に、前記ティルティングパッド(1,2,3)と、回転軸を中心として回転可能に支承されたロータ体(4)との間で収束していく軸受間隙を生成するために、フレーム状のばね装置(8)によりハウジング体(5)の中で傾動可能に位置決めされて保持される、ティルティングパッド軸受において、前記ハウジング体(5)と前記ティルティングパッド(1,2,3)との間に配置される転動体(6,7;20;24;44)を有し、
前記ハウジング体(5)と前記ティルティングパッド(1,2,3)との間で前記転動体(6,7;20)を位置に関して保持する役目を果たす保持器(9)を有し、
前記保持器(9)は貫通孔(19;26;51~53)を有し、これらの中に前記転動体(6,7;20;24;44)がクリアランスをもって収容されて、前記転動体(6,7;20;24;44)が前記貫通孔(19;26;51~53)の外部で前記ハウジング体(5)ともそれぞれの前記ティルティングパッド(1,2,3)とも転動接触するようになっていることを特徴とする、ティルティングパッド軸受。
【請求項2】
前記転動体(24;44)はローラとして製作されることを特徴とする、請求項1に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項3】
前記転動体(6,7;20)はボールとして製作されることを特徴とする、請求項1に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項4】
前記保持器(9)は少なくとも1つの環状体(11,12;31,32;45)を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項5】
前記ばね装置(8)は、ばね部材(13,14,15;23;27;43)を含み、付属の前記ティルティングパッド(1,2,3)を前記ハウジング体(5)の中で傾動可能に位置決めして保持するために、前記ティルティングパッド(1,2,3)にそれぞればね部材(13,14,15;23;27;43)が付属することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項6】
前記ばね部材(13,14,15;23;27;43)は付属の前記ティルティングパッド(1,2,3)をその円周方向で反対を向く各端部で包囲することを特徴とする、請求項に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項7】
前記ばね部材(23;43)は、内側に向かって付属の前記ティルティングパッド(1)に対して初期応力をかけられる少なくとも1つのばね舌部(21;25)を含むことを特徴とする、請求項またはに記載のティルティングパッド軸受。
【請求項8】
請求項1からまでに記載されているティルティングパッド軸受(10)のための保持器(9)、ティルティングパッド(1,2,3)、ばね装置(8)、ハウジング体(5)、および/または転動体(6,7;20;24;44)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティルティングパッドを有するティルティングパッド軸受に関し、該ティルティングパッドは、ティルティングパッド軸受の作動時に、ティルティングパッドと、回転軸を中心として回転可能に支承されたロータ体との間で収束していく軸受間隙を生成するために、フレーム状のばね装置によりハウジング体の中で傾動可能に位置決めされて保持される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1より、スリーブと、複数のティルティングパッドと、ティルティングパッドが中に収容されるフレームとを有するティルティングパッド軸受が公知であり、スリーブの内側と付属のティルティングパッドとの間にそれぞればね部材が設けられ、ばね部材はフレームと結合されるか、または別個のコンポーネントとしてスリーブの内側とフレームとの間に配置され、フレームは付属のティルティングパッドをフレームの中で保持するために少なくとも1つの保持区域を有し、それぞれのティルティングパッドは、ティルティングパッドの円周方向への傾動を許容するために、ティルティングパッドが径方向および好ましくは追加的に円周方向にクリアランスを有するように、少なくとも1つの保持区域によってフレームの中で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】ドイツ特許出願公開第102016216395A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ティルティングパッドを有するティルティングパッド軸受であって、該ティルティングパッドが、ティルティングパッド軸受の作動時に、ティルティングパッドと、回転軸を中心として回転可能に支承されたロータ体との間で収束していく軸受間隙を生成するために、フレーム状のばね装置によってハウジング体の中で傾動可能に位置決めされて保持されるものを、機能的および/または製造工学的に改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、ティルティングパッドを有するティルティングパッド軸受であって、該ティルティングパッドが、ティルティングパッド軸受の作動時に、ティルティングパッドと、回転軸を中心として回転可能に支承されたロータ体との間で収束していく軸受間隙を生成するために、フレーム状のばね装置によってハウジング体の中で傾動可能に位置決めされて保持されるものにおいて、ハウジング体とティルティングパッドとの間に配置される転動体によって解決される。このロータ体は、たとえばシャフトの1つのシャフト区域である。工学の数多くの分野において、高速回転するシャフトが支承されなければならない。そのようなシャフトが必要となるのは、たとえば、特にスーパーチャージ式の内燃機関や燃料電池システムのための空気を圧縮するのに利用されるターボ圧縮機である。その場合にはシャフトの上、内部、または表面に、通常、たとえばタービンホイール、圧縮機ホイール、または電気駆動装置のための磁石などの別のコンポーネントが組み付けられる。これらも同じく非常に高い速度で回転する。シャフトは一部分または多部分で製作されていてよい。シャフトは複数の軸受ユニットによって、たとえば2つのラジアル軸受とアキシャル軸受によって、支承されるのが好ましい。これらの軸受ユニットは、作動時に力とトルクがシャフトに作用したときに、可能な限り損失の少ない回転を可能にする。支承をするために、気体潤滑式の軸受が使用されるのが好ましい。そのような軸受は、非常に高い回転速度のもとで、非常に少ない摩擦およびこれに伴ってわずかな軸受損失しか有さないからである。これに加えて、気体潤滑式の軸受ではオイル潤滑やグリース潤滑が不要となる。このことは、特に燃料電池の用途の場合に好ましい。その場合、燃料電池スタックを損傷させないために、送出される圧縮機の空気がオイルフリーでなければならないからである。ティルティングパッド軸受は、少なくとも3つのティルティングパッドを含むのが好ましい。ティルティングパッド軸受は、ちょうど3つのティルティングパッドを含むのが特別に好ましい。権利申請されているティルティングパッド軸受は、ラジアル軸受であるのが好ましい。ティルティングパッドはばね装置によって、ティルティングパッド軸受の作動時に発生する傾動運動を行うことができるように、互いに相対的に位置決めされて保持される。ティルティングパッドは、いわゆるピボット点またはピボット軸もしくは傾動軸を中心として傾動可能である。転動体は、ティルティングパッドの傾動運動を可能にするための役目を果たすのが好ましい。転動体を介して、ラジアル軸受のティルティングパッドが径方向で点状または線状に支持される。転動体は、転がり軸受で利用されるボール、ローラ、ニードルなどの標準化されたコンポーネントであるのが特別に好ましい。このような標準化された転動体は低コストに入手可能である。
【0006】
ティルティングパッド軸受の1つの好ましい実施例は、転動体がローラとして製作されることを特徴とする。ローラは実質的に直円柱の形態を有するのが好ましく、その円柱軸がロータ体の回転軸に対して平行に配置される。各々のティルティングパッドに、少なくとも1つの転動体が付属するのが好ましい。ローラにより、ティルティングパッド軸受の作動時に、ティルティングパッドの定義された傾動運動を簡易な方式で具体化することができる。
【0007】
ティルティングパッド軸受の別の好ましい実施例は、転動体がボールとして製作されることを特徴とする。各々のティルティングパッドに複数のボールが付属していてよい。その場合、ボールはロータ体の回転軸に対して平行に配置されるのが好ましい。1つの好ましい実施例では、各々のティルティングパッドに、ボールとして製作されたちょうど1つの転動体が付属する。このことは特に、付属のティルティングパッドが、シャフト軸とも呼ぶ、ロータ体の回転軸に対して平行な軸を中心として傾動できるだけでなく、これに対して直交する軸に対しても傾動できるという利点をもたらす。このようにして、それ自体としては望ましくないが実際にはほぼ回避可能な、ロータ体ないしシャフトの、またはハウジング体のハウジング穴の、角度の誤位置を補償することができる。この実施例では、ティルティングパッドは回転軸またはシャフト軸に沿ってアライメントされるのが好ましい。
【0008】
ティルティングパッド軸受の別の好ましい実施例は、ハウジング体とティルティングパッドとの間で転動体を位置に関して保持するための役目を果たす保持器を有することを特徴とする。保持器は、1つの実施例では、ハウジング体とティルティングパッドとの間で転動体を位置に関して保持するための役目だけを果たす。このことは、保持器が比較的簡易に製作されていてよく、そのようにして低コストに製作可能であってよいという利点をもたらす。保持器によって転動体の予備組立が可能となる。保持器はたとえば少なくとも1つの環状体を含むことができる。環状体は、転動体を収容するために、転動体ごとにそれぞれ1つの貫通孔を有することしか要しない。実施形態に応じて、ばね装置も相応の貫通孔を備える。貫通孔は、一方では転動体の位置決めのための役目を果たす。これに加えて貫通孔は、転動体がロータ体との接触だけでなくハウジング体との接触も有することも可能にする。さらに別の実施例では、転動体の位置決めのためにばね装置だけを利用することもできる。その場合には保持器を省略することができる。
【0009】
ティルティングパッド軸受のさらに別の実施例は、保持器が貫通孔を有し、その中に転動体がクリアランスをもって収容されて、転動体が貫通孔の外部で、ハウジング体ともそれぞれのティルティングパッドとも転動接触するようになっていることを特徴とする。実施形態に応じて、径方向で保持器とロータ体との間に、ないしは保持器とハウジング体との間に、ばね装置ないしばね装置の少なくとも1つの部分がさらに配置される。その場合、ばね装置は相応の個所に、保持器の対応する貫通孔に対して同軸の貫通孔を備えているのが好ましい。保持器によって、ロータ体とハウジング体との間で転動体をその所望の位置で、簡易な方式により安定的に保持することができる。
【0010】
ティルティングパッド軸受のさらに別の好ましい実施例は、保持器が少なくとも1つの簡素な環状体を含むことを特徴とする。この環状体は、たとえば長方形のリング断面を有する円環の形態を有する。それによって環状体の製作が簡易化される。環状体の貫通孔の形態は、基本的に、転動体の形態に合わせて適合化されるのが好ましい。保持器が2つの環状体を含むこともできる。実施形態に応じて、これらの環状体がウェブによって互いに結合されていてよい。
【0011】
ティルティングパッド軸受のさらに別の好ましい実施例は、付属のティルティングパッドをハウジング体の中で傾動可能に位置決めして保持するために、ティルティングパッドにそれぞればね部材が付属することを特徴とする。ばね装置は、この実施例では、ちょうど1つのばね部材をティルティングパッドごとに含むのが好ましい。それによってばね装置の製作が簡易化される。ばね部材は、円周方向で反対を向くそれぞれの端部に保持区域をそれぞれ含むのが好ましく、これによってそれぞれのばね部材が付属のティルティングパッドを包囲する。別の実施例では、ないし別の構成要件では、保持器は、ただ1つの環状体を有するその一体的な実施形態だけでなく、2つの環状体を有する2部分からなる実施形態においても、ティルティングパッド軸受でばね部材を少なくとも軸方向に位置決めするための役目も果たすのが好ましい。
【0012】
ティルティングパッド軸受のさらに別の好ましい実施例は、ばね部材が付属のティルティングパッドをその円周方向で反対を向く各端部で包囲することを特徴とする。この目的のためにばね部材はその円周方向で反対を向く各端部に、ちょうど1つの保持区域を有することができる。あるいはばね部材は、その反対を向く各端部に複数の保持区域を備えていてもよい。それにより、ばね装置および/または保持器の具体化にあたっていっそう広い形態の自由度がもたらされる。
【0013】
ティルティングパッド軸受のさらに別の好ましい実施例は、ばね部材が、内側に向かって付属のティルティングパッドに対して初期応力をかけられる少なくとも1つのばね舌部を含むことを特徴とする。ばね舌部は、この目的のために保持器に設けられる貫通孔を通って延びるのが好ましい。その代替または追加としてばね部材は、ハウジング体に対して初期応力をかけられる追加のばね舌部を有することができる。ばね舌部を有するばね部材は、ティルティングパッドを保持して位置決めするとともに、ばね舌部を用いてこれに初期応力をかけるのが好ましく、それにより、ロータ体が回転していないとき、ティルティングパッドが片側でロータ体に向かって押圧される。
【0014】
さらに本発明は、上に説明したティルティングパッド軸受のための保持器、ティルティングパッド、ばね部材、ハウジング体、および/または転動体に関する。ここに挙げた各部品は別々に取扱可能である。
【0015】
本発明のその他の利点、構成要件、および具体的事項は、図面を参照しながらさまざまな実施例が具体的に記述される以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】3つのティルティングパッドを有し、これらにそれぞれ2つのボール状の転動体が付属するティルティングパッド軸受を示す斜視図である。
図2図1に類似する図面であるが、各々のティルティングパッドに1つのボール状の転動体が付属している。
図3図2に類似する図であるが、各々のティルティングパッドに1つのローラ状の転動体が付属している。
図4】ただ1つの環状体を含む保持器を有する、図3に類似する図である。
図5】ハウジング体を半分に切断して示す図4のティルティングパッド軸受である。
図6図5に示すようなティルティングパッド軸受の転動体のための保持器の製作に好ましく利用することができる薄板帯材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から5には、ティルティングパッド軸受10がさまざまな実施例で模式的に斜視図として示されている。同一または類似の部品に符号を付すために、図1から5では同じ符号を使用している。まず最初に、個々の実施例の共通性について詳述する。その後に、個々の実施例の間の相違について説明する。
【0018】
ティルティングパッド軸受10は、3つのティルティングパッド1,2,3を有するラジアル軸受として製作されている。ティルティングパッド1,2,3の径方向内部に、ロータ体4が回転軸を中心として回転可能に支承される。ロータ体4はたとえばシャフトであり、またはシャフトを含むシャフト区域である。
【0019】
ティルティングパッド1,2,3は転動体6,7;20;24;44によって、それぞれピボット点または傾動軸もしくはピボット軸を中心として傾動可能である。図1では、各々のティルティングパッド1から3に、ボールとして製作された2つの転動体6,7が付属している。図2から5では、各々のティルティングパッド1から3に、ちょうど1つの転動体20;24;44が付属している。転動体20はボールとして製作されている。転動体24;44はローラとして製作されている。
【0020】
ティルティングパッド1から3は、ばね装置8によって互いに相対的に、およびロータ体4に対して相対的に、ハウジング体(図5の符号5)の内部で位置決めされて保持される。ばね装置8は保持器9と組み合わされている。
【0021】
図1では、保持器9は2つの環状体11,12を含んでいる。ばね装置8は3つのばね部材13,14,15を含んでいる。各々のばね部材13,14,15に、ちょうど1つのティルティングパッド1,2,3が付属している。
【0022】
ばね部材13,14,15は軸方向で両方の環状体11,12の間に配置されている。ばね部材13,14,15、ティルティングパッド1,2,3、および環状体11,12は、それぞれ同一に製作されている。これに加えて、上に挙げた個別部品は設計的に簡素に構成されており、それに伴って低コストに製造可能である。
【0023】
ばね部材13はその円周方向で反対を向く各端部に、それぞれ保持区域16,17を含んでいる。保持区域16,17により、ばね部材13が付属のティルティングパッド1を包囲する。軸方向では、ばね部材13は両方の環状体11,12の間に位置決めされている。これに加えてばね部材13は、径方向外側に向かってハウジング体(図5の符号5)に対して初期応力をかけられるばね舌部18を有している。
【0024】
環状体11,12は、ボールとして製作された転動体6,7を収容するためにそれぞれ貫通孔19を含んでいる。ボール6は、たとえば長孔として製作される貫通孔19の中でクリアランスをもって収容される。
【0025】
図示したティルティングパッド1から3は内径と外径を有している。図示しているものとは異なり、ティルティングパッド1から3はほぼ任意の形状をとることもできる。ティルティングパッド1から3は、たとえばこれらが環状パッドとして製作される場合、リングを分割することによって低コストに製作することができる。
【0026】
図2では、ティルティングパッド1から3の各々に、ボールとして製作された転動体20が付属している。ティルティングパッド1に付属するばね部材23が貫通孔22を含んでいて、その中にボール20がクリアランスをもって収容されている。貫通孔22は円形に製作されている。これに加えてばね部材23は、図2では径方向内側に向かってロータ体4に対して初期応力をかけられるばね舌部21を有している。
【0027】
保持器9は2つの環状体31,32を含んでいて、これらは図2および3に示す実施例では、ばね部材23;27を軸方向で位置決めするための役目だけを果たす。環状体31,32は、図1の環状体11,12とは異なり、転動体のための貫通孔(図1の符号19)を備えていない。
【0028】
図3ではローラとして製作された転動体24が、ティルティングパッド1に付属するばね部材27の貫通孔26に配置されている。ばね舌部25が、図2に示す実施例と同じく、径方向内側に向かってロータ体4に対して初期応力をかけられている。転動体24の近傍へのばね舌部25の配置は、特に、ばね装置8および保持器9のアライメントないし位置決めのために転動体24が好ましく利用されるという利点をもたらす。
【0029】
図4および5に示す実施例では、保持器9は1つの環状体45だけを含んでいる。環状体45は、ティルティングパッド軸受10に関して軸方向で中央に配置されている。ばね部材43は、前述した各実施例とは異なり、2つの保持区域41,42を各々の円周端部に備えている。保持区域41,42により、ばね部材43はティルティングパッド1を、図1に見えているその円周端部で包囲する。保持区域41,42は、これらの間に配置された環状体45に対して軸方向に隣接して配置されている。
【0030】
図5には、図4のティルティングパッド軸受10が、半分に切断して図示したハウジング5とともに斜視図で示されている。ハウジング体5はハウジング穴48を含んでいて、その中にティルティングパッド軸受10が収容されている。ばね部材43から、位置決め舌部46が径方向外側に向かって折曲されている。
【0031】
位置決め舌部46は、この目的のためにハウジング体5に設けられた貫通孔47に係合する。位置決め舌部46に隣接して、ばね部材43は転動体44のための符号のない貫通孔を含んでいる。これに対応する貫通孔が、径方向でティルティングパッド1とばね部材43との間に配置される環状体45に、転動体44のために設けられている。
【0032】
位置決め舌部46は、ハウジング体5のハウジング穴48の中での回り止めを形成するための役目を果たす。図示しているものとは異なり、位置決め舌部46がハウジング5にある対応する溝または切欠きに係合することもできる。
【0033】
図6には、環状体(図5の符号45)を薄板帯材57から簡易な方式で低コストに製作できることが示されている。薄板帯材57は貫通孔51から53および54から56を含んでいて、これらはたとえば打抜きによって薄板帯材57に製作することができる。貫通孔51から53は、それぞれ1つの転動体(図5の符号44)を収容するための役目を果たす。
【0034】
貫通孔54から56は、ばね装置(図5の符号8)のばね部材から突き出してロータ体(図5の符号4)に対して初期応力をかけられるばね舌部を挿通するための役目を果たす。貫通孔51から56を備える薄板帯材57は、環状体(図5の符号45)の製作時には展開材料50または中間製品とみなすこともできる。
【符号の説明】
【0035】
1,2,3 ティルティングパッド
4 ロータ体
5 ハウジング体
6,7;20;24;44 転動体
8 ばね装置
9 保持器
10 ティルティングパッド軸受
11,12;31,32;45 環状体
13,14,15;23;27;43 ばね部材
19;26;51~52 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6