(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】光演算装置及び光演算方法
(51)【国際特許分類】
G06E 3/00 20060101AFI20240718BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G06E3/00
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2022568392
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024814
(87)【国際公開番号】W WO2023276061
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】日下 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柏木 正浩
(72)【発明者】
【氏名】九内 雄一朗
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-502182(JP,A)
【文献】特開平08-263161(JP,A)
【文献】特開2002-228441(JP,A)
【文献】特開2004-020458(JP,A)
【文献】特開平04-280385(JP,A)
【文献】特開平11-096140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06E 3/00
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光演算機能を有する複数の光回折素子からなる光回折素子群を備えた光演算装置であって、
前記複数の光回折素子の各々は、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のマイクロセルにより構成され、前記複数のマイクロセルの各々を透過した位相の異なる光を相互に干渉させることにより光演算を行う光回折素子であり、
前記光回折素子群は、当該光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の非発光体である対象物にて反射若しくは散乱された光、又は、当該光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の発光体である対象物にて発せられた光
に対して、前記光回折素子群に含まれる各光回折素子
による光演算が順に行われる、ように配置されている、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項2】
前記光回折素子群の前段に配置されたフィルタを更に備えており、
前記フィルタは、前記光回折素子群に含まれる光回折素子のうち、最初に信号光が入射する第1光回折素子の光軸との成す角が特定の角度以下となる方向に進行する光を選択的に透過する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光演算装置。
【請求項3】
前記フィルタは、絞りであり、
前記特定の角度は、前記第1光回折素子の光軸と、前記絞りの開口を通って前記第1光回折素子に入射する光線と、の成す角の最大値である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光演算装置。
【請求項4】
前記フィルタは、空気よりも屈折率の高い材料により構成され、前記第1光回折素子と対向する側と反対側の表面が前記光軸と直交するように配置されたブロックであり、
前記特定の角度は、前記ブロックの前記表面における臨界角である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光演算装置。
【請求項5】
前記フィルタは、レンズであり、
前記特定の角度は、前記第1光回折素子の光軸と、前記レンズを通って前記第1光回折素子に入射する光線の、前記レンズに入射する前の光軸との成す角の最大値である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光演算装置。
【請求項6】
前記対象物を照らす光を、前記光回折素子群に含まれる光回折素子のうち、最初に信号光が入射する第1光回折素子の光軸を含む特定の範囲に限定的に照射する光源を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の光演算装置。
【請求項7】
光演算機能を有する複数の光回折素子からなる光回折素子群を備えた光演算装置を用いて光演算を行う光演算方法であって、
前記複数の光回折素子の各々は、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のマイクロセルにより構成され、前記複数のマイクロセルの各々を透過した位相の異なる光を相互に干渉させることにより光演算を行う光回折素子であり、
前記光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の非発光体である対象物にて反射若しくは散乱された光、又は、前記光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の発光体である対象物にて発せられた光
に対して、前記光回折素子群に含まれる各光回折素子
による光演算が順に行われる、
ことを特徴とする光演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回折素子を用いて光演算を行う光演算装置及び光演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセルを有し、各セルを透過した信号光を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を光学的に実行するように設計された光回折素子が知られている。このような光回折素子を用いた光学的な演算には、プロセッサを用いた電気的な演算と比べて高速且つ低消費電力であるという利点がある。また、信号光に対して、並べて配置された2つ以上の光回折素子を順に作用させることによって、複数段光演算(2段以上の光演算)を実現することができる。
【0003】
特許文献1には、入力層、中間層、及び出力層を有する光ニューラルネットワークが開示されている。上述した光回折素子は、例えば、このような光ニューラルネットワークの中間層として利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光演算装置においては、対象物を被写体として含む画像が表示されたディスプレイからの光を光回折素子群に入力することによって、対象物の視覚的情報に対する光演算を行っていた。このため、対象物を被写体として含む画像を形成するために、イメージセンサを用いて光信号を電気信号に変換する必要があった。また、対象物を被写体として含む画像を表示するために、ディスプレイを用いて電気信号を光信号に変換する必要があった。したがって、従来の光演算装置には、速度及び効率の両面において改良の余地が残されていた。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高速且つ高効率に光演算を実行することが可能な光演算装置又は光演算方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するべく、本発明の一態様に係る光演算装置は、光演算機能を有する少なくとも1つの光回折素子からなる光回折素子群を備えた光演算装置であって、前記光回折素子群は、当該光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の非発光体である対象物にて反射若しくは散乱された光、又は、当該光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の発光体である対象物にて発せられた光が、前記光回折素子群に含まれる各光回折素子を順に通過する、ように配置されている。
【0008】
上記の課題を解決するべく、本発明の一態様に係る光演算方法は、少なくとも1つの光回折素子からなる光回折素子群を備えた光演算装置を用いて光演算を行う光演算方法であって、前記光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の非発光体である対象物にて反射若しくは散乱された光、又は、前記光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の発光体である対象物にて発せられた光が、前記光回折素子群に含まれる各光回折素子を順に通過する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、高速且つ高効率に光演算を実行することが可能な光演算装置又は光演算方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る光演算装置の斜視図である。(b)は、その光演算装置の平面図である。
【
図2】(a)及び(b)は、それぞれ、
図1に示す光演算装置が備える第1光回折素子及びフィルタ(絞り)の平面図である。(a)は、第1光回折素子の光軸に近い点からの光(信号光)の振る舞いを示し、(b)は、第1光回折素子の光軸から遠い点からの光(ノイズ光)の振る舞いを示す。
【
図3】(a)は、
図1に示す光演算装置が備える光回折素子の平面図である。(b)は、その光回折素子の一部を拡大した斜視図である。
【
図4】(a)は、
図1に示す光演算装置の第1の変形例である光演算装置の斜視図である。(b)は、その光演算装置の平面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、それぞれ、
図4に示す光演算装置が備える第1光回折素子及びフィルタ(ブロック)の平面図である。(a)は、第1光回折素子の光軸に近い点からの光(信号光)の振る舞いを示し、(b)は、第1光回折素子の光軸から遠い点からの光(ノイズ光)の振る舞いを示す。
【
図6】(a)は、
図1に示す光演算装置の第2の変形例である光演算装置の斜視図である。(b)は、その光演算装置の平面図である。
【
図7】(a)及び(b)は、それぞれ、
図6に示す光演算装置が備える第1光回折素子及びフィルタ(レンズ)の平面図である。(a)は、第1光回折素子の光軸に近い点からの光(信号光)の振る舞いを示し、(b)は、第1光回折素子の光軸から遠い点からの光(ノイズ光)の振る舞いを示す。
【
図8】
図1に示す光演算装置の第3の変形例である光演算装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔光演算装置の構成〕
本発明の一実施形態に係る光演算装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1の(a)は、光演算装置1の斜視図であり、
図1の(b)は、光演算装置1の平面図である。
【0012】
光演算装置1は、
図1に示すように、光回折素子群11と、フィルタ12と、を備えている。
【0013】
光回折素子群11は、n個の光回折素子11a1~11anの集合である。ここで、nは、1以上の任意の自然数である。各光回折素子11aiは、光演算機能、すなわち、信号光の2次元強度分布を予め定められた変換規則に従って変換する機能を有する素子である。ここで、iは、1以上n以下の各自然数である。
図1においては、3個の光回折素子11a1~11a3の集合を、光回折素子群11として図示している。各光回折素子11aiの具体例については、
図3を参照して後述する。
【0014】
光回折素子群11において、第1光回折素子11a1、第2光回折素子11a2、…、及び第n光回折素子11anは、信号光の光路上に一直線に並んで配置されている。このため、光回折素子群11に入力された信号光は、第1光回折素子11a1、第2光回折素子11a2、…、及び第n光回折素子11anを、この順に透過する。したがって、光回折素子群11においては、信号光に対して、第1光回折素子11a1による第1光演算、第2光回折素子11a2による第2光演算、…、及び第n光回折素子11anによる第n光演算がこの順に実行される。光回折素子群11から出力される信号光の2次元強度分布は、これらの演算の演算結果を表す。
【0015】
フィルタ12は、光回折素子群11の前段に配置されている。フィルタ12は、信号光が最初に入射する第1光回折素子11a1の光軸L1との成す角θが特定の角度以下となる方向に進行する光を選択的に光回折素子群11に導くための構成である。本実施形態においては、フィルタ12として、開口12aを有する絞りを用いている。このため、上述した特定の角度は、光軸L1と、絞りであるフィルタ12の開口12aを通って第1光回折素子11a1に入射する光線の光軸と、の成す角の最大値θ1となる。フィルタ12に入射する光のうち、進行方向と光軸L1との成す角θが特定の角度θ1よりも大きい光は、フィルタ12に吸収される。
【0016】
従来の光演算装置においては、対象物Sを被写体として含む画像が表示されたディスプレイからの光を光回折素子群に入力することによって、対象物Sの視覚的情報に対する光演算を行う。これに対して、本実施形態の光演算装置1においては、対象物Sそのものからの光を光回折素子群11に入力することによって、対象物Sの視覚的情報に対する光演算を行う。このため、光回折素子群11は、対象物Sそのものからの光が光回折素子群11に含まれるn個の光回折素子11a1~11aを順に通過するように配置されている。ここで、対象物Sとは、光演算装置11の外部に配置された、ディスプレイ以外の物体のことを指す。また、対象物Sそのものからの光とは、対象物Sが非発光体である場合には、対象物Sにて反射又は散乱された光のことを指し、対象物Sが発光体である場合には、対象物Sから発せられた光のことを指す。これにより、本実施形態の光演算装置1においては、対象物Sを被写体として含む画像を形成するために、光信号を電気信号に変換する必要がない。また、対象物Sを被写体として含む画像を表示するために、電気信号を光信号に変換する必要がない。このため、本実施形態の光演算装置1によれば、対象物Sの視覚的情報に対する光演算を、従来の光演算装置よりも高速且つ効率的に実行することが可能になる。
【0017】
なお、光演算装置1は、光回折素子群11から出力される信号光を電気信号に変換する他のイメージセンサを更に備えていてもよい。他のイメージセンサとしては、例えば、マトリックス状に配置された複数の受光セルを含む2次元イメージセンサを用いることができる。
【0018】
〔フィルタの効果〕
光演算装置1におけるフィルタ12の効果について、
図2を参照して説明する。
図2の(a)及び(b)は、光演算装置1のフィルタ12及び第1光回折素子11a1を示す平面図である。
【0019】
第1光回折素子11a1の光軸L1に近い点Paからの光は、
図2の(a)に示すように、進行方向と光軸L1との成す角θが上述した特定の角度θ1以下になるので、開口12aを通って第1光回折素子11a1に入射し得る。このような光としては、主に、対象物Sからの光、すなわち、信号光が想定される。
【0020】
一方、第1光回折素子11a1の光軸L1から遠い点Pbからの光は、
図2の(b)に示すように、進行方向と光軸L1との成す角θが上述した特定の角度θ1よりも大きくなるので、開口12aを通って第1光回折素子11a1に入射し得ない。このような光としては、主に、対象物S以外からの光、すなわち、ノイズ光が想定される。
【0021】
したがって、フィルタ12を用いることで、信号光が第1光回折素子11a1に入射することを妨げずに、ノイズ光が第1光回折素子11a1に入射することを妨げることが可能である。したがって、ノイズ光に起因する演算精度の低下を抑制することができる。
【0022】
〔光回折素子の具体例〕
光回折素子11aiの具体例について、
図3を参照して説明する。
図3の(a)は、本具体例に係る光回折素子11aiの平面図である。
図3の(b)は、本具体例に係る光回折素子11aiの一部(
図3の(a)において点線で囲んだ部分)を拡大した斜視図である。
【0023】
光回折素子11aiは、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のマイクロセルにより構成されている。光回折素子11aiに信号光が入射すると、各マイクロセルにて回折された位相の異なる信号光が相互に干渉することによって、予め定められた光演算(予め定められた変換規則に従う2次元強度分布の変換)が行われる。なお、本明細書において、「マイクロセル」とは、例えば、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、本明細書において、「セルサイズ」とは、セルの面積の平方根のことを指す。例えば、マイクロセルの平面視形状が正方形である場合、セルサイズとは、セルの一辺の長さである。セルサイズの下限は、例えば、1nmである。
【0024】
図3に例示した光回折素子11aiは、マトリックス状に配置された200×200個のマイクロセルにより構成されている。各マイクロセルの平面視形状は、500nm×500nmの正方形であり、光回折素子11aiの平面視形状は、100μm×100μmの正方形である。
【0025】
(1)マイクロセルの厚みをセル毎に独立に設定することによって、又は、(2)マイクロセルの屈折率をセル毎に独立に選択することによって、各マイクロセルを透過する信号光の位相変化量をセル毎に独立に設定することができる。本実施形態においては、ナノインプリントにより実現可能な(1)の方法を採用している。この場合、各マイクロセルは、
図3の(b)に示すように、各辺の長さがセルサイズと等しい正方形の底面を有する四角柱状のピラーにより構成される。また、この場合、各マイクロセルを透過する信号光の位相変化量は、そのマイクロセルを構成するピラーの高さに応じて決まる。すなわち、高さの高いピラーにより構成されるマイクロセルを透過する信号光の位相変化量は大きくなり、高さの低いピラーにより構成されるマイクロセルを透過する信号光の位相変化量は小さくなる。
【0026】
なお、各マイクロセルの厚み又は屈折率の設定は、例えば、機械学習を用いて実現することができる。この機械学習において用いられるモデルとしては、例えば、光回折素子11aiに入力される信号光の2次元強度分布を入力とし、光回折素子11aiから出力される信号光の2次元強度分布を出力とするモデルであって、各マイクロセルの厚み又は屈折率をパラメータとして含むモデルを用いることができる。ここで、光回折素子11aiに入力される信号光の2次元強度分布とは、光回折素子11aiを構成する各マイクロセルに入力される信号光の強度の集合のことを指す。また、光回折素子11aiから出力される信号光の2次元強度分布とは、光回折素子11aiの後段に配置された光回折素子11ai+1を構成する各マイクロセルに入力される信号光の強度の集合、又は、光回折素子11aiの後段に配置された受光部を構成する各セルに入力される信号光の強度の集合のことを指す。
【0027】
〔光演算装置の第1の変形例〕
光演算装置1の第1の変形例(以下、光演算装置1Aと記載する)について、
図4を参照して説明する。
図4の(a)は、光演算装置1Aの斜視図であり、
図4の(b)は、光演算装置1Aの平面図である。
【0028】
光演算装置1Aにおける光演算装置1から変更点は、フィルタ12として、絞りを用いる代わりに、フィルタ12Aとして、ブロックを用いている点である。このブロックは、空気よりも屈折率の高い材料により構成されており、第1光回折素子11a1と対向する側と反対側の表面12A1が光軸L1と直交するように配置されている。
【0029】
フィルタ12Aは、フィルタ12と同様、第1光回折素子11a1の光軸L1との成す角θが特定の角度以下となる方向に進行する光を選択的に光回折素子群11に導く。本変形例において、上述した特定の角度は、フィルタ12Aを構成するブロックの表面12A1における臨界角θ2となる。フィルタ12Aに入射する光のうち、進行方向と光軸L1との成す角θが特定の角度θ2よりも大きい光は、フィルタ12Aに全反射される。
【0030】
〔第1の変形例におけるフィルタの効果〕
光演算装置1Aの効果について、
図5を参照して説明する。
図5の(a)及び(b)は、光演算装置1Aのフィルタ12A及び第1光回折素子11a1を示す平面図である。
【0031】
第1光回折素子11a1の光軸L1に近い点Paからの光は、
図5の(a)に示すように、進行方向と光軸L1との成す角θが上述した特定の角度θ2以下になるので、第1光回折素子11a1に入射し得る。このような光としては、主に、対象物Sからの光、すなわち、信号光が想定される。
【0032】
一方、第1光回折素子11a1の光軸L1から遠い点Pbからの光は、
図5の(b)に示すように、進行方向と光軸L1との成す角θが上述した特定の角度θ2よりも大きくなるので、第1光回折素子11a1に入射し得ない。このような光としては、主に、対象物S以外からの光、すなわち、ノイズ光が想定される。
【0033】
したがって、光演算装置1Aによれば、信号光が第1光回折素子11a1に入射することを妨げずに、ノイズ光が第1光回折素子11a1に入射することを妨げることが可能である。したがって、ノイズ光に起因する演算精度の低下を抑制することができる。
【0034】
〔光演算装置の第2の変形例〕
光演算装置2の第1の変形例(以下、光演算装置1Bと記載する)について、
図6を参照して説明する。
図6の(a)は、光演算装置1Bの斜視図であり、
図6の(b)は、光演算装置1Bの平面図である。
【0035】
光演算装置1Bにおける光演算装置1から変更点は、フィルタ12として、絞りを用いる代わりに、フィルタ12Bとして、レンズを用いている点である。このレンズは、空気よりも屈折率の高い材料により構成されており、このレンズの光軸が第1光回折素子11a1の光軸と一致するように配置されている。
【0036】
フィルタ12Bは、フィルタ12と同様、第1光回折素子11a1の光軸L1との成す角θが特定の角度以下となる方向に進行する光を選択的に光回折素子群11に導く。本変形例において、上述した特定の角度は、光軸L1と、レンズであるフィルタ12Bを通って第1光回折素子11a1に入射する光線の、レンズであるフィルタ12Bに入射する前の光軸と、の成す角の最大値θ3となる。
【0037】
〔第2の変形例におけるフィルタの効果〕
光演算装置1Bの効果について、
図7を参照して説明する。
図7の(a)及び(b)は、光演算装置1Bのフィルタ12B及び第1光回折素子11a1を示す平面図である。
【0038】
第1光回折素子11a1の光軸L1に近い点Paからの光は、
図7の(a)に示すように、進行方向と光軸L1との成す角θが上述した特定の角度θ3以下になるので、第1光回折素子11a1に入射し得る。このような光としては、主に、対象物Sからの光、すなわち、信号光が想定される。
【0039】
一方、第1光回折素子11a1の光軸L1から遠い点Pbからの光は、
図7の(b)に示すように、進行方向と光軸L1との成す角θが上述した特定の角度θ3よりも大きくなるので、第1光回折素子11a1に入射し得ない。このような光としては、主に、対象物S以外からの光、すなわち、ノイズ光が想定される。
【0040】
したがって、光演算装置1Bによれば、信号光が第1光回折素子11a1に入射することを妨げずに、ノイズ光が第1光回折素子11a1に入射することを妨げることが可能である。したがって、ノイズ光に起因する演算精度の低下を抑制することができる。
【0041】
〔光演算装置の第3の変形例〕
光演算装置1の第1の変形例(以下、光演算装置1Cと記載する)について、
図8を参照して説明する。
図8は、光演算装置1Cの斜視図である。
【0042】
光演算装置1Cにおける光演算装置1から変更点は、フィルタ12を省略すると共に、光源13を追加した点である。光源13は、対象物Sを照らす光を、第1光回折素子11a1の光軸L1を含む特定の範囲に限定的に照射するように構成されている。なお、図示した構成において、対象物Sは、数字が描かれた紙であり、光回折素子群11は、この紙に描かれた数字が0~9の何れかであるかを判定するように設計されている。
【0043】
光源13による照明範囲を限定しない場合、対象物Sの注目領域(図示した例では、「4」が描かれた領域)にて反射又は散乱された光(信号光)に加えて、対象物Sの注目領域以外の領域(図示した例では、「3」や「5」が描かれた領域)、及び、対象物S以外の物体にて反射又は散乱された光(ノイズ光)が光回折素子群11に入射する。これに対して、光源13による照明範囲を第1光回折素子11a1の光軸L1を含む特定の範囲に限定した場合、対象物Sの注目領域(図示した例では、「4」が描かれた領域)にて反射又は散乱された光のみが光回折素子群11に入射する。
【0044】
したがって、光演算装置1Cによれば、信号光が第1光回折素子11a1に入射することを妨げずに、ノイズ光が第1光回折素子11a1に入射することを妨げることが可能である。したがって、ノイズ光に起因する演算精度の低下を抑制することができる。
【0045】
〔まとめ〕
本明細書には、以下の態様が開示されている。
【0046】
(態様1)
光演算機能を有する少なくとも1つの光回折素子からなる光回折素子群を備えた光演算装置であって、
前記光回折素子群は、当該光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の非発光体である対象物にて反射若しくは散乱された光、又は、当該光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の発光体である対象物にて発せられた光が、前記光回折素子群に含まれる各光回折素子を順に通過する、ように配置されている、
ことを特徴とする光演算装置。
【0047】
(態様2)
前記光回折素子群の前段に配置されたフィルタを更に備えており、
前記フィルタは、前記光回折素子群に含まれる光回折素子のうち、最初に信号光が入射する第1光回折素子の光軸との成す角が特定の角度以下となる方向に進行する光を選択的に透過する、
ことを特徴とする態様1に記載の光演算装置。
【0048】
(態様3)
前記フィルタは、絞りであり、
前記特定の角度は、前記第1光回折素子の光軸と、前記絞りの開口を通って前記第1光回折素子に入射する光線と、の成す角の最大値である、
ことを特徴とする態様2に記載の光演算装置。
【0049】
(態様4)
前記フィルタは、空気よりも屈折率の高い材料により構成され、前記第1光回折素子と対向する側と反対側の表面が前記光軸と直交するように配置されたブロックであり、
前記特定の角度は、前記ブロックの前記表面における臨界角である、
ことを特徴とする態様2に記載の光演算装置。
【0050】
(態様5)
前記フィルタは、レンズであり、
前記特定の角度は、前記第1光回折素子の光軸と、前記レンズを通って前記第1光回折素子に入射する光線の、前記レンズに入射する前の光軸との成す角の最大値である、
ことを特徴とする態様2に記載の光演算装置。
【0051】
(態様6)
前記対象物を照らす光を、前記第1光回折素子の光軸を含む特定の範囲に限定的に照射する光源を更に備えている、
ことを特徴とする態様1に記載の光演算装置。
【0052】
(態様7)
前記光回折素子群には、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のマイクロセルを有する光回折素子が少なくとも1つ含まれている、
ことを特徴とする態様1~6の何れか一態様に記載の光演算装置。
【0053】
(態様8)
少なくとも1つの光回折素子からなる光回折素子群を備えた光演算装置を用いて光演算を行う光演算方法であって、
前記光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の非発光体である対象物にて反射若しくは散乱された光、又は、前記光演算装置の外部に配置された対象物であって、ディスプレイ以外の発光体である対象物にて発せられた光が、前記光回折素子群に含まれる各光回折素子を順に通過する、
ことを特徴とする光演算方法。
【0054】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態に開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B,1C 光演算装置
11 光回折素子群
11a1~11an 光回折素子
12 フィルタ(絞り)
12A フィルタ(ブロック)
12B フィルタ(レンズ)
13 光源