IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

特許7522864非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品
<>
  • 特許-非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品 図1
  • 特許-非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品 図2
  • 特許-非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品 図3
  • 特許-非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品 図4
  • 特許-非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品 図5
  • 特許-非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品 図6
  • 特許-非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/20 20200101AFI20240718BHJP
【FI】
A24D1/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022572030
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043805
(87)【国際公開番号】W WO2022138013
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2020214883
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中合 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 哲哉
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/115898(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/142159(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00- 3/18
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこロッド部と、マウスピース部とを備える棒状の非燃焼加熱式たばこであって、
該マウスピース部は、冷却セグメントと、フィルター濾材を含むフィルターセグメントとを含み、該冷却セグメントと該フィルターセグメントとは隣接し、
前記たばこロッド部は、乾燥たばこ葉と、多糖類のゲル中に香料が包含されている香料含有材料とを含む、非燃焼加熱式たばこ。
【請求項2】
前記冷却セグメントの周方向に同心状に開孔が設けられており、該開孔が、冷却セグメントとフィルターセグメントとの境界から、冷却セグメント側の方向の2mm~15mmの領域に存在する、請求項1に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項3】
前記フィルターセグメントが、1つまたは複数の中空部を有するセンターホールセグメントをさらに含む、請求項1又は2に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項4】
前記たばこロッド部は、前記乾燥たばこ葉に対して、前記香料含有材料を1質量%~20質量%含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項5】
前記たばこロッド部は、前記香料を前記香料含有材料中に1mg~30mg含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項6】
前記香料がメンソールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項7】
ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、請求項1~6のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シガレット(紙巻きたばこ)の代替品として、電気加熱式デバイスに挿入して使用する非燃焼加熱式たばこが開発されている(特許文献1)。該非燃焼加熱式たばこは、一般的に、たばこ刻みや香味成分を生成する材料等が巻紙により巻装されてなるたばこロッド、加熱によりたばこロッドから発生した成分を吸引するためのマウスピース、及びこれらを巻装するチップペーパーを備える。
一般的に、電気加熱式たばこ製品では、非燃焼加熱式たばこを電気加熱式デバイスに挿入した後、ヒーター部材を発熱させることにより、該ヒーター部材に接触する箇所を起点としてたばこロッドが加熱され、発生した成分が使用者にデリバリーされる。
【0003】
非燃焼加熱式たばこは、主流煙に香調を付与する目的で、たばこロッドに香料が添加されていることがある。このような非燃焼加熱式たばこを作製する際は、一般的に、乾燥たばこ葉に香料の溶液を添加する方法が採用されている。この方法は、香料溶液を噴き付けることにより簡便に乾燥たばこ葉に香料を添加することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2015-508676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の非燃焼式加熱たばこでは、喫煙初期は過剰量の香料が放出され、パフが進むにつれ香料の放出量が急速に減少するため、喫煙初期から後期に至るまでの間の香味が安定せず、喫煙後期の香味が劣化するといった問題が残されている。
そこで、本発明は、喫煙初期から後期にわたってパフ毎の香料デリバリー量のばらつきが少ない非燃焼加熱式たばこ、及び当該非燃焼加熱式たばこを用いた電気加熱式たばこ製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、たばこロッド部に、乾燥たばこ葉と、多糖類のゲル中に香料が包含されている香料含有材料とを含有させることにより、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
[1]
たばこロッド部と、マウスピース部とを備える棒状の非燃焼加熱式たばこであって、
該マウスピース部は、冷却セグメントと、フィルター濾材を含むフィルターセグメントとを含み、該冷却セグメントと該フィルターセグメントとは隣接し、
前記たばこロッド部は、乾燥たばこ葉と、多糖類のゲル中に香料が包含されている香料含有材料とを含む、非燃焼加熱式たばこ。
[2]
前記冷却セグメントの周方向に同心状に開孔が設けられており、該開孔が、冷却セグメントとフィルターセグメントとの境界から、冷却セグメント側の方向の2mm~15mmの領域に存在する、[1]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[3]
前記フィルターセグメントが、1つまたは複数の中空部を有するセンターホールセグメントをさらに含む、[1]又は[2]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[4]
前記たばこロッド部は、前記乾燥たばこ葉に対して、前記香料含有材料を1質量%~20質量%含む、[1]~[3]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[5]
前記たばこロッド部は、前記香料を前記香料含有材料中に1mg~30mg含む、[1]~[4]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[6]
前記香料がメンソールである、[1]~[5]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[7]
ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、[1]~[6]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、喫煙初期から後期にわたってパフ毎の香料デリバリー量のばらつきが少ない非燃焼加熱式たばこ、及び当該非燃焼加熱式たばこを用いた電気加熱式たばこ製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る電気加熱式たばこ製品の概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る電気加熱式たばこ製品の概略図である。
図5】冷却セグメントと電気加熱式デバイスとが接触する領域の吸口端側の端部を説明するための図である。
図6】冷却セグメントと電気加熱式デバイスとが接触する領域の吸口端側の端部を説明するための図である。
図7】実施例におけるメンソールのデリバリー量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
また、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
また、本明細書において、「複数」は、特段の断りがない限り、2以上であることを表す。
【0011】
<非燃焼加熱式たばこ>
本発明の一実施形態である非燃焼加熱式たばこ(単に「非燃焼加熱式たばこ」とも称する。)は、たばこロッド部と、マウスピース部とを備える棒状の非燃焼加熱式たばこであって、該マウスピース部は、冷却セグメントと、フィルター濾材を含むフィルターセグメントとを含み、該冷却セグメントと該フィルターセグメントとは隣接し、前記たばこロッド部は、乾燥たばこ葉(乾燥済みのたばこ葉)と、多糖類のゲル中に香料が包含されている香料含有材料とを含む、非燃焼加熱式たばこである。
本実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの好適な一例を、図1を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示す非燃焼加熱式たばこ10は、たばこロッド部11とマウスピース部14と、これらを巻装してなるチップペーパー15とを備える棒状の非燃焼加熱式たばこであって、該マウスピース部14は冷却セグメント12と、フィルター濾材を含むフィルターセグメント13とを含み、非燃焼加熱式たばこ10の軸方向(「長軸方向」とも称する。)に対して、該冷却セグメント12が、該たばこロッド部11と該フィルターセグメント13とに隣接して挟持され、かつ、該冷却セグメント12の周方向に同心状に開孔Vが設けられていてもよい。
【0013】
図1に示す非燃焼加熱式たばこ10における冷却セグメント12に設けられる開孔Vは、通常、使用者の吸引による外部からの空気の流入を促進するための孔であり、この空気の流入によりたばこロッド部11から流入する成分や空気の温度を下げることができる。
本実施形態で設けてもよい開孔Vは、冷却セグメント12とフィルターセグメント13との境界から、冷却セグメント側の方向の4mm以上の領域に存在する態様を挙げることができる。該構成とすることにより、加熱により生成される成分や空気の温度を下げる冷却能力を向上させることができ、さらには、冷却セグメント内での該成分や空気の滞留を抑制し、ひいては成分のデリバリー量を向上させることができる。
なお、加熱により生成される成分としては、例えば、香料由来の香味成分;たばこ葉由来のニコチンやタール;エアロゾル基材由来のエアロゾル成分;等が挙げられる。なお、本明細書において、エアロゾル基材とは、エアロゾルを生成するための基材である。
【0014】
棒状の非燃焼加熱式たばこ10は、以下のように定義されるアスペクト比が1以上である形状を満たす柱状形状を有していることが好ましい。
アスペクト比=h/w
wは柱状体の底面の幅(本明細書においては、たばこロッド部側の底面の幅とする。)、hは柱状体の高さであり、h≧wであることが好ましい。本明細書においては、長軸方向はhで示された方向であると規定する。したがって、仮にw≧hである場合においてもhで示された方向を便宜上長軸方向と称する。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、または楕円等であってよく、幅wは当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、または多角形もしくは角丸多角である場合は外接円の直径もしくは外接楕円の長径である。
非燃焼加熱式たばこ10の長軸方向の長さhは、特段制限されず、例えば、通常40mm以上であり、45mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましく、また、通常100mm以下であり、90mm以下であることが好ましく、80mm以下であることがより好ましい。
非燃焼加熱式たばこ10の柱状体の底面の幅wは、特段制限されず、例えば、通常5mm以上であり、5.5mm以上であることが好ましく、また、通常10mm以下であり、9mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
非燃焼加熱式たばこ10の長軸方向の長さにおける、前記冷却セグメント及び前記フィルターセグメントの長さの割合(冷却セグメント:フィルターセグメント)は、特段制限されないが、香料のデリバリー量や適切なエアロゾル温度の観点から、通常0.60~1.40:0.60~1.40であり、0.80~1.20:0.80~1.20であることが好ましく、0.85~1.15:0.85~1.15であることがより好ましく、0.90~1.10:0.90~1.10であることがさらに好ましく、0.95~1.05:0.95~1.05であることが特に好ましい。
冷却セグメント及びフィルターセグメントの長さの割合を上記範囲内とすることで、冷却効果、生成した蒸気及びエアロゾルが冷却セグメントの内壁に付着することによるロスを抑制する効果、及びフィルターの空気量及び香味の調整機能のバランスがとれて、良好な香味及び香味の強さを実現できる。特に、冷却セグメントを長くすると、エアロゾル等の粒子化が促進され良好な香味を実現できるが、長すぎると通過する物質の内壁への付着が生じてしまう。
【0015】
非燃焼加熱式たばこ10の1本当たりの長軸方向の通気抵抗は、特段制限されないが、吸い易さの観点から、通常8mmHO以上であり、10mmHO以上であることが好ましく、12mmHO以上であることがより好ましく、また、通常100mmHO以下であり、80mmHO以下であることが好ましく、60mmHO以下であることがより好ましい。
通気抵抗は、ISO標準法(ISO6565:2015)に従って、例えばセルリアン社製フィルター通気抵抗測定器を使用して測定される。通気抵抗は、非燃焼加熱式たばこ10の側面における空気の透過が行なわれない状態で一方の端面(第1端面)から他方の端面(第2端面)に所定の空気流量(17.5cc/min)の空気を流した際の、第1端面と第2端面との気圧差を指す。単位は、一般的にはmmHOで表す。通気抵抗と非燃焼加熱式たばこの長さとの関係は、通常実施する長さ範囲(長さ5mm~200mm)においては比例関係であることが知られていて、長さが倍になれば、非燃焼加熱式たばこの通気抵抗は倍になる。
【0016】
[マウスピース部]
マウスピース部14の構成は、冷却セグメント12と、フィルター濾材を含むフィルターセグメント13とを含み、非燃焼加熱式たばこ10の軸方向に対して、冷却セグメント12が、たばこロッド部11とフィルターセグメント13とに隣接して挟持されるように構成されていれば、特に制限されない。以下、フィルターセグメント及び冷却セグメントについて詳細に説明する。
【0017】
(フィルターセグメント)
フィルターセグメント13は、フィルター濾材を含み、一般的なフィルターとしての機能を有していれば特に制限されず、例えば、合成繊維からなるトウ(単に「トウ」とも称する)や、紙等の材料を円柱状に加工したものを用いることができる。フィルターの一般的な機能とは、例えば、エアロゾル等を吸引する際に混ざる空気量の調整;香味の軽減;ニコチンやタールの軽減;等が挙げられるが、これらの機能を全て備えていることは要しない。また、紙巻きたばこ製品と比較して、生成される成分が少なく、また、たばこ充填物の充填率が低くなる傾向のある電気加熱式たばこ製品においては、濾過機能を抑えつつたばこ充填物の落下を防止する、ということも重要な機能の一つである。
【0018】
フィルターセグメント13の形状は、特段制限されず、公知の形状を採用することができ、通常は円柱状の形状とすることができ、以下の態様とすることができる。
また、フィルターセグメント13は、周方向の断面が中空(空洞)となるキャビティ(センターホール等)やリセス等のセクションを設けていてもよい。
【0019】
フィルターセグメント13の周方向の断面形状は実質的に円形であり、その円の直径は、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常4.0mm以上、9.0mm以下であり、4.5mm以上、8.5mm以下であることが好ましく、5.0mm以上、8.0mm以下であることがより好ましい。なお、断面が円形でない場合、上記の直径は、その断面の面積と同じ面積を有する円で仮定し場合、その円における直径が適用される。
フィルターセグメント13の周方向の断面形状の周の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常14.0mm以上、27.0mm以下であり、15.0mm以上、26.0mm以下であることが好ましく、16.0mm以上、25.0mm以下であることがより好ましい。
フィルターセグメント13の軸方向の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常15mm以上、35mm以下であり、17.5mm以上、32.5mm以下であることが好ましく、20.0mm以上、30.0mm以下であることがより好ましい。 フィルターセグメント13の形状や寸法が上記範囲となるように、フィルター濾材の形状や寸法を適宜調整できる。
【0020】
フィルターセグメント13の軸方向の長さ120mm当たりの通気抵抗は、特段制限されないが、通常40mmHO以上、300mmHO以下であり、70mmHO以上、280mmHO以下であることが好ましく、90mmHO以上、260mmHO以下であることがより好ましい。
上記の通気抵抗は、ISO標準法(ISO6565)に従って、例えばセルリアン社製フィルター通気抵抗測定器を使用して測定される。フィルターセグメント13の通気抵抗は、フィルターセグメント13の側面における空気の透過が行なわれない状態で一方の端面(第1端面)から他方の端面(第2端面)に所定の空気流量(17.5cc/min)の空気を流した際の、第1端面と第2端面との気圧差を指す。単位は、一般的にはmmHOで表す。フィルターセグメント13の通気抵抗とフィルターセグメント13の長さとの関係は、通常実施する長さ範囲(長さ5mm~200mm)においては比例関係であることが知られていて、長さが倍になれば、フィルターセグメント13の通気抵抗は倍になる。
【0021】
フィルターセグメント13を構成するフィルター濾材は、例えば、後述する製造方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
また、フィルターセグメント13の態様は、特段制限されず、単一のフィルター濾材を含むプレーンフィルター;デュアルフィルター、トリプルフィルタ等の複数のフィルター濾材を含むマルチセグメントフィルター;等とすることができる。
【0022】
フィルターセグメント13は、公知の方法で製造することができ、例えば、セルロースアセテートトウの等の合成繊維をフィルター濾材の材料として用いる場合、ポリマー及び溶媒を含むポリマー溶液を紡糸し、これを捲縮する方法により製造することができる。該方法としては、例えば、国際公開第2013/067511号に記載の方法を用いることができる。
フィルターセグメント13の製造において、通気抵抗の調整や添加物(公知の吸着剤や香料(例えばメンソール)、粒状の活性炭、香料保持材等)のフィルター濾材への添加を適宜設計できる。
【0023】
フィルターセグメント13を構成するフィルター濾材の態様は特段制限されず、公知の態様を採用してよく、例えば、セルロースアセテートトウを円柱状に加工したものを挙げることができる。セルロースアセテートトウの単糸繊度、総繊度は特に限定されないが、円周22mmのマウスピース部の場合は、単糸繊度は5g/9000m以上、12g/9000m以下、総繊度は12000g/9000m以上、35000g/9000m以下であることが好ましい。セルロースアセテートトウの繊維の断面形状は、円形、楕円形、Y字型、I字型、R字型等が挙げられる。セルロースアセテートトウを充填したフィルターの場合は、フィルター硬さを向上させるためにトリアセチンをセルロースアセテートトウ重量に対して、5重量%以上、10重量%以下添加してもよい。また、該アセテートフィルターの代わりに、シート状のパルプ紙を充填したペーパーフィルターを用いる態様でもよい。
【0024】
フィルター濾材の密度は、特段制限されないが、通常0.10g/cm以上、0.25g/cm以下であり、0.11g/cm以上、0.24g/cm以下であることが好ましく、0.12g/cm以上、0.23g/cm以下であることがより好ましい。
【0025】
フィルター濾材は、セルロースアセテートトウのような合成繊維の他に、ゼラチン等の破砕可能な外殻を含む破砕可能な添加剤放出容器(例えば、カプセル)を含んでもよい。カプセル(当該技術分野では「添加剤放出容器」とも呼ばれる)の態様は特段制限されず、公知の態様を採用してよく、例えば、ゼラチン等の破砕可能な外殻を含む破砕可能な添加剤放出容器とすることができる。この場合、カプセルは、たばこ製品の使用者により使用前、使用中、または使用後に破壊されると、カプセル内に含まれる液体または物質(通常、香味剤)を放出し、次に、該液体または物質は、たばこ製品を使用する間はたばこの煙に伝達され、使用後においては周囲の環境へと伝達される。
カプセルの形態は、特段限定されず、例えば、易破壊性のカプセルであってよく、その形状は球であることが好ましい。カプセルに含まれる添加剤としては、上述した任意の添加剤を含んでいてもよいが、特に、香味剤や活性炭素を含むことが好ましい。また、添加剤として、煙を濾過する一助となる1種類以上の材料を加えてもよい。添加剤の形態は、特段限定されないが、通常、液体又は個体である。なお、添加剤を含むカプセルの使用は、当技術分野において周知である。易破壊性のカプセルおよびその製造方法は、本技術分野において周知である。
【0026】
フィルターセグメント13は、1つまたは複数の中空部を有するセンターホールセグメントをさらに含んでいてもよい。センターホールセグメントは、通常、フィルター濾材よりも冷却セグメント側に配置され、好ましくは冷却セグメントと隣接するように配置される。
【0027】
センターホールセグメントは1つまたは複数の中空部を有する充填層と、該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻取紙)とで構成される。例えば、センターホールセグメントは、中空部を有する充填層と、充填層を覆うインナープラグラッパーとで構成される。センターホールセグメントは、マウスピース部の強度を高める機能を有する。充填層は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース質量に対して、6質量%以上、20質量%以下添加されて硬化された内径φ1.0mm以上、φ5.0mm以下のロッドとすることができる。充填層は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、充填層内はほとんど流れない。センターホールセグメント内部の充填層が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。なお、センターホールセグメントがインナープラグラッパーを持たず、熱成型によってその形が保たれていてもよい。
【0028】
センターホールセグメントと、フィルター濾材とは、例えばアウタープラグラッパー(外側巻取紙)で接続されていてよい。アウタープラグラッパーは、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこロッド部11と、冷却セグメント12と、接続済みのセンターホールセグメント及びフィルター濾材とは、例えばマウスピースライニングペーパーにより接続されていてよい。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパーの内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記たばこロッド部11、冷却セグメント12と、並びに接続済みのセンターホールセグメント及びフィルター濾材を入れて巻くことで接続することができる。なお、これらは複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。
【0029】
フィルターセグメント13は、強度及び構造剛性の向上の観点から、上述したフィルター濾材などを巻装する巻取紙(フィルタープラグ巻取紙)を備えていてよい。巻取紙の態様は特段制限されず、一列以上の接着剤を含む継ぎ目を含んでいてよい。該接着剤は、ホットメルト接着剤を含んでいてよく、さらに該ホットメルト接着剤は、ポリビニルアルコールを含み得る。また、フィルターセグメント13が二以上のセグメントからなる場合、巻取紙は、これらの二以上のセグメントを併せて巻装することが好ましい。
巻取紙の材料は特段制限されず、公知のものを用いることができ、また、炭酸カルシウム等の充填剤等を含んでいてよい。
巻取紙の厚さは、特段制限されず、通常20μm以上、140μm以下であり、30μm以上、130μm以下であることが好ましく、30μm以上、120μm以下であることがより好ましい。
巻取紙の坪量は、特段制限されず、通常20gsm以上、100gsm以下であり、22gsm以上、95gsm以下であることが好ましく、23gsm以上、90gsm以下であることがより好ましい。
また、巻取紙は、コーティングされていても、されていなくともよいが、強度や構造剛性以外の機能を付与できる観点からは、所望の材料でコーティングされることが好ましい。
【0030】
(冷却セグメント)
冷却セグメント12は、たばこロッド部11とフィルターセグメント13とに隣接して挟持され、通常、円筒等の周方向の断面が中空(空洞)となるキャビティが設けられた棒状の部材である。
冷却セグメント12には、図2に示すように、その周方向に、かつ、同心状に開孔V(本技術分野では「ベンチレーションフィルター(Vf)」とも称する。)が設けられていてもよい。なお、図2では、同心円状に8個の開孔Vが配置されているが、開孔Vの数はこれに限定されない。また、開孔Vは、冷却セグメント12とフィルターセグメント13との境界から、冷却セグメント側の方向の2mm以上の領域に存在していてもよい。
開孔Vが存在することで、使用時に外部から冷却部の内部に空気が流入し、たばこロッド部11から流入する成分や空気の温度を下げることができる。さらに、開孔Vを設ける位置を冷却セグメント12とフィルターセグメント13との境界から、冷却セグメント側の方向の4mm以上の領域内とすることにより、冷却能力を向上させるだけでなく、加熱により生成される成分の冷却セグメント内での滞留を抑制し、該成分のデリバリー量を向上させることができる。
なお、たばこロッド部11にエアロゾル基材が用いられる場合、たばこロッド部11が加熱されることで生じるエアロゾル基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が、外部からの空気と接触して温度が低下することで液化し、エアロゾルが生成されることを促進させることができる。
また、同心円状に存在する開孔Vを1つの開孔群として扱った場合、開孔群は1つであってもよく、また、2つ以上であってもよい。開孔群が2つ以上存在する場合、加熱により生成される成分のデリバリー量向上の観点から、冷却セグメント12とフィルターセグメント13との境界から、冷却セグメント側の方向の4mm未満の領域には開孔群を設けないことが好ましい。
また、非燃焼加熱式たばこ10が、たばこロッド部11、冷却セグメント12及びフィルターセグメント13がチップペーパー15で巻装されてなる態様である場合、チップペーパー15には、冷却セグメント12に設けられた開孔Vの直上の位置に開孔が設けられていることが好ましい。このような非燃焼加熱式たばこ10を作製する場合、開孔Vと重なるような開孔を設けたチップペーパー15を準備して巻装してもよいが、製造容易性の
観点から、開孔Vを有さない冷却セグメント12を用いて非燃焼加熱式たばこ10を作製した後、冷却セグメント12及びチップペーパー15を同時に貫通する孔を開けることが好ましい。
【0031】
開孔Vは、自動喫煙機で17.5ml/秒で吸引した時の開孔からの空気流入割合(吸い口端から吸引した空気の割合を100体積%とした場合における開孔から流入した空気の体積割合)が10~90体積%、好ましくは50~80体積%、より好ましくは55~75体積%となるように設けるのが好ましく、例えば、開孔群1つ当たりの開孔Vの数を5~50個の範囲から選択し、開孔Vの直径を0.1~0.5mmの範囲から選択し、これらの選択の組み合わせによって達成することができる。
上記の空気流入割合は、自動喫煙機(例えば、Borgwaldt社製1本がけ自動喫煙機)を用い、ISO9512に準拠した方法で測定することができる。
【0032】
開孔Vが存在する領域は、特段制限されないが、加熱により生成される成分のデリバリーを向上させる観点から、冷却セグメント12とフィルターセグメント13との境界から、冷却セグメント側の方向に2mm以上の領域であることが好ましく、3mm以上の領域であることがより好ましく、4mm以上の領域であることがさらに好ましく、5mm以上の領域であることが特に好ましく、5.5mm以上の領域であることが最も好ましく、また、冷却機能を確保する観点から、15mm以下の領域であることが好ましく、10mm以下の領域であることがより好ましく、6mm以下の領域であることがさらに好ましい。
開孔Vが存在する領域は、加熱により生成される成分のデリバリーを向上させる観点から、非燃焼加熱式たばこの吸口端から冷却セグメント側の方向の22mm以上の領域であることが好ましく、23mm以上であることが好ましく、24mm以上であることが好ましく、25mm以上であることがより好ましく、25.5mm以上であることがさらに好ましく、また、冷却機能を確保する観点から、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、26mm以下であることがさらに好ましい。
また、冷却セグメント12とたばこロッド部11との境界を基準に考えると、冷却セグメント12の軸方向の長さが20mm以上である場合、開孔Vが存在する領域は、冷却機能を確保する観点から、冷却セグメント12とたばこロッド部11との境界から、冷却セグメント側の方向に2mm以上の領域であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましく、14.5mm以上であることが特に好ましく、また、加熱により生成される成分のデリバリーを向上させる観点から、18mm以下であることが好ましく、16mm以下であることがより好ましく、14.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0033】
開孔Vの径は、特段制限されないが、100μm以上、1000μm以下であることが好ましく、100μm以上、500μm以下であることがより好ましく、300μm以上、800μm以下であることがさらに好ましい。開孔Vは、略円形もしくは略楕円形であることが好ましく、略楕円形の場合の前記径は長径を表す。
【0034】
冷却セグメント12の長軸方向の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常15mm以上であり、20mm以上であることが好ましく、25mm以上であることがより好ましく、また、通常40mm以下であり、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。冷却セグメント12の長軸方向の長さを上記下限以上とすることで、十分な冷却効果を確保して良好な香味を得ることができ、上記上限以下とすることで、生成した蒸気及びエアロゾルが冷却セグメントの内壁に付着することによるロスを抑制することができる。
冷却のためのシート等を冷却セグメント12に充填する場合、冷却セグメント12の全表面積は、特段制限されず、例えば、300mm2/mm以上、1000mm2/mm以下を挙げることができる。この表面積は、冷却セグメント12の通気方向の長さ(mm)当たりの表面積である。冷却セグメント12の全表面積は、400mm2/mm以上であることが好ましく、450mm2/mm以上であることがより好ましく、一方、600mm2/mm以下であることが好ましく、550mm2/mm以下であることがより好ましい。
【0035】
冷却セグメント12は、その内部構造が大きい全表面積を有することが望ましい。従って、好ましい実施形態において、冷却セグメント12は、チャネルを形成するためにしわ付けされて、次に、ひだ付け、ギャザー付け、及び折り畳まれた薄い材料のシートによって形成されてもよい。要素の与えられた体積内の折り畳み又はひだが多いと、冷却セグメントの合計表面積が大きくなる。
【0036】
冷却セグメント12の構成材料の厚みは、特段制限されず、例えば、5μm以上、500μm以下であってよく、また、10μm以上、250μm以下であってよい。
【0037】
[たばこロッド部]
たばこロッド部11の態様は、乾燥たばこ葉と多糖類のゲル中に香料が包含されている香料含有材料とを含む限り特段制限されず、通常、乾燥たばこ葉を含むたばこ充填物を巻紙で巻装してなる態様である。たばこ充填物は特段制限されず、後述する第一のたばこ充填物、第二のたばこ充填物、又は第三のたばこ充填物を用いることができる。なお、本願明細書では、後述するたばこ刻み、たばこシート、たばこ顆粒等のような乾燥たばこの成形品を、単に「乾燥たばこ葉」と称することがある。また、たばこロッド部11は、たばこ製品を加熱するためのヒーター部材等との嵌合部を有していてもよい。
たばこ充填物を巻紙で巻装してなるたばこロッド部11は、柱状形状を有していることが好ましく、この場合には、たばこロッド部11の底面の幅に対するたばこロッド部11の長軸方向の高さで表されるアスペクト比が1以上であることが好ましい。
底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅は当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。たばこロッド部11を構成するたばこ充填物の高さは10mm~70mm程度、幅は4mm~9mm程度であることが好ましい。
たばこロッド部11の長軸方向の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常10mm以上であり、12mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、18mm以上であることがさらに好ましく、また、通常70mm以下であり、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。
また、非燃焼加熱式たばこ10の長軸方向の長さhに対するたばこロッド部11の長さの割合は、特段制限されないが、デリバリー量とエアロゾル温度のバランスの観点から、通常10%以上であり、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、また、通常80%以下であり、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、45%以下であることが特に好ましく、40%以下であることが最も好ましい。
【0038】
たばこロッド部11中の乾燥たばこ葉の含有量は、特段制限されないが、200mg/ロッド部以上、800mg/ロッド部以下を挙げることができ、250mg/ロッド部以上、600mg/ロッド部以下が好ましい。この範囲は、特に、円周22mm、長さ20mmのたばこロッド部において好適である。
【0039】
(香料含有材料)
香料含有材料は、多糖類のゲル中に香料が包含された材料であり、香料含有材料をたばこロッド部11に配合することで、喫煙初期から後期にわたってパフ毎の香料デリバリー量のばらつきが抑制され、良好な香味を継続して得ることができる。本発明者らは、その理由について、次のように推測している。まず、非燃焼加熱式たばこは、電気加熱式デバイスに挿入し、一定時間の予備加熱を行った後に喫煙を開始するところ、たばこロッド部11に香料を直接配合した場合、香料は予備加熱中に揮散し、喫煙初期にその大部分がデリバリーされるため、喫煙後期において香料のデリバリー量が不十分になると考えられる。これに対して、たばこロッド部11に香料含有材料を配合した場合は、香料が多糖類のゲルで被覆されているため、予備加熱中の香料の揮散が抑制され、喫煙中に香料が徐々に放出される。そのため、喫煙後期でも香料のデリバリー量を十分確保できると推測される。
以下、香料含有材料の成分について説明する。
【0040】
香料の種類は、特に限定されず、良好な香調の付与の観点から、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド(WS-3)、エチル-2-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(WS-5)等が挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの香料は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
香料含有材料中の香料の含有量は、香料の種類、多糖類の種類等にもよるが、通常18質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下である。
【0042】
多糖類の種類は、特に限定されないが、カラギーナン、寒天、ゲランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム若しくはコンニャクグルコマンナンの単成分系;又はカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、寒天、ゲランガム、タマリンドガム、キサンタンガム、タラガム、コンニャクグルコマンナン、デンプン、カシアガム及びサイリウムシードガムから成る群から選択される2以上の成分を組み合わせた複合系;であることが好ましい。これらの多糖類は、水溶液中において30℃~90℃に加熱するだけでゲル化するため、香料含有材料調製の際に金属塩化物等のゲル化反応剤を必要とせず、塩化物の分解物のような喫煙時に好ましくない成分を主流煙中に発生させない点で好ましい。
【0043】
香料含有材料には、その調製の際に原料を乳化するために用いられる乳化剤が含まれていてもよい。乳化剤の種類は、特に限定されず、例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、好ましくはレシチンである。なお、これらの乳化剤は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0044】
香料含有材料の調製方法は、特に限定されず、公知の方法に準じた方法により調製することができる。公知の方法としては、国際公開第2011/118040号、特開2013-099349号公報、国際公開第2012/118034号等に記載の方法が挙げられる。より具体的には、香料含有材料は、例えば下記工程(i)及び(ii)を含む方法により調製することができる。
(i)多糖類と水との混合物を、通常30℃~90℃、好ましくは60℃~90℃に加熱することで、多糖類の水溶液を調製する工程;及び
(ii)前記水溶液に香料、及び必要に応じて乳化剤を加えて混練し、乳化物スラリーを得る工程。
【0045】
たばこロッド部11中の香料含有材料の含有量は、香料含有材料中の香料含有量にもよるが、乾燥たばこ葉に対して通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、また、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
また、たばこロッド部11は、香料含有材料に含まれる香料の含有量が通常1mg以上、好ましくは5mg以上、より好ましくは10mg以上、また、通常30mg以、好ましくは20mg以下となるよう香料含有材料を含む。
たばこロッド部11中の香料含有材料の含有量を上記範囲内とすることで、良好な香調を付与することができるだけでなく、喫煙初期から後期にわたってパフ毎の香料デリバリー量のばらつきを抑制することができ、また、喫煙の初期、中期、及び後期のいずれにおいても十分なデリバリー量を確保することができる。
【0046】
たばこロッド部11への香料含有材料の配合の態様は特に限定されず、たばこ充填物を巻装する巻紙の内側及び/又は外側に香料含有材料を配置してもよく、巻紙に香料含有材料が含浸されていてもよく、たばこ充填物中に香料含有材料が配合されていてもよい。
たばこ充填物を巻装する巻紙の内側及び/又は外側に香料含有材料を配置する場合、上記乳化物スラリーを巻紙に塗布するか、上記乳化物スラリーを基材上に順次キャスティング及び乾燥することで香料含有シートに加工して巻紙とともにたばこ充填物を巻装すればよい。香料含有材料で含浸された巻紙は、巻紙に上記乳化物スラリーを含浸し、乾燥することで作製することができる。また、香料含有材料をたばこ充填物中に配合する場合は、上記乳化物スラリーを乾燥たばこ葉に塗布又は含浸してもよく、前述の香料含有シート又はその裁刻物若しくは粉砕物を乾燥たばこと混合してもよい。
【0047】
(たばこ充填物)
(1)第一のたばこ充填物
まず、第一のたばこ充填物(単に「第一の充填物」との称する。)から説明する。第一のたばこ充填物は、たばこ刻みから構成される。第一の充填物に含まれるたばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。また、乾燥たばこ葉を平均粒径が20μm以上、200μm以下になるように粉砕してたばこ粉砕物とし、これを均一化したものをシート加工したもの(以下、単に均一化シートともいう)を刻んだものであってもよい。さらに、たばこロッドの長手方向と同程度の長さを有する均一化シートを、たばこロッドの長手方向と略水平に刻んだものをたばこロッドに充填する、いわゆるストランドタイプであってもよい。
また、たばこ刻みの幅はたばこロッドに充填するうえで0.5mm以上2.0mm以下、長さは3.0mm以上10.0mm以下であることが好ましい。
【0048】
前記たばこ刻み及び均一化シートの作製に用いるたばこ葉について、使用するたばこの種類は、様々なものを用いることができる。例えば、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、その他のニコチアナ-タバカム系品種、ニコチアナ-ルスチカ系品種、及びこれらの混合物を挙げることができる。混合物については、目的とする味となるように、前記の各品種を適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に開示されている。前記均一化シートの製造方法、すなわち、たばこ葉を粉砕して均一化シートに加工する方法は従来の方法が複数存在している。1つ目は抄紙プロセスを用いて抄造シートを作製する方法である。2つ目は水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化した後に金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させてキャストシートを作製する方法である。3つ目は水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型して圧延シートを作製する方法である。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0049】
第一のたばこ充填物は、香料含有材料を含有することが好ましい。この場合、本発明の効果を発揮しやすくする観点からは、香料含有材料は、たばこ刻みと均一に混合して第一のたばこ充填物の含有させることが好ましい。
第一のたばこ充填物に香料含有材料を含有させる方法は、特に限定されないが、例えば均一化シート又はたばこ刻みに上記乳化物スラリーを塗布又は含浸する方法;香料含有シートの裁刻物をたばこ刻みと混合する方法;等が挙げられる。香料含有シートの裁刻物とたばこ刻みとを混合する方法は、製造プロセスが簡便である点で好ましい。また、このとき、たばこ刻みと同等のサイズに裁刻した香料含有シートの裁刻物を用いると、当該裁刻物とたばこ刻みとを均一混合することが容易となり好適である。
【0050】
第一のたばこ充填物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、香料含有材料とは別に香料(以下、香料含有材料に含まれる香料を「香料A」、香料含有材料に含まれない香料を「香料B」と呼び区別することがある。)を含んでいてもよい。香料Bとしては、香料含有材料に含まれる香料Aと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0051】
第一のたばこ充填物中の香料Bの含有量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、第一のたばこ充填物中の香料A及び香料Bの合計量が、通常10000ppm以上、好ましくは20000ppm以上、より好ましくは25000ppm以上、また、通常70000ppm以下、好ましくは50000ppm以下、より好ましくは40000ppm以下、さらに好ましくは33000ppm以下となるような量である。
【0052】
第一のたばこ充填物の水分含有量は、第一のたばこ充填物の全量に対して10重量%以上、15重量%以下を挙げることができ、11重量%以上、13重量%以下であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、たばこロッドの製造時の巻上適性を良好にする。
第一のたばこ充填物に含まれるたばこ刻みの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥たばこ葉を、幅0.5mm以上、2.0mm以下に刻んだものを用いてもよい。
また、均一化シートの粉砕物を用いる場合、乾燥たばこ葉を平均粒径が20μm~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.5mm以上、2.0mm以下に刻んだものを用いてもよい。
【0053】
第一のたばこ充填物は、エアロゾル煙を生成するエアロゾル基材を含んでいてもよい。当該エアロゾル基材の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質及び/又はそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル基材としては、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
第一のたばこ充填物中のエアロゾル基材の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを生成させるとともに、良好な香味の付与の観点から、第一のたばこ充填物の全量に対して通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは15重量%以上、25重量%以下である。
【0054】
第一のたばこ充填物における充填密度は、特に限定されないが、非燃焼加熱式たばこの性能を担保し、良好な香味の付与の観点から、通常250mg/cm以上であり、好ましくは300mg/cm以上であり、また、通常400mg/cm以下であり、好ましくは350mg/cm以下である。
上記の第一のたばこ充填物は、それが内側になるように巻紙によって巻装されてたばこロッド部11を形成する。
【0055】
(2)第二のたばこ充填物
第二のたばこ充填物は、被充填物に充填されたたばこシートから構成される。たばこシートの枚数は、1枚であってもよく、2枚以上であってもよい。
【0056】
第二のたばこ充填物が、1枚のたばこシートから構成される場合の態様としては、例えば、その一辺が、被充填物の長手方向と同程度の長さを有するたばこシートが、被充填物の長手方向と水平に複数回折り返された状態で充填態様(いわゆるギャザーシート)が挙げられる。また、その一辺が、被充填物の長手方向と同程度の長さを有するたばこシートを、被充填物の長手方向と直交する方向に巻き回された状態で充填される態様も挙げられる。
【0057】
第二のたばこ充填物が、2枚以上のたばこシートから構成される場合の態様としては、例えば、その1辺が、被充填物の長手方向と同程度の長さを有する複数のたばこシートが、同心状に配置されるように、被充填物の長手方向と直交する方向に巻き回された状態で充填される態様が挙げられる。
「同心状に配置される」とは、すべてのたばこシートの中心が略同じ位置にあるように配置されていることをいう。また、たばこシートの枚数は、特に制限されないが、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、又は7枚である態様を挙げることができる。
2枚以上のたばこシートはすべて同じ組成あるいは物性であってもよいし、各たばこシートの中の一部または全部が異なる組成あるいは物性であってもよい。また、各たばこシートの厚みは、それぞれが同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
第二のたばこ充填物は、幅の異なる複数のたばこシートを準備して、底部から頂部に向かって幅が小さくなるように積層した積層体を調製し、これを巻管に通して巻き上げ成形することで製造できる。
この製造方法によれば、該複数のたばこシートが、長手方向に延在するとともに、該長手方向軸を中心として同心状に配置されるようになる。また、該長手方向軸と、最内層のたばこシートとの間に、長手方向に延在する嵌合部が形成されてもよい。
【0059】
この製造方法において、積層体は巻上げ成形後に隣接する前記たばこシート間に非接触部が形成されるように調製されることが好ましい。複数のたばこシート間に、当該たばこシートが接触しない非接触部(隙間)が存在すると、香味流路を確保して香味成分のデリバリー効率を高めることができる。他方で、たばこ製品を電気加熱式たばこ製品で用いる場合、複数のたばこシートの接触部分を介してヒーターからの熱を外側のたばこシートに伝達できるので高い伝熱効率を確保することができる。
複数のたばこシート間に、当該たばこシートが接触しない非接触部を設けるために、例えば、エンボス加工したたばこシートを用いる、隣接するたばこシート同士の全面を接着せずに積層する、隣接するたばこシート同士の一部を接着して積層する、あるいは隣接するたばこシート同士の全面あるいは一部を、巻上げ成形後に剥がれるように軽度に接着して積層することで積層体を調製する方法を挙げることができる。
巻紙を含めたたばこロッドを調製する場合には、積層体の最底部に上記の巻紙を配置してもよい。
また、積層体の最頂部にマンドレル等の筒状ダミーを載置して第二のたばこ充填物を形成した後に、当該ダミーを除去することで、嵌合部を形成することもできる。
【0060】
第二のたばこ充填物の充填密度は、特に限定されないが、たばこ製品の性能を担保し、良好な香味を付与する観点から、通常250mg/cm以上であり、好ましくは300mg/cm以上であり、また、通常400mg/cm以下であり、好ましくは350mg/cm以下である。
【0061】
第二のたばこ充填物は、香料含有材料を含有することが好ましい。具体的には、上述した乳化物スラリーを塗布又は含浸したたばこシートを使用したり、たばこシートを香料含有シート又はその裁刻物若しくは粉砕物と巻き上げたりすることで、第二のたばこ充填物に香料含有材料を配合することが好ましい。
【0062】
第二のたばこ充填物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、香料Bを含んでいてもよい。香料Bとしては、香料Aと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0063】
第二のたばこ充填物中の香料Bの含有量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、第二のたばこ充填物中の香料A及び香料Bの合計量が、通常10000ppm以上、好ましくは20000ppm以上、より好ましくは25000ppm以上、また、通常70000ppm以下、好ましくは50000ppm以下、より好ましくは40000ppm以下、さらに好ましくは33000ppm以下となるような量である。
【0064】
たばこシートは、加熱に伴ってエアロゾル煙を生成するエアロゾル基材を含んでいてもよい。エアロゾル基材としてグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加する。かかるエアロゾル基材の添加量は、たばこシートの乾燥重量に対して5重量%以上、50重量%以下が好ましく、15重量%以上、25重量%以下がより好ましい。
【0065】
たばこシートは、抄造、スラリー、圧延等の公知の方法で適宜製造できる。なお、第一のたばこ充填物で説明した均一化シートを用いることもできる。
抄造の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)乾燥たばこ葉を粗砕し、水で抽出して水抽出物と残渣に分離する。2)水抽出物を減圧乾燥して濃縮する。3)残渣にパルプを加え、リファイナで繊維化した後、抄紙する。4)抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加して乾燥し、たばこシートとする。この場合、ニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい(特表2004-510422号公報参照)。
スラリー法の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)水、パルプ及びバインダーと、砕いたたばこ葉を混合する。2)当該混合物を薄く延ばして(キャストして)乾燥する。この場合、水、パルプ及びバインダーと、砕いたたばこ葉を混合したスラリーに対して紫外線照射もしくはX線照射することでニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい。
【0066】
この他、国際公開第2014/104078号に記載されているように、以下の工程を含む方法によって製造された不織布状のたばこシートを用いることもできる。1)粉粒状のたばこ葉と結合剤を混合する。2)当該混合物を不織布によって挟む。3)当該積層物を熱溶着によって一定形状に成形し、不織布状のたばこシートを得る。
前記の各方法で用いる原料のたばこ葉の種類は、第一の充填物で説明したものと同じものを用いることができる。
たばこシートの組成は特に限定されないが、例えば、たばこ原料(たばこ葉)の含有量はたばこシート全重量に対して50重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。また、たばこシートはバインダーを含んでもよく、係るバインダーとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)等が挙げられる。バインダー量としては、たばこシート全重量に対して1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。たばこシートはさらに他の添加物を含んでもよい。添加物としては、例えばパルプなどのフィラーを挙げることができる。本実施形態においては複数のたばこシートを用いるが、係るたばこシートはすべて同じ組成あるいは物性であってもよいし、各たばこシートの中の一部または全部が異なる組成あるいは物性であってもよい。
【0067】
各たばこシートの厚みについては制限されないが、伝熱効率と強度の兼ね合いから、150μm以上、1000μm以下が好ましく、200μm以上、600μm以下がより好ましい。各たばこシートの厚みについては、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
(3)第三のたばこ充填物
第三のたばこ充填物は、たばこ顆粒から構成される。
第三のたばこ充填物の原料は、特に限定されないが、(a)粉砕されたたばこ材料、(b)水分、(c)炭酸カリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種のpH調整剤、並びに(d)プルランおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群の中から選ばれる少なくとも1種のバインダーを挙げることができる。
【0069】
第三のたばこ充填物に含まれる、粉砕されたたばこ材料(成分(a))には、粉砕されたたばこ葉や粉砕されたたばこシート等が含まれる。たばこの種類には、バーレー種、黄色種、オリエンタル種が含まれる。たばこ材料は、200μm以上、300μm以下のサイズに粉砕されていることが好ましい。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、粉砕されたたばこ材料を、通常、20重量%以上、80重量%以下の量で含有する。
【0070】
第三のたばこ充填物は、香料含有材料を含有することが好ましい。この場合、本発明の効果を発揮しやすくする観点からは、香料含有材料は、たばこ刻みと均一に混合して第三のたばこ充填物の含有させることが好ましい。
第三のたばこ充填物に香料含有材料を含有させる方法は、特に限定されないが、例えばたばこ顆粒の原料に上記乳化物スラリー又は香料含有シートの粉砕物を配合する方法;香料含有シートの粉砕物をたばこ顆粒と混合する方法;等が挙げられる。香料含有シートの粉砕物とたばこ顆粒とを混合する方法は、製造プロセスが簡便である点で好ましい。また、このとき、たばこ顆粒と同等のサイズに粉砕した香料含有シートの粉砕物を用いると、当該粉砕物とたばこ顆粒とを均一混合することが容易となり好適である。
【0071】
第三のたばこ充填物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、香料Bを含んでいてもよい。香料Bとしては、香料Aと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0072】
第三のたばこ充填物中の香料Bの含有量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、第三のたばこ充填物中の香料A及び香料Bの合計量が、通常10000ppm以上、好ましくは20000ppm以上、より好ましくは25000ppm以上、また、通常70000ppm以下、好ましくは50000ppm以下、より好ましくは40000ppm以下、さらに好ましくは33000ppm以下となるような量である。
【0073】
第三のたばこ充填物に含まれる、水分(成分(b))は、たばこ顆粒の一体性を維持するためのものである。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、水分を、通常、3重量%以上、13重量%以下の量で含有する。また、第三のたばこ充填物は、水分を、通常、乾燥減量の値が5重量%以上、17重量%以下の量で含有し得る。乾燥減量とは、試料の一部を測定のために採取し、採取された試料中の全水分を蒸発させることにより試料を完全乾燥させたとき(たとえば、一定の温度(105℃)で15分間乾燥させたとき)の乾燥前後での重量変化を指し、具体的には、試料に含まれている水分の量および上記乾燥条件で揮発する揮発性成分の量の合算値の、試料重量に対する割合(重量%)を指す。すなわち、乾燥減量(重量%)は、以下の式で表すことができる。
乾燥減量(重量%)={(完全乾燥前の試料の重量)-(完全乾燥後の試料の重量)}×100/完全乾燥前の試料の重量
【0074】
第三のたばこ充填物に含まれるpH調整剤(成分(c))は、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたはそれらの混合物からなる。これらpH調整剤は、第三のたばこ充填物のpHをアルカリ側に調整し、もって第三のたばこ充填物に含まれる香味成分をたばこ顆粒から放出させることを促進し、使用者に満足され得る香味をもたらす。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、pH調整剤を、通常、5重量%以上、20重量%以下の量で含有し得る。
【0075】
第三のたばこ充填物に含まれるバインダー(成分(d))は、たばこ顆粒成分を結着させてたばこ顆粒の一体性を保持するものである。バインダーは、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはそれらの混合物から構成される。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、バインダーを、通常、0.5重量%以上、15重量%以下の量で含有し得る。
【0076】
第三のたばこ充填物は、上記成分(a)、(b)、(c)および(d)からなることができるが、さらに追加の成分を包含することができる。
追加の成分としては、エアロゾル基材(成分(e))が挙げられる。エアロゾル基材は、エアロゾル煙を生成するものである。該エアロゾル基材は、多価アルコールから構成され、該多価アルコールには、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトールおよびエリスリトールが含まれ得る。これらの多価アルコールは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
第三のたばこ充填物の原料混合物が、エアロゾル基材を含有する場合、5~15重量%の量で含有し得る。
また追加の成分としては、(f)香味成分以外の香味材(固体または液体)が挙げられる。かかる香味材には、糖(スクロース、フルクトース等)、ココア粉、キャロブ粉、コリアンダー粉、リコリス粉、オレンジピール粉、ローズピップ粉、カモミールフラワー(flower)粉、レモンバーベナ粉、ペパーミント粉、リーフ粉、スペアミント粉、紅茶粉、メントール等が含まれる。これらの香味材は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、上記香味材を、通常、0.5重量%以上、30重量%以下の量で含有し得る。上記香味材は、成分(a)、(b)、(c)、(d)および(e)と直接混練することにより上記成分に添加してもよいし、あるいは、サイクロデキストリンなどの公知の包接ホスト化合物に担持して包接化合物を調製してからそれを上記成分と混練することにより上記成分に添加してもよい。
第三のたばこ充填物は、上記成分(a)、(b)、(c)、(d)および(e)からなる場合、その第三のたばこ充填物の原料混合物は、成分(a)を、通常、約33重量%以上(約90重量%以下)の量で含有し得る。
【0077】
第三のたばこ充填物は、成分(a)、(c)および(d)並びに所望により成分(e)、(f)を混合し、その混合物に成分(b)を加えて混練し、得られた混練物を湿式押出し造粒機で造粒(長柱状)した後、短柱状あるいは球状に整粒することによって得られる。得られるたばこ顆粒の平均粒径(D50)は、通常、0.2mm以上、1.2mm以下であり、0.2mm以上、1.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上、0.8mm以下であることがより好ましい。
押出し造粒に際しては、混練物を周囲温度で、2kN以上の圧力で押出すことが好ましい。この高圧での押出しにより、押出し造粒機出口での混練物は温度が周囲温度から例えば90~100℃まで瞬間的に急激に上昇し、水分および揮発性成分が2重量%以上、4重量%以下蒸発する。したがって、混練物を作るために配合する水は、最終製品であるたばこ顆粒中の所望水分よりも上記蒸発量だけ多くの量で用いることができる。
【0078】
押出し造粒により得られたたばこ顆粒は、水分調整のために、必要に応じてさらに乾燥させてもよい。たとえば、押出し造粒により得られたたばこ顆粒の乾燥減量を測定し、それが、所望の乾燥減量(たとえば5重量%以上、17重量%以下)より高い場合、所望の乾燥減量を得るためにたばこ顆粒をさらに乾燥させてもよい。所望の乾燥減量を得るための乾燥条件(温度および時間)は、乾燥減量を所定の値だけ減少させるために必要な乾燥条件(温度および時間)を予め決定し、その条件に基づいて設定することができる。
【0079】
第三のたばこ充填物は、上記のたばこ顆粒のみからなることができるが、その他に、追加のたばこ材料をさらに含むことができる。追加のたばこ材料は、通常、たばこ葉の刻もしくは細粉である。追加のたばこ材料は、たばこ顆粒と混合して使用することができる。
【0080】
(巻紙)
巻紙の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができ、例えば、パルプが主成分のものを挙げることができる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ製品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。
パルプの種類としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
【0081】
上記パルプを用いて長網抄紙機、円網抄紙機、円短複合抄紙機等による抄紙工程の中で、地合いを整え均一化して巻紙を製造する。なお、必要に応じて、湿潤紙力増強剤を添加して巻紙に耐水性を付与したり、サイズ剤を添加して巻紙の印刷具合の調整を行ったりすることができる。さらに、硫酸バンド、各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、及び紙力増強剤等の抄紙用内添助剤、並びに、染料、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、及びスライムコントロール剤等の製紙用添加剤を添加することができる。
【0082】
巻紙原紙の坪量は、例えば通常20gsm以上であり、好ましくは25gsm以上である。一方、坪量は通常65gsm以下、好ましくは50gsm以下、さらに好ましくは45gsm以下、である。
上記の特性を有する巻紙の厚みは、特に限定されず、剛性、通気性、及び製紙時の調整の容易性の観点から、通常10μm以上であり、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは30μm以上であり、また、通常100μm以下であり、好ましくは75μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。
該非燃焼加熱式たばこの巻紙として、その形状は正方形又は長方形を挙げることができる。
たばこ充填物を巻装するため(たばこロッド部を作製するため)の巻紙として利用する場合、一辺の長さとして12mm~70mm程度を挙げることができ、もう一辺の長さとして15mm~28mm、もう一辺の好ましい長さとして22mm~24mm、さらに好ましい長さとして23mm程度を挙げることができる。たばこ充填物を巻紙で柱状に巻装する際は、例えばw方向の巻紙の端部とその逆側の端部を2mm程度重ね合わせて糊付けすることで、柱状の紙管の形状となり、その中にたばこ充填物が充填されている形状となる。長方形形状の巻紙のサイズは、出来上がったたばこロッド部11のサイズによって決めることができる。
チップペーパーのように、たばこロッド部11とたばこロッド部11に隣接するその他の部材を連結して巻装するものである場合、一辺の長さとして20mm~60mm、もう一辺の長さとして15mm~28mmを挙げることができる。
【0083】
上記のパルプの他に、巻紙には填料が含まれてもよい。填料の含有量は、巻紙の全重量に対して10重量%以上、60重量%未満を挙げることができ、15重量%以上、45重量%以下であることが好ましい。
巻紙では、好ましい坪量の範囲(25gsm以上、45gsm以下)において、填料が15重量%以上、45重量%以下であることが好ましい。
さらに、坪量が25gsm以上、35gsm以下のとき、填料が15重量%以上、45重量%以下であることが好ましく、坪量が35gsm超、45gsm以下のとき、填料が25重量%以上、45重量%以下であることが好ましい。
填料としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を使用することができるが、香味や白色度を高める観点等から炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0084】
巻紙には、原紙や填料以外の種々の助剤を添加してもよく、例えば、耐水性を向上させるために、耐水性向上剤を添加することができる。耐水性向上剤には、湿潤紙力増強剤(WS剤)及びサイズ剤が含まれる。湿潤紙力増強剤の例を挙げると、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン(PAE)等である。また、サイズ剤の例を挙げると、ロジン石けん、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ケン化度が90%以上の高ケン化ポリビニルアルコール等である。
助剤として、紙力増強剤を添加してもよく、例えば、ポリアクリルアミド、カチオンでんぷん、酸化でんぷん、CMC、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール等を挙げられる。特に、酸化でんぷんについては、極少量用いることにより、通気度が向上することが知られている(特開2017-218699号公報)。
また、巻紙は、適宜コーティングされていてもよい。
【0085】
巻紙には、その表面及び裏面の2面うち、少なくとも1面にコーティング剤が添加されてもよい。コーティング剤としては特に制限はないが、紙の表面に膜を形成し、液体の透過性を減少させることができるコーティング剤が好ましい。例えばアルギン酸及びその塩(例えばナトリウム塩)、ペクチンのような多糖類、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンやその誘導体(例えばカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシアルキルデンプン及びカチオンデンプンのようなエーテル誘導体、酢酸デンプン、リン酸デンプン及びオクテニルコハク酸デンプンのようなエステル誘導体)を挙げることができる。
【0086】
[チップペーパー]
チップペーパー15の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができ、例えば、パルプが主成分のものを挙げることができる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ物品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。これらのパルプは、単独の種類で用いてもよく、複数の種類を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
また、チップペーパー15は一枚で構成されていてもよいが、複数枚以上で構成されていてもよい。
パルプの態様としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
なお、チップペーパー15は、後述する製造方法により製造したものでも、市販品を用いてもよい。
チップペーパー15の形状は、特段制限されず、例えば、正方形または長方形とすることができる。
【0087】
チップペーパー15の坪量は、特段制限されないが、通常32gsm以上、40gsm以下であり、33gsm以上、39gsm以下であることが好ましく、34gsm以上、38gsm以下であることがより好ましい。
チップペーパー15の通気度は、特段制限されないが、通常0コレスタユニット以上、30000コレスタユニット以下であり、0コレスタユニット超、10000コレスタユニット以下であることが好ましい。通気度は、ISO 2965:2009に準拠して測定される値であり、紙の両面の差圧が1kPaのときに、1分ごとに面積1cmを通過する気体の流量(cm)で表される。1コレスタユニット(1コレスタ単位、1C.U.)は、1kPa下においてcm/(min・cm)である。
【0088】
チップペーパー15は、上記のパルプ以外に、填料が含有されていてもよく、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、酸化チタン、二酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの金属硫酸塩、硫化亜鉛などの金属硫化物、石英、カオリン、タルク、ケイソウ土、石膏等が挙げられ、特に、白色度・不透明度の向上及び加熱速度の増加の観点から炭酸カルシウムを含んでいることが好ましい。また、これらの填料は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0089】
チップペーパー15は、上記のパルプや填料以外に、種々の助剤を添加してもよく、例えば、向上させるために、耐水性向上剤を有することができる。耐水性向上剤には、湿潤紙力増強剤(WS剤)及びサイズ剤が含まれる。湿潤紙力増強剤の例を挙げると、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン(PAE)等である。また、サイズ剤の例を挙げると、ロジン石けん、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ケン化度が90%以上の高ケン化ポリビニルアルコール等である。
【0090】
チップペーパー15には、その表面及び裏面の2面うち、少なくとも1面にコーティング剤が添加されてもよい。コーティング剤としては特に制限はないが、紙の表面に膜を形成し、液体の透過性を減少させることができるコーティング剤が好ましい。
【0091】
本実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの構成は、後述する電気加熱式たばこ製品に用いられ得るものであるが、燃焼を伴うシガレット(紙巻きたばこ)にも適用することができる。
【0092】
[非燃焼加熱式たばこの製造方法]
上述した非燃焼加熱式たばこの製造方法は、特段制限されず、公知の方法を適用することができ、例えば、たばこロッド部及びマウスピース部をチップペーパーで巻き上げることで製造することができる。
【0093】
<電気加熱式たばこ製品>
本発明の別の実施形態に係る電気加熱式たばこ製品(単に「電気加熱式たばこ製品」とも称する。)は、ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、上記の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品である。
電気加熱式たばこ製品の態様としては図3に示すような、非燃焼加熱式たばこ10の外周面を加熱する態様であってもよく、図4に示すような、非燃焼加熱式たばこ10におけるたばこロッド部11の内部から加熱する態様であってもよい。なお、図3及び図4に示す電気加熱式デバイス20には空気導入孔が設けられているが、ここでは図示しない。以下、図4を用いて電気加熱式たばこ製品30を説明する。なお、図3及び4における非燃焼加熱式たばこ10について、図1及び2に示す各構成を表す符号は一部省略する。
電気加熱式たばこ製品30は、電気加熱式デバイス20の内部に配置された、ヒーター部材21に、上記で説明した非燃焼加熱式たばこ10が接触するように挿入されて使用される。
電気加熱式デバイス20は、例えば樹脂性の躯体24の内部に、電池ユニット22と制御ユニット23とを有する。
非燃焼加熱式たばこ10を電気加熱式デバイス20に挿入すると、たばこロッド部11の外周面が電気加熱式デバイス20のヒーター部材21と接触し、やがてたばこロッド部11の外周面の全部とチップペーパーの外周面の一部がヒーター部材21に接触する。
電気加熱式デバイス20のヒーター部材21は、制御ユニット23による制御により発熱する。その熱が非燃焼加熱式たばこ10のたばこロッド部11に伝わることで、たばこロッド部11のたばこ充填物に含まれるエアロゾル基材や香味成分等が揮発する。
【0094】
ヒーター部材21は、例えばシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20μm~225μm程度)を含むヒーターが挙げられる。平板状ヒーターとは剛直な平板形のヒーター(厚み200μm~500μm程度)であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターとは中空または中実の筒形のヒーター(厚み200μm~500μm程度)であり、例えば金属製等の筒の外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。また、内部に抵抗回路を有し、当該部分を発熱部とする金属製等の棒状ヒーター、錐状ヒーターも挙げられる。筒状ヒーターの断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。
図3に示すような、非燃焼加熱式たばこ10の外周面を加熱する態様である場合、上記のシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターを用いることができる。一方で、図4に示すような、非燃焼加熱式たばこ10におけるたばこロッド部11の内部から加熱する態様である場合は、上記の平板状ヒーターや柱状ヒーター、錐状ヒーターを用いることができる。
ヒーター部材21の長軸方向の長さは、たばこロッド部11の長軸方向の長さをLmmとしたときに、L±5.0mmの範囲内とすることができる。ヒーター部材21の長軸方向の長さは、たばこロッド部11に十分に熱を伝え、たばこ充填物に含まれるエアロゾル基材や香味成分等を十分に揮発させる、すなわちエアロゾルデリバリーの観点から、Lmm以上であることが好ましく、香味等へ不所望な影響を及ぼす成分の発生を抑制する観点からL+0.5mm以下、L+1.0mm以下、L+1.5mm以下、L+2.0mm以下、L+2.5mm以下、L+3.0mm以下、L+3.5mm以下、L+4.0mm以下、L+4.5mm以下又はL+5.0mm以下であることが好ましい。
【0095】
ヒーター部材21による非燃焼加熱式たばこ10の加熱時間や加熱温度といった加熱強度は、電気加熱式たばこ製品30ごとにあらかじめ設定することができる。例えば、電気加熱式デバイス20に非燃焼加熱式たばこ10を挿入した後に、一定時間の予備加熱を行うことで、非燃焼加熱式たばこ10における、電気加熱式デバイス20に挿入されている部分の外周面の温度がX(℃)になるまで加熱し、その後、該温度がX(℃)以下の一定温度を保つように、あらかじめ設定することができる。
上記X(℃)は、加熱により生成される成分等のデリバリー量の観点から、80℃以上400℃以下であることが好ましい。具体的には、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、又は400℃とすることができる。
ヒーター部材21による加熱により、たばこロッド部11から生じるエアロゾル基材由来の成分や香味成分由来の成分等を含む蒸気は、冷却セグメント12やフィルターセグメント13等から構成されるマウスピース部14を通して使用者の口腔内に到達する。
【0096】
冷却セグメント12に設けられる開孔Vは、外部からの空気の流入の促進及び加熱により生成される成分や空気の冷却セグメント12内での滞留の抑制の観点から、図5に示すように、冷却セグメント12における、電気加熱式デバイス20と接触する領域の吸口端側の端部(図中の矢印Xで示す箇所)よりも吸口端側に存在することが好ましい。また、電気加熱式デバイス20の非燃焼加熱式たばこ10の挿入口は、非燃焼加熱式たばこ10を挿入し易くするため、図6に示すようテーパー状となっていてもよく、この場合には、電気加熱式デバイス20と接触する領域の吸口端側の端部とは、図中の矢印Yで示す箇所の位置となる。なお、図5及び6における非燃焼加熱式たばこ10について、図1~4に示す各構成を表す符号は一部省略する。
【実施例
【0097】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨から逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0098】
[実施例1]
<香料含有シートの作成>
ゲランガム(CP Kelco製「ケルコゲル」)1.0g、タマリンドガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「ビストップD-2032」)1.0g、及び水 100mLを混合した混合液を、80℃の恒温水槽内で加熱することでゲランガム及びタマリンドガムを水に十分に溶解させた。これに香料であるl-メンソール 10g、及び乳化剤であるレシチンの5%水溶液 1.6mLを添加し、ホモジナイザにより十分に乳化させた。得られた乳化スラリーを適当な支持台上にシート状にキャスティングして、40℃の空気強制循環型乾燥器で1週間乾燥させ、厚さ100μmの香料含有シートを得た。
【0099】
<香料含有材料中の香料含有量の測定>
シート状の香料含有材料を、幅1mm、長さ10mm程度にハサミで裁断し、約0.1gを精秤し、血清瓶に入れた。この血清瓶に抽出溶媒としてメタノール(HPLC用、Wako製)を10mL加えた。この血清瓶をゴム栓でとめ、さらにパラフィルム(登録商標)を用いて密封した。これを震盪機にて200rpmで40分間震盪し、一旦12時間以上静置し、再び震盪機で40分間震盪した。これを5分間静置し、上澄み液をパスツールピペットで採取し、香料含有量測定用サンプルとした。なお、抽出液は濃度が高いため、分析に先立って10倍希釈した。
【0100】
GC-FID(Agilent製)を用い、下記測定条件により上記サンプルを分析し、香料含有材材料中の香料の含有量をピーク面積値より求めた。その結果、得られた香料含有材料中の香料(メンソール)の含有量は、70質量%であった。
【0101】
(GC測定条件)
装置:GC[Agilent 6890N] [Agilent 5973inert]
GCメソッド(試料液1μL導入)
装置
導入口;無分割, ヒーター;200℃, 圧力;5.5 psi, 総流量;50 mL/min, 分割ベントへのパージ流;40 mL/min
カラム;Agilent DB-WAX [30 m×530μm×1.00μm], 一定流量, 出口;真空
He流:圧力;5.5 psi, 流量;7.3 mL/min, 平均速度;52 cm/sec
【0102】
<非燃焼加熱式たばこの作製>
香料含有シートを幅1mm、長さ3mmの短冊状に裁刻し、香料含有シートの裁刻物を得た。あらかじめグリセリン 15g/100g及びプロピレングリコール 4g/100gをシートたばこ刻み(幅0.8mm)に混合したものに、最終的に得られる非燃焼加熱式たばこ1本あたりのメンソールの含有量が7mgとなるよう上記裁刻物を添加し、たばこ刻みと上記裁刻物とが均一に混ざり合うよう混合することで、たばこ充填物を準備した。高速巻き上げ機を用い、巻紙(日本製紙パピリア製、坪量35g/m、厚み52μm)でたばこ充填物を巻き上げた。
1本あたりの刻み重量は0.8g、巻円周は22mm、巻き長さは68mmとした。
巻き上げたたばこロッド部は水準毎に200本ずつプラスチックの密閉容器に入れて保管した。
保管したたばこロッド部を長さ20mmに切断した。その後、たばこロッド部と、長さ20mmの紙管(冷却セグメント)と、貫通孔(直径4.5mm)を有するセンターホールフィルター(5.8Y35000)及び長さ20mmの酢酸セルロース繊維が充填されたフィルターとからなる長さ20mmのフィルターセグメントとを、上記で準備したチップペーパーで巻装することで、開孔を有しない非燃焼加熱式たばこを作製した後、冷却セグメントとフィルターセグメントとの境界から、冷却セグメント側の方向の5.5mm(非燃焼加熱式たばこの吸口端から25.5mm)の位置に、冷却セグメントの周方向に同心状に、かつ、チップペーパーと冷却セグメントとをともに貫通するように17個の孔を開けて開孔を設け、実施例1の非燃焼加熱式たばこを作製した。
なお、開孔の直径は、Borgwaldt社製1本がけ自動喫煙機で17.5ml/秒で吸引した時の開孔からの空気流入割合が72体積%となるように調整した。この空気流入割合は、ISO9512に準拠した方法で測定した。後述の全ての実施例および比較例においても、空気流入割合が72体積%となるように開孔の直径を調整した。
【0103】
<香料デリバリー量の評価>
実施例1で作製した各非燃焼加熱式たばこを喫煙試験に供し、加熱により生成される成分のデリバリー量を評価した。
喫煙試験は、Canadian Intense Regime(CIR)を参考に下記の条件で行った。
外周加熱を行う電気加熱式デバイスを使用し、非燃焼加熱式たばこを挿入した後に、ヒーター温度を21秒間以内で295℃まで昇温し、5秒間以内で260℃まで降温し、評価終了まで(約330秒間)260℃で維持した。この後、喫煙試験はBorgwaldt社製1本がけ自動喫煙機を用いて、流量55cc/2秒、喫煙間隔30秒の条件で自動喫煙を行った。この際、冷却セグメントに施された開孔が、非燃焼加熱式たばこと電気加熱式デバイスとが接触する領域の吸口端側の端部から25.5mmとなるようにした。喫煙試験で発生した主流煙をケンブリッジパッドに捕集し、パフ動作を12回行なった後にケンブリッジパッドを取り出し、10mLのエタノールにて抽出し、GC-MSを用いて各パフ動作で採取した主流煙中のメンソールの量を測定した。
実施例1の非燃焼加熱式たばこにおいて、メンソールの合計デリバリー量を1としたときの各パフにおけるメンソールのデリバリー量を下記表1及び図7に示す。
【0104】
[比較例1]
あらかじめグリセリン 15g/100g及びプロピレングリコール 4g/100gをシートたばこ刻み(幅0.8mm)に混合したものに、最終的に得られる非燃焼加熱式たばこ1本あたりのメンソールの含有量が7mgとなるようメントールを添加したものをたばこ充填物として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を適用し、比較例1の非燃焼加熱式たばこを作製した。得られた非燃焼加熱式たばこの香料デリバリー量を、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1及び図7に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
上記の表1及び図7から、香料であるメンソールをたばこ刻みに直接添加した比較例1では、1回目から4回目のパフで大部分のメンソールがデリバリーされ、その後のパフではメンソールのデリバリー量が大幅に減少することがわかった。一方、たばこロッド部にたばこ刻み及び香料含有材料を含む実施例1では、喫煙初期から後期にわたってパフ毎のメンソールのデリバリー量のばらつきが少なく、喫煙後期においても十分な量のメンソールがデリバリーされることが確認された。
【0107】
以上の実験結果より、本発明により、喫煙初期から後期にわたってパフ毎の香料のデリバリー量のばらつきが少ない非燃焼加熱式たばこが得られることが示された。
【符号の説明】
【0108】
10 非燃焼加熱式たばこ
11 たばこロッド部
12 冷却セグメント
13 フィルターセグメント
14 マウスピース部
15 チップペーパー
V 開孔
20 電気加熱式デバイス
21 ヒーター部材
22 電池ユニット
23 制御ユニット
24 躯体
30 電気加熱式たばこ製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7