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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/49 20060101AFI20240718BHJP
   F16F 1/08 20060101ALI20240718BHJP
   F16F 9/18 20060101ALI20240718BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240718BHJP
   F16F 9/58 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F16F9/49
F16F1/08
F16F9/18
F16F9/32 A
F16F9/32 P
F16F9/58 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023036574
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2024-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】秋本 政信
(72)【発明者】
【氏名】陣内 孝彦
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-133840(JP,A)
【文献】特開2009-127845(JP,A)
【文献】特開2020-008150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/58
F16F 9/18
F16F 9/32
F16F 1/08
F16F 9/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結されて前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記シリンダ内の前記圧側室内に収容されるサブシリンダと、
前記サブシリンダ内を液圧ロック室と前記液圧ロック室の反ピストン側の補償室とに区画する隔壁とを備え、
前記補償室は、気室と前記圧側室に連通される液室とを有し、
前記液圧ロック室は、前記シリンダに対して前記ピストンロッドが前記圧側室を圧縮する収縮方向へ移動して前記ピストンロッドの先端或いは前記ピストンロッドに連結される連結部材が前記液圧ロック室内に挿入されると内部の圧力で前記ピストンロッドの収縮方向への移動を抑制する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
孔を有して前記サブシリンダ内であって前記液圧ロック室内に軸方向へ移動可能に挿入されるロックピースと、
前記ロックピースと前記隔壁との間に介装されて前記ロックピースをピストン側へ向けて付勢するばねと、
前記ピストンロッドの先端に設けられて前記ロックピースに当接すると前記孔を閉塞する閉塞体とを備え、
前記連結部材は前記閉塞体である
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記サブシリンダは、側方に前記圧側室を前記液室に連通するオリフィスを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記シリンダと前記サブシリンダとの間の環状隙間で前記圧側室と前記補償室とを行き交う液体の流れに抵抗を与える制限流路を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記サブシリンダは、有底筒状であって底部を前記隔壁として液圧ロック室を形成する有底筒状の第1筒と、前記第1筒の底部側端の外周に嵌合されるとともに前記第1筒を保持して補償室を形成する第2筒とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記閉塞体は、前記ピストンロッドの先端の外周に取り付けられており、
前記ピストンは、環状であって前記ピストンロッドの外周であって前記閉塞体よりの反サブシリンダ側に装着されるとともに前記伸側室と前記圧側室とを連通する伸側ポートと圧側ポートとを有し、
環状であって内周が前記ピストンロッドの外周に固定されて前記ピストンの伸側室側端に重ねられて前記圧側ポートを開閉する圧側リーフバルブと、
環状であって内周が前記ピストンロッドの外周に固定されて前記ピストンの圧側室側端に重ねられて前記伸側ポートを開閉する伸側リーフバルブと、
前記ピストンロッドの外周に装着されて前記閉塞体の反サブシリンダ側に当接するストッパとを備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記ばねは、円錐コイルばねである
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されてシリンダ内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ内を作動油が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ内に圧側室に対向する気室を形成するフリーピストンとを備えて、鞍乗型車両の車体と後輪との間に介装されて伸縮時に車体の振動を抑制する減衰力を発生する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-008150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の緩衝器では、シリンダに対してピストンが圧側室を圧縮する方向へ移動する収縮作動を呈すると、ピストンに設けた圧側ポートを開閉する圧側リーフバルブが開弁して圧側室から伸側室へ作動油が移動するので、圧側室の圧力と伸側室の圧力とに差が生じて収縮作動を抑制する圧側の減衰力を発生できる。
【0005】
このような従来の緩衝器では、圧側の減衰力を発生でき車体の振動を抑制できるが、道路の整備が進まない地域等で悪路の走行を余儀なくされる場合に緩衝器がストロークエンド近傍まで収縮する際に、緩衝器に対して従前よりも大きな圧側の減衰力の発生が要望される場合がある。
【0006】
このような要望に応えるには、緩衝器の収縮作動時に圧側室の圧力を大きくすればよいのであるが、従来の緩衝器の構造では、気室がフリーピストンを介して圧側室に対面しており、圧側室の圧力を気室の圧力以上に昇圧することができないために、圧側の減衰力を大きくしようとしても限界がある。
【0007】
そこで、本発明は、ストロークエンド近傍で大きな減衰力の発生が可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されてシリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内の圧側室内に収容されるサブシリンダと、サブシリンダ内を液圧ロック室と液圧ロック室の反ピストン側の補償室とに区画する隔壁とを備え、補償室は、気室と圧側室に連通される液室とを有し、液圧ロック室は、シリンダに対してピストンロッドが圧側室を圧縮する収縮方向へ移動してピストンロッドの先端或いはピストンロッドに連結される連結部材が液圧ロック室内に挿入されると内部の圧力でピストンロッドの収縮方向への移動を抑制する。
【0009】
このように構成された緩衝器では、収縮作動を呈して、ピストンが収縮方向へ移動してピストンロッドが液圧ロック室内に侵入すると、液圧ロック室の圧力によってピストンロッドの移動を抑制する抵抗力を収縮作動時の減衰力に付加することができる。
【0010】
さらに、緩衝器は、孔を有してサブシリンダ内であって液圧ロック室内に軸方向へ移動可能に挿入されるロックピースと、ロックピースと隔壁との間に介装されてロックピースをピストン側へ向けて付勢するばねと、ピストンロッドの先端に設けられてロックピースに当接すると孔を閉塞する閉塞体とを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、ピストンロッドがサブシリンダに接近して、ピストンロッド側に設けられた閉塞体で液圧ロック室を圧縮するロックピースの孔を閉塞して、ピストンロッド、閉塞体およびロックピースによって液圧ロック室Lを圧縮できるので、ピストンロッドとサブシリンダとの軸線にずれがあっても液圧ロック室を圧縮して液圧ロック室内の圧力を上昇させてストロークエンド近傍で所望する大きな圧側の減衰力を得ることができる。
【0011】
また、緩衝器は、サブシリンダ側方に圧側室を液室に連通するオリフィスを備えて構成されてもよく、このように構成された緩衝器によれば、緩衝器の収縮作動時に補償室R内の圧力よりも圧側室内の圧力を高くすることができるため、収縮作動時の圧側の減衰力を大きくすることができる。
【0012】
さらに、緩衝器は、シリンダとサブシリンダとの間の環状隙間で圧側室と補償室とを行き交う液体の流れに抵抗を与える制限流路を形成してもよい。このように構成された緩衝器によれば、緩衝器の収縮作動時に補償室R内の圧力よりも圧側室内の圧力を高くすることができるため、収縮作動時の圧側の減衰力を大きくすることができる。
【0013】
また、緩衝器におけるサブシリンダは、液圧ロック室を形成する有底筒状の第1筒と、第1筒の底部側端の外周に嵌合されるとともに第1筒を保持して補償室を形成する第2筒とを有してもよい。このように構成された緩衝器によれば、第1筒と第2筒とに溶接による歪が生じず、第1筒と第2筒の内周面の後加工が不要となるので安価かつ容易にサブシリンダを製造できるともに、有底筒状の第1筒で液圧ロック室を形成しているので、液圧ロック機能の発揮時に液圧ロック室内から筒部とロックピースとの間以外を介して液体が圧側室内へ漏洩する心配もないので、液圧ロック機能を安定して発揮できる。
【0014】
さらに、緩衝器は、閉塞体がピストンロッドの先端の外周に取り付けられており、ピストンが環状であってピストンロッドの外周であって閉塞体よりの反サブシリンダ側に装着されるとともに伸側室と圧側室とを連通する伸側ポートと圧側ポートとを有し、環状であって内周がピストンロッドの外周に固定されてピストンの伸側室側端に重ねられて圧側ポートを開閉する圧側リーフバルブと、環状であって内周がピストンロッドの外周に固定されてピストンの圧側室側端に重ねられて伸側ポートを開閉する伸側リーフバルブと、ピストンロッドの外周に装着されて閉塞体の反サブシリンダ側に当接するストッパとを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、ピストンロッドに閉塞体を設けても、圧側リーフバルブ、ピストンおよび伸側リーフバルブに液圧ロック室の圧力によって受ける軸方向の荷重が作用しないので、圧側リーフバルブ、ピストンおよび伸側リーフバルブの劣化を防止できるとともに、設計通りに伸側および圧側の減衰力を発生できる。
【0015】
また、ロックピースと隔壁との間に介装されるばねを円錐コイルばねとしてもよい。前記ばねを円錐コイルばねとした緩衝器によれば、ロックピースの液圧ロック室内でのストローク長を確保できるとともに液圧ロック室の軸方向長さを短くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の緩衝器によれば、ストロークエンド近傍で大きな減衰力を発生できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施の形態における緩衝器の断面図である。
図2図2は、一実施の形態の第1変形例における緩衝器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1内の圧側室R2内に収容されるサブシリンダ4と、サブシリンダ4内を液圧ロック室Lと液圧ロック室Lの反ピストン側の補償室Rとに区画する隔壁5とを備えている。緩衝器Dは、図示はしないが、たとえば、自動二輪車等の鞍乗型車両における車体と後輪との間に介装されて伸縮時に減衰力を発生して車体の振動を抑制する。なお、緩衝器Dは、鞍乗型車両以外の車両に利用されてもよいし、車両以外の機器や建築物等に利用されてもよい。
【0019】
以下、緩衝器Dの各部について説明する。シリンダ1は、筒状であって図1中上端に装着されたキャップ10によって上端開口部が閉塞されている。キャップ10は、シリンダ1の上端開口部を閉塞するとともに鞍乗型車両の車体への連結を可能とするブラケット10aを備えている。また、シリンダ1の図1中下端の内周には、環状であってピストンロッド2が挿通されるロッドガイド11が嵌合され、シリンダ1の図1中下端の開口端には、環状のバンプストッパ12が装着されている。ロッドガイド11は、シリンダ1の内周に装着されたスナップリング13によってシリンダ1内から外方となる図1中下方へ向けての移動が規制されており、シリンダ1内の液体の圧力によって図1中下方へ押圧されてスナップリング13に当接する位置に位置決めされている。また、ロッドガイド11の内周には、ピストンロッド2の外周に摺接する筒状のブッシュ14とピストンロッド2の外周に摺接してピストンロッド2の外周をシールするシールリング15とが装着され、ロッドガイド11の外周には、シリンダ1の内周に密着してシリンダ1とロッドガイド11との間をシールするシールリング16が装着されている。
【0020】
また、シリンダ1の図1中上方の外周には、環状の上方ばね受7が螺着されている。上方ばね受7は、シリンダ1に対して回転操作されるとシリンダ1に対して軸方向となる図1中上下方向へ変位できる。
【0021】
ピストンロッド2は、バンプストッパ12およびロッドガイド11の内周を介してシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されており、先端には、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストン3が連結されている。ピストンロッド2は、先端となる図1中上端に設けられて外周にピストン3が装着される小径部2aと、小径部2aの上端の外周に設けられた螺子部2bと、小径部2aと小径部2aより下方との間に形成される段部2cとを備えている。また、ピストンロッド2の図1中下端には、ピストンロッド2を図外の鞍乗型車両の後輪を指示数スイングアームに連結可能なブラケット17が装着され、ピストンロッド2の下端の外周にはブラケット17の上方に載置されるバンプクッションラバー18が嵌合されている。バンプクッションラバー18は、シリンダ1の図1中下端に装着されたバンプストッパ12と軸方向で対向しており、緩衝器Dが収縮側へストロークエンド近傍までストロークするとバンプストッパ12に当接して圧縮され、緩衝器Dのそれ以上の収縮方向へのストロークを抑制する弾発力を発揮して緩衝器Dの最収縮時の衝撃を緩和する。
【0022】
ブラケット17は、外周に下方ばね受17aを備えており、下方ばね受17aとシリンダ1の外周に装着される上方ばね受7との間にコイルばねでなる懸架ばね8が介装されている。懸架ばね8は、シリンダ1とピストンロッド2とを軸方向で離間させる方向、つまり、緩衝器Dを伸長させる方向へ向けて付勢しており、緩衝器Dを鞍乗型車両の車体と後輪との間に介装する弾発力を発揮して車体を弾性支持する。なお、上方ばね受7のシリンダ1に対する設置位置を軸方向で変更できるので、懸架ばね8に与える初期荷重を変更して鞍乗型車両の車高を調整できる。
【0023】
ピストンロッド2の小径部2aには、環状の圧側リーフバルブ20、環状のピストン3および環状の伸側リーフバルブ21が順に組み付けられる。圧側リーフバルブ20、ピストン3および伸側リーフバルブ21は、小径部2aの先端の螺子部2bに螺着されるピストンナット22とピストンロッド2の段部2cとによって挟持されてピストンロッド2の小径部2aに固定される。
【0024】
ピストン3は、外周にシリンダ1の内周に摺接するピストンリング3aを備えており、シリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画している。また、ピストン3は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート3bと圧側ポート3cとを備えている。なお、伸側室R1と圧側室R2とに充填される液体は、たとえば、作動油とされるが、作動油以外にも液体の利用も可能である。
【0025】
圧側リーフバルブ20は、複数の環状板を積層して形成される積層リーフバルブとされ、内周がピストンロッド2に固定されて外周側の撓みが許容されてピストン3の図1中下端に積層されている。圧側リーフバルブ20は、ピストン3に積層されると圧側ポート3cを閉塞して、圧側ポート3cを介して作用する圧側室R2の圧力を受けて撓むと圧側ポート3cを開放する。
【0026】
他方、伸側リーフバルブ21は、複数の環状板を積層して形成される積層リーフバルブとされ、内周がピストンロッド2に固定されて外周側の撓みが許容されてピストン3の図1中上端に積層されている。伸側リーフバルブ21は、ピストン3に積層されると伸側ポート3bを閉塞して、伸側ポート3bを介して作用する伸側室R1の圧力を受けて撓むと伸側ポート3bを開放する。
【0027】
さらに、ピストンロッド2の小径部2aの螺子部2bであって、ピストンナット22よりも図1中上方となるサブシリンダ側には、閉塞体6が螺着されている。このように、ピストンロッド2の先端には、連結部材として閉塞体6が取り付けられている。閉塞体6は、本実施の形態では、図外のレンチ等による把持を可能とする六角ナット状とされており、内周に螺子部2bに螺着される螺子部6aを備えるとともに、図1中上端となるサブシリンダ側端に円環状の平坦面6bを備えている。また、ピストンロッド2の螺子部2bの外周であって閉塞体6の反サブシリンダ側には閉塞体6の図1中下端に当接するストッパ23が装着されている。ストッパ23は、ピストンロッド2の小径部2aの外周に設けられた符示しない溝に嵌合されるスナップリングとされており、閉塞体6の下端に当接して閉塞体6のピストンロッド2に対する反サブシリンダ側となる図1中下方への移動を規制している。
【0028】
また、ピストンロッド2の小径部2aの最先端は筒状とされていて、当該最先端を加締め加工されて形成されたフランジ部2dとストッパ23とで閉塞体6が挟持されて閉塞体6がピストンロッド2に対して不動に固定されている。
【0029】
サブシリンダ4は、筒状であってキャップ10の図1中下端に設けられた環状の突条10bの外周に嵌合されたうえで溶接によってキャップ10に固定されており、シリンダ1内で圧側室R2内に収容されている。このようにサブシリンダ4の上端は、キャップ10によって閉塞されており、また、サブシリンダ4の外径は、シリンダ1の内径よりも小径とされており、サブシリンダ4とシリンダ1との間に環状隙間Sが形成されている。
【0030】
さらに、サブシリンダ4の内周には円盤状の隔壁5が取り付けられており、サブシリンダ4内が隔壁5によって、液圧ロック室Lと液圧ロック室Lの反ピストン側の補償室Rとに区画されている。本実施の形態では、サブシリンダ4は、2つの軸方向に重ねた2つの筒4a,4bで形成されており、筒4a,4bの互いに対向する開口端の内径を隔壁5の嵌合を可能とする大径にして、筒4a,4bの開口端を隔壁5に嵌合させつつ筒4a,4bを軸方に重ねたうえで、外周側から筒4a,4bの端部と隔壁5の外周とを溶接することによって隔壁5と一体に製造されている。このように隔壁5をサブシリンダ4に一体にすることによってシール部材を設けずとも液圧ロック室Lと補償室Rとを液密に仕切ることができる。なお、サブシリンダ4に隔壁5を設ける加工方法は一例であって、サブシリンダ4の内周に嵌合される隔壁5をサブシリンダ4の内周に装着される一対のスナップリングで挟持する等としてサブシリンダ4に隔壁5を固定してもよい。この場合は、隔壁5の外周にサブシリンダ4の内周に密着するシールリングを設けることにより液圧ロック室Lと補償室Rとの間をシールすればよい。
【0031】
また、サブシリンダ4の内周であって補償室R内には、サブシリンダ4の内周に摺接して軸方向へ移動可能であって補償室R内を気室Gと液室Aとの区画するフリーピストン30が挿入されている。フリーピストン30は、外周にサブシリンダ4内に摺接するシールリング30aを備えており、気室Gと液室Aとの間をシールしている。気室G内には、圧縮気体が充填されており、液室A内には伸側室R1と圧側室R2とに充填された液体と同じ液体が充填されている。なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、補償室R内を気室Gと液室Aとに区画するのにフリーピストン30を用いているが、ブラダ、ダイヤフラム、ベローズといった気室Gと液室Aの容積配分を変更可能な弾性隔壁を用いてもよい。
【0032】
さらに、サブシリンダ4は、サブシリンダ4の肉厚を貫いて圧側室R2と液室Aとを連通するオリフィス4cを備えている。オリフィス4cは、圧側室R2と補償室Rの液室Aとを行き来する液体の流れに抵抗を与える。なお、本実施の形態では、オリフィス4cの開口面積よりサブシリンダ4とシリンダ1との間の環状隙間Sの断面積を大きくしており、オリフィス4cがオリフィス4cを通過する液体の流れに与える抵抗より環状隙間Sが当該環状隙間Sを通過する液体の流れに与える抵抗が大きくならないようにしている。本実施の形態では、オリフィス4cで圧側室R2と補償室Rの液室Aとを行き来する液体の流れに抵抗を与えているが、前記環状隙間Sの流路面積を小さくして当該環状隙間Sを通過して圧側室R2と補償室Rの液室Aとを行き来する液体の流れに抵抗を与えるようにし、当該環状隙間Sを制限流路として利用してもよい。その場合、サブシリンダ4にオリフィス4cの代わりに通過する液体の流れに抵抗を殆ど与えない孔を設けて液室Aを環状隙間Sを介して圧側室R2に連通すればよい。
【0033】
また、サブシリンダ4内であって液圧ロック室L内には、ロックピース31が軸方向へ移動可能に挿入されるとともに、ロックピース31と隔壁5との間にばね32が介装されている。ロックピース31は、中央に孔31bを備えた円環状の頭部31aと、頭部31aの外周から図1中上方へ立ち上がりサブシリンダ4の内周に対向する筒部31cとを備えて、ピストンロッド2の先端に取り付けられた閉塞体6に対して軸方向で対向している。
【0034】
サブシリンダ4の図1中下端近傍の内周には、ロックピース31の液圧ロック室Lからの抜けを防止するスナップリング33が装着されており、ロックピース31は、ピストンロッド2の閉塞体6と離間した状態ではばね32によって付勢されてスナップリング33に当接する位置に位置決められる。ばね32は、円錐コイルばねとされていて円筒状のコイルばねに比較して最圧縮時の全長が短いために、ロックピース31の液圧ロック室L内でのストローク長を確保できるとともに液圧ロック室Lの軸方向長さを短くすることができる。このことは、ばね32を円筒状のコイルばねとすることを妨げない。また、ばね32は、コイルばね以外にもロックピース31を付勢できればよいのでウェーブワッシャや皿ばね、ゴム等の弾性体とされてもよい。
【0035】
ロックピース31の筒部31cの外径は、サブシリンダ4の液圧ロック室Lを形成する部分の内径よりも少し小さく、液体は、抵抗を受けつつもロックピース31の外周とサブシリンダ4の内周との隙間を通過できるようになっている。
【0036】
また、頭部31aにおける孔31bの内径は、閉塞体6の円環状の平坦面6bの外径よりも小径であって、ピストンロッド2の先端部のフランジ部2dの挿通を許容できる径に設定されている。よって、閉塞体6とロックピース31とが当接しない状態では、液圧ロック室Lと圧側室R2とはロックピース31の孔31bとロックピース31の外周とサブシリンダ4の内周との間の隙間とを介して連通されるが、ピストンロッド2がシリンダ1に対して図1中上方へ移動して閉塞体6の平坦面6bに頭部31aが当接するとロックピース31の孔31bが閉塞体6の平坦面6bとピストンロッド2とによって閉塞され、液圧ロック室L内と圧側室R2とがロックピース31の外周とサブシリンダ4の内周との間の狭い隙間のみを介して連通されることになる。
【0037】
緩衝器Dは、以上のように構成されており、以下に緩衝器Dの作動を説明する。まず、緩衝器Dが伸長作動する場合の作動を説明する。シリンダ1に対してピストンロッド2が図1中下方へ移動して緩衝器Dが伸長作動を呈すると、ピストン3によって縮小される伸側室R1内の液体は、伸側ポート3bを通過して伸側リーフバルブ21を押し開いて拡大される圧側室R2へ移動する。この液体の流れに対して伸側リーフバルブ21が抵抗を与えるので、伸側室R1内の圧力が上昇して伸側室R1内の圧力と圧側室R2内の圧力とに差が生じ、緩衝器Dは伸長作動を妨げる伸側の減衰力を発生する。緩衝器Dの伸長作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出するため、ピストンロッド2のシリンダ1内から退出する体積分の液体が圧側室R2内で不足するが、不足分の液体は、フリーピストン30がサブシリンダ4内で気室Gを拡大させる方向へ変位して、液室A内から圧側室R2内へ供給される。
【0038】
反対に、緩衝器Dが収縮作動する場合の作動を説明する。シリンダ1に対してピストンロッド2が図1中上方へ移動して緩衝器Dが収縮作動を呈すると、ピストン3によって縮小される圧側室R2内の液体は、圧側ポート3cを通過して圧側リーフバルブ20を押し開いて拡大される伸側室R1へ移動する。この液体の流れに対して圧側リーフバルブ20が抵抗を与えるので、圧側室R2内の圧力が上昇して圧側室R2内の圧力と伸側室R1内の圧力とに差が生じ、緩衝器Dは収縮作動を妨げる圧側の減衰力を発生する。緩衝器Dの収縮作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入するため、ピストンロッド2のシリンダ1内へ侵入する体積分の液体が圧側室R2内で過剰となるが、過剰分の液体は、オリフィス4cを介して補償室Rの液室A内に流入してフリーピストン30がサブシリンダ4内で気室Gを収縮させる方向へ変位する。なお、補償室Rは、オリフィス4cを介して圧側室R2と液室Aとを連通しており、圧側室R2内の圧力は液室A内の圧力を超えて上昇できるので、緩衝器Dは、従来の単筒型緩衝器と比較して大きな圧側の減衰力を発生できる。
【0039】
緩衝器Dが収縮作動を呈して、ピストンロッド2がシリンダ1に対して図1中上方へ移動していくと、やがて、ピストンロッド2の先端に装着された閉塞体6が液圧ロック室L内のロックピース31の頭部31aに当接するようになる。このように閉塞体6の平坦面6bがロックピース31に当接すると、ロックピース31の孔31bが閉塞体6とピストンロッド2とによって閉塞されて、孔31bによる液圧ロック室Lと圧側室R2との連通が断たれる。この状態からさらにピストンロッド2がシリンダ1に対して図1中上方へ移動して緩衝器Dが収縮すると、ロックピース31が閉塞体6によって押圧されて液圧ロック室L内を圧縮する方向へ移動し、連結部材としての閉塞体6が液圧ロック室L内に挿入される。閉塞体6がロックピース31の頭部31aに当接した状態では、液圧ロック室Lと圧側室R2とがロックピース31とサブシリンダ4との間の隙間のみによって連通される状態となるため、ピストンロッド2のシリンダ1に対する収縮方向への移動によってピストンロッド2が液圧ロック室L内に侵入し、閉塞体6によって押されたロックピース31が液圧ロック室Lを縮小すると、液圧ロック室L内の液体は前記隙間を抵抗を受けながら圧側室R2へ移動する。よって、液圧ロック室L内の圧力が圧側室R2以上に上昇して、ピストンロッド2がロックピース31とともに液圧ロック室L内の圧力の作用によって図1中下方へ押圧されるようになる。
【0040】
このように緩衝器Dが収縮側にストロークエンド近傍まで変位すると、閉塞体6がロックピース31に当接して液圧ロック室L内の圧力を上昇させて、液圧ロック機能を発揮するので、緩衝器Dは、圧側リーフバルブ20による減衰力に液圧ロック室L内の圧力上昇による抵抗力を付加してより大きな圧側の減衰力を発生できる。
【0041】
緩衝器Dがストロークエンド近傍まで収縮作動した後に伸長作動に転じると、ピストンロッド2が液圧ロック室L内から退出するとともに、ロックピース31はばね32に付勢されて液圧ロック室Lを圧縮する前のスナップリング33に当接する初期位置に復帰できる。
【0042】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1内の圧側室R2内に収容されるサブシリンダ4と、サブシリンダ4内を液圧ロック室Lと液圧ロック室Lの反ピストン側の補償室Rとに区画する隔壁5とを備え、補償室Rは、気室Gと圧側室R2に連通される液室Aとを有し、液圧ロック室Lは、シリンダ1に対してピストンロッド2が圧側室R2を圧縮する収縮方向へ移動してピストンロッド2に連結される連結部材としての閉塞体6が液圧ロック室L内に挿入されると内部の圧力でピストンロッド2の収縮方向への移動を抑制する。
【0043】
このように構成された本実施の形態の緩衝器Dでは、収縮作動を呈して、ピストン3が収縮方向へ移動してピストンロッド2が液圧ロック室L内に侵入すると、液圧ロック室Lの圧力によってピストンロッド2の移動を抑制する抵抗力を収縮作動時の減衰力に付加することができる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、ストロークエンド近傍まで収縮する際に、従来の緩衝器よりも大きな減衰力を発生できる。そして、このように構成された緩衝器Dを鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装して使用すれば、鞍乗型車両の悪路走行時においてストロークエンドまで収縮してしまう所謂底付きを抑制できる。
【0044】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、ストロークエンド近傍まで収縮すると大きな減衰力を発生できるから、バンプクッションラバー18で大きな弾発力を発生しなくても最収縮時の衝撃を緩和できるようになり、バンプクッションラバー18の小型化および軽量化も可能となる。また、本実施の形態の緩衝器Dは、ストロークエンド近傍まで収縮すると大きな減衰力を発生できるから、懸架ばね8の圧縮が進むとばね定数を変化させて減衰力不足を補う必要がないので、懸架ばね8の構造が簡単になって生産性も向上する。
【0045】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、孔31bを有してサブシリンダ4内であって液圧ロック室L内に軸方向へ移動可能に挿入されるロックピース31と、ロックピース31と隔壁5との間に介装されてロックピース31をピストン側へ向けて付勢するばね32と、ピストンロッド2の先端に設けられてロックピース31に当接すると孔31bを閉塞する閉塞体6とを備えており、閉塞体6を連結部材としている。
【0046】
このように構成された緩衝器Dによれば、ピストンロッド2がサブシリンダ4に接近して、ピストンロッド2側に設けられた閉塞体6で液圧ロック室Lを圧縮するロックピース31の孔31bを閉塞して、ピストンロッド2、閉塞体6およびロックピース31によって液圧ロック室Lを圧縮できるので、ピストンロッド2とサブシリンダ4との軸線にずれがあっても液圧ロック室Lを圧縮して液圧ロック室L内の圧力を上昇させてストロークエンド近傍で所望する大きな圧側の減衰力を得ることができる。
【0047】
なお、ピストンロッド2とサブシリンダ4との軸ずれの問題が無ければ、サブシリンダ4内に収容されるロックピース31、ばね32およびスナップリング33を廃止して、ピストンロッド2の外周に連結部材として円環状のロックピースを設けて、ピストンロッド2がロックピースとともにサブシリンダ4内に侵入すると液圧ロック室Lがピストンロッド2に設けたロックピースによって圧縮されて内部の圧力を上昇させてピストンロッド2の収縮方向への移動を抑制してもよい。
【0048】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、ピストンロッド2に連結される連結部材として閉塞体6を設けて、液圧ロック室Lが閉塞体6の液圧ロック室L内への挿入によりピストンロッド2の収縮方向への移動を抑制するが、連結部材を設けずにピストンロッド2の先端が液圧ロック室L内に挿入されることによって液圧ロック室Lがピストンロッド2の収縮方向への移動を抑制してもよい。この場合、たとえば、ピストンロッド2の先端面がロックピース31に当接すると当該先端面で孔31bを閉塞すればよい。また、連結部材を設けない場合であって、ロックピース31、ばね32およびスナップリング33を廃止する場合、液圧ロック室Lを形成するサブシリンダ4の筒4aの内径をピストンロッド2の先端の外径よりも少し大径にして、ピストンロッド2の先端が液圧ロック室L内に挿入されると液圧ロック室L内の圧力が上昇してピストンロッド2の収縮側への移動を抑制してもよい。このように、緩衝器Dは、ピストンロッド2の先端に何らかの連結部材を取り付けて連結部材の液圧ロック室L内への挿入によって液圧ロック機能を発生してもよいし、ピストンロッド2の先端自体の液圧ロック室L内への挿入によって液圧ロック機能を発生してもよい。
【0049】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、液圧ロック室Lを圧縮する際に液圧ロック室Lから圧側室R2へ向かう液体がロックピース31とサブシリンダ4との間の隙間を通過し、当該隙間にて液体の流れに抵抗を与えて液圧ロック室L内の圧力を上昇させているが、ロックピース31をサブシリンダ4の内周に摺接させて当該隙間の代わりにロックピース31或いは閉塞体6或いはロックピースと閉塞体6との間、或いはピストンロッド2にオリフィスやチョークとして機能する通路を形成して、液体に当該通路を通過させることによって液圧ロック室L内の圧力を上昇させるようにしてもよい。さらには、サブシリンダ4に液圧ロック室Lと圧側室R2とを連通するオリフィスやチョークを設けてもよい。また、閉塞体6は、六角形状とされているが、ロックピース31と当接した際にロックピース31の孔31bを閉塞して、ピストンロッド2が液圧ロック室L内へ侵入した際に、液圧ロック室Lをロックピース31とともに圧縮できる限りにおいて形状および構造について適宜設計変更できる。なお、閉塞体6或いはロックピース31の互いの当接面の一方或いは両方に溝を設けて、当該溝を液圧ロック室L内の圧力を上昇させるためのオリフィスやチョークとして機能させる場合であっても、閉塞体6がロックピース31に当接した状態で孔31bが完全に閉塞されないが、このような場合も液圧ロック室Lの機能を実現できる限りにおいて閉塞体6が孔31bを閉塞するとの概念に含まれる。
【0050】
なお、ロックピース31は、金属製であってもよいが、樹脂製であると閉塞体6との当接時の打音を小さくすることできるとともに、サブシリンダ4内での移動時にサブシリンダ4内の内周面を傷めるのを抑制できる。
【0051】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、サブシリンダ4が側方に圧側室R2を液室Aに連通するオリフィス4cを備えているので、緩衝器Dの収縮作動時に補償室R内の圧力よりも圧側室R2内の圧力を高くすることができるため、収縮作動時の圧側の減衰力を大きくすることができる。よって、このように構成された緩衝器Dを鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装して使用すれば、鞍乗型車両の悪路走行時において底付きをより一層抑制できる。
【0052】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、閉塞体6がピストンロッド2の先端の外周に取り付けられており、ピストン3が環状であってピストンロッド2の外周であって閉塞体6よりの反サブシリンダ側に装着されるとともに伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート3bと圧側ポート3cとを有し、環状であって内周がピストンロッド2の外周に固定されてピストン3の伸側室側端に重ねられて圧側ポート3cを開閉する圧側リーフバルブ20と、環状であって内周がピストンロッド2の外周に固定されてピストン3の圧側室側端に重ねられて伸側ポート3bを開閉する伸側リーフバルブ21と、ピストンロッド2の外周に装着されて閉塞体6の反サブシリンダ側に当接するストッパ23とを備えている。このように構成された緩衝器Dでは、緩衝器Dがストロークエンドの近傍まで収縮作動を呈すると、ピストンロッド2に設けられた閉塞体6がロックピース31に当接してロックピース31とともに液圧ロック室Lを圧縮して液圧ロック室L内の圧力を上昇させる。液圧ロック室L内の圧力は、閉塞体6をピストンロッド2に対してピストン3側へ向けて押圧するが、閉塞体6はピストンロッド2に取り付けられたストッパ23によってピストン3側への移動が規制されるため、閉塞体6が液圧ロック室Lの圧力によって受ける軸方向の荷重が圧側リーフバルブ20、ピストン3および伸側リーフバルブ21に作用することがない。よって、このように構成された本実施の形態の緩衝器Dによれば、ピストンロッド2に閉塞体6を設けても、圧側リーフバルブ20、ピストン3および伸側リーフバルブ21に液圧ロック室Lの圧力によって受ける軸方向の荷重が作用しないので、圧側リーフバルブ20、ピストン3および伸側リーフバルブ21の劣化を防止できるとともに、設計通りに伸側および圧側の減衰力を発生できる。
【0053】
なお、補償室Rにおける気室Gと液室Aとの上下の配置を図1に示したところとは逆にしてもよい。また、本実施の形態の緩衝器Dでは、サブシリンダ4に液室Aと圧側室R2とを連通するオリフィス4cを設けて収縮作動時の圧側室R2内の圧力上昇を助勢しているが、オリフィスとしては機能できない孔で液室Aと圧側室R2とを連通してシリンダ1とサブシリンダ4との間の隙間で液体の流れに抵抗を与える制限流路を設けて収縮作動時の圧側室R2内の圧力上昇を助勢してもよい。ただし、面積の管理が容易なオリフィス4cによって収縮作動時の圧側室R2内の圧力上昇を助勢する場合、圧側室R2内の圧力と液室A内の圧力との調整がしやすくなるという利点を享受できる。また、サブシリンダ4の液圧ロック室L側の径と補償室R側の径は等しくなっているが異なっていてもよい。さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、サブシリンダ4がキャップ10に保持されているので、サブシリンダ4に組み付けられる各部品をサブシリンダ4とともにキャップ10に組み付けてサブシリンダ組立体を形成することができ、緩衝器Dの組立が容易となる。ただし、サブシリンダ4のシリンダ1内への収容および固定の構造については図1に示したところに限定されるものではなく適宜設計変更可能である。
【0054】
たとえば、サブシリンダ4は、図2に示した一実施の形態の第1変形例における緩衝器D1のように、有底筒状であって底部41aを隔壁として液圧ロック室Lを形成する有底筒状の第1筒41と、第1筒41の底部側端の外周に嵌合されるとともに、外周側から加締められることによって第1筒41を保持して補償室Rを形成する第2筒42とで形成されてもよい。
【0055】
第1筒41は、円盤状の底部41aと、外径が底部41aの外径より小径であって底部41aからピストン側へ向けて垂下される筒部41bとを備えており、シリンダ1内で圧側室R2内に収容されるとともに、内部で液圧ロック室Lを形成している。第1筒41内には、ロックピース31が軸方向へ移動可能に挿入されており、ロックピース31と底部41aとの間に円錐コイルばねであるばね32が介装されている。また、筒部41bの図2中下端が内周側へ向けて折り曲げられていて、筒部41bの下端に折り曲げ部41cが形成されており、折り曲げ部41cによってロックピース31の液圧ロック室Lからの抜けが防止されている。ロックピース31は、ピストンロッド2の閉塞体6と離間した状態ではばね32によって付勢されて折り曲げ部41cに当接する位置に位置決められる。
【0056】
第2筒42は、円筒状であってキャップ10の図2中下端に設けられた環状の突条10bの外周に嵌合されたうえで溶接によってキャップ10に固定されており、シリンダ1内で圧側室R2内に収容されて、内部で補償室Rを形成している。また、第2筒42の図2中の下端の内径が上方よりも大径となっており、内周に段部42aを備えるとともに段部42aより反ピストン側に肉厚を径方向に貫くオリフィス42bを備えている。第2筒42の下端の内径は、第1筒41の底部41aが挿入可能な径に設定されている。第2筒42の内径が大径な部分42cの軸方向長さは、第1筒41の底部41aの軸方向長さよりも長くなっている。
【0057】
このように構成された第1筒41と第2筒42とを連結するには、第1筒41の底部側端を第2筒42の下端の内方に挿入して、第1筒41の底部41aを第2筒42の段部42aに当接させる。この状態で、第2筒42の下端の内径が大径な部分42cを加締部として外周側から加締めて底部41aを把持するように塑性変形させることにより、第2筒42と第1筒41とを連結する。このように、液圧ロック室Lを形成する有底筒状の第1筒41と、第1筒41の底部側端の外周に嵌合されるとともに、外周側から加締められることによって第1筒41を保持して補償室Rを形成する第2筒42とでサブシリンダ4を形成すると、第1筒41と第2筒42とに溶接による歪が生じず、第1筒41と第2筒42の内周面の後加工が不要となるので安価かつ容易にサブシリンダ4を製造できるともに、有底筒状の第1筒41で液圧ロック室Lを形成しているので、液圧ロック機能の発揮時に液圧ロック室L内から筒部41bとロックピース31との間以外を介して液体が圧側室R2内へ漏洩する心配もないので、液圧ロック機能を安定して発揮できる。
【0058】
また、補償室R内の液体が第1筒41と第2筒42の加締部となる下端の部分42dとの間から圧側室R2へ漏洩することがあっても、第1筒41と第2筒42の接合部分は液室Aのみが面しており、液室Aと圧側室R2とは常時連通状態におかれるので何ら問題は生じず、液圧ロック室Lが有底筒状の第1筒41内によって形成されているので、液圧ロック室Lにも何ら影響を与えることがない。
【0059】
また、第2筒42による第1筒41の保持は、第1筒41の外周に第2筒42を嵌合させることによって保持状態を保つことができれば嵌合によって第2筒42が第1筒41を保持してもよい。
【0060】
なお、液圧ロック室Lを形成する第1筒を円筒状として、キャップ10に連結されて補償室Rを形成する第2筒を有底筒状として、第2筒の底部側端の外周に第1筒を嵌合して第1筒を第2筒の底部に向けて外周側から加締めることによって、第1筒と第2筒とを連結してサブシリンダ4を形成することも可能である。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・シリンダ、2・・・ピストンロッド、3・・・ピストン、3b・・・伸側ポート、3c・・・圧側ポート、4・・・サブシリンダ、4c・・・オリフィス、5・・・隔壁、6・・・閉塞体(連結部材)、20・・・圧側リーフバルブ、21・・・伸側リーフバルブ、23・・・ストッパ、31・・・ロックピース、31b・・・孔、32・・・ばね、41・・・第1筒、41a・・・底部、42・・・第2筒、A・・・液室、D・・・緩衝器、G・・・気室、L・・・液圧ロック室、R・・・補償室、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、S・・・環状隙間
【要約】
【課題】ストロークエンド近傍で大きな減衰力の発生が可能な緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1内の圧側室R2内に収容されるサブシリンダ4と、サブシリンダ4内を液圧ロック室Lと液圧ロック室Lの反ピストン側の補償室Rとに区画する隔壁5とを備え、補償室Rは、気室Gと圧側室R2に連通される液室Aとを有し、液圧ロック室Lは、シリンダ1に対してピストンロッド2が圧側室R2を圧縮する収縮方向へ移動してピストンロッド2の先端或いは連結部材が液圧ロック室L内に挿入されると内部の圧力でピストンロッド2の収縮方向への移動を抑制する。
【選択図】 図1
図1
図2