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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】半導体光素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20240718BHJP
   H01S 5/22 20060101ALI20240718BHJP
   H01S 5/24 20060101ALI20240718BHJP
   H01S 5/028 20060101ALI20240718BHJP
   H01S 5/227 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01S5/042 612
H01S5/22
H01S5/24
H01S5/028
H01S5/227
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023110426
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2019148456の分割
【原出願日】2019-08-13
(65)【公開番号】P2023118868
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 重剛
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康
(72)【発明者】
【氏名】中原 宏治
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-174234(JP,A)
【文献】特開2004-055688(JP,A)
【文献】特開2012-002929(JP,A)
【文献】特開2005-175382(JP,A)
【文献】特開2006-086498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/042
H01S 5/22
H01S 5/24
H01S 5/028
H01S 5/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上で第1方向にストライプ状に延び、コンタクト層を有するメサストライプ構造と、
前記メサストライプ構造に、前記第1方向に直交する第2方向に隣り合って、前記半導体基板の上にある隣接層と、
前記隣接層の少なくとも一部を覆うパッシベーション膜と、
前記パッシベーション膜の上にある樹脂層と、
前記コンタクト層に導通し、前記コンタクト層から前記樹脂層に至るように延びる電極と、
前記電極の下で前記樹脂層から前記パッシベーション膜に至るように延び、前記電極と前記樹脂層の間に介在する無機絶縁膜と、
を有し、
前記無機絶縁膜は、前記メサストライプ構造から間隔をあけている半導体光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記半導体基板に複数層が積層され、
前記複数層は、前記第1方向に延びる一対の溝を有し、
前記メサストライプ構造は、前記一対の溝の間にあって、前記複数層のそれぞれの一部の積層体から構成され、
前記隣接層は、前記メサストライプ構造とは反対で、前記一対の溝の一方に隣接し、前記複数層のそれぞれの他の一部の積層体から構成されている半導体光素子。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体光素子であって、
前記パッシベーション膜は、前記隣接層から前記一対の溝を通って前記メサストライプ構造の側面に至るように延びる半導体光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記隣接層は、前記メサストライプ構造に隣接して、埋め込みヘテロ構造を構成する半導体光素子。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記隣接層は、前記メサストライプ構造から離れる方向に上り勾配となる傾斜面を有し、
前記パッシベーション膜は、前記傾斜面との重複を避けている半導体光素子。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記無機絶縁膜は、前記樹脂層の表面の一部のみを覆う半導体光素子。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記樹脂層は、側面と、前記側面に囲まれる上面と、を含み、
前記無機絶縁膜は、前記側面の一部との重なりを避けている半導体光素子。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体光素子であって、
前記樹脂層の前記側面は、前記メサストライプ構造の隣の第1領域と、前記メサストライプ構造とは反対の第2領域と、を有し、
前記無機絶縁膜は、前記第2領域と重なりを避けて、前記第1領域を覆う半導体光素子。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体光素子であって、
前記樹脂層の前記側面は、前記第1領域と前記第2領域の間にある第3領域をさらに有し、
前記無機絶縁膜は、前記第3領域との重なりを避けている半導体光素子。
【請求項10】
請求項7に記載の半導体光素子であって、
前記無機絶縁膜は、前記上面の全体を覆う半導体光素子。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記無機絶縁膜は、前記樹脂層の表面の全体を覆う半導体光素子。
【請求項12】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記パッシベーション膜は、前記樹脂層に隣接する部分で前記無機絶縁膜に覆われ、前記メサストライプ構造に近づく方向に前記樹脂層から離れた部分で、前記無機絶縁膜から露出する半導体光素子。
【請求項13】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記隣接層は、上面に凹部を有し、
前記パッシベーション膜は、前記凹部に至るように配置され、
前記樹脂層は、前記凹部にある半導体光素子。
【請求項14】
コンタクト層を含むメサストライプ構造と、
前記メサストライプ構造に隣接する隣接層と、
前記隣接層の上にあるパッシベーション膜と、
前記パッシベーション膜の上にある樹脂層と、
前記コンタクト層に導通し、前記コンタクト層から一方向に沿って前記樹脂層に至るように延びる電極と、
前記電極の下で前記樹脂層から前記パッシベーション膜に至るように延びる無機絶縁膜と、
を有し、
前記無機絶縁膜は、前記メサストライプ構造から間隔をあけている半導体光素子。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体光素子であって、
前記隣接層は、前記メサストライプ構造から離れる方向に上り勾配となる傾斜面を含む半導体光素子。
【請求項16】
請求項14に記載の半導体光素子であって、
前記無機絶縁膜は、前記樹脂層の一部のみを覆う半導体光素子。
【請求項17】
請求項14に記載の半導体光素子であって、
前記無機絶縁膜は、前記樹脂層の側面の一部と重ならない半導体光素子。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体光素子であって、
前記樹脂層の前記側面は、前記メサストライプ構造の隣の第1領域と、前記メサストライプ構造とは反対の第2領域と、を有し、
前記無機絶縁膜は、前記第1領域を覆い、前記第2領域とは重ならない半導体光素子。
【請求項19】
請求項18に記載の半導体光素子であって、
前記樹脂層の前記側面は、前記第1領域と前記第2領域の間にある第3領域をさらに有し、
前記無機絶縁膜は、前記第3領域とは重ならない半導体光素子。
【請求項20】
請求項14に記載の半導体光素子であって、
前記隣接層は、凹部を有し、
前記パッシベーション膜は、前記凹部に至るように配置され、
前記樹脂層は、前記凹部にある半導体光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディングされるパッド電極に起因する寄生容量を低減するために、パッド電極の下に半導体よりも誘電率の低い樹脂層(ポリイミドなど)を配置する構造が知られている。金属膜のパッド電極と樹脂層の間の密着強度は弱く、ワイヤボンディングのプロセスでパッド電極が剥がれる恐れがある。そこで、樹脂層の上面とパッド電極の間にSiNなどの無機絶縁膜を介在させることが知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-175382号公報
【文献】特開2003-174234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂層の上面にパッド電極を形成するプロセスでは、半導体光素子の表面全体に樹脂層が形成され、樹脂層の全面に無機絶縁膜が形成され、無機絶縁膜をパターニングし、その後、フォトレジストを使用して樹脂層がエッチングされる。樹脂層のエッチングが進むとフォトレジストも小さくなるので、無機絶縁膜が露出し、無機絶縁膜をマスクとして樹脂層がエッチングされる。これにより、樹脂層の上面が低くなり、樹脂層と無機絶縁膜との間に大きな高低差(段差)が生じる。この段差は、その後に形成される電極(パッド電極とそれに連なる電極)の段切れの原因となる。
【0005】
本発明は、特性及び信頼性を損なわずに、電極を樹脂層に密着させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る半導体光素子は、半導体基板と、前記半導体基板の上で第1方向にストライプ状に延び、コンタクト層を有するメサストライプ構造と、前記メサストライプ構造に、前記第1方向に直交する第2方向に隣り合って、前記半導体基板の上にある隣接層と、前記隣接層の少なくとも一部を覆うパッシベーション膜と、前記パッシベーション膜の上にある樹脂層と、前記コンタクト層に導通し、前記コンタクト層から前記樹脂層に至るように延びる電極と、前記電極の下で前記樹脂層から前記パッシベーション膜に至るように延び、前記電極と前記樹脂層の間に介在する無機絶縁膜と、を有することを特徴とする。
【0007】
(2)(1)に記載の半導体光素子であって、前記半導体基板に複数層が積層され、前記複数層は、前記第1方向に延びる一対の溝を有し、前記メサストライプ構造は、前記一対の溝の間にあって、前記複数層のそれぞれの一部の積層体から構成され、前記隣接層は、前記メサストライプ構造とは反対で、前記一対の溝の一方に隣接し、前記複数層のそれぞれの他の一部の積層体から構成されていることを特徴としてもよい。
【0008】
(3)(2)に記載の半導体光素子であって、前記パッシベーション膜は、前記隣接層から前記一対の溝を通って前記メサストライプ構造の側面に至るように延びることを特徴としてもよい。
【0009】
(4)(1)に記載の半導体光素子であって、前記隣接層は、前記メサストライプ構造に隣接して、埋め込みヘテロ構造を構成することを特徴としてもよい。
【0010】
(5)(4)に記載の半導体光素子であって、前記隣接層は、前記メサストライプ構造から離れる方向に上り勾配となる傾斜面を有し、前記パッシベーション膜は、前記傾斜面との重複を避けていることを特徴としてもよい。
【0011】
(6)(1)に記載の半導体光素子であって、前記無機絶縁膜は、前記樹脂層の表面の一部のみを覆うことを特徴としてもよい。
【0012】
(7)(6)に記載の半導体光素子であって、前記樹脂層は、側面と、前記側面に囲まれる上面と、を含み、前記無機絶縁膜は、前記側面の一部との重なりを避けていることを特徴としてもよい。
【0013】
(8)(7)に記載の半導体光素子であって、前記樹脂層の前記側面は、前記メサストライプ構造の隣の第1領域と、前記メサストライプ構造とは反対の第2領域と、を有し、前記無機絶縁膜は、前記第2領域と重なりを避けて、前記第1領域を覆うことを特徴としてもよい。
【0014】
(9)(8)に記載の半導体光素子であって、前記樹脂層の前記側面は、前記第1領域と前記第2領域の間にある第3領域をさらに有し、前記無機絶縁膜は、前記第3領域との重なりを避けていることを特徴としてもよい。
【0015】
(10)(7)に記載の半導体光素子であって、前記無機絶縁膜は、前記上面の全体を覆うことを特徴としてもよい。
【0016】
(11)(1)に記載の半導体光素子であって、前記無機絶縁膜は、前記樹脂層の表面の全体を覆うことを特徴としてもよい。
【0017】
(12)(1)に記載の半導体光素子であって、前記パッシベーション膜は、前記樹脂層に隣接する部分で前記無機絶縁膜に覆われ、前記メサストライプ構造に近づく方向に前記樹脂層から離れた部分で、前記無機絶縁膜から露出することを特徴としてもよい。
【0018】
(13)(1)に記載の半導体光素子であって、前記隣接層は、上面に凹部を有し、前記パッシベーション膜は、前記凹部に至るように配置され、前記樹脂層は、前記凹部にあることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図2図2は、図1に示す半導体光素子のII-II線断面図である。
図3図3は、図2に示す半導体光素子の第2の実施形態の断面図である。
図4図4は、図1に示す半導体光素子の第3の実施形態の平面図である。
図5図5は、図4に示す半導体光素子のV-V線断面図である。
図6図6は、第4の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図7図7は、図6に示す半導体光素子のVII-VII線断面図である。
図8図8は、図6に示す半導体光素子のVIII-VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。図2は、図1に示す半導体光素子のII-II線断面図である。半導体光素子100は、リッジ導波路型の半導体レーザである。
【0022】
半導体光素子100は、半導体基板10(例えばn型のInP基板)を有する。半導体基板10に複数層が積層されている。複数層は、例えば、活性層12、クラッド層14、コンタクト層16を含む。活性層12とクラッド層14との間には他の半導体層(例えば、光閉じ込め層、エッチング停止層、回折格子層など)があってもよい。半導体基板10の裏面には下電極18(例えば陰極)が設けられる。
【0023】
複数層は、第1方向D1に延びる一対の溝20を有する。複数層の、活性層12より上の層をエッチングすることにより、一対の溝20が形成される。一対の溝20の間にメサストライプ構造Mが形成される。
【0024】
半導体光素子100は、メサストライプ構造Mを有する。メサストライプ構造Mは、複数層のそれぞれの一部の積層体から構成されている。メサストライプ構造Mは、半導体基板10の上で第1方向D1にストライプ状に延びる。メサストライプ構造Mは、最上層にコンタクト層16を有する。
【0025】
半導体光素子100は、隣接層22を有する。隣接層22は、半導体基板10の上にある。隣接層22は、メサストライプ構造Mとは反対で、一対の溝20の一方に隣接している。隣接層22は、複数層のそれぞれの他の一部の積層体から構成されている。隣接層22は、メサストライプ構造Mに、第1方向D1に直交する第2方向D2に隣り合っている。
【0026】
なお、半導体光素子100は、さらに他の隣接層22Bを有する。隣接層22Bは、隣接層22と比べて、厚み方向には同じ構造を有しているが、平面的な大きさは異なる。隣接層22及び隣接層22Bの間に、一対の溝20に挟まれたメサストライプ構造Mが配置されている。隣接層22及び隣接層22Bは、メサストライプ構造Mを両側で保護している。
【0027】
半導体光素子100は、パッシベーション膜24を有する。パッシベーション膜24は、例えばSiOからなる。パッシベーション膜24は、隣接層22の少なくとも一部を覆う。パッシベーション膜24は、コンタクト層16を除いて、複数層の全体を覆っている。パッシベーション膜24は、隣接層22から一対の溝20の一方を通ってメサストライプ構造Mの側面に至るように延びる。パッシベーション膜24は、隣接層22Bの少なくとも一部を覆う。パッシベーション膜24は、隣接層22Bから一対の溝20の他方を通ってメサストライプ構造Mの側面に至るように延びる。パッシベーション膜24は、コンタクト層16の少なくとも一部(例えば上面全体)を避けて形成される。
【0028】
半導体光素子100は、樹脂層26を有する。樹脂層26は、クラッド層14よりも誘電率の低いポリイミドなどの樹脂からなる。樹脂層26は、パッシベーション膜24の上にある。樹脂層26は、側面を含む。側面は傾斜している。樹脂層26の側面は、メサストライプ構造Mの隣の第1領域R1を有する。樹脂層26の側面は、メサストライプ構造Mとは反対の第2領域R2を有する。樹脂層26の側面は、第1領域R1と第2領域R2の間にある第3領域R3を有する。樹脂層26は、側面に囲まれる上面を含む。上面は、矩形であってもよいし、円形であってもよい。樹脂層26の上面は、パッシベーション膜24の表面よりも高くなっている。
【0029】
半導体光素子100は、上電極28を有する。上電極28は、例えば、Ti、Pt及びAuの3層構造からなる。上電極28は、メサストライプ構造Mの上に位置するメサ電極30を含む。メサ電極30は、コンタクト層16に重なって接触して導通する。上電極28は、コンタクト層16から連続的に樹脂層26に至るように延びる。
【0030】
上電極28は、樹脂層26の上面に位置するパッド電極32を含む。パッド電極32は、外部との電気的な接続を取るためのワイヤ(図示せず)をボンディングするための領域である。パッド電極32の下方に樹脂層26が介在するので、パッド電極32に起因する寄生容量を低減することができる。
【0031】
上電極28は、メサ電極30とパッド電極32との間に形成されるブリッジ電極34を含む。ブリッジ電極34は、樹脂層26の側面(第1領域R1)を通り、樹脂層26と一対の溝20の間の領域を通り、一対の溝20の一方を通って、メサ電極30に至る。ブリッジ電極34の下方には少なくともパッシベーション膜24がある。
【0032】
半導体光素子100は、無機絶縁膜36を有する。無機絶縁膜36は、パッシベーション膜24とは異なる材料(例えばSiN)からなる。無機絶縁膜36は、樹脂層26の上面の全体を覆う。無機絶縁膜36は、上電極28と樹脂層26の間に完全に介在する。つまり、無機絶縁膜36によって、上電極28が樹脂層26に接触しないようになっている。
【0033】
パッド電極32と樹脂層26が直接接触した場合は、密着性において十分でない場合があり、図示しないワイヤのボンディングでパッド電極32が剥がれてしまうなどの懸念がある。そのため、パッド電極32と樹脂層26の間に無機絶縁膜36が介在することは有効である。パッド電極32及びブリッジ電極34と樹脂層26の間に無機絶縁膜36が介在することにより、樹脂層26と上電極28の密着性を強化することができる。また、樹脂層26を山状に形成した後に、樹脂層26を覆うように無機絶縁膜36を形成することによって、上電極28の段切れの要因となる段差が無くなり、特性・信頼性の低下を避けることができる。
【0034】
無機絶縁膜36は、上電極28の下で、樹脂層26から連続的にパッシベーション膜24に至るように延びる。無機絶縁膜36は、パッシベーション膜24の、樹脂層26に隣接する部分を覆う。無機絶縁膜36は、ブリッジ電極34とパッシベーション膜24との間にも設けられている。上述した段差の解消の観点では、無機絶縁膜36は、樹脂層26が存在しない領域だけ(つまり、側面の下端まで)を覆っていればよい。しかし、側面のちょうど下端に無機絶縁膜36を設ける設計では、製造誤差によって側面の途中で無機絶縁膜36が途切れる恐れがある。そのため、本実施形態では、余裕をもって無機絶縁膜36の一部をパッシベーション膜24の上まで延ばしてある。
【0035】
無機絶縁膜36は、メサストライプ構造Mから間隔をあけて位置する。これにより、パッシベーション膜24は、メサストライプ構造Mに近づく方向に樹脂層26から離れた部分で、無機絶縁膜36から露出する。無機絶縁膜36とパッシベーション膜24が重なった領域は、共に半導体と比べると硬いため、応力の発生原因となり、信頼性及び特性の低下を招く恐れがある。そのため、本実施形態においては、メサストライプ構造Mの近傍では、パッシベーション膜24が無機絶縁膜36に覆われないようになっている。
【0036】
無機絶縁膜36は、樹脂層26の表面の一部のみを覆う。無機絶縁膜36は、樹脂層26の側面の一部との重なりを避けている。無機絶縁膜36は、樹脂層26の第2領域R2と重なりを避けて、樹脂層26の第1領域R1を覆う。無機絶縁膜36は、樹脂層26の第3領域R3との重なりを避けている。ブリッジ電極34が設けられていない第2領域R2及び第3領域R3においては、上電極28の段切れは問題とならないため、半導体光素子100全体への応力を低減するために、無機絶縁膜36は設けられていない。
【0037】
[第2の実施形態]
図3は、図2に示す半導体光素子の第2の実施形態の断面図である。この変形例では、隣接層222は、上面に凹部238を有する。凹部238は、コンタクト層216及びクラッド層214が削られて形成される。凹部238の内面は、パッシベーション膜224に覆われている。樹脂層226は、凹部238に配置され、凹部238でもパッシベーション膜224の上にある。
【0038】
樹脂層226は、凹部238の深さよりも厚い。また、樹脂層226の厚みは、凹部238内でのパッシベーション膜224の上面から、凹部238の周囲でのパッシベーション膜224の上面までの間隔よりも大きい。樹脂層226は、凹部238の周囲で、パッシベーション膜224に載るようになっている。樹脂層226は、凹部238の周囲にあるパッシベーション膜224よりも高くなっている。樹脂層226が厚く形成されることで、寄生容量のさらなる低減が可能になる。
【0039】
[第3の実施形態]
図4は、図1に示す半導体光素子の第3の実施形態の平面図である。図5は、図4に示す半導体光素子のV-V線断面図である。この変形例では、無機絶縁膜336は、樹脂層326の表面の全体を覆うようになっている。
【0040】
詳しくは、無機絶縁膜336は、樹脂層326の上面の全体及び側面の全体を覆う形状となっている。無機絶縁膜336は、さらに、樹脂層326の周囲でパッシベーション膜324に載るようになっている。樹脂層326の全体が無機絶縁膜336で覆われているために、形成プロセスでの樹脂層326の変形を抑制することができる。また、樹脂層326は、パターニングされた後にエッチングされることがないため、段差を発生させずに、より安定して形状を保つことができ、上電極328の段切れなどの可能性を排除することができる。
【0041】
[第4の実施形態]
図6は、第4の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。図7は、図6に示す半導体光素子のVII-VII線断面図である。図8は、図6に示す半導体光素子のVIII-VIII線断面図である。
【0042】
半導体光素子400は、レーザ部440に駆動電流を注入することにより出射される連続光を変調器部442で変調して、信号光が出力されるようになっている。半導体光素子400は、レーザ部440(例えば半導体レーザ)及び変調器部442が同一の半導体基板410上にモノリシックに集積された変調器集積型半導体光素子(例えば変調器集積レーザ)である。
【0043】
レーザ部440は、分布帰還型半導体レーザ(Distributed Feedback Laser:DFBレーザ)である。変調器部442は、電界吸収型変調器(EA(Electro-Absorption)変調器)である。電界吸収型変調器は、チャープ(波動変調)が小さく、光信号のONレベルとOFFレベルの差である消光比が大きく、広域帯である、といった有利な特性を有することに加え、小型で低コストであることにより、幅広く用いられている。半導体光素子400は、EA変調器集積型DFBレーザ素子である。
【0044】
半導体光素子400は、埋め込みヘテロ構造(Buried Heterostructure:BH構造)を有している。BH構造とは、光導波路を有するメサストライプ構造Mの両側に半絶縁性半導体層(隣接層422)が埋め込まれている構造をいう。BH構造は、横方向に光を閉じ込める効果が強く、FFP(Far Field Pattern)がより円形となるので、光ファイバとの結合効率が高いという利点があり、さらに、放熱性に優れており、広く用いられている。
【0045】
半導体光素子400は、半導体基板410を有する。半導体基板410は、n型の不純物がドープされた半導体(例えばn型InP)からなる。半導体基板410は凸部444を有する。凸部444は、第1方向D1にストライプ状に延びる。凸部444は、メサストライプ構造Mの少なくとも下端部を構成する。
【0046】
メサストライプ構造Mは、レーザ部440(半導体レーザ)を構成するための第1メサストライプ構造M1を含む。メサストライプ構造Mは、変調器部442を構成するための第2メサストライプ構造M2を含む。
【0047】
半導体光素子400は、凸部444の上で第1方向D1にストライプ状に延びる量子井戸層412を有する。量子井戸層412は、p型又はn型の不純物がドープされていない真正半導体からなる。量子井戸層412は、メサストライプ構造Mの一部を構成する。半導体レーザ(第1メサストライプ構造M1)では、量子井戸層412は活性層である。変調器部442(第2メサストライプ構造M2)では、量子井戸層412は吸収層である。量子井戸層412は、多重量子井戸(Multiple-Quantum Well:MQW)層である。MQW層に電界が印加されると、MQW層における光の吸収端が長波長側へシフトする量子閉じ込めシュタルク効果(Quantum Confinement Stark Effect:QCSE)が得られる。EA変調器は、QCSEを利用して光を変調する。MQW層は、歪が導入された複数の量子井戸層412(InGaAsP)及び隣同士の量子井戸層412の間に介在する障壁層を含む。
【0048】
量子井戸層412の上下には、InGaAsPからなる光ガイド層(図示せず)が設けられる。レーザ部440の量子井戸層412(活性層)と変調器部442の量子井戸層412(吸収層)は、バットジョイントにて光学的に接続されている。レーザ部440では、量子井戸層412(活性層)の上に、InGaAsPからなる回折格子層が設けられる。
【0049】
メサストライプ構造Mは、量子井戸層412(レーザ部440では回折格子層)の上で第1方向D1にストライプ状に延びるクラッド層414を含む。クラッド層414は、p型の不純物である亜鉛(Zn)がドープされた半導体(p型InP)からなる。メサストライプ構造Mは、コンタクト層416を含む。コンタクト層416は、p型InGaAsP層及びp型InGaAs層からなり、それぞれ、p型の不純物(Zn)がドープされている。
【0050】
半導体光素子400は、埋め込み層としての隣接層422を有する。隣接層422は、鉄(Fe)がドープされた半導体(例えばInP)からなる。Feが添加されるInPは、半絶縁性半導体である。隣接層422は、半導体基板410の上面に載る。隣接層422は、メサストライプ構造Mの両側に、第1方向D1に直交する第2方向D2に隣接して、埋め込みヘテロ構造を構成する。半導体光素子400は、メサストライプ型である。
【0051】
隣接層422は、メサストライプ構造Mの上面に隣接して、(111)面の面方位に沿って傾斜する傾斜面446を有する。傾斜面446は、メサストライプ構造Mから離れる方向に上り勾配となる。隣接層422は、傾斜面446の外側に、水平面に平行に拡がる平坦面448を有する。
【0052】
メサストライプ構造M及び隣接層422は、パッシベーション膜424によって覆われている。パッシベーション膜424は、スルーホール450を有する。スルーホール450内には、メサストライプ構造M(コンタクト層416)の上面が露出し、これに隣接して隣接層422の上面の一部(傾斜面446)も露出する。パッシベーション膜424は、傾斜面446との重複を避けている。
【0053】
樹脂層426は、変調器部442において、隣接層422の上であってパッシベーション膜424の上に設けられている。これに対して、レーザ部440には、樹脂層は設けられない。その理由は、レーザ部440は、連続光を出射するために直流電圧が印加されるので、寄生容量による影響が小さいからである。
【0054】
パッシベーション膜424の上に、変調器部442の上電極428が載る。上電極428は、スルーホール450内でコンタクト層416と電気的に接続している。上電極428は、メサ電極430、パッド電極432及びブリッジ電極434を含む。半導体光素子400は、光が出射する端面には反射防止膜(図示せず)を有し、反対側の端面には高反射膜(図示せず)を有する。その他の内容は、第1の実施形態で説明した内容が該当する。
【0055】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 半導体基板、12 活性層、14 クラッド層、16 コンタクト層、18 下電極、20 溝、22 隣接層、22B 隣接層、24 パッシベーション膜、26 樹脂層、28 上電極、30 メサ電極、32 パッド電極、34 ブリッジ電極、36 無機絶縁膜、100 半導体光素子、214 クラッド層、216 コンタクト層、222 隣接層、224 パッシベーション膜、226 樹脂層、238 凹部、324 パッシベーション膜、326 樹脂層、328 上電極、336 無機絶縁膜、400 半導体光素子、410 半導体基板、412 量子井戸層、414 クラッド層、416 コンタクト層、422 隣接層、424 パッシベーション膜、426 樹脂層、428 上電極、430 メサ電極、432 パッド電極、434 ブリッジ電極、440 レーザ部、442 変調器部、444 凸部、446 傾斜面、448 平坦面、450 スルーホール、D1 第1方向、D2 第2方向、M メサストライプ構造、M1 第1メサストライプ構造、M2 第2メサストライプ構造、R1 第1領域、R2 第2領域、R3 第3領域。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8